JP4019889B2 - 重金属含有廃液の処理方法及びそれに用いる処理剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本件特許出願に係る発明は、重金属含有廃液を処理するために用いられる処理剤及びその処理方法に関する。重金属の中でも、特に、廃液からの除去が困難であるとされているバナジウムを除去する廃液の処理剤及びその処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
バナジウムは、5個の価電子を有し、酸化数2価から5価までとるが、4価と5価が普通である。この4価のバナジウムは、酸素と結合し、VO2+の塩をつくることが多い。廃液中に含まれる4価のバナジウムは、中性付近でVO(OH)2の沈殿となり、凝集剤を併用することによりバナジウムを分離し除去を行うことができる。廃液中に含まれる2価、3価のバナジウムについても同様である。
【0003】
しかし、5価のバナジウムについては、水酸化物とならないため、還元処理を必要とし、5価から4価に還元を行い、水酸化物として沈殿、分離して廃液処理される。バナジウムを含有する廃液の処理方法として、廃液中に還元剤を添加して5価のバナジウムを4価のバナジウムに還元し、水酸化マグネシウム及びアンモニア水を添加してpHを3〜9として生成した高濃度バナジウム含有沈殿物を分離する等の廃液の処理方法等が知られている。
【0004】
上述の従来の排水処理工程は、5価のバナジウムを処理する場合、4価に還元してから、凝集剤を添加し、バナジウムの凝集処理を行っている。このとき、還元工程と、凝集工程の少なくとも二段階の固-液分離工程を必要とするため、プラントの設置、処理工程に係る処理費用等の観点から不経済である。また、該還元工程はpH2以下の強酸性条件下でなければ行えないため、排水が塩基性の場合は、極めて大量の酸性物質を必要とする。このことも、処理費用等の観点から好ましくない。さらに、還元処理工程は、長時間要し、収率も悪いため、不経済である。
【0005】
バナジウムを還元することなく廃液処理を行う方法として、イオン交換樹脂、キレート樹脂を用いる方法が知られている(非特許文献1参照)。このイオン交換樹脂、キレート樹脂を用いる方法は、バナジウムを5価のままで処理することができる。これらは、バナジウム等の重金属を含有する廃液を、イオン交換樹脂若しくはキレート樹脂間を通して、バナジウム等の重金属を該樹脂に吸着させる。これにより、バナジウム等の重金属を廃液中から除去することができる。
【0006】
しかし、イオン交換樹脂若しくはキレート樹脂を用いた廃液処理方法では、重金属が高濃度になっている場合は、すべての重金属が該樹脂に吸着されず、廃液処理が不十分となる。また、有機溶剤が廃液中に入っている場合には、イオン交換樹脂若しくはキレート樹脂を溶解するなどの悪影響があり、この処理方法を使用することができない。また、イオン交換樹脂等を使用する場合、設備費用が高くなるという問題もある。
【0007】
そのほか、バナジウムを還元することなく廃液処理を行う方法として、凝集沈殿法が知られている(特許文献1乃至3参照)。特許文献1には、水溶性ジチオカルバミン酸化合物及び水溶性メルカプトベンゾチアゾール化合物をカチオン系の起泡剤と共に添加し、浮上分離する重金属除去方法が記載されている。また、特許文献2には、ポリエチレンイミンにジチオ酸基を有する化合物と硫化ソーダとを併用し、重金属含有廃液に添加して重金属を捕集除去する方法が記載されている。さらに、特許文献3には、硫化ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム等の硫黄を含む化合物を添加し、ポリ塩化アルミニウム、ベントナイト及び高分子凝集剤を添加した後、固-液分離することを特徴とする化学銅メッキ廃液の処理方法が記載されている。
【0008】
上記の廃液処理方法では、酸性物質を添加した際に、硫化水素が発生するので、安全面に問題がある。
【0009】
【特許文献1】
特開昭50−136279号公報
【特許文献2】
特開昭57−207591号公報
【特許文献3】
特開昭60−187394号公報
【非特許文献1】
CMCテクニカルライブラリー、「水処理剤と水処理技術」、シーエムシー発行、監修:吉野善彌、P.176
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のことから、廃液処理工程を簡略化し、バナジウム等の重金属の除去効率の向上を図ること、安全に廃液処理が行えること、さらに、経済面で優れていること、などの重金属含有廃液の処理方法を提供することを解決しようとする課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、バナジウムを含有する重金属含有廃液に、処理剤を添加する工程を有する廃液処理方法であって、該処理剤の添加により該バナジウムの価数を変化させずに、バナジウムと廃液とを分離することを特徴とする廃液処理方法に関する。従来は、5価のバナジウムを4価に還元を行ってから水酸化物として沈降させていた。しかし、本発明では、5価のバナジウムを還元せずに、5価のまま、沈降、固−液分離することができる。従って、従来のような還元工程が不要となるため、極めて効率的に廃液処理することができる。
【0012】
本発明は、重金属含有廃液に、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物を有効成分に含有する処理剤を添加する第1の工程と、該重金属と該アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物とが錯塩を形成する第2の工程と、該錯塩と廃液とを分離する第3の工程と、を有することを特徴とする廃液処理方法に関する。重金属含有廃液にアミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物を有効成分に含有する処理剤を添加すると、錯塩が形成される。この錯塩を沈降し、錯塩と液体とを分離することにより、重金属を廃液中から除去することができる。ここで、重金属含有廃液は、酸性であることが好ましく、特に、pHが3〜5であることが好ましい。これは、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物が含有されている処理剤が中性若しくは塩基性であるためである。ここで、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物と重金属とが反応し、形成される錯塩には、金属架橋により凝集されるものも含まれる。
【0013】
本発明は、重金属含有廃液に、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物を有効成分に含有する処理剤を添加する第1の工程と、該重金属含有廃液に、無機系凝集剤を添加する第2の工程と、該重金属と、該アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物及び無機系凝集剤の少なくともいずれか一方と、が錯塩を形成する第3の工程と、該重金属及び該錯塩の少なくともいずれか一方を、廃液と分離する第4の工程と、を有することを特徴とする廃液処理方法に関する。無機系凝集剤を重金属含有廃液に添加することにより、重金属、特に、バナジウムと、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物との大きな凝集体を作り、沈降しやすくする。これにより、バナジウム等の重金属を含有する錯塩の沈降速度を速めることにより簡便かつ迅速に廃液処理することができる。但し、第1の工程と第2の工程の順序は問わず、第2の工程後、第1の工程を行っても良く、第1の工程後、第2の工程を行っても良く、さらに、第1の工程と第2の工程を同時に行ってもよい。
【0014】
本発明は、重金属含有廃液に、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物を有効成分に含有する処理剤を添加する第1の工程と、該重金属含有廃液に、高分子凝集剤を添加する第2の工程と、該重金属と、該アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物及び高分子凝集剤の少なくともいずれか一方と、が錯塩を形成する第3の工程と、該重金属及び該錯塩の少なくともいずれか一方を、廃液と分離する第4の工程と、を有することを特徴とする廃液処理方法に関する。アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物とバナジウムとは、反応して不溶性の錯塩を形成する。高分子凝集剤を添加することにより、大きな凝集体を作り、沈降しやすくする。これにより、バナジウム等の重金属を含有する錯塩の沈降速度を速めることができ、簡便かつ迅速に廃液処理することができる。また、重金属含有廃液中には、バナジウム以外の重金属が残存しているため、高分子凝集剤を添加すると、重金属と高分子凝集剤とが反応し、凝集効果を高めることができるからである。さらに、過剰のアミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物を重金属含有廃液中に添加した場合、高分子凝集剤がアミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物と結合し、廃液中のアミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物を分離することができるからである。
【0015】
本発明は、重金属含有廃液に、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物を有効成分に含有する処理剤を添加する第1の工程と、該重金属含有廃液に、無機系凝集剤を添加する第2の工程と、該重金属含有廃液に、高分子凝集剤を添加する第3の工程と、該重金属と、該アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物、該無機系凝集剤及び該高分子凝集剤の少なくともいずれか一つ以上と、が錯塩を形成する第4の工程と、該重金属及び該錯塩の少なくともいずれか一方を、廃液と分離する第5の工程と、を有することを特徴とする廃液処理方法に関する。重金属とアミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物との反応において、無機系凝集剤及び高分子凝集剤とを重金属含有廃液に添加することにより、大きな凝集体を形成し、沈降しやすくする。これにより、バナジウム等の重金属を含有する錯塩の沈降速度を速めることができ、簡便かつ迅速に廃液処理することができる。
【0016】
前記重金属含有廃液中には、バナジウムが含有されていることが好ましい。バナジウムは、主として2価から5価までが普通に存在しているが、その中でも、特に処理困難である5価のバナジウムの処理を行うことができる。このアミノ基若しくはアンモニウム基のNに対して、バナジウムが結合、若しくは架橋することにより、バナジウムの価数を変化させずに、錯塩を形成することができる。アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物のうち、ポリアリルアミン(PAA)を例にとって説明する。PAAと2〜5価のバナジウムが反応し、凝集した化合物の例として、化1の化学構造を示すが、この限りでない。
【0017】
【化1】
【0018】
ポリアリルアミンと5価のバナジウムとを反応させると、不溶性のポリアリルアミンの錯塩が形成される。該錯塩は、廃液中に沈降する。この上澄み液にはバナジウムが目的濃度以下の含有量にまで低下しており、廃液中におけるバナジウム除去を図ることができる。このように処理剤に含有されるポリアリルアミンは、バナジウムを5価のままで、錯塩を形成することができるため、従来のように、バナジウムを5価から4価にする還元処理工程が不要となる。これによりバナジウムを含有する重金属含有廃液を本発明に係る処理剤を用いて、簡易に効率よく処理することができる。当然ながらこのポリアリルアミンは、4価以下のバナジウムも効率よく凝集処理することができる。
【0019】
前記重合物は、ポリアリルアミン誘導体、ポリジアリルアミン誘導体、及び、ポリジアリルアンモニウム誘導体の少なくともいずれか1以上であることが好ましい。これら該ポリアリルアミン誘導体等は、バナジウムと強く反応し、錯塩を形成し易いからである。
【0020】
前記無機系凝集剤は、前記重金属含有廃液中に含有されている前記バナジウムの重量に対して、2倍量から6倍量であることが好ましい。この範囲の無機系凝集剤を添加することにより、バナジウム等の重金属を過不足無く凝集することができるからである。
【0021】
前記高分子凝集剤は、アニオン系であることが好ましい。アニオン系高分子凝集剤を投入すると、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物とバナジウムとの凝集体を作りやすくすることができるからである。
【0022】
本発明は、重金属含有廃液を処理するために用いられる処理剤であって、該処理剤は、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物を有効成分に含有することを特徴とする処理剤に関する。アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物を有効成分に含有する処理剤を、廃液中に添加すると、廃液中に含有されている重金属と錯塩を形成し、該錯塩を沈降させることにより、廃液処理を行うことができる。
【0023】
前記重金属含有廃液中には、バナジウムが含有されていることが好ましい。
【0024】
前記重金属含有廃液は、酸性であることが好ましい。具体的には、pHが5以下であることが好ましい。特にpHが3〜5であることが好ましい。アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物と重金属含有廃液とが、錯塩を形成するため、バナジウムを含有する重金属含有廃液は、酸性であることが好ましい。これにより、効果的にバナジウムを除去することができるからである。特に、重金属含有廃液のpHを3〜5に調節することにより、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物がもっとも効果的に働くからである。また、処理剤と廃液とを反応させた後、処理液をpH7に戻すとき、凝集効果も働くからである。
【0025】
前記重合物は、ポリアリルアミン誘導体、ポリジアリルアミン誘導体、及び、ポリジアリルアンモニウム誘導体の少なくともいずれか1以上であることが好ましい。ポリアリルアミンは、毒性や変異原性がないため、廃液中に残存した場合でも、環境汚染を起こさないからである。
【0026】
前記重合物は、重量平均分子量が15,000〜200,000であることが好ましい。重量平均分子量が5,000〜1,000,000の範囲のうち上記範囲のアミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物を用いると、廃液の処理効率がさらに良好になるためである。この理由は定かではないが、形成されるフロックが大きくなるためである。フロックとは、液中で集合することなく安定的に分散する懸濁粒子を凝集剤(ここでは、本発明に係る処理剤)の力によって、沈降、分離できる大きさまで粗大化されたものをいう。
【0027】
前記重合物は、前記重金属含有廃液中に含有されている前記バナジウム1モルに対して、0.8モル以上2.0モル以下であることが好ましい。重金属含有廃液中に含有されているバナジウムと、処理剤に含有されている前記重合物のアミノ基、又は、アンモニウム基とは、等モルで反応するため、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物の添加量は、重金属含有廃液中に含有されているバナジウムの総量に対して、等モルであることが好ましい。但し、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物の添加量が少ないと、未反応のバナジウムが残存してしまうため、バナジウムを除去する効果が不十分となる。これに対し、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物の添加量を必要以上に多くしても、バナジウムを除去する効果に変化はないため、不経済となる。従って、所定の重金属含有廃液中にアミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物と反応する物質が含まれていることから、上記範囲のアミノ基、又は、アンモニウム基を含有する処理剤であることが好ましいからである。
【0028】
前記処理剤には、無機系凝集剤が含有されていることが好ましい。アミノ基、又は、アンモニウム基とバナジウムとを反応させ錯塩を形成し、さらに凝集性を高めるために無機系凝集剤を添加することが好ましい。無機系凝集剤は、予め処理剤中に含有してもよく、別途、処理剤添加後に重金属含有廃液中に添加してもよい。無機系凝集剤を添加することにより、アルカリ性物質で中和し沈降させることができる。これにより重金属含有廃液中におけるバナジウムを簡便かつ迅速に処理することができる。
【0029】
前記無機系凝集剤は、前記重金属含有廃液中に含有されている前記バナジウムの重量に対して、2倍量から6倍量であることが好ましい。該範囲の無機系凝集剤を添加することにより、凝集体を作りやすくすることができるからである。
【0030】
本発明は、請求項10乃至18の少なくともいずれか一項に記載の処理剤を使用することを特徴とする廃液処理方法に関する。これにより、重金属含有廃液を簡便かつ迅速に処理することができるからである。
【0031】
本発明は、5価のバナジウム等の重金属を含有する廃液を簡便かつ迅速に処理することができるという技術的意義を有する。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る重金属含有廃液の処理剤及びその処理方法を、実施の形態及び実施例を用いて説明する。だたし、本発明は、この実施の形態及び実施例に限定されない。
【0033】
アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物は、下記のように製造される。
【0034】
すなわち、アミノ基を有する下記一般式[化2]で表される単量体、
【0035】
【化2】
【0036】
(上記一般式のR1、R2は、水素、アルキル基、ヒドロキシル基、−CH2−CH(OH)−CH2Clなどである。下記の一般式でも、同様である。)
若しくは、アンモニウム基を有する下記の一般式[化3]、[化4]、[化5]で表される単量体、
【0037】
【化3】
【0038】
【化4】
【0039】
【化5】
【0040】
これらを重合して得られる重合体、若しくは、共重合体である。
【0041】
これらの重合体、または、共重合体の一例としては、下記に示す構造の重合体が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0042】
[化2]の重合体として、
【0043】
【化6】
【0044】
[化3]の重合体として、
【0045】
【化7】
【0046】
[化4]の重合体として、
【0047】
【化8】
【0048】
[化5]の重合体として、
【0049】
【化9】
【0050】
[化3]とSO2の共重合物として、
【0051】
【化10】
【0052】
[化5]とアクリルアミドの共重合物として、
【0053】
【化11】
【0054】
[化5]とジアクリルアミン塩酸塩誘導体の共重合物として、
【0055】
【化12】
【0056】
[化3]と[化5]の共重合物として、
【0057】
【化13】
【0058】
がある。
【0059】
アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物のうち、ポリアリルアミン[化6]を例にとって説明するが、これに限定されない。ポリアリルアミンは、重量平均分子量が、5,000〜1,000,000の範囲で、15,000〜200,000であることが好ましいが、特に、100,000〜150,000であることが好ましい。本発明において、ポリアリルアミンと他のモノマーとの共重合体も使用可能である。共重合体中のアリルアミン含量は、50%以上存在することが好ましい。
【0060】
無機系凝集剤は、一般的な鉄、アルミニウム化合物等を使用することができる。例えば塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム等である。但し、本発明は、これに限定されない。実施例においては、硫酸アルミニウムを使用した。該硫酸アルミニウムは、廃液中に含有されるバナジウムの重量に対して、約4倍量用いることが好ましいが、2倍量から6倍量用いることもできる。
【0061】
高分子凝集剤は、アニオン系であることが好ましく、アニオン系高分子凝集剤には、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド共重合物、マレイン酸共重合物などがある。但し、本発明は、これに限定されない。
【0062】
バナジウム等の重金属が含有されている廃液は、酸性であることが好ましく、pHが5以下、特に、pHが3〜5であることが好ましい。重金属含有廃液のpHが5以上である場合は、酸性物質を添加し、pHを5以下に調整した後、廃液処理を行うことが好ましい。このようにpH調節を行うのは、ポリアリルアミンの添加による錯塩形成に大きく関与し、バナジウム除去効果を高めるからである。pH調節に用いる酸性物質は、一般的な塩酸、硫酸、硝酸等を用いることができる。実施例においては、塩酸を使用した。
【0063】
重金属含有廃液中に、ポリアリルアミンと無機系凝集剤とを添加し混合した後、pH調節を行う。該pH調節に使用する塩基性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。実施例においては、水酸化ナトリウムを使用し、pHを7.5に調節した。
【0064】
<廃液処理方法>
以下に廃液処理方法について説明する。但し、本発明は、以下の廃液処理方法に限定されない。
【0065】
(1)まず、廃液中に含有されている重金属の成分、量及びpHを測定する。本発明は、重金属のうちバナジウムを含有している廃液を対象とする。
【0066】
(2)重金属含有廃液のpHを測定した結果、pHが5以上である場合は、酸性物質を添加してpHを5以下、好ましくは、pHを3〜5に調整する。pHが5以下である場合は、酸性物質の添加は、不要である。
【0067】
(3)つぎに、重金属含有廃液に、ポリアリルアミンを有効成分に含有する処理剤を添加する。ポリアリルアミンの添加量は、バナジウムのモル量に対して、1.0〜1.5モル程度、添加する。
【0068】
(4)さらに、該重金属含有廃液に、無機系凝集剤を添加する。該無機系凝集剤は、前記処理剤の添加前に添加してもよい。また、該無機系凝集剤は、前記処理剤中に含有されていてもよい。該重金属含有廃液に、前記処理剤と無機系凝集剤とを添加後、均一になるよう攪拌を行う。
【0069】
(5)上記工程後、pH調節を行う。上記工程後、廃液のpHを測定し、塩基性物質を添加して、pHを6〜8に調整する。
【0070】
(6)該重金属含有廃液に、高分子凝集剤を添加する。該高分子凝集剤添加後、継続して攪拌を行う。
【0071】
(7)以上の工程により、該ポリアリルアミンと該重金属、特に5価のバナジウムとが、錯塩を形成し、若しくは金属架橋して、凝集する。無機系凝集剤及び高分子凝集剤は、これらの反応を補助する役割を有する。該錯塩の形成過程において、バナジウムの価数は変化していない。一例としてポリアリルアミンとバナジウムとの反応は、上述した化1に示している。
【0072】
(8)前記重金属及び前記錯塩を、廃液から分離するため、前記廃液の攪拌を停止し、該廃液を静置する。これにより、前記重金属及び前記錯塩を重力沈降させる。そのほか、遠心濃縮により前記重金属及び前記錯塩と、廃液とに分離する。遠心濃縮は、廃液を高速で回転する容器に入れて、遠心力によって錯塩と廃液とに分離するものである。
【0073】
(9)前記重金属及び前記錯塩を重力沈降させた処理後の廃液の上澄み液を放流する。併せて、廃液と分離された該重金属及び該錯塩を除去する。
【0074】
以上の工程を経ることにより、重金属、特に、バナジウムを廃液中から除去することができる。
【0075】
【実施例】
<実施例1>
廃液中に含有されている重金属の成分、量及びpHを測定した。特にバナジウムの含有量を測定した。その結果、バナジウムを含有する廃液は、下記の性状を有していた。
pH6.51
VT=248.23ppm(V5+=235.33ppm)
COD=1180ppm
NaCl=2%
Na2SO4=2%
COD(Chemical Oxygen Demand)は、化学的酸素要求量である。
【0076】
処理槽に貯えられた該廃液25tに、塩酸を添加しpHを5に調整した。次に、ポリアリルアミン(PAA−HCl−10L 40%品)(日東紡績(株)社製)27.53kg、硫酸アルミニウム25kgを添加して、処理槽内が均一になるよう攪拌を行った。その後、pHが7.5になるまで、水酸化ナトリウムを添加した。更に、ポリアクリルアミド共重合物0.2%水溶液12.5kgを添加し、凝集を行った。処理槽内が均一になった後、攪拌を停止し、一晩、静置した。静置後、上澄み液と沈降物とに分離した。該上澄み液のバナジウムの含有量を測定したところ2.18ppmであった。これにより、廃液中からバナジウムを99%以上に除去することができた。
【0077】
<実施例2>
実施例1と同様、廃液中に含有されている重金属の成分、量及びpHを測定した。特にバナジウムの含有量を測定した。その結果、バナジウムを含有する廃液は、下記の性状を有していた。
pH8.33
VT=731.45ppm(V5+=723.65ppm)
COD=1060ppm
NaCl=4%
Na2SO4=4%
処理槽に貯えられた該廃液25tに、塩酸を添加しpHを5に調整した。次に、ポリアリルアミン(PAA−HCl−10L 40%品)(日東紡績(株)社製)78.27kg、硫酸アルミニウム75kgを添加して、処理槽内が均一になるよう攪拌を行った。その後、pHが7.5になるまで、水酸化ナトリウムを添加した。更に、ポリアクリルアミド共重合物0.2%水溶液37.5kgを添加し、凝集を行った。処理槽内が均一になった後、攪拌を停止し、一晩、静置した。静置後、上澄み液と沈降物とに分離し、上澄み液を放流した。該上澄み液のバナジウムの含有量を測定したところ1.01ppmであった。これにより、廃液中からバナジウムを99%以上に除去することができた。
【0078】
【発明の効果】
上述の如く、本発明に係る重金属含有廃液に用いる処理剤の提供、及び、重金属含有廃液の処理方法の提供を図ることにより、以下の効果を生じる。
【0079】
バナジウムの価数を変化させずにバナジウムを廃液中から除去することができる。詳しくは5価のバナジウムを4価のバナジウムに還元する工程を省き、5価のバナジウムをそのまま、アミノ基、又は、アンモニウム基を有する重合物と反応させることにより、バナジウムの除去を図ることができる。還元処理方法が不要となることから、バナジウム処理効率を99%以上という極めて高効率に分離することができる。また、重金属含有廃液の処理槽を使用するため、特別なプラントを要しないため、設備費用、処理費用とも、極めて安価に廃液処理することができる。さらに、硫化物を使用していないため、硫化水素の発生を生じず、安全に廃液処理することができる。
【0080】
以上のように、本発明は、極めて重要な技術的意義を有する。
Claims (5)
- 前記重金属含有廃液に、さらに、無機系凝集剤及び/又は高分子凝集剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の廃液処理方法。
- 前記重合体又は前記共重合体は、重量平均分子量が15,000〜200,000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃液処理方法。
- 前記重合体又は前記共重合体は、重量平均分子量が15,000〜200,000であることを特徴とする請求項4に記載の処理剤。
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