JP6816557B2 - 溶接継手の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶接継手の形成方法に関し、特に、マッシュシーム溶接を行うために用いて好適なものである。
例えば、鉄鋼製造プロセスにおいて、冷間圧延工程により製造されたコイルを、後工程(連続焼鈍工程やめっき工程)で連続的に処理するために、コイルの先端と尾端とをマッシュシーム溶接により接合することが行われている(特許文献1を参照)。マッシュシーム溶接では、円板電極(電極輪とも称される)の幅よりも鋼板の重ね代を小さくし、2枚の鋼板の重ね合わせ部に対して、上下から一対の円板電極により加圧及び通電し、当該一対の円板電極を回転させながら溶接予定箇所(接合予定箇所)に沿って移動させることにより、当該溶接予定箇所を連続的に溶接する。
また、このようにして溶接された溶接部の厚みを薄くすると共に表面の形状を平坦にするために、溶接部に対し、加圧ロール(スエージングロールやプラニッシュロールとも称される)で加圧することが行われる(特許文献2を参照)。更に、特許文献2では、円盤電極の損傷を防ぐために、溶接の前にも、溶接後の2枚の鋼板の重ね合わせ部に対し、前述した加圧ロールとは別の加圧ロールで加圧することが行われる。
ところで、例えば、自動車の軽量化や衝突安全性向上の必要性から、バンパー、インパクトビーム、リンフォース、ボディの一部等に引張強度が高い高強度鋼板の適用が増えている。このような高強度鋼板をマッシュシーム溶接する場合、溶接部が割れやすくなるという課題がある。かかる溶接部の割れは、主に水素による脆化に起因して起きると考えられる。水素による脆化割れは、組織の靭性、作用する応力、および水素源の三つの因子が相乗的に働くことによって生じる。TRIP鋼やDP鋼などの複合組織鋼(組織制御鋼とも称される)には合金元素が比較的多く添加されているため、溶接部が硬化しやすく、水素による脆性割れを引き起こしやすい組織となる傾向がある。また、高強度鋼板では、溶接により発生する残留応力が大きくなり、作用する応力も大きくなる。更に、空気中の水分や鋼板の表面の油分が溶接熱によって分解し水素源となる。そして、これらの相乗作用によって溶接部の割れを起こす場合がある。溶接部に割れが存在すると、例えば、マッシュシーム溶接された鋼板が、その後、搬送ロールで曲げられたり、調質圧延工程で調質圧延されたりするときに破断する場合がある。このような場合、鋼板の製造に支障をきたす。
そこで、特許文献3では、円板電極によりマッシュシーム溶接を行って鋼板に溶接部を形成した後、当該円板電極を加圧および通電しながら当該溶接部に沿うように当該鋼板に対して相対的に移動させることにより、当該溶接部に対して熱処理を行うことが記載されている。このような熱処理により、組織の軟質化による靭性改善、接合部内の水素の拡散・排出を促進することや残留応力を低減することができる。また、マッシュシーム溶接で用いる円板電極を用いて熱処理を行うので熱処理を行うための設備を別途用意する必要がない。
特開平1−266969号公報 特開2006−110577号公報 特開2016−136725号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、通常のマッシュシーム溶接では行わない熱処理を行うため、工程が増加することになる。また、熱処理の最適な条件を探索する必要があり、このような条件を探索することは容易ではない。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、マッシュシーム溶接により形成された接合部の機械的特性を改善させることを、工程を増やすことなく容易に実現することを目的とする。
本発明の溶接継手の形成方法は、2枚の鋼板の重ね合わせ部に対してマッシュシーム溶接を行って溶接継手を形成する溶接継手の形成方法であって、前記鋼板のそれぞれの上下に配置された上側クランプおよび下側クランプにより、前記2枚の鋼板をクランプする第1の工程と、前記2枚の鋼板がクランプされ、且つ、前記重ね合わせ部の上下に配置された上側円板電極および下側円板電極を回転させた状態で、前記上側円板電極および前記下側円板電極により前記重ね合わせ部の接合予定箇所に対して加圧と通電とを行いながら、前記接合予定箇所に沿うように、前記上側円板電極および前記下側円板電極を前記2枚の鋼板に対して相対的に移動させることにより、前記重ね合わせ部の接合予定箇所に対してマッシュシーム溶接を行い、接合部を形成する第2の工程と、前記2枚の鋼板がクランプされ、且つ、前記上側円板電極および前記下側円板電極の前記2枚の鋼板に対する相対的な移動方向を前側とした場合に、前記上側円板電極および前記下側円板電極よりも後側の位置で前記接合部の上下に配置された上側加圧ロールおよび下側加圧ロールを回転させた状態で、前記上側加圧ロールおよび前記下側加圧ロールにより前記接合部に対して加圧を行いながら、前記マッシュシーム溶接の進行方向に沿うように、前記上側加圧ロールおよび前記下側加圧ロールを前記2枚の鋼板に対して相対的に移動させることにより、前記接合部を変形させる第3の工程と、を有し、前記第3の工程により前記接合部を変形する際に、突出側加圧ロールの接触端部は、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面よりも、前記鋼板が配置されている側に突き出した状態になっており、前記突出側加圧ロールは、前記上側加圧ロールおよび前記下側加圧ロールの何れか一方の加圧ロールであり、前記突出側加圧ロールの接触端部は、前記突出側加圧ロールの端部のうち、前記第3の工程により前記接合部を変形する際に、前記鋼板と接触する位置にある端部であり、前記突出側加圧ロール側クランプは、前記上側クランプおよび前記下側クランプのうち、前記突出側加圧ロールが配置されている側にあるクランプであり、前記突出側加圧ロール側クランプのクランプ面は、前記突出側加圧ロール側クランプの前記鋼板と接触する面であり、前記突出側加圧ロールの接触端部の上下方向の突き出し量は、突出側加圧ロール側鋼板の板厚の0[%]を超えて100[%]未満であり、前記突出側加圧ロール側鋼板は、前記2枚の鋼板の一方の鋼板であって、前記重ね合わせ部において、前記突出側加圧ロールが配置されている側で他方の鋼板と重ね合わせられる鋼板であり、前記2枚の鋼板の溶接割れ感受性組成Pcmが異なることを特徴とする。
本発明によれば、マッシュシーム溶接により形成された接合部の機械的特性を改善させることを、工程を増やすことなく容易に実現することができる。
シーム溶接機の構成の一例を示す図である。 スエージング時の上側クランプ、下側クランプ、上側加圧ロール、および下側加圧ロールの位置の関係の一例を示す図である。 溶接継手の溶接線に垂直な方向に切った断面を示す図(写真)である。 高強度鋼板および低強度鋼板の化学成分の一例を表形式で示す図である。 溶接条件、突き出し量、および割れの評価結果の一例を表形式で示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
(鋼板)
まず、マッシュシーム溶接に使用する鋼板について説明する。後述する本実施形態の溶接継手の形成方法では、マッシュシーム溶接を行う2枚の鋼板として、一般的なマッシュシーム溶接が適用される鋼種および板厚の鋼板を採用することができ、2枚の鋼板は同種の鋼板でも異種の鋼板であってもよい。
ただし、背景技術の欄で記載したように、高強度鋼板では、溶接部に発生する残留応力が大きくなり、溶接部に割れが生じやすくなる。とりわけ製品の強度が同じであれば、TRIP鋼やDP鋼などの合金元素の添加量が多い高強度鋼板では、このような傾向が顕著になる。そこで、高強度鋼板および低強度鋼板に対してマッシュシーム溶接を行うことにより、溶接部に発生する残留応力を低下させることが考えられる。尚、低強度鋼板は、高強度鋼板よりも引張強度が低い鋼板であり、例えば、軟鋼板である。しかしながら、このように高強度鋼板および低強度鋼板に対してマッシュシーム溶接を行い、適正な大きさのナゲットを形成しても、(高強度鋼板や低強度鋼板の鋼種によっては)溶接部が割れる場合がある。例えば、製品としては引張強度が低い低強度鋼板であっても、冷延圧延工程の直後の段階では、引張強度はそれほど低くない。このような鋼板および高強度鋼板に対してマッシュシーム溶接を行う場合、これらの鋼板の引張強度の差はそれほど大きくならない。このような場合、例えば、マッシュシーム溶接を行った後、時間が経過してから、溶接部の割れが生じることがある(いわゆる遅れ割れが生じることがある)。また、高強度鋼板と低強度鋼板の引張強度の差を確保しても、それだけでは溶接部の割れのリスクを十分に低減することができない。
以上のような背景の下、詳細は後述するが、本発明者らは、高強度鋼板および低強度鋼板に対してマッシュシーム溶接を行う際に、新たな工程を付加することなく、溶接部に割れが発生するリスクを低減できる手法を見出した。そこで、本実施形態では、マッシュシーム溶接を行う2枚の鋼板として、高強度鋼板と低強度鋼板とを用いる場合を例に挙げて説明する。
<高強度鋼板>
[溶接割れ感受性組成Pcm]
溶接割れ感受性組成Pcmは、接合部の割れ感受性を示すものである。本実施形態では、溶接割れ感受性組成Pcmは、以下の(1)式で表されるものとする。
Pcm[質量%]=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cr]/20+[Mo]/15+[Cu]/20+[Ni]/60+[V]/10+5[B] ・・・(1)
(1)式において、[C]、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]、[Cu]、[Ni]、[V]、[B]は、それぞれ、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、V、Bの含有量(質量%)である。
鋼板に含まれる合金元素の添加量が多いと、溶接割れ感受性組成Pcmは大きくなる。本実施形態では、合金元素の添加量が多い鋼板を高強度鋼板として用いる。よって、高強度鋼板は、大きな溶接割れ感受性組成Pcmを有している。
溶接割れ感受性組成Pcmが大きいと、マッシュシーム溶接による溶接部の破断(ナゲット内破断等)が生じやすくなり、溶接部の特性が劣化するという傾向が確認されている。よって、溶接割れ感受性組成Pcmが大きすぎると、マッシュシーム溶接による溶接部の破断の抑制が困難になる。また、溶接割れ感受性組成Pcmが大きすぎると、鋼板の加工性が悪くなる。
以上のような観点から、高強度鋼板の溶接割れ感受性組成Pcmの範囲は、0.31[質量%]以上0.60[質量%]以下、好ましくは、0.40[質量%]以上0.60[質量%]とする。
溶接割れ感受性組成Pcmの範囲が、0.40[質量%]以上0.60[質量%]以下の鋼板としては、例えば、1180MPa級のTRIP鋼や1470MPa級のTRIP鋼等、引張強度が1000[MPa]以上1650[MPa]以下のTRIP鋼が挙げられる。また、溶接割れ感受性組成Pcmの範囲が、0.31[質量%]以上0.60[質量%]以下の鋼板としては、前述したTRIP鋼に加え、980MPa級のTRIP鋼や、1470MPa級のDP鋼等、引張強度が800[MPa]以上1650[MPa]以下の複合組織鋼が挙げられる。ただし、溶接割れ感受性組成Pcmが前述した範囲の鋼板であれば、高強度鋼板として用いる鋼板の鋼種は特に限定されない。
[板厚]
高強度鋼板の板厚は特に限定されない。例えば、自動車の車体等に一般に用いられている高強度鋼板の板厚(0.4[mm]〜4.5[mm]、好ましくは0.8[mm]〜2.3[mm])程度であればよい。
[成分組成]
前述した溶接割れ感受性組成Pcmの範囲(0.31[質量%]以上0.60[質量%]以下、好ましくは、0.40[質量%]以上0.60[質量%])を確保できる成分組成を有する鋼板を高強度鋼板として選択すればよい。自動車分野等で使用されることを考慮すれば、高強度鋼板の成分組成は、以下の成分組成が好ましい。
〔C:0.15[質量%]〜0.50[質量%]〕
Cは、鋼板の強度を高めるため、必要な組織を得るために必要な基本元素のひとつである。しかしながら、溶接割れ感受性組成Pcmに対してCの寄与度は高く、Cの過剰な添加は、例えば、コイル継ぎ工程でのマッシュシーム溶接後に溶接部の割れが生じるリスクを高める。また、完成した鋼板の溶接性にも影響を与え、Cの過剰な添加は溶接性を低下させる。そこで、溶接性の観点から、Cの含有量は、0.50[質量%]以下とし、0.45[質量%]以下が好ましく、更に0.40%[質量%]がより好ましい。
一方、Cの含有量が0.15[質量%]未満では鋼板の強度の確保が困難になる上、必要な組織を得ることができなくなる。そのためCの含有量は、0.15[質量%]以上とし、0.18%[質量%]が好ましい。
〔Si:0.4[質量%]〜2.0[質量%]〕
Siは、鋼板の強度を高めるため、必要な組織を得るために必要な基本元素のひとつである。例えば焼鈍工程において、鉄系炭化物の生成を抑制して強度と成形性を高める効果があり、また、例えば、所定の量の残留オーステナイトを確保することが必要なTRIP鋼ではSiの役割が重要である。しかしながら、Siの含有量が2.0[質量%]を超えると鋼板が脆化し、冷間圧延が困難となる場合がある。また、Siの過剰な添加は溶接割れ感受性組成Pcmを増加させ、溶接部の割れが生じるリスクを高める。このため、Siの含有量は2.0[質量%]以下とする。
一方、Siの含有量が0.4[質量%]未満では鋼板の強度の確保が困難になる上、例えば鋼板の焼鈍工程において鉄系炭化物が多量に生成してしまい、成形性を低下させる。強度および成形性の観点からSiの含有量は、0.4[質量%]以上とし、1.0[質量%]以上が好ましい。
〔Mn:1.0[質量%]〜3.5%[質量%]〕
Mnは、鋼板の強度を高めるため、必要な組織を得るために必要な基本元素のひとつである。しかしながら、Mnの含有量が3.5[質量%]を超えると、鋼板の板厚中央部に粗大なMn濃化部が生じ、脆化が起こり易くなり、鋳造したスラブが割れる等のトラブルが起こり易い。また、Mnの含有量が3.5[質量%]を超えると溶接性も劣化する。更に、Mnの過剰な添加は溶接割れ感受性組成Pcmを増加させ、溶接部の割れが生じるリスクを高める。従って、Mnの含有量は、3.5[質量%]以下とする必要があり、3.0[質量%]以下が好ましい。
一方、Mnの含有量が1.0[質量%]未満であると、焼鈍後の冷却中に軟質な組織が多量に形成されてしまうため、所定の強度の確保が困難になる。このため、Mnの含有量は、1.0[質量%]以上とする。強度をより高めるため、Mnの含有量は、1.5[質量%]以上が好ましく、1.8[質量%]以上がより好ましい。
〔P:0.002[質量%]〜0.025[質量%]〕
Pは、鋼板の板厚中央部に偏析する傾向があり、溶接部を脆化させる。Pの含有量が0.025[質量%]を超えると溶接部が大幅に脆化するため、Pの含有量を0.025[質量%]以下に限定する。溶接部の脆化の観点から、Pの含有量は0.020[質量%]以下とすることが好ましい。
Pの含有量の下限は、特に定める必要はないが、Pの含有量を0.002[質量%]未満とすることは製造コストの大幅な増加を伴うことから、0.002[質量%]を下限とする。
〔S:0.0001[質量%]〜0.0100[質量%]〕
Sは、鋼板の溶接性並びに鋳造時および熱間圧延時の製造性に悪影響を及ぼす。また、Sは、Mnと結びついて粗大なMnSを形成して鋼板の加工性を低下させる。このため、Sの含有量を0.0100[質量%]以下とする。鋼板の成形性の観点から、Sの含有量は、0.0080[質量%]以下とすることが好ましく、0.0050[質量%]以下とすることがより好ましい。
Sの含有量の下限は、特に定める必要はないが、Sの含有量を0.0001[質量%]未満とすることは製造コストの大幅な増加を招くことから、0.0001[質量%]を下限とする。Sの含有量は、好ましくは0.0005[質量%]以上であり、0.0010[質量%]以上がより好ましい。
〔Al:0.01[質量%]〜1.50[質量%]〕
Alは、鋼板の強度および成形性を高める元素である。また、鉄系炭化物の生成を抑えるSiと類似の効果も有する。しかしながら、Alの含有量が1.50[質量%]を超えると鋼板の溶接性が悪化するため、Alの含有量の上限を1.50[質量%]とする。この観点から、Alの含有量は、0.50[質量%]以下とすることが好ましく、0.10[質量%]以下とすることがより好ましい。
一方、Alの含有量の下限は特に定める必要がないが、Alは原料中に微量に存在する不可避的不純物であり、その含有量を0.01[質量%]未満とするには製造コストの大幅な増加が伴うため、Alの含有量は0.01[質量%]以上とする。またAlは、脱酸材としても有効な元素である。よって、その効果を十分に得るためにAlの含有量は、0.01[質量%]以上とすることが好ましい。
〔N:0.0001[質量%]〜0.0100[質量%]〕
Nは、粗大な窒化物を形成し、鋼板の加工性を劣化させることから、その添加量を抑える必要がある。Nの含有量が0.0100[質量%]を超えると、鋼板の加工性の劣化が顕著となることから、Nの含有量の上限を0.0100[質量%]とする。さらには、Nの含有量は、0.0070[質量%]とすることが好ましく、0.0050[質量%]とすることがより好ましい。
一方、Nの含有量の下限は特に定める必要がないが、Nの含有量を0.0001[質量%]未満とすることは製造コストの大幅な増加を招くことから0.0001[質量%]以上とする。また、Nの含有量は、好ましくは0.0005[質量%]以上であり、より好ましくは0.0010[質量%]以上である。
〔O:0.0001[質量%]〜0.0100[質量%]〕
Oは、酸化物を形成し、鋼板の加工性を劣化させることから、その添加量を抑える必要がある。Oの含有量が0.0100[質量%]を超えると、鋼板の加工性の劣化が顕著となることから、Oの含有量の上限を0.0100%以下とする。更にOの含有量は、0.0070[質量%]以下であることが好ましく0.0050[質量%]以下であることがより好ましい。
一方、Oの含有量の下限は特に定める必要がないが、Oの含有量を0.0001[質量%]未満とすることは、製造コストの大幅な増加を招くことから、0.0001[質量%]を下限とする。また、Oの含有量は、好ましくは、0.0003%以上とすることが好ましく、0.0005%以上とすることがより好ましい。
高強度鋼板には、以上の元素に加えて、以下の元素の1種又は2種以上を添加することが好ましい。
〔Ti:0.01[質量%]〜0.10[質量%]〕
Tiは、析出物の強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒化の強化、および再結晶の抑制を通じた転位の強化によって、鋼板の強度の上昇に寄与する元素である。しかしながら、Tiの含有量が0.10[質量%]を超えると、炭窒化物の析出が多くなり鋼板の加工性が劣化するため、Tiの含有量は、0.10[質量%]以下であることが好ましい。
一方、Tiの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Tiの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るためには、Tiの含有量は、0.01[質量%]以上とし、0.02[質量%]以上が好ましい。
〔Cr:0.1[質量%]〜1.0[質量%]以下〕
Crは、高温での相変態を抑制し、鋼板の強度の向上に有効な元素であり、Cおよび/またはMnの一部に代えて添加してもよい。Crの含有量が1.0[質量%]を超えると、熱間での鋼板の加工性が損なわれ生産性が低下することから、Crの含有量は1.0[質量%]以下とする。
一方、Crの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Crの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Crの含有量は、0.1[質量%]以上とし、0.3[質量%]以上が好ましい。
〔Mo:0.03[質量%]〜0.50[質量%]〕
Moは、高温での鋼板の相変態を抑制し、鋼板の高強度化に有効な元素であり、Cおよび/またはMnの一部に代えて添加してもよい。Moの含有量が0.50[質量%]を超えると、熱間での鋼板の加工性が損なわれ生産性が低下することと、多量のMoの添加は合金コストを上昇させることと、過剰なMoの添加は溶接割れ感受性組成Pcmを増加させ、溶接部の割れが生じるリスクを高めることとから、Moの含有量は0.50[質量%]以下とする。
一方、Moの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Moの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Moの含有量は、0.03[質量%]以上とし、0.05[質量%]以上が好ましい。
〔B:0.0003[質量%]〜0.0050[質量%]〕
Bは、高温での鋼板の相変態を抑制し、鋼板の高強度化に有効な元素であり、Cおよび/またはMnの一部に代えて添加してもよい。Bの含有量が0.0050[質量%]を超えると、熱間での鋼板の加工性が損なわれ生産性が低下することと、過剰なBの添加は溶接割れ感受性組成Pcmを増加させ、溶接部の割れが生じるリスクを高めることから、Bの含有量は、0.0050[質量%]以下とし、0.0030[質量%]以下がより好ましい。
一方、Bの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Bの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Bの含有量は、0.0003[質量%]以上とし、0.0005[質量%]以上が好ましい。
〔Nb:0.005[質量%]〜0.100[質量%]〕
Nbは、析出物の強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒化の強化、および再結晶の抑制を通じた転位の強化によって、鋼板の強度の上昇に寄与する元素である。しかしながら、Nbの含有量が0.100[質量%]を超えると、炭窒化物の析出が多くなって鋼板の加工性が低下するため、Nbの含有量は、0.100[質量%]以下とし、0.050[質量%]以下が好ましい。
一方、Nbの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Nbによる鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Nbの含有量は、0.005[質量%]以上とし、0.010[質量%]以上が好ましい。
〔V:0.005[質量%]〜0.200[質量%]〕
Vは、析出物の強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒化の強化、および再結晶の抑制を通じた転位強化によって、鋼板の強度の上昇に寄与する元素である。しかしながら、Vの含有量が0.200[質量%]を超えると、炭窒化物の析出が多くなって鋼板の成形性が劣化するため、Vの含有量は、0.200[質量%]以下とし、0.100[質量%]以下が好ましい。
一方、Vの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Vの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るにはVの含有量は0.005[質量%]以上とすることが好ましい。
〔Ni:0.1[質量%]〜1.0[質量%]〕
Niは、高温での鋼板の相変態を抑制し、鋼板の高強度化に有効な元素であり、Cおよび/またはMnの一部に代えて添加してもよい。Niの含有量が1.0[質量%]を超えると、鋼板の溶接性が損なわれることから、Niの含有量は、1.0%以下であることが好ましい。
一方、Niの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Niの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Niの含有量は、0.1[質量%]以上とすることが好ましい。
〔Cu:0.01[質量%]〜0.50[質量%]〕
Cuは、微細な粒子として鋼中に存在することにより鋼板の強度を高める元素であり、Cおよび/またはMnの一部に替えて添加することができる。Cuの含有量が0.50[質量%]を超えると、鋼板の溶接性が損なわれることから、Cuの含有量は、0.50[質量%]以下であることが好ましい。
一方、Cuの含有量の下限は、特に定める必要がないが、Cuの添加による鋼板の強度の向上の効果を十分に得るには、Cuの含有量は、0.01[質量%]以上とし、0.03[質量%]以上が好ましい。
尚、高強度鋼板の残部は、鉄(Fe)および不純物である。不純物としては、例えば、鉱石や、スクラップなどの原材料に含まれるものや、製造工程において含まれるものが例示される。
<低強度鋼板>
[溶接割れ感受性組成Pcm]
前述したように、鋼板の引張強度が高いと、溶接割れ感受性組成Pcmは大きくなる(言い換えると、鋼板の引張強度が低いと、溶接割れ感受性組成Pcmは小さくなる)。また、溶接割れ感受性組成Pcmが小さすぎると、鋼板の製造コストが増加する。このような観点から、低強度鋼板の溶接割れ感受性組成Pcmの範囲は、0.005[質量%]以上0.100[質量%]以下とする。前述したように本実施形態では、溶接割れ感受性組成Pcmは、(1)式で表されるものとする。
溶接割れ感受性組成Pcmの範囲が、0.005[質量%]以上0.100[質量%]以下の鋼板としては、270MPa級の冷延鋼板等、引張強度が800[MPa]以下の冷延鋼板が挙げられる。ただし、溶接割れ感受性組成Pcmが前述した範囲の鋼板であれば、低強度鋼板として用いる鋼板の鋼種は特に限定されない。
[板厚]
低強度鋼板の板厚は特に限定されない。例えば、自動車の車体等に一般に用いられている低強度鋼板の板厚(0.4[mm]〜4.5[mm]、好ましくは0.8[mm]〜2.3[mm])程度であればよい。
[成分組成]
前述した溶接割れ感受性組成Pcmの範囲(0.005[質量%]以上0.100[質量%]以下)を確保できる成分組成を有する鋼板を低強度鋼板として選択すればよい。このような溶接割れ感受性組成Pcmの範囲の鋼板は、その引張強度が低く、また、合金元素の添加等、特別な成分組成を有している必要はない。従って、ここでは、低強度鋼板の成分組成の具体例についての詳細な説明を省略する。
(溶接機および溶接方法)
本実施形態では、冷間圧延工程により製造されたコイルを、後工程(連続焼鈍工程やめっき工程)で連続的に処理するために、コイルの先端と尾端とをマッシュシーム溶接により接合する場合(いわゆるコイル継ぎを行う場合)を例に挙げて説明する。
図1は、シーム溶接機100の構成の一例を示す図である。各図において、X、Y、Z座標は、各図における向きの関係を示すものである。また、図1において、○の中に●を付したものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示す。
シーム溶接機100は、上側クランプ111、113(図2も参照)、下側クランプ112、114(図2も参照)、上側押圧シリンダ121、122、下側押圧シリンダ123、124、上側円板電極131、下側円板電極132、上側油圧シリンダ141、下側油圧シリンダ142、上側加圧ロール151、下側加圧ロール152、上側油圧シリンダ161、下側油圧シリンダ162、キャリッジフレーム170、駆動装置181〜187、および溶接電源190を有する。図2は、スエージング時の上側クランプ111、113、下側クランプ112、114、上側加圧ロール151、および下側加圧ロール152の位置の関係の一例を示す図である。図2において、○の中に×を付したものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。
上側鋼板S1および下側鋼板S2は、高強度鋼板および低強度鋼板の何れかである。上側鋼板S1が高強度鋼板である場合には下側鋼板S2は低強度鋼板であり、下側鋼板S2が低強度鋼板である場合には上側鋼板S1は高強度鋼板である。上側鋼板S1および下側鋼板S2の搬送方向は、X軸方向の正の方向(図1の紙面の奥側から手前側の方向)であるものとする。図2に示すように、マッシュシーム溶接に際し、上側鋼板S1を上側(Z軸の正の方向側)、下側鋼板S2を下側(Z軸の負の方向側)として、上側鋼板S1の先端または尾端の部分と、下側鋼板S2の尾端または先端の部分とは、所定の重ね代を有した状態で相互に重ね合わせられる。
例えば、図2(a)に示すように、先行するコイルが下側鋼板S2であり、後行するコイルが上側鋼板S1であるとする。この場合、下側鋼板S2の尾端の部分と上側鋼板S1の先端の部分とが相互に重ね合わせられる。そして、後述するようにして上側鋼板S1と下側鋼板S2との当該重ね合わせられた部分(重ね合わせ部)の溶接予定箇所に対してマッシュシーム溶接が行われる。その後、マッシュシーム溶接が行われた上側鋼板S1の尾端の部分がマッシュシーム溶接を行う位置に到達し、当該上側鋼板S1の尾端の部分と、当該上側鋼板S1の次に搬送されるコイル(鋼板)の先端の部分とが相互に重ね合わせられた状態になる。このとき、図2(b)に示すように、当該上側鋼板S1は下側鋼板S2となり、当該上側鋼板S1の次に搬送される鋼板は上側鋼板S1となる。即ち、マッシュシーム溶接が行われる際に、先行するコイルの尾端の部分は、常に、後行するコイルの先端の部分の下側に位置した状態になる。そして、当該上側鋼板S1と、当該上側鋼板S1の次に搬送されるコイル(鋼板)との当該重ね合わせられた部分の溶接予定箇所に対してマッシュシーム溶接が行われる。尚、図2(a)および図2(b)に示す例とは逆に、先行するコイルが上側鋼板S1になる場合、先行するコイルの尾端の部分は、常に、後行するコイルの先端の部分の上側に位置した状態で、それらの部分に対するマッシュシーム溶接が行われる。
図1の説明に戻り、駆動装置181は、上側押圧シリンダ121、122の動作を制御する。上側押圧シリンダ121、122は、上側クランプ111に取り付けられている。上側押圧シリンダ121、122は、駆動装置181による制御に従って上下方向(Z軸方向)に移動する。例えば、マッシュシーム溶接を開始する前に、下側鋼板S2の尾端の部分と上側鋼板S1の先端の部分とが相互に重ね合わせられた状態になると、上側押圧シリンダ121、122は、上側クランプ111を下側(Z軸の負の方向側)に押し付ける。尚、図示は省略するが、図2(a)〜図2(c)に示す上側クランプ113に対しても、以上のような駆動装置および上側押圧シリンダが配置される。
駆動装置182は、下側押圧シリンダ123、124の動作を制御する。下側押圧シリンダ123、124は、下側クランプ112に取り付けられている。下側押圧シリンダ123、124は、駆動装置182による制御に従って上下方向(Z軸方向)に移動する。マッシュシーム溶接を開始する前に、下側鋼板S2の尾端の部分と上側鋼板S1の先端の部分とが相互に重ね合わせられた状態になると、下側押圧シリンダ123、124は、下側クランプ112を上側(Z軸の正の方向側)に押し付ける。尚、図示は省略するが、図2(a)〜図2(c)に示す下側クランプ114に対しても、以上のような駆動装置および上側押圧シリンダが配置される。
以上のようにして上側クランプ111、113および下側クランプ112、114が押し付けられることにより、上側鋼板S1および下側鋼板S2の位置が固定される。
上側円板電極131および下側円板電極132は、円板状の電極であり、上側鋼板S1および下側鋼板S2に対してマッシュシーム溶接を行うための電極である。本実施形態では、上側円板電極131および下側円板電極132は、共に銅合金製の電極である。尚、上側円板電極131および下側円板電極132は、同じもので実現することができる。
駆動装置183は、上側油圧シリンダ141および上側円板電極131の動作を制御する。上側油圧シリンダ141は、駆動装置183による制御に従って上下方向(Z軸方向)に移動する。マッシュシーム溶接を行う際に、上側円板電極131は、上側鋼板S1の上面に接した状態になる。また、上側円板電極131は、駆動装置183による制御に従って回転する。
駆動装置184は、下側油圧シリンダ142および下側円板電極132の動作を制御する。下側油圧シリンダ142は、駆動装置184による制御に従って上下方向(Z軸方向)に移動する。マッシュシーム溶接を行う際に、下側円板電極132は、下側鋼板S2の下面に接した状態になる。また、下側円板電極132は、駆動装置184による制御に従って回転する。
以上のようにマッシュシーム溶接を行う際に、上側円板電極131が上側鋼板S1の上面に接すると共に下側円板電極132が下側鋼板S2の下面に接し、上側鋼板S1および下側鋼板S2が所定の加圧力で加圧された状態で、溶接電源190から電力が供給されると、上側円板電極131および下側円板電極132を介して上側鋼板S1および下側鋼板S2が通電される。
上側加圧ロール151および下側加圧ロール152は、スエージングロールやプラニッシュロールと称されるロールであり、スエージングを行う(マッシュシーム溶接が行われた溶接部の厚みを低減させると共に当該溶接部の表面の形状を平坦にする)ためのロールである。本実施形態では、上側加圧ロール151および下側加圧ロール152は、鋼製のロールであり、上側円板電極131および下側円板電極132よりも硬い材料で形成される。尚、上側加圧ロール151および下側加圧ロール152は、同じもので実現することができる。上側加圧ロール151および下側加圧ロール152は、上側円板電極131および下側円板電極132の上側鋼板S1および下側鋼板S2に対する相対的な移動方向を前側とした場合に、上側円板電極131および下側円板電極132よりも後側の位置で前記接合部の上下に配置される。後述するように図1に示す例では、キャリッジフレーム170がY軸の正の方向に移動を行うことでマッシュシーム溶接およびスエージングが行われる。よって、上側円板電極131および下側円板電極132の上側鋼板S1および下側鋼板S2に対する相対的な移動方向は、Y軸の正の方向になり、上側円板電極131および下側円板電極132よりも後側は、Y軸の負の方向になる。
駆動装置185は、上側油圧シリンダ161および上側加圧ロール151の動作を制御する。上側油圧シリンダ161は、駆動装置185による制御に従って上下方向(Z軸方向)に移動する。マッシュシーム溶接が行われた溶接部に対してスエージングを行う際に、上側加圧ロール151は、当該溶接部の上面に接した状態になる。また、上側加圧ロール151は、駆動装置185による制御に従って回転する。
駆動装置186は、下側油圧シリンダ162および下側加圧ロール152の動作を制御する。下側油圧シリンダ162は、駆動装置186による制御に従って上下方向(Z軸方向)に移動する。マッシュシーム溶接が行われた溶接部に対してスエージングを行う際に、下側加圧ロール152は、当該溶接部の下面に接した状態になる。また、下側加圧ロール152は、駆動装置186による制御に従って回転する。
以上のようにスエージングを行う際に、上側加圧ロール151が溶接部の上面に接すると共に下側加圧ロール152が溶接部の下面に接すると、溶接部は、所定の加圧力で加圧される。尚、スエージングの際の加圧力は、マッシュシーム溶接の際の加圧力よりも大きい。
キャリッジフレーム170は、駆動装置187による制御に従って、上側鋼板S1および下側鋼板S2の板幅方向(Y軸方向(=溶接予定箇所に沿う方向(即ち溶接線の方向)))に移動する。キャリッジフレーム170には、上側油圧シリンダ141、161および下側油圧シリンダ142、162が取り付けられる。上側油圧シリンダ141は、上側円板電極131と相互に接続され、下側油圧シリンダ142は、下側円板電極132と相互に接続され、上側油圧シリンダ161は、上側加圧ロール151と相互に接続され、下側油圧シリンダ162は、下側加圧ロール152と相互に接続される。従って、キャリッジフレーム170がY軸方向に移動することによって、上側円板電極131、下側円板電極132、上側加圧ロール151、および下側加圧ロール152も、上側鋼板S1および下側鋼板S2の板幅方向に移動する。
キャリッジフレーム170がY軸の正の方向に移動を行いながら、前述したようにして、上側円板電極131および下側円板電極132により上側鋼板S1および下側鋼板S2が所定の加圧力で加圧された状態で上側鋼板S1および下側鋼板S2が通電されると、当該方向に沿ってマッシュシーム溶接が連続的に行われる。このマッシュシーム溶接に続いて、前述したようにして、上側加圧ロール151および下側加圧ロール152により溶接部が所定の加圧力が加圧されると、当該方向に沿ってスエージングが連続的に行われる。従って、キャリッジフレーム170がY軸の正の方向に1回移動する間に、上側鋼板S1および下側鋼板S2に対し、マッシュシーム溶接とスエージングとがこの順で連続して実行される。
本実施形態では、以上のようにしてスエージングを行うに際し、図2(a)および図2(b)に示すように、突出側加圧ロールの接触端部210a、210bが、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bよりも、(Z軸方向において)上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出した状態になるようにする。
ここで、突出側加圧ロールは、上側加圧ロール151および下側加圧ロール152の何れか一方のロールである。図2(a)に示す例では、突出側加圧ロールは、下側加圧ロール152であり、図2(b)に示す例では、突出側加圧ロールは、上側加圧ロール151である。突出側加圧ロールの接触端部210a、210bは、突出側加圧ロールの端部のうち、スエージングにより溶接部を変形する際に、少なくとも上側鋼板S1および下側鋼板S2の何れかと接触する位置にある端部である。図2(a)に示す例では、突出側加圧ロールの接触端部210aは、下側加圧ロール152の上端部であり、図2(b)に示す例では、突出側加圧ロールの接触端部210bは、上側加圧ロール151の下端部である。
突出側加圧ロール側クランプは、上側クランプ111、113および下側クランプ112、114のうち、突出側加圧ロールが配置されている側にあるクランプである。図2(a)に示す例では、突出側加圧ロールは、下側加圧ロール152であるので、突出側加圧ロールが配置されている側は、下側(Z軸の負の方向側)である。よって、突出側加圧ロール側クランプは、下側クランプ112、114になる。一方、図2(b)に示す例では、突出側加圧ロールは、上側加圧ロール151であるので、突出側加圧ロールが配置されている側は、上側(Z軸の正の方向側)である。よって、突出側加圧ロール側クランプは、上側クランプ111、113になる。突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bは、突出側加圧ロール側クランプの上側鋼板S1または下側鋼板S2と接触する面である。図2(a)に示す例では、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220aは、下側クランプ112、114の、下側鋼板S2、上側鋼板S1との接触面である。また、図2(b)に示す例では、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220bは、上側クランプ111、113の、上側鋼板S1、下側鋼板S2との接触面である。
また、本実施形態では、突出側加圧ロール側鋼板を低強度鋼板とする。突出側加圧ロール側鋼板は、上側鋼板S1および下側鋼板S2の一方の鋼板であって、それらの重ね合わせ部において、突出側加圧ロールが配置されている側で他方の鋼板と重ね合わせられる鋼板である。図2(a)に示す例では、突出側加圧ロールが配置されている側は、下側(Z軸の負の方向側)である。従って、上側鋼板S1および下側鋼板S2のうち、下側で重ね合わせられる下側鋼板S2が突出側加圧ロール側鋼板(低強度鋼板)になる。また、図2(b)に示す例では、突出側加圧ロールが配置されている側は、上側(Z軸の正の方向側)である。従って、上側鋼板S1および下側鋼板S2のうち、上側で重ね合わせられる上側鋼板S1が突出側加圧ロール側鋼板(低強度鋼板)になる。
図2(a)および図2(b)に示すように、突出側加圧ロールの接触端部210a、210bを、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bよりも、上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出すと共に、突出側加圧ロール側鋼板を低強度鋼板とすることによって、本来のスエージングの効果(溶接部の厚みの減少や表面の平坦化)に加え、溶接部に発生する残留応力を低下させることができ、溶接部の割れを抑制することができる。
一方、図2(c)に示すように、突出側加圧ロールの接触端部210cのZ軸方向の位置と、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220cのZ軸方向の位置とを一致させると、溶接部のZ軸方向の変形がない。従って、スエージングを行っても、本来のスエージングの効果(溶接部の厚みの減少や表面の平坦化)しか得ることができない。
以上のように、本発明者らは、突出側加圧ロールの接触端部210a、210bを、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bよりも、上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出すと共に、突出側加圧ロール側鋼板を低強度鋼板とすることによって、スエージングを行うことを見出した。
尚、突出側加圧ロールの接触端部210a、210bを、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bよりも、上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出していれば、左右のクランプのクランプ面のZ軸方向の位置は、図2(a)および図2(b)に示すように同じであってもよいし、図2(a)および図2(b)に示すようにせず異ならせてもよい。即ち、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bのZ軸方向の位置は、左右のクランプで同じであっても異なっていてもよい。
ここで、突出側加圧ロールの接触端部210a、210bを、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bよりも、上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出す際のZ軸方向における突き出し量D(=突出側加圧ロールの接触端部のZ軸方向(上下方向)の突き出し量D(以下、単に「突き出し量D」と称する))が小さいと、溶接部に発生する残留応力の低減の効果が十分に得られなくなる。一方、突き出し量Dが大きすぎると、当該突き出しによる溶接部の変形が大きくなり、前述した溶接部に発生する残留応力の低減分よりも、当該変形による残留応力の増大分の方が大きくなり、溶接部に発生する残留応力が却って大きくなる。また、上側クランプ111、113および下側クランプ112、114による上側鋼板S1および下側鋼板S2の固定(クランプ)が難しくなる。
以上のような観点から、突き出し量Dは、突出側加圧ロール側鋼板の板厚の0[%]超えて100[%]未満とし、10[%]以上50[%]以下が好ましく、20[%]以上40[%]以下がより好ましい。尚、図2(a)に示す例では、突出側加圧ロールは、下側加圧ロール152である。また、図2(b)に示す例では、突出側加圧ロールは、上側加圧ロール151である。また、本発明者らは、本来のスエージングの効果を得るために必要な加圧力の範囲では、スエージング時の加圧力を変えても、突き出し量Dが前述した範囲であれば、溶接部の割れを抑制する効果に影響は変わらないことを確認している。
本実施形態では、上側クランプ111、113および下側クランプ112、114によるクランプ(固定)により、上側鋼板S1および下側鋼板S2の位置は動かなくなる。駆動装置183、184は、上側油圧シリンダ141、下側油圧シリンダ142を用いて、マッシュシーム溶接に適した位置になるように、上側円板電極131、下側円板電極132のZ軸方向の位置を調整する。また、駆動装置185、186は、上側油圧シリンダ161、下側油圧シリンダ162を用いて、突き出し量Dが前述した範囲内で予め設定された値になるように、上側加圧ロール151、下側加圧ロール152のZ軸方向の位置を調整する。このようにした状態で、駆動装置187がキャリッジフレーム170を移動させることにより、前述したように、キャリッジフレーム170がY軸の正の方向に1回移動する間に、上側鋼板S1および下側鋼板S2に対し、マッシュシーム溶接が行われた後、続けて、当該マッシュシーム溶接が行われた部分(溶接部)に対して当該マッシュシーム溶接の進行方向に沿うようにスエージングが実行される。即ち、マッシュシーム溶接とスエージングとが、この順で連続して実行される。
(まとめ)
以上のように本実施形態では、スエージングを行うに際し、突出側加圧ロールの接触端部210a、210bを、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bよりも、上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出す。従って、マッシュシーム溶接およびスエージングの工程に対し新たな工程を付加することなく、マッシュシーム溶接により形成された溶接部の機械的特性を容易に改善させることができる。
ここで、特許文献1には、マッシュシーム溶接を行う円板電極に対し、クランプのクランプ面の位置をずらす技術が開示されている。しかしながら、この技術は、スエージングを行うためのロールではなく、マッシュシーム溶接を行うためのロールに関する技術である。また、この技術は、マッシュシーム溶接を行うに際し、上側鋼板と下側鋼板のZ軸方向のバランスを均一にするための技術である。これに対し、本実施形態では、上側鋼板S1および下側鋼板S2の溶接部のZ軸方向の位置は、上側または下側にずれることになり、上側鋼板S1と下側鋼板S2のZ軸方向のバランスを敢えて崩している。このような本実施形態の手法と特許文献1に記載の手法とは相容れない。また、特許文献2には、マッシュシーム溶接の前にスエージングを行うが、このスエージングは、マッシュシーム溶接に用いる円板電極の損耗を低減するためのものである。また、マッシュシーム溶接の後に行うスエージングも、一般的なスエージングに過ぎない。即ち、何れのスエージングも、溶接部の割れの低減を示唆するものではない。
(変形例)
本実施形態では、上側円板電極131、下側円板電極132、上側加圧ロール151、および下側加圧ロール152の全てを上下方向(Z軸方向)に個別に移動させることが可能である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、スエージングを行うに際し、突出側加圧ロールの接触端部210a、210bを、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bよりも、上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出せれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、上側クランプ111、113および下側クランプ112、114が、上側鋼板S1および下側鋼板S2を固定(クランプ)するZ軸方向の位置を移動させてもよい。このように上側クランプ111、113および下側クランプ112、114が、上側鋼板S1および下側鋼板S2を固定(クランプ)するZ軸方向の位置を可変とする場合、例えば、下側円板電極132および下側加圧ロール152のZ軸方向の位置を固定してもよい。この場合、下側油圧シリンダ142、162および駆動装置184、186は不要になる。更に、本実施形態のように、上側円板電極131、下側円板電極132、上側加圧ロール151、および下側加圧ロール152のZ軸方向の位置を個別に移動させることと、上側クランプ111、113および下側クランプ112、114が、上側鋼板S1および下側鋼板S2を固定(クランプ)するZ軸方向の位置を移動させることとの双方を行ってもよい。
また、本実施形態では、上側円板電極131、下側円板電極132、上側加圧ロール151、および下側加圧ロール152の全てが、駆動装置183〜186により回転駆動する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、これらの少なくとも1つは、回転駆動しなくてもよい。
また、本実施形態では、上側鋼板S1および下側鋼板S2の位置を固定してキャリッジフレーム170を移動させることにより、上側鋼板S1および下側鋼板S2に対して、上側円板電極131、下側円板電極132、上側加圧ロール151、および下側加圧ロール152を移動させる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、上側鋼板S1および下側鋼板S2に対して、上側円板電極131、下側円板電極132、上側加圧ロール151、および下側加圧ロール152を相対的に移動させていれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、上側円板電極131、下側円板電極132、上側加圧ロール151、および下側加圧ロール152の位置を固定して、上側鋼板S1および下側鋼板S2を移動させてもよい。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
(実施例)
次に、本発明の実施例を説明する。
<実施例1>
本実施例では、図2(a)および図2(b)に示したように、スエージングを行うに際し、突出側加圧ロールの接触端部210a、210bを、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220a、220bよりも、上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出した場合を発明例とする。一方、図2(c)に示したように、突出側加圧ロールの接触端部210cのZ軸方向の位置と、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220cのZ軸方向の位置とを一致させた場合を比較例とする。発明例と比較例との夫々の場合の溶接継手を作製した。本実施例では、以下の条件で溶接継手を作製した。なお、冷延鋼板は全て未焼鈍材である。
・高強度鋼板
鋼種:1470MPa級のTRIP鋼と同成分の冷延鋼板
板厚:1.6[mm]
溶接割れ感受性組成Pcm:0.56[質量%]
・低強度鋼板
鋼種:270MPa級の冷延鋼板と同成分の冷延鋼板
板厚:1.6[mm]
溶接割れ感受性組成Pcm:0.04[質量%]
・溶接条件
溶接速度:10.0[m/min]
溶接電流:16.5[kA]
円板電極の加圧力:2500[kgf]
加圧ロールの加圧力:3000〜4000[kgf]
重ね代:1.6[mm]
突き出し量:高強度鋼板側に0.45[mm](発明例)、0.0[mm](比較例)
以上のようにして製作された各溶接継手の溶接部に割れが生じるか否かを確認した。その結果を図3に示す。図3は、溶接継手の溶接線に垂直な方向に切った断面を示す図(写真)である。図3(a)は、比較例の溶接継手を示す図であり、図3(b)は、発明例の溶接継手を示す図である。尚、図3(b)において白抜き矢印線は、突出側加圧ロールの接触端部を突き出す方向を示す。
図3(a)に示す比較例の溶接継手では、高強度鋼板301と低強度鋼板302との溶接部に割れが生じ、鋼板は、継手部分で破断した。これに対し、図3(b)に示す発明例の溶接継手では、低高強度鋼板303と低強度鋼板304との溶接部に割れは生じなかった。
<実施例2>
本実施例では、高強度鋼板および低強度鋼板として図4に示すものを用いて、図5に示すように溶接条件を異ならせて溶接継手を作製した。
図4において、「−」は、意図的に添加していないことを示す。また、図4において、残部は、Feおよび不純物である。また、図4に示す何れの鋼板(高強度鋼板HT1〜HT3、低強度鋼板MS1〜MS3)も、冷間圧延工程により製造されたままの鋼板であり、その後の工程(焼鈍工程等)で処理されていない鋼板である。また、成品の引張強度クラスとは、各鋼板の成品として要求される引張強度のクラスである。尚、成品とは、冷間圧延工程後の各工程(焼鈍工程等)で処理された鋼板を指す。
本実施例では、図2(a)、図2(c)に示すようにして高強度鋼板および低強度鋼板を配置した。そして、図2(a)に示したように、突出側加圧ロールの接触端部210aを、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220aよりも、上側鋼板S1および下側鋼板S2側に突き出した場合と、図2(c)に示したように、突出側加圧ロールの接触端部210cのZ軸方向の位置と、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面220cのZ軸方向の位置とを一致させた場合との夫々の場合で溶接継手を作製した。
図5において、突き出し量(mm)は、図2(c)に示す突出側加圧ロールの接触端部210cのZ軸方向の位置を「0(ゼロ)」とし、当該位置よりも、突出側加圧ロールの接触端部210aのZ軸の方向の位置が、Z軸の正の方向である場合にプラス(+)の値を有するものとする。突き出し量(%)は、{突き出し量(mm)÷低強度鋼板の板厚}×100で表される。作製してから一週間の間、溶接継手の溶接部を顕微鏡で定期的に観察し、溶接部に割れが生じたか否かを確認した。
実操業においてコイルに破断が生じなければ、溶接部に小さな割れがあっても、マッシュシーム溶接の目的は達成することができる。このような観点から、本実施例では、板厚方向(Z軸方向)において、低強度鋼板の板厚の10[%]超の長さの割れが生じるものを不合格品とし、そうでないものを合格品とした。また、合格品のうち、その半分(板厚方向(Z軸方向)において、低強度鋼板の板厚の5[%])の長さの割れが生じるものを良品とした。そして、割れが生じないものを優良品とした。
図5において、割れが「◎」であることは、割れが生じなかったこと(優良品)を示す。割れが「○」であることは、板厚方向(Z軸方向)において、低強度鋼板の板厚の0[%]超5[%]以下の長さの微小な割れが生じたこと(良品)を示す。割れが「△」であることは、板厚方向(Z軸方向)において、低強度鋼板の板厚の5[%]超10[%]以下の長さの小さな割れが生じたこと(合格品)を示す。割れが「×」であることは、板厚方向(Z軸方向)において、低強度鋼板の板厚の10[%]超の長さの割れが生じたこと(不合格品)を示す。
図5において、突き出し量が、低強度鋼板の板厚の0[%]であると、板厚方向(Z軸方向)において、低強度鋼板の板厚の10[%]超の長さの割れが生じる。一方、突き出し量が、低強度鋼板の板厚の0[%]超10[%]未満および50[%]超100[%]未満であると、板厚方向(Z軸方向)において、低強度鋼板の板厚の5[%]超10[%]以下の長さの小さな割れが生じるが、割れの大きさを低減することができる。そして、突き出し量が、低強度鋼板の板厚の10[%]以上50[%]以下であると、板厚方向(Z軸方向)において、低強度鋼板の板厚の0[%]超5[%]以下の長さの微小な割れが生じるが、割れの大きさを一層低減することができる。さらに、突き出し量が、低強度鋼板の板厚の20[%]以上40[%]以下になると、割れが生じなくなる。このように突き出し量を調整することにより、溶接部の割れを制御することができることが分かる。
111、113:上側クランプ、112、114:下側クランプ、121〜122:上側押圧シリンダ、123〜124:下側押圧シリンダ、131:上側円板電極、132:下側円板電極、141:上側油圧シリンダ、142:下側油圧シリンダ、151:上側加圧ロール、152:下側加圧ロール、161:上側油圧シリンダ、162:下側油圧シリンダ、170:キャリッジフレーム、181〜187:駆動装置、190:溶接電源、210a〜210b:突出側加圧ロールの接触端部、220a〜220b:加圧ロール端部側クランプ面

Claims (5)

  1. 2枚の鋼板の重ね合わせ部に対してマッシュシーム溶接を行って溶接継手を形成する溶接継手の形成方法であって、
    前記鋼板のそれぞれの上下に配置された上側クランプおよび下側クランプにより、前記2枚の鋼板をクランプする第1の工程と、
    前記2枚の鋼板がクランプされ、且つ、前記重ね合わせ部の上下に配置された上側円板電極および下側円板電極を回転させた状態で、前記上側円板電極および前記下側円板電極により前記重ね合わせ部の接合予定箇所に対して加圧と通電とを行いながら、前記接合予定箇所に沿うように、前記上側円板電極および前記下側円板電極を前記2枚の鋼板に対して相対的に移動させることにより、前記重ね合わせ部の接合予定箇所に対してマッシュシーム溶接を行い、接合部を形成する第2の工程と、
    前記2枚の鋼板がクランプされ、且つ、前記上側円板電極および前記下側円板電極の前記2枚の鋼板に対する相対的な移動方向を前側とした場合に、前記上側円板電極および前記下側円板電極よりも後側の位置で前記接合部の上下に配置された上側加圧ロールおよび下側加圧ロールを回転させた状態で、前記上側加圧ロールおよび前記下側加圧ロールにより前記接合部に対して加圧を行いながら、前記マッシュシーム溶接の進行方向に沿うように、前記上側加圧ロールおよび前記下側加圧ロールを前記2枚の鋼板に対して相対的に移動させることにより、前記接合部を変形させる第3の工程と、を有し、
    前記第3の工程により前記接合部を変形する際に、突出側加圧ロールの接触端部は、突出側加圧ロール側クランプのクランプ面よりも、前記鋼板が配置されている側に突き出した状態になっており、
    前記突出側加圧ロールは、前記上側加圧ロールおよび前記下側加圧ロールの何れか一方の加圧ロールであり、
    前記突出側加圧ロールの接触端部は、前記突出側加圧ロールの端部のうち、前記第3の工程により前記接合部を変形する際に、前記鋼板と接触する位置にある端部であり、
    前記突出側加圧ロール側クランプは、前記上側クランプおよび前記下側クランプのうち、前記突出側加圧ロールが配置されている側にあるクランプであり、
    前記突出側加圧ロール側クランプのクランプ面は、前記突出側加圧ロール側クランプの前記鋼板と接触する面であり、
    前記突出側加圧ロールの接触端部の上下方向の突き出し量は、突出側加圧ロール側鋼板の板厚の0[%]を超えて100[%]未満であり、
    前記突出側加圧ロール側鋼板は、前記2枚の鋼板の一方の鋼板であって、前記重ね合わせ部において、前記突出側加圧ロールが配置されている側で他方の鋼板と重ね合わせられる鋼板であり、
    前記2枚の鋼板の溶接割れ感受性組成Pcmが異なることを特徴とする溶接継手の形成方法。
  2. 前記突出側加圧ロール側鋼板の溶接割れ感受性組成Pcmは、前記他方の鋼板の溶接割れ感受性組成Pcmよりも小さいことを特徴とする請求項に記載の溶接継手の形成方法。
  3. 前記2枚の鋼板のうち何れかの鋼板の以下の(A)式で表される溶接割れ感受性組成Pcmは、0.31[質量%]以上0.60[質量%]以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接継手の形成方法。
    Pcm[質量%]=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cr]/20+[Mo]/15+[Cu]/20+[Ni]/60+[V]/10+5[B] ・・・(A)
    (1)式において、[C]、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]、[Cu]、[Ni]、[V]、[B]は、それぞれ、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、V、
    Bの含有量(質量%)である。
  4. 前記2枚の鋼板のうち何れかの鋼板の以下の(A)式で表される溶接割れ感受性組成Pcmは、0.005[質量%]以上0.100[質量%]以下であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の溶接継手の形成方法。
    Pcm[質量%]=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cr]/20+[Mo]/15+[Cu]/20+[Ni]/60+[V]/10+5[B] ・・・(A)
    (1)式において、[C]、[Si]、[Mn]、[Cr]、[Mo]、[Cu]、[Ni]、[V]、[B]は、それぞれ、C、Si、Mn、Cr、Mo、Cu、Ni、V、Bの含有量(質量%)である。
  5. 前記突出側加圧ロールの接触端部の上下方向の突き出し量は、前記突出側加圧ロール側鋼板の板厚の10[%]以上50[%]以下であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の溶接継手の形成方法。
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