JP5822859B2 - 水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液の処理方法 - Google Patents
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Description
また、このエッチング処理により、基板から剥がれたクロムが液中に溶け込み、クロムが溶け込む事により、フェリシアン化カリウムが還元されてフェロシアン化カリウムとなる。ただし、全てが還元されるわけではないので、エッチング廃液中にはフェリシアン化カリウムとフェロシアン化カリウムが混在した状態となっている。また、このような廃液は一般にpH14の強塩基性になっている。
かかる廃液を排出する廃棄物排出事業者は、従来、タンクを備えた車両で廃液処理施設を備えた産業廃棄物処理業者に廃液を運搬し、廃液処理させているのが一般的である。
まず、従来フェリシアン化カリウムやフェロシアン化カリウムなどの可溶性鉄シアノ錯体を処理する方法として、可溶性鉄シアノ錯体を不溶化してろ過などにより除去する方法が考えられている。
すなわち、かかる処理法では、フェロシアン化カリウムの場合、下記反応式(4)に示すようにして、不溶化物が得られる。
また、メッキ廃液を80℃の高温下で次亜塩素酸塩処理する方法も提案されているが、表1に示す金属シアノ錯体の解離定数からわかるように鉄シアノ錯体は他の金属シアノ錯体と較べ、極めて安定で濃度が1%以上の高濃度の廃液処理法としては適用できない。
好ましくは、上記目的に加え、不溶化後、減量・減容化するに至るまでの不溶化処理液及び/又は凝集沈殿スラッジにおいても、遊離シアンの溶出を抑えることを目的としている。
そして、加水分解反応は、下記反応式(8)及び(9)に示すように、水素イオンによる触媒作用、あるいは、下記反応式(10)及び(11)に示すように、水酸化物イオンによる触媒作用によるものと考えられる。
すなわち、本発明にかかる水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液の処理方法(以下、「本発明の処理方法」と記す)は、水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液に、水溶性鉄シアノ錯体を不溶化しうる金属化合物を添加して全水溶性鉄シアノ錯体を鉄シアノ錯体水不溶化物とする不溶化工程を備える鉄シアノ錯体廃液の処理方法であって、前記不溶化工程で不溶化された鉄シアノ錯体水不溶化物を含む不溶化処理液又はこの不溶化処理液の凝集沈殿スラッジのpHを6.0〜8.5に保持した状態で前記不溶化処理液又は凝集沈殿スラッジを50℃〜160℃の温度条件で蒸発乾固することを特徴としている。
本発明の処理対象となる廃液は、鉄シアノ錯体水不溶化物を含むものである。例えば、上述のように、フェリシアン化塩とフェロシアン化塩が混在したエッチング廃液などが挙げられる。
また、フェリシアン化塩を還元剤で還元してフェロシアン化物に還元したものであっても良い。還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、過酸化水素、蓚酸、遷移金属の2価塩などが挙げられる。
上記金属化合物としては、水溶性鉄シアノ錯体を不溶化することができれば、特に限定されないが、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、すずなどのMe(II)の塩化物、硫酸塩、金属炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物などの2価金属化合物や、鉄(II)、鉄(III)の塩化物、硫酸塩、金属炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物などの鉄化合物が挙げられ、これらが、単独で用いられてもよいし、併用されても構わない。また、これらの金属化合物は、無水物でも、水和物でも構わない。
すなわち、比較的安価で入手可能な鉄化合物を用いて、不溶化物であるプルシアンブルーを生成させたのち、下記反応式(12)に示すように、廃液中に副生物として残る水溶性のベルリン−ホワイトをMe(II)の化合物で不溶化物にすることで、比較的高価なMe(II)の化合物の使用量を少なくすることができる。
水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液への金属化合物の添加量は、全水溶性鉄シアノ錯体を不溶化するのに必要な量であれば、特に限定されない。
例えば、上記Me(II)の化合物のみで不溶化を図る場合、廃液中の水溶性鉄シアノ錯体に対して1.0〜5.0モル当量とすることが好ましく、2.0〜5.0モル当量とすることがより好ましい。
すなわち、Me(II)の化合物の添加量が反応式(4)で示される当量の1.0倍量未満では十分な鉄シアノ錯体の不溶化の効果が得られず、一方、5.0倍量を越えて添加しても効果は改善されず、薬剤費用が増える上に得られるスラッジ量が嵩張ることになる。
一方、鉄化合物及びMe(II)の化合物の添加量が多すぎると、薬剤費用が増える上に得られるスラッジ量が嵩張ることになる。
蒸発乾固は、pH調整された不溶化処理液を直接蒸発乾固するようにしても、pH調整した後、凝集沈殿により得られたスラッジを蒸発乾固するようにしても構わない。また、凝集沈殿する場合、凝集物の沈降速度を速めるために高分子凝集剤を使用することも出来る。
不溶化処理液から、凝集沈殿スラッジを回収する方法としては特に限定されず、例えば、スラリー状の不溶化処理液の自然濾過、減圧濾過、遠心濾過などが好適に挙げられる。
なお、蒸発乾固の際に蒸発した水分は蒸気となって蒸留され、不純物が取り除かれた状態となる。そのため、蒸留後の液体は下水道等へ廃水処理することができるし、種々の用途に再利用することもできる。
なお、蒸発乾固時の不溶化処理液あるいはスラッジの加熱温度は、特に限定されないが、50℃〜160℃が好ましい。
すなわち、温度が低すぎると、蒸発乾固に時間がかかりすぎ、温度が高すぎると、不溶化物が分解し遊離シアンが生成するおそれがある。
ただし、常温付近では上記反応式(8)〜(11)で示す加水分解の反応速度は小さいので、不溶化処理液や凝集沈殿スラッジのpHについては、5.0〜9.0の範囲にあれば上記加水分解反応に伴う遊離シアンの溶出を抑えるのに必要十分であることも分かった。
そのため、スラリー状態の不溶化処理液を加熱して濃縮スラリーを得る場合も、不溶化処理液のpHを6.0〜8.5に保持した状態で加熱するべきである。
これにより、本発明の廃液処理方法を行う上での自由度が増し、例えば、不溶化処理液や凝集沈殿スラッジを得るまでのプロセスと、その後の減容化のための蒸発乾固を行うプロセスとを、それぞれ別の者が行うこととしても、遊離シアンの溶出が有効に抑制できる。
すなわち、廃液中の水溶性鉄シアノ錯体を不溶化/無害化するとともに、水分の除去により廃棄物量を1/2以下に縮減することができる。
また、スラリー状の不溶化処理液や凝集沈殿スラッジのpHが5.0〜9.0の範囲であれば、蒸発乾固前における遊離シアンの溶出をも有効に抑制できるので、遊離シアンの溶出抑制の実効性を高めることができる。
(実施例1)
鉄シアノ錯体としてフェリシアン化カリウムを20g/L、フェロシアン化カリウムを10g/Lを含むpH13.5の廃液1Lに対して攪拌しながら硫酸を加えて廃液のpHを9.0に調整した。次に硫酸第1マンガン1水和物50gを添加して1時間攪拌をつづけ、スラリー状の不溶化処理液を得た。なお、廃液は次第に粘性を増しスラリー状になった。つづいてこのスラリー状の不溶化処理液に硫酸を加え、不溶化処理液をpH7.0に調整した後、ステンレス製のバットに移し、120℃のスチームで加熱して蒸発乾固して90gの乾燥スラッジを得た。
実施例1で不溶化処理液のpHを8.5に調整して蒸発乾固した以外は全て実施例1と同様にして89gの乾燥スラッジを得た。
実施例1で不溶化処理液のpHを6.0に調整して蒸発乾固した以外は全て実施例1と同様に処理して92gの乾燥スラッジを得た。
実施例1で硫酸第1マンガン1水和物の添加量を30gとした以外は全て実施例1と同様に処理して70gの乾燥スラッジを得た。
実施例1と同様の廃液1Lに10gの亜硫酸ナトリウムを加えて、フェリシアン化カリウムをフェロシアン化カリウムに還元した。次に希硫酸を加えて処理液のpHを9.0に調整した後、攪拌下に硫酸第1マンガン1水和物60gを添加した以外は全て実施例1と同様にして乾燥スラッジ110gを得た。
実施例1と同様の廃液1Lに硫酸を加えて廃液のpHを9.0に調整した後、攪拌しながら塩化第1鉄4水和物24g、つづいて塩化第2鉄6水和物33gを加えていった。その間廃液のpHは5.0〜8.5になるように水酸化ナトリウム水溶液で調整した。
次に、攪拌しながら硫酸第1マンガン1水和物を20g加えていき不溶化処理液を得るとともに、最終的に処理液のpHを7.0に調整した後、実施例1と同様に不溶化処理液をステンレス製バット上で蒸発乾固して乾燥スラッジ105gを得た。
硫酸第1マンガン1水和物の添加量を10gに変えた以外は全て実施例6と同様にして乾燥スラッジ98gを得た。
実施例1と同様の廃液1Lに亜硫酸ナトリウム10gを加えて、フェリシアン化カリウムをフェロシアン化カリウムに還元した。次に硫酸を加えて処理液のpHを9.0に調整した後、攪拌下に塩化第2鉄6水和物47gを加えた。その間、塩化第2鉄6水和物の添加により塩酸が生成するため、該塩酸生成による処理液の酸性化を緩和するため、水酸化ナトリウム水溶液により処理液のpHを5.0〜8.5の範囲に調整した。つづいて、攪拌しながら硫酸第1マンガン1水和物20g加えていき、不溶化処理液を得るとともに、10%水酸化ナトリウム水溶液によって最終的に不溶化処理液のpHを7.0に調整した後、実施例1と同様に不溶化処理液をステンレス製バット上で蒸発乾固して乾燥スラッジ113gを得た。
硫酸第1マンガン1水和物の添加量を5.0gに変えた以外は全て実施例8と同様にして乾燥スラッジ100gを得た。
実施例8において硫酸マンガン1水和物の代わりに塩化亜鉛16gを添加した以外は全て実施例8と同様にして乾燥スラッジ110gを得た。
実施例8で硫酸マンガン1水和物の代わりに硫酸銅5水和物15gを添加した以外は全て実施例8と同様にして乾燥スラッジ105gを得た。
実施例8で硫酸マンガン1水和物の代わりに塩化コバルト無水物8gを添加した以外は全て実施例8と同様にして乾燥スラッジ102gを得た。
実施例8で硫酸マンガン1水和物の代わりに塩化ニッケル無水物8gを添加した以外は全て実施例8と同様にして乾燥スラッジ103gを得た。
実施例8で硫酸マンガン1水和物の代わりに硫酸第1錫無水物25gを添加した以外は全て実施例8と同様にして乾燥スラッジ117gを得た。
不溶化処理液のpHを9.0に調整して蒸発乾固した以外は全て実施例1と同様にして処理を行い88gの乾燥スラッジを得た。
硫酸第1マンガン1水和物の添加量を15gに変更した以外は全て実施例1と同様に処理を行って56gの乾燥スラッジを得た。
不溶化処理液のpHを5.0に調整した以外は全て実施例7と同様の処理を行って115gの乾燥スラッジを得た。
硫酸第1マンガン1水和物の添加量を2.0gに変えた以外は全て実施例7と同様の処理を行って95gの乾燥スラッジを得た。
そして、その結果を以下の表2、及び表3に示した。
なお、比較例1,3については、pHが影響し、比較例2,4については、不溶化が不十分であったためと思われる。
水素イオンや水酸化物イオンによる該複核錯体不溶物の加水分解への影響を調べるため、実施例1と同様にして不溶化した不溶化処理液のpHを変えて蒸発乾固を行い、各pHで得られた乾燥スラッジについて環告第13号試験によるシアン溶出量を測定し、その結果を横軸を不溶化処理液(図1では処理液とのみ記す)、縦軸をCN溶出量として、対比してプロットしたところ図1に示すような結果が得られた。
図1から、pH6.0〜8.5の範囲では、溶出量が1.0mg/L未満になり、この範囲から外れるに従い、溶出量が増加することがわかる。すなわち、CN溶出量はpHに依存することが確認できた。
また、図1から、pH6.5〜7.5の範囲では、溶出量が1.0mg/L未満になり、より好適であることがわかった。
(実施例15)
実施例1に準じてスラリー状の不溶化処理液を得た。但し、硫酸の添加量を変更して、pHが9.0に調整されたスラリー状の不溶化処理液を得た。
実施例1に準じてスラリー状の不溶化処理液を得た。但し、硫酸の添加量を変更して、pHが5.0に調整されたスラリー状の不溶化処理液を得た。
続いて、上記スラリー状の不溶化処理液を、篩目1μmのガラスフィルターで吸引濾過することにより、pH5.0の凝集沈殿スラッジとして、濾物(含水スラッジ)205gを得た。
実施例10に準じてスラリー状の不溶化処理液を得た。
続いて、pHが7.0に調整された上記スラリー状の不溶化処理液を、遠心分離機「CF9RX」(日立HIMAC社製)を用いて3000rpmで遠心分離することにより、pH7.0の凝集沈殿スラッジとして、沈殿物(含水スラッジ)220gを得た。
実施例11に準じてスラリー状の不溶化処理液を得た。但し、10%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を変更して、pHが8.0に調整されたスラリー状の不溶化処理液を得た。
続いて、上記スラリー状の不溶化処理液を、ステンレス製バット上で水分を蒸発させることにより、濃縮スラリー600gを得た。
実施例10に準じてスラリー状の不溶化処理液を得た。但し、10%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を変更して、pHが10.0に調整されたスラリー状の不溶化処理液を得た。
続いて、上記スラリー状の不溶化処理液を、遠心分離機「CF9RX」(日立HIMAC社製)を用いて3000rpmで遠心分離することにより、pH10.0の凝集沈殿スラッジとして、沈殿物(含水スラッジ)222gを得た。
実施例10に準じてスラリー状の不溶化処理液を得た。但し、10%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに希硫酸を添加して、pHが4.0に調整されたスラリー状の不溶化処理液を得た。
続いて、上記スラリー状の不溶化処理液を、遠心分離機「CF9RX」(日立HIMAC社製)を用いて3000rpmで遠心分離することにより、pH4.0の凝集沈殿スラッジとして、沈殿物(含水スラッジ)223gを得た。
そして、その結果を以下の表4に示した。
他方、アルカリ側(実施例19、pH10)、酸性側(実施例20、pH4)ではシアン溶出量が増加した。これは、常温でも不溶化処理液のpHが酸性側又はアルカリ側に傾斜しすぎると、上記反応式(8)〜(11)で示す加水分解の反応速度が無視できなくなることを示唆している。
従って、蒸発乾固を行う前にスラリー状の不溶化処理液や凝集沈殿スラッジの状態で保管、輸送等する場合は、それらのpHが5.0〜9.0の範囲にあることが望ましい。
Claims (7)
- 水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液に、水溶性鉄シアノ錯体を不溶化しうる金属化合物を添加して全水溶性鉄シアノ錯体を鉄シアノ錯体水不溶化物とする不溶化工程を備える鉄シアノ錯体廃液の処理方法であって、
前記不溶化工程で不溶化された鉄シアノ錯体水不溶化物を含む不溶化処理液又はこの不溶化処理液の凝集沈殿スラッジのpHを6.0〜8.5に保持した状態で前記不溶化処理液又は凝集沈殿スラッジを50℃〜160℃の温度条件で蒸発乾固することを特徴とする、水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液の処理方法。 - 前記金属化合物が、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛及びすずからなる群より選ばれた2価金属の化合物と、鉄(II)化合物及び鉄(III)化合物とのうち、少なくとも1種である、請求項1に記載の水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液の処理方法。
- 前記不溶化工程では、水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液に、鉄(II)化合物及び鉄(III)化合物の少なくともいずれかの鉄化合物を加え、プルシアンブルーを生成させたのちに、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛及びすずからなる群より選ばれた2価金属の化合物の少なくとも1種を加える、請求項2に記載の水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液の処理方法。
- 水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液に、廃液中の水溶性鉄シアノ錯体に対して0.5〜5.0モル当量の前記鉄化合物を加えてプルシアンブルーを生成させたのちに、添加された鉄化合物の0.1〜2.0モル当量の前記2価金属の化合物を加える、請求項3に記載の水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液の処理方法。
- 前記不溶化工程では、水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液に、廃液中の水溶性鉄シアノ錯体に対して1.0〜5.0モル当量の前記2価金属の化合物を加える、請求項2に記載の水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液の処理方法。
- 前記金属化合物が、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物及び酸化物からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1から5までのいずれかに記載の水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液の処理方法。
- 水溶性鉄シアノ錯体がフェロシアン化塩及びフェリシアン化塩の少なくともいずれか一方である、請求項1から6までのいずれかに記載の水溶性鉄シアノ錯体を含む廃液の処理方法。
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