JP6601598B1 - 鋼板、テーラードブランク、熱間プレス成形品の製造方法、鋼管、及び中空状焼入れ成形品の製造方法 - Google Patents

鋼板、テーラードブランク、熱間プレス成形品の製造方法、鋼管、及び中空状焼入れ成形品の製造方法 Download PDF

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Abstract

母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられた鋼板であって、前記鋼板の縁部以外の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをa0μm、及び金属間化合物層(IMC0)の厚みをb0μmとし、前記鋼板の縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをa1μm、及び金属間化合物層(IMC1)の厚みをb1μmとし、前記縁部以外の部分における母材鋼板の板厚をt0μmとしたとき、式(1)b1(μm)>b0(μm)、式(2)3μm≦b0(μm)≦10μm、及び式(3)0.8%≦{2×(a1(μm)+b1(μm))/t0(μm)}×100≦3.5%を満たす鋼板。

Description

本開示は、鋼板、テーラードブランク、熱間プレス成形品、鋼管、及び中空状焼入れ成形品に関するものである。
近年、地球環境保護の視点からCOガス排出量削減のために、自動車分野では、自動車車体の軽量化が喫緊の課題である。それに対して高強度鋼板を適用する検討が積極的に行われている。鋼板(めっき鋼板)の強度も益々高まっている。
一方で、高強度化された鋼板を成形する場合、鋼板の高強度化に伴って成形性が低下する。特に引張強度が1500MPaを越える高強度鋼板は、延性に乏しいため、自動車用骨格部材の複雑な形状に対しては冷間でプレス成形することが困難であるという課題がある。
自動車用部材を成形する技術の一つとして、熱間プレス成形(以下、「ホットスタンプ」と称する場合がある。)が注目されている。ホットスタンプは、熱間プレス用鋼板を高温に加熱し、Ar変態温度以上の温度域でプレス加工している。さらに、ホットスタンプでは、プレス成形した鋼板を金型による抜熱で急速に冷却し、プレス圧が掛かった状態で成形と同時に変態を起こさせる。それによって、ホットスタンプは、高強度でかつ形状凍結性に優れたプレス成形品を製造することができる技術である。
また、自動車用部材のプレス成形品の歩留まり、および機能性を向上させるために、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板の端面を突合せて、レーザ溶接、プラズマ溶接などによって接合したテーラードブランクが、プレス用素材として適用されている。テーラードブランクは、目的に応じて、複数の突合せ溶接用鋼板を接合するため、一つの部品の中で板厚および強度を自由に変化させることができるようになる。その結果、テーラードブランクを用いることにより、自動車用部材の機能性の向上および自動車用部材の部品点数削減が可能となる。また、テーラードブランクを用いてホットスタンプすることで、板厚、強度等を自由に変化させた高強度のプレス加工品を製造することができる。
テーラードブランクをプレス用素材として用い、ホットスタンプにより自動車用部材を成形する場合、テーラードブランクは、例えば、800℃〜1000℃の温度域に加熱される。このため、ホットスタンプ用のテーラードブランクには、めっき沸点が高いAl−Si等のアルミニウムめっきがなされた鋼板が使用されることが多い。
これまで、テーラードブランクを形成するための鋼板(すなわち、突合せ溶接用鋼板)として、例えば、アルミニウムを主体として含むアルミニウムめっきが施された鋼板が、種々検討されてきた(例えば、特許文献1〜5を参照)。
例えば、特許文献1および特許文献2では、アルミニウムめっき層を有する鋼板において、鋼板の周囲の領域では、金属間化合物層が残存し、アルミニウムめっき層が取り除かれていることが開示されている。
また、特許文献3および特許文献4では、アルミニウムめっき層を有する鋼板を、突合せレーザ溶接して形成したホットスタンプ用テーラードブランクにおいて、溶接部が必要な強度を保持するための要件が開示されている。
特許文献5では、アルミニウムめっきなどのめっき層を有する鋼板において、鋼板のエッジ領域をレーザアブレーション処理することが開示されている。
国際公開2007/125182号 国際公開2015/162478号 日本国特開2013−204090号公報 日本国特開2013−220445号公報 国際公開2014/005041号
アルミニウムを主体として含む金属のめっきが施された鋼板は、母材鋼板上に設けられた金属間化合物層と、金属間化合物層上に設けられたアルミニウムめっき層とを有する(例えば、特許文献1〜5を参照)。例えば、金属間化合物層の厚みが大きい鋼板を備えたテーラードブランクをホットスタンプして、熱間プレス成形品(以下、「ホットスタンプ成形品」と称する場合がある。)を製造した場合、溶接部以外の領域で、ホットスタンプ成形品にクラックなどが生じることがある。この現象は、硬質で脆い金属間化合物層の厚みが大きいことに起因していると考えられる。このため、ホットスタンプ成形品は、金属間化合物層の厚みが薄い鋼板を有するテーラードブランクを用いて製造されることが好ましい。
しかしながら、アルミニウムめっき層を有するテーラードブランクを用いたホットスタンプ成形品では、溶接部の溶接金属で破断が生じる場合があった。
特に、特許文献1及び特許文献2には、溶接予定部のアルミニウムめっき層を取り除いて金属間化合物層を残した鋼板とし、この鋼板を突合せ溶接用鋼板とすることが開示されている。そして、この鋼板の金属間化合物層を残した領域の端面どうしを突合せた状態で突合せ溶接したテーラードブランクとし、このテーラードブランクを用いることにより、ホットスタンプ成形品での溶接金属の破断が回避できることが開示されている。
さらに、特許文献1及び特許文献2には、ホットスタンプしたホットスタンプ成形品は、耐食性を有することが開示されている。しかし、特許文献1及び特許文献2に開示された鋼板では、ホットスタンプ成形品に塗装した後、溶接部における耐食性が未だ十分ではなく、さらなる塗装後耐食性の向上が求められていた。
本開示の課題は、金属間化合物層の厚みが薄い鋼板を用いた突合せ溶接用鋼板において、継手の引張強度の低下が抑制され、かつ、熱間プレス成形品に塗装した後であっても、溶接部の塗装後耐食性に優れるテーラードブランクが得られる突合せ溶接用鋼板を提供するものである。
本開示には、以下の態様が含まれる。
<1>
母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられた鋼板であって、
前記鋼板の縁部以外の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
前記鋼板の縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
前記縁部以外の部分における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)を満たす鋼板。
式(1) : b(μm)>b(μm)
式(2) : 3μm≦b(μm)≦10μm
式(3) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
(ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
<2>
前記母材鋼板が、質量%で、C:0.02%〜0.58%、Mn:0.20%〜3.00%、Al:0.005%〜0.20%、Ti:0%〜0.20%、Nb:0%〜0.20%、V:0%〜1.0%、W:0%〜1.0%、Cr:0%〜1.0%、Mo:0%〜1.0%、Cu:0%〜1.0%、Ni:0%〜1.0%、B:0%〜0.0100%、Mg:0%〜0.05%、Ca:0%〜0.05%、REM:0%〜0.05%、Bi:0%〜0.05%、Si:0%〜2.00%、P:0%〜0.03%、S:0%〜0.010%、N:0%〜0.010%、並びに、残部:Feおよび不純物からなる化学組成を有する<1>に記載の鋼板。
<3>
前記縁部以外の部分での前記アルミニウムめっき層の厚みが8μm〜50μmである<1>又は<2>に記載の鋼板。
<4>
溶接金属と、前記溶接金属に接続する少なくとも2つの鋼板部とを備えるテーラードブランクであって、
前記少なくとも2つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有し、
前記少なくとも2つの鋼板部のうち、少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部で、母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられており、前記縁部以外の部分で、前記母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられており、
前記溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
前記溶接金属と接続する縁部以外の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
前記縁部以外の部分における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)を満たすテーラードブランク。
式(1) : b(μm)>b(μm)
式(2) : 3μm≦b(μm)≦10μm
式(3) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
(ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
<5>
<4>に記載のテーラードブランクに対して熱間プレス成形を行うことにより、
溶接金属と、前記溶接金属に接続する少なくとも2つの鋼板部とを備える熱間プレス成形品であって、
前記少なくとも2つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有し、
前記少なくとも2つの鋼板部のうち、少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部で、母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられており、前記縁部以外の部分で、前記母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられており、
前記溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
前記a、及び前記bの測定位置における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
下記式(4)及び下記式(5)を満たす熱間プレス成形品を製造する、熱間プレス成形品の製造方法
式(4) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
式(5) :10μm≦(a(μm)+b(μm))
(ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
<6>
溶接金属と、周方向の2つの縁部が互いに対向するオープン管状に形成され、前記溶接金属に、前記周方向の2つの縁部が接続する鋼板部とを備える鋼管であって、
前記鋼板部は、少なくとも1つの鋼板部を有し、前記少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有し、
前記少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部で、母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられており、前記縁部以外の部分で、前記母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられており、
前記溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
前記溶接金属と接続する縁部以外の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
前記縁部以外の部分における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)を満たす鋼管。
式(1) : b(μm)>b(μm)
式(2) : 3μm≦b(μm)≦10μm
式(3) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
(ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
<7>
<6>に記載の鋼管を成形及び焼入れすることにより、
溶接金属と、周方向の2つの縁部が互いに対向するオープン管状に形成され、前記溶接金属に、前記周方向の2つの縁部が接続する鋼板部とを備える中空状焼入れ成形品であって、
前記鋼板部は、少なくとも1つの鋼板部を有し、前記少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有し、
前記少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部で、母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられており、前記縁部以外の部分で、前記母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられており、
前記溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
前記a、及び前記bの測定位置における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
下記式(4)及び下記式(5)を満たす中空状焼入れ成形品を製造する、中空状焼入れ成形品の製造方法
式(4) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
式(5) :10μm≦(a(μm)+b(μm))
(ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
本開示によれば、金属間化合物層の厚みが薄い鋼板を用いた突合せ溶接用鋼板において、継手の引張強度の低下が抑制され、かつ、熱間プレス成形品に塗装した後であっても、溶接部の塗装後耐食性に優れるテーラードブランクが得られる突合せ溶接用鋼板が提供される。
図1は、本開示の突合せ溶接用鋼板における溶接予定部の縁部周辺の一例を表す拡大概略断面図である。 図2は、本開示の突合せ溶接用鋼板における溶接予定部の縁部周辺の他の一例を表す拡大概略断面図である。 図3は、本開示の突合せ溶接用鋼板における溶接予定部の縁部周辺の他の一例を表す拡大概略斜視図である。 図4は、未処理の縁部の一例を表す拡大断面写真である。 図5は、本開示の突合せ溶接用鋼板における溶接予定部の縁部の一例を表す拡大断面写真である。 図6は、本開示のテーラードブランクにおける溶接部の断面の一例を表す模式図である。 図7は、2枚の突合せ溶接用鋼板における未処理の縁部を介して形成したテーラードブランクの溶接金属付近における拡大断面写真である。 図8は、本開示の2枚の突合せ溶接用鋼板における溶接予定部の縁部を介して形成したテーラードブランクの溶接金属付近における拡大断面写真である。 図9は、本開示の鋼管の一例を表す概略模式図である。 図10は、本開示の鋼管の他の一例を表す概略模式図である。
以下、本開示の好ましい態様の一例について詳細に説明する。
本開示の鋼板は、他の鋼板と突合せ溶接することでテーラードブランクを形成する鋼板を示し、以下において突合せ溶接用鋼板と称して説明する。
なお、本開示において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、成分(元素)の含有量について、例えば、C(炭素)の含有量の場合、「C量」と表記することがある。また、他の元素の含有量についても同様に表記することがある。
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「母材鋼板」との用語は、アルミニウムめっきを施す前の鋼板であり、金属間化合物層及びアルミニウムめっき層が設けられる前の状態の鋼板を表す。
本開示において、「金属間化合物層」との用語は、母材鋼板の両面に、アルミニウムめっきを施す際、母材鋼板とアルミニウムめっきとの間に形成される金属間化合物層を表す。
本開示において、「アルミニウムめっき層」との用語は、母材鋼板上に施したアルミニウムめっきのうち、金属間化合物層を除く領域を表す。
本開示において、突合せ溶接用鋼板の「断面」との用語は、板厚方向に切断した断面を表す。具体的には、図1において、突合せ溶接用鋼板の板厚方向をZとし、溶接予定部が延びる方向(図1の表示面に直交する方向)をXとする。そして、方向Zおよび方向Xにそれぞれ直交する方向を、Yとする。このとき、断面は、YZ平面により切断した断面を意味する。なお、図1に示すX方向、Y方向、及び、Z方向は、図3に示すX方向、Y方向、及び、Z方向と同様の方向を示している。
本開示において、突合せ溶接用鋼板の「縁部」との用語は、突合せ溶接用鋼板の周囲に位置している領域であって、最大となる場合で、突合せ溶接用鋼板としての鋼板の端縁から5mm以内の範囲の領域を表す。
本開示において、突合せ溶接用鋼板の「端縁」とは、突合せ溶接用鋼板の板厚方向で対向する側の面(つまり、鋼板の表面)と、端面とが接する位置を表す。
本開示において、突合せ溶接用鋼板の「端面」との用語は、板厚方向側で対向する面の間で、板厚方向の面が露出している面を表す。
本開示において、突合せ溶接用鋼板の「縁部以外の部分」及び「縁部以外の領域」との用語は、突合せ溶接用鋼板としての鋼板の縁部を除く領域を表す。すなわち、「縁部以外の部分」及び「縁部以外の領域」は、突合せ溶接用鋼板の中央部を表し、最小となる場合で、突合せ溶接用鋼板の対向する幅(つまり、対向する端面から端面までの長さ)から、5mm×2を除いた範囲の領域を占めている。
本開示において、「溶接部」との用語は、溶接金属、およびその周辺の金属間化合物層の厚みの増加が飽和している部分を含む領域を表す。
<突合せ溶接用鋼板>
本開示の突合せ溶接用鋼板は、母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられている。すなわち、本開示の突合せ溶接用鋼板は、このようなアルミニウムめっき鋼板から形成されるものである。
また、本開示の突合せ溶接用鋼板は、前記突合せ溶接用鋼板の縁部以外の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、前記突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、前記縁部以外の部分における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)を満たす(ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)。
式(1) : b(μm)>b(μm)
式(2) : 3μm≦b(μm)≦10μm
式(3) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
つまり、本開示の突合せ溶接用鋼板として適用されるアルミニウムめっき鋼板は、母材鋼板と、母材鋼板の両面に設けられたアルミニウムめっき層とを有する。また、母材鋼板とアルミニウムめっき層との間には、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層(IMC)が設けられている。
さらに、突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部に、前記母材鋼板の両面上に設けられた、前記金属間化合物層(IMC)を有している。この金属間化合物層(IMC)の厚みは、縁部以外の領域における金属間化合物層(IMC)の厚みよりも大きい(すなわち、上記式(1)を満足する。)。
また、突合せ溶接用鋼板の縁部以外の領域での金属間化合物層(IMC)の厚みが3μm〜10μmである(すなわち、上記式(2)を満足する。)。
そして、金属間化合物層(IMC)が形成されている縁部で、上記式(3)の関係を満足する。上記式(3)中、母材鋼板の板厚tはμmに換算した値である。金属間化合物層(IMC)上にアルミニウムめっき層が存在しない場合、aは0(ゼロ)μmとなる。
なお、突合せ溶接用鋼板の形状は特に限定されるものではない。
従来、アルミニウムめっきが施された鋼板を突合せ溶接用鋼板として適用し、この突合せ溶接用鋼板の縁部の端面どうしを突合せ溶接したテーラードブランクをホットスタンプして得られたホットスタンプ成形品が知られている(例えば、特許文献1〜5を参照)。例えば、金属間化合物層の厚みが厚すぎる鋼板を突合せ溶接用鋼板として用い、テーラードブランクを得た後、ホットスタンプ成形品を得た場合、溶接部以外の領域で、アルミニウムめっき層および金属間化合物層にクラック及び欠落が発生することがある。金属間化合物層は、硬くて脆い。そのため、母材鋼板に存在する厚すぎる金属間化合物層が、ホットスタンプ成形時の負荷に耐え切れず、その結果として、クラック及び欠落が発生すると考えられる。クラック及び欠落は、母材鋼板まで伝播してしまうと、母材鋼板の耐食性が低下する。したがって、溶接部以外の領域では、金属間化合物層の厚みが厚すぎないことが好ましい。
一方、金属間化合物層の厚みが薄すぎる場合、金属間化合物層と、アルミニウムめっき層との界面粗度が低下しやすくなる。この界面粗度が低下すると、突合せ溶接及びホットスタンプによる加熱で溶融したアルミニウムめっき層のアルミニウム成分が移動しやすくなる。溶融したアルミニウムめっき層のアルミニウム成分が移動すると、ホットスタンプでは、アルミニウムめっき層の垂れが生じてしまい、厚みの均一性が低下する。また、突合せ溶接では、溶接金属中にアルミニウムめっき層に起因するアルミニウムが多量に混入しやすくなる。そのため、金属間化合物層の厚みは薄すぎないことが好ましい。
突合せ溶接によって、アルミニウムが溶接金属中に多量に混入したテーラードブランクを用いて、ホットスタンプした場合、溶接金属で破断が起き、溶接強度が低下する場合があった。これは、アルミニウムの濃度が高くなった溶接金属では、フェライトの生成により焼き入れ性が低下し、ホットスタンプ後も十分な継手強度が得られないことに起因していると考えられる。
溶接金属の破断を回避する点で、特に、特許文献1及び特許文献2には、前述のように、溶接される溶接予定部のアルミニウムめっき層を取り除き、金属間化合物層を残存させた突合せ溶接用鋼板とし、この突合せ溶接用鋼板の溶接予定部を突合せ溶接したテーラードブランクが開示されている。そして、このテーラードブランクを用いたホットスタンプ成形品では、溶接強度の低下が抑制され得る。
特許文献1及び特許文献2に開示された突合せ溶接用鋼板は、母材鋼板にアルミニウムめっき(Al−Si金属のめっき)層が設けられており、母材鋼板とアルミニウムめっき層との間に金属間化合物層が形成されている。金属間化合物層は比較的脆弱であるので、金属間化合物層の成長を制限するために、抑制剤が溶融金属浴に添加される。そして、特許文献1に開示された突合せ溶接用鋼板は、例えば、アルミニウムめっき層が20μmと厚いのに対し、金属間化合物層は5μmと薄い。
また、特許文献1及び特許文献2に開示された突合せ溶接用鋼板では、テーラードブランクの製造の前に、突合せ溶接用鋼板の溶接予定部に対し、ブラシ、又はレーザアブレーションにより、アルミニウムめっき層を取り除き、厚みの薄い金属間化合物層を残存させる。その結果、金属間化合物層の厚みが薄いことに起因して、溶接部における塗装後の耐食性が劣位となる。また、金属間化合物層の厚みが薄いため、溶接金属に混入されるアルミニウム量が少ない。そのため、特許文献1及び特許文献2に開示された突合せ溶接用鋼板では、ホットスタンプする場合に、高温に加熱されることで、溶接金属の表面でスケール(鉄の化合物)が発生しやすい。その結果、ホットスタンプ成形品に塗装した場合に、塗料の付着性が低下し、溶接部における塗装後の耐食性が劣位となる。
これに対し、本開示の突合せ溶接用鋼板は、突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部に、母材鋼板の両面上に少なくとも金属間化合物層(IMC)が形成されている。そして、金属間化合物層(IMC)の厚みが、縁部以外の領域に形成されている金属間化合物層(IMC)の厚みよりも厚い。そのため、本開示の突合せ溶接用鋼板は、縁部の少なくとも一部に形成されている金属間化合物層(IMC)の厚みに起因して、ホットスタンプ成形品に塗装した後であっても、溶接部の耐食性に優れていると考えられる。
また、本開示の突合せ溶接用鋼板は、鋼板の縁部の少なくとも一部に形成された厚みの大きい金属間化合物層(IMC)を有するため、突合せ溶接した後の溶接金属中に、アルミニウムが適度に混入される。このため、溶接金属の表面でスケールの発生が抑制されることで、化成処理性が向上し、塗料の付着性が向上する。その結果として、本開示の突合せ溶接用鋼板は、ホットスタンプ成形品に塗装した後であっても、溶接部の塗装後耐食性に優れていると考えられる。
本開示の突合せ溶接用鋼板は、鋼板の縁部の溶接予定部に形成された厚みの厚い金属間化合物層(IMC)上に、アルミニウムめっき層が存在しないか、または厚みが低減されたアルミニウムめっき層が存在している。そのため、本開示の突合せ溶接用鋼板は、金属間化合物層(IMC)を有する縁部の端面どうしを突合せて溶接した場合に、溶接金属中に、アルミニウムめっき層に起因する多量のアルミニウムの混入が抑制される。
さらに、金属間化合物層(IMC)の厚みが、金属間化合物層(IMC)の厚みよりも大きいため、縁部以外の領域に形成されているアルミニウムめっき層は、突合せ溶接時に溶融して移動することが抑制される。このため、溶接金属に対して混入するアルミニウムの量が抑制される。つまり、アルミニウムめっき層に起因するアルミニウムが適度な量で溶接金属に混入する。それによって、溶接金属では焼き入れ性の低下が抑制されるため、継手の機械的強度が確保され得る。また、縁部以外の領域では、金属間化合物層(IMC)の厚みが薄いために、ホットスタンプ成形時のアルミニウムめっき層及び金属間化合物層(IMC)のクラックおよび欠落が抑制されている。その結果として、ホットスタンプ成形品の縁部以外の領域における耐食性低下が抑制される。
そして、本開示の突合せ溶接用鋼板は、前述の式(3)の数値範囲が0.8%〜3.5%である。式(3)の数値がこの範囲であることで、溶接金属中にアルミニウムが適度に混入される。このため、ホットスタンプ成形品の機械的強度低下が抑制されるとともに、塗装後の耐食性低下が抑制される。
[母材鋼板]
母材鋼板は、アルミニウムめっきを施す前の鋼板である。母材鋼板は、通常の方法により得られたものであればよく、特に限定されるものではない。母材鋼板は熱延鋼板または冷延鋼板のいずれでもよい。また、母材鋼板の厚みは目的に応じた厚みとすればよく、特に限定されるものではない。例えば、母材鋼板の板厚は、アルミニウムめっき層を設けた後の鋼板全体の板厚として、0.8mm〜4mmとなるような板厚が挙げられ、さらに、1mm〜3mmとなるような板厚が挙げられる。
母材鋼板の一例としては、例えば、高い機械的強度(例えば、引張強さ、降伏点、伸び、絞り、硬さ、衝撃値、疲れ強さなどの機械的な変形及び破壊に関する諸性質を意味する。)を有するように形成された鋼板を使用することがよい。
母材鋼板の好ましい化学組成の一例としては、例えば、以下の化学組成が挙げられる。
質量%で、C:0.02%〜0.58%、Mn:0.20%〜3.00%、Al:0.005%〜0.20%、Ti:0%〜0.20%、Nb:0%〜0.20%、V:0%〜1.0%、W:0%〜1.0%、Cr:0%〜1.0%、Mo:0%〜1.0%、Cu:0%〜1.0%、Ni:0%〜1.0%、B:0%〜0.0100%、Mg:0%〜0.05%、Ca:0%〜0.05%、REM:0%〜0.05%、Bi:0%〜0.05%、Si:0%〜2.00%、P:0.03%以下、S:0.010%以下、N:0.010%以下、並びに残部:Feおよび不純物からなる化学組成を有する。
なお、以下、成分(元素)の含有量を示す「%」は、「質量%」を意味する。
(C:0.02%〜0.58%)
Cは、母材鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を主に決定する重要な元素である。さらにA点を下げ、焼入れ処理温度の低温化を促進する元素である。C量が0.02%未満では、その効果は十分ではない場合がある。したがって、C量は0.02%以上とすることがよい。一方、C量が0.58%を超えると、焼入れ部の靭性劣化が著しくなる。したがって、C量は0.58%以下とすることがよい。好ましくは0.45%以下である。
(Mn:0.20%〜3.00%)
Mnは、母材鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を安定して確保するために、非常に効果のある元素である。Mn量が0.20%未満では、その効果は十分ではない場合がある。したがって、Mn量は0.20%以上とすることがよい。好ましくは0.80%以上である。一方、Mn量が3.00%を超えると、その効果は飽和するばかりか、却って焼入れ後における安定した強度の確保が困難となる場合がある。したがって、Mn量は3.00%以下とすることがよい。好ましくは2.40%以下である。
(Al:0.005%〜0.20%)
Alは、脱酸元素として機能する。また、Alは、母材鋼板の機械的強度に悪影響を及ぼす酸化物系介在物を低減する作用を有する。Al量が0.005%未満では、上記作用による効果を得ることが困難である場合がある。したがって、Al量は0.005%以上とすることがよい。一方、Al量が0.20%超では、上記作用による効果は飽和して、コスト的に不利になる。したがって、Al量は0.20%以下とすることがよい。
(Ti:0%〜0.20%、Nb:0%〜0.20%、V:0%〜1.0%、W:0%〜1.0%)
Ti、Nb、V、およびWは、アルミニウムめっき層および母材鋼板における、FeおよびAlの相互拡散を促進する元素である。したがって、Ti、Nb、V、およびWのうちの少なくとも1種を母材鋼板に含有させてもよい。しかし、1)Ti量およびNb量が0.20%を超える、又は、2)V量およびW量が1.0%を超えると、上記作用による効果は飽和し、コスト的に不利となる。したがって、Ti量およびNb量は0.20%以下とすることがよく、V量およびW量は1.0%以下とすることがよい。Ti量およびNb量は0.15%以下が好ましく、V量およびW量は0.5%以下が好ましい。上記作用による効果をより確実に得るためには、Ti量およびNb量の下限値を0.01%以上、V量およびW量の下限値を0.1%以上とすることが好ましい。
(Cr:0%〜1.0%、Mo:0%〜1.0%、Cu:0%〜1.0%、Ni:0%〜1.0%、B:0%〜0.0100%)
Cr、Mo、Cu、Ni、およびBは、母材鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を安定して確保するために、効果のある元素である。したがって、これらの元素のうちの1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、Cr、Mo、Cu、およびNiの含有量については1.0%超、B量については0.0100%超としても、上記効果は飽和して、コスト的に不利となる。したがって、Cr、Mo、Cu、およびNiの含有量は1.0%以下とすることがよい。また、B量は0.0100%以下とすることがよく、0.0080%以下とすることが好ましい。上記効果をより確実に得るためには、Cr、Mo、Cu、およびNiの含有量が0.1%以上、並びにBの含有量が0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
(Ca:0%〜0.05%、Mg:0%〜0.05%、REM:0%〜0.05%)
Ca、Mg、およびREMは、鋼中の介在物の形態を微細化し、介在物による熱間プレス成形時の割れの発生を防止する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、過剰に添加すると、鋼中の介在物の形態を微細化する効果は飽和し、コスト増を招くだけとなる。したがって、Ca量は0.05%以下、Mg量は0.05%以下、REM量は0.05%以下とすることがよい。上記作用による効果をより確実に得るためには、Ca量を0.0005%以上、Mg量を0.0005%以上、およびREM量を0.0005%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、上記REMの含有量は、これらの元素の合計含有量を指す。ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。
(Bi:0%〜0.05%)
Biは、溶鋼の凝固過程において凝固核となり、デンドライトの2次アーム間隔を小さくすることにより、デンドライト2次アーム間隔内への偏析(例えば、Mn)を抑制する作用を有する元素である。したがって、Biを含有させてもよい。特に熱間プレス用鋼板のように多量のMnを含有させることがよく行われる鋼板については、Biは、Mnの偏析に起因する靭性の劣化を抑制する効果がある。したがって、そのような鋼種には、Biを含有させることが好ましい。しかし、0.05%を超えてBiを含有させても、上記作用による効果は飽和してしまい、コストの増加を招く。したがって、Bi量は0.05%以下とする。好ましくは0.02%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るためには、Bi量を0.0002%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0005%以上である。
(Si:0%〜2.00%)
Siは、固溶強化元素であり、2.00%までは有効に活用できる。しかし、Siは2.00%を超えて含有させると、めっき性に不具合が生じることが懸念される。したがって、Siを含有する場合、Si量は2.00%以下とすることがよい。好ましい上限は1.40%以下、さらに好ましくは1.00%以下である。下限は特に限定されず、上記作用による効果をより確実に得るためには、0.01%以上が好ましい。
(P:0%〜0.03%)
Pは、不純物として含有される元素である。Pは過剰に含有すると、母材鋼板の靱性が低下しやすくなる。したがって、P量は0.03%以下とすることがよい。好ましくは0.01%以下である。P量の下限は特に規定する必要はない。P量は0%でもよく、0%超でもよい。コストの観点からは0.0002%以上とすることが好ましい。
(S:0%〜0.010%)
Sは、不純物として含有される元素であり、MnSを形成し、母材鋼板を脆化させる作用を有する。したがって、S量は0.010%以下とすることがよい。より望ましいS量は0.004%以下である。S量の下限は特に規定する必要はない。S量は0%でもよく、0%超でもよい。コストの観点からは0.0002%以上とすることが好ましい。
(N:0%〜0.010%)
Nは、不純物として含有され、鋼中にて介在物を形成し、熱間プレス成形後の靱性を劣化させる元素である。したがって、N量は0.010%以下とすることがよい。好ましくは0.008%以下、さらに好ましくは0.005%以下である。N量の下限は特に規定する必要はない。N量は0%でもよく、0%超でもよい。コストの観点からは0.0002%以上とすることが好ましい。
(残部)
残部は、Feおよび不純物である。ここで、不純物とは、鉱石、スクラップ等の原材料に含まれる成分、または、製造の過程で混入する成分が例示され、意図的に母材鋼板に含有させたものではない成分を指す。
[アルミニウムめっき層]
アルミニウムめっき層は、母材鋼板の両面に形成される。アルミニウムめっき層を形成する方法は、特に限定されるものではない。例えば、アルミニウムめっき層は、溶融めっき法によって母材鋼板の両面に形成してもよい。溶融めっき法は、アルミニウムを主体として含む溶融金属浴中に母材鋼板を浸漬させ、母材鋼板の両面にアルミニウムめっきを施す方法である。
ここで、アルミニウムめっき層とは、アルミニウムを主体として含むめっき層であり、アルミニウムを50質量%以上含有していればよい。目的に応じて、アルミニウム以外の元素(例えば、Siなど)を含んでいてもよく、製造の過程などで混入してしまう不純物を含んでいてもよい。アルミニウムめっき層は、具体的には、例えば、質量%で、Si(シリコン)を5%〜12%含み、残部はアルミニウムおよび不純物からなる化学組成を有していてもよい。また、質量%で、Si(シリコン)を5%〜12%、Fe(鉄)を2%〜4%を含み、残部はアルミニウムおよび不純物からなる化学組成を有していてもよい。
上記範囲でSiを含有させると、加工性及び耐食性の低下が抑制され得る。また、金属間化合物層の厚みを低減し得る。
突合せ溶接用鋼板の縁部以外の領域に設けられたアルミニウムめっき層の厚みは、特に限定されず、例えば、厚みで8μm〜50μmの範囲であることがよく、8μm〜35μmの範囲であることが好ましく、15μm〜30μmの範囲であることがより好ましい。なお、アルミニウムめっき層の厚みは、突合せ溶接用鋼板の縁部以外の領域における厚みの平均値を表す。
アルミニウムめっき層は、突合せ溶接用鋼板の腐食を防止する。また、アルミニウムめっき層は、テーラードブランクを熱間プレス成形により加工する場合に、高温に加熱されても、表面が酸化することによるスケール(鉄の化合物)の発生を抑制する。また、アルミニウムめっき層は、有機系材料によるめっき被覆、又は他の金属系材料(例えば、亜鉛系材料)によるめっき被覆よりも沸点及び融点が高い。従って、熱間プレス成形により成形する際に、被覆が蒸発することがないため、表面の保護効果が高い。
溶融めっき時及び熱間プレス成形時における加熱により、アルミニウムめっき層は、母材鋼板中の鉄(Fe)と合金化し得る。よって、アルミニウムめっき層は、必ずしも成分組成が一定な単一の層で形成されるとは限らず、部分的に合金化した層(合金層)を含むものとなる。
[金属間化合物層]
金属間化合物層は、母材鋼板上にアルミニウムめっきを設ける際に、母材鋼板とアルミニウムめっき層との間の境界部に形成される層である。具体的には、金属間化合物層は、アルミニウムを主体として含む溶融金属浴中での母材鋼板の鉄(Fe)とアルミニウム(Al)を含む金属との反応によって形成される。金属間化合物層は、主にFeAl(x、yは1以上を表す)で表される化合物の複数種で形成されている。アルミニウムめっき層がSi(シリコン)を含む場合は、FeAlおよびFeAlSi(x、y、zは1以上を表す)で表される化合物の複数種で形成されている。
ここで、本開示において、縁部の少なくとも一部に形成される金属間化合物層(IMC)と、金属間化合物層(IMC)とに共通する内容については、単に金属間化合物層と称する。
突合せ溶接用鋼板の縁部以外の領域に形成される金属間化合物層(IMC)の厚みは、3μm〜10μmの範囲である(つまり、前述の式(2)を満足する。)。金属間化合物層(IMC)の厚みは、4μm〜8μmの範囲であることが好ましい。
金属間化合物層(IMC)の厚みが、10μm以下であると、アルミニウムめっき層および金属間化合物層のクラックの発生が抑制されるとともに、アルミニウムめっき層の欠落の発生も抑制される。これにより、縁部以外の領域における母材鋼板の耐食性の低下が抑制される。また、溶接予定部の縁部をレーザガウジング処理した場合、金属間化合物層(IMC)の厚みを効率的に向上させる。
一方、金属間化合物層(IMC)の厚みが、3μm以上であると、アルミニウムめっき層の移動が生じ難くなる。それにより、突合せ溶接において、溶接金属へのアルミニウムめっき層に起因するアルミニウムの多量の混入が抑制されるため、溶接金属の強度の低下が抑制される。また、ホットスタンプにおいて、アルミニウムめっき層の垂れが抑制されることで、アルミニウムめっき層の厚みの均一性が確保される。
[突合せ溶接用鋼板の縁部]
本開示の突合せ溶接用鋼板は、縁部の少なくとも一部において、母材鋼板の両面上に少なくとも金属間化合物層(IMC)が形成されている。縁部に形成された金属間化合物層(IMC)上には、アルミニウムめっき層が除去されていてもよく、厚みが低減されているアルミニウムめっき層が残存していてもよい。
また、金属間化合物層(IMC)の厚みは、縁部以外の領域における金属間化合物層(IMC)の厚みよりも大きい。金属間化合物層(IMC)は、溶接予定部の縁部に形成される。
縁部の少なくとも一部に設けられる金属間化合物層(IMC)は、突合せ溶接用鋼板が備える縁部のうち、溶接予定部の縁部に設けられていれば、特に限定されない。例えば
、金属間化合物層(IMC)は、溶接予定部の縁部において、下記に挙げる態様で設けられていてもよい。
1)対向する端面から端面までの長さに対して、突合せ溶接用鋼板の端面から5%以内の範囲の全領域であって、突合せ溶接用鋼板の端縁に沿って設けられる態様。
2)対向する端面から端面までの長さに対して、突合せ溶接用鋼板の端面から5%以内の範囲内の一部分の領域であって、突合せ溶接用鋼板の端縁に沿って設けられている態様。
3)上記1)または2)の態様において、突合せ溶接用鋼板の端縁の全長に沿って設けられる態様。
4)上記1)または2)の態様において、突合せ溶接用鋼板の端縁の全長のうち、突合せ溶接を行う部分に対応する長さのみに沿って設けられる態様。
5)対向する端面から端面までの長さに対して、突合せ溶接用鋼板の端面から5%以内の範囲のうち、突合せ溶接用鋼板の端縁を除く領域に設けられる態様。
溶接を予定していない縁部では、金属間化合物層(IMC)が形成されておらず、金属間化合物層(IMC)のままであってもよい。この場合、溶接を予定していない縁部では、縁部以外の領域と同様の構造となる。また、溶接を予定していない縁部にも、必要に応じて、金属間化合物層(IMC)が形成されていてもよい。溶接予定部の縁部は、テーラードブランクを形成するための突合せ溶接を行う縁部を表す。溶接を予定していない縁部は、テーラードブランクを形成するための突合せ溶接をする予定のない縁部を表す。
本開示の突合せ溶接用鋼板は、金属間化合物層(IMC)の厚みが金属間化合物層(IMC)の厚みよりも大きい(つまり、前述の式(1)を満足する。)。そのため、前述の理由により、溶接部の塗装後耐食性に優れたものとなる。また、溶接金属の強度低下が抑制される。これらの観点で、金属間化合物層(IMC)の厚みは、5μm〜30μmの範囲であることがよく、8μm〜25μmの範囲であることが好ましく、8μm〜18μmの範囲であることがより好ましい。金属間化合物層(IMC)の厚みが5μm以上であると、溶接部の塗装後耐食性がより優れたものとなる。一方、金属間化合物層(IMC)の厚みが30μm以下であると、溶接金属の強度低下が抑制されやすくなる。
なお、金属間化合物層(IMC)の厚みから金属間化合物層(IMC)の厚みが徐々に増加している部分は、金属間化合物層(IMC)の厚みの測定から除外される。つまり、金属間化合物層(IMC)の厚みは、金属間化合物層(IMC)の厚みからの増加が飽和している部分の厚みを表す。
金属間化合物層(IMC)の厚みは、金属間化合物層(IMC)の厚みに対する厚み比(IMCの厚み/IMCの厚み)として、厚み比が1を超える。この厚み比は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。厚み比の上限は特に限定されず、例えば7以下が挙げられ、5以下が挙げられる。
ここで、突合せ溶接用鋼板の縁部について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本開示の突合せ溶接用鋼板における溶接予定部の縁部周辺の一例を表す拡大概略断面図である。図2は、本開示の突合せ溶接用鋼板における溶接予定部の縁部周辺の他の一例を表す拡大概略断面図である。図1に示すように、突合せ溶接用鋼板110は、溶接予定部の縁部22と縁部以外の領域26とを有する。縁部以外の領域26では、母材鋼板12上に、金属間化合物層(IMC)16Aが設けられており、金属間化合物層(IMC)16A上に、アルミニウムめっき層14Aが設けられている。一方、溶接予定部の縁部22では、母材鋼板12上に、金属間化合物層(IMC)16Bが設けられており、金属間化合物層(IMC)16B上に、アルミニウムめっき層14Bが設けられている。アルミニウムめっき層14Bは、縁部以外の領域26に設けられているアルミニウムめっき層14Aよりも厚みが減じられている。また、図2に示す突合せ溶接用鋼板120において、縁部以外の領域26は、図1に示す突合せ溶接用鋼板110における縁部以外の領域26と同様である。一方、溶接予定部の縁部22では、母材鋼板12上に、金属間化合物層(IMC)16Bが設けられており、アルミニウムめっき層14Aが除去されている。
次に、図4及び図5を参照して、突合せ溶接用鋼板の縁部について説明する。図4は、未処理の縁部の一例を表す拡大断面写真である。図5は、本開示の突合せ溶接用鋼板における溶接予定部の縁部の一例を表す拡大断面写真である。図4に示す未処理の縁部は、母材鋼板12上に、金属間化合物層(IMC)16Cが設けられ、金属間化合物層(IMC)16C上に、アルミニウムめっき層14Cが設けられている。図4に示す縁部は、未処理であるので、金属間化合物層(IMC)16Cの厚みは、縁部以外の領域における金属間化合物層の厚みと同程度である。これに対し、図5に示す縁部では、母材鋼板12上に、金属間化合物層(IMC)16Bが形成されている。したがって、本開示の突合せ溶接用鋼板における縁部では、図4に示す未処理の縁部と比較すると、図5に示すように、縁部における金属間化合物層(IMC)16Bの厚みが厚いことがわかる。すなわち、図4及び図5に示す拡大断面写真から、本開示の突合せ溶接用鋼板は、溶接予定部の縁部における金属間化合物層(IMC)の厚みは、縁部以外の領域における金属間化合物層(IMC)の厚みよりも増加していることがわかる。
本開示の突合せ溶接用鋼板は、縁部の少なくとも一部において、母材鋼板の両面上に、前述の金属間化合物層(IMC)の厚みよりも厚みの大きい金属間化合物層(IMC)が形成されている。金属間化合物層(IMC)が形成されている縁部では、金属間化合物層(IMC)のみ有していてもよい。また、溶接金属の機械的強度が低下しない範囲で、金属間化合物層(IMC)上に厚みが減少したアルミニウムめっき層を有していてもよい。特に、下記式(3)を満たす範囲であれば、金属間化合物層(IMC)に加えて、アルミニウムめっき層の存在は許容される。
本開示の突合せ溶接用鋼板は、金属間化合物層(IMC)が形成された縁部でのアルミニウムめっき層の片面あたりの厚みをa(μm)、金属間化合物層(IMC)の片面あたりの厚みをb(μm)、母材鋼板の板厚をt(μm)としたとき、下記式(3)の関係を満足する。なお、板厚は、縁部以外の領域で測定した母材鋼板の厚みを表す。式(3)の板厚は、μmに換算して代入する。
式(3):0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
ここで、再び図1及び図2を参照して、a及びbについて説明する。図1に示すように、金属間化合物層(IMC)16B上に、アルミニウムめっき層14Bを有している場合、aは、アルミニウムめっき層14Bの厚み(μm)を示す。bは、金属間化合物層(IMC)16Bの厚み(μm)を示す。また、図2に示すように、金属間化合物層(IMC)16B上のアルミニウムめっき層が除去されている場合(つまり、アルミニウムめっき層14Bを有さない場合)は、aは、0(μm)を示し、bは、金属間化合物層(IMC)16Bの厚み(μm)を示す。
なお、bは、前述の金属間化合物層(IMC)の厚みと同義である。aは、縁部以外の領域におけるアルミニウムめっき層の厚みが徐々に減少している部分を除いた部分の厚みを表す。つまり、aは、アルミニウムめっき層の厚みの減少が飽和した部分の厚みを表す。アルミニウムめっき層が存在しなくなるまで減少した場合、aは0(ゼロ)(μm)となる。ただし、アルミニウムめっき層が存在しなくなるまで減少し、再びアルミニウムめっき層が存在する場合(例えば、アルミニウムめっき層が縁部以外の領域から離れて存在する場合など、)は、再び存在しているアルミニウムめっき層の厚みをaとする。
上記式(3)で表される値が3.5%を超えると、溶接金属(溶接後の溶融凝固領域)中の平均アルミニウム濃度が増加するため、焼入れされない軟質な部位が発生して、ホットスタンプ成形品の機械的強度が低下しやすい。一方、上記式(3)で表される値が0.8%を下回ると、溶接部における塗装後の耐食性が低下しやすい。上記式(3)で表される値は1.0%〜3.5%の範囲が好ましく、1.6%〜3.3%の範囲がより好ましく、2.0%〜3.0%の範囲がさらに好ましい。
なお、「片面あたり」とは、片面での厚みの測定値を表す。具体的には、縁部に形成された金属間化合物層(IMC)、および金属間化合物層(IMC)上に存在するアルミニウムめっき層が片面で、式(3)を満足していればよい。両面とも式(3)を満足していることが好ましい。また、金属間化合物層(IMC)上に、アルミニウムめっき層が存在しない場合は、式(3)のaに0(ゼロ)を代入する。
なお、アルミニウムめっき層の片面あたりの厚みa(μm)、及び金属間化合物層(IMC)の片面あたりの厚みb(μm)の測定は、後述のアルミニウムめっき層および金属間化合物層(IMC)と同様の手順にて行えばよい。
前述のように、突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部に形成される金属間化合物層(IMC)は、突合せ溶接用鋼板の溶接予定部の縁部に形成される。溶接予定部の縁部に形成される金属間化合物層(IMC)の幅は、平均で0.2mm〜5.0mmであることがよい。レーザ溶接に用いる場合、好ましくは0.6mm〜1.5mmである。プラズマ溶接に用いる場合、好ましくは、1.0mm〜4.0mmである。
なお、突合せ溶接用鋼板の縁部に形成された金属間化合物層(IMC)の幅は、金属間化合物層(IMC)の幅を5箇所の位置で測定した値の平均値である。具体的な測定方法は、以下のとおりである。
まず、突合せ溶接用鋼板の縁部に形成された金属間化合物層(IMC)の全幅が観察可能な断面を含む測定用試料を5箇所採取する。すなわち、測定用試料は、突合せ溶接用鋼板の端縁に沿う方向に形成された金属間化合物層(IMC)の長さL(図1に示すX方向(溶接予定部が延びる方向)の金属間化合物層(IMC)の長さL)を5等分した5箇所のおける中央位置付近から採取する。ここで、図3を参照して説明すると、図3に示すように、X方向に形成された金属間化合物層(IMC)の長さLを5等分する。そして、長さLを5等分した5箇所のそれぞれの部分において、矢印F1の方向に沿って、中央位置C付近を通る位置から測定用試料を採取する。
次に、突合せ溶接用鋼板の断面が露出するように切断を行い、樹脂に埋め込み、研磨を行い、断面を光学顕微鏡で拡大する。そして、突合せ溶接用鋼板の端縁から、金属間化合物層(IMC)の厚みからの増加が飽和している部分までの距離を算出する。採取した各測定用試料について、同様の測定を行い、5箇所で測定した平均値を金属間化合物層(IMC)の幅とする。ここで、図1を参照すると、図1に示すWが、縁部に形成された金属間化合物層(IMC)の幅である。
突合せ溶接用鋼板の縁部に形成された金属間化合物層(IMC)上に、厚みが減じられているアルミニウムめっき層が存在する場合、このアルミニウムめっき層は、金属間化合物層(IMC)上の全域に残存していてもよい。ただし、アルミニウムめっき層は、静的引張強度の低下要因になるので、残存は少ない方が好ましい。この点で、金属間化合物層(IMC)上のアルミニウムめっき層は、突合せ溶接用鋼板の端縁から金属間化合物層(IMC)の厚みからの増加が飽和している部分までの距離に対して、50%未満の割合で残存することがよい。アルミニウムめっき層が残存する割合は、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下である。
ここで、母材鋼板、金属間化合物層、およびアルミニウムめっき層の確認、並びに、金属間化合物層、およびアルミニウムめっき層の厚みの測定については、以下のような方法によって行う。
まず、端縁に直交する方向(つまり、図1に示すY方向)で、突合せ溶接用鋼板の断面が露出するように切断を行い、樹脂に埋め込む。埋め込んだ突合せ溶接用鋼板の断面を研磨する。研磨した突合せ溶接用鋼板の断面を、電子線マイクロアナライザ(FE−EPMA)により、突き合せ溶接用鋼板の表面から母材鋼板までを線分析し、アルミニウム濃度および鉄濃度を測定する。アルミニウム濃度および鉄濃度は、3回測定した平均値であることが好ましい。
測定条件は、加速電圧15kV、ビーム径100nm程度、1点当たりの照射時間1000ms、測定ピッチ60nmである。また、測定距離は、めっき層の厚みが測定できるようにすればよく、例えば、板厚方向に30μm〜80μmである。母材鋼板の板厚は、光学顕微鏡で測定することが好ましい。
(母材鋼板、金属間化合物層、およびアルミニウムめっき層の範囲の規定)
突合せ溶接用鋼板の断面のアルミニウム濃度の測定値として、アルミニウム(Al)濃度が2質量%未満である領域を母材鋼板と判断し、アルミニウム濃度が2質量%以上である領域を金属間化合物層またはアルミニウムめっき層と判断する。また、金属間化合物層およびアルミニウムめっき層のうち、鉄(Fe)濃度が4質量%超である領域を金属間化合物層、鉄濃度が4質量%以下である領域をアルミニウムめっき層と判断する。
なお、金属間化合物層の厚みは、母材鋼板と金属間化合物層との境界から、金属間化合物層とアルミニウムめっき層との境界までの距離とする。また、アルミニウムめっき層の厚みは、金属間化合物層とアルミニウムめっき層との境界から、アルミニウムめっき層が形成された鋼板表面までの距離とする。
アルミニウムめっき層の厚み、及び金属間化合物層の厚みは、突合せ溶接用鋼板の表面から、母材鋼板の表面(母材鋼板および金属間化合物層の境界)までを線分析し、具体的には、次のようにして測定する。
−縁部以外の領域−
縁部以外の領域におけるアルミニウムめっき層の厚み及び金属間化合物層(IMC)の厚みは、前述の判断基準にしたがって、突合せ溶接用鋼板の溶接予定部の端面から垂直方向に向かう方向(つまり、図1に示すY方向)に5等分した5箇所の中央位置付近で測定した平均値である。これらの厚みは、具体的には、以下のようにして求めた値である。
アルミニウムめっき層の厚みは、上記のように5等分した5箇所の中央位置付近で、アルミニウムめっき層を有する鋼板表面から金属間化合物層までの厚みを求める。そして、求めた値の平均値をアルミニウムめっき層の厚みとする。ただし、アルミニウムめっき層の厚みの測定は、縁部以外の領域と縁部との境界付近における厚みが徐々に減少している部分の断面は除く。
金属間化合物層(IMC)の厚みは、上記のように5等分した5箇所の中央位置付近で、金属間化合物層とアルミニウムめっき層との境界から金属間化合物層と母材鋼板との境界までの厚みを求める。そして、求めた値の平均値を金属間化合物層の厚みとする。ただし、金属間化合物層(IMC)の厚みの測定は、縁部以外の領域と縁部との境界付近における厚みが徐々に増加している部分の断面は除く。
−縁部−
アルミニウムめっき層が存在する場合、アルミニウムめっき層の厚みは、前述の判断基準にしたがって、アルミニウムめっき層が存在する鋼板表面から金属間化合物層までの厚みを測定する。ただし、厚みの測定は、厚みの減少が飽和した位置から突合せ溶接用鋼板の端縁までの全幅に対して、突合せ溶接用鋼板の端縁から10%以内の範囲、及び厚みの減少が飽和した位置から突合せ溶接用鋼板の端縁側に向かって10%以内の範囲を除いた領域を3等分し、3等分した中央位置で行う。そして、測定した3箇所の平均値とする。
金属間化合物層(IMC)の厚みは、前述の判断基準にしたがって、アルミニウムめっき層を有する鋼板表面から金属間化合物層までの厚みを測定する。ただし、厚みの測定は、厚みの増加が飽和した位置から突合せ溶接用鋼板の端縁までの全幅に対して、突合せ溶接用鋼板の端縁から10%以内の範囲、及び厚みの増加が飽和した位置から突合せ溶接用鋼板の端縁側に向かって10%以内の範囲を除いた領域を3等分し、3等分した中央位置で行う。そして、測定した3箇所の平均値とする。
ここで、図1を参照すると、溶接予定部の縁部22において、アルミニウムめっき層14Bの厚み(すなわちa)及び金属間化合物層(IMC)の厚み(すなわちb)は、Yの範囲で測定した値の平均値であり、X及びXの範囲は測定から除いている。
突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部に、金属間化合物層(IMC)を形成する好ましい方法の一例としては、例えば、次の方法が挙げられる。
突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部に、母材鋼板の両面上に形成されたアルミニウムめっき層の表面に対し、レーザガウジング法による処理を施す工程を有する(形成法Aとする)。
形成法Aは、以下のようにして、金属間化合物層(IMC)を形成する方法である。まず、テーラードブランクを形成する前の鋼板として、所望の大きさに切断した突合せ溶接用鋼板を準備する。次に、突合せ溶接用鋼板の縁部の一部に、突合せ溶接用鋼板の端縁に沿って、母材鋼板の両面上に形成されたアルミニウムめっき層の表面に対して、レーザガウジング法による処理を施す。それによって、金属間化合物層(IMC)を形成する方法である。
レーザガウジング法は、突合せ溶接用鋼板のアルミニウムめっき層の表面に、レーザビームを照射して突合せ溶接用鋼板を溶融し、アシストガス(空気、不活性ガス等)の動圧により、その溶融生成物を飛散させて鋼板表面をガウジングする加工方法である。具体的には、ラインビームを走査しながら、アシストガスを噴射する。レーザによりアルミニウムめっき層を加熱して突合せ溶接用鋼板を溶融し、溶融生成物をアシストガスで飛散する。
アシストガスは溶融生成物を効率よく飛散すればよく、アシストガスを噴射するための噴射ノズル形状および噴射方向(上方、下方、前方、後方、横方、斜方等)、並びに、アシストガスを噴射する位置は、特に限定されるものではない。噴射ノズル形状は目的に応じて適宜選択すればよい。また、アシストガスの噴射方向および噴射位置は、目的に応じて適宜調整してよい。好ましい噴射方法の一例としては、目標とするガウジング幅よりも広いフラットノズルを用い、レーザビームの進行方向の後方から、レーザビームの照射位置に向けて噴射することが挙げられる。
飛散せずに残存したアルミニウムめっき層の少なくとも一部は、レーザの熱によって金属間化合物層として成長する。その結果、突合せ溶接用鋼板の縁部にレーザガウジング法による処理を施した部分では、金属間化合物層(IMC)よりも厚みが増加して金属間化合物層(IMC)が形成される。なお、レーザガウジング法による処理を施した縁部の一部には、アルミニウムめっき層が残存していてもよい。
なお、金属間化合物層(IMC)を形成するためのレーザガウジング法による好ましい条件の一例としては、以下の条件が挙げられる。
例えば、アシストガスは、3.0kgf/cm〜7.0kgf/cmの範囲で噴射することが好ましい。また、半導体レーザの場合、レーザ出力は、0.5kW〜4.0kWの範囲であることが好ましく、レーザ走査速度は、3.0m/min〜7.0m/minの範囲であることが好ましい。このような条件で、溶接予定部の縁部に対してレーザガウジング処理すると、金属間化合物層の厚みが成長し、突合せ溶接用鋼板の縁部に金属間化合物層(IMC)が形成される。
突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部に、金属間化合物層(IMC)が形成されていれば、突合せ溶接用鋼板の縁部にレーザガウジング法による処理を施す順序は、上記の形成法Aに限定されるものではない。
突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部に、金属間化合物層(IMC)を形成する他の好ましい方法の一例としては、例えば、次の方法が挙げられる。
突合せ溶接用鋼板の縁部以外の領域の少なくとも一部に、母材鋼板の両面上に形成されたアルミニウムめっき層の表面に対し、レーザガウジング法による処理を施す工程と、レーザガウジング法による処理を施した部分が突合せ溶接用鋼板の縁部に位置するように鋼板を切断する工程とを有していてもよい(形成法Bとする)。
形成法Bは、例えば、具体的には、次のような方法である。まず、アルミニウムめっき鋼板に打ち抜き加工を施し、所望の大きさに切断したアルミニウムめっき鋼板を準備する。切断されたアルミニウムめっき鋼板において、縁部以外の領域の少なくとも一部に、母材鋼板上に形成されたアルミニウムめっき層の表面に対し、レーザガウジング法による処理を施す。レーザガウジング法による処理は、アルミニウムめっき鋼板の縁部以外の領域に、例えば一方向に延びるように行う。これにより、レーザガウジング法による処理を施した部分には、例えば一方向に伸びた状態で、金属間化合物層(IMC)が形成される。そして、この金属間化合物層(IMC)が形成された部分が、突合せ溶接用鋼板の縁部に位置するように、アルミニウムめっき鋼板の金属間化合物層(IMC)が形成された部分で切断して、テーラードブランクを形成する前の鋼板とする。
この場合(形成法Bの場合)、レーザガウジング法による処理を施して、アルミニウムめっき鋼板における金属間化合物層(IMC)が形成された部分の幅が、0.4mm〜10mmであることがよい。この金属間化合物層(IMC)が形成された部分は、目的の幅となるように、金属間化合物層(IMC)が形成された部分の中央線付近の位置で切断してもよく、この部分における中央線付近以外の位置で切断して、突合せ溶接用鋼板を得てもよい。
なお、上記の形成法Aで形成した金属間化合物層(IMC)が形成された部分の幅は、突合せ溶接用鋼板を突合せ溶接した後の溶融凝固領域(溶接金属)の幅の半分より20%から40%大きいことがよい。
また、上記の形成法Bのように形成した突合せ溶接用鋼板のアルミニウムめっき鋼板における切断前での金属間化合物層(IMC)が形成された部分の幅は、突合せ溶接用鋼板を突合せ溶接した後の溶融凝固領域(溶接金属)の幅の20%から40%大きいことがよい。
これらの範囲であると、突合せ溶接用鋼板を突合せ溶接した後の溶接金属に、アルミニウムが多量に混入することが抑制されるため、ホットスタンプ後のホットスタンプ成形品における引張強度の低下が抑制され得る。
<テーラードブランク>
次に、テーラードブランクについて説明する。
本開示のテーラードブランクは、溶接金属と、溶接金属に接続する少なくとも2枚の鋼板とを備える。
そして、少なくとも2つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有する。少なくとも2枚の鋼板のうち、少なくとも1枚の鋼板部は、溶接金属と接続する縁部では、前記母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられている。縁部以外の部分では、母材鋼板部の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられている。
また、溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、前記溶接金属と接続する縁部以外の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
前記縁部以外の部分における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)を満たす。
式(1) : b(μm)>b(μm)
式(2) : 3μm≦b(μm)≦10μm
式(3) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
(ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
本開示のテーラードブランクは、溶接金属から鋼板部の方向に向かって、溶接金属、溶接金属に接続する縁部、縁部以外の部分がこの順で配置されている。つまり、本開示のテーラードブランクは、本開示の突合せ溶接用鋼板を少なくとも1枚有し、本開示の突合せ溶接用鋼板の金属間化合物層(IMC)を有する縁部を介して、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板を突合せ溶接した溶接鋼板である。本開示の突合せ溶接用鋼板を少なくとも1枚有していれば、テーラードブランクは、1枚の突合せ溶接用鋼板における金属間化合物層(IMC)を有する縁部の端面と、他の鋼板の縁部の端面とを突合せた状態で溶接した溶接鋼板であってもよい。テーラードブランクは、2枚の突合せ溶接用鋼板における金属間化合物層(IMC)を有する縁部の端面どうしを突合せた状態で溶接してもよく、3枚の鋼板における金属間化合物層(IMC)を有する縁部の端面どうしを突合せた状態で溶接してもよい。すなわち、本開示のテーラードブランクは、本開示の突合せ溶接用鋼板を少なくとも1枚含み、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板の縁部が対向して配置された突合せ溶接用鋼板と、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板の縁部を接合する溶接金属とを有している。
テーラードブランクを得るための2枚以上の突合せ溶接用鋼板は、目的に応じて組み合わせて用いればよい。テーラードブランクを得るための2枚以上の突合せ溶接用鋼板は、例えば、それぞれ同じ強度クラスの鋼板を用いてもよく、異なる強度クラスの鋼板を用いてもよい。また、鋼板の厚みが同じ鋼板を用いてもよく、鋼板の厚みが異なる鋼板を用いてもよい。2枚以上の鋼板は、例えば、突合せ溶接用鋼板における各々の金属間化合物層IMCの厚みが同じ鋼板を用いてもよく、IMCの厚みが異なる鋼板を用いてもよい。
突合せ溶接を行う溶接方法は特に限定されず、例えば、レーザ溶接(レーザビーム溶接)、アーク溶接、電子ビーム溶接等の溶接方法が挙げられる。また、アーク溶接としては、プラズマ溶接、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接、MIG(Metal Inert Gas)溶接、MAG(Metal Active Gas)溶接等が挙げられ、好適なアーク溶接としては、プラズマ溶接が挙げられる。溶接条件は、使用する突合せ溶接用鋼板の厚み等、目的とする条件によって選択すればよい。
また、溶接は、必要に応じて、フィラーワイヤを供給しながら溶接してもよい。
テーラードブランクは、溶接された接合部が、金属間化合物層(IMC)を有する部分に隣接する端面上であることがよい。つまり、テーラードブランクは、金属間化合物層(IMC)が形成されている部分が端面に接して形成されており、この端面どうしを突合せ溶接することにより、接合部が形成されている。
すなわち、テーラードブランクは、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板と溶接金属とを備えるテーラードブランクであって、本開示の少なくとも1枚の突合せ溶接用鋼板の縁部が対向して配置された突合せ溶接用鋼板と、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部に隣接して備える溶接金属(つまり、少なくとも2枚の鋼板の縁部を接合する溶接金属)と、を備え、溶接金属に隣接する鋼板の少なくとも一部に、母材鋼板の両面上に少なくとも金属間化合物層(IMC)が形成されているテーラードブランクである。例えば、具体的には、金属間化合物層(IMC)は、溶接金属により接合された2枚の突合せ溶接用鋼板のうち、溶接金属の周囲に位置する両面に有している。
ここで、図6を参照して、本開示のテーラードブランクの一例を説明する。図6は本開示のテーラードブランクにおける溶接部の断面の一例を表す模式図である。図6に示すテーラードブランク200は、同じ種類の2枚の突合せ溶接用鋼板120の縁部の端面どうしを突合せ溶接して形成されている。テーラードブランク200は、2枚の突合せ溶接用鋼板120と、2枚の突合せ溶接用鋼板120を接合する溶接金属30とを備えている。2枚の突合せ溶接用鋼板120は、それぞれ、縁部以外の領域26では、母材鋼板12の両面に、金属間化合物層(IMC)16Aとアルミニウムめっき層14Aが設けられており、溶接予定部の縁部22では、母材鋼板12の両面に金属間化合物層(IMC)16Bが設けられている。金属間化合物層(IMC)16Bは、溶接金属30に隣接して設けられている。なお、図6に示すテーラードブランク200は、同じ種類の2枚の突合せ溶接用鋼板120の縁部を介して突合せ溶接されているが、本開示のテーラードブランク200を形成するための突合せ溶接用鋼板は、図6に示す態様に限定されるものではない。
次に、図7及び図8を参照して、テーラードブランクにおける溶接金属中のフェライトの有無について説明する。図7は、2枚の突合せ溶接用鋼板における未処理の縁部を介して形成したテーラードブランクの溶接金属付近における拡大断面写真である。図7中、矢印Eは、溶接金属における突合せ溶接用鋼板の縁部周辺にフェライトが存在していることを表す。図7に示すテーラードブランクでは、鋼板から多量に混入したアルミニウム濃度によって、溶接金属中にフェライトの存在が見られると考えられる。一方、図8は、本開示の2枚の突合せ溶接用鋼板における縁部を介して形成したテーラードブランクの溶接金属付近における拡大断面写真である。図8中、矢印Nは、溶接金属における突合せ溶接用鋼板の縁部周辺にフェライトの存在がないことを表す。図8に示すテーラードブランクでは、溶接金属に多量に混入するアルミニウム濃度が少ないため、フェライトの存在が見られないと考えられる。
<熱間プレス成形品>
次に、熱間プレス成形品について説明する。
熱間プレス成形品は、溶接金属と、溶接金属に接続する少なくとも2つの鋼板部とを備える。
そして、少なくとも2つの鋼板部は、溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有する。少なくとも2つの鋼板部のうち、少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部では、前記母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられている。前記縁部以外の部分では、母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられている。
また、溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
、及び前記bの測定位置における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
下記式(4)及び下記式(5)を満たす。
式(4) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
式(5) :10μm≦(a(μm)+b(μm))
(ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
アルミニウムめっき層の厚みaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みbμmは、アルミニウムめっき層の厚みaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みbμmと同様の判断基準にしたがって、線分析により測定する。線分析は、溶接金属と接続する縁部において、縁部における表面部分から、母材鋼板の表面(母材鋼板と金属間化合物層との境界)までの範囲について行う。測定箇所は、溶接金属と接続する鋼板部において、レーザガウジング処理をされた位置に相当する縁部(つまり、溶接金属と接続する本開示の突合せ溶接用鋼板における金属間化合物層(IMC)が設けられた縁部)を測定する。具体的には、溶接金属と接続するレーザガウジング処理をされた位置に相当する縁部において、溶接金属から縁部以外の部分までの全幅に対して、溶接金属から10%以内の範囲、及び、縁部以外の部分と縁部との境界から10%以内の範囲を除いた領域を3等分し、3等分した中央位置で行う。そして、測定した3箇所の平均値とする。一方、母材鋼板の板厚tμmについては、熱間プレス成形の影響が少ない箇所を選択して測定することが好ましい。この点で、母材鋼板の板厚tμmは、アルミニウムめっき層の厚みaμm、金属間化合物層(IMC)の厚みbμmを測定した位置に対応する位置で測定する。母材鋼板の板厚tμmの測定は、光学顕微鏡で測定することが好ましい。なお、式(5)で表される値は、溶接部の耐食性に優れる点で、12μm以上であることが好ましい。また、式(5)を満足するのであれば、アルミニウムめっき層の厚みaμmは、0(ゼロ)μmであってもよく、0μmを超えていてもよい。例えば、アルミニウムめっき層の厚みaμm、熱間プレス成形の条件等によって、アルミニウムめっき層の厚みaμmは、0μmになる場合があり、0μmを超える場合がある。
本開示の熱間プレス成形品は、溶接金属から鋼板部の方向に向かって、溶接金属、溶接金属に接続する縁部、縁部以外の部分がこの順で配置されている。つまり、本開示の熱間プレス成形品(ホットスタンプ成形品)は、本開示のテーラードブランクに対して熱間プレスして生成される。
すなわち、ホットスタンプ成形品は、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板と溶接金属とを備えるホットスタンプ成形品であって、本開示の少なくとも1枚の突合せ溶接用鋼板の縁部が対向して配置された突合せ溶接用鋼板と、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部に隣接して備える溶接金属(つまり、少なくとも2枚の突合せ溶接用鋼板の縁部を接合する溶接金属)と、を備える。また、ホットスタンプ成形品では、焼入れにより、溶接金属に隣接する突合せ溶接用鋼板において、溶接金属に隣接する縁部の少なくとも一部に、金属間化合物層(IMC)が形成されている。例えば、具体的には、金属間化合物層(IMC)は、溶接金属により接合された2枚の突合せ溶接用鋼板のうち、溶接金属の周囲に位置する両面に有している。なお、焼入れ後により、ホットスタンプ成形品では、溶接金属に接続する溶接用鋼板の縁部におけるアルミニウムめっき層の厚みaμmと金属間化合物層(IMC)の厚みbμmとの合計の厚みは、縁部以外の部分におけるアルミニウムめっき層の厚みaμmと金属間化合物層(IMC)の厚みbμmとの合計の厚みよりも小さくなる。
ホットスタンプ成形品は、次のようにして製造し得る。
まず、テーラードブランクを高温に加熱してテーラードブランクを軟化させる。そして、金型を用いて、軟化したテーラードブランクをホットスタンプにより成形および冷却して焼き入れられ、目的とする形状のホットスタンプ成形品が得られる。ホットスタンプ成形品は、加熱、及び冷却により焼入れされることで、例えば、約1500MPa以上の高い引張強度を有する成形品が得られる。
ホットスタンプするときの加熱方法としては、通常の電気炉、ラジアントチューブ炉に加え、赤外線加熱、通電加熱、誘導加熱等による加熱方法を採用することが可能である。
ホットスタンプ成形品は、突合せ溶接用鋼板のアルミニウムめっき層が、加熱時に突合せ溶接用鋼板の腐食および酸化に対する保護を付与する、金属間化合物層に変化させられる。例えば、一例として、アルミニウムめっき層にシリコン(Si)を含む場合、アルミニウムめっき層は、加熱されるとFeとの相互拡散により、Al相が、金属間化合物層、すなわち、Al−Fe合金相、及びAl−Fe−Si合金相へと変化する。Al−Fe合金相及びAl−Fe−Si合金相の融点は高く、1000℃以上である。Al−Fe相及びAl−Fe−Si相は複数種類あり、高温加熱、又は長時間加熱すると、よりFe濃度の高い合金相へと変化していく。これらの金属間化合物層が、突合せ溶接用鋼板の腐食および酸化を防止する。
また、溶接金属には、突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部に形成されている金属間化合物層(IMC)(又は、金属間化合物層(IMC)およびアルミニウムめっき層)に起因するアルミニウムが適度に混入しているため、上記と同様の合金相(金属間化合物層)を含む。特に、溶接金属の表面に上記の合金層を有することで、溶接金属の表面にスケールの発生が抑制される。その結果、溶接金属の表面で化成処理性が向上し、塗料の付着性が向上する。それにより、溶接部は、塗装後耐食性に優れると考えられる。
ホットスタンプ成形品として好ましいアルミニウムめっき層の状態は、表面まで合金化された状態で(表面まで金属間化合物層になった状態で)、かつ、合金相中のFe濃度が高くない状態である。合金化されていないAlが残存すると、この部位のみが急速に腐食して、塗装後耐食性が劣化し、塗膜膨れが極めて起こりやすくなるため好ましくない。一方、合金相中のFe濃度が高くなり過ぎると、合金相自体の耐食性が低下して、塗装後耐食性が劣化し、塗膜膨れが起こりやすくなる。即ち、合金相の耐食性は、合金相中のAl濃度に依存する。従って、塗装後耐食性を向上させるには、合金化の状態をAl付着量と加熱条件で制御する。
ホットスタンプするときの最高到達温度については、特に限定されず、例えば、850℃〜1000℃とすることが好ましい。ホットスタンプ成形において、最高到達温度は、オーステナイト領域で加熱する必要があることから、通常900℃〜950℃程度の温度が採用されることが多い。
ホットスタンプでは、高温に加熱したテーラードブランクを、水冷等により冷却された金型でプレス成形すると同時に、金型での冷却によって焼入れられる。また、必要に応じて金型の隙間から水をブランク材に直接噴霧して水冷してもよい。そして、目的とする形状のホットスタンプ成形品が得られる。
テーラードブランクが高温に加熱されると、母材鋼板の金属組織は、少なくとも一部、好ましくは全体がオーステナイト単相の組織となる。その後、金型でプレス加工される際に、目的とする冷却条件で冷却することで、オーステナイトを、マルテンサイトおよびベイナイトの少なくとも一方に変態させる。そして、得られたホットスタンプ成形品では、母材鋼板の金属組織が、マルテンサイト、ベイナイト、又はマルテンサイト−ベイナイトのいずれかの金属組織となる。
ここで、突合せ溶接用鋼板の製造からホットスタンプ成形品を製造するまでの工程の一例は、次の通りである。
まず、母材鋼板の両面に、アルミニウムめっき層を形成してアルミニウムめっき鋼板を得る。このとき、母材鋼板とアルミニウムめっき層との間には、金属間化合物層が形成される。
次に、このアルミニウムめっき鋼板の少なくとも一部の縁部において、レーザガウジング処理により金属間化合物層を成長させる。このとき、アルミニウムめっき層が全て金属間化合物層に変化してもよく、一部のアルミニウムめっき層が金属間化合物層に変化せず、アルミニウムめっき層のまま残存していてもよい。
なお、母材鋼板の両面に、アルミニウムめっきを施した鋼板は、コイル状に巻き取られる。
次に、コイル状に巻かれた鋼板を引き出し、打ち抜き加工を施して打ち抜き鋼板を得る。
ここで、アルミニウムめっき鋼板の縁部の少なくとも一部へのレーザガウジング処理は、アルミニウムめっき鋼板をコイル状に巻き取った後、コイル状に巻かれたアルミニウムめっき鋼板を引き出した状態で形成してもよい。この場合、レーザガウジング処理したあと、レーザガウジング処理した領域が、突合せ溶接用鋼板の縁部となるように打ち抜き加工を施して打ち抜き鋼板を得る。
また、アルミニウムめっき鋼板の縁部の少なくとも一部へのレーザガウジング処理は、コイル状に巻かれたアルミニウムめっき鋼板を引き出して、打ち抜き加工を施して打ち抜き鋼板を形成した後に行ってもよい。この場合、打ち抜き鋼板の縁部の少なくとも一部にレーザガウジング処理を施してもよい。又は、打ち抜き鋼板の縁部以外の部分に、例えば一方向に延びて金属間化合物層(IMC)が形成されるように、レーザガウジング処理を施した後、レーザガウジング処理を施した領域が突合せ溶接用鋼板の縁部となるように、打ち抜き鋼板のレーザガウジング処理を施した領域を切断してもよい。
次に、突合せ溶接用鋼板の縁部の少なくとも一部に、レーザガウジング処理が施された打ち抜き鋼板を少なくとも1枚準備する。打ち抜き鋼板は、必要に応じて、2枚以上であってもよい。
次に、レーザガウジング処理が施された縁部を有する端面どうしを突合せて突合わせ溶接を行い、テーラードブランクを得る。
次に、加熱炉で、テーラードブランクを加熱する。
次に、上型及び下型の一対の金型により、加熱されたテーラードブランクをプレスし、成形及び焼入れする。
そして、金型から取り外すことで、目的とするホットスタンプ成形品が得られる。
<鋼管>
次に、鋼管について説明する。
鋼管は、溶接金属と、周方向の2つの縁部が互いに対向するオープン管状に形成され、溶接金属に、周方向の2つの縁部が接続する鋼板部とを備える。
そして、鋼板部は、少なくとも1つの鋼板部を有し、少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有する。少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部では、母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられている。縁部以外の部分では、母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられている。
また、溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
溶接金属と接続する縁部以外の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)を満たす。
式(1) : b(μm)>b(μm)
式(2) : 3μm≦b(μm)≦10μm
式(3) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
(ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
つまり、鋼管は、本開示の突合せ溶接用鋼板を含むものであり、溶接金属と、金属間化合物層(IMC)が設けられている縁部を有する部分とが接続されている。そして、本開示の鋼管は、溶接金属から鋼板部の方向に向かって、溶接金属、溶接金属に接続する縁部、縁部以外の部分がこの順で配置されている。すなわち、鋼管は、溶接金属(つまり、鋼板のオープン管の縁部を接合する溶接金属)を少なくとも一つ有し、溶接金属に隣接する本開示の突合せ溶接用鋼板(又はテーラードブランク)による管状体の両面に、金属間化合物層(IMC)を有する。
鋼管は、例えば、次のようにして得られた態様が挙げられる。
1)第1の縁部に、第1の金属間化合物層(IMC)を設け、第2の縁部に、第2の金属間化合物層(IMC)を設けた突合せ溶接用鋼板を1枚準備する。この1枚の突合せ溶接用鋼板を管状に成形してオープン管とする。その後、得られたオープン管において、第1の金属間化合物層(IMC)を備える縁部の端面と、第2の金属間化合物層(IMC)を備える縁部の端面とを突合せた状態で溶接して得られた鋼管でもよい。
2)第1の縁部に、第1の金属間化合物層(IMC)を設け、第2の縁部に、第2の金属間化合物層(IMC)を設けた突合せ溶接用鋼板を2枚以上準備する。この突合せ溶接用鋼板が2枚である場合は、第1の金属間化合物層(IMC)を備える第1の突合せ溶接用鋼板の縁部の端面と、第2の金属間化合物層(IMC)を備える縁部の第2の突合せ溶接用鋼板の端面とを、突合せた状態で溶接してテーラードブランクとする。そして、このテーラードブランクを管状に成形してオープン管とする。その後、得られたオープン管において、溶接を行っていない第2の金属間化合物層(IMC)を備える第1の突合せ溶接用鋼板での縁部の端面と、溶接を行っていない第1の金属間化合物層(IMC)を備える第2の突合せ溶接用鋼板での縁部の端面とを突合せた状態で溶接して得られた鋼管でもよい。なお、オープン管は、オープン管を形成する前のテーラードブランクにおける溶接線に対して、平行に沿う方向に湾曲させて形成してもよく、交差する方向に湾曲させて形成してもよい。
ここで、図9及び図10を参照して、本開示の鋼管を説明する。図9は本開示の鋼管の一例を表す概略模式図である。図9に示す鋼管410は、1枚の突合せ溶接用鋼板から形成されている態様を表している。鋼管410は、溶接金属30に隣接して、第1の金属間化合物層(IMC)16Dと、第2の金属間化合物層(IMC)16Eとを備えている。鋼管410を形成するための1枚の鋼板は、突合せ溶接用鋼板の両縁部に金属間化合物層(IMC)が形成され、アルミニウムめっき層が除去されている。突合せ溶接用鋼板の第1の縁部では、第1の金属間化合物層(IMC)16Dが形成され、第2の縁部には、第2の金属間化合物層(IMC)16Eが形成されている。そして、鋼管410は、1枚の突合せ溶接用鋼板をオープン管とし、第1の金属間化合物層(IMC)16Dを備える第1の縁部の端面と、第2の金属間化合物層(IMC)16Eを備える第2の縁部の端面とを突合せた状態で溶接されることにより形成されている。
図10は本開示の鋼管の他の一例を表す概略模式図である。図10に示す鋼管420は、第1の突合せ溶接用鋼板と第2の突合せ溶接用鋼板の2枚の鋼板を有するテーラードブランクから形成された態様を表している。鋼管420は、溶接金属30に隣接して、第1の鋼板における第2の金属間化合物層(IMC)16Hと、第2の鋼板における第1の金属間化合物層(IMC)16Jとを備えている。鋼管420を形成するためのテーラードブランクは、第1の突合せ溶接用鋼板における第1の金属間化合物層(IMC)16Fが形成されている端面と、第1の突合せ溶接用鋼板における第1の金属間化合物層(IMC)16Gが形成されている端面とを突合せ溶接することにより形成されている。このテーラードブランクは、2枚のそれぞれの突合せ溶接用鋼板において、それぞれの突合せ溶接用鋼板の2つの縁部に金属間化合物層(IMC)が形成され、アルミニウムめっき層が除去されている。鋼管420は、このテーラードブランクの溶接線に対して垂直な方向に湾曲させてオープン管とし、溶接されていない第1の突合せ溶接用鋼板における第2の金属間化合物層(IMC)16Hを備える縁部の端面と、第2の突合せ溶接用鋼板における第1の金属間化合物層(IMC)16Jを備える縁部の端面とを溶接することにより形成されている。
テーラードブランクから鋼管を形成する場合、鋼管を形成するためのテーラードブランクを形成する2枚以上の突合せ溶接用鋼板は、目的に応じて組み合わせて用いればよい。2枚以上の突合せ溶接用鋼板の組み合わせは、例えば、前述のテーラードブランクを形成するための突合せ溶接用鋼板で説明した鋼板と同様の組み合わせが挙げられる。
なお、管状に成形する方法は、特に限定されず、例えば、UOE法、ベンディングロール法などのいずれの方法でもよい。
また、管状に成形した後の溶接は、特に限定されず、例えば、レーザ溶接;プラズマ溶接;電気抵抗溶接または高周波誘導加熱溶接により溶接する電縫溶接が挙げられる。
<中空状焼入れ成形品>
次に、中空状焼入れ成形品について説明する。
中空状焼入れ成形品は、溶接金属と、周方向の2つの縁部が互いに対向するオープン管状に形成され、前記溶接金属に、前記周方向の2つの縁部が接続する鋼板部とを備える。
そして、鋼板部は、少なくとも1つの鋼板部を有し、少なくとも1つの鋼板部は、溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有する。少なくとも1枚の鋼板部は、溶接金属と接続する縁部では、母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられており、前記縁部以外の部分では、母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられている。
また、前記溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
前記a、及び前記bの測定位置における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
下記式(4)及び下記式(5)を満たす。
式(4) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
式(5) :10μm≦(a(μm)+b(μm))
(ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
中空状焼入れ成形品(以下、「中空状ホットスタンプ成形品」と称する場合がある。)は、本開示の突合せ溶接用鋼板、又は本開示の突合せ溶接用鋼板を突合せ溶接して得られたテーラードブランクから形成した鋼管を、焼入れして得られた中空状の成形品である。本開示の中空状焼入れ成形品は、溶接金属から鋼板部の方向に向かって、溶接金属、溶接金属に接続する縁部、縁部以外の部分がこの順で配置されている。
すなわち、鋼管をホットスタンプすることにより得られた中空状ホットスタンプ成形品は、溶接金属(つまり、鋼板の縁部を接合する溶接金属)を少なくとも一つを有する。また、中空状ホットスタンプ成形品では、焼入れにより、溶接金属に隣接する本開示の突合せ溶接用鋼板の縁部において、中空状ホットスタンプ成形品の両面に、金属間化合物層(IMC)を有する。アルミニウムめっき層の厚みaμm、金属間化合物層(IMC)の厚みbμm、及びa、及びbの測定位置における母材鋼板の板厚tμmの測定方法は、前述のとおりである。なお、焼入れ後により、中空状ホットスタンプ成形品では、溶接金属に接続する溶接用鋼板の縁部におけるアルミニウムめっき層の厚みaμmと金属間化合物層(IMC)の厚みbμmとの合計の厚みは、縁部以外の部分におけるアルミニウムめっき層の厚みaμmと金属間化合物層(IMC)の厚みbμmとの合計の厚みよりも小さくなる。
中空状ホットスタンプ成形品は、例えば、以下のようにして得られる。
本開示の突合せ溶接用鋼板を用いて得られた鋼管を、ベンダーで成形する。次に、加熱炉、通電加熱、または高周波誘導加熱により鋼管を加熱する。鋼管を加熱する温度としては、オーステナイト領域とする必要があることから、例えば、850℃〜1000℃とすることがよく、900℃〜950℃程度の温度としてもよい。次に、加熱した鋼管を、水冷等により冷却し、焼入れを行う。
なお、成形と焼入れとは、同時に行ってもよい。これは3次元熱間曲げ焼き入れ(3DQ)と呼ばれ、例えば、鋼管を加熱するとともに、荷重を加えて変形させ、直後に水冷等により冷却することによって焼入れられる。これらの過程を経ることによって、目的とする中空状ホットスタンプ成形品が得られる。なお、中空状ホットスタンプ成形品は、そのまま部品として用いてもよい。
本開示の中空状ホットスタンプ成形品の用途としては特に限定されず、例えば、自動車車体等の各種自動車部材、産業機械の各種部材が挙げられる。自動車用部材としては、例えば、具体的には、各種ピラー;スタビライザー、ドアビーム、ルーフレール、バンパーなどのレインフォース類;フレーム類;アーム類等の各種部品が挙げられる。
以下、本開示の実施例を例示するが、本開示は以下の実施例には限定されない。
なお、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
<実施例>
試験に用いるための突合せ溶接用鋼板に適用する鋼板として、下記の鋼板を準備した。
準備した鋼板は、ホットスタンプ後の強度クラスが1470MPa級鋼板であり、1辺10cmの四角形であり、板厚1.6mmである母材鋼板に、アルミニウムめっきが施された鋼板である。この鋼板のアルミニウムめっき層の厚み、及び金属間化合物層の厚みは、表2の縁部以外の領域欄に示すとおりである。なお、各アルミニウムめっき鋼板に用いた母材鋼板における化学組成は表1に示すとおりである。また、表2に示す板厚は、母材鋼板の板厚を表す。
次に、準備した各アルミニウムめっき鋼板において、溶接予定部となる縁部にレーザガウジング処理を施して、突合せ溶接用鋼板とした。具体的には、4辺うちの1辺のみの縁部の両面に対して、1.5mm幅で、全長10cmにわたって、レーザガウジング処理を施した。
一部のアルミニウムめっき鋼板は、レーザガウジングに代えて、レーザアブレーションによる処理を施して、突合せ溶接用鋼板とした。又は一部の鋼板は、溶接予定部となる縁部を未処理として、突合せ溶接用鋼板とした。各突合せ溶接用鋼板の溶接予定部となる縁部におけるアルミニウムめっき層の厚み、及び金属間化合物層の厚みは、表2に示すとおりである。また、式(3)は、母材鋼板の厚みと、片面あたりにおけるアルミニウムめっき層の厚み及び金属間化合物層の厚みから求めた値である。なお、発明例は、両面とも式(3)を満足している。
次に、各処理を行った突合せ溶接用鋼板(又は未処理の突合せ溶接用鋼板)を2枚用意した。そして、上記の処理をした突合せ溶接用鋼板の縁部の端面を互いに突合せて、レーザ溶接により突合せ溶接を行い、テーラードブランクを作製した。レーザ溶接の条件は、フィラーワイヤを用いず、発振器にはファイバレーザを用い、スポット径φ0.9mm、レーザ出力3.2kW、レーザ走査速度3m/minとした。
次に、作製したテーラードブランクを、920℃に加熱した炉で4分間保持後、水冷した金型で成形して、焼入れを行い、平板のホットスタンプ成形品を作製した。これにより、ホットスタンプ成形品は、引張強さ1470MPa級になる。ホットスタンプ成形品の鋼板部において、溶接金属と接続する縁部のアルミニウムめっき層の厚み、金属間化合物層(IMC)の厚み、及びアルミニウムめっき層及び金属間化合物層(IMC)を測定した位置における母材鋼板の板厚tを表3に示す。
ここで、レーザガウジングの処理条件は以下のとおりである。
レーザガウジングによる処理として、発振器には半導体レーザを用いた。レーザ照射部後方よりフラットノズルを追従し、窒素を5.5kgf/cmで噴射した。幅1.5mm×長さ1mmのラインビームを用いた。レーザ出力0.6kW〜2.1kW、レーザ走査速度3m/min〜8m/minで適宜調整した。
No.6を例にすると、レーザ出力0.7kW、レーザ走査速度5m/minとした。突合せ溶接予定の縁部の表裏それぞれの面を処理した。処理により、Al−Si金属のアルミニウムめっき層が存在せず、金属間化合物層が17μmの厚みに成長した。
また、レーザアブレーションの条件は以下のとおりである。
レーザアブレーションによる処理として、Qスイッチレーザを使用した。処理条件は、パルス幅60ns、公称出力300W、パルスエネルギー30mJ、レーザ走査速度10m/minである。
なお、レーザガウジングと、レーザアブレーションとの違いは、以下のとおりである。
レーザアブレーションはレーザ光の照射により、固体表面の構成物質が爆発的に放出される現象である。レーザガウジングはレーザ光の照射により、溶融した金属が高速ガスにより除去される現象である。
[評価]
(塗装後耐食性試験)
上記で得られたホットスタンプ成形品を化成処理した後、電着塗装を行い、塗装後耐食性試験を行った。化成処理は日本パーカライジング(株)製化成処理液PB−SX35Tで施した。その後、電着塗料として、日本ペイント(株)製カチオン電着塗料パワーニクス110を使用し、電着膜厚約15μmを目標として電着塗装を施した。水洗後、170℃で20分間加熱して焼き付け、試験板を作製した。試験板のサイズは65mm長さ、100mm幅(幅中央部に溶接部がある。)とした。
この試験板を用いて、自動車部品外観腐食試験JASO M610−92を用い、360サイクル(120日)経過後の腐食状況で塗装後耐食性を評価した。
塗装後耐食性の評価は、赤錆の割合を赤錆発生率とし、溶接金属周囲を除く領域(突合せ溶接用鋼板の縁部以外の領域に相当)、溶接金属周囲および溶接金属について、目視により下記判定基準で行った。赤錆発生率は少数点以下を四捨五入した値である。溶接金属周囲は評価Bまでが許容され、溶接金属は評価Bまでが許容される。
−判定基準−
A:赤錆発生率25%以下
B:赤錆発生率26%〜50%
C:赤錆発生率51%〜75%
D:赤錆発生率76%〜100%
なお、表4中において、溶接金属周囲は、以下のことを表す。
溶接金属周囲は、突合せ溶接用鋼板の縁部にレーザガウジング処理を施した部位のうち、溶接後に形成された溶接金属に隣接し、金属間化合物層の厚みの増加が飽和している領域までの部分を示す。
レーザアブレーション処理の場合、溶接金属周囲は、溶接金属に隣接し、金属間化合物層が露出している領域までの部分を示す。
未処理の場合は、レーザガウジング処理における金属間化合物層の厚みの増加が飽和している領域に相当する領域までの部分を示す。
(引張強度試験)
得られたホットスタンプ成形品から、引張強度試験用の試験片として、溶接部を持つダンベル状の形状の試験片を採取した。試験片は、平行部距離50mm、平行部の幅25mmとし、平行部の中央部に、長手方向に対して直交方向になるように幅全長にわたって、溶接部を有するように切り出した。この試験片を用いて、静的引張強度試験を実施した。下記判定基準で判定した。評価Bまでが許容される。
−判定基準−
A:1470MPa以上
B:1400MPa以上1470MPa未満
C:1300MPa以上1400MPa未満
D:1300MPa未満
(総合判定)
溶接金属周囲を除く領域の耐食性、溶接金属周囲の耐食性、および溶接金属の耐食性、並びに、静的引張強度の各評価において、もっとも評価の低かった区分を総合判定の判定基準とした。評価Bまでが許容される。
表2〜表4に示すように、レーザガウジングにより、鋼板の縁部を処理したNo.6、No.7、No.11、No.12、No.14、No.15、およびNo.19〜No.22は、金属間化合物層(IMC)の厚みが3mm〜10mmの範囲を満たしている(つまり、前述の式(2)の範囲を満足している)。また、金属間化合物層(IMC)の厚みが、金属間化合物層(IMC)の厚みよりも大きい(つまり、前述の式(1)の範囲を満足している)。さらに、前述の式(3)の範囲を満足している。そのため、全ての領域(溶接金属周囲以外、溶接金属周囲、及び溶接金属)において、塗装後耐食性及び引張強度が優れていた。そして、これらは、前述の式(4)及び式(5)の範囲を満足している。
なお、各図面に付した符号は以下のとおりである。
110 120突合せ溶接用鋼板、22溶接予定部の縁部、26縁部以外の領域、12母材鋼板、16A 16C金属間化合物層(IMC)、16B 16D 16E 16F 16G 16H 16J金属間化合物層(IMC)、14A 14Bアルミニウムめっき層、30溶接金属、200テーラードブランク、410 420鋼管

Claims (7)

  1. 母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられた鋼板であって、
    前記鋼板の縁部以外の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
    前記鋼板の縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
    前記縁部以外の部分における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
    下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)を満たす鋼板。
    式(1) : b(μm)>b(μm)
    式(2) : 3μm≦b(μm)≦10μm
    式(3) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
    (ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
  2. 前記母材鋼板が、質量%で、
    C:0.02%〜0.58%、
    Mn:0.20%〜3.00%、
    Al:0.005%〜0.20%、
    Ti:0%〜0.20%、
    Nb:0%〜0.20%、
    V:0%〜1.0%、
    W:0%〜1.0%、
    Cr:0%〜1.0%、
    Mo:0%〜1.0%、
    Cu:0%〜1.0%、
    Ni:0%〜1.0%、
    B:0%〜0.0100%、
    Mg:0%〜0.05%、
    Ca:0%〜0.05%、
    REM:0%〜0.05%、
    Bi:0%〜0.05%、
    Si:0%〜2.00%、
    P:0%〜0.03%、
    S:0%〜0.010%、
    N:0%〜0.010%、並びに
    残部:Feおよび不純物からなる化学組成を有する請求項1に記載の鋼板。
  3. 前記縁部以外の部分での前記アルミニウムめっき層の厚みが8μm〜50μmである請求項1又は請求項2に記載の鋼板。
  4. 溶接金属と、前記溶接金属に接続する少なくとも2つの鋼板部とを備えるテーラードブランクであって、
    前記少なくとも2つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有し、
    前記少なくとも2つの鋼板部のうち、少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部で、母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられており、前記縁部以外の部分で、前記母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられており、
    前記溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
    前記溶接金属と接続する縁部以外の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
    前記縁部以外の部分における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
    下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)を満たすテーラードブランク。
    式(1) : b(μm)>b(μm)
    式(2) : 3μm≦b(μm)≦10μm
    式(3) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
    (ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
  5. 請求項4に記載のテーラードブランクに対して熱間プレス成形を行うことにより、
    溶接金属と、前記溶接金属に接続する少なくとも2つの鋼板部とを備える熱間プレス成形品であって、
    前記少なくとも2つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有し、
    前記少なくとも2つの鋼板部のうち、少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部で、母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられており、前記縁部以外の部分で、前記母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられており、
    前記溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
    前記a、及び前記bの測定位置における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
    下記式(4)及び下記式(5)を満たす熱間プレス成形品を製造する、熱間プレス成形品の製造方法
    式(4) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
    式(5) :10μm≦(a(μm)+b(μm))
    (ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
  6. 溶接金属と、周方向の2つの縁部が互いに対向するオープン管状に形成され、前記溶接金属に、前記周方向の2つの縁部が接続する鋼板部とを備える鋼管であって、
    前記鋼板部は、少なくとも1つの鋼板部を有し、前記少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有し、
    前記少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部で、母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられており、前記縁部以外の部分で、前記母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられており、
    前記溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
    前記溶接金属と接続する縁部以外の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
    前記縁部以外の部分における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
    下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)を満たす鋼管。
    式(1) : b(μm)>b(μm)
    式(2) : 3μm≦b(μm)≦10μm
    式(3) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
    (ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
  7. 請求項6に記載の鋼管を成形及び焼入れすることにより、
    溶接金属と、周方向の2つの縁部が互いに対向するオープン管状に形成され、前記溶接金属に、前記周方向の2つの縁部が接続する鋼板部とを備える中空状焼入れ成形品であって、
    前記鋼板部は、少なくとも1つの鋼板部を有し、前記少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部、及び前記縁部以外の部分を有し、
    前記少なくとも1つの鋼板部は、前記溶接金属と接続する縁部で、母材鋼板の両面に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層が設けられており、前記縁部以外の部分で、前記母材鋼板の両面に、鉄及びアルミニウムを含む金属間化合物層、及びアルミニウムめっき層が当該順で設けられており、
    前記溶接金属と接続する縁部の少なくとも一部の部分における片面あたりのアルミニウムめっき層の厚みをaμm、及び金属間化合物層(IMC)の厚みをbμmとし、
    前記a、及び前記bの測定位置における母材鋼板の板厚をtμmとしたとき、
    下記式(4)及び下記式(5)を満たす中空状焼入れ成形品を製造する、中空状焼入れ成形品の製造方法
    式(4) : 0.8%≦{2×(a(μm)+b(μm))/t(μm)}×100≦3.5%
    式(5) :10μm≦(a(μm)+b(μm))
    (ただし、アルミニウムめっき層の厚みaは0を含む)
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