JP4558187B2 - 陰イオン交換体、その製造方法、イオンクロマトグラフィー用カラム及び陰イオンの測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、陰イオンの保持時間を短縮できる陰イオン交換体の製造方法、その方法により得られる陰イオン交換体、その陰イオン交換体を用いたイオンクロマトグラフィー用充填剤及びカラム、並びにそのカラムを用いた陰イオンの測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水質の検査ないし分析、食品等の分析において、フッ化物イオン(F-)、塩化物イオン(Cl-)、亜硝酸イオン(NO2 -)、臭化物イオン(Br-)、硝酸イオン(NO3 -)、硫酸イオン(SO4 2-)、リン酸イオン(PO4 3-)の7種類のイオンの分析は重要であり、これらのイオンは「7種標準無機陰イオン」と言われている。近年、この7種標準無機陰イオンを含む無機陰イオンの分析には、イオンクロマトグラフィーが効率的かつ高精度・高感度な手段として利用されている。
【0003】
イオンクロマトグラフィーは、溶離液をイオン交換カラムに送液しながら、イオン種を含む試料を該カラム内に注入し、カラムより保持時間差をもって分離溶出されるイオン(種類、量)を電気伝導度検出器等の高感度検出器により検出するものである。
このイオンクロマトグラフィーにはサプレッサーを使うサプレッサー法とサプレッサーを使わないノンサプレッサー法がある。
【0004】
サプレッサー法においては、液中の陽イオンを水素イオンに置換するイオン交換膜またはイオン交換樹脂より構成される陽イオン除去システム装置であるサプレッサーを分離カラムと検出器の間に連結する。溶離液としてはアルカリ性の炭酸バッファー、ホウ酸バッファー、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が用いられ、陰イオンが分離カラムで分離された後、サプレッサーで陽イオンが除去され、溶離液は低伝導度化し伝導度検出器に入れられる。
【0005】
一方、ノンサプレッサー法では、溶離液として主に酸性のフタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸等の伝導度の低い有機酸の水性溶液(水溶液または水と有機溶媒との混合溶媒溶液)を用い、陰イオンが分離カラムで分離された後に直接伝導度検出器で検出される。伝導度検出器のバックグラウンドは低く、高感度の分析が可能である。
【0006】
サプレッサー用カラムの充填剤としては、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体をスルフォン化しイオン交換基を導入したラテックスを被覆したペリキュラー型のもの、アクリレート系またはビニルアルコール系共重合体にスペーサーを介しイオン交換基を導入した多孔性化学結合型のものが用いられている。
ノンサプレッサー用カラムの充填剤としては、ビニルアルコール系またはアクリレート系またはメタクリレート系共重合体にスペーサーを介してイオン交換基を導入したものが用いられている。
【0007】
そして7種標準無機陰イオンを適当な分析時間内に、かつ適当なピークバランスで分析できるように仕上げるために、イオンクロマトグラフィー用カラムの充填剤を製造する際には、3級アミンとの反応により導入するイオン交換基(4級アンモニウム基)の量を厳密に調節する必要がある。
しかし、イオンクロマトグラフィー用カラムの充填剤は、通常のイオン交換体に比べイオン交換容量が極端に小さいため、3級アミンと1回の反応によって4級アンモニウム基の導入量を調節することは困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる状況に鑑みて、陰イオン分析用のイオンクロマトグラフィーに用いる陰イオン交換体を製造する際に、各陰イオンの保持時間を容易に調節可能にする陰イオン交換体の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究の結果、エステル結合を含む陰イオン交換体を、更にアルカリ性溶液で処理しエステル基を分解し水酸基またはカルボキシル基を生成させることにより、各陰イオンの保持時間を短縮調節でき、かつ各イオンのピークバランスも調節可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は下記の陰イオン交換体の製造方法、陰イオン交換体、イオンクロマトグラフィー用充填剤及びカラム、そのカラムを用いた陰イオンの測定方法に関する。
【0011】
1.エステル結合を含む陰イオン交換体を更にアルカリ性溶液で処理しエステル基を分解し、水酸基及び/またはカルボキシル基を生成させることを特徴とする陰イオン交換体の製造方法。
2.エステル結合を含む基材にスペーサーを介して4級アンモニウム基を導入した陰イオン交換体を、更にアルカリ性溶液で処理し基材中のエステル基を分解し基材表面に水酸基及び/またはカルボキシル基を生成させることを特徴とする陰イオン交換体の製造方法。
3.前記エステル結合を含む基材が、カルボン酸ビニルエステルとイソシアヌレート系架橋性単量体との共重合体のエステル基の一部を水酸基にケン化してなるポリビニルアルコール基材であり、前記水酸基に分子内にグリシジル基を有するスペーサーを介して4級アンモニウム基を導入した陰イオン交換体を、更にアルカリ性溶液で処理し基材の残存エステル基を分解し基材表面に水酸基を生成させることを特徴とする前記1または2に記載の陰イオン交換体の製造方法。
4.前記エステル結合を含む基材が、水酸基を持つアクリレート及びメタクリレート系架橋性モノマーからなる群より選ばれる1種または2種以上のモノマーを重合して得られる基材であり、前記水酸基に分子内にグリシジル基を有するスペーサーを介して4級アンモニウム基を導入した陰イオン交換体を、更にアルカリ性溶液で処理し基材中のエステル結合を分解し基材表面に水酸基を生成させることを特徴とする前記1または2に記載の陰イオン交換体の製造方法。
【0012】
5.前記エステル結合を含む基材が、アルカノイルオキシスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体の一部をケン化してなる共重合体であり、前記共重合体中の水酸基に分子内にグリシジル基を有するスペーサーを介して4級アンモニウム基を導入した陰イオン交換体を、更にアルカリ性溶液で処理し基材の残存エステル結合を分解し基材表面に水酸基を生成させることを特徴とする前記1または2に記載の陰イオン交換体の製造方法。
6.前記1乃至5のいずれかに記載の製造方法により得られる陰イオン交換体。
7.平均粒径が1〜30μmである前記6に記載の陰イオン交換体。
8.平均孔径50〜300Åの多孔質重合体粒子である前記6または7に記載の陰イオン交換体。
【0013】
9.前記6乃至8のいずれかに記載の陰イオン交換体粒子からなるイオンクロマトグラフィー用充填剤。
10.前記6乃至8のいずれかに記載の陰イオン交換体を充填してなるイオンクロマトグラフィー用カラム。
11.前記10に記載のイオンクロマトグラフィー用カラムを用いる陰イオンの測定方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の陰イオン交換体の製造方法において、陰イオンの保持時間を短縮できる効果を有する陰イオン交換体はエステル結合を含むものであり、そのエステル結合は交換体構造中のどの部分に含まれていてもよい。一例としてエステル結合を含む基材を原料として製造した陰イオン交換体が挙げられる。
原料となりうる基材としては、ビニルエステル系、アクリレート系、メタクリレート系の重合体又は共重合体等が挙げられる。
【0015】
これらの基材は、スペーサーを介して4級アンモニウム基を導入した陰イオン交換体とした後アルカリ溶液で処理することにより、ビニルエステル系基材表面には水酸基、アクリレート系及びメタクリレート系基材表面にはカルボキシル基と水酸基を生成させることができる。
ここで生成する水酸基はアルカリ性溶離液中で解離し負電荷を帯び、またカルボキシル基は弱酸性からアルカリ性の溶離液中で解離し負電荷を帯びるため、これら充填剤を用いたカラムで陰イオンを分析する際に陰イオンの持つ負電荷との反発作用が生じ、陰イオンの保持時間を短縮させることができる。
【0016】
本発明において基材として使用するカルボン酸ビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、蟻酸ビニル等を挙げることができる。これらモノマーと架橋剤との共重合により製造した基材表面のエステル結合の一部を加水分解し水酸基を生成させ、ここにスペーサーを導入し、これを介して3級アミンを反応させ4級アンモニウム基を導入する。
【0017】
また、水酸基を有するアクリレート及びメタクリレート系架橋性モノマーとしては、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、ペンタエリストールジアクリレート、ペンタエリストールジメタクリレート、ペンタエリストールアクリレート、ペンタエリストールメタクリレート、ソルビトールジアクリレート、ソルビトールジメタクリレート等を挙げることができる。これら架橋性モノマーから選ばれる1種または2種以上の重合、または他の架橋剤との共重合により製造した基材表面の水酸基にスペーサーを導入し、これを介して3級アミンを反応させ4級アンモニウム基を導入する。
【0018】
本発明において、好ましく用いられるエステル結合を含む基材の具体例としては、カルボン酸ビニルエステルとイソシアヌレート系架橋性単量体との共重合体のエステル基の一部を水酸基にケン化してなるポリビニルアルコール、水酸基を持つアクリレート及びメタクリレート系架橋性モノマーからなる群より選ばれる1種または2種以上のモノマーを重合して得られる重合体または共重合体、アルカノイルオキシスチレン(例えば、アセトキシスチレン)とジビニルベンゼンとの共重合体を一部をケン化してなる共重合体等が挙げられる。
【0019】
本発明で用いるスペーサー分子は、基材表面とイオン交換基との間に複数の原子、通常は3原子以上の原子を介在させるものであり、一方で耐アルカリ性多孔質重合体と他方でイオン交換基と結合する。この結果、両者間の距離を長くするスペーサーとして働き、イオンと基材の干渉を抑えピークの拡散を抑制する機能を有する。
【0020】
スペーサー分子としては、3級アミン化合物と結合するグリシジル基を含有する化合物、例えば、エピクロルヒドリン、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が用いられる。サプレッサー法用の耐アルカリ性の高強度陰イオン交換体とする場合には同一分子内にグリシジル基を2つ以上含有する化合物を使用する。
【0021】
本発明において4級アンモニウム基を導入するために基材のグリシジル基と反応させる3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、1−メチルピペリジン、1−メチルピロリジン、ピリジン、メチルピリジン類が挙げられる。
これらの中でも1−メチルピペリジンが好ましく用いられる。
【0022】
本発明において上記陰イオン交換体のエステル基をアルカリ処理して加水分解するのに使用できるアルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、または炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩単独または混合溶液が挙げられる。
【0023】
上記陰イオン交換体のエステル基をアルカリ処理して加水分解するのに使用できるアルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、または炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩単独または混合溶液が挙げられる。
【0024】
反応は通常0.1〜10Mのアルカリ性溶液で、50〜120℃において、1〜40時間程度行うが、アルカリ性溶液の濃度、反応温度、反応時間を通常の範囲外に設定することも可能である。
【0025】
本発明において得られる陰イオン交換体の粒径は、1〜30μmがよく、好ましくは2〜20μm、より好ましくは2〜10μmである。陰イオン交換体の粒径が30μmを超える場合は、カラムの理論段数が低くなるため好ましくなく、粒径が1μm未満の場合はカラム圧の上昇が大きく、充填が極めて困難となる。
本発明において、粒径はコールターカウンター(Coulter Counter)で測定される。
【0026】
本発明により得られる陰イオン交換体は多孔質重合体粒子であり、孔径の制御は高速液体クロマトグラフィーの充填剤について一般に行われている方法を用いる。多孔質重合体粒子の孔径は50〜300Åであり、好ましくは孔径50〜150Å、より好ましくは50〜100Åである。多孔質重合体粒子の孔径が50Å未満だと、表面積が小さくグリシジル基含有基の導入が難しくなるため好ましくなく、300Åを超えると粒子の強度が低下するため好ましくない。
【0027】
孔径はJ.Chromedogr.,387(1987)65に記載されている逆サイズ排除クロマトグラフィーの手法またはBET(Brunauer-Emmett-Teller)法などにより求めることができるが、本発明においては特に支障がない限り、Angw.Chem.Int.Ed.Engl.,17.901〜908(1978)に記載の方法に準じて平均孔径が測定される。
【0028】
測定に際してはまず、被測定粒子をカラムに充填してHPLC装置につなぎ、THFを溶離液として、広範囲の分子量にわたる複数の標準ポリスチレンおよびベンゼンの保持容量を各々測定する。その結果を、Y軸に分子量M(対数目盛にすると見やすい)、X軸に保持容量(mL)を目盛ったグラフにプロットする。
こうして得られた各点をなめらかに結んだ曲線を較正曲線と呼ぶ。較正曲線から常法により排除限界点(V1,M1)を求め、これとベンゼンの測定点(V2,78)を用いて、直線 X=(V1+V2)/2 をグラフに記入する。この直線と較正曲線との交点(平均細孔点と呼ぶことにする)のY座標Mmを読みとり、この値を上記引用文献p.905の経験式(11)と同等の次式(X)に代入することにより、平均細孔径φm(Å)を算出する。
【0029】
【数1】
φm=0.62×(Mm)0.59 (X)
なお「平均細孔点」は、本発明者らが定義したものであり、全細孔容積を100%としたとき、最小容積(ベンゼンがちょうどはまる大きさとする)からの積算容積が50%になる点を意味する。この点の標準ポリスチレン相当分子量を、それがちょうどはまる細孔の直径に換算するために、上式を用いるものである。
【0030】
本発明において得られる粒状の陰イオン交換体は、サプレッサー式またはノンサプレッサー式イオンクロマトグラフィー用カラムの充填剤として用いられる。
陰イオン交換体のカラムヘの充填はスラリー法などの公知の充填方法に準じて行われ、耐アルカリ性を有し高感度の陰イオンクロマトグラフィーカラムとされる。
本発明の陰イオン交換体を用いたカラムは、サプレッサー式またはノンサプレッサー式イオンクロマトグラフィーで用いられる溶離液に安定である。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて説明するが、これらは単なる例示であって、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものでない。
【0032】
実施例1:
酢酸ビニル100g、トリアリルイソシアヌレート180g、酢酸ブチル150g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル10gよりなる均一混合液と、少量のポリビニルアルコール及びリン酸ナトリウムを溶解した水1400mLと還流冷却器を備えた5Lの三口フラスコに入れ10分撹拌した。次いで、窒素気流下で撹拌しつつ、60℃で16時間重合を行い粒状重合体を得た。該重合体をろ過、洗浄し、アセトン抽出した後乾燥した。次いで該重合体を苛性ソーダ3Lとともに還流冷却器、窒素導入管及び撹拌器を備えた5Lの三口フラスコに入れ、窒素気流下で15℃、20時間撹拌して該重合体のケン化を行った後、ろ過、水洗、更に乾燥した。ケン化によって得られたポリビニルアルコール重合体の水酸基の密度は2.1meq/gであった。これを基材として下記の手順で陰イオン交換体とした。
【0033】
上記乾燥重合体100g、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(以下、「1,4−BGE」と略記する。)50g、ジメチルスルフォキシド1000mLを窒素導入管、撹拌器を備えた2Lの三口フラスコに入れ窒素気流下35℃で16時間撹拌して重合体基材にグリシジル基含有基を導入した。導入後の重合体をジメチルスルホオキシド、水で洗浄後、真空乾燥機で乾燥した。乾燥後の重合体の重量は104gであり元の基材より4%増大した。
【0034】
グリシジル基含有基導入重合体100g、トリエチルアミン1%水溶液60mL、水1000mLを窒素導入管、撹拌器を備えた2Lの三口メスフラスコに入れ、窒素気流下50℃4時間撹拌してアミノ基を導入し陰イオン交換体を作成した。
これを、水洗浄を挟みながらメタノール、1N塩酸、1N苛性ソーダで洗浄した。その後0.5Mの炭酸ソーダ中に入れ、60℃で5時間処理した後、水洗、乾燥した。このようにして得られた陰イオン交換体は粒径5μm、イオン交換容量約50μeq/gであった。
【0035】
前記陰イオン交換体100g、1M炭酸ナトリウム1000mLを、撹拌器を備えた2Lの三口フラスコに入れ、98℃で1時間、2時間、3時間及び6時間処理した後、水洗、乾燥させ、保持時間を調節した各種陰イオン交換体を得た。
【0036】
この陰イオン交換体を内径4.6mm、長さ150mmのポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)製のカラムに加圧充填し、イオンクロマトグラフィー用カラムを作製した。イオンクロマトグラフとしてサプレッサーを備えたMIC−20(メトローム社製)を用い、溶離液として、1.8mM炭酸ナトリウム/1.7mM炭酸水素ナトリウムを1.0mL/minで流し、標準液として、F-2mg/L、Cl-5mg/L、NO2 -10mg/L、Br-10mg/L、NO3 -10mg/L、PO4 3-10mg/L、SO4 2-10mg/Lを含む水溶液を30μLイオンクロマトグラフに注入した。各イオンの保持時間のアルカリ処理による経時変化を図1に示す。
【0037】
比較例1:
4級アンモニウム基を導入するまでは実施例1と同じ処方で製造し、その後のアルカリ処理を行わずに陰イオン交換体とした。それを実施例1と同様に充填しイオンクロマトグラフィー用カラムを作製した。各イオンの保持時間を図1のアルカリ処理0時間にプロットした。
【0038】
実施例2:
基材として実施例1で調製したポリビニルアルコール系基材樹脂に実施例1と同じ処方により、1,4−BGEを導入した。
グリシジル基含有基導入重合体100g、1−メチルピペリジン4g、水500mLを窒素導入管、撹拌器を備えた1Lの三口メスフラスコに入れ、40℃で1時間撹拌して三級の複素環アミンを導入し陰イオン交換体を作製した。これに水洗浄を挟みながら、1N塩酸、1N苛性ソーダで洗浄した。その後1Nの苛性ソーダ中に入れ、98℃で3時間、6時間及び9時間処理した後、水洗、乾燥させ、保持時間を調節した各種陰イオン交換体を得た。
上記で得られた陰イオン交換体を実施例1と同じカラムに充填し、溶離液として18mMNaOH水溶液を用い、カラム温度を35℃とした以外は実施例1と同様の方法で測定した。各イオンの保持時間のアルカリ処理による経時変化を図2に示す。
【0039】
比較例2:
4級アンモニウム基を導入するまでは実施例2と同じ処方で製造し、その後のアルカリ処理を行わずに陰イオン交換体とした。それを実施例2と同様に充填しイオンクロマトグラフィー用カラムを作製した。各イオンの保持時間を図2のアルカリ処理0時間にプロットした。
【0040】
実施例3:
300mLのビーカーにグリセリンジメタクリレート100g、n−へキシルアルコール50g、2,2’アゾビス(イソブチロニトリル)1.5gの混合液を2%PVA−224、2%NaCl1333mLに懸濁させ、ホモジナイザーを使用して高速撹拌下、室温で40分間混合し、その後撹拌棒をセットした反応容器に移して63℃(外温)に温調をセットしそのまま6時間以上加温し、水及び有機溶媒に不溶な架橋ゲルを得た。このゲルを遠心分離にかけ沈殿物を集め、水500mL及びエタノール500mLで洗浄し風乾し、風力分級により分級し3〜6μmの粒子を得た。これを基材として下記の手順で陰イオン交換体とした。
【0041】
上記乾燥重合体20g、1,4−BGE40g、1NのNaOH水溶液40gを300mLの三口フラスコに入れ30℃で3時間撹拌して重合体基材にグリシジル基含有基を導入した。導入後の重合体を水100mL、アセトン100mLで洗浄後、真空乾燥機で乾燥した。
【0042】
グリシジル基含有基導入重合体10g、1−メチルピペリジン7.5g、1,4−ジオキサン45gを300mLの三口メスフラスコに入れ、35℃で1時間撹拌してアミノ基を導入し陰イオン交換体を作成した。これをアセトン100mLで2回、水100mL、0.5N−HCl100mL、水100mL、0.1N−NaOH100mLで2回、水100mLで3回洗浄した。
【0043】
前記陰イオン交換体10g、0.5N−NaOH100mLを、撹拌器を備えた300mLの三口フラスコに入れ、50℃で2時間、4時間及び6.5時間処理した後、水洗、乾燥させ、保持時間を調節した各種陰イオン交換体を得た。
【0044】
この陰イオン交換体を内径4.6mm、長さ100mmのステンレスカラムに加圧充填し、イオンクロマトグラフィー用カラムを調製した。これをノンサプレッサー法イオンクロマトグラフにより、溶離液として、8mMp−ヒドロキシ安息香酸(Bis−TrisによりpH4.1に調整)+2mMフェニルボロン酸を1.0mL/minで流し、カラム温度を40℃にして陰イオン分析した。標準液として、F-2mg/L、Cl-5mg/L、NO2 -10mg/L、Br-10mg/L、NO3 -10mg/L、PO4 3-10mg/L、SO4 2-10mg/Lを含む水溶液を30μLイオンクロマトグラフに注入した。各イオンの保持時間のアルカリ処理による経時変化を図3に示す。
【0045】
比較例3:
4級アンモニウム基を導入するまでは実施例3と同じ処方で製造し、その後のアルカリ処理を行わずに陰イオン交換体とした。それを実施例3と同様に充填しイオンクロマトグラフィー用カラムを作製した。各イオンの保持時間を図3のアルカリ処理0時間にプロットした。
【0046】
【発明の効果】
図1〜3における処理時間0の比較例との対比から明らかな通り、アルカリ性溶液で処理し基材表面に水酸基及び/またはカルボキシル基を生成させる本発明の陰イオン交換体によれば、陰イオン分析時の各イオンの保持時間とピークバランスを最適に調節することができる。
本発明によるイオンクロマトグラフィー用陰イオン交換体は、アルカリ処理により、基材表面の分解され易い位置に存在していたエステル結合が予め分解されるため、イオンクロマトグラフィー用カラムに充填して陰イオンの測定に使用した場合に非常に安定した性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1及び比較例1におけるアルカリ処理時間と陰イオン保持時間の関係を示すグラフである。
【図2】 実施例2及び比較例2におけるアルカリ処理時間と陰イオン保持時間の関係を示すグラフである。
【図3】 実施例3及び比較例3におけるアルカリ処理時間と陰イオン保持時間の関係を示すグラフである。
Claims (8)
- カルボン酸ビニルエステルとイソシアヌレート系架橋性単量体との共重合体のエステル基の一部を水酸基にケン化してなるポリビニルアルコール基材において、前記水酸基に分子内にグリシジル基を有するスペーサーを介して4級アンモニウム基を導入した陰イオン交換体を、更にアルカリ性溶液で処理し基材の残存エステル基を分解し基材表面に水酸基を生成させることを特徴とするイオンクロマトグラフィー用陰イオン交換体の製造方法。
- 水酸基を持つアクリレート及びメタクリレート系架橋性モノマーからなる群より選ばれる1種または2種以上のモノマーを重合して得られる基材において、前記水酸基に分子内にグリシジル基を有するスペーサーを介して4級アンモニウム基を導入した陰イオン交換体を、更にアルカリ性溶液で処理し基材中のエステル結合を分解し基材表面に水酸基を生成させることを特徴とするイオンクロマトグラフィー用陰イオン交換体の製造方法。
- アルカノイルオキシスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体の一部をケン化してなる共重合体において、前記共重合体中の水酸基に分子内にグリシジル基を有するスペーサーを介して4級アンモニウム基を導入した陰イオン交換体を、更にアルカリ性溶液で処理し基材の残存エステル結合を分解し基材表面に水酸基を生成させることを特徴とするイオンクロマトグラフィー用陰イオン交換体の製造方法。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法により得られるイオンクロマトグラフィー用陰イオン交換体。
- 平均粒径が1〜30μmである請求項4に記載のイオンクロマトグラフィー用陰イオン交換体。
- 平均孔径50〜300Åの多孔質重合体粒子である請求項4または請求項5に記載のイオンクロマトグラフィー用陰イオン交換体。
- 請求項4乃至6のいずれかに記載のイオンクロマトグラフィー用陰イオン交換体を充填してなるイオンクロマトグラフィー用カラム。
- 請求項7に記載のイオンクロマトグラフィー用カラムを用いる陰イオンの測定方法。
Priority Applications (7)
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EP01104369A EP1160260B1 (en) | 2000-05-29 | 2001-02-23 | Porous polymer particle, anion exchanger, producing method thereof, column for ion chromatography, and method for measuring anions |
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