JP7099330B2 - 鋼板、テーラードブランク、熱間プレス成形品、鋼管状のテーラードブランク、中空状熱間プレス成形品、及び鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
本開示の課題は、継手の疲労強度に優れ、かつ、溶接部に塗装した後であっても、溶接部の塗装後耐食性に優れるテーラードブランクが得られる突合せ溶接用鋼板を提供するものである。
母材鋼板と、
前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、
を有する鋼板であって、
前記鋼板の端部における両面の少なくとも一部に、前記母材鋼板が露出している露出部と、
前記露出部よりも中央部側に設けられ、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有し、
端縁から前記第1めっき部に向かって、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置され、
前記露出部を有する端部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する鋼板。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線X:前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から前記鋼板の端縁方向に延長させた仮想線
仮想線Y:前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線
<2>
前記露出部が下記条件(C)を満足する、<1>に記載の鋼板。
(C)前記アルミニウムめっき層の表面を露出部の方向に延長させた仮想線から前記母材鋼板の表面までの垂直方向の深さのうち、前記仮想線Xの前記0.1mmになる地点よりも鋼板の端縁側における露出部の深さをD(μm)としたとき、前記Dが下記式(1)を満たす。
式(1) D≦(第1めっき部における母材鋼板の厚さ×0.2)/2
<3>
前記露出部が下記条件(D)を満足する、<1>又は<2>に記載の鋼板。
(D)下記3点に基づいて測定される曲率半径R0が50μm以上である。
第1点:前記露出部と前記第1めっき部との境界点
第2点:前記仮想線Xの前記0.1mmになる地点からの垂線と前記母材鋼板との交点
第3点:前記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の距離が最大値となる最大距離点
<4>
前記露出部を有する端部において、端部の両面又は片面に、少なくとも金属間化合物層が残存する第2めっき部をさらに有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の鋼板。
<5>
溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも2枚の鋼板を有する鋼板部とを備えるテーラードブランクであって、
前記少なくとも2枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板が、母材鋼板、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する鋼板であり、
前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有し、
前記露出部が、前記溶接金属部と接続し、
前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置され、
前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足するテーラードブランク。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線X:前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から前記鋼板の端縁方向に延長させた仮想線
仮想線Y:前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線
<6>
前記露出部が下記条件(C)を満足する、<5>に記載のテーラードブランク。
(C)前記アルミニウムめっき層の表面を露出部の方向に延長させた仮想線から前記母材鋼板の表面までの垂直方向の深さのうち、前記仮想線Xの前記0.1mmになる地点よりも鋼板の端縁側における露出部の深さをD(μm)としたとき、前記Dが下記式(1)を満たす。
式(1) D≦(第1めっき部における母材鋼板の厚さ×0.2)/2
<7>
前記露出部が下記条件(D)を満足する、<5>又は<6>に記載のテーラードブランク。
(D)下記3点に基づいて測定される曲率半径R0が50μm以上である。
第1点:前記露出部と前記第1めっき部との境界点
第2点:前記仮想線Xの前記0.1mmになる地点からの垂線と前記母材鋼板との交点
第3点:前記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の距離が最大値となる最大距離点
<8>
前記溶接金属部に含有するアルミニウム濃度が0.05質量%~1.00質量%である<5>~<7>のいずれか1つに記載のテーラードブランク。
<9>
前記溶接金属部から前記露出部と前記第1めっき部との境界点までの露出部の幅が、0.1mm~1.5mmである<5>~<8>のいずれか1つに記載のテーラードブランク
<10>
溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも2枚の鋼板を有する鋼板部とを備える熱間プレス成形品であって、
前記少なくとも2枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板が、母材鋼板、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する鋼板であり、
前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有し、
前記露出部が、前記溶接金属部と接続し、
前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置され、
前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する熱間プレス成形品。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線X:前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から前記鋼板の端縁方向に延長させた仮想線
仮想線Y:前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線
<11>
溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも1枚の鋼板を有する鋼板部とを備える鋼管状のテーラードブランクであって、
前記少なくとも1枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板が、母材鋼板、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する鋼板であり、
前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有し、
前記露出部が、前記溶接金属部と接続し、
前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置され、
前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する鋼管状のテーラードブランク。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線X:前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から前記鋼板の端縁方向に延長させた仮想線
仮想線Y:前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線
<12>
溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも1枚の鋼板を有する鋼板部とを備える中空状熱間プレス成形品であって、
前記少なくとも1枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板が、母材鋼板、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する鋼板であり、
前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有し、
前記露出部が、前記溶接金属部と接続し、
前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置され、
前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する中空状熱間プレス成形品。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線X:前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から前記鋼板の端縁方向に延長させた仮想線
仮想線Y:前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線
<13>
<1>~<4>のいずれか1つに記載の鋼板の製造方法であって、
エンドミルによる切削で前記露出部を形成する工程を有する鋼板の製造方法。
本開示の鋼板は、他の鋼板と突合せ溶接することでテーラードブランクを形成する鋼板を示し、以下において突合せ溶接用鋼板と称して説明する。
なお、本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、成分(元素)の含有量について、例えば、C(炭素)の含有量の場合、「C量」と表記することがある。また、他の元素の含有量についても同様に表記することがある。
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「アルミニウムめっき層」との用語は、母材鋼板上に施したアルミニウムめっきのうち、金属間化合物層を除く領域を表す。
本開示において、突合せ溶接用鋼板の「端部」との用語は、突合せ溶接用鋼板の周囲に位置しており、突合せ溶接用鋼板の端面から板幅全体寸法の5%以内までの範囲の領域を表す。
本開示において、突合せ溶接用鋼板の「端縁」との用語は、突合せ溶接用鋼板の板厚方向で対向する側の面(つまり、両表面)と、端面とが接する位置を表す。
本開示において、「第1めっき部」との用語は、突合せ溶接用鋼板の端部において、アルミニウムめっき層及び金属間化合物層が除去されない領域を表す。
本開示において、突合せ溶接用鋼板の「中央部」との用語は、領域端面から板幅全体寸法の5%以内までの範囲の領域を除く領域を表す。すなわち、突合せ溶接用鋼板の「中央部」は、突合せ溶接用鋼板の端部以外の領域である。
本開示において、突合せ溶接用鋼板の「断面」との用語は、端面に垂直で板厚方向に切断した断面を表す。
本開示において、「溶接部」との用語は、溶接金属、溶接金属の周囲に位置する突合せ溶接用鋼板の露出部、及び第1めっき部の溶接金属側周辺までを含む領域を表す。
本開示の突合せ溶接用鋼板は、母材鋼板と、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に形成された金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する。
また、本開示の突合せ溶接用鋼板は、前記突合せ溶接用鋼板の端部における両面の少なくとも一部に、前記母材鋼板が露出している露出部と、前記露出部よりも中央部側に設けられ、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有する。そして、本開示の突合せ溶接用鋼板は、端縁から前記第1めっき部に向かって、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置されている。
つまり、下記仮想線Yに対する垂直方向の距離であって、下記仮想線Yから母材鋼板まで最大距離hが1.0μm~5.0μmであることを示す。
仮想線Xは、前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から突合せ溶接用鋼板の端縁方向に延長させた仮想線である。
仮想線Yは、前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線である。
なお、本開示の突合せ溶接用鋼板の形状は特に限定されるものではない。
1)対向する端面から端面までの長さに対して、突合せ溶接用鋼板の端面から5%以内までの範囲の全領域であって、突合せ溶接用鋼板の端縁に沿って設けられる態様。
2)対向する端面から端面までの長さに対して、突合せ溶接用鋼板の端面から5%以内までの範囲内の一部分の領域であって、突合せ溶接用鋼板の端縁に沿って設けられている態様。
3)上記1)又は2)の態様において、突合せ溶接用鋼板の端縁の全長に沿って設けられる態様。
4)上記1)又は2)の態様において、突合せ溶接用鋼板の端縁の全長のうち、突き合わせ溶接を行う部分に対応する長さのみに沿って設けられる態様。
5)対向する端面から端面までの長さに対して、突合せ溶接用鋼板の端面から5%以内まで範囲のうち、突合せ溶接用鋼板の端縁を除く領域に設けられる態様。
母材鋼板は、アルミニウムめっき層を設ける前の鋼板である。母材鋼板は、通常の方法により得られたものであればよく、特に限定されるものではない。母材鋼板は熱延鋼板又は冷延鋼板のいずれでもよい。また、母材鋼板の厚みは目的に応じた厚みとすればよく、特に限定されるものではない。例えば、母材鋼板の板厚は、アルミニウムめっき層を設けた後のめっき鋼板全体の板厚として、0.8mm~4mmとなるような板厚が挙げられ、さらに、1mm~3mmとなるような板厚が挙げられる。
質量%で、C:0.02%~0.58%、Mn:0.20%~3.00%、Al:0.005%~0.200%、Ti:0%~0.20%、Nb:0%~0.20%、V:0%~1.0%、W:0%~1.0%、Cr:0%~1.0%、Mo:0%~1.0%、Cu:0%~1.0%、Ni:0%~1.0%、B:0%~0.0100%、Mg:0%~0.05%、Ca:0%~0.05%、REM:0%~0.05%、Bi:0%~0.05%、Si:0%~2.00%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、N:0.010%以下、並びに、残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有する。
なお、以下、成分(元素)の含有量を示す「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、母材鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を主に決定する重要な元素である。さらにA3点を下げ、焼入れ処理温度の低温化を促進する元素である。C量が0.02%未満では、その効果は十分ではない場合がある。したがって、C量は0.02%以上とすることがよい。一方、C量が0.58%を超えると、焼入れ部の靭性劣化が著しくなる。したがって、C量は0.58%以下とすることがよい。好ましくは0.45%以下である。
Mnは、母材鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を安定して確保するために、非常に効果のある元素である。Mn量が0.20%未満ではその効果は十分ではない場合がある。したがって、Mn量は0.20%以上とすることがよい。好ましくは0.80%以上である。一方、Mn量が3.00%を超えると、その効果は飽和するばかりか、却って焼入れ後に安定した強度の確保が困難となる場合がある。したがって、Mn量は3.00%以下とすることがよい。好ましくは2.40%以下である。
Alは、脱酸元素として機能する。また、Alは、母材鋼板の機械的強度に悪影響を及ぼす酸化物系介在物を低減する作用を有する。Al量が0.005%未満では上記作用による効果を得ることが困難である場合がある。したがって、Al量は0.005%以上とすることがよい。一方、Al量が0.200%超では、上記作用による効果は飽和して、コスト的に不利になる。したがって、Al量は0.200%以下とすることがよい。
Ti、Nb、V、及びWは、アルミニウムめっき層と母材鋼板におけるFe及びAlの相互拡散を促進する元素である。したがって、Ti、Nb、V、及びWのうちの少なくとも1種を母材鋼板に含有させてもよい。しかし、1)Ti量及びNb量が0.20%を超える、又は、2)V量及びW量が1.0%を超えると、上記作用による効果は飽和し、コスト的に不利となる。したがって、Ti量及びNb量は0.20%以下とすることがよく、V量及びW量は1.0%以下とすることがよい。Ti量及びNb量は0.15%以下が好ましく、V量及びW量は0.5%以下が好ましい。上記作用による効果をより確実に得るにはTi量及びNb量の下限値を0.01%以上、V量及びW量の下限値を0.1%以上とすることが好ましい。
Cr、Mo、Cu、Ni、及びBは、母材鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を安定して確保するために、効果のある元素である。したがって、これらの元素のうちの1種又は2種以上を含有させてもよい。しかし、Cr、Mo、Cu、及びNiの含有量については1.0%超、B量については0.0100%超としても、上記効果は飽和して、コスト的に不利となる。したがって、Cr、Mo、Cu、及びNiの含有量は1.0%以下とすることがよい。また、B量は0.0100%以下とすることがよく、0.0080%以下とすることが好ましい。上記効果をより確実に得るには、Cr、Mo、Cu、及びNiの含有量が0.1%以上、並びにBの含有量が0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Ca、Mg、及びREMは、鋼中の介在物の形態を微細化し、介在物によるホットスタンプ時の割れの発生を防止する作用を有する。したがって、これらの元素の1種又は2種以上を含有させてもよい。しかし、過剰に添加すると、鋼中の介在物の形態を微細化する効果は飽和し、コスト増を招くだけとなる。したがって、Ca量は0.05%以下、Mg量は0.05%以下、REM量は0.05%以下とする。上記作用による効果をより確実に得るには、Ca量を0.0005%以上、Mg量を0.0005%以上、及びREM量を0.0005%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Biは、溶鋼の凝固過程において凝固核となり、デンドライトの2次アーム間隔を小さくすることにより、デンドライト2次アーム間隔内に偏析するMn等の偏析を抑制する作用を有する元素である。したがって、Biを含有させてもよい。特に、多量のMnを含有させることがよく行われる鋼板については、Mnの偏析に起因する靭性の劣化を抑制するのにBiは効果がある。したがって、そのような鋼種にはBiを含有させることが好ましい。しかし、0.05%を超えてBiを含有させても、上記作用による効果は飽和してしまい、コストの増加を招く。したがって、Bi量は0.05%以下とする。好ましくは0.02%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Bi量を0.0002%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0005%以上である。
Siは、固溶強化元素であり、2.00%までは有効に活用できる。しかし、Siは2.00%を超えて含有させると、めっき性に不具合が生じることが懸念される。したがって、Siを含有する場合、Si量は2.00%以下とすることがよい。好ましい上限は1.40%以下、さらに好ましくは1.00%以下である。下限は特に限定されず、上記作用による効果をより確実に得るには、0.01%以上が好ましい。
Pは、不純物として含有される元素である。Pは過剰に含有すると、母材鋼板の靱性が低下しやすくなる。したがって、P量は0.03%以下とすることがよい。好ましくは0.01%以下である。P量の下限は特に規定する必要はないが、コストの観点からは0.0002%以上とすることが好ましい。
Sは、不純物として含有される元素であり、MnSを形成し、母材鋼板を脆化させる作用を有する。したがって、S量は0.010%以下とすることがよい。より望ましいS量は0.004%以下である。S量の下限は特に規定する必要はないが、コストの観点からは0.0002%以上とすることが好ましい。
Nは、不純物として含有され、鋼中にて介在物を形成し、熱間プレス成形後の靱性を劣化させる元素である。したがって、N量は0.010%以下とすることがよい。好ましくは0.008%以下、さらに好ましくは0.005%以下である。N量の下限は特に規定する必要はないが、コストの観点からは0.0002%以上とすることが好ましい。
残部は、Fe及び不純物である。ここで、不純物とは、鉱石、スクラップ等の原材料に含まれる成分、又は、製造の過程で混入する成分が例示され、意図的に母材鋼板に含有させたものではない成分を指す。
アルミニウムめっき層は、母材鋼板の両面に形成される。アルミニウムめっき層を形成する方法は、特に限定されるものではない。例えば、アルミニウムめっき層は、溶融めっき法(アルミニウムを主体として含む溶融金属浴中に母材鋼板を浸漬させ、アルミニウムめっき層を形成させる方法)により母材鋼板の両面に形成してもよい。
上記範囲でSiを含有させると、加工性及び耐食性の低下が抑制され得る。また、金属間化合物層の厚みを低減し得る。
金属間化合物層は、母材鋼板上にアルミニウムめっきを設ける際に、母材鋼板とアルミニウムめっき層との間の境界部に形成される層である。具体的には、金属間化合物層は、アルミニウムを主体として含む溶融金属浴中での母材鋼板の鉄(Fe)とアルミニウム(Al)を含む金属との反応によって形成される。金属間化合物層は、主にFexAly(x、yは1以上を表す)で表される化合物の複数種で形成されている。アルミニウムめっき層がSi(シリコン)を含む場合は、FexAly及びFexAlySiz(x、y、zは1以上を表す)で表される化合物の複数種で形成されている。
なお、母材鋼板と金属間化合物層との境界から、金属間化合物層とアルミニウムめっき層との境界までの距離を金属間化合物層の厚みとする。また、金属間化合物層とアルミニウムめっき層との境界からアルミニウムめっき層が形成された鋼板表面までの距離をアルミニウムめっき層の厚みとする。
アルミニウムめっき層の厚みは、前述の判断基準にしたがって、アルミニウムめっき層を有する突合せ溶接用鋼板表面から金属間化合物層までの厚みを、端部以外の領域において、端部以外の領域の全長を5等分した5箇所の位置における中央位置付近で求めた値の平均値をアルミニウムめっき層の厚みとする。
金属間化合物層の厚みは、前述の判断基準にしたがって、金属間化合物層とアルミニウムめっき層との境界から金属間化合物層と母材鋼板との境界までの厚みを、端部以外の領域において、端部以外の領域の全長を5等分した5箇所の位置における中央位置付近で求め、求めた値の平均値を金属間化合物層の厚みとする。
本開示の突合せ溶接用鋼板は、突合せ溶接用鋼板の端部における両面の少なくとも一部において、母材鋼板が露出している露出部を有する。また、露出部よりも中央部側には、アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層が残存している第1めっき部を有する。すなわち、第1めっき部は、端部以外の領域における構造と同様の構造を備えている。露出部が溶接予定部の端部の全域に設けられる場合、第1めっき部は、端部以外の領域と同義である。
露出部は、突合せ溶接用鋼板の溶接予定部の端部に形成される。露出部は、溶接予定部の端部において、突合せ溶接用鋼板の端縁から露出部と第1めっき部との境界点までの範囲に形成される。
(C)アルミニウムめっき層の表面を露出部の方向に延長させた仮想線から母材鋼板の表面までの垂直方向の深さのうち、仮想線Xにおける0.1mmになる地点よりも突合せ溶接用鋼板の端縁側における露出部の深さをD(μm)としたとき、前記Dが下記式(1)を満たす。本開示の突合せ溶接用鋼板では、両面に設けられたいずれの露出部も下記式(1)を満たしていることが好ましい。なお、下記式(1)中の母材鋼板の厚さは、μmに換算した値を代入する。
式(1) D≦(第1めっき部における母材鋼板の厚さ×0.2)/2
式(1-2)D≦(母材板厚×0.15)/2以下
式(1-3)D≦(母材板厚×0.1)/2以下
次に、露出部と第1めっき部との境界点から0.1mmよりも鋼板の端縁側において、露出部での母材鋼板の厚み(厚さB)を求める。
厚さBは、この露出部の終点までの範囲を測定した最小値とする。ただし、この範囲の全幅に対して、突合せ溶接用鋼板の端縁から鋼板に中央部に向かって10%の範囲は、測定から除外する。この除外した領域のうち、3等分した3箇所における中央位置を測定し、その最小値を厚みBとする。
そして、除去深さDは、上記で求めた厚さAから厚みBを差し引くことで求められる(除去深さD=厚さA-厚さB)。
なお、テーラードブランク、及び熱間プレス成形品の場合も同様にして測定すればよい。
まず、突合せ溶接用鋼板の端部における露出部の全幅が観察可能な断面を含む測定用試料を5箇所採取する。次に、突合せ溶接用鋼板の断面が露出するように切断を行い、樹脂に埋め込み、研磨を行い、断面を光学顕微鏡で拡大する。突合せ溶接用鋼板の端縁を基準とし、突合せ溶接用鋼板の端縁から第1めっき部までの距離(露出部の幅)を測定する。5箇所で測定した平均値を露出部の幅とする。
(D)下記3点に基づいて測定される曲率半径R0が50μm以上である。
第1点:前記露出部と前記第1めっき部との境界点
第2点:前記仮想線Xの前記0.1mmになる地点からの垂線と前記母材鋼板との交点
第3点:前記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の距離が最大値となる最大距離点
露出部の形成は特に限定されず、レーザ加工及び機械加工のいずれでもよい。本開示の突合せ溶接用鋼板の好ましい製造方法の一例は、切削により露出部を形成する工程を有する。より好ましい製造方法の一例としては、機械加工による切削で露出部を形成する工程を有する。さらに好ましい製造方法の一例としては、エンドミルによる切削で露出部を形成する工程を有する。エンドミルの端部のR形状を適切にすることで、本開示の突合せ溶接用鋼板における条件(A)及び条件(B)を満足させやすくなる。
以下、露出部を形成する好ましい方法の一例について具体的に説明する。
突合せ溶接用鋼板の端部の少なくとも一部において、母材鋼板の両面上に形成された金属間化合物層及びアルミニウムめっき層を切削により除去して、母材鋼板が露出する露出部を形成する工程を有していてもよい(形成法Aとする)。
一方で、機械加工により露出部を形成する場合、露出部が形成される部分の母材鋼板は、温度上昇が抑えられマルテンサイトが生じない。また、水素も入らないため遅れ破壊の発生が抑制される。この点で、露出部を形成するための方法としては、機械加工による切削を採用することが好ましい。
さらに、機械加工により露出部を形成する場合、レーザガウジング等のレーザ加工を行うときのレーザ光に対する遮光対策を行うことが無く、コスト等の点でも有利である。
突合せ溶接用鋼板の端部における両面の少なくとも一部に露出部を形成する他の好ましい方法の一例としては、例えば、次の方法が挙げられる。
上記の形成法Bのように形成した突合せ溶接用鋼板の切断前での母材鋼板の露出部の幅は、鋼板を突合せ溶接した後の溶融凝固領域(溶接金属)の幅の半分より10%から50%大きいことがよい。
これらの範囲であると、突合せ溶接用鋼板を突合せ溶接した後の溶接金属に、アルミニウムの混入が抑えられるため、溶接部の塗装後耐食性に優れたものとなるとともに、引張強度の低下も抑制される。また、溶接金属と第1めっき部との間に、硬質で脆い金属間化合物層を有していないためホットスタンプ後の熱間プレス成形品の疲労強度の低下が抑制される。
次に、テーラードブランクについて説明する。
テーラードブランクは、本開示の突合せ溶接用鋼板を少なくとも1枚有し、本開示の突合せ溶接用鋼板の露出部を有する端部を介して、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板を突合せ溶接した溶接鋼板である。本開示の突合せ溶接用鋼板を少なくとも1枚有していれば、2枚の突合せ溶接用鋼板の端面どうしを突合せた状態で溶接してもよく、3枚の突合せ溶接用鋼板の端面どうしを突合せた状態で溶接してもよい。例えば、テーラードブランクは、露出部を有する本開示の突合せ溶接用鋼板の端部の端面と、他の突合せ溶接用鋼板の溶接予定部の端部の端面とを突合せた状態で溶接した溶接鋼板でもよい。また、テーラードブランクは、例えば、本開示の2枚の突合せ溶接用鋼板における露出部を有する端部の端面どうしを突合せた状態で溶接してもよく、本開示の3枚の突合せ溶接用鋼板における露出部を有する端部の端面どうしを突合せた状態で溶接してもよい。さらに、本開示の3枚以上の突合せ溶接用鋼板における露出部の端面どうしを突合せた状態で溶接してもよい。つまり、本開示の突合せ溶接用鋼板を少なくとも1枚含み、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板の端部が対向して配置された突合せ溶接用鋼板と、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板の端部を接合する溶接金属であって、本開示の突合せ溶接用鋼板の母材鋼板が露出している露出部に隣接して備える溶接金属と、を有する。
溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも2枚の鋼板を有する鋼板部とを備える。
また、本開示のテーラードブランクは、少なくとも2枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板が、前記母材鋼板と、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する。
前記母材鋼板及び前記めっき部を有する前記鋼板は、前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有している。
前記露出部は、前記溶接金属部と接続している。
そして、本開示のテーラードブランクは、前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置されている。
さらに、本開示のテーラードブランクは、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線Xは、前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から突合せ溶接用鋼板の端縁方向に延長させた仮想線である。
仮想線Yは、前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線である。
レーザ溶接線に直交する方向で切断し、樹脂に埋め込み、研磨を行い電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA)により、突合せ溶接用鋼板の表面から母材鋼板までをマッピング分析し、アルミニウム濃度を測定する。測定条件は、加速電圧15kV、ビーム径100nm程度、照射時間1000ms、測定ピッチは格子状に5μmピッチとする。溶接金属の部分のアルミニウム濃度の測定値を平均化して、平均濃度を求める。なお、後述の熱間プレス成形品における溶接金属中のアルミニウム濃度についても、同様の方法で測定される。
また、溶接は、必要に応じて、フィラーワイヤを供給しながら溶接してもよい。
式(2)((D1+D2)/t)×100≦20
また、「鋼板の板厚と熱間プレス成形後の鋼板の引張強度との積」において、板厚は、熱間プレス成形後の鋼板の板厚を、引張強度は、熱間プレス成形後の引張強度を、それぞれ用いる。
次に、熱間プレス成形品について説明する。
熱間プレス成形品は、本開示のテーラードブランクを熱間プレス成形して得られた成形品である。つまり、熱間プレス成形品は、本開示の突合せ溶接用鋼板を少なくとも1枚含み、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板の端部が対向して配置された鋼板と、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板の端部を接合する溶接金属であって、本開示の突合せ溶接用鋼板の母材鋼板が露出している露出部に隣接して備える溶接金属と、を有する。熱間プレス成形品は、継手の疲労強度及び溶接部の塗装後耐食性の観点で、本開示の少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板を、露出部を有する端部を介して突合せ溶接したテーラードブランクを熱間プレス成形して得られた成形品であることがよい。
溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも2枚の鋼板を有する鋼板部とを備える。
少なくとも2枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板が、母材鋼板と、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する鋼板である。
前記母材鋼板及び前記めっき部を有する前記鋼板は、前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有している。
前記露出部は、前記溶接金属部と接続している。
そして、本開示の熱間プレス成形品は、前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置されている。
さらに、本開示の熱間プレス成形品は、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線Xは、前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から突合せ溶接用鋼板の端縁方向に延長させた仮想線である。
仮想線Yは、前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線である。
まず、テーラードブランクを高温に加熱してテーラードブランクを軟化させる。そして、金型を用いて、軟化したテーラードブランクをホットスタンプにより成形及び冷却して焼入れられ、目的とする形状の熱間プレス成形品が得られる。熱間プレス成形品は、加熱、及び冷却により焼入れされることで、例えば、約1500MPa以上の高い引張強度を有する成形品が得られる。
まず、母材鋼板の両面に、アルミニウムめっきを施して、アルミニウムめっき層が設けられためっき鋼板を得る。このとき、母材鋼板とアルミニウムめっき層との間には、金属間化合物層が形成される。
ここで、突合せ溶接用鋼板の端部に形成される露出部は、めっき鋼板をコイル状に巻き取った後、コイル状に巻かれためっき鋼板を引き出した状態で形成してもよい。この場合、めっき鋼板に露出部を形成したあと、露出部が突合せ溶接用鋼板の端部に有するように打ち抜き加工を施す。
また、突合せ溶接用鋼板の端部に形成される露出部は、コイル状に巻かれためっき鋼板を引き出し、引き出しためっき鋼板に打ち抜き加工を施して得られた切板材に形成してもよい。この場合、切板材の端部に露出部を形成して、突合せ溶接用鋼板としてもよい。また、切板材の端部以外の部分に、例えば一方向に延びるように、露出領域を形成した後、切板材の端部に露出部が形成されるように、切板材の露出領域を切断して、突合せ溶接用鋼板としてもよい。
次に、突合せ溶接用鋼板の端部を突合せた状態で、突合せ溶接を行い、テーラードブランクを得る。具体的には、露出部が形成された突合せ溶接用鋼板を2枚準備した場合、露出部を有する端部を突合せた状態で、突合せ溶接を行い、テーラードブランクを得る。
次に、上型及び下型の一対の金型により、加熱されたテーラードブランクを熱間プレスし、成形及び焼入れする。
そして、金型から取り外すことで、目的とする熱間プレス成形品が得られる。
次に、鋼管状のテーラードブランクについて説明する。
鋼管状のテーラードブランクは、本開示の突合せ溶接用鋼板を少なくとも1枚含む鋼板によるオープン管の端部を介して溶接したものである。つまり、本開示の鋼管状のテーラードブランクは、本開示の突合せ溶接用鋼板をオープン管とし、露出部を有する端部の端面どうしを突合せた状態で溶接して得られた鋼管状のテーラードブランクでもよい。また、本開示のテーラードブランクをオープン管とし、露出部を有する端部の端面どうしを突合せた状態で溶接して得られた鋼管状のテーラードブランクでもよい。鋼管状のテーラードブランクは、溶接金属(つまり、鋼板のオープン管の端部を接合する溶接金属)を少なくとも一つ有し、溶接金属に隣接する本開示の突合せ溶接用鋼板を含む鋼板による管状体の両面に、母材鋼板が露出している露出部を有する。
本開示の鋼管状のテーラードブランクは、溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも1枚の鋼板を有する鋼板部とを備える。
前記少なくとも1枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板は、母材鋼板と、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する。
母材鋼板及びめっき部を有する前記鋼板は、前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有する。
前記露出部は、前記溶接金属部と接続している。
そして、本開示の鋼管状のテーラードブランクは、前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置されている。
さらに、本開示の鋼管状のテーラードブランクは、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線Xは、前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から突合せ溶接用鋼板の端縁方向に延長させた仮想線である。
仮想線Yは、前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線である。
1)第1の端部に、第1の露出部を設け、第2の端部に、第2の露出部を設けた突合せ溶接用鋼板を1枚準備する。この1枚の突合せ溶接用鋼板を管状に成形してオープン管とする。その後、得られたオープン管において、第1の露出部を備える端部の端面と、第2の露出部を備える端部の端面とを突合せた状態で溶接する。このようにして得られた鋼管状のテーラードブランクでもよい。
2)第1の端部に、第1の露出部を設け、第2の端部に、第2の露出部を設けた突合せ溶接用鋼板を2枚以上準備する。この突合せ溶接用鋼板が2枚である場合は、第1の露出部を備える第1の突合せ溶接用鋼板の端部の端面と、第2の露出部を備える端部の第2の突合せ溶接用鋼板の端面とを、突合せた状態で溶接してテーラードブランクとする。そして、このテーラードブランクを管状に成形してオープン管とする。その後、得られたオープン管において、溶接を行っていない第2の露出部を備える第1の突合せ溶接用鋼板部分での端部の端面と、溶接を行っていない第1の露出部を備える第2の突合せ溶接用鋼板部分での端部の端面とを突合せた状態で溶接する。このようにして得られた鋼管状のテーラードブランクでもよい。オープン管は、オープン管を形成する前のテーラードブランクにおける溶接線に対して、平行な方向に形成してもよく、交差する方向に形成してもよい。
また、管状に成形した後の溶接は、特に限定されず、例えば、レーザ溶接;プラズマ溶接;電気抵抗溶接又は高周波誘導加熱溶接により溶接する電縫溶接が挙げられる。
次に、中空状熱間プレス成形品について説明する。
本開示の中空状熱間プレス成形品は、本開示の鋼管状のテーラードブランクを、焼入れして得られた中空状の成形品である。前述のように、本開示の鋼管状のテーラードブランクは、本開示の突合せ溶接用鋼板から形成されるか、又は、本開示の突合せ溶接用鋼板を突合せ溶接して得られたテーラードブランクから形成される。
すなわち、鋼管状のテーラードブランクをホットスタンプすることにより得られた中空状熱間プレス品は、溶接金属(つまり、鋼板の端部を接合する溶接金属)を少なくとも一つを有し、溶接金属に隣接する本開示の突合せ溶接用鋼板による中空成形体の両面に、母材鋼板が露出している露出部を有する。
本開示の中空状熱間プレス成形品は、溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも1枚の鋼板を有する鋼板部とを備える。
前記少なくとも1枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板が、母材鋼板、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する。
前記母材鋼板及び前記めっき部を備える前記鋼板が、前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有する。
前記露出部は、前記溶接金属部と接続している。
そして、本開示の中空状熱間プレス成形品は、前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置され、
さらに、本開示の中空状熱間プレス成形品は、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する中空状熱間プレス成形品。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線Xは、前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から突合せ溶接用鋼板の端縁方向に延長させた仮想線である。
仮想線Yは、前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線である。
本開示の突合せ溶接用鋼板を用いて得られた鋼管状のテーラードブランクを、ベンダーで成形する。次に加熱炉、通電加熱、又は高周波誘導加熱により加熱する。鋼管状のテーラードブランクを加熱する温度としては、オーステナイト領域とする必要があることから、例えば、850℃~1100℃とすることがよく、900℃~1000℃程度の温度とすることがよい。次に、加熱した鋼管を、水冷等により冷却し、焼入れを行う。
なお、成形と焼入れとを同時に行ってもよい。これは3次元熱間曲げ焼入れ(3DQ)と呼ばれ、例えば、鋼管状のテーラードブランクを加熱するとともに、荷重を加えて変形させ、直後に水冷等により冷却することによって焼入れられる。これらの過程を経ることによって、目的とする中空状熱間プレス成形品が得られる。なお、中空状熱間プレス成形品は、そのまま部品として用いてもよい。また、必要に応じて溶接部に脱スケール処理(例えば、ショットブラスト、ブラッシング、レーザクリーニングなど)を行ってから用いてもよい。
なお、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
まず、表1に示す化学組成を有する3種類の母材鋳片を用いて、表2に示す厚みとなるように圧延し、アルミニウムめっきを施しためっき鋼板を準備した。そして、このめっき鋼板を1辺10cmの四角形に切り出し、突合せ溶接用鋼板として準備した。次に、準備した突合せ溶接用鋼板の溶接予定部の端部における両面に、エンドミルで切削して露出部を形成した。露出部は、鋼板の端部における両面において、突合せ溶接用鋼板4辺うちの1辺のみ全長10cmにわたって形成した。露出部の幅は、表4に示す溶接後の露出部の幅となるように形成した。露出部が、表3に示す角度α、距離h、除去深さD、曲率半径R0となるように両面(第1面及び第2面)に形成されたアルミニウムめっき層及び金属間化合物層を、それぞれ除去した。表3に示すように、露出部と共に第2めっき部を設ける場合、第2めっき部は、金属間化合物層及びアルミニウムめっき層の両方が残存するように設けた。第1面では、突合せ溶接用鋼板の端縁に接して、端縁に沿って第2めっき部Aを設けた。第2面では、鋼板の端縁と離間した領域に、端縁に沿って第2めっき部Bを設けた。第2めっき部の幅は、突合わせ溶接したときの溶接金属に取り込まれる長さとした。
レーザ出力:3.0kW~7.0kW
溶接速度:4.0m/min~7.0m/min
フィラーワイヤ(化学組成):質量%で、C: 0.13 %、Si: 0.1 %、Mn:2.0 %、P: 0.015 %、S: 0.010 %、Al: 0.003 %、残部:Fe及び不純物
なお、溶接金属のビッカース硬さはHV400以上であった。
(疲労強度試験及び継手静的強度)
得られた熱間プレス成形品から、引張強度試験用の試験片、及び疲労強度試験用の試験片として、溶接部を持つダンベル状の形状の試験片を採取した。
試験片は、平行部距離20mm、平行部の幅15mmとし、平行部の中央部に、長手方向に対して直交方向になるように幅全長にわたって、溶接線を有するように採取した。この試験片を用いて疲労強度試験及び継手静的強度を行った。
継手静的強度(静的強度と表記)として、最大荷重を、熱間プレス成形後の強度と板厚の積が小さい側での試験片の断面積で除して算出した。結果を表4に示す。
-判定基準-
A(○):熱間プレス成形後における引張強さの100%以上
B(×):熱間プレス成形後における引張強さの100%未満
疲労強度試験(疲労強度と表記)は、電磁共振型疲労強度試験機を用い、室温(25℃)大気中で荷重制御軸力完全片振り引張、応力比0.1、応力繰り返し回数107回、繰返し速度約80Hzの試験条件で行った。107回疲労強度をホットスタンプ後の強度と板厚の積が小さい方の強度で除した値を疲労限度比として、下記評価基準で評価した。結果を表4に示す。
-判定基準-
A(○):疲労限度比が0.30以上
B(×):疲労限度比が0.30未満
上記で得られた熱間プレス成形品を化成処理した後、電着塗装を行い、塗装後耐食性試験を行った。化成処理は日本パーカライジング(株)製化成処理液PB-SX35Tで施した。その後、電着塗料として、日本ペイント(株)製カチオン電着塗料パワーニクス110を使用し、電着膜厚約15μmを目標として電着塗装を施した。水洗後、170℃で20分間加熱して焼付け、試験板を作製した。試験板のサイズは65mm長さ、100mm幅(幅中央部に溶接部がある。)とした。
この試験板を用いて、自動車部品外観腐食試験JASO M610-92を用い、360サイクル(120日)経過後の腐食状況で塗装後耐食性を評価した。
-判定基準-
A(○):最大腐食深さが0.2mm未満
B(×):最大腐食深さが0.2mm以上
Claims (13)
- 母材鋼板と、
前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、
を有する鋼板であって、
前記鋼板の端部における両面の少なくとも一部に、前記母材鋼板が露出している露出部と、
前記露出部よりも中央部側に設けられ、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有し、
端縁から前記第1めっき部に向かって、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置され、
前記露出部を有する端部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する鋼板。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線X:前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から前記鋼板の端縁方向に延長させた仮想線
仮想線Y:前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線 - 前記露出部が下記条件(C)を満足する、請求項1に記載の鋼板。
(C)前記アルミニウムめっき層の表面を露出部の方向に延長させた仮想線から前記母材鋼板の表面までの垂直方向の深さのうち、前記仮想線Xの前記0.1mmになる地点よりも鋼板の端縁側における露出部の深さをD(μm)としたとき、前記Dが下記式(1)を満たす。
式(1) D≦(第1めっき部における母材鋼板の厚さ×0.2)/2 - 前記露出部が下記条件(D)を満足する、請求項1又は請求項2に記載の鋼板。
(D)下記3点に基づいて測定される曲率半径R0が50μm以上である。
第1点:前記露出部と前記第1めっき部との境界点
第2点:前記仮想線Xの前記0.1mmになる地点からの垂線と前記母材鋼板との交点
第3点:前記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の距離が最大値となる最大距離点 - 前記露出部を有する端部において、端部の両面又は片面に、少なくとも金属間化合物層が残存する第2めっき部をさらに有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の鋼板。
- 溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも2枚の鋼板を有する鋼板部とを備えるテーラードブランクであって、
前記少なくとも2枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板が、母材鋼板、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する鋼板であり、
前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有し、
前記露出部が、前記溶接金属部と接続し、
前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置され、
前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足するテーラードブランク。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線X:前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から前記鋼板の端縁方向に延長させた仮想線
仮想線Y:前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線 - 前記露出部が下記条件(C)を満足する、請求項5に記載のテーラードブランク。
(C)前記アルミニウムめっき層の表面を露出部の方向に延長させた仮想線から前記母材鋼板の表面までの垂直方向の深さのうち、前記仮想線Xの前記0.1mmになる地点よりも鋼板の端縁側における露出部の深さをD(μm)としたとき、前記Dが下記式(1)を満たす。
式(1) D≦(第1めっき部における母材鋼板の厚さ×0.2)/2 - 前記露出部が下記条件(D)を満足する、請求項5又は請求項6に記載のテーラードブランク。
(D)下記3点に基づいて測定される曲率半径R0が50μm以上である。
第1点:前記露出部と前記第1めっき部との境界点
第2点:前記仮想線Xの前記0.1mmになる地点からの垂線と前記母材鋼板との交点
第3点:前記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の距離が最大値となる最大距離点 - 前記溶接金属部に含有するアルミニウム濃度が0.05質量%~1.00質量%である請求項5~請求項7のいずれか1項に記載のテーラードブランク。
- 前記溶接金属部から前記露出部と前記第1めっき部との境界点までの露出部の幅が、0.1mm~1.5mmである請求項5~請求項8のいずれか1項に記載のテーラードブランク。
- 溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも2枚の鋼板を有する鋼板部とを備える熱間プレス成形品であって、
前記少なくとも2枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板が、母材鋼板、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する鋼板であり、
前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有し、
前記露出部が、前記溶接金属部と接続し、
前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置され、
前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する熱間プレス成形品。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線X:前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から前記鋼板の端縁方向に延長させた仮想線
仮想線Y:前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線 - 溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも1枚の鋼板を有する鋼板部とを備える鋼管状のテーラードブランクであって、
前記少なくとも1枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板が、母材鋼板、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する鋼板であり、
前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有し、
前記露出部が、前記溶接金属部と接続し、
前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置され、
前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する鋼管状のテーラードブランク。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線X:前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から前記鋼板の端縁方向に延長させた仮想線
仮想線Y:前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線 - 溶接金属部と、前記溶接金属部を介して接続された少なくとも1枚の鋼板を有する鋼板部とを備える中空状熱間プレス成形品であって、
前記少なくとも1枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板が、母材鋼板、前記母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層、及び前記母材鋼板と前記アルミニウムめっき層との間に設けられた金属間化合物層を備えるめっき部と、を有する鋼板であり、
前記母材鋼板が露出している露出部と、前記アルミニウムめっき層及び前記金属間化合物層を備える第1めっき部と、を有し、
前記露出部が、前記溶接金属部と接続し、
前記溶接金属部から前記第1めっき部に向かって、前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部が、この順で、前記母材鋼板の表面上に沿って配置され、
前記溶接金属部、前記露出部、及び前記第1めっき部を有する溶接部を断面から見たとき、前記露出部が下記条件(A)及び下記条件(B)を満足する中空状熱間プレス成形品。
(A)下記仮想線Xと下記仮想線Yとのなす角度αが5.0°~20.0°である。
(B)下記仮想線Yから母材鋼板に向かう垂直方向の最大距離hが1.0μm~5.0μmである。
仮想線X:前記第1めっき部における前記母材鋼板と前記金属間化合物層との境界線を、前記露出部と前記第1めっき部との境界点から前記鋼板の端縁方向に延長させた仮想線
仮想線Y:前記仮想線Xから前記母材鋼板に向かう前記仮想線Xの垂線及び母材鋼板との交点であって、仮想線Xにおける前記露出部と前記第1めっき部との境界点からの距離が0.1mmになる地点からの前記垂線及び前記母材鋼板の交点と、前記露出部及び前記第1めっき部の境界点と、を結ぶ仮想線 - 請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の鋼板の製造方法であって、
エンドミルによる切削で前記露出部を形成する工程を有する鋼板の製造方法。
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