JP3783970B2 - セレンを含む溶液からのセレンの回収方法 - Google Patents

セレンを含む溶液からのセレンの回収方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセレンを含む溶液からのセレンの回収方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セレンやセレン化合物は、ガラスの脱着色剤、半導体材料、アルミニウム等の金属の電解着色剤、電池材料等として広く利用されており、これらの製造加工工場から排出される廃水や、銅等の金属の電解沈殿物の処理工程において排出される廃水には比較的高濃度のセレンが含有されることがある。
【0003】
しかしながら、セレンは強い毒性を有する環境汚染物質であるため、廃水中のセレンに対する厳しい規制が設けられており、その許容量は0.1mg/l以下に規制されている。
【0004】
廃水等に含まれるセレンを回収する方法として、セレンを酸化鉄とともに沈殿させるフェライト法、廃水に塩化第二鉄等の凝集剤を添加した後、溶液のpHを調整してセレンを水酸化鉄と共沈させて回収する凝集沈殿法(特開平6−79286号)、廃水に鉄や鉄系金属を添加し、鉄や鉄系金属表面にセレンを析出させる方法(特開平7−2502号)等が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フェライト法は特別な設備が必要であるため、設備コストが高くつくという問題があり、またフェライト法も凝集沈殿法も共に、廃水中のセレンを0.1mg/l以下までに減少させるためには、大量の凝集剤を添加しなければならないという問題があった。更に、鉄や鉄系金属表面にセレンを析出させる方法は、廃水中のセレンを規制値以下にするまでに長時間を要するという問題があり、しかもセレンを析出させた鉄や鉄系金属は重量が大きいため、これらの後処理が容易ではないという問題もあった。
【0006】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意研究した結果、マグネシウム化合物及び/又はバリウム化合物の存在下に金属捕集剤で処理すると、セレンを短時間で効果的に金属捕集剤によって捕集して回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明のセレンを含む溶液からのセレンの回収方法は、セレンを含む溶液を、マグネシウム化合物及び/又はバリウム化合物の存在下に金属捕集剤で処理し、セレンを金属捕集剤によって捕集して回収することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、マグネシウム化合物としては、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、等を用いることができる。またバリウム化合物としては、フッ化バリウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、水酸化バリウム、酸化バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム等を用いることができる。
【0009】
上記マグネシウム化合物、バリウム化合物は、水に不溶性又は難溶性のものであっても、水溶性のものであっても良いが、特に水にスラリー状で分散するものや水溶性のものが好ましい。好ましいマグネシウム化合物としては、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウムが挙げられ、好ましいバリウム化合物としては、塩化バリウム、水酸化バリウムが挙げられる。マグネシウム化合物は1種又は2種以上を混合して用いることができ、バリウム化合物も1種又は2種以上を混合して用いることができる。更に1種又は2種以上のマグネシウム化合物と、1種又は2種以上のバリウム化合物とを混合して用いることもできる。
【0010】
本発明において、金属捕集剤としては、酸素、窒素、硫黄、リン等の金属配位性の原子を含む官能基を有する化合物が挙げられる。金属捕集剤の官能基として一般的なものは、カルボン酸基やその塩、アミド基、スルホン酸基、次亜リン酸基、亜リン酸基、リン酸基、第一アミン基、第二アミン基、第三アミン基、アゾ基、オキシム基、アミドキシム基、イミン基、エナミン基、チオアルコール基、チオエーテル基、チオアルデヒド基、チオケトン基、チオカルボン酸基やその塩、ジチオカルボン酸基やその塩、チオアミド基、チオシアナート基、イソチオシアナート基等である。本発明において、金属捕集剤としては上記した官能基を有する金属捕集剤に限らず、金属捕集性の官能基を有するものであればいかなるものであっても使用可能である。
【0011】
本発明で用いる金属捕集剤は、一分子中に官能基を1個有するものであっても、2個以上有するものであっても良く、また異なる2種類以上の官能基を有するものであっても良い。金属捕集剤として現在広く利用されている化合物は、アミン類の第一アミン基、第二アミン基等の窒素原子に、ジチオカルボン酸基やその塩、カルボン酸基やその塩、次亜リン酸基やその塩、亜リン酸基やその塩、オキシム基、アミドキシム基等を導入した構造の化合物であるが、最も一般的なものはジチオカルボン酸基やその塩を官能基として導入した化合物である。
【0012】
上記金属捕集剤におけるアミン類としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレンジアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、トリブチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、テトラブチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、モノメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、o-,m-,p-キシリレンジアミン、3,5-ジアミノクロロベンゼン等の芳香族ポリアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のシクロアルカン系ポリアミン;1-アミノエチルピペラジン、ピペラジン等のピペラジン類;ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリ−3−メチルプロピルイミン、ポリ−2−エチルプロピルイミン等の環状イミンの重合体;ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の不飽和アミンの重合体が挙げられる。また、ビニルアミン、アリルアミン等の不飽和アミンと、ジメチルアクリルアミド、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸等及びその塩類等の、不飽和アミンと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとの共重合体も挙げられる。環状イミンの重合体、不飽和アミンの重合体及びその共重合体の場合、平均分子量300〜200万のものが好ましく、1000〜50万のものがより好ましい。
【0013】
上記アミン類は、ヒドロキシアルキル基、アシル基、アルキル基、フェニル基等をN−置換基として有するものでも良い。N−ヒドロキシアルキル置換基は、アルキル基の炭素数が2〜28であることが好ましく、N−アシル置換基は炭素数2〜24であることが好ましい。またN−アルキル置換基は炭素数2〜18であることが好ましい。
【0014】
更に上記アミン類とエピハロヒドリンとが重縮合した重縮合ポリアミンも使用できる。エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、ブロモメチルオキシラン、クロロメチルオキシラン、ヨードメチルオキシラン等が挙げられる。更にまた、アミン類としては、上記した以外のものであっても、アミノ基、イミノ基を有していれば使用可能であるが、官能基を導入し得る活性水素を有している必要がある。
【0015】
官能基として最も一般的なジチオカルボン酸基は、上記アミン類に二硫化炭素を反応させることにより導入することができ、この反応をアルカリの存在下で行うか、反応終了後にアルカリで処理することにより、官能基をジチオカルボン酸塩基とすることができる。
【0016】
本発明方法において、上記金属捕集剤は単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
本発明方法において、前記マグネシウム化合物及び/又はバリウム化合物は、溶液中のセレンの含有量に対し、重量比で10〜100倍量添加することが好ましく、特に30〜50倍量添加することが好ましい。また金属捕集剤の添加量は、セレンの含有量に対して重量比で0.5〜50倍量が好ましい。
【0018】
本発明方法において、マグネシウム化合物及び/又はバリウム化合物をセレンを含む溶液に添加する工程と、金属捕集剤をセレンを含む溶液に添加する工程は、どちらを先に行ってもよく、また同時に行っても良い。
【0019】
金属捕集剤によるセレンの捕集効率を高めるために、溶液のpHを4〜12に調整することが好ましい。pHの調整は、マグネシウム化合物及び/又はバリウム化合物や金属捕集剤を添加前に行っても、これらの一方又は両方を添加した後に行っても良い。pH調整に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の1族、2族元素の水酸化物が用いられるが、特に水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムが好ましい。また酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられるが、特に塩酸、硝酸が好ましい。
【0020】
金属捕集剤に溶液中のセレンが捕集されると不溶性のフロックが形成されて徐々に沈殿してくるが、フロックの大きさを大きくし、フロックが沈殿し易くするために、必要に応じて凝集剤を添加することができる。この凝集剤としてはアニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤、無機系凝集剤等が用いられる。沈殿したフロックはろ過して溶液から分離回収されるが、分離回収したフロックは廃棄する場合に限らず、フロックを焙焼し、揮発した二酸化セレンを水に溶解して亜セレン酸水溶液にし、この水溶液に亜硫酸ガスを通じて処理することにより、セレンを回収して再利用することもできる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0022】
実施例1〜3
セレンを5.85mg/l含有するpH=5.7の溶液に、20%水酸化マグネシウム水溶液を同表に示す量添加し、次いで、エチレンジアミンの窒素原子にジチオカルボン酸ナトリウムを官能基として導入した金属捕集剤を表1に示す量添加して30分間攪拌した後、10分間静置した。この溶液のpHを表1に示す。沈殿したフロックをろ過した後、溶液中に残存するセレン濃度を原子吸光法によって測定した。結果を表1にあわせて示した。
【0023】
【表1】
Figure 0003783970
【0024】
比較例1〜3
実施例1〜3と同じセレン含有溶液に、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加して表2に示すpHに調整して10分間攪拌した後、10分間静置した。沈殿をろ過した後、溶液中に残存するセレンの濃度を実施例1〜3と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
Figure 0003783970
【0026】
実施例4〜6
セレンを8.24mg/l含有するpH=6.9の電気精錬工場廃水に、20%水酸化バリウム水溶液を同表に示す量添加し、次いで、テトラエチレンペンタミンの窒素原子にジチオカルボン酸ナトリウムを官能基として導入した金属捕集剤を表3に示す量添加して攪拌した後、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加して表3に示すpHに調整し、10分間静置した。沈殿したフロックをろ過した後、溶液中に残存するセレン濃度を原子吸光法によって測定した。結果を表3にあわせて示した。
【0027】
【表3】
Figure 0003783970
【0028】
比較例4〜6
実施例4〜6と同じセレン含有溶液に、実施例4〜6で用いたと同じ金属捕集剤を表4に示す濃度となるように添加して10分間攪拌した後、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH=9に調整して10分間静置した。沈殿をろ過した後、溶液中に残存するセレンの濃度を実施例4〜6と同様にして測定した。結果を表4に示す。
【0029】
【表4】
Figure 0003783970
【0030】
実施例7〜9
セレンを19.7mg./l含有するpH=7.4の溶液に、10%の塩化マグネシウムと10%の塩化バリウムを含有する水溶液を同表に示す量添加し、次いで、平均分子量10万のポリエチレンイミンの窒素原子にジチオカルボン酸ナトリウム塩とリン酸ナトリウム塩とを官能基として9:1の比にて導入した金属捕集剤を表5に示す量添加して20分間攪拌した後、水酸化カルシウムにてpHを10に調整し、10分間静置した。沈殿したフロックをろ過した後、溶液中に残存するセレン濃度を原子吸光法によって測定した。結果を表5にあわせて示した。
【0031】
【表5】
Figure 0003783970
【0032】
比較例7〜9
実施例7〜9と同じセレン含有溶液に、38%塩化第二鉄水溶液を表6に示す濃度となるように添加して10分間攪拌した後、10%水酸化カルシウム水溶液を添加してpH=8に調整して10分間静置した。沈殿をろ過した後、溶液中に残存するセレンの濃度を測定した。結果を表6に示す。
【0033】
【表6】
Figure 0003783970
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明方法によれば金属捕集剤によって溶液中のセレンを短時間で効率良く回収できる。また本発明方法では、従来の凝集沈殿法のように多量の凝集剤を使用しなくても、溶液中の残存セレン濃度を、容易にセレンの規制値である0.1mg/リットル以下にすることが可能である。しかも煩雑な処理作業や設置に多大な費用を要する特別な処理設備も必要としないため、低コストで効率の良い処理を行うことができる等の効果を有する。

Claims (1)

  1. セレンを含む溶液を、マグネシウム化合物及び/又はバリウム化合物の存在下に金属捕集剤によって処理し、セレンを金属捕集剤によって捕集して回収することを特徴とする、セレンを含む溶液からのセレンの回収方法。
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