JP5560507B2 - 塗装用吹付処理装置 - Google Patents

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本発明は、自動車ボディなどの被塗物に対して種々の処理液や洗浄水あるいは水切り用や乾燥用の空気などを吹き付ける塗装用の吹付処理装置に関し、詳しくは、被塗物を保持する搬送機を搬送機移動手段により移動させることで被塗物を吹付処理域において域内進行させ、この域内進行において前記吹付処理域で噴出手段による噴出流体を被塗物に吹き付ける塗装用吹付処理装置に関する。
従来、この種の塗装用吹付処理装置では、例えば、被塗物を載置する台車(搬送機)をコンベアにより移動させることで被塗物を吹付処理域において域内進行させ、この域内進行に伴いノズル等の噴出手段による噴出流体(水切り用の空気など)を被塗物に吹き付けるようにしていた(特許文献1参照、特に段落0010及び図2,図3)。
特開平6−228794号公報
しかし、上記の如き従来の吹付処理装置では、吹付処理域における被塗物の域内進行に伴い、被塗物の形状(特に噴出手段に対向する側の形状)により、噴出手段とその噴出手段による噴出流体が吹き付けられる被塗物上の被吹付部との距離(吹付距離)が逐次変化するとともに、噴出手段からの流体噴出向きに対する被吹付部の向き(吹付向き)も逐次変化する。
また、多品種少量生産などのために種類の異なる被塗物を混在させた状態で、それら被塗物を順次に吹付処理域で処理する場合には、被塗物の種類による被塗物形状の異なりにより、それら吹付距離や吹付向きの変化の形態もさらに異なるものになる。
そして、このように吹付距離や吹付向きが種々変化するために、被塗物の各部に対する吹き付け処理の処理効果が不均一になり、それが原因で処理ムラが生じ易いなど処理品質(ひいては最終的な塗装品質)が低く制限される問題があった。
また逆に、被塗物上でも特に十分な吹き付け処理が要求される特定部分がある場合など、その特定部分に対する吹き付け処理の処理効果が吹付距離の変化や吹付向きの変化のために不十分になり、そのことで処理品質(塗装品質)の低下を招く問題もあった。
一方、これらの問題を解消するのに、例えば噴出手段をロボットの可動アームに保持させるなどして、噴出手段を移動動作させることで被塗物の形状や被塗物の進行移動に応じて吹付距離や吹付向きを調整することも考えられるが、この種の塗装用吹付処理装置ではノズル等の噴出手段を列状や行列状などの配置で吹付処理域に多数配備することが多いため、これら列状配置や行列状配置の多数の噴出手段を一体的に移動動作させるにしても、その移動機構が大型で複雑なものになり、このため、装置コストの大幅な増大や装置の大型化を招く問題が生じる。
また、一般に自動車ボディなどの塗装設備では塗装ライン中における各種目的の多くの処理部で、この種の吹付処理装置が使用されるため、これら多くの処理部に装備する吹付処理装置の夫々において上記の如く列状配置や行列状配置の多数の噴出手段を移動動作させる構成を採用した場合、塗装設備全体として設備コストの大幅な増大や設備の大型化を招いてしまう。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、被塗物に対する合理的な搬送形態及び処理形態を採ることで、上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
本発明の第1特徴構成は塗装用吹付処理装置に係り、その特徴は、
吊下機構を介して被塗物を吊り下げ保持する搬送機を搬送機移動手段により移動させることで被塗物を吹付処理域において域内進行させ、この域内進行において前記吹付処理域で噴出手段による噴出流体を被塗物に吹き付ける塗装用吹付処理装置であって、
前記搬送機が保持する被塗物をその搬送機に対して移動動作させる被塗物動作手段を前記搬送機に装備し、
前記被塗物動作手段を制御して被塗物を前記搬送機に対し移動動作させることにより、前記吹付処理域での被塗物に対する噴出流体の吹き付けにおいて、前記噴出手段とその噴出手段による噴出流体が吹き付けられる被塗物上の被吹付部との距離である吹付距離を調整する吹付制御手段を設け、
この吹付制御手段は、前記吹付処理域での被塗物の域内進行に対する前記噴出手段の相対移動で被塗物上において移動する前記被吹付部に前記噴出手段による噴出流体を吹き付けている状態において前記噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である特定の前記被吹付部に吹き付けられるとき、前記吹付距離の調整として、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで前記特定被吹付部を前記噴出手段に近付ける構成にしてある点にある。
つまり、この第1特徴構成では、吊下機構を介して搬送機に吊り下げ保持した被塗物を搬送機の移動により吹付処理域で域内進行させることにおいて、搬送機に装備した被塗物動作手段により被塗物を搬送機に対し移動動作させて、相対的に噴出手段を被塗物に対し移動動作させることで、噴出手段と被塗物上の被吹付部との距離である吹付距離を調整する。
従って、被塗物の域内進行において、この被塗物側の移動動作により、被塗物の形状に応じてあるいはまた被塗物の進行移動に応じて上記吹付距離を調整することで、被塗物の形状や被塗物種別による被塗物形状の異なりにかかわらず、また、被塗物の進行移動にかかわらず、被塗物の各部に対する吹き付け処理の処理効果を均一にする、あるいはまた、被塗物上でも特に十分な吹き付け処理が要求される特定部分がある場合、その特定部分に対する吹き付け処理の処理効果を高めるなどのことができ、これにより、吹き付け処理における被塗物の処理品質(ひいては最終の塗装品質)を効果的に高めることができ、また、そのことで処理能率も高めることができる。
そしてまた、被塗物の方を移動動作させることで吹付距離を調整するから、噴出手段の方を移動動作させる場合に生じる先述の如き装置コストや設備コストの大幅な増大及び装置や設備全体の大型化も回避することができる。
また特に、搬送機に装備する被塗物動作手段を塗装設備の塗装ライン中における各種目的の浸漬式処理部において被塗物を処理槽内の処理液中に浸漬させる手段としても兼用するようにすれば、搬送機に装備する被塗物動作手段のコストパフォーマンスを高めて設備コスト面で一層有利にすることができる。
しかも、上記第1特徴構成において、吹付制御手段は、前記吹付処理域での被塗物の域内進行に対する前記噴出手段の相対移動で被塗物上において移動する前記被吹付部に前記噴出手段による噴出流体を吹き付けている状態において前記噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である特定の前記被吹付部に吹き付けられるとき、前記吹付距離の調整として、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで前記特定被吹付部を前記噴出手段に近付ける構成にしてあるから、次の作用効果も得ることができる。
つまり、この構成では、被塗物上の固定部位である特定の被吹付部(例えば、特に十分な処理が要求される前述の特定部分など)が被塗物の域内進行において噴出手段に近付いたとき、その特定被吹付部に対する噴出流体の吹き付け処理を行なう。
そして、この吹き付け処理において、搬送機に装備の被塗物動作手段により吊下機構を介して吊り下げ保持する被塗物を搬送機に対し移動動作させることで、上記の如く吹付距離の調整として被塗物上の特定被吹付部を噴出手段に近付けるから、被塗物の形状や被塗物種別による被塗物形状の異なりにかかわらず、被塗物上の特定被吹付部に対して噴出手段による噴出流体を減衰が進む前の高速度状態でかつ拡散が進む前の集中状態で吹き付けることができ、これにより、特定被吹付部に対する吹き付け処理の処理効果を確実かつ効果的に高めて、吹き付け処理における被塗物の処理品質を高めることができる。
なお、特定被吹付部は1つの被塗物において1箇所に限られるものではなく1つの被塗物において2箇所以上の複数箇所であってもよい。
この構成に実施において、被塗物上の特定被吹付部を噴出手段に対して常に一定距離まで、あるいは特定被吹付部に応じた設定距離まで近付けるようにすれば、特定被吹付部に対する吹き付け処理の処理効果を一層確実に高めることができる。
上記第1特徴構成の実施において、搬送機に装備する被塗物動作手段は、どのような形式及び構造のものであってもよく、被塗物動作手段は、搬送機に対する被塗物の移動動作により吹付距離又は吹付向きを調整することにおいて、被塗物を搬送機に対し、どのような動作形態(例えば、昇降や傾動あるいはまた横移動や回動等)で移動動作させるものであってもよい。
また、被塗物動作手段及び吹付制御手段は、吹付距離と吹付向きとの両方の調整を行なうものであってもよく、さらに、吹付距離と吹付向きとの両方の調整を行なう場合、それら吹付距離の調整と吹付向きの調整とを独立的にかつ同時的に行なえるものにするのが望ましい。
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記吹付制御手段は、前記吹付処理域での被塗物の域内進行による前記特定被吹付部の移動に対し、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで、前記特定被吹付部を前記噴出手段に近付けた状態を保つ構成にしてある点にある。
つまり、この第2特徴構成により、いわゆる追いかけ動作として、特定被吹付部を噴出手段に近付けた状態を被塗物の進行移動による特定被吹付部の移動に対し暫く保つように被塗物動作手段により被塗物を移動動作させることで、特定被吹付部に対する吹き付け処理の処理効果をさらに高めることができる。
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記吹付制御手段は、前記吹付距離の調整として、前記噴出手段による噴出流体が前記特定被吹付部に吹き付けられるときを除いては、前記吹付処理域での被塗物の域内進行に対する前記噴出手段の相対移動で被塗物上において移動する前記被吹付部と前記噴出手段との距離を一定距離に保つ構成にしてある点にある。
つまり、この第3特徴構成では、被塗物の域内進行に伴い噴出手段が噴出流体の吹き付け先である被塗物上の被吹付部とともに被塗物進行方向とは逆方向に相対移動すること(略言すれば、被塗物の進行移動による吹付箇所のズレ移動)を利用して、被塗物の各部に対し順次的に吹き付け処理を施す。
そして、この吹き付け処理において、搬送機に装備の被塗物動作手段により被塗物を搬送機に対し移動動作させることで、上記の如く吹付距離の調整として被塗物上の被吹付部と噴出手段との距離を一定距離に保つから、被塗物の形状や被塗物種別による被塗物形状の異なりにかかわらず、被塗物の各部(ここでは、被塗物上を被塗物進行方向とは逆方向に相対移動する各時点の被吹付部)に対して、噴出手段による噴出流体を一定の速度状態及び一定の拡散状態で吹き付けることができ、これにより、被塗物の各部に対する吹き付け処理の処理効果を均一化して、吹き付け処理における被塗物の処理品質を高めることができる。
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記吹付制御手段は、前記被塗物動作手段を制御して被塗物を前記搬送機に対し移動動作させることにより、前記吹付処理域での被塗物に対する噴出流体の吹き付けにおいて、
前記吹付距離の調整とともに、前記噴出手段からの流体噴出向きに対する前記被吹付部の向きである吹付向きを調整し、
前記吹付処理域での被塗物の域内進行において前記噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である前記特定被吹付部に吹き付けられるとき、前記吹付向きの調整として、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで前記特定被吹付部を前記噴出手段からの流体噴出向きに対し設定姿勢にする構成にしてある点にある。
まり、この第4特徴構成では、搬送機に保持した被塗物を搬送機の移動により吹付処理域で域内進行させることにおいて、搬送機に装備した被塗物動作手段により被塗物を搬送機に対し移動動作させて、相対的に噴出手段を被塗物に対し移動動作させることで、噴出手段からの噴出向きに対する被吹付部の向きである吹付向き調整する。
従って、被塗物の域内進行において、この被塗物側の移動動作により、被塗物の形状に応じてあるいはまた被塗物の進行移動に応じて上記吹付向きを調整することで、被塗物の形状や被塗物種別による被塗物形状の異なりにかかわらず、また、被塗物の進行移動にかかわらず、被塗物の各部に対する吹き付け処理の処理効果を均一にする、あるいはまた、被塗物上でも特に十分な吹き付け処理が要求される特定部分がある場合、その特定部分に対する吹き付け処理の処理効果を高めるなどのことができ、これにより、吹き付け処理における被塗物の処理品質(ひいては最終の塗装品質)を効果的に高めることができ、また、そのことで処理能率も高めることができる。
そしてまた、被塗物の方を移動動作させることで吹付向きを調整するから、噴出手段の方を移動動作させる場合に生じる先述の如き装置コストや設備コストの大幅な増大及び装置や設備全体の大型化も回避することができる。
しかも、上記第4特徴構成において、吹付制御手段は、前記吹付処理域での被塗物の域内進行において前記噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である前記特定被吹付部に吹き付けられるとき、前記吹付向きの調整として、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで前記特定被吹付部を前記噴出手段からの流体噴出向きに対し設定姿勢にする構成にしてあるから、次の作用効果も得ることができる。
つまり、この構成では、第1特徴構成と同様、被塗物上の固定部位である特定の被吹付部(例えば、特に十分な処理が要求される前述の特定部分など)が被塗物の域内進行において噴出手段に近付いたとき、その特定被吹付部に対する噴出流体の吹き付け処理を行なう。
そして、この吹き付け処理において、搬送機に装備の被塗物動作手段により被塗物を搬送機に対し移動動作させることで、上記の如く吹付向きの調整として被塗物上の特定吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対し設定姿勢(例えば、垂直姿勢や一定の斜交姿勢など)にするから、被塗物の形状や被塗物種別による被塗物形状の異なりにかかわらず、噴出手段による噴出流体を被塗物上の特定被吹付部に対して適切な角度状態で吹き付けることができ、これにより、特定被吹付部に対する吹き付け処理の処理効果を確実かつ効果的に高めて、吹き付け処理における被塗物の処理品質を高めることができる。
なお、特定被吹付部は前述と同様、1つの被塗物において1箇所に限られるものではなく1つの被塗物において2箇所以上の複数箇所であってもよい。
この第4特徴構成の実施において、上記設定姿勢(換言すれば、設定吹付向き)は、特
定被吹付部に対する吹き付け処理の処理効果を高くし得る姿勢であれば、どのような姿勢であってもよいが、その設定姿勢として特定被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対して垂直姿勢にするようにすれば、前述の如く噴出流体が保有する運動エネルギを特定被吹付部に対して最も効果的に作用させることができる。
また、特定被吹付部に付着した異物を噴出流体の吹き付けにより剥離させて除去する場合などでは、設定姿勢(設定吹付向き)として特定被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対して一定の斜交姿勢にし、そのことで異物剥離を促進して処理効果を高めるようにしてもよい。
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記吹付制御手段は、前記吹付処理域での被塗物の域内進行による前記特定被吹付部の移動に対し、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで、前記特定被吹付部を前記噴出手段からの流体噴出向きに対し前記設定姿勢にした状態を保つ構成にしてある点にある。
つまり、この第5特徴構成により、いわゆる追いかけ動作として、特定被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対して設定姿勢にした状態を被塗物の進行移動による特定被吹付部の移動に対し暫く保つように被塗物動作手段により被塗物を移動動作させることで、特定被吹付部に対する吹き付け処理の処理効果をさらに高めることができる。
なお、第5特徴構成の実施において、前記吹付制御手段は、前記特定被吹付部を前記設定姿勢にする吹付向きの調整として、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで、前記特定被吹付部を前記噴出手段からの流体噴出向きに対し所定の変化パターンで姿勢変化させる構成にしてもよい
これにより、前記設定姿勢(設定向き)として特定被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対して所定の変化パターンで姿勢変化させることで、処理効果を高めることができる。
本発明の第特徴構成は、第4又は第5特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
記吹付制御手段は、前記噴出手段による噴出流体が前記特定被吹付部に吹き付けられるときを除いては、前記吹付向きの調整として、前記吹付処理域での被塗物の域内進行に対する前記噴出手段の相対移動で被塗物上において移動する前記被吹付部を前記噴出手段からの流体噴出向きに対し垂直姿勢又は一定の斜交姿勢に保つ構成にしてある点にある。
つまり、この第特徴構成では、第3特徴構成と同様、被塗物の域内進行に伴い噴出手段が噴出流体の吹き付け先である被塗物上の被吹付部とともに被塗物進行方向とは逆方向に相対移動することを利用して、被塗物の各部に対し順次的に吹き付け処理を施す。
そして、この吹き付け処理において、搬送機に装備の被塗物動作手段により被塗物を搬送機に対し移動動作させることで、上記の如く吹付向きの調整として被塗物上の被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対し垂直姿勢又は一定の斜交姿勢に保つから、被塗物の形状や被塗物種別による被塗物形状の異なりにかかわらず、被塗物の各部(ここでは、被塗物上を被塗物進行方向とは逆方向に相対移動する各時点の被吹付部)に対して、噴出手段による噴出流体を一定の角度状態で吹き付けることができ、これにより、被塗物の各部
に対する吹き付け処理の処理効果を均一化して、吹き付け処理における被塗物の処理品質を高めることができる。
なお、この構成の実施において、被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対して垂直姿勢に保つようにすれば、噴出流体が保有する運動エネルギを被吹付部に対して最も効果的に作用させることができ、その点で、被塗物各部に対する吹き付け処理の処理効果を高めるのに有利である。
また、被塗物に付着した異物を噴出流体の吹き付けにより剥離させて除去する場合などでは、被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対して一定の斜交姿勢に保つことで、異物剥離を促進して処理効果を高めるようにしてもよい。
本発明の第特徴構成は、第1〜第特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記吹付制御手段は、前記吹付処理域での被塗物の域内進行において前記噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である特定の前記被吹付部に吹き付けられるとき、
前記吹付距離の調整として、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで前記特定被吹付部を前記噴出手段に近付けるとともに、
前記搬送機移動手段を制御して前記搬送機を一時停止状態又は一時徐行状態又は一時的な前後進切り換え反復状態にすることで、前記噴出手段による噴出流体が前記特定被吹付部に対して被塗物上の他部よりも時間的に長く吹き付けられる状態にする構成にしてある点にある。
つまり、この第特徴構成では、基本的には前述の如く、吹付処理域での被塗物の域内進行において噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である特定被吹付部に吹き付けられるとき、前記吹付距離の調整として、特定被吹付部を前記噴出手段に近付ける。
そしてまた、これに加えて、噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である特定被吹付部に吹き付けられるとき、上記の如く搬送機移動手段を制御して搬送機を一時停止状態や一時徐行状態あるいは一時的な前後進切り換え反復状態にすることで、噴出手段による噴出流体が特定被吹付部に対して被塗物上の他部よりも時間的に長く吹き付けられる状態にする。
即ち、このことにより、特定被吹付部に対する吹き付け処理の処理効果を高めることができ、その点で吹き付け処理における被塗物の処理品質を一層高めることができる。
なお、上記した第3又は第特徴構成の実施では、被塗物の域内進行に対する噴出手段の相対移動で被塗物上において移動する被吹付部について、被吹付部と噴出手段との距離を一定距離に保つ、又は、被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対し垂直姿勢又は一定の斜交姿勢に保つ吹き付け処理の実行途中で、噴出手段による噴出流体が特定被吹付部に吹き付けられるとき、特定被吹付部を噴出手段に近付ける処理を吹付制御手段に実行させるようにすればよい。
そしてまた、上記した第3特徴構成と第特徴構成との併行実施として、吹付制御手段を、前記吹付距離の調整及び前記吹付向きと調整として、吹付処理域での被塗物の域内進行に対する噴出手段の相対移動で被塗物上において移動する被吹付部について、被吹付部と噴出手段との距離を一定距離に保ち、かつ、被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対し垂直姿勢又は一定の斜交姿勢に保つ構成にすれば、吹き付け処理の処理効果を一層効果的に高めることができる。
上記した第4特徴構成の実施では、吹付処理域での被塗物の域内進行において噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である特定被吹付部に吹き付けられるとき、吹付距離の調整及び吹付向きの調整として、吹付制御手段が特定被吹付部を噴出手段に近付け、かつ、その特定被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対し設定姿勢にするから、特定被吹付部に対する吹き付け処理の処理効果を一層効果的に高めることができる。
また、上記した第3又は第特徴構成と第4特徴構成との併行実施としては、被塗物の域内進行に対する噴出手段の相対移動で被塗物上において移動する被吹付部について、被吹付部と噴出手段との距離を一定距離に保つ、又は、被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対し垂直姿勢又は一定の斜交姿勢に保つ吹き付け処理の実行途中で、噴出手段による噴出流体が特定被吹付部に吹き付けられるとき、特定被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対し設定姿勢にする処理を吹付制御手段に実行させるようにしてもよい。
一方、第3又は第特徴構成と第特徴構成との併行実施としては、前述と同様、被塗物の域内進行に対する噴出手段の相対移動で被塗物上において移動する被吹付部について、被吹付部と噴出手段との距離を一定距離に保つ、又は、被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対し垂直姿勢又は一定の斜交姿勢に保つ吹き付け処理の実行途中で、噴出手段による噴出流体が特定被吹付部に吹き付けられるとき、搬送機移動手段を制御して搬送機を一時停止状態又は一時徐行状態又は一時的な前後進切り換え反復状態にすることで、噴出手段による噴出流体が特定被吹付部に対し被塗物上の他部よりも時間的に長く吹き付けられる状態にする上記吹き付け処理を吹付制御手段に実行させるようにしてもよい。
また、第1特徴構成又は第4特徴構成と第特徴構成との併行実施としては、吹付制御手段を、吹付処理域での被塗物の域内進行において噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である特定の被吹付部に吹き付けられるとき、吹付距離の調整として特定被吹付部を噴出手段に近付ける、又は、これに加え吹付向きの調整として特定被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対し設定姿勢にし、かつ、これら近付け状態や設定姿勢状態において搬送機移動手段を制御して搬送機を一時停止状態又は一時徐行状態又は一時的な前後進切り換え反復状態にすることで、噴出手段による噴出流体が特定被吹付部に対して被塗物上の他部よりも時間的に長く吹き付けられる状態する構成にすればよい。
そしてまた、このように搬送機移動手段を制御することで噴出手段による噴出流体が特定被吹付部に対して被塗物上の他部よりも時間的に長く吹き付けられる状態することと、前述の如き追いかけ動作として、特定被吹付部を噴出手段に近付けた状態や特定被吹付部を噴出手段からの流体噴出向きに対して設定姿勢にした状態を、被塗物の進行移動による特定被吹付部の移動に対し暫く保つように被塗物動作手段により被塗物を移動動作させることとを組み合わせて吹付制御手段に実行させるようにしてもよい。
搬送機移動手段については、自走速度の調整が可能な自走手段を搬送機移動手段として被塗物動作手段とともに各搬送機に装備する方式、あるいは、搬送機送り速度の調整が可能な搬送機送り出し手段を搬送機移動手段として搬送機の移動経路に沿って並置する方式など、種々の方式や構造の搬送機移動手段を採用することができる。
なお、本発明の実施において、列状や行列状あるいは群状に配置したノズル群などをもって被塗物に対する流体吹き付けを行なう場合(即ち、実質的にそのようなノズル群の全体を噴出手段とする場合)、前記吹付距離は、ノズル群全体と被塗物との間の平均的な距離、あるいは、ノズル群における特定箇所と被塗物との間の距離としてもよい。
また、前記吹付向きは、ノズル群全体としての平均的な流体噴出向きに対する被塗物の向き(姿勢)としてもよい。
本発明の実施において、前記の一定距離あるいは垂直姿勢や一定の斜交姿勢とは、必ずしも3次元空間での厳密な意味での一定距離、垂直姿勢、一定斜交姿勢に限られるものではなく、例えば噴出手段が被塗物の上方や下方に位置する場合では、側面視や正面視のいずれかに限った一定距離、垂直姿勢、一定斜交姿勢であってもよく、また、噴出手段が被塗物の側方に位置する場合では平面視や正面視のいずれかに限った一定距離、垂直姿勢、一定斜交姿勢であってもよい。
塗装システム(特に前処理工程部)の全体構成図 塗装システム(特に塗装工程部)の全体構成図 搬送機の正面部 搬送機の斜視図 搬送機の拡大正面図 搬送機の要部の拡大側面図 浸漬式処理部での処理形態を示す側面図 集中吹付式処理部での処理形態を示す側面図 同じく集中吹付式処理部での処理形態を示す側面図 他の吹付式処理部での処理形態を示す側面図
図1及び図2は自動車ボディの電着塗装設備に係る塗装システムを示し、この電着塗装設備では、前処理工程部における複数の処理部として、湯洗部1、予備脱脂部2、脱脂処理部3、第1脱脂水洗部4、第2脱脂水洗部5、表面調整部6、化成処理部7、第1化成水洗部8、第2化成水洗部9、前処理純水水洗部10を、その順に被塗物である自動車ボディWの搬送方向に並べて装備してある。
また、この前処理工程部に続く塗装工程部における複数の処理部として、電着処理部11、第1UF水洗部12、第2UF水洗部13、第3UF水洗部14、第1RO水洗部15、第2RO水洗部16、電着純水水洗部17、エアブロー部18を、その順に自動車ボディW(以下、ボディと略称することがある)の搬送方向に並べて装備してある。
各処理部のうち、前処理工程部における脱脂処理部3と化成処理部7並びに塗装工程部における電着処理部11と第2UF水洗部13と第1RO水洗部15は、主なる処理形態として処理槽T内の処理液Lに搬送ボディWを浸漬させる浸漬式の処理部であり、脱脂処理部3や化成処理部7では、搬送ボディWを脱脂槽T内の脱脂処理液Lや化成槽T内の化成処理液Lに浸漬させることで搬送ボディWの表面に脱脂処理や化成処理を施す。
また、電着処理部11では、搬送ボディWを電着槽T内の電着塗料液Lに浸漬させることで搬送ボディWの表面に塗膜を形成する電着処理を施し、第2UF水洗部13や第1RO水洗部15では、搬送ボディWを水洗槽T内の洗浄水Lに浸漬させることで電着処理後の搬送ボディWに水洗処理を施す。
なお、各UF水洗部12〜14は、限外ろ過膜(UF)による浄化水Lを用いて搬送ボディWを水洗する水洗部であり、各RO水洗部15,16は、逆浸透膜(RO)による浄化水Lを用いて搬送ボディWを水洗する水洗部である。
一方、これらの浸漬式処理部以外の処理部は、主なる処理形態としてノズルなどの噴出手段Nによる噴出流体F(噴出液や噴出気体)を搬送ボディWに吹き付ける吹付式の処理部であり、湯洗部1、予備脱脂部2、表面処理部6では、噴出流体Fとして湯洗用温水や
予備脱脂用の処理液あるいは表面調整用の処理液を搬送ボディWに吹き付けることで搬送ボディWに湯洗処理や予備脱脂処理あるいは表面調整処理を施す。
また、吹付式の各水洗部では、噴出流体Fとして洗浄水を搬送ボディWに吹き付けることで搬送ボディWに水洗処理を施し、エアブロー部18では、噴出流体Fとして空気を搬送ボディWに吹き付けることで水洗処理後の搬送ボディWに水切り処理や予乾燥処理を施す。
なお、塗装工程部にはエアブロー部18に続き、予熱炉、焼付け乾燥炉、冷却処理部などをその順に搬送ボディWの搬送方向に並べて装備し、また、この塗装工程部(下塗り工程部)に続いては中塗り工程部及び上塗り工程部が装備されているが、本例では、これらの説明は省略する。
被塗物である自動車ボディWを各処理部1〜18に対して順次に搬送する搬送装置Uは、図3〜図6に示す如く、ガイド架構20上に各処理部1〜18にわたる一対のレール21を敷設するとともに、このレール21に沿って各処理部1〜18に順次移動させる複数の搬送機22を設けて構成してあり、これら搬送機22に搬送ボディWを一台ずつ保持させた状態で各搬送機22を各処理部1〜18にわたらせて順次に移動させることで、各自動車ボディWを各処理部1〜18に順次搬送する。
搬送機22には、レール21上を転動する走行車輪23と、レール21に対し両側から当接して搬送機22を振れ止めする振止車輪24と、レール21の下面に当接して搬送機22の浮き上がりを防止する浮止車輪25とを設けるとともに、一方のレール21の側面にレール21に沿わせて延設した給電レール26から搭載装置の駆動電力を受電する集電器27を設けてある。
また、搬送機22の下部には走行用摩擦板28を設け、レール21に沿う搬送機22の移動経路上には、走行用摩擦板28を挟圧する遊転ローラ29と駆動ローラ30との挟圧ローラ対、及び、その挟圧ローラ対における駆動ローラ30を駆動回転させる移送用モータ31を搬送機送り出し手段として所定間隔でレール延設方向に並置してあり、これら遊転ローラ29と駆動ローラ30との挟圧ローラ対により挟圧した摩擦板28を移送用モータ31による駆動ローラ30の駆動回転により挟圧ローラ対29,30による挟圧部から送り出すことで搬送機22をレール21に沿って走行移動させる。
つまり、搬送機送り出し手段を構成する挟圧ローラ対29,30と移送用モータ31との組の並置群は、各搬送機22を各処理部1〜18にわたらせて順次に移動させる搬送機移動手段を構成し、各移送用モータ31の回転速度をインバータ制御等により調整することで、各移動位置にある各搬送機22の移動速度(即ち、送り速度)を随時、個別に調整することができる。
また、搬送機22には、昇降アーム32Aと駆動アーム32Bとを備える昇降装置32を搭載してあり、昇降アーム32Aの先端部には搬送ボディWを吊り下げ保持する吊下機構33を装備してある。
昇降装置32は、駆動アーム32Bの基端を連結固定した第1支持軸34を搬送機22上の固定軸受35により回転自在に支持し、一方、ガイド36により案内される前後方向(搬送機22の移動方向)に移動自在な移動架台37を搬送機22に設けて、この移動架台37に設けた移動軸受38により第2支持軸39を回転自在に支持し、この第2支持軸39に昇降アーム32Aの基端を回転自在に連結するとともに、その昇降アーム32Aの中央部に駆動アーム32Bの先端を枢支連結してある。
また、スライダ40をネジ軸41の駆動回転により前後移動させる昇降用駆動装置42を搬送機22に設け、この昇降用駆動装置42のスライダ40と第1支持軸34に連結固定した操作アーム43とを連結ロッド44により連結してある。
即ち、この昇降装置32は、駆動モータMaによるネジ軸41の駆動回転により昇降用駆動装置42のスライダ40を前後移動させて連結ロッド44を介し第1支持軸34の操作アーム43を揺動操作することで、第1支持軸34を回転させて駆動アーム32Bを駆動揺動させ、この駆動アーム32Bの揺動により移動架台37,移動軸受38、及び、第2支持軸39の前後移動(換言すれば、第1支持軸34に対する第2支持軸39の接近離間)を伴う形態で昇降アーム32Aを第2支持軸39周りにおいて揺動させることで、吊下機構33により保持した搬送ボディWを搬送機22に対して昇降させる構造にしてある。
45は連結ロッド44を介して第1支持軸34の操作アーム43を自動車ボディWの上昇操作側に付勢する空気圧シリンダであり、この付勢により昇降用モータである駆動モータMaの負荷を軽減する。
吊下機構33は、昇降アーム32Aの先端に吊下支持軸46を回転自在に取り付けて、この吊下支持軸46に連結した吊下部材47を上部フレーム48の長手方向中央部に連結するとともに、上部フレーム48の前後両端部夫々に縦フレーム49の上端を枢支連結し、そして、各縦フレーム49の下端から搬送機22とは反対側に横フレーム50を延設して、これら前後の横フレーム50に対し2本の下部フレーム51夫々の前後端部を回転自在に連結して構成してあり、この構造をもって搬送ボディWを横フレーム50と下部フレーム51とからなるフレーム枠に載置した状態で、そのフレーム枠における四隅部の保持具52により搬送ボディWを保持する。
そして、上部フレーム48と前後の縦フレーム49と下部フレーム51とで平行リンク機構を構成し、これに対し、吊下支持軸46に取り付けた従動スプロケット53と第2支持軸39に取り付けた駆動スプロケット54とに伝動チェーン55を巻回するとともに、スライダ56をネジ軸57の駆動回転により前後移動させる姿勢変更用駆動装置58を搬送機22上に設け、この姿勢変更用駆動装置58のスライダ56と第2支持軸39に連結固定した操作アーム59とを連結ロッド60により連結してボディ姿勢変更装置61を構成してある。
即ち、このボディ姿勢変更装置61は、駆動モータMbによるネジ軸57の駆動回転により姿勢変更用駆動装置58のスライダ56を前後移動させて連結ロッド60を介し第2支持軸39の操作アーム59を揺動操作することで、第2支持軸39を回転させて駆動スプロケット54を駆動回転させ、この駆動スプロケット54の回転により伝動チェーン55を介し従動スプロケット53とともに吊下支持軸46を回転させて吊下部材47を揺動させることで、上部フレーム48と前後の縦フレーム49と下部フレーム51とからなる平行リンク機構の変形を伴い上部フレーム48及び下部フレーム51を姿勢変化させて、保持具52により保持した搬送ボディWを搬送機22に対して前下がり傾斜姿勢や後下がり傾斜姿勢に姿勢変化させる構造にしてある。
つまり、これら昇降装置32及びボディ姿勢変更装置61は、搬送機22により搬送する被塗物W(本例では自動車ボディ)をその搬送機22に対して移動動作(昇降及び傾動)させる被塗物動作手段を構成する。
一方、この電着塗装システムには、各処理部1〜18にわたらせて順次に移動させる複
数の搬送機22を制御上で統括する統括制御器CCを設けてあり、この統括制御器CCは、位置検出手段Isにより得る搬送機22夫々の移動位置の情報iと、ボディ種検出手段Bsにより得る各搬送機22に載置保持された自動車ボディW夫々のボディ種の情報bとに基づき、レール21の延設方向に並置した各移送用モータ31と各搬送機22に装備した昇降装置32及びボディ姿勢変更装置61とを制御することで、搬送機22の移動による自動車ボディWの搬送において、その搬送ボディWを処理部ごと及びボディ種ごとに設定されている合成移動パターンP(即ち、搬送機22の移動と搬送ボディWの搬送機22に対する移動動作との合成によりなる移動パターン)で移動動作させるものにしてある。
なお、この合成移動パターンPは、後述の如く、搬送機22が保持する搬送ボディWの移動経路rと移動速度vと移動姿勢θとについての移動パターンP(r,v,θ)としてある。
また、本例において特に断りのない限り、搬送ボディWの移動速度vとは搬送経路rに沿う方向の移動速度を言い、搬送ボディWの移動姿勢θとは水平に対する移動姿勢を言う。
各移送用モータ31の制御については、レール21の延設方向に並置した移送用モータ31夫々の回転速度(即ち、搬送機送り速度)をインバータ制御等により調整する走行用の中継制御器Caを設け、この走行用の中継制御器Caを統括制御器CCからの制御指令により制御動作させることで、移送用モータ31夫々の回転速度を随時調整して各移動位置にある各搬送機22の移動速度を、処理部ごと及びボディ種ごとの設定合成移動パターンPに従って個別に調整する構成にしてある。
また、各搬送機22に装備した昇降装置32及びボディ姿勢変更装置61の制御については、昇降装置32におけるネジ軸42の駆動モータMa及びボディ姿勢変更装置61におけるネジ軸57の駆動モータMbを制御するボディ動作用の中継制御器Cbを各搬送機22に搭載し、これら各搬送機22に搭載したボディ動作用の中継制御器Cbの夫々を統括制御器CCから制御指令により制御動作させることで、各搬送機22の搬送ボディWを処理部ごと及びボディ種ごとの設定合成移動パターンPに従って各搬送機22に対し移動動作させる構成にしてある。
以上の構成により、各処理部1〜18では搬送ボディWを処理部ごと及びボディ種ごとの設定合成移動パターンPで移動動作させて搬送ボディWに所定の処理を施すが、それについて次に説明する。
・浸漬式処理部(特に電着処理部11)での移動動作について
浸漬式処理部ついては、処理部ごと及びボディ種ごとの設定合成移動パターンPとして、具体的には(図7参照)、
搬送機22が保持する搬送ボディWを下降させて処理槽T内の処理液Lに浸漬させる入槽工程と、それに続き、その搬送ボディWを処理槽T内の処理液L中で進行移動させる槽内進行工程と、それに続き、その搬送ボディWを上昇させて処理槽T内の処理液Lから引き上げる出槽工程と、それに続き、その搬送ボディWを浸漬式処理部から搬出する搬出工程との各工程の工程中及び工程間における搬送ボディWの移動経路rと移動速度vと移動姿勢θとについて、
ボディ種ごとの移動経路変化パターンPr(r)と移動速度変化パターンPv(v)と移動姿勢変化パターンPθ(θ)とを統括制御器CCに設定してある。(即ち、P(r,v,θ)=Pr(r)+Pv(v)+Pθ(θ))
そして、これら3つの変化パターンPr,Pv,Pθの設定により、図7に示す如く、
浸漬式処理部では基本的に例えば次のa.〜d.の如き移動形態(即ち、ボディ種ごとの個別移動形態の基礎となる基本移動形態)で各搬送機22の搬送ボディWを移動動作させる。
a.入槽工程において各搬送機22が保持する搬送ボディWを急角度の前下がり移動経路r及びその前下がり移動経路rに沿う急角度の前下がり移動姿勢θで、かつ、大きな移動速度vで処理槽Tに入槽させて処理槽T内の処理液Lに浸漬させる。
b.出槽工程において各搬送機22が保持する搬送ボディWを急角度の前上がり移動経路r及びその前上がり移動経路rに沿う急角度の前上がり移動姿勢θで、かつ、大きな移動速度vで処理槽T内の処理液Lから引き上げて処理槽Tから出槽させる。
即ち、このような入出槽移動形態を採ることで、搬送ボディWの処理液Lへの浸漬(入液)及び処理液Lからの引き出しを速やかにして処理槽Tの短尺化を可能にし、また、入槽工程で搬送ボディWを処理液Lに入液させる際の入液速度の不足が原因となる処理ムラ(例えば、電着処理でのいわゆる段付き)が生じるのを防止する。
c.槽内進行工程において各搬送機22が保持する搬送ボディWを水平移動経路rで、かつ、処理液Lによる搬送ボディWへの処理を良好に行なえる適当な移動速度vで液中進行させる。
d.搬出工程において各搬送機22が保持する搬送ボディWを水平移動経路rで、かつ、傾斜移動姿勢θで搬出移動させ、搬送ボディWの袋構造部等に残存する処理液Lの排出を促す。
また、これらの基本移動形態を採りながら個別的には各搬送機22が保持する搬送ボディWのボディ種に応じたボディ種ごとの移動形態(略言すれば、上記の基本移動形態をボディ種に応じて微調整した移動形態)として、例えば次のe.〜i.の如き移動形態で各搬送機22の搬送ボディWを移動動作させる。
e.各搬送機22が保持する搬送ボディWを処理液Lに浸漬させる入液時に生じる浮力が搬送ボディWのボディ種によって異なることに対し、また、入液時におけるボディ局部への気泡の噛む込みの程度や箇所がボディ種によって異なることに対し、入槽工程における前下がり移動経路rや前下がり移動姿勢θを上記の如き浮力発生や気泡の噛み込みが抑止されるボディ種ごとの最適傾斜角度の前下がり移動経路rや最適傾斜角度の前下がり移動姿勢θにした状態で搬送ボディWを処理槽T内の処理液Lに入液させる。
f.上記浮力発生の主な原因部位が搬送ボディWのボディ種によって異なることに対し、入槽工程のうち搬送ボディWにおける浮力発生の主な原因部位が処理液Lへの入液過程にある期間だけ移動速度v(即ち、入液速度)を小さくし、入槽工程における他の期間については移動速度vを大きくするボディ種ごとの最適な移動速度変化形態で搬送ボディWを処理槽Tに入槽させる。
即ち、このようなボディ種に応じたボディ種ごとの入槽移動形態を採ることで、搬送機22が保持する搬送ボディWが処理液Lへの入液の際に生じる大きな浮力のために搬送機22から離脱するなどの搬送トラブルや、ボディ局部に噛み込んだ気泡に原因する処理不良などを防止する。
g.搬送ボディWを処理槽T内の処理液Lに浸漬させた状態で進行移動させることにおいて、搬送ボディWの移動姿勢θを調整すれば、処理槽T内における搬送ボディW周りの
処理液Lの通過断面積を調整することができ、この通過断面積の調整により搬送ボディWに対する処理液Lの相対速度を調整することができる。
このことから、槽内進行工程では搬送ボディWをそれに対する処理液Lの相対速度を最適化し得るボディ種ごとの最適移動姿勢θ(例えば、最適傾斜角度の前下がり移動姿勢θや最適傾斜角度の前上がり移動姿勢θ、また場合によっては垂直移動姿勢)で液中進行させる。
即ち、このことにより、処理品質の低下原因となる搬送ボディWへの異物付着や搬送ボディWの近傍における気泡や発生熱の滞留などを防止する。
h.出槽工程において搬送ボディWを処理液Lから引き上げる際、搬送ボディWにおける袋構造部等からの処理液Lの抜け出しの良否がボディ種によって異なることに対し、出槽工程における前上がり移動経路rや前上がり移動姿勢θを処理液Lの抜け出しが良くなるボディ種ごとの最適傾斜角度の前上がり移動経路rや最適傾斜角度の前上がり移動姿勢θにした状態で搬送ボディWを処理槽Tから出槽させる。
i.搬出工程において搬送ボディWを傾斜移動姿勢θで搬出移動させる際、搬送ボディWにおける袋構造部等からの残存処理液Lの排出の良否がボディ種によって異なることに対し、搬出工程において搬送ボディWを傾斜移動姿勢θにする傾動動作として、搬送ボディWをボディ種ごとの最適傾斜角度の後下がり移動姿勢θにする、又は、最適傾斜角度の前下がり移動姿勢θにする、又は、最適な傾斜角度範囲で前後揺動させるなど、搬送ボディWからの残存処理液Lの排出を良くするボディ種ごとの最適な傾動動作形態で搬送ボディWを搬出移動させる。
・吹付式処理部での移動動作について
吹付式処理部については、処理部ごと及びボディ種ごとの設定合成移動パターンPとして、具体的には(図8〜図9及び図10参照)、
搬送機22が保持する搬送ボディWを噴出手段Nによる噴出流体Fの吹付処理域Sに搬入する搬入工程と、それに続き、その搬送ボディWを吹付処理域S内で進行移動させる域内進行工程と、それに続き、その搬送ボディWを吹付処理域Sから搬出する搬出工程との各工程の工程中及び工程間における搬送ボディWの移動経路rと移動速度vと移動姿勢θとについて、
浸漬式処理部と同様、ボディ種ごとの移動経路変化パターンPr(r)と移動速度変化パターンPv(v)と移動姿勢変化パターンPθ(θ)とを統括制御器CCに設定してある。
そして、吹付式処理部のうち、ノズル等の噴出手段Nを横一列状態や横二列状態で吹付処理域Sの上部や側部に配置する吹付式処理部(例えば、電着純水水洗部17、前処理純水水洗部10の後半部、エアブロー部18など一般に高圧の噴出流体Fを集中的に吹き付ける吹付式処理部)については、上記3つの変化パターンPr,Pv,Pθの設定により、図8〜図9に示す如く、各搬送機22が保持する搬送ボディWのボディ種に応じたボディ種ごとの移動形態として、例えば次のj.〜m.の如き移動形態で、各搬送機22の搬送ボディWを移動動作させる。
j.前の処理部において各搬送機22が保持する搬送ボディWの袋構造部等に入り込んだ残存処理液L(又はF)の吹付処理域S側への排出(即ち、吹付処理域Sに装備した排液部への排出)を促すため、基本的には搬入工程において搬送ボディWを前下がり移動姿勢θで吹付処理域Sに搬入移動させるが、この際の残存処理液L,Fの排出の良否がボディ種によって異なる。
このことに対し、搬入工程において上記残存処理液L,Fの吹付処理域S側への排出を良くするボディ種ごとの最適傾斜角度の前下がり移動姿勢θにした状態で搬送ボディWを吹付処理域Sに搬入移動させる。
k.域内進行工程において搬送ボディWを吹付処理域Sにおいて単に水平移動経路でかつ水平移動姿勢で域内進行させた場合、噴出手段Nとそれら噴出手段Nによる噴出流体Fが吹き付けられる搬送ボディW上の被吹付部(ここでは、搬送ボディWの域内進行に対する噴出手段Nの相対移動で搬送ボディW上をボディ進行方向とは逆向きに移動する各時点の被吹付部)との位置関係について、特に側面視で、搬送ボディWの域内進行に伴い、噴出手段Nと被吹付部との距離d(吹付距離)がボディ形状によって逐次変化し、また、噴出手段Nからの流体噴出向きに対する搬送ボディW上の被吹付部の向きα(吹付向き)もボディ形状によって逐次変化し、その上、搬送ボディWのボディ種の異なりによるボディ形状の相違によって上記吹付距離dや吹付向きαの変化の形態がさらに異なるものなる。
このことに対し、域内進行工程において、側面視で、噴出手段Nと搬送ボディW上の被吹付部との距離d(吹付距離)を一定に保ち、かつ、噴出手段Nからの流体噴出向きに対して搬送ボディW上の被吹付部が垂直姿勢となる吹付向き状態(α=90°)を保つボディ種ごとの最適な進行移動形態で搬送ボディWを域内進行させる。
l.また、噴出手段Nによる噴出流体Fの吹き付け処理を特に重点的に行なうべき特定被吹付部x(例えば、隙間構造部など搬送ボディW上の固定部位である特定の被吹付部)について、その有無や存在位置がボディ種によって異なることに対し、域内進行工程において噴出手段Nによる噴出流体Fが搬送ボディW上の特定被吹付部xに吹き付けられるとき(即ち、図8の(b)に示す如き状態のとき)、その特定被吹付部xを噴出手段Nに近付けて吹付距離dを短くするとともに、搬送ボディWの域内進行を一時停止状態や一時徐行状態あるいは一時的に前後進切り換えを反復する状態にするなどして、特定被吹付部xに対し他部よりも時間的に長く噴出流体Fを吹き付けさせるボディ種ごとの最適な進行移動形態で、搬送ボディWを域内進行させる。
なお、上記の如く特定被吹付部xを噴出手段Nに近付けたとき、噴出手段Nからの流体噴出向きに対して特定被吹付部xを垂直姿勢や所定の斜交姿勢する吹付向き調整も併せて行なうのが望ましい。
m.搬送ボディWの袋構造部等に入り込んだ吹き付け流体F(洗浄水)の排出を促すため基本的には搬出工程において各搬送機22の搬送ボディWを傾斜移動姿勢θにして搬出移動させるが、この際の入り込み流体F(入り込み洗浄水)の排出の良否がボディ種によって異なる。
このことに対し、搬出工程において各搬送機22の搬送ボディWを傾斜移動姿勢θにする傾動動作として、搬送ボディWをボディ種ごとの最適傾斜角度の後下がり移動姿勢θにする、又は、最適傾斜角度の前下がり移動姿勢θにする、又は、最適な傾斜角度範囲で前後揺動させるなど、入り込み流体F(洗浄水)の排出を良くするボディ種ごとの最適な傾動動作形態で搬送ボディWを搬出移動させる。(エアブロー部18については一般に、この搬出工程における傾動動作は不要である。)
なお、上記J.〜m.の移動形態は夫々、電着純水水洗部17、前処理純水水洗部10の後半部、エアブロー部18以外の吹付式処理部に適用することもできる。
また一方、吹付式処理部のうち、ノズル等の噴出手段Nを搬送ボディWに対する群状の囲み配置形態で吹付処理域Sに多数配置した吹付式水洗部(即ち、比較的低圧の洗浄水F
を搬送ボディWに対し広く群がり状に吹き付ける吹付式水洗部)については、上記3つの変化パターンPr,Pv,Pθの設定により、図10に示す如く、各搬送機22が保持する搬送ボディWのボディ種に応じたボディ種ごとの移動形態として、例えば次のn.〜p.の如き移動形態で、各搬送機22の搬送ボディWを移動動作させる。
n.前記の集中吹付式処理部と同様、基本的には搬入工程において各搬送機22の搬送ボディWを前下がり移動姿勢θで吹付処理域Sに搬入移動させるが、前の処理部において搬送ボディWの袋構造部等に入り込んだ残存処理液L(又はF)の排出の良否がボディ種によって異なることに対し、搬入工程において上記残存処理液L,Fの吹付処理域S側への排出を良くするボディ種ごとの最適傾斜角度の前下がり移動姿勢θにした状態で搬送ボディWを吹付処理域Sに搬入移動させる。
o.また基本的には域内進行工程において各搬送機22が保持する搬送ボディWを前後揺動させながら域内進行させて吹き付け処理の処理効果(即ち、洗浄水の吹き付けによる洗浄効果)を高めるが、噴出手段Nによる噴出流体Fの吹き付け処理を特に重点的に行なうべき特定被吹付部x(例えば、隙間構造部など)について、その有無や存在位置がボディ種によって異なることに対し、域内進行工程において噴出手段Nによる噴出流体Fが搬送ボディW上の特定被吹付部xに吹き付けられるとき搬送ボディWの域内進行を一時停止状態や一時徐行状態あるいは一時的に前後進切り換えを反復する状態にするなどして、搬送ボディW上の特定被吹付部xに対し他部よりも時間的に長く噴出流体F(洗浄水)を吹き付けさせるボディ種ごとの最適な進行移動形態で、搬送ボディWを域内進行させる。
p.前記の集中吹付式処理部と同様、基本的には搬出工程において各搬送機22の搬送ボディWを傾斜移動姿勢θにして搬出移動させるが、搬送ボディWの袋構造部等に入り込んだ吹き付け流体F(洗浄水)の排出の良否がボディ種によって異なることに対し、搬出工程において各搬送機22の搬送ボディWを傾斜移動姿勢θにする傾動動作として、搬送ボディWをボディ種ごとの最適傾斜角度の後下がり移動姿勢θにする、又は、最適傾斜角度の前下がり移動姿勢θにする、又は、最適な傾斜角度範囲で前後揺動させるなど、入り込み流体F(洗浄水)の排出を良くするボディ種ごとの最適な傾動動作形態で搬送ボディWを搬出移動させる。
・処理部どうしの間での移動動作関係について
浸漬式処理部のうち電着処理部11では、処理槽T(電着槽)内の処理液L中における先行搬送ボディWと後続搬送ボディWとの間隔が小さいと、それら搬送ボディWに対する電着処理の相互干渉に原因する処理品質の低下(いわゆるバイポーラ不良)が生じ易くなる。
このことに対し、電着処理部11についての処理部ごと及びボディ種ごとの合成移動パターンP(Pr,Pv,Pθ)の設定と、他の浸漬式処理部である脱脂処理部3や化成処理部7についての処理部ごと及びボディ種ごとの合成移動パターンP(Pr,Pv,Pθ)の設定とにより、脱脂処理部3、化成処理部7、電着処理部11の夫々における入出槽工程については、先行搬送ボディWと後続搬送ボディWとをそれらの接触干渉を確実に防止できる移動間隔eで移動させる。
そして、電着塗装部11では、槽内進行工程11において移動間隔eを拡大した移動形態で先行搬送ボディWと後続搬送ボディW22とを液中進行させ、逆に、脱脂処理部3や化成処理部7では、先行搬送ボディWと後続搬送ボディWとの接触干渉が生じない範囲において移動間隔eを縮小した状態で先行搬送ボディWと後続搬送ボディWとを液中進行させる。
つまり、このような移動間隔関係の移動形態を採ることにより、先行搬送ボディWと後続搬送ボディWとの接触干渉を確実に防止しながら、また、電着処理部11でのいわゆるバイポーラ不良も一層確実に防止しながら、塗装設備全体の小型化を可能にする。
・その他の制御について
エアブロー部18で水切り処理や予乾燥処理した搬送ボディWは、炉内搬送用の搬送装置における搬送台車に移載して後続の予乾燥炉及び焼付け乾燥炉に順次搬送するが、この搬送ボディWの移載処理、その移載処理に続き搬送ボディWが無い空状態の搬送機22をボディ受取部へ戻す還送処理、及び、ボディ受取部で次の搬送ボディWを受け取るボディ受取処理の夫々についても、統括制御器CCにより搬送機22夫々の移動位置情報iに基づき移送用モータ31と各搬送機22に装備した昇降装置32及びボディ姿勢変更装置61とを制御することで自動的に行なうようにしてある。
なお、位置検出手段Isについては、搬送機22の移動経路に沿って並置した搬送機検出センサの検出情報に基づき各搬送機22の移動位置情報iを得る方式や、各搬送機22の移動距離を計測する計測手段の計測情報に基づき各搬送機22の移動位置情報iを得る方式、あるいは、監視カメラの撮像情報に基づき各搬送機22の移動位置情報iを得る方式など、種々の方式のものを採用することができる。
また、ボディ種検出手段Bsについても、搬送機22に自動車ボディWを保持させる段階ないしはその近傍段階でのボディ形状の検出や各自動車ボディWに付けたタグの読み取りなどによりボディ種情報bを得る方式や、塗装システムの生産管理装置から生産計画情報の一部としてボディ種情報bを得る方式など、種々の方式のものを採用することができる。
他方、この塗装システムには、統括制御器CCともに、シミュレート装置SMを設けてあり、このシミュレート装置SMは、各処理部1〜18の構造に関するデータや処理内容に関するデータ、搬送機22の移動特性に関するデータ、昇降装置32及び姿勢変更装置61の動作特性に関するデータ、並びに、塗装対象である自動車ボディWのボディ種ごとの形状や構造に関するデータなどに基づき、塗装対象である各ボディ種の自動車ボディWの夫々について、前記処理部ごと及びボディ種ごとの合成移動パターンP(具体的には処理部ごと及びボディ種ごとの前記3つの変化パターンPr,Pv,Pθ)を種々変更したときの各処理部1〜18での処理の処理過程及び処理結果(例えば、浸漬処理における槽内進行工程での搬送ボディWに対する処理液Lの相対速度の大小関係など)をモニタ表示しながらシミュレートするものである。
そして、このシミュレート装置SMは、処理品質の重み度合や処理能率の重み度合あるいは省エネルギ化の重み度合や運転コストの重み度合など、種々の基準要素も含めて設定される選択基準に従って、処理部相互の関係も考慮しながら、ボディ種ごとの最適な合成移動パターンP(Pr,Pv,Pθ)を各処理部1〜18について自動的に選択する自動選択機能を備えるものにしてある。
また、このように自動選択した各処理部1〜18についてのボディ種ごとの最適な合成移動パターンP(Pr,Pv,Pθ)をオペレータの承認操作を受けた上で統括制御器CCに対し自動的に設定する自動設定機能も備えるものにしてある。
つまり、新設した塗装システムの運転に先立ち、あるいは、新しいボディ種の自動車ボディWが塗装対象として加わるときや、いずれかの処理部を改造するときなど、オペレータは適時、このシミュレート装置SMを用いて処理部ごと及びボディ種ごとの最適な合成移動パターンP(Pr,Pv,Pθ)を選択し、そして、選択した処理部ごと及びボディ
種ごとの最適な合成移動パターンP(Pr,Pv,Pθ)を統括制御器CCに設定することにより、各処理部1〜18において、その最適な設定合成移動パターンP(Pr,Pv,Pθ)で、各搬送機22の搬送ボディWを移動動作させる。
以上、本実施形態の塗装システムにおいて、搬送装置U及び吹付式処理部の噴出手段Nは、被塗物W(自動車ボディ)を保持する搬送機22を搬送機移動手段(挟圧ローラ対29,30と移送用モータ31との組の並置群)により移動させることで被塗物Wを吹付処理域Sにおいて域内進行させ、この域内進行において吹付処理域Sで噴出手段Nによる噴出流体Fを被塗物Wに吹き付ける塗装用の吹付処理装置を構成する。
また、統括制御器CCは、吹付式処理部における吹付処理域Sでの被塗物Wに対する噴出流体Fの吹き付けにおいて、搬送機22に装備した被塗物動作手段(昇降装置32及びボディ姿勢変更装置61)を制御して被塗物Wを搬送機22に対し移動動作させることにより、噴出手段Nとその噴出手段Nによる噴出流体Fが吹き付けられる被塗物W上の被吹付部(前述した特定被吹付部xを含む)との距離である吹付距離dや、噴出手段Nからの流体噴出向きに対する被吹付部(前述した特定被吹付部xを含む)の向きである吹付向きαを調整する吹付制御手段を構成する。
〔別実施形態〕
上述の実施形態では、吹付処理域Sでの被塗物Wの域内進行に対する噴出手段Nの相対移動で被塗物W上において移動する被吹付部について、被吹付部と噴出手段Nとの距離を一定距離に保つ吹付距離調整を吹付制御手段CC(統括制御手段)に実行させ、また、噴出手段Nからの流体噴出向きに対し被吹付部を垂直姿勢(α=90°)に保つ吹付向き調整を吹付制御手段CCに実行させる例を示したが、場合によっては、噴出手段Nからの流体噴出向きに対し被吹付部を一定の斜交姿勢に保つ吹付向き調整を吹付制御手段CCに実行させるようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、被塗物W上の固定部位である特定の被吹付部xについて、吹付処理域Sでの被塗物Wの域内進行において噴出手段Nによる噴出流体Fが特定被吹付部xに吹き付けられるとき、特定被吹付部xを噴出手段Nに近付ける吹付距離調整を吹付制御手段CCに実行させ、また、噴出手段Nからの流体噴出向きに対して特定被吹付部xを設定姿勢(垂直姿勢や所定の斜交姿勢)にする吹付向き調整を吹付制御手段CCに実行させる例を示したが、場合によっては、設定姿勢として特定被吹付部xを噴出手段Nからの流体噴出向きに対して所定の変化パターンで姿勢変化させる吹付向き調整を吹付制御手段CCに実行させるようにしてもよい。
また場合によっては、複数の特定被吹付部xの夫々について、特定被吹付部xと噴出手段Nとの距離を一定距離にする吹付距離調整を吹付制御手段CCに実行させるようにしてもよい。
さらに、上述の実施形態では、吹付処理域Sでの被塗物Wの域内進行において噴出手段Nによる噴出流体Fが特定被吹付部xに吹き付けられるとき、搬送機移動手段29,30,31(挟圧ローラ対と移送用モータとの組の並置群)を制御することで、噴出手段Nによる噴出流体Fが特定被吹付部xに対して被塗物W上の他部よりも時間的に長く吹き付けられる状態にする進行速度制御を吹付制御手段CCに実行させる例を示したが、この進行速度制御に代え、又は、この進行移動制御と組み合わせて、特定被吹付部xを噴出手段Nに近付けた状態や、特定被吹付部xを噴出手段Nからの流体噴出向きに対して設定姿勢にした状態を、被塗物Wの進行移動による特定被吹付部xの移動に対し暫く保つように被塗物動作手段32,61により被塗物Wを搬送機22に対して移動動作させる追いかけ制御を吹付制御手段CCに実行させるようにしてもよい。
本発明による塗装用吹付処理装置の実施において、処理対象の被塗物は自動車ボディに限られるものではなく、自動車部品や鋼板類あるいは電気機器のケーシングや部品など、種々のものを処理対象の被塗物とすることができる。
また、本発明による塗装用吹付処理装置は電着塗装に限らず、種々の方式の塗装における各種目的の被塗物処理に適用することができる。
本発明は、被塗物を保持する搬送機を搬送機移動手段により移動させることで被塗物を吹付処理域において域内進行させ、この域内進行において吹付処理域で噴出手段による噴出流体を被塗物に吹き付ける種々の処理目的の塗装用吹付処理装置に適用することができる。
W 被塗物
22 搬送機
29,30,31 搬送機移動手段
S 吹付処理域
N 噴出手段
F 噴出流体
32,61 被塗物動作手段
d 吹付距離
α 吹付向き
CC 吹付制御手段
x 特定被吹付部

Claims (7)

  1. 吊下機構を介して被塗物を吊り下げ保持する搬送機を搬送機移動手段により移動させることで被塗物を吹付処理域において域内進行させ、この域内進行において前記吹付処理域で噴出手段による噴出流体を被塗物に吹き付ける塗装用吹付処理装置であって、
    前記搬送機が保持する被塗物をその搬送機に対して移動動作させる被塗物動作手段を前記搬送機に装備し、
    前記被塗物動作手段を制御して被塗物を前記搬送機に対し移動動作させることにより、前記吹付処理域での被塗物に対する噴出流体の吹き付けにおいて、前記噴出手段とその噴出手段による噴出流体が吹き付けられる被塗物上の被吹付部との距離である吹付距離を調整する吹付制御手段を設け、
    この吹付制御手段は、前記吹付処理域での被塗物の域内進行に対する前記噴出手段の相対移動で被塗物上において移動する前記被吹付部に前記噴出手段による噴出流体を吹き付けている状態において前記噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である特定の前記被吹付部に吹き付けられるとき、前記吹付距離の調整として、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで前記特定被吹付部を前記噴出手段に近付ける構成にしてある塗装用吹付処理装置。
  2. 前記吹付制御手段は、前記吹付処理域での被塗物の域内進行による前記特定被吹付部の移動に対し、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで、前記特定被吹付部を前記噴出手段に近付けた状態を保つ構成にしてある請求項1記載の塗装用吹付処理装置。
  3. 前記吹付制御手段は、前記噴出手段による噴出流体が前記特定被吹付部に吹き付けられるときを除いては、前記吹付距離の調整として、前記吹付処理域での被塗物の域内進行に対する前記噴出手段の相対移動で被塗物上において移動する前記被吹付部と前記噴出手段との距離を一定距離に保つ構成にしてある請求項1又は2記載の塗装用吹付処理装置。
  4. 前記吹付制御手段は、前記被塗物動作手段を制御して被塗物を前記搬送機に対し移動動作させることにより、前記吹付処理域での被塗物に対する噴出流体の吹き付けにおいて、前記吹付距離の調整とともに、前記噴出手段からの流体噴出向きに対する前記被吹付部の向きである吹付向きを調整し、
    前記吹付処理域での被塗物の域内進行において前記噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である前記特定被吹付部に吹き付けられるとき、前記吹付向きの調整として、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで前記特定被吹付部を前記噴出手段からの流体噴出向きに対し設定姿勢にする構成にしてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装用吹付処理装置。
  5. 前記吹付制御手段は、前記吹付処理域での被塗物の域内進行による前記特定被吹付部の移動に対し、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで、前記特定被吹付部を前記噴出手段からの流体噴出向きに対し前記設定姿勢にした状態を保つ構成にしてある請求項4記載の塗装用吹付処理装置。
  6. 前記吹付制御手段は、前記噴出手段による噴出流体が前記特定被吹付部に吹き付けられるときを除いては、前記吹付向きの調整として、前記吹付処理域での被塗物の域内進行に対する前記噴出手段の相対移動で被塗物上において移動する前記被吹付部を前記噴出手段からの流体噴出向きに対し垂直姿勢又は一定の斜交姿勢に保つ構成にしてある請求項4〜5のいずれか1項に記載の塗装用吹付処理装置。
  7. 前記吹付制御手段は、前記吹付処理域での被塗物の域内進行において前記噴出手段による噴出流体が被塗物上の固定部位である特定の前記被吹付部に吹き付けられるとき、
    前記吹付距離の調整として、前記被塗物動作手段により被塗物を前記搬送機に対して移動動作させることで前記特定被吹付部を前記噴出手段に近付けるとともに、
    前記搬送機移動手段を制御して前記搬送機を一時停止状態又は一時徐行状態又は一時的な前後進切り換え反復状態にすることで、前記噴出手段による噴出流体が前記特定被吹付部に対して被塗物上の他部よりも時間的に長く吹き付けられる状態にする構成にしてある請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装用吹付処理装置。
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