JP2015199334A - 複合基板、光学式センサー、局在型表面プラズモン共鳴センサー、その使用方法、及び検知方法 - Google Patents

複合基板、光学式センサー、局在型表面プラズモン共鳴センサー、その使用方法、及び検知方法 Download PDF

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靖 榎本
松村 康史
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康史 松村
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Abstract

【課題】 センシング機能及び耐久性に優れたセンサー材料に好適に利用できる複合基板と、それを用いたセンサーを提供する。【解決手段】 複合基板100は、ナノコンポジット層10と、ナノコンポジット層10に積層された多孔質の光反射部材20と、を備えている。ナノコンポジット層10は、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを有するマトリックス1と、該マトリックス1の固体骨格部1aに固定された金属微粒子3とを備えている。固体骨格部1aは、金属酸化物または金属オキシ水酸化物等の金属水酸化物を含有し、三次元的な網目構造を形成している。光反射部材20は、多孔質であり、好ましくは、局在型表面プラズモン共鳴を生じさせる波長の光を反射させる性質を有する材料で形成される。【選択図】図1A

Description

本発明は、例えば局在型表面プラズモン共鳴を利用する複合基板、光学式センサー、局在型表面プラズモン共鳴センサー、その使用方法、及び検知方法に関する。
ナノメートルサイズの微粒子は、幾何学的な高い比表面積を有していることに加え、量子サイズ効果により、光学特性の変化、融点の低下、高触媒特性、高磁気特性等を発現する。これらのことから、ナノメートルサイズの微粒子は、触媒反応や発光特性などの化学的および物理的な変換特性の向上など、バルク材料では得られなかった新機能が期待され、電子材料、触媒材料、蛍光体材料、発光体材料、医薬品等、様々な分野において非常に重要な材料となっている。特に、数nm〜100nm程度のサイズの金属微粒子では、微粒子中の電子が、特定の波長の光と相互作用を生じて共鳴する局在型表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance:LSPR)という現象を有している。近年、この現象を活かして、様々なデバイスへの応用が研究されている。この局在型表面プラズモン共鳴は、金属微粒子の周辺媒質の誘電率ε(λ)(=(n(λ)))(nはその屈折率)の変化に敏感である為、「金属微粒子の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化する」、という特徴を持っており、この特徴を活かして、結露センサー、湿度センサー、バイオセンサー、ケミカルセンサー、ガスセンサー、味覚センサー、匂いセンサー、アルコールセンサーなどのセンシング分野に応用する検討が盛んにおこなわれている。
LSPRの検出に着目した従来技術として、基板上に2次元的に固定化した金属ナノ粒子について、顕微鏡を用いて単一の金属ナノ粒子によるLSPRの散乱光を検出することが提案されている(例えば、非特許文献1、2、3及び4)。また、本発明者らは、マトリックスが、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有する三次元的な網目構造となっており、金属微粒子がこのマトリックス内に三次元的に分散している金属微粒子分散複合体を用いたセンサーを提案している(特許文献1)。また、詳細な検討はされておらずその効果は不明だが、塑性変形可能な金属と、該金属が塑性変形する条件では塑性変形しない無機粒子との混合物からなる無機粒子複合体が開示され、プラズモン共鳴による光線吸収性を有する可能性が示唆されている(特許文献2)。
阿部将之、藤原一彦、加藤勝、赤上陽一、小川信明、分析化学、56巻、No.9、pp.695−703(2007) A.D.McFarland,R.P.Van Duyne,Nano Letters,Vol.3,No.8,1057−1062(2003) 山田淳監修「プラズモンナノ材料の設計と応用技術」シーエムシー出版、2006年6月15日発行、p.141〜150 K.Aslan,J.R.Lakowicz,C.D.Geddes,Analytical Chemistry,Vol.77,No.7,2007−2014(2005)
国際公開WO2012/172971号 国際公開WO2010/140714号
上記基板上に2次元的に固定化した金属ナノ粒子、金属微粒子分散複合体及び無機粒子複合体(以下、これらを「センサー材料類」と総称する。)をセンサーとして用いる場合、センシング対象である蒸気、ガス、液体等の媒質によって、光源、光検出器等の光学系及び前記センサー材料類が暴露される。そのため、これらが経時的に劣化し、または汚染され、センシング機能が低下する懸念がある。そのため、これらの材料を用いたセンサーのセンシング機能や耐久性のさらなる向上が望まれる。
本発明の目的は、センシング機能及び耐久性に優れたセンサー材料類に好適に利用できる複合基板と、それを用いたセンサーを提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意研究を行った結果、空隙を有するマトリックスに金属微粒子を分散させた金属微粒子分散複合体層に多孔質の光反射部材を積層することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の複合基板は、
金属微粒子分散複合体層と、
前記金属微粒子分散複合体層に積層された多孔質の光反射部材と、
を備え、
前記金属微粒子分散複合体層が、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックスと、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、
を有するものである。
また、本発明の複合基板は、前記固体骨格部が金属酸化物または金属水酸化物を含有し、三次元的な網目構造を形成していてもよい。
また、本発明の複合基板は、前記固体骨格部がアルミナ、アルミニウムオキシ水酸化物またはアルミナ水和物を含有してもよい。
また、本発明の複合基板は、前記金属微粒子が、前記マトリックスの空隙に露出した部位を備えており、マトリックス中で三次元的に分散した状態で存在していてもよい。
また、本発明の複合基板は、前記金属微粒子が、平均粒子径が1nm〜100nmの範囲内にあり、かつ粒子径が1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子の割合が50%以上であってもよい。
また、本発明の複合基板は、前記光反射部材の590nmにおける光反射率が、大気中で10%以上であってもよい。
また、本発明の複合基板は、前記光反射部材を構成する多孔質体の空隙率(%)を膜厚(μm)で割った値が0.025(%/μm)以上であってもよい。
また、本発明の複合基板は、前記光反射部材が、水分を透過させ、油分又は炭化水素を透過させない防汚層を有していてもよい。
また、本発明の複合基板は、前記金属微粒子が、AuまたはAgの金属微粒子であってもよい。
また、本発明の複合基板は、前記金属微粒子分散複合体層に、さらに透明基板が積層されていてもよい。
また、本発明の複合基板は、前記金属微粒子が、380nm以上の波長の光との相互作用によって局在型表面プラズモン共鳴を生じるものであってもよい。
また、本発明の光学式センサーは、前記複合基板を備えている。
また、本発明の局在型表面プラズモン共鳴センサーは、
前記複合基板と、
前記複合基板へ向けて光を照射する光源と、
前記複合基板における金属微粒子による局在型表面プラズモン共鳴の散乱光又は前記光反射部材からの反射光を受光する受光部と、
前記散乱光もしくは前記反射光のスペクトルを測定する分光装置または光強度を測定する光検出器を備えている。
また、本発明の局在型表面プラズモン共鳴センサーは、更に、前記散乱光又は前記反射光を集光する手段を備えていてもよい。
また、本発明の局在型表面プラズモン共鳴センサーは、更に、照射光を集光する手段を備えていてもよい。
また、本発明の局在型表面プラズモン共鳴センサーは、前記光源からの照射光を前記複合基板の積層方向に対して斜めに入射させるものであってもよい。
また、本発明の局在型表面プラズモン共鳴センサーは、光の照射及び前記スペクトルの測定が、前記透明基板を介したものであってもよい。
また、本発明の局在型表面プラズモン共鳴センサーの使用方法は、前記局在型表面プラズモン共鳴センサーにおける前記金属微粒子分散複合体層を大気中又はガス中に暴露して使用するものである。
また、本発明の局在型表面プラズモン共鳴センサーの使用方法は、前記局在型表面プラズモン共鳴センサーにおける前記金属微粒子分散複合体層を液体中に暴露して使用するものであってもよい。
また、本発明の無機物質又は有機物質の検知方法は、
前記局在型表面プラズモン共鳴センサーを用い、
局在型表面プラズモン共鳴による前記スペクトルの変化、前記スペクトル強度の変化又は前記光強度の変化をもとに無機物質又は有機物質を検出するものである。
また、本発明の複合基板の製造方法は、
以下の工程Ia〜Id;
Ia)前記固体骨格部を形成するための原料スラリーを調製する工程、
Ib)前記原料スラリーと前記金属微粒子の原料となる金属化合物を混合して塗布液を調製する工程、
Ic)前記塗布液を、前記透明基板上に塗布し、乾燥して塗布膜を形成する工程、
Id)前記塗布膜を、加熱処理することにより、前記光反射部材上に前記金属微粒子分散複合体層を形成する工程、
を備えている。
本発明の複合基板は、空隙を有するマトリックスに金属微粒子を分散させた金属微粒子分散複合体層に多孔質の光反射部材を積層しており、光反射部材としての役割に加え、これがセンシング対象である蒸気、ガス、液体等の媒質の導入口の役割も担う。そのため、光学センサーの構造設計のバリエーションが増えて、光学センサーの小型化、軽量化等に効果がある。さらに、例えば、本発明の複合基板をセンサーとして用いる場合に、前記複合基板における金属微粒子分散複合体層と光学系との間に、透明基板等の隔壁を設けることで、前記媒質によって光学系が暴露しないような装置の設計を容易にできる。また、光反射部材がフィルターの役割も担うため、油分などの有機物による複合基板自体の汚染を抑制することができる。以上の効果により、局在型表面プラズモン共鳴センサー、湿度センサー、結露センサー、バイオセンサー、ケミカルセンサー、味覚センサー、匂いセンサー、アルコールセンサー、屈折率センサー等の光学式センサーのセンシング機能や耐久性を向上させることが可能になる。光学式センサーの他にも、QCM(水晶発振子マイクロバランス)、ガスセンサー等のセンサーや計測装置類、複合基板の変色を目視で判定する検査キットや、マトリックスを担体とする金属触媒、ガス浄化フィルター、水等の液体浄化フィルターなどへの適用が可能である。
本発明の一実施の形態に係る複合基板の断面図である。 本発明の別の実施の形態に係る複合基板の断面図である。 本発明のさらに別の実施の形態に係る複合基板の断面図である。 本発明のさらに別の実施の形態に係る複合基板の断面図である。 本発明のさらに別の実施の形態に係る複合基板の断面図である。 本発明の複合基板に用いることが可能なナノコンポジット層におけるマトリックスの構造を模式的に示す図面である。 ナノコンポジット層の厚み方向における断面の金属微粒子の分散状態を模式的に示す図面である。 図3のナノコンポジット層の表面に平行な断面の金属微粒子の分散状態を模式的に示す図面である。 金属微粒子の構造を説明する図面である。 本発明の一実施の形態にかかるLSPRセンサーの概略構成を説明する図面である。 本発明の別の実施の形態のLSPRセンサーの概略構成を説明する図面である。 実施例1−1で測定した、相対湿度の段階的変化に対する波長590nmにおける反射率の経時変化である。 実施例1−3で測定した、相対湿度の段階的変化に対するフォトダイオードからの出力電圧の経時変化である。 応答速度の評価方法を説明する図面である。 再現性の評価方法を説明する図面である。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[複合基板]
図1Aは、本発明の一実施の形態に係る複合基板100の概略構成を説明する図面である。複合基板100は、金属微粒子分散複合体層(以下、「ナノコンポジット層」と記すことがある)10と、ナノコンポジット層10に積層された多孔質の光反射部材20と、を備えている。以下、ナノコンポジット層10、光反射部材20の順に、その構成と製造方法について説明する。
[ナノコンポジット]
ナノコンポジット層10は、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックスと、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、を有するものであれば限定しない。
好ましい形態のナノコンポジット層10は、局在型表面プラズモン共鳴を生じさせる金属微粒子分散複合体により構成される。マトリックス内に金属微粒子が分散した金属微粒子分散複合体を、金属微粒子が持つ局在型表面プラズモン共鳴現象を利用したデバイス等の用途に適用する場合には、金属微粒子をマトリックスに固定化し安定させる必要がある。また、少なくとも、その吸収スペクトルの強度が大きいことが重要であり、加えて、一般に吸収スペクトルがシャープである程、高感度な検出が可能となる。強度が大きくシャープな吸収スペクトルを得るには、例えば、
1)金属微粒子の大きさが所定の範囲内に制御されていること、
2)金属微粒子の形状が均一であること、
3)金属微粒子が隣り合う金属微粒子とある一定以上の粒子間隔を保った状態でお互いが離れていること、
4)金属微粒子分散複合体に対する金属微粒子の体積充填割合がある一定の範囲で制御されていること、
5)金属微粒子がマトリックスの表層部から存在するとともに、その厚さ方向にも所定の粒子間距離を保ちながら偏りなく分布していること、
などの構造的特性を金属微粒子分散複合体が備えていることが好ましい。
また、金属微粒子分散複合体を、金属微粒子の外部環境の変化によって生じる局在型表面プラズモン共鳴の波長変化を高感度に感知するセンサー用途への適用を図るには、金属微粒子分散複合体は上記特性に加えて、更に、
6)金属微粒子が外部環境に露出した状態であること、
などの構造的特性を備えることが好ましい。
そこで、本実施の好ましい形態のナノコンポジット層10(金属微粒子分散複合体層)の構成について、図2〜5を参照しながら詳細に説明する。図2は、ナノコンポジット層10におけるマトリックス1の構造を模式的に示している。図3は、ナノコンポジット層10の厚み方向における断面の金属微粒子3の分散状態を模式的に示しており、図4は、ナノコンポジット層10の厚み方向に直交する平面と平行な面方向における断面の金属微粒子3の分散状態を模式的に示しており、図5は、金属微粒子3を拡大して説明する図面である。なお、図5では、隣り合う金属微粒子3における大きい方の金属微粒子3の粒子径をD、小さい方の金属微粒子3の粒子径をDと表しているが、両者を区別しない場合は単に粒子径Dと表記する。
ナノコンポジット層10は、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを有するマトリックス1と、該マトリックス1の固体骨格部1aに固定された金属微粒子3とを備えている。
また、ナノコンポジット層10は、以下のa〜cの少なくとも1つ以上の構成を備えていることが好ましい。
a)固体骨格部1aは金属酸化物または金属オキシ水酸化物等の金属水酸化物を含有し、三次元的な網目構造を形成している;
b)金属微粒子3の平均粒子径は1nm〜100nmの範囲内にあり、粒子径Dが1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子の割合が50%以上である;
c)金属微粒子3は、マトリックス1の空隙1bに露出した部位を備えており、マトリックス1中で三次元的に分散した状態で存在している。
(マトリックス層)
マトリックス1は、図2に示したように、固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを有している。固体骨格部1aは、例えば樹脂、植物性繊維、動物性繊維等の有機物や、セラミックス、ガラス、金属等の無機物であっても良く、材料に制限はないが、耐熱性、化学的安定性の観点から、上記a)に示したとおり、金属酸化物または金属水酸化物を含有し、三次元的な網目構造を形成していることが好ましい。具体的には、金属酸化物の場合は、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムや、これらの水和物を上げることができる。また、複数種類の金属元素を含む無機酸化物でも良い。これらの中でも、シリカ、アルミナ、チタニア及びそれらの水和物が好ましく、より好ましくは、アルミナ水和物である。これらの金属酸化物は、塩化アルミニウムなどの金属塩化物の気相中における火炎加水分解法など公知の方法で製造することができ、水に不溶で、耐有機溶媒性、耐酸性及び耐アルカリ性があるので、マトリックス1の固体骨格部1aを構成する成分として有利に利用できる。また、これらの金属酸化物は、水溶液中において高い分散性を持つという特徴があるので、金属酸化物粉末のスラリーを簡便に調製することができる。
また、金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化チタン、水酸化アルミニウムと塩化アルミニウムの混合物、アルミニウムオキシ水酸化物を挙げることができるが、好ましくは、アルミニウムオキシ水酸化物である。
アルミナ、アルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物と呼ばれているものには、ベーマイト(擬ベーマイトを含む)、ギブサイト、ダイアスポア、アルミナ、等の各種のものが知られているが、この中でも特にベーマイトが最も好ましい。
ここで、ベーマイト(Boehmite)とは、アルミニウムオキシ水酸化物(AlOOH)又はアルミナ水和物(Al・HO)の結晶性の高い微粒子のことを意味し、擬ベーマイトとは、ベーマイトの結晶性の低い微粒子のことを意味するが、いずれも区別なく広義の意味でベーマイトとして説明する。このベーマイト粉末は、アルミニウム塩の中和法やアルミニウムアルコキシドの加水分解法等による公知の方法で製造することができ、水に不溶で、耐有機溶媒性、耐酸性及び耐アルカリ性があるので、マトリックス1の固体骨格部1aを構成する成分として有利に利用できる。また、ベーマイト粉末は、酸性の水溶液中において高い分散性を持つという特徴があるので、ベーマイト粉末のスラリーを簡便に調製することができる。
このようなマトリックス1の構造上の特徴は、マトリックス1が気体や液体に対して透過性を有し、金属微粒子3の利用効率を高める要因となっている。金属微粒子3の高い比表面積や高い活性を効率的に利用するという観点から、ナノコンポジット層10の空隙率は、15〜95%の範囲内にあることが好ましい。ここで、ナノコンポジット層10の空隙率は、ナノコンポジット層10の面積、厚み及び重量より算出した見掛け密度(嵩密度)と、マトリックス1の固体骨格部1aを形成する材料及び金属微粒子3の固有の密度および組成比率より算出した空隙を含まない密度(真密度)を用いて、後述する式(A)にしたがって算出することができる。空隙率が15%未満では、外部環境に対する開放性が低下するので、金属微粒子3の利用効率が低下する場合がある。また、ナノコンポジット層10を製造する際に、例えば予め形成したマトリックス1に金属微粒子3の原料となる金属イオンを含有する溶液を含浸させる場合には、マトリックス1全体に含浸させることが困難となり、均一な分散状態を得ることが難しい。一方、空隙率が95%を超えると、固体骨格部1aや金属微粒子3の存在比率が低下するので、機械的強度が低下したり、金属微粒子3による作用(例えば、局在型表面プラズモン共鳴効果)が低下する場合がある。
また、ナノコンポジット層10における金属微粒子3の空隙1bに対する体積割合は、上記と同様に金属微粒子3の高い比表面積や高い活性を効率的に利用するという観点から、ナノコンポジット層10の空隙1bの全容量に対し、好ましくは0.08〜50%の範囲内がよい。
マトリックス1の厚み(つまり、ナノコンポジット10の厚み)Tは、金属微粒子3の粒子径Dによっても異なるが、局在型表面プラズモン共鳴を利用する用途においては、例えば、20nm〜20μmの範囲内とすることが好ましく、30nm〜10μmの範囲内とすることがより好ましい。
ナノコンポジット層10が、局在型表面プラズモン共鳴を利用した用途に適用される場合、光反射系又は光透過系のいずれの局在型表面プラズモン共鳴をも利用することが可能であるが、光透過系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合には、マトリックス1は金属微粒子3の局在型表面プラズモン共鳴を生じさせるために光透過性を有することが好ましく、例えば250nm以上、特に380nm以上の波長の光を透過する材質であることが好ましい。
固体骨格部1aは、三次元的な網目構造を形成しやすいアルミナ、アルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有することが好ましい。例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステンなどや、複数種類の金属元素を含む無機酸化物を含有してもよく、これらは単独又は複数を混合することもできる。
(金属微粒子)
本実施の形態で用いるナノコンポジット層10において、金属微粒子3の種類及びその分散方法は特に限定せず、公知の種類の粒子及び分散方法を適用できる。例えば、局在型表面プラズモン共鳴を利用した用途に適用される場合は、金属微粒子3は、スパッタ、真空蒸着、金微粒子分散液の塗布、含侵もしくはスプレー、またはその前駆体となる金属イオンを加熱還元することによって得られるものが好ましい。金属微粒子3は、金属微粒子3の粒子径Dや粒子間距離Lの制御しやすさの観点から、その前駆体となる金属イオンを加熱還元することによって得られるものがより好ましい。このようにして得られる金属微粒子3として、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、錫(Sn)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)等の金属種を用いることができる。また、これらの金属種の合金(例えば白金−コバルト合金など)を用いることもできる。これらの中でも、特に局在型表面プラズモン共鳴を奏する金属種として好適に利用できるものは、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、錫(Sn)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)が挙げられる。380nm以上における可視領域の波長の光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じる金属種として、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)が好ましく挙げられ、より好ましくは金(Au)及び銀(Ag)であり、特に金(Au)は表面酸化されにくく保存安定性がよいので、最も望ましい。
金属微粒子3の形状は、例えば球体、長球体、立方体、切頭四面体、双角錐、正八面体、正十面体、正二十面体等の種々の形状であってよいが、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープになる球形が最も好ましい。ここで、金属微粒子3の形状は、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することにより確認できる。また、金属微粒子3の平均粒子径は、任意100粒の金属微粒子3を測定したときの面積平均径とする。また、球体の金属微粒子3とは、形状が球体及び球体に近い金属微粒子で、平均長径と平均短径の比が1又は1に近いもの(好ましくは0.8以上)をいう。さらに、それぞれの金属微粒子3における長径と短径との関係が、好ましくは長径<短径×1.35の範囲内、より好ましくは長径≦短径×1.25の範囲内がよい。なお、金属微粒子3が球体でない場合(例えば正八面体など)は、その金属微粒子3におけるエッジ長さが最大となる長さを金属微粒子3の長径とし、エッジ長さが最小となる長さを金属微粒子3の短径として、さらに前記長径をその金属微粒子3の粒子径Dと見做すこととする。
金属微粒子3の平均粒子径は、特に限定しないが、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲内にあり、かつ粒子径が1nm〜200nmの範囲内にある金属微粒子の割合が50%以上であることが好ましい。特に、局在型表面プラズモン共鳴を利用した用途に適用される場合は、上記b)に示したように、金属微粒子3の平均粒子径は1nm〜100nmの範囲内にあり、かつ粒子径Dが1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子3の割合が50%以上であることが好ましい。より好ましくは、金属微粒子3の平均粒子径は3nm〜100nmの範囲内にあり、かつ粒子径Dが1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子3の割合が50%以上である。ここで平均粒子径とは、金属微粒子3の直径の平均値(メディアン径)を意味する。粒子径Dが1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子3の割合(全金属微粒子に対する個数割合)が50%未満になると、局在型表面プラズモン共鳴の高い効果が得られにくい。また、金属微粒子3の粒子径Dが100nmを超えると、充分な局在型表面プラズモン共鳴効果が得られにくいので、平均粒子径を100nm以下とする。また、例えば金属微粒子3の最大粒子径が50〜75nm程度以下であるナノコンポジット層10は、その粒子径分布が比較的小さくなるため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープなものが得られやすい。従って、金属微粒子3の最大粒子径が50〜75nm程度以下であるナノコンポジット層10は、金属微粒子3の粒子径分布は特に制限されず、好ましい態様となる。一方、金属微粒子3が最大粒子径75nmを超えるものを含むナノコンポジット層10でも、金属微粒子3の粒子径分布を小さくすることによって、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープなピークとなる。従って、この場合も金属微粒子3の粒子径分布を小さく制御することが好ましいが、金属微粒子3の粒子径分布は特に制限されない。また、金属微粒子3が粒子径D以上の粒子間距離Lで分散している特徴から、例えば金属微粒子3を磁性金属微粒子とすることで、優れた特性を有する磁性体として利用が可能である。
金属微粒子3が球形でない場合は、見掛け上の直径が大きくなる程、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがブロードとなる傾向になる。そのため、金属微粒子3が球形でない場合の粒子径Dは、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下がよい。また、金属微粒子3が球形でない場合には、マトリックス1に存在する個々の金属微粒子3の形状は他と金属微粒子3の形状と比較して、好ましくは全体の80%以上、より好ましくは90%以上がほぼ同じ形状ものがよく、相対的にほぼ同じ形状のものが特に好ましい。
ナノコンポジット層10には、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3も存在してもよく、このようなナノコンポジット層10は局在型表面プラズモン共鳴に影響を与えにくいので特に問題はない。なお、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3は、ナノコンポジット層10における金属微粒子3の全量100重量部に対し、例えば金属微粒子3が金微粒子である場合、好ましくは10重量部以下、より好ましくは1重量部以下とすることがよい。ここで、粒子径Dが1nm未満の金属微粒子3は、例えばXPS(X線光電子分光)分析装置やEDX(エネルギー分散型X線)分析装置により検出することができる。
また、より吸収スペクトル強度が高い局在型表面プラズモン共鳴効果を得るためには、金属微粒子3の平均粒子径は、好ましくは1nm以上とし、より好ましくは3nm以上とし、より好ましくは10nm以上100nm以下、より好ましくは20nm〜100nmがよい。金属微粒子3の平均粒子径が1nm未満である場合には、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度が小さくなる傾向となる。
ナノコンポジット層10において、金属微粒子3は、更に、光と相互作用して局在型表面プラズモン共鳴を生じるものであることが好ましい。局在型表面プラズモン共鳴を生じる波長範囲は、金属微粒子3の粒子径D、粒子形状、金属種、粒子間距離L、マトリックス1の屈折率等によって異なるが、例えば380nm以上の波長の光によって局在型表面プラズモン共鳴が誘起されることが好ましい。
(金属微粒子の存在状態)
ナノコンポジット層10において、金属微粒子3の存在状態に制限はないが、好ましくは、マトリックス1の中で、金属微粒子3は、各々の金属微粒子3同士が接することなく、隣り合う金属微粒子3における粒子径が大きい方の粒子径以上の間隔で存在している。つまり、隣り合う金属微粒子3の間隔(粒子間距離)Lが、隣り合う金属微粒子3における大きい方の金属微粒子3の粒子径D以上、すなわち、L≧Dである。図5において、金属微粒子3の粒子間距離Lは、大きい方の金属微粒子3の粒子径D以上になっている。したがって、金属微粒子3が有する局在型表面プラズモン共鳴の特性を効率よく発現することができる。
本実施の形態で用いるナノコンポジット層10を、上記のような好ましい金属微粒子3の存在状態にするためには、金属微粒子3の前駆体となる金属イオンを加熱還元することが好ましい。この方法により、析出した金属微粒子3の熱拡散が容易となり、隣り合う金属微粒子3における大きい方の粒子径D以上の粒子間距離Lでマトリックス1の内部に分散した状態となる。
粒子間距離Lが、大きい方の粒子径Dよりも小さい場合には、局在型表面プラズモン共鳴の際に粒子どうしの干渉が生じて、例えば隣接する2つの粒子が一つの大きな粒子のように協働して局在型表面プラズモン共鳴が生じ、シャープな吸収スペクトルが得られなくなる場合がある。一方、粒子間距離Lは大きくても特に問題はないが、熱拡散を利用して分散状態になる金属微粒子3における各々の粒子間距離Lは、金属微粒子3の粒子径Dと後述する金属微粒子3の体積分率と密接な関係があるので、粒子間距離Lの上限は、金属微粒子3の体積分率の下限値によって制御することが好ましい。粒子間距離Lが大きい場合、言い換えるとナノコンポジット層10に対する金属微粒子3の体積分率が低い場合は、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度が小さくなる。このような場合は、ナノコンポジット層10の厚みを大きくすることによって、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度を大きくすることができる。
また、金属微粒子3は、マトリックス1の内部に三次元的に分散していることが好ましい。つまり、ナノコンポジット層10において三次元的な網目構造のマトリックス1の厚み方向における断面及び該厚み方向に直交する方向における断面(マトリックス1の表面に平行な断面)を観察すると、図3及び図4に示したように、多数の金属微粒子3が上記粒子径D以上の粒子間距離Lをあけて縦方向及び横方向に点在した状態になる。
さらに、金属微粒子3の90%以上が、上記粒子径D以上の粒子間距離Lをあけて点在する単一粒子であることが、さらに好ましい。ここで、「単一粒子」とは、マトリックス1中の各金属微粒子3が独立して存在していることを意味し、複数の粒子が凝集したもの(凝集粒子)は含まない。すなわち、単一粒子とは、複数の金属微粒子が分子間力によって凝集した凝集粒子は含まない。また、「凝集粒子」とは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した場合に、個体の金属微粒子の複数個が寄り集まって、一つの凝集体となっていることが明らかに確認されるものをいう。なお、ナノコンポジット層10における金属微粒子3は、その化学構造上、加熱還元して生成する金属原子が凝集によって形成される金属微粒子とも解される。しかし、このような金属微粒子は金属原子の金属結合によって形成されるものと考えられるので、複数の粒子が凝集した凝集粒子とは区別し、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した場合に、一つの独立した金属微粒子3として確認されるものである。
上記のような単一粒子が90%以上存在することにより、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープ且つ安定になり、高い検出精度が得られる。このことは、換言すると、凝集粒子又は上記粒子径D以下の粒子間距離Lで分散する粒子が10%未満であることを意味する。このような粒子が10%以上存在する場合、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがブロードになったり、不安定になったりして、センサー等のデバイスに利用する場合には、高い検出精度が得られにくくなる。また、凝集粒子又は上記粒子径D以下の粒子間距離Lで分散する粒子が10%を超えてしまうと、粒子径Dの制御も極めて困難になる。
また、マトリックス1中の金属微粒子3の体積分率は、ナノコンポジット層10に対して、0.05〜30%とすることが好ましい。ここで、「体積分率」とは、ナノコンポジット層10(空隙1bを含む)の一定体積あたりに占める金属微粒子3の合計の体積を百分率で示した値である。金属微粒子3の体積分率が、0.05%未満であると、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルの強度がかなり小さくなり、仮にナノコンポジット層10の厚みを大きくしても効果は得られにくい。一方、体積分率が30%を超えると、隣り合う金属微粒子3の間隔(粒子間距離L)が、隣り合う金属微粒子3における大きい方の金属微粒子3の粒子径Dより狭くなるため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルのシャープなピークが得られにくくなる。
好ましくは、本実施の形態で用いるナノコンポジット層10において、上記c)に示したように、金属微粒子3は、マトリックス1の空隙1bに露出した部位を備えており、マトリックス1中で三次元的に分散した状態で存在している。すなわち、ナノコンポジット層10では、金属微粒子3が、比表面積が高い状態で三次元的に効率良く配置されているので、金属微粒子3の利用効率を高めることができる。また、金属微粒子3は、外部環境に連通する空隙1bに露出した部位を備えているため、金属微粒子3の周辺媒質の誘電率ε(λ)(=(n(λ)))(nはその屈折率)の変化にも敏感にその特性を発揮することができる。すなわち、金属微粒子3は、金属微粒子3の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化する、という特性を充分に利用することが可能となる。このようなナノコンポジット層10の構造上の特徴は、ナノコンポジット層10が局在型表面プラズモン共鳴を利用した結露センサー、湿度センサー、結露センサー、バイオセンサー、ケミカルセンサー、ガスセンサー、屈折率センサー、味覚センサー、匂いセンサー、アルコールセンサー等への適用を最適なものとしている。
上記のような好ましい金属微粒子3の存在状態において、ナノコンポジット層10は、例えば透過型の電子顕微鏡等でマトリックス1の断面を観察した場合に、透過した電子線によってマトリックス1中に存在する金属微粒子3同士が重なって見えることがある。しかし、実際には金属微粒子3は一定の距離以上を保った状態となっており、完全に独立した単一の粒子として分散している。また、金属微粒子3は、三次元的な網目状の固体骨格部1aによって物理的又は化学的に固定化されているため、経時変化に伴う金属微粒子3の凝集や脱落が防止できるので、長期保存性にも優れており、ナノコンポジット層10の繰り返しの使用においても、金属微粒子3の凝集や脱落が抑制される。
以上の構成を有するナノコンポジット層10は、金属微粒子3が三次元的な網目構造を有するマトリックス1中で一定以上の粒子間距離Lを保った状態で、三次元的に偏りなく分散した形態を有する。そのため、局在型表面プラズモン共鳴による吸収スペクトルがシャープであるとともに、非常に安定しており、再現性と信頼性に優れている。さらに、金属微粒子3の表面の多くは、マトリックス1中において外部空間に連通する空隙1bに露出しているため、金属微粒子3が有する、金属微粒子3の周辺媒質の誘電率(屈折率)の変化に応じて共鳴する波長が変化するという特性を充分に発現することが可能である。したがって、ナノコンポジット層10は、結露センサー、湿度センサー、結露センサー、バイオセンサー、ケミカルセンサー、ガスセンサー、屈折率センサー、味覚センサー、匂いセンサー、アルコールセンサー等への利用に適しており、簡易な構成で高精度の検出が可能になる。
[光反射部材]
光反射部材20は、多孔質体であり、好ましくは、局在型表面プラズモン共鳴を生じさせる波長(例えば金属微粒子3が金又は銀で構成されている場合は300nm〜900nmの範囲内、パラジウム、白金で構成されている場合は250nm〜900nmの範囲内)の光を反射させる性質を有する材料で形成する。このような材料としては、例えば、ポリエステル、PTFE、植物性繊維、動物性繊維等の有機材料基板、ガラス、アルミナ、金属等の無機基板であって、かつ多孔質であるものが挙げられる。ここで多孔質の形態例としては、不織布、織物、メッシュ、メンブランフィルター、粒子の焼結体、発泡シート、非孔質基板にドリル、パンチング、プラズマ等の物理エッチング、化学エッチング等により貫通孔を形成したものが挙げられる。より好ましくは、ろ紙、ポリエステル製の不織布、ガラス繊維ろ紙、PTFE製メンブランフィルター、ポーラスアルミナメンブランフィルターである。
なお、図1Aでは、ナノコンポジット層10と光反射部材20とを密着させて積層した積層体を例示したが、ナノコンポジット層10と、光反射部材20とは、必ずしも密着させて設ける必要はなく、ナノコンポジット層10に対して光反射部材20を任意の距離で離間させて設けてもよい。
光反射部材20は、光反射系センサーの光反射部材として好適に使用される。そのため、光反射部材20は、光源やセンサーの種類に応じて、特定の波長の光を反射できるものであればよい。例えば、複合基板100を局在型表面プラズモン共鳴センサーに適用する場合、光反射部材20は、局在型表面プラズモン共鳴波長(例えば金属微粒子3が金または銀で形成されている場合は300〜900nmの範囲内、パラジウム、白金で構成されている場合は250nm〜900nmの範囲内)で反射するものを使用することができる。この場合、上記波長範囲内、例えば波長590nmにおける光反射率が大気中で10%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上である。光反射部材20がこのような光反射率であると、複合基板100を局在型表面プラズモン共鳴センサーにおける光反射部材として好ましく利用できる。光反射部材20の光反射率が10%未満の場合は、局在型表面プラズモン共鳴センサーにおける光反射部材として使用する場合に、受光部に光が十分到達せず、センサーとしての感度が低くなる傾向にある。ただし、波長は590nmに限定されるものではなく、使用する波長に合わせて反射率が上記範囲に入るものであればよい。また、複合基板100を局在型表面プラズモン共鳴センサー以外の光反射系センサーに使用する場合も、光反射部材20は、使用する波長に合わせて上記反射率と同程度の反射率を有するものであればよい。
光反射部材20は、光反射部材としての役割に加え、センシング対象である蒸気、ガス、液体等の媒質の導入口の役割を担う。その観点では、光反射部材20を構成する多孔質体は、膜厚に応じて、前記媒質を効率良く透過させることが可能な空隙率を有すること好ましい。また、光反射部材20は、フィルターの役割を担い、前記媒質によるナノコンポジット層10の汚染を抑制する作用も有しており、そのような観点では、前記媒質中の不純物を除去できることが好ましい。以上の理由から、光反射部材20の膜厚(図1Aでは、多孔質体の厚みT1と同じ)は、例えば1000μm以下であることが好ましく、10〜1000μmの範囲内であることがより好ましい。
また、光反射部材20としての多孔質体の膜厚T1が比較的小さい場合は、光反射部材20の空隙率は比較的小さくても良い。一方で、多孔質体の膜厚T1が比較的大きい場合は、空隙率も比較的大きくする必要がある。そのため、光反射部材20としての多孔質体の膜厚T1(μm)に対する多孔質体の空隙率(%)の比の値、つまり、多孔質体の空隙率(%)をその膜厚T1(μm)で割った値は、例えば0.025(%/μm)以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜2.00(%/μm)の範囲内である。光反射部材20としての多孔質体の空隙率(%)を膜厚T1(μm)で割った値が0.025(%/μm)より小さい場合は、媒質の透過速度が低下し、媒質のセンシングの感度や応答速度が低下する傾向にある。
また、光反射部材20の好ましい平均孔径は、1nm〜1μmの範囲内である。平均孔径が1nm未満の場合は、ナノコンポジット層10への媒質の導入速度が低下し、媒質のセンシングの感度や応答速度が低下する傾向にある。一方、平均孔径が1μmを超えると、前記媒質中の不純物の除去効率が低下する傾向にある。平均孔径は、水銀圧入法により測定することができる。
また、光反射部材20は、その多孔質の細孔を介して、ナノコンポジット層10へ汚染物が進入することを防止するための防汚層を備えていてもよい。ナノコンポジット層10に、例えば雰囲気中の油分、炭化水素などの汚染物が吸着すると、そのセンシング感度が低下し、センシングの再現性が低下する。そのため、水分を透過させながら、油分、炭化水素などをブロックできる水分透過性の防汚層を光反射部材20に設けることによって、複合基板100によるセンシングの再現性を保持できる。
防汚層は、例えば防汚層を構成する水分透過性材料を光反射部材20にコーティングすることによって形成してもよいし、含浸させることによって形成してもよいし、両者の組み合わせでもよい。図1B、図1C、図1Dは、それぞれ、光反射部材20に防汚層を設けた本発明の別の実施の形態に係る複合基板100の概略構成を説明する図面である。
図1Bは、コーティングによる防汚層30を有する光反射部材20を備えた複合基板100の概略構成を説明する図面である。図1Bに示す形態では、防汚層30は、光反射部材20の表面(ナノコンポジット層10に積層された側とは反対側)にコーティングされている。この場合、光反射部材20の全体の厚みは、多孔質体の厚みT1と、防汚層30の厚みT2の合計である。緻密な防汚層30によって、多孔質である光反射部材20の細孔は外部に露出せず、封止されるため、水分以外は防汚層30を透過できず、ナノコンポジット層10の汚染が防止される。なお、コーティングによる防汚層30は、複数の異なる材料による防汚層を積層したものでもよい。
図1Cは、含浸による防汚層30を有する光反射部材20を備えた複合基板100の概略構成を説明する図面である。図1Cに示す形態では、防汚層30は、光反射部材20の表面(ナノコンポジット層10に積層された側とは反対側)から内側に厚みT2で入り込むように含浸層として形成されている。この場合、光反射部材20の全体の厚みは多孔質体の厚みT1のまま変化しない。図1Cに示す態様では、防汚層30内の細孔は、防汚材料が埋まって封止されるため、水分以外は防汚層30を透過できず、ナノコンポジット層10の汚染が防止される。
図1Dは、コーティングと含浸による防汚層30を有する光反射部材20を備えた複合基板100の概略構成を説明する図面である。図1Dに示す形態では、防汚層30は、光反射部材20の表面(ナノコンポジット層10に積層された側とは反対側)に形成されたにコーティング層30Aと、該表面から内側に入り込むように形成された含浸層30Bとを有している。図1Dに示す態様では、防汚層30の厚みT2は、コーティング層30Aの厚みT3と含浸層30Bの厚みT4との合計である。この場合、光反射部材20の全体の厚みは、多孔質体の厚みT1とコーティング層30Aの厚みT3との合計である。図1Dに示す態様では、防汚層30内の細孔は、防汚材料が埋まって封止されるため、水分以外は防汚層30を透過できず、ナノコンポジット層10の汚染が防止される。
防汚層30を構成する材料としては、水分を透過し、油分、炭化水素などを透過しない材料(以下、「水分透過性材料」と記すことがある)であれば特に制限なく用いることができる。ここで、水分透過性材料は、例えば厚さ25μmのフィルムの状態で、25℃、90%RHの条件で測定した場合の水蒸気透過率が1.0g/m・24h以上であることを一つの基準として選択することができる。
防汚層30に使用可能な水分透過性材料としては、例えば、樹脂、フッ素化合物、などの材質を使用できる。これらは2種以上を組み合わせて使用できる。ここで、樹脂としては、公知の合成樹脂及び天然樹脂が用いられる。これらの樹脂の中でも、水分透過性能(つまり、水を速やかに透過させる性能)と水分選択的透過性能(つまり、油分、炭化水素などをブロックする性能)を両立できるという理由から、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂(アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等)、ポリビニルアセテート等のビニル樹脂、ポリイミド、シリコーンポリイミド等のポリイミド樹脂、PET、PEN等のポリエステル樹脂が好ましい。より好ましくは、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、PMMA、ポリビニルアセテート、ポリイミド、シリコーンポリイミドなどを用いることができる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの樹脂の中でも、優れた水分透過性能(つまり、水を速やかに透過させる性能)と優れた水分選択的透過性能(つまり、油分、炭化水素などをブロックする性能)を両立できるという理由から、より好ましくは、前記樹脂が、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、PMMA、ポリビニルアセテートであり、さらにポリスチレンを用いることが最も好ましい。
また、水分透過性材料として樹脂を用いる場合の重量平均分子量は、その材質に応じて適切な範囲を選択すればよい。例えば、樹脂としてポリスチレンを用いる場合は、水分の透過を許容しつつ、油分や炭化水素を確実にブロックするために、30,000〜500,000の範囲内とすることが好ましい。
防汚層30として使用可能な水分透過性材料の具体例として、例えば、ポリスチレン(平均分子量38万、東洋スチレン社製)、耐熱性ポリスチレン(平均分子量22万、東洋スチレン社製)、ポリビニルアルコール500(関東化学社製)、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学工業社製)、PMMA(平均分子量Mw12万、シグマアルドリッチ社製)、ポリビニルアセテート(平均分子量Mw5万、Alfa Aesar社製)、フッ素系コーティング剤(FS1010TH−0.5、フロロテクノロジー社製)、などの市販品を挙げることができる。これらは2種以上を組み合わせて使用できる。
また、上記以外の水分透過性材料の具体例として、ポリアミド酸樹脂、エポキシ樹脂等も挙げられる。これらは市販のものや、重合して準備したものなどを使用することが可能である。
防汚層30の厚みT2は、水分の透過を許容しつつ、油分や炭化水素を確実にブロックするために、その材質や用途に応じて適切な範囲を選択することができる。
例えば、水分透過性材料が、光反射部材20の表面にコーティングされる材質の場合、図1Bに例示する態様となるため、厚みT2は、0.1〜5μmの範囲内が好ましく、0.1〜3μmの範囲内がより好ましい。
また、水分透過性材料が、光反射部材20の内部に含浸される材質(例えば、ポリスチレンなど)の場合、図1Cに例示する態様となるため、厚みT2は5〜80μmの範囲内が好ましく、5〜30μmの範囲内がより好ましい。
また、水分透過性材料が、光反射部材20の表面にコーティングされるとともに、内部に含浸される材質の場合は、図1Dに例示する態様となるため、厚みT2は厚みT3と厚みT4の合計となる。この場合、厚みT3は0.1〜5μmの範囲内が好ましく、0.1〜3μmの範囲内がより好ましく、厚みT4は5〜80μmの範囲内が好ましく、5〜30μmの範囲内がより好ましい。
光反射部材20は、多孔質体に水分透過性材料を含む塗布液を塗布し、乾燥させ、コーティング層及び/又は含浸層を有する防汚層30を形成することによって製造することができる。水分透過性材料を多孔質体上に塗布する方法としては特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。塗布液には、水分透過性材料の材質に応じて、例えば、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶媒、有機酸、有機アミン、イオン性液体などを含有していてもよい。また、防汚層30を多層に形成したり、複数種類の材料によって形成したりする場合は、水分透過性材料を含む塗布液の塗布と、乾燥とを繰り返すことが好ましい。
光反射部材20を光学センサーに適用した場合に、再現性をより向上させるために、上記のように多孔質体に水分透過性材料を含む塗布液を塗布し、乾燥させた後で、加熱処理することが好ましい。その理由は定かではないが、加熱処理により防汚層30がより緻密になると推測される。その結果、水分透過性を維持しつつ、水分以外を透過させないという選択性が向上すると考えられる。加熱温度は、水分透過性材料の軟化温度より高温で、分解温度よりも低温であることが好ましい。また、加熱処理の時間は、光反射部材20の多孔質体及び水分透過性材料の材質及び構造により適宜決定されるが、水分透過性材料が軟化して流動し、より緻密な構造になるために十分な時間であることが望ましい。例えば多孔質体がポーラスアルミナであって、水分透過性材料がポリスチレンである場合は、加熱温度は110℃〜150℃が好ましく、加熱処理の時間は10分〜120分であることが好ましい。
[透明基板]
本実施の形態の複合基板100は、前記ナノコンポジット層10に、さらに透明基板が積層されていることが好ましい。図1Eは、透明基板40を備えた複合基板100の概略構成例を説明する図面である。透明基板40は、好ましくは、ナノコンポジット層10における光反射部材20が積層される面と反対側の面に積層される(図7参照)。なお、透明基板40は、図1A〜図1Dのどの態様の複合基板100にも適用できる。透明基板40は、その材料の選択に制限はないが、例えば、局在型表面プラズモン共鳴を利用した用途に適用される場合は、局在型表面プラズモン共鳴を生じさせる波長(例えば金属微粒子3が金又は銀で構成されている場合は300nm〜900nmの範囲内、パラジウム、白金で構成されている場合は250nm〜900nmの範囲内)の光を透過させる性質を有する材料で形成することができる。このような材料としては、例えば、ガラス、石英などの無機透明基板、インジウムスズオキサイド(ITO)、酸化亜鉛などの透明導電性膜、あるいはポリイミド樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂などの透明合成樹脂等を挙げることができる。
また、透明基板40の厚みは、特に制限はないが、例えば1μm以上10mm以下の範囲内とすることができる。
透明基板40は、ナノコンポジット層10とは、必ずしも密着させて設ける必要はなく、ナノコンポジット層10に対して透明基板40を任意の距離で離間させて設けてもよい。
透明基板40は、例えば、複合基板100をセンサーとして用いる場合に、複合基板100におけるナノコンポジット層10と光学系との間に、隔壁として設置することで、前記媒質によって光学系が暴露しないような装置の設計を容易にできる。この効果により、局在型表面プラズモン共鳴センサー、湿度センサー、結露センサー、バイオセンサー、ケミカルセンサー、屈折率センサー等の光学式センサーのセンシング機能や耐久性を向上させることが可能になる。
[光学センサー]
次に、本発明の光学センサーについて、詳細に説明する。
本発明の光学センサーは、本発明の複合基板100を備える。複合基板100は、空隙1bを有するマトリックス1に金属微粒子3を分散させた金属微粒子分散複合体層(ナノコンポジット層)10に多孔質の光反射部材20を積層しており、この光反射部材20は、光を反射する役割に加え、センシング対象である蒸気、ガス、液体等の媒質の導入口の役割も担う。そのため、光学センサーの構造設計のバリエーションが増えて、光学センサーの小型化、軽量化等に効果がある。さらに、例えば、複合基板100をセンサーとして用いる場合に、複合基板100におけるナノコンポジット層10と光学系との間に、透明基板等の隔壁を設けることで、前記媒質によって光学系が暴露しないような装置の設計を容易にできる。また、光反射部材20がフィルターの役割も担うため、前記媒質による複合基板100自体の汚染を抑制することができる。以上の効果により、局在型表面プラズモン共鳴センサー、湿度センサー、結露センサー、バイオセンサー、ケミカルセンサー、屈折率センサー等の光学式センサーのセンシング機能や耐久性を向上させることが可能になる。
ここで、本発明の光学センサーの一形態として、局在型表面プラズモン共鳴センサー(以下、「LSPRセンサー」と記すことがある)について説明する。
[LSPRセンサー]
次に、図6及び図7を参照して、複合基板100を利用したLSPRセンサーの具体的な構成例について説明する。図6は、LSPRセンサーの一構成例を示している。このLSPRセンサー200は、複合基板100と、光源101と、分光器102と、投光・受光部103と、集光手段としてのレンズ104と、を備えている。光源101は、LSPRを発生させ得る波長の光を照射する。分光器102は、投光・受光部103で受光した散乱光のスペクトルを検出する。投光・受光部103は、例えば投光及び受光が可能な同軸Y型光ファイバーにより構成されている。レンズ104は、投光・受光部103からの照射光110及び複合基板100のナノコンポジット層10で発生した散乱光120を集光する光学レンズである。LSPRセンサー200では、投光・受光部103及びレンズ104は、複合基板100の積層方向(光反射部材20の表面やナノコンポジット層10の表面に対して垂直な方向)に対し、斜め方向から光を照射するように配置されている。このように、複合基板100の積層方向に対し、斜め方向から光を照射することによって、散乱光120の集光が容易になり、散乱光のLSPRによる吸収スペクトルの検出感度を向上させることができるので好ましい。ここで、「斜め方向」とは、複合基板100の積層方向に対し、1度以上傾いた方向のことをいう。斜め方向は、より好ましくは5度以上であり、さらに好ましくは10度以上である。なお、LSPRセンサー200では、ミラーなどの光反射手段を用いて複合基板100へ入射する光の角度を調節することもできる。
LSPRセンサー200では、ナノコンポジット層10が、レンズ104及び投光・受光部103に向き合うように配置される。これによって、レンズ104を介して集光された照射光110は、ナノコンポジット層10へ入射し、さらにナノコンポジット層10を通過して光反射部材20へ入射する。また、ナノコンポジット層10においてLSPRにより発生した散乱光120は、その一部がレンズ104で集光され、投光・受光部103で受光される。
ここで、ナノコンポジット層10における光反射部材20が積層される面と反対側の面に、透明基板を積層した場合、透明基板は、レンズ104及び投光・受光部103と被検体を隔離する測定窓として機能する。すなわち、複合基板100を、ガスや液体などの検体中に暴露して使用する場合などに、透明基板を設けることによって、レンズ104及び投光・受光部103が検体中に暴露されることを防ぎ、ナノコンポジット層10及び光反射部材20からのLSPRによる散乱光120を効率良く集光し、かつセンシング機能や耐久性を向上させることができる。
図7は、LSPRセンサーの別の構成例を示している。このLSPRセンサー1000は、ナノコンポジット層1001と、このナノコンポジット層1001の片側に積層された光反射部材1002と、この光反射部材1002とは反対側でナノコンポジット層1001に積層された透明ガラス基板1003と、を有する複合基板1004を備えている。また、LSPRセンサー1000は、複合基板1004の積層方向に対して角度を変化させて光線を照射できる光源1005と、この光源1005から複合基板1004へ向けて照射された光線の反射光を検出する光検出器1006と、を備えている。光源1005は、透明ガラス基板1003に向けて光線を照射する。LSPRセンサー1000は、光反射部材1002の表面(ナノコンポジット層1001と積層されている面とは反対側の面)に沿って検体となる気体又は液体が流れるように構成されている。検体中の無機物質又は有機物質は、光反射部材1002の細孔を通過してナノコンポジット層1001に到達する。
以上の構成を有するLSPRセンサー200,1000では、LSPRによる散乱光や反射光のスペクトルの変化、スペクトル強度の変化又は散乱光や反射光の強度の変化をもとに、気体もしくは液体に存在する無機物質又は有機物質を検出することができる。
図7に示したようなLSPRセンサー1000は、例えば雰囲気中の油分、炭化水素などの汚染物がナノコンポジット層1001に吸着すると、そのセンシング感度が低下し、センシングの応答性や再現性が低下する。そのため、光反射部材1002として、図1B〜図1Dに例示したように、水分を透過させながら、油分、炭化水素などをブロックできる防汚層30を有する光反射部材20を適用することによって、ナノコンポジット層1001の汚染を防止し、LSPRセンサー1000における応答性とセンシングの再現性を維持できる。具体的には、LSPRセンサー1000において、光反射部材1002として、防汚層30が外側に露出するように、図1B〜図1Dの防汚層30を有する光反射部材20を配置することができる。この場合、光反射部材20として、上記のように、使用する波長に合わせて所定の光反射率を有するものを用いることが好ましい。
[複合基板の製造]
複合基板100におけるプラズモン共鳴発生部は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、プラズモン共鳴発生部でもっとも重要なナノコンポジット層10の製造方法について詳しく説明する。ここでは、一例として、固体骨格部1aとして、アルミナ、アルミニウムオキシ水酸化物またはアルミナ水和物を含有するものを用い、かつ、金属微粒子3として、その前駆体となる金属イオンを加熱還元することによって得られるものを用いたものについて説明する。
<ナノコンポジットの製造方法>
ナノコンポジット層10の製造方法は、大別すると、マトリックス1を形成する過程で金属微粒子3を分散する方法(I)と、予め形成したマトリックス1に金属微粒子3を分散する方法(II)とがある。ナノコンポジット層10の製造工程数を少なくできるとともに、高分散性を保持できるという観点から、(I)の方法が好ましい。
(I)の方法は、以下の工程Ia)〜Id)を備える。
Ia)固体骨格部1aを形成するためのアルミナ、アルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有するスラリーを調製する工程、
Ib)前記スラリーと、該スラリーの固形分100重量部に対し、金属元素として(本明細書において、金属化合物中に含まれる金属元素を金属の重量に換算する意味で用いる)0.5〜480重量部の範囲内となるように、金属微粒子3の原料となる金属化合物を混合して塗布液を調製する工程、
Ic)前記塗布液を、基材上に塗布し、乾燥して塗布膜を形成する工程、並びに
Id)前記塗布膜を、加熱処理することにより、前記塗布膜から三次元的な網目構造を有する固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを備えたマトリックス1を形成するとともに、前記金属化合物の金属イオンを加熱還元して金属微粒子3となる粒子状金属を析出させる工程。
(II)の方法は、以下の工程IIa)〜IId)を備える。
IIa)固体骨格部1aを形成するためのアルミナ、アルミニウムオキシ水酸化物又はアルミナ水和物を含有するスラリーを調製する工程、
IIb)前記スラリーを、基材上に塗布し、乾燥した後、加熱処理することにより、三次元的な網目構造を有する固体骨格部1a及び該固体骨格部1aが形成する空隙1bを備えたマトリックス1を形成する工程、
IIc)前記マトリックス1に、前記スラリーの固形分100重量部に対し、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内となるように、金属微粒子3の原料となる金属イオンを含有する溶液を含浸させる工程、並びに
IId)前記工程IIcの後、加熱処理することにより、前記金属イオンを還元して金属微粒子3となる粒子状金属を析出させる工程。
以下、(I)及び(II)の方法における各工程ついて具体的に説明するが、共通する部分は同時に説明する。ここでは、マトリックス1における固体骨格部1aが、アルミニウムオキシ水酸化物(擬ベーマイトを含むベーマイト)又はアルミナにより構成される場合について代表的に例示して説明を行う。
マトリックス1を構成する固体骨格部1aは、アルミニウムオキシ水酸化物(又はアルミナ水和物)を含有する市販のベーマイト粉末又はアルミナ粉末を好適に使用可能であり、例えば、大明化学工業株式会社製のベーマイト(商品名)、CONDEA社製のDisperal HP15(商品名)、ユニオン昭和(株)社製のVERSAL(TM)ALUMINA(商品名)、河合石灰工業株式会社製のセラシュール(商品名)、巴工業株式会社製のCAM9010(商品名)、日産化学株式会社製のアルミナゾル520(商品名)、川研ファインケミカル株式会社製のアルミナゾル−10A(商品名)、スイーコインターナショナル株式会社製のSECO−045U、SECO−045D、SECO−080、SECO−100(商品名)、日本アエロジル株式会社製のAEROXIDE Alu C(商品名)等を使用することが可能である。さらに、アルミナ及びベーマイトとしては、市販の分散液を使用することも可能であり、例えば、ビッグケミージャパン株式会社製のNANOBYK−3600、NANOBYK−3601,NANOBYK−3602、NANOBYK−3630(商品名)、NANOBYK−3630(商品名)等を使用することが可能である。
本発明の一実施の形態で用いるベーマイト粉末は、例えばキュービック状、針状、菱形板状とそれらの中間状、及びリンクルドシート等の粒子形状を有する平均粒子径10nm〜2μmの範囲内のものが好ましく利用でき、これらの微粒子の端面もしくは表面が結合することによって固体骨格部1aを形成し、該固体骨格部1aが三次元的な網目構造を形成することができる。なお、ここでいうベーマイト粉末の平均粒経とは、レーザー回折法により算出した値とする。
ベーマイト粉末を含有するスラリーは、ベーマイト粉末と水又はアルコール等の極性溶媒を混合した後、この混合溶液を酸性に調整したものを使用する。(I)の方法では、このスラリーに金属微粒子3の原料となる金属化合物を添加し、均一に混合することによって塗布液を調製する。
スラリーの調製は、ベーマイト粉末を水又は極性有機溶媒等の溶媒に分散することによって行うが、使用するベーマイト粉末は、溶媒100重量部に対して、好ましくは5〜40重量部の範囲内、より好ましくは10〜25重量部の範囲内になるように調製することがよい。使用する溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、エトキシエタノール、γ−ブトロラクトン、グリセリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することも可能である。混合した溶液は、ベーマイト粉末の分散性を向上させるために、分散処理を行うことが望ましい。分散処理は、例えば室温で5分以上攪拌する方法や、超音波を用いる方法等により行うことができる。その際、公知の分散剤を加えても良い。具体的には、ポリビニルアルコール、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール、シランカップリング剤等が挙げられる。また、市販されている分散剤として、ビッグケミージャパン株式会社製のDISPERBYK−102、DISPERBYK−180、DISPERBYK−2015(商品名)等を使用することができる。
ベーマイト粉末の均一な分散ができるように、必要に応じ、混合液のpHを5以下に調整する。この場合、pH調整剤としては、例えば、蟻酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ピメリン酸、スベリン酸等の有機酸や、塩酸、硝酸、燐酸等の無機酸、及びこれらの塩などを適宜添加してよい。なお、pH調整剤は、単独又は複数を混合して使用してもよい。pH調整剤を添加することにより、ベーマイト粉末の粒子径分布が、pH調整剤を添加しない場合と比較して変化することがあるが、特に問題はない。
(I)の方法では、上記のようにして調製したスラリーに、さらに金属微粒子3の原料となる金属化合物を加えて塗布液とする。この場合、加える金属化合物の量は、スラリーの固形分100重量部に対して、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内となるようにする。なお、調製したスラリーに金属化合物を加えると、塗布液の粘度が高くなることがあるが、その場合は、上記の溶媒を適宜添加することによって最適な粘度に調整することが望ましい。
上記の(I)の方法で用意される塗布液中に含有される金属化合物、又は上記の(II)の方法で用意される金属イオンを含有する溶液中に含有される金属化合物としては、金属微粒子3を構成する上述の金属種を含む化合物を特に制限無く用いることができる。金属化合物としては、前記金属の塩や有機カルボニル錯体などを用いることができる。金属の塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩などを挙げることができる。また、上記金属種と有機カルボニル錯体を形成し得る有機カルボニル化合物としては、例えばアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等のβ−ジケトン類、アセト酢酸エチル等のβ−ケトカルボン酸エステルなどを挙げることができる。
金属化合物の好ましい具体例としては、H[AuCl]、Na[AuCl]、AuI、AuCl、AuCl、AuBr、NH[AuCl]・n2HO、Ag(CHCOO)、AgCl、AgClO、AgCO、AgI、AgSO、AgNO、Ni(CHCOO)、Cu(CHCOO)、CuCl、CuSO、CuBr、Cu(NH)Cl、CuI、Cu(NO)、Cu(CHCOCHCOCH)、CoCl、CoCO、CoSO、Co(NO)、NiSO、NiCO、NiCl、NiBr、Ni(NO)、NiC、Ni(HPO)、Ni(CHCOCHCOCH)、Pd(CHCOO)、PdSO、PdCO、PdCl、PdBr、PdI、Pd(NO)、Pd(CHCOCHCOCH)、HPdCl、PtCl、PtCl、HPtCl、Pt(C、PtBr、PtCl、PtCl4、Pt(NHCl、PtI、SnCl、IrCl、RhClなどを挙げることができる。
調製したスラリーや塗布液には、マトリックス1の強度、透明性、光沢性等を向上する目的で、必要に応じてバインダー成分を配合することも可能である。アルミニウムオキシ水酸化物と組み合わせて用いることのできるバインダー成分として好適なものは、例えばポリビニルアルコールまたはその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、水溶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンまたはその変性体、デンプンまたはその変性体、カゼインまたはその変性体、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリル酸およびその共重合体、ポリアミド酸(ポリイミドの前駆体)、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物、ポリ塩化アルミニウム、アルミニウムトリ−sec−ブトキシドなどのアルミニウム化合物、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムエトキシドなどのチタン化合物などを挙げることができる。これらは、特にアルミニウムオキシ水酸化物の分散性に優れ、好適に使用できる。また、上記のシラン化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物は、形成したマトリックスの個体骨格部の強度を向上させる効果もある。これらのバインダー成分は単独又は複数混合して用いることができる。なお、これらのバインダー成分は、金属化合物の有無に関わらず、適宜配合することができ、配合量は、スラリーの固形分100重量部に対して、好ましくは3〜100重量部の範囲内、より好ましくは4〜20重量部の範囲内がよい。
上記スラリーや塗布液には、バインダーの他に、必要に応じて、増粘剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを本発明の効果を損なわない範囲内で添加することも可能である。
金属化合物を含有する塗布液又は金属化合物を含有しないスラリーを塗布する方法は、特に制限されるものではなく、例えばリップコーター、ナイフコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、スピンコーター、スプレー等によって塗布することができる。
塗布に用いる基材としては、ナノコンポジット層10を基材から剥離してセンサー等に使用する場合や、ナノコンポジット層10に基材を付けた状態で光反射系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合は、特に制限はない。ナノコンポジット層10に基材を付けた状態で光透過系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合は、基材は、光透過性であることが好ましく、例えばガラス基板、透明な合成樹脂製基板等を用いることができる。透明な合成樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。一方、ナノコンポジット10を基材から剥離してセンサー等に使用する場合は、例えば、特に制限はないが、上記の透明な合成樹脂や、ポリエステル、PTFE、植物性繊維、動物性繊維等の有機材料基板、ガラス、アルミナ、金属等の無機基板が挙げられる。また、ナノコンポジット10に基材を付けた状態で光反射系の局在型表面プラズモン共鳴を利用する場合は、上記の材質であって、かつ多孔質(例えば、不織布、織物、メッシュ、メンブランフィルター、粒子の焼結体、発泡シート、非孔質基板にドリル、パンチング、プラズマ等の物理エッチング、化学エッチング等により貫通孔を形成したもの)である光反射部材を用いても良い。
金属化合物を含有する塗布液又は金属化合物を含有しないスラリーを塗布した後は、乾燥させて塗布膜を形成する。乾燥させる方法としては、特に制限されず、例えば、60〜150℃の範囲内の温度条件で1〜60分間の範囲内の時間をかけて行うことがよい。
次に、塗布膜を好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上で加熱処理することにより、マトリックス1を形成する。加熱処理温度が150℃未満では、マトリックス1の三次元的な網目構造の形成が十分に起こらない場合がある。加熱処理温度の上限は、金属微粒子3の分解、溶融などによる金属微粒子3の粒子径及び粒子間距離の制御に影響を与えない範囲で行うことが好ましく、例えば600℃以下とすることができる。
また、金属イオンの還元及び析出した金属微粒子3の分散は、好ましくは150〜600℃の範囲内、より好ましくは170〜550℃の範囲内、更に好ましくは200〜400℃での加熱処理によって行うことができる。ここで、加熱処理温度が150℃未満では、金属イオンの還元が十分に行われず、金属微粒子3の平均粒子径を前述の下限(1nm)以上にすることが困難となる場合がある。また、加熱処理温度が150℃未満では、還元によって析出した金属微粒子3のマトリックス1中での熱拡散が十分に起こらない場合がある。
上記の(I)の方法では、マトリックス1の形成と、金属イオンの還元による金属微粒子3の形成及び分散を一つの加熱工程で同時に行うことができる。上記(II)の方法では、マトリックス1を形成した後、そこに金属イオンを含有する溶液を含浸させ、さらに加熱をすることによって、金属イオンの還元による金属微粒子3の形成及び分散を行う。
上記の(II)の方法で用いる金属イオンを含有する溶液中には、金属元素として1〜20重量%の範囲内で金属イオンを含有することが好ましい。金属イオンの濃度を上記範囲内とすることで、スラリーの固形分100重量部に対して、金属元素として0.5〜480重量部の範囲内とすることができる。
上記の(II)の方法における含浸方法は、形成したマトリックス1の少なくとも表面に金属イオンを含有する溶液が接触することができる方法であれば、特に限定されず、公知の方法を利用することができ、例えば、浸漬法、スプレー法、刷毛塗り又は印刷法等を用いることができる。含浸の温度は0〜100℃、好ましくは20〜40℃付近の常温でよい。また、含浸時間は、浸漬法を適用する場合、例えば5秒以上浸漬することが望ましい。
ここで、加熱還元による金属微粒子3の形成について説明する。金属微粒子3の粒子径D及び粒子間距離Lは、還元工程における加熱温度及び加熱時間並びにマトリックス1に含まれる金属イオンの含有量等によって制御できる。本発明者らは、加熱還元における加熱温度及び加熱時間が一定であって、マトリックス1中に含有する金属イオンの絶対量が異なる場合には、析出する金属微粒子3の粒子径Dが異なるという知見を得ていた。また、加熱温度及び加熱時間の制御なしに加熱還元を行った場合には、粒子間距離Lが隣接する金属微粒子3の大きい方の粒子径Dより小さくなることがあるという知見も得ていた。
また、上記知見を応用し、例えば還元工程における熱処理を複数の工程に分けて実施することもできる。例えば、第1の加熱温度で金属微粒子3を所定の粒子径Dまで成長させる粒子径制御工程と、第1の加熱温度と同じか、又は異なる第2の加熱温度で、金属微粒子3の粒子間距離Lが所定の範囲になるまで保持する粒子間距離制御工程を行うことができる。このようにして、第1及び第2の加熱温度と加熱時間を調節することにより、粒子径D及び粒子間距離Lをさらに精密に制御することができる。
還元方法として加熱還元を採用する理由は、還元の処理条件(特に加熱温度と加熱時間)の制御によって比較的簡便に粒子径D及び粒子間距離Lを制御できることや、ラボスケールから生産スケールに至るまで特に制限なく簡便な設備で対応できること、また枚葉式のみならず連続式にも特段の工夫なくとも対応できることなど、工業的に有利な点が挙げられることにある。加熱還元は、例えば、Ar、Nなどの不活性ガス雰囲気中、1〜5KPaの真空中、又は大気中で行うことができ、水素などの還元性ガスを用いる気相還元も利用することが可能である。
加熱還元では、マトリックス1中に存在する金属イオンを還元し、熱拡散によって個々の金属微粒子3を独立した状態で析出させることができる。このように形成された金属微粒子3は、一定以上の粒子間距離Lを保った状態でしかも形状が略均一であり、マトリックス1中で金属微粒子3が三次元的に偏りなく分散している。特に、本工程で還元した場合、金属微粒子3の形や粒子径Dが均質化され、マトリックス1中に金属微粒子3が略均一な粒子間距離Lで均等に析出、分散したナノコンポジット10を得ることができる。また、マトリックス1を構成する無機酸化物の構造単位を制御することや、金属イオンの絶対量及び金属微粒子3の体積分率を制御することで、金属微粒子3の粒子径Dとマトリックス1中での金属微粒子3の分布状態を制御することもできる。
また、加熱還元の際に、金属イオンとともにポリビニルアルコールを共存させることによって、金属微粒子3の粒子径Dを小さく抑制でき、さらにより均一化できるとともに、塗布膜中の金属イオン量を多くしても、凝集粒子の生成を防ぐことができる。これは、金属イオンの加熱還元の際に、多数の−OH基を有するポリビニルアルコールが電子供与体となり、還元剤として機能して金属イオンの還元を促進する結果、ポリビニルアルコールが存在しない場合に比べ、より多くの金属核が形成され、それぞれが独自に成長して金属微粒子3を形成するためであると考えられる。また、ポリビニルアルコールの効果により、加熱処理の温度が高い場合(例えば450〜600℃の範囲内)であっても、金属イオンの加熱還元時に形成する金属微粒子3を肥大化させることなく、金属微粒子3の分散を進行させることができる。従って、還元剤としてポリビニルアルコールを添加することによって、ナノコンポジット10のLSPRによる吸収スペクトル及び散乱光スペクトルがシャープになり、各種センシング用デバイスに利用する場合に高精度の検出が可能になる。このような機能を発揮させるために、ポリビニルアルコールは、生成する金属微粒子3に近接した状態で存在していることが好ましいと考えられる。従って、ポリビニルアルコールと金属イオンとが十分な混合状態であることがよく、方法(I)の金属化合物を含有する塗布液や、方法(II)の金属イオンを含有する溶液にポリビニルアルコールを添加し、混合状態としておくことが有利である。また、還元処理後、ポリビニルアルコールの熱分解温度以上で加熱を行うことにより、ポリビニルアルコールがガス化し、消失するが、金属化合物を含有する塗布液や金属イオンを含有する溶液にポリビニルアルコールを添加し、十分な混合状態にしておくことで、金属微粒子3に近接してポリビニルアルコールの痕跡である多数の空隙が形成される。これらの空隙によって、金属微粒子3の露出空間が確保されるため、周囲環境の変化に対してLSPRに由来する光学特性が顕著に変化し、センシング特性の効果が向上するものと考えられる。なお、上記ポリビニルアルコールの作用からも明らかなように、本実施の形態において、ポリビニルアルコールは、マトリックス1の固体骨格部1aを補強するバインダーとしての機能は有していない。
ポリビニルアルコールは、工程Id、IIdの加熱処理より前に添加すればよい。方法(I)では、例えば、工程Iaのスラリーを調製する工程、又は工程Ibの塗布液を調製する工程で、ポリビニルアルコールを添加することが好ましい。方法(II)では、工程IIdの加熱還元処理より前にポリビニルアルコールを添加すればよく、例えば、工程IIcの金属イオンを含有する溶液を含浸させる工程における金属イオンを含有する溶液の段階で、ポリビニルアルコールを添加することができる。ポリビニルアルコールは水溶性高分子であるため、例えば水に溶解させることによって、上記スラリーや塗布液中で容易に混ざり合うことができる。なお、ポリビニルアルコールを添加した後、上記スラリーや塗布液を均一に攪拌することが好ましい。
還元剤として使用するポリビニルアルコールの重合度は、例えば、10〜5000の範囲内であることが好ましく、50〜3000の範囲内がより好ましい。また、ポリビニルアルコールの分子量は、例えば、440〜220000の範囲内が好ましく、2200〜132000の範囲内がより好ましい。ポリビニルアルコールの重合度又は分子量が上記下限値よりも小さくなると、加熱によるナノコンポジット製造時に、還元剤として作用するより早くポリビニルアルコールが蒸発してしまう可能性がある。また、ポリビニルアルコールの重合度又は分子量が上記上限値より高くなりすぎると、ポリビニルアルコールの溶解性が著しく低下し、上記スラリーまたは塗布液への添加、混合が困難になる場合がある。
また、ポリビニルアルコールのケン化度は、ケン化によって生成する−OH基が金属イオンの還元に作用することから高いほうが好ましく、例えば30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。
還元反応において、ポリビニルアルコールの1つの−OH基は、2つの電子を供給できることから、金属化合物の配合量に応じて、金属イオンの還元剤として機能させる上で必要なポリビニルアルコールの使用量を概ね決定できる。例えば、塩化金酸4水和物のAuイオンを還元するために必要な電子は3つであり、上記のとおりポリビニルアルコールは−OH基1つあたり2つの電子を供給できるので、計算上、塩化金酸4水和物一つに対し、ポリビニルアルコールの−OH基が3/2個必要となる。このことから、金属化合物に対するポリビニルアルコールの使用量(計算上の重量比)を重量比によって求めることができる。ただし、ポリビニルアルコールの−OH基がすべて還元に使用されるとは限らず、熱分解なども同時に起こると考えられるため、上記計算上の重量比の値に対して過剰量のポリビニルアルコールを添加しておくことが好ましい。一方、ポリビニルアルコールの添加量が上記計算上の重量比の値に比べてあまりにも多すぎる場合には、ナノコンポジット10中にポリビニルアルコールが多量に残存したり、ポリビニルアルコールの分解により発生する余分な排ガスが多くなる等の不都合が生じたりすることが懸念される。以上のことから、ポリビニルアルコールを還元剤として機能させる場合の添加量は、ポリビニルアルコールのケン化度にもよるが、例えばポリビニルアルコールのケン化度を88%とすると、金属化合物1重量部に対し、0.1〜50重量部の範囲内とすることが好ましく、0.15〜20重量部の範囲内とすることがより好ましい。
本実施の形態のナノコンポジットの製造方法は、上記以外に任意の工程を含むことができる。例えば、還元剤としてポリビニルアルコールを添加した場合には、ナノコンポジット10を、ポリビニルアルコールの熱分解開始温度以上の温度で熱処理する工程を含んでもよい。ナノコンポジット10を再度加熱することにより、ナノコンポジット10中に残存するポリビニルアルコールに由来する有機物(以下、「ポリビニルアルコール由来成分」ともいう。)を熱分解させてガス化させて除去することができる。LSPRを利用したセンサー用途へナノコンポジット10を適用する場合、ナノコンポジット10中に残存するポリビニルアルコール由来成分は検出感度を低下させる原因となるため、これを除去することが好ましい。ポリビニルアルコール由来成分の熱分解開始温度は、およそ200℃前後であるため、本工程では、ナノコンポジット10を200℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくはポリビニルアルコール由来成分をほぼ完全に分解できる450℃以上の温度に加熱する。熱処理は、ナノコンポジット10を構成する固体骨格部1aや金属微粒子3に分解、溶融などの影響を与えない温度範囲で行うことが好ましく、熱処理温度の上限は例えば600℃以下とすることができる。ここで、ポリビニルアルコールに由来する有機物とは、還元剤として消費されなかったポリビニルアルコールを含め、例えば、加熱処理時にポリビニルアルコールが酸化される等(例えば、アルコール部分がケトンとなる等)によって、その構造が変化したポリビニルアルコールの変性物又は分解物などをいう。
また、熱処理は、工程Id、工程IIdにおける加熱処理と同時に行うことができる。すなわち、熱処理を加熱処理と同時に一工程で行うことによって、金属化合物の金属イオンを加熱還元して金属微粒子3となる粒子状金属を析出させるとともに、ポリビニルアルコール由来成分を熱分解させてガス化させて除去する。ここでの加熱処理の温度の下限は、好ましくは200℃以上、より好ましくは300℃以上とし、加熱処理の温度の上限は、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下にすることがよい。
以上のようにして、ナノコンポジット層10を製造することができる。なお、マトリックス1として、ベーマイト以外の固体骨格部を用いる場合についても、上記製造方法に準じて製造することができる。
LSPRセンサー200における複合基板100は、例えば以下の二通りの方法で製造することができる。まず、第1の方法は、ナノコンポジット層10を作製する過程で使用する基材の代わりに、光反射部材20(保護層を備えていてもよい)を用いる方法である。例えば、光反射部材20と保護層(必要な場合)とをこの順番で積層した積層体を準備する。そして、例えば光反射部材20の表面に、固体骨格部1aを形成するためのスラリーと金属化合物とを混合してなる塗布液を塗布した後に、あるいは、光反射部材20の表面に、固体骨格部を形成するためのスラリーを塗布し、固体骨格部1aを形成してから金属イオンを含有する溶液を含浸させた後に、それぞれ熱処理することにより、固体骨格部1a及び空隙1bを有するマトリックス1の形成と、金属微粒子3の析出とを行うことができる。このように光反射部材20(保護層を備えていてもよい)を基材として用いることによって、ナノコンポジット層10の製造と並行して複合基板100を作製できる。
LSPRセンサー200における複合基板100を製造する第2の方法は、ナノコンポジット層10と、光反射部材20とをそれぞれ別々に作製した後、ナノコンポジット層10を光反射部材20の表面に重ねて配置し、固定する方法である。この場合、ナノコンポジット層10と光反射部材20は、局在型表面プラズモン共鳴の発生に影響を与えないように、例えばナノコンポジット層10の周縁部において任意の手段(例えば、接着剤による接着、プレスによる接着など)で固定することができる。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。以下の実施例、比較例において特にことわりのない限り、各種測定、評価は下記によるものである。
[金属微粒子の平均粒子径の測定]
金属微粒子の平均粒子径の測定は、試料を砕いてエタノールに分散させたのち、得られた分散液をカーボン支持膜付き金属性メッシュへ滴下して作成した基板を、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子社製、JEM−2000EX)により観測した。また、金属微粒子の平均粒子径は面積平均径とした。
[金属微粒子分散複合体層の空隙率の測定]
金属微粒子分散複合体層の空隙率は、金属微粒子分散複合体層の面積、厚み及び重量より算出した見掛け密度(嵩密度)と、マトリックスの固体骨格部を形成する材料及び金属微粒子の固有の密度および組成比率より算出した空隙を含まない密度(真密度)を用いて、下記式(A)にしたがって空隙率を算出した。
空隙率(%)=(1−嵩密度/真密度)×100 …(A)
[透過吸収スペクトルの測定]
ナノコンポジット試料の透過吸収スペクトルは、瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製、MCPD−3700)を用いて測定した。
[実施例1−1]
<LSPRセンサー>
ナノコンポジット層1001として金属金微粒子分散層(以下、「金属金微粒子分散層1001」と記すことがある)を形成した以外は、図7に記載したものと同様の構成のLSPRセンサーを作成した。すなわち、このLSPRセンサー1000は、金属金微粒子分散層1001と、この金属金微粒子分散層1001の片側に積層された光反射部材1002と、この光反射部材1002とは反対側で金属金微粒子分散層1001に積層された透明ガラス基板1003と、を有する複合基板1004を備えている。また、LSPRセンサー1000は、複合基板1004の積層方向に対して角度を変化させて光線を照射できる光源1005と、この光源1005から複合基板1004へ向けて照射された光線の反射光を検出する光検出器1006と、を備えている。
<ナノコンポジットの作製(1)>
18gのベーマイト粉末(大明化学工業社製、商品名;C−01、平均一次粒子径;20nm、平均二次粒子径;0.1μm、粒子形状;キュービック状)に、78.72gの水と3.28gの酢酸を加え、機械撹拌(回転数400rpm、3時間)を行い、18wt%のベーマイト分散液1を調製した。次に、4.5gの18wt%ベーマイト分散液1に対して、3.567gのエタノール、2.531gのポリビニルアルコール(平均分子量22000、重合度500、ケン化度88%)の20wt%水溶液、0.081gの3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び0.081gの塩化金酸・四水和物を加え、金錯体含有スラリーを調製した。なお、前記金錯体含有スラリーの調製に際しては、各試薬をそれぞれ加えるたびに、撹拌子による撹拌(回転数1000rpm、5分間)を行った。
次に、透明ガラス基板1003(厚み0.7mm)に、前記金錯体含有スラリーをスピンコーター(ミカサ株式会社製、商品名;SPINCOATER 1H−DX2)を用いて塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間および500℃、1時間加熱処理することによって、赤色に呈色した金属金微粒子分散層1001(厚さ1.52μm)を形成した。金属金微粒子分散層1001中に形成した金属金微粒子は、該金属金微粒子分散層1001の表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立し、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以上の間隔で分散していた。この金属金微粒子分散層1001の特徴は、次のとおりであった。
1)金属金微粒子分散層1001の空隙率;60.1%
2)金属金微粒子の形状;ほぼ球状、平均粒子径;24.9nm、最小粒子径;12.5nm、最大粒子径;40.3nm、粒子径1nm〜100nmの範囲内にある粒子の割合;100%
3)金属金微粒子分散層1001に対する金属金微粒子の体積分率;1.8%、同重量分率;22.6wt%
また、金属金微粒子分散層1001の金属金微粒子によるLSPRの空気中における透過吸収スペクトルは、ピークトップが521nm、波長590nmにおける吸光度が0.224の吸収ピークが観測され、水中における吸収スペクトルは、ピークトップが536nm、波長590nmにおける吸光度が0.587の吸収ピークが観測された。観測された吸収ピークの単位屈折率変化に対するピーク波長変化量及び波長590nmにおける吸光度変化量は、それぞれ46.5nm及び1.15であった。
<光反射部材の積層>
上記の金属金微粒子分散層1001の上に、光反射部材1002(ポリエステル製の不織布、空隙率82%、厚み110μm、波長590nmにおける反射率68%)を積層し、複合基板1004を形成した。
<湿度応答性評価>
図7のLSPRセンサー1000の構成において、光源1005としてハロゲンランプの可視光光源、光検出器1006として瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製、MCPD−3700)、および投光受光同軸のY型光ファイバーを用いて、複合基板1004の透明ガラス基板1003面側から垂直方向で光を入射し、反射光を検出することにより反射率の測定を行った。反射率は、金属金微粒子分散層1001の無い透明ガラス基板1003と光反射部材1002のみの積層体をリファレンスに用い、相対反射率を測定した。検体としては、温度30℃において相対湿度を10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%と段階的に可変制御した空気を用い、複合基板1004周辺の相対湿度を変化させた。
複合基板1004の波長590nmにおける反射率の測定値は、温度30℃、相対湿度10%において60.4%、および温度30℃、相対湿度90%において52.2%となり、反射率変化量は8.2%であった。実施例1−1で測定した、相対湿度の段階的変化に対する複合基板1004の波長590nmにおける反射率の経時的変化を図8に示した。
[実施例1−2]
図7のLSPRセンサー1000の構成において、複合基板1004の透明ガラス基板1003面側から、複合基板1004の積層方向に対し、45度傾いた角度で光を入射し、反射光を検出することにより反射率の測定を行ったこと以外は、実施例1−1と同様にして、湿度応答性評価を行った。
評価の結果、複合基板1004の波長590nmにおける反射率の測定値は、温度30℃、相対湿度10%において50.3%、および温度30℃、相対湿度90%において39.7%となり、反射率変化量は10.6%であった。
[実施例1−3]
図7のLSPRセンサー1000の構成において、光源1005として集光レンズを付帯した中心波長590nmのLED、および光検出器1006として集光レンズを付帯したフォトダイオードを用いて、複合基板1004の透明ガラス基板1003面側から、垂直方向に光を入射し、複合基板1004の積層方向に対し、30度傾いた角度で反射光を検出することにより、反射光の強度としてフォトダイオードからの出力電圧を測定したこと以外は、実施例1−1と同様にして、湿度応答性評価を行った。
評価の結果、複合基板1004による反射光の強度として測定したフォトダイオードからの出力電圧は、温度30℃、相対湿度10%において2.55V、および温度30℃、相対湿度90%において2.08Vとなり、電圧変化量は0.47Vであった。実施例1−3で測定した、相対湿度の段階的変化に対するフォトダイオードからの出力電圧の経時的変化を図9に示した。
[実施例1−4]
光反射部材1002として、ガラス繊維ろ紙(空隙率80%、厚み約0.7mm、波長590nmにおける反射率79%)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、複合基板1004を作製し、湿度応答性評価を行った。
評価の結果、複合基板1004の波長590nmにおける反射率の測定値は、温度30℃、相対湿度10%において62.6%、および温度30℃、相対湿度90%において50.4%となり、反射率変化量は12.2%であった。
[実施例1−5]
光反射部材1002として、PTFE製メンブランフィルター(孔径0.2μm、空隙率85%、厚み68μm、波長590nmにおける反射率62%)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、複合基板1004を作製し、湿度応答性評価を行った。
評価の結果、複合基板1004の波長590nmにおける反射率の測定値は、温度30℃、相対湿度10%において59.8%、および温度30℃、相対湿度90%において51.9%となり、反射率変化量は7.9%であった。
[実施例1−6]
光反射部材1002として、ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、複合基板1004を作製し、湿度応答性評価を行った。
評価の結果、複合基板1004の波長590nmにおける反射率の測定値は、温度30℃、相対湿度10%において76.2%、および温度30℃、相対湿度90%において60.2%となり、反射率変化量は16.0%であった。
[比較例1−1]
光反射部材1002として、非孔質のアルミ蒸着ガラス基板(アルミ蒸着厚み200nm、ガラス基板厚み0.7mm、波長590nmにおける反射率95%)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、複合基板を作製し、湿度応答性評価を行った。
評価の結果、複合基板の波長590nmにおける反射率の測定値は、温度30℃、相対湿度10%において65.0%、および温度30℃、相対湿度90%において64.7%となり、反射率変化量は0.3%であった。
[比較例1−2]
光反射部材1002として、非孔質の白色アルミナ基板(アルミナ基板厚み1.0mm、波長590nmにおける反射率92%)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして、複合基板を作製し、湿度応答性評価を行った。
評価の結果、複合基板の波長590nmにおける反射率の測定値は、温度30℃、相対湿度10%において62.1%、および温度30℃、相対湿度90%において61.7%となり、反射率変化量は0.4%であった。
[実施例2−1]
<防汚層付光反射部材の作製>
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリスチレン(平均分子量38万、東洋スチレン社製)を5wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E1を作成した。
<防汚層付光反射部材積層複合基板の作製>
防汚層付光反射部材E1を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E1を形成した。
<湿度応答性評価>
光源としてハロゲンランプの可視光光源、光検出器として瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製、MCPD−3700)、および投光受光同軸のY型光ファイバーを用いて、防汚層付光反射部材積層複合基板E1の透明ガラス基板1003面側から垂直方向で光を入射し、反射光を検出することにより反射率の測定を行った。反射率は、金属金微粒子分散層1001の無い透明ガラス基板1003と光反射部材1002のみの積層体をリファレンスに用い、波長580nmにおける相対反射率を測定した。検体としては、温度30℃において相対湿度を10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%と段階的に可変制御した空気を用い、防汚層付光反射部材積層複合基板E1周辺の相対湿度を変化させた。湿度環境は、設定条件に達してから10分ホールドした。
図10は、応答速度の評価方法を説明する図面であり、反射率と相対湿度の時間変化のモデルを示している。湿度変化に対する応答速度は、市販の湿度センサー(HP23、ロトロニック社製)で測定した結果の10%RHから20%RHに変化するまでの時間(変化時間;2分)を基準にし、その値と比較することにより判断した(図10参照)。測定結果は、1点/1分の条件でデータをロギングした。そして、応答性の評価は、変化時間が4分以内であるものを可(△)とし、好ましくは3分以内(○)、より好ましくは2分以内(◎)と判定した。変化時間が4分を超えるものは、不可(×)と判定した。
また、再現性の確認は、10%RHでの値の変動率で判断した。図11は、再現性の評価方法を説明する図面であり、反射率の測定を複数回繰り返した場合の変動モデルを示している。変動率は、図11に示すように、1回目と3回目の測定における波長590nmにおける反射率のベースラインの変化量Aと、3回目の測定におけるピーク高さBとから、下式に従い算出した。
変動率(%)=(A/B)×100
そして、再現性の評価は、変動率が±5%以内であるものを可(△)とし、好ましくは±2%以内(○)、より好ましくは±1%以内(◎)と判定した。変動率が±5%を超えるものは不可(×)と判定した。
また、総合評価では、応答性の評価結果にかかわらず、再現性の評価結果が○及び◎であるものを「可」とし、再現性の評価結果が△及び×である場合は「不可」と評価した。
上記湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E1を評価した結果、湿度変化に対する応答時間は2分であり、応答性は◎と判断した。また、再現性評価結果は、変動率1.0%であり、再現性は◎と判断した。総合評価は「可」であった。
[実施例2−2]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリスチレン(平均分子量38万、東洋スチレン社製)を1wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を20μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E2を作成した。
防汚層付光反射部材E2を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E2を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E2を評価した。
[実施例2−3]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリスチレン(平均分子量38万、東洋スチレン社製)を1wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E3を作成した。
防汚層付光反射部材E3を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E3を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E3を評価した。
[実施例2−4]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリスチレン(平均分子量38万、東洋スチレン社製)を1wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を50μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E4を作成した。
防汚層付光反射部材E4を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E4を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E4を評価した。
[実施例2−5]
防汚層付光反射部材E3を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚重ねて積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E5を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E5を評価した。
[実施例2−6]
防汚層付光反射部材E1とE3を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に重ねて積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E6を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E6を評価した。
[実施例2−7]
防汚層付光反射部材E1を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚重ねて積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E7を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E7を評価した。
[比較例2−1]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、フッ素系コーティング剤(FS1010TH−0.5、フロロテクノロジー社製)を40μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材C1を作成した。
防汚層付光反射部材C1を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板C1を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板C1を評価した。
[比較例2−2]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、フッ素系コーティング剤(FG5080F130−0.1、フロロテクノロジー社製)を40μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材C2を作成した。
防汚層付光反射部材C2を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板C2を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板C2を評価した。
[比較例2−3]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、シリコンコーティング剤(KR251、信越化学工業社製)を5wt%の濃度に希釈したトルエン溶液40μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材C3を作成した。
防汚層付光反射部材C3を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板C3を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板C3を評価した。
[比較例2−4]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、コーティング剤(TN−7000、ジェイ・エス・ピー社製)を5wt%の濃度で溶解したイソプロピルアルコール(IPA)溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材C4を作成した。
防汚層付光反射部材C4を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板C4を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板C4を評価した。
[比較例2−5]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、1.3wt%のPEDOT/PSS(シグマアルドリッチ社製)を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材C5を作成した。
防汚層付光反射部材C5を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板C5を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板C5を評価した。
[比較例2−6]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、シリコンコーティング剤(X12−2226、信越化学工業社製)を30μl塗布した後、100℃、3分乾燥することで防汚層付光反射部材C6を作成した。
防汚層付光反射部材C6を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板C6を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板C6を評価した。
[比較例2−7]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、高塩基性塩化アルミニウム(アルファイン83、大明化学社製)を30μl塗布した後、100℃、3分乾燥することで防汚層付光反射部材C7を作成した。
防汚層付光反射部材C7を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板C7を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板C7を評価した。
[実施例2−8]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリビニルアルコール500(関東化学社製)を5wt%の濃度で溶解した水溶液を60μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E8を作成した。
防汚層付光反射部材E8を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E8を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E8を評価した。
[実施例2−9]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリビニルアルコール500(関東化学社製)を5wt%の濃度で溶解した水溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E9を作成した。
防汚層付光反射部材E9を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E9を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E9を評価した。
[実施例2−10]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学工業社製)を5wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を20μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E10を作成した。
防汚層付光反射部材E10を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E10を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E10を評価した。
[実施例2−11]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、PMMA(平均分子量Mw12万、シグマアルドリッチ社製)を5wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を20μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E11を作成した。
防汚層付光反射部材E11を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E11を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E11を評価した。
[実施例2−12]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリビニルアセテート(平均分子量Mw5万、Alfa Aesar社製)を5wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を20μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E12を作成した。
防汚層付光反射部材E12を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E12を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E12を評価した。
[実施例2−13]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリビニルアセテート(平均分子量Mw5万、Alfa Aesar社製)を1wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E13を作成した。
防汚層付光反射部材E13を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E13を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E13を評価した。
[実施例2−14]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学工業社製)を0.2wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E14を作成した。
防汚層付光反射部材E14を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E14を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E14を評価した。
[実施例2−15]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学工業社製)を1.0wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E15を作成した。
防汚層付光反射部材E15を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E15を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E15を評価した。
[比較例2−8]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、シリコンコーティング剤(KR251、信越化学工業社製)を1.0wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材C8を作成した。
防汚層付光反射部材C8を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板C8を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板C8を評価した。
[比較例2−9]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリカーボネート(A1700、出光興産社製)を1.0wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材C9を作成した。
防汚層付光反射部材C9を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板C9を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板C9を評価した。
[実施例2−16]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、耐熱性ポリスチレン(平均分子量22万、東洋スチレン社製)を1.0wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E16を作成した。
防汚層付光反射部材E16を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E16を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E16を評価した。
[実施例2−17]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、PMMA(平均分子量Mw12万、シグマアルドリッチ社製)を1.0wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E17を作成した。
防汚層付光反射部材E17を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E17を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E17を評価した。
[実施例2−18]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリスチレン(平均分子量38万、東洋スチレン社製)を1.0wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を30μl塗布した後、乾燥した後、フッ素系コーティング剤(FS1010TH−0.5、フロロサーフ社製)を40μl塗布し乾燥することで防汚層付光反射部材E18を作成した。
防汚層付光反射部材E18を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に1枚積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E18を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E18を評価した。
[比較例2−10]
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、常温安定ガラス(モクテックカメムラ社製)を30μl塗布した後、100℃、3分乾燥することで防汚層付光反射部材C10を作成した。
防汚層付光反射部材C10と未処理のポーラスアルミナメンブランフィルターを実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板C10を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板C10を評価した。
[比較例2−11]
無処理のポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に積層し、比較用積層複合基板1を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、比較用積層複合基板1を評価した。
[比較例2−12]
無処理のポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)を実施例1−1で作製した金属金微粒子分散層1001の上に2枚重ねて積層し、比較用積層複合基板2を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、比較用積層複合基板2を評価した。
<ナノコンポジットの作製(2)>
36gのベーマイト粉末(大明化学工業社製、商品名;C−01、平均一次粒子径;20nm、平均二次粒子径;0.1μm、粒子形状;キュービック状)に、80gの水、3.36gの酢酸、112.5gのポリビニルアルコール(平均分子量22000、重合度500、ケン化度88%)の20wt%水溶液を加え、機械撹拌(回転数400rpm、3時間)を行い、16wt%のベーマイト分散液2を調製した。次に、3.3gの16wt%ベーマイト分散液2に対して、2.43gの1−プロパノール及び0.81gの塩化金酸・四水和物を加え、金錯体含有スラリーを調製した。なお、前記金錯体含有スラリーの調製に際しては、各試薬をそれぞれ加えるたびに、撹拌子による撹拌(回転数1000rpm、5分間)を行った。
次に、透明ガラス基板1003(厚み0.7mm)に、前記金錯体含有スラリーをスピンコーター(ミカサ株式会社製、商品名;SPINCOATER 1H−DX2)を用いて塗布した後、70℃で3分間及び130℃で10分間乾燥し、さらに280℃、10分間および500℃、1時間加熱処理することによって、赤色に呈色した金属金微粒子分散層1001(厚さ0.80μm)を形成した。金属金微粒子分散層1001中に形成した金属金微粒子は、該金属金微粒子分散層1001の表層部から厚さ方向に至るまでの領域内で、各々が完全に独立し、隣り合う金属金微粒子における大きい方の粒子径以上の間隔で分散していた。この金属金微粒子分散層1001の特徴は、次のとおりであった。
1)金属金微粒子分散層1001の空隙率;60%。
2)金属金微粒子の形状;ほぼ球状、平均粒子径;22.0nm、最小粒子径;8.0nm、最大粒子径;45.8nm、粒子径1nm〜100nmの範囲内にある粒子の割合;100%。
3)金属金微粒子分散層1001に対する金属金微粒子の体積分率;4.44%、同重量分率;43.15wt%。
また、金属金微粒子分散層1001の金属金微粒子によるLSPRの空気中における透過吸収スペクトルは、ピークトップが523nm、波長590nmにおける吸光度が0.330の吸収ピークが観測され、水中における吸収スペクトルは、ピークトップが535nm、波長590nmにおける吸光度が0.717の吸収ピークが観測された。観測された吸収ピークの単位屈折率変化に対するピーク波長変化量及び波長590nmにおける吸光度変化量は、それぞれ41.1nm及び1.43であった。
[実施例2−19]
<防汚層付光反射部材の作製>
ポーラスアルミナメンブランフィルター(孔径0.02μm、空隙率25%、厚み67μm、波長590nmにおける反射率58%、13mmφ、ワットマン社製)の表面に、ポリスチレン(平均分子量38万、東洋スチレン社製)を1wt%の濃度で溶解したトルエン溶液を30μl塗布した後、乾燥することで防汚層付光反射部材E19Aを作製した。
防汚層付光反射部材E19Aをさらに大気中125℃で1時間加熱することで防汚層付光反射部材E19Bを作製した。
<防汚層付光反射部材積層複合基板の作製>
防汚層付光反射部材E19Bを金属金微粒子分散層1001の上に積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E19を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E19を評価した。防汚層付光反射部材積層複合基板E19は、変動率が0に近く、再現性が極めて良好であった。
[実施例2−20]
防汚層付光反射部材E19Bを金属金微粒子分散層1001の上に2枚重ねて積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E20を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E20を評価した。防汚層付光反射部材積層複合基板E20は、変動率が0に近く、再現性が極めて良好であった。
[実施例2−21]
防汚層付光反射部材E19Aを金属金微粒子分散層1001の上に1枚重ねて積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E21を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E21を評価した。
[実施例2−22]
防汚層付光反射部材E19Aを金属金微粒子分散層1001の上に2枚重ねて積層し、防汚層付光反射部材積層複合基板E22を形成した。そして、湿度応答性評価方法に従い、防汚層付光反射部材積層複合基板E22を評価した。
以上の実施例、比較例の結果を、表1〜9にまとめて示した。
Figure 2015199334
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以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。
1…マトリックス、1a…固体骨格部、1b…空隙、3…金属微粒子、10…ナノコンポジット層、100…複合基板

Claims (21)

  1. 金属微粒子分散複合体層と、
    前記金属微粒子分散複合体層に積層された多孔質の光反射部材と、
    を備え、
    前記金属微粒子分散複合体層が、固体骨格部及び該固体骨格部が形成する空隙を有するマトリックスと、該固体骨格部に固定された金属微粒子と、
    を有するものである複合基板。
  2. 前記固体骨格部が金属酸化物または金属水酸化物を含有し、三次元的な網目構造を形成している請求項1に記載の複合基板。
  3. 前記固体骨格部がアルミナ、アルミニウムオキシ水酸化物またはアルミナ水和物を含有する請求項2に記載の複合基板。
  4. 前記金属微粒子が、前記マトリックスの空隙に露出した部位を備えており、マトリックス中で三次元的に分散した状態で存在している請求項1に記載の複合基板。
  5. 前記金属微粒子が、平均粒子径が1nm〜100nmの範囲内にあり、かつ粒子径が1nm〜100nmの範囲内にある金属微粒子の割合が50%以上である請求項1に記載の複合基板。
  6. 前記光反射部材の590nmにおける光反射率が、大気中で10%以上である請求項1に記載の複合基板。
  7. 前記光反射部材を構成する多孔質体の空隙率(%)を膜厚(μm)で割った値が0.025(%/μm)以上である請求項1に記載の複合基板。
  8. 前記光反射部材が、水分を透過させ、油分又は炭化水素を透過させない防汚層を有している請求項1に記載の複合基板。
  9. 前記金属微粒子が、AuまたはAgの金属微粒子である請求項1に記載の複合基板。
  10. 前記金属微粒子分散複合体層に、さらに透明基板が積層されている請求項1に記載の複合基板。
  11. 前記金属微粒子が、380nm以上の波長の光との相互作用によって局在型表面プラズモン共鳴を生じる請求項1に記載の複合基板。
  12. 請求項1から11のいずれか1項に記載の複合基板を備えた光学式センサー。
  13. 請求項1から11のいずれか1項に記載の複合基板と、
    前記複合基板へ向けて光を照射する光源と、
    前記複合基板における金属微粒子による局在型表面プラズモン共鳴の散乱光又は前記光反射部材からの反射光を受光する受光部と、
    前記散乱光もしくは前記反射光のスペクトルを測定する分光装置または光強度を測定する光検出器とを備えた局在型表面プラズモン共鳴センサー。
  14. 更に、前記散乱光又は前記反射光を集光する手段を備えた請求項13に記載の局在型表面プラズモン共鳴センサー。
  15. 更に、照射光を集光する手段を備えた請求項13又は14に記載の局在型表面プラズモン共鳴センサー。
  16. 前記光源からの照射光を前記複合基板の積層方向に対して斜めに入射させる請求項15に記載の局在型表面プラズモン共鳴センサー。
  17. 光の照射及び前記スペクトルの測定が、前記透明基板を介したものである請求項13から16のいずれか1項に記載の局在型表面プラズモン共鳴センサー。
  18. 請求項13から17のいずれか1項に記載の局在型表面プラズモン共鳴センサーにおける前記金属微粒子分散複合体層を大気中又はガス中に暴露して使用する局在型表面プラズモン共鳴センサーの使用方法。
  19. 請求項13から17のいずれか1項に記載の局在型表面プラズモン共鳴センサーにおける前記金属微粒子分散複合体層を液体中に暴露して使用する局在型表面プラズモン共鳴センサーの使用方法。
  20. 請求項13から17のいずれか1項に記載の局在型表面プラズモン共鳴センサーを用い、局在型表面プラズモン共鳴による前記スペクトルの変化、前記スペクトル強度の変化又は前記光強度の変化をもとに無機物質又は有機物質を検出する検知方法。
  21. 請求項1から11のいずれか1項に記載された複合基板の製造方法であって、
    以下の工程Ia〜Id;
    Ia)前記固体骨格部を形成するための原料スラリーを調製する工程、
    Ib)前記原料スラリーと前記金属微粒子の原料となる金属化合物を混合して塗布液を調整する工程、
    Ic)前記塗布液を、前記透明基板上に塗布し、乾燥して塗布膜を形成する工程、
    Id)前記塗布膜を、加熱処理することにより、前記光反射部材上に前記金属微粒子分散複合体層を形成する工程、
    を備えている複合基板の製造方法。
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