JP4735933B2 - pH応答性両性イオン微粒子状ポリマー及びその用途 - Google Patents

pH応答性両性イオン微粒子状ポリマー及びその用途 Download PDF

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Description

本発明は、pH応答性両性イオン微粒子状ポリマー及びこれを用いた目的物質、特にDNAの捕捉・放出、より詳しくは、生体物質の精製作業において、液体クロマトグラフィを使用するイオン交換カラム等の担体物質。特にDNAの捕捉、放出できる材料に関する。
高分子構造内にカチオン性、アニオン性、両官能基を導入した高分子、微粒子の開発がFangらによって行われた。アミノ基とカルボキシル基を構造内に持つ重合開始剤2,2’-azobis(N-(2-carboxyethyl)-2-methylpropionamidine)を用いてstyrene/methyl methacrylate, stylene/acrylamideの共重合体を調製した。この微粒子末端に開始剤が残存するためにpH依存的に強酸、強アルカリ側でそれぞれカチオン、アニオン性を示す両性イオン微粒子である(非特許文献1)。
また、カチオン性重合開始剤とアニオン性モノマーであるアクリル酸を用いてラジカル重合法により微粒子を調製したもの。弱酸でカチオン性を示し、中性付近からアルカリ側でアニオン性を示す。カチオン性タンパク質(リゾザイム)をモデルにpH変化でタンパクの吸着、非吸着を実施することが知られている(非特許文献2参照)。
Nojimaらは、カルボキシル基とリン酸基を持つ物質の会合体を調製し、pHを酸性からアルカリ条件に変化させることで吸着していた蛍光性アニオン性物質を放出させることに成功している(非特許文献3)。
Poly(propylene imine) dendrimer を用いてpyreneの吸着、放出特性の制御だけでなく、コンプレックスを形成させることでpyreneの可溶化に成功している(非特許文献4)。
Polypropylacrylic acidを用いてカチオン性脂質とプラスミドDNAのコンプレックスを形成し細胞内に安定に導入し、遺伝子発現が起こったことが知られている(非特許文献5)。
さらに、カチオンpH感応性表面を有するポリマーナノ粒子、とくに共有結合性pH感応基、特に末端基を有するカチオンポリマーナノ粒子を使用して、水性系からアニオン有機物質を単離する方法も知られている(特許文献1)。
特許公表2001−514192号公報 S.J.Fang, K. Fujimoto, S. Kondo, K. Shiraki, H. Kawaguchi. Colloid Polym. Sci. 2001, 279,589-596 C.S. Chern, C.K. Lee, C.J.Chang, Colloid Polym. Sci. 2003, 281, 1092-1098 Y.Sumida, A. Masuyama, M.Takasu, T. Kida, Y. Nakatsuji, I. Ikeda, M. Nojima, Langmuir2001, 17, 609-612 Z.Sideratou, D. Tsiourvas, C.M. Paleos, Langmuir 2000, 16,1766-1769 C.Y. Cheung, N.Murthy, P. S. Stayton, A. S. Hoffman, Biocojugate Chem. 2001, 12,906-910
従来、微粒子内に存在する両性イオンに関わる官能基(アミノ基、カルボキシル基)が極端に少なく、アミノ基とカルボキシル基の存在比が1:1であるため、強酸、強アルカリ以外では微粒子は無電荷の状態になってしまう。また、極端にどちらかの官能基が多いと電荷状態が広いpH領域で偏ってしまう。これらの条件では、静電的効果を利用した生体物質の捕捉・放出を効率良く行うことができない。狭いpH領域で電荷状態を変化させることで、上記の問題を解決する。
本発明者は、高分子を用いて多点相互作用により生体物質を取り込む方法が、低分子化合物を用いるよりも効率が良く、また、高分子が水に可溶化しない微粒子であれば、懸濁した状態で目的物質を捕捉・放出でき、特に微粒子が等電点を中性〜弱アルカリ付近でのみ持つように設計することで簡便に目的物質の捕捉・放出が行えると考えた。
上記目的を達成するために本発明は、ポリマーのくり返し単位内に2つのアミノ基と、1つのカルボキシル基を含有するポリマーを開発した結果、弱アルカリ付近を等電点として酸性側で正電荷、アルカリ側で負電荷をもつことができるpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーを得た。このことより、タンパク質、核酸をpH変化のみで捕捉、放出することができる。つまり、カチオン性タンパク質(例えば、リゾザイム、プロタミン)をアルカリ側で取り込み、酸性付近で放出するものである。また、中性付近で正電荷を付与できるため、特にアニオン性生体物質であるDNAなどは穏やかな中性条件で微粒子に捕捉され、アルカリ側での放出が可能になる。すなわち、本発明は、2個のアミノ基と1個のカルボキシル基を有するモノマーとジグリシジルエーテルを反応させることにより得られるpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーである。本発明においては、ポリマーは、カラム等に充填されるため、微粒子状であることが要求される。また、本発明においては、pH応答性両性イオン微粒子状ポリマーが、一般式
(式中、R、Rはアルキレン基、nは5〜100の整数を表わす)で示されるpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーであ
さらに、本発明においては、pH応答性両性イオン微粒子状ポリマーが一般式
(式中、nは5〜100の整数を表わす)で表わされるポリマーであることができる。
さらに、本発明は、このpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーからなる、DNA又はカチオン性生体物質の捕捉、放出に用いる吸着剤である。
さらにまた、本発明は、当該pH応答性両性イオン微粒子状ポリマーを、カラムに充填し、DNA又はカチオン性生体物質を吸着させた後、pHを調節することにより、DNA又はカチオン性生体物質の放出を行うDNA又はカチオン性生体物質の分離方法でもある。
本発明のpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーは、ポリマーのくり返し単位構造にアミノ基とカルボキシル基の2つの官能基を導入した形になり、構造からアミノ基とカルボキシル基の存在比は2:1である(図1-A)。このために、強酸性側だけでなく、中性、弱アルカリ性付近までカチオン性を示す。アミノ基とカルボキシル基が1:1では弱酸性付近から強アルカリ性までノニオン性を示すのに対し、広範囲にわたって電荷を示すことはイオンコンプレックスを伴って生体物質等を捕捉するのに非常に有用である。また、用いる溶液のpHに応じて微粒子の電荷を変化させられるものである。一種類の材料で電荷を変化させることができれば、カチオンまたは、アニオン性物質の捕捉、放出が可能になる。例えば、これまでDNAの精製には、電気泳動によるバンドの切り出し、逆相、またはイオン交換クロマトグラフィーを用いるのが一般的である。これは、時間がかかる、有機溶媒を使用するなどの理由から煩雑な作業が必要である。今回新たに調製した微粒子をカラム担体に応用すれば、pHを変化させるだけで、DNAと不要物を簡便に分離できる他、使用するpHにより電荷が変化することから、1本のカラムでアニオン、カチオン性交換カラムとしての使用が可能になる。
本発明のpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーに製造するに際して、用いられるジグリシジルエーテルは、分子の両端にグリシジル基を有し、二つのグリシジル基を、アルキレン基若しくはフェニレン基で結ぶジグリシジルエーテルを用いることが出来る。
また、2個のアミノ基と1個のカルボキシル基を有するモノマーとしては、この官能基を有する化合物であれば何でも良いが、身近にあるものとしては、L-リジン、L-アルギニンを挙げることができる。とくに、L-リジンが好ましく用いられる。
本発明のpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーは、そのままの状態でも十分機能するが、添加する界面活性剤の量など、調製条件を変えることにより、カプセル化することができる。
(EGDGE-L-lysine微粒子の調製)
微粒子は懸濁重合法のwater-in-oil(W/O)法を用いた。重合に際して、ethylene glycol diglycidyl ether (EGDGE)とL-Lysineをモノマーとして採用し、単分散に微粒子が得られるW/Oミニエマルション法(K. Landfester, F. Tiarks, H.-P. Hentze and M. Antonietti, Macromol. Chem. Phys. 2000, 201, 1-5, J. I. Amalvy, S. P. Armes , B. P. Binks , J. A. Rodriguesand G.-F. Unali, Chem. Commun., 2003, 15, 1826-1827)を用いて微粒子を調製した。
Cyclohexane(23 ml)に界面活性剤であるMO-3S(2.5, 5 g)を加えよく攪拌した(連続相)。L-Lysine(33 mg, 2.2×10-1 mmol)を超純水(1.25 ml)に溶解させたものを上述の連続相に加え、ミニエマルション(分散相)を形成させるために超音波処理を2分間行った。その後、toluene(1.9 ml)に溶解したEGDGE (76 mg, 4.4×10-1 mmol)を加え、初めの30分間は氷上でその後の1時間半は室温で反応させた(L-Lysineのアミノ基とEGDGEのグリシジル基のモル比は1:2である)。反応後、遠心分離により微粒子と反応溶液を分離した。沈殿した微粒子は超純水により懸濁した。
界面活性剤2.5 gを用いて調製した微粒子を微粒子A、界面活性剤5 g用いたものを微粒子Bとする。得られた微粒子の反応及び化学構造を図1-Aに示す。
ここで、R1はメチレン基、R2はブチレン基である。
(比較例1)
(Disuccinimydyl glutarate(DSG)-L-lysine微粒子の調製)
比較例として、DSGとL-Lysineをモノマーとして微粒子を調製した。このポリマーは、くり返し単位構造に2個のアミド結合と1個のカルボキシル基を含有するものである(図1-B)。ここで、R1はメチレン基、R2はブチレン基である。
このポリマー微粒子の製造は、懸濁重合法のW/Oミニエマルション法を用いた。Chloroform(9 ml) (連続相)に界面活性剤であるMO-3S(1.0 g)を加えよく攪拌した。L-Lysine(4.9 mg, 30 mmol)を超純水(0.5 ml)に溶解させたものを上述の連続相に加え、ミニエマルションを形成させるために超音波処理を2分間行った。その後、chloroform (1 ml)に溶解したDSG(20 mg, 60 mmol)を加え、初めの30分間は氷上でその後の1時間半は室温で反応させた(L-Lysineのアミノ基とDSGのNHS-ester基のモル比は1:2である)。反応後、遠心分離により微粒子と反応溶液を分離した。沈殿した微粒子は超純水に懸濁した。
(透過型電子顕微鏡(TEM)による観察)
HITACHI社製のTEMを用いて微粒子の観察を行った。加速電圧は75 KVである。
実施例1により得られた微粒子A (非カプセル)、微粒子B(カプセル)の透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った。
*微粒子A (非カプセル)
TEM像を図2-Aに示す。得られた像より推察される形は球形であった。
微粒子の直径の平均は198 nm(変動係数:coefficient of variation (C.V.) 15.8 %)であった。
*微粒子B (カプセル)
TEM像を図2-Bに示す。得られた像より推察される形は球形であり、カプセル化していることが観察された。
微粒子の直径の平均は216 nm(C.V. 21.8 %)であった。カプセルの外壁の厚さを見積もると、約4 nmであった。これより見積もられる微粒子、またはカプセル内部の体積はそれぞれ、
微粒子の半径:108 nm
V= 5.3×106 nm3
カプセル内部の半径: 104 nm
V= 4.7×106 nm3
と計算され、微粒子の88 %が空洞であることになる。
(ゼータ電位測定)
実施例1により得られた微粒子A (非カプセル)、微粒子B(カプセル)及び比較例1で得られたDSG-L-lysine微粒子について、ゼータ電位測定を行った。pH 5.5, 6.5, 7.0, 8.2, 8.5, 8.6, 8.7, 8.75, 8.8, 9.1, 9.3, 11.0の各緩衝液(8 ml)中にA,B各微粒子溶液(100 μl)を加え、それぞれのpH条件でゼータ電位を測定した。加電圧は30 Vである。
(EGDGE-L-lysine微粒子AまたはBについて)
各pHでのゼータ電位をプロットしたグラフを図3-A(微粒子A)、図3-B(微粒子B)に示す。結果より、pH 5.5で微粒子A、B各々最大正電位値;28, 30 mV、pH 7.0で、21, 22 mV、pH 11.0で最大負電位値;-30, -40 mVとなった。等電点は、微粒子AでpH 8.70、微粒子Bで8.75となった。酸性側から中性付近で正電位、アルカリ側では負電位を示すシグモイドカーブを示した。これは、高分子(微粒子)主鎖にアミノ基、側鎖にカルボキシル基が存在するためと考えられる。酸性側ではアミノ基、カルボキシル基共にプロトン化し、アミノ基が正電荷を示す。逆に、アルカリ側ではカルボキシル基がCOO-の状態になるために負電荷を帯びる。この結果より、今回のEGDGEとL-Lysineより調製された微粒子はpHを変化させることにより正負両方の表面電荷を持たせることが可能になったことがわかる。また、この微粒子においては、pH 5.5からpKa(8.7)までの広い範囲で正電位を持っている。このことは、アミノ基とカルボキシル基が2:1の割合で含まれていることに起因していると思われる。ここで、アミノ基とカルボキシル基がそれぞれ1:1または2:1としたときのゼータ電位の理論曲線をpH 5.5〜11.0の範囲で求め、実験値との比較を行った。結果より、1:1の場合(図 3-A, B 点線)は、pH 5.5からpH 8付近までほぼゼータ電位の値が0、つまり無電荷状態であるのに対し、2:1の場合(図 3-A,B 実線)はpH 8.7を境に酸性側で正電位、アルカリ側で負電位を示した。実験値と理論曲線はよく一致している。これらのことから、アミノ基とカルボキシル基の存在比を2:1にしたことで、
(1)広い範囲で微粒子に電荷を持たせることに成功した。
(2)中性付近で正電荷を付与させられることで穏和な条件で目的物質とのイオンコンプレックスの形成、または静電的反発効果を得られる。もし、1:1であれば、微粒子に正電荷を付与させるには、pH 4以下にする必要がある。タンパク質などは変性してしまうものも多いので実用的ではない。
(比較例1のDSG-L-lysine微粒子)
DSG-L-lysine微粒子について、各pHでのゼータ電位をプロットしたグラフを図3-Cに示す。pH 11.0で最大負電位値; -28.1 mV、pH 5.5で最小負電位値; -5.0 mVとなり各pHにおいて全て負電位を示し、比例関係が得られた。本微粒子は、高分子(微粒子)主鎖にアミド基、側鎖にカルボキシル基を含有(図 1-B)するものである。EGDGE-L-lysine微粒子と違い、酸性側でアミド基はプロトン化しない。pHが増大するにつれてカルボキシル基のアニオン性は増大し負電位が増加したものと結論づけられる。
(微粒子による一本鎖DNAの捕捉・放出特性)
本発明のpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーを用いてDNA捕捉、放出を確認する実験方法の概略について、図4に示した。
ここでは、Applied Biosystems社のCytoFluorII用いてDNAの3末端に修飾されているFITC(Excitation 488 nm, Emission 518 nm)の蛍光を観察した。DNA(0.8 μg:138 pmol)にリン酸 バッファー80 μl (pH 7.0)を加え、A,B各々の微粒子(2 mg)と懸濁させ5分間攪拌した。その後遠心分離(10,000 rpm, 2分間)により微粒子を沈殿させ、上清(上清A)を取り除いた。続いて沈殿した微粒子にCAPS バッファー(pH 11.0)を80 μl加え、2 分間攪拌し、同様に遠心分離により上清(上清B)を取り除いた。沈殿した微粒子に80 μlのリン酸 バッファー または、CAPS バッファーを加え懸濁した(懸濁液A)。これら、上清A,B、懸濁液Aの蛍光強度を測定し、捕捉、放出効率を求めた。
(実施例1の微粒子A(非カプセル))
pH 7.0の状態でDNAを微粒子に吸着させ、pH 11.0に変化させることで微粒子がDNAを溶液側に放出するかを確認した。
微粒子の重量から個数を求める式は
(6×W/(dp)3×π)×1012 −(1)
と表せる。ここで W(g):微粒子の重量
dp(μm):微粒子の直径 とする。
用いた微粒子の重量は2.0 mgであり微粒子Aの直径は198 nmとして式(1)から、微粒子数は4.9×1011個である。
17 merの3末端FITC修飾一本鎖DNA(配列:3'-CTGCTCCCCGCGTGGCC-5’)を用いた。FITCは用いるpHによって蛍光強度が異なるため(酸側で小さく、アルカリ側で大きい)pH 7.0, 11.0でのFITC修飾DNA(138 pmol)の各蛍光強度を基準値として捕捉・放出効率を算出した。各pHでの蛍光強度から算出した捕捉・放出効率を示したグラフを図 5-A に示す。pH 7.0においてDNAを微粒子に吸着させ、遠心分離後の上清Aの蛍光強度は8.0 %となる。これによりDNA捕捉効率は92 %と見積もることができる。これは、導入したDNA濃度が138 pmolであることと、微粒子個数(4.9×1011個)との関係より、1つの微粒子に113本のDNAが吸着したことになる。同様にpH 11.0においてDNAを微粒子から放出させた後、遠心分離した上清Bの蛍光強度から放出効率は91 %になる。同様の実験を3回繰り返し行った結果、ほぼ同様の捕捉・放出特性が得られた(図 5-A)。これはゼータ電位の結果より、本微粒子は酸性側から中性付近でカチオン性、アルカリ側でアニオン性を示すことから、pHを中性条件にすることで、イオンコンプレックスにより微粒子がアニオン性高分子であるDNAを捕捉し、アルカリ条件にすることで、DNAを静電的反発効果により放出したものと考えられる。
(実施例1の微粒子B(カプセル))
pH 7.0の状態でDNAを微粒子に吸着させ、pH 11.0に変化させることで微粒子がDNAを溶液側に放出するのかを確認した。用いた微粒子の重量は微粒子Aと同様に2.0 mgであり式(1)から、微粒子数は3.7×1011個である。微粒子Aの時と同様の17 merの3末端FITC修飾一本鎖DNAを用いた。各pHでの蛍光強度から算出した捕捉・放出効率を示したグラフを図 5-Bに示す。pH 7.0においてDNAを微粒子に吸着させ、遠心分離後の上清Aの蛍光強度は12 %となる。これによりDNA捕捉効率は88 %と見積もれる。これは、導入したDNA濃度が138 pmolであることと、微粒子個数(3.7×1011個)の関係より、1つの微粒子に219本のDNAが吸着したことになる。同様にpH11.0においてDNAを微粒子から放出させた後、遠心分離した上清Bの蛍光強度から放出効率は79 %になる。同様の実験を3回繰り返し行った結果、ほぼ同様の捕捉・放出特性が得られた。これはゼータ電位の結果より、本微粒子は酸性側から中性付近でカチオン性、アルカリ側でアニオン性を示すことから、微粒子Aと同様の理由でDNAを捕捉、放出したものである。
(実施例1の微粒子A(非カプセル)とB(カプセル)の比較)
捕捉・放出特性に関して3回測定した実験結果の平均を図6に示す。捕捉特性はA,B共に90 %とほぼ同様の結果が得られた。放出特性に関しては、微粒子AはDNAが微粒子表面にのみ吸着するため、pH 11.0では捕捉したDNAをほぼ放出している。それに対しBは吸着量の約6.0 %が微粒子に残存している。この違いは、カプセルである微粒子BはpH 7.0の状態では、DNAをイオンコンプレックスで吸着する以外に、プロトン化による膨潤のため、DNAが微粒子内部に入り込むと推察される。pH 11.0の状態にすると微粒子表面に吸着していたDNAは静電的反発効果のために溶液側に放出されるが、微粒子自体は収縮する。内部に入ったDNAは溶液側に放出されにくくなり微粒子内部に残存すると考察される。
本発明のpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーは、くり返し単位内のアミノ基とカルボキシル基の存在比が2:1である。図3-A, BからわかるようにpH 8.7または8.75で等電点を示し、無電荷状態のpHが一点であることから、広範囲に電荷を付与することができ、狭いpH領域での電荷状態の変化が可能である。また、図5,6からわかるように、DNAの捕捉・放出が高効率で行われているので、本発明のpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーは、使い捨てではなく、再利用可能材料である。
また、本発明のくり返し単位内にアミノ基とカルボキシル基が2:1であるpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーは、DNAのみならず、一般のイオン性の物質等の捕捉・放出に用いることができる。
本発明の応答性両性イオン微粒子状ポリマーの製造プロセス 比較例のポリマーの製造プロセス 微粒子Aの透過型電子顕微鏡写真 微粒子Bの透過型電子顕微鏡写真 微粒子Aのゼータ電位の実験値と理論値 微粒子Bのゼータ電位の実験値と理論値 微粒子Cのゼータ電位の実験値 微粒子ポリマーのDNAの捕捉と放出の実験の概略 微粒子AのDNAの捕捉と放出の効率 微粒子BのDNAの捕捉と放出の効率 微粒子A及びBのDNA捕捉、放出の平均効率比較

Claims (5)

  1. 2個のアミノ基と1個のカルボキシル基を有するモノマーとジグリシジルエーテルを反応させることにより得られるくり返し単位中に、2個のアミノ基と1個のカルボキシル基、及び2個の水酸基を有する、下記一般式(式中、R、Rはアルキレン基、nは5〜100の整数を表わす)で示されるpH応答性両性イオン微粒子状ポリマー。
  2. pH応答性両性イオン微粒子状ポリマーが一般式
    (式中、nは5〜100の整数を表わす)で表わされるポリマーである請求項に記載したpH応答性両性イオン微粒子状ポリマー。
  3. 請求項1又は2に記載したpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーからなる、DNA又はカチオン性生体物質の捕捉(吸着)・放出に用いる吸着剤
  4. 請求項1又は2に記載したpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーを、カラムに充填し、DNAを吸着させた後、pHを調節することにより、DNAの放出を行うDNA分離方法。
  5. 請求項1は2に記載したpH応答性両性イオン微粒子状ポリマーを、カラムに充填し、アルカリ側でカチオン性生体物質を吸着させた後、pHを酸性に調節することにより、カチオン性生体物質の放出を行うカチオン性生体物質分離方法
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