以下、本発明の実施形態に係る表面処理装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1実施形態>
(表面処理装置の全体構造)
図1及び図2に示す第1実施形態に係る表面処理装置は、例えば電気めっき用途に用いられる。この表面処理装置としての電気めっき装置100は、搬送用ハンガー21を位置(a)からアルファベットの順に位置(z)に至るまで順次搬送し、各位置において後述する動作や処理を行うことにより、複数のワーク(被処理物)Wに電気めっきを連続的に施すことができる。
電気めっき装置100は、環状に配列された複数の処理部1〜11と、これらの処理部1〜11の配列に沿って配置された複数のレールを含むガイドレールと、ワークWを保持した状態で前記ガイドレールに案内される複数の搬送用ハンガー21と、これらの搬送用ハンガー21を前記ガイドレールに沿って移動させる搬送機構とを備えている。これらの各構成要素は、図略の制御部により制御される。複数の処理部1〜11は、ローダー1と、処理槽2〜7と、アンローダー8と、処理槽9,10と、エアブロワ11とを含む。
電気めっき装置100は、各搬送用ハンガー21が一回りしてスタート位置に戻るように、前記ガイドレールが連続的に環状に配設されている。前記ガイドレールの下方には、ガイドレールに沿って複数の処理槽が配列されている。
図2において、位置(a)〜位置(z)は、搬送用ハンガー21が配置される1ピッチ毎の位置を示している。各ワークWは、位置(a)に配設されたローダー1により搬送用ハンガー21に取り付けられ、位置(b)から位置(s)までの各位置に配設された後述する各処理槽において所定の処理が施された後、位置(t)に配設されたアンローダー8により搬送用ハンガー21から取り外される。
(処理槽)
前記複数の処理槽は、位置(b)の水洗槽2と、位置(c)〜(f)の前処理槽3と、位置(g)の水洗槽4と、位置(h)〜(p)のめっき槽5と、位置(q)の水洗槽6と、位置(r)〜(s)の水切り槽7と、位置(u)〜(w)の剥離槽9と、位置(x)の水洗槽10と、を備えている。位置(z)には、エアブロワ11が配設されている。
前処理槽3にはワークWを前処理するための前処理液が貯留される。めっき槽5にはワークWに対してめっき処理するためのめっき液が貯留される。剥離槽9には搬送用ハンガー21に付着しためっき等の異物を剥離するための剥離液が貯留される。
水洗槽2,4,6,10には水洗用の水がそれぞれ貯留される。水洗槽2では、搬送用ハンガー21及びワークWの表面に付着した異物などを除去する。水洗槽4では、搬送用ハンガー21及びワークWの表面に付着した前処理液を洗浄する。水洗槽6では、搬送用ハンガー21及びワークWの表面に付着した表面処理液(本実施形態ではめっき液)を洗浄する。水洗槽10では、搬送用ハンガー21の表面に付着した剥離液を洗浄する。
水切り槽7では、水洗槽6において水洗された搬送用ハンガー21及びワークWの表面に付着した水分を除去する。この場合、水切り槽7内において、例えば搬送用ハンガー21及びワークWの表面に空気を吹き付けることにより、前記水分が効率よく除去できる。エアブロワ11は、水洗槽10において水洗された搬送用ハンガー21に空気を吹き付けて、この搬送用ハンガー21の表面に付着した水分を除去する。
(ガイドレール)
図2〜図4に示すように、前記ガイドレールは、A列に沿って直列に並ぶ複数のレールを含む第1レール部と、B列に沿って直列に並ぶ複数のレールを含む第2レール部と、円弧軌道上に沿って並ぶ4つのレール214を含む可動レール部14と、円弧軌道上に沿って並ぶ4つのレール217を含む可動レール部17とを含む。
第1レール部と第2レール部は、所定の間隔をあけて略平行に対向して配置されており、それぞれ直線状に延びている。第1レール部は、位置(a)〜(f)及び位置(u)〜(z)に沿って配設されている。第2レール部は、位置(h)〜(s)に沿って配設されている。
第1レール部は、剥離槽固定レール18と、剥離槽昇降レール19と、ロード側固定レール20と、ロード側昇降レール12と、前処理槽固定レール13とを含み、これらが搬送方向Rに沿ってこの順に直線状に配列されている。第2レール部は、めっき槽固定レール15と、アンロード側昇降レール16とを含み、これらが搬送方向Rに沿ってこの順に直線状に配列されている。各レールは、略水平方向に延設されている。
前処理槽固定レール13、めっき槽固定レール15、剥離槽固定レール18及びロード側固定レール20は、所定高さの下位置において固定された固定レールである。図4は図1のIV−IV線断面図であるので、図4には前記固定レールのみが描かれている。
例えば、前処理槽固定レール13が配置された前記下位置は、図1に示すように、搬送用ハンガー21に保持されたワークWを前処理槽3内の前処理液に浸漬可能な程度の高さに調整されている。他の固定レール15,18,20についても同様に、これらが配置された下位置は、各工程においてワークW又は搬送用ハンガー21が各処理槽内において所定の処理が施せる高さに調整されている。本実施形態では、全ての固定レールの高さは、ほぼ同じである。
ロード側昇降レール12、可動レール部14、アンロード側昇降レール16、可動レール部17及び剥離槽昇降レール19は、後述する昇降機構31により昇降可能な昇降レールである。これらの昇降レールは、前記下位置と、所定高さの上位置との間を昇降する。
例えば、ロード側昇降レール12は、前記下位置において、搬送方向R及びその反対方向にそれぞれ隣り合う前処理槽固定レール13及びロード側固定レール20とほぼ同じ高さであり、これらがほぼ直列に並ぶ。これにより、ロード側昇降レール12は、固定レール13,20と間で搬送用ハンガー21の受け渡しをすることができる。
一方、ロード側昇降レール12の前記上位置では、図1に示すように、ワークWの下端部が水洗槽2の上端部よりも高い位置にあり、搬送用ハンガー21が搬送方向Rに搬送される際にワークWが水洗槽2の仕切り壁に接触しない程度の高さに調整されている。他の昇降レール214,217,16,19についても同様に、これらの上位置は、対応する処理槽と搬送時に接触しない高さに調整されている。本実施形態では、全ての昇降レールは、図1に示すように前記下位置及び上位置がほぼ同じ高さに設定されており、後述する昇降機構31により一体的に昇降動作する。
各レールは、厚み(横寸法)よりも高さ(縦寸法)の方が長い矩形状の断面を有するとともに(例えば図6(A)のレール15参照)、図3に示すように搬送方向Rに延びる板状の部材である。各固定レールは、図略のフレームに支持されている。また、各昇降レールは、後述する昇降フレームに支持されている。可動レール部14,17の詳細については後述する。
(搬送用ハンガー)
図5は搬送用ハンガー21を示す側面図であり、図6(A)は、図3のVIA−VIA線断面図であり、図6(B)は、図6(A)のVIB−VIB線断面図である。図5及び図6(A),(B)に示すように、搬送用ハンガー21は、各レールに沿って走行する走行部107と、ワークWを保持する矩形状のワーク保持枠109と、このワーク保持枠109と走行部107をつなぐ吊持部材108と、を含む。以下、搬送用ハンガー21については、めっき槽固定レール15に吊り下げられた状態を例に挙げて説明する。
図3に示すように、B列の第2レール部のうち、めっき槽固定レール15の内側には、めっき槽固定レール15に沿ってチェーンベルト39が並設されている。このチェーンベルト39は、図略の一対の駆動スプロケットなどに環状に巻かれ、図略のモータの駆動により周回移動可能である。また、図6(A)に示すように、めっき槽固定レール15の外側には、めっき槽固定レール15に沿って、図略の直流電源の陰極側に接続された給電レール104が並設されている。
図6(A),(B)に示すように、走行部107は、レール15の上端面にスライド可能に載置された走行部本体113と、この走行部本体113の上端部に支持されたスプロケットギヤ114と、走行部本体113の上端部に回動可能に支持され、搬送方向Rに並ぶ一対の上側ガイド輪115と、走行部本体113の下端部に回動可能に支持され、搬送方向Rに並ぶ一対の下側ガイド輪116と、給電レール104に上側から当接する集電用摺接子117と、を備えている。
図5及び図6(A)に示すように、スプロケットギヤ114は、走行部本体113の上部から突出する突出部113aに支軸114aを介して回動可能に支持されている。スプロケットギヤ114は、チェーンベルト39に噛み合うと共に、矢印R1方向のみの回転が可能なワンウエイクラッチが設けられており、矢印R2方向の回転がロックされている。すなわち、チェーンベルト39が矢印R(搬送用ハンガー21の搬送方向R)に移動する時には、スプロケットギヤ114の回転がロックされることにより、チェーンベルト39と共に搬送用ハンガー21が矢印R方向に移動する。一方、搬送用ハンガー21が、第1位置決め搬送機構24により位置(h)から位置(i)へ送られるとき及び取込搬送機構26により位置(o)から位置(p)へ送られるときには、スプロケットギヤ114が矢印R1方向に空転するので、搬送用ハンガー21は、チェーンベルト39とは連動しない。
集電用摺接子117は、回動支軸118回りに回動可能に支持されると共に、ばね119で回動支軸118回りに下方に付勢され、給電レール104の上面に一定の圧力で接触している。
図6(A)に示すように、レール15と給電レール104とは、互いに平行に配置されると共にそれぞれ支持部材103a,103bを介して断面C字状の軌道基台105に支持されている。この軌道基台105は、図略のフレームに支持されている。
軌道基台105の上壁及び下壁の上面には、チェーンガイド105aがそれぞれ設けられており、各チェーンガイド105aにチェーンベルト39の上側部分と下側部分とがそれぞれガイドされている。上側のチェーンベルト39にスプロケットギヤ114が噛み合っている。
図6(A),(B)に示すように、上側ガイド輪115は、レール15の上端部に、レール15の内側から当接している。下側ガイド輪116は、レール15の下端部に、レール15の外側から当接している。これにより、搬送用ハンガー21が搬送方向Rに搬送される際には、上側ガイド輪115及び下側ガイド輪116が回転しながらレール15に当接するので、搬送用ハンガー21が安定して支持されるとともに、円滑に搬送される。
チェーンベルト39、このチェーンベルト39を周回移動させる前記モータ、及びスプロケットギヤ114は、後述する搬送機構のうちのめっき槽側搬送機構25を構成している(図3)。
吊持部材108は、走行部本体113から略水平に外側に延びると共に前端部が折れ曲って下方に延びている。吊持部材108の基端側の下面に設けられた摺接子支持板121には、摺接子117用の回動支軸118が支持されている。下方に延びた吊持部材108の下端部には、ワーク保持枠109の上端部が連結されている。
図5に示すように、ワーク保持枠109は、略水平に搬送方向Rに延びる上側横桟131と、この上側横桟131から下方に所定間隔をおいた位置に上側横桟131と略平行に延びる下側横桟132と、これらの横桟131,132の端部同士を連結する一対の縦桟133,133とを含む縦長の矩形状を有している。
上側横桟131と、一対の縦桟133,133とは、導電性を有する金属(例えば銅、ステンレス鋼など)により形成されている。下側横桟132は、非導電性材料(例えば硬質塩化ビニル樹脂(CVPC)など)により形成されている。
上側横桟131には、その両端部と中央部に、ワークWの上端部を把持してワークWに給電する三本の上側クランパー(保持部)140が下方に突出した状態で設けられている。各上側クランパー140は、上側横桟131を介して給電用摺接子117に電気的に接続されている。
下側横桟132には、その両端部に、ワークWの下端部を把持して給電する一対の下側クランパー(保持部)141が上方に突出した状態で設けられている。各下側クランパー141は、給電板149を介して縦桟133に電気的に接続されている。
図6(A)に示すように、上側クランパー140は、一対のクランプレバー140aと、一方のクランプレバー140aを他方に対して回動可能に連結する支軸140bと、一対のクランプレバー140aが閉状態(クランプ状態)となる方向に一対のクランプレバー140aを付勢するばね140cとを含む。内側のクランプレバー140aは、上側横桟131に固定されている。外側のクランプレバー140aは、その上端部が内側に押されることにより支軸140bを中心に回動する。これにより、一対のクランプレバー140aの下端部が開く。下側クランパー141については、上側クランパー140と上下方向の向きが反対である他は同様の構成を有しているので説明を省略する。
(フレームの構成)
次に、電気めっき装置100において、前述した昇降レールや後述する搬送機構を支える土台となるフレームの構成について説明する。図1に示すように、電気めっき装置100は、一対のガイド柱84及びガイド柱85を有している。これらのガイド柱84,85は、A列の第1レール部とB列の第2レール部との間に配置されている。ガイド柱84は、可動レール部14側の位置に設けられており、ガイド柱85は、可動レール部17側の位置に設けられている。これらのガイド柱84,85は、断面が四角形の鋼管であり、下端部が地面に固定され、鉛直方向上方に延びている。
ガイド柱84の上端部とガイド柱85の上端部には、これらの間に架け渡された上部水平フレーム90が固定されている。また、上部水平フレーム90よりも下方には、ガイド柱84及びガイド柱85に沿って上下移動可能な昇降フレームが配設されている。
図3に示すように、前記昇降フレームは、第1レール部側の位置にこの第1レール部に沿って略水平に延びる下部水平フレーム78aと、第2レール部側の位置にこの第2レール部に沿って略水平に延びる下部水平フレーム78bとを含む。下部水平フレーム78aと下部水平フレーム78bは、水平方向に対向するように互いにほぼ平行に配置されており、水洗槽4側の端部においてガイド柱84を挟み、アンローダー8側の端部においてガイド柱85を挟む位置に配置されている。
下部水平フレーム78aにおける水洗槽4側の端部近傍の側面には、レール13側に略水平に突出する一対の延設部781が固定されている。下部水平フレーム78aにおけるアンローダー8側の端部近傍の側面には、レール19側に略水平に突出する一対の延設部782が固定されている。延設部781と延設部782の間の下部水平フレーム78aの側面には、レール12側に略水平に突出する一対の延設部783が固定されている。
下部水平フレーム78bにおける水洗槽4側の端部近傍の側面には、レール15側に略水平に突出する一対の延設部784が固定されている。下部水平フレーム78bにおけるアンローダー8側の端部近傍の側面には、レール16側に略水平に突出する一対の延設部785が固定されている。
一対の延設部782の先端部には、レール19に沿って搬送方向Rに延びるフレーム73が固定されている。レール19は、このフレーム73に固定されて支持されている。一対の延設部783の先端部には、レール12に沿って搬送方向Rに延びるフレーム81が固定されている。レール12は、このフレーム81に固定されて支持されている。一対の延設部785の先端部には、レール16に沿って搬送方向Rに延びるフレーム74が固定されている。レール16は、このフレーム74に固定されて支持されている。
図3及び図9(A)に示すように、延設部782の上面には、フレーム93aの一端部が固定されている。このフレーム93aは、前記一端部から下部水平フレーム78aと略平行にアンローダー8側に延び、ガイド柱85よりもアンローダー8側の位置において第2レール部側に折れ曲がり、レール16よりも手前の位置において延設部785側に折れ曲がり、他端部が延設部785の上面に固定されている。図9(B)に示すように、フレーム93aの下方には、このフレーム93aとほぼ同形状のフレーム93bが配設されている。このフレーム93bは、一端部が延設部782の下面に固定され、他端部が延設部785の下面に固定されている。フレーム93a,93bは、図10(A)に示すように溝形鋼である。
フレーム93aのアンローダー8側の側面には、アンローダー8側に延び、所定の間隔をあけて配置された一対のフレーム94aが固定されている。これらのフレーム94aの間には、これらの間に架け渡された上部板96aが各フレーム94aに固定されている。フレーム93bのアンローダー8側の側面には、アンローダー8側に延び、所定の間隔をあけて配置された一対のフレーム94bが固定されている。これらのフレーム94bの間には、これらの間に架け渡された下部板96bが各フレーム94bに固定されている。
また、図3に示すように、延設部781の上面には、フレーム91aの一端部が固定されている。このフレーム91aは、前記一端部から下部水平フレーム78aと略平行に水洗槽4側に延び、ガイド柱84よりも水洗槽4側の位置において第2レール部側に折れ曲がり、レール15よりも手前の位置において延設部784側に折れ曲がり、他端部が延設部784の上面に固定されている。フレーム91aの下方には、このフレーム91aとほぼ同形状の図略のフレーム91bが配設されている。このフレーム91bは、一端部が延設部781の下面に固定され、他端部が延設部784の下面に固定されている。フレーム91a,91bは溝形鋼である。
フレーム91aの水洗槽4側の側面には、水洗槽4側に延び、所定の間隔をあけて配置された一対のフレーム92aが固定されている。これらのフレーム92aの間には、これらの間に架け渡された上部板96aが各フレーム92aに固定されている。フレーム91bの水洗槽4側の側面には、水洗槽4側に延び、所定の間隔をあけて配置された図略の一対のフレーム92bが固定されている。これらのフレーム92bの間には、これらの間に架け渡された図略の下部板96bが各フレーム92bに固定されている。
図9(A)に示すように、ガイド柱85には、ガイド柱85の外周のうち、アンローダー8側の部分を除く外周部分を囲むようにフレーム86aが配設されている。図9(B)に示すように、このフレーム86aの下方には、このフレーム86aとほぼ同形状のフレーム86bが配設されている。これらのフレーム86a,86bは、水洗槽4側に凹む凹部を有し、平面視でU字形状を有している。フレーム86aは、下部水平フレーム78a,78bのアンローダー8側の端部の上面に固定されており、フレーム86bは、下部水平フレーム78a,78bのアンローダー8側の端部の下面に固定されている。
フレーム86a,86bの各凹部には、ガイド柱85の前記外周部分に対向する位置に、前記外周部分に当接する3つのローラ86cが取り付けられている(図9(A))。また、ガイド柱84には、ガイド柱84の外周のうち、水洗槽4側の部分を除く外周部分を囲むように一対のフレーム83a,83bが配設されている。これらのフレーム83a,83bは、上述したフレーム86a,86bとほぼ同様の構造を有し、その凹部に図略の3つのローラを有している。
図9(A),(B)に示すように、上部板96a及び下部板96bの上面には軸受け97a,97bがそれぞれ固定されている。これらの軸受け97a,97bは、回動軸95を回転可能に支持している。回動軸95は、軸受け97bから上方に延び、先端部がモータ98に連結されている。モータ98は、フレーム94aの上面に固定されている。このモータ98が駆動することにより、回動軸95が回転する。
回動軸95の側面には、高さ方向のフレーム94aとフレーム94bの間の位置に、四方に放射状に延設された4つのアーム99が固定されている。各アーム99は、隣り合うアーム99と平面視でほぼ直角をなす方向に延びている。各アーム99の先端には、軌道基台105がボルトにより接合されている。この軌道基台105には、支持部材103aを介して可動レール部17が支持されている。
図1に示すように、上部水平フレーム90には、ガイド柱85の上端部の近傍とガイド柱84の上端部の近傍にモータ61がそれぞれ配設されている。一方のモータ61の回動軸には、例えば図略のワイヤの一端が固定されており、このワイヤの他端がフレーム86aに固定されている。他方のモータ61の回動軸には、例えば図略のワイヤの一端が固定されており、このワイヤの他端がフレーム83aに固定されている。両方のモータ61が駆動すると、前記ワイヤが巻き上げられ、又は引き出される。これにより、フレーム83a,86a及びこれらに連結されたフレーム78a,78bなどの他のフレームが上下に昇降動作する。
モータ61、ガイド柱84,85、フレーム86a,86b,83a,83b及び前記ワイヤは、後述する搬送機構のうちの昇降機構31を構成しており、回動軸95、軸受け97a,97b、モータ98及びアーム99は、回動軸95回りの円弧軌道に沿って可動レール部14,17を移動させるための回動搬送機構23を構成している。
(搬送機構)
前記搬送機構は、ロード側間欠搬送機構22、前述の回動搬送機構23、第1位置決め搬送機構24、前述のめっき槽側搬送機構25、取込搬送機構26、アンロード側間欠搬送機構27、第2位置決め搬送機構29、及び前述の昇降機構31を含む。
図4に示すように、ロード側間欠搬送機構22は、前記下位置に固定されている前処理槽固定レール13及びロード側固定レール20に係合された搬送用ハンガー21を1ピッチずつ搬送方向R側に搬送する。
図7は、ロード側間欠搬送機構22を示す側面図であり、図8は、図7のVIII−VIII線断面図である。なお、図7においては、処理槽などの図示は省略している。
図4、図7及び図8に示すように、ロード側間欠搬送機構22は、並設部材としてのビーム221、案内用レール222、プッシャー223、モータ224、クランクアーム225、これらの部材を支持するフレーム227などを含む。
フレーム227は、第1フレーム227aと、この第1フレーム227aよりも内側(図8の右側)に配置された第2フレーム227bとを有している。これらのフレーム227a,227bは地面に固定されている。第1フレーム227aは、例えばロード側固定レール20の近傍に配設されており、モータ224及びクランクアーム225を支持している。第2フレーム227bは、例えば前処理槽固定レール13における搬送方向R側の端部近傍と、ロード側固定レール20における搬送方向Rの反対側の端部近傍の2箇所に配設されている。
これらの第2フレーム227bは、案内用レール222の両端部をそれぞれ支持している。具体的には、各第2フレーム227bの上端部には、レール固定フレーム227cがそれぞれ接合されている。一方のレール固定フレーム227cには、案内用レール222の一方の端部が固定され、他方のレール固定フレーム227cには、案内用レール222の他方の端部が固定されている。
案内用レール222は、前処理槽固定レール13に対応する位置とロード側固定レール20に対応する位置の2箇所に配設されており、これらのレール13,20の側方においてこれらのレールにほぼ平行に延設されている。各案内用レール222は、その上面に沿って図略の複数のローラが配列されている。
ビーム221は、両方の案内用レール222に架け渡されて、各案内用レール222の前記複数のローラ上に載置された状態で搬送方向Rに沿って延びる四角柱形状の棒状部材である。このビーム221は、案内用レール222の前記複数のローラ上を、搬送方向R及びその反対方向に移動可能である。
ビーム221の内側(図8の右側)の側面には、ブラケット226の上端部が固定されている。ブラケット226の下端部は、後述する第4アーム225dの先端部に連結されている。
図4に示すように、ビーム221の上面には、一対の支持部材229が固定されている。各支持部材229には、複数のプッシャー支持部材228が所定の間隔をあけて搬送方向Rに沿って複数配列された状態で固定されている。前記所定の間隔は、後述する1ピッチ(戻り位置P1と送り位置P2との距離)に相当する。
図8に示すように、各プッシャー支持部材228は、支持部材229の側面から外側に延びている。各プッシャー支持部材228の外側の端部は、ロード側固定レール20の上方付近まで延びており、その搬送方向R側の側部にプッシャー223が固定されている。
各プッシャー223は、その上端部がプッシャー支持部材228に固定されており、搬送方向Rと下方との間の斜め方向に延び、下端部に当接部223aを有している。各プッシャー223の当接部223aは、搬送用ハンガー21の走行部本体113における突出部113aのプッシャー当接部113bに当接可能である。プッシャー当接部113bは、突出部113aにおける搬送方向Rの反対方向側の側面である(図5,図7)。
モータ224は、レール20の下方に配置されており、第1フレーム227aの上部に載置されてボルトなどによって第1フレーム227aに固定されている。このモータ224の図略の回動軸は、搬送方向Rに対してほぼ直交する略水平方向に向いている。
クランクアーム225は、第1アーム225a、第2アーム225b、第3アーム225c及び第4アーム225dを含む。第1アーム225aは、その基端部がモータ224の回動軸に連結されている。第2アーム225bは、その基端部が第1アーム225aの先端部に回動可能に連結されている。第3アーム225cは、その基端部が第1フレーム227aの上部に回動可能に連結されている。第4アーム225dは、その基端部が第3アーム225cの先端部に回動可能に連結されており、その先端部がブラケット226の下端部に回動可能に連結されている。
第2アーム225bの先端部は、第3アーム225cの前記基端部と前記先端部との間の部位に回動可能に連結されている。各アーム225a〜225dは、搬送方向Rを含む鉛直平面に略平行な方向にそれぞれ延びている。各アーム同士を連結する連結軸は、搬送方向Rにほぼ垂直な方向に向いている。
図7に示すロード側間欠搬送機構22において、ブラケット226を戻り位置P1から送り位置P2に移動させて、このブラケット226が固定されたビーム221を搬送方向Rに移動させるときの動作は、次の通りである。
モータ224が駆動してその回動軸が所定の角度だけ回動すると、それに伴って第1アーム225aが同じ方向に同じ角度だけ回動する。この動作に伴って第2アーム225bがモータ224側の方向に引き寄せされる。第2アーム225bが引き寄せされると、第3アーム225cがその基端部を中心に図7の実線で示した位置から二点鎖線で示した位置に回動するとともに、第4アーム225dが搬送方向R側に引き寄せられてブラケット226が送り位置P2に水平移動する。
このとき、ブラケット226が固定されたビーム221とともに複数のプッシャー223が搬送方向Rに1ピッチ(戻り位置P1から送り位置P2までの長さ)だけ水平移動する。各プッシャー223は、搬送方向Rに移動する際に、対応する搬送用ハンガー21を搬送方向Rにそれぞれ水平移動させる。
図7に示す退避位置P3は、ロード側昇降レール12の昇降時にプッシャー223が昇降レール12に接触しないように退避する位置である。
モータ224の回動角度は、図略の制御部により制御される。これにより、ビーム221を戻り位置P1、送り位置P2及び退避位置P3の3点のいずれかの位置において停止させることができる。本実施形態のロード側間欠搬送機構22では、モータ224が地面の近くに設置されているので、モータ224及びこれに接続されているクランクアーム225などの各部材のメンテナンスがしやすい。
図4に示すように、第1位置決め搬送機構24、取込搬送機構26及び第2位置決め搬送機構29は、1つ又は複数の爪33と、爪33が固定された板状部材32と、この板状部材32を搬送方向R及びその反対方向に移動させる搬送機構本体34とをそれぞれ有している。搬送機構本体34は、図略のモータにより移動する。各爪33は、板状部材32が搬送方向Rに移動する際には搬送用ハンガー21に係合して搬送用ハンガー21を搬送方向Rに引っ張る。一方、板状部材32が搬送方向Rの反対方向に移動する際には搬送用ハンガー21と係合せず、搬送用ハンガー21とは連動しない。
第1位置決め搬送機構24は、ロード側回動搬送機構23によりめっき槽5の上流側端部の位置(h)に搬送され、後述する昇降機構31によりめっき槽5内に下降した搬送用ハンガー21(図2〜4では図示されていない。)を、めっき槽固定レール15の位置(i)に移し替えるとともに、めっき槽5内における位置(j)の搬送用ハンガー21との間隔を所定値に調整する。
めっき槽側搬送機構25は、前述した通り、第1位置決め搬送機構24によりめっき槽固定レール15に移し替えられた搬送用ハンガー21を搬送方向Rに搬送する。
取込搬送機構26は、めっき槽5の下流側端部の上方に配設されている。この取込搬送機構26は、めっき槽側搬送機構25により位置(o)に搬送された搬送用ハンガー21を、下位置に配置されているアンロード側昇降レール16の位置(p)に移し替える。
図1及び図2は、昇降レールが上位置にあるときの状態を示している。図1及び図2に示すように、アンロード側間欠搬送機構27は、第1ビーム59a、第2ビーム59b、複数のプッシャー16、一対の第1案内レール80a、一対の第2案内レール80b、駆動棒67、揺動棒66、第1伝達棒68a、第2伝達棒68b、カム62、モータ58などを含む。
一対の第1案内レール80aは、A列の第1レール部のうちのレール19、レール20及びレール12の上方においてこれらのレールに沿ってそれぞれ延設されている。これらの第1案内レール80aは、第1ビーム59aを幅方向の両側から支持可能なように所定の間隔をあけて互いに略平行に並んでいる。各第1案内レール80aの上流側端部は、レール19の上流側端部の上方に位置している。各第1案内レール80aの下流側端部は、レール12の下流側端部の上方に位置している。各第1案内レール80aは、上部水平フレーム90に図略の支持部材を介して支持されている。
第1ビーム59aは、その幅方向の両サイドの部分が一対の第1案内レール80aにスライド可能に支持されている。この第1ビーム59aは、第1案内レール80aよりも長手方向の寸法が1ピッチ分程度短い。具体的には、図2に示す状態では、第1ビーム59aの上流側端部が位置(w)の近傍にあり、第1ビーム59aの下流側端部が位置(c)の近傍にある。
一対の第2案内レール80bは、アンロード側昇降レール16の上方においてこのレールに沿ってそれぞれ延設されている。これらの第2案内レール80bは、第1案内レール80aと同様の構造を有しており、第2ビーム59bを幅方向の両側から支持可能である。各第2案内レール80bの上流側端部は、レール16の上流側端部の上方に位置している。各第2案内レール80bの下流側端部は、可動レール部17の上方に位置している。各第2案内レール80bは、上部水平フレーム90に図略の支持部材を介して支持されている。
第2ビーム59bは、その幅方向の両サイドの部分が一対の第2案内レール80bにスライド可能に支持されている。この第2ビーム59bは、第2案内レール80bよりも長手方向の寸法が1ピッチ分程度短い。具体的には、図2に示す状態では、第2ビーム59bの上流側端部が位置(p)の近傍にあり、第2ビーム59bの下流側端部が位置(r)の近傍にある。
第1ビーム59aの下面には、複数のプッシャー16が1ピッチの間隔をあけて配列され、この下面に固定されている。同様に、第2ビーム59bの下面には、複数のプッシャー16が1ピッチの間隔をあけて配列され、この下面に固定されている。各プッシャー16は、図7に示すプッシャー223とほぼ同様の構造を有している。
第1ビーム59aの上方には、第1伝達棒68aが配置されており、この第1伝達棒68aの一端が軸607により、第1ビーム59aに対して回動可能に第1ビーム59aに固定されている。第2ビーム59bの上方には、第2伝達棒68bが配置されており、この第2伝達棒68bの一端が軸608により、第2ビーム59bに対して回動可能に第2ビーム59bに連結されている。
揺動棒66は、一端が第1ビーム59a側の位置に配置され、他端が第2ビーム59b側の位置に配置されている。揺動棒66は、前記一端が軸604により第1伝達棒68aの他端に回動可能に連結されており、前記他端が軸606により第2伝達棒68bの他端に回動可能に連結されている。
モータ58は、上部水平フレーム90の上面に載置されている。モータ58の図略の回動軸には、下方に延びる軸601が固定されている。この軸601の下方にはカム62が配設されており、このカム62の一端側の部位に固定されている。カム62の他端側には、駆動棒67の一端が軸602によりカム62に対して回動可能に連結されている。駆動棒67の他端は、揺動棒66の前記他端側の位置(軸605と軸606との間の位置)に軸603により揺動棒66に対して回動可能に連結されている。
モータ58が所定の角度だけ回動すると、それに伴って軸601に固定されたカム62が軸601を中心に前記所定の角度と同じ角度だけ回動する。例えば、図2に示す配置状態からカム62が矢印の方向(時計回り)に回動すると、駆動棒67がアンローダー8側に移動し、揺動棒66をアンローダー8側に押す。押された揺動棒66は、上部水平フレーム90に連結されている軸605を中心にして矢印の方向(反時計回り)に回動するので、それに伴って第1伝達棒68a及びこれに連結された第1ビーム59aが水洗槽4側に1ピッチの距離だけ移動し、第2伝達棒68b及びこれに連結された第2ビーム59bがアンローダー8側に1ピッチの距離だけ移動する。第1ビーム59a及び第2ビーム59bの1ピッチの移動により、第1ビーム59a及び第2ビーム59bに固定された各プッシャー16が対応する搬送用ハンガー21を1ピッチだけ搬送する。
(レールショック機構)
電気めっき装置100は、レールショック機構301を備えている。このレールショック機構301は、例えば位置(b)、位置(d)、位置(r)、位置(z)などに配設されており、レールにショックを与えることにより、水洗効果、前処理効果、水切り効果などを高めるためのものである。以下、位置(d)に設けられているレールショック機構301を例に挙げて説明する。他の位置に設けられるレールショック機構301については、同様の構造であるので、その説明を省略する。
図11(A),(B)に示すように、レールショック機構301は、ブラケット303と、シリンダ305と、ロッド304と、ショック付与レール312と、一対のレール部306と、一対のガイド部302とを備えている。
ブラケット303は、前述したフレーム81の下部に固定されている。シリンダ305は、軸方向が上下方向に向いた筒形状を有し、ブラケット303の外側の側面に固定されている。ロッド304は、シリンダ305の内部に配置され、図略のモータによってシリンダ305に対して上下方向に移動可能である。
図11(A),(B)に示すように、ショック付与レール312は、ロッド304の上端部に連結されている。ショック付与レール312は、搬送方向R及びその反対方向に隣接して配置されたレール13,13から独立した状態で、レール13とレール13をつなぐように配置されている。ショック付与レール312は、両サイドのレール13とほぼ同じ厚みを有し、これらのレール13と平面視で直列に並んでいる。ショック付与レール312の上面には、他のレールと同様に、搬送用ハンガー21の走行部本体113が載置される。
一対のレール部306は、上下方向に延び、シリンダ305よりも搬送方向R側の位置及びその反対側の位置に設けられており、ショック付与レール312の内側の側面にそれぞれ固定されている。各ガイド部302は、対応するレール部306に対して上下方向に移動可能に係合するとともに、フレーム81の外側の側面に固定されている。
図11(A)は、ショック付与レール312がロッド304によって上方に持ち上げられた状態を示している。前記制御部は、ロッド304が前記モータにより上方に持ち上げられ、その後、ロッド304が再び下方の定位置に戻るという制御を1回又は複数回繰り返す。これにより、ショック付与レール312が上下動して搬送用ハンガー21にショックを与えることができる。これにより、位置(b)において水洗槽2内の水に浸漬されたワークWにもショックが伝達されるので、ワークWに付着したゴミなどをワークWから落とし、水洗効果を高めることができる。
また、レールショック機構301が位置(d)、位置(r)及び位置(z)に配設されている場合には、次のような効果が得られる。すなわち、位置(d)においては、前処理槽3内の前処理液に浸漬されたワークW(例えばプリント基板)に設けられたスルーホール内の空気などを排出し、スルーホール内にも前処理液を行き渡らせる効果を高めることができる。また、位置(r)においては、ワークWに付着した水滴を落とし、その次のアンロード作業を円滑に行うことができる。さらに、位置(z)においては、搬送用ハンガー21に付着した水滴を落とし、その後のロード作業においてワークWに水滴が付着してワークWが汚染されるのを抑制することができる。
(剥離後水洗機構)
図12に示すように、めっき処理装置100は、保持部洗浄機構としての剥離後水洗機構401を備えている。この剥離後水洗機構401は、位置(x)に設けられており、水洗槽10内において搬送用ハンガー21のクランパー140の水洗効果を高めるためのものである。剥離後水洗機構401は、クランパー140を外側から押さえる外側押さえ機構(押圧機構)と、上側横桟131を内側から押さえる内側押さえ機構とを有している。
前記外側押さえ機構は、水洗槽10よりも外側の位置に配置されたフレーム410と、このフレーム410の上部に固定されたシリンダ402と、このシリンダ402内を上側横桟131側又はその反対側に移動可能なロッド403と、このロッド403が貫通する貫通孔を有し、フレーム410の上部に固定された支持部材404と、ロッド403の先端部に固定されたブラケット405と、このブラケット405の下端部に固定され、クランパー140の上部に水平方向に対向するクランパー開放板406とを有している。
内側押さえ機構は、水洗槽10よりも内側の位置に配置されたフレーム409と、このフレーム409の上部に固定されたシリンダ407と、このシリンダ407内を上側横桟131側又はその反対側に移動可能なロッド408と、このロッド408が貫通する貫通孔を有し、水洗槽10の上縁に固定された支持部材412と、ロッド408の先端部に固定され、上側横桟131の内側の側面に水平方向に対向するハンガー支持板411とを有している。
搬送用ハンガー21が昇降機構31によって下降し、搬送用ハンガー21のクランパー140の下端部が水中に浸漬されると、前記制御部は、図略のモータを駆動してロッド408を上側横桟131側に押し出してハンガー支持板411の先端部を上側横桟131の内側面に当接させるように制御する。その一方で、前記制御部は、図略のモータを駆動してロッド403を上側横桟131側に押し出し、クランパー140における外側のクランプレバー140aの上部を、クランパー開放板406によって押すように制御する。これにより、外側のクランプレバー140aは、支軸140bを中心に回動するので、一対のクランプレバー140aの下端部が開放される。このようにクランパー140の下端部が開放されることにより、その下端部のクランプ部分に付着している剥離液を洗浄する効果を高めることができる。なお、さらなる洗浄効果を得るために、水洗槽10内においてエアバブリングなどを併用したり、水の温度を高くしたりすることもできる。
(可動レール部及び回動搬送機構)
次に、可動レール部14,17の構造、及び回動搬送機構23による可動レール部14,17の動作について具体的に説明する。なお、水洗槽4側に位置する可動レール部14とアンローダー8側に位置する可動レール部17とは、同様の構成である。したがって、以下では、主に可動レール部17を例に挙げて説明し、可動レール部14の構成のうち可動レール部17と同様の構成についてはその説明を省略する。
図9(A),(B)に示すように、可動レール部17は、円弧軌道上に沿って並ぶ4つのレール217により構成されている。これらのレール217は、回動軸95から放射状に略水平方向に延設された4つのアーム99の各先端に固定された軌道基台105に、支持部材103aを介してそれぞれ支持されている。各レール217は、直線状の形状を有している。
各レール217は、B列の第2レール部における搬送方向Rの下流側の端部、すなわちレール16の下流側端部に隣接してレール16と直線状に並ぶ第1位置と、A列の第1レール部における搬送方向Rの上流側の端部、すなわちレール18の上流側端部に隣接してレール18と直線状に並ぶ第2位置とを取りうる。回動搬送機構23は、前記第1位置と前記第2位置との間で回動軸95回りの円弧軌道に沿って各レール217を移動させることができる。
同様に、水洗槽4側に位置する可動レール部14における各レール214は、A列の第1レール部における搬送方向Rの下流側の端部、すなわちレール13の下流側端部に隣接してレール13と直線状に並ぶ第1位置と、B列の第2レール部における搬送方向Rの上流側の端部、すなわちレール15の上流側端部に隣接してレール15と直線状に並ぶ第2位置とを取りうる。水洗槽4側に位置する回動搬送機構23は、前記第1位置と前記第2位置との間で回動軸95回りの円弧軌道に沿って各レール214を移動させることができる。
このように本実施形態の電気めっき装置100は、可動レール部14及び可動レール部17を回動軸95の軸回りにそれぞれ回動させる構成であるので、ガイドレールを構成する全てのレールを直線状としつつ、ガイドレールを環状に形成することができる。
各レール217は、厚み(横寸法)よりも高さ(縦寸法)の方が長い矩形状の断面を有しており、この厚み及び高さは、他のレールとほぼ同じ寸法である(図9(B))。また、各レール217は、水平方向の寸法が搬送用ハンガー21の走行部107よりも若干大きく設計されており、搬送用ハンガー21を安定して支持することができる(図9(A))。
また、各レール217の水平方向の両端部は、対応するアーム99の延設方向に対して傾斜した傾斜面17aを有している。各レール217の水平方向の寸法は、内側(回動軸95側)の方が外側よりも大きい。また、図9(A)の二点鎖線の丸で囲んだ部分Tの拡大図である図9(C)に示すように、レール217と直列に連なる位置にあるB列のレール16は、レール217の傾斜面17aと隣接する端部に、レール217の傾斜面17aと略平行な傾斜面16aを有している。同様に、レール217と直列に連なる位置にあるA列のレール18は、レール217の傾斜面17aと隣接する端部に、レール217の傾斜面17aと略平行な傾斜面18aを有している。
各レール217の端部がアーム99の延設方向に平行な端面を有している場合と比較して、回動軸95を中心としたレール217の回転時に、各レール217の端部がレール16の端部及びレール18の端部と接触するのを抑制できる。これにより、レール217の傾斜面17aと、これに隣接する傾斜面16a及び傾斜面18aとの距離を小さくできるので、搬送用ハンガー21がレール16からレール217へ乗り移り際、及びレール217からレール18へ乗り移る際の動作がより円滑になる。
本実施形態では、4つのレール217が周方向にほぼ等間隔に配置されているので、回動軸95が所定角度(90°)水平回転する毎に搬送用ハンガー21を1ピッチ分搬送することができる。具体的には、位置(s)においてレール217に吊り下げられた搬送用ハンガー21は、回動軸95が前記所定角度水平回転すると、位置(t)に搬送され、これと同時に、位置(t)においてレール217に吊り下げられた搬送用ハンガー21は、位置(u)に搬送される。
位置(s)にあるレール217は、レール16と直列に連続した状態から、上記の1ピッチ分の回転動作により、前記連続状態が解除されて、位置(t)に移動する。これと同時に、位置(t)よりも回転方向の上流側に位置した待機状態のレール217Tは、上記の1ピッチ分の回転動作により、位置(s)に移動してレール16と直列に連続した状態となる。さらに、これと同時に、位置(t)にあるレール217は、上記の1ピッチ分の回転動作により、位置(u)に移動してレール18と直列に連続した状態になる。このように、本実施形態では、1ピッチ分の水平回転動作により、前記連続状態及びその解除を同時に順次切り替えることができるので、搬送時間の短縮効果がある。
各搬送用ハンガー21は、図6(A),(B)においてめっき槽固定レール15に吊り下げられた状態を例に挙げて説明したのと同様に、各レール217に対して吊り下げられてそのレール217に支持される。
図9(A),(B)に示すように、回動搬送機構23は、ハンガー固定機構231を有している。このハンガー固定機構231は、レール217が搬送用ハンガー21を吊り下げた状態で回転動作する際に、搬送用ハンガー21をレール217に対して固定することにより、搬送用ハンガー21を安定して搬送するためのものである。
ハンガー固定機構231は、アーム99の側面に固定されたシリンダ232と、このシリンダ232からレール217に向かって略水平に延びるロッド234と、このロッド234の先端に固定された押さえ板233とを含む。
ロッド234は、例えば図略のモータの駆動によりシリンダ232に沿ってアーム99と略平行な水平方向に前後移動可能である。したがって、押さえ板233は、ロッド234の前後移動に伴って前後に移動する。押さえ板233の先端部は、平面視で略V字形状を有している。このV字の凹部の2つの内面は、押さえ板233が前進したときに、搬送用ハンガー21の一方の上側ガイド輪115にそれぞれ当接する。
したがって、搬送用ハンガー21がレール16からレール217に乗り移った後、押さえ板233を前進させてV字の凹部を上側ガイド輪115に当接させることにより、搬送用ハンガー21がハンガー固定機構231によりレール217に対して固定される。一方、搬送用ハンガー21をレール217からレール18に乗り移らせる際には、押さえ板233を後退させて搬送用ハンガー21の固定を解除する。
なお、本実施形態では、押さえ板233が上側ガイド輪115に当接する場合を例に挙げているが、これに限定されず、例えば押さえ板233がスプロケットギヤ114や突出部113などに当接するような固定構造であってもよい。
また、図9(A),(B)に示すように、回動搬送機構23は、センサ241を有している。このセンサ241は、可動レール部17を回転動作させる際に、各レール217を正確な位置に停止させて隣接する他のレールとの連続性を確保するためのものである。このセンサ241により、レール217とレール16との連続性及びレール217とレール18との連続性が確保され、搬送用ハンガー21を円滑に搬送することができる。
図10(A),(B)に示すように、センサ241は、減速センサ242と停止センサ243とを含む。減速センサ242及び停止センサ243は、フレーム93bの上面に、ブラケット245を介して固定されている。アーム99の下面にはドグ(検出部)244が固定されている。このドグ244の回動軸95からの距離(半径)は、減速センサ242及び停止センサ243の上端部の回動軸95からの距離(半径)とほぼ同じである。停止センサ243は、各レール217が予め決められた停止位置(図9(A)の位置)にあるときに、ドグ244と上下方向に対向する位置に配置されている。
減速センサ242は、停止センサ243よりも回転方向Rの少し上流側の位置に配置されている。したがって、回動軸95を所定角度(90°)水平回転させて搬送用ハンガー21を1ピッチ分搬送する際には、各レール217が次の前記停止位置に到達する少し前に、まず、ドグ244が減速センサ242の上方に到達する。このとき、減速センサ242は、ドグ244が上方に到達したことを検知し、この検知信号を受けた図略の前記制御部は、回動軸95の回転速度を予め定められた値まで減速するようにモータ98を制御する。
そして、回動軸95は、減速された速度でさらに回転方向Rに回転すると、ドグ244が停止センサ243の上方に到達する。このとき、停止センサ243は、ドグ244が上方に到達したことを検知し、この検知信号を受けた前記制御部は、回動軸95の回転を停止するようにモータ98を制御する。これにより、各レール217を所定の停止位置において正確に停止させることができる。
(動作)
次に、本実施形態の電気めっき装置100の動作について説明する。この電気めっき装置100では、次の動作(1)〜動作(7)が順次実行され、動作(7)が終了すると、再び動作(1)から順次実行されて動作(1)〜動作(7)が繰り返される。
(1)前記昇降レールが昇降機構31により下位置に配置される。
(2)位置(a)においてローダー1が搬送用ハンガー21にワークWを取り付けるとほぼ同時に、位置(t)においてアンローダー8が搬送用ハンガー21から表面処理済みのワークWを取り外す。
(3)昇降機構31が動作することにより、前記昇降レールが上位置まで上昇し、図1の状態に配置される。
(4)両方の回動搬送機構23が動作することにより、各可動レール部14,17が回動軸95を中心に90°水平回転する。これにより、位置(f),(g)の搬送用ハンガー21がそれぞれ位置(g),(h)に送られ、位置(s),(t)の搬送用ハンガー21がそれぞれ位置(t),(u)に送られる。
(5)アンロード側間欠搬送機構27が動作することにより、第1ビーム59aの下面に取り付けられた各プッシャー16が位置(w),(x),(a),(b)の搬送用ハンガー21を、位置(x),(y),(b),(c)に送るとともに、第2ビーム59bの下面に取り付けられた各プッシャー16が位置(p),(q),(r)の搬送用ハンガー21を、位置(q),(r),(s)に送る。
(6)昇降機構31が動作することにより、前記昇降レールが下位置まで下降する。
(7)ロード側間欠搬送機構22が動作することにより、この間欠搬送機構22が位置(y),(z),(c),(d),(e)の搬送用ハンガー21を、位置(z),(a),(d),(e),(f)に送る。この動作とほぼ同時に、第1位置決め搬送機構24が動作することにより、位置(h)の搬送用ハンガー21を位置(i)に送り、取込搬送機構26が動作することにより、位置(o)の搬送用ハンガー21を位置(p)に送り、第2位置決め搬送機構29が動作することにより、位置(u),(v)の搬送用ハンガー21を位置(v),(w)に送る。また、搬送用ハンガー21は、位置(i)から位置(o)まで、めっき槽側搬送機構25のチェーンベルト39により一定速度で送られる。
以上説明したように、第1実施形態の電気めっき装置100では、可動レール部14,17自体が円弧軌道に沿って回転移動することにより、搬送用ハンガー21を、A列の第1レール部の下流側の端部からB列の第2レール部の上流側の端部に移動させることができる。これにより、従来のように円弧状のレールに沿って搬送用ハンガーが走行する際の摩擦が生じるのが抑制されるので、搬送用ハンガーの移動時の円滑性を向上させることができる。
例えば図15に比較例として示すように、直線状のレールと円弧状のレールとが混在する電気めっき装置では、搬送用ハンガー21が円弧状のレール701に沿って移動する際に、レール701が円弧状であるために走行部本体113とレール701とが点Mにおいて接触しやすくなる。したがって、走行部本体113とレール701との間での摩擦が大きくなり、搬送用ハンガーの移動時の円滑性が低下することがある。
また、図15に示すような点Mにおける接触により、走行部本体113及びレール701の摩耗による粉塵が生じることがある。このような粉塵が処理槽内の処理液に混入することは好ましくない。また、上記のように接触した状態で搬送用ハンガー21がレール701を何度も通過することにより、搬送用ハンガー21の上側ガイド輪115と下側ガイド輪116とが互いに離れる方向に傾くことがある。このような傾きが生じると、搬送用ハンガー21が直線状のレールを通過する際にぐらつきが生じやすくなり、ワークWに振動を与えることにつながるので、そのような傾斜が生じる前に搬送用ハンガー21の修理又は交換が必要となり、コストアップの原因となる。
これに対し、第1実施形態では、回動搬送機構23が可動レール部14,17の各レールを前記第1位置と前記第2位置との間で円弧軌道に沿って移動させることができる。したがって、搬送用ハンガー21は、第1レール部の下流側端部から第2レール部の上流側端部に移動するまでの間、直線状のレール(すなわち、A列の第1レール部、可動レール部14及びB列の第2レール部)に沿って移動することができる。同様に、搬送用ハンガー21は、第2レール部の下流側端部から第1レール部の上流側端部に移動するまでの間、直線状のレール(すなわち、B列の第2レール部、可動レール部17及びA列の第1レール部)に沿って移動することができる。これにより、比較例の電気めっき装置において円弧状のレールに沿って搬送用ハンガーが走行するときのような摩擦が生じるのを抑制できるので、搬送用ハンガーの移動時の円滑性を向上させることができ、摩耗による粉塵が生じるのを抑制でき、しかも走行時のぐらつきも抑制できる。
また、第1実施形態では、可動レール部14,17の回転移動時にハンガー固定機構により搬送用ハンガー21をレール214,217に対して固定することにより、回転移動時に搬送用ハンガー21を安定して移動させることができる。また、回転移動後には、搬送用ハンガー21をレール214,217から隣接するレールに移動させるために前記固定を解除することができる。
また、第1実施形態では、停止センサを備えているので、可動レール部14,17を構成する各レールを所定の停止位置に停止させる位置精度を向上させることができる。
また、第1実施形態では、前記停止位置において可動レール部14,17を停止させる前に、レール214,217が前記停止位置に到達する手前の位置においてレール214,217を減速センサにより検知して、レール214,217が前記停止位置に到達する前にレール214,217の移動速度を減速することができる。これにより、レール214,217を前記停止位置において停止させる位置精度をさらに向上させることができる。
また、第1実施形態では、間欠搬送機構22を備えているので、搬送用ハンガー21をレールに沿って1ピッチ毎に正確に移動させることができる。また、この間欠搬送機構22では、モータ224が地面の近くに設置されているので、モータ224及びこれに接続されているクランクアーム225などの各部材のメンテナンスがしやすい。
また、第1実施形態では、レールに対して、ショックを付与するためのレールショック機構を備えているので、水洗処理や水切り処理の処理効果を高めることができる。
また、第1実施形態では、搬送用ハンガー21に設けられたクランパーを洗浄するための剥離後水洗機構401を備えているので、その外側押さえ機構によってクランパーを開状態にすることができる。これにより、閉状態のままでクランパーを洗浄する場合と比較してクランパーを洗浄する効果を高めることができる。
<第2実施形態>
図13は、本発明の第2実施形態に係る表面処理装置の可動レール部及びその周辺の構造を示す平面図である。この第2実施形態の電気めっき装置100では、可動レール部14が昇降レールではなく、固定レールである点が第1実施形態と異なっている。他の構成については第1実施形態と同様であるので、同じ符号を付してその説明を省略する。
この第2実施形態では、回動軸95が地面に固定されている。また、前処理槽固定レール13と可動レール部14との間に、昇降レール513が配設され、めっき槽固定レール15と可動レール部14との間に、昇降レール515が配設されている。昇降レール513は、延設部781に固定されたフレーム501に支持されている。昇降レール515は、延設部784に固定されたフレーム502に支持されている。これらの昇降レール513,515は、昇降機構31により昇降する。
この第2実施形態の電気めっき装置100では、可動レール部14の周辺の動作としては、次の動作(1)〜動作(5)が順次実行され、動作(5)が終了すると、再び動作(1)から順次実行されて動作(1)〜動作(5)が繰り返される。
(1)図略の間欠搬送機構が位置(a)の搬送用ハンガー21を位置(b)に送り、位置(c)の搬送用ハンガー21を位置(d)に送る。また、図略の第1位置決め搬送機構が位置(f)の搬送用ハンガー21を位置(g)に送り、図略の第2位置決め搬送機構が位置(i)の搬送用ハンガー21を位置(j)に送る。
(2)回動搬送機構23により可動レール部14の各レール214が90°水平回転する。
(3)昇降レールが昇降機構31により上位置に上昇する。
(4)図略のビームの固定されたプッシャーが位置(b)の搬送用ハンガー21を位置(c)に送り、位置(g),(h)の搬送用ハンガー21を位置(h),(i)にそれぞれ送る。
(5)昇降レールが昇降機構31により下位置に下降する。
<参考例>
図14は、参考例に係る表面処理装置の可動レール部及びその周辺の構造を示す平面図である。この参考例の電気めっき装置100では、可動レール部14が1つのレール214により構成され、このレール214が回動軸95を中心に円弧軌道を往復することにより搬送用ハンガー21が搬送される点が第1実施形態と異なっている。他の構成については第1実施形態と同様であるので、同じ符号を付してその説明を省略する。
図14に示すように、参考例では、回動軸95にアーム99を介して固定されているレール214が1つのみである。この電気めっき装置100では、レール214に係合した搬送用ハンガー21は、レール214が回動軸95を中心に180°水平回転することにより、後工程のレール15に搬送される。すなわち、この参考例では、レール214は、A列の第1レール部の搬送方向Rの下流側端部、すなわちレール13の下流側端部に隣接してレール13と直線状に並ぶ第1位置と、B列の第2レール部の搬送方向Rの上流側端部、すなわちレール15の上流側端部に隣接してレール15と直線状に並ぶ第2位置との間を回動軸95回りの円弧軌道に沿って往復動作する。
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態に係る表面処理装置について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
例えば、前記実施形態では、表面処理装置が電気めっき装置である場合を例に挙げて説明したが、本発明の表面処理装置は、電気めっき用途の他、例えば無電解めっき、溶融めっき、コーティング(例えば樹脂コーティング)、電着塗装、デスミア処理、陽極酸化、電解研磨、脱脂、酸洗等の種々の表面処理の用途にも適用できる。
また、前記実施形態では、アーム99を介して回動軸95に支持された4つのレールにより可動レール部14が構成されている場合、及びアーム99を介して回動軸95に支持された1つのレール214により可動レール部14が構成されている場合を例に挙げて説明したが、可動レール部を構成するレールの数は、前記実施形態に限定されず、例えば2つ、4つ、6つ、8つなどの種々の個数を選択できる。
また、前記実施形態では、互いに平行に配置された第1レール部及び第2レール部と、これらをつなぐ一対の可動レール部14,17とを備えている場合、すなわち、2箇所において搬送用ハンガー21を円弧軌道に沿って回動搬送する場合を例示したが、どちらか一方の箇所のみにおいて搬送用ハンガー21を回動搬送し、他方の箇所では回動以外の搬送機構により搬送用ハンガー21を搬送する形態であってもよい。
また、前記実施形態では、第1レール部と第2レール部とが平行に配置されている場合を例示したが、第1レール部と第2レール部とは必ずしも平行に配置されていなくてもよい。