JP6852339B2 - 自動車用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車用鋼板およびその製造方法に関する。
自動車用鋼板は、高強度化による板厚低減や良好な加工性といった様々な特性を要求される。このような要求に応える技術として、複層鋼板(クラッド板)が知られている。複層鋼板は、2種類以上の金属板を重ね合わせて接合圧延されるため、それぞれの金属板の特徴を兼ね備える。
近年、自動車用鋼板では、いっそうの軽量化や衝突安全性の向上を図るために、例えば引張強度980MPa以上という超高強度化が図られている。これに伴って、製造工程の短縮や金型数の削減などを目的として、板厚、加工性さらには引張強度等の特性が異なる2種類以上の鋼板を溶接して接合したテーラードブランクも用いられるようになっている。
特許文献1には、2枚以上の金属板を重ね合わせて接合圧延することにより複層鋼板を製造する際に、接合面にプラズマ照射を行う発明が開示されている。
特許文献2には、金属組織または機械特性が異なる少なくとも二種類以上の鋼板を組み合わせて接合圧延し、所定の熱処理を施すことによって、強度と延性、疲労特性等に優れた複層鋼板を製造する発明が開示されている。
特許文献3には、溶融Zn−Al−Mg系合金めっき層を両面に有するめっき鋼板の端部と冷延鋼板の端部と突合せ、この突合せ継手部を溶融溶接することにより、突合せ継手溶接時の入熱エネルギが大きくても安定した溶接ビードが得られ、低コストで絞り加工性や耐穴あき腐食性に優れたテーラードブランクを製造する発明が開示されている。
さらに、特許文献4には、特定の化学組成を有するとともにフェライト単相からなる金属組織を有し、高速プラズマ溶接を行ってもハンピングビードが発生せず、かつ加工性の劣化を招かない、引張強度が440MPa以上の溶接性に優れたテーラードブランク用高強度冷延鋼板が開示されている。
特開2003−200275号公報 特許第5221348号明細書 特開2006−218518号公報 特開2010−37595号公報
近年、自動車の足回り部品や車体の構造部材等の成形素材用の鋼板には、例えば、
(I)特定部位がこの特定部位以外の一般部位よりも優れた伸びフランジ性を有する、といったように、成形素材の面内の各部位が異なるレベルの加工性を有すること、
(II)特定部位が一般部位よりも高い引張強度を有する、といったように、成形素材の面内の各部位が異なるレベルの機械特性を有すること
が要求されている。
特許文献1,2により開示された複層鋼板は、基本的に、2種類以上の金属板を全面的に重ね合わせて接合圧延することにより製造されるため、成形素材の面内の部位により異なるレベルの加工性や機械特性を与えることはできない。
また、特許文献3,4により開示されたテーラードブランクは、通常、加工性や機械特性が異なる2種類以上の鋼板の縁を互いに突き合わせて溶接して製造されるため、面内の部位により異なるレベルの加工性や機械特性を有する鋼板を製造することは可能である。
しかし、テーラードブランクを製造するには、互いに突き合うように2種類以上の鋼板を高精度でブランキングし、両者を突き合わせて溶接する必要がある。このため、製造コストが著しく嵩み、低コストの要求が高い自動車用鋼板として用いることは難しい。
このように、従来の技術では、面内の部位により異なる程度(レベル)の加工性や機械特性を有する鋼板を低コストで提供することはできなかった。
本発明の目的は、面内の部位により異なる程度の加工性や機械特性を有することから、例えば、自動車の足回り部材や車体の構造部材等に要求される加工性および機械特性を高いレベルで両立できる鋼板とその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下に列記の知見A〜Dを得て、本発明を完成した。
(A)複数の圧延スタンドを有する連続スタンドからなる熱間圧延工程における前段側の圧延スタンドの入側で被圧延材に、アーク溶接による肉盛溶接を行って被溶接材とは異なる化学組成の鋼(溶接ワイヤ)を溶着し、その後に仕上圧延を完了すれば、面内の部位により化学特性、各種の加工性および機械特性のレベルが変化する熱延鋼板を簡便に製造できる。
(B)被圧延材に溶着する鋼(溶接ワイヤ)の位置、本数、量、形状、化学組成を自由に設定できるので、母材である熱延鋼板に例えば低強度部および高強度部、さらには超高強度部を母材の位置を選ばずに自由に形成でき、熱延鋼板の面内の部位により異なるレベルの加工性や機械特性を、熱延鋼板に簡便に与えることができる。
(C)鋼(溶接ワイヤ)は、アーク溶接による肉盛溶接により被圧延材に溶着されるため、鋼(溶接ワイヤ)が高合金鋼、高融点鋼または高強度鋼等からなる難圧延材であっても、熱延鋼板の表面に容易に形成できる。
(D)この熱延鋼板は、既存の熱間圧延工程により製造可能であるが、この熱延鋼板にさらに通常の冷間圧延を行い、必要に応じて連続焼鈍(CAPL)を行うことにより、冷延鋼板としても製造可能である。
本発明は、以下に列記の通りである。
(1)鋼板表面に第1の領域と第2の領域を有する鋼板であって、
前記鋼板表面を含む水平面から板厚方向において、
前記第1の領域は、板厚の全てに亘り第1の化学組成を有し、
前記第2の領域は、前記鋼板表面から所定深さまでに前記第1の化学組成とは異なる第2の化学組成を有し、且つ、前記所定深さを超える深さには、前記第1の化学組成を有する、鋼板。
(2)前記第2の領域は、鋼板の圧延方向に沿って存在する、1項に記載の鋼板。
(3)前記第2の領域は、一つ、または互いに離間して二つ以上、存在する、1または2項に記載の鋼板。
(4)前記第2の領域は、前記第1の領域の化学組成の化学成分のうちの少なくとも一種の元素の含有量を増加または減少させた化学組成を有する、1〜3項のいずれかに記載の鋼板。
(5)前記第1の化学組成を構成する元素と、前記第2の化学組成を構成する元素の種類が相違する、1〜4項のいずれかに記載の鋼板。
これらの本発明では、前記第1の領域および前記第2の領域それぞれの化学組成は、いずれも、C、Si、Mn、P、S、残部Feおよび不純物を有することが例示される。この場合、前記第1の領域および前記第2の領域それぞれの化学組成は、いずれも、Al、Ni、Cr、Mo、W、Co、V、Nb、Ti、Cu、Ag、Al、Mo、N、Ta、Ca、Co、Sn、Zn、Pb、Pd、Sn、Sb、Ru、Pd、Zr、Be、Ga、Cdの少なくとも一種を有することが例示される。
(6)第1の化学組成を有するスラブに複数の圧延スタンドを有する連続スタンドを用いて熱間圧延を行うことにより熱延鋼板を製造する方法であって、
前記連続スタンドの前段スタンドで被圧延材の一方の表面の一部の所定の位置に、前記第1の化学組成とは異なる第2の化学組成を有する鋼を肉盛溶接した後に仕上圧延を行う工程を含む、鋼板の製造方法。
(7)第1の化学組成を有するスラブに複数の圧延スタンドを有する連続スタンドを用いて熱間圧延を行った後に冷間圧延を行うことにより冷延鋼板を製造する方法であって、
前記連続スタンドの前段スタンドで被圧延材の表面の一部の所定の位置に、前記第1の化学組成とは異なる第2の化学組成を有する鋼を肉盛溶接した後に仕上圧延を行う工程を含む、鋼板の製造方法。
本発明により、面内の部位により異なるレベルの加工性または機械特性を有することから、例えば、自動車の足回り部材や車体の構造部材等に要求される加工性および機械特性を高いレベルで両立した鋼板を、低コストで提供できる。
図1は、本発明に係る鋼板の構成を模式的に示す説明図である。
本発明を説明する。以降の説明では、本発明に係る鋼板が自動車の足回り部材であるL型ロアーアームの成形素材である場合を例にとる。本発明に係る鋼板は、L型ロアーアーム以外の自動車の足回り部材や車体の構造部材等の成形素材用として用いることができるだけではなく、様々な産業分野において2種以上のレベルの各種の加工性や機械特性を要求される鋼板に広く用いることができる。なお、本発明の適用対象としては、本実施形態に限定される訳ではなく、様々な部材に用いることができる。
1.本発明に係る鋼板1
図1は、本発明に係る鋼板1の構成を模式的に示す説明図である。鋼板1の表層1aにおける破線で示す範囲は、鋼板1からL型ロアーアームのブランク(圧延素材)として切り出される範囲を示す。なお、図1では、鋼板1の板厚を誇張して示す。
鋼板1は、第1の領域2および第2の領域3を備える。
(1−1)第1の領域2
[化学組成]
第1の領域2の第1の化学組成は、必須元素としてC、Si、Mn、P、Sを含有し、必要に応じて含有される任意元素として、B、Nb、Ti、Mo、Cr、V、Co、Sn、Cuの少なくとも一種を有し、残部Feおよび不純物を有する。
第1の化学組成は、この種の鋼板として通常使用される鋼板の化学組成であればよく、特定の化学組成に限定する必要はない。例えば、必須元素としては、C:0.01〜0.50%、Si:0.01〜3.5%、Mn:0.2〜3.0%、P:0.005〜0.100%、S:0.0001〜0.020%が例示され、任意元素としては、B:0.0040%以下、Nb:0.040%以下、Ti:0.20%以下、Mo:3.0%以下、Cr:2.0%以下、V:1.0%以下、Co:3.0%以下、Sn:1.0%以下、Cu:1.0%以下が例示される。
任意元素は、鋼板1に求める加工性や機械特性に応じて適宜含有される。
[加工性または機械特性]
第1の領域2は、第1の化学組成を有することにより、それに応じた第1の組織、そして第1の程度の加工性または機械特性を有する。加工性としては、深絞り性(縮みフランジ性)、張り出し性(張出し成形性)、伸びフランジ性(フランジ成形性)、曲げ性、密着曲げ性、せん断加工性、溶接性等が例示される。機械特性としては、引張強さ、降伏強さ、全伸び、一様伸び、局部伸び、r値、n値、エリクセン値等が例示される。
(1−2)第2の領域3
[化学組成]
第2の領域3は、第1の化学組成とは異なる第2の化学組成と、第1の程度とは異なる第2の程度の加工性を有する。
第2の領域3の第2の化学組成は、必須元素としてC、Si、Mn、P、Sを含有し、必要に応じて含有される任意元素として、Al、Ni、Cr、Mo、W、Co、V、Nb、Ti、Cu、Ag、Al、Mo、N、Ta、Ca、Co、Sn、Zn、Pb、Pd、Sn、Sb、Ru、Pd、Zr、Be、Ga、Cdの少なくとも一種を有し、残部Feおよび不純物を有する。
第2の化学組成は、この種の鋼板として通常使用される鋼板の化学組成であればよく、特定の化学組成に限定する必要はない。例えば、必須元素としては、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜1.00%、Mn:0.2〜3.0%、P:0.005〜0.100%、S:0.0001〜0.020%、Ni:6.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、V:1.0%以下が例示され、任意元素としては、Nb:0.04%以下、Ti:0.20%以下、Cu:1.0%以下、Co:3.0%以下、W:1.0%以下、Ca:0.010%以下、Sn:0.30%以下、Zn:0.30%以下が例示される。
任意元素は、鋼板1に求める特性に応じて適宜含有される。
[加工性または機械特性]
第2の領域3は、第1の化学組成を有することにより、それに応じた第2の組織、そして第2の程度の加工性または機械特性を有する。加工性とは、第1の領域2の加工性と同義であり、深絞り性(縮みフランジ性)、張り出し性(張出し成形性)、伸びフランジ性(フランジ成形性)、曲げ性、密着曲げ性、せん断加工性、溶接性等が例示される。機械特性としては、引張強さ、降伏強さ、全伸び、一様伸び、局部伸び、r値、n値、エリクセン値等が例示される。
[存在領域]
第2の領域3は、一方の表層1aの一部4から、例えば10〜600μmの深さ位置までの領域5に存在する。
第2の領域3が、表層1aの一部4から10μm未満の深さ位置に存在するのでは、第2の領域3の深さが浅すぎ、所望の程度の加工性または機械特性を与えることができないおそれがある。このような観点から、第2の領域3は、表層1aの一部4から30μm以上の深さ位置に存在することが好ましく、表層1aの一部4から50μm以上の深さ位置に存在することがより好ましく、表層1aの一部4から70μm以上の深さ位置に存在することがいっそう好ましい。
一方、第2の領域3が、表層1aの一部4から600μm超の深さ位置に存在すると、第2の化学組成が高合金含有組成である場合にはコストの上昇が著しくなるおそれがある。第2の領域3は、表層1aの一部4から550μm以下の深さ位置に存在することが好ましく、表層1aの一部4から500μm以下の深さ位置に存在することがより好ましく、表層1aの一部4から450μm以下の深さ位置に存在することがいっそう好ましい。
第1の領域2だけが存在する部分における鋼板1の板厚と、第2の領域3が存在する部分における鋼板1の板厚は、同じである。すなわち、鋼板1は、その全域で一定の板厚を有し、従って、第1の領域2の表面と第2の領域3の表面は同じ平面上にある。
鋼板1の板厚は、鋼板1が熱延鋼板である場合には1.4〜8.0mmであることが例示され、鋼板1が冷延鋼板である場合には0.6〜3.0mmであることが例示される。この際、第2の領域の深さは、板厚の1/300〜1/5の範囲にあると好ましい。
第1の領域2と第2の領域3は、圧延により一体に結合して形成されている。
[形状、存在数、存在形態]
図1に示すように、第2の領域3は、鋼板1の表層1aに円形状に形成される。第2の領域3は、第1の領域2の加工性や機械特性のレベルとは異なるレベルの加工性や機械特性を与えたいという要求がある部分に形成されればよい。このため、第2の領域3の形状は、特定の形状に限定されるものではなく、例えば、直線形状、曲線形状、円形状、楕円形状、異形形状、凸多角形形状、凹多角形形状、渦巻き形状、または、これらを二つ以上組み合わせた形状が例示される。
第2の領域3は、図1に示すように2つ存在するが、これに限定されるものではなく、上記の要求に応じて、一つ、または、互いに離間して三つ以上存在してもよい。
さらに、第2の領域3は、直線形状または曲線形状として存在する場合には、連続的に存在してもよいし、断続的に存在してもよい。
[第1,2の領域2,3の化学組成の相違の類型]
第1の領域2および第2の領域3それぞれの化学組成は相違するが、この相違の類型を説明する。
(a)第2の領域3は、第1の領域2の化学組成の化学成分のうちの少なくとも一種の含有量を増加または減少させた化学組成を有する。例えば、第2の領域3のC含有量が第1の領域2のC含有量よりも低いか、あるいは高い場合である。
(b)第2の領域3は、第1の領域2の化学組成には含まれない化学成分を含む化学組成を有する。例えば、第2の領域3はTiまたはNbを含有するが、第1の領域2はTiおよびNbを含有しない場合である。
(c)第2の領域3は、第1の領域2の化学組成の化学成分の少なくとも1種を含有しない化学組成を有する。例えば、第1の領域2はCrを含有するが、第2の領域3はCrを含有しない場合である。
このように、第1の化学組成を構成する元素と、第2の化学組成を構成する元素の種類は相違する。
[熱延鋼板および冷延鋼板]
鋼板1は、既存の熱間圧延工程で製造可能であるため、熱延鋼板として製造されるが、その後に通常の冷間圧延工程および連続焼鈍工程(冷延・CAPL工程)を経ることにより、冷延鋼板としても製造される。
(1−3)第3以上の領域
以上の説明では、鋼板1が第1の領域2および第2の領域3を有する場合を例にとった。しかし、本発明はこの場合に限定されず、鋼板1は、第2の領域3とは少なくとも化学組成および存在領域が相違する第3の領域を、第2の領域3とは別に有していてもよい。
第3の領域は、化学組成および存在領域以外の条件については、第2の領域3と同様でもよいし、異なっていてもよい。
第3の領域は、後述する熱間圧延工程の連続スタンドの前段スタンドにおいて被圧延材の一方の表面の一部の所定の位置にアーク溶接により肉盛溶接される鋼(溶接ワイヤ)として、第3の領域の化学組成に対応する化学組成を有する鋼(溶接ワイヤ)を追加することにより、設けられる。
さらに、鋼板1は、第3の領域と同様に、第2,3の領域とは少なくとも化学組成および存在領域が相違する第4の領域や、第2〜4の領域とは少なくとも化学組成および存在領域が相違する第5の領域を有していてもよい。あるいはそれ以上の領域を有していてもよい。なお、図1では第3以上の領域は省略している。
また、第2の領域や第3以上の領域は、鋼板の片面だけでなく、両面に有してもよい。
本発明によれば、このようにして多機能な化学組成傾斜鋼板を提供できる。
2.鋼板1の製造方法
(2−1)熱延鋼板
鋼板1は、基本的に、第1の化学組成を有するスラブに複数の圧延スタンドを有する連続スタンドを用いて熱間圧延を行うことにより、製造される。
鋼板1は、連続スタンドの前段スタンドにおいて被圧延材の一方の表面の一部の所定の位置に、第1の化学組成とは異なる化学組成を有する鋼(溶接ワイヤ)を、アーク溶接により肉盛溶接することにより、第1の領域2および第2の領域3を備える鋼板1として、製造される。
なお、オンライン作業により第2の領域を圧延方向に沿って形成することができるが、オフラインで作業する、または粗圧延後、仕上圧延前のスラブが一時的に停止する場合では、圧延方向以外の方向(例えば、幅方向)にも溶接し、この方向に第2領域を形成できる。
鋼(溶接ワイヤ)をアーク溶接により肉盛溶接される際の被圧延材の板厚は、10〜250mmであることが例示される。この板厚が、10mm未満であると溶接部の影響が大きく、板厚方向の組織制御が困難となる。また、溶接時に板が反る可能性が高く、熱間圧延が困難となる。250mm超であると表層の成分傾斜の割合が小さくなるため、特性改善の効果が得られない。
熱間圧延の仕上温度は、800〜1100℃が好ましい。仕上温度が1100℃超であると組織が粗大化し、靭性が低下するために表層の硬質相で割れが発生する。一方、仕上温度が800℃未満であると成分による熱間圧延時の変形抵抗差が大きくなり、板厚精度の低下や形状作りこみが困難となる。
被圧延材にアーク溶接による肉盛溶接を行う位置は、この被圧延材に仕上圧延を行って得られた熱延鋼板とし、またはこの熱延鋼板にさらに冷間圧延を行って冷延鋼板とし、この熱延鋼板または冷延鋼板をブランキングしてL型ロアーアーム用の高強度のブランクとして用いる際に、例えば、伸びフランジ成形による割れや、縮みフランジ成形による皺が発生し易いためにこれらの成形不良に対する抵抗特性(加工性)を高めたい部位となる位置である。
被圧延材に溶着する鋼(溶接ワイヤ)の厚みや幅は、鋼板1の第2の領域3の形状や幅に応じて適宜決定すればよく、特定の寸法には限定されない。
被圧延材に溶着する鋼(溶接ワイヤ)の化学組成、厚さ、幅、向き、位置を適宜変更することにより、鋼板1から切り出されるブランク毎に、加工性や機械特性のレベルを異ならせる範囲である第2の領域3を、簡便かつ確実に設定することができる。
連続スタンドの後段スタンドでは、鋼(溶接ワイヤ)を肉盛溶接された被圧延材にさらに熱間圧延を行い、仕上圧延により所定の板厚とし、ランナウトテーブルでの冷却により所望の金属組織を作り込めばよい。
ランナウトテーブルでの冷却速度は20〜400℃/秒が例示され、仕上圧延後の巻取温度は10〜700℃が例示される。ランナウトテーブルでの冷却速度が、20℃/秒未満であると成分傾斜による組織変化の影響が小さくなり、特性向上の効果が得られない。400℃/秒超であると冷却時の温度偏差が大きく、形状の作りこみが困難となる。また、仕上圧延後の巻取温度が、10℃未満であると、巻取り後のコイルで結露が発生し、700℃超であると成分傾斜による組織変化の影響が小さくなり、特性向上の効果が得られない。
このようにして、本発明に係る熱延鋼板1が製造される。
(2−2)冷延鋼板
この後、通常の冷間圧延工程と、必要に応じて連続焼鈍工程(冷延・CAPL工程)を経ることにより、本発明に係る冷延鋼板1としてもよい。冷間圧延および連続焼鈍の条件は、この種の冷延鋼板に対する慣用の条件とすればよく、当業者には周知であるので、説明を省略する。
本発明によれば、第1の領域2の第1の化学組成、および第2の領域3の第2の化学組成に関係なく、第1の領域2および第2の領域3が結合・一体化した鋼板1を得られる。
溶接を高速化でき、形状の高精度予測ができれば、圧延後に溶接部が必要な個所にくるように予測し、1部品毎に溶接個所を特定し、溶接することが可能である。
このように、本発明によれば、熱間仕上圧延前の被圧延材の表面に、アーク溶接による肉盛溶接により、被圧延材とは異なる化学組成の鋼(溶接ワイヤ)を溶着し、その後の圧延を通常通り行うことにより、第2の領域3が一方の表層1aの一部4から板厚方向の途中の深さ位置までの領域5に存在する鋼板1を、迅速および確実に低コストで製造することが可能である。
また、本発明によれば、鋼(溶接ワイヤ)の化学組成、厚さ、幅、向き、位置を任意に設定することできるため、鋼板1における必要とされる部位に、最適な強度等の機械特性や、各種の加工性を備えさせることが可能である。
これにより、鋼板1のユーザが必要とするように、鋼板1が面内の部位により異なる加工性や機械特性を有するため、例えば、自動車の足回り部材や車体の構造部材等に要求される加工性および機械特性を高いレベルで両立した化学組成傾斜鋼板を提供できる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す化学組成(残部Feおよび不純物)を有するスラブA〜Iに6基の圧延スタンドを有する連続スタンドを用いて熱間圧延を行い、連続スタンドの第1スタンド前で溶接時の板厚が表3に示す値の被圧延材の一方の表面における、JIS Z2248:2006に規定される180度密着曲げ試験により判定される密着曲げ性が求められる位置に、表2に示す化学組成(残部Feおよび不純物)を有する溶接棒a〜iを用いて、鉛直下向きワイヤ径:φ1.2mm、トーチ角度:鉛直下向きのアーク肉盛溶接を行い、表3に示す仕上温度で仕上圧延を行った。なお、溶接条件は溶接電流:200A、ワイヤ供給速度:5〜20m/minとした。
その後、表3に示す冷却速度で冷却を行い、表3に示す巻取温度でコイルに巻き取ることにより、表3に示す熱延鋼板1〜33を製造した。
これらの熱延鋼板1〜33を巻き戻して試料1〜33を切り出し、試料1〜33の板厚、第2の領域の厚さ、面積率を測定するととも、上記180度密着曲げ試験を行って第2の領域の上記密着曲げ性を評価した。結果を表3にまとめて示す。
Figure 0006852339
Figure 0006852339
Figure 0006852339
表3に示すように、本実施例である試料No.1〜16,18〜27,29〜33の第2の領域は、密着曲げ性に優れるのに対し、比較例である17,28は、第2の領域の厚さが本実施例での好適範囲を外れるために、優れた密着曲げ性を得られなかった。
1 鋼板
1a 表層
2 第1の領域
3 第2の領域
4 一部
5 領域

Claims (7)

  1. 鋼板表面に第1の領域と第2の領域を有する自動車用鋼板であって、
    前記鋼板表面を含む水平面から板厚方向において、
    前記第1の領域は、板厚の全てに亘り第1の化学組成を有し、
    前記第2の領域は、前記鋼板表面から所定深さまでに前記第1の化学組成とは異なる第2の化学組成を有し、且つ、前記所定深さを超える深さには、前記第1の化学組成を有し、
    前記第1の領域における鋼板の板厚と、前記第2の領域における鋼板の板厚は同一で、かつ、0.6mm〜8.0mmであり、
    前記第2の領域の前記所定深さは、前記板厚の1/300〜1/5の範囲であり、
    前記第2の領域が、JIS Z2248:2006に規定される180度密着曲げ試験によって合格判定される、
    自動車用鋼板。
  2. 前記第2の領域は、鋼板の圧延方向に沿って存在する、請求項1に記載の自動車用鋼板。
  3. 前記第2の領域は、一つ、または互いに離隔して二つ以上、存在する、請求項1または2に記載の自動車用鋼板。
  4. 前記第2の領域は、前記第1の領域の化学組成の化学成分のうちの少なくとも一種の元素の含有量を増加または減少させた化学組成を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用鋼板。
  5. 前記第1の化学組成を構成する元素と、前記第2の化学組成を構成する元素の種類が相違する、請求項1〜4のいずれかに記載の自動車用鋼板。
  6. 自動車用鋼板の製造方法であって、
    前記自動車用鋼板は、鋼板表面に第1の領域と第2の領域を有し、
    前記鋼板表面を含む水平面から板厚方向において、
    前記第1の領域は、板厚の全てに亘り第1の化学組成を有し、
    前記第2の領域は、前記鋼板表面から所定深さまでに前記第1の化学組成とは異なる第2の化学組成を有し、且つ、前記所定深さを超える深さには、前記第1の化学組成を有し、
    前記第1の領域における鋼板の板厚と、前記第2の領域における鋼板の板厚は同一で、かつ、0.6mm〜8.0mmであり、
    前記第2の領域の前記所定深さは、前記板厚の1/300〜1/5の範囲であり、
    前記自動車用鋼板の製造方法は、前記第1の化学組成を有するスラブに複数の仕上圧延スタンドを有する連続スタンドを用いて熱間圧延を行うことにより前記自動車用鋼板を製造する方法であ
    前記仕上圧延スタンドの第1スタンド前で被圧延材の一方の表面の一部の所定の位置に、前記第1の化学組成とは異なる前記第2の化学組成を有する鋼を肉盛溶接した後に仕上圧延を行う工程を含む、
    動車用鋼板の製造方法。
  7. 前記熱間圧延を行った後に冷間圧延を行う工程を含む、請求項6に記載の自動車用鋼板の製造方法。
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