JP6816557B2 - 溶接継手の形成方法 - Google Patents
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Description
(鋼板)
まず、マッシュシーム溶接に使用する鋼板について説明する。後述する本実施形態の溶接継手の形成方法では、マッシュシーム溶接を行う2枚の鋼板として、一般的なマッシュシーム溶接が適用される鋼種および板厚の鋼板を採用することができ、2枚の鋼板は同種の鋼板でも異種の鋼板であってもよい。
以上のような背景の下、詳細は後述するが、本発明者らは、高強度鋼板および低強度鋼板に対してマッシュシーム溶接を行う際に、新たな工程を付加することなく、溶接部に割れが発生するリスクを低減できる手法を見出した。そこで、本実施形態では、マッシュシーム溶接を行う2枚の鋼板として、高強度鋼板と低強度鋼板とを用いる場合を例に挙げて説明する。
[溶接割れ感受性組成Pcm]
溶接割れ感受性組成Pcmは、接合部の割れ感受性を示すものである。本実施形態では、溶接割れ感受性組成Pcmは、以下の(1)式で表されるものとする。
Pcm[質量%]=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cr]/20+[Mo]/15+[Cu]/20+[Ni]/60+[V]/10+5[B] ・・・(1)
(1)式において、[C]、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]、[Cu]、[Ni]、[V]、[B]は、それぞれ、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、V、Bの含有量(質量%)である。
鋼板に含まれる合金元素の添加量が多いと、溶接割れ感受性組成Pcmは大きくなる。本実施形態では、合金元素の添加量が多い鋼板を高強度鋼板として用いる。よって、高強度鋼板は、大きな溶接割れ感受性組成Pcmを有している。
以上のような観点から、高強度鋼板の溶接割れ感受性組成Pcmの範囲は、0.31[質量%]以上0.60[質量%]以下、好ましくは、0.40[質量%]以上0.60[質量%]とする。
高強度鋼板の板厚は特に限定されない。例えば、自動車の車体等に一般に用いられている高強度鋼板の板厚(0.4[mm]〜4.5[mm]、好ましくは0.8[mm]〜2.3[mm])程度であればよい。
前述した溶接割れ感受性組成Pcmの範囲(0.31[質量%]以上0.60[質量%]以下、好ましくは、0.40[質量%]以上0.60[質量%])を確保できる成分組成を有する鋼板を高強度鋼板として選択すればよい。自動車分野等で使用されることを考慮すれば、高強度鋼板の成分組成は、以下の成分組成が好ましい。
Cは、鋼板の強度を高めるため、必要な組織を得るために必要な基本元素のひとつである。しかしながら、溶接割れ感受性組成Pcmに対してCの寄与度は高く、Cの過剰な添加は、例えば、コイル継ぎ工程でのマッシュシーム溶接後に溶接部の割れが生じるリスクを高める。また、完成した鋼板の溶接性にも影響を与え、Cの過剰な添加は溶接性を低下させる。そこで、溶接性の観点から、Cの含有量は、0.50[質量%]以下とし、0.45[質量%]以下が好ましく、更に0.40%[質量%]がより好ましい。
一方、Cの含有量が0.15[質量%]未満では鋼板の強度の確保が困難になる上、必要な組織を得ることができなくなる。そのためCの含有量は、0.15[質量%]以上とし、0.18%[質量%]が好ましい。
Siは、鋼板の強度を高めるため、必要な組織を得るために必要な基本元素のひとつである。例えば焼鈍工程において、鉄系炭化物の生成を抑制して強度と成形性を高める効果があり、また、例えば、所定の量の残留オーステナイトを確保することが必要なTRIP鋼ではSiの役割が重要である。しかしながら、Siの含有量が2.0[質量%]を超えると鋼板が脆化し、冷間圧延が困難となる場合がある。また、Siの過剰な添加は溶接割れ感受性組成Pcmを増加させ、溶接部の割れが生じるリスクを高める。このため、Siの含有量は2.0[質量%]以下とする。
一方、Siの含有量が0.4[質量%]未満では鋼板の強度の確保が困難になる上、例えば鋼板の焼鈍工程において鉄系炭化物が多量に生成してしまい、成形性を低下させる。強度および成形性の観点からSiの含有量は、0.4[質量%]以上とし、1.0[質量%]以上が好ましい。
Mnは、鋼板の強度を高めるため、必要な組織を得るために必要な基本元素のひとつである。しかしながら、Mnの含有量が3.5[質量%]を超えると、鋼板の板厚中央部に粗大なMn濃化部が生じ、脆化が起こり易くなり、鋳造したスラブが割れる等のトラブルが起こり易い。また、Mnの含有量が3.5[質量%]を超えると溶接性も劣化する。更に、Mnの過剰な添加は溶接割れ感受性組成Pcmを増加させ、溶接部の割れが生じるリスクを高める。従って、Mnの含有量は、3.5[質量%]以下とする必要があり、3.0[質量%]以下が好ましい。
一方、Mnの含有量が1.0[質量%]未満であると、焼鈍後の冷却中に軟質な組織が多量に形成されてしまうため、所定の強度の確保が困難になる。このため、Mnの含有量は、1.0[質量%]以上とする。強度をより高めるため、Mnの含有量は、1.5[質量%]以上が好ましく、1.8[質量%]以上がより好ましい。
Pは、鋼板の板厚中央部に偏析する傾向があり、溶接部を脆化させる。Pの含有量が0.025[質量%]を超えると溶接部が大幅に脆化するため、Pの含有量を0.025[質量%]以下に限定する。溶接部の脆化の観点から、Pの含有量は0.020[質量%]以下とすることが好ましい。
Pの含有量の下限は、特に定める必要はないが、Pの含有量を0.002[質量%]未満とすることは製造コストの大幅な増加を伴うことから、0.002[質量%]を下限とする。
Sは、鋼板の溶接性並びに鋳造時および熱間圧延時の製造性に悪影響を及ぼす。また、Sは、Mnと結びついて粗大なMnSを形成して鋼板の加工性を低下させる。このため、Sの含有量を0.0100[質量%]以下とする。鋼板の成形性の観点から、Sの含有量は、0.0080[質量%]以下とすることが好ましく、0.0050[質量%]以下とすることがより好ましい。
Sの含有量の下限は、特に定める必要はないが、Sの含有量を0.0001[質量%]未満とすることは製造コストの大幅な増加を招くことから、0.0001[質量%]を下限とする。Sの含有量は、好ましくは0.0005[質量%]以上であり、0.0010[質量%]以上がより好ましい。
Alは、鋼板の強度および成形性を高める元素である。また、鉄系炭化物の生成を抑えるSiと類似の効果も有する。しかしながら、Alの含有量が1.50[質量%]を超えると鋼板の溶接性が悪化するため、Alの含有量の上限を1.50[質量%]とする。この観点から、Alの含有量は、0.50[質量%]以下とすることが好ましく、0.10[質量%]以下とすることがより好ましい。
一方、Alの含有量の下限は特に定める必要がないが、Alは原料中に微量に存在する不可避的不純物であり、その含有量を0.01[質量%]未満とするには製造コストの大幅な増加が伴うため、Alの含有量は0.01[質量%]以上とする。またAlは、脱酸材としても有効な元素である。よって、その効果を十分に得るためにAlの含有量は、0.01[質量%]以上とすることが好ましい。
Nは、粗大な窒化物を形成し、鋼板の加工性を劣化させることから、その添加量を抑える必要がある。Nの含有量が0.0100[質量%]を超えると、鋼板の加工性の劣化が顕著となることから、Nの含有量の上限を0.0100[質量%]とする。さらには、Nの含有量は、0.0070[質量%]とすることが好ましく、0.0050[質量%]とすることがより好ましい。
一方、Nの含有量の下限は特に定める必要がないが、Nの含有量を0.0001[質量%]未満とすることは製造コストの大幅な増加を招くことから0.0001[質量%]以上とする。また、Nの含有量は、好ましくは0.0005[質量%]以上であり、より好ましくは0.0010[質量%]以上である。
Oは、酸化物を形成し、鋼板の加工性を劣化させることから、その添加量を抑える必要がある。Oの含有量が0.0100[質量%]を超えると、鋼板の加工性の劣化が顕著となることから、Oの含有量の上限を0.0100%以下とする。更にOの含有量は、0.0070[質量%]以下であることが好ましく0.0050[質量%]以下であることがより好ましい。
一方、Oの含有量の下限は特に定める必要がないが、Oの含有量を0.0001[質量%]未満とすることは、製造コストの大幅な増加を招くことから、0.0001[質量%]を下限とする。また、Oの含有量は、好ましくは、0.0003%以上とすることが好ましく、0.0005%以上とすることがより好ましい。
〔Ti:0.01[質量%]〜0.10[質量%]〕
Tiは、析出物の強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒化の強化、および再結晶の抑制を通じた転位の強化によって、鋼板の強度の上昇に寄与する元素である。しかしながら、Tiの含有量が0.10[質量%]を超えると、炭窒化物の析出が多くなり鋼板の加工性が劣化するため、Tiの含有量は、0.10[質量%]以下であることが好ましい。
一方、Tiの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Tiの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るためには、Tiの含有量は、0.01[質量%]以上とし、0.02[質量%]以上が好ましい。
Crは、高温での相変態を抑制し、鋼板の強度の向上に有効な元素であり、Cおよび/またはMnの一部に代えて添加してもよい。Crの含有量が1.0[質量%]を超えると、熱間での鋼板の加工性が損なわれ生産性が低下することから、Crの含有量は1.0[質量%]以下とする。
一方、Crの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Crの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Crの含有量は、0.1[質量%]以上とし、0.3[質量%]以上が好ましい。
Moは、高温での鋼板の相変態を抑制し、鋼板の高強度化に有効な元素であり、Cおよび/またはMnの一部に代えて添加してもよい。Moの含有量が0.50[質量%]を超えると、熱間での鋼板の加工性が損なわれ生産性が低下することと、多量のMoの添加は合金コストを上昇させることと、過剰なMoの添加は溶接割れ感受性組成Pcmを増加させ、溶接部の割れが生じるリスクを高めることとから、Moの含有量は0.50[質量%]以下とする。
一方、Moの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Moの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Moの含有量は、0.03[質量%]以上とし、0.05[質量%]以上が好ましい。
Bは、高温での鋼板の相変態を抑制し、鋼板の高強度化に有効な元素であり、Cおよび/またはMnの一部に代えて添加してもよい。Bの含有量が0.0050[質量%]を超えると、熱間での鋼板の加工性が損なわれ生産性が低下することと、過剰なBの添加は溶接割れ感受性組成Pcmを増加させ、溶接部の割れが生じるリスクを高めることから、Bの含有量は、0.0050[質量%]以下とし、0.0030[質量%]以下がより好ましい。
一方、Bの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Bの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Bの含有量は、0.0003[質量%]以上とし、0.0005[質量%]以上が好ましい。
Nbは、析出物の強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒化の強化、および再結晶の抑制を通じた転位の強化によって、鋼板の強度の上昇に寄与する元素である。しかしながら、Nbの含有量が0.100[質量%]を超えると、炭窒化物の析出が多くなって鋼板の加工性が低下するため、Nbの含有量は、0.100[質量%]以下とし、0.050[質量%]以下が好ましい。
一方、Nbの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Nbによる鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Nbの含有量は、0.005[質量%]以上とし、0.010[質量%]以上が好ましい。
Vは、析出物の強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒化の強化、および再結晶の抑制を通じた転位強化によって、鋼板の強度の上昇に寄与する元素である。しかしながら、Vの含有量が0.200[質量%]を超えると、炭窒化物の析出が多くなって鋼板の成形性が劣化するため、Vの含有量は、0.200[質量%]以下とし、0.100[質量%]以下が好ましい。
一方、Vの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Vの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るにはVの含有量は0.005[質量%]以上とすることが好ましい。
Niは、高温での鋼板の相変態を抑制し、鋼板の高強度化に有効な元素であり、Cおよび/またはMnの一部に代えて添加してもよい。Niの含有量が1.0[質量%]を超えると、鋼板の溶接性が損なわれることから、Niの含有量は、1.0%以下であることが好ましい。
一方、Niの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Niの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Niの含有量は、0.1[質量%]以上とすることが好ましい。
Cuは、微細な粒子として鋼中に存在することにより鋼板の強度を高める元素であり、Cおよび/またはMnの一部に替えて添加することができる。Cuの含有量が0.50[質量%]を超えると、鋼板の溶接性が損なわれることから、Cuの含有量は、0.50[質量%]以下であることが好ましい。
一方、Cuの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Cuの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Cuの含有量は、0.01[質量%]以上とし、0.03[質量%]以上が好ましい。
尚、高強度鋼板の残部は、鉄(Fe)および不純物である。不純物としては、例えば、鉱石や、スクラップなどの原材料に含まれるものや、製造工程において含まれるものが例示される。
[溶接割れ感受性組成Pcm]
前述したように、鋼板の引張強度が高いと、溶接割れ感受性組成Pcmは大きくなる(言い換えると、鋼板の引張強度が低いと、溶接割れ感受性組成Pcmは小さくなる)。また、溶接割れ感受性組成Pcmが小さすぎると、鋼板の製造コストが増加する。このような観点から、低強度鋼板の溶接割れ感受性組成Pcmの範囲は、0.005[質量%]以上0.100[質量%]以下とする。前述したように本実施形態では、溶接割れ感受性組成Pcmは、(1)式で表されるものとする。
低強度鋼板の板厚は特に限定されない。例えば、自動車の車体等に一般に用いられている低強度鋼板の板厚(0.4[mm]〜4.5[mm]、好ましくは0.8[mm]〜2.3[mm])程度であればよい。
前述した溶接割れ感受性組成Pcmの範囲(0.005[質量%]以上0.100[質量%]以下)を確保できる成分組成を有する鋼板を低強度鋼板として選択すればよい。このような溶接割れ感受性組成Pcmの範囲の鋼板は、その引張強度が低く、また、合金元素の添加等、特別な成分組成を有している必要はない。従って、ここでは、低強度鋼板の成分組成の具体例についての詳細な説明を省略する。
本実施形態では、冷間圧延工程により製造されたコイルを、後工程(連続焼鈍工程やめっき工程)で連続的に処理するために、コイルの先端と尾端とをマッシュシーム溶接により接合する場合(いわゆるコイル継ぎを行う場合)を例に挙げて説明する。
以上のようにして上側クランプ111、113および下側クランプ112、114が押し付けられることにより、上側鋼板S1および下側鋼板S2の位置が固定される。
駆動装置183は、上側油圧シリンダ141および上側円板電極131の動作を制御する。上側油圧シリンダ141は、駆動装置183による制御に従って上下方向(Z軸方向)に移動する。マッシュシーム溶接を行う際に、上側円板電極131は、上側鋼板S1の上面に接した状態になる。また、上側円板電極131は、駆動装置183による制御に従って回転する。
以上のようにマッシュシーム溶接を行う際に、上側円板電極131が上側鋼板S1の上面に接すると共に下側円板電極132が下側鋼板S2の下面に接し、上側鋼板S1および下側鋼板S2が所定の加圧力で加圧された状態で、溶接電源190から電力が供給されると、上側円板電極131および下側円板電極132を介して上側鋼板S1および下側鋼板S2が通電される。
以上のようにスエージングを行う際に、上側加圧ロール151が溶接部の上面に接すると共に下側加圧ロール152が溶接部の下面に接すると、溶接部は、所定の加圧力で加圧される。尚、スエージングの際の加圧力は、マッシュシーム溶接の際の加圧力よりも大きい。
以上のように本実施形態では、スエージングを行うに際し、突出側加圧ロールの接触端部210a、210bを、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bよりも、上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出す。従って、マッシュシーム溶接およびスエージングの工程に対し新たな工程を付加することなく、マッシュシーム溶接により形成された溶接部の機械的特性を容易に改善させることができる。
本実施形態では、上側円板電極131、下側円板電極132、上側加圧ロール151、および下側加圧ロール152の全てを上下方向(Z軸方向)に個別に移動させることが可能である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、スエージングを行うに際し、突出側加圧ロールの接触端部210a、210bを、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bよりも、上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出せれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、上側クランプ111、113および下側クランプ112、114が、上側鋼板S1および下側鋼板S2を固定(クランプ)するZ軸方向の位置を移動させてもよい。このように上側クランプ111、113および下側クランプ112、114が、上側鋼板S1および下側鋼板S2を固定(クランプ)するZ軸方向の位置を可変とする場合、例えば、下側円板電極132および下側加圧ロール152のZ軸方向の位置を固定してもよい。この場合、下側油圧シリンダ142、162および駆動装置184、186は不要になる。更に、本実施形態のように、上側円板電極131、下側円板電極132、上側加圧ロール151、および下側加圧ロール152のZ軸方向の位置を個別に移動させることと、上側クランプ111、113および下側クランプ112、114が、上側鋼板S1および下側鋼板S2を固定(クランプ)するZ軸方向の位置を移動させることとの双方を行ってもよい。
次に、本発明の実施例を説明する。
<実施例1>
本実施例では、図2(a)および図2(b)に示したように、スエージングを行うに際し、突出側加圧ロールの接触端部210a、210bを、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bよりも、上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出した場合を発明例とする。一方、図2(c)に示したように、突出側加圧ロールの接触端部210cのZ軸方向の位置と、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220cのZ軸方向の位置とを一致させた場合を比較例とする。発明例と比較例との夫々の場合の溶接継手を作製した。本実施例では、以下の条件で溶接継手を作製した。なお、冷延鋼板は全て未焼鈍材である。
鋼種:1470MPa級のTRIP鋼と同成分の冷延鋼板
板厚:1.6[mm]
溶接割れ感受性組成Pcm:0.56[質量%]
・低強度鋼板
鋼種:270MPa級の冷延鋼板と同成分の冷延鋼板
板厚:1.6[mm]
溶接割れ感受性組成Pcm:0.04[質量%]
・溶接条件
溶接速度:10.0[m/min]
溶接電流:16.5[kA]
円板電極の加圧力:2500[kgf]
加圧ロールの加圧力:3000〜4000[kgf]
重ね代:1.6[mm]
突き出し量:高強度鋼板側に0.45[mm](発明例)、0.0[mm](比較例)
本実施例では、高強度鋼板および低強度鋼板として図4に示すものを用いて、図5に示すように溶接条件を異ならせて溶接継手を作製した。
図4において、「−」は、意図的に添加していないことを示す。また、図4において、残部は、Feおよび不純物である。また、図4に示す何れの鋼板(高強度鋼板HT1〜HT3、低強度鋼板MS1〜MS3)も、冷間圧延工程により製造されたままの鋼板であり、その後の工程(焼鈍工程等)で処理されていない鋼板である。また、成品の引張強度クラスとは、各鋼板の成品として要求される引張強度のクラスである。尚、成品とは、冷間圧延工程後の各工程(焼鈍工程等)で処理された鋼板を指す。
Claims (5)
- 2枚の鋼板の重ね合わせ部に対してマッシュシーム溶接を行って溶接継手を形成する溶接継手の形成方法であって、
前記鋼板のそれぞれの上下に配置された上側クランプおよび下側クランプにより、前記2枚の鋼板をクランプする第1の工程と、
前記2枚の鋼板がクランプされ、且つ、前記重ね合わせ部の上下に配置された上側円板電極および下側円板電極を回転させた状態で、前記上側円板電極および前記下側円板電極により前記重ね合わせ部の接合予定箇所に対して加圧と通電とを行いながら、前記接合予定箇所に沿うように、前記上側円板電極および前記下側円板電極を前記2枚の鋼板に対して相対的に移動させることにより、前記重ね合わせ部の接合予定箇所に対してマッシュシーム溶接を行い、接合部を形成する第2の工程と、
前記2枚の鋼板がクランプされ、且つ、前記上側円板電極および前記下側円板電極の前記2枚の鋼板に対する相対的な移動方向を前側とした場合に、前記上側円板電極および前記下側円板電極よりも後側の位置で前記接合部の上下に配置された上側加圧ロールおよび下側加圧ロールを回転させた状態で、前記上側加圧ロールおよび前記下側加圧ロールにより前記接合部に対して加圧を行いながら、前記マッシュシーム溶接の進行方向に沿うように、前記上側加圧ロールおよび前記下側加圧ロールを前記2枚の鋼板に対して相対的に移動させることにより、前記接合部を変形させる第3の工程と、を有し、
前記第3の工程により前記接合部を変形する際に、突出側加圧ロールの接触端部は、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面よりも、前記鋼板が配置されている側に突き出した状態になっており、
前記突出側加圧ロールは、前記上側加圧ロールおよび前記下側加圧ロールの何れか一方の加圧ロールであり、
前記突出側加圧ロールの接触端部は、前記突出側加圧ロールの端部のうち、前記第3の工程により前記接合部を変形する際に、前記鋼板と接触する位置にある端部であり、
前記突出側加圧ロール側クランプは、前記上側クランプおよび前記下側クランプのうち、前記突出側加圧ロールが配置されている側にあるクランプであり、
前記突出側加圧ロール側クランプのクランプ面は、前記突出側加圧ロール側クランプの前記鋼板と接触する面であり、
前記突出側加圧ロールの接触端部の上下方向の突き出し量は、突出側加圧ロール側鋼板の板厚の0[%]を超えて100[%]未満であり、
前記突出側加圧ロール側鋼板は、前記2枚の鋼板の一方の鋼板であって、前記重ね合わせ部において、前記突出側加圧ロールが配置されている側で他方の鋼板と重ね合わせられる鋼板であり、
前記2枚の鋼板の溶接割れ感受性組成Pcmが異なることを特徴とする溶接継手の形成方法。 - 前記突出側加圧ロール側鋼板の溶接割れ感受性組成Pcmは、前記他方の鋼板の溶接割れ感受性組成Pcmよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の溶接継手の形成方法。
- 前記2枚の鋼板のうち何れかの鋼板の以下の(A)式で表される溶接割れ感受性組成Pcmは、0.31[質量%]以上0.60[質量%]以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接継手の形成方法。
Pcm[質量%]=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cr]/20+[Mo]/15+[Cu]/20+[Ni]/60+[V]/10+5[B] ・・・(A)
(1)式において、[C]、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]、[Cu]、[Ni]、[V]、[B]は、それぞれ、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、V、
Bの含有量(質量%)である。 - 前記2枚の鋼板のうち何れかの鋼板の以下の(A)式で表される溶接割れ感受性組成Pcmは、0.005[質量%]以上0.100[質量%]以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の溶接継手の形成方法。
Pcm[質量%]=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cr]/20+[Mo]/15+[Cu]/20+[Ni]/60+[V]/10+5[B] ・・・(A)
(1)式において、[C]、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]、[Cu]、[Ni]、[V]、[B]は、それぞれ、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、V、Bの含有量(質量%)である。 - 前記突出側加圧ロールの接触端部の上下方向の突き出し量は、前記突出側加圧ロール側鋼板の板厚の10[%]以上50[%]以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の溶接継手の形成方法。
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