JP5826688B2 - 金属微粒子分散複合体及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、三次元的な網目構造を持つマトリックス及び金属微粒子によって構成され、例えば局在型表面プラズモン共鳴を利用した各種のデバイスに利用できる金属微粒子分散複合体及びその製造方法に関する。
ナノメートルサイズの微粒子は、幾何学的な高い比表面積を有していることに加え、量子サイズ効果により、光学特性の変化、融点の低下、高触媒特性、高磁気特性等を発現することから、触媒反応や発光特性などの化学的および物理的な変換特性の向上など、バルク材料では得られなかった新機能が期待され、電子材料、触媒材料、蛍光体材料、発光体材料、医薬品等、様々な分野において非常に重要な材料となっている。特に、数nm〜100nm程度のサイズの金属微粒子では、微粒子中の電子が、特定の波長の光と相互作用を生じて共鳴する局在型表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance; LSPR)という現象を有しており、近年、この現象を活かして、様々なデバイスへの応用が研究されている。この局在型表面プラズモン共鳴は、金属微粒子の周辺媒質の誘電率ε(λ)(=(n(λ)))(nはその屈折率)の変化に敏感である為、「金属微粒子の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化する」、という特徴を持っており、この特徴を活かして、結露センサー、湿度センサー、バイオセンサー、ケミカルセンサーなどのセンシング分野に応用する検討が盛んに行われている。
金属微粒子の局在型表面プラズモン共鳴現象をデバイスへ利用する場合には、材料のハンドリング性、安定性、応用分野の多様性などの観点から金属微粒子を支持体へ固定化する必要がある。しかしながら、金属微粒子は、凝集分散特性がバルクの金属とは異なるため、コロイド溶液の様に水溶液や有機溶媒中では金属微粒子が分散するものでも、支持体への固定化の際には、静電反発作用等による分散安定化の低下により凝集が生じ、局在型表面プラズモン共鳴の強度が低下、もしくは消失してしまう。このような材料を作製するためには、特殊な方法を用いるが、高価な装置が必要になること、作業が煩雑であることに加え、歩留まりや生産性が低いなど様々な課題があった。従って、局在型表面プラズモン共鳴を保持したまま、簡便に且つ安価に支持体への固定化が可能な技術が要望されており、さらには、デバイスの高性能化のために、局在型表面プラズモン共鳴の強度が高く、金属微粒子周辺環境の変化を高感度に感知できる材料が強く望まれている。
前述の課題を解決すべく、金属微粒子分散複合体に関して、さらなる性能向上のために、例えば、特許文献1及び2に記載の新しい技術の開発が進められている。
特許文献1では、3-アミノプロピルトリメトキシシランにより表面修飾されたガラス基板に金属微粒子を単分散させ固定化した金属微粒子分散複合体が開示されている。また、特許文献2には、陽極酸化により微細孔が形成されたポーラスアルミナからなる基体に金属微粒子が規則的に固定化された金属微粒子層が開示されている。しかしながら、特許文献1では、金属微粒子を固定化する際に、金属微粒子の濃度の変化により、分散の度合いが異なってしまい、面内ばらつきが大きくなるという問題がある。さらに、ガラス基板上に化学的に固定化されているため、金属微粒子の脱落によって基板上で金属微粒子の分布が非均一化するおそれがある。また、特許文献2では、アルミナ表面に形成した穴に金属微粒子が埋没しているため、金属微粒子の周辺媒質の変化に関わる部分が小さく、周辺環境変化を敏感に感知することができない。さらに、特許文献1、2の技術は、金属微粒子を二次元的に固定化しているため、固定化する金属微粒子の量に限界があり、局在型表面プラズモン共鳴の強度を更に高めることは困難であった。すなわち、前述の「局在型表面プラズモン共鳴の強度が高く、金属微粒子周辺環境の変化を高感度に感知できる材料」を作製するためには、金属微粒子が支持体の表層部だけでなく、その厚さ方向にも均一に分布した構造が必要になる。
金属微粒子がマトリックス内部で三次元的に存在する複合体は、例えば非特許文献1、特許文献3及び4で開示されている。非特許文献1では、多孔質シリカにHAuClの酸溶液またはNaCuAl溶液を含浸し、次いで水素雰囲気下で加熱によって還元することで、多孔質マトリックス内部に金属微粒子を分散した構造が得られることを見出し、提案している。また、特許文献3では、微細孔またはメソ細孔性固体マトリックス中に金属微粒子または金属酸化物微粒子の前駆体化合物を含浸させた後、放射線分解還元によってマトリックス中に三次元的に均一分散した構造を作製し、提案している。さらに、特許文献4では、フェリチンなどのたんぱく質や高分子デンドリマーで覆われた金属微粒子と多孔質体を形成するための原料とを混合した後、ゾル−ゲル法によって、ナノ粒子を凝集することなく、三次元的に含有する有機複合多孔質体が得られることを見出し、提案している。
しかしながら、非特許文献1では、多孔質マトリックス内部に金属微粒子の前駆体溶液が含浸される度合は小さく、固体マトリックス内で不均一な状態となっているため、マトリックス内における還元した後の金属微粒子の含有量は、比較的小さいままであり、しかも、金属微粒子は基本的に多孔質マトリックスの表面近くで濃縮された状態で存在している。
また、特許文献3では、多孔質マトリックス中に形成した金属微粒子は、マトリックス材料の空隙のサイズと同一のサイズであることから、金属微粒子表面の大部分はマトリックスに接触している状態、すなわち、金属微粒子表面はマトリックス成分で覆われていると考えられ、金属微粒子周辺の媒質の変化による局在型表面プラズモン共鳴の波長変化を利用することが困難である。また、製造方法において、多孔質マトリックス深部まで金属ナノ粒子を形成するには、金属ナノ粒子の前駆体溶液をマトリックス深部にまで含浸させなければならないが、マトリックスの細孔径が小さいため、ただ浸漬させるだけでは前駆体溶液が深部まで含浸できないことから、含浸室とポンプ系とを備えた特殊な装置が必要である。さらに、この含浸工程では真空条件が必要であるため、長時間を要する。また、金属微粒子の前駆体を還元するために、放射線分解還元を用いており、γ線源、X線源または加速電子源などの特殊な還元要素が必要であることや、また、還元中に生じる酸素ラジカルにより形成した金属微粒子の酸化を抑えるために、酸化ラジカル遮断剤として、第1級アルコールや第2級アルコール、ギ酸塩を添加しなくてはならない。
特許文献4では、非常に煩雑な工程を必要とする上に、形成した金属微粒子を含有する複合多孔質体は、含有している金属微粒子表面が有機化合物で覆われているため、金属微粒子周辺の媒質の変化による局在型表面プラズモン共鳴の波長変化を利用することが困難である。該特許文献によると、金属ナノ粒子を担持する機能を有する有機化合物の除去も記載されているが、この場合、金属微粒子のマトリックス内部での移動又は脱落の恐れがある。さらに、金属の種類によっては、金属酸化物が生成してしまい、金属微粒子が持つ局在型表面プラズモン共鳴が発現しなくなってしまうという問題がある。
特開2000−356587号公報 特開2005−171306号公報 特表2008−531447号公報 再公表04−110930号公報
Kuei-Jung Chaoら[「Preparation and characterization of highly dispersed gold nanoparticles within channels of mesoporous silica」、Catalysis Today (2004)、97巻、1号、49〜53頁]
マトリックス内に金属微粒子が分散した金属微粒子分散複合体を、金属微粒子が持つ局在型表面プラズモン共鳴現象を利用したデバイス等の用途に適用する場合には、金属微粒子をマトリックスの固体骨格部に固定化し安定させる必要がある。また、少なくとも、その吸収スペクトルの強度が大きいことが重要であり、加えて、一般に吸収スペクトルがシャープである程、高感度な検出が可能となる。強度が大きくシャープな吸収スペクトルを得るには、例えば、
1)金属微粒子の大きさが所定の範囲内に制御されていること、
2)金属微粒子の形状が均一であること、
3)金属微粒子が隣り合う金属微粒子とある一定以上の粒子間隔を保った状態でお互いが離れていること、
4)金属微粒子分散複合体に対する金属微粒子の体積充填割合がある一定の範囲で制御されていること、
5)金属微粒子がマトリックスの表層部から存在するとともに、その厚さ方向にも所定の粒子間距離を保ちながら偏りなく分布していること、
などの構造的特性を金属微粒子分散複合体が備えていることが必要である。また、金属微粒子分散複合体を、金属微粒子の外部環境の変化によって生じる局在型表面プラズモン共鳴の波長変化を高感度に感知するセンサー用途への適用を図るには、金属微粒子分散複合体は上記特性に加えて、更に、
6)金属微粒子が外部環境に露出した状態であること、
などの構造的特性を備えることが必要となる。
本発明の目的は、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度が大きく、かつシャープな金属微粒子分散複合体を製造する方法を提供することにある。
本発明の金属微粒子分散複合体の製造方法は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を備えた金属微粒子分散複合体の製造方法である。本発明の金属微粒子分散複合体の製造方法は、以下の工程i〜iv;
i)前記固体骨格部の原料となるセラミックス微粒子を含有するスラリーを調製する工程、
ii)前記スラリーに、該スラリーの固形分100重量部に対し、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内となるように、金属微粒子の原料となる金属化合物を混合して塗布液を調製する工程、
iii)前記塗布液を、基材上に塗布し、乾燥して塗布膜を形成する工程、
iv)前記塗布膜を加熱処理することにより、前記塗布膜から三次元的な網目構造を有する固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を備えたマトリックス層を形成するとともに、前記金属化合物の金属イオンを加熱還元して金属微粒子となる粒子状金属を析出させる工程、
を備えている。そして、本発明の金属微粒子分散複合体の製造方法は、前記工程iで用いる前記セラミックス微粒子の一次粒子径が1nm〜25nmの範囲内であり、かつ、二次粒子径が100nm〜2μmの範囲内であり、前記工程ivで形成される金属微粒子の平均粒子径が3nm〜100nmの範囲内であり、かつ、金属微粒子の全個数に対し、60%以上の金属微粒子が、前記一次粒子径よりも大きく、前記二次粒子径よりも小さいことを特徴とする。
本発明の金属微粒子分散複合体の製造方法は、前記セラミックス微粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア及びベーマイトからなる群より選ばれる1種以上であってもよい。
本発明の金属微粒子分散複合体の製造方法は、前記工程ivをポリビニルアルコールの存在下で行ってもよい。この場合、前記工程iのスラリーを調製する工程でポリビニルアルコールを添加することが好ましい。また、前記金属化合物1重量部に対し、前記ポリビニルアルコールを0.1〜50重量部の範囲内で使用することが好ましい。
本発明の金属微粒子分散複合体は、上記いずれかに記載の金属微粒子分散複合体の製造方法によって製造されたものである。
本発明の金属微粒子分散複合体は、以下のa〜cの構成:
a)前記固体骨格部は、セラミックス微粒子を含有し、三次元的な網目構造を形成している;
b)前記金属微粒子は、各々の金属微粒子同士が接することなく、隣り合う金属微粒子における粒子径が大きい方の粒子径以上の間隔で存在している;
c)前記金属微粒子は、前記マトリックス層の空隙に露出した部位を備えており、マトリックス層中で三次元的に分散した状態で存在している;
を備えていてもよい。
本発明の金属微粒子分散複合体は、前記金属微粒子が、380nm以上の波長の光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じるものであってもよい。
本発明の金属微粒子分散複合体の製造方法では、原料となるセラミックス微粒子として、一次粒子径が1nm〜25nmの範囲内、かつ、二次粒子径が100nm〜2μmの範囲内のものを用いることによって、マトリックス層中に適度な大きさで均等に空隙が形成される。その結果、空隙を利用して成長する金属微粒子が局在型表面プラズモン共鳴を生じやすい大きさとなる。また、金属微粒子の分散性が向上し、金属微粒子分散複合体中で粒子間距離を保ちながら偏りなく金属微粒子を分散させることができる。従って、金属微粒子分散複合体の局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープになり、各種センシング用デバイスに利用する場合に高精度の検出が可能になる。
また、本発明方法によって得られる金属微粒子分散複合体は、マトリックスが固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有する三次元的な網目構造となっており、金属微粒子がこのマトリックス内に三次元的に分散しているため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度が大きい。しかも、マトリックス内部に存在する金属微粒子が所定の粒子径の範囲内に制御され、粒子間距離を保ちながら偏りなく分散しているので、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープである。さらに、金属微粒子が網目構造のマトリックス内部の空隙に露出した部位を備えているので、金属微粒子の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化するという特性を最大限に利用することが可能であり、その特性を利用したデバイスに応用することが可能となる。
上記の構造的特性を備えた金属微粒子分散複合体は、局在型表面プラズモン効果を利用する分野にとどまらず、例えば触媒や電極にも好適に用いることができる。これらを用いた電気化学素子への応用が可能であり、例えば燃料電池、空気電池、水電解装置、電気二重層キャパシタ、ガスセンサー、汚染ガス除去装置などを提供することができる。また、金属微粒子が凝集することなく均質分散していることから、その特性を生かした発光、光変調などの光学素子や電子素子などの様々なデバイスへの展開が可能である。
本発明の一実施の形態に係るナノコンポジットにおけるマトリックスの構造を模式的に示す図面である。 金属微粒子の構造を説明する図面である。 一次粒子からなる原料を用いて固体骨格部を形成する比較方法の説明に供する図面である。 二次粒子を含む原料の説明に供する図面である。 本発明の実施例1のナノコンポジットの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像である。 本発明の実施例1のナノコンポジットの空気に対する吸収スペクトルを測定したグラフである。 本発明の実施例2のナノコンポジットの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像である。 本発明の実施例2のナノコンポジットの空気に対する吸収スペクトルを測定したグラフである。 本発明の実施例3のナノコンポジットの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像である。 本発明の実施例3のナノコンポジットの空気に対する吸収スペクトルを測定したグラフである。 本発明の実施例4のナノコンポジットの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像である。 本発明の実施例4のナノコンポジットの空気に対する吸収スペクトルを測定したグラフである。 比較例1のナノコンポジットの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像である。 比較例1のナノコンポジットの空気に対する吸収スペクトルを測定したグラフである。 比較例2のナノコンポジットの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像である。 比較例2のナノコンポジットの空気に対する吸収スペクトルを測定したグラフである。 比較例3のナノコンポジットの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像である。 比較例3のナノコンポジットの空気に対する吸収スペクトルを測定したグラフである。 比較例4のナノコンポジットの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像である。 比較例4のナノコンポジットの空気に対する吸収スペクトルを測定したグラフである。 比較例5のナノコンポジットの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像である。 比較例5のナノコンポジットの空気に対する吸収スペクトルを測定したグラフである。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明方法により製造される金属微粒子分散複合体の構成について説明する。
本発明の一実施の形態の金属微粒子分散複合体は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を備えた金属微粒子分散複合体である。
<金属微粒子分散複合体>
図1は、本実施の形態に係る金属微粒子分散複合体(以下、単に「ナノコンポジット」ともいう)10におけるマトリックス層1の構造を模式的に示している。図2は、金属微粒子3を拡大して説明する図面である。なお、図2では、隣り合う金属微粒子3における大きい方の金属微粒子3の粒子径をD、小さい方の金属微粒子3の粒子径をDと表しているが、両者を区別しない場合は単に粒子径Dと表記する。
ナノコンポジット10は、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを有するマトリックス層1と、該マトリックス層1の固体骨格部1aに固定された金属微粒子3とを備えている。また、ナノコンポジット10は、以下のa〜cの構成を備えている。
a)固体骨格部1aはセラミックスを含有し、三次元的な網目構造を形成している;
b)金属微粒子3は、各々の金属微粒子3同士が接することなく、隣り合う金属微粒子3における粒子径Dが大きい方の粒子径D以上の間隔Lで存在している;
c)金属微粒子3は、マトリックス層1の空隙1bに露出した部位を備えており、マトリックス層1中で三次元的に分散した状態で存在している。
なお、ナノコンポジット10は、図示しない基材を備えていてもよい。そのような基材としては、例えばガラス、セラミックス、シリコンウェハー、半導体、紙、金属、金属合金、金属酸化物、合成樹脂、有機/無機複合材料等を用いることができ、その形状としては、例えばプレート状、シート状、薄膜状、メッシュ状、幾何学パターン形状、凹凸形状 繊維状、蛇腹状、多層状、球状等のものを適用できる。なお、これらの基材の表面には、例えばシランカップリング剤処理、化学的エッチング処理、プラズマ処理、アルカリ処理、酸処理、オゾン処理、紫外線処理、電気的研磨処理、研磨剤による研磨処理等を施したものも利用できる。
(マトリックス層)
マトリックス層1は、図1に示したように、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを有している。なお、図1では、固体骨格部1aと空隙1bと金属微粒子3との関係を示すために、ナノコンポジット10の一部分を平面的に図案化して示しているが、現実には、図1の紙面と垂直な方向にも固体骨格部1a及び空隙1bを含むマトリックス層1が広がっており、その中に金属微粒子3が分散している。上記a)に示したとおり、固体骨格部1aは、セラミックスを含有し、三次元的な網目構造を形成している。すなわち、固体骨格部1aは、セラミックス微粒子の集合体である。このようなセラミックス微粒子の集合体による三次元的な網目構造は、セラミックス微粒子を溶液に分散したスラリーを加熱処理して得られるものが好ましい。なお、セラミックス微粒子としては、所定の一次粒子径及び二次粒子径を有するものを用いるが、この点は後述する。
固体骨格部1aの原料となるセラミックスは、金属微粒子3となる金属イオンを加熱還元する際にも耐熱性を有する材料として有利であり、化学的安定性の観点からも好ましい。セラミックスとしては、例えば以下の金属酸化物又は金属水酸化物を挙げることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等やこれらの水和物を挙げることができる。また、例えば、複数種類の金属元素を含む無機酸化物でもよい。これらの中でも、シリカ、アルミナ、チタニアが好ましい。これらの金属酸化物は、クロロシランや塩化アルミニウムなどの金属塩化物の気相中における火炎加水分解法など公知の方法で製造することができ、水に不溶で、耐有機溶媒性、耐酸性及び耐アルカリ性があるので、マトリックス層1の固体骨格部1aを構成する成分として有利に利用できる。また、これらの金属酸化物は、水溶液中において高い分散性を持つという特徴があるので、金属酸化物粉末のスラリーを簡便に調製することができる。また、金属水酸化物としては、例えば、アルミニウムオキシ水酸化物(又はアルミナ水和物)を挙げることができる。アルミニウムオキシ水酸化物(又はアルミナ水和物)と呼ばれているものには、ベーマイト(擬ベーマイトを含む)、ギブサイト、ダイアスポア等の各種のものが知られているが、この中でも特にベーマイトが最も好ましい。ここで、ベーマイト(Boehmite)とは、アルミニウムオキシ水酸化物(AlOOH)又はアルミナ水和物(Al・HO)の結晶性の高い微粒子のことを意味し、擬ベーマイトとは、ベーマイトの結晶性の低い微粒子のことを意味するが、いずれも区別なく広義の意味でベーマイトとして説明する。このベーマイト粉末は、アルミニウム塩の中和法やアルミニウムアルコキシドの加水分解法等による公知の方法で製造することができ、水に不溶で、耐有機溶媒性、耐酸性及び耐アルカリ性があるので、マトリックス層1の固体骨格部1aを構成する成分として有利に利用でき、また、酸性の水溶液中において高い分散性を持つという特徴があるので、ベーマイト粉末のスラリーを簡便に調製することができる。
上記のようなマトリックス層1の構造上の特徴は、マトリックス層1が気体や液体に対して透過性を有し、金属微粒子3の利用効率を高める要因となっている。金属微粒子3の高い比表面積や高い活性を効率的に利用するという観点から、ナノコンポジット10の空隙率は、15〜95%の範囲内にあることが好ましい。ここで、ナノコンポジット10の空隙率は、ナノコンポジット10の面積、厚み及び重量より算出した見掛け密度(嵩密度)と、マトリックス層1の固体骨格部1aを形成する材料及び金属微粒子3の固有の密度および組成比率より算出した空隙を含まない密度(真密度)を用いて、後述する式(A)にしたがって算出することができる。空隙率が15%未満では、外部環境に対する開放性が低下するので、金属微粒子3の利用効率が低下する場合がある。一方、空隙率が95%を超えると、固体骨格部1aや金属微粒子3の存在比率が低下するので、機械的強度が低下したり、金属微粒子3による作用(例えば、局在型表面プラズモン共鳴効果)が低下する場合がある。
また、ナノコンポジット10における金属微粒子3の空隙1bに対する体積割合は、上記と同様に金属微粒子3の高い比表面積や高い活性を効率的に利用するという観点から、ナノコンポジット10の空隙1bの全容量に対し、好ましくは0.08〜50%の範囲内がよい。
マトリックス層1の厚みは、金属微粒子3の粒子径Dによっても異なるが、局在型表面プラズモン共鳴を利用する用途においては、例えば、20nm〜20μmの範囲内とすることが好ましく、30nm〜10μmの範囲内とすることがより好ましい。
ナノコンポジット10が、局在型表面プラズモン共鳴を利用した用途に適用される場合、光反射系又は光透過系のいずれの局在型表面プラズモン共鳴を利用することが可能であるが、光透過系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合には、マトリックス層1は金属微粒子3の局在型表面プラズモン共鳴を生じさせるために光透過性を有することが好ましく、特に、380nm以上の波長の光を透過する材質であることが好ましい。
(金属微粒子)
本実施の形態のナノコンポジット10において、金属微粒子3の粒子径Dや粒子間距離Lの制御しやすさの観点から、金属微粒子3は、その前駆体となる金属イオンを加熱還元することによって得られるものが好ましい。このようにして得られる金属微粒子3として、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、錫(Sn)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)等の金属種を用いることができる。また、これらの金属種の合金(例えば白金−コバルト合金など)を用いることもできる。これらの中でも、特に局在型表面プラズモン共鳴を奏する金属種として好適に利用できるものは、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、錫(Sn)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)が挙げられる。380nm以上における可視領域の波長の光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じる金属種として、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)が好ましく挙げられ、特に金(Au)は表面酸化されにくく保存安定性がよいので、最も望ましい。
金属微粒子3の形状は、例えば球体、長球体、立方体、切頭四面体、双角錘、正八面体、正十面体、正二十面体等の種々の形状であってよいが、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープになる球形が最も好ましい。ここで、金属微粒子3の形状は、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することにより確認できる。また、金属微粒子3の平均粒子径は、任意100粒の金属微粒子3を測定したときの面積平均径とする。また、球体の金属微粒子3とは、形状が球体及び球体に近い金属微粒子で、平均長径と平均短径の比が1又は1に近いもの(好ましくは0.8以上)をいう。さらに、それぞれの金属微粒子3における長径と短径との関係が、好ましくは長径<短径×1.35の範囲内、より好ましくは長径≦短径×1.25の範囲内がよい。なお、金属微粒子3が球体でない場合(例えば正八面体など)は、その金属微粒子3におけるエッジ長さが最大となる長さを金属微粒子3の長径とし、エッジ長さが最小となる長さを金属微粒子3の短径として、さらに前記長径をその金属微粒子3の粒子径Dと見做すこととする。
金属微粒子3の平均粒子径は3nm〜100nmの範囲内である。ここで平均粒子径とは、金属微粒子3の直径の平均値(メディアン径)を意味する。金属微粒子3の粒子径Dが100nmを超えると、充分な局在型表面プラズモン共鳴効果が得られにくいので、平均粒子径を100nm以下とする。また、例えば金属微粒子3の最大粒子径が50〜75nm程度以下であるナノコンポジット10は、その粒子径分布が比較的小さくなるため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープなものが得られやすい。従って、金属微粒子3の最大粒子径が50〜75nm程度以下であるナノコンポジット10は、金属微粒子3の粒子径分布は特に制限されず、好ましい態様となる。一方、金属微粒子3が粒子径75nmを超えるものを含むナノコンポジット10でも、金属微粒子3の粒子径分布を小さくすることによって、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープなピークとなる。従って、この場合も金属微粒子3の粒子径分布を小さく制御することが好ましいが、金属微粒子3の粒子径分布は特に制限されない。また、金属微粒子3が粒子径以上の粒子間距離Lで分散している特徴から、例えば金属微粒子3を磁性金属微粒子とすることで、優れた特性を有する磁性体として利用が可能である。
金属微粒子3が球形でない場合は、見掛け上の直径が大きくなる程、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがブロードとなる傾向になるので、金属微粒子3が球形でない場合の粒子径Dは、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下がよい。また、金属微粒子3が球形でない場合には、マトリックス層1に存在する個々の金属微粒子3の形状は、他の金属微粒子3の形状と比較して、好ましくは全体の80%以上、より好ましくは90%以上がほぼ同じ形状ものがよく、相対的にほぼ同じ形状のものが特に好ましい。
ナノコンポジット10には、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3も存在してもよく、このようなナノコンポジット10は局在型表面プラズモン共鳴に影響を与えにくいので特に問題はない。なお、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3は、ナノコンポジット10における金属微粒子3の全量100重量部に対し、例えば金属微粒子3が金微粒子である場合、好ましくは10重量部以下、より好ましくは1重量部以下とすることがよい。ここで、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3は、例えばXPS(X線光電子分光)分析装置やEDX(エネルギー分散型X線)分析装置により検出することができる。
また、より吸収スペクトル強度が高い局在型表面プラズモン共鳴効果を得るためには、金属微粒子3の平均粒子径は少なくとも3nm以上とし、好ましくは10nm以上100nm以下、より好ましくは20nm〜100nmがよい。金属微粒子3の平均粒子径が3nm未満である場合には、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度が小さくなる傾向となる。
また、本実施の形態のナノコンポジット10は、さらに、金属微粒子3の全個数に対し、60%以上の金属微粒子3が、固体骨格部1aの原料となるセラミックス微粒子の一次粒子径よりも大きく、二次粒子径よりも小さいという特徴を有している。この点については、後で詳しく説明する。
本実施の形態のナノコンポジット10において、金属微粒子3は、更に、光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じるものであることが好ましい。局在型表面プラズモン共鳴を生じる波長範囲は、金属微粒子3の粒子径D、粒子形状、金属種、粒子間距離L、マトリックス層1の屈折率等によって異なるが、例えば380nm以上の波長の光によって局在型表面プラズモン共鳴が誘起されることが好ましい。
(金属微粒子の存在状態)
上記b)に示したように、マトリックス層1の中で、金属微粒子3は、各々の金属微粒子3同士が接することなく、隣り合う金属微粒子3における粒子径が大きい方の粒子径以上の間隔で存在している。つまり、隣り合う金属微粒子3の間隔(粒子間距離)Lが、隣り合う金属微粒子3における大きい方の金属微粒子3の粒子径D以上、すなわち、L≧Dである。図2において、金属微粒子3の粒子間距離Lは、大きい方の金属微粒子3の粒子径D以上になっている。したがって、金属微粒子3が有する局在型表面プラズモン共鳴の特性を効率よく発現することができる。なお、隣り合う金属微粒子3における大きい方の粒子径Dと小さい方の粒子径をDとの関係は、D≧Dであればよい。本実施の形態のナノコンポジット10は、金属微粒子3の前駆体となる金属イオンを加熱還元することにより、析出した金属微粒子3の熱拡散が容易となり、隣り合う金属微粒子3における大きい方の粒子径D以上の粒子間距離Lでマトリックス層1の内部に分散した状態となる。粒子間距離Lが、大きい方の粒子径Dよりも小さい場合には、局在型表面プラズモン共鳴の際に粒子どうしの干渉が生じて、例えば隣接する2つの粒子が一つの大きな粒子のように協働して局在型表面プラズモン共鳴が生じ、シャープな吸収スペクトルが得られなくなる場合がある。一方、粒子間距離Lは大きくても特に問題はない。粒子間距離Lが大きい場合、言い換えるとナノコンポジット10に対する金属微粒子3の体積分率が低い場合は、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度が小さくなる。このような場合は、ナノコンポジット10の厚みを大きくすることによって、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度を大きくすることができる。
また、金属微粒子3は、マトリックス層1の内部に三次元的に分散している。つまり、ナノコンポジット10において三次元的な網目構造のマトリックス層1の厚み方向における断面及び該厚み方向に直交する方向における断面(マトリックス層1の表面に平行な断面)を観察すると、多数の金属微粒子3が上記粒子径D以上の粒子間距離Lをあけて縦方向及び横方向に点在した状態になる。
さらに、金属微粒子3の90%以上が、上記粒子径D以上の粒子間距離Lをあけて点在する単一粒子であることが好ましい。ここで、「単一粒子」とは、マトリックス層1中の各金属微粒子3が独立して存在していることを意味し、複数の粒子が凝集したもの(凝集粒子)は含まない。すなわち、単一粒子とは、複数の金属微粒子が分子間力によって凝集した凝集粒子は含まない。また、「凝集粒子」とは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した場合に、個体の金属微粒子の複数個が寄り集まって、一つの凝集体となっていることが明らかに確認されるものをいう。なお、ナノコンポジット10における金属微粒子3は、その化学構造上、加熱還元して生成する金属原子が凝集によって形成される金属微粒子とも解されるが、このような金属微粒子は金属原子の金属結合によって形成されるものと考えられるので、複数の粒子が凝集した凝集粒子とは区別し、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した場合に、一つの独立した金属微粒子3として確認されるものである。
上記のような単一粒子が90%以上存在することにより、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープ且つ安定になり、高い検出精度が得られる。このことは、換言すると、凝集粒子又は上記粒子径D以下の粒子間距離Lで分散する粒子が10%未満であることを意味する。このような粒子が10%以上存在する場合、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがブロードになったり、不安定になったりして、センサー等のデバイスに利用する場合には、高い検出精度が得られにくくなる。また、凝集粒子又は上記粒子径D以下の粒子間距離Lで分散する粒子が10%を超えてしまうと、粒子径Dの制御も極めて困難になる。
また、マトリックス層1中の金属微粒子3の体積分率は、ナノコンポジット10に対して、0.05〜30%とすることが好ましい。ここで、「体積分率」とは、ナノコンポジット10(空隙1bを含む)の一定体積あたりに占める金属微粒子3の合計の体積を百分率で示した値である。金属微粒子3の体積分率が、0.05%未満であると、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度がかなり小さくなり、仮にナノコンポジット10の厚みを大きくしても本発明の効果は得られにくい。一方、体積分率が30%を超えると、隣り合う金属微粒子3の間隔(粒子間距離L)が、隣り合う金属微粒子3における大きい方の金属微粒子3の粒子径Dより狭くなるため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルのシャープなピークが得られにくくなる。
本実施の形態のナノコンポジット10において、上記c)に示したように、金属微粒子3は、マトリックス層1の空隙1bに露出した部位を備えており、マトリックス層1中で三次元的に分散した状態で存在している。すなわち、ナノコンポジット10では、金属微粒子3が、比表面積が高い状態で三次元的に効率良く配置されているので、金属微粒子3の利用効率を高めることができる。また、金属微粒子3は、外部環境に連通する空隙1bに露出した部位を備えているため、金属微粒子3の周辺媒質の誘電率ε(λ)(=(n(λ)))(nはその屈折率)の変化にも敏感にその特性を発揮することができる。すなわち、金属微粒子3は、金属微粒子3の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化する、という特性を充分に利用することが可能となる。このようなナノコンポジット10の構造上の特徴は、ナノコンポジット10が局在型表面プラズモン共鳴を利用した用途、例えば結露センサー、湿度センサー、ガスセンサー、バイオセンサー、ケミカルセンサーなどへの適用を最適なものとしている。
ナノコンポジット10は、例えば透過型の電子顕微鏡等でマトリックス層1の断面を観察した場合に、透過した電子線によってマトリックス層1中に存在する金属微粒子3同士が重なって見えることがある。しかし、実際には金属微粒子3は一定の距離以上を保った状態となっており、完全に独立した単一の粒子として分散している。また、金属微粒子3は、セラミックスを含有し、三次元的な網目状の固体骨格部1aによって物理的又は化学的に固定化されているため、経時変化に伴う金属微粒子3の凝集や脱落が防止できるので、長期保存性にも優れており、ナノコンポジット10の繰り返しの使用においても、金属微粒子3の凝集や脱落が抑制される。
<金属微粒子分散複合材料の応用例>
以上の構成を有する本実施の形態のナノコンポジット10は、金属微粒子3が三次元的な網目構造を有するマトリックス層1中で一定以上の粒子間距離Lを保った状態で、三次元的に偏りなく分散した形態を有する。そのため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープであるとともに、非常に安定しており、再現性と信頼性に優れている。さらに、金属微粒子3の表面の多くは、マトリックス層1中において外部空間に連通する空隙1bに露出しているため、金属微粒子3が有する、金属微粒子3の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化するという特性を充分に発現することが可能である。したがって、ナノコンポジット10は、例えばバイオセンサー、ケミカルセンサー、湿度センサー、結露センサー、ガスセンサー等の各種センシング用デバイスに適している。ナノコンポジット10をセンシング用デバイスに利用することにより、簡易な構成で高精度の検出が可能になる。また、ナノコンポジット10は、例えば、触媒フィルター、燃料電池、空気電池、水電解装置、電気二重層キャパシタ、汚染ガス除去装置、光記録・再生デバイス、光情報処理デバイス、エネルギー増強デバイス、高感度フォトダイオードデバイス等の様々なデバイスにも応用することができる。
<ナノコンポジットの製造方法>
次に、本実施の形態に係るナノコンポジット10の製造方法について説明する。ナノコンポジット10は、以下の方法に従い製造することができる。
本実施の形態のナノコンポジット10の製造方法は、以下の工程i〜iv:
i)固体骨格部の原料となるセラミックス微粒子を含有するスラリーを調製する工程、
ii)スラリーに、該スラリーの固形分100重量部に対し、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内となるように、金属微粒子の原料となる金属化合物を混合して塗布液を調製する工程、
iii)塗布液を、基材上に塗布し、乾燥して塗布膜を形成する工程、
及び、
iv)塗布膜を加熱処理することにより、前記塗布膜から三次元的な網目構造を有する固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を備えたマトリックス層を形成するとともに、前記金属化合物の金属イオンを加熱還元して金属微粒子となる粒子状金属を析出させて金属微粒子分散複合体を得る工程、
を備えている。
i)固体骨格部1aの原料となるセラミックス微粒子を含有するスラリーを調製する工程:
マトリックス層1を構成する固体骨格部1aの原料には、セラミックス微粒子を用いる。セラミックス微粒子としては、市販の金属酸化物微粒子又は金属水酸化物微粒子を好適に使用可能である。例えば、酸化ケイ素(シリカ)としては、例えばフュームドシリカ粉末(日本アエロジル株式会社製、商品名 AEROSIL300、AEROSIL200、AEROSIL130)、高分散シリカ粉末(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名 HDK T40、HDK T30等を挙げることができる。酸化アルミニウム(アルミナ)としては、例えば、アルミナ粉末(日本アエロジル株式会社製、商品名 AEROXIDE AluC、AEROXIDE Alu130)、ヒュームドアルミナ(キャボットジャパン株式会社製、商品名 SpectrAl 81)等を挙げることができる。酸化チタン(チタニア)としては、チタニア粉末(日本アエロジル株式会社製、商品名 AEROXIDE TiO P25、TiO P90)等を挙げることができる。アルミニウムオキシ水酸化物(又はアルミナ水和物)であるベーマイトとしては、例えば、大明化学工業株式会社製のベーマイト(商品名)、CNDEA社製のDisperal HP15(商品名)、ユニオン昭和(株)社製のVERSAL(TM)ALUMINA(商品名)、河合石灰工業株式会社製のセラシュール(商品名)、巴工業株式会社製のCAM9010(商品名)、日産化学株式会社製のアルミナゾル520(商品名)、川研ファインケミカル株式会社製のアルミナゾル−10A(商品名)、スイーコ・インタナショナル社製のSECOベーマイトアルミナ(商品名)等を使用することが可能である。
また、原料のセラミックス微粒子としては、一次粒子径が1〜25nmの範囲内であり、かつ一次粒子が凝集してなる二次粒子の径が、100nm〜2μmの範囲内であるものを用いる。マトリックス層1の固体骨格部1aを形成する主成分であるセラミックス微粒子として、一次粒子径及び二次粒子径が上記の範囲内のものを使用することによって、金属微粒子3の分散性を向上させることができる。セラミックス微粒子の一次粒子径が25nmよりも大きいと、空隙1bが大きくなりすぎる傾向があり、二次粒子径が100nmよりも小さいと、マトリックス層1の3次元網目構造が形成されにくくなる。また、二次粒子径が2μmよりも大きいと、スラリーを調製した際のセラミックス微粒子の分散性が悪く、不透明で粗雑な塗布膜が形成されてしまうことに加え、空隙1bの径(細孔径)が大きくなりすぎて、空隙1bの大きさや分布が不均一となる。ここで、一次粒子とは、単位粒子と考えられるものであり、二次粒子とは、一次粒子が複数個集合したものである。二次粒子は、化学的に凝集した凝集体であってもよいし、物理的作用で集合した集合体であってもよい。一次粒子、二次粒子の区別は外観上の形態から判断することができる。セラミックス微粒子の一次粒子径及び二次粒子径は、平均粒子径を意味し、一次粒子径は電子顕微鏡を用いて観察し計測することができ、二次粒子径はレーザー回折式粒度分布計によって測定することができる。また、セラミックス微粒子が球形でない場合の一次粒子径及び二次粒子径は、その一次粒子径又は二次粒子径におけるエッジ長さが最大となる長さを長径とし、エッジ長さが最小となる長さを短径として、長径を一次粒子径及び二次粒子径と見做すこととする。
セラミックス微粒子を含有するスラリーは、セラミックス微粒子と水又はアルコール等の極性溶媒を混合した後、この混合溶液を酸性に調整したものを使用する。工程iでは、このスラリーに金属微粒子3の原料となる金属化合物を添加し、均一に混合することによって塗布液を調製する。
スラリーの調製は、セラミックス微粒子を水又は極性有機溶媒等の溶媒に分散することによって行うが、使用するセラミックス微粒子は、溶媒100重量部に対して、好ましくは5〜40重量部の範囲内、より好ましくは10〜25重量部の範囲内になるように調製することがよい。使用する溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、グリセリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することも可能である。混合した溶液は、セラミックス微粒子の分散性を向上させるために、分散処理を行うことが望ましい。分散処理は、例えば室温で5分以上攪拌する方法や、超音波を用いる方法等により行うことができる。
セラミックス微粒子の均一な分散ができるように、必要に応じ、混合液のpHを5以下に調整することができる。この場合、pH調整剤としては、例えば、蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の有機酸や、塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸、及びこれらの塩などを適宜添加してよい。なお、pH調整剤は、単独又は複数を混合して使用してもよい。pH調整剤を添加することにより、セラミックス微粒子の粒子径分布が、pH調整剤を添加しない場合と比較して変化することがあるが、特に問題はない。
ii)工程iで得たスラリーに、該スラリーの固形分100重量部に対し、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内となるように、金属微粒子3の原料となる金属化合物を混合して塗布液を調製する工程:
本工程では、上記のようにして工程iで調製したスラリーに、さらに金属微粒子3の原料となる金属化合物を加えて塗布液とする。この場合、加える金属化合物の量は、スラリーの固形分100重量部に対して、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内となるようにする。なお、調製したスラリーに金属化合物を加えると、塗布液の粘度が高くなることがあるが、その場合は、上記の溶媒を適宜添加することによって最適な粘度に調整することが望ましい。
塗布液中に含有される金属化合物としては、金属微粒子3を構成する上述の金属種を含む化合物を特に制限無く用いることができる。金属化合物としては、前記金属の塩や有機カルボニル錯体などを用いることができる。金属の塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩などを挙げることができる。また、上記金属種と有機カルボニル錯体を形成し得る有機カルボニル化合物としては、例えばアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等のβ−ジケトン類、アセト酢酸エチル等のβ−ケトカルボン酸エステルなどを挙げることができる。
金属化合物の好ましい具体例としては、H[AuCl]、Na[AuCl]、AuI、AuCl、AuCl、AuBr、NH[AuCl]・n2HO、Ag(CHCOO)、AgCl、AgClO、AgCO、AgI、AgSO、AgNO、Ni(CHCOO)、Cu(CHCOO)、CuSO、CuSO、CuSO、CuCl、CuSO、CuBr、Cu(NH)Cl、CuI、Cu(NO)、Cu(CHCOCHCOCH)、CoCl、CoCO、CoSO、Co(NO)、NiSO、NiCO、NiCl、NiBr、Ni(NO)、NiC、Ni(HPO)、Ni(CHCOCHCOCH)、Pd(CHCOO)、PdSO、PdCO、PdCl、PdBr、Pd(NO)、Pd(CHCOCHCOCH)、SnCl、IrCl、RhClなどを挙げることができる。
上記工程i又はiiで調製したスラリーや塗布液には、マトリックス層1の強度、透明性、光沢性等を向上する目的で、必要に応じてバインダー成分を配合することも可能である。バインダー成分として好適なものは、例えば、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、水溶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンまたはその変性体、デンプンまたはその変性体、カゼインまたはその変性体、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸およびその共重合体、ポリアミド酸(ポリイミドの前駆体)、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物などを挙げることができる。これらのバインダー成分は単独又は複数混合して用いることができる。なお、これらのバインダー成分は、金属化合物の有無に関わらず、適宜配合することができ、配合量は、スラリーの固形分100重量部に対して、好ましくは30〜200重量部の範囲内、より好ましくは40〜100重量部の範囲内がよい。
また、上記工程i又はiiで調製したスラリーや塗布液には、バインダーの他に、必要に応じて分散剤、増粘剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを本発明の効果を損なわない範囲内で添加することも可能である。
iii)工程iiで調製した塗布液を、基材上に塗布し、乾燥して塗布膜を形成する工程:
塗布に用いる基材としては、ナノコンポジット10を基材から剥離してセンサー等に使用する場合や、ナノコンポジット10に基材を付けた状態で光反射系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合は、特に制限はない。ナノコンポジット10に基材を付けた状態で光透過系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合は、基材は、光透過性であることが好ましく、例えばガラス基板、透明な合成樹脂製基板等を用いることができる。透明な合成樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
塗布液を塗布する方法は、特に制限されるものではなく、例えばリップコーター、ナイフコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、スピンコーター、スプレー等によって塗布することができる。
金属化合物を含有する塗布液を塗布した後は、乾燥させて塗布膜を形成する。乾燥させる方法としては、特に制限されず、例えば、60〜150℃の範囲内の温度条件で1〜60分間の範囲内の時間をかけて行うことがよいが、好ましくは、70〜130℃の範囲内の温度条件で乾燥を行うことがよい。
iv)塗布膜を加熱処理することにより、塗布膜から三次元的な網目構造を有する固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを備えたマトリックス層1を形成するとともに、金属化合物の金属イオンを加熱還元して金属微粒子3となる粒子状金属を析出させてナノコンポジット10を得る工程:
本工程ivでは、マトリックス層1の形成と、金属イオンの還元による金属微粒子3の形成及び分散を一つの加熱工程で同時に行うことができる。
本工程ivでは、塗布膜を好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上で加熱処理することにより、マトリックス層1を形成する。加熱処理温度が150℃未満では、マトリックス層1の三次元的な網目構造の形成が十分に起こらない場合がある。加熱処理温度の上限は、金属微粒子3の分解、溶融などによる金属微粒子3の粒子径及び粒子間距離の制御に影響を与えない範囲で行うことが好ましく、例えば600℃以下とすることができる。
また、金属イオンの還元及び析出した金属微粒子3の分散は、好ましくは150〜600℃の範囲内、より好ましくは170〜550℃の範囲内、更に好ましくは200〜400℃での加熱処理によって行うことができる。ここで、加熱処理温度が150℃未満では、金属イオンの還元が十分に行われず、金属微粒子3の平均粒子径を前述の下限(3nm)以上にすることが困難となる場合がある。また、加熱処理温度が150℃未満では、還元によって析出した金属微粒子3のマトリックス層1中での熱拡散が十分に起こらない場合がある。以上のように、150℃以上の温度で加熱処理を行うことによって、マトリックス層1の形成と、金属微粒子3の析出・分散とを、効率よく同時進行させることが可能である。
ここで、加熱還元による金属微粒子3の形成と、原料のセラミックス微粒子の一次粒子径及び二次粒子径との関係について説明する。本実施の形態の製造方法において、金属微粒子3の粒子径D及び粒子間距離Lは、原料となるセラミックス微粒子の一次粒子径及び二次粒子径を適切な範囲内にすることによって制御できる。具体的には、セラミックス微粒子として、一次粒子径が1nm〜25nmの範囲内、かつ、二次粒子径が100nm〜2μmの範囲内であるものを用いることによって、金属微粒子3の分散性が向上し、平均粒子径が3nm〜100nmの範囲内の金属微粒子3を、ナノコンポジット10中で粒子間距離Lを保ちながら偏りなく分散させることができる。ここで、一次粒子径が25nmよりも大きいか、あるいは二次粒子径が2μmよりも大きい場合には、空隙1bが大きくなりすぎ、空隙1bの大きさや分布が不均一となるため好ましくない。また、一次粒子径が1nmよりも小さいか、あるいは二次粒子径が100nmよりも小さい場合には、固体骨格部1aが緻密になりすぎ、三次元的な網目構造の形成が困難になる。
図3は、原料が一次粒子5Aのみの集合体であるセラミックス微粒子から固体骨格部1aを形成する場合を模式的に示している。図3に示すように、原料が一次粒子5Aのみからなる場合には、粒子形状が球形に近いほど密度が高くなるため、一次粒子5Aが集合して形成される固体骨格部1aが緻密になりすぎ、空隙1bが小さく、又は、少なくなって三次元的な網目構造の形成が困難になる。また、原料が一次粒子5Aのみからなる場合には、セラミックス微粒子どうしの結合力が弱く固体骨格部1aの構造が強固でないため、空隙1bを利用して生成・成長する金属微粒子3(図3では図示せす)の成長を抑制できず、粒子径が大きくなり過ぎ分布も不均一になる。
一方、図4は、二次粒子5Bを含む原料のセラミックス微粒子の状態を模式的に示している。図4では、凝集粒子である二次粒子5Bによって、ところどころ不完全な網目状構造が形成されている。図4に示すように、原料が、複数の一次粒子5Aが凝集した二次粒子5Bを含み、一次粒子径と二次粒子径との大きさの比率を、一次粒子径が1nm〜25nmの範囲内、かつ、二次粒子径が100nm〜2μmの範囲内とした場合は、凝集粒子である二次粒子5Bは、凝集状態を維持しながら集合して固体骨格部1aを形成することになる。そのため、二次粒子5Bどうしの立体的障害によって二次粒子5B間に適度な大きさの空隙1bが均等に形成されやすくなる。これらの空隙1b内で、工程ivの加熱還元により金属微粒子3が生成・成長することによって、図1に示したように、ほぼ均一な大きさの金属微粒子3が分散した状態で形成される。その結果、上記のように、隣り合う金属微粒子3の間隔(粒子間距離)Lが、隣り合う金属微粒子3における大きい方の金属微粒子3の粒子径D以上(L≧D)になる。また、適度な大きさの空隙1bが均等に形成されるため、金属微粒子3を空隙1bに露出させることができる。従って、金属微粒子3を周辺媒質に直接接触させることが可能になり、周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴波長が変化するという局在型表面プラズモン共鳴の特性を最大限に利用することが可能になる。
また、上記のように原料の一次粒子径と二次粒子径との関係を考慮することによって、工程ivで形成される金属微粒子3の全個数のうち、60%以上の金属微粒子3の粒子径Dが、原料であるセラミックス微粒子の一次粒子径よりも大きく、二次粒子径よりも小さくなり、局在型表面プラズモン共鳴を生じやすい大きさになる。この理由は、以下のとおりである。図4に示すように、固体骨格部1aの大部分が二次粒子5Bを単位として形成されることによって、空隙1bの大きさがセラミックス微粒子の1次粒子径より大きくなる結果、空隙1b内で成長する金属微粒子3の粒子径Dも、セラミックス微粒子の一次粒子径よりも大きくなる。また、固体骨格部1aは二次粒子5Bが集合して形成されるため、空隙1bは、セラミックス微粒子の二次粒子径よりも小さくなり、空隙1b内で成長する金属微粒子3の粒子径Dも、セラミックス微粒子の二次粒子径よりも小さくなる。なお、原料であるセラミックス微粒子の一次粒子径よりも大きく、二次粒子径よりも小さな金属微粒子3の割合を、金属微粒子3の全個数のうち60%以上としたのは、60%未満になると、局在型表面プラズモン共鳴を生じやすい粒子径Dを持つ金属微粒子3が少なくなって、局在型表面プラズモン共鳴の効果が得られにくくなるためである。
また、上記原料の一次粒子径と二次粒子径との関係に加えて、金属微粒子3の粒子径D及び粒子間距離Lは、還元工程における加熱温度及び加熱時間並びにマトリックス層1に含まれる金属イオンの含有量等によって制御できる。本発明者らは、加熱還元における加熱温度及び加熱時間が一定であって、マトリックス層1中に含有する金属イオンの絶対量が異なる場合には、析出する金属微粒子3の粒子径Dが異なるという知見を得ていた。また、加熱温度及び加熱時間の制御なしに加熱還元を行った場合には、粒子間距離Lが隣接する金属微粒子3の大きい方の粒子径Dより小さくなることがあるという知見も得ていた。
上記知見を応用し、例えば還元工程における熱処理を複数の工程に分けて実施することもできる。例えば、第1の加熱温度で金属微粒子3を所定の粒子径Dまで成長させる粒子径制御工程と、第1の加熱温度と同じか、又は異なる第2の加熱温度で、金属微粒子3の粒子間距離Lが所定の範囲になるまで保持する粒子間距離制御工程を行うことができる。このようにして、第1及び第2の加熱温度と加熱時間を調節することにより、粒子径D及び粒子間距離Lをさらに精密に制御することができる。
還元方法として加熱還元を採用する理由は、還元の処理条件(特に加熱温度と加熱時間)の制御によって比較的簡便に粒子径D及び粒子間距離Lを制御できることや、ラボスケールから生産スケールに至るまで特に制限なく簡便な設備で対応できること、また枚葉式のみならず連続式にも特段の工夫なくとも対応できることなど、工業的に有利な点が挙げられることにある。加熱還元は、例えば、Ar、Nなどの不活性ガス雰囲気中、1〜5KPaの真空中、又は大気中で行うことができ、水素などの還元性ガスを用いる気相還元も利用することが可能である。
加熱還元では、マトリックス層1中に存在する金属イオンを還元し、熱拡散によって個々の金属微粒子3を独立した状態で析出させることができる。このように形成された金属微粒子3は、一定以上の粒子間距離Lを保った状態で、形状が略均一であり、マトリックス層1中で金属微粒子3が三次元的に偏りなく分散している。また、マトリックス層1を構成する無機酸化物の構造単位を制御することや、金属イオンの絶対量及び金属微粒子3の体積分率を制御することで、金属微粒子3の粒子径Dとマトリックス層1中での金属微粒子3の分布状態を制御することもできる。
本実施の形態のナノコンポジット10の製造方法では、工程ivをポリビニルアルコールの存在下で行うことができる。工程ivの加熱還元の際に、金属イオンとともにポリビニルアルコールを共存させることによって、ポリビニルアルコールを使用しない場合に比べ、金属微粒子3の粒子径Dを小さく抑制できるとともに、塗布膜中の金属イオン量を多くしても、凝集粒子の生成を防ぐことができる。これは、金属イオンの加熱還元の際に、多数の−OH基を有するポリビニルアルコールが電子供与体となり、還元助剤として機能して金属イオンの還元を促進する結果、ポリビニルアルコールが存在しない場合に比べ、より多くの金属核が形成され、それぞれが独自に成長して金属微粒子3を形成するためであると考えられる。従って、還元助剤としてポリビニルアルコールを添加することによって、ナノコンポジット10の局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープになり、各種センシング用デバイスに利用する場合に高精度の検出が可能になる。
ポリビニルアルコールは、工程ivの塗布膜の加熱処理より前に添加すればよい。例えば、工程iのスラリーを調製する工程、又は工程iiの塗布液を調製する工程で、ポリビニルアルコールを添加することが好ましい。ポリビニルアルコールは水溶性高分子であるため、例えば水に溶解させることによって、上記スラリーや塗布液中で容易に混ざり合うことができる。なお、ポリビニルアルコールを添加した後、上記スラリーや塗布液を均一に攪拌することが好ましい。
還元助剤として使用するポリビニルアルコールの重合度は、例えば、10〜5000の範囲内であることが好ましく、50〜3000の範囲内がより好ましい。また、ポリビニルアルコールの分子量は、例えば、440〜220000の範囲内が好ましく、2200〜132000の範囲内がより好ましい。ポリビニルアルコールの重合度又は分子量が上記下限値よりも小さくなると、加熱によるナノコンポジット製造時に、還元助剤として作用するより早くポリビニルアルコールが蒸発してしまう可能性がある。また、ポリビニルアルコールの重合度又は分子量が上記上限値より高くなりすぎると、ポリビニルアルコールの溶解性が著しく低下し、上記スラリーまたは塗布液への添加、混合が困難になる場合がある。
また、ポリビニルアルコールのケン化度は、ケン化によって生成する−OH基が金属イオンの還元に作用することから高いほうが好ましく、例えば30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。
還元反応において、ポリビニルアルコールの1つの−OH基は、2つの電子を供給できることから、金属化合物の配合量に応じて、金属イオンの還元助剤として機能させる上で必要なポリビニルアルコールの使用量を概ね決定できる。例えば、塩化金酸4水和物のAuイオンを還元するために必要な電子は3つであり、上記のとおりポリビニルアルコールは−OH基1つあたり2つの電子を供給できるので、計算上、塩化金酸4水和物一つに対し、ポリビニルアルコールの−OH基が3/2個必要となる。このことから、金属化合物に対するポリビニルアルコールの使用量(計算上の重量比)を重量比によって求めることができる。ただし、ポリビニルアルコールの−OH基がすべて還元に使用されるとは限らず、熱分解なども同時に起こると考えられるため、上記計算上の重量比の値に対して過剰量のポリビニルアルコールを添加しておくことが好ましい。一方、ポリビニルアルコールの添加量が上記計算上の重量比の値に比べてあまりにも多すぎる場合には、ナノコンポジット10中にポリビニルアルコールが多量に残存したり、ポリビニルアルコールの分解により発生する余分な排ガスが多くなる等の不都合が生じることが懸念される。以上のことから、ポリビニルアルコールを還元助剤として機能させる場合の添加量は、ポリビニルアルコールのケン化度にもよるが、例えばポリビニルアルコールのケン化度を88%とすると、金属化合物1重量部に対し、0.1〜50重量部の範囲内とすることが好ましく、0.15〜20重量部の範囲内とすることがより好ましい。
本実施の形態のナノコンポジットの製造方法は、上記工程i〜iv以外に任意の工程を含むことができる。例えば、上記工程ivの後で、さらに、次の工程vを行うことができる。
v)工程ivで得たナノコンポジット10を、ポリビニルアルコールの熱分解開始温度以上の温度で熱処理する工程:
本工程vでは、ナノコンポジット10を再度加熱することにより、ナノコンポジット10中に残存するポリビニルアルコールに由来する有機物(以下、「ポリビニルアルコール由来成分」ともいう。)を熱分解させてガス化させて除去することができる。局在型表面プラズモン共鳴を利用したセンサー用途へナノコンポジットを適用する場合、ナノコンポジット10中に残存するポリビニルアルコール由来成分は検出感度を低下させる原因となるため、これを除去することが好ましい。ポリビニルアルコール由来成分の熱分解開始温度は、およそ200℃前後であるため、本工程vでは、ナノコンポジット10を200℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくはポリビニルアルコール由来成分をほぼ完全に分解できる450℃以上の温度に加熱する。熱処理は、ナノコンポジット10を構成する固体骨格部1aや金属微粒子3に分解、溶融などの影響を与えない温度範囲で行うことが好ましく、熱処理温度の上限は例えば600℃以下とすることができる。ここで、ポリビニルアルコールに由来する有機物とは、工程ivにおいて、還元助剤として消費されなかったポリビニルアルコールを含め、例えば、加熱処理時にポリビニルアルコールが酸化される等(例えば、アルコール部分がケトンとなる等)によって、その構造が変化したポリビニルアルコールの変性物又は分解物などをいう。
また、工程ivにおける加熱処理及び工程vにおける熱処理は、同時に行うことができる。すなわち、加熱処理を一工程で行うことによって、金属化合物の金属イオンを加熱還元して金属微粒子3となる粒子状金属を析出させるとともに、ポリビニルアルコール由来成分を熱分解させてガス化させて除去する。ここでの加熱処理の温度の下限は、好ましくは200℃以上、より好ましくは300℃以上とし、加熱処理の温度の上限は、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下にすることがよい。
以上のように、本実施の形態のナノコンポジット10の製造方法では、マトリックス層1の原料となるセラミックス微粒子として一次粒子径が1nm〜25nmの範囲内、かつ、二次粒子径が100nm〜2μmの範囲内であるものを用いることによって、金属微粒子3の分散性が向上し、ナノコンポジット10中で粒子間距離Lを保ちながら偏りなく分散させることができる。従って、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルをシャープにすることができる。
本実施の形態の方法によって得られるナノコンポジット10は、マトリックス層1が、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを有する三次元的な網目構造となっており、金属微粒子3がこのマトリックス層1内に三次元的に分散しているため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度が大きい。しかも、マトリックス層1内部に存在する金属微粒子3が所定の粒子径Dの範囲内に制御され、粒子間距離Lを保ちながら偏りなく分散しているので、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープである。さらに、金属微粒子3が網目構造のマトリックス層1の内部の空隙1bに露出した部位を備えているので、金属微粒子3の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化するという特性を最大限に利用することが可能であり、その特性を利用したデバイスに応用することが可能となる。従って、ナノコンポジット10の局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープになり、各種センシング用デバイスに利用する場合に高精度の検出が可能になる。
上記の構造的特性を備えたナノコンポジット10は、局在型表面プラズモン効果を利用する分野にとどまらず、例えば触媒や電極にも好適に用いることができる。これらを用いた電気化学素子への応用が可能であり、例えば燃料電池、空気電池、水電解装置、電気二重層キャパシタ、ガスセンサー、汚染ガス除去装置などを提供することができる。また、ナノコンポジット10は、金属微粒子3が凝集することなく均質分散していることから、その特性を生かした発光、光変調などの光学素子や電子素子などの様々なデバイスへの展開が可能である。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。以下の実施例、比較例において特にことわりのない限り、各種測定、評価は下記によるものである。
[金属微粒子の平均粒子径の測定]
金属微粒子の平均粒子径の測定は、試料を砕いてエタノールに分散させたのち、得られた分散液をカーボン支持膜付き金属性メッシュへ滴下して作成した基板を、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子社製、JEM−2000EX)により観測した。また、金属微粒子の平均粒子径は面積平均径とした。
[金属微粒子分散複合体の空隙サイズの測定]
金属微粒子分散複合体の空隙サイズ(細孔径)の平均値は、水銀ポロシメーター法による細孔分布測定により求めた。
[金属微粒子分散複合体の空隙率の測定]
金属微粒子分散複合体の空隙率は、金属微粒子分散複合体の面積、厚み及び重量より算出した見掛け密度(嵩密度)と、マトリックス層の固体骨格部を形成する材料及び金属微粒子の固有の密度および組成比率より算出した空隙を含まない密度(真密度)を用いて、下記式(A)にしたがって空隙率を算出した。
空隙率(%)=(1−嵩密度/真密度)×100 …(A)
[試料の吸収スペクトル測定]
作製したナノコンポジット試料の吸収スペクトルは、瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製、MCPD−3700)により観測した。
[セラミックス微粒子の一次粒子径の測定]
セラミックス微粒子の一次粒子径の測定は、セラミックス微粒子をエタノールに分散させたのち、得られた分散液をカーボン支持膜付き金属性メッシュへ滴下して作成した基板を、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子社製、JEM−2000EX)により観測した。
[セラミックス微粒子の二次粒子径の測定]
セラミックス微粒子の二次粒子径の測定は、セラミックス微粒子を水に分散させたのち、得られた分散液をレーザー回折式粒度分布計(日機装株式会社製、MT3000)により測定した。
[実施例1]
0.6gのフュームドシリカ粉末(日本アエロジル株式会社製 AEROSIL300、平均一次粒子径;7nm、平均二次粒子径;0.2μm)に、2.7gの水と2.7gのエタノールを加え、10分間の超音波処理を行った。さらに1.25gの20wt%ポリビニルアルコール水溶液と0.25gの塩化金酸・四水和物を加え、10分間の超音波処理することにより、金錯体含有スラリー1を調製した。このときの金錯体含有スラリー1におけるAu元素の割合は、フュームドシリカ100重量部に対して20重量部である。得られた金錯体含有スラリー1をスピンコーターを用いて、ガラス基板の上に塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに500℃、10分間加熱処理することによって、空隙率が50%以上の赤色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット1(厚さ3.52μm)を作製した。ナノコンポジット1中に形成した金属金微粒子は、平均粒子径17nm、最小粒子径8.0nm、最大粒子径44nmであり、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立し、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以上の間隔で分散していた。また、ナノコンポジット1の金属金微粒子による局在型表面プラズモン共鳴の吸収スペクトルは、ピークトップが518nm、半値幅が65nm、波長518nmにおける吸光度が0.45の吸収ピークが観測された。ナノコンポジット1の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図5Aに、ナノコンポジット1の空気に対する吸収スペクトルを測定した結果を図5Bに示した。
[実施例2]
1.2gのフュームドシリカ粉末(日本アエロジル株式会社製 AEROSIL300、平均一次粒子径;7nm、平均二次粒子径;0.2μm)に、5.4gの水と5.4gのエタノールを加え、10分間の超音波処理を行った。さらに0.25gの塩化金酸・四水和物を加え、10分間の超音波処理することにより、金錯体含有スラリー2を調製した。このときの金錯体含有スラリー2におけるAu元素の割合は、フュームドシリカ100重量部に対して10重量部である。得られた金錯体含有スラリー2をスピンコーターを用いて、ガラス基板の上に塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間加熱処理することによって、空隙率が50%以上の赤色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット2(厚さ1.8μm)を作製した。ナノコンポジット2中に形成した金属金微粒子は、平均粒子径19nm、最小粒子径10nm、最大粒子径60nmであり、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立し、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以上の間隔で分散していた。また、ナノコンポジット2の金属金微粒子による局在型表面プラズモン共鳴の吸収スペクトルは、ピークトップが536nm、半値幅が80nm、波長536nmにおける吸光度が0.16の吸収ピークが観測された。ナノコンポジット2の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図6Aに、ナノコンポジット2の空気に対する吸収スペクトルを測定した結果を図6Bに示した。
[実施例3]
1.2gのアルミナ粉末(日本アエロジル株式会社製 AEROXIDE AluC、平均一次粒子径;13nm、平均二次粒子径;0.2μm)に、5.4gの水と5.4gのエタノールを加え、10分間の超音波処理を行った。さらに0.25gの塩化金酸・四水和物を加え、10分間の超音波処理することにより、金錯体含有スラリー3を調製した。このときの金錯体含有スラリー3におけるAu元素の割合は、アルミナ100重量部に対して10重量部である。得られた金錯体含有スラリー3をスピンコーターを用いて、ガラス基板の上に塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間加熱処理することによって、空隙率が50%以上の赤色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット3(厚さ1.8μm)を作製した。ナノコンポジット3中に形成した金属金微粒子は、平均粒子径53nm、最小粒子径32nm、最大粒子径78nmであり、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立し、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以上の間隔で分散していた。また、ナノコンポジット3の金属金微粒子による局在型表面プラズモン共鳴の吸収スペクトルは、ピークトップが551nm、半値幅が90nm、波長551nmにおける吸光度が0.37の吸収ピークが観測された。ナノコンポジット3の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図7Aに、ナノコンポジット3の空気に対する吸収スペクトルを測定した結果を図7Bに示した。
[実施例4]
1.2gのチタニア粉末(日本アエロジル株式会社製 AEROXIDE TiO P25、平均一次粒子径;20nm、平均二次粒子径;0.2μm)に、5.4gの水と5.4gのエタノールを加え、10分間の超音波処理を行った。さらに0.25gの塩化金酸・四水和物を加え、10分間の超音波処理することにより、金錯体含有スラリー4を調製した。このときの金錯体含有スラリー4におけるAu元素の割合は、チタニア100重量部に対して10重量部である。得られた金錯体含有スラリー4をスピンコーターを用いて、ガラス基板の上に塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間加熱処理することによって、空隙率が50%以上の青紫色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット4(厚さ1.8μm)を作製した。ナノコンポジット4中に形成した金属金微粒子は、平均粒子径52nm、最小粒子径29nm、最大粒子径79nmであり、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立し、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以上の間隔で分散していた。また、ナノコンポジット4の金属金微粒子による局在型表面プラズモン共鳴の吸収スペクトルは、ピークトップが539nm、半値幅が90nm、波長539nmにおける吸光度が1.14の吸収ピークが観測された。ナノコンポジット4の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図8Aに、ナノコンポジット4の空気に対する吸収スペクトルを測定した結果を図8Bに示した。
[比較例1]
1.2gのフュームドシリカ粉末(日本アエロジル株式会社製 AEROSIL50、平均一次粒子径;30nm、平均二次粒子径;0.3μm)に、5.4gの水と5.4gのエタノールを加え、10分間の超音波処理を行った。さらに0.25gの塩化金酸・四水和物を加え、10分間の超音波処理することにより、金錯体含有スラリー5を調製した。このときの金錯体含有スラリー5におけるAu元素の割合は、フュームドシリカ100重量部に対して10重量部である。得られた金錯体含有スラリー5をスピンコーターを用いて、ガラス基板の上に塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間加熱処理することによって、灰白色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット5(厚さ1.8μm)を作製した。ナノコンポジット5中に形成した金属金微粒子は、球形ではなく、平均粒子径64nm、最小粒子径15nm、最大粒子径120nmであり、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立しているが、隣り合う金属金微粒子における粒子間距離は大きい方の粒子径よりも小さい部分も観察された。また、ナノコンポジット5の吸収スペクトルは、ピークトップが574nm、半値幅が約120nm、波長574nmにおける吸光度が0.13の吸収ピークが観測された。ナノコンポジット5の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図9Aに、ナノコンポジット5の空気に対する吸収スペクトルを測定した結果を図9Bに示した。
[比較例2]
2gのコロイダルシリカゾル(日産化学工業株式会社製 IPA−ST、固形分濃度30wt%、一次粒子径;10〜15nm、二次粒子なし)に、2gのイソプロピルアルコールを加え、10分間の超音波処理を行った。さらに0.125gの塩化金酸・四水和物を加え、10分間の超音波処理することにより、金錯体含有スラリー6を調製した。このときの金錯体含有スラリー6におけるAu元素の割合は、コロイダルシリカ100重量部に対して10重量部である。得られた金錯体含有スラリー6をスピンコーターを用いて、ガラス基板の上に塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間加熱処理することによって、灰青色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット6(厚さ1.46μm)を作製した。ナノコンポジット6中に形成した金属金微粒子は、球形ではなく、平均粒子径93nm、最小粒子径24nm、最大粒子径125nmであり、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立しているが、隣り合う金属金微粒子における粒子間距離は大きい方の粒子径よりも小さい部分も観察された。また、ナノコンポジット6の吸収スペクトルは、ピークトップが787nm、半値幅が約350nm、波長787nmにおける吸光度が0.492の吸収ピークが観測された。ナノコンポジット6の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図10Aに、ナノコンポジット6の空気に対する吸収スペクトルを測定した結果を図10Bに示した。
[比較例3]
2gのコロイダルシリカゾル(日産化学工業株式会社製 IPA−ST−L、固形分濃度30wt%、一次粒子径;40〜50nm、二次粒子なし)に、2gのイソプロピルアルコールを加え、10分間の超音波処理を行った。さらに0.125gの塩化金酸・四水和物を加え、10分間の超音波処理することにより、金錯体含有スラリー7を調製した。このときの金錯体含有スラリー7におけるAu元素の割合は、コロイダルシリカ100重量部に対して10重量部である。得られた金錯体含有スラリー7をスピンコーターを用いて、ガラス基板の上に塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間加熱処理することによって、灰茶色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット7(厚さ0.95μm)を作製した。ナノコンポジット7中に形成した金属金微粒子は、球形ではなく、平均粒子径72nm、最小粒子径12nm、最大粒子径85nmであり、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立しているが、隣り合う金属金微粒子における粒子間距離は大きい方の粒子径よりも小さい部分も観察された。また、ナノコンポジット7の吸収スペクトルは、ピークトップが577nm、半値幅が約240nm、波長577nmにおける吸光度が0.179の吸収ピークが観測された。ナノコンポジット7の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図11Aに、ナノコンポジット7の空気に対する吸収スペクトルを測定した結果を図11Bに示した。
[比較例4]
0.6gの酸化チタン粉末(テイカ株式会社製、TiO AMT−100、平均一次粒子径;6nm、平均二次粒子径3.2μm)に、2.275gの水、3.4gのエタノールおよび0.05gの酢酸を加え、10分間の超音波処理を行った。さらに1.25gの20wt%ポリビニルアルコール水溶液と0.25gの塩化金酸・四水和物を加え、10分間の超音波処理することにより、金錯体含有スラリー8を調製した。このときの金錯体含有スラリー8におけるAu元素の割合は、酸化チタン100重量部に対して20重量部である。得られた金錯体含有スラリー8をスピンコーターを用いて、ガラス基板の上に塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに500℃、10分間加熱処理することによって、灰青色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット8(厚さ2.87μm)を作製した。
ナノコンポジット8中に観察された金属金微粒子は、平均粒子径8nm、最小粒子径4nm、最大粒子径14nmであったが、酸化チタン粒子のサイズが大きく透過電子顕微鏡では、金属金微粒子が観察できない部分も多く存在した。また、ナノコンポジット8の吸収スペクトルは、ピークトップが620nm、半値幅が約270nm、波長620nmにおける吸光度が2.11の吸収ピークが観測された。ナノコンポジット8の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図12Aに、ナノコンポジット8の空気に対する吸収スペクトルを測定した結果を図12Bに示した。
[比較例5]
0.6gの酸化チタン粉末(テイカ株式会社製、TiO AMT−100、平均一次粒子径;6nm、平均二次粒子径3.2μm)に、10.8gの水と10.8gのエタノールを加え、10分間の超音波処理を行った。さらに0.25gの塩化金酸・四水和物を加え、10分間の超音波処理することにより、金錯体含有スラリー9を調製した。このときの金錯体含有スラリー9におけるAu元素の割合は、酸化チタン100重量部に対して10重量部である。得られた金錯体含有スラリー9をスピンコーターを用いて、ガラス基板の上に塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間加熱処理することによって、灰白色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット9(厚さ1.8μm)を作製した。
ナノコンポジット9中に観察された金属金微粒子は、平均粒子径7nm、最小粒子径3nm、最大粒子径15nmであったが、酸化チタン粒子のサイズが大きく透過電子顕微鏡では、金属金微粒子が観察できない部分も多く存在した。また、ナノコンポジット9の吸収スペクトルは、ピークトップが515nm、半値幅が約260nm、波長515nmにおける吸光度が1.34の吸収ピークが観測された。ナノコンポジット9の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図13Aに、ナノコンポジット9の空気に対する吸収スペクトルを測定した結果を図13Bに示した。
[実施例5]
18gのベーマイト粉末(大明化学工業社製、商品名;C−01、平均一次粒子径;20nm、平均二次粒子径;0.1μm、粒子形状;キュービック状)に、78.72gの水と3.28gの酢酸を加え、機械撹拌(回転数400rpm、3時間)を行い、ベーマイト分散液10を調製した。次に、3.5gのベーマイト分散液10に対して、2.33gのエタノール、1.575gの純水に溶解させた0.394gのポリビニルアルコール(平均分子量22000、重合度500、ケン化度88%)、0.063gの3−アミノプロピルトリエトキシシラン、および2gのエタノールに溶解させた0.263gの塩化金酸・四水和物を加え、金錯体含有スラリー10を調製した。なお、前記スラリー10の調製に際しては、各試薬をそれぞれ加えるたびに、撹拌子による撹拌(回転数1000rpm、5分間)を行った。このときの金錯体含有スラリー10におけるAu元素の割合は、ベーマイト100重量部に対して20重量部である。また、配合したポリビニルアルコール中のヒドロキシ基は、塩化金酸・四水和物1モルに対し、12.3モルである。
次に、ガラス基板(厚み0.7mm)に、得られた金錯体含有スラリー10をスピンコーター(ミカサ株式会社製、商品名;SPINCOATER 1H−DX2)を用いて塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間および500℃、1時間加熱処理することによって、赤色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット10A(厚さ1.52μm)を作製した。ナノコンポジット10A中に形成した金属金微粒子は、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立し、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以上の間隔で分散していた。このナノコンポジット10Aの特徴は、次のとおりであった。
1)ナノコンポジット10Aの空隙率;66.1%、空隙サイズ;平均24nm、最大50nm。
2)金属金微粒子の形状;ほぼ球状、平均粒子径;6nm、最小粒子径;2nm、最大粒子径;42nm、粒子径1nm〜100nmの範囲内にある粒子の割合;100%、粒子間距離の平均値;16.5nm、ナノコンポジット10Aに対する金属金微粒子の体積分率;1.0%、同充填率;16.3wt%。
3)ナノコンポジット10Aにおける金属金微粒子の空隙に対する体積割合;ナノコンポジット10Aの空隙の全容量に対し1.5%。
また、ナノコンポジット10Aの金属金微粒子による局在型表面プラズモン共鳴の反射吸収スペクトルは、ピークトップが524nm、半値幅が70.1nm、ピークトップにおける吸光度が0.573の吸収ピークが観測され、水中における吸収スペクトルは、ピークトップが541nm、半値幅が83.1nm、ピークトップにおける吸光度が0.908の吸収ピークが観測された。観測された吸収ピークの単位屈折率変化に対するピーク波長変化量及びピーク強度変化量は、それぞれ52.3nm及び1.009であった。
[実施例6]
ベーマイト粉末(SECO社製、商品名;SECO−140、平均一次粒子径;14nm、平均二次粒子径;0.17μm、粒子形状;針状)を用いた以外は、実施例5と同様にして、金錯体含有スラリー11を調製した後、得られた金錯体含有スラリー11を塗布・乾燥し、さらに加熱処理することによって、赤色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット11A(厚さ1.63μm)を作製した。ナノコンポジット11A中に形成した金属金微粒子は、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立し、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以上の間隔で分散していた。このナノコンポジット11Aの特徴は、次のとおりであった。
1)ナノコンポジット11Aの空隙率;67.9%、空隙サイズ;平均16nm、最大30nm。
2)金属金微粒子の形状;ほぼ球状、平均粒子径;10nm、最小粒子径;4nm、最大粒子径;57nm、粒子径1nm〜100nmの範囲内にある粒子の割合;100%、粒子間距離の平均値;27.3nm、ナノコンポジット11Aに対する金属金微粒子の体積分率;0.95%、同充填率;16.3wt%。
3)ナノコンポジット11Aにおける金属金微粒子の空隙に対する体積割合;ナノコンポジット11Aの空隙の全容量に対し1.4%。
また、ナノコンポジット11Aの金属金微粒子による局在型表面プラズモン共鳴の反射吸収スペクトルは、ピークトップが526nm、半値幅が74.0nm、ピークトップにおける吸光度が0.574の吸収ピークが観測され、水中における吸収スペクトルは、ピークトップが542nm、半値幅が87.0nm、ピークトップにおける吸光度が0.862の吸収ピークが観測された。観測された吸収ピークの単位屈折率変化に対するピーク波長変化量及びピーク強度変化量は、それぞれ47.7nm及び0.862であった。
[実施例7]
ベーマイト粉末(SECO社製、商品名;SECO−100、平均一次粒子径;10nm、平均二次粒子径;0.15μm、粒子形状;針状)を用いた以外は、実施例5と同様にして、金錯体含有スラリー12を調製した後、得られた金錯体含有スラリー12を塗布・乾燥し、さらに加熱処理することによって、赤色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット12A(厚さ1.76μm)を作製した。ナノコンポジット12A中に形成した金属金微粒子は、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立し、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以上の間隔で分散していた。このナノコンポジット12Aの特徴は、次のとおりであった。
1)ナノコンポジット12Aの空隙率;65.6%、空隙サイズ;平均12nm、最大20nm。
2)金属金微粒子の形状;ほぼ球状、平均粒子径;10nm、最小粒子径;4nm、最大粒子径;67nm、粒子径1nm〜100nmの範囲内にある粒子の割合;100%、粒子間距離の平均値;29.3nm、ナノコンポジット12Aに対する金属金微粒子の体積分率;1.02%、同充填率;16.3wt%。
3)ナノコンポジット12Aにおける金属金微粒子の空隙に対する体積割合;ナノコンポジット12Aの空隙の全容量に対し1.6%。
また、ナノコンポジット12Aの金属金微粒子による局在型表面プラズモン共鳴の反射吸収スペクトルは、ピークトップが525nm、半値幅が68.5nm、ピークトップにおける吸光度が0.67の吸収ピークが観測され、水中における吸収スペクトルは、ピークトップが540nm、半値幅が79.2nm、ピークトップにおける吸光度が1.008の吸収ピークが観測された。観測された吸収ピークの単位屈折率変化に対するピーク波長変化量及びピーク強度変化量は、それぞれ46.5nm及び1.03であった。
[実施例8]
ベーマイト粉末(SECO社製、商品名;SECO−080、平均一次粒子径;8nm、平均二次粒子径;0.12μm、粒子形状;針状)を用いた以外は、実施例5と同様にして、金錯体含有スラリー13を調製した後、得られた金錯体含有スラリー13を塗布・乾燥し、さらに加熱処理することによって、赤色に呈色した金属金微粒子分散ナノコンポジット13A(厚さ1.78μm)を作製した。ナノコンポジット13A中に形成した金属金微粒子は、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立し、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以上の間隔で分散していた。このナノコンポジット13Aの特徴は、次のとおりであった。
1)ナノコンポジット13Aの空隙率;64.1%、空隙サイズ;平均9nm、最大30nm。
2)金属金微粒子の形状;ほぼ球状、平均粒子径;10nm、最小粒子径;4nm、最大粒子径;48nm、粒子径1nm〜100nmの範囲内にある粒子の割合;100%、粒子間距離の平均値;27.2nm、ナノコンポジット13Aに対する金属金微粒子の体積分率;1.06%、同充填率;16.3wt%。
3)ナノコンポジット13Aにおける金属金微粒子の空隙に対する体積割合;ナノコンポジット13Aの空隙の全容量に対し1.7%。
また、ナノコンポジット13Aの金属金微粒子による局在型表面プラズモン共鳴の反射吸収スペクトルは、ピークトップが527nm、半値幅が73.8nm、ピークトップにおける吸光度が0.757の吸収ピークが観測され、水中における吸収スペクトルは、ピークトップが540nm、半値幅が83.2nm、ピークトップにおける吸光度が1.082の吸収ピークが観測された。観測された吸収ピークの単位屈折率変化に対するピーク波長変化量及びピーク強度変化量は、それぞれ39.1nm及び0.997であった。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、工程i)で調製したセラミックス微粒子を含有するスラリーに、工程ii)で金属化合物を混合した後、工程iii)で塗布膜を形成し、該塗布膜を工程iv)で加熱処理してマトリックス層1と金属微粒子3とを形成した。しかし、例えば、セラミックス微粒子を含有するスラリーを加熱処理して先にマトリックス層を形成しておき、該マトリックス層に金属化合物を含む溶液を含浸させた後、さらに加熱処理することによって金属微粒子分散複合体を製造することも可能である。
1…マトリックス層、1a…固体骨格部、1b…空隙、3…金属微粒子、5A…一次粒子、5B…二次粒子、10…ナノコンポジット

Claims (5)

  1. 固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層と、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を備えた金属微粒子分散複合体の製造方法であって、
    以下の工程i〜iv;
    i)前記固体骨格部の原料となるセラミックス微粒子を含有するスラリーを調製する工程、
    ii)前記スラリーに、該スラリーの固形分100重量部に対し、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内となるように、金属微粒子の原料となる金属化合物を混合して塗布液を調製する工程、
    iii)前記塗布液を、基材上に塗布し、乾燥して塗布膜を形成する工程、
    iv)前記塗布膜を加熱処理することにより、前記塗布膜から三次元的な網目構造を有する固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を備えたマトリックス層を形成するとともに、前記金属化合物の金属イオンを加熱還元して金属微粒子となる粒子状金属を析出させる工程、
    を備え、
    前記工程iで用いる前記セラミックス微粒子の一次粒子径が1nm〜25nmの範囲内であり、かつ、二次粒子径が100nm〜2μmの範囲内であり、
    前記工程ivで形成される金属微粒子の平均粒子径が3nm〜100nmの範囲内であり、かつ、金属微粒子の全個数に対し、60%以上の金属微粒子が、前記一次粒子径よりも大きく、前記二次粒子径よりも小さいことを特徴とする金属微粒子分散複合体の製造方法。
  2. 前記セラミックス微粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア及びベーマイトからなる群より選ばれる1種以上である請求項1に記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
  3. 前記工程ivをポリビニルアルコールの存在下で行う請求項1又は2に記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
  4. 前記工程iのスラリーを調製する工程でポリビニルアルコールを添加する請求項3に記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
  5. 前記金属化合物1重量部に対し、前記ポリビニルアルコールを0.1〜50重量部の範囲内で使用する請求項3又は4に記載の金属微粒子分散複合体の製造方法。
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