JP5824131B1 - 生糸によるパイル織製品の製造方法及びパイル織製品 - Google Patents

生糸によるパイル織製品の製造方法及びパイル織製品 Download PDF

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Abstract

【課題】生糸を用いたパイル織りに際して、架橋薬剤によりセリシン定着処理を施した数本の生糸による片撚りの撚糸を用い、しかも生糸の片撚りを行うに際して撚りを非緊締の甘撚りとしておくことによりパイル抜けがなく安定性と絹本来の風合いが良好で吸湿性、放湿性等に優れた生糸によるパイル織製品の製造方法及びその方法により製造したパイル生地を提供せんとする。【解決手段】生糸を用いたパイル織に際して、セリシン定着処理を施した数本の生糸による片撚り撚糸を用いてパイル織を製織すると共に、生糸の片撚りに際しては風合いを勘案した弛緩状の甘撚りとすることを特徴とする生糸によるパイル織製品の製造方法及びその方法により製造したパイル生地【選択図】図3

Description

この発明は、繭から抽出した生糸のセリシンを定着させると共に、片撚り生糸によりパイル形態に製織した生糸によるパイル織製品の製造方法及びパイル織製品に関する。
従来、繭から抽出した生糸は二本のフィブロイン繊維をセリシンで包皮して構成されており、フィブロイン繊維は極細のフィブリル数100本から成り立っており一般にこのフィブリル繊維は摩擦に弱く乱反射して白っぽく見える。
かかる生糸からセリシンを除去したもの、すなわち、フィブロイン繊維そのものを絹糸と称しており、この絹糸の特性は吸湿性、放湿性等に優れ、肌触りが自然感触となり着心地が他の繊維の追従を許さないものであるが、上記した摩擦に弱く乱反射の白っぽい形態となる欠点を有していることも周知のことである。
そこで、かかる生糸の特性を利用してパイル織物を製織することにより肌触りの良好なタオル地等のパイル生地ができる。
かかるパイル織りに際してパイル生地のパイル基部を架橋薬剤を介したセリシンの定着化により固定する技術は、特許文献1、特許文献2等にすでに開示されている。
特開昭64−40635号公報 特開2011−236537号公報
ところが、かかるパイル織に用いる生糸は通常、諸撚り(モロヨリ)と称される撚糸をパイル経糸としてパイル織りする。
諸撚りとは、繭から抽出した二本のフィブロイン繊維を包含する1本の生糸を2本以上引揃えて片撚りした撚糸を、2本合わせて片撚りと反対の方向に撚合わせた
ものであり、撚りが安定して加熱しなくても撚りが解撚することがなく、安定した撚りによりパイル地に製造しやすく、通常生糸によるパイル織の製織はこの諸撚り糸をパイル経糸として用いられている。
しかし、諸撚りの生糸でパイル地を製織する場合は、セリシン定着による固化現象と複雑な撚りにより感触がごわつきやすく、また、諸撚りを構成する生糸が多数本となり、撚りによる生糸の拘束で各糸条間に間隙が生起して織り密度が希薄化して吸湿性や放湿性、保温性、耐摩耗性、弾力性、手触り感触等の点で不利となる欠点を有していた。
かかる諸撚りによるパイル織の欠点を片撚りで解決する方法は未だ実施されていない。
その理由としては、従来そもそも生糸の片撚りでパイル織物を製織するという発想そのものがなかったことに起因する。片撚りは前述のように繭から抽出したセリシン包皮の生糸を数本、通常4本を撚って織糸を形成するため製織工程時に各生糸がバラバラになりやすく、そのため撚り止めの作業手間を要し、他方バラバラになる欠点を防止するためにはきつい撚りとせざるを得ず、そうすると風合いがなくなり絹本来の手触りと風合いを減殺してしまうことになる。
本発明では、生糸を用いたパイル織りに際して、架橋薬剤によりセリシン定着処理を施した4本〜8本の生糸による片撚りの撚糸を用い、しかも生糸の片撚りを行うに際して撚りを非緊締の甘撚りとしておくことによりパイル抜けがなく安定性と絹本来の風合いが良好で吸湿性、放湿性等に優れた生糸によるパイル織製品の製造方法及びパイル織製品を提供せんとするものである。
この発明は生糸を用いたパイル織に際して、セリシン定着処理を施した4〜8本の生糸による片撚り撚糸を用いてパイル織物を製織すると共に、生糸の片撚りに際しては風合いを勘案した弛緩状の甘撚りとすることを特徴とする生糸によるパイル織製品の製造方法を提供せんとするものである。
また、セリシン定着処理を施した4〜8本の生糸を用いて、弛緩状の甘撚りとした片撚り撚糸によりパイル織製としたパイル織製品を提供する。
この発明は生糸を用いたパイル織に際して、セリシン定着処理を施した4〜8本の生糸による片撚り撚糸を用いてパイル織物を製織すると共に、生糸の片撚りに際しては風合いを勘案した弛緩状の甘撚りとすることを特徴とする生糸によるパイル織製品の製造方法及びパイル織製品としたことにより、セリシンがパイルの基端で定着してバラバラになりがちな片撚りの撚糸を束ねてパイル織の形状を強固に保型可能とし、パイル織りの織布としての使用に際して風合いを感じさせながら吸湿性を向上することができる。
更には、特に風合いを勘案した片撚りの甘撚り状態としたことにより、パイル織とした場合に隣接するパイル間が均等に整順した並びとなって緻密なパイル地となりパイル形態の安定性を向上し、絹特有の特性である吸湿性、放湿性等をより発揮することができる効果があり、また耐摩耗性も良好となり、パイル地が整順したパイル保型状となり弾力性も向上する効果がある。
特に片撚りの生糸において撚り方を緊締した状態ではなく、弛緩状態の甘撚りとしたことにより、生糸による片撚り撚糸がパイル織りに製織(パイル立て運動)される際に定着セリシンに内包されたフィブロイン繊維が互いに隣接する片撚り撚糸のフィブロイン繊維と絡む時に片撚りが弛緩状態の甘撚りであることから、その間に風合いに最適の間隙を生起すると共にその間隙がパイル間の間隙と相俟って生地表面にざらつき感を生起することになり、パイル生地とした場合に人肌に生地表面のざらつきの存在感を付与し、例えば石鹸の泡立ちを良好にし、赤ちゃんのような敏感な肌に乾布摩擦布として心地よい刺激を付与することができる効果がある。
生糸を示す断面図 生糸を撚り合わせた片撚り撚糸を示す概念図 (a)片撚り撚糸を用いたパイル織を示す模式図(b)片撚り撚糸を用いたパイル織を示す模式図
この発明は、生糸を用いたパイル織に際して、セリシン定着処理を施した4〜8本の生糸による片撚り撚糸を用いてパイル織物を製織すると共に、生糸の片撚りに際しては風合いを勘案した弛緩状の甘撚りとすることを特徴とする生糸によるパイル織製品の製造方法を提供するものである。
また、セリシン定着処理を施した4〜8本の生糸を用いて、弛緩状の甘撚りとした片撚り撚糸によりパイル織製としたパイル織製品を提供する。
この発明の実施例を図面に基づき詳説する。
図1は、繭から抽出した状態の糸、すなわち生糸(きいと)aの拡大断面図を示しており、内部にフィブロイン繊維(絹)b,bを二本含んでセリシンcで包皮されている。
通常、セリシンが重量比約25%でフィブロイン繊維が重量比約75%より構成されており、フィブロイン繊維b中には、数100本の極細のフィブリルという繊維が含まれている。
一般的にかかる極細繊維のフィブリルは摩擦に弱くその乱反射で白っぽく見える。
図2に示すようにかかるセリシン包皮の生糸aを4本撚り合わせて片撚りSとした未精練生糸とし、次いで架橋剤により、セリシンの定着処理を行う。
架橋剤としては、ジクロロトリアジン系架橋剤、ポリハロゲノピリミジン系架橋剤、ジフルオロモノクロロピリミジン系架橋剤、フロロメチルクロルピリミジン系架橋剤、ジクロロキノキザリン系架橋剤及び/又はグリシジルエーテル系架橋剤等の単独或いは混合物を使用する事が出来る。
これらの架橋薬剤及び助剤等を使用し、チーズ染色機、綛染色機等を用いて、70°〜90°Cで70分間循環処理後水洗し、さらに、弱酸性液で10分間循環処理した後水洗して乾燥することによって、セリシンを生糸に固着すると共にウォッシャブル性を付与する。
4本の生糸a,a,a,aにより撚りを行うについては片撚りSとし、しかも撚り方は弛緩状態の甘撚りとする。
通常生糸の撚り方としては、甘撚り、普通撚り、強撚りの三種が知られている。
甘撚りとは、生糸1mあたり約300回以下の撚り数(300個の撚り部)の撚り方であり、普通撚りとは、生糸1mあたり約500〜600回の撚り数(500〜600個の撚り部)の撚り方であり、強撚りとは、生糸1mあたり約800回以上の撚り数(800個以上の撚り部)の撚り方を指す。
かかる生糸の撚り数によって織物の物性が異なってくる。
すなわち、本発明ではパイル織の製織において使用する生糸を所定の甘撚り生糸とすることにより従来の生糸によるパイル地とは全く異なる風合いと機能を生成することに特徴を有する。
本発明では、繭から抽出した1本の生糸を数本束ね、束ねた生糸を数本引揃え片撚りし、60〜180デニールの糸とし、かかる片撚りの生糸を用いてパイル織の製織をする。
(デニールとは糸の太さを表わす単位であり、1gで9,000mあるものを1デニールとしており、9,000mで重量が増えるほど糸が太くなり、デニール数も多くなる)
本発明では、60〜180デニールの生糸を片撚りで1mあたり80回〜200回の撚りをかけた生糸をパイル経糸として使用し、パイル織物の製織を行う。または、12〜20デニールの生糸を片撚りで1mあたり80回〜200回の撚りをかけた生糸を数本引揃えてパイル経糸として使用し、パイル織物の製織を行う。
従って、通常のパイル織の製織で約3mmのパイル高さのパイル地とした場合は、例えば撚り回数を100回とした場合において約10mmの長さの生糸に1回の撚り(1個の撚り部)が形成されることになる。
すなわち、図3(a)に示すように、片撚りの撚り部dと撚り部dとの間隙Lは約10mmとなり、パイル高さを約3mmとするパイル地においては1個のパイルに1個の撚り部dが形成されるか、あるいはパイル基部に撚り部が存在してパイルそのものには撚り部dが存在しないことになる。
図3(b)に示すように、仮に撚り回数を約200回の片撚りとした場合においては、10mmの長さの生糸に2回の撚り(2個の撚り部d)が形成されるため、約3mmの高さのパイル地においては1個のパイルに最大で2個か或は1個の撚り部が存在することになる。
しかも、パイルの撚り部間には、繭から抽出した生糸の束ね糸が形成されているだけであるから、束ね糸表面がばらけやすく生糸の毛羽立った状態となる。
以上より想定されることは、約3mmの高さのパイル地においては、片撚りの撚り部が1個のパイル(輪奈)に0〜2個しか存在しないことになり、かかる状況のパイル地の風合いや吸湿、保温機能等を考察すると次のような結論となる。
すなわち、撚り部がパイルに0〜2個しか存在しないため、パイルを構成した生
糸間に所定の間隙が形成され、この間隙においては、20本〜60本束ねた束ね糸の生糸表面に微細な生糸がうぶ毛状の植生状態となり、かつ撚り部間で生糸がばらけた状態となっている。
従って各パイル間には生糸の微細な立毛或はばらけた生糸が密集して保温機能や毛細管現象による吸湿機能をより向上することができると共に、パイルの撚り部間では微細な生糸の立毛やばらけた細毛が密集状態となり風合いも良好となる。
更には、撚り部が一定間隔毎に点在して数本の束ね糸を片撚り状態としているた
めパイルを可及的に整順して製織することができ、パイル地を全体的に均一な風合
いとすることができる。
このような撚り方によって、パイル経糸として使用する際に互いの糸条間の間隙が整順して形成されていくため、隣接のパイル同士が甘撚りの片撚り生糸によって密となっている。
すなわち、甘撚りの片撚り生糸でパイル織物を製織すると、まず生糸が甘撚りの片撚りであることから各生糸間に間隙が形成されて片撚りの生糸に柔軟性が生起する。かかる柔軟性の生糸でパイル織物を製織すると各パイル形成が諸撚りに比べ片撚りの単純撚りであることから各パイルを整列して製織することができ、更には各パイルを編製した片撚り生糸が甘撚りの柔軟性を有していることから、各パイル間がその分密となりパイル織物の製織後においてはパイル生地そのもののパイルが密接した状態となり、かかるパイル生地で人肌を摩擦するとパイルの凸状形態による刺激が充分に伝わり、かつ、パイルそのものの生糸特性による風合いも良好で赤ちゃん等の柔肌に充分に対応できる。
このように甘撚りの片撚り生糸によってパイル織物を製織するために、パイル織の前に予め架橋剤によるセリシン定着処理を行う。
すなわち、弛緩状の甘撚りで構成した未精練の生糸の片撚りを架橋剤によってセリシン定着を行い、その後にパイル織物を製織する。
他の実施例としては、弛緩状態の甘撚りで構成した未精練の片撚り生糸で予めパイル織物を製織し、その後にセリシン定着加工を行う。
また、他の実施例としては、繭から抽出した生糸の状態で架橋剤によるセリシン定着処理を行いこのセリシン定着生糸を4本甘撚り状態で片撚りとし、この片撚り生糸を用いてパイル織物を製織する。
いずれのセリシン定着の実施例においても、甘撚り状態の片撚り生糸を用いてパイル織物を製織することにおいては同様であり、セリシン定着のタイミングがそれぞれ異なるものである。
a 生糸
b フィブロイン繊維
c セリシン
d 撚り部
S 片撚り

Claims (2)

  1. 生糸を用いたパイル織に際して、セリシン定着処理を施した4〜8本の生糸による片撚り撚糸を用いてパイル織を製織すると共に、生糸の片撚りに際しては風合いを勘案した弛緩状の甘撚りとすることを特徴とする生糸によるパイル織製品の製造方法。
  2. セリシン定着処理を施した4〜8本の生糸を用いて、弛緩状の甘撚りとした片撚り撚糸によりパイル織製としたパイル織製品
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