JP2014073118A - ジメチロールカルボン酸誘導体の製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】効率的なジメチロールカルボン酸誘導体の製造法を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質の変異蛋白質もしくは相同蛋白質の活性が増強した微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源及びトリス(ヒドロキシメチル)誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジメチロールカルボン酸誘導体を生成、蓄積させ、該媒体から該ジメチロールカルボン酸誘導体を採取することを特徴とするジメチロールカルボン酸誘導体の製造法。
【選択図】なし
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質の変異蛋白質もしくは相同蛋白質の活性が増強した微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源及びトリス(ヒドロキシメチル)誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジメチロールカルボン酸誘導体を生成、蓄積させ、該媒体から該ジメチロールカルボン酸誘導体を採取することを特徴とするジメチロールカルボン酸誘導体の製造法。
【選択図】なし
Description
本発明は、微生物を用いたジメチロールカルボン酸誘導体の効率的な製造方法に関する。
ジメチロールカルボン酸誘導体は、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、各種化成品中間体として重要な化合物である。ジメチロールカルボン酸誘導体の製造法としては、過酸化水素を用いた化学的酸化による方法(特許文献1、2参照)が知られている。しかしながら、過酸化水素を用いた化学的酸化による方法は、反応条件が激しく、副反応による過酸化物の生成を伴うため、効率面と環境面から最善の方法とは言えない。
一方、反応条件が穏やかである微生物酸化による方法も知られている。例えば、ロドコッカス(Rhodococcus)属またはアグロバクテリウム(Agrobacterium)属に属する微生物を用いた方法(特許文献3参照)およびアセトバクター(Acetobacter)属またはグルコノバクター(Gluconobacter)属に属する細菌を用いた方法(特許文献4参照)が知られている。
グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans) ATCC621Hおよびグルコノバクター・フラツリイ(Gluconobacter frateurii) NBRC3271のSldAは、ソルビトール酸化酵素として報告されているが、トリス(ヒドロキシメチル)誘導体を酸化するとの報告はない。
本発明の課題は、微生物を用いた効率的なジメチロールカルボン酸誘導体の製造法を提供することにある。
本発明は、以下の(1)および(2)に関する。
(1)親株の微生物に比べ、以下の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の活性が増強した微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源および式(I)
〔式中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよいアリール基を、好ましくは、水素原子、1または2個のC1-6アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、1〜3個のハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基もしくはアミノ基などで置換されていてもよいC1-6アルキル基、または1〜3個のハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基もしくはアミノ基などで置換されていてもよいC6-18アリール基を、より好ましくは、1個のヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-3アルキル基を、特に好ましくは、1個のヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-2アルキル基を、最も好ましくは、メチル基、エチル基またはメチロール基を示す。〕で表されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体(以下、化合物Iともいう。)を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に式(II)
〔式中、Rは前記と同義である〕で表されるジメチロールカルボン酸誘導体(以下、化合物IIともいう。)を生成、蓄積させ、該水性媒体から該ジメチロールカルボン酸誘導体を採取することを特徴とするジメチロールカルボン酸誘導体の製造法。
[1]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[2]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ化合物Iを酸化して化合物IIを生成する活性(以下、化合物I酸化活性ともいう。)を有する変異蛋白質、および、
[3]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ化合物I酸化活性を有する上記[1]の蛋白質の相同蛋白質
(2)微生物が、グルコノバクター属、アセトバクター属、グルコンアセトバクター属またはエシェリヒア属に属する微生物である、上記(1)記載の製造法。
(1)親株の微生物に比べ、以下の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の活性が増強した微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源および式(I)
〔式中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよいアリール基を、好ましくは、水素原子、1または2個のC1-6アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、1〜3個のハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基もしくはアミノ基などで置換されていてもよいC1-6アルキル基、または1〜3個のハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基もしくはアミノ基などで置換されていてもよいC6-18アリール基を、より好ましくは、1個のヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-3アルキル基を、特に好ましくは、1個のヒドロキシ基で置換されていてもよいC1-2アルキル基を、最も好ましくは、メチル基、エチル基またはメチロール基を示す。〕で表されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体(以下、化合物Iともいう。)を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に式(II)
〔式中、Rは前記と同義である〕で表されるジメチロールカルボン酸誘導体(以下、化合物IIともいう。)を生成、蓄積させ、該水性媒体から該ジメチロールカルボン酸誘導体を採取することを特徴とするジメチロールカルボン酸誘導体の製造法。
[1]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[2]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ化合物Iを酸化して化合物IIを生成する活性(以下、化合物I酸化活性ともいう。)を有する変異蛋白質、および、
[3]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ化合物I酸化活性を有する上記[1]の蛋白質の相同蛋白質
(2)微生物が、グルコノバクター属、アセトバクター属、グルコンアセトバクター属またはエシェリヒア属に属する微生物である、上記(1)記載の製造法。
本発明により、親株の微生物に比べ、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質の変異蛋白質もしくは相同蛋白質の活性が増強した微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源及びトリス(ヒドロキシメチル)誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中にジメチロールカルボン酸誘導体を生成、蓄積させ、該媒体から該ジメチロールカルボン酸誘導体を採取することを特徴とするジメチロールカルボン酸誘導体の製造法を提供することができる。
1.本発明の製造法に用いられる微生物
本発明の製造法で用いられる微生物としては、以下の(1)または(2)に記載の微生物を挙げることができる。
本発明の製造法で用いられる微生物としては、以下の(1)または(2)に記載の微生物を挙げることができる。
(1)親株の微生物に比べ、以下の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の活性が増強した微生物
本発明の製造法に用いられる微生物としては、以下の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質:
[1]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[2]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ化合物I酸化活性を有する変異蛋白質、および
[3]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ化合物I酸化活性を有する上記[1]の蛋白質の相同蛋白質
の活性が増強した微生物をあげることができる。
本明細書において化合物I酸化活性とは、ピロロキノリンキノンを補酵素として、化合物Iを酸化して、化合物IIを生成する活性をいう。
本明細書において変異蛋白質とは、元となる蛋白質のアミノ酸配列中のアミノ酸残基を人為的に欠失もしくは置換、または該アミノ酸配列中にアミノ酸を挿入もしくは付加して得られる蛋白質をいう。
本明細書において相同蛋白質とは、元となる蛋白質と構造および機能が類似することにより、その蛋白質をコードする遺伝子が進化上の起源を元の蛋白質をコードする遺伝子と同一にすると考えられる蛋白質であって、自然界に存在する生物が有する蛋白質をいう。
本発明の製造法に用いられる微生物としては、以下の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質:
[1]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[2]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ化合物I酸化活性を有する変異蛋白質、および
[3]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ化合物I酸化活性を有する上記[1]の蛋白質の相同蛋白質
の活性が増強した微生物をあげることができる。
本明細書において化合物I酸化活性とは、ピロロキノリンキノンを補酵素として、化合物Iを酸化して、化合物IIを生成する活性をいう。
本明細書において変異蛋白質とは、元となる蛋白質のアミノ酸配列中のアミノ酸残基を人為的に欠失もしくは置換、または該アミノ酸配列中にアミノ酸を挿入もしくは付加して得られる蛋白質をいう。
本明細書において相同蛋白質とは、元となる蛋白質と構造および機能が類似することにより、その蛋白質をコードする遺伝子が進化上の起源を元の蛋白質をコードする遺伝子と同一にすると考えられる蛋白質であって、自然界に存在する生物が有する蛋白質をいう。
上記[2]の変異蛋白質において、アミノ酸が欠失、置換、挿入または付加されたとは、同一配列中の任意の位置において、1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加されていてもよい。欠失、置換、挿入または付加されるアミノ酸の数は1〜20個、好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個である。
置換、挿入または付加されるアミノ酸は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−アルギニン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システインなどがあげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、O-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
以下に、相互に置換可能なアミノ酸の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、O-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
アミノ酸配列や塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J. Mol. Biol., 215, 403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータは例えばScore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータは例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。
親株の微生物に比べ、上記の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の活性が増強した微生物としては、(a)親株の染色体DNA上に存在する、該蛋白質をコードするDNAを有する遺伝子を改変することにより得られる、i)親株に比べ、該蛋白質の比活性が増強した微生物、及びii)親株に比べ、該遺伝子の転写量または該蛋白質の生産量が増大した微生物、並びに、(b)該蛋白質をコードするDNAを有する組換え体DNAで親株の微生物を形質転換することにより、親株よりも該蛋白質をコードする遺伝子のコピー数が増大した微生物を挙げることができる。
従って、本明細書において「蛋白質の活性が増強した」とは、微生物として、化合物Iを酸化して化合物IIを生成する能力が増強していることを意味する。また、本明細書において「蛋白質の比活性」とは、上記の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の単位量あたりの化合物I酸化活性を意味する。
従って、本明細書において「蛋白質の活性が増強した」とは、微生物として、化合物Iを酸化して化合物IIを生成する能力が増強していることを意味する。また、本明細書において「蛋白質の比活性」とは、上記の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の単位量あたりの化合物I酸化活性を意味する。
本明細書において遺伝子とは、該遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列をコードする領域(ORF)に加え、プロモーター、オペレーターなどの遺伝子の発現に関する制御機能を有する領域(調節領域)を含む。
上記(a)i)の微生物としては、親株が有する該蛋白質のアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸、より好ましくは1〜10個のアミノ酸、最も好ましくは1〜5個のアミノ酸が置換しているアミノ酸配列を有する蛋白質を有しているため、親株の該蛋白質と比較して、化合物I酸化活性が増強した変異型蛋白質を有する微生物をあげることができる。
親株に比べ、該蛋白質の比活性が増強した微生物であることは、例えば、該蛋白質をコードするDNAで親株を形質転換して得られる形質転換株の培養物と化合物Iとを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に生成、蓄積した化合物IIを該親株のそれと比較することにより確認できる。
親株に比べ、該蛋白質の比活性が増強した微生物であることは、例えば、該蛋白質をコードするDNAで親株を形質転換して得られる形質転換株の培養物と化合物Iとを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に生成、蓄積した化合物IIを該親株のそれと比較することにより確認できる。
上記(a)ii)の微生物としては、親株の染色体DNA上に存在する該遺伝子の転写調節領域またはプロモーター領域の塩基配列において1塩基以上、好ましくは1〜10塩基、より好ましくは1〜5塩基、さらに好ましくは1〜3塩基の塩基が置換している転写調節領域またはプロモーター領域を有しているため、親株と比較して、該遺伝子の発現量が増大した微生物、および親株の染色体DNA上に存在する該遺伝子のプロモーター領域を公知の強力なプロモーター配列と置換して得られる、該遺伝子の発現量が増大した微生物をあげることができる。
あるいは、親株が有する該蛋白質のアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸、より好ましくは1〜10個のアミノ酸、最も好ましくは1〜5個のアミノ酸が置換しているアミノ酸配列を有する変異蛋白質をコードするDNAを有しているため、親株のmRNAと比較して、該蛋白質への翻訳効率(mRNAの安定化を含む)が増強したmRNAを生成する変異DNAを有する微生物をあげることができる。
あるいは、親株が有する該蛋白質のアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸、より好ましくは1〜10個のアミノ酸、最も好ましくは1〜5個のアミノ酸が置換しているアミノ酸配列を有する変異蛋白質をコードするDNAを有しているため、親株のmRNAと比較して、該蛋白質への翻訳効率(mRNAの安定化を含む)が増強したmRNAを生成する変異DNAを有する微生物をあげることができる。
親株に比べ、該遺伝子の転写量または該蛋白質の生産量が増大した微生物であることは、例えば、該遺伝子の転写量を、ノーザン・ブロッティングにより、または該蛋白質の生産量をウェスタン・ブロッティングにより、親株と比較することにより確認することができる。
上記(b)の微生物としては、該蛋白質をコードするDNAを有する組換え体DNAで親株の微生物を形質転換することにより、染色体DNA上において該蛋白質をコードする遺伝子のコピー数が増大した微生物、およびプラスミドDNAとして染色体DNA外に該蛋白質をコードする遺伝子を保有させた微生物を挙げることができる。
親株の染色体DNA上において該蛋白質をコードする遺伝子のコピー数が増大した微生物、およびプラスミドDNAとして染色体DNA外に該蛋白質をコードする遺伝子を保有させた微生物であることは、例えば、微生物が元来、染色体DNA上に有する該遺伝子を増幅することはできないが、形質転換により導入された該遺伝子は増幅可能なプライマーセットを用いてPCRにより増幅産物を確認する方法、および該遺伝子の転写量をノーザン・ブロッティングにより、または該蛋白質の生産量をウェスタン・ブロッティングにより、親株と比較する方法等により確認することができる。
上記の化合物I酸化活性を有する蛋白質をコードするDNAとしては、具体的には、以下の[4]〜[7]からなる群より選ばれるDNA:
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA、
[5]配列番号1または3で表される塩基配列を有するDNA、
[6]配列番号1または3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ化合物I酸化活性を有する上記[1]の蛋白質の相同蛋白質をコードするDNA、および、
[7]配列番号1または3で表される塩基配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ化合物I酸化活性を有する上記[1]の蛋白質の相同蛋白質をコードするDNA
をあげることができる。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA、
[5]配列番号1または3で表される塩基配列を有するDNA、
[6]配列番号1または3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ化合物I酸化活性を有する上記[1]の蛋白質の相同蛋白質をコードするDNA、および、
[7]配列番号1または3で表される塩基配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ化合物I酸化活性を有する上記[1]の蛋白質の相同蛋白質をコードするDNA
をあげることができる。
ここでいう「ハイブリダイズする」とは、特定の塩基配列を有するDNAまたは該DNAの一部にDNAがハイブリダイズする工程である。したがって、該特定の塩基配列を有するDNAまたは該DNAの一部の塩基配列は、ノーザンまたはサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、またはPCR解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。プローブとして用いるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAをあげることができ、プライマーとして用いられるDNAとしては、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAをあげることができる。
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えばモレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for General and Molecular Bacteriology, ASM Press(1994)、Immunology methods manual, Academic press(Molecular)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従ってハイブリダイゼーションの条件を決定し、実験を行うことができる。
また、市販のハイブリダイゼーションキットに付属した説明書に従うことによっても、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを取得することができる。市販のハイブリダイゼーションキットとしては、例えばランダムプライム法によりプローブを作製し、ストリンジェントな条件でハイブリダイゼーションを行うランダムプライムドDNAラベリングキット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)などをあげることができる。
上記のストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH 7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、および20μg/Lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件をあげることができる。
上記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、または変更することにより設定することもできる。上記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えば上記したBLASTおよびFASTA等のプログラムを用いて、上記パラメータに基づいて計算したときに、配列番号1または3で表される塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
上記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、化合物I酸化活性を有する相同蛋白質をコードするDNAであることは、該DNAを発現する組換え体DNAを作製し、該組換え体DNAを化合物I酸化活性を欠損させた宿主細胞に導入して得られる微生物を培養し、得られる培養物から該蛋白質を含む細胞抽出液もしくは膜画分を調製し、該画分を基質である化合物Iと接触させ、結果として生成する化合物IIを高速クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーによって検出することで確認できる。
本明細書において親株とは、遺伝子改変、および形質転換等の対象となる元株のことをいう。遺伝子導入による形質転換の対象となる元株は宿主株ともいう。
本発明で用いられる微生物は、いずれの微生物であってもよいが、好ましくは原核生物、より好ましくは細菌、さらに好ましくはグルコノバクター属(Gluconobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、グルコノアセトバクター属(Gluconacetobacter)などの酢酸菌が挙げられる。グルコノバクター属の野生株としてはグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans) ATCC621H、または(グルコノバクター・フラツリイ(Gluconobacter frateurii) NBRC3271、グルコノバクター・セリナス(Gluconobacter cerinus) ATCC 12303、およびグルコノバクター・ロザウス(Gluconobacter roseus) ATCC 14960等、アセトバクター属の野生株としては、アセトバクター・エスピィ(Acetobacter sp.)ATCC8303等、グルコノアセトバクター属の野生株としてはグルコノアセトバクター・リクェファシエンス(Gluconacetobacter liquefaciens)ATCC14835等をあげることができる。
上記の酢酸菌株は、化合物I酸化活性を有する蛋白質を元来産生するので、上記(a)の微生物の作製のための親株として利用できるだけでなく、上記の[4]〜[7]からなる群より選ばれるDNAを含む遺伝子を外因的に導入することで、内因性遺伝子の発現に該外因性遺伝子の発現が追加されて全体として該遺伝子の発現を向上させることができる点で有利である。
本発明で用いられる微生物は、いずれの微生物であってもよいが、好ましくは原核生物、より好ましくは細菌、さらに好ましくはグルコノバクター属(Gluconobacter)、アセトバクター属(Acetobacter)、グルコノアセトバクター属(Gluconacetobacter)などの酢酸菌が挙げられる。グルコノバクター属の野生株としてはグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans) ATCC621H、または(グルコノバクター・フラツリイ(Gluconobacter frateurii) NBRC3271、グルコノバクター・セリナス(Gluconobacter cerinus) ATCC 12303、およびグルコノバクター・ロザウス(Gluconobacter roseus) ATCC 14960等、アセトバクター属の野生株としては、アセトバクター・エスピィ(Acetobacter sp.)ATCC8303等、グルコノアセトバクター属の野生株としてはグルコノアセトバクター・リクェファシエンス(Gluconacetobacter liquefaciens)ATCC14835等をあげることができる。
上記の酢酸菌株は、化合物I酸化活性を有する蛋白質を元来産生するので、上記(a)の微生物の作製のための親株として利用できるだけでなく、上記の[4]〜[7]からなる群より選ばれるDNAを含む遺伝子を外因的に導入することで、内因性遺伝子の発現に該外因性遺伝子の発現が追加されて全体として該遺伝子の発現を向上させることができる点で有利である。
他方、該遺伝子を元来有しない微生物であっても、遺伝子操作や培養操作などが容易で、ノウハウが蓄積されている微生物に、外因的に該遺伝子を導入して化合物I酸化活性を付与することによっても、効率的なジメチロールカルボン酸誘導体産生株を製造することが可能である。
そのような微生物としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、パントエア(Pantoea)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、セラチア(Serratia)属、エルビニア(Erwinia)属、サルモネア(Salmonella)属およびモルガネラ(Morganella)属からなる群より選ばれる属に属する微生物、特に好ましくはエシェリヒア属に属する微生物、最も好ましくはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)をあげることができる。
そのような微生物としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、パントエア(Pantoea)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、セラチア(Serratia)属、エルビニア(Erwinia)属、サルモネア(Salmonella)属およびモルガネラ(Morganella)属からなる群より選ばれる属に属する微生物、特に好ましくはエシェリヒア属に属する微生物、最も好ましくはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)をあげることができる。
(2)SldB活性を有する微生物
本発明の製造法に用いられる微生物としては、SldB活性を有する蛋白質を生産する、上記1(1)の微生物を挙げることができる。
SldB活性とは、上記[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の、化合物I酸化活性を活性化させる活性をいう[Biosci. Biotechnol. Biochem. (2002), Vol.66(11), p.2314-2322]。
本発明の製造法に用いられる微生物としては、SldB活性を有する蛋白質を生産する、上記1(1)の微生物を挙げることができる。
SldB活性とは、上記[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の、化合物I酸化活性を活性化させる活性をいう[Biosci. Biotechnol. Biochem. (2002), Vol.66(11), p.2314-2322]。
SldB活性を有する蛋白質とは、該活性を有する蛋白質であればいずれの蛋白質でもよいが、具体的には、以下の[8]〜[10]からなる群より選ばれる蛋白質:
[8]配列番号6または8で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[9]配列番号6または8で表されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつSldB活性を有する変異蛋白質、および、
[10]配列番号6または8で表されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつSldB活性を有する上記[8]の蛋白質の相同蛋白質、
を挙げることができる。
「1〜20個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、SldB活性を有する変異蛋白質」の、欠失、置換、挿入または付加されるアミノ酸残基の数及び位置等は上記1(1)と同様である。
[8]配列番号6または8で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[9]配列番号6または8で表されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつSldB活性を有する変異蛋白質、および、
[10]配列番号6または8で表されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつSldB活性を有する上記[8]の蛋白質の相同蛋白質、
を挙げることができる。
「1〜20個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、SldB活性を有する変異蛋白質」の、欠失、置換、挿入または付加されるアミノ酸残基の数及び位置等は上記1(1)と同様である。
配列番号6または8で表されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる変異蛋白質、あるいは配列番号6または8で表されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる相同蛋白質がSldB活性を有することは、例えば、SldB活性を有する蛋白質をコードする遺伝子を欠失させることにより、化合物I酸化活性が低下または喪失した微生物を、該変異蛋白質または該相同蛋白質をコードするDNAで形質転換して得られる微生物の化合物I酸化活性が、親株の該活性よりも増強していることを確認することにより、確認することができる。
SldB活性を有する蛋白質を生産する、上記1(1)の微生物としては、例えば、SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAで上記1(1)の微生物を形質転換して得られる微生物をあげることができる。
SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAで、上記1(1)の微生物を形質転換して得られる微生物としては、該DNAを有する組換え体DNAで上記1(1)の微生物を形質転換することにより、染色体DNA上において該DNAを保有させた微生物、またはプラスミドDNAとして染色体DNA外に該DNAを保有させた微生物を挙げることができる。
SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAで、上記1(1)の微生物を形質転換して得られる微生物としては、該DNAを有する組換え体DNAで上記1(1)の微生物を形質転換することにより、染色体DNA上において該DNAを保有させた微生物、またはプラスミドDNAとして染色体DNA外に該DNAを保有させた微生物を挙げることができる。
上記1(1)の微生物の染色体DNA上において該DNAを保有させた微生物、およびプラスミドDNAとして染色体DNA外に該DNAを保有させた微生物であることは、例えば、微生物が元来保有する、染色体DNA上に存在する該遺伝子を増幅することはできないが、形質転換により導入された該DNAは増幅可能なプライマーセットを用いてPCRにより増幅産物を確認する方法、および該DNAの転写量をノーザン・ブロッティングにより、または該蛋白質の生産量をウェスタン・ブロッティングにより、上記1(1)の微生物と比較する方法等により確認することができる。
SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAとしては、例えば、以下の[11]〜[14]からなる群より選ばれるDNA
[11]上記[8]〜[10]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA、
[12]配列番号5または7で表される塩基配列を有するDNA、
[13]配列番号5または7で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつSldB活性を有する上記[8]の蛋白質の相同蛋白質をコードするDNA、および、
[14]配列番号5または7で表される塩基配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつSldB活性を有する上記[8]の蛋白質の相同蛋白質をコードするDNA、
をあげることができる。
上記でいう「ハイブリダイズする」との記載並びにDNAのハイブリダイゼーション実験の方法及び条件は、上記1(1)と同様である。
[11]上記[8]〜[10]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA、
[12]配列番号5または7で表される塩基配列を有するDNA、
[13]配列番号5または7で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつSldB活性を有する上記[8]の蛋白質の相同蛋白質をコードするDNA、および、
[14]配列番号5または7で表される塩基配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつSldB活性を有する上記[8]の蛋白質の相同蛋白質をコードするDNA、
をあげることができる。
上記でいう「ハイブリダイズする」との記載並びにDNAのハイブリダイゼーション実験の方法及び条件は、上記1(1)と同様である。
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLASTやFASTA等を用いて、上記したパラメータ等に基づいて計算したときに、配列番号5または7で表される塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
また、SldB活性を有する蛋白質を生産する、上記1(1)の微生物としては、上記1(1)の微生物の親株がSldB活性を元来有する微生物の場合は、上記1(1)の微生物をあげることができる。
SldB活性を元来有する微生物としては、上記の酢酸菌が挙げられる。上記1(1)の微生物が、親株よりも上記[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の生産量または該蛋白質をコードする遺伝子のコピー数が増大した微生物である場合、元来有するSldB活性では、上記[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の化合物I酸化活性を十分に活性化できない場合もあり得るので、SldB活性を元来有する上記1(1)の微生物を、SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAで形質転換して、SldB活性をさらに増強してもよい。
SldB活性を元来有する微生物としては、上記の酢酸菌が挙げられる。上記1(1)の微生物が、親株よりも上記[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の生産量または該蛋白質をコードする遺伝子のコピー数が増大した微生物である場合、元来有するSldB活性では、上記[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の化合物I酸化活性を十分に活性化できない場合もあり得るので、SldB活性を元来有する上記1(1)の微生物を、SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAで形質転換して、SldB活性をさらに増強してもよい。
2.本発明の製造法で用いられる微生物の造成法
(1)上記1(1)の微生物の造成法
上記1(1)の微生物のうち、(a)親株の染色体DNA上に存在する、[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質をコードするDNAを有する遺伝子を改変することにより得られる、i)親株に比べ、化合物I酸化活性の比活性が増強した微生物は、例えば、上記1(1)記載の親株の微生物の、[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の比活性を、通常の突然変異処理法、組換えDNA技術による遺伝子置換法等を用いて、増強させることにより造成することができる。
(1)上記1(1)の微生物の造成法
上記1(1)の微生物のうち、(a)親株の染色体DNA上に存在する、[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質をコードするDNAを有する遺伝子を改変することにより得られる、i)親株に比べ、化合物I酸化活性の比活性が増強した微生物は、例えば、上記1(1)記載の親株の微生物の、[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の比活性を、通常の突然変異処理法、組換えDNA技術による遺伝子置換法等を用いて、増強させることにより造成することができる。
突然変異処理法としては、例えば、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)を用いる方法(微生物実験マニュアル、1986年、131頁、講談社サイエンティフィック社)、紫外線照射法等をあげることができる。
組換えDNA技術による遺伝子置換法としては、該蛋白質をコードするDNAに、部位特異的変異導入法、試験管内における変異剤を用いた変異処理法、またはエラープローンPCR法などに供することにより変異を導入した後、親株の染色体DNA上に存在する該蛋白質をコードする遺伝子と、相同組換え法を用いて置換する方法をあげることができる。
相同組換え法としては、導入したい宿主細胞内では自律複製できない薬剤耐性遺伝子を有するプラスミドDNAと連結して作製できる相同組換え用プラスミドを用いる方法をあげることができ、エシェリヒア・コリで頻用される相同組換えを利用した方法としては、ラムダファージの相同組換え系を利用して、塩基の欠失、置換、挿入または付加を導入する方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 6641-6645(2000)]をあげることができる。
さらに、変異体DNAと共に染色体上に組み込まれた枯草菌レバンシュークラーゼによって大腸菌がシュークロース感受性となることを利用した選択法や、ストレプトマイシン耐性の変異rpsL遺伝子を有する大腸菌に野生型rpsL遺伝子を組み込むことによって大腸菌がストレプトマイシン感受性となることを利用した選択法[Mol. Microbiol., 55, 137(2005), Biosci. Biotechnol. Biochem., 71, 2905 (2007)]等を用いて、親株の染色体DNA上の目的の領域が上記の方法で調製した遺伝子に置換された株を取得することができる。
相同組換え法としては、導入したい宿主細胞内では自律複製できない薬剤耐性遺伝子を有するプラスミドDNAと連結して作製できる相同組換え用プラスミドを用いる方法をあげることができ、エシェリヒア・コリで頻用される相同組換えを利用した方法としては、ラムダファージの相同組換え系を利用して、塩基の欠失、置換、挿入または付加を導入する方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 6641-6645(2000)]をあげることができる。
さらに、変異体DNAと共に染色体上に組み込まれた枯草菌レバンシュークラーゼによって大腸菌がシュークロース感受性となることを利用した選択法や、ストレプトマイシン耐性の変異rpsL遺伝子を有する大腸菌に野生型rpsL遺伝子を組み込むことによって大腸菌がストレプトマイシン感受性となることを利用した選択法[Mol. Microbiol., 55, 137(2005), Biosci. Biotechnol. Biochem., 71, 2905 (2007)]等を用いて、親株の染色体DNA上の目的の領域が上記の方法で調製した遺伝子に置換された株を取得することができる。
特に酢酸菌の相同組換え法としては、外山らの方法(APPLIED ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY, Oct.2007, p.6551-6556)をあげることができる。
また上記の方法に限らず、微生物の染色体上の遺伝子を置換できる方法であれば他の遺伝子置換法も用いることができる。
上記の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質をコードするDNAは、例えば、配列番号1または3で表される塩基配列に基づき設計することができるプローブDNAを用いた、微生物、好ましくは、グルコノバクター属、アセトバクター属またはグルコンアセトバクター属に属する微生物、より好ましくは、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans) ATCC621H、または、グルコノバクター・フラツリイ(Gluconobacter frateurii) NBRC3271の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション、または該塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた、上記微生物の染色体DNAを鋳型としたPCR [PCR Protocols, Academic Press (1990)] により取得することができる。
また、各種の遺伝子配列データベースに対して配列番号1または3で表される塩基配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する配列を検索し、該検索によって得られた塩基配列に基づき、該塩基配列を有する微生物の染色体DNA、cDNAライブラリー等から上記した方法により該蛋白質をコードするDNAを取得することもできる。
取得したDNAをそのまま、あるいは適当な制限酵素などで切断し、常法によりベクターに組み込み、得られた組換え体DNAを宿主細胞に導入した後、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばジデオキシ法 [Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 74, 5463 (1977)]または3700 DNAアナライザー(アプライドバイオシステムズ社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、該DNAの塩基配列を決定することができる。
上記のベクターとしては、pBluescriptII KS(+)(ストラタジーン社製)、pDIRECT[Nucleic Acids Res., 18, 6069 (1990)]、pCR-Script Amp SK(+)(ストラタジーン社製)、pT7Blue(ノバジェン社製)、pCR II(インビトロジェン社製)およびpCR-TRAP(ジーンハンター社製)などをあげることができる。
上記のベクターとしては、pBluescriptII KS(+)(ストラタジーン社製)、pDIRECT[Nucleic Acids Res., 18, 6069 (1990)]、pCR-Script Amp SK(+)(ストラタジーン社製)、pT7Blue(ノバジェン社製)、pCR II(インビトロジェン社製)およびpCR-TRAP(ジーンハンター社製)などをあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69, 2110 (1972)]、プロトプラスト法(特開昭63-248394号公報)、エレクトロポレーション法[Nucleic Acids Res., 16, 6127 (1988)]、および、特に酢酸菌を宿主細胞とする場合は、外山らの方法に準拠したエレクトロポレーション法[Biosci.Biotechnol.Biochem., 69(6), 1120-1129 (2005)]等をあげることができる。
塩基配列を決定した結果、取得されたDNAが部分長であった場合は、該部分長DNAをプローブに用いた、染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション法等により、全長DNAを取得することができる。
更に、決定されたDNAの塩基配列に基づいて、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成装置等を用いて化学合成することにより目的とするDNAを調製することもできる。
更に、決定されたDNAの塩基配列に基づいて、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成装置等を用いて化学合成することにより目的とするDNAを調製することもできる。
上記方法で取得することができるDNAとしては、配列番号2もしくは4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA、または配列番号1もしくは3で表される塩基配列を有するDNAを挙げることができる。
上記方法により取得した微生物が目的の微生物であることは、上記1(1)の方法を用いて確認することができる。
上記1(1)の微生物のうち、(a)親株の染色体DNA上に存在する、[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質をコードするDNAを有する遺伝子を改変することにより得られるii)親株に比べ、該遺伝子の転写量または該蛋白質の生産量が増大した微生物は、例えば、上記1(1)記載の親株の微生物の、[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質をコードする遺伝子の転写量または該蛋白質の生産量を、通常の突然変異処理法、組換えDNA技術による遺伝子置換法等を用いて、増強させることにより造成することができる。
突然変異処理法は、上記の方法をあげることができる。
組換えDNA技術による遺伝子置換法は、上記の方法により得られる、[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質をコードするDNAを有する遺伝子の転写調節領域およびプロモーター領域、例えば該蛋白質の開始コドンの上流側200bp、好ましくは100bpの塩基配列を有するDNAを試験管内における変異処理、またはエラープローンPCRなどに供することにより該DNAに変異を導入した後、親株の染色体DNA上に存在する該蛋白質をコードする遺伝子と、上記の相同組換え法を用いて置換する方法をあげることができる。
また、該遺伝子のプロモーター領域を公知の強力なプロモーター配列と置換することによっても、該蛋白質の生産量が向上した微生物を取得することもできる。当該置換は、上記の相同組換え法に基づいて行うことができる。
突然変異処理法は、上記の方法をあげることができる。
組換えDNA技術による遺伝子置換法は、上記の方法により得られる、[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質をコードするDNAを有する遺伝子の転写調節領域およびプロモーター領域、例えば該蛋白質の開始コドンの上流側200bp、好ましくは100bpの塩基配列を有するDNAを試験管内における変異処理、またはエラープローンPCRなどに供することにより該DNAに変異を導入した後、親株の染色体DNA上に存在する該蛋白質をコードする遺伝子と、上記の相同組換え法を用いて置換する方法をあげることができる。
また、該遺伝子のプロモーター領域を公知の強力なプロモーター配列と置換することによっても、該蛋白質の生産量が向上した微生物を取得することもできる。当該置換は、上記の相同組換え法に基づいて行うことができる。
上記方法により取得した微生物が目的の微生物であることは、上記1(1)の方法を用いて確認することができる。
上記1(1)の微生物のうち、(b)[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質をコードするDNAを有する組換え体DNAで親株の微生物を形質転換することにより、親株よりも該遺伝子のコピー数が増大した微生物は、以下の方法で取得することができる。
上記の方法で得られる、[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質をコードするDNAをもとにして、必要に応じて、該蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。また、該蛋白質をコードする部分の塩基配列を、宿主細胞での発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、生産率が向上した形質転換体を取得することができる。目的の宿主細胞におけるコドン使用頻度の情報は、公共のデータベースを通じて入手することができる。
該DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換え体DNAを作製する。該組換え体DNAで、上記1(1)の親株の微生物を形質転換することにより、親株よりも該蛋白質をコードする遺伝子のコピー数が増大した微生物を取得することができる。
発現ベクターとしては、上記の微生物において自律複製可能または染色体中への組込が可能で、該蛋白質をコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
発現ベクターとしては、上記の微生物において自律複製可能または染色体中への組込が可能で、該蛋白質をコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
原核生物を宿主細胞として用いる場合は、該DNAを有する組換え体DNAは、原核生物中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、該DNA、転写終結配列より構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
組換え体DNAの宿主細胞への導入方法としては上記の方法をあげることができる。
発現ベクターとしては、例えば、宿主細胞にエシェリヒア・コリを用いる場合、pColdI(タカラバイオ社製)、pCDF-1b、pRSF-1b(いずれもノバジェン社製)、pMAL-c2x(ニューイングランドバイオラブス社製)、pGEX-4T-1(ジーイーヘルスケアバイオサイエンス社製)、pTrcHis(インビトロジェン社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-30(キアゲン社製)、pET-3(ノバジェン社製)、pKYP10(特開昭58-110600号公報)、pKYP200[Agric. Biol. Chem., 48, 669(1984)]、pLSA1[Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)]、pGEL1[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 82, 4306 (1985)]、pBluescriptII SK(+)、pBluescript II KS(-)(ストラタジーン社製)、pTrS30 [エシェリヒア・コリ JM109/pTrS30(FERM BP-5407)より調製]、pTrS32 [エシェリヒア・コリ JM109/pTrS32(FERM BP-5408)より調製]、pTK31[APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY、 2007、 Vol. 73、No. 20、p.6378-6385]、pPAC31 (WO98/12343号)、pUC19 [Gene, 33, 103 (1985)]、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)、pPA1(特開昭63-233798号公報)等を例示することができる。
上記発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、エシェリヒア・コリ等の宿主細胞中で機能するものであればいかなるものでもよいが、例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、エシェリヒア・コリやファージ等に由来するプロモーターを用いることができる。また親株としてバチルス属に属する微生物を用いる場合、バチルス・サチルスで機能するSPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等も用いることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
また、発現ベクターとしては、宿主細胞にグルコノバクター属、アセトバクター属またはグルコンアセトバクター属に属する微生物を用いる場合、pBBR、pBBR1MCS-4およびpGOX62等をあげることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
該DNAを発現ベクターに結合させた組換え体DNAにおいては、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
該DNAを発現ベクターに結合させた組換え体DNAにおいては、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
このような組換え体DNAとしては、例えば後述するpBBRsldBA621HおよびpBBRsldBA3271を挙げることができる。
また、上記の方法で得られる、[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質をコードするDNAを、上記の相同組換え法を用いることで、染色体DNAの任意の位置に組み込むことによっても、親株よりも該蛋白質をコードする遺伝子のコピー数が増大した微生物を取得することができる。
上記方法により取得した微生物が目的の微生物であることは、上記1(1)の方法を用いて確認することができる。
(2)上記1(2)の微生物の造成法
上記1(2)の、SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAで上記1(1)の微生物を形質転換して得られる微生物は、SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAで、上記2(1)で造成される微生物を形質転換することで造成することができる。
SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAは、例えば、配列番号5または7で表される塩基配列に基づき設計することができるプローブDNAを用いた、微生物、好ましくは、グルコノバクター属、アセトバクター属またはグルコンアセトバクター属に属する微生物、より好ましくは、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans) ATCC621H、または、グルコノバクター・フラツリイ(Gluconobacter frateurii) NBRC3271の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション、または該塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた、上記微生物の染色体DNAを鋳型としたPCR、または上記2(1)の方法により取得することができる。
上記1(2)の、SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAで上記1(1)の微生物を形質転換して得られる微生物は、SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAで、上記2(1)で造成される微生物を形質転換することで造成することができる。
SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAは、例えば、配列番号5または7で表される塩基配列に基づき設計することができるプローブDNAを用いた、微生物、好ましくは、グルコノバクター属、アセトバクター属またはグルコンアセトバクター属に属する微生物、より好ましくは、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans) ATCC621H、または、グルコノバクター・フラツリイ(Gluconobacter frateurii) NBRC3271の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション、または該塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた、上記微生物の染色体DNAを鋳型としたPCR、または上記2(1)の方法により取得することができる。
上記のようにして取得されるDNAとしては、例えば、配列番号6又は8で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNA、又は配列番号5又は7で表される塩基配列を有するDNAをあげることができる。
上記の方法で得られるDNAをもとにして、必要に応じて、該蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。また、該蛋白質をコードする部分の塩基配列を、宿主細胞での発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、生産率が向上した形質転換体を取得することができる。
該DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換え体DNAを作製する。該組換え体DNAで、例えば、上記2(1)の方法で造成される微生物を形質転換することにより、SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAで上記1(1)の微生物を形質転換して得られる微生物を取得することができる。また、上記の酢酸菌株は、上記化合物I酸化活性を有する蛋白質をコードする遺伝子と、SldB活性を有する蛋白質をコードする遺伝子とが、ジシストロニックに発現するように染色体上に配置されているので、該酢酸菌株から両蛋白質をコードするDNA断片を単離し、上記2(1)の方法と同様にして宿主株を形質転換することで、上記1(2)の微生物を取得することもできる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自律複製可能または染色体中への組込が可能で、該蛋白質をコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
原核生物を宿主細胞として用いる場合は、該DNAを有する組換え体DNAは、原核生物中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、該DNA、転写終結配列より構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
発現ベクターとしては、例えば、上記2(1)の発現ベクターをあげることができる。
上記発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、上記2(1)のプロモーターをあげることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
該蛋白質をコードするDNAを発現ベクターに結合させた組換え体DNAにおいては、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
原核生物を宿主細胞として用いる場合は、該DNAを有する組換え体DNAは、原核生物中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、該DNA、転写終結配列より構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
発現ベクターとしては、例えば、上記2(1)の発現ベクターをあげることができる。
上記発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、上記2(1)のプロモーターをあげることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
該蛋白質をコードするDNAを発現ベクターに結合させた組換え体DNAにおいては、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
このような組換え体DNAとしては、例えば後述する pBBRsldBA621HおよびpBBRsldBA3271をあげることができる。
また、上記の方法で得られる該DNAを、相同組換え法を用いることで、親株の染色体DNAの任意の位置に組み込むことによっても、SldB活性を有する蛋白質をコードするDNAで上記1(1)の微生物を形質転換して得られる微生物を取得することができる。相同組換え法により親株の染色体DNA上の目的の領域と置換する方法としては、上記2(1)の方法をあげることができる。
上記の方法で取得した微生物が、目的の微生物であることは、上記1(2)の方法を用いて確認することができる。
3.本発明のジメチロールカルボン酸誘導体の製造法
本発明のジメチロールカルボン酸誘導体の製造法としては、上記2(1)または(2)の方法で造成できる微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源及び化合物Iを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に化合物IIを生成、蓄積させ、該水性媒体から化合物IIを採取することを特徴とする。
本発明のジメチロールカルボン酸誘導体の製造法としては、上記2(1)または(2)の方法で造成できる微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源及び化合物Iを水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に化合物IIを生成、蓄積させ、該水性媒体から化合物IIを採取することを特徴とする。
本発明の製造法で用いられる微生物の培養物は、該微生物を培地に培養することにより取得できる。該培地は、炭素源、窒素源、無機塩など使用する微生物の増殖に必要な栄養素を含む限り、合成培地、天然培地のいずれでもよい。
炭素源としては、使用する微生物の資化できる炭素源であればいずれでもよく、例えばグルコース、糖蜜、フラクトース、シュークロース、マルトース、でんぷん加水分解物等の糖類、エタノール、グリセロールのようなアルコール類、酢酸、乳酸、コハク酸等の有機酸類などをあげることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどの各種無機および有機アンモニウム塩類、尿素、アミン等の窒素化合物、ならびに肉エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、ペプトン、大豆加水分解物等の窒素含有有機物を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一水素カリウム、リン酸第二水素カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム等を用いることができる。
その他、必要に応じて、ピロロキノリンキノン(PQQ)、ビオチン、チアミン、ニコチンアミド、ニコチン酸等の微量栄養源を加えることができる。これら微量栄養源は、肉エキス、コーン・スティープ・リカー、カザミノ酸等の培地添加物で代用することもできる。
さらに必要に応じて培養する微生物が生育に要求する物質(例えばアミノ酸要求性の微生物であれば要求アミノ酸)を添加することができる。
炭素源としては、使用する微生物の資化できる炭素源であればいずれでもよく、例えばグルコース、糖蜜、フラクトース、シュークロース、マルトース、でんぷん加水分解物等の糖類、エタノール、グリセロールのようなアルコール類、酢酸、乳酸、コハク酸等の有機酸類などをあげることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどの各種無機および有機アンモニウム塩類、尿素、アミン等の窒素化合物、ならびに肉エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、ペプトン、大豆加水分解物等の窒素含有有機物を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一水素カリウム、リン酸第二水素カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム等を用いることができる。
その他、必要に応じて、ピロロキノリンキノン(PQQ)、ビオチン、チアミン、ニコチンアミド、ニコチン酸等の微量栄養源を加えることができる。これら微量栄養源は、肉エキス、コーン・スティープ・リカー、カザミノ酸等の培地添加物で代用することもできる。
さらに必要に応じて培養する微生物が生育に要求する物質(例えばアミノ酸要求性の微生物であれば要求アミノ酸)を添加することができる。
培養は、振とう培養や深部通気攪拌培養のような好気的条件で行う。培養温度は20〜50℃、好ましくは20〜30℃、より好ましくは25〜30℃である。培地のpHは5〜11の範囲で、好ましくは6〜9の中性付近の範囲に維持して培養を行う。培地のpHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア、pH緩衝液などを用いて行う。
培養時間は、5時間〜6日間、好ましくは16時間〜3日間である。
また、該製造法に用いられる微生物の培養物の処理物としては、上記の培養物の濃縮物、該培養物の乾燥物、該培養物を遠心分離、または濾過等して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、および該菌体の固定化物などの酵素源として該培養物と同様の機能を保持する生菌体を含んでいるもの、並びに該菌体の超音波処理物、該菌体の機械的摩砕処理物、当該処理した菌体から得られる粗酵素抽出物、および当該処理した菌体から得られる精製酵素などをあげることができる。
該製造法において基質として用いる化合物Iは、0.1〜500g/L、好ましくは0.2〜200g/Lの濃度になるように水性媒体中に初発または反応途中に添加する。
酵素源として用いる微生物の培養物または該培養物の処理物の量は、当該酵素源の比活性等により異なるが、例えば、基質として用いる化合物Iあたり湿菌体重量として5〜1000mg、好ましくは10〜400mg添加する。
水性媒体としては、化合物IIの生成反応を阻害しない限り、いかなる成分、組成の水性媒体であってもよく、例えば、水、りん酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ほう酸塩、クエン酸塩、トリスなどの緩衝液などをあげることができる。また、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、アセトアミドなどのアミド類を含有していてもよい。加えて酵素源に使用する微生物または形質転換体の培養物の培養上清も水性媒体として用いることもできる。
化合物IIの生成反応は水性媒体中、pH5〜11、好ましくはpH6〜10、20〜50℃、好ましくは25〜45℃の条件で2〜150時間、好ましくは6〜120時間行う。
該水性媒体中から化合物IIの採取は通常イオン交換樹脂法、沈殿法その他の公知の方法を組み合わせることにより実施できる。なお、菌体内に化合物IIが蓄積する場合には、例えば菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって菌体を除去して得られる上清からイオン交換樹脂法などによって、化合物IIを採取することができる。
化合物Iおよび化合物IIは、カラムにBIO-RAD Aminex HPX-87Hカラムを用い、移動相に0.0006Mの硫酸を用いたHPLC法により、210nmの波長の吸収を測定することにより測定することができる。
化合物Iおよび化合物IIは、カラムにBIO-RAD Aminex HPX-87Hカラムを用い、移動相に0.0006Mの硫酸を用いたHPLC法により、210nmの波長の吸収を測定することにより測定することができる。
上述のように、本発明は、安価で簡便な微生物酸化によるジメチロールカルボン酸誘導体の製造法の提供を目的とするが、本発明は、従来よりトリス(ヒドロキシメチル)誘導体からジメチロールカルボン酸誘導体への酸化活性を有することが知られていた酢酸菌において、当該酸化活性の本体が、上記1(1)の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質であることを、本発明者らが初めて見出したことに基づいている。
したがって、本発明はまた、該蛋白質を用いることによる、トリス(ヒドロキシメチル)誘導体からのジメチロールカルボン酸誘導体の製造方法を提供する。
したがって、本発明はまた、該蛋白質を用いることによる、トリス(ヒドロキシメチル)誘導体からのジメチロールカルボン酸誘導体の製造方法を提供する。
該蛋白質は、該蛋白質をコードするDNAを適当な発現ベクターにサブクローニングして、宿主細胞に導入し、得られた形質転換細胞を培養して該蛋白質を発現させ、細胞抽出液もしくは膜画分を調製し、該画分から、自体公知の蛋白質分離精製技術を組み合わせて取得することができる。該蛋白質は完全精製されたものであっても、半精製、粗抽出状態のものであってもよい。
後述の実施例のように、該蛋白質にHisタグなどのタグ配列を導入することにより、アフィニティーカラム等を用いて容易に該蛋白質を精製することができる。
後述の実施例のように、該蛋白質にHisタグなどのタグ配列を導入することにより、アフィニティーカラム等を用いて容易に該蛋白質を精製することができる。
このようにして調製された上記1(1)の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質は、上記の微生物酸化反応と同様にして反応液中で基質と接触させ、インキュベートすることにより、ジメチロールカルボン酸誘導体を反応液中に生成蓄積させることができる。反応液からのジメチロールカルボン酸誘導体の回収も上記と同様に行うことができる。
以下に、本願発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
化合物I酸化活性を有する蛋白質の同定
外山らの遺伝子欠損法(APPLIED ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,Oct.2007,p.6551-6556)により、Gluconobacter frateurii NBRC3271株(以下、NBRC3271株という。)の配列番号4で表される蛋白質をコードする遺伝子の欠損株(以下、sldA欠損株という。)を作成した。
NBRC3271株およびsldA欠損株を、それぞれ寒天プレート[寒天18g/L、ソルビトール 50 g/L、ペプトン (極東社製) 10 g/L、酵母エキス(Bacto)5 g/L、アンピシリン 500 mg/L、pH 7.0]に塗布し、25℃で24時間培養した。
各プレート上に生育した菌の一部をエーゼでかきとり、2 mLの液体培地[ソルビトール 50 g/L、ペプトン (極東社製) 10 g/L、酵母エキス(Bacto)5 g/L、リン酸二水素カリウム 1 g/L、リン酸水素二カリウム 1 g/L、pH 7.0]を分注した試験管に植菌し、25℃で48時間、振とう培養した。培養液を60 mL分取し、6 mLの液体培地を張り込んだLTTに植菌し、25℃で48時間振とう培養した。
培養終了後、菌体を遠心分離し、反応液[トリメチロールプロパン 50 g/L、5 μM ピロロキノリンキノン(PQQ)を含む50 mMリン酸カリウムバッファ−]で懸濁後、25℃で24時間反応を行った。
反応終了後、HPLCにより分析を行った。培養終了時と反応時の菌体濁度(OD660)およびジメチロールブタン酸の定量結果を表1に示す。
外山らの遺伝子欠損法(APPLIED ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,Oct.2007,p.6551-6556)により、Gluconobacter frateurii NBRC3271株(以下、NBRC3271株という。)の配列番号4で表される蛋白質をコードする遺伝子の欠損株(以下、sldA欠損株という。)を作成した。
NBRC3271株およびsldA欠損株を、それぞれ寒天プレート[寒天18g/L、ソルビトール 50 g/L、ペプトン (極東社製) 10 g/L、酵母エキス(Bacto)5 g/L、アンピシリン 500 mg/L、pH 7.0]に塗布し、25℃で24時間培養した。
各プレート上に生育した菌の一部をエーゼでかきとり、2 mLの液体培地[ソルビトール 50 g/L、ペプトン (極東社製) 10 g/L、酵母エキス(Bacto)5 g/L、リン酸二水素カリウム 1 g/L、リン酸水素二カリウム 1 g/L、pH 7.0]を分注した試験管に植菌し、25℃で48時間、振とう培養した。培養液を60 mL分取し、6 mLの液体培地を張り込んだLTTに植菌し、25℃で48時間振とう培養した。
培養終了後、菌体を遠心分離し、反応液[トリメチロールプロパン 50 g/L、5 μM ピロロキノリンキノン(PQQ)を含む50 mMリン酸カリウムバッファ−]で懸濁後、25℃で24時間反応を行った。
反応終了後、HPLCにより分析を行った。培養終了時と反応時の菌体濁度(OD660)およびジメチロールブタン酸の定量結果を表1に示す。
表1に示すとおり、sldA欠損株では、野生株であるNBRC3271株に比べ、ジメチロールブタン酸の生成量が顕著に低下していることがわかった。
上記の微生物の培養物を用い、トリメチロールプロパンに代えて、トリメチロールエタンおよびペンタエリスリトールを基質とした反応を行った。
NBRC3271株の培養物を用いた場合は、ジメチロールプロピオン酸およびトリメチロール酢酸が生成された。しかしながら、sldA欠損株では生成されなかった。
以上の結果より、配列番号4で表される蛋白質は、化合物I酸化活性を有していることが明らかになった。
上記の微生物の培養物を用い、トリメチロールプロパンに代えて、トリメチロールエタンおよびペンタエリスリトールを基質とした反応を行った。
NBRC3271株の培養物を用いた場合は、ジメチロールプロピオン酸およびトリメチロール酢酸が生成された。しかしながら、sldA欠損株では生成されなかった。
以上の結果より、配列番号4で表される蛋白質は、化合物I酸化活性を有していることが明らかになった。
精製酵素を酵素源に用いたジメチロールカルボン酸誘導体の製造
(1)化合物I酸化活性を有する蛋白質を生産する微生物の造成
Gluconobacter oxydans ATCC621H株(以下、ATCC621H株という。)の染色体DNAを鋳型として、配列番号9および10で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いて、PCR反応を行った。該PCRによって得られた増幅産物をEcoRIおよびKpnIで切断し、EcoRIおよびKpnIで切断した発現ベクターpBBR1MCS-4(Gene,166(1995)175-176)に連結することにより、配列番号1および5で表される塩基配列を有するpBBRsldBA621H-His6を得た。
外山らの方法に準拠したエレクトロポレーション法[Biosci.Biotechnol.Biochem.,69(6),1120-1129,2005]により、発現プラスミドpBBRsldBA621H-His6でsldA欠損株を形質転換し、NBRC3271ΔsldA/pBBRsldBA621H-His6株を得た。
(1)化合物I酸化活性を有する蛋白質を生産する微生物の造成
Gluconobacter oxydans ATCC621H株(以下、ATCC621H株という。)の染色体DNAを鋳型として、配列番号9および10で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いて、PCR反応を行った。該PCRによって得られた増幅産物をEcoRIおよびKpnIで切断し、EcoRIおよびKpnIで切断した発現ベクターpBBR1MCS-4(Gene,166(1995)175-176)に連結することにより、配列番号1および5で表される塩基配列を有するpBBRsldBA621H-His6を得た。
外山らの方法に準拠したエレクトロポレーション法[Biosci.Biotechnol.Biochem.,69(6),1120-1129,2005]により、発現プラスミドpBBRsldBA621H-His6でsldA欠損株を形質転換し、NBRC3271ΔsldA/pBBRsldBA621H-His6株を得た。
(2)化合物I酸化活性を有する蛋白質の精製
NBRC3271ΔsldA/pBBRsldBA621H-His6株を寒天プレートに塗布し、25℃で24時間培養した。
プレート上に生育した菌の一部をエーゼでかきとり、500 mg/Lのアンピシリンを含む250 mLの培地[ソルビトール 50 g/L、ペプトン (極東社製) 10 g/L、酵母エキス(Bacto) 5 g/L、リン酸二水素カリウム 1 g/L、リン酸水素二カリウム 1 g/L、アンピシリン 500 mg/L、pH 7.0]を分注した2 L三角フラスコに植菌し、25℃で48時間、振とう培養した。該培養物を2.5 Lの上記の培地を分注した5 Lジャーファーメンターに植菌し、25℃、通気1vvmにて24時間培養した。培養終了後、該培養物を遠心分離し、培養物を得た。該培養物の濁度は13.8(OD660)であった。
該培養物(68.5g)と緩衝液(1) [50 mM PIPES、1 mM CaCl2、1 mM MgCl2 (pH 7.5)]を1:1の割合で混合し、該培養物を十分に懸濁後、マルチビーズショッカー(安井器械株式会社)によって菌株の破砕を行った。破砕処理後、得られた粗抽出液を遠心分離し、目的の蛋白質が含まれる細胞膜画分を沈殿物として分離した。
該細胞膜画分を緩衝液(2)[50 mM PIPES、5 mM CaCl2、5 mM MgCl2、10 μM PQQ、300 mM NaCl、1.0% β−D−Dodecylmaltoside (pH 7.5)]に再懸濁し、ホモジナイズした。該細胞膜画分懸濁液を4℃で20分間、穏やかに撹拌し、15,000rpmで60分間の遠心分離を行い、目的の蛋白質が含まれる可溶化画分を取得した。
該可溶化画分4 mLを、平衡化緩衝液(1)[50 mM PIPES、1 mM CaCl2、1 mM MgCl2、0.04% β-D-Dodecylmaltoside、300 M NaCl(pH 7.5)]で平衡化させたカラム(Metal Affinity Resin、TALON社製)に通塔した後、40 mLの平衡化緩衝液(1)でカラムの洗浄を行った。その後、4 mLの溶出緩衝液[上記平衡化緩衝液(1)に150 mM imidazoleを加えた溶液]を3回に分けて通塔し、目的の蛋白質を含む溶出液を得た。
該溶出液2.5 mLを平衡化緩衝液(2)[50 mM PIPES、1 mM CaCl2、1 mM MgCl2、0.04% β-D-Dodecylmaltoside]で平衡化させたPD-10カラム(GEヘルスケア社製)に通塔し、3.5 mLの平衡化緩衝液(2)で溶出した。
DCプロテインアッセイ(BIORAD)によって、該溶出液の蛋白質濃度を測定したところ、2.4 mg/mLであった。また、SDS-PAGEにて、該溶出液中に配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質のC末端にヘキサヒスチジンタグが結合した蛋白質の分子量に相当するタンパク質が含まれていることを確認した。
NBRC3271ΔsldA/pBBRsldBA621H-His6株を寒天プレートに塗布し、25℃で24時間培養した。
プレート上に生育した菌の一部をエーゼでかきとり、500 mg/Lのアンピシリンを含む250 mLの培地[ソルビトール 50 g/L、ペプトン (極東社製) 10 g/L、酵母エキス(Bacto) 5 g/L、リン酸二水素カリウム 1 g/L、リン酸水素二カリウム 1 g/L、アンピシリン 500 mg/L、pH 7.0]を分注した2 L三角フラスコに植菌し、25℃で48時間、振とう培養した。該培養物を2.5 Lの上記の培地を分注した5 Lジャーファーメンターに植菌し、25℃、通気1vvmにて24時間培養した。培養終了後、該培養物を遠心分離し、培養物を得た。該培養物の濁度は13.8(OD660)であった。
該培養物(68.5g)と緩衝液(1) [50 mM PIPES、1 mM CaCl2、1 mM MgCl2 (pH 7.5)]を1:1の割合で混合し、該培養物を十分に懸濁後、マルチビーズショッカー(安井器械株式会社)によって菌株の破砕を行った。破砕処理後、得られた粗抽出液を遠心分離し、目的の蛋白質が含まれる細胞膜画分を沈殿物として分離した。
該細胞膜画分を緩衝液(2)[50 mM PIPES、5 mM CaCl2、5 mM MgCl2、10 μM PQQ、300 mM NaCl、1.0% β−D−Dodecylmaltoside (pH 7.5)]に再懸濁し、ホモジナイズした。該細胞膜画分懸濁液を4℃で20分間、穏やかに撹拌し、15,000rpmで60分間の遠心分離を行い、目的の蛋白質が含まれる可溶化画分を取得した。
該可溶化画分4 mLを、平衡化緩衝液(1)[50 mM PIPES、1 mM CaCl2、1 mM MgCl2、0.04% β-D-Dodecylmaltoside、300 M NaCl(pH 7.5)]で平衡化させたカラム(Metal Affinity Resin、TALON社製)に通塔した後、40 mLの平衡化緩衝液(1)でカラムの洗浄を行った。その後、4 mLの溶出緩衝液[上記平衡化緩衝液(1)に150 mM imidazoleを加えた溶液]を3回に分けて通塔し、目的の蛋白質を含む溶出液を得た。
該溶出液2.5 mLを平衡化緩衝液(2)[50 mM PIPES、1 mM CaCl2、1 mM MgCl2、0.04% β-D-Dodecylmaltoside]で平衡化させたPD-10カラム(GEヘルスケア社製)に通塔し、3.5 mLの平衡化緩衝液(2)で溶出した。
DCプロテインアッセイ(BIORAD)によって、該溶出液の蛋白質濃度を測定したところ、2.4 mg/mLであった。また、SDS-PAGEにて、該溶出液中に配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質のC末端にヘキサヒスチジンタグが結合した蛋白質の分子量に相当するタンパク質が含まれていることを確認した。
(3)精製酵素を酵素源に用いたジメチロールカルボン酸誘導体の製造I
星野らによるin vitro反応法[Biochemica et Biophysica Acta 1647 (2003) 278-288]を参考とし、250 μLの反応液[40 mM トリメチロールプロパン、8 mMフェナジンメトサルフェート、5 mM CaCl2、5 mM MgCl2、10 μM PQQ、50 mM リン酸カリウムバッファー(pH 7.0)]、および、250 μLの実施例2(2)で得た配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質のC末端にヘキサヒスチジンタグが結合した蛋白質を含む溶出液を混合し、30℃で16時間、反応を行った。反応終了後、HPLCにて生成物を測定した。
その結果、0.045 g/Lのジメチロールブチルアルデヒド、および0.26 g/Lのジメチロールブタン酸の生成を確認した。また、6.0 g/Lのジメチロールブチルアルデヒドを基質とし、上記同様の反応を行ったところ、3.0 g/Lのジメチロールブタン酸の生成を確認した。
以上より、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質は化合物I酸化活性、及び、トリス(ヒドロキシメチル)誘導体の中間体であるジメチロールアルデヒド誘導体の酸化活性を有することが明らかになった。
星野らによるin vitro反応法[Biochemica et Biophysica Acta 1647 (2003) 278-288]を参考とし、250 μLの反応液[40 mM トリメチロールプロパン、8 mMフェナジンメトサルフェート、5 mM CaCl2、5 mM MgCl2、10 μM PQQ、50 mM リン酸カリウムバッファー(pH 7.0)]、および、250 μLの実施例2(2)で得た配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質のC末端にヘキサヒスチジンタグが結合した蛋白質を含む溶出液を混合し、30℃で16時間、反応を行った。反応終了後、HPLCにて生成物を測定した。
その結果、0.045 g/Lのジメチロールブチルアルデヒド、および0.26 g/Lのジメチロールブタン酸の生成を確認した。また、6.0 g/Lのジメチロールブチルアルデヒドを基質とし、上記同様の反応を行ったところ、3.0 g/Lのジメチロールブタン酸の生成を確認した。
以上より、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質は化合物I酸化活性、及び、トリス(ヒドロキシメチル)誘導体の中間体であるジメチロールアルデヒド誘導体の酸化活性を有することが明らかになった。
(4)精製酵素を酵素源に用いたジメチロールカルボン酸誘導体の製造II
上記(3)の反応液および蛋白質を用い、トリメチロールプロパンに代えて、トリメチロールエタンを基質として反応を行ったところ、ジメチロールプロピオン酸が生成した。 また、上記(3)の反応液および蛋白質を用い、トリメチロールプロパンに代えて、ペンタエリスリトールを基質とした反応を行ったところ、トリメチロール酢酸の生成を確認した。
上記(3)の反応液および蛋白質を用い、トリメチロールプロパンに代えて、トリメチロールエタンを基質として反応を行ったところ、ジメチロールプロピオン酸が生成した。 また、上記(3)の反応液および蛋白質を用い、トリメチロールプロパンに代えて、ペンタエリスリトールを基質とした反応を行ったところ、トリメチロール酢酸の生成を確認した。
微生物を酵素源に用いたジメチロールカルボン酸誘導体の製造
(1)親株の微生物に比べ、化合物I酸化活性を有する蛋白質の活性が増強した微生物の造成
ATCC621H株の染色体DNAを鋳型として、配列番号9および12で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いて、PCR反応を行った。該PCRによって得られた増幅産物をKpn1およびSac1で切断し、Kpn1およびSac1で切断した発現ベクターpBBR1MCS-4に連結することにより、配列番号1および5で表される塩基配列を有する発現プラスミドpBBRsldBA621Hを得た。
NBRC3271 株の染色体DNAを鋳型として、配列番号11および12で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いて、PCR反応を行った。該PCRによって得られた増幅産物をXba1およびSac1で切断し、Xba1およびSac1で切断した発現ベクターpBBR1MCS-4に連結することにより、配列番号3および7で表される塩基配列を有する発現プラスミドpBBRsldBA3271を得た。
上記で得られた発現プラスミドpBBRsldBA621HでATCC621H株を形質転換し、ATCC621H/ pBBRsldBA621H株を得た。
また、上記で得られた発現プラスミドpBBRsldBA3271でATCC621H株を形質転換し、ATCC621H/ pBBRsldBA3271株を得た。
(1)親株の微生物に比べ、化合物I酸化活性を有する蛋白質の活性が増強した微生物の造成
ATCC621H株の染色体DNAを鋳型として、配列番号9および12で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いて、PCR反応を行った。該PCRによって得られた増幅産物をKpn1およびSac1で切断し、Kpn1およびSac1で切断した発現ベクターpBBR1MCS-4に連結することにより、配列番号1および5で表される塩基配列を有する発現プラスミドpBBRsldBA621Hを得た。
NBRC3271 株の染色体DNAを鋳型として、配列番号11および12で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いて、PCR反応を行った。該PCRによって得られた増幅産物をXba1およびSac1で切断し、Xba1およびSac1で切断した発現ベクターpBBR1MCS-4に連結することにより、配列番号3および7で表される塩基配列を有する発現プラスミドpBBRsldBA3271を得た。
上記で得られた発現プラスミドpBBRsldBA621HでATCC621H株を形質転換し、ATCC621H/ pBBRsldBA621H株を得た。
また、上記で得られた発現プラスミドpBBRsldBA3271でATCC621H株を形質転換し、ATCC621H/ pBBRsldBA3271株を得た。
(2)微生物の培養物を酵素源に用いたジメチロールカルボン酸誘導体の製造
上記(1)で造成した微生物を酵素源に用いて、トリメチロールプロパンを基質としてジメチロールブタン酸の生産能の評価を行った。コントロールの微生物として、pBBR1MCS-4でATCC621H株を形質転換した、ATCC621H/ pBBR株を用いた。
上記(1)で造成した微生物を、実施例1と同様の方法により培養した。
培養終了後、菌体を遠心分離し、反応液[トリメチロールプロパン 50 g/L、5 mM 塩化カルシウム,5 mM塩化マグネシウム、5 μM 補酵素ピロロキノリンキノン、を含む50 mMリン酸カリウムバッファ−]で懸濁後、25℃で24時間反応を行った。
反応終了後、HPLCにより分析を行った。培養終了時と反応時の菌体濁度(OD660)およびジメチロールブタン酸の定量結果を表2に示す。
上記(1)で造成した微生物を酵素源に用いて、トリメチロールプロパンを基質としてジメチロールブタン酸の生産能の評価を行った。コントロールの微生物として、pBBR1MCS-4でATCC621H株を形質転換した、ATCC621H/ pBBR株を用いた。
上記(1)で造成した微生物を、実施例1と同様の方法により培養した。
培養終了後、菌体を遠心分離し、反応液[トリメチロールプロパン 50 g/L、5 mM 塩化カルシウム,5 mM塩化マグネシウム、5 μM 補酵素ピロロキノリンキノン、を含む50 mMリン酸カリウムバッファ−]で懸濁後、25℃で24時間反応を行った。
反応終了後、HPLCにより分析を行った。培養終了時と反応時の菌体濁度(OD660)およびジメチロールブタン酸の定量結果を表2に示す。
表2に示すとおり、親株の微生物に比べ、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質の活性が増強した微生物の培養物を酵素源に用いることにより、ジメチロールブタン酸の生成量が向上することがわかった。
本発明により、トリス(ヒドロキシメチル)誘導体からジメチロールカルボン酸誘導体を、酸化剤等を使用することなく、効率的に製造することができる。そして、該方法で得られるジメチロールカルボン酸誘導体は、合成樹脂、可塑剤、潤滑油等、各種化成品の原料として様々な分野に使用され、産業上極めて重要な化合物である。
Claims (2)
- 親株の微生物に比べ、以下の[1]〜[3]からなる群より選ばれる蛋白質の活性が増強した微生物の培養物または該培養物の処理物を酵素源に用い、該酵素源および式(I)
〔式中、Rは水素原子、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよいアリール基を示す。〕で表されるトリス(ヒドロキシメチル)誘導体を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に式(II)
〔式中、Rは前記と同義である〕で表されるジメチロールカルボン酸誘導体を生成、蓄積させ、該水性媒体から該ジメチロールカルボン酸誘導体を採取することを特徴とするジメチロールカルボン酸誘導体の製造法。
[1]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
[2]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつトリス(ヒドロキシメチル)誘導体を酸化してジメチロールカルボン酸誘導体を生成する活性を有する変異蛋白質
[3]配列番号2または4で表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつトリス(ヒドロキシメチル)誘導体を酸化してジメチロールカルボン酸誘導体を生成する活性を有する上記[1]の蛋白質の相同蛋白質 - 微生物が、グルコノバクター属、アセトバクター属、グルコンアセトバクター属またはエシェリヒア属に属する微生物である、請求項1記載の製造法。
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