JP5821263B2 - ゴルフボール - Google Patents

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Description

本発明は、表面に多数のディンプルを有するゴルフボールに関し、更に詳述すれば、ディンプルエッジの損傷を可及的に防止して耐久性を向上させたゴルフボールに関する。
ゴルフボールには、単層の硬質ゴムからなるワンピースボールや、硬質ゴムのソリッドコアとその周面に直接又は中間層を介してアイオノマー樹脂などを主成分とするカバーを被覆形成してなるソリッドタイプ、センターボールに糸ゴムを巻回してなる糸巻きコアにバラタカバーを被覆形成してなる糸巻きタイプなどが知られている。
いずれのゴルフボールにも通常、球面全体に多数のディンプルが設けられており、このディンプルが形成された球面上に更にブランドネームやプレヤーナンバー等(以下、マークという)の印刷を行った後、カバー材の保護と外観向上などを目的として塗装(通常、クリアー塗装)が施され、製品化されている。
しかしながら、ゴルフボールには、金属製のクラブヘッドで打撃される際に非常に強い衝撃が負荷されると共に、クラブのロフト角により非常に強い摩擦力がボール表面に作用し、ボール表面が傷付きやすい。また、バンカーショットなどではクラブヘッドのフェース(打撃面)とボールとの間に砂粒が入り込み、更にボール表面が傷付きやすくなる。
このため、ゴルフボール表面に形成された塗装膜が傷付き磨耗し又は剥離して、ボール表面に印刷されたマークにかすれ、欠け、不鮮明化などの不都合が発生し、ボールの商品価値を低下させる問題が発生しやすい。更に、塗装膜の部分的な剥離や欠けは、所期のボール性能を低下させることにもなる。
また、練習場などで用いられる練習用ボールの場合には、練習場のボールであることを示すマーク類が印刷されるが、練習用ボールは長期に亘って繰り返し打撃に供されるため耐久性が最も重要な性能の1つであり、上記マークの耐久性についても、その向上が強く望まれるところである。
なお、本発明の先行技術としては、下記特許文献1〜8を挙げることができる。
特開昭48−063835号公報 特開平01−268578号公報 特開平02−045074号公報 特開2000−279553号公報 特開2004−073524号公報 特開2005−319292号公報 特開2007−136173号公報 特開2007−190382号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ゴルフボール表面の塗装膜の損傷を可及的に防止することができ、ボール表面に印刷されたマークの耐久性を効果的に向上させると共に、塗膜層の損傷によるボール性能の低下を防止することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、ゴルフボール表面の塗装膜の損傷が特にディンプルのエッジ部分で発生しやすいこと、その場合ディンプルのエッジを滑らかに形成することにより、塗装膜の損傷、特に塗装膜の剥離を効果的に抑制してマーク耐久性を向上させることができると共に、塗装膜損傷によるボール性能の低下を防止し得ることを見出した。そこで、これらをボールの飛び性能等を低下させることなく確実に達成するべく、ディンプルエッジの曲率半径(R)、ディンプルの大きさ(直径)(D)と曲率半径(R)との関係、更にディンプル総数(N)と曲率半径(R)との関係などにつき更に検討を進め、本発明を完成したものである。
即ち、本発明は、下記請求項1〜5に記載のゴルフボールを提供する。
請求項1:
表面に下記要件(1)〜(3)及び(6)を満足するディンプルが形成されていることを特徴とするゴルフボール。
(1)周縁部に曲率半径(R)0.5〜2.5mmの丸みが設けられたディンプルを有する。
(2)ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の表面積に占める比率である表面占有率(SR)が60〜74%。
(3)直径(D)に対する上記曲率半径(R)の比率(R/D比率)が20%以上となるディンプルの合計個数(RA)のディンプル総数(N)に対する比率(ER)が15〜85%。
(6)ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル空間体積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の体積に占める比率(VR)が0.99〜1.7。
請求項2:
更に下記要件(4)を満足する請求項1記載のゴルフボール。
(4)直径(D)の異なる複数種のディンプルを有すると共に、自己の直径(D)よりも大きい直径(D)のディンプルの曲率半径(R)が自己の曲率半径(R)以下になるディンプルと、最大の直径(D)を有する最大径ディンプルとの合計個数(DE)のディンプル総数(N)に対する割合(DER)が80%以上。
請求項3:
更に下記要件(5)を満足する請求項1又は2記載のゴルフボール。
(5)ディンプル総数(N)が380個以下。
請求項4:
(3)直径(D)に対する上記曲率半径(R)の比率(R/D比率)が20%以上となるディンプルの合計個数(RA)のディンプル総数(N)に対する比率(ER)が15〜30%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴルフボール。
請求項5:
上記ディンプルが、20面体配列、12面体配列、8面体配列、3回対称配列、5回対称配列のいずれかの配列により球面上に展開されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴルフボール。
本発明のゴルフボールによれば、ディンプルエッジの適正化により、ボール表面に形成された塗装膜の損傷、特に塗装膜の剥離を効果的に抑制し、ボール表面に印刷されたマークの損傷を可及的に防止することができると共に、塗膜層の損傷による性能低下を抑制することができる。
ディンプルの断面を示す概略図である。 ディンプル配列の一例を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。 実施例,比較例で作製したゴルフボールに付したマークを示す平面図である。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のソリッドゴルフボールは、例えば図1に示すように、周縁部に曲率半径(R)が0.5〜2.5mmの丸みが設けられたディンプルを有するものである[要件(1)]。
上記曲率半径(R)は、上記のように0.5〜2.5mmとされるものであるが、より好ましい下限値は0.6mm、更に好ましくは0.7mmであり、より好ましい上限値は1.8mm、更に好ましくは1.5mmとされる。
ここで、本発明ゴルフボールに設けられるディンプルは、特に制限されるものではないが、直径(D)の異なるディンプルを3種類以上設けることが好ましく、より好ましくは5種類以上のディンプルを形成することが好ましい。この場合、ディンプルの直径(D)
は、特に制限されるものはないが、1.5〜7mmとすることが好ましく、より好ましい下限値は1.8mm、より好ましい上限値は6.5mmである。また、ディンプルの深さも特に制限されるものではないが、0.05〜0.35mmとすることが好ましく、より好ましい下限値は0.1mmであり、より好ましい上限値は0.3mm、さらに好ましくは0.25mmである。更に、ディンプルの総数(N)も特に制限させるものではないが、380個以下とすることが好ましく[要件(5)]、より好ましくは350個以下、より具体的には220〜340個とすることが好ましい。
また、本発明では、ディンプルの縁に囲まれた平面(図1中の一点鎖線)で定義されるディンプル面積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球(図1中の破線)の表面積に占める比率である表面占有率(SR)が60〜74%となるように、ディンプルを形成する[要件(2)]。SRが74%以上であると、隣接するディンプル間の間隔が狭くなりすぎて上記曲率半径の丸みをディンプル周縁部に設けることが困難になる。一方、SRが60%未満であると、空力性能が低下して飛距離の低下を生じることとなる。なお、好ましいSRの下限値は65%、より好ましくは68%であり、好ましい上限値は73%である。
また、本発明では、直径(D)に対する上記曲率半径(R)の比率(R/D比率)が20%以上となるディンプルの合計個数(RA)のディンプル総数(N)に対する比率(ER)が15〜95%となるように、ディンプルを形成する[要件(3)]。この場合、上記R/D比率は、(R/D)×100%で表され、この比率が大きいほどディンプルの大きさに対して丸み部分の占める割合が大きく、より滑らかな断面形状を有するディンプルであることを意味するものである。そして、上記ERはこの滑らかなディンプルが全ディンプルに占める割合を表すものであり、上記のように15〜95%とすることによってディンプルのエッジ部分における塗装膜の損傷を効果的に抑制することができるものである。なお、上記R/D比率の上限値に特に制限は無いが、好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下である。また、上記ERの好ましい下限値は20%、より好ましくは25%であり、好ましい上限値は90%、より好ましくは85%、更に好ましくは70%である。
更に、直径(D)の異なる複数種のディンプルを有する場合、本発明では、特に制限されるものではないが、自己の直径(D)よりも大きい直径(D)のディンプルの曲率半径(R)が自己の曲率半径(R)以下になるディンプルと、最大の直径(D)を有する最大径ディンプルとの合計個数(DE)のディンプル総数(N)に対する割合(DER)が80%以上となるようにディンプルを形成することが好ましい[要件(4)]。
通常は、ディンプルの深さ(図1参照)が一定であれば、直径が小さくなるほど周縁部に設けられる丸みの曲率半径(R)は小さくなるが、深さを調節するなどの手段によって直径が小さいディンプルでも周縁の丸みのRをできるだけ大きく設定して、滑らかな断面形状のディンプルとし、上記DERを80%以上とすることにより、このような滑らかなディンプルの割合を多くして、塗装膜の損傷をより効果的に抑制するものである。なお、このDERのより好ましい値は85%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは93%以上である。なお、DERの上限値は100%である。
本発明のゴルフボールでは、特に制限されるものではないが、ディンプルの縁に囲まれた平面(図1中の一点鎖線)から下方に形成されるディンプル空間体積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球(図1中の破線)の体積に占める比率(VR)が0.8〜1.7となるようにディンプルを形成することが好ましい[要件(6)]。
これは、一般にディンプルの周縁に丸みをつけると弾道が高くなる飛行特性になりやすいため、VRを上記のように高めに設定して安定した弾道を維持するものである。なお、VRのより好ましい下限値は0.83、更に好ましくは0.85、最も好ましくは0.86である。またVRのより好ましい上限値は1.5、更に好ましくは1.3、最も好ましくは1.2である。
本発明のゴルフボールは、上記ディンプルをボール表面に形成したものであるが、そのディンプルの平面形状は、通常円形とされるが、曲線により形成された非円形状とすることもできる。また、ディンプルの配列にも制限はなく、20面体配列、12面体配列、8面体配列、3回対称配列、5回対称配列などを採用することができる。
上記ディンプルを有する本発明ゴルフボールの成形は、上記ディンプルを凹凸反転させて転写した金型を用い、常法に従って射出成形又は圧縮成形して形成することができるが、その際の金型作製には、3DCAD・CAMを使用し、反転用マスター型に全表面形状を直接3次元で削りだす手法、あるいは成型用金型のキャビティー部を直接3次元で削りだす手法を用いることができる。
なお、本発明のゴルフボールは、表面に上記ディンプルが形成されていればよく、ボールの構造や形成材料等に制限はなく、ワンピースゴルフボール,ツーピースゴルフボール,3層以上のマルチピースゴルフボール等のソリッドゴルフボールや、糸巻きゴルフボールとして、公知の材料を用い公知の方法で製造することができる。
以下、実施例、参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
〔実施例1及び2、参考例1、比較例
下記組成のゴム組成物を加硫成形してなるコアの外周に下記組成のカバーを被覆形成し、下記表1に示したディンプルを形成した直径42.7mmのゴルフボールを成形した。このボール表面に図3に示したマークを印刷した後、主剤:ポリエステル樹脂(酸価6、OH価168)(固形分)/酢酸ブチル/PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)が70/15/15質量部とした、主剤100質量部に対して、硬化剤:無黄変ポリイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(武田薬品工業(株)製、タケネートD−160N、NCO含有量8.5質量%、固形分50質量%)が150質量部、酢酸ブチル150質量部、からなる、クリア塗装を実施して塗装膜を形成し、完成品とした。得られた各ゴルフボールにつき下記砂磨耗試験を行なって、マーク耐久性を評価した。結果を表1に示す。
〔コアの材料組成〕
BR1(JSR製のNi触媒ブタジエンゴム) 95質量部
IR2200(JSR製のイソプレンゴム) 5質量部
パークミルD(日本油脂製の有機過酸化物) 1.07質量部
酸化亜鉛(堺化学工業社製) 23質量部
老化防止剤(大内新興化学工業社製の「ノクラックNS−6」) 0.2質量部
メタクリル酸(浅田化学工業社製) 22.5質量部
〔カバーの組成〕
パンデックスT8195
(大日本インキ化学工業(株)製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー) 100質量部
二酸化チタン(商品名「タイペークR550」石原産業社製) 3.5質量部
ポリエチレンワックス(商品名「サンワックス161P」三洋化成社製) 1.5質量部
〔砂磨耗試験〕
内容量8リットルの磁性のボールミルにゴルフボールを10個とバンカー用の砂3リットルを入れ、144時間ミキシングし、砂磨耗による、マークの欠け具合、表面の傷付き度合い、光沢減少の度合い、及び砂の付着の度合いを目視により調べた。その結果から良(○)、普通(△)、悪い(×)の三段階でマーク耐久性を評価した。
Figure 0005821263
*表1中の各項目の詳細は下記の通りである。
R:周縁部に設けられた丸みの曲率半径
R/D比率:直径(D)に対する曲率半径(R)の比率
N:ディンプル総数
RA:(R/D比率)が20%以上となるディンプルの合計個数
ER:(RA)のディンプル総数(N)に対する比率
DE:自己の直径(D)よりも大きい直径(D)のディンプルの曲率半径(R)が自己の曲率半径(R)以下になるディンプルと、最大の直径(D)を有する最大径ディンプルとの合計個数
DER:(DE)のディンプル総数(N)に対する比率
SR:ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の表面積に占める比率である表面占有率
VR:ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル空間体積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の体積に占める比率
表1に示されているように、本発明のディンプルを形成した実施例1及び2、参考例1のゴルフボールは、表面の塗装膜の損傷を可及的に防止することができ、ボール表面に印刷されたマークの耐久性を効果的に向上させ得ることが認められる。

Claims (5)

  1. 表面に下記要件(1)〜(3)及び(6)を満足するディンプルが形成されていることを特徴とするゴルフボール。
    (1)周縁部に曲率半径(R)0.5〜2.5mmの丸みが設けられたディンプルを有する。
    (2)ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の表面積に占める比率である表面占有率(SR)が60〜74%。
    (3)直径(D)に対する上記曲率半径(R)の比率(R/D比率)が20%以上となるディンプルの合計個数(RA)のディンプル総数(N)に対する比率(ER)が15〜85%。
    (6)ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル空間体積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の体積に占める比率(VR)が0.99〜1.7。
  2. 更に下記要件(4)を満足する請求項1記載のゴルフボール。
    (4)直径(D)の異なる複数種のディンプルを有すると共に、自己の直径(D)よりも大きい直径(D)のディンプルの曲率半径(R)が自己の曲率半径(R)以下になるディンプルと、最大の直径(D)を有する最大径ディンプルとの合計個数(DE)のディンプル総数(N)に対する割合(DER)が80%以上。
  3. 更に下記要件(5)を満足する請求項1又は2記載のゴルフボール。
    (5)ディンプル総数(N)が380個以下。
  4. (3)直径(D)に対する上記曲率半径(R)の比率(R/D比率)が20%以上となるディンプルの合計個数(RA)のディンプル総数(N)に対する比率(ER)が15〜30%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴルフボール。
  5. 上記ディンプルが、20面体配列、12面体配列、8面体配列、3回対称配列、5回対称配列のいずれかの配列により球面上に展開されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴルフボール。
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