JP5827131B2 - L−グルタミンまたはl−グルタミン酸の製造法 - Google Patents
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Description
細菌において染色体DNAの超らせん構造がリボソーマルRNAやトランスファーRNAの合成を制御する上で重要な役割を果たしていることが明らかにされている。II型DNAトポイソメラーゼの一種であるDNAジャイレースは、二本鎖DNAを切断、再結合する活性を有し、ATPの存在下で正の超らせんDNAまたは緩和型DNAを負の超らせんDNAに変換する。エシェリヒア・コリのDNAジャイレース変異株ではL−ヒスチジン合成に関与するオペロンの発現量が上昇すること、His-tRNAを含むいくつかのtRNAの発現が低下していることが知られている(非特許文献4)。一方、I型DNAトポイソメラーゼはDNAの片鎖を切断する活性を有し、超らせんDNAを緩和する。
L−ヒスチジン生産能を有するエシェリヒア・コリにDNAジャイレース阻害剤に対する耐性を付与することでL−ヒスチジン生産性が向上することが知られている(特許文献5)。しかし、DNAトポロジーに関わる酵素がL−ヒスチジン以外のアミノ酸の生産性向上に関わっていることおよびDNAトポロジーに関わる酵素の改変により、L−グルタミン、L−グルタミン酸などL−ヒスチジン以外のL−アミノ酸の生産性を向上させることができることはこれまで全く知られていない。
(1)L-グルタミン又はL-グルタミン酸を生産する能力を有し、かつ二本鎖DNAの超らせんの形成能が親株に比べて低下した微生物を培地に培養し、該培地中にL−グルタミン又はL-グルタミン酸を生成、蓄積せしめ、該培地中からL−グルタミン又はL−グルタミン酸を採取することを特徴とする、L−グルタミン又はL-グルタミン酸の製造法。
(2)微生物が、親株に比べてDNAジャイレース活性が低下した微生物である、(1)のL-グルタミン又はL-グルタミン酸の製造法。
(3)親株に比べてDNAジャイレース活性が低下した微生物が、親株に比べてDNAジャイレース阻害蛋白質の活性が向上した微生物である、(2)のL-グルタミン又はL-グルタミン酸の製造法。
(4)微生物が、親株に比べてトポイソメラーゼ活性が向上した微生物である、(1)のL-グルタミン又はL-グルタミン酸の製造法。
本発明の製造法で用いる、L−グルタミン又はL−グルタミン酸を生産する能力を有し、かつ二本鎖DNAの超らせんの形成能が親株に比べて低下した微生物とは、当該微生物の細胞内に存在するDNAのうち、超らせん構造をとるDNAの割合が親株に比べて低下している微生物をいう。
本発明においてDNAジャイレース活性とは、II型DNAトポイソメラーゼとして知られるDNAジャイレースの有する活性をいい、ATPの存在下で正の超らせんDNAまたは弛緩型のDNAに負の超らせんを導入する活性をいう。
微生物の有するDNAジャイレース活性はAshiuchiらの方法(The Journal of Biological Chemistry, 277 (42), 39070-39073, 2002)により測定することができる。また、DNAジャイレース活性又はDNAトポイソメラーゼ活性は、微生物細胞中のプラスミドDNAにおける超らせんDNAの割合を、Mizushimaらの方法(Molecular Microbiology 23:381-386,1997)で解析することにより測定することができる。
(a)L-グルタミン又はL-グルタミン酸の生合成を制御する機構の少なくとも1つを緩和又は解除する方法、
(b)L-グルタミン又はL-グルタミン酸の生合成に関与する酵素の少なくとも1つを発現強化する方法、
(c)L-グルタミン又はL-グルタミン酸の生合成に関与する酵素遺伝子の少なくとも1つのコピー数を増加させる方法、
(d)L-グルタミン又はL-グルタミン酸の生合成経路から該アミノ酸以外の代謝産物へ分岐する代謝経路の少なくとも1つを弱化又は遮断する方法、及び
(e)野生型株に比べ、L-グルタミン又はL-グルタミン酸のアナログに対する耐性度が高い細胞株を選択する方法、
などをあげることができ、上記公知の方法は単独又は組み合わせて用いることができる。
(1)親株に比べてDNAジャイレース活性が低下した微生物
親株に比べてDNAジャイレース活性が低下した微生物とは、(A)染色体DNA上のDNAジャイレースをコードする遺伝子の内部またはその発現調節領域の変異により、親株に比べて細胞内のDNAジャイレース活性が低下した微生物、又は(B)染色体DNA上のDNAジャイレースを阻害する活性を有するタンパク質(以下、DNAジャイレース阻害タンパク質)をコードする遺伝子の内部若しくはその調節領域の変異により、又はDNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNAで形質転換されることによりDNAジャイレース阻害タンパク質の発現量が増加し、親株に比べて細胞内のDNAジャイレース活性が低下した微生物をいう。
本発明においてDNAジャイレースとは、配列番号44で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質(以下、GyrAタンパク質ともいう)および配列番号46で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質(以下、GyrBタンパク質ともいう)からなる複合体タンパク質、又はGyrAタンパク質およびGyrBタンパク質の、それぞれの相同タンパク質からなる複合体タンパク質をいう。
(A)染色体DNA上のDNAジャイレースをコードする遺伝子の内部またはその調節領域の変異により、親株に比べて細胞内のDNAジャイレース活性が低下した微生物
本発明における染色体DNA上のDNAジャイレースをコードする遺伝子の内部またはその発現調節領域の変異には、DNAジャイレースの発現量を低下させる変異およびDNAジャイレース1分子あたりの活性を低下させる変異を含む。
塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータは例えばScore=100、wordlength=12とし得る。
親株に比べてDNAジャイレース活性が低下した微生物は、例えば、DNAジャイレース阻害剤に耐性を有する微生物として取得することができる。
DNAジャイレース阻害剤に耐性を有する微生物とは、自発的な変異導入、もしくは紫外線照射やN−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)などの突然変異誘発剤による通常の変異処理を施し、該変異株を親株が生育できないか、または生育が不良となる濃度のDNAジャイレース阻害剤を含む寒天平板培地上で通常の条件下で培養し、生じたコロニーのうちで親株よりも生育が速いか大きなコロニーを生ずる株を選択することにより、DNAジャイレース阻害剤に対する耐性の付与された株として取得することができる。
DNAジャイレース阻害剤耐性株として取得することができる、本発明の製造法で用いることができる微生物としては、例えば、ナリジクス酸耐性株であるエシェリヒア・コリNAR01株、NAR02およびNAR03株ならびにコリネバクテリウム・グルタミカムGNA1株およびGNA2株があげられる。
そのようなDNAジャイレースをコードする遺伝子の発現調節領域に導入する変異としては、該遺伝子のプロモーターをより効率の低いものに置換することなどがあげられる。
部位特異的な変異を導入する方法としては、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409(1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)等に記載の方法をあげることができる。
さらに、変異体DNAと共に染色体上に組み込まれた枯草菌レバンシュークラーゼによって大腸菌がシュークロース感受性となることを利用した選択法や、ストレプトマイシン耐性の変異rpsL遺伝子を有する大腸菌に野生型rpsL遺伝子を組み込むことによって大腸菌がストレプトマイシン感受性となることを利用した選択法[Mol. Microbiol., 55, 137(2005), Biosci. Biotechnol. Biochem., 71, 2905 (2007)]等を用いて、親株の染色体上のDNAが変異体DNAに置換された株を取得することができる。
親株のDNAジャイレースをコードする遺伝子の内部に部位特異的に変異を導入することによって取得することができる、本発明の製造法で用いることができる微生物としては、例えば、gyrA遺伝子の変異株であるエシェリヒア・コリGYR1株およびGYR2株、gyrB遺伝子の変異株であるエシェリヒア・コリGYR3株をあげることができる。
(B)染色体DNA上のDNAジャイレース阻害タンパク質をコードする遺伝子の内部若しくはその調節領域の変異により、又はDNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNAで形質転換されることにより親株よりDNAジャイレース阻害タンパク質の活性が向上し、親株に比べて細胞内のDNAジャイレース活性が低下した微生物
本発明で用いる親株に比べて細胞内のDNAジャイレース活性が低下した微生物としては、(I)親株の染色体DNA上のDNAジャイレース阻害タンパク質をコードする遺伝子の内部若しくはその調節領域に変異を導入することにより、又は(II)親株をDNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNAで形質転換することにより、親株に比べてDNAジャイレース活性が低下した微生物も用いることができる。
(I)親株の染色体DNA上にあるDNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNAを改変することにより得られる、親株に比べDNAジャイレース活性が低下した微生物
DNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNAとしては例えば、Entrez Gene ID NO: 948467で特定される塩基配列を有する、murI遺伝子の塩基配列を有するDNAおよびそのホモログ遺伝子の塩基配列を有するDNAをあげることができる。murI遺伝子の塩基配列を有するDNAとしては、配列番号19で表される塩基配列を有するDNAをあげることができる。
塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータは例えばScore=100、wordlength=12とし得る。
親株の染色体DNA上の、DNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNAの改変により得られる、親株より該タンパク質の比活性が向上した微生物としては、親株が有する該タンパク質のアミノ酸配列において1アミノ酸以上、好ましくは1〜10アミノ酸、より好ましくは1〜5アミノ酸、さらに好ましくは1〜3アミノ酸が置換しているアミノ酸配列を有するタンパク質を有しているため、親株のDNAジャイレース阻害タンパク質と比較して、その活性が向上した変異型タンパク質を有する微生物をあげることができる。
そのようなプロモーターとしては、E. coliで機能するtrpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、エシェリヒア・コリやファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターなどの人為的に造成したプロモーターもあげることができる。
DNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNAは、例えば配列番号20で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAの塩基配列に基づき設計することができるプローブDNAを用いた、E. coliなどの微生物の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション、又は該塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた、微生物、好ましくはE. coliの染色体DNAを鋳型としたPCR[PCR Protocols, Academic Press (1990)]により取得することができる。
宿主細胞としては、Escherichia属に属する微生物などをあげることができる。Escherichia属に属する微生物としては、例えば、E. coli XL1-Blue、E. coli XL2-Blue、E. coliDH1、E. coli MC1000、E. coli ATCC 12435、E. coliW1485、E. coli JM109、E. coli HB101、E. coliNo.49、E. coli W3110、E. coli NY49、E. coliMP347、E. coli NM522、E. coli BL21、E. coliME8415等をあげることができる。
塩基配列を決定した結果、取得されたDNAが部分長であった場合は、該部分長DNAをプローブに用いた、染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション法等により、全長DNAを取得することができる。
上記のようにして取得されるDNAとして、例えば、配列番号20で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、及び配列番号19で表される塩基配列を有するDNAをあげることができる。
(II)DNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNAで形質転換して得られる微生物
親株をDNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNAで形質転換して得られる微生物としては:
[1]配列番号20で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質またはそのホモログタンパク質、並びに
[2]配列番号19で表される塩基配列を有するDNAまたはmurI遺伝子のホモログ遺伝子の塩基配列を有するDNA;
を用いて親株を形質転換して得られる微生物をあげることができる。
DNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNAをもとにして、必要に応じて、DNAジャイレース阻害タンパク質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。また、DNAジャイレース阻害タンパク質をコードする部分の塩基配列を、宿主細胞での発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することにより、転写効率が良いDNA断片を調製することができる。
該組換え体DNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、DNAジャイレース阻害タンパク質の活性が宿主細胞、すなわち親株より向上した形質転換体を得ることができる。
原核生物を宿主細胞として用いる場合は、DNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNAを有する組換え体DNAは、原核生物中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、DNAジャイレース阻害タンパク質をコードするDNA、転写終結配列より構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
このような組換え体DNAとしては、例えばプラスミドpSMurIをあげることができる。
該組換え体DNAの宿主としては、本発明で用いる微生物の親株を用いることができる。
(2)親株に比べてDNAトポイソメラーゼ活性が向上した微生物
本発明における親株に比べDNAトポイソメラーゼ活性が向上した微生物としては、(A)親株の染色体DNA上にあるI型又はIV型のDNAトポイソメラーゼをコードするDNAを改変することにより得られる、(I)親株より該酵素の比活性が向上した微生物、および(II)親株よりI型又はIV型のDNAトポイソメラーゼの生産量が向上した微生物、ならびに(B)親株をI型又はIV型のDNAトポイソメラーゼをコードするDNAで形質転換して得られる微生物をあげることができる。
[3]配列番号24、36および40のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するタンパク質またはそれらのホモログタンパク質、並びに
[4]配列番号28で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質および配列番号32で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質からなる複合体タンパク質またはそれらのホモログタンパク質からなる複合体タンパク質;
をあげることができる。
(A)親株の染色体DNA上にあるI型又はIV型のDNAトポイソメラーゼをコードするDNAを改変することにより得られる、親株に比べDNAトポイソメラーゼ活性が向上した微生物
DNAトポイソメラーゼをコードするDNAとしては例えば、Entrez Gene ID NO: 945862で特定される塩基配列を有する、Escherichia coliのtopA遺伝子の塩基配列を有するDNA、Entrez Gene ID NO: 947499および947501で特定される塩基配列を有する、Escherichia coliのparCE遺伝子の塩基配列を有するDNA、Entrez Gene ID NO: 1021373で特定される塩基配列を有する、Corynebacterium glutamicumのNCBI Accession No. NCgl0304で特定される塩基配列を有するDNA又はEntrez Gene ID NO: 1019801で特定される塩基配列を有する、NCBI Accession No. NCgl1769で特定される塩基配列を有するDNAおよびそれらのホモログ遺伝子の塩基配列を有するDNAをあげることができる。
ホモログ遺伝子の塩基配列を有するDNAとしては、例えば上記したBLASTやFASTA等を用いて上記したパラメータ等に基づいて計算したときに、配列番号23、27、31、35及び39のいずれかで表される塩基配列からなるDNAと少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
DNAトポイソメラーゼをコードするDNAは、公知のDNAトポイソメラーゼをコードするDNAの塩基配列情報に基づいて、親株よりPCR法等により取得することができる。
親株の染色体DNA上の、DNAトポイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAの改変により得られる、親株より該タンパク質の比活性が向上した微生物としては、親株が有する該タンパク質のアミノ酸配列において1アミノ酸以上、好ましくは1〜10アミノ酸、より好ましくは1〜5アミノ酸、さらに好ましくは1〜3アミノ酸が置換しているアミノ酸配列を有するタンパク質を有しているため、親株のDNAトポイソメラーゼ活性を有するタンパク質と比較して、その活性が向上した変異型タンパク質を有する微生物をあげることができる。
そのようなプロモーターとしては、E. coliで機能するtrpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、エシェリヒア・コリやファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターなどの人為的に造成したプロモーターもあげることができる。
DNAトポイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAは、例えば配列番号24、28、32、36及び40のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAの塩基配列に基づき設計することができるプローブDNAを用いた、E. coliなどの微生物の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション、又は該塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた、微生物、好ましくはE. coliの染色体DNAを鋳型としたPCR[PCR Protocols, Academic Press (1990)]により取得することができる。
宿主細胞としては、Escherichia属に属する微生物などをあげることができる。Escherichia属に属する微生物としては、例えば、E. coli XL1-Blue、E. coli XL2-Blue、E. coliDH1、E. coli MC1000、E. coli ATCC 12435、E. coliW1485、E. coli JM109、E. coli HB101、E. coliNo.49、E. coli W3110、E. coli NY49、E. coliMP347、E. coli NM522、E. coli BL21、E. coliME8415等をあげることができる。
塩基配列を決定した結果、取得されたDNAが部分長であった場合は、該部分長DNAをプローブに用いた、染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション法等により、全長DNAを取得することができる。
上記のようにして取得されるDNAとして、例えば、配列番号24、28、32、36及び40のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA、及び配列番号23、27、31、35及び39のいずかで表される塩基配列を有するDNAをあげることができる。
(B)I型又はIV型のDNAトポイソメラーゼをコードするDNAで形質転換して得られる微生物
親株をDNAトポイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAで形質転換して得られる微生物としては:
[5]上記[3]または[4]のいずれかに記載のタンパク質をコードするDNA;
[6]配列番号23、35及び39のいずれかで表される塩基配列を有するDNAまたは、topA遺伝子、NCgl0304若しくはNCgl1769のホモログ遺伝子の塩基配列を有するDNA;
[7]配列番号27で表される塩基配列を有するDNA、配列番号31で表される塩基配列を有するDNAまたはparCE遺伝子のホモログ遺伝子の塩基配列を有するDNA;
を用いて親株を形質転換して得られる微生物をあげることができる。
DNAトポイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAをもとにして、必要に応じて、DNAトポイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。また、DNAトポイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードする部分の塩基配列を、宿主細胞での発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することにより、転写効率が良いDNA断片を調製することができる。
該組換え体DNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、DNAトポイソメラーゼ活性を有するタンパク質の活性が宿主細胞、すなわち親株より向上した形質転換体を得ることができる。
原核生物を宿主細胞として用いる場合は、DNAトポイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを有する組換え体DNAは、原核生物中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、DNAトポイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA、転写終結配列より構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
このような組換え体DNAとしては、例えば後述するpStopA、pSparCE、pCG0304及びpCG1769をあげることができる。
2.本発明のL‐グルタミン又はL-グルタミン酸の製造法
上記1の方法で調製することができる微生物を培地に培養し、培養物中にL−グルタミン又はL-グルタミン酸を生成、蓄積させ、該培養物からL−グルタミン又はL-グルタミン酸を採取することにより、L−グルタミン又はL-グルタミン酸を製造することができる。
炭素源としては、使用する微生物の資化できる炭素源であればいずれでもよく、例えばグルコース、糖蜜、フラクトース、シュークロース、マルトース、でんぷん加水分解物等の糖類、エタノール、グリセロールのようなアルコール類、酢酸、乳酸、コハク酸等の有機酸類などをあげることができる。
無機塩としては、リン酸第一水素カリウム、リン酸第二水素カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム等を用いることができる。
さらに必要に応じて本発明の微生物が生育に要求する物質(例えばアミノ酸要求性の微生物であれば要求アミノ酸)を添加することができる。
培養物中に蓄積したL−グルタミン又はL-グルタミン酸は、通常の精製方法によって採取することができる。例えばL−グルタミン又はL-グルタミン酸は、培養後、遠心分離などで菌体や固形物を除いたあと、活性炭処理、イオン交換樹脂処理、濃縮、結晶分別等の公知の方法を併用することによって採取することができる。
(1)yeiG遺伝子発現プラスミドの造成
以下の方法でyeiG遺伝子発現プラスミドを造成した。
エシェリヒア・コリ JM101株をLB培地[10g/l バクトトリプトン(ディフコ社製)、5g/l イーストエキス(ディフコ社製)、5g/l 塩化ナトリウム]に植菌し30℃で一晩培養した。培養後、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーに記載の飽和フェノールを用いる方法により、該微生物の染色体DNAを単離精製した。
PCRは、鋳型として0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5 unitsのPyrobest DNAポリメラーゼ(タカラバイオ製)、5μLのPyrobestDNAポリメラーゼ用×10緩衝液(タカラバイオ製)、各200μmol/LのdNTP(dATP、dGTP、dCTPおよびdTTP)を含む反応液50μLを調製し、96℃で15秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間の工程を30回繰り返すことにより行った。
該DNA断片およびtrpプロモーターを含む発現ベクターpTrS30[エシェリヒア・コリ JM109/pTrS30(FERM BP-5407)より調製]をそれぞれHindIII、SacIで切断し、アガロースゲル電気泳動によりDNA断片を分離した後、ジーンクリーンIIキット(GENECLEAN II kit、BIO 101 社製)を用いて、制限酵素消化DNA断片をそれぞれ回収した。
得られた連結体DNAを用いてエシェリヒア・コリ DH5α株(タカラバイオ製)を形質転換し、アンピシリン耐性を指標に形質転換体を選択した。選択した形質転換体のコロニーより公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、制限酵素を用いてその構造を解析することにより、trpプロモーター下流にyeiG遺伝子が連結された発現ベクターであるpTyeiGが取得されていることを確認した。
(2)proBA遺伝子欠損エシェリヒア・コリJM101の作製
(a)遺伝子欠損用マーカー遺伝子の構築
相同組換えを用いたエシェリヒア・コリの遺伝子欠損および遺伝子置換のためのマーカー遺伝子として用いるcat遺伝子およびsacB遺伝子を以下の方法で単離した。クローニングベクターpHSG396(タカラバイオ社製)上のcat遺伝子の上流約200bpから下流約60bpまでを増幅するプライマーとして配列番号5および6で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、バチルス・ズブチリス168株のsacB遺伝子の上流約300bpから下流約20bpまでを増幅するプライマーとして配列番号7および8で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成した。なお、配列番号5および7で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドにはSalI認識サイトを付与した。
配列番号9および10で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、並びに配列番号12および14で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをそれぞれプライマーセットとして用い、常法により調製したエシェリヒア・コリJM101株のゲノムDNAを鋳型として1回目のPCRを行い、増幅産物を取得した。
Qiaquick PCR purification kit(キアゲン社製)を用いて精製した増幅産物を等モルの比率で混合したものを鋳型として2回目のPCRを行い、増幅産物を取得し、再びQiaquick PCR purification kit(キアゲン社製)を用いて精製した。精製したDNA断片をアガロース電気泳動に供してproBA遺伝子が欠失したproBA周辺領域を含む約2kbのDNA断片が増幅されたことを確認した。
10mmol/LのL−アラビノースと50μg/mlのアンピシリンの存在下で培養して得られたエシェリヒア・コリ JM101/pKD46に、電気パルス法により上記で取得したcat-sacB断片の挿入されたproBA遺伝子周辺領域を含むDNA断片を導入した。
上記のようにしてproBA遺伝子が欠損した株を取得し、エシェリヒア・コリJP株と命名した。得られたJP株に(1)で得られたpTyeiGを形質転換してpTyeiGを保有する形質転換体を取得し、JP/pTyeiGと命名した。
(1)ナリジクス酸耐性変異株の取得
実施例1で得られたJP/pTyeiGをLB+アンピシリン培地が入った太型試験管に接種し、対数増殖期まで培養した後、ナリジクス酸を5 mg/L含むM9寒天平板培地(0.6% リン酸二ナトリウム、0.3% リン酸一カリウム、0.05% 塩化ナトリウム、0.1% 、0.2%グルコース、0.00147% 塩化カルシウム二水和物、0.05% 硫酸マグネシウム七水和物、0.001% ビタミンB1、1.6% バクトアガー)に塗布した。該寒天平板培地を30℃で3〜5日間培養し、生育してきたコロニーを釣菌分離し、ナリジクス酸に対する耐性を有する変異株を得た。
表1にNAR01株、NAR02株及びNAR03株の培養上清中のL-グルタミンおよびL-グルタミン酸の蓄積量を測定した結果を示した。表1に示した通り、ナリジクス酸耐性を有するNAR01、NAR02、NAR02株はナリジクス酸耐性を有さないJP/pTyeiG株に比べL-グルタミンおよびL-グルタミン酸の蓄積量が顕著に向上していた。
NAR01、NAR02、NAR03株から染色体DNAを調製し、配列番号15および16で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、および配列番号17および18で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、各々の変異株のgyrAを含む2.8 kbのDNA断片、gyrB を含む2.6 kbのDNA断片を得た。これらのDNA断片の塩基配列を常法に従い決定したところ、NAR01株のgyrA遺伝子のコードするポリペプチドには821番目のGly残基(ggc)がSer残基(agc)に置換される変異および830番目のAsp残基(gat)がAsn残基(aat)に置換される変異(以下、G821S D830Nと称す)が見出された。同様にNAR02株のgyrB遺伝子のコードするポリペプチドの466番目にGlu残基(gag)が挿入される変異(以下、466Eと称す)が、NAR03株のgyrA遺伝子のコードするポリペプチドには84番目のAla残基(gcg)がGlu残基(gag)に置換される変異(以下、A84Eと称す)が見出された。
実施例2にて見出されたDNAジャイレースをコードする遺伝子(gyrA又はgyrB)上の変異を実施例1において取得したJP株に以下の方法で導入した。NAR01、NAR03株の染色体DNAを鋳型として配列番号15および16で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、gyrAにG821S D830N変異を含む2.8 kbのDNA断片、およびgyrAにA84E変異を含む2.8 kbのDNA断片を増幅し、Qiaquick PCR purification kit(キアゲン社製)を用いて精製した。同様にNAR02株の染色体DNAを鋳型として配列番号17および18で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、gyrBに466E変異を含む2.6 kbのDNA断片を増幅し、Qiaquick PCR purification kit(キアゲン社製)を用いて精製した。
(2)DNAジャイレース変異導入株のDNAジャイレース活性の確認
(1)で得たGYR1株、GYR2株、GYR3株、およびJP株をpBR322で形質転換した後、100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で培養することでpBR322を保持するエシェリヒア・コリGYR1株(以下、GYR1/pBR322と称す)、pBR322を保持するエシェリヒア・コリGYR2株(以下、GYR2/pBR322と称す)、pBR322を保持するエシェリヒア・コリGYR3株(以下、GYR3/pBR322と称す)、およびpBR322を保持するエシェリヒア・コリJP株(以下、JP/pBR322と称す)を選択した。これらの形質転換体を実施例2(1)に記載の条件で2本ずつ培養し、一方には培養を停止する10分前に200mg/Lの濃度になるようにナリジクス酸を添加した。培養停止後、各培養物からQIAspin miniprep kit(キアゲン社製)でpBR322を抽出した。文献(Molecular Microbiology 23:381-386,1997)で報告されている方法に基づき、それぞれの菌体から抽出したpBR322をクロロキン2.5 mg/L、もしくは25 mg/L添加条件で電気泳動を行うことで超らせん構造を比較した。
実施例3(1)で得られたGYR1、GYR2、GYR3株にpTyeiGおよび、pTrs30を形質転換した後、100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布して、30℃で培養することでpTyeiGもしくはpTrs30を保持するエシェリヒア・コリGYR1株(以下、GYR1/pTyeiG、GYR1/pTrs30と称す)、pTyeiGもしくはpTrs30を保持するエシェリヒア・コリGYR2株(以下、GYR2/pTyeiG、GYR2/pTrs30と称す)、およびpTyeiGもしくはpTrs30を保持するエシェリヒア・コリGYR3株(以下、GYR3/pTyeiG、GYR3/pTrs30と称す)を選択した。これらの菌株を実施例3と同様の条件で培養し、培養上清中の培養生成物の蓄積量をHPLCにより定量した。結果を表2に示す。表2に示した通り、DNAジャイレースの活性を低下させる変異を導入することで、L−グルタミン、L−グルタミン酸の蓄積量は顕著に向上した。
エシェリヒア・コリにおいてグルタミン酸ラセマーゼ(遺伝子名 murI)を強制的に発現させると、プラスミドの複製効率の低下やDNAジャイレース活性の低下が認められることが報告されている(The Journal of Biological chemistry 277:39070-39073, 2002)。
PCRはプライマーDNAとして上記プライマーセットを用いる以外、実施例1(1)と同様の条件で行った。PCRで得られた増幅DNA断片、およびpSTV28をそれぞれEcoRIおよびSalIで消化した後、実施例1(1)と同様に両DNAを連結し、連結体DNAを用いてエシェリヒア・コリ DH5α株を形質転換した。以上の方法でlacプロモーター下流にmurI遺伝子が連結された発現ベクターを造成し、pSmurIと命名した。
(2)エシェリヒア・コリDNAジャイレース阻害タンパク質発現株のL−グルタミン生産試験
上記(1)で得たJP/pTyeiG/pSTV28、JP/pTyeiG/pSmurIを実施例2(1)に記載の条件で培養し、培養上清中の培養生成物の蓄積量をHPLCにより定量した。結果を表3に示す。表3に示した通り、DNAジャイレースの活性を低下させる活性を有するタンパク質を発現させることで、L−グルタミンの蓄積量は顕著に向上した。
エシェリヒア・コリのI型DNAトポイソメラーゼ(遺伝子名 topA)を発現するプラスミド、およびIV型DNAトポイソメラーゼ(遺伝子名parC、parE)を発現するプラスミドを以下の方法で造成した。
配列番号25および26で表される塩基配列からなる合成DNAをプライマーセットとして用いてPCRを行った。PCRはプライマーDNAとして上記プライマーセットを用いる以外、実施例1(1)と同様の条件で行った。PCRで得られた2.8 kbpのDNA断片、およびpSTV28をそれぞれSacIおよびSalIで消化した後、実施例1(1)と同様に両DNAを連結し、連結体DNAを用いてエシェリヒア・コリ DH5α株を形質転換した。以上の方法でlacプロモーター下流にtopA遺伝子が連結された発現ベクターを造成し、pStopAと命名した。
同様に配列番号33および34で表される塩基配列からなる合成DNAをプライマーセットとして用いてPCRを行い、1.9 kbpのDNA断片を得た。PCRはプライマーDNAとして上記プライマーセットを用いる以外、実施例1(1)と同様の条件で行った。Qiaquick PCR purification kit(キアゲン社製)を用いて精製した増幅産物を等モルの比率で混合したものを鋳型として2回目のPCRを行い、増幅産物を取得し、再びQiaquick PCR purification kit(キアゲン社製)を用いて精製した。PCRで得られた増幅DNA断片、およびpSTV28をそれぞれEcoRIおよびSalIで消化した後、実施例1(1)と同様に両DNAを連結し、連結体DNAを用いてエシェリヒア・コリ DH5α株を形質転換した。以上の方法でlacプロモーター下流にparC、parE遺伝子が連結された発現ベクターを造成し、pSparCEと命名した。
(2)エシェリヒア・コリDNAトポイソメラーゼ発現株のL−グルタミン生産試験
上記(1)で得たJP/pTyeiG/pSTV28、JP/pTyeiG/pStopA、JP/pTyeiG/pSparCEを実施例3に記載の条件で培養し、培養上清中の培養生成物の蓄積量をHPLCにより定量した。結果を表4に示す。表4に示した通り、I型、IV型DNAトポイソメラーゼを過剰発現させることで、L−グルタミンの蓄積量は顕著に向上した。
コリネバクテリウム・グルタミカムの野生株ATCC13032株の染色体DNAを、斉藤らの方法[Biochim. Biophys. Acta, 72, 619(1963)]により調製した。
配列番号37および38で表される塩基配列からなる合成DNA、または配列番号41および42で表される塩基配列からなる合成DNAをそれぞれプライマーセットとして用い、PCRを行った。PCRは鋳型としてコリネバクテリウム・グルタミカムの野生型ATCC13032株の染色体DNAを用いること、プライマーとして上記プライマーセットを用いること以外、実施例1(1)と同様の条件で行い、NCgl0304とその上流を含む約3.2 kbpの断片とNCgl1769とその上流を含む約2.5 kbpの断片を増幅した。これらの断片をQiaquick PCR purification kit(キアゲン社製)を用いて精製した後、BamHI(タカラバイオ社製)で切断した。
このpCS299P断片に上記で得られたBamHI処理したNCgl0304を含む約3.2 kbpのDNA断片、およびNCgl1769を含む約2.5 kbpのDNA断片を実施例1(1)と同様の方法でクローン化した。
(2)コリネバクテリウム・グルタミカムDNAトポイソメラーゼ過剰発現株のL−グルタミン生産試験
上記(1)で取得したGLA2/pCG0304、GLA2/pCG1769株およびコントロールとしてpCS299PをGLA2株に導入した株(以下GLA2/pCS299Pと称す)を、カナマイシンを25 mg/Lになるように添加したBYG寒天培地〔グルコース10g、肉エキス7g、ペプトン10g、塩化ナトリウム3g、酵母エキス(ディフコ社製)5g、バクトアガー(ディフコ社製)18gを水1Lに含みpH7.2に調整した培地〕を用い30℃で24時間培養し、各菌株をそれぞれカナマイシンを200 mg/Lになるように添加した種培地〔グルコース50g、ブイヨン20g、硫酸アンモニウム5g、尿素5g、リン酸二水素カリウム2g、硫酸マグネシウム7水和物0.5g、硫酸鉄7水和物1mg、硫酸銅5水和物0.4mg、硫酸亜鉛7水和物0.9mg、塩化マンガン4水和物0.07mg、4ホウ酸2ナトリウム10水和物0.01mg、7モリブデン酸6アンモニウム4水和物0.04mg、チアミン塩酸塩0.5mg、ビオチン0.1mgを水1Lに含みpH7.2に調整後、炭酸カルシウムを10g加えた培地〕6mlを含む試験管に植菌し、30℃で12時間〜16時間培養した。
GS2株(国際公開第2007/074857号パンフレット)をBY培地〔肉エキス7g、ペプトン10g、塩化ナトリウム3g、酵母エキス(ディフコ社製)5g、を水1Lに含みpH7.2に調整した培地〕6 mlを含む太型試験管に植菌し、終夜培養した種培養液をBY培地6 mlを含む太型試験管に1%植菌し、30℃で対数増殖期まで培養した。この菌体を生理食塩水で洗浄した後、ナリジクス酸を75 mg/Lになるように添加したMMYE培地(グルコース10g、酵母エキス1g、硫酸アンモニウム1g、リン酸二水素カリウム1g、リン酸水素二カリウム1g、硫酸マグネシウム7水和物0.3g、硫酸鉄7水和物10mg、硫酸マンガン5水和物3.6mg、塩化カルシウム2水和物10mg、パントテン酸カルシウム10mg、チアミン塩酸塩5mg、ビオチン0.03mgを水1Lに含みpH7.2に調整した培地)に塗布し、30℃で3〜5日間培養した。生育してきたコロニーを釣菌分離し、DNAジャイレース阻害剤に対する耐性を有する変異株GNA1株、GNA2株を得た。
(2)DNAジャイレース阻害剤に対する耐性を有するコリネバクテリウム・グルタミカムL−グルタミンおよびL−グルタミン酸生産変異株のL−グルタミンおよびL−グルタミン酸生産試験
上記(1)において取得したGNA1株、GNA2株およびGS2株を培地からカナマイシンを除いた実施例7(2)に記載の条件でL−グルタミンおよびL−グルタミン酸生産試験を行った。結果を表6に示す。表6に示したとおり、コリネバクテリウム・グルタミカムにおいてもDNAジャイレース阻害剤耐性を付与することでL−グルタミンおよびL−グルタミン酸の蓄積量は顕著に向上した。
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Claims (4)
- L−グルタミン又はL−グルタミン酸を生産する能力を有し、かつ二本鎖DNAの超らせん形成能が親株に比べて低下したエシェリヒア属又はコリネバクテリウム属に属する微生物を培地に培養し、該培地中にL−グルタミン又はL−グルタミン酸を生成、蓄積せしめ、該培地中からL−グルタミン又はL−グルタミン酸を採取することを特徴とする、L−グルタミン又はL−グルタミン酸の製造法。
- 微生物が、親株に比べてDNAジャイレース活性が低下した微生物である、請求項1のL−グルタミン又はL−グルタミン酸の製造法。
- 親株に比べてDNAジャイレース活性が低下した微生物が、親株に比べてDNAジャイレース阻害蛋白質の活性が向上した微生物である、請求項2のL−グルタミン又はL−グルタミン酸の製造法。
- 微生物が、親株に比べてI型又はIV型のトポイソメラーゼ活性が向上した微生物である、請求項1のL−グルタミン又はL−グルタミン酸の製造法。
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