JP5811905B2 - 重ね合わせ熱間プレス部材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、重ね合わせ熱間プレス部材及びその製造方法に関し、具体的には、熱間プレス用素材を重ね合わせた後に熱間プレス成形により重ね合わせ熱間プレス部材を製造する際に、熱間プレス素材が亜鉛系めっき鋼板であっても、重ね合わせ部の内部に臨む亜鉛系めっき被膜の下の母材鋼板の表層から板厚方向の内部へ向けた母材鋼板の表面の割れが発生せず、焼入れ不良のない健全な重ね合わせ熱間プレス部材を製造する技術に関する。
自動車の車体を構成する各種の自動車部品は、静的強度や動的強度、衝突安全性さらには軽量化等の様々な観点から、多様な性能や特性の向上を要求されている。例えば、Aピラーレインフォース,Bピラーレインフォース,バンパーレインフォース,トンネルリンフォース,サイドシルレインフォース,ルーフレインフォース又はフロアークロスメンバー等の自動車部品には、それぞれの自動車部品における特定部位だけがこの特定部位を除く一般部位よりも高強度を有することが要求される。
そこで、自動車部品における補強が必要な特定部位に相当する部分だけに複数枚の鋼板を重ね合わせて溶接した後、この鋼板を熱間プレス成形して重ね合わせ熱間プレス部材を製造する工法が、2007年頃より実際に採用されている(特許文献1又は非特許文献1〜3参照)。この工法によれば、プレス金型数を削減しながら重ね合わせ熱間プレス部材の特定部位だけを部分的に強化できる。
重ね合わされる鋼板が非めっき鋼板であると、熱間プレス成形に伴う高温加熱によって重ね合わせ熱間プレス部材の表面に酸化スケールが生成するため、熱間プレス成形後に例えばショットブラスト処理により生成した酸化スケールを除去する必要が生じたり、あるいは製造された重ね合わせ熱間プレス部材の耐食性が低下し易いといった問題がある。
重ね合わされる鋼板がアルミニウム系めっき鋼板であれば、熱間プレス成形後の重ね合わせ熱間プレス部材にショットブラスト処理を行う必要は解消されるものの、アルミニウム系めっき被膜は、亜鉛系めっき被膜のような犠牲防食性を示さないので、アルミニウム系めっき被膜に傷が付いた場合の耐食性の低下は否めないことや、MAG溶接が安定せず溶け落ちによる穴あきが発生し易いという問題がある。
特許公開2011−88484号公報
J.K Larsson et.al: EXTENSIVE INTRODUCTION OF ULTRA HIGH STRENGTH STEELS SETS NEW STANDARDS FOR WELDING IN THE BODY SHOP ,Welding in the World Vol 53 5/6 p4-14 (2009) P.Nystrom et.al:The New Volvo V70 and XC70 Car Body, Proceedings of Euro Car Body 2007
本発明者らは、熱間プレス成形後にショットブラストが不要であるとともに犠牲防食作用を有する亜鉛系めっき鋼板、特に合金化溶融亜鉛めっき鋼板を重ね合わせ熱間プレス部材の素材として用いれば、上述した問題を解決できることに着目し、鋭意検討を重ねた。
本発明者らは、一枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と他の一枚の鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板又は非めっき鋼板)とからなる重ね合わせ熱間プレス部材を通常に熱間プレス成形した後に解体して、これらの鋼板の重ね合わせ部の内部を調べた結果、重ね合わせ部以外では何も問題がなかったにも関わらず、意外にも、重ね合わせ部の内部に臨む合金化溶融亜鉛めっき被膜の下の母材鋼板の表層から板厚方向の内部へ向けて母材鋼板の表面に微小な亀裂が生じる現象(本明細書では「表面割れ」という)が発生することを知見した。
具体的には、一枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と他の一枚の鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板又は非めっき鋼板)とを、両者の間から亜鉛蒸気が抜けないように重ね合わせ、一枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板に1.5%程度の歪みを与えて熱間プレス成形する場合に、重ね合わせ部以外の部分では熱間プレス成形に伴う高温加熱により合金化溶融亜鉛めっき被膜から亜鉛が蒸発するために合金化溶融亜鉛めっき鋼板の母材鋼板における表面割れは発生しないものの、重ね合わせ部の内部に臨む合金化溶融亜鉛めっき被膜の下の母材鋼板のうち1.5%以上の歪みを与えられた部分では表面割れが発生する。
さらに、この表面割れは、重ね合わせ部の外部に臨む合金化溶融亜鉛めっき被膜の下の母材鋼板では、1.5%を超える大きな歪みを与えられても、発生しない。
これまで、表面割れが、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に代表される亜鉛系めっき鋼板を素材とする重ね合わせ熱間プレス部材の重ね合わせ部の内部に臨む合金化溶融亜鉛めっき被膜の下の母材鋼板のうち1.5%以上の歪みを与えられた部分において発生することは、全く知られておらず、当然のことながらその発生原因や対策は全く知られていない。
表面割れが生じると、自動車の衝突時に破断の起点となり、部品の強度特性が低下する可能性がある。このため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を素材として用いる重ね合わせ熱間プレス部材を量産する際には、表面割れが発生していないことを保証する必要がある。しかし、表面割れは、重ね合わせ部の内部に臨む合金化溶融亜鉛めっき被膜の下の母材鋼板の表層からその板厚方向への内部の途中までの領域において発生することが多く、必ずしも母材鋼板を貫通して発生するものではない。このため、表面割れは、製造された重ね合わせ熱間プレス部材の外観を目視により検査しても発見できず、適当な非破壊検査法を用いて製造された熱間プレス部材の全数を検査する必要を生じ、製造コストの大幅な上昇は否めない。
本発明は、これまでには全く知られていない新規な課題を解決することを目的とするものであり、具体的には、少なくとも1枚の鋼板が亜鉛系めっき鋼板である複数枚の鋼板を互いに重ね合わせて熱間プレス成形することにより重ね合わせ熱間プレス部材を製造する際に、重ね合わせ部の内部に臨む合金化溶融亜鉛めっき被膜の下の母材鋼板のうち熱間プレス成形により1.5%以上の歪みを与えられる部分における表面割れの発生が防止され、焼入れ不良のない健全な重ね合わせ部を有する熱間プレス部材と、その製造方法とを提供することを目的とする。
図8は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板GAを素材として通常の手法により熱間プレス成形を行って得られる熱間プレス成形部材の表層の状況を示す断面写真である。合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、900℃程度で4分間程度加熱された後にプレス成形される。この際、図8に示すように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表層では、熱間プレス成形前の加熱中に亜鉛が鉄亜鉛固溶相(亜鉛のうち約70%)と酸化亜鉛(亜鉛のうち約25%)として存在し、残りの約5%が蒸気となって蒸発するため、熱間プレス成形時には亜鉛の液相は残存せず母材鋼板の表面割れは全く発生しない。
これに対し、図9は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を素材とする重ね合わせ熱間プレス部材の重ね合わせ部の内部に臨む合金化溶融亜鉛めっき被膜の下の母材鋼板のうち1.5%以上の歪みを与えられた部分の表層の状況を示す断面写真である。
図9に写真で示すように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を素材とする重ね合わせ熱間プレス部材の重ね合わせ部の内部に臨む合金化溶融亜鉛めっき被膜の下の母材鋼板の部分では、亜鉛が蒸発等により消費され難いため、プレス成形前の高温加熱によって亜鉛の液相が残存し(図9における亜鉛リッチ相は亜鉛の液相の痕跡を示す)、熱間プレス成形時に亜鉛の液相が残存したままプレス成形されて1.5%以上の歪みを与えられるため、母材鋼板の結晶粒界に溶融亜鉛が侵入して結晶粒界を脆化させる液体金属脆性によって表面割れが発生すると考えられる。なお、図9に示すように、図8では確認された酸化亜鉛相は存在しない。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板を素材とする重ね合わせ熱間プレス部材における表面割れの対策は、これまで報告されていないものの、以下に列記の方法(a)〜(c)が考えられる。
(a)プレス成形前の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の加熱時間を長くするか、あるいは加熱温度を高くすることによって、亜鉛の液相が鉄亜鉛固溶相となるように反応を促進させ、プレス成形時の亜鉛の液相を消失させることが考えられる。しかしながら、この方法では、加熱時間を長くすることによる生産性の低下や、加熱温度を上げることによるランニングコストの上昇は避けられず、適当な方策であるとは言い難い。
(b)加熱炉から素材である重ね合わせ部材を抽出した後に一旦冷却し、重ね合わせ面の亜鉛の液相が凝固する温度以下に重ね合わせ部材の温度を一旦低下してから、プレス成形することが考えられる。しかしながら、重ね合わせ部材を構成する2枚の鋼板の重ね合わせ部の温度は、他の部分の表面の温度よりも高いことを見越して大幅に温度を低下する必要があり、他の部分の冷却が速いために他の部分の温度は重ね合わせ部の温度よりもよりいっそう低下し、他の部分に十分に焼きが入らなくなるおそれがある。重ね合わせ面のみを狙い、ガス冷却もしくは金型冷却した場合でも、重ね合わせ面の近傍の重ねていない鋼板の部分の温度が低下し十分焼きが入らなくなるおそれがある。
(c)素材である合金化溶融亜鉛めっき鋼板を重ね合わせて溶接した後、冷間でプレス成形して冷間成形された重ね合わせ部材とし、その後にこの重ね合わせ部材を炉に装入して加熱し、冷間でのプレス成形に用いた金型と同形状の金型により焼入れのみを行うことにより、液相が残存した状態での歪みの負荷を抑制し、表面割れを防止することが考えられる。しかし、この方法を実施するには、ほぼ同一形状の金型を2つ用いる必要があり、金型のコストが大幅に嵩む。
本発明者らは、さらに検討を重ねた結果、亜鉛系めっき鋼板及び/又はこの亜鉛系めっき鋼板と重ね合わされる他の鋼板に、亜鉛系めっき鋼板の表面に1.5%以上の歪みが熱間プレス成形の際に加えられる歪み付加部と、この歪み付加部に対向する他の鋼板との間に0.03〜2.0mmの隙間を形成できる突出部を形成しておき、これらの鋼板を重ね合わせて上記隙間が確保された状態で炉加熱を行うことにより、重ね合わせ面に形成される隙間を介して、重ね合わせ部の内部に存在する亜鉛の液相を酸化させずに蒸気として蒸発させて亜鉛の液相を早期に減らすことができることを知見した。
図10は、本発明による、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を素材とする重ね合わせ熱間プレス部材の重ね合わせ部の内部に臨む合金化溶融亜鉛めっき被膜の下の母材鋼板のうち1.5%以上の歪みを与えられた部分の表層の状況を示す断面写真である。
本発明によれば、図10に示すように、プレス成形時に亜鉛の液相が存在した痕跡である亜鉛リッチ相は存在せず、熱間プレス成形時に亜鉛の液相が存在しない状態で熱間プレス成形を行うことができるようになる。
本発明は、このような新規な知見に基づいてなされたものである。
図1は、本発明に係る重ね合わせ熱間プレス部材4の製造方法の一例を模式的に示す説明図である。本発明は、図1を参照しながら説明すると以下に列記の通りである。
(1)少なくとも、母材鋼板1a、及び母材鋼板1aの少なくとも一方の表面に形成された亜鉛系めっき被膜1bを有する亜鉛系めっき鋼板である第1の鋼板1と、亜鉛系めっき被膜1bを介して第1の鋼板1に重ね合わされることにより第1の鋼板1との間に重ね合わせ部3を形成する第2の鋼板2とを備える重ね合わせ熱間プレス部材4であって、亜鉛系めっき被膜1bのうち重ね合わせ部3の内部に臨む部分が形成された母材鋼板1aの一部又は全部に、1.5%以上の歪みを有する歪み付加部5を有すること、及び、第1の鋼板1及び第2の鋼板2の一方又は双方は、歪み付加部5と歪み付加部5に対向する第2の鋼板との間に0.03〜2.0mmの隙間部を押圧した部位を有することを特徴とする重ね合わせ熱間プレス部材4。
(2)隙間6は、重ね合わせ部3の外部に連通する(1)項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材。
(3)重ね合わせ熱間プレス部材は、自動車の車体を構成するAピラーレインフォース,Bピラーレインフォース,バンパーレインフォース,トンネルリンフォース,サイドシルレインフォース,ルーフレインフォース又はフロアークロスメンバーである(1)項又は(2)項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材。
(4)図1に例示するように、少なくとも、母材鋼板1a、及び母材鋼板1aの少なくとも一方の表面に形成された亜鉛系めっき被膜1bを有する亜鉛系めっき鋼板である第1の鋼板1と、亜鉛系めっき被膜1bを介して第1の鋼板1に重ね合わされることにより第1の鋼板1との間に重ね合わせ部3を形成する第2の鋼板2とを重ね合わせて、例えば炉加熱及び成形を経て、熱間プレス成形することによって重ね合わせ部3を有する重ね合わせ熱間プレス部材4を製造する方法であって、第1の工程及び第2の工程をこの順に備えることを特徴とする重ね合わせ熱間プレス部材4の製造方法;
第1の工程:熱間プレス成形によって、亜鉛系めっき被膜1bのうち重ね合わせ部3の内部に臨む部分が形成された母材鋼板1aの一部又は全部に形成される、1.5%以上の歪みを加えられる歪み付加部5と、歪み付加部5に対向する第2の鋼板2との間に0.03〜2.0mmの隙間6を形成する工程(隙間付与成形工程)。
第2の工程:第1の鋼板1と第2の鋼板2とを、隙間6が形成された状態で重ね合わせて熱間プレス成形する工程(熱間プレス成形工程)。
(5)隙間6は、第1の鋼板1及び第2の鋼板2の少なくとも一方に、プレス成形,ロール成形又はレーザ照射のいずれかによって突出部7を形成することによって、形成される(4)項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材4の製造方法。
(6)隙間6は、第1の鋼板1と第2の鋼板2との間に金属板あるいは金属網を介在することによって、形成される(4)項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法。
(7)隙間6は、重ね合わせ部3の外部に連通するように形成される(4)項から(6)項までのいずれか1項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法。
(8)熱間プレス時における第1の鋼板1又は第2の鋼板2の温度は、780℃以上930℃以下である(4)項から(7)項までのいずれか1項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法。
(9)第1の工程の後であって第2の工程の前に、第1の鋼板1と第2の鋼板2とを溶接する(4)項から(8)項までのいずれか1項に記載された熱間プレス部材の製造方法。
(10)重ね合わせ熱間プレス部材4は、自動車の車体を構成するAピラーレインフォース,Bピラーレインフォース,バンパーレインフォース,トンネルリンフォース,サイドシルレインフォース,ルーフレインフォース又はフロアークロスメンバーである(4)項から(9)項までのいずれか1項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法。
これらの本発明において「突出部」とは、第1の鋼板及び第2の鋼板の少なくとも一方の表面から微小な高さだけ突き出た部分であり、具体的には、プレス成形,ロール成形又はレーザ照射のいずれかによって形成される微小な高さを有する突起や、プレス成形やロール成形によって形成される微小な高さのエンボス、さらには一度所定の方向へ突出して成形したエンボスを反対方向へ潰すエンボスリストライクあるいは、コイニングが例示される。
本発明によれば、少なくとも1枚の亜鉛系めっき鋼板を含む複数枚の鋼板を重ね合わせて熱間プレスすることにより重ね合わせ熱間プレス部材を製造する際に、重ね合わせた鋼板の重ね合わせ部の内部における母材鋼板の表面割れの発生を防止でき、焼入れ不良のない健全な重ね合わせ熱間プレス部材を製造することができるようになる。
図1は、本発明に係る重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法の一例を模式的に示す説明図である。 図2(a)は、プレス成形の前後における隙間の状況を示す説明図であり、図2(b)は、隙間の有無によるめっき被膜の違いの一例を示す断面写真である。 図3(a)〜図3(f)は、突起の形成例を示す説明図である。 図4は、重ね合わせ熱間プレス部材の代表例であるAピラーレインフォース、Bピラーレインフォース、フロアークロスメンバー、サイドシルレインフォースに本発明を適用した例を示す説明図である。 図5(a)は、本実施例で用いる重ね合わせ熱間プレス部材の横断面形状を示す説明図であり、図5(b)は、隙間を付与しなかったために表面割れが発生した状況の一例を示す写真であり、図5(c)は、約0.03mmの隙間を付与したために表面割れが発生しなかった状況の一例を示す写真である。 図6(a)及び図6(b)は、実施例1において隙間を付与した位置を示す説明図である。 図7は、板厚1.2mm及び1.4mmの2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板のうちで板厚1.2mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板に、高さが0.4mmのエンボスを形成した後に、これら2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を重ね合わせ、スポット溶接して得られる供試材を示す説明図である。 図8は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を素材として通常の手法により熱間プレス成形を行って得られる熱間プレス成形部材の表層の状況を示す断面写真である。 図9は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を素材とする重ね合わせ熱間プレス部材の重ね合わせ部の内部に臨む合金化溶融亜鉛めっき被膜の下の母材鋼板のうちプレス成形により1.5%以上の歪みを与えられた部分の表層の状況を示す断面写真である。 図10は、本発明による、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を素材とする重ね合わせ熱間プレス部材の重ね合わせ部の内部に臨む合金化溶融亜鉛めっき被膜の下の母材鋼板のうちプレス成形により1.5%以上の歪みを与えられた部分の表層の状況を示す断面写真である。
本発明を、添付図面を参照しながら、説明する。なお、以降の説明では、亜鉛系めっき鋼板が合金化溶融亜鉛めっき鋼板である場合を例にとるが、本発明は溶融亜鉛めっき鋼板や電気亜鉛めっき鋼板等の、合金化溶融亜鉛めっき鋼板以外の他の亜鉛系めっき鋼板についても同様に適用される。
1.本発明に係る重ね合わせ熱間プレス部材
図1に示すように、本発明に係る重ね合わせ熱間プレス部材4は、少なくとも第1の鋼板1と第2の鋼板2とを備えるとともに、熱間プレス成形されてなる重ね合わせ熱間プレス部材である。換言すると、重ね合わせ熱間プレス部材4は、少なくとも1枚の鋼板1が合金化溶融亜鉛めっき鋼板である複数枚(図1では2枚)の鋼板が重ね合わされて熱間プレス成形された部材である。図1に示す重ね合わせ熱間プレス部材4は、曲率Rの稜線部(曲げR部)5を有する略ハット型の横断面形状を有する。
第1の鋼板1は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、母材鋼板1aと、母材鋼板1aの少なくとも一方の表面に形成された合金化溶融亜鉛めっき被膜1bとを有する。合金化溶融亜鉛めっき被膜1bは、母材鋼板1aの片面に形成されていてもよく、あるいは両面に形成されていてもよい。
一方、第2の鋼板2は、第1の鋼板1における合金化溶融亜鉛めっき被膜1bを介して第1の鋼板1に重ね合わされることにより第1の鋼板1との間に重ね合わせ部3を形成する。第2の鋼板2は、非めっき鋼板でもよいし、例えば合金化溶融亜鉛めっき鋼板等の亜鉛系めっき鋼板であってもよい。
第1の鋼板1における母材鋼板1aの代表的な化学成分として、C:0.19〜0.32%(本明細書では特に断りがない限り化学成分に関する「%」は「質量%」を意味する)、Si:0.01〜0.30%、Mn:0.9〜1.9%、Cr:0.1〜0.3%、Ti:0.01〜0.03%、B:0.001〜0.003%、任意元素:(Nb最大0.15%、Bi最大0.1%)、残部Fe及び不純物が例示される。
合金化溶融亜鉛めっき被膜1bのめっき付着量は、片面当り40〜65g/mが例示される。
さらに、第1の鋼板1における母材鋼板1aの板厚は、特に制限はなく、自動車の車体を構成する部材用として0.7〜2.6mm程度が例示される。
第1の鋼板1に重ね合わされる第2の鋼板2に対向する、第1の鋼板1の表面には、熱間プレス成形の際に1.5%以上の歪みが加えられる歪み付加部5が存在する。例えば、図1に例示するように、熱間プレス成形により半径R(mm)の円弧部5が板厚t(mm)の第1の鋼板1に成形される場合には、歪みは概ね(t/2R)×100(%)として求められる。歪み付加部5は、求めた歪みが1.5%以上である全ての部分を意味する。
また、第1の鋼板1及び第2の鋼板2の一方又は双方には、第1の鋼板1における歪み付加部5とこの歪み付加部5に対向する第2の鋼板2との間に0.03〜2.0mmの隙間6を形成する突出部7が設けられている。
突出部7は、上述のように、第1の鋼板1における歪み付加部5とこの歪み付加部5に対向する第2の鋼板2との間に0.03mm以上2.0mm以下の隙間6を形成できればよく、この限りにおいて、突出部7の形状、配置、形成方法、寸法等は、特段の制限を要さない。以降の説明では、突出部7が略円錐状に突き出た突起である場合を例にとる。
第1の鋼板1と第2の鋼板2との重ね合わせ部3の全てに隙間6を設ける必要はなく、隙間6は、この重ね合わせ部3のうち熱間プレス成形時に1.5%以上の歪みが付与される歪む付加部5に形成する。重ね合わせ部3のうちで歪みが1.5%未満である領域では、第1の鋼板1の表面割れは発生しないからである。図1に示す重ね合わせ熱間プレス部材4では、歪む付加部5は、略ハット型の横断面形状を構成する、曲率Rの稜線部(曲げR部)である。
図2(a)は、熱間プレス成形の前後における隙間6の状況を示す説明図である。
隙間6の寸法Gが0.03mm未満であると、第1の鋼板1の表面割れを抑制する効果が薄れるため、隙間6の寸法Gは0.03mm以上とする。一方、突起7の形成性の観点からは、隙間6の寸法Gは1.5mm程度までであれば、工業的にも問題なく確実に隙間6を形成することが可能であるとともに、図2(a)の右図に示すようにプレス成形により隙間6は完全に潰れ、第1の鋼板1や第2の鋼板2の外面に何ら悪影響を与えない。
しかし、隙間6の寸法が2mmを超えると、プレス成形時に形成した突起7の変形が大きくなり、部品の寸法精度の低下や大きなしわの形成等の悪影響を与える。また、隙間6が大きくなり過ぎると、重ね合わせ部3の内部が酸化して重ね合わせ部3の耐食性が低下する。このため、隙間6の寸法は0.03mm以上2.0mm以下とする。
さらに、図1に例示する通常の工程では、隙間6は、第1の鋼板1及び第2の鋼板2の溶接前に形成されるため、この溶接時の施工性も勘案すると、隙間6の好適な寸法Gは、第1の鋼板1及び第2の鋼板2の溶接がスポット溶接やシーム溶接である場合には0.05mm以上1.5mm以下であり、第1の鋼板1及び第2の鋼板2の溶接がレーザ溶接やプラズマ溶接である場合には0.05mm以上0.5mm以下である。
隙間6の寸法は、一定値である必要はなく、0.03mm以上2.0mm以下の範囲で部位により異なっていても構わない。
図3は、突起7の形成例を示す説明図である。なお、以降の説明における「一方の鋼板」が第1の鋼板であるとともに「他方の鋼板」が第2の鋼板であってもよいし、これとは逆に、「一方の鋼板」が第2の鋼板であるとともに「他方の鋼板」が第1の鋼板であってもよい。
図3(a)は、第1の鋼板及び第2の鋼板のうちの一方の鋼板8にプレスにより突起7を形成しておき、他方の鋼板9と重ね合わせて突起7の形成位置でスポット溶接を行うことにより一方の鋼板8及び他方の鋼板9を溶接することによって、一方の鋼板8及び他方の鋼板9の重ね合わせ部10の間に0.03〜2.0mmの隙間11を形成する場合を示す。
図3(b)は、一方の鋼板8及び他方の鋼板9のいずれにもプレスにより突起7を形成しておき、一方の鋼板8及び他方の鋼板9を重ね合わせてそれぞれの突起9の形成位置でスポット溶接を行うことにより一方の鋼板8及び他方の鋼板9を溶接することによって、一方の鋼板8及び他方の鋼板9の重ね合わせ部10の間に0.03〜2.0mmの隙間11を形成する場合を示す。
図3(c)は、一方の鋼板8にプレスにより突起7を2個形成しておき、他方の鋼板9と重ね合わせて2つの突起7の形成位置の間の位置でスポット溶接を行うことにより一方の鋼板8及び他方の鋼板9を溶接することによって、一方の鋼板8及び他方の鋼板9の重ね合わせ部10の間に0.03〜2.0mmの隙間11を形成する場合を示す。
図3(d)は、一方の鋼板8にプレスにより突起7を2個形成しておき、他方の鋼板9と重ね合わせて2つの突起7の形成位置の間でレーザ溶接を行うことにより一方の鋼板8及び他方の鋼板9を溶接することによって、一方の鋼板8及び他方の鋼板9の重ね合わせ部10に0.03〜2.0mmの隙間11を形成する場合を示す。
図3(e)は、一方の鋼板8にプレスにより突起7を形成しておき、他方の鋼板9と重ね合わせて突起7の廻りを円周状にレーザ溶接することにより一方の鋼板8及び他方の鋼板9を溶接することによって、一方の鋼板8及び他方の鋼板9の重ね合わせ部10に0.03〜2.0mmの隙間11を形成する場合を示す。
さらに、図3(f)は、一方の鋼板8にレーザを照射することにより突起7を形成しておき、他方の鋼板9と重ね合わせて突起7の近傍をレーザ溶接することにより一方の鋼板8及び他方の鋼板9を溶接することによって、一方の鋼板8及び他方の鋼板9の重ね合わせ部に0.03〜2.0mmの隙間11を形成する場合を示す。
図1に示すように、隙間6は、第1の鋼板1の歪み付加部5とこの歪み付加部5に対向する第2の鋼板2との間の重ね合わせ部3の外部に連通して形成されている。このため、熱間プレス成形の際の加熱により生成する亜鉛の液相を蒸気として、この隙間6を介して蒸発させることができ、亜鉛の液相を早期に減らすことができるため、亜鉛の液相が存在しない状態で、歪み付加部5を含む第1の鋼板にプレス成形を行うことができる。
図2(b)は、隙間6の有無によるめっき被膜の違いの一例を示す断面写真である。
図2(b)の左図に示すように、隙間6を形成せずに熱間プレス成形を行うと、Fe:68質量%、Zn:32質量%程度の鉄亜鉛固溶相とともに、亜鉛の液相の痕跡と推定されるFe:28質量%、Zn:72質量%程度の亜鉛リッチ相も存在している。このことから、亜鉛の液相が存在する状態でプレス成形が行われたと考えられる。
これに対し、図2(b)の右図に示すように、本発明にしたがって0.4mmの隙間6を形成してから熱間プレス成形を行うと、上述の亜鉛リッチ相は存在せずFe:68質量%、Zn:32質量%程度の鉄亜鉛固溶相となっている。このことから、亜鉛の液相が存在しない状態でプレス成形が行われたと考えられる。
なお、隙間6を形成することにより、レーザ溶接やプラズマ溶接で重ね合わせ部3の亜鉛めっきによる欠陥を防止する効果も奏される。すなわち、亜鉛めっきが施された鋼板を重ねて溶接する場合、鋼板間に隙間がないと重ね面の亜鉛が爆発的に蒸発し、溶融金属を吹き飛ばすことにより溶接部に穴あきが発生するが、隙間を形成すると溶融金属へ侵入する亜鉛蒸気が減少し、穴あきの欠陥を防止できる。
本発明に係る重ね合わせ熱間プレス部材4は、以上のように構成される。
重ね合わせ熱間プレス部材4としては、具体的には、自動車車体のAピラーレインフォース,Bピラーレインフォース,バンパーレインフォース,トンネルリンフォース,サイドシルレインフォース,ルーフレインフォース又はフロアークロスメンバー等が例示される。
図4は、重ね合わせ熱間プレス部材の代表例であるAピラーレインフォース12,Bピラーレインフォース13,フロアークロスメンバー14,サイドシルレインフォース15に本発明を適用した例を示す説明図である。
第1の鋼板であるAピラーレインフォース12は、素材12aの所定の3箇所に、突起7を設けた部材16(第2の鋼板)をそれぞれ重ね合わせて溶接してから、熱間プレス成形することにより、製造される。
同様に、第1の鋼板であるBピラーレインフォース13,フロアークロスメンバー14、サイドシルレインフォース15は,素材13a,14a,15aの所定の箇所に、突起7を設けた部材16(第2の鋼板)をそれぞれ重ね合わせて溶接してから、熱間プレス成形することにより、製造される。
2.製造方法
図1に示すように、本発明では、基本的に、少なくとも上述した第1の鋼板1及び第2の鋼板2を重ね合わせて熱間プレス成形することによって重ね合わせ部3を有する重ね合わせ熱間プレス部材4を製造する。すなわち、本発明は、少なくとも1枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板である第1の鋼板1を含む複数枚の鋼板を重ね合わせて熱間プレスすることにより、製造されるが、本発明では、以降に説明する第1の工程及び第2の工程をこの順に経る。
第1の工程として、第1の鋼板1に重ね合わされる第2の鋼板2に対向する、第1の鋼板1の表面に1.5%以上の歪みが熱間プレス成形の際に加えられる歪み付加部5に、第2の鋼板2との間に0.03〜2.0mmの隙間6を形成する。
この隙間6は、例えば、(A)互いに溶接される前の第1の鋼板1及び第2の鋼板2の少なくとも一方に、プレス成形、ロール成形又はレーザ照射のいずれかによって突起7を形成することや、あるいは(B)第1の鋼板1と第2の鋼板2との間に0.03〜2.0mmの金属板あるいは金属網を介在させ、隙間を設けた状態で溶接することによって、形成されることが例示される。
隙間6は、第1の鋼板1と第2の鋼板2の重ね合わせ部3の外部に連通するように形成される。隙間6を介して、熱間プレス成形の際の加熱により生成する亜鉛の液相を蒸気として蒸発させて亜鉛の液相を早期に減らすことができるため、熱間プレス成形時に亜鉛の液相が存在しない状態でプレス成形を行うことができる。
次に、第2の工程として、第1の鋼板1と第2の鋼板2とを重ね合わせて重ね合わせ部3を形成してから熱間プレスする。
熱間プレス時における第1の鋼板1又は第2の鋼板2の温度は、780℃以上930℃以下であることが好ましい。930℃を超えると亜鉛の蒸発が激しくなり、耐食性が低下する。一方、780℃未満では、液相の亜鉛は凝固するため表面割れは発生しないが、焼入れ性が低下する。同様の観点から、熱間プレス時における第1の鋼板1又は第2の鋼板2の温度は、820℃以上900℃以下であることがさらに好ましい。
なお、第1の工程の後であって第2の工程の前に、第1の鋼板1と第2の鋼板2とを重ね合わせて重ね溶接することが、プレス成形時における第1の鋼板1と第2の鋼板2との位置ずれを防止できるため、好ましい。重ね溶接法としては、スポット溶接,シーム溶接,レーザ溶接,さらにはプラズマ溶接が例示される。生産性や製造コストの観点からスポット溶接を用いることが好ましい。また、レーザ溶接を用いる場合には、生産性の高いリモート溶接を用いることが好ましい。
以上説明した本発明により、少なくとも1枚の亜鉛系めっき鋼板1を含む複数枚の鋼板を重ね合わせて熱間プレスすることにより重ね合わせ熱間プレス部材4を製造する際に、重ね合わせた鋼板1、2の重ね合わせ部3の内部での表面割れの発生を防止でき、焼入れ不良のない健全な重ね合わせ熱間プレス部材4を製造することが可能になる。
実施例を参照しながら、本発明をさらに具体的に説明する。
図5(a)は、本実施例で用いる重ね合わせ熱間プレス部材19の横断面形状を示す説明図である。
板厚1.2mm及び1.4mmの2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17,18(いずれもめっき付着量50〜55g/m、化学成分(C:0.21%,Si:0.03%,Mn:1.1%,P:0.01%,S:0.008%,Cr:0.2%,Ti:0.02%,B:0.002%,残部Feおよび不純物)を重ね合わせた後にスポット溶接により接合したものを供試材とし、この供試材を900℃に加熱したガス炉に6分間装入して加熱した後にガス炉から取り出して、約850℃で水冷金型を用いて熱間プレス成形することにより、図5(a)に示す稜線部19aを有するハット型の横断面形状の重ね合わせ熱間プレス部材19を製造した。
ここで、重ね合わせ熱間プレス部材19の稜線部19aにおける内側の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17の内半径は5mmであり、熱間プレス成形により合金化溶融亜鉛めっき鋼板17の稜線部19aの外表面に与えられる歪みは12.0%である。すなわち、本実施例では、内側の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17の稜線部19a(曲げR部)の外面が、本発明における歪み付加部に相当する。
この際、重ね合わせる前の2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17,18の一方又は双方における稜線部(曲げR部)19aとなる位置の近傍に、プレス成形やレーザ照射によって、重ね合わせ部の内部側へ向けて突出した突起を形成してから2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17,18を重ね合わせたもの(本発明例及び比較例)と、2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17,18にプレス成形やレーザ照射を行わずにそのまま重ね合わせたもの(従来例)を作成した。
図6(a)及び図6(b)は、本実施例における隙間付与位置の態様を示す説明図である。
本実施例では、図6(a)に示すように隙間付与位置が曲げR部を含む場合と、図6(b)に示すように隙間付与位置が、本発明における歪み付加部である曲げR部を含まない場合とを確認した。
その後、重ね合わせ熱間プレス部材19における2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17、18の溶接部を破壊することにより重ね合わせ熱間プレス部材19を解体し、重ね合わせ部の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17の稜線部19aにおける外面の表面割れの有無を確認した。
表1には、本発明例、比較例及び従来例それぞれについて、図3(a)〜図3(f)に示す隙間付与方法により隙間を付与した場合をa〜fとして示すとともに、隙間の寸法、隙間の付与位置、重ね合わせ部における合金化溶融亜鉛めっき鋼板17の外面における表面割れの有無をまとめて示す。
図5(b)は、隙間を付与しなかったために表面割れが発生した状況の一例を示す写真であり、図5(c)は、約0.03mmの微小な隙間を付与したために表面割れが発生しなかった状況の一例を示す写真である。
表1に示すように、2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17,18の重ね合わせ部に隙間を設けなかった場合(従来例)には、図5(b)に示すように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板17の曲げR部における外面に表面割れが発生しており、この外面の表面を拡大して観察するとZn富化された相と鉄亜鉛固溶相とが認められた。
また、重ね合わせる前の2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17,18の一方又は双方における曲げR部となる位置の近傍に、プレス成形やレーザ照射によって、重ね合わせ部の内部側へ向けて突出した突起を設けてから2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17,18を重ね合わせたものの、2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17,18の重ね合わせ面であって歪み付加部を含む位置には0.03mm以上2.0mm以下の隙間が形成されなかった場合(比較例1、2)には、上述した従来例と同様に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板17の曲げR部における外面に表面割れが発生しており、この外面を拡大して観察するとZn富化された相と鉄亜鉛固溶相とが認められた。
これに対し、重ね合わせる前の2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17,18の一方又は双方における曲げR部となる位置の近傍に、プレス成形やレーザ照射によって、重ね合わせ部の内部側へ向けて突出した突起を設けてから2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17,18を重ね合わせることによって、2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板17,18の重ね合わせ面であって歪み付加部を含む位置に、0.03mm以上2.0mm以下の隙間を形成した場合(本発明例1〜9)には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板17、18の曲げR部における外面に表面割れは発生しなかった。図5(c)に示すように、この外側の表面を拡大して観察したところ、Zn富化された相が観察されず、若干薄くなった鉄亜鉛固溶相が認められた。
図7は、板厚1.2mm及び1.4mmの2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板20,21(いずれもめっき付着量50〜55g/m)のうちで板厚1.2mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板20に、高さが0.4mmのエンボス22を形成した後に、これら2枚の合金化溶融亜鉛めっき鋼板20,21を重ね合わせ、スポット溶接して得られる供試材を示す説明図である。
この供試材を、ガス炉に4分間装入して加熱した後にガス炉から取り出して、曲率(R)を替えた複数種の水冷金型を用いて熱間プレス成形することにより、重ね合わせ面の歪み量(=t1/2R×100(%))が異なる複数種のハット型の横断面形状の重ね合わせ熱間プレス部材を製造した。その後に、実施例1と同様に表面割れの有無を確認した。
ここで、熱間プレス成形時の鋼板の温度、隙間の寸法、重ね合わせ面の歪み、表面割れの有無等を表2にまとめて示す。
本発明例1〜5は、本発明で規定する条件を全て満足する例であり、熱間プレス成形時の温度780〜930℃、隙間の寸法0.4mm、重ね合わせ面の歪み1.5〜20%で表面割れなく、かつ過大な亜鉛蒸発や焼入れ不良なく、成形できることが確認された。
従来例1〜3は、いずれも、隙間を設けずに熱間プレス成形を行ったため、表面割れが発生した。
比較例1は、成形時の鋼板の温度が690℃と低過ぎたために焼入れ不良が発生した。
さらに、比較例2は、成形時の鋼板の温度が950℃と高過ぎたためにZnの蒸発が著しく、重ね合わせ熱間プレス部材の耐食性が不芳であった。
1 第1の鋼板
1a 母材鋼板
1b 合金化溶融亜鉛めっき被膜
2 第2の鋼板
3 重ね合わせ部
4 熱間プレス部材
5 歪み付加部
6 隙間
7 突出部(突き出た部分)、突起
8 一方の鋼板
9 他方の鋼板
10 重ね合わせ部
11 隙間
12 Aピラーレインフォース
12a 素材
13 Bピラーレインフォース
13a 素材
14 フロアークロスメンバー
14a 素材
15 サイドシルレインフォース
15a 素材
16 突起を設けた部材
17、18 合金化溶融亜鉛めっき鋼板
19 重ね合わせ熱間プレス部材
19a 稜線部
20、21 合金化溶融亜鉛めっき鋼板
22 エンボス

Claims (10)

  1. 少なくとも、母材鋼板、及び該母材鋼板の少なくとも一方の表面に形成された亜鉛系めっき被膜を有する亜鉛系めっき鋼板である第1の鋼板と、前記亜鉛系めっき被膜を介して前記第1の鋼板に重ね合わされることにより該第1の鋼板との間に重ね合わせ部を形成する第2の鋼板とを備える重ね合わせ熱間プレス部材であって、
    前記亜鉛系めっき被膜のうち前記重ね合わせ部の内部に臨む部分が形成された前記母材鋼板の一部又は全部に、1.5%以上の歪みを有する歪み付加部を有すること、及び
    前記第1の鋼板及び前記第2の鋼板の一方又は双方は、前記歪み付加部と該歪み付加部に対向する該第2の鋼板との間に0.03〜2.0mmの隙間を形成する突出部が押圧された押圧部を有すること
    を特徴とする重ね合わせ熱間プレス部材。
  2. 前記隙間は、前記重ね合わせ部の外部に連通する請求項1に記載された重ね合わせ熱間プレス部材。
  3. 前記重ね合わせ熱間プレス部材は、自動車の車体を構成するAピラーレインフォース,Bピラーレインフォース,バンパーレインフォース,トンネルリンフォース,サイドシルレインフォース,ルーフレインフォース又はフロアークロスメンバーである請求項1又は請求項2に記載された重ね合わせ熱間プレス部材。
  4. 少なくとも、母材鋼板、及び該母材鋼板の少なくとも一方の表面に形成された亜鉛系めっき被膜を有する亜鉛系めっき鋼板である第1の鋼板と、前記亜鉛系めっき被膜を介して前記第1の鋼板に重ね合わされることにより該第1の鋼板との間に重ね合わせ部を形成する第2の鋼板とを重ね合わせて熱間プレス成形することによって重ね合わせ部を有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材を製造する方法であって、下記第1の工程及び第2の工程をこの順に備えることを特徴とする重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法;
    第1の工程:前記熱間プレス成形によって、前記亜鉛系めっき被膜のうち前記重ね合わせ部の内部に臨む部分が形成された前記母材鋼板の一部又は全部に形成された、1.5%以上の歪みを加えられる歪み付加部と、該歪み付加部に対向する前記第2の鋼板との間に0.03〜2.0mmの隙間を形成する工程。
    第2の工程:前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを、前記隙間が形成された状態で重ね合わせて熱間プレス成形する工程。
  5. 前記隙間は、前記第1の鋼板及び前記第2の鋼板の少なくとも一方に、プレス成形,ロール成形又はレーザ照射のいずれかによって突出部を形成することによって、形成される請求項4に記載された重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法。
  6. 前記隙間は、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板との間に金属板あるいは金属網を介在することによって、形成される請求項4に記載された重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法。
  7. 前記隙間は、前記重ね合わせ部の外部に連通するように形成される請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法。
  8. 前記熱間プレス時における前記第1の鋼板又は前記第2の鋼板の温度は、780℃以上930℃以下である請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法。
  9. 前記第1の工程の後であって前記第2の工程の前に、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板とを溶接する請求項4から請求項8までのいずれか1項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法。
  10. 前記重ね合わせ熱間プレス部材は、自動車の車体を構成するAピラーレインフォース,Bピラーレインフォース,バンパーレインフォース,トンネルリンフォース,サイドシルレインフォース,ルーフレインフォース又はフロアークロスメンバーである請求項4から請求項9までのいずれか1項に記載された重ね合わせ熱間プレス部材の製造方法。
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