JP4958088B2 - 酸化セリウム厚膜を用いたガスセンサ素子及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、酸化セリウム厚膜を用いたガスセンサ素子、その製造方法及びガスセンサに関するものであり、更に詳しくは、酸素、一酸化炭素、炭化水素又は揮発性有機化合物の濃度を検出することが可能なガスセンサ素子であり、高温で使用可能で、高速応答性を有し、高性能で、高温耐久性があり、高感度な特性を有するガスセンサ素子、その製造方法及びガスセンサに関するものである。
本発明は、従来のガスセンサにおける問題点である、応答速度が十分でない、感度が十分でない、高温(300℃)以上での使用が不可能である、及び作製コストが大きくなる、等の課題を、確実に解決することが可能な、新しい高性能の酸化セリウム厚膜を用いたガスセンサ素子及びガスセンサを提供するものである。
大気中の一酸化炭素は、例えば、CO濃度が1.28%であれば、約1分から3分で人は死亡すると云われている。このため、応答速度に優れたCOセンサの開発が強く必要とされている。例えば、消防などの救急隊員は、人が倒れているという通報を受けて救助に向かう場合、必ずしもCOを分析する装置を常に携行している訳ではない。
この場合、現場に高濃度の一酸化炭素が充満していると、救急隊員も中毒になる危険性がある。このとき、隊員がCOセンサを携行していて、警報を発報することができれば、安全に業務を遂行することができる。ただし、COセンサの応答速度が遅いと、COに曝される時間が長くなり、中毒になる可能性があるので、応答速度が速いCOセンサが必要である。
また、例えば、ガス給湯器の燃焼制御を行うために、COセンサを用いる場合、センサの応答速度が遅いと、精密な制御を行うことができないため、応答速度の速いCOセンサが必要である。これらの事例に見るように、COセンサとしては、一般的に、高速応答性のものが必要とされている。しかし、一般に、市場に出ている定電位電解方式の可燃性ガスセンサでは、応答時間は、30秒程度かかるため、応答速度が十分とは云い難い。
最近、酸化セリウムを使ったCOセンサに関する技術が報告されている(非特許文献1、特許文献1)。これらの文献には、粒径がナノサイズの多孔質な酸化セリウム厚膜を用いたCOセンサでは、応答速度が速いことが示されている。該文献には、例えば、5000ppmのCOに対して、数秒で応答することが示されている。
このように、酸化セリウムを使うことにより、高速に応答するCOセンサが得られる。ところが、この酸化セリウム厚膜を用いたCOセンサでは、感度が優れているとは云えず、感度向上が必要であった。それは、例えば、COセンサを警報器に用いる場合は、50ppmの濃度を検出する必要があるためである。
センサの感度を向上させる一般的な手段として、先行文献(非特許文献2)に、高次構造を有するガスセンサが開示されている。一般に、図1に示されるような、一次粒子が球状に集合した均一の二次粒子で構成した高次構造を有するセンサであれば、感度が向上することが理論的に示されている。ところが、酸化セリウムでは、これまで、図1に示されるような、高次構造を有するガスセンサは得られていなかった。それは、一次粒子が細かい(ナノ)サイズの粒子を原料とした場合、このような構造を創るのは不可能であるか、できたとしても、非常に高価なプロセスが必要となるためである。
一方、酸化セリウムに関しては、これまで、酸化セリウムのナノ粒子の合成について、幾つか報告されている(非特許文献3−5、特許文献2)。しかし、液中での分散性に関する記述、及び微粒子の粒径のばらつきに関する記述は、見当たらない。すなわち、粒径は30〜200nm程度、粒径分布(粒径の標準偏差)が小さく、球状で、液中での分散性が良好である酸化セリウム微粒子又は酸化セリウム微粒子分散液に関する報告は見当たらない。
酸化セリウム微粒子の分散液を作製する場合、通常の方法により、単に乾燥した酸化セリウム微粒子を分散媒に分散させるだけでは、安定した分散液を得ることができない。これは、安定した分散液を得るためには、一度、凝集した酸化セリウム微粒子の凝集を解く必要があるためである。ナノ粒子の合成方法が、気相プロセス、液相プロセスいずれの場合であっても、ナノ粒子が生成した後、凝集を抑制しない限り、一般に、強固に凝集してしまう。一度、ナノ粒子が強固に凝集すると、凝集を解くための処理を行っても、凝集を解くことは、一般に困難である。
先行文献には、セラミックビーズを使って、機械的に凝集を解く技術が開示されているが(特許文献3)、この場合、問題点として、不純物の混入が考えられる。また、溶媒に、分散剤を添加する必要が有る。以上のことから、凝集を解く方法が、機械的な手法でなく、また、分散剤の添加を必要としないで、分散しやすい、すなわち、凝集しにくい酸化セリウム微粒子を合成する必要がある。
ナノ粒子が一度凝集してしまうと、乖離が困難なことから、凝集する前、すなわちナノ粒子の生成と同時に、凝集を抑制する処理を施せば、分散しやすい酸化セリウム微粒子が得られるはずである。このとき、高分子が溶解した分散媒を反応場として使用すれば、酸化セリウム微粒子生成と同時に、凝集を抑制でき、それにより、安定な酸化セリウム微粒子分散液を得られる。また、酸化セリウム微粒子分散液を乾燥させたとしても、凝集抑制処理を行っているため、それを、再度、分散媒に再分散させれば、容易に分散することが予想される。
酸化セリウムに関する報告ではないが、このようなコンセプトを、ゾルゲル法、あるいは加水分解法に適用した例が報告されている(非特許文献6−9、特許文献4)。しかしながら、これまで、このようなコンセプトを、酸化セリウム微粒子を析出させる還流法に適用した事例は見当たらない。
また、先行文献には、それぞれ、金属酸化物超微粒子とその製造方法、及び金属酸化物微粒子が開示されている(特許文献5、6)が、上記先行文献には、例えば、粒径は30〜200nm程度、金属酸化物の粒径分布(粒径の標準偏差)が小さく、1から3nm程度の金属酸化物の一次粒子が集合した球状二次粒子であり、液中での分散性が良好であるコアシェル型の酸化セリウム微粒子又はコアシェル型酸化セリウム微粒子の分散液に関する記述は何もない。
特開2007−17426号公報 特開2002−255515号公報 特開2004−35632号公報 特開平2−92810号公報 特開平6−218276号公報 特開2006−8629号公報 Noriya Izu,Toshio Itoh,Woosuck Shin,Ichiro Matsubara,and Norimitsu Murayama,Electrochemical and Solid−State Letters,10(2007)J37−J40 D.D.Vunong,G.Sakai,K.Shimanoe,N.Yamazoe,Sens.Actuators B 105(2005)437.K Shimanoe,N.Yamazoe,Proceedings of The 4th AIST International Workshop on Chemical Sensors,Nagoya,Japan,Nov.30,2006,pp.43 N.Uekawa,M.Ueta,Y.J.Wu,K.Kakegawa,J.Mater.Res.,19(2004)1087 X.Chu,W.Chung,L.D.Scmidt,J.Am.Ceram.Soc.,76(1993)2115 W.P.Hsu,L.Ronnquist,E.Matijevic,Langmuir,4(1988)31 H.Yang,C.Huang,X.Su,Materials Letters,60(2006)3714 Z.T.Zhang,B.Zhao,L.M.Hu,J.Solid State Chem.,121(1996)105 D.L.Tao,F.Wei,Mater.Lett.58(2004)3226 G.C.Xi,Y.Y.Peng,L.Q.Xu,M.Zhang,W.C.Yu,Y.T.Qian Inorg.Chem.Commun.7(2004)607
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、高次構造を有する酸化セリウムを用いたガスセンサを開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、原料となる酸化セリウム微粒子として、本発明者らが開発したコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を用いることにより、簡便に、高次構造を有するガスセンサを作製できることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
本発明は、高次構造を有する酸化セリウムを用いたガスセンサを提供することを目的とするものである。更に、本発明は、高速に応答する特性を有し、かつ感度を向上させた高次構造を有するガスセンサ素子、その製造方法及びガスセンサを提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)酸化セリウムの一次粒子が球状に凝集して集合した二次粒子からなるコア部分と、該二次粒子の表面に位置する有機高分子物質の層からなるシェル部分とで構成されるコアシェル型構造を有するコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子からなる膜状の前駆体を、熱処理して得られる、前記コア部分の酸化セリウム二次粒子同士が粒成長することなく存在し、粒子は球状で、該球状の粒子は機械的接触だけでなく、それぞれの粒子の接触点でネックが存在し、シェル部分の有機高分子物質が存在しない構造を有する酸化セリウム多孔質厚膜を、センサ素子として有することを特徴とする酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子。
(2)前記コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子が、1)そのコア部分は、酸化セリウムの一次粒子が球状に集合した二次粒子であり、2)その二次粒子の形状は、揃っており、3)その二次粒子表面に、シェル部分となる有機高分子物質の層が存在し、4)該ハイブリッド微粒子の粒径の平均が、30nmから200nmであり、5)該ハイブリッド微粒子の粒径の変動係数が、大きくても0.25である、前記(1)に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子。
(3)前記高分子物質の層が、1)ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、又はポリエチレングリコール(PEG)で構成され、2)その層が、洗浄しても、コア部分の二次粒子から分離することがなく、3)その層が、15wt%から25wt%の割合で存在している、前記(2)に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子。
(4)一次粒子の径が、1から3nmである、前記(2)に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子。
(5)前記酸化セリウム多孔質厚膜が、金微粒子を含有する、前記(2)に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子。
(6)前記(1)から(5)のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子を製造する方法であって、膜形成用の酸化セリウム微粒子、及び有機溶媒に可溶性の有機高分子物質を含有するペーストを作る工程と、それを膜状に形成する工程と、形成された膜を熱処理する工程を含み、前記酸化セリウム微粒子として、酸化セリウムの一次粒子が球状に凝集して集合した二次粒子からなるコア部分と、該二次粒子の表面に位置する有機高分子物質の層からなるシェル部分とで構成されるコアシェル型構造を有するコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を用いることを特徴とする酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
(7)セリウムの塩と前記高分子物質を高沸点有機溶媒に混合して混合物を得る工程と、その混合物を、110℃から200℃の温度で、加熱・還流することにより、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を析出する工程により製造される、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を用いる、前記(6)に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
(8)前記コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子が、1)そのコア部分は、酸化セリウムの一次粒子が球状に集合した二次粒子であり、2)その二次粒子の形状は、揃っており、3)その二次粒子表面に、シェル部分となる有機高分子物質の層が存在し、4)該ハイブリッド微粒子の粒径の平均が、30nmから200nmであり、5)該ハイブリッド微粒子の粒径の変動係数が、大きくても0.25である、前記(6)又は(7)に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
(9)前記セリウムの塩が、硝酸セリウム六水和物である、前記(7)に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
(10)前記高分子物質の分子量の大きさによって、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の粒径を制御する、前記(6)から(8)のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
(11)前記高分子物質の濃度である単位有機溶媒体積当たりに添加した高分子重量が、80kg/mから120kg/mである、前記(6)から(8)のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
(12)前記高分子物質のポリエチレングリコール換算での平均分子量が、4000から20000である、前記(6)から(8)のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
(13)前記高分子物質が、PVP、HPC、又はPEGである、前記(6)から(8)のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
(14)前記有機溶媒が、エチレングリコールである、前記(6)から(8)のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
(15)前記(1)から(5)のいずれか1項に記載のガスセンサ素子をガス検知手段として含むことを特徴とする可燃性ガス応答性を有するガスセンサ。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子からなる前駆体を、熱処理して得られる酸化セリウム多孔質厚膜を、センサ素子として有するガスセンサ素子及びその製造方法の点に特徴を有するものである。図2に、本発明のガスセンサ素子の製造方法のフローを示す。原料として、セリウムの塩、高分子、及び高沸点有機溶媒を使用し、これらの原料を混合し、加熱・環流する工程により、まず、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を製造し、該ハイブリッド微粒子を、ペースト化、膜形成、熱処理の一連の工程によりガスセンサ素子を作製する。
まず、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の製造方法について説明する。出発原料となるのは、例えば、硝酸セリウム、高沸点有機溶媒、及び高分子である。これらのうち、硝酸セリウムは、市販されているもので良く、一般には、水和物である。この場合、セリウムイオンの価数は、3価である。硝酸アンモニウムセリウムは、硝酸セリウムと良く似た名前であるが、セリウムは、4価イオンであり、結晶水はない場合が多い。金属イオンを添加した酸化セリウム微粒子を得ることも可能であり、その場合は、硝酸セリウムの他に、金属硝酸塩を添加する。
また、高沸点有機溶媒としては、好適には、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、グリセリンなどが用いられ、より好ましくはエチレングリコールが用いられる。更に、高分子としては、有機溶媒に溶解する可溶性の合成高分子物質が用いられ、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、又はポリエチレングリコール(PEG)から構成される高分子であり、好適には、ポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。
これらの原料を混合し、溶解させて、これらの混合物を調製する。これが、セリウムの塩と高分子を、高沸点有機溶媒に混合して、これらの混合物を得る工程である。このとき、硝酸セリウムの濃度は、0.4kmol/m以上、すなわち少なくても40kmol/mであることが好ましい。これは、得られる分散液に含まれる酸化物の割合が増えるためであり、それにより、歩留まりが向上する。
高分子の濃度は、80kg/mから120kg/mの範囲であることが好ましい。高分子の濃度とは、単位有機溶媒体積当たりに添加した高分子重量である、と定義される。高分子の濃度が80kg/mから120kg/mの範囲である理由は、これより少な過ぎると、酸化セリウム微粒子が凝集し易くなるためであり、得られるハイブリッド微粒子が、コアシェル型でないためである。また、これより多過ぎると、酸化セリウムの核生成反応が進行しないためである。
次に、上記混合物を、110から200℃までの温度で、加熱・還流する。これが、上記混合物を、所定の温度で、加熱・還流して、酸化セリウムを析出させる工程である。一般に、酸化物を析出させる場合、水酸化ナトリウム、アンモニアなどのアルカリなどを加えるが、本発明は、それを必要としないことが特徴である。硝酸アンモニウムセリウムであると、混合物内に、アンモニウムイオンが存在するが、本製法では、アンモニウムイオンも必要ない。水酸化ナトリウムなどを加えると、最終的に得られるナノ粒子に、ナトリウムなどの不純物が混入する可能性がある。
しかし、本発明では、アルカリなどの添加を必要としないため、そのような不純物の混入は有り得ない。本発明のコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子は、それらのアルカリなどの不純物を含まないことを特徴としているが、このことが、センサ素子の場合、重要である。本発明のハイブリッド微粒子の製造方法において、190℃で、加熱・還流した場合、10分未満で、微粒子が析出する。これは、硝酸セリウムの結晶水が、微粒子の析出を加速していることによる。
加熱・還流時間は、10分から120分程度である。加熱・還流時間が短いと、未反応のセリウムイオンが多く残留する可能性があり、逆に長過ぎると、セリウムの有機化合物が生成する可能性がある。このため、10分から120分間程度の加熱・還流時間が好ましく、より好ましくは、加熱・還流時間は、30〜120分間程度である。
加熱・還流中に、上記混合液は、濁りを増すが、所定の時間、加熱・還流を行い、冷却する。こうして、高分子が溶解した有機溶媒に、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子、以降、これをCSCPH微粒子と記載することがある、が分散した、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子分散液、以降、これを原分散液と記載することがある、が得られる。
CSCPH微粒子の生成メカニズムは、以下のように考えられる。
1.高分子が均一に溶解している高沸点有機溶媒(ポリオール)中に、酸化セリウムの一次粒子が核生成する。
2.一次粒子が、球状に凝集する。このときも、絶えず、一次粒子が核生成する。
3.凝集粒子(二次粒子)の表面に、核生成した一次粒子が球状に集まってくる。
4.このとき、二次粒子の表面で、酸化セリウムが触媒として働き、高分子及び/又は有機溶媒による架橋反応を生じて、強固な高分子層が形成される。
5.強固な高分子層が、十分に発達すると、酸化セリウムは、凝集ができなくなり、CSCPH微粒子となる。
本発明において、CSCPH微粒子は、1)そのコア部分は、酸化セリウムの一次粒子が球状に集合した二次粒子であり、2)その二次粒子の形状は、揃っており、3)その二次粒子表面に、シェル部分となる高分子の層が存在し、4)該微粒子の粒径の平均が、30nmから200nmであり、5)該微粒子の粒径の変動係数が、0.25又はそれより小さい、ことで特徴付けられるものとして定義される。
本発明において、シェル部分の高分子層を構成する有機高分子物質とは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール(PEG)又はこれらの関連高分子で構成されたものとして定義されるものである。ここで、これらの関連高分子とは、PVP同士で架橋した高分子、HPC同士で架橋した高分子、PVPやHPCないしPEGとポリオールとが架橋した高分子、ポリオール同士が架橋した高分子などである。高分子層は、このような高分子が含まれたもので構成される。
酸化セリウムが触媒作用を引き起こすには、熱が必要と考えられ、このために、110℃以上の温度での加熱・還流が必要となる。加熱・還流温度が低い場合、例え、一次粒子が生成したとしても、コアシェル型とはならない。一次粒子が凝集しなければ、本発明で云うコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子とならない。この場合、未反応の高分子が多く存在するため、溶媒を揮発させると、高分子マトリックス中に、一次粒子が取り残された酸化セリウム高分子複合組成物となるが、これは、明らかに、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子とは異なる。
また、加熱・還流温度が低い場合、例え、凝集が生じても、酸化セリウム表面での触媒反応が無いため、高分子層が形成できず、形態が不均一な凝集粒子となる。ある臨界となる温度より低いと、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子が生成しないため、高温での加熱・還流が不可欠である。このとき、上記高分子の分子量を変えることにより、得られるコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の粒径を制御することが可能である。
高分子のゲルパーミッションクロマトグラフィーにより求めたポリエチレングリコール換算の平均分子量が、4000から20000の間で、分子量が大きくなるにつれ、酸化セリウムの粒径は、小さくなる。高分子の分子量と、酸化セリウムの粒径の相関関係を予め求めておき、所望の粒径の酸化セリウム微粒子を含む分散液を作製することが可能である。
上記加熱・還流の直後に得られる、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子分散液では、分散媒は、加熱・還流に用いた有機溶媒となる。すなわち、例えば、エチレングリコール(EG)で、加熱・還流を行えば、分散媒は、エチレングリコール(EG)である。分散媒を任意の分散媒に変更したい場合は、分散媒の置換を行う。例えば、遠心分離などで、分散媒と分散質とを分離し、分散媒を取り除き、所望の分散媒を加えることにより、分散媒の置換を行うことが可能である。このとき、シェル部分の高分子は、洗浄によって分離するものではなく、コアと不可分のものである。
上記加熱・還流で用いた高分子は、分散媒中に残留しており、また、未反応のCeイオンも残っていることが考えられる。このため、余分な高分子などは、遠心分離を施し、溶媒置換を繰り返すことで、除去することが可能である。上記方法より得られる分散液の分散質であるコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の形態は、球状であり、粒径は、ほぼ揃っている。ここで云う粒径とは、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の粒子径であり、走査電子顕微鏡(SEM)観察で求められる粒径である。
コア部分の二次粒子は、一次粒子の凝集した集合体であり、一次凝集体と云う場合もある。一次粒子径は、0超〜3nmのナノメートルサイズである。コア部分の球状の酸化セリウム微粒子の1つ1つの粒子は、二次粒子であり、一次粒子ではない。また、酸化セリウム微粒子は、1価〜5価の金属イオンが添加されたものであっても良く、例えば、Na、Ca、Y、Gd、Zr、Hf、Nbなどが例示される。
酸化セリウム微粒子の形状及び粒径などは、以下の方法で確認することができる。加熱・還流直後の分散液について、動的光散乱(DLS)法により、粒径を求める。この粒径は、分散媒の中で、独立して存在する、粒子の粒径である。この粒径は、一般には、SEMなどで観察される微粒子の粒子径とは異なる。その理由は、分散媒中で微粒子が、更に凝集していることが多く、この場合、微粒子が凝集した粒子の大きさが、結果として現れるからである。
二次粒子(微粒子)が凝集したものを、二次凝集体と云う場合もある。動的光散乱(DLS)法では、分散媒の屈折率と分散媒の粘度が必要であるが、分散媒の屈折率は、文献値を用いることができる。また、分散媒の粘度は、分散液の粘度と同一として、分散液の粘度を測定し、それを使用する。このようにして、平均粒径(daverage)及び標準偏差(s)を求め、変動係数c(=s/daverage)を計算する。また、上記方法より得られる分散液を、遠心分離と、水やエタノールへの再分散を3回程度行い、例えば、80℃で、乾燥させることで、乾燥粉体が得られる。これについて、SEMで観察し、形状、平均粒径、標準偏差を求める。
コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の平均粒径は、30nmから200nmであり、その変動係数は、0.25以下、すなわち、大きくても0.25、好ましくは0.16以下である。これは、乾燥粉体のSEM観察で確認することができる。また、分散媒中での粒径は、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の2倍以下であり、好ましくは1.5倍以下、より好ましくは、1.3倍以下である。分散媒中では、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子は、ほとんど凝集せずに存在することが示される。
また、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の表面には、当然ながら、シェル部分に、有機高分子物質の層が存在している。これは、上記乾燥粉体について、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)分析及び熱重量(TG)分析で調査し、確認することができる。上記乾燥粉体は、遠心分離と、水やエタノールへの再分散を3回程度行っていることから、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子と無関係な、余分な高分子物質は、除去されている。また、乾燥を行っていることから、分散媒も、十分に除去されている。有機高分子物質の層の割合は、15から25wt%が好ましく、より好ましくは、19から22wt%である。
フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)で観察される酸化セリウム以外の吸収ピークは、酸化セリウム微粒子表面に存在するものに起因するものであり、それは、高分子物質の吸収と似ていること、及び分散媒の沸点よりも高温で重量変化が存在することにより、酸化セリウム微粒子の表面に、高分子物質が存在しているとの結論が導かれる。ここで、有機高分子物質としては、例えば、PVP、HPC、PEG、あるいはPVP同士で架橋した高分子物質、HPC同士で架橋した高分子物質、PVPやHPCとポリオールとが架橋した高分子物質、ポリオール同士が架橋した高分子物質又はそれらと酸化セリウムとが反応したものが、同様のコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を形成することを可能にするものとして好適である。微粒子表面の高分子物質は、透過電子顕微鏡(TEM)でも確認できることがある。
上記乾燥粉体を、分散媒に再分散しても、容易に分散する。これは、上記乾燥粉体は、一般の粉体と異なる特性である。一般には、粉体を一度乾燥させると、強固に凝集するため、粉体を分散媒に再分散させようとしても、容易に分散しない。しかし、この乾燥粉体は、例えば、超音波ホモジナイザーを使うだけで、分散剤は、必要としないで、容易に分散媒に分散させることができる。
このときの分散媒は、任意であり、好適には、例えば、水、エタノール、テルピネオール、エチレングリコールのいずれか一つ、あるいは、これらが複数混合している混合溶液、である。これらの分散媒に、上記コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を再分散させても、分散媒中での粒径は、SEM観察で求めた粒子径の2倍以下、好ましくは1.5倍以下、より好ましくは、1.3倍以下であり、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子は、凝集せずに存在する。
このような、再分散容易性は、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子のシェル部分に高分子物質が存在していることに起因する、と考えられる。また、その乾燥粉体に、300℃から500℃で熱処理を加えても、良好な分散性は保持される。これは、熱処理を加えても、酸化セリウム微粒子の表面に、高分子物質又は有機化合物が、わずかに存在していることに起因する、と考えられる。
この場合、更に、500℃より高温で焼成すると、シェル部分に相当する高分子物質が、完全に除去される。こうなると、球状の酸化セリウム微粒子となる。この酸化セリウム微粒子は、一次粒子が球状に集積した二次粒子である。酸化セリウムの一次粒子が、高分子マトリックス内に単に含有した微粒子の場合、焼成した後は、酸化セリウムの一次粒子だけが残り、これが凝集したとしても、球状になり得ない。従って、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子と、酸化セリウム高分子複合組成物とは、本質的に構造が全く異なるものである。酸化セリウム微粒子が三次元的に集積した集積体は、自己組織的に構造化する。
ここで、CSCPH微粒子について集約的にまとめると、CSCPH微粒子とは、酸化セリウムの一次粒子が球状に集合した二次粒子表面に、高分子物質の層が存在する微粒子のことであり、コアが二次粒子、シェルが高分子物質である。CSCPH微粒子の粒径は、平均30nmから200nmが好ましい。また、CSCPH微粒子の変動係数は、0.25以下、すなわち、大きくても0.25が好ましい。コア部分の二次粒子の形態は、球状である。
CSCPH微粒子は、このような形態的特徴を有するため、図1に示される、一次粒子が球状に集合した均一の大きさの二次粒子で構成した高次構造を、簡便に、得ることが可能である。また、CSCPH微粒子は、シェル部分に高分子物質の層が存在するため、水、エタノール、エチレングリコール、又はテルピネオールへの分散性が良好である。CSCPH微粒子は、一度、200℃までの乾燥処理を行っても、水などに容易に分散する。200から500℃の熱処理であっても、再分散性は維持される。
これは、シェル部分の高分子物質の量は減少するが、分散性には影響がないためである。CSCPH微粒子分散液は、安定性があり、1日程度であれば、全く沈降しない。また、CSCPH微粒子は、それらが凝集することなく、CSCPH微粒子それぞれが単独で分散する。CSCPH微粒子は、このような良好な分散性を有するため、次に示すペーストは、簡単に得られ、しかも、ペーストは、安定であるという特性を有する。
次に、上記CSCPH微粒子を含有するペーストを作る工程について説明する。原分散液から膜形成用のペーストにする方法は、大きく分けて二通りある。一つは、原分散液を濃縮して、そのままペーストとする場合である。この場合、原分散液の分散媒とペーストの分散媒は、同じものとなる。例えば、原分散液の分散媒がエチレングリコールであれば、ペーストの分散媒もエチレングリコールである。
もう一つは、原分散液の分散媒を置換する方法である。原分散液の分散媒とペーストの分散媒が異なる場合、この方法が用いられる。ただし、原分散液の分散媒とペーストの分散媒が同じ場合でも、この方法を用いることができる。ペーストの分散媒としては、有機溶媒又は有機溶媒と、高分子物質の混合物が用いられる。
有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、テルピネオールなどが挙げられる。また、ペーストに含まれる高分子としては、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。分散媒の置換の方法としては、遠心分離法や、濾過法などで、分散媒と分散質を分離し、分離した分散質に、新たに分散媒を加える方法が例示される。
新たな分散媒としては、ペーストの分散媒の場合と、ペーストの分散媒と異なる場合とがある。ペーストの分散媒と異なる分散媒としては、水、エタノールなどが挙げられる。分離と新たな分散媒の混合を繰り返すことも可能である。新たな分散媒として、ペーストの分散媒とは異なる分散媒を使った場合は、最後に、ペーストの分散媒を加える。何度か分離や分散媒の混合を繰り返す目的は、未反応のイオンや、高分子を、除去(洗浄)するためである。
ペーストの分散媒を加えるときに、揮発性の高い分散媒を加え、均一にしておき、ペーストの分散媒を加え、加熱などで揮発性の高い分散媒だけを揮発させ、最終的に、ペーストとすることも可能である。分散媒と分散質を分離した後、分散質を乾燥や熱処理を加えることも可能である。これは、分散質は、CSCPH微粒子であるため、500℃以下の乾燥や熱処理を行っても、再分散が容易なためである。
次に、得られたペーストを、膜状に形成する工程について説明する。ペーストを膜状に形成するときは、通常、基板上に形成する。基板としては、アルミナ、石英など、絶縁材料の基板を用いる。また、基板には、予め電極を配置しておくことが可能である。ただし、電極は、最終的に配置されていれば良く、配置の順序は任意である。電極材料としては、白金、白金や、その他貴金属の合金など、高温でも耐久性のある材料を用いる。
膜状に形成する方法は、例えば、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スピンコーティング法などが例示される。一度で形成する膜の厚さが薄い場合は、これを何度か繰り返す。膜状に形成したペーストを、乾燥させ、乾燥膜を得る。乾燥温度は、ペーストに用いる分散媒に依存する。分散媒として、テルピネオールを用いた場合は、100から200℃の温度で、乾燥機などを用いて乾燥する。
得られた乾燥膜は、400から600℃の仮焼を行い、続けて、600から1000℃までの焼成を行う。この場合、仮焼は、省くことも可能である。焼成時の雰囲気は、酸素より空気が好ましい。焼成時間は、1から10時間程度である。焼成後、400から600℃までの温度で焼鈍することもある。このようにして、基板に作製した酸化セリウム多孔質厚膜と、電極、及び厚膜を、必要な構成要素として具備したセンサ素子が作製される。このように、本発明のセンサ素子では、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を熱処理して得られる酸化セリウム多孔質厚膜が用いられる。
得られた酸化セリウム多孔質厚膜の膜厚は、0.5μmから10μmが好ましい。厚膜は、600℃以上の焼成を行っているので、シェル部分のポリマーは、ほとんど存在しない。厚膜は、多孔質である。厚膜をSEMで観察すると、球状の粒子が観察されるが、これは、CSCPH微粒子のコア部分の酸化セリウム二次粒子である。CSCPH微粒子のコア部分の酸化セリウム二次粒子同士が、焼結により粒成長することなく、存在している。
厚膜の粒子は、球状であり、粒径も揃っている。この球状の粒子は、機械的接触だけでなく、それぞれの粒子の接触点でネックが存在すると考えられる。これは、機械的接触だけでは抵抗が高いが、焼成後では抵抗が低くなるからである。結晶子の大きさは、焼成温度によって異なるが、10nmから原料として用いたCSCPH微粒子の二次粒子径までである。
酸化セリウム多孔質厚膜に、金の微粒子を担持させることにより、感度を上昇させることが可能である。金の微粒子の粒径は、数nmから100nm程度が適している。金微粒子の担持方法は、任意である。例えば、作製した酸化セリウム多孔質厚膜に、金微粒子(金コロイド)分散液を数滴滴下し、乾燥、焼成を行うことで、担持が可能である。また、CSCPH微粒子を含むペーストに、金微粒子(金コロイド)を分散させ、その後、前述の酸化セリウム多孔質厚膜の製造方法と同様の方法で、金微粒子が含有した酸化セリウム多孔質厚膜を作製することも可能である。
本発明のガスセンサ素子は、種々のガスに応答が可能である。例えば、CO、H、メタン、エタン、プロパン及びアルコールなどの可燃性ガス並びに酸素などに、応答性を有している。センサ素子を、基板裏にあるヒータ、又は外部の電気炉で、所定の温度、例えば、300から900℃に上げ、雰囲気を変更させ、センサの応答を調べることができる。例えば、空気から、COを含む空気、再び空気に切り替え、センサ素子の厚膜の抵抗を調べることができる。
このときの抵抗変化が、センサとしての応答となる。従来の方法で作られた酸化セリウム多孔質厚膜を使ったセンサよりも、本発明で得られた酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサの方が、感度が良くなることが、後記する実施例で示すように、明らかとなっている。厚膜を構成する粒子の大きさと、結晶子の大きさを、更に最適化することにより、更に、感度が向上することが期待される。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子のCSCPH微粒子は、高分散性であり、ペーストを得る工程において、従来、分散させるのに使用していたビーズミルなどを用いる必要性がない。
(2)それにより、不純物質の混入を防止することが可能となり、高純度のCSCPH微粒子を含む酸化セリウム多孔質膜を調製することが可能となる。
(3)膜形成用のペーストが長期安定であり、再分散性が良いので、例え沈殿しても、振とうするだけで、均一なペーストが得られる。
(4)本発明により、図1に示される、一次粒子が球状に集合した均一の二次粒子で構成した高次構造を有する厚膜を形成することが可能である。
(5)酸化セリウムについては、従来技術では、図1に示される、高次構造を有する厚膜は得られなかったが、CSCPH微粒子を用いることで、高次構造を有する厚膜が、簡便に得られる。
(6)本発明により、応答速度が速く、しかも、感度を向上させた、高性能の可燃性ガス応答性のガスセンサを提供することができる。
(7)例えば、本発明で得られるCOセンサは、高感度、高速応答という特長を有することから、消防士用のウェアラブルセンサ、ボイラーの燃焼制御用COセンサ、地下駐車場などの換気システム用COセンサなどに応用可能である。
次に、合成例及び実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の合成例及び実施例によって何ら限定されるものではない。
合成例1
30cmのエチレングリコール(EG)(和光純薬製)に、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びセリウム(Ce)の塩を加え、撹拌した。加えたPVPの濃度は、16kg/m又は120kg/mとした。PVPの種類は、平均分子量がカタログ値で10000、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)による分析値で4350(ポリエチレングリコール換算)のPVP(シグマアルドリッチ製)を用いた。Ceの塩は、(NHCe(NO(和光純薬製)又はCe(NO・6HO(高純度化学製)を用い、その濃度は、0.080、0.400、及び、0.600kmol/mとした。
これらの混合物を加熱し、190℃で、所定の時間、加熱・還流した。実験条件を、表1に示す。加熱・還流実験中に、茶色のガスが発生し、その後、溶液は、白濁した。所定時間、加熱・還流後、白濁した混合溶液が得られた。次に、未反応物や、余分なPVPを除去するために、白濁した溶液の一部を、3000から10000rpmの条件で、遠心分離し、水及びエタノールで洗浄した。洗浄後、80℃で、乾燥させ、粉体を得た。得られた粉体について、X線回折(XRD)により、生成物を同定した。
また、表1に、XRDで同定した生成物を示す。サンプル1−1から1−3の生成物は、酸化セリウムであった。サンプル1−4には、酸化セリウムだけでなく、Ce(HCOO)も存在した。サンプル1−6、1−7は、酸化セリウムではなかった。このことから、酸化セリウムを得るための必要条件として、セリウムの塩としては、Ce(NO・6HOが好適であることが分かった。酸化セリウムのみが得られたのは、サンプル1−1、1−2、1−3、1−5であった。
原料の濃度は、高い方が好ましい。これは、1回の実験で得られる酸化物微粒子が多い方が好ましいためである。硝酸セリウムの濃度が、0.400kmol/m以上を前提に考えると、PVP濃度が、120kg/mであること、又は加熱・還流時間が、10〜20分間と短いことは、酸化セリウムを得るための十分条件であることが分かった。加熱・還流時間については、短いと、未反応のセリウムイオンが存在するため、できるだけ長い方が好ましい。ただし、長過ぎると、酸化セリウムがエチレングリコールなどと反応し、Ce(HCOO)などが生成するため、好適な加熱・還流時間が存在する。合成例1での実験条件では、加熱・還流時間は、10分から120分間が好ましい、という結論が得られた。
合成例2
30cmのEG(和光純薬製)に、平均分子量がカタログ値で10000、GPCによる分析値で4350(ポリエチレングリコール換算)のPVP(シグマアルドリッチ製)、及びCe(NO・6HO(高純度化学製)を加え、撹拌した。加えたPVPの濃度は、16kg/mから160kg/mとした(表2を参照)。Ce(NO・6HOの濃度は、0.400kmol/mとした。これらの混合物を加熱し、190℃で、10〜20分間、加熱・還流した。ただし、サンプル2−4は、加熱・還流時間を120分まで延ばしても、次に示す反応が生じなかった。
サンプル2−1は、合成例1で示したサンプル1−2と同じものである。サンプル2−1〜3では、加熱・還流実験中に、茶色のガスが発生し、その後、溶液は、白濁した。所定時間、加熱・還流後、白濁した混合溶液(分散液)が得られた。次に、未反応物及び余分なPVPを除去するために、白濁した溶液の一部を、3000rpmから10000rpmの条件で、遠心分離し、水及びエタノールで洗浄した。これを、80℃で、乾燥させ、粉体を得た。
分散液の粒度分布をDLS法により調べた。DLS法では、粒径を求めるために、溶媒の粘度及び屈折率が必要である。B型粘度計を用いて、分散液の粘度を調べ、それを溶媒の粘度として用いた。B型粘度計は、コーンアンドプレートタイプであった。また、屈折率として、エチレングリコールの値(1.429)を用いた。平均粒径は、キュムラント解析法により求めた。80℃で、乾燥した粉体については、XRD、SEMによりキャラクタリゼーションした。また、分散液の長期安定性については、容器に、サンプルを入れ、放置し、観察した。表2に、実験条件及び実験結果を示す。
前述の通り、サンプル2−4は、白濁せず、分散液が得られなかった。サンプル2−1〜3では、生成物は、酸化セリウムであった。サンプル2−1では、分散質の平均粒径は、1330nmと大きく、SEM観察の結果も、それを支持し、しかも、すぐに沈殿した。一方、サンプル2−2、2−3では、分散質の平均粒径は、約110nmであった。サンプル2−2、2−3のSEM写真から、粒径が約110nmの球状の微粒子が観察され、DLSで求められた平均粒径と一致した。このことから、粒径110nmの球状のコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子が、独立して、分散液中に分散していることが明らかとなった。
また、PVP濃度が小さいと、安定な分散液が得られないこと、及び、PVP濃度が大きいと、反応が生じないことが分かり、安定なコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子分散液を得るための好適なPVP濃度が存在することが分かった。この合成例から、その十分条件として、PVP濃度は、80kg/mから105.6kg/mであることが示された。また、次に示す合成例から、PVP濃度は、120kg/mであることも、安定な酸化セリウム微粒子分散液を得るための十分条件であることが示された。
合成例3
30cmのEG(和光純薬製)に、種々の平均分子量のPVPを加え、撹拌した。PVPの平均分子量のカタログ値とGPCによる分析値(ポリエチレングリコール換算)を表3に示す。PVPのAからFの順に、GPC分析による平均分子量は、増大した。加えたPVPの濃度は、120kg/mとした。Ce(NO・6HOの濃度は、0.600kmol/mとした。これらの混合物を加熱し、190℃で、10〜30分間、加熱・還流した。
表4に示す全てのサンプルで、加熱・還流実験中に、茶色のガスが発生し、その後、溶液は、白濁した。所定時間、加熱・還流後、白濁した混合溶液(分散液)が得られた。分散液については、エチレングリコール(EG)で10倍に希釈したものも作製した。次に、未反応物及び余分なPVPを除去するために、白濁した溶液の一部を、3000rpmから10000rpmの条件で、遠心分離し、水及びエタノールで洗浄した。これを、80℃で、乾燥させ、粉体を得た。
合成例2に示した方法と同様の方法で、分散液の平均粒径、粘度、長期安定性を評価した。変動係数(c)については、DLS法で、平均粒径(d)と標準偏差(s)を、Contin法によるヒストグラム解析で求め、c=s/dで求めた。また、粉体については、SEM観察結果から、粒子形状、平均粒径(d)、変動係数(c)を求めた。生成物の同定は、合成例1、2と同様の方法で行った。平均粒径(d)は、SEM写真に撮影された90個以上の微粒子の粒径の平均値とした。変動係数(c)は、粒径の分布を求め、それの標準偏差sを求め、c=s/dで求めた。生成物は、XRDにより確認した。
サンプル3−1〜6の生成物は、全てCeOであった。微粒子の形状は、SEM観察により、サンプル3−1のみ不均一な形状であり、それ以外は、球状であることが分かった。サンプル3−6のSEM写真では、粒子と粒子の間に、繊維状のものが観察された。球状であるサンプルについて、SEM写真から、平均粒径を求めると、表4のようになった。
分子量(GPC分析値)が、18000までは、分子量が増えるにつれ、平均粒径が小さくなることが分かった。分子量(GPCによる分析値)が、18000を超えると、逆に、粒径は、大きくなった。変動係数については、サンプル3−2〜6まで、全て0.15以下であり、粒径分布が狭いこと、すなわち、ほぼ単分散であること、が分かった。これによって、PVPの分子量を制御することにより、ほぼ単分散であるコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の平均粒径を、自由に変えることが可能であることが示された。
次に、分散液の特性について説明すると、サンプル3−1〜6の分散液の粘度は、分子量とともに増加した。DLSで求めた平均粒径は、サンプル3−1と3−6を除き、SEM観察結果から求めた平均粒径と、ほぼ一致した。これによって、球状のコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子が、独立して、分散液中に分散していることが、合成例3においても、示された。
サンプル3−1は、平均粒径が大きかった。これは、微粒子の形状が不均一で、凝集体であることと一致した。また、これらは、すぐに沈殿し、分散液として安定性がなかった。サンプル3−6については、SEM観察結果からの平均粒径より、DLSで求めた平均粒径の方が大きかった。これは、粒子と粒子が繊維状のもので結合されたものが存在するため、平均粒径として、大きくなった、と考えられる。
◎ 一ヶ月経過しても、沈殿物が認められない。
○ 一ヶ月経過で、わずかに沈殿物が認められる。
△ 一ヶ月経過で、多くの沈殿物が認められる。
× 2,3日ほどで、沈殿物が認められる。
*原液での測定結果は、原液が高粘度であるため、正確に求められなかった。このため、EG(エチレングリコール)で、10倍に希釈したデータを用いた。
合成例4
合成例3で示したサンプル3−2と同じ方法で、分散液を作製し、次に、分散媒置換の実験を、以下の手順で行った。遠心分離で、分散媒と分散質を分離し、分離後の分散質に、テルピネオールを加え、超音波ホモジナイザーを使い、分散させた。分散時間は、4分であり、冷却しながら、分散させた。
分散媒置換後の分散液(サンプル4−1)について、DLSにより、平均粒径を求めた。表5に、その結果を示す。粒径は、サンプル3−2と、ほぼ同じであった。分散媒置換しても、酸化セリウム微粒子は、凝集なしに分散していることが確認できた。また、分散液は、非常に安定しており、10日以上放置しても、分離しなかった。
合成例5
合成例3で示したサンプル3−2の粉体(分散液から分離後の粉体)及びエチレングリコールの体積は異なるが、硝酸セリウムやPVPの濃度が、サンプル3−2と同じ条件で、作製した粉体について、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、熱重量(TG)及び透過電子顕微鏡(TEM)により、キャラクタリゼーションを行った。熱重量(TG)の結果、220℃付近で、15%近い重量減少が認められた。すなわち、分散媒の沸点(190℃)よりも高温で、重量減少が生じた。
乾燥粉体を、900℃まで加熱することにより、22wt%の重量減少があった。作製日が異なる別のサンプルでは、19wt%の重量減少であり、おおよそ19から22wt%の重量減少があることが分かった。また、FTIRの結果、酸化セリウムに起因するピーク以外のピークが観察された。上記乾燥粉体は、遠心分離と水やエタノールへの再分散を3回行っていることから、酸化セリウム微粒子と無関係な余分な高分子は、除去されている。また、乾燥を行っていることから、分散媒も、十分除去されている。
それによって、FTIRで観察された酸化セリウム以外の吸収ピークは、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子表面に存在するものに起因するものであること、及び、それは、高分子物質の吸収と似ていること、が示された。また、TEM観察の結果、粒子表面(シェル部分)に、5nm程度の高分子の層らしいものが観察された。これは、長時間のTEM観察により、層が減少することも明らかになっており、電子線により分解していることも示唆された。以上のことから総合的に考察すると、酸化セリウム微粒子の表面に、高分子物質が存在していること、すなわち、コアシェル型であること、が明らかとなった。
サンプル3−2の粉体のXRDパターンのピークの半値幅から、Hallの式を使って、結晶子(一次粒子)の大きさを求めると、約3nm程度であることが分かった。TEM観察の結果からも、一次粒子の大きさは、1から2nm程度であることが確認された。また、一次粒子間には、隙間などなく、高密度に一次粒子が集合した二次粒子であることが分かった。酸化セリウム微粒子の表面に、PVPが付着していることから、酸化セリウムが、直接人体と触れることがなく、化学的に不活性な紫外線遮蔽剤である、と考えられる。
合成例6
合成例3で示したサンプル3−2の粉体(分散液から分離後の粉体)を、水、エタノール、テルピネオール、エチレングリコールに再分散して、再分散液(6−1〜4)とした。再分散に用いた粉体は、乾燥後の粉体である。粉体と分散媒の割合は、0.1gの粉体に対して5cmの分散媒とした。粉体を分散媒に入れ、超音波ホモジナイザーを使って、分散させた。分散時間は、3から10分であり、冷却しながら、分散させた。このとき、分散剤は、使用しなかった。
分散後の分散液中のコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の粒径について、DLS法を用いて、調べた。表6に、その結果を示す。測定前には、手で、二、三度振って撹拌した。分散後、1及び8日経過後の粒径は、115〜135nmであり、サンプル3−2の粉体の粒径と、同じかわずかに大きいだけであった。このことから、乾燥後の粉体であっても、再分散が容易であり、再分散後の酸化セリウム微粒子の平均粒径は、SEM観察で求めた粒子径の、1から1.3倍であることが分かった。
すなわち、球状の酸化セリウム微粒子が、ほぼ凝集することなしに、分散していることが分かった。7日間静置しても、テルピネオールに分散したサンプル6−3では、分離が認められなかった。水やエタノールに分散したサンプル6−1、6−2についても、わずか上部に透明層があるだけであった。手で、二、三度軽く振るだけで、すぐに均一になった。このことから、乾燥粉体を再分散した分散液は、長期安定性がある、と判断された。
合成例7
30cmのEG(和光純薬製)に、PVP(表3のPVP B)、及びCe(NO・6HO(高純度化学製)を加え、撹拌した。加えたPVPの濃度は、120kg/mとした。Ce(NO・6HOの濃度は、0.600kmol/mとした。混合物を加熱し、190℃で、120分間、加熱・還流した。合成例1のサンプル1−5と同じ作製条件である。加熱・還流実験中に、茶色のガスが発生し、その後、溶液は、白濁した。所定時間、加熱・還流後、白濁した混合溶液(分散液)が得られた(サンプル7−1)。次に、未反応物及び余分なPVPを除去するために、白濁した溶液の一部を、18000rpmの条件で、遠心分離し、水及びエタノールで洗浄した。これを、80℃で乾燥させ、粉体を得た。
合成例2及び3に示した方法と同様の方法で、各結果を求めた。表7に、その結果を示す。生成物は、合成例1でも示したように、酸化セリウムであった。DLS法で求められた平均粒径は、110nmであった。一方、SEM観察から求めた平均粒径は、約130nmであり、DLS法で求めた粒径と、ほぼ同じであった。このことから、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の球状の微粒子は、凝集せずに存在することが分かった。
加熱・還流時間が、30分以下であっても、120分であっても、わずかに粒径が大きくなる程度で、得られる微粒子の特性として、ほとんど違いがなかった。ただし、得られる微粒子の重量は、前者のほうが少なかった。すなわち、歩留まりが良くなかった。加熱・還流時間を延ばすことにより、未反応のセリウムイオンが少なくなり、かつ得られる微粒子の重量が増えた。
硝酸セリウム濃度が0.400kmol/m以上の条件において、得られる微粒子が酸化セリウムであって、分散性に優れているための必要条件は、PVP濃度が80kg/m以上である。得られる微粒子が酸化セリウムであって、分散性に優れていて、かつ歩留まりが良いための必要条件は、PVP濃度が、80kg/m以上、加熱・還流時間が、30分より大きい、という条件である。
合成例8
合成例7で得られた粉体を、水に再分散させた再分散液(サンプル8−1)と、合成例7で得られた粉体を、一度300℃4時間空気中で熱処理をした粉体を、水に再分散させた再分散液(サンプル8−2)の、分散液中での平均粒径を、DLS法により求めた。表8に、その結果を示す。分散液は、粉体0.1gを水5cmに加え、超音波ホモジナイザーを用いて、10分の条件で分散させ得た。
サンプル8−1及び8−2の分散液中での平均粒径は、いずれも、SEM観察で求めた粒子径の1.2倍以下であり、分散液中で、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の凝集は、ほとんどないことが分かった。このことから、熱処理しても、粉体の良好な分散性は保持されることが分かった。300℃又は500℃、4時間、空気中での熱処理を加えた粉体のFTIR結果から、300℃又は500℃、4時間、空気中の熱処理をした粉体の表面にも、熱処理を加えていない粉体と、ほぼ同じ構造を有する高分子物質又は有機化合物の極薄い層が存在していることが示唆された。この高分子物質又は有機化合物の存在が、分散性の存在に起因していると推察された。
合成例9
30cmのEG(和光純薬製)に、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(分子量:15000から30000(和光純薬製))、及びCe(NO・6HO(高純度化学製)を加え、撹拌した。加えたHPCの濃度は、120kg/mとした。Ce(NO・6HOの濃度は、0.600kg/mとした。これらの混合物を加熱し、190℃で、10分間、加熱・還流した。加熱・還流実験中に、茶色のガスが発生し、その後、溶液は、白濁した。所定時間、加熱・還流後、白濁した混合溶液(分散液)が得られた。次に、未反応物及び余分なHPCを除去するために、白濁した溶液の一部を、18000rpmの条件で、遠心分離し、水及びエタノールで洗浄した。これを、80℃で、乾燥させ、粉体を得た。
合成例2及び3に示した方法と同様の方法で、各結果を求めた。表9に、その結果を示す。生成物は、酸化セリウムであることが、XRDにより確認できた。粉体のSEM観察から、微粒子の形状は、球状であることが確認できた。また、平均粒径は、90.1nmであり、その変動係数は、0.223であった。分散液の平均粒径は、170.6nmであり、SEM観察から求められる平均粒径の約1.89倍であった。以上のことから、PVPの代わりに、HPCを用いて合成しても、分散液中での粒径は、PVPを使った場合と比べて、大きいが、安定性のある分散液が得られることが分かった。また、これらの代わりに、ポリエチレングリコール(PEG)を用いて合成しても、同様に、安定性のある分散液が得られることが分かった。
(1)コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子粉末及びペーストの調製
80℃にしたエチレングリコール(EG)30mLに、PVP(ポリビニルピロリドン、M.W.10,000)3.6g(120g/L)、及び前駆体である硝酸セリウム(Ce(NO・6HO)7.81g(600mM)を加えて、溶かした。これを、撹拌しながら加熱し、190℃で、120分間、還流を行った。加熱還流後、得られた酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子分散液を、水で約4倍に薄め、遠心分離(18000rpm、10分間)を行った。
分離した上澄みを捨て、分離した残渣に水を加えて分散させた後に、再び遠心分離(9000rpm、20分間)を行った。同様に、エタノールを用いて、分散、分離を繰り返した後、洗浄を行い、最終的に、分離した残渣を少量のエタノールに分散させ、乳鉢で擂りながら乾燥させて、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子粉末を得た。
得られたコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子粉末(1g)を、エタノール(50mL)に加えて、超音波ホモジナイザーで、3分間分散させ、30分間静置して、上澄みを取り出した。これを撹拌しながら、60℃で、濃縮し、約10mL程度になった時点で、分散している粉末の、4.2倍の重量のビヒクル(エチルセルロースとテルピネオールの混合物)を加えて、更に、濃縮を行って、最終的に、分散している粉末の5倍の重量となるまで、濃縮し、ペーストとした。
(2)センサ素子の作製及び応答特性の評価
センサ素子の基板として、アルミナ基板を用いた。この基板の表側の面に、白金電極を配置した。また、白金電極を配置した面とは、逆の裏側の面に、白金ヒータを配置した。これにより、センサを、所定の温度に加熱することが可能である。このアルミナ基板(5mm×15mm)の白金電極上に、前記ペーストを印刷した。
次に、150℃、15分以上の乾燥、500℃、5時間の仮焼、800℃又は900℃、2時間の焼成を行い、酸化セリウム多孔質厚膜を有するセンサ素子を得た。800℃及び900℃で焼成して作製したセンサ素子を、それぞれ、センササンプル1−1及び1−2とした。その後、これらのセンサ素子のCOガスに対する応答特性を評価した。このとき、センサ素子は、基板裏側の白金ヒータにより、所定の温度に加熱した。
コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子粉末の、走査電子顕微鏡(SEM)像の結果から、粉末の二次粒子の平均粒径は、145nmであることが分かった。また、粉末のX線回折(XRD)分析の結果から、酸化セリウムであることが確認でき、一次粒子は、2から8nm程度であることが分かった。コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子のキャラクタリゼーションについては、実施例3に詳細に記載する。
センササンプル1−1及び1−2のSEM像を、それぞれ、図3及び4に示す。図より、球状の粒子で構成した酸化セリウム多孔質厚膜であることが確認できる。センササンプル1−1及び1−2の二次粒子の平均粒径は、116nm及び121nmであった。二次粒子の平均粒径は、厚膜にすることにより、わずかに小さくなった。これは、酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子が、コアシェル型であり、800℃以上の焼成によって、シェル部分が分解したためである。XRD分析により、厚膜は、酸化セリウムの単相であることが確認できた。また、XRD分析の結果から、一次粒子は、10nm以上に成長していることが分かった。
センササンプル1−2を用いて、空気から、種々の濃度のCOを含む空気に切り換えたときの、酸化セリウム多孔質厚膜を有するセンサ素子の抵抗変化の一例を、図5に示す。測定温度は、約450℃である。COを含む空気に切り換えた後、抵抗は小さくなり、再び、空気に戻すと、抵抗は、ほぼ元の値に戻った。
空気中の抵抗をR(air)とし、COを含む空気中での抵抗をR(CO)としたときの、CO濃度とR(air)/R(CO)の関係を、図6に示す。測定温度は、約450℃である。比較として、沈殿法で作製した酸化セリウム微粒子粉末を原料として、実施例1とほぼ同様の方法で、酸化セリウム多孔質厚膜を作製し、センサ素子としたものも、比較例1(先行技術)として、図6に示す。
実施例1のセンササンプル1−2のR(air)/R(CO)は、比較例1と比べて、大きい。R(air)/R(CO)は、感度を示し、1より大きいほど、感度が大きいことを示す。逆に、1に近いと、感度が小さいことを示す。このことから、センササンプル1−2は、比較例1よりも、感度が大きいこと、すなわち高感度であること、が示された。これは、センササンプル1−2の酸化セリウム多孔質厚膜が、高次構造を有することに起因する、と考えられる。すなわち、図1に示す構造を有することにより、感度が上昇することが実証された。更に、構造を最適化することで、より感度を向上させることが可能である。
比較例1の酸化セリウム厚膜作製用の原料となる酸化セリウム微粒子粉末の作製方法は、以下の通りである。まず、硝酸セリウム水溶液を作製し、次に、これにアンモニア水を加えると、沈殿物が生成した。その沈殿物とカーボンとを混合し、一度、空気中において、70℃で、乾燥させ、次に、空気中において、900℃で、4時間、加熱して、粉末を得た。
30cmのエチレングルコール(EG)に、種々の平均分子量のPVPを加え、撹拌した。PVPの平均分子量のカタログ値とGPCによる分析値(ポリエチレングリコール換算)を、表10に示す。PVPのAからFの順に、GPCによる分析の重量平均分子量は増大した。加えたPVPの濃度は、120kg/mとした。Ce(NO・6HOの濃度は、0.600kmol/mとした。これらの混合物を加熱し、190℃で、10〜30分間、加熱・還流した。
表11に示す全てのサンプル(3−1〜6)で、加熱・還流実験中に、茶色のガスが発生し、その後、溶液は、白濁した。所定時間、加熱・還流後、白濁した混合溶液(分散液)が得られた。分散液については、エチレングリコール(EG)で、10倍に希釈したものも作製した。次に、未反応物及び余分なPVPを除去するために、白濁した溶液の一部を、3000rpmから10000rpmの条件で、遠心分離し、水及びエタノールで洗浄した。これを、80℃で、乾燥させ、粉体を得た。
分散液の粒度分布を、動的光散乱(DLS)法により調べた。DLS法では、粒径を求めるために、溶媒の粘度及び屈折率が必要である。B型粘度計を用いて、分散液の粘度を調べ、それを溶媒の粘度として用いた。B型粘度計は、コーンアンドプレートタイプであった。また、屈折率として、エチレングリコールの値(1.429)を用いた。平均粒径は、キュムラント解析法により求めた。80℃で、乾燥した粉体については、XRD、SEMにより、キャラクタリゼーションした。
また、分散液の長期安定性については、容器に、サンプルを入れ、放置し、観察した。変動係数(c)については、DLS法で、平均粒径(d)と標準偏差(s)を、Contin法によるヒストグラム解析で求め、c=s/dで求めた。また、粉体については、SEM観察結果から、粒子形状、平均粒径(d)、変動係数(c)を求めた。平均粒径(d)は、SEM写真に撮影された90個以上の微粒子の粒径の平均値とした。変動係数(c)は、粒径の分布を求め、それの標準偏差(s)を求め、c=s/dで求めた。生成物は、XRDにより確認した。
サンプル3−1〜6の生成物は、全てCeOであった。微粒子の形状は、SEM観察により、サンプル3−1のみ不均一な形状であり、それ以外は、球状であることが分かった。図7に、サンプル3−2のSEM像を示す。サンプル3−6のSEM写真では、粒子と粒子の間に、繊維状のものが観察された。球状であるサンプルについて、SEM写真から、平均粒径(nm)を求めると、表11のようになった。
分子量(GPCによる分析値)が、18000までは、分子量が増えるにつれ、平均粒径が小さくなることが分かった。分子量(GPCによる分析値)が、18000を超えると、逆に粒径は大きくなった。粒径の変動係数については、サンプル3−2〜6まで、全て0.15以下であり、粒径分布が狭いこと、すなわち、ほぼ単分散であること、が分かった。これによって、PVPの分子量を制御することにより、ほぼ単分散であるコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の平均粒径を、自由に変えることが可能であることが示された。
次に、分散液の特性について説明すると、サンプル3−1〜6の分散液の粘度は、分子量とともに増加した。DLSで求めた平均粒径は、サンプル3−1と3−6を除き、SEM観察結果から求めた平均粒径と、ほぼ一致した。これによって、球状のコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子が、独立して、分散液中に分散していることが、実施例2において、示された。
サンプル3−1は、平均粒径が大きかった。これは、微粒子の形状が、不均一で、凝集体であることと一致した。また、これらは、すぐに沈殿し、分散液として、安定性がなかった。サンプル3−6については、SEM観察結果からの平均粒径より、DLSで求めた平均粒径の方が大きかった。これは、粒子と粒子が、繊維状のもので結合されたものが存在するため、平均粒径として、大きくなった、と考えられる。
◎ 一ヶ月経過しても、沈殿物が認められない。
○ 一ヶ月経過で、わずかに沈殿物が認められる。
△ 一ヶ月経過で、多くの沈殿物が認められる。
× 2,3日ほどで、沈殿物が認められる。
*原液での測定結果は、原液が高粘度であるため、正確に求められなかった。このため、エチレングリコール(EG)で、10倍に希釈したデータを用いた。
本実施例では、微粒子の微構造について示す。実施例2で示したサンプル3−2の粉体(分散液から分離後の粉体)及びエチレングリコールの体積は異なるが、硝酸セリウムやPVPの濃度がサンプル3−2と同じ条件で作製した粉体について、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、熱重量(TG)及び透過電子顕微鏡(TEM)により、キャラクタリゼーションを行った。熱重量(TG)の結果から、220℃付近で、15%近い重量減少が認められた。すなわち、分散媒の沸点(190℃)よりも、高温で重量が生じた。乾燥粉体を、900℃まで加熱することにより、22wt%の重量減少があった。作製日が異なる別のサンプルでは、19wt%の重量減少であり、おおよそ19から22wt%の重量減少があることが分かった。
また、FTIRの結果、酸化セリウムに起因するピーク以外のピークが観察された。上記乾燥粉体は、遠心分離と水やエタノールへの再分散を、3回行っていることから、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子から遊離した余分な高分子は、除去されている。また、乾燥を行っていることから、分散媒も、十分除去されている。
これによって、FTIRで観察された酸化セリウム以外の吸収ピークは、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子のシェル部分に存在するものに起因するものであること、及び、それは、高分子物質の吸収と似ていること、が示された。また、TEM観察の結果を、図8に示す。粒子表面(シェル部分)に、5nm程度の高分子の層らしいものが観察された。これは、長時間のTEM観察により、層が減少することも明らかになっており、電子線により分解していることも示唆された。以上のことから、総合的に考察すると、酸化セリウム微粒子の表面に、高分子物質が存在していること、すなわち、コアシェル型であること、が明らかとなった。
サンプル3−2の粉体のXRDパターンのピークの半値幅から、Hallの式を使って結晶子(一次粒子)の大きさを求めると、約3nm程度であることが分かった。TEM観察の結果からも、一次粒子の大きさは、1から2nm程度であることが確認された。また、一次粒子間には、隙間などなく、高密度に一次粒子が集合した二次粒子であることが分かった。実施例1で使用したコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子は、粒径は異なるが、ここで述べたものと、ほぼ同じものである。
本実施例では、微粒子の分散性や、再分散性について示す。実施例2で示したサンプル3−2と同じ方法で、分散液を作製し、次に、分散媒置換の実験を、以下の手順で行った。遠心分離で、分散媒と分散質を分離し、分離後の分散質に、テルピネオールを加え、超音波ホモジナイザーを使い、分散させた。分散時間は、4分であり、冷却しながら、分散させた。分散媒置換後の分散液(4−1)について、DLSにより、平均粒径を求めた。その結果を、表12に示す。粒径は、サンプル3−2とほぼ同じであった。分散媒置換しても、酸化セリウム微粒子は、凝集なしに、分散していることが確認できた。また、分散液は、非常に安定しており、10日以上放置しても、分離しなかった。
本実施例では、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の製造方法の詳細について示す。30cmのEG(和光純薬製)に、平均分子量がカタログ値で10000のPVP(シグマアルドリッチ製)、及びCe(NO・6HO(高純度化学製)を加え、撹拌した。加えたPVPの濃度は、120kg/mとした。Ce(NO・6HOの濃度は、0.600kmol/mとした。
これらの混合物を、加熱し、種々の温度で加熱・還流した。実験条件を、表13に示す。サンプル5−1から5−5までは、加熱・還流後の液は白濁していたため、遠心分離機を用いて、分散液から微粒子を分離し、SEMやXRDによるキャラクタリゼーションを行った。サンプル5−6、5−7は、加熱・還流後も白濁しなかったため、サンプル5−6について、150℃で、乾燥機を使って、乾燥し、又は80℃で、エバポレータによる乾燥を行い、SEMやXRDによるキャラクタリゼーションを行った。150℃では、すぐに溶媒が揮発し、乾燥体が得られた。
表13で明らかなように、加熱・還流温度が110℃以上と100℃以下では、明らかに異なる結果が得られた。表13に示される通り、加熱・還流温度が、190℃より低くなるにつれ、白濁が開始するのに時間がかかった。また、濁りが強くなるのも、温度が低い方が時間がかかった。110℃以上の加熱・還流温度では、全て、球状の粒子が観察され、コアシェル型の微粒子が得られることが示された。
一方、100℃以下では、22時間、加熱・還流しても、白濁しなかった。加熱・還流後の溶液(分散液)は、透明感が有り、白濁とは云えなかった。サンプル5−6を、150℃で、乾燥させた粉体のXRDパターンは、酸化セリウム(CeO)の回折ピークが見られ、また、エバポレータを使った、80℃で、乾燥させた粉体のXRDパターンにも、酸化セリウム(CeO)の回折ピークが、わずかであるが、見られた。これによって、粉体には、酸化セリウムが含有されることが確認できた。
サンプル5−6を、150℃で、乾燥させた粉体のSEM観察の結果、コアシェル型の粒子は、観察されなかった。得られた粉体は、酸化物と高分子の複合組成物と考えられる。以上のことから、加熱・還流温度が、110℃より低い場合は、コアシェル型の微粒子は得られないことが分かった。逆に云い換えると、コアシェル型の酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を得るには、110℃以上の加熱・還流温度が必要であることが分かった。
本実施例では、金を担持した(含有した)酸化セリウム多孔質厚膜のセンサ特性について調べた。実施例1におけるセンササンプル1−2に、金コロイド分散液(金コロイドの粒径:3nm)を滴下し、60℃で、乾燥させた後、400℃で、2時間、焼成して、約4wt%の金コロイドを担持した酸化セリウム多孔質厚膜(センササンプル6−1)を得た。センサ素子は、実施例1と同様にして作製した。
センサ特性は、基板の裏面のヒータで、約400℃に加熱して、実験を行って評価した。その結果を、図9に示す。図9には、金コロイドを担持していない、実施例1のセンササンプル1−2の結果も併せて示す。10000ppmのCOに対して、感度R(air)/R(CO)は、金コロイドを担持している場合、約4であった。一方、金コロイドを担持していない場合、感度R(air)/R(CO)は、2より小さく、金コロイドを担持させることにより、感度が2倍以上大きくなることが分かった。
酸化セリウム多孔質厚膜の焼成温度を、1000℃とした以外は、実施例1と同じ方法で作製したサンプル(センササンプル7−1)に、金コロイド分散液(金コロイドの粒径:3nm)を滴下し、60℃で、乾燥させた後、400℃で、2時間、焼成して、約4wt%の金コロイドを担持した酸化セリウム多孔質厚膜(センササンプル7−2)を得た。センサ素子は、実施例1と同様にして作製した。
センサ特性は、基板の裏面のヒータで、約450℃に加熱して、実験を行って評価した。その結果を、図10に示す。図10には、金コロイドを担持させる前のサンプル7−1及び前述の比較例1と同じ製法で作製したサンプル(比較例1’)の結果も併せて示す。比較例1’、サンプル7−1(金なし)、サンプル7−2(金担持)の順で、感度が上昇した。以上の実施例6及び7から、金コロイドを担持することにより、そうでないものと比べ、感度が上昇することが分かった。
以上詳述したように、本発明は、酸化セリウム厚膜を有するガスセンサ素子、その製造方法及びガスセンサに係るものであり、本発明により、応答速度が速く、かつ高感度な高性能の可燃性ガス応答性のガスセンサを提供することができる。また、本発明により、高感度なガスセンサを、非常に簡便な工程で作製し、提供することができる。また、本発明の中間生成物である、膜形成用ペーストは、長期安定性を有する。本発明は、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を含む酸化セリウム多孔質膜を有する、高速、高感度の応答性を示す高性能のガスセンサを提供するものとして有用である。
理想的なセンサ材料の構造の模式図を示す。 ガスセンサの製造方法のフロー図を示す。 実施例1のセンササンプル1−1のSEM像を示す。 実施例1のセンササンプル1−2のSEM像を示す。 空気から1%又は330ppmのCOを含む空気に切り換えたときのセンサ素子の酸化セリウム多孔質厚膜の抵抗変化を示す。 CO濃度とR(air)/R(CO)の関係を示す。ここで、COを含まない空気中の抵抗をR(air)、COを含む空気中での抵抗をR(CO)とする。 実施例2のサンプル3−2のSEM像を示す。 実施例3で作製した粉体のTEM観察の結果を示す。 実施例6のセンササンプル6−1の400℃におけるセンサ感度R(air)/R(CO)を示す。併せて、実施例1のセンササンプル1−2の結果も示す。 実施例7のセンササンプル7−2(金担持)の450℃におけるセンサ感度R(air)/R(CO)を示す。併せて、センササンプル7−1(金なし)、比較例1’の結果も示す。

Claims (15)

  1. 酸化セリウムの一次粒子が球状に凝集して集合した二次粒子からなるコア部分と、該二次粒子の表面に位置する有機高分子物質の層からなるシェル部分とで構成されるコアシェル型構造を有するコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子からなる膜状の前駆体を、熱処理して得られる、前記コア部分の酸化セリウム二次粒子同士が粒成長することなく存在し、粒子は球状で、該球状の粒子は機械的接触だけでなく、それぞれの粒子の接触点でネックが存在し、シェル部分の有機高分子物質が存在しない構造を有する酸化セリウム多孔質厚膜を、センサ素子として有することを特徴とする酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子。
  2. 前記コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子が、1)そのコア部分は、酸化セリウムの一次粒子が球状に集合した二次粒子であり、2)その二次粒子の形状は、揃っており、3)その二次粒子表面に、シェル部分となる有機高分子物質の層が存在し、4)該ハイブリッド微粒子の粒径の平均が、30nmから200nmであり、5)該ハイブリッド微粒子の粒径の変動係数が、大きくても0.25である、請求項1に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子。
  3. 前記高分子物質の層が、1)ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、又はポリエチレングリコール(PEG)で構成され、2)その層が、洗浄しても、コア部分の二次粒子から分離することがなく、3)その層が、15wt%から25wt%の割合で存在している、請求項2に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子。
  4. 一次粒子の径が、1から3nmである、請求項2に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子。
  5. 前記酸化セリウム多孔質厚膜が、金微粒子を含有する、請求項2に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子を製造する方法であって、膜形成用の酸化セリウム微粒子、及び有機溶媒に可溶性の有機高分子物質を含有するペーストを作る工程と、それを膜状に形成する工程と、形成された膜を熱処理する工程を含み、前記酸化セリウム微粒子として、酸化セリウムの一次粒子が球状に凝集して集合した二次粒子からなるコア部分と、該二次粒子の表面に位置する有機高分子物質の層からなるシェル部分とで構成されるコアシェル型構造を有するコアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を用いることを特徴とする酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
  7. セリウムの塩と前記高分子物質を高沸点有機溶媒に混合して混合物を得る工程と、その混合物を、110℃から200℃の温度で、加熱・還流することにより、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を析出する工程により製造される、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子を用いる、請求項6に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
  8. 前記コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子が、1)そのコア部分は、酸化セリウムの一次粒子が球状に集合した二次粒子であり、2)その二次粒子の形状は、揃っており、3)その二次粒子表面に、シェル部分となる有機高分子物質の層が存在し、4)該ハイブリッド微粒子の粒径の平均が、30nmから200nmであり、5)該ハイブリッド微粒子の粒径の変動係数が、大きくても0.25である、請求項6又は7に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
  9. 前記セリウムの塩が、硝酸セリウム六水和物である、請求項7に記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
  10. 前記高分子物質の分子量の大きさによって、コアシェル型酸化セリウム高分子ハイブリッド微粒子の粒径を制御する、請求項6から8のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
  11. 前記高分子物質の濃度である単位有機溶媒体積当たりに添加した高分子重量が、80kg/mから120kg/mである、請求項6から8のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
  12. 前記高分子物質のポリエチレングリコール換算での平均分子量が、4000から20000である、請求項6から8のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
  13. 前記高分子物質が、PVP、HPC、又はPEGである、請求項6から8のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
  14. 前記有機溶媒が、エチレングリコールである、請求項6から8のいずれかに記載の酸化セリウム多孔質厚膜を有するガスセンサ素子の製造方法。
  15. 請求項1から5のいずれか1項に記載のガスセンサ素子をガス検知手段として含むことを特徴とする可燃性ガス応答性を有するガスセンサ。
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