以下、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置をハイブリッドシステムの出力制御を行うパワーマネジメントコントロールコンピュータとして具体化した一実施形態について、図1〜5を参照して説明する。
図1に示すように本実施形態にかかるハイブリッドシステム10は、エンジン20と2つのモータジェネレータ120,150とを動力分割機構130並びにリダクションギア140を介して連結することによって構成されている。
第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150は、いずれも内部に永久磁石が埋め込まれたロータと三相コイルが巻回されたステータとを備える周知の同期発電電動機である。
動力分割機構130は、外歯歯車のサンギア131と、このサンギア131を取り囲む内歯歯車を備えるリングギア132と、サンギア131及びリングギア132の双方に噛合する複数のプラネタリギア133とを備える遊星歯車機構である。それぞれのプラネタリギア133はプラネタリキャリア134によって連結され、自転自在且つ公転自在に支持されている。プラネタリキャリア134は図1の中央右側に示されるようにダンパ110を介してエンジン20のクランクシャフト50に連結されている。サンギア131は第1のモータジェネレータ120に連結されている。リングギア132にはカウンターギア160が噛合されており、リングギア132の動力はこのカウンターギア160とファイナルギア170を介してディファレンシャル180に伝達される。
また、図1の中央左側に示されるようにリングギア132には、リダクションギア140を介して第2のモータジェネレータ150が接続されている。リダクションギア140は動力分割機構130と同様にサンギア141と、複数のプラネタリギア143を備える遊星歯車機構である。しかし、リダクションギア140にあってはプラネタリキャリア144が固定されている。そのため、リダクションギア140のプラネタリギア143は自転自在であるものの公転不能になっている。なお、第2のモータジェネレータ150はサンギア141に連結されている。
このように構成されたハイブリッドシステム10にあっては、プラネタリキャリア134から入力されるエンジン20からの動力が動力分割機構130を通じてサンギア131側とリングギア132側に分配されることになる。なお、リングギア132の歯数に対するサンギア131の歯数の比であるプラネタリ比は「ρ」であり、動力はこのプラネタリ比に応じて分配される。
リングギア132は、動力分割機構130を通じて入力されるエンジン20の動力と、リダクションギア140を通じて入力される第2のモータジェネレータ150の動力とを統合してディファレンシャル180に伝達する。これにより、ハイブリッドシステム10から出力された動力は、ディファレンシャル180を介して左右の駆動輪191a,191bに分配される。
第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150はインバータ210及びコンバータ220を介してバッテリ200に接続されている。インバータ210は第1のモータジェネレータ120と第2のモータジェネレータ150のそれぞれに対して6個の絶縁ゲートバイポーラトランジスタにより3相ブリッジ回路を構成している。これにより、インバータ210では、半導体スイッチング素子として絶縁ゲートバイポーラトランジスタのオン・オフを切り替えることにより、直流電流を三相交流電流に変換したり、三相交流電流を直流電流に変換したりすることができる。
コンバータ220はリアクトルと2つの絶縁ゲートバイポーラトランジスタとにより構成されており、一方の絶縁ゲートバイポーラトランジスタのオン・オフを切り替えることにより、バッテリ200から供給される電力を昇圧してインバータ210に供給する。また、他方の絶縁ゲートバイポーラトランジスタのオン・オフを切り替えることにより、インバータ210から供給される電力を降圧してバッテリ200に供給することもできる。
これにより、第1のモータジェネレータ120によって発電された交流電流は、インバータ210に伝達されるとともに同インバータ210によって直流電流に変換され、コンバータ220を通じて降圧された後にバッテリ200に充電される。
また、エンジン20の始動時には、バッテリ200から供給される直流電流がコンバータ220を通じて昇圧された後にインバータ210によって交流電流に変換されて第1のモータジェネレータ120に供給される。
第2のモータジェネレータ150も、第1のモータジェネレータ120と同じくインバータ210及びコンバータ220を介してバッテリ200に接続されている。そして、発進時や低速時、加速時にはバッテリ200から供給される直流電流がコンバータ220で昇圧された後にインバータ210によって交流電流に交換されて第2のモータジェネレータ150に供給される。
第1のモータジェネレータ120は、エンジン20の始動時にはエンジン20をクランキングするスタータモータとして機能する一方、エンジン20の運転中にはエンジン20の動力を利用して発電を行う発電機として機能する。
また、定常走行時や加速時には、第1のモータジェネレータ120によって発電された交流電流がインバータ210を介して第2のモータジェネレータ150に供給される。こうして供給された電流によって第2のモータジェネレータ150が駆動されると、その動力はリダクションギア140に伝達される。そして、リダクションギア140に伝達された動力がディファレンシャル180を介して駆動輪191a,191bに伝達される。
また、減速時には、駆動輪191a,191bから伝達される動力により第2のモータジェネレータ150が駆動される。このとき、第2のモータジェネレータ150が発電機として機能し、発電することで、駆動輪191a,191bから第2のモータジェネレータ150に伝達された動力が電力に変換される。こうして変換された電力は、インバータ210によって交流電流から直流電流に変換され、コンバータ220を通じて降圧された後にバッテリ200に充電される。
すなわち、減速時には、運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリ200に蓄えることにより、エネルギーを回収するようにしている。
図2に示すように、エンジン20は過給機21を備えている。エンジン20では、燃焼室26に吸気通路25と排気通路27とが接続されており、吸気通路25には、燃焼室26に供給される空気の量を調整するためのスロットルバルブ28が設けられている。また、吸気通路25には、過給機21のコンプレッサホイール22が設けられるとともに、排気通路27には、過給機21のタービンホイール23が設けられている。コンプレッサホイール22とタービンホイール23は同一の回転軸24で連結されている。また、排気通路27には過給機21のタービンホイール23を迂回するようにバイパス通路29が形成され、同通路29には排気の流量を調節するウェイストゲートバルブ30が設けられている。
エンジン20では、過給機21のコンプレッサホイール22によって圧縮された空気を吸入空気として、吸気通路25を通じて燃焼室26に吸入する。そして、この吸入空気は燃料と混合されて燃焼室26内で燃焼され、この焼燃後のガスが排気として排気通路27に送り出される。過給機21では、こうして排気通路27に送り出された排気のエネルギーによりタービンホイール23が回転させられることで、コンプレッサホイール22が回転し、吸気通路25の下流側へ空気が送り出されるようになる。また、ウェイストゲートバルブ30の開度を制御してバイパス通路29を通過する排気の量を調節することにより、タービンホイール23側に流れる排気の量が調節され、タービンホイール23の回転数が変更される。すなわち、こうしたタービンホイール23の回転数の調整を通じて過給圧が調整されるように過給機21が制御される。
こうしたハイブリッドシステム10の制御は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500から出力される制御信号に基づいて実行される。パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、ハイブリッドシステム10の各部を制御するための各種演算処理を実施する中央演算処理装置(CPU)、制御用のプログラムやデータが記憶された読み込み専用メモリ(ROM)、演算処理の結果などを一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)などを備えて構成されている。
また、図1に示すように、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500には、バッテリ監視ユニット250、モータ制御ユニット300、エンジン制御ユニット400が接続されている。
バッテリ監視ユニット250には、バッテリ200とコンバータ220との間の電力ラインに設けられた電流センサ230からの電流値信号、バッテリ温度センサ240からのバッテリ温度信号などが入力される。バッテリ監視ユニット250は、こうしたセンサから入力されたバッテリ200の状態に関するデータを必要に応じてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。なお、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ監視ユニット250から送信される電流センサ230の検出値の積算値に基づいてバッテリ200の蓄電量を演算する。
モータ制御ユニット300は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500からの出力要求に従い、インバータ210とコンバータ220を制御し、第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150を制御する。また、モータ制御ユニット300には第1のモータジェネレータ120の回転数Nm1を検出する回転センサ320と第2のモータジェネレータ150の回転数Nm2を検出する回転センサ350が接続されている。モータ制御ユニット300は、これら回転センサ320,350によって検出された回転数Nm1,Nm2の情報など、車両制御に必要な情報をパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。
エンジン制御ユニット400は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500からの出力要求に従い、エンジン20における燃料噴射制御や、点火時期制御、吸入空気量制御、過給機21の過給圧制御などを行う。エンジン制御ユニット400には、吸入空気量を検出するエアフロメータ410や、クランクシャフト50の回転数であるエンジン回転数NEを検出するクランクポジションセンサ420が接続されている。また、スロットルバルブ28の開度を検出するスロットルポジションセンサ430や、過給機21による過給圧を検出する過給圧センサ440なども接続されている。エンジン制御ユニット400は、必要に応じてこれらのセンサによって検出された情報をパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500には、さらに、アクセルの操作量を検出するアクセルポジションセンサ510、シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ520、車速を検出する車速センサ530などが接続されている。
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、アクセルの操作量と車速とに基づいてリングギア132に出力すべき要求トルクを算出し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギア132に出力されるように、エンジン20、第1のモータジェネレータ120及び第2のモータジェネレータ150を制御する。
具体的には、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン制御ユニット400による制御を通じて、以下のようにエンジン20の動作状態を制御する。すなわち、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン20の動作状態として、エンジン回転数NE及びエンジン出力トルクが、目標回転数NEt及び目標エンジントルクとなるように制御する。目標回転数NEt及び目標エンジントルクは、詳細には、以下のようにして設定される。すなわち、まずアクセル操作量と車速とに基づいて、エンジン20への走行要求パワーと、車両に要求されるトルクとして駆動輪191a,191bに連結されたリングギア132に出力すべき要求トルクを設定する。そして、バッテリ200の蓄電状態に基づいて、バッテリ200からエンジン20への充放電要求パワーを算出する。次いで、エンジン20の総要求パワーが、アクセル操作量と車速とに基づく走行要求パワーと、バッテリ200の充放電要求パワーとの和として算出される。パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、この総要求パワーを、同パワーマネジメントコントロールコンピュータ500が記憶している最適燃費マップに適用することで、エンジン20の目標回転数NEtと目標エンジントルクを決定する。
なお、この目標回転数NEtは、エンジン回転数NEの上限値NEmでガードされる。この上限値NEmは、エンジン20自体、各モータジェネレータ120,150及び動力分割機構130の各ギア131〜133の損傷防止などを目的として設定される。上述したようにエンジン20のクランクシャフト50は動力分割機構130を介して駆動輪191a,191bに連結されている。そのため、動力分割機構130の各ギア131〜133の回転数や、サンギア131に連結されている第1のモータジェネレータ120の回転数、リダクションギア140を介してリングギア132に連結されている第2のモータジェネレータの回転数は、エンジン回転数NEと車速に応じて変化する。したがって、エンジン回転数NEの上限値NEmは、エンジン20自体、各モータジェネレータ120,150及び動力分割機構130の各ギア131〜133の回転数のいずれもが過剰な回転数にならないようにそのときの車速及び回転数Nm1,Nm2に応じて設定される。
そして、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン回転数NEが目標回転数NEtとなるように、第1のモータジェネレータ120の発電トルクをフィードバック制御することで、エンジンの動作状態が目標回転数NEt及び目標エンジントルクとなる。
また、このようにして制御される第1のモータジェネレータ120の発電トルクは、エンジン20直達トルクとなる。そして、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、先に設定した駆動輪191a,191bに連結されたリングギア132に出力すべき要求トルクからエンジン20直達トルクを減算した不足分のトルクが、第2のモータジェネレータ150によりアシストされるよう、第2のモータジェネレータ150を制御する。
以上のようにして、エンジン20が出力する動力の一部を利用して第1のモータジェネレータ120を駆動し、そこで発電された電力を利用して第2のモータジェネレータ150を駆動することによってエンジン20の動力に第2のモータジェネレータ150の動力を加えて駆動輪191a,191bを駆動する。こうしてエンジン20が出力する動力の一部を第1のモータジェネレータ120に分配するととともに、第2のモータジェネレータ150の動力によって駆動をアシストすることにより、エンジン回転数NEを調整し、エンジン20を効率のよい運転領域で運転させつつ、要求動力が得られるようにする。
また、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、要求動力が大きい加速時などには、バッテリ200から第2のモータジェネレータ150に電力を供給し、第2のモータジェネレータ150によるアシスト量を増大させてより大きな動力を出力する。
さらに、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200の蓄電量が少ないときには、エンジン20の運転量を増大させ、第1のモータジェネレータ120における発電量を増大させることにより、バッテリ200に電力を供給する。エンジン20の運転量を増大させる場合には、過給機21による過給を実行することもある。一方で、バッテリ200の蓄電量が十分に確保されている場合には、エンジン20の運転を停止して要求動力に見合う動力を第2のモータジェネレータ150のみからリングギア132に出力するモータ運転も可能である。
なお、本実施形態では、バッテリ200の性能維持や劣化抑制などの観点から、バッテリ200には目標とする蓄電量の範囲が設定されている。バッテリ200の蓄電量が、この目標とする範囲の上限値を超えるとバッテリ200が過充電状態となり、この目標とする範囲の下限値を下回るとバッテリ200が過放電状態となる。したがって、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200の蓄電量がこの目標とする蓄電量の範囲となるように、第1のモータジェネレータ120による発電、及び第2のモータジェネレータ150による駆動輪191a,191bの駆動のアシストを制御する。
また、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、上記のように設定されるエンジン20の動作状態に基づき、エンジン20の目標回転数NEt及び出力トルクを上昇させる必要がある場合には、過給機21による過給を実行すべく目標過給圧を設定したり、過給機21による目標過給圧を上昇させたりするように過給機21を制御する。具体的には、車両の加速要求が大きく、バッテリ200の蓄電量がさほど多くないときには、エンジン20の総要求パワーが大きく算出される。したがってこのような場合には、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、過給機21による目標過給圧を大きな値に設定し、エンジン20の総要求パワーがさほど大きくない場合には、過給機21による過給が不要である旨を決定したり、低い目標過給圧を設定する。
パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、過給機21を制御するにあたって、基本的には、導出した目標過給圧の情報をエンジン制御ユニット400に送信し、エンジン制御ユニット400の制御を通じて過給圧センサ440によって検出される過給圧が目標過給圧となるように過給機21を制御する。具体的には、エンジン制御ユニット400が、図2に示すエンジン20においてウェイストゲートバルブ30の開度を調整することで、タービンホイール23を流れる排気の量を調整し、過給圧センサ440によって検出される過給圧が目標過給圧となるように制御する。
ところで、バッテリ200の状態によっては、充電量が大きくなることによって、バッテリの蓄電量が満充電状態を超えて過充電状態となったり、バッテリの劣化が進行しやすくなったりことがある。そのため、バッテリの状態によっては、バッテリへの充電量を制限することが好ましい。
このようにバッテリ200への充電量が制限される状況であるときに、上記のように過給圧を目標過給圧とすべく過給機21が制御されると、以下のような問題が生じる。すなわち、過給圧を目標過給圧とする制御がなされることで過給圧が高められると、エンジン20が出力するトルクが増大する。このとき、エンジン回転数NEが既に高回転数であると、増大したトルクでエンジン回転数NEが上昇して上限値NEmにまで達しても、増大したトルクが消費しきれない場合がある。そのため、この場合には、増大したトルクを動力分割機構130によって第1のモータジェネレータ120に分配することになる。
このように動力分割機構130を介してエンジン20からのトルクが第1のモータジェネレータ120に分配されると、第1のモータジェネレータ120による発電量が増大し、バッテリ200への充電量が増大することになる。したがって、バッテリ200への充電量を制限すべき状況であるにも拘わらず、バッテリ200への充電量が増大して過大となってしまうおそれがある。
そこで、本実施形態のパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200への充電量が制限される状況において過給圧を目標過給圧とする制御を行うことによって充電量が過大となるおそれがある場合には、過給圧を目標過給圧とする制御を行う代わりに、過給圧を目標過給圧よりも制限する。具体的には、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200への充電量が制限される状況において、エンジン回転数NEが上限値NEmに基づいて設定された所定回転数NEsを超えているときには、過給要求があっても、過給機21による過給を禁止するようにする。なお、こうして目標過給圧が制限されると、エンジン回転数NEが総要求パワーに対応する目標回転数NEtよりも低くなり、車速とアクセル操作量に基づく車両の要求駆動力が得られないといった自体が起こりうる。そのため、過給要求がある場合に過給制限を行う場合には、エンジン20の目標回転数NEを抑えつつ、出力トルクを増大させることによって車両の要求駆動力を得られるように制御したり、車両の要求駆動力が得られるように、第2のモータジェネレータ150により駆動輪191a,191bの駆動力をアシストするようにする。
なお、エンジン回転数NEの所定回転数NEsは、エンジン20自体や、エンジン20のクランクシャフトとともに回転する各モータジェネレータ120,150及び動力分割機構130の各ギア131〜133の損傷防止するために必要な余裕を確保するために、エンジン回転数の上限値NEmよりも小さな値に設定される。
また、本実施形態では、バッテリ200の温度が所定の温度範囲(例えば、−10℃〜50℃)外にあるときを、バッテリ200への充電量が制限される状況としている。これは、バッテリ200の温度が低いときには、性能維持や劣化抑制のために適した蓄電量の範囲が狭くなるため、過充電状態に陥りやすく、バッテリ200の温度が高いときには、バッテリ200への充電量が大きくなると、バッテリ200の劣化が進行しやすくなるためである。なお、この所定の温度範囲は、バッテリ200の温度が同温度範囲外にあることに基づいて、過充電や劣化の進行を抑制する上で適切な温度範囲を逸脱していることを推定できるように設定されていればよく、例示した−10℃〜50℃に限定されない。
以下、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500によって実行される過給機21の制御及びエンジン回転数NEの制御を詳細に説明する。パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、具体的には、図3のフローチャートに示す処理手順に従って、過給機21及びエンジン回転数NEを制御する。図3に示す一連の処理は、所定周期毎の割り込み処理として実行される。なお、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、図3に示す制御とは別に、エンジン回転数の上限値NEm及び目標回転数NEtを車両やエンジン20の状態に応じて導出する。また、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、図3に示す処理を通じてエンジン回転数NEが制御されているとき以外は、基本的には、エンジン回転数NEを目標回転数NEtとなるように制御する。
図3に示すように、過給機21及びエンジン回転数NEの制御がスタートすると、まずステップS11において、過給機21による過給が実行されているか否かが判定される。具体的には、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500が、導出した目標過給圧をエンジン制御ユニット400に送信することで、エンジン制御ユニット400によって、ウェイストゲートバルブ30の開度の調整を通じた過給圧の制御がなされているか否かを判定する。ステップS11において、ウェイストゲートバルブ30の開度の調整を通じた過給圧の制御がなされておらず、ウェイストゲートバルブ30の開度が全開であると判定されると、過給実行中ではないと判定されて(ステップS11:NO)、ステップS12に移る。
ステップS12では、過給要求があるか否かが判定される。具体的には、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500が、上記したように車両の加速要求などに応じて過給要求があるか否かを判定する。そして、ステップS12で過給要求がないと判定される場合には(ステップS12:NO)、ステップS12からエンドに移り、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は本処理を一旦終了する。
一方、ステップS12で過給要求があると判定されると(ステップS12:YES)、ステップS13で、車両の加速要求などに応じた目標過給圧が導出され、ステップS14に移る。
ステップS14では、バッテリ200の温度が所定の温度範囲(例えば、−10℃〜50℃)内にあるか否かが判定される。上記のように、バッテリ温度センサ240が検出したバッテリ200の温度がバッテリ監視ユニット250に入力されており、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500には、この情報が送信されている。そこで、ステップS14では、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500が、こうして把握したバッテリ200の温度に基づいてバッテリ200の温度が所定の温度範囲内にあるか否かを判定する。
ステップS14で、バッテリ200の温度が所定の温度範囲内にあると判定されると(ステップS14:YES)、ステップS15に移り、過給機21による過給圧が目標過給圧となるように制御する。すなわち、バッテリ200の温度が所定の温度範囲内にあるときには、バッテリ200の蓄電量の範囲がさほど狭くなく、またバッテリ200の充電によるバッテリ200の劣化もさほど進行しない。そのため、バッテリ200への充電量が大きくなっても、バッテリ200が過充電状態となる可能性が低く、バッテリ200の劣化が進行する程度が小さいため、バッテリ200の温度が所定の温度範囲内にあると判定された場合には、過給圧が目標過給圧となるように過給機21が制御される。すなわち、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、導出した目標過給圧をエンジン制御ユニット400に送信することで、エンジン制御ユニット400が、ウェイストゲートバルブ30の開度の調整し、過給圧センサ440によって検出される過給圧が目標過給圧となるように制御する。そして、ステップS15の処理の後、エンドに移り、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は本処理を一旦終了する。
ステップS14において、バッテリ200の温度が所定の温度範囲内にないと判定されると(ステップS14:NO)、ステップS16に移り、バッテリ200の温度に基づいて制限充電量Winを導出する。この制限充電量Winは、バッテリへの充電量の上限値であり、バッテリ200への充電量をより少なくする必要があるほど、小さい値に設定される。具体的には、バッテリ200の温度が所定の温度範囲よりも低い場合には、バッテリ200の温度が低いほどバッテリ200の所望とする蓄電量の範囲が狭くなり過充電状態となりやすいため、バッテリ200への充電量を少なくする必要があることから、制限充電量Winが小さい値となるように導出される。一方、バッテリ200の温度が所定の温度範囲を超えている場合には、バッテリ200の温度が高いほどバッテリ200への充電に対するバッテリ200の劣化が進行しやすいことから、バッテリ200への充電量を少なくする必要があり、制限充電量Winが小さい値となるように導出される。したがって、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200の温度が所定の温度範囲よりも低い場合には、その温度が低いほど制限充電量Winが小さくなるように導出し、バッテリ200の温度が所定の温度範囲外を超えている場合には、その温度が高いほど制限充電量Winが小さくなるように導出する。
ステップS16で、バッテリ200の制限充電量Winを導出した後には、ステップS17に移り、過給の制限と許可とを切り替える基準となるエンジン回転数NEの基準値である所定回転数NEsを、ステップS16で導出した制限充電量Winに基づいて導出する。ここで、バッテリ200への充電量が制限充電量Winを超えて充電量が過大となることを抑制するためには、バッテリの制限充電量Winが小さいほど、過給に伴って増大したトルクのうち第1のモータジェネレータ120に伝達される量を少なくする必要がある。そこで、本実施形態では、ステップS17において、ステップS16で導出された制限充電量Winが小さいほど、エンジン回転数NEの所定回転数NEsと上限値NEmとの乖離が大きくなるようにこの所定回転数NEsを設定する。
ステップS17で、エンジン回転数NEの所定回転数NEsを導出した後は、ステップS18に移る。そして、ステップS18において、エンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えているか否かを判定する。エンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えていない場合には(ステップS18:NO)、ステップS15に移り、過給圧が目標過給圧となるように過給機21を制御する。すなわち、ステップS18でエンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えていない場合には、過給圧を目標過給圧とするための制御が実行されてエンジン20が出力するトルクが増大しても、エンジン回転数NEが上限値NEmよりも十分に低くなっているため、バッテリ200への充電量は導出される制限充電量Winを超えないと推定される。したがって、この場合は、必要以上に過給を制限することなく、過給圧が車両の運転状態に適した目標過給圧となるように過給機21を制御する。
ステップS18で、エンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えていると判定された場合には(ステップS18:YES)、ステップS19に移り、エンジン回転数NEを低下させる制御を実行する。
すなわち、エンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えている場合に、過給圧を目標過給圧とすべく過給機21を制御すると、過給に伴って増大したトルクのうち、エンジン回転数NEが上限値NEmに到達しても消費しきれないトルクが多くなる。そのため、過給に伴って増大したトルクのうち第1のモータジェネレータ120に伝達される量が多くなり、バッテリ200への充電量が制限充電量Winを超えるおそれがある。そこで、この場合は、エンジン回転数NEを所定回転数NEs以下に低下させるべくエンジン回転数NEの低下制御を実行する。具体的には、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン制御ユニット400の制御を通じて、図2に示すエンジン20のスロットルバルブ28の開度を小さくして吸入空気量を減少させることで、エンジン回転数NEを低下させる。
また、ステップS19においてエンジン回転数NEを低下させるときにはステップS20において、過給機21による過給を禁止する。すなわち、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500が、過給機21による過給を禁止する旨の信号をエンジン制御ユニット400に送信し、エンジン制御ユニット400は、過給機21による過給を禁止する。具体的には、エンジン制御ユニット400が、エンジン20のバイパス通路29に設けられるウェイストゲートバルブ30を全開のままに制御する。これにより、バッテリ200への充電量が制限される状況で且つエンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えている状態で過給圧が高められることを抑制することができるため、過給によるエンジン20のトルクの増大に伴ってバッテリ200への充電量が過大となることを抑制することができる。そして、ステップS20で過給を禁止した後にエンドに移り、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は本処理を一旦終了する。
図3に示す処理が行われ、ステップS18でエンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えている(ステップS18:YES)と判定される度に、ステップS19でエンジン回転数NEの低下制御が行われ、ステップS20において過給機21による過給が禁止される。そして、エンジン回転数NEは徐々に低下して所定回転数NEs以下となった状況で図3に示す処理が行われると、ステップS18でエンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えていない(ステップS18:NO)と判定されるため、ステップS15に移り、過給圧を目標過給圧とする制御が実行される。
このように本実施形態では、過給機21による過給を禁止した状態でエンジン回転数NEを所定回転数NEs以下に低下させ、エンジン回転数NEが所定回転数NEs以下に低下した後に過給の制限を解除し、過給圧が目標過給圧となるように過給機21を制御する。したがって、過給圧が目標過給圧まで上昇し、エンジン20が出力するトルクが急増大したとしても、このトルクをエンジン20の回転数を上昇させることによって消費させることができるようになり、トルクの増大分が第1のモータジェネレータ120に過剰に伝達されることを抑制することができる。したがって、第1のモータジェネレータ120の発電量が大きくなることを抑制して、バッテリ200への充電量が過大となることを抑制することができる。また、所定回転数NEsは、エンジン20自体や、エンジン20とともに回転する各モータジェネレータ120,150及び動力分割機構130の各ギア131〜133の損傷などを防止するために必要な余裕を確保するために上限値NEmに基づいて設定されており、エンジン回転数NEを所定回転数NEs以下に低下させた後に過給の制限が解除される。したがって、エンジン20自体や、エンジン20とともに回転する各モータジェネレータ120,150、エンジン20とともに回転する動力分割機構130の各ギア131〜133の損傷などを抑制することができる。
図3に示す処理において、先のステップS11において、既に過給を実行中であると判定された場合には(ステップS11:YES)、ステップS21に移り、エンジン回転数NE低下制御後の過給実行中か否かが判定される。すなわち、このステップS21では、ステップS11で過給実行中であると判定された過給制御は、ステップS19でエンジン回転数NEの低下制御が実行されることによってエンジン回転数NEが所定回転数NEs以下となったことにより実行されている過給制御か否かを判定する。
そして、ステップS21で、エンジン回転数NE低下制御後の過給実行中であると判定されると(ステップS21:YES)、ステップS22において、過給開始から所定期間が経過しているか否かが判定される。この所定期間は、過給圧が目標過給圧となるように過給機21が制御され始めてから所定期間経過したことに基づいて、エンジン20が出力するトルクが安定している状況になったことを判定することができるようにその長さが設定されている。すなわち、目標過給圧が得られるように過給機21を制御し始めた直後は、エンジン20が出力するトルクが急激に増大するものの、時間の経過とともに、エンジン20が出力するトルクは安定していく。過給の制限が解除されてからある程度の期間が経過し、エンジン20が出力するトルクが安定している状況では、エンジン20が出力するトルクが急増大することに起因してバッテリ200への充電量が過大となる可能性は低い。したがって、ステップS22の判定を行うことで、エンジン20が出力するトルクが安定してバッテリ200への充電量が過大となる可能性が低い状況となっているか否かを推定することができる。
ステップS22で、過給開始から所定期間が経過している(ステップS22:YES)と判定されると、ステップS23に移り、エンジン回転数NEを目標回転数NEtとする制御が実行される。すなわち、上記のように、過給圧が目標過給圧となるように過給機21を制御し始めてから所定期間が経過した後には、エンジン20が出力するトルクが急増大することに起因してバッテリ200への充電量が過大となる可能性が低くなったと推定されるため、ステップS19の処理を通じて低下させていたエンジン回転数NEを目標回転数NEtまで高めるように制御する。そして、この制御を行った後にエンドに移り、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は本処理を一旦終了する。
一方、ステップS22で過給開始から所定期間が経過していないと判定された場合には(ステップS22:NO)、未だエンジン20のトルクが急増大しており安定していない状態である推定される。したがって、ステップS24に移り、エンジン回転数NEを目標回転数NEtとする制御を禁止し、エンジン回転数NEを過給の実行によって上昇している回転数のままとしておく。そして、エンドに移り、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は本処理を一旦終了する。
なお、バッテリ200の温度が所定の温度範囲内であり(ステップS14:YES)、バッテリ200への充電量が制限されていない場合や、バッテリ200の温度が所定の温度範囲外であってもエンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えていない場合に(ステップS14:NO且つステップS18:NO)、ステップS15において過給制御が実行されると、ステップS21でエンジン回転数NE低下後の過給制御ではないと判定される(ステップS21:NO)。したがって、この場合には、過給制御を実行するのに先立ってエンジン回転数NEを低下させる制御が行われていないため、ステップS21からエンドに移り、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は本処理を一旦終了する。
以上のように、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は過給機21及びエンジン回転数NEを制御する。こうした制御によって得られる作用を、図4及び図5を参照して説明する。
図4及び図5は、バッテリ200への充電量が制限される状況におけるエンジン回転数NEの推移を示すタイミングチャートである。各図において、実線はエンジン回転数NEを示し、一点鎖線はエンジン回転数NEの上限値NEmを示し、二点鎖線は過給を制限する基準となる所定回転数NEsを示している。なお、図4及び図5に示すタイミングチャートでは、車速が時間の経過とともに上昇しているため、一点鎖線で示すエンジン回転数NEの上限値NEmが時間の経過とともに上昇している。
図4に示すタイミングチャートでは、時刻T1までは、ウェイストゲートバルブ30の開度は全開に設定されており、過給機21による過給が実行されていない。図4において、時刻T1において過給要求があると、このときのバッテリ200の温度から導出した制限充電量Winに基づいてエンジン回転数NEの所定回転数NEsが導出される。上記したように、制限充電量Winが小さいほど、エンジン回転数NEの所定回転数NEsは、上限値NEmとの乖離ΔNEが大きくなるように設定される。
そして、時刻T1におけるエンジン回転数NEは、所定回転数NEsを超えていないため、過給が制限されることなく許可され、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、時刻T2でエンジン制御ユニット400による制御を通じて過給圧が目標過給圧となるように過給機21を制御する。これにより、時刻T2以降、エンジン回転数NEが上昇する。このように、エンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えていない場合には、過給機21による過給を実行しても、エンジン20が出力するトルクの増大分をエンジン回転数NEを上昇させることで消費することができる。したがって、このトルクの増大分が、第1のモータジェネレータ120に過剰に伝達されてバッテリ200への充電量が過大となることを抑制することができる。
また、図5に示すタイミングチャートでは、時刻T3までは、ウェイストゲートバルブ30の開度は全開に設定されており、過給機21による過給が実行されていない。図5において、時刻T3において過給要求があると、このときのバッテリ200の温度から導出した制限充電量Winに基づいてエンジン回転数NEの所定回転数NEsが導出される。
図5に示すタイミングチャートでは、時刻T3において、エンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えている。したがって、この場合は、上記したように、エンジン回転数NEを所定回転数NEs以下に低下させる制御が実行される。
時刻T4でエンジン回転数NEが所定回転数NEs以下に低下すると、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン制御ユニット400による制御を通じて過給圧が目標過給圧となるように過給機21を制御する。これにより、時刻T4以降、エンジン回転数NEが上昇する。このように、エンジン回転数NEを所定回転数NEs以下に低下させてから過給機21による過給を実行しても、エンジン20が出力するトルクの増大分をエンジン回転数NEを上昇させることで消費することができる。したがって、トルクの増大分が第1のモータジェネレータ120に過剰に伝達されてバッテリ200への充電量が過大となることを抑制することができる。
そして、時刻T4において過給機21による過給を開始してから所定期間が経過した時刻T5には、エンジン20が出力するトルクが安定していると推定されるため、エンジン回転数NEを目標回転数NEtとする制御が行われる。なお、このときの目標回転数NEtは、例えば上限値NEmに一致している。したがって、時刻T5以降には、エンジン回転数NEが更に上昇し、時刻T6にエンジン回転数NEが上限値NEmに達する。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の(1)〜(5)の効果を奏することができる。
(1)パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200への充電量が制限される状況であり、且つエンジン回転数NEがその上限値NEmに基づいて設定された所定回転数NEsを超えているときには、過給圧が目標過給圧よりも低い過給圧となるように過給機21を制御している。具体的には、過給機21による過給を禁止するようにしている。これにより、バッテリ200への充電量が制限される状況下でエンジン回転数NEが高いと推定されるときには、エンジン20が出力するトルクが急増大することを抑制して、過給によるエンジン20のトルクの増大に伴ってバッテリ200への充電量が過大となることを抑制することができる。また、バッテリ200への充電量が制限されない状況下や、エンジン回転数NEが所定回転数NEs以下のときには、過給機21による過給を必要以上に制限することなく、目標過給圧が得られるように過給機21を制御することができる。
(2)パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200への充電量が制限される状況であり、且つエンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えているときには、過給機21による過給を禁止しながら、エンジン回転数NEを所定回転数NEs以下に低下させる。そして、エンジン回転数NEが所定回転数NEs以下に低下した後に、過給圧が目標過給圧となるように過給機21を制御するようにしている。
これにより、過給圧が目標過給圧まで上昇し、エンジン20が出力するトルクが急増大したとしても、このトルクをエンジン回転数NEを上昇させることで消費できるため、トルクの増大分が第1のモータジェネレータ120に過剰に伝達されることを抑制することができる。したがって、第1のモータジェネレータ120の発電量が大きくなることを抑制して、バッテリ200への充電量が過大となることを抑制することができる。
また、エンジン20自体や、エンジン20とともに回転するモータジェネレータ120,150及び動力分割機構130の各ギア131〜133の損傷などを防止するために必要な余裕を確保するために、上限値NEmに基づいて設定された所定回転数NEs以下にエンジン回転数NEを低下させた後に過給の制限が解除される。したがって、エンジン20自体や、エンジン20とともに回転するモータジェネレータ120,150、エンジン20とともに回転する動力分割機構130の各ギア131〜133などを抑制するとともに、第1のモータジェネレータ120の発電量が大きくなることを抑制して、バッテリ200への充電量が過大となることを抑制することができる。
(3)パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン回転数NEが所定回転数NEs以下に低下し、過給圧が目標過給圧となるように過給機21を制御し始めてから所定期間が経過した後に、エンジン回転数NEをエンジン20の動作状態に適した目標回転数NEtとなるように制御するようにしている。すなわち、エンジン回転数NEを所定回転数NEs以下に低下させた状態で過給機21の制御が開始された後に所定期間が経過し、エンジン20が出力するトルクの変動がなくなったと推定されるときに、エンジン回転数NEをエンジン20の動作状態に適した目標回転数NEtとなるように制御するようにしている。これにより、エンジン20が出力するトルクが急増大することに起因してバッテリ200への充電量が過大となる可能性が低くなったときに、低下させられていたエンジン回転数NEが目標回転数NEtとなるように制御される。したがって、バッテリ200への充電量が過大となることを抑制しつつ、エンジン回転数NEが必要以上に長い期間に亘って低下させられることを抑制することができる。
(4)パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200の温度が所定の温度範囲外にあるときのバッテリ200への充電量を、バッテリ200の温度が所定の温度範囲内にあるときのバッテリ200への充電量よりも制限している。すなわちパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200の温度が所定の温度範囲外にあるときを、バッテリ200への充電量を制限する状況であるとして、過給を禁止するようにしている。これは、バッテリ200の温度が低いときには過充電状態に陥りやすく、バッテリ200の温度が高いときには、バッテリ200への充電量が大きくなるとバッテリ200の劣化が進行しやすくなるため、バッテリ200への充電量を制限する必要があるからである。上記実施形態によれば、バッテリ200の温度が所定の温度範囲外にあって、バッテリ200の温度が高すぎることが推定される場合やバッテリ200の温度が低すぎることが推定される場合には、バッテリ200の温度が所定の温度範囲内にあるときよりもバッテリ200への充電量が制限される。そして、このような状況で、エンジン回転数NEが所定回転数NEsを超えている場合には、過給圧が目標過給圧よりも低い過給圧となるように制限される。これにより、エンジン20が出力するトルクが急激に増大することに起因してバッテリ200の充電量が過大となることが抑制される。
(5)パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200への充電量が制限される状況では、バッテリ200への充電量の上限値である制限充電量Winを導出し、所定回転数NEsを、制限充電量Winが小さいほど、所定回転数NEsとエンジン回転数NEの上限値との乖離が大きくなるように導出するようにしている。これにより、バッテリ200の制限充電量Winが小さく、過給に伴って増大したトルクのうち第1のモータジェネレータ120に伝達される量をより少なくする必要があるときほど、より低い回転数で過給機21による過給が制限されるようになる。したがって、バッテリ200への充電量が過大になることを好適に抑制することができる。また、バッテリ200への充電量が制限される状況下であってもその制限充電量Winがさほど小さくない場合には、エンジン回転数NEが上限値に近いときに過給機21による過給が制限されるようになるため、過給機21による過給が必要以上に制限されることを抑制することができる。
なお、本発明にかかるハイブリッド車両の制御装置は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
・上記実施形態では、過給を制限するための基準となるエンジン回転数の所定回転数を、バッテリの制限充電量が小さいほど、所定回転数とエンジン回転数の上限値との乖離が大きくなるように設定している。しかしながら、所定回転数の設定態様はこの態様に限定されない。
具体的には、所定回転数は、検出される過給圧に対して目標過給圧が大きいほど、所定回転数とエンジンの回転数の上限値との乖離が大きくなるように設定するようにしてもよい。これにより、検出される過給圧に対して目標過給圧が大きいことによって、エンジンのトルクが第1のモータジェネレータに伝達されやすいほど、より低い回転数で過給が制限されるように過給機が制御されるため、バッテリへの充電量が過大となることを抑制することができる。また、検出される過給圧に対して目標過給圧がさほど大きくない場合には、エンジンのトルクのうち第1のモータジェネレータに伝達される量は少ないと推定されるため、こうした状況では上限値に近いときに過給機による過給が制限されるようになり、過給機による過給が必要以上に制限されることを抑制することができる。
さらに、所定回転数は、エンジンのトルクが第1のモータジェネレータへ過剰に伝達されることを抑制することができるように設定すればよく、制限充電量や、検出される過給圧に対する目標過給圧の大きさに依らず、所定回転数と上限値との乖離を一定に設定してもよいし、さらには所定回転数を一定に設定するようにしてもよい、
・上記各実施形態では、バッテリの温度が所定の温度範囲外にあるときをバッテリへの充電量が制限される状況としている。しかしながら、バッテリへの充電量が制限される状況を、他のパラメータに基づいて設定するようにしてもよい。具体的には、例えば、バッテリの温度に拘わらず、バッテリの実際の蓄電量とバッテリが満充電状態となる蓄電量との乖離が小さい場合には、バッテリへの充電量が制限される状況としてもよい。また、バッテリの実際の蓄電量とバッテリが満充電状態となる蓄電量との乖離が小さい場合と、バッテリの温度が所定の温度範囲外にあるときをバッテリへの充電量が制限される状況としてもよい。さらに、他のパラメータに基づいてバッテリへの充電量が制限される状況を設定するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、エンジン回転数低下制御後に過給制御を開始してから所定期間が経過すると、エンジン回転数を目標回転数とする制御を実行するようにしている。しかしながら、過給制御を開始してから所定期間が経過するよりも早いタイミングで、エンジン回転数を目標回転数とする制御を行ってもよい。すなわち、過給機による過給が開始されてから所定期間が経過していない場合には、エンジンのトルクが増大している可能性はあるものの、既にエンジン回転数低下制御が行われているため、増大するトルクが第1のモータジェネレータに伝達されることを抑制することはできる。したがって、仮に過給機による過給の開始直後であっても、エンジン回転数低下制御後に過給制御が実行されている場合には、エンジン回転数を目標回転数とする制御を行ってもよい。
・上記各実施形態では、バッテリへの充電量が制限される状況であり、且つエンジンの回転数が所定回転数を超えているときには、過給を禁止しながら、エンジンの回転数を所定回転数まで低下させた後に、過給圧が目標過給圧となるように過給機を制御するようにしている。しかしながら、バッテリへの充電量が制限される状況であり、且つエンジンの回転数が所定回転数を超えているときに、過給を禁止しながらエンジン回転数まで低下させた後に過給機を制御する場合に、エンジン回転数は所定回転数まで低下させなくてもよい。すなわち、エンジンの回転数を低下させた後に過給圧を目標過給圧とする制御を実行すれば、エンジン回転数を低下させる度合いに関わらず、回転数を低下させない場合よりも、エンジンが出力するトルクが第1のモータジェネレータに伝達することを抑制することができる。したがって、過給を禁止しながら、エンジンの回転数を低下させるにあたり、その低下させる度合いは、所定回転数以下に低下させるといった態様に限定されない。
・上記各実施形態では、バッテリへの充電量が制限される状況であり、且つエンジンの回転数が所定回転数を超えているときには、過給を禁止しながら、エンジンの回転数を低下させた後に、過給圧が目標過給圧となるように過給機を制御するようにしている。しかしながら、エンジンの回転数を低下させる制御を実行しなくてもよい。すなわち、バッテリへの充電量が制限される状況であり、且つエンジンの回転数が所定回転数を超えているときには、過給を禁止して過給を制限するのみでよく、この場合、エンジンが出力するトルクが第1のモータジェネレータに伝達することを抑制してバッテリへの充電量が過大となることを抑制することができる。
・上記各実施形態では、バッテリへの充電量が制限される状況であり、且つエンジンの回転数が所定回転数を超えているときには、過給要求があっても過給を禁止するようにしている。しかしながら、過給を禁止する制御に代わって、過給圧を目標過給圧よりも低い過給圧となるようにウェイストゲートバルブの開度を調整することで過給が制限されるように過給機を制御してもよい。
・上記実施形態では、バッテリへの充電量が制限される状況であり、且つエンジンの回転数が所定回転数を超えているときには、過給が実行されていない状況で過給要求がある場合に、過給圧が目標過給圧よりも低い過給圧となるように過給機を制御するようにしている。しかしながら、バッテリへの充電量が制限される状況であり、且つエンジンの回転数が所定回転数を超えているときには、既に過給が実行されている場合に現在の過給圧よりも目標過給圧がさらに高く設定された場合にも、過給圧が新たに設定された目標過給圧よりも低い過給圧となるように過給機を制御するようにしてもよい。これにより、目標過給圧の上昇によって過給圧が高められることに起因してエンジンのトルクが急増大することを抑制することができ、バッテリへの充電量が過大となることを抑制することができる。
・上記各実施形態では、ウェイストゲートバルブの開度調整により過給圧が調整されるように過給機を制御するようにしている。しかしながら、例えば、過給機がタービンハウジング内に開度調整可能なノズルベーンを有している場合には、このノズルベーンの開度を調整することで過給圧を制御するようにしてもよく、過給機によって過給圧を制御する方法は限定されない。