JP2015223907A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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達也 今村
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Abstract

【課題】変速時の電力収支方向の変化に起因する不都合の発生を防止する。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関200、第1電動機MG1及び第2電動機MG2を含む動力源と、動力分割機構300、変速部400と、バッテリ20とを備えるハイブリッド車両1を制御する。ハイブリッド車両の制御装置は、変速に伴う電力収支超過方向及び電力収支超過量を予測する予測手段と、予測された電力収支超過方向及び電力収支超過量に基づいて、変速時における内燃機関の出力を制御する制御手段とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば内燃機関及び電動機を動力源として備えるハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置の技術分野に関する。
ハイブリッド車両に備えられる変速機構として、例えば電動式の無段変速部や機械式の有段変速部が知られている。例えば特許文献1では、内燃機関、第1電動機及び第2電動機に連結された電動式差動部と、該電動式差動部に連結された有段変速部とを備えるハイブリッド車両が開示されている。
またハイブリッド車両では、電動機の電力源であるバッテリへの充放電を適切に実行するため、様々な制御が実行される。例えば特許文献2では、バッテリへの充電量が制限されており、且つ内燃機関の回転数が所定回転数を超えている場合に、過給圧を制御するのに代えて、過給圧を制限するという技術が開示されている。特許文献2では、バッテリの充電量が閾値以下である場合に、内燃機関をストイキ状態とし、内燃機関からの出力を利用して電動機で発電される電力をバッテリに充電するという技術が開示されている。特許文献3では、バッテリが過放電領域にあると判定された場合にはリーンバーンモードを禁止するという技術が開示されている。
特開2011−183980号公報 特開2013−159314号公報 特開2003−247442号公報 特開2000−175364号公報
上述した特許文献1に記載されているような変速部を備えるハイブリッド車両では、変速時において電力収支の方向が変化し得る。例えば、それまでバッテリからの放電により走行する状態であったものが、変速部による変速に伴い、バッテリに充電しながら走行する状態となることがある。電力収支の方向が変化すると、例えばバッテリに想定以上の充電が行われ、充電量超過となるおそれがある。充電量超過は、バッテリの劣化を促進させる原因となり得る。このように、変速時に電力収支方向が変化すると、結果としてバッテリの適切な運用が行えなくなるという技術的問題点が生ずる。
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、変速時の電力収支方向の変化に起因する不都合の発生を好適に防止可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
本発明のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関、第1電動機及び第2電動機を含む動力源と、前記内燃機関、前記第1電動機及び前記第2電動機を連結する動力分割機構と、前記動力分割機構に連結された変速部と、前記第1電動機及び前記第2電動機に電力を入出力可能なバッテリとを備えるハイブリッド車両を制御する装置であって、前記変速部による変速に伴う電力収支超過方向及び電力収支超過量を予測する予測手段と、予測された前記電力収支超過方向及び前記電力収支超過量に基づいて、前記変速部による変速時における前記内燃機関の出力を制御する制御手段とを備える。
本発明に係るハイブリッド車両は、駆動軸に対し動力を供給可能な動力源として、燃料種別、燃料の供給態様、燃料の燃焼態様、吸排気系の構成及び気筒配列等を問わない各種の態様を採り得る内燃機関と、例えばモータジェネレータ等の電動発電機として構成され得る第1電動機及び第2電動機とを少なくとも備えた車両である。これら内燃機関、第1電動機及び第2電動機は、動力分割機構を介して互いに連結されている。動力分割機構は、例えば遊星歯車機構として構成されており、複数の回転要素の各々が、内燃機関、第1電動機及び第2電動機と夫々連結されている。このような動力分割機構は、無段変速機として機能させることもできる。
また本発明に係るハイブリッド車両は、動力分割機構に連結された変速部を備えている。変速部は、例えば複数のギヤを有する差動機構と、それらの回転を制御するためのクラッチやブレーキ等を備えて構成されている。ただし、本発明に係る変速部の具体的な構成については特に限定されるものではなく、後述するように変速時において電力収支の超過が生じ得るものであれば、本発明の効果は発揮される。
本発明に係るハイブリッド車両は更に、第1電動機及び第2電動機に電力を入出力可能なバッテリを備えている。バッテリは、例えば例えばリチウムイオンバッテリ等を含んで構成されており、車両の動力源たる電動機が動作するための電力供給源や、電動機による回生で得られた電力の蓄電手段として機能する。なお、バッテリには、過充電や過放電に起因する劣化を抑制するために、制約値(具体的には、充電制約値及び放電制約値)が設定されている。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、このようなハイブリッド車両を制御する制御装置であって、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体の或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
本発明のハイブリッド車両の制御装置の動作時には、先ず予測手段によって、変速部による変速に伴う電力収支超過方向及び電力収支超過量が予測される。具体的には、予測手段では、変速に伴い電力収支が変化することにより電力収支超過(即ち、バッテリの充電制約値を超える充電、又は放電制約値を超える放電)が発生するか否かが判定される。そして、電力収支超過が発生する場合には、電力収支超過方向(即ち、電力収支超過が放電側で発生するのか、又は充電側で発生するのか)、及び電力収支超過量(即ち、どの程度バッテリ制約値を超えるのか)が予測される。
予測手段は、例えば予め実験的に又は理論的に、或いは経験的に求められた電力収支変動量(即ち、変速に伴う電力収支の変動量)を利用して、電力収支超過方向及び電力収支超過量を予測する。この際、電力収支変動量は、例えば変速種(即ち、アップシフト又はダウンシフト)や、パワーON/OFF(即ち、アクセルペダルが踏み込まれた状態での変速であるか否か)等に応じて複数パターン求められていることが好ましい。
ちなみに、通常の各種制御(即ち、上述した変速制御以外の制御)においては、電力収支超過は発生しないように制御が実行される。しかしながら、上述したように変速に伴う電力収支の変化が起こると、予期せぬ超過が発生するおそれがある。例えば、それまでの電力収支が放電側であったとしても、変速によって電力収支が大きく充電側に変動すると、充電制約値を超える充電が発生してしまうおそれがある。
電力収支超過方向及び電力収支超過量が予測されると、制御手段により、変速部による変速時における内燃機関の出力(即ち、内燃機関から出力される駆動力)が制御される。内燃機関の出力は、予測された電力収支超過方向及び電力収支超過量に基づいて制御される。例えば、充電側の電力収支超過が発生すると予測された場合には、電力収支が放電側となるように(即ち、電力収支超過量が小さくなる方向に)、内燃機関の出力が制御される。内燃機関の出力は、例えば過給圧の制御や空燃比の制御等によって実現できる。
上述したように内燃機関の出力を制御すれば、変速に伴う電力収支の変化に起因して電力収支の超過が発生してしまうような場合であっても、実際に発生する電力収支超過量を小さく或いはゼロにすることができる。即ち、変速が実行される前に電力収支超過の発生を予測しておくことで、変速時に発生してしまう電力収支超過量を低減できる。従って、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、電力収支の超過に起因する不都合(例えば、バッテリの劣化等)の発生を効果的に抑制することが可能である。
また、本発明のハイブリッド車両の制御装置の一態様として、例えば制御手段が、内燃機関の過給圧を制御することで、内燃機関の出力を制御可能であり、放電側の電力収支超過量が小さいほど、又は充電側の電力収支超過量が大きいほど、内燃機関の過給圧が小さくなるように制限するようにしてもよい。
この態様によれば、内燃機関の過給圧を制御することで、内燃機関の出力が制御される。具体的には、内燃機関の過給圧が高くなるように制御することで、内燃機関の出力が大きくされる。また、内燃機関の過給圧が低くなるように制御することで、内燃機関の出力が小さくされる。
本態様では特に、放電側の電力収支超過量が小さいほど、又は充電側の電力収支超過量が大きいほど、内燃機関の過給圧が小さくなるように制限される。即ち、放電側の電力収支超過が発生すると予測される場合には、予測された電力収支超過量が小さいほど、内燃機関の過給圧が小さくなるように制限される。一方、充電側の電力収支超過が発生すると予測される場合には、予測された電力収支超過量が大きいほど、内燃機関の過給圧が小さくなるように制限される。なお、過給圧の制限量については、放電側及び充電側の電力収支超過量の値に対応するものとして予め求めておけばよい。
ここで、内燃機関の過給圧が高くなるように制御されると、電力収支は充電側に変動する。逆に、内燃機関の過給圧が低くなるように制御されると、電力収支は放電側に変動する。このため、上述したように内燃機関の過給圧を制限すれば、放電側の電力収支超過が発生する場合には、変速時の電力収支が充電側に変動され、充電側の電力収支超過が発生する場合には、変速時の電力収支が放電側に変動されることになる。この結果、電力収支超過の発生を好適に低減することが可能となる。
更に、本発明のハイブリッド車両の制御装置の他の態様として、例えば制御手段が、内燃機関の空燃比を制御することで内燃機関の出力を制御可能であり、放電側の電力収支超過量が小さいほど、又は充電側の電力収支超過量が大きいほど、内燃機関の空燃比がリーン側になるように制御するようにしてもよい。
この態様によれば、内燃機関の空燃比を制御することで、内燃機関の出力が制御される。具体的には、内燃機関の空燃比が大きく(即ち、リッチ側に)なるように制御することで、内燃機関の出力が大きくされる。また、内燃機関の空燃比が小さく(即ち、リーン側に)なるように制御することで、内燃機関の出力が小さくされる。
本態様では特に、放電側の電力収支超過量が小さいほど、又は充電側の電力収支超過量が大きいほど、内燃機関の空燃比がリーン側になるように制御される。即ち、放電側の電力収支超過が発生すると予測される場合には、予測された電力収支超過量が小さいほど、内燃機関の空燃比がリーン側になるように制御される。一方、充電側の電力収支超過が発生すると予測される場合には、予測された電力収支超過量が大きいほど、内燃機関の空燃比がリーン側になるように制御される。なお、空燃比の制御量については、放電側及び充電側の電力収支超過量の値に対応するものとして予め求めておけばよい。
ここで、内燃機関の空燃比がリッチ側になるように制御されると、電力収支は充電側に変動する。逆に、内燃機関の空燃比がリーン側になるように制御されると、電力収支は放電側に変動する。このため、上述したように内燃機関の空燃比を制御すれば、放電側の電力収支超過が発生する場合には、変速時の電力収支が充電側に変動され、充電側の電力収支超過が発生する場合には、変速時の電力収支が放電側に変動されることになる。この結果、電力収支超過の発生を好適に低減することが可能となる。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
実施形態に係るハイブリッド車両の全体構成を示すスケルトン図である。 実施形態に係るハイブリッド車両の速度線図である。 実施形態に係るハイブリッド車両の作動係合表である。 実施形態に係るハイブリッド車両の内燃機関の構成を示す概略構成図である。 実施形態に係るハイブリッド車両の内燃機関の運転点を示すマップである。 第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を示すブロック図である。 第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。 変速時の電力収支変動量を条件別に示すマップである。 電力収支に超過が発生しない場合の過給圧制御を示すタイムチャートである。 放電側の電力収支超過量と過給圧制御量との関係を示すマップである。 充電側の電力収支超過量と過給圧制御量との関係を示すマップである。 電力収支に超過が発生する場合の過給圧制御を示すタイムチャートである。 過給圧制御が実行できない場合の変速遅延制御を示すタイムチャートである。 第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を示すブロック図である。 第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。 電力収支に超過が発生しない場合の空燃比制御を示すタイムチャートである。 放電側の電力収支超過量と空燃比制御量との関係を示すマップである。 充電側の電力収支超過量と空燃比制御量との関係を示すマップである。 電力収支に超過が発生する場合の空燃比制御を示すタイムチャートである。 空燃比制御が実行できない場合の変速遅延制御を示すタイムチャートである。
以下、ハイブリッド車両の制御装置の実施形態について説明する。
<ハイブリッド車両>
初めに、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置が搭載されるハイブリッド車両について、図1から図5を参照して説明する。
<ハイブリッド車両の全体構成>
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係るハイブリッド車両1の全体構成(特に、駆動機構の構成)について説明する。ここに図1は、実施形態に係るハイブリッド車両の全体構成を示すスケルトン図である。
図1に示すように、本実施形態に係るハイブリッド車両1は複数の動力源を組み合わせたハイブリッド車両として構成されている。具体的には、ハイブリッド車両1は、エンジン200、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を走行用動力源として備えている。
エンジン200は、ハイブリッド車両1の主たる動力源として機能する、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンである。
モータジェネレータMG1及びMG2は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた、本発明に係る「第1電動機」及び「第2電動機」の一例たる電動発電機である。モータジェネレータMG1及びMG2は、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える電動発動機として構成されるが、無論他の構成を有していてもよい。なお、モータジェネレータMG1及びMG2の回転数は、レゾルバ51及び52によって夫々検出可能とされている。
バッテリ20は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池として構成されており、モータジェネレータMG1及びMG2の各々に対して電力を供給可能とされている。また、バッテリ20は、モータジェネレータMG1及びMG2の回生によって得られた回生電力を充電可能とされている。バッテリ20には、例えば過充電や過放電による劣化を抑制するために充放電に制約が設けられている。具体的には、バッテリ20に対する充電については充電側制約値が設定されており、放電については放電側制約値が設定されている。なお、これら充電側制約値及び放電側制約値は、バッテリ20の状態に応じて可変に設定されてもよい。
エンジン200、モータジェネレータMG1及びMG2は、本発明の「動力分割機構」の一例であるシングルピニオン型の遊星歯車機構300を介して互いに連結されている。遊星歯車機構300は、外歯歯車のサンギヤS0と、サンギヤS0と同軸に配置された内歯歯車のリングギヤR0と、これらのサンギヤS0及びリングギヤR0に噛み合うピニオンを自転及び公転可能に保持するキャリアCA0とを有している。
エンジン200の出力軸であるエンジン出力軸5は、遊星歯車機構300のキャリアCA0に連結されており、エンジン出力軸5はキャリアCA1と一体回転する。そのため、エンジン200が出力するエンジントルクはキャリアCA1に伝達される。モータジェネレータMG1は、遊星歯車機構300のサンギヤS0に連結されている。モータジェネレータMG2は、遊星歯車機構300のリングギヤR0に連結された駆動軸6に連結されている。エンジン200、モータジェネレータMG1及びMG2から出力されるトルクは、駆動軸6を介して出力される。
駆動軸6には、ハイブリッド車両のギヤ比を変更する変速機400が連結されている。変速機400は、本発明に係る「変速部」の一例であり、2つの遊星歯車機構(具体的には、サンギヤS1、リングギヤR1及びキャリアCA1からなる遊星歯車機構、並びにサンギヤS2、リングギヤR2及びキャリアCA2からなる遊星歯車機構)と、第1クラッチC1及び第2クラッチC2と、一方向クラッチF1と、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2とを備えて構成されている。
2つの遊星歯車機構は、一方のキャリアCA1と、他方のリングギヤR2とが互いに連結されている。また、一方のリングギヤR1と、他方のキャリアCA2とが互いに連結されている。
第1クラッチC1は、駆動軸6及びサンギヤS2間の動力伝達状態を変更可能に構成されている。第2クラッチC2は、駆動軸6及びキャリアCA1間の動力伝達状態を変更可能に構成されている。
一方向クラッチF1は、キャリアCA1及びリングギヤR2間の動力伝達状態を所定の一方向について変更可能に構成されている。
第1ブレーキは、サンギヤS1の回転を固定可能に構成されている。第2ブレーキは、キャリアCA1及びリングギヤR2の回転を固定可能に構成されている。
変速機400を介して伝達されるトルクは、キャリアCA2を介して車軸側に出力されるよう構成されている。なお、車軸には車速センサ53が設けられており、車軸の回転数からハイブリッド車両1の車速を検出可能に構成されている。
なお、上述した変速機400の構成はあくまで一例であり、ハイブリッド車両のギヤ比を変更する機構として異なる形態の変速機400が用いられても構わない。
<変速機により実現されるギヤ比>
次に、図2及び3を参照しながら、本実施形態に係る変速機400により実現可能なギヤ比について具体的に説明する。ここに図2は、実施形態に係るハイブリッド車両の速度線図である。また図3は、実施形態に係るハイブリッド車両の作動係合表である。
図2及び図3に示すように、本実施形態に係る変速機400は、ハイブリッド車両1のギヤ比を1ST、2ND、3RD、4TH、及びR(リバース)の5段階で変更可能である。具体的には、第1クラッチC1、第2ブレーキB1及び一方向クラッチF1を係合すると共に、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1を解放することで、ギヤ比1ST(即ち、最もギヤ比の高い状態)が実現される。第1クラッチC1及び第1ブレーキB1を係合すると共に、第2クラッチC2、第2ブレーキB2及び一方向クラッチF1を解放することで、ギヤ比2ND(即ち、2番目にギヤ比の高い状態)が実現される。第1クラッチC1及び第2クラッチC2を係合すると共に、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び一方向クラッチF1を解放することで、ギヤ比3RD(即ち、3番目にギヤ比の高い状態)が実現される。第2クラッチC2及び第1ブレーキB1を係合すると共に、第1クラッチC1、第2ブレーキB2及び一方向クラッチF1を解放することで、ギヤ比4TH(即ち、最もギヤ比の低い状態)が実現される。第1クラッチC1及び第2ブレーキB2を係合すると共に、第2クラッチC2、第1ブレーキB1及び一方向クラッチF1を解放することで、ギヤ比R(即ち、出力される回転方向が逆となる状態)が実現される。
<ハイブリッド車両のエンジンの構成>
次に、本実施形態に係るハイブリッド車両1のエンジン200まわりの構成について、図4及び図5を参照して説明する。ここに図4は、実施形態に係るハイブリッド車両の内燃機関の構成を示す概略構成図である。また図5は、実施形態に係るハイブリッド車両の内燃機関の運転点を示すマップである。
図4において、本実施形態に係るエンジン200は、コンプレッサ110及びタービン120を備える過給エンジンとして構成されている。
コンプレッサ110は、流入された空気を圧縮し、圧縮空気として下流に供給する。タービン120は、エンジン200から排気管115を介して供給された排気を動力として回転する。タービン120は、シャフトを介してコンプレッサ110に連結されており、相互に一体に回転することが可能に構成されている。即ち、タービン120とコンプレッサ110とによって、ターボチャージャが構成されている。
エンジン200は、例えばシリンダブロック内にシリンダ201が4本直列に配置されてなる直列4気筒エンジンである。なお、ここでの詳細な図示は省略しているが、エンジン200は、各シリンダ201内部において空気と燃料との混合気が燃焼するに際して生じるピストンの往復運動を、コネクティングロッドを介してクランクシャフトの回転運動に変換することが可能に構成されている。
コンプレッサ110における入口側(即ち、コンプレッサ110より上流側)の吸気管101には、エアフローメータ102が設けられている。エアフローメータ102は、外部から吸い込まれた空気の量を検出することが可能に構成されている。また、エアフローメータ102の後段には、吸気絞り弁103が設けられている。吸気絞り弁103は、例えば電子制御式のバルブであり、その開閉動作が不図示のスロットルバルブモータによって制御されるように構成されている。吸気絞り弁103の開閉動作により、吸気管101に流入する空気の量が調整される。
コンプレッサ110における出口側(即ち、コンプレッサ110より下流側)であって、エンジン200における吸気側(即ち、シリンダ201より上流側)の吸気管111には、インタークーラ113が設けられている。インタークーラ113は、吸入空気を冷却して空気の過給効率を上昇させることが可能に構成されている。
エンジン200におけるシリンダ201内の燃焼室には、吸気管111を介して供給される空気と、インジェクタ210から噴射供給される燃料とが混合されてなる混合気が吸入される。吸気側からシリンダ201内部に導かれた混合気は、不図示の点火プラグや圧縮着火等によって点火せしめられ、シリンダ201内で爆発工程が行われる。爆発工程が行われると、燃焼済みの混合気(一部未燃状態の混合気を含む)は、爆発工程に続く排気工程において、不図示の排気ポートに排出される。排気ポートに排出された排気は、排気管115に導かれる。
タービン120における出口側(即ち、タービン120より下流側)の排気管121には、スタートコンバータ123と、後処理装置124とに加えて、EGR管125、EGRバルブ126、及びEGRクーラ127からなるEGRシステムが設けられている。
スタートコンバータ123は、例えば酸化触媒を含んで構成されており、タービン120を通過した排気中に含まれる物質を浄化する。
後処理装置124は、排気管122におけるスタートコンバータ123より下流側に設けられており、排気中に含まれる粒子状物質を捕集して減少させる。
EGR管125は、スタートコンバータ123の下流の排気を、コンプレッサ110の入口側である吸気管101に還流可能に構成されている。EGR管125上には、EGRバルブ126が設けられており、EGRガスの量が調節可能とされている。また、EGR管125上には、還流されるEGRガスを冷却するEGRクーラ127が設けられている。
図5において、本実施形態に係るエンジン200は、上述したように過給エンジンとして構成されているため、通常のNA(Natural Aspiration)燃焼に加えて、過給を行いながらの過給燃焼が実現可能とされている。また、これらNA燃焼及び過給燃焼の各々について、理論空燃比に近い濃度の混合気で燃焼を行うストイキ燃焼、及び理論空燃比より薄い混合気で燃焼を行うリーン燃焼が可能とされている。
各燃焼状態は、エンジン回転数及びエンジントルクとの関係から、図中の太い実線で示す最適燃費運転点に近い運転を実現するように選択される。ただし、必ずしも最適燃費運転点での運転が実現されずともよく、状況や仕様に応じて最適燃費運転点からずれた運転点での運転が実現されても構わない。
<ハイブリッド車両の制御装置>
続いて、上述したハイブリッド車両1を制御するものとして構成された本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置について、図6以降の図を参照しながら説明する。なお、以下では2つの実施例を挙げてハイブリッド車両の制御装置について説明する。
<第1実施形態>
以下では、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置について、図6から図13を参照して説明する。なお、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、ハイブリッド車両の変速時において過給圧を制御可能に構成されている。
<装置構成>
先ず、図6を参照しながら、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成について説明する。ここに図6は、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
図6において、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、ハイブリッド車両各部の制御を実行可能なECU500として構成されている。ECU500は、変速判定部510と、変速制御部520と、バッテリ制約判定部530と、電力収支予測部540と、過給圧制御量算出部550と、過給圧制御部560とを備えて構成されている。
変速判定部510は、ハイブリッド車両1の現在の車速や要求駆動力(言い換えれば、アクセルペダルの踏下量)等に応じて、変速機400による変速を実行すべきか否かを判定可能に構成されている。変速判定部510による判定結果は、変速制御部520及びバッテリ制約判定部530に夫々出力可能とされている。
変速制御部520は、変速判定部510の判定結果に応じて変速機400で実現されるギヤ比を変更可能に構成されている。具体的には、変速制御部520は、図2及び図3で示したように、変速機400における第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、及び一方向クラッチF1の係合状態を制御して変速を実現する。
バッテリ制約判定部530は、変速判定部510の判定結果から変速が行われると予測された場合に、バッテリ20に通常時とは異なる制約がかかっているか否かを判定可能に構成されている。バッテリ制約判定部530による判定結果は、電力収支予測部540に出力可能とされている。
電力収支予測部540は、本発明に係る「予測手段」の一例であり、変速機400による変速に伴う電力収支方向の変化及びバッテリ20において発生する電力収支超過量を予測可能に構成されている。電力収支予測部540は、例えば変速に伴う電力収支変動量を算出するためのマップ等を記憶している。電力収支予測部540の予測結果は、過給圧制御量算出部550に出力可能とされている。
過給圧制御量算出部550は、電力収支予測部540で予測された電力収支超過量に基づいて、過給圧の制御量を算出可能に構成されている。過給圧制御量算出部550は、例えば電力収支超過量から過給圧の制御量を算出するためのマップ等を記憶している。過給圧制御量算出部550の算出結果は、過給圧制御部560に出力可能とされている。
過給圧制御部560は、本発明に係る「制御部」の一例であり、過給圧制御量算出部550で算出された過給圧の制御量に応じて、過給圧の制御を実行可能に構成されている。また過給圧制御部560は、予期せぬ不具合等に起因して過給圧を制御できない場合に、変速制御部520に対して、変速遅延制御を実行するよう指令を出力可能に構成されている。
上述した変速判定部510、変速制御部520、バッテリ制約判定部530、電力収支予測部540、過給圧制御量算出部550、過給圧制御部560の各々において実行される具体的な処理については、以下において詳述する。
<動作説明>
次に、図7を参照しながら、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置において実行される処理について詳細に説明する。ここに図7は、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図7において、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作時には、先ず変速判定部510において変速が行われるべき状態であるか否かが判定される(ステップS101)。変速判定部510は、例えばハイブリッド車両1の車速やアクセル開度等に基づいて変速すべき状態であるか否かを判定する。なお、ここでの判定は、すぐにでも変速すべき状態であるか否かではなく、所定の期間内において変速すべき状態になり得るか否かを判定するようなものであってもよい。即ち、変速判定部510は、変速を予測するものとして機能してもよい。
変速すべき状態であると判定されると(ステップS101:YES)、バッテリ制約判定部520において、バッテリ20に通常時とは異なる制約がかかっているか否かが判定される(ステップS102)。例えば、放電側制約値又は充電側制約値が通常とは異なる値に変更されることで、バッテリ20への充放電が通常よりも大きく制限されているか否かが判定される。
なお、変速判定部510においてで変速すべき状態ではないと判定された場合(ステップS101:NO)、又はバッテリ制約判定部520においてバッテリ20に制約がかかっていないと判定された場合(ステップS102:NO)、過給圧は通常制御され(ステップS109)、一連の処理は終了する。即ち、本実施形態に係る過給圧制御は必要ないと判断される。
バッテリ20に制約がかかっていると判定されると(ステップS102:YES)、電力収支予測部530において、変速に伴う電力収支の変化が予測される(ステップS103)。具体的には、変速に伴う電力収支変動量(即ち、実際に変速が実行された場合に発生すると予測される電力収支の変動量)が予測される。以下では、図8を参照して、電力収支の予測方法について具体的に説明する。ここに図8は、変速時の電力収支変動量を条件別に示すマップである。
図8において、変速時の電力収支変動量は、例えば変速種類(即ち、アップシフトであるか又はダウンシフトであるか)、及びパワーのON/OFF(即ち、アクセルペダルが踏み込まれた状態での変則か否か)等の各種条件によって異なる。例えば本実施形態に係るハイブリッド車両1では、パワーON状態でアップシフトが行われると、電力収支が比較的大きく充電側に変動し、パワーOFF状態でアップシフトが行われると、電力収支が比較的小さく充電側に変動する。一方、パワーON状態でダウンシフトが行われると、電力収支が比較的大きく放電側に変動し、パワーOFF状態でダウンシフトが行われると、電力収支が比較的小さく放電側に変動する。このように、図8に示すような条件別のマップを予め求めておけば、電力収支変動量を容易に算出できる。
図8に戻り、電力収支変動量が予測されると、バッテリ20における電力収支超過(即ち、放電側制約値を超える放電又は充電側制約値を超える充電)が発生するか否かが予測される(ステップS104)。電力収支超過は、予測された電力収支変動量と、バッテリ20に設定されている充電側制約値及び放電側制約値とに基づいて予測することができる。
ここで、電力収支超過が発生しないと判定されると(ステップS104:YES)、過給圧は通常制御される(ステップS105)。以下では、図9を参照しながら、電力収支超過が発生しない場合の制御例について具体的に説明する。ここに図9は、電力収支に超過が発生しない場合の過給圧制御を示すタイムチャートである。
図9に示す例では、パワーON状態でアップシフトが行われた結果、変速時にエンジン200の回転数が低下し、電力収支は比較的大きく充電側に変動している。しかしながら、この例では、変速前の電力収支が放電側に寄っていたため、変速時においても電力収支の超過は発生せずに済んでいる。よって、特に過給圧を制御せずとも不都合は発生しない。
図8に戻り、電力収支超過が発生すると判定されると(ステップS104:NO)、過給圧制御部560により過給圧を制御可能な状態であるか否かが判定される(ステップS106)。なお、過給圧が制御できない状況としては、例えば機械的な故障等によって物理的に制御が不可能である状況や、過給圧を制御すると不都合が発生してしまうような状況が挙げられる。
過給圧を制御可能であると判定されると(ステップS106:YES)、過給圧制御部560により過給圧が制限される(ステップS107)。以下では、図10から図12を参照しながら、過給圧の制限について具体的に説明する。ここに図10は、放電側の電力収支超過量と過給圧制御量との関係を示すマップであり、図11は、充電側の電力収支超過量と過給圧制御量との関係を示すマップである。また図12は、電力収支に超過が発生する場合の過給圧制御を示すタイムチャートである。
図10及び図11に示すように、過給圧を制限する場合には、電力収支超過量に基づいて過給圧制御量(即ち、通常制御に対して過給圧を制限する度合い)が算出される。具体的には、放電側に超過が発生する場合には、超過量が小さいほど過給圧制御量は小さい値として算出される。一方、充電側に超過が発生する場合は、超過量が大きいほど過給圧制御量は小さい値として算出される。
ここで、エンジン200の過給圧が高くなるように制御されると、電力収支は充電側に変動する。逆に、エンジン200の過給圧が低くなるように制御されると、電力収支は放電側に変動する。このため、上述した過給圧制御量に従って過給圧を制限すれば、放電側の電力収支超過が発生すると予測される場合には、変速時の電力収支が充電側に変動され、充電側の電力収支超過が発生すると予測される場合には、変速時の電力収支が放電側に変動されることになる。この結果、電力収支超過の発生を好適に低減することが可能となる。
図12に示す例では、パワーON状態でアップシフトが行われることで、変速時にエンジン200の回転数が低下し、電力収支は比較的大きく充電側に変動している。この結果、図中の破線(予測値)を見ても分かるように、充電側制約を超えた充電が発生することが予測されている。
このような状況において、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、変速時におけるエンジン200の過給圧が小さくなるように制限される。この結果、電力収支は放電側に変動し、図中の実線(実値)を見ても分かるように、充電側制約内に収められている。従って、バッテリ20における電力収支超過は確実に防止される。
なお、ここでは充電側の超過が発生する場合についてのみ説明したが、放電側の超過が発生する場合であっても、電力収支が充電側に変動するような過給圧制御を行うことで、好適に電力収支超過を抑制できる。
図8に戻り、上述した過給圧の制限が実行できないと判定されると(ステップS106:NO)、変速制御部520により変速遅延制御(即ち、変速の進行を遅延させる制御)が実行される(ステップS108)。以下では、図13を参照しながら、変速遅延制御について具体的に説明する。ここに図13は、過給圧制御が実行できない場合の変速遅延制御を示すタイムチャートである。
図13に示す例では、図12の例と同様に、パワーON状態でアップシフトが行われることで、変速時にエンジン200の回転数が低下し、電力収支は比較的大きく充電側に変動している。この結果、図中の破線(予測値)を見ても分かるように、充電側制約を超えた充電が発生することが予測されている。
このような状況において、本実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、過給圧の制御が実行できない場合であっても、変速遅延制御により電力収支の超過を防止できる。変速遅延制御によれば、変速開始から変速完了までの時間が延長されることになる。これにより、エンジン200の回転数を低下させる時間が長くなる一方で、低下スピードは小さくなる。よって、電力収支が充電側に変動している時間も長くなる一方で、変動量は小さくなっている。この結果、図中の実線(実値)を見ても分かるように、充電側制約内に収められている。従って、バッテリ20における電力収支超過は確実に防止される。
なお、ここでは充電側の超過が発生する場合についてのみ説明したが、放電側の超過が発生する場合であっても、変速遅延制御により電力収支の変動量を小さくできるため、好適に電力収支超過を抑制できる。
以上説明したように、第1実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、変速時の電力収支を予測して過給圧が制御されるため、変速に伴って発生する電力収支の超過を好適に防止できる。
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置について、図14から図20を参照して説明する。なお、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、ハイブリッド車両の変速時において空燃比を制御可能に構成されているが、その他の多くの部分については第1実施形態と同様である。このため、以下では第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、重複する部分については適宜説明を省略するものとする。
<装置構成>
先ず、図14を参照しながら、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成について説明する。ここに図14は、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
図14において、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、ハイブリッド車両各部の制御を実行可能なECU500bとして構成されている。ECU500bは、変速判定部510と、変速制御部520と、バッテリ制約判定部530と、電力収支予測部540と、空燃比制御量算出部570と、空燃比制御部580とを備えて構成されている。即ち、第2実施形態に係るECU500bは、第1実施形態に係るECU500の過給圧制御量算出部550及び過給圧制御部560に代えて、空燃比制御量算出部570及び空燃比制御部580を備えている。
空燃比制御量算出部570は、電力収支予測部540で予測された電力収支超過量に基づいて、空燃比の制御量を算出可能に構成されている。空燃比制御量算出部570は、例えば電力収支超過量から空燃比の制御量を算出するためのマップ等を記憶している。空燃比制御量算出部570の算出結果は、空燃比制御部580に出力可能とされている。
空燃比制御部580は、本発明に係る「制御部」の一例であり、空燃比制御量算出部570で算出された空燃比の制御量に応じて、空燃比の制御を実行可能に構成されている。また空燃比制御部580は、Nox等の発生により空燃比を制御できない場合に、変速制御部520に対して、変速遅延制御を実行するよう指令を出力可能に構成されている。
上述した空燃比制御量算出部570、空燃比制御部580の各々において実行される具体的な処理については、以下において詳述する。
<動作説明>
次に、図15を参照しながら、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置において実行される処理について詳細に説明する。ここに図15は、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図15において、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の動作時には、先ず変速判定部510において変速が行われるべき状態であるか否かが判定される(ステップS201)。そして、変速すべき状態であると判定されると(ステップS201:YES)、バッテリ制約判定部520において、バッテリ20に通常時とは異なる制約がかかっているか否かが判定される(ステップS102)。
なお、変速判定部510においてで変速すべき状態ではないと判定された場合(ステップS201:NO)、又はバッテリ制約判定部520においてバッテリ20に制約がかかっていないと判定された場合(ステップS202:NO)、空燃比は通常制御され(ステップS209)、一連の処理は終了する。即ち、本実施形態に係る空燃比制御は必要ないと判断される。
バッテリ20に制約がかかっていると判定されると(ステップS202:YES)、電力収支予測部530において、変速に伴う電力収支の変化が予測される(ステップS203)。電力収支変動量が予測されると、バッテリ20における電力収支超過が発生するか否かが予測される(ステップS204)。
ここで、電力収支超過が発生しないと判定されると(ステップS204:YES)、空燃比は通常制御される(ステップS205)。以下では、図16を参照しながら、電力収支超過が発生しない場合の制御例について具体的に説明する。ここに図16は、電力収支に超過が発生しない場合の空燃比制御を示すタイムチャートである。
図16に示す例では、パワーON状態でアップシフトが行われた結果、変速時にエンジン200の回転数が低下し、電力収支は比較的大きく充電側に変動している。しかしながら、この例では、変速前の電力収支が放電側に寄っていたため、変速時においても電力収支の超過は発生せずに済んでいる。よって、特に空燃比を制御せずとも不都合は発生しない。
図15に戻り、電力収支超過が発生すると判定されると(ステップS204:NO)、空燃比制御部580により空燃比を制御可能な状態であるか否かが判定される(ステップS106)。なお、空燃比が制御できない状況としては、例えばNoxが多く発生しているような状況が挙げられる。
空燃比を制御可能であると判定されると(ステップS206:YES)、空燃比制御部580により空燃比が制御される(ステップS207)。以下では、図17から図19を参照しながら、空燃比の制御について具体的に説明する。ここに図17は、放電側の電力収支超過量と空燃比制御量との関係を示すマップであり、図18は、充電側の電力収支超過量と空燃比制御量との関係を示すマップである。また図19は、電力収支に超過が発生する場合の空燃比制御を示すタイムチャートである。
図17及び図18に示すように、空燃比を制御する場合には、電力収支超過量に基づいて空燃比制御量(即ち、通常制御に対して空燃比を制御する度合い)が算出される。具体的には、放電側に超過が発生する場合には、超過量が小さいほど空燃比制御量はリーン側の値として算出される。一方、充電側に超過が発生する場合は、超過量が大きいほど空燃比制御量はリーン側の値として算出される。
ここで、エンジン200の空燃比がリッチ側に制御されると、電力収支は充電側に変動する。逆に、エンジン200の空燃比がリーン側に制御されると、電力収支は放電側に変動する。このため、上述した空燃比制御量に従って空燃比を制御すれば、放電側の電力収支超過が発生すると予測される場合には、変速時の電力収支が充電側に変動され、充電側の電力収支超過が発生すると予測される場合には、変速時の電力収支が放電側に変動されることになる。この結果、電力収支超過の発生を好適に低減することが可能となる。
図19に示す例では、パワーON状態でアップシフトが行われることで、変速時にエンジン200の回転数が低下し、電力収支は比較的大きく充電側に変動している。この結果、図中の破線(予測値)を見ても分かるように、充電側制約を超えた充電が発生することが予測されている。
このような状況において、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、変速時におけるエンジン200の空燃比がリーン側に制御される。この結果、電力収支は放電側に変動し、図中の実線(実値)を見ても分かるように、充電側制約内に収められている。従って、バッテリ20における電力収支超過は確実に防止される。
なお、ここでは充電側の超過が発生する場合についてのみ説明したが、放電側の超過が発生する場合であっても、電力収支が充電側に変動するような空燃比制御を行うことで、好適に電力収支超過を抑制できる。
図15に戻り、上述した空燃比の制御が実行できないと判定されると(ステップS206:NO)、変速制御部520により変速遅延制御が実行される(ステップS208)。以下では、図20を参照しながら、変速遅延制御について具体的に説明する。ここに図20は、空燃比制御が実行できない場合の変速遅延制御を示すタイムチャートである。
図20に示す例では、図19の例と同様に、パワーON状態でアップシフトが行われることで、変速時にエンジン200の回転数が低下し、電力収支は比較的大きく充電側に変動している。この結果、図中の破線(予測値)を見ても分かるように、充電側制約を超えた充電が発生することが予測されている。
このような状況において、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、空燃比の制御が実行できない場合であっても、変速遅延制御により電力収支の超過を防止できる。変速遅延制御によれば、変速開始から変速完了までの時間が延長されることになる。これにより、エンジン200の回転数を低下させる時間が長くなる一方で、低下スピードは小さくなる。よって、電力収支が充電側に変動している時間も長くなる一方で、変動量は小さくなっている。この結果、図中の実線(実値)を見ても分かるように、充電側制約内に収められている。従って、バッテリ20における電力収支超過は確実に防止される。
なお、ここでは充電側の超過が発生する場合についてのみ説明したが、放電側の超過が発生する場合であっても、変速遅延制御により電力収支の変動量を小さくできるため、好適に電力収支超過を抑制できる。
以上説明したように、第2実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、変速時の電力収支を予測して空燃比が制御されるため、変速に伴って発生する電力収支の超過を好適に防止できる。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1 ハイブリッド車両
6 駆動軸
20 バッテリ
51,52 レゾルバ
53 車速センサ
101,111 吸気管
102 エアフローメータ
103 吸気絞り弁
110 コンプレッサ
113 インタークーラ
120 タービン
115,121 排気管
123 スタートコンバータ
124 後処理装置
125 EGR管
126 EGRバルブ
127 EGRクーラ
200 エンジン
201 シリンダ
210 インジェクタ
300 遊星歯車機構
400 変速機
500 ECU
510 変速判定部
520 変速制御部
530 バッテリ制約判定部
540 電力収支予測部
550 過給圧制御量算出部
560 過給圧制御部
570 空燃比制御量算出部
580 空燃比制御部
MG1,MG2 モータジェネレータ
S0,S1,S2 サンギヤ
CA0,CA1,CA2 キャリア
R0,R1,R2 リングギヤ
C1,C2 クラッチ
F1 一方向クラッチ
B1,B2 ブレーキ

Claims (1)

  1. 内燃機関、第1電動機及び第2電動機を含む動力源と、
    前記内燃機関、前記第1電動機及び前記第2電動機を連結する動力分割機構と、
    前記動力分割機構に連結された変速部と、
    前記第1電動機及び前記第2電動機に電力を入出力可能なバッテリと
    を備えるハイブリッド車両を制御する装置であって、
    前記変速部による変速に伴う電力収支超過方向及び電力収支超過量を予測する予測手段と、
    予測された前記電力収支超過方向及び前記電力収支超過量に基づいて、前記変速部による変速時における前記内燃機関の出力を制御する制御手段と
    を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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