JP3928017B2 - 重金属含有廃液の処理剤及びその処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、重金属含有廃液の処理剤及びその処理方法に関する。更に詳しくは、この発明は、重金属含有廃液中の重金属、特に従来より廃液からの除去処理が困難とされているニッケル、バナジウム等を簡易な凝集沈殿法により効率的に除去するための処理剤及びその処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
重金属化合物含有廃液の処理方法としては、重金属含有フロックを形成しこれを凝集沈殿法、加圧浮上法、限外濾過等により分離除去する方法、及び重金属イオンをイオン交換樹脂を用いて吸着除去する方法〔丸善発行(平成2年4月25日)「改訂二版 用水廃水便覧」、第350〜357頁参照〕が知られている。
【0003】
しかしながら、限外濾過膜やイオン交換樹脂を用いる方法は、処理設備が大規模になるとともに操作が煩雑になるため、既存の設備(例えば、シックナー)を用いることができる凝集沈殿法が実用上有利とされている。
凝集沈殿法の重金属含有フロックの形成方法としては、pHコントロールやジチオカルバミン酸化合物、メルカプトベンゾチアゾール化合物、硫化ナトリウム等の硫黄含有化合物の添加により難溶性の水酸化物や硫化物の沈殿物を形成させ、次いで無機又は有機凝集剤の添加によりフロックを形成する方法が知られている〔特開昭50−136279号公報、特開昭60−187394号公報、特公昭64−3549号公報及び日本水処理技術研究会発行(平成3年3月15日)「水処理技術」第32巻、第3号、第1〜10頁参照〕。
【0004】
上記フロック形成方法の中で、重金属含有廃液にメルカプトベンズチアゾール又はその水溶性塩とポリエチレンイミンとからなる処理剤(商品名フロクラン:(株)片山化学工業研究所製)を添加することにより重金属含有フロックを形成する方法は、形成フロックが比較的大きく、pH値を厳格に管理することが不要で、かつ重金属がアンミン錯塩の形態であってもフロックを形成することができる(特開平4−330991号公報参照)。
【0005】
一方、特定の重金属、特にニッケル、バナジウム、又はニッケル及びバナジウム含有廃液、例えばニッケルメッキ工場から排出されるニッケル含有廃液や排煙脱硫廃液等は、pHが低く、ニッケルをピロリン酸ニッケル等の重合リン酸ニッケル錯塩の形態で含有するため、フロックを形成せず、処理が困難とされていた。
【0006】
従って、前記重金属含有廃液、特にニッケル、バナジウム等を含有する廃液を簡易な凝集沈殿法により、更に効率的に処理する方法が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明の発明者らは、上記観点より非水溶性のニッケル塩及びバナジウム塩を迅速に形成し、フロックを形成し得る高分子化合物について研究を行った。その結果、有機高分子凝集剤の一つであるポリエチレンイミンがニッケル及びバナジウムと非水溶性の錯塩を形成する事実、これらの形成反応が廃液中の重合リン酸ニッケル錯塩に対しても迅速に進行する事実を意外にも見出した。
【0008】
更に、上記ニッケル及びバナジウムのポリエチレンイミン錯塩のフロック形成が、特定の高分子カチオン凝集剤との併用により促進され、凝集沈殿法による処理に適する大きな沈降性フロックが形成され、凝集沈殿により効率的に除去できることを確認し、この発明に至った。
かくして、この発明によれば、ポリエチレンイミンとカチオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤(以下、「ポリアクリルアミド系高分子凝集剤」ともいう)とを重量比100:1〜1:1で有効成分として含有することを特徴とする重金属含有廃液の処理剤が提供される。
【0009】
また、この発明によれば、重金属含有廃液に、ポリエチレンイミンとカチオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤とを重量比100:1〜1:1で同時に又は別々に添加することにより非水溶性の重金属含有フロックを形成し、該フロックを沈殿除去することを特徴とする重金属含有廃液の処理方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明に用いられるポリエチレンイミンとしては、重量平均分子量(以下、Mwと略記)300〜750,000の水溶性ポリエチレンイミンが適している。中でも、Mw50,000以上のものを使用するのが、形成されたフロックが大きくなり、沈降性がよくなるため重金属類の除去効果の点で特に好ましい。
【0011】
このポリエチレンイミンは、重金属、特にニッケル及びバナジウムと不溶性の錯塩を形成する作用を有する。
また、この発明に用いられるポリアクリルアミド系高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドのカチオン化変成物、例えばポリアクリルアミドのマンニッヒ変成物やホフマン分解物、及びジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートとアクリルアミドの共重合体が適している。この高分子凝集剤のMwは、単独重合体、共重合体共に5,000,000〜20,000,000が適している。
【0012】
更に、前記凝集剤が共重合体の場合のジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばジメチルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられ、ジメチルアミノエチルメタクリレートが好ましい。またアクリルアミドとの共重合比は99:1〜20:80程度が適している。
【0013】
この発明において、ポリエチレンイミンとポリアクリルアミド系高分子凝集剤とを重金属含有廃液に添加する場合、別々に又は同時に添加してもよい。別々に添加する場合には、ポリエチレンイミンを先に添加し、撹拌後、ポリアクリルアミド系高分子凝集剤を添加するのが、不溶性の重金属フロックが速やかに形成されるので好ましい。
【0014】
また、両者を混合した一液製剤とするのが、作業性の点で好ましい。
この発明の処理剤のポリエチレンイミンとポリアクリルアミド系高分子凝集剤との配合割合は、重量比で100:1〜1:1(好ましくは30:1〜10:1)である。前記配合割合以外では、処理剤の構成成分の一方が無駄になり添加量が増加するため好ましくない。
【0015】
また、重金属含有廃液への添加量は、ポリエチレンイミンが廃液中に存在する重金属イオンの総量に対して、0.1〜5倍モル、好ましくは0.2〜3倍モルである。添加量が前記範囲より少ないと重金属類の除去効果が充分ではなくなるため好ましくなく、添加量を上記範囲より多くしても重金属類の除去効果に変化はなく経済的ではないので好ましくない。
【0016】
処理対象の重金属含有廃液は、pHが6以上(特に9以上)であるのが重金属類の除去効果の点で好ましい。一般にメッキ工場廃液のpHは、9以上となっているため特にpH調整を行う必要がない。また排煙脱硫廃液のpHは、5以下となっているため、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性化合物を添加してpH6以上(好ましくはpH9〜12)に液性調整した後、この発明の処理を行ってもよい。
【0017】
この発明により、処理される対象廃液としては、
(1)ニッケル金属鉱山の坑内水、ニッケル精錬工場廃液、ニッケルメッキ廃液、
(2)排煙脱硫廃液又は該廃液から硫酸ナトリウムの回収工程液、
(3)その他、化学工場、電気機器工場等の廃液
等のニッケル又はバナジウム、若しくはそれらの混合物の含有廃液が挙げられる。
【0018】
【実施例】
この発明を以下の実施例及び比較例により説明するが、これによりこの発明の範囲を限定するものではない。
【0019】
実施例1
某ニッケルメッキ工場より排出された下記性状を持つ重金属含有廃液500ミリリットルをビーカーに採取し、下記供試薬剤を所定量添加して、1分間(比較例では15分間)120rpm(回毎分)で撹拌した後、5分間静置した。この時、形成されたフロック径を目測した。
【0020】
(供試薬剤)
No.1(比較例):Mw10,000,000のジメチルアミノエチルメタクリレートとアクリルアミドとの共重合体(共重合比5:95、高分子と略記)
No.2(比較例):Mw500,000のポリエチレンイミン(PEIと略記)
No.3〜7(実施例):Mw500,000のポリエチレンイミン(PEIと略記)と、Mw10,000,000のジメチルアミノエチルメタクリレートとアクリルアミドとの共重合体(共重合比5:95、高分子と略記))との一液製剤(水溶液)
No.8〜10(実施例):Mw1,500のポリエチレンイミン(PEIと略記)とMw10,000,000のジメチルアミノエチルメタクリレートとアクリルアミドとの共重合体(共重合比50:50、高分子と略記)との一液製剤(水溶液)
No.11(比較例): No.8〜10と同様
次いで、処理した廃液の上澄液100ミリリットルを採取し、その外観を観察し、SS濃度及び原子吸光法による液中の重金属イオン濃度を測定した。その結果を供試薬剤及び添加量、フロック径と共に表1に示す。
【0021】
【表1】
表1より本発明の処理剤がニッケル処理に有効であることがわかる。
【0022】
実施例2
某化学工場より排出された下記性状を持つニッケル及びバナジウム含有廃液500ミリリットルをビーカーに採取し、供試薬剤として、Mw100,000のポリエチレンイミン(PEIと略記)と、Mw10,000,000のジメチルアミノエチルメタクリレートとアクリルアミドとの共重合体(共重合比10:90、PAMと略記)との一液製剤(水溶液)を所定量添加して、1分間120rpmで撹拌した後、5分間静置した。この時、形成されたフロック径を目測した。
【0023】
次いで、処理した廃液の上澄液100ミリリットルを採取し、その外観を観察し、SS濃度及び原子吸光法による液中の重金属イオン濃度を測定した。その結果を供試薬剤及び添加量、フロック径と共に表2に示す。
【0024】
【表2】
表2より、本発明の処理剤がニッケル及びバナジウム処理に有効であることがわかる。
【0025】
実施例3
某電気機器工場より排出された下記性状を持つ排煙脱硫廃液500ミリリットルをビーカーに採取し、水酸化カルシウムを添加して該廃液のpHを10に調整した。次いで、供試薬剤として、Mw50,000のポリエチレンイミン(PEIと略記)とMw6,000,000のポリアクリルアミド(PAMと略記)との一液製剤(水溶液)を所定量添加して、10分間120rpmで撹拌した後、5分間静置した。この時、形成されたフロック径を目測した。
【0026】
次いで、処理した廃液の上澄液100ミリリットルを採取し、その外観を観察し、SS濃度及び原子吸光法による液中の重金属イオン濃度を測定した。その結果を供試薬剤及び添加量、フロック径と共に表3に示す。
【0027】
【表3】
表3より本発明の処理剤がニッケル処理に有効であることがわかる。
【0028】
実施例4
某メッキ工場より排出された下記性状を持つ重金属含有廃液500ミリリットルをビーカーに採取し、供試薬剤として、Mw500,000のポリエチレンイミン(PEIと略記)とMw8,000,000のポリアクリルアミド(PAMと略記)との一液製剤(水溶液)を所定量添加して、10分間120rpmで撹拌した後、5分間静置した。この時、形成されたフロック径を目測した。但し、 No.4及び5は、供試薬剤として、それぞれ硫酸バンド3000mg/リットル及び塩化第2鉄3000mg/リットルを用いた。
【0029】
次いで、処理した廃液の上澄液100ミリリットルを採取し、その外観を観察し、SS濃度及び原子吸光法による液中の重金属イオン濃度を測定した。その結果を供試薬剤及び添加量、フロック径と共に表4に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
表4より本発明の処理剤がニッケル処理に有効であることがわかる。
【0032】
【発明の効果】
この発明によれば、従来の処理方法において困難であった重金属含有廃液中の重金属、特にニッケル、バナジウム等を簡易な凝集沈殿法、例えばシックナーにより効率的に除去することができ、これらニッケル、バナジウム等の重金属イオンを排出基準以下まで低減することができる。
Claims (3)
- ポリエチレンイミンとカチオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤とを重量比100:1〜1:1で有効成分として含有することを特徴とする重金属含有廃液の処理剤。
- 重金属含有廃液に、ポリエチレンイミンとカチオン性ポリアクリルアミド系高分子凝集剤とを重量比100:1〜1:1で同時に又は別々に添加することにより非水溶性の重金属含有フロックを形成し、該フロックを沈殿除去することを特徴とする重金属含有廃液の処理方法。
- 重金属含有廃液が、ニッケル、バナジウム、又はニッケル及びバナジウム含有廃液である請求項2に記載の処理方法。
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