JP5424604B2 - グルコサミンの製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、グルコサミン-6‐リン酸脱リン酸活性が向上した微生物を用いたグルコサミンの製造法に関する。
微生物を用いたグルコサミンの製造法としては、グルコサミン‐6‐リン酸合成酵素活性が向上した大腸菌を用いた発酵生産による製造法が知られている(特許文献1および2)。
エシェリヒア・コリのyhbJ遺伝子については、yhbJ遺伝子の欠損株においてグルコサミン‐6‐リン酸合成酵素をコードするglmS遺伝子の発現量が向上していることが知られている(非特許文献1および2)。
また、エシェリヒア・コリのybiV、ybjI、yidA、yigL、yniC、cof遺伝子の各遺伝子がコードする蛋白質は、グルコサミン‐6‐リン酸を脱リン酸化する活性を有することが知られている。(非特許文献3)。
しかし、yhbJ遺伝子を欠損した微生物、または上記のグルコサミン‐6‐リン酸の脱リン酸活性を有する蛋白質の活性が向上した微生物によるグルコサミンの製造法は知られていない。
米国特許第6,372,457号 米国特許第7,332,304号 Mol. Microbiol., 65, 1518-1533 (2007) Nucleic Acids Res., 36, 2570-2580 (2008) J. Biol. Chem., 281, 36149-36161 (2006)
本発明は、微生物を用いた効率的なグルコサミンの製造法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[4]に関する。
[1]グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の活性が野生株に比べて向上しており、かつ、配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の活性が野生株に比べて低下または喪失している微生物を培地に培養し、培養液中にグルコサミンを生成、蓄積せしめ、該培養液中からグルコサミンを採取することを特徴とする、グルコサミンの製造法。
[2]グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質が、以下の(1)〜(3)より選ばれるいずれかの蛋白質:
(1)配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
(2)配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質
(3)配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質
であり、かつ、配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質が、以下の(4)または(5)の蛋白質:
(4)配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質
(5)配列番号18で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、かつ配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質
である、[1]記載のグルコサミンの製造法。
[3]グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質が、以下の(1)または(2)のDNAにコードされる蛋白質である、[1]または[2]記載の製造法。
(1)配列番号1、3、5、7、9、11、13または15で表される塩基配列を有するDNA
(2)配列番号1、3、5、7、9、11、13または15で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNA
[4]配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質が、以下の(1)または(2)のDNAにコードされる蛋白質である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の製造法。
(1)配列番号17で表される塩基配列を有するDNA
(2)配列番号17で表される塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルコサミン‐6‐リン酸を脱リン酸化する活性を有する蛋白質をコードするDNA
本発明により、効率的なグルコサミンの製造法が提供される。
1.本発明の製造法に用いられる微生物
(1)グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性が野生株より向上した微生物
グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の活性が野生株に比べ向上している微生物とは、(a)親株の染色体DNA上にあるグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードする遺伝子を改変することにより得られる、i)野生株より該蛋白質の比活性が向上した微生物、およびii)野生株よりグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の生産量が向上した微生物、ならびに(b)親株をグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAで形質転換して得られる微生物、である。
なお、本明細書中における親株とは、野生株でも、変異株であってもよく、改変または形質転換の対象である元株である。該親株としては例えば微生物がEscherichia coli である場合、E. coliK-12株、B株、W株、B/r株の野生株、またはその変異株をあげることができ、具体的にはE. coli XL1-Blue、E. coli XL2-Blue、E. coli DH1、E. coli MC1000、E. coli ATCC 12435、E. coli W1485、E. coli JM109、E. coli HB101、E. coli No.49、E. coli W3110、E. coli NY49、E. coli MP347、E. coli NM522、E. coli BL21、E. coli ME8415、E.coli ATCC9637等をあげることができる。
グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質としては、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質であればいずれでもよいが、具体的には配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、およびそれらのホモログ蛋白質をあげることができる。
配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質のホモログ蛋白質とは、BLASTPなど公知の相同性検索プログラムを用いて検索したときに、上記のアミノ酸配列と相同性が高い、具体的には80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる蛋白質をいう。
そのようなグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質として、より具体的には、
[1]配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、
[2]配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質、および
[3]配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性を有し、かつグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質、
をあげることができる。
上記において、1以上のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつグルタチオン輸送活性を有する蛋白質は、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)(以下、モレキュラー・クローニング第3版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409(1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより、取得することができる。
欠失、置換または付加されるアミノ酸残基の数は特に限定されないが、上記の部位特異的変異法等の周知の方法により欠失、置換または付加できる程度の数であり、1個から数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列において1個以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたとは、同一配列中の任意の位置において、1個または複数個のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されていてもよい。
アミノ酸残基の欠失または付加が可能なアミノ酸の位置としては、例えば配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列のN末端側およびC末端側の10アミノ酸残基をあげることができる。
欠失、置換または付加は同時に生じてもよく、置換または付加されるアミノ酸は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−アルギニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システインなどがあげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、O-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
また、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質としては、配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる蛋白質であり、かつグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をあげることができる。
アミノ酸配列や塩基配列の相同性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)] やFASTA [Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J. Mol. Biol., 215, 403(1990) ]。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータは例えばScore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータは例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法はよく知られている。
配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなる蛋白質が、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質であることは、例えばDNA組換え法を用いて活性を確認したい蛋白質を発現する形質転換体を作製し、グルコース等の糖源を添加した培地で培養し、培養液中に蓄積するグルコサミンを定量する事により確認することができる。
上記(a)のi)の野生株よりグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の比活性が向上した微生物としては、親株が有する該蛋白質のアミノ酸配列において1アミノ酸以上、好ましくは1〜10アミノ酸、より好ましくは1〜5アミノ酸、さらに好ましくは1〜3アミノ酸が置換しているアミノ酸配列を有する蛋白質を有しているため、野生株のグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質と比較して、その活性が向上した変異型蛋白質を有する微生物をあげることができる。
上記(a)のii)の親株よりグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の生産量が向上した微生物としては、親株の染色体DNA上に存在する該蛋白質をコードする遺伝子の転写調節領域またはプロモーター領域の塩基配列において1塩基以上、好ましくは1〜10塩基、より好ましくは1〜5塩基、さらに好ましくは1〜3塩基の塩基が置換しているプロモーター領域を有しているため、野生株のグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の生産量と比較して、該蛋白質の生産量が向上している微生物をあげることができる。
上記(b)の親株をグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAで形質転換して得られる微生物としては、
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の蛋白質をコードするDNA、
[5]配列番号1、3、5、7、9、11、13または15で表される塩基配列を有するDNA、または
[6]配列番号1、3、5、7、9、11、13または15で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNA、
を用いて親株を形質転換して得られる微生物をあげることがでる。
該微生物としては、親株が元来染色体DNA上に有するグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAに加え、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAをi)さらに染色体DNA上に有する微生物、およびii)染色体外に有する微生物をあげることができる。すなわち、i)の微生物は、新たに導入された該DNAを1つ以上染色体DNA上に有する微生物である。ii)の微生物は、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAをプラスミドDNA上に有する微生物である。
上記でいう「ハイブリダイズする」とは、特定の塩基配列を有するDNAまたは該DNAの一部にDNAがハイブリダイズすることである。したがって、該特定の塩基配列を有するDNAまたはその一部は、ノーザンまたはサザンブロット解析のプローブとして用いることができ、またPCR解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できるDNAである。プローブとして用いられるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAをあげることができ、プライマーとして用いられるDNAとしては、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAをあげることができる。
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えば当業者であれば本願明細書に従い、ハイブリダイゼーションの条件を決定することができる。該ハイブリダイゼーションの条件は、モレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for General and Molecular Bacteriolgy, ASM Press(1994)、Immunology methods manual, Academic press(1996)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従っておこなうことができる。
上記のストリンジェントな条件とは、DNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mmol/lの塩化ナトリウム、75mmol/lのクエン酸ナトリウム)、50mmol/lのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、および20μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件が好ましいが、より低いストリンジェント条件を用いることもできる。ストリンジェンな条件の変更は、ホルムアミドの濃度調整(ホルムアミドの濃度を下げるほど低ストリンジェントになる)、塩濃度および温度条件の変更により可能である。低ストリンジェント条件としては、例えば6×SSCE(20×SSCEは、3mol/lの塩化ナトリウム、0.2mol/lのリン酸二水素ナトリウム、0.02mol/lのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベートした後、50℃の1×SSC、0.1%SDS溶液を用いて洗浄する条件をあげることができる。また、さらに低いストリンジェントな条件としては、上記した低ストリンジェント条件において、高塩濃度(例えば5×SSC)の溶液を用いてハイブリダイゼーションを行った後、洗浄する条件をあげることができる。
上記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、または変更することにより設定することもできる。上記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えば上記したBLASTやFASTA等を用いて上記したパラメータ等に基づいて計算したときに、配列番号1、3、5、7、9、11、13または15で表される塩基配列からなるDNAと少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
(2)配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の活性が野生株より低下、または喪失した微生物
本発明で用いられる微生物は、上記(1)の微生物であってさらに、配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の活性が野生株より低下、または喪失した微生物である。
配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の活性が野生株に比べて低下、または喪失した微生物は、染色体DNA上の配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列に、塩基の欠失、置換または付加を導入することにより得られる、(a)野生株に比べ、配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の活性が80%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは0%に低下した微生物、および(b)野生株に比べ、該遺伝子の転写量または配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の生産量が80%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは0%に低下した微生物、をあげることができる。より好ましくは配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子の一部または全部が欠損した微生物をあげることができる。
配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質としては、配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質であればいずれでもよいが、具体的には配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質のホモログ蛋白質をいう。
配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質のホモログ蛋白質とは、BLASTPなど公知の相同性検索プログラムを用いて検索したときに、上記のアミノ酸配列と相同性が高い、具体的には配列番号18で表されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有し、かつ配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質、などをあげることができる。
アミノ酸配列や塩基配列の相同性は、上記(1)と同義である。
配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子としては以下のDNA、
[7]配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNA
[8] 配列番号18で表されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有し、かつ配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードするDNA
[9]上記[7]または[8]のいずれかの蛋白質をコードするDNA、
[10]配列番号17で表される塩基配列を有するDNA、および
[11]配列番号17で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードするDNA、
などをあげることができる。
本明細書において遺伝子とは、蛋白質のコーディング領域に加え、転写調節領域およびプロモーター領域などを含んでもよいDNAである。
転写調節領域としては、染色体DNA上におけるコーディング領域の5’末端より上流側100塩基、好ましくは50塩基からなるDNAをあげることができ、プロモーター領域としては、-10および-35領域に相当する領域をあげることができる。
配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子への塩基の欠失、置換または付加の導入は、該蛋白質の活性を親株より低下または喪失させる塩基の欠失、置換または付加であれば、塩基の種類および数に制限はないが、塩基の欠失としては、プロモーターおよび転写調節領域は、好ましくは10塩基以上、より好ましくは20塩基以上、さらに好ましくは全部の領域の欠失、コーディング領域は、好ましくは10塩基以上、より好ましくは20塩基以上、さらに好ましくは100塩基以上、特に好ましくは200塩基以上、最も好ましくはコーディング領域全部の欠失をあげることができる。
塩基の置換としては、コーディング領域の5’末端から150番目以内の塩基、好ましくは100番目以内の塩基、より好ましくは50番目以内の塩基、特に好ましくは30番目以内の塩基、最も好ましくは20番目以内の塩基を置換してナンセンスコドンを導入する置換をあげることができる。
塩基の付加としては、コーディング領域の5’末端から150番目以内の塩基、好ましくは100番目以内の塩基、より好ましくは50番目以内の塩基、特に好ましくは30番目以内の塩基、最も好ましくは20番目以内の塩基の直後に、50塩基以上、好ましくは100塩基以上、より好ましくは200塩基以上、さらに好ましくは500塩基以上、特に好ましくは1kb以上のDNA断片を付加することをあげることができ、特に好ましくはクロラムフェニコール耐性遺伝子およびカナマイシン耐性遺伝子などの挿入をあげることができる。
配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性が野生株より低下、または喪失した微生物であることは、例えば、配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子の転写量を、ノーザン・ブロッティングにより、または配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の生産量をウェスタン・ブロッティングにより、野生株と比較することにより確認することができる。
上記でいう「ハイブリダイズする」とは、上記(1)と同義である。
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えば上記したBLASTやFASTA等を用いて上記したパラメータ等に基づいて計算したときに、配列番号17で表される塩基配列と少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
本発明で用いられる微生物は、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性が野生株に比べて高く、かつ配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の活性が野生株に比べて低下、または喪失した微生物であれば、いずれの微生物であってもよいが、好ましくは原核生物、より好ましくは細菌、さらに好ましくはエシェリヒア(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、パントエア(Pantoea)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、セラチア(Serratia)属、エルビニア(Erwinia)属、サルモネア(Salmonella)属およびモルガネラ(Morganella)属からなる群より選ばれる属に属する微生物、特に好ましくはエシェリヒア属に属する微生物、最も好ましくはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)をあげることができる。
2.本発明で用いられる微生物の調製
(1)グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の活性が野生株より高い微生物の調製
グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の活性が野生株より高い微生物のうち、比活性が野生株のグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質より高い微生物は、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAをin vitroにおける変異剤を用いた変異処理、またはエラープローンPCRなどに供することにより該DNAに変異を導入した後、該変異DNAを親株の染色体DNA上に存在する変異導入前のグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAと公知の方法[Proc. Natl. Acad. Sci. U S A., 97, 6640 (2000)]を用いて置換することにより該変異DNAを発現する改変体を取得することができ、該取得した改変体が目的の微生物であることは、グルコース等の糖源を添加した培地で培養し、培養液中に蓄積するグルコサミンを定量することにより、確認することができる。
また、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の活性が親株より高い微生物のうち、該蛋白質の生産量が野生株の生産量より向上している微生物は、野生株が有するグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードする遺伝子の転写調節領域およびプロモーター領域、例えば該蛋白質の開始コドンの上流側200bp、好ましくは100bpの塩基配列を有するDNAをin vitroにおける変異処理、またはエラープローンPCRなどに供することにより該DNAに変異を導入した後、該変異DNAを親株の染色体DNA上に存在する変異導入前のグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードする遺伝子の転写調節領域およびプロモーター領域と公知の方法[Proc. Natl. Acad. Sci. U S A., 97, 6640 (2000)]を用いて置換することにより変異型の転写調節領域またはプロモーター領域を有する改変体を作製し、RT−PCRまたはノーザンハイブリダイゼーションなどにより、野生株と改変体のグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードする遺伝子の転写量を比較する方法、またはSDS−PAGEなどにより野生株と改変体のグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の生産量を比較する方法により確認することもできる。
また、親株のグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードする遺伝子のプロモーター領域を公知の強力なプロモーター配列と置換することによっても、親株よりグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の生産量が向上した微生物を取得することもできる。
そのようなプロモーターとしては、E. coliで機能するtrpプロモーター(P trp )、lacプロモーター(P lac )、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、エシェリヒア・コリやファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターなどの人為的に造成したプロモーターもあげることができる。
以下に、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAの取得法、および親株を該DNAで形質転換して得られる微生物の調製法について詳細に説明する。
(a)グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAの取得
グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAは、例えば上記1(1)のグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAの塩基配列に基づき設計することができるプローブDNAを用いた、微生物、好ましくはエシェリヒア属、エンテロバクター属、パントエア属、クレブシエラ属、セラチア属、エルビニア属、サルモネア属またはモルガネラ属に属する微生物、より好ましくはE. coliの染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション、または該塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた、微生物、好ましくはエシェリヒア属、エンテロバクター属、パントエア属、クレブシエラ属、セラチア属、エルビニア属、サルモネア属またはモルガネラ属に属する微生物、より好ましくはE. coliの染色体DNAを鋳型としたPCR[PCR Protocols, Academic Press (1990)]により取得することができる。
また、各種の遺伝子配列データベースに対して上記1(1)のグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAの塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有する配列を検索し、該検索によって得られた塩基配列に基づき、該塩基配列を有する微生物の染色体DNA、cDNAライブラリー等から上記した方法によりグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAを取得することもできる。
取得したDNAをそのまま、あるいは適当な制限酵素などで切断し、常法によりベクターに組み込み、得られた組換え体DNAを宿主細胞に導入した後、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばジデオキシ法 [Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 74, 5463 (1977)]または3700 DNAアナライザー(アプライドバイオシステムズ社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、該DNAの塩基配列を決定することができる。
上記のベクターとしては、pBluescriptII KS(+)(ストラタジーン社製)、pDIRECT[Nucleic Acids Res., 18, 6069 (1990)]、pCR-Script Amp SK(+)(ストラタジーン社製)、pT7Blue(ノバジェン社製)、pCR II(インビトロジェン社製)およびpCR-TRAP(ジーンハンター社製)などをあげることができる。
宿主細胞としては、例えば、Escherichia属に属する微生物などをあげることができる。Escherichia属に属する微生物としては、例えば、E. coli XL1-Blue、E. coli XL2-Blue、E. coli DH1、E. coli MC1000、E. coli ATCC 12435、E. coli W1485、E. coli JM109、E. coli HB101、E. coli No.49、E. coli W3110、E. coli NY49、E. coli MP347、E. coli NM522、E. coli BL21、E. coli ME8415等をあげることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69, 2110 (1972)]、プロトプラスト法(特開昭63-248394)、エレクトロポレーション法[Nucleic Acids Res., 16, 6127 (1988)]等をあげることができる。
塩基配列を決定した結果、取得されたDNAが部分長であった場合は、該部分長DNAをプローブに用いた、染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション法等により、全長DNAを取得することができる。
更に、決定されたDNAの塩基配列に基づいて、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成装置等を用いて化学合成することにより目的とするDNAを調製することもできる。
上記のようにして取得されるDNAとして、例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNA、および配列番号1、3、5、7、9、11、13または15で表される塩基配列を有するDNAをあげることができる。
(b)グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質を発現するプラスミドベクターで形質転換された微生物の取得
上記(a)の方法で得られるグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAをもとにして、必要に応じて、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。また、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードする部分の塩基配列を、宿主細胞での発現に最適なコドンとなるように、塩基を置換することにより、生産率が向上した形質転換体を取得することができる。
該DNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換え体DNAを作製する。
該組換え体DNAを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の活性が野生株より向上した形質転換体を得ることができる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自律複製可能または染色体中への組込が可能で、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
原核生物を宿主細胞として用いる場合は、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAを有する組換え体DNAは、原核生物中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNA、転写終結配列より構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
発現ベクターとしては、pColdI(タカラバイオ社製)、pCDF-1b、pRSF-1b(いずれもノバジェン社製)、pMAL-c2x(ニューイングランドバイオラブス社製)、pGEX-4T-1(ジーイーヘルスケアバイオサイエンス社製)、pTrcHis(インビトロジェン社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-30(キアゲン社製)、pET-3(ノバジェン社製)、pKYP10(特開昭58-110600)、pKYP200[Agric. Biol. Chem., 48, 669 (1984)]、pLSA1[Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)]、pGEL1[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 82, 4306 (1985)]、pBluescriptII SK(+)、pBluescript II KS(-)(ストラタジーン社製)、pTrS30 [エシェリヒア・コリ JM109/pTrS30(FERM BP-5407)より調製]、pTrS32 [エシェリヒア・コリ JM109/pTrS32(FERM BP-5408)より調製]、pPAC31 (WO98/12343)、pUC19 [Gene, 33, 103 (1985)]、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)、pPA1(特開昭63-233798)等を例示することができる。
プロモーターとしては、E. coli等の宿主細胞中で機能するものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(P trp )、lacプロモーター(P lac )、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、E. coliやファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAを発現ベクターに結合させた組換え体DNAにおいては、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
このような組換え体DNAとしては、例えば後述するpYbiV、pYbjI、pYcjU、pYidA、pYigL、pYniC、pYqaB、およびpCofをあげることができる。
該組換え体DNAの宿主細胞としては、エシェリヒア属、エンテロバクター属、パントエア属、クレブシエラ属、セラチア属、エルビニア属、サルモネア属、モルガネラ属などに属する微生物、具体的には、E. coli XL1-Blue、E. coli XL2-Blue、E. coliDH1、E. coli MC1000、E. coli ATCC 12435、E. coliW1485、E. coli JM109、E. coli HB101、E. coliNo.49、E. coli W3110、E. coli NY49、E. coliMP347、E. coli NM522、E. coli BL21、E. coliME8415、E.coliATCC9637等をあげることができる。より好ましい宿主としてはE. coliをあげることができる。
(c)グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAが染色体DNAに組み込まれた微生物の取得
上記(a)の方法で得られるグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAを染色体DNAの任意の位置に組み込むことにより、グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質の活性が親株より高い微生物を取得することもできる。
グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNAを微生物の染色体DNAの任意の位置に組み込む方法としては、相同組換えを利用した方法をあげることができ、宿主、すなわち親株としてE. coliを用いる場合にはProc. Natl. Acad. Sci. U S A., 97, 6640 (2000)に記載の方法をあげることができる。
(2)配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の活性が野生株より低下、または喪失した微生物の取得
(a)配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子の取得
配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子は、例えば上記1(2)の配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列に従い、上記2(1)(a)と同様の方法により取得することができる。
上記方法で取得することができる遺伝子としては、配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする、配列番号17で表される塩基配列を有する遺伝子をあげることができる。
(b)配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の活性が低下、または喪失した微生物の取得
配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の活性が親株より低下、または喪失した微生物は、UV照射、変異剤などで微生物を異処理した後、配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の活性が親株より低下または喪失した菌株を選択する方法、または微生物の染色体DNA上の配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列に、塩基の欠失、置換または付加を導入する方法などにより取得することができる。
配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列に、塩基の欠失、置換または付加を導入する位置は、上記1(2)のとおりである。
微生物の染色体DNAの遺伝子に塩基の欠失、置換または付加を導入する方法としては、相同組換えを利用した方法をあげることができる。一般的な相同組換えを利用した方法としては、上記2(2)(a)で取得できる配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子を用いて、塩基の欠失、置換または付加が導入された変異遺伝子を作製し、塩基の欠失等を導入したい宿主細胞内では自律複製できない薬剤耐性遺伝子を有するプラスミドDNAと連結して作製できる相同組換え用プラスミドを用いる方法をあげることができ、E. coliで頻用される相同組換えを利用した方法としてはラムダファージの相同組換え系を利用して、塩基の欠失、置換または付加を導入する方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 6641-6645(2000)]をあげることができる。
配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の活性が野生株より低下、または喪失した微生物であることは、配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質をコードする遺伝子の転写量を、ノーザン・ブロッティングにより、または配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と実質的に同一の活性を有する蛋白質の生産量をウェスタン・ブロッティングにより、野生株と比較することにより確認することができる。
3.本発明のグルコサミンの製造法
上記1の方法で調製することができる微生物を培地に培養し、培養物中にグルコサミンを生成、蓄積させ、該培養物からグルコサミンを採取することにより、グルコサミンを製造することができる。
本発明の製造法で用いられる培地は、炭素源、窒素源、無機塩など本発明の微生物の増殖、およびグルコサミンの生合成に必要な栄養素を含む限り、合成培地、天然培地のいずれでもよい。
炭素源としては、使用する微生物の資化できる炭素源であればいずれでもよく、例えばグルコース、糖蜜、フラクトース、シュークロース、マルトース、でんぷん加水分解物等の糖類、エタノール、グリセロールのようなアルコール類、酢酸、乳酸、コハク酸等の有機酸類などをあげることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどの各種無機および有機アンモニウム塩類、尿素、アミン等の窒素化合物、ならびに肉エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、ペプトン、大豆加水分解物等の窒素含有有機物を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一水素カリウム、リン酸第二水素カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム等を用いることができる。
その他、必要に応じて、ビオチン、チアミン、ニコチンアミド、ニコチン酸等の微量栄養源を加えることができる。これら微量栄養源は、肉エキス、コーン・スティープ・リカー、カザミノ酸等の培地添加物で代用することもできる。
さらに必要に応じて本発明の微生物が生育に要求する物質(例えばアミノ酸要求性の微生物であれば要求アミノ酸)を添加することができる。
培養は、振とう培養や深部通気攪拌培養のような好気的条件で行う。培養温度は20〜50℃、好ましくは20〜42℃、より好ましくは28〜38℃である。培地のpHは5〜11の範囲で、好ましくは6〜9の中性付近の範囲に維持して培養を行う。培地のpHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア、pH緩衝液などを用いて行う。
培養時間は、5時間〜6日間、好ましくは16時間〜3日間である。
培養物中に蓄積したグルコサミンは、通常の精製方法によって採取することができる。例えばグルコサミンは、培養後、遠心分離などで菌体や固形物を除いたあと、活性炭処理、イオン交換樹脂処理、濃縮、結晶分別等の公知の方法を併用することによって採取することができる。
採取したグルコサミンは、(A)グルコサミンおよびN-アセチルグルコサミンの総量を検出するGhoshらの方法[J. Biol. Chem., 235, 1265-1273(1960)]、および(B)N-アセチルグルコサミンのみを検出するReissigらの方法[J. Biol. Chem., 217, 959-966(1955)]により行い、(A)で得た濃度から(B)で得た濃度を差し引くことにより、検出および定量することができる。
以下に本願発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードする遺伝子を発現するプラスミドの造成
パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成機を用いて、ybiV遺伝子、ybjI遺伝子、ycjU遺伝子、yidA遺伝子、yigL遺伝子、yniC遺伝子、yqaB遺伝子およびcof遺伝子の各塩基配列に基づき、該遺伝子を増幅するためのプライマーDNAを合成した。各遺伝子を増幅するために用いたプライマーDNAの塩基配列は表1のとおりである。
Figure 0005424604
E. coliW3110株の染色体DNAを鋳型とし、上記表1の配列番号で表される塩基配列からなる2種のDNAをそれぞれプライマーセットとして用いてPCR反応を行った。
PCRは0.1μgの染色体DNA、0.5μmol/Lの各プライマー、2.5units のPfu DNAポリメラーゼ、4μLのPfu DNAポリメラーゼ用×10緩衝液、200μmol/L の各deoxyNTPを含む40μLの反応液を用い、94℃で1分間、55℃で2分間、72℃で1分間からなる工程を30回繰り返すことにより行った。
該PCRにより、ybiV遺伝子として約0.8kbのDNA断片(以下、ybiV遺伝子増幅断片という)、ybjI遺伝子として約0.8kbのDNA断片(以下、ybjI遺伝子増幅断片という)、ycjU遺伝子として約0.7kbのDNA断片(ycjU遺伝子増幅断片という)、yidA遺伝子として約0.8kbのDNA断片(以下、yidA遺伝子増幅断片という)、yigL遺伝子として約0.8kbのDNA断片(以下、yigL遺伝子増幅断片という)yniC遺伝子として約0.7kbのDNA断片(以下、yniC遺伝子増幅断片という)、yqaB遺伝子として約0.6kbのDNA断片(以下、yqaB遺伝子増幅断片という)、cof遺伝子として約0.8kbのDNA断片(以下、cof遺伝子増幅断片という)が得られた。
上記で得られたybiVycjUyigLyqaB各遺伝子増幅断片をClaIおよびBamHIで、ybjIyidAyniCcof各遺伝子増幅断片をHindIIIおよびBamHIで切断した後、ジーンクリーンIIキット(バイオ101社製)を用いてそれぞれの増幅断片を精製した。
次にtrpプロモーターを含む発現ベクターpTrs30〔大腸菌JM109/pTrS30(FERM BP-5407)より調製可能〕をClaIおよびBamHI、並びにHindIIIおよびBamHIで切断後、上記と同様の方法により約4.5kbのDNA断片をそれぞれ精製した。
ybiV遺伝子増幅断片、ycjU遺伝子増幅断片、yigL遺伝子増幅断片、yqaB遺伝子増幅断片の各増幅断片とpTrS30のClaIおよびBamHI 切断断片、並びにybiJ遺伝子増幅断片、yidA遺伝子増幅断片、yniC遺伝子増幅断片、cof遺伝子増幅断片の各増幅断片とpTrS30のHindIIIおよびBamHI切断断片とをライゲーションキットを用いてそれぞれ連結した。
得られた各連結DNAを用いてE. coli NM522株を形質転換し、アンピシリン耐性を指標に形質転換体を選択した。
該形質転換体から公知の方法に従ってプラスミドを抽出し、それぞれの遺伝子発現ベクターが取得されていることを確認し、各該プラスミドDNAをpYbiV、pYbjI、pYcjU、pYidA、pYigL、pYniC、pYqaB、およびpCofとそれぞれ命名した。
配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする遺伝子(yhbJ遺伝子)が欠損した微生物の作製
E. coliの染色体DNA上の特定遺伝子が欠損した菌株は、ラムダファージの相同組換え系を利用した方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 6641-6645(2000)]に従って作製した。
以下に記載のプラスミドpKD46、pKD3およびpCP20は、エシェリヒア・コリ ジェネティック ストック センター(米国エール大学)から該プラスミドを保持するE. coli株を入手し、当該株から公知の方法により抽出して用いた。
(1)yhbJ遺伝子欠損用DNA断片のクローニング
E. coli K12株の染色体DNA上に存在する配列番号17で表される塩基配列を有するyhbJ遺伝子を欠損させることを目的に、実施例1と同様、DNA合成機を用いて、エシェリヒア・コリK12株の染色体DNA上におけるyhbJ遺伝子の上流および下流に位置する400〜500bpからなる塩基配列と相同な配列を有するDNA断片を増幅するためのプライマーDNA、および酵母由来Flp recombinaseが認識する塩基配列を有するDNAを合成した。
すなわち、yhbJ遺伝子欠損用DNA断片増幅用プライマーセットとして配列番号46および47、並びに48および49で表される塩基配列からなるDNAをそれぞれ合成した。
次に、上記合成DNAをプライマーセットとして用い、E. coli ATCC9637株の染色体DNAを鋳型としてPCRを行った。PCRは、用いる鋳型とプライマーDNAが異なる点以外は、実施例1と同様の条件で行った。
該PCRにより、目的とするyhbJ遺伝子欠損用の上流および下流域の相同配列断片(それぞれ、上流DNA断片、下流DNA断片という)を取得した。
次に上記の上流DNA断片、下流DNA断片、およびHindIIIで切断したpKD3を鋳型に、配列番号46および49で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いたクロスオーバーPCR法 [J. Bacteriol., 179, 6228-6237 (1997)]により、中心部にpKD3のクロラムフェニコール耐性遺伝子部分が挿入し、3つのDNA断片が連結したDNA断片(yhbJ遺伝子欠損用DNA断片)を取得した。
(2)yhbJ遺伝子が欠損したE. coliの作製
E. coli ATCC9637株をpKD46で形質転換した後、アンピシリン耐性を指標にして形質転換体を選択し、該形質転換体をE. coli ATCC9637/pKD46と命名した。
10mmol/LのL-アラビノースと50μg/mlのアンピシリンの存在下28℃で培養して得られたE. coli ATCC9637/pKD46に、電気パルス法により上記で取得したyhbJ遺伝子欠損用DNA断片を導入し、クロラムフェニコール耐性を指標にしてE. coli ATCC9637/pKD46の染色体DNA上に該DNA断片が相同組換えにより組込まれた形質転換体(E. coliATCC9637/pKD46 yhbJ::cat)を選択した。
E. coli ATCC9637/pKD46 yhbJ::catを、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に植菌し、42℃で14時間培養した後、単コロニー分離した。得られた各コロニーを25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地、及び100mg/lのアンピシリンを含むLB寒天培地にレプリカして42℃で培養し、クロラムフェニコール耐性かつアンピシリン感受性を指標にしてpKD46脱落株(E. coli ATCC9637 yhbJ::cat)を選択した。
次に上記で得られたE. coli ATCC9637 yhbJ::catをpCP20を用いて形質転換し、アンピシリン耐性を指標にして形質転換体を選択することにより、pCP20を保持するpKD46脱落株(E. coli ATCC9637/pCP20 yhbJ::cat)を取得した。
上記で取得したE. coli ATCC9637/pCP20 yhbJ::catを薬剤無添加のLB寒天培地に植菌し、42℃で14時間培養した後、単コロニー分離した。得られた各コロニーを薬剤無添加LB寒天培地、25mg/Lのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地および100mg/Lのアンピシリンを含むLB寒天培地にレプリカして、30℃で培養し、クロラムフェニコール感受性かつアンピシリン感受性を示す株を数株選択した。
上記で選択した各株からそれぞれ染色体DNAを調製し、染色体DNA上において、yhbJ遺伝子の外側に位置するDNAの塩基配列に基づいて設計したDNAをプライマーセットとして用い、染色体DNAを鋳型にしたPCRを行った。上記PCRにおいて、yhbJ遺伝子を含まない、短い増幅断片を与えた株をyhbJ遺伝子欠損株とし、E. coli WyhbJ株と命名した。
yhbJ遺伝子が欠損し、グルコサミンの取り込み活性を有する蛋白質をコードする遺伝子およびグルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ活性を有する蛋白質をコードする遺伝子を含むnagオペロンのプロモーターが欠損した微生物の作製
(1)遺伝子欠損用DNA断片のクローニング
E. coli K12株の染色体DNA上に存在する配列番号19で表される塩基配列を有するグルコサミン取り込み活性を有する蛋白質をコードする遺伝子(manX-manY-manZ遺伝子)、および配列番号23で表される塩基配列を有するグルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ活性を有する蛋白質をコードする遺伝子(nagB遺伝子)の発現を支配するnagオペロン(nagB遺伝子の下流に配列番号23で表されるnagAnagC、およびnagD遺伝子と、nagB遺伝子上流に逆向きにある配列番号28で表されるnagE遺伝子とでオペロンをなしている)のプロモーターを欠損させることを目的に、上記DNA合成機を用い、E. coli K12株の染色体DNA上におけるmanX-manY-manZ遺伝子の上流および下流に位置する400〜500bpからなる塩基配列と相同な配列を有するDNA断片を増幅するためのプライマーDNA、またnagB遺伝子の上流に位置するnagオペロンのプロモーター領域の上流および下流に位置する400〜500bpからなる塩基配列と相同な配列を有するDNA断片を増幅するためのプライマーDNAを合成した。
すなわち、manXmanY、およびmanZ遺伝子はオペロンをなしているので、グルコサミン取り込み活性を有する蛋白質をコードする遺伝子を欠損するためのプライマーセットとしてmanX遺伝子の上流領域を増幅するための配列番号50および51で表される塩基配列からなるDNA、並びにmanZ遺伝子の下流域を増幅するためのプライマーセットとして配列番号52および53で表される塩基配列からなるDNAをそれぞれ合成した。
また異なる向きで存在するnagE遺伝子とnagB遺伝子の間にあるnagオペロンのプロモーター領域を欠損するためのプライマーセットとしてnagE遺伝子の上流領域を増幅するための配列番号54および55で表される塩基配列からなるDNA、並びにnagB遺伝子の上流領域を増幅するためのプライマーセットとして配列番号56および57で表される塩基配列からなるDNAをそれぞれ合成した。
次に、上記合成DNAをプライマーセットとして用い、実施例2(1)と同様の方法により、manX-manY-manZ遺伝子欠損用の上流および下流域の相同配列断片(それぞれ、上流DNA断片、下流DNA断片という)およびnagオペロンのプロモーター欠損用の上流および下流域の相同配列断片(それぞれ、上流DNA断片、下流DNA断片という)およびを取得した後、該上流DNA断片、下流DNA断片、およびHindIIIで切断したpKD3を鋳型に、manX-manY-manZ遺伝子欠損用のものは配列番号50および53で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに、nagオペロンプロモーター欠損用のものは配列番号54および57で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いたクロスオーバーPCR法により、中心部にpKD3のクロラムフェニコール耐性遺伝子部分が挿入し、3つのDNA断片が連結したDNA断片(manX-manY-manZ遺伝子欠損用DNA断片およびnagオペロンプロモーター欠損用DNA断片)を取得した。
(2)yhbJ遺伝子が欠損し、グルコサミンの取り込み活性を有する蛋白質をコードする遺伝子およびnagオペロンのプロモーターが欠損した微生物の作製
実施例2(2)で得られたE. coli WyhbJ株をpKD46で形質転換した後、アンピシリン耐性を指標に形質転換体を選択し、該形質転換体をE. coli WyhbJ/pKD46と命名した。
次にE. coli WyhbJ/pKD46に、電気パルス法により上記(1)で取得したmanX-manY-manZ遺伝子欠損用DNA断片を導入し、E. coli WyhbJ/pKD46の染色体DNA上にmanX-manY-manZ遺伝子欠損用DNA断片が相同組換えにより組込まれた形質転換体(E. coli WyhbJ/pKD46 manX-manZ::cat)を取得した。
次に、実施例2(2)と同様の操作を行うことにより、pKD46が脱落しており、かつ染色体DNA上からクロラムフェニコール耐性遺伝子が欠落した株を取得し、E. coliWyhbJManと命名した。
さらにここで得られたE. coli WyhbJManをもとに、nagオペロンプロモーター欠損用DNA断片を用いて再度実施例2(2)と同様の操作を繰り返して得られたnagオペロンプロモーター欠損株をWyhbJManNagと命名した。

表2は、各遺伝子欠損株における欠損遺伝子名を示す。
Figure 0005424604
yhbJ遺伝子が破壊され、かつグルコサミン-6-リン酸脱リン酸活性が野生株より向上し、さらにnagオペロンのプロモーターが欠損した微生物を用いたグルコサミンの製造
実施例1で造成したプラスミドpYbiV、pYbjI、pYcjU、pYidA、pYigL、pYniC、pYqaB、pCofおよび発現ベクターpTrS30を用いてE. coli ATCC9637株、実施例2で作製したWyhbJ株および実施例3で作製したWyhbJManNagを形質転換し、アンピシリン耐性を指標にして形質転換体を選択した。
得られた形質転換株を100μg/mlのアンピシリン含む8mlのLB培地の入った試験管に接種し、28℃で17時間培養した。得られた培養物を100μg/mlのアンピシリンを含む8mlの培地(リン酸水素二カリウム 16g/L、リン酸二水素カリウム 14g/L、硫酸アンモニウム 2g/L、クエン酸(無水) 1g/L、カザミノ酸(Difco社製) 5g/L、グルコース 30g/l、ビタミンB1 10mg/L、硫酸マグネシウム・7水和物 2g/L、硫酸鉄7水和物 50mg/L、硫酸マンガン7水和物 10mg/L、10mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いてpH7.2に調整。グルコースおよび硫酸マグネシウム・7水和物、は別個に蒸煮後添加)を試験管に1%添加し、28℃で24 時間培養した。
得られた培養物を遠心分離し、その上清中の生産物を比色法により分析した。
比色法による分析は、二通りの定量法を用いて行った。(A)Ghoshらの方法[J. Biol. Chem., 235, 1265-1273(1960)]に従ってグルコサミンおよびN-アセチルグルコサミンの総量を測定し、(B)Reissigらの方法[J. Biol. Chem., 217, 959-966(1955)]に従ってN-アセチルグルコサミンの量を測定した。(A)で得た濃度から(B)で得た濃度を差し引いた値をグルコサミン濃度とした。本実施例中のグルコサミンの定量において、(B)の方法で有意な値を示すものは無かった。グルコサミンの定量結果を表3に示す。
Figure 0005424604
表3に示すとおり、yhbJ遺伝子の破壊によりグルコサミン-6-リン酸合成酵素遺伝子の発現を野生株より強化、またはグルコサミン-6-リン酸脱リン酸活性を野生株より向上させただけの微生物に比べ、その双方の性質を同時に付与された微生物の方が、培地中により多くのグルコサミンを蓄積した。またさらにグルコサミンの取り込み活性を有する蛋白質をコードする遺伝子、およびグルコサミン-6-リン酸デアミナーゼ活性を有する蛋白質の活性を低下、または喪失させた微生物は培地中にさらに多くのグルコサミンを蓄積した。
配列番号30−人工配列の説明:合成DNA
配列番号31−人工配列の説明:合成DNA
配列番号32−人工配列の説明:合成DNA
配列番号33−人工配列の説明:合成DNA
配列番号34−人工配列の説明:合成DNA
配列番号35−人工配列の説明:合成DNA
配列番号36−人工配列の説明:合成DNA
配列番号37−人工配列の説明:合成DNA
配列番号38−人工配列の説明:合成DNA
配列番号39−人工配列の説明:合成DNA
配列番号40−人工配列の説明:合成DNA
配列番号41−人工配列の説明:合成DNA
配列番号42−人工配列の説明:合成DNA
配列番号43−人工配列の説明:合成DNA
配列番号44−人工配列の説明:合成DNA
配列番号45−人工配列の説明:合成DNA
配列番号46−人工配列の説明:合成DNA
配列番号47−人工配列の説明:合成DNA
配列番号48−人工配列の説明:合成DNA
配列番号49−人工配列の説明:合成DNA
配列番号50−人工配列の説明:合成DNA
配列番号51−人工配列の説明:合成DNA
配列番号52−人工配列の説明:合成DNA
配列番号53−人工配列の説明:合成DNA
配列番号54−人工配列の説明:合成DNA
配列番号55−人工配列の説明:合成DNA
配列番号56−人工配列の説明:合成DNA
配列番号57−人工配列の説明:合成DNA

Claims (3)

  1. 以下の(1)〜(3)より選ばれるいずれかの蛋白質の活性が野生株に比べて向上しており、かつ、以下の(4)または(5)の蛋白質の活性が野生株に比べて低下または喪失している微生物を培地に培養し、培養液中にグルコサミンを生成、蓄積せしめ、該培養液中からグルコサミンを採取することを特徴とする、グルコサミンの製造法。
    (1)配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
    (2)配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質
    (3)配列番号2、4、6、8、10、12、14または16で表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有し、かつグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質
    (4)配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
    (5)配列番号18で表されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有し、かつ配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質と同一の活性を有する蛋白質である、請求項1記載のグルコサミンの製造法。
  2. グルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質が、以下の(1)または(2)のDNAにコードされる蛋白質である、請求項1に記載の製造法。
    (1)配列番号1、3、5、7、9、11、13または15で表される塩基配列からなるDNA
    (2)配列番号1、3、5、7、9、11、13または15で表される塩基配列と95%以上の同一性を有し、かつグルコサミン‐6‐リン酸脱リン酸活性を有する蛋白質をコードするDNA
  3. 配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質または該蛋白質と同一の活性を有する蛋白質が、以下の(1)または(2)のDNAにコードされる蛋白質である、請求項1または2に記載の製造法。
    (1)配列番号17で表される塩基配列からなるDNA
    (2)配列番号17で表される塩基配列と95%以上の同一性を有し、かつ、配列番号18で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質と同一の活性を有する蛋白質をコードするDNA
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