JP2015068736A - 表面増強分光基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】ラマン散乱の増強効果が大きな表面増強分光基板を提供する。
【解決手段】表面増強分光基板は、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aによって形成された空隙1bを有するマトリックス層1と、固体骨格部1aに固定された金属微粒子3と、を含んで構成される金属微粒子分散複合体を備えている。金属微粒子3は、空隙1bに露出した部位を有し、かつ、マトリックス層1中で三次元的に分散した状態で存在している。表面増強分光基板は、表面増強ラマン分光(SERS)基板、表面増強共鳴ラマン分光(SERRS)基板、表面増強ハイパー−ラマン分光(SEHRS)基板、又は、表面増強コヒーレント・アンチ−ストーク・ラマン分光(SECARS)基板として用いられる。
【選択図】図2

Description

本発明は、新規な構造を有する表面増強分光基板に関するものである。特に、ラマン散乱の増強効果が高いため、表面増強ラマン分光(SERS)基板に適用できる。
表面増強ラマン分光(SERS)は、金、銀などの金属ナノ構造表面に分子が吸着されたとき、その分子に基づくラマン散乱の強度が、表面プラズモン共鳴により10〜10倍に増強される現象である。また、その現象を利用した分子構造の解析方法もSERSに含まれて定義される。SERSは、表面増強ラマン散乱とも呼ばれる。
SERS用の基板、即ちSERS基板に関する従来技術として、例えば、以下の(1)〜(7);
(1)基板の表面に金属ナノ粒子をコーティングしたもの(特許文献1)、
(2)基板に円錐形等の凹凸のあるテクスチャ層を形成し、少なくともその基板の突出している部分に金属を蒸着させたもの(特許文献2)、
(3)基板に単粒子膜状態で固定化された金ナノロッドから構成されたもの(特許文献3)、
(4)微細凹凸構造を有する透明基板の表面に金属を蒸着させたもの(特許文献4)、
(5)表面にSiOナノロッドを有する基板において、当該ナノロッドの頂部に金を蒸着させたもの(特許文献5)、
(6)金属ナノスポンジ(特許文献6)、
(7)結晶性多孔質シリコン基板に陰極電気移動により金属を被覆したもの(特許文献7)、
等が提案されている。
しかし、特許文献1〜5については、金属が基板の表面に二次元的に偏在するため、SERSに有効な金属の量が少ない。そのため、ラマン散乱の増強効果、すなわちSERS効果が十分でないと考えられる。
また、特許文献6及び7については、金属が基板の厚さ方向にも存在する。つまり、金属が三次元的に存在するため、金属の導入量が多い。しかし、特許文献6については、金属がスポンジ状に連続して接触している構造であるため、多量の金属導入が必要であり、かつ、金属導入量に対する電場増強効果が低いという問題がある。特許文献7については、多孔質シリコンへ金属を被覆しており、金属は膜状であるため、金属微粒子が近接した構造で得られる巨大な電場増強と比べて効果が低いという問題がある。
特表2013−527910号公報 特表2012−508881号公報 特開2005−233637号公報 特開2012−198090号公報 特開2011−75348号公報 特表2011−523677号公報 特表2005−524857号公報
上記のように、従来のSERS基板は、ラマン散乱の増強効果が小さいか、あるいは、金属の導入量に対するラマン散乱の増強効果が小さい、という問題があった。
従って、本発明は、ラマン散乱の増強効果が大きな表面増強分光基板を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記実情に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、金属ナノ粒子をマトリックス中に三次元的に分散した金属微粒子分散複合体を備えた表面増強分光基板は、上記問題を解決することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の表面増強分光基板は、金属微粒子と、被検出物質との相互作用によって生じる被検出物質の増強した光学応答を検出するものである。この表面増強分光基板は、固体骨格部及び該固体骨格部によって形成された空隙を有するマトリックス層と、前記固体骨格部に固定された前記金属微粒子と、を含んで構成される金属微粒子分散複合体を備えている。この金属微粒子分散複合体は、前記金属微粒子が、前記空隙に露出した部位を有し、かつ、前記マトリックス層中で三次元的に分散した状態で存在している。
また、本発明の表面増強分光基板は、前記金属微粒子の平均粒子径が5nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明の表面増強分光基板は、前記金属微粒子分散複合体の厚みが、0.1μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明の表面増強分光基板は、前記固体骨格部が、アルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有し、三次元的な網目構造を形成していることが好ましい。
また、本発明の表面増強分光基板は、前記金属微粒子が、金属イオンを加熱還元することによって前記マトリックス層中で生成したものであることが好ましい。
また、本発明の表面増強分光基板は、表面増強ラマン分光(SERS)基板、表面増強共鳴ラマン分光(SERRS)基板、表面増強ハイパー−ラマン分光(SEHRS)基板、又は、表面増強コヒーレント・アンチ−ストーク・ラマン分光(SECARS)基板のいずれかであることが好ましい。
本発明の表面増強分光基板は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックス層における該固体骨格部に金属微粒子が固定され、前記マトリックス層の空隙に露出した部位を備えており、マトリックス層中で三次元的に分散した状態で存在していることにより、SERSに有効な金属の量が多い。そのため、ラマン散乱の増強効果が大きい。また、近接した金属微粒子の電場増強を利用しているため、従来技術よりも少ない金属量で高い電場増強効果を得ることができる。そのため、本発明の表面増強分光基板は、SERS基板をはじめとする各種の用途に好ましく適用できる。
本発明の一実施の形態にかかる表面増強分光基板におけるナノコンポジットのマトリックスの構造を模式的に示す図面である。 ナノコンポジットの厚み方向における断面の金属微粒子の分散状態を模式的に示す図面である。 実施例1で作製したSERS基板のラマンスペクトルを示す図面である。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本実施の形態の表面増強分光基板は、金属微粒子と、被検出物質との相互作用によって生じる被検出物質の増強した光学応答を検出する表面増強分光基板である。この表面増強分光基板は、固体骨格部及び該固体骨格部によって形成された空隙を有するマトリックス層と、固体骨格部に固定された金属微粒子と、を含んで構成されるとともに、金属微粒子が、空隙に露出した部位を有し、かつ、マトリックス層中で三次元的に分散した状態で存在している金属微粒子分散複合体を備えている。
<金属微粒子分散複合体>
図1は、本発明の表面増強分光基板を構成する金属微粒子分散複合体(以下、単に「ナノコンポジッ卜」ともいう)10におけるマトリックス層1の構造例を模式的に示している。図2は、ナノコンポジッ卜10の厚み方向における断面の金属微粒子3の分散状態の一例を模式的に示している。
ナノコンポジッ卜10は、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを有するマトリックス層1と、該マトリックス層1の固体骨格部1aに固定された金属微粒子3とを備えている。図2に示すように、該金属微粒子3は、該マトリックス層1の空隙1bに露出した部位を備えており、マトリックス層1中で三次元的に分散した状態で存在している。
なお、ナノコンポジッ卜10は、図示しない基材を備えていてもよい。そのような基材としては、例えばガラス、セラミックス、シリコンウエハー、半導体、紙、金属、金属合金、金属酸化物、合成樹脂、有機/無機複合材料等を用いることができ、その形状としては、例えばプレート状、シート状、薄膜状、メッシュ状、幾何学パターン形状、凹凸形状、繊維状、蛇腹状、多層状、球状等のものを適用できる。なお、これらの基材の表面には、例えばシランカップリング剤処理、化学的エッチング処理、プラズマ処理、アルカリ処理、酸処理、オゾン処理、紫外線処理、電気的研磨処理、研磨剤による研磨処理等を施したものも利用できる。
また、上記ナノコンポジット10は、前記金属微粒子の平均粒子径が5nm〜200nmの範囲内にあることが好ましい。
また、上記ナノコンポジット10の厚みが、0.1μm〜200μmであることが好ましい。
また、上記ナノコンポジット10は、前記固体骨格部が、アルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有し、三次元的な網目構造を形成していることが好ましい。
また、上記ナノコンポジット10は、前記金属微粒子3が、金属イオンを加熱還元することによって前記マトリックス層1中で生成したものであることが好ましい。
(マトリックス層)
マトリックス層1は、図1に示したように、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを有している。空隙1bは、マトリックス層1の外部空間に連通している。このようなマトリックス層1の構造上の特徴によって、金属微粒子3がマトリックス層1中に三次元的に分散され得るとともに、マトリックス層1が気体や液体に対して透過性を有し、マトリックス層1中で三次元的に分散した金属微粒子3の利用効率を高める要因となっている。金属微粒子3の高い比表面積や高い活性を効率的に利用するという観点から、ナノコンポジッ卜10の空隙率は、例えば15〜95%の範囲内にあることが好ましい。ここで、ナノコンポジッ卜10の空隙率は、ナノコンポジット10の面積、厚み及び重量より算出した見掛け密度(嵩密度)と、マトリックス層1の固体骨格部1aを形成する材料及び金属微粒子3の固有の密度および組成比率より算出した空隙を含まない密度(真密度)を用いて、後述する式(A)にしたがって算出することができる。ナノコンポジッ卜10の空隙率が15%未満では、外部環境に対する開放性が低下するので、金属微粒子3の利用効率が低下する場合がある。また、ナノコンポジッ卜10の空隙率が15%未満では、ナノコンポジッ卜10を製造する際に、例えば予め形成したマトリックス層1に金属微粒子3の原料となる金属イオンを含有する溶液を含浸させる場合には、マトリックス層1全体に含浸させることが困難となり、均一な分散状態を得ることが難しい。一方、空隙率が95%を超えると、固体骨格部1aや金属微粒子3の存在比率が低下するので、機械的強度が低下したり、金属微粒子3による作用(例えば、局在型表面プラズモン共鳴効果)が低下したりする場合がある。
また、ナノコンポジッ卜10における金属微粒子3の空隙1bに対する体積割合は、上記と同様に金属微粒子3の高い比表面積や高い活性を効率的に利用するという観点から、ナノコンポジッ卜10の空隙1bの全容量に対し、好ましくは1〜50%の範囲内がよい。
マトリックス層1の厚みT(すなわち、金属微粒子分散複合体の厚みである。)は、SERSが発現する範囲で特に限定しない。金属微粒子3の粒子径Dによっても異なるが、例えば、0.1μm以上であることが好ましく、0.1μm〜200μmの範囲内とすることがより好ましく、0.3μm〜50μmの範囲内とすることがさらに好ましい。厚みTが0.1μm未満であると、金属微粒子3の存在量が少ないため、ラマン散乱の増強効果が小さく、分子の構造を分析するのが困難になる傾向にある。また、厚みTが大きすぎると、金属添加量にもよるが、形成される金属微粒子3が肥大化し、電場増強効果が小さくなる傾向にある。
また、固体骨格部1aは、公知の多孔質物質を使用することができる。例えば、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化鉄、チタニア、ジルコニア、マグネシア、シリカ、アルミニウムオキシ水酸化物、アルミナ水和物等の複数種類の金属元素を含む無機酸化物が挙げられる。これらを単独で使用しても良く、複数の種類を混合しても良い。好ましくは、三次元的な網目構造を形成しやすいという点から、アルミニウムオキシ水酸化物またはアルミナ水和物を含有する構造が好ましい。
固体骨格部1aがアルミニウムオキシ水酸化物またはアルミナ水和物である場合、固体骨格部1aは、アルミニウムオキシ水酸化物文はアルミナ水和物を含有する金属酸化物の微細な無機フィラー(または結晶)の集合体であり、該無機フィラーは、粒子状、鱗片状、板状、針状、繊維状、キューピック状等の形状を有する。このような無機フィラーの集合体による三次元的な網目構造は、アルミニウムオキシ水酸化物またはアルミナ水和物を含有する金属酸化物の無機フィラーを溶液に分散したスラリーを加熱処理して得られるものが好ましい。また、アルミニウムオキシ水酸化物文はアルミナ水和物を含有する金属酸化物は、金属微粒子3となる金属イオンを加熱還元する際にも耐熱性を有する材料として有利であり、化学的安定性の観点からも好ましい。なお、アルミニウムオキシ水酸化物(またはアルミナ水和物)と呼ばれているものには、ベーマイト(擬ベーマイトを含む)、ギブサイト、ダイアスポア等の各種のものが知られているが、この中でも特にベーマイトが最も好ましい。ベーマイトの詳細については後述する。
ナノコンポジッ卜10は、光反射系又は光透過系のいずれの局在型表面プラズモン共鳴も利用することが可能である。光透過系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合には、マトリックス層1は金属微粒子3の局在型表面プラズモン共鳴を生じさせるために光透過性を有することが好ましく、特に、380nm以上の波長の光を透過する材質であることが好ましい。
(金属微粒子)
金属微粒子3の形状や製法に制限はない。金属微粒子3としては、例えば、スパッタ法、CVD法、蒸発・凝縮法、液相還元法、水熱合成法、ゾル−ゲル法、中和分解法、加水分解法、化学沈殿法、共沈法、噴霧・固化法、液中分散法、固相合成法、粉砕法により生成したもの、金属イオンを加熱還元することによって得られたもの等が挙げられる。金属微粒子3の粒子径Dや粒子間距離Lの制御しやすさの観点から、金属微粒子3は、その前駆体となる金属イオンを加熱還元することによって得られるものが好ましい。
このようにして得られる金属微粒子3として、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、錫(Sn)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)等の金属種を用いることができる。また、これらの金属種の合金(例えば白金−コバルト合金など)を用いることもできる。これらの中でも、特に局在型表面プラズモン共鳴を奏する金属種として好適に利用できるものは、金、銀、銅、パラジウム、白金、錫、ロジウム、イリジウムである。さらに、380nm以上における可視領域の波長の光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じる金属種として金、銀、銅が好ましく挙げられ、特に金は表面酸化されにくく保存安定性がよいので、最も望ましい。
金属微粒子3の平均粒子径は、SERS現象が発現する範囲であれば、特に制限がないが、5nm〜200nmの範囲内にあることが好ましい。より好ましくは10nm〜200nmの範囲内、さらに好ましくは10nm〜150nmの範囲内、さらに好ましくは20nm〜150nmの範囲内である。金属微粒子3の平均粒子径が5nm未満である場合には、電場増強効果が小さくなる傾向となる。ここで、平均粒子径とは、金属微粒子3の直径の平均値(メディアン径)を意昧する。
また、粒子径Dが5nm〜200nmの範囲内にある金属微粒子3の割合が50%以上であることが好ましい。粒子径Dが5nm〜200nmの範囲内にある金属微粒子3の割合が50%以下になると、電場増強効果が得られにくい。また、金属微粒子3の粒子径Dが200nmを超えると、金属微粒子内部の電子は外部電場と共鳴しにくくなり、電場増強効果が得られにくくなってしまう。また、例えば金属微粒子3の最大粒子径が50nm〜200nm程度であるナノコンポジッ卜10は、その粒子径分布が比較的小さくなるため、近接する金属微粒子3間の電場増強効果が高く、好ましい態様となる。
ナノコンポジッ卜10には、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3も存在してもよく、このようなナノコンポジッ卜10は、電場増強効果に影響を与えにくいので特に問題はない。なお、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3は、ナノコンポジッ卜10における金属微粒子3の全量100重量部に対し、例えば金属微粒子3が金微粒子である場合、好ましくは10重量部以下、より好ましくは1重量部以下とすることがよい。ここで、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3は、例えばXPS(X線光電子分光)分析装置やEDX(エネルギー分散型X線)分析装置により検出することができる。
ナノコンポジッ卜10において、金属微粒子3は、さらに、光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じるものであることが好ましい。局在型表面プラズモン共鳴を生じる波長範囲は、金属微粒子3の粒子径D、粒子形状、金属種、粒子間距離L、マトリックス層1の屈折率等によって異なるが、例えば380nm以上の波長の光によって局在型表面プラズモン共鳴が誘起されることが好ましい。
(金属微粒子の存在状態)
ナノコンポジッ卜10は、金属微粒子3の前駆体となる金属イオンを加熱還元することにより、析出した金属微粒子3の熱拡散が容易となり、マトリックス層1の内部に分散した状態となる。金属微粒子3の分散状態は、マトリックス層1の内部に三次元的に分散していれば特に制限はないが、粒子間距離Lが、2つの粒子(α及びβ)の半径の和((Dα+Dβ)/2)より小さいことが好ましい。この場合、2つの金属微粒子3が接していても良く、凝集していても良い。このような分散状態は、金属微粒子3の局在型表面プラズモン共鳴をカップリングさせ、巨大な電場増強効果を発現するのに有効である。このような分散状態にある金属微粒子3の割合が50%以上存在することで、高いSERS効果を得ることができる。
また、ナノコンポジッ卜10中の金属微粒子3の体積分率は、ナノコンポジッ卜10に対して、1〜30%とすることが好ましい。ここで、「体積分率」とは、ナノコンポジッ卜10(空隙1bを含む)の一定体積あたりに占める金属微粒子3の合計の体積を百分率で示した値である。金属微粒子3の体積分率が1%未満であると、金属微粒子3同士の近接が難しくなり、電場増強効果がかなり小さくなり、仮にナノコンポジッ卜10の厚みを大きくしても効果は比較的得られにくい。一方、体積分率が30%を超えると、金属が塊状に形成されてしまい、金属微粒子3の形成が困難になるため、近接する金属微粒子3の数が減少し、SERS効果が小さくなる傾向にある。
本発明で用いるナノコンポジッ卜10において、金属微粒子3は、前記マトリックス層1の空隙に露出した部位を備えており、マトリックス層1中で三次元的に分散した状態で存在している、すなわち、ナノコンポジッ卜10では、金属微粒子3が、比表面積が高い状態で三次元的に効率良く配置されているので、金属微粒子3の利用効率を高めることができる。また、金属微粒子3は、外部環境に連通する空隙1bに露出した部位を備えているため、被検出物質が容易に電場増強の場に接触できる。従って、被検出物質のSERSスペクトルを得ることができる。
また、金属微粒子3は、三次元的な網目状の固体骨格部1aによって物理的または化学的に固定化されているため、経時変化に伴う金属微粒子3の凝集や脱落が防止できるので、長期保存性にも優れており、ナノコンポジッ卜10の繰り返しの使用においても、金属微粒子3の状態変化や脱落が抑制される。
以上の構成を有するナノコンポジッ卜10の構造上の特徴は、ナノコンポジッ卜10が局在型表面プラズモン共鳴を利用した表面増強分光基板、例えば、表面増強ラマン分光(SERS)基板、表面増強共鳴ラマン分光(SERRS)基板、表面増強ハイパー−ラマン分光(SEHRS)基板、又は表面増強コヒーレント・アンチ−ストーク・ラマン分光(SECARS)基板、特にSERS基板への適用を最適なものとしている。
本実施の形態の表面増強分光基板は、ナノコンポジッ卜10以外に、任意の基材や支持体を備えることができる。
次に、ナノコンポジッ卜10の製造方法について詳しく説明する。
(ナノコンポジッ卜の製造方法)
ナノコンポジッ卜10の製造には、公知の方法を適用できる。好ましいナノコンポジットとして、金属イオンを加熱還元することによって得られる金属微粒子を含むナノコンポジットについて、その製造方法の例を、以下に説明する。
好ましい製造方法としては、大別すると、マトリックス層1を形成する過程で金属微粒子3を分散する方法(I)と、予め形成したマトリックス層1に金属微粒子3を分散する方法(II)とがある。ナノコンポジッ卜10の製造工程数を少なくできるという観点から、(I)の方法が好ましい。
(I)の方法は、以下の工程Ia)〜Id)を備えることができる。
Ia)固体骨格部1aを形成するためのアルミニウムオキシ水酸化物またはアルミナ水和物を含有するスラリーを調製する工程、
Ib)前記スラリーと、該スラリーの固形分100重量部に対し、金属元素として(本明細書において、金属化合物中に含まれる金属元素を金属の重量に換算する意昧で用いる)0.5〜480重量部の範囲内となるように、金属微粒子3の原料となる金属化合物を混合して塗布液を調製する工程、
Ic)前記塗布液を基材上に塗布し、乾燥して塗布膜を形成する工程、
並びに
Id)前記塗布膜を加熱処理することにより、前記塗布膜から三次元的な網目構造を有する固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを備えたマトリックス層1を形成するとともに、前記金属化合物の金属イオンを加熱還元して金属微粒子3となる粒子状金属を析出させる工程。
(II)の方法は、以下の工程IIa)〜IId)を備えることができる。
IIa)固体骨格部1aを形成するためのアルミニウムオキシ水酸化物またはアルミナ水和物を含有するスラリーを調製する工程、
IIb)前記スラリーを、基材上に塗布し、乾燥した後、加熱処理することにより、三次元的な網目構造を有する固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを備えたマトリックス層1を形成する工程、
IIc)前記マトリックス層1に、前記スラリーの固形分100重量部に対し、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内となるように、金属微粒子3の原料となる金属イオンを含有する溶液を含浸させる工程、
並びに
IId)前記工程IIcの後、加熱処理することにより、前記金属イオンを還元して金属微粒子3となる粒子状金属を析出させる工程。
以下、(I)及び(II)の方法における各工程について具体的に説明するが、共通する部分は同時に説明する。ここでは、マトリックス層1における固体骨格部1aが、ベーマイト(擬ベーマイトを含む)により構成される場合について代表的に例示して説明を行う。
マトリックス層1を構成する固体骨格部1aは、アルミニウムオキシ水酸化物(又はアルミナ水和物)を含有する市販のベーマイト粉末を好適に使用可能であり、例えば、大明化学工業株式会社製のベーマイト(商品名)、CNDEA社製のDisperal HP15(商品名)、ユニオン昭和(株)社製のVERSAL(TM)ALUMINA(商品名)、河合石灰工業株式会社製のセラシュール(商品名)、巴工業株式会社製のCAM9010(商品名)、日産化学株式会社製のアルミナゾル520(商品名)、川研ファインケミカル株式会社製のアルミナゾル−10A(商品名)等を使用することが可能である。
本発明の一実施の形態で用いるベーマイト(Boehmite)とは、アルミニウムオキシ水酸化物(AlOOH)又はアルミナ水和物(Al・HO)の結晶性の高い微粒子のことを意味し、擬ベーマイトとは、ベーマイトの結晶性の低い微粒子のことを意味するが、いずれも区別なく広義の意味でベーマイトとして説明する。このベーマイト粉末は、アルミニウム塩の中和法やアルミニウムアルコキシドの加水分解法等による公知の方法で製造することができる。ベーマイト粉末は、水に不溶で、耐有機溶媒性、耐酸性及び耐アルカリ性があるので、マトリックス層1の固体骨格部1aを構成する成分として有利に利用できる。また、ベーマイト粉末は、酸性の水溶液中において高い分散性を持つという特徴があるので、ベーマイト粉末のスラリーを簡便に調製することができる。ベーマイト粉末は、例えばキュービック状、針状、菱形板状とそれらの中間状、及びリンクルドシート等の粒子形状を有する平均粒子径10nm〜2μmの範囲内のものが好ましく利用できる。これらの微粒子の端面もしくは表面が結合することによって固体骨格部1aを形成し、該固体骨格部1aが三次元的な網目構造を形成することができる。なお、ここでいうベーマイト粉末の平均粒径とは、レーザー回折法により算出した値とする。
ベーマイト粉末を含有するスラリーは、ベーマイト粉末と水又はアルコール等の極性溶媒を混合した後、この混合溶液を酸性に調整したものを使用する。上記(I)の方法では、このスラリーに金属微粒子3の原料となる金属化合物を添加し、均一に混合することによって塗布液を調製する。
スラリーの調製は、ベーマイト粉末を水又は極性有機溶媒等の溶媒に分散することによって行うが、使用するベーマイト粉末は、溶媒100重量部に対して、好ましくは5〜40重量部の範囲内、より好ましくは10〜25重量部の範囲内になるように調製することがよい。使用する溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、グリセリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することも可能である。混合した溶液は、ベーマイト粉末の分散性を向上させるために、分散処理を行うことが望ましい。分散処理は、例えば室温で5分以上攪拌する方法や、超音波を用いる方法等により行うことができる。
ベーマイト粉末の均一な分散ができるように、必要に応じ、混合液のpHを5以下に調整する。この場合、pH調整剤としては、例えば、蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の有機酸や、塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸、及びこれらの塩などを適宜添加してよい。なお、pH調整剤は、単独又は複数を混合して使用してもよい。pH調整剤を添加することにより、ベーマイト粉末の粒子径分布が、pH調整剤を添加しない場合と比較して変化することがあるが、特に問題はない。
(I)の方法では、上記のようにして調製したスラリーに、さらに金属微粒子3の原料となる金属化合物を加えて塗布液とする。この場合、加える金属化合物の量は、スラリーの固形分100重量部に対して、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内となるようにすることが好ましい。なお、調製したスラリーに金属化合物を加えると、塗布液の粘度が高くなることがあるが、その場合は、上記の溶媒を適宜添加することによって最適な粘度に調整することが望ましい。
上記の(I)の方法で用意される塗布液中に含有される金属化合物、又は上記の(II)の方法で用意される金属イオンを含有する溶液中に含有される金属化合物としては、金属微粒子3を構成する上述の金属種を含む化合物を特に制限無く用いることができる。金属化合物としては、前記金属の塩や有機カルボニル錯体などを用いることができる。金属の塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩などを挙げることができる。また、上記金属種と有機カルボニル錯体を形成し得る有機カルボニル化合物としては、例えばアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等のβ−ジケトン類、アセト酢酸エチル等のβ−ケトカルボン酸エステルなどを挙げることができる。
金属化合物の好ましい具体例としては、H[AuCl]、Na[AuCl]、AuI、AuCl、AuCl、AuBr、NH[AuCl]・n2HO、Ag(CHCOO)、AgCl、AgClO、AgCO、AgI、AgSO、AgNO、Ni(CHCOO)、Cu(CHCOO)、CuCl、CuSO、CuBr、Cu(NH)Cl、CuI、Cu(NO)、Cu(CHCOCHCOCH)、CoCl、CoCO、CoSO、Co(NO)、NiSO、NiCO、NiCl、NiBr、Ni(NO)、NiC、Ni(HPO)、Ni(CHCOCHCOCH)、Pd(CHCOO)、PdSO、PdCO、PdCl、PdBr、Pd(NO)、Pd(CHCOCHCOCH)、SnCl、IrCl、RhClなどを挙げることができる。
調製したスラリーや塗布液には、マトリックス層1の強度、透明性、光沢性等を向上する目的で、必要に応じてバインダー成分を配合することも可能である。アルミニウムオキシ水酸化物と組み合わせて用いることのできるバインダー成分として好適なものは、例えばポリビニルアルコールまたはその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、水溶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンまたはその変性体、デンプンまたはその変性体、カゼインまたはその変性体、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸およびその共重合体、ポリアミド酸(ポリイミドの前駆体)、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物などを挙げることができる。特に好ましくは、ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールは、金属イオンの還元効果があるため、配合した金属イオンを効率的に金属微粒子化できる。そのため、マトリックス層1への金属微粒子の配合量を増やすことができる。これらのバインダー成分は単独又は複数混合して用いることができる。なお、これらのバインダー成分は、金属化合物の有無に関わらず、適宜配合することができ、配合量は、スラリーの固形分100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部の範囲内、より好ましくは1〜50の範囲内、さらに好ましくは3〜50重量部の範囲内がよい。
上記スラリーや塗布液には、バインダーの他に、必要に応じて分散剤、増粘剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを本発明の効果を損なわない範囲内で添加することも可能である。
金属化合物を含有する塗布液又は金属化合物を含有しないスラリーを塗布する方法は、特に制限されるものではなく、例えばリップコーター、ナイフコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、スピンコーター、スプレー等によって塗布することができる。
塗布に用いる基材としては、ナノコンポジット10を基材から剥離して使用する場合や、ナノコンポジット10に基材を付けた状態で光反射系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合は、特に制限はない。ナノコンポジット10に基材を付けた状態で光透過系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合は、基材は、光透過性であることが好ましく、例えばガラス基板、透明な合成樹脂製基板等を用いることができる。透明な合成樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
金属化合物を含有する塗布液又は金属化合物を含有しないスラリーを塗布した後は、乾燥させて塗布膜を形成する。乾燥させる方法としては、特に制限されず、例えば、60〜150℃の範囲内の温度条件で行うことがよいが、好ましくは、60〜150℃の範囲内の温度条件で1〜60分間の範囲内の時間をかけて乾燥を行うことがよい。
金属化合物を含有する塗布液又は金属化合物を含有しないスラリーを塗布し、乾燥した後、好ましくは150〜450℃の範囲内、より好ましくは170〜400℃の範囲内で加熱処理することにより、マトリックス層1を形成する。加熱処理温度が150℃未満では、マトリックス層1の三次元的な網目構造の形成が十分に起こらない場合があり、加熱処理温度が450℃を超えると、例えば金属微粒子3の材質としてAu又はAgを用いる場合、金属微粒子3の溶融が起こり、形成する粒子径Dが大きくなるため、充分な局在型表面プラズモン共鳴効果を得ることが困難になる。
上記の(I)の方法では、マトリックス層1の形成と、金属イオンの還元による金属微粒子3の形成及び分散を一つの加熱工程で同時に行うことができる。上記(II)の方法では、マトリックス層1を形成した後、そこに金属イオンを含有する溶液を含浸させ、さらに加熱をすることによって、金属イオンの還元による金属微粒子3の形成及び分散を行う。
上記の(II)の方法で用いる金属イオンを含有する溶液中には、金属元素として1〜20重量%の範囲内で金属イオンを含有することが好ましい。金属イオンの濃度を上記範囲内とすることで、スラリーの固形分100重量部に対して、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内とすることができる。
上記の(II)の方法における含浸方法は、形成したマトリックス層1の少なくとも表面に金属イオンを含有する溶液が接触することができる方法であれば、特に限定されず、公知の方法を利用することができ、例えば、浸漬法、スプレー法、刷毛塗り又は印刷法等を用いることができる。含浸の温度は0〜100℃、好ましくは20〜40℃付近の常温でよい。また、含浸時間は、浸漬法を適用する場合、例えば5秒以上浸漬することが望ましい。
金属イオンの還元及び析出した金属微粒子3の分散は、好ましくは150〜450℃の範囲内、より好ましくは170〜400℃の範囲内での加熱処理によって行う。加熱処理温度が150℃未満では、金属イオンの還元が十分に行われず、金属微粒子3の平均粒子径を前述の下限(3nm)以上にすることが困難となる場合がある。また、加熱処理温度が150℃未満では、還元によって析出した金属微粒子3のマトリックス層1中での熱拡散が十分に起こらない場合がある。
ここで、加熱還元による金属微粒子3の形成について説明する。金属微粒子3の粒子径D及び粒子間距離Lは、還元工程における加熱温度及び加熱時間並びにマトリックス層1に含まれる金属イオンの含有量等によって制御できる。本発明者らは、加熱還元における加熱温度及び加熱時間が一定であって、マトリックス層1中に含有する金属イオンの絶対量が異なる場合には、析出する金属微粒子3の粒子径Dが異なるという知見を得ていた。
また、上記知見を応用し、例えば還元工程における熱処理を複数の工程に分けて実施することもできる。例えば、第1の加熱温度で金属微粒子3を所定の粒子径Dまで成長させる粒子径制御工程と、第1の加熱温度と同じか、又は異なる第2の加熱温度で、金属微粒子3の粒子間距離Lが所定の範囲になるまで保持する粒子間距離制御工程を行うことができる。このようにして、第1及び第2の加熱温度と加熱時間を調節することにより、粒子径D及び粒子間距離Lをさらに精密に制御することができる。
還元方法として加熱還元を採用する理由は、還元の処理条件(特に加熱温度と加熱時間)の制御によって比較的簡便に粒子径D及び粒子間距離Lを制御できることや、ラボスケールから生産スケールに至るまで特に制限なく簡便な設備で対応できること、また枚葉式のみならず連続式にも特段の工夫なくとも対応できることなど、工業的に有利な点が挙げられることにある。加熱還元は、例えば、Ar、Nなどの不活性ガス雰囲気中、1〜5KPaの真空中、又は大気中で行うことができ、水素などの還元性ガスを用いる気相還元も利用することが可能である。
加熱還元では、マトリックス層1中に存在する金属イオンを還元し、熱拡散によって個々の金属微粒子3を析出させてナノコンポジット10を得ることができる。また、マトリックス層1を構成する無機酸化物の構造単位を制御することや、金属イオンの絶対量及び金属微粒子3の体積分率を制御することで、金属微粒子3の粒子径Dとマトリックス層1中での金属微粒子3の分布状態を制御することもできる。
以上のようにして、ナノコンポジット10を製造することができる。なお、マトリックス層1として、ベーマイト以外の無機酸化物を用いる場合についても、上記製造方法に準じて製造することができる。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例において特にことわりのない限り、各種測定、評価は下記によるものである。
[金属微粒子の平均粒子径の測定]
金属微粒子の平均粒子径の測定は、試料を砕いてエタノールに分散させたのち、得られた分散液をカーボン支持膜付き金属性メッシュへ滴下して作成した基板を、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子社製、JEM−2000EX)により観測した。また、金属微粒子の平均粒子径は面積平均径とした。
[金属微粒子分散複合体の空隙率の測定]
金属微粒子分散複合体の空隙率は、金属微粒子分散複合体の面積、厚み及び重量より算出した見掛け密度(嵩密度)と、マトリックス層の固体骨格部を形成する材料及び金属微粒子の固有の密度および組成比率より算出した空隙を含まない密度(真密度)を用いて、下記式(A)にしたがって算出した。
空隙率(%)=(1−嵩密度/真密度)×100 …(A)
[試料の吸収スペクトル測定]
作製したSERS基板の吸収スペクトルは、瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製、MCPD−3700)により観測した。
[ラマン散乱光の測定]
作成したナノコンポジットの上に、6mmφの空洞付きシリコンセル(厚み0.2mm)を置き、空洞部へ、純水にローダミン6Gを1000μMの濃度で溶解した溶液を6μL滴下した。続いてシリコンセル上部へカバーガラスを設置し、レーザーラマン分光分析装置(日本分光社製、NRS−3100)を用いて、対物レンズの倍率10倍、レーザー波長785nm、レーザー出力1.6mW、露光時間60sec、積算回数2回の条件でラマン散乱光を測定した。
[実施例1]
0.54gのベーマイト粉末(大明化学工業社製、商品名;C−01、平均粒子径;0.1μm、粒子形状;キュービック状)に、2.36gの水と0.10gの酢酸を加え、撹拌した。さらに3.71gのエタノール、0.05gの3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1.35gの純水に溶解させた0.34gのポリビニルアルコール(平均分子量22000、重合度500、ケン化度88%)および2.53gの塩化金酸・四水和物を加え、撹拌することにより、金錯体含有スラリー1を調製した。このときの金錯体含有スラリー1におけるAu元素の割合は、ベーマイト100重量部に対して225重量部である。
次に、ガラス基板(厚み0.7mm)に、得られた金錯体含有スラリー1をスピンコーター(ミカサ株式会社製、商品名;SPINCOATER MS−A200)を用いて塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間及び500℃1時間加熱処理することによって、茶色に呈色した金属金微粒子分散SERS基板1A(厚さ1.71μm)を作製した。SERS基板1A中に形成した金属金微粒子は、該フィルムの表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以内の間隔で分散している粒子が存在した。このSERS基板1Aの特徴は、次のとおりであった。
1)SERS基板1Aの空隙率;44.5%
2)金属金微粒子の形状;ほぼ球状、平均粒子径;57.2nm、最小粒子径;18.5nm、最大粒子径;164.1nm、粒子径1nm〜100nmの範囲内にある粒子の割合;89%、粒子間距離の平均値;31.2nm、SERS基板1Aに対する金属金微粒子の体積分率;14.2%。
3)SERS基板1Aにおける金属金微粒子の空隙に対する体積割合;SERS基板1Aの空隙の全容量に対し31.9%。
4)SERS基板1Aの波長785nmにおける吸光度;0.936
SERS基板1Aおよびガラス基板(厚み0.7mm)のラマン散乱光を測定した結果を図1に示す。本発明の表面増強分光基板は、ラマン信号を検出することができることが明らかである。
[比較例]
市販の下記SERS基板について、ラマン散乱光を測定した。
比較例1・・・SERS基板Klarite(レニショー社製)
比較例2・・・SERS測定用AuナノロットアレイWavelet(株式会社ニデック製)
比較例3・・・SERS基板Q−SERS(Nanova社製)
実施例で作成した表面増強分光基板および比較例のSERS基板について得られたラマン散乱光の測定結果から、波数618cm−1におけるベースラインの強度(BL)と、波数618cm−1におけるピーク強度(PK)の比(PK/BL)を評価した。その結果を表1に示す。PK/BLは、実施例で作成した表面増強分光基板が最も高く、感度よく被検出物質であるローダミン6Gのラマン散乱光を検出できることが明らかである。なお、BLは、ピークの両端の立ち上がりの二点を直線で引き、その直線における波数618cm−1の強度である。
Figure 2015068736
1…マトリックス層、1a…固体骨格部、1b…空隙、3…金属微粒子、10…ナノコンポジット層

Claims (7)

  1. 金属微粒子と、被検出物質との相互作用によって生じる被検出物質の増強した光学応答を検出する表面増強分光基板であって、
    固体骨格部及び該固体骨格部によって形成された空隙を有するマトリックス層と、前記固体骨格部に固定された前記金属微粒子と、を含んで構成されるとともに、前記金属微粒子が、前記空隙に露出した部位を有し、かつ、前記マトリックス層中で三次元的に分散した状態で存在している金属微粒子分散複合体を備えていることを特徴とする表面増強分光基板。
  2. 前記金属微粒子の平均粒子径が5nm〜200nmの範囲内にある請求項1に記載の表面増強分光基板。
  3. 前記金属微粒子分散複合体の厚みが、0.1μm〜200μmである請求項1又は2に記載の表面増強分光基板。
  4. 前記固体骨格部が、アルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有し、三次元的な網目構造を形成している請求項1から3のいずれか1項に記載の表面増強分光基板。
  5. 前記金属微粒子が、金属イオンを加熱還元することによって前記マトリックス層中で生成したものである請求項1から4のいずれか1項に記載の表面増強分光基板。
  6. 表面増強ラマン分光(SERS)基板、表面増強共鳴ラマン分光(SERRS)基板、表面増強ハイパー−ラマン分光(SEHRS)基板、又は、表面増強コヒーレント・アンチ−ストーク・ラマン分光(SECARS)基板のいずれかである請求項1から5のいずれか1項に記載の表面増強分光基板。
  7. 表面増強ラマン分光(SERS)基板である請求項1から5のいずれか1項に記載の表面増強分光基板。
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