JP2012032377A - イオン交換クロマトグラフィー用充填剤、及び標的核酸の分離検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材微粒子の表面に強カチオン性基と弱アニオン性基とを有する、イオン交換クロマトグラフィー用充填剤。
【選択図】なし
Description
特に、核酸、タンパク質、多糖類等の生体高分子の分離に優れているため、生化学分野、医学分野等で汎用されている。
イオン交換クロマトグラフィーには、アニオン交換クロマトグラフィーとカチオン交換クロマトグラフィーとがある。アニオン交換クロマトグラフィーは、カチオン性基を有するカラム充填剤を用いて、アニオン性の物質を分離する方法である。カチオン交換クロマトグラフィーは、アニオン性基を有するカラム充填剤を用いて、カチオン性の物質を分離する方法である。
核酸とは、塩基、糖、リン酸からなるヌクレオチドがリン酸エステル結合で連なった生体高分子であり、糖構造の違いによってデオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)とに分類される。
例えば、核酸のPCR増幅産物、該PCR増幅産物の制限酵素断片、核酸の制限酵素断片等の標的核酸をイオン交換クロマトグラフィーにより分離する場合には、該標的核酸が有するリン酸基のマイナス電荷を利用したアニオン交換クロマトグラフィーが用いられており、これらの標的核酸を鎖長別に分離検出できる。
本発明は、イオン交換クロマトグラフィー用充填剤、及び該充填剤を用いたイオン交換クロマトグラフィーによる標的核酸の分離検出方法に関する。
上記強カチオン性基として、好ましくは4級アンモニウム基が挙げられる。4級アンモニウム基としては、例えば、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、ジメチルエチルアンモニウム基等のトリアルキルアンモニウム基が挙げられる。また、トリアルキルアンモニウム基のカウンターイオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオンが挙げられる。
オゾンは二重結合との反応性が高く、二重結合と反応したオゾンは、中間体であるオゾナイドを形成し、その後、カルボキシ基等が形成される。
上記オゾン水を用いることにより、オゾン水中に粒子を分散させるだけで粒子表面を簡便に酸化させることができる。その結果、基材微粒子における疎水性の構造部分が酸化され、カルボキシ基、水酸基、アルデヒド基、ケト基等の親水性基が形成されると考えられる。
オゾンには強力な酸化作用があるが、オゾン水を用いて処理することにより、オゾンガスを用いる処理よりも、粒子表面をより均一に酸化させることができ、粒子表面にカルボキシ基をより均一に形成することができるので好ましい。
また、上記オゾン水によって処理することで、カルボキシ基の他、水酸基、アルデヒド基、ケト基等の親水性基が形成され、これらの親水性基の存在によって充填剤の表面と核酸との間に働く疎水性相互作用が弱まると考えられる。
従って、本発明のイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を用いた場合、主たる相互作用である充填剤表面と核酸との間に働くアニオン交換相互作用に加え、上述したように、弱いカチオン交換相互作用が働いたり、疎水性相互作用が弱まったりすることによって分離性能が向上するものと考えられる。
また、必要に応じて、疎水性架橋性単量体及び疎水性非架橋性単量体以外の、反応性基を有する単量体を共重合させてもよい。
攪拌機付き反応器中、3重量%ポリビニルアルコール(日本合成化学社製)水溶液2000mLに、テトラエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)300g、トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製)100g及び過酸化ベンゾイル(キシダ化学社製)1.0gの混合物を添加した。攪拌しながら加熱し、窒素雰囲気下にて80℃で1時間重合した。次に、強カチオン性のイオン交換基(4級アンモニウム基)を有する単量体として、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド(和光純薬工業社製)100gをイオン交換水に溶解し、水溶液とした。この水溶液を上記反応器中にさらに添加し、前記と同様にして、攪拌しながら窒素雰囲気下にて80℃で2時間重合した。得られた重合物を水及びアセトンで洗浄することにより、基材微粒子の表面に4級アンモニウム基を有する重合体粒子を得た。
この操作を2回繰り返して重合体粒子にオゾン水処理を施し、基材微粒子の表面に4級アンモニウム基とカルボキシ基をと有するイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を得た。
得られたイオン交換クロマトグラフィー用充填剤の平均粒子径を、粒度分布計Accusizer780(Particle Sizing Systems社製)を用いて測定したところ、平均粒子径は10μmであった。
なお、オゾン水は、内径15cm×長さ20cmの円柱形を有する外套内に、パーフルオロアルコキシ樹脂からなる内径0.5mm×厚さ0.04mm×長さ350cmの中空管状のオゾンガス透過膜400本収容されたオゾン溶解モジュールを含むオゾン水製造システム(積水化学工業社製)を用いて調製した。
オゾン水処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、4級アンモニウム基のみを有するイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を得た。得られたイオン交換クロマトグラフィー用充填剤の平均粒子径は、実施例1と同様に10μmであった。
比較用カラムとして、TSK−gel DNA−STAT(東ソー社製、カラムサイズ:内径4.6mm×長さ100mm、イオン交換基:4級アンモニウム基)を準備した。
(1)分離性能の確認A
実施例1及び比較例1で作製したイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を、液体クロマトグラフィーシステムのエンプティカラム(カラムサイズ:内径4.6mm×長さ20mm)に充填した。
得られたカラムを用いて、以下の条件で分離性能の比較を行った。実施例1で作製したイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を充填したカラムを用いて得られたクロマトグラムを図1に示し、比較例1で作製したイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を充填したカラムを用いて得られたクロマトグラムを図2に示した。
システム:LC−20Aシリーズ(島津製作所社製)
溶離液:第1液 25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
第2液 25mmol/Lトリス塩酸緩衝液に1mol/L塩化ナトリウムを添加(pH7.5)
溶出法:第1液と第2液とを用いるリニアグラジエント法において、分離時間0分から30分にかけて、第2液の混合比率を直線的に増加させた。
0分(第2液 0%)→30分(第2液 100%)
検体:20bpDNALadderマーカー(タカラバイオ社製)
20bp、40bp、60bp、80bp、100bp、120bp、140bp、160bp、180bp、200bp、300bp、400bp、500bpの断片が含まれる。
流速:1.0mL/min
検出波長:260nm
試料注入量:10μL
比較例2の比較用カラムを用いて、以下の条件で測定した。得られたクロマトグラムを図3に示した。
システム:LC−20Aシリーズ(島津製作所社製)
溶離液:第1液 25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
第2液 25mmol/Lトリス塩酸緩衝液に1mol/L塩化ナトリウムを添加(pH7.5)
溶出法:第1液と第2液とを用いるリニアグラジエント法において、分離時間0分から30分にかけて、第2液の混合比率を直線的に増加させた。
0分(第2液 75%)→30分(第2液 100%)
検体:20bpDNALadderマーカー(タカラバイオ社製)
流速:0.5mL/min
検出波長:260nm
試料注入量:10μL
実施例1で作製したイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を充填したカラムを用いて、以下の条件で、インフルエンザウイルスのPCR増幅産物に対する分離性能の確認を行った。得られたクロマトグラムを図4に示した。
システム:LC−20Aシリーズ(島津製作所社製)
溶離液:第1液 25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
第3液 25mmol/Lトリス塩酸緩衝液に1mol/L硫酸アンモニウムを添加(pH7.5)
溶出法:第1液と第3液とを用いるリニアグラジエント法において、分離時間0分から5分にかけて、第3液の混合比率を直線的に増加させた。
0分(第3液 60%)→5分(第3液 100%)
検体:以下に示す3種類のインフルエンザウイルス株より精製したRNAに対してRT−PCR反応を行い、PCR増幅産物を得た。
AH1型株(A/New Caledonia/20/1999)、PCR産物431bp
AH3型株(A/Urugay/716/2007)、PCR産物1141bp
B型株(B/Florida/4/2006)、PCR産物329bp
RNAの精製には、RNA精製用キット(QIAamp Viral RNA mini Kit、Quiagen社製)を用いた。
RT−PCRには、RT−PCRキット(PrimeScript OneStep RT−PCR Kit Ver.2、タカラバイオ社製)を用いた。
また、RT−PCRに使用したプライマーは、以下の文献に記載されているものを用いた。
AH1型、B型・・・感染症学雑誌 第71巻 第6号
<AH1型株用プライマー>
5´−3´
Forward;TGAGGGAGCAATTGAGTTCA(配列番号1)
Reverse;TGCCTCAAATATTATTGTGT(配列番号2)
<B型株用プライマー>
5´−3´
Forward;AATCTTCTCAGAGGATATGA(配列番号3)
Reverse;TTGGCAGATGAGGTGAACTT(配列番号4)
AH3型・・・インフルエンザ診断マニュアル平成14年4月版(国立感染研究所発行)
<AH3型株用プライマー>
5´−3´
Forward;AGCAAAAGCAGGGGATAATTC(配列番号5)
Reverse;TGCCTGAAACCGTACCAACC(配列番号6)
流速:1.5mL/min
検出波長:260nm
試料注入量:10μL
図4に示したように、本発明のイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を用いることにより、3種類のPCR増幅産物のピークは、分離検出時間5分という短時間で高精度に分離することができ、インフルエンザウイルスの型を判別できることが分かった。また、PCR原料等に由来するピークから良好に分離することができ、これらのピークの干渉を受けないことも分かった。
実施例1で作製したイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を充填したカラムを用いて、以下の条件で、一塩基多型(SNP)の検出を行った。得られたクロマトグラムを図5に示した。
システム:LC−20Aシリーズ(島津製作所社製)
溶離液:第1液 25mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
第2液 25mmol/Lトリス塩酸緩衝液に1mol/L塩化ナトリウムを添加(pH7.5)
溶出法:第1液と第2液とを用いるリニアグラジエント法において、分離時間0分から5分にかけて、第2液の混合比率を直線的に増加させた。
0分(第2液 0%)→5分(第2液 100%)
検体:UGT1A1の配列を組み込んだプラスミドコントロールを用いて、UGT1A1*6領域をPCR反応により増幅した。次に、PCR増幅産物を制限酵素BsmB1により切断した。
このようにして、UGT1A1*6のWildTypeとMutantを準備した。
なお、PCRには、以下のプライマーを使用した。
5´−3´
Forward;tggagaccgtcctcgtt(配列番号7)
Reverse;aagacacgctgcaccaaataa(配列番号8)
PCR増幅産物のサイズ;706bp
また、制限酵素として、以下のものを使用した。
BsmBI(Biolabs社製)
認識部位;
5´・・・CGTCTCN・・・3´
3´・・・GCAGAGNNNNN・・・5´
NはA又はT又はC又はGを表す。
流速:1.5mL/min
検出波長:260nm
試料注入量:10μL
図5に示したように、UGT1A1*6のWildTypeは制限酵素によって切断され、235bpと471bpの二つのピークが確認された。一方で、UGT1A1*6のMutantは制限酵素の認識部位を持たないため切断されず、一つのピーク(706bp)として確認された。この結果から、本発明のイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を用いることにより、分離検出時間5分という短時間で一塩基多型を検出できることが分かった。また、PCR原料等に由来するピークから良好に分離することができ、これらのピークの干渉を受けないことも分かった。
Claims (8)
- 基材微粒子の表面に強カチオン性基と弱アニオン性基とを有する、イオン交換クロマトグラフィー用充填剤。
- 強カチオン性基は、4級アンモニウム基である、請求項1記載のイオン交換クロマトグラフィー用充填剤。
- 弱アニオン性基は、カルボキシ基である、請求項1又は2記載のイオン交換クロマトグラフィー用充填剤。
- 基材微粒子は、有機合成高分子からなる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のイオン交換クロマトグラフィー用充填剤。
- 強カチオン性基と弱アニオン性基は、それぞれ独立した単量体に由来するものである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のイオン交換クロマトグラフィー用充填剤。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のイオン交換クロマトグラフィー用充填剤を用いる、標的核酸の分離検出方法。
- 標的核酸は、核酸のPCR増幅産物、該PCR増幅産物の制限酵素断片、又は核酸の制限酵素断片である、請求項6記載の標的核酸の分離検出方法。
- 標的核酸は、ウイルス由来又はヒト由来のものである、請求項6又は7記載の標的核酸の分離検出方法。
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