JP5812463B2 - 液体クロマトグラフィーによる核酸の分離検出方法 - Google Patents
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Description
この分離性能を向上させる効果は、従来から行われているオゾン処理による非特異吸着の抑制効果とは異なり、核酸の分離検出時において認められる特有の効果である。
以下に本発明を詳述する。
本明細書において「強カチオン性基」とは、pH1〜14の全ての範囲で解離するカチオン性基を意味する。即ち、強カチオン性基は、水溶液のpHに影響を受けず解離した(カチオン化した)状態を保つことが可能である。
4級アンモニウム基としては、例えば、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、ジメチルエチルアンモニウム基等のトリアルキルアンモニウム基等が挙げられる。
4級アンモニウム基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリル酸エチルトリエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリル酸エチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリルアミドエチルトリエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリルアミドエチルジメチルエチルアンモニウムクロリド等のアクリル系単量体が挙げられる。
なお、本明細書において「アクリル系」とは、アクリル基又はメタクリル基を有することを意味する。また本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」であることを示す。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」であることを示す。
反応させる3級アミン類としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、1−メチルピペリジン、1−メチルピロリジン、ピリジン、メチルピリジン類等が挙げられる。
弱アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基等が挙げられる。なかでも、カルボキシル基が好ましい。
反応性基を弱アニオン性基に変換する方法としては、例えば、アミノ基にカルボキシル基を有するシランカップリング剤を反応させる方法、水酸基にハロゲン化酢酸類やアルデヒド化合物を反応させる方法、エポキシ基にカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法、エステル基を加水分解する方法、反応性基のエポキシ基を開環反応させる方法、不飽和結合等の疎水性基を紫外線やプラズマ照射等の公知の酸化処理反応によって酸化する方法等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
芳香族系非架橋性単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン等のスチレン系単量体等が挙げられる。なかでも、アクリル系単量体が好ましい。
塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等のアルカリ金属のハロゲン化物や、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム等のアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。また、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の無機酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム等の有機酸塩を用いることもできる。
実施例1では、強カチオン性基として4級アンモニウム基を有するカラム充填剤を調製した。
攪拌機付き反応器中の3重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液に、テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)300g、トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)100g、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド(和光純薬工業社製、4級アンモニウム基を有する単量体)100g、及び、過酸化ベンゾイル(キシダ化学社製)1.0gの混合物を添加した。攪拌しながら加熱し、窒素雰囲気下にて80℃で12時間重合した。得られた重合物を水及びアセトンで洗浄することにより、4級アンモニウム基を有する架橋重合体粒子を得た。得られた架橋重合体粒子の平均粒子径を、粒度分布測定装置(Particle Sizing Systems社製、「Accusizer780」)を用いて測定した結果、10μmであった。
実施例2では、強カチオン性基として4級アンモニウム基を有するカラム充填剤を調製した。
攪拌機付き反応器中の3重量%ポリビニルアルコール水溶液に、テトラエチレングリコールジメタクリレート300g、トリエチレングリコールジメタクリレート100g、及び、過酸化ベンゾイル1.0gの混合物を添加した。攪拌しながら加熱し、窒素雰囲気下にて80℃で1時間重合した。次に、50重量%のメタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液200gを反応器中に添加し、攪拌しながら窒素雰囲気下にて80℃で2時間重合した。得られた重合物を水及びアセトンで洗浄することにより、4級アンモニウム基を有する架橋重合体粒子を得た。得られた架橋重合体粒子の平均粒子径を、実施例1と同様の方法で測定した結果、10μmであった。
実施例1と同様にオゾン処理をし、カラム充填剤を得た。得られたカラム充填剤を、エンプティカラム(カラムサイズ:内径4.6mm×長さ20mm)に充填し、カラムを得た。
実施例3では、強カチオン性基として4級アンモニウム基を、弱アニオン性基としてカルボキシル基を有するカラム充填剤を調製した。
攪拌機付き反応器中の3重量%ポリビニルアルコール水溶液に、テトラエチレングリコールジメタクリレート300g、トリエチレングリコールジメタクリレート100g、及び、過酸化ベンゾイル1.0gの混合物を添加した。攪拌しながら加熱し、窒素雰囲気下にて80℃で1時間重合した。次に、50重量%のメタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液200g、及び、20gのメタクリル酸(和光純薬工業社製、カルボキシル基を有する単量体)を反応器中に添加し、攪拌しながら窒素雰囲気下にて80℃で2時間重合した。得られた重合物を水及びアセトンで洗浄することにより、4級アンモニウム基及びカルボキシル基を有する架橋重合体粒子を得た。得られた架橋重合体粒子の平均粒子径を、実施例1と同様の方法で測定した結果、10μmであった。
実施例1と同様にオゾン処理をし、カラム充填剤を得た。得られたカラム充填剤を、エンプティカラム(カラムサイズ:内径4.6mm×長さ20mm)に充填し、カラムを得た。
オゾン水処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、カラムを得た。
オゾン水処理を行わなかったこと以外は実施例2と同様の操作を行い、カラムを得た。
オゾン水処理を行わなかったこと以外は実施例3と同様の操作を行い、カラムを得た。
(1)分離性能の評価1:DNAラダーマーカーの検出
実施例1〜3、及び、比較例1〜3のカラムを用いて、下記の条件でDNAラダーマーカーを分離検出し、分離性能の比較を行った。
システム :LC−20Aシステム(島津製作所社製)
溶離液A :25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
溶離液B :1mol/LのNaClを含む25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
溶出条件 :分離時間0分から30分にかけて、溶離液Bの混合比率を直線的に増加させるリニアグラジエント法
0分(溶離液A100%)→30分(溶離液B100%)
測定試料 :20bpDNAラダーマーカー(タカラバイオ社製)
(20bp、40bp、60bp、80bp、100bp、120bp、140bp、160bp、200bp、300bp、400bp、500bpの断片が含まれる)
流速 :1.0mL/min
検出波長 :260nm
試料注入量:10μL
図1と図3、図2と図4とをそれぞれ比較した結果、オゾン処理したカラム充填剤を用いた場合は、オゾン処理をしなかったカラム充填剤を用いた場合に比べて、より短い分離時間で高い分離性能を示した。特に、オゾン処理によってピーク7〜12の分離性能が向上した。
実施例2で得られたカラムを用いて、下記の条件でインフルエンザウイルスのPCR増幅産物を分離検出し、ウイルスの型の判別を行った。
システム :LC−20Aシステム(島津製作所社製)
溶離液A :25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
溶離液C :1mol/Lの硫酸アンモニウムを含む25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
溶出条件 :分離時間0分から5分にかけて、溶離液Cの混合比率を直線的に増加させるリニアグラジエント法
0分(溶離液A40%、溶離液C60%)→5分(溶離液C100%)
測定試料 :下記に示す3種類のインフルエンザウイルス株より精製したRNAの、RT−PCR増幅産物
・AH1型株(A/New Caledonia/20/1999)、得られたPCR増幅産物のサイズ:431bp
・AH3型株(A/Urugay/716/2007)、得られたPCR増幅産物のサイズ:1141bp
・B型株(B/Florida/4/2006)、得られたPCR増幅産物のサイズ:329bp
・RNA精製用キット:QIAamp Viral RNA mini Kit(Quiagen社製)
・RT−PCRキット:PrimeScript OneStep RT−PCR Kit Ver.2(タカラバイオ社製)
・RT−PCRに使用したプライマー:
AH1型、B型・・・感染症学雑誌 第71巻 第6号
<AH1型株用プライマー>
5´−3´
Forward;tgagggagcaattgagttca(配列番号1)
Reverse;tgcctcaaatattattgtgt(配列番号2)
<B型株用プライマー>
5´−3´
Forward;aatcttctcagaggatatga(配列番号3)
Reverse;ttggcagatgaggtgaactt(配列番号4)
AH3型・・・インフルエンザ診断マニュアル平成14年4月版(国立感染研究所発行)
<AH3型株用プライマー>
5´−3´
Forward;agcaaaagcaggggataattc(配列番号5)
Reverse;tgcctgaaaccgtaccaacc(配列番号6)
流速 :1.5mL/min
検出波長 :260nm
試料注入量:10μL
実施例2で得られたカラムを用いて、下記の条件で、UDP−グルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)の野生型遺伝子と変異型遺伝子のPCR増幅産物を分離検出し、一塩基多型の判別を行った。
システム :LC−20Aシステム(島津製作所社製)
溶離液A :25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
溶離液B :1mol/LのNaClを含む25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
溶出条件 :分離時間0分から5分にかけて、溶離液Bの混合比率を直線的に増加させるリニアグラジエント法
0分(溶離液A100%)→5分(溶離液B100%)
試料 :UGT1A1の野生型遺伝子と変異型遺伝子(野生型遺伝子の一塩基多型:UGT1A1*6)の、変異領域のPCR増幅産物とその制限酵素断片
・PCRに用いたプライマー:
5´−3´
Forward;tggagaccgtcctcgtt(配列番号7)
Reverse;aagacacgctgcaccaaataa(配列番号8)
・PCR増幅産物のサイズ:706bp
・使用した制限酵素:BsmBI(Biolabs社製)
認識部位;
5´・・・cgtctcn・・・3´(配列番号9)
3´・・・gcagagnnnnn・・・5´(配列番号10)
(上記nは、a又はt又はc又はgを表す)
流速 :1.5mL/min
検出波長 :260nm
試料注入量:10μL
攪拌機付き反応器中の3重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液に、テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)300g、トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)100g、及び、過酸化ベンゾイル(キシダ化学社製)1.0gの混合物を添加した。攪拌しながら加熱し、窒素雰囲気下にて80℃で1時間重合した。次に、50重量%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亞合成社製、スルホン酸基を有する単量体)水溶液200gを反応器中に添加し、攪拌しながら窒素雰囲気下にて80℃で2時間重合した。得られた重合物を水及びアセトンで洗浄することにより、スルホン酸基を有する架橋重合体粒子を得た。得られた架橋重合体粒子の平均粒子径を、実施例1と同様に測定した結果、10μmであった。
比較例4で得られた架橋重合体粒子を、オゾン処理せずに同様のエンプティカラムに充填し、カラムを得た。
(1)分離性能の評価4:ヘモグロビン類の検出
比較例4及び比較例5で得られたカラムを用いて、下記の条件でヒト血液中のヘモグロビン類を分離検出し、分離性能の比較を行った。
システム :LC−20Aシステム(島津製作所社製)
溶離液D :30mmol/Lリン酸緩衝液(pH5.8)
溶離液E :220mmol/Lリン酸緩衝液(pH8.1)
溶出条件 :溶離液D100%から溶離液E100%へのステップグラジエント
試料 :フッ化ナトリウム採血したヒト健常人血液を、0.05%のTritonX−100(Sigma−Aldrich社製)を含むリン酸緩衝液(pH6.7)により180倍に溶血希釈したもの
流速 :1.5mL/分
検出波長 :415nm
比較例4及び比較例5で得られたカラム、並びに、分離性能の評価7の測定条件を用いて、人為的に調製した修飾ヘモグロビン類の分離を行った。修飾ヘモグロビン類を含む試料として、不安定型ヘモグロビンA1c含有試料(試料L)、アセチル化ヘモグロビン含有試料(試料A)、カルバミル化ヘモグロビン含有試料(試料C)の3種類を、公知の方法により調製した。
試料Lは、健常人血試料に、グルコースを2000mg/dLとなるように添加し、37℃で3時間加温することにより調製した。試料Aは、健常人血試料に、アセトアルデヒドを50mg/dLとなるように添加し、37℃で2時間加温することにより調製した。試料Cは、健常人血試料に、シアン酸ナトリウムを50mg/dLとなるように添加し、37℃で2時間加温することにより調製した。
2 DNAラダーマーカー(40bp)
3 DNAラダーマーカー(60bp)
4 DNAラダーマーカー(80bp)
5 DNAラダーマーカー(100bp)
6 DNAラダーマーカー(120bp)
7 DNAラダーマーカー(140bp)
8 DNAラダーマーカー(160bp)
9 DNAラダーマーカー(200bp)
10 DNAラダーマーカー(300bp)
11 DNAラダーマーカー(400bp)
12 DNAラダーマーカー(500bp)
21 PCR原料に由来する物質
22 AH1型株遺伝子のPCR増幅産物(329bp)
23 AH3型株遺伝子のPCR増幅産物(431bp)
24 B型株遺伝子のPCR増幅産物(1143bp)
31 PCR原料に由来する物質
32 UGT1A1野生型遺伝子のPCR増幅産物(235bp)
33 UGT1A1野生型遺伝子のPCR増幅産物(471bp)
34 UGT1A1変異型遺伝子のPCR増幅産物(706bp)
41 ヘモグロビンF
42 ヘモグロビンA1c
43 ヘモグロビンA0
Claims (4)
- オゾン処理したカラム充填剤を用いる液体クロマトグラフィーによる核酸の分離検出方法であって、前記カラム充填剤は、少なくとも表面に強カチオン性基と弱アニオン性基を有することを特徴とする液体クロマトグラフィーによる核酸の分離検出方法。
- 強カチオン性基は、4級アンモニウム基であることを特徴とする請求項1記載の液体クロマトグラフィーによる核酸の分離検出方法。
- 弱アニオン性基は、カルボキシル基であることを特徴とする請求項1又は2記載の液体クロマトグラフィーによる核酸の分離検出方法。
- カラム充填剤は、架橋重合体粒子からなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の液体クロマトグラフィーによる核酸の分離検出方法。
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