JP5805533B2 - N−アシル−メチオニン不含メチオニンの生産 - Google Patents

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Description

発明の背景
発明の分野
本発明は、炭素源と硫黄源とを含んでなる適切な培養培地で微生物を培養することによりメチオニンまたはその誘導体を生産するための方法に関する。該微生物および/または培養培地はおよび/またはプロセスパラメーターは、副産物N−アシル−メチオニン(NAM)の蓄積が低減されるように改変されたものである。また、発酵培地からのメチオニンまたはその誘導体の単離も提供される。
先行技術
システイン、ホモシステイン、メチオニンまたはS−アデノシルメチオニンなどの硫黄含有化合物は細胞代謝に重要であり、食品または飼料添加物および医薬品として使用するために工業的に製造される。特に、動物が合成することのできない必須アミノ酸であるメチオニンは、多くの身体機能において重要な役割を果たす。現在、D,L−メチオニンはアクロレイン、メチルメルカプタンおよびシアン化水素からの化学合成により生産されている。石油由来の前駆体であるアクロレインおよびメチルメルカプタンの価格の高騰とメチオニン需要の増加が相まって、メチオニンの微生物生産が注目されている。
L−メチオニンの合成経路は多くの微生物でよく知られている(Figge RM (2006), Wendisch VF編, Microbiol Monogr (5) Amino acid biosynthesis p 164-185に総説)。大腸菌(E. coli)およびC.グルタミクム(C. glutamicum)メチオニン生産株が特許出願WO2005/111202、WO2007/077041、WO2007/012078およびWO2007/135188に記載されている。
発酵により生産されたメチオニンは発酵液から精製する必要がある。コスト効率のよいメチオニンの精製は、発酵液中の副産物の量を最小化する生産株および製造プロセスにかかっている。「副産物」はメチオニン変換および/または分解経路に起源する。特に、これらの産物はS−アデノシル−メチオニン(SAM)、チオ−メチル−リボースおよびN−アシル−メチオニン(NAM)、例えば、N−アセチル−メチオニンおよびN−プロピオニル−メチオニンである。特許出願PCT/EP2007/060433に示されているように、大腸菌メチオニン生産株はN−アセチル−メチオニンを生産する。大腸菌はまたN−プロピオニル−メチオニンも生産する。
NAMの生産は、メチオニン収量を減らし、メチオニンの精製を困難にするので望ましくない。NAMは、発酵工程の終了時にNAMアシラーゼを添加することによりメチオニンおよび酢酸塩に変換することができるが、産物のコストが劇的に増大する。よって、発酵工程中のNAMの蓄積を低減する、またはなくすことが必要となる。これにはNAMの蓄積を担う反応を十分理解することが必要である。
同時翻訳プロセスとしてのメチオニンのN末端アセチル化は、真核生物で最も一般的なタンパク質修飾の1つである。しかしながら、メチオニンはメチオニン生産細菌では遊離アミノ酸としてアセチル化されるものと思われ、原核生物においては同時翻訳プロセスとしてのメチオニンアセチル化がまれである(Driessen et al. 1985, CRC Crit. Rev. Biochem. 18, 281-325)ことから、N−アセチル−メチオニンがN末端アセチラーゼにより生産されるとは考えにくい(総説としては、Polevoda & Sherman 2000 JBC 275, 47, pp 36479-36482を参照)。N−アセチル−メチオニンは、遊離L−メチオニンをアセチル化することにより得られる可能性が最も高い。メチオニンをアセチル化できる可能性のあるN−アセチル化酵素はすでに記載されている。例えば、ArgAは大腸菌においてN−アセチル−グルタミン酸シンターゼをコードする(Marvil & Leisinger 1977 JBC 252, 10 pp. 3295-3303)。
これまでに、N−アセチル−メチオニン、N−プロピオニル−メチオニンまたはより長いアシル鎖を有する他のメチオニン誘導体の生合成生産を触媒することができる酵素は知られていない。よって、メチオニン生産微生物における主要なメチオニン−N−アシルトランスフェラーゼ活性およびそれらの減衰の同定は、NAM生産の低減に極めて重要である。
また、NAMの蓄積は蓄積されたNAMを脱アセチル化してメチオニンを得ることによっても低減可能である。アミノ酸からのN−アシル基の脱アセチル化は細菌において実証されている。例えば、ArgEによりコードされるN−アセチルオルニチンデアセチラーゼは広い基質域を有し、N−アセチルメチオニンを効率的に脱アセチル化する(Javid-Majd & Blanchard 2000 Biochemistry 39, 1285-93)。よって、argEまたは他のアミノ酸デアセチラーゼ、例えば腎臓アシラーゼI(Giardina et al 2000 Eur. J. Biochem. 267, 6249-55)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはブタ腎臓由来のアミノ酸アシラーゼ(Gentzen et al. 1980 Z. Naturforsch 35 c, 544-50)などの過剰発現はNAMの蓄積を低減し得る。
NAMは細胞外間隙に露出しているので、NAMアシラーゼの周辺質または細胞外間隙への輸送は有利であり得る。大腸菌では、例えばTAT系およびSec系など、周辺質への輸送を可能とするいくつかの輸送系が知られている(Manting & Driessen 2000 Mol Microbiol 37, 226-38, Choi & Lee 2004 Appl. Microbiol. Biotechnol. 64, 625-635に総説)。TATまたはSec経路による輸送には特定のシグナルペプチドの存在が必要である。細胞外間隙への輸送が有利であれば、目的タンパク質を、該媒質に通常輸送されるOmpFまたは溶血素などの担体タンパク質と融合させればよい(Choi & Lee 2004 Appl. Microbiol. Biotechnol. 64, 625-635)。また、このタンパク質は、淋菌(A. gonorrhoeae)由来のIgA1または大腸菌由来のAIDA−Iなど、オートトランスポータータンパク質の輸送に必要とされるタンパク質ドメインとそれを融合させることにより、該媒質に輸送し、細胞表面に提示することができる。タンパク質はまた、2パートナー経路またはファージディスプレーによっても輸送可能である(Jacob-Dubuisson et al. 2004 Biochim et Biophys Act 1694 235-257, Jose & Meyer 2007 Microbiol and Molecul Biol Rev 71, 600-19)。また、プロセス設計がある種のタンパク質の輸送に影響を与えることも示されている(Shokri et al 2003 Appl Microbiol Biotechnol 60, 654-64)。
本出願者らは、メチオニン生産株において副産物N−アシル−メチオニン(NAM)の蓄積を低減するという課題を解決した。
本発明者らは、メチオニンからNAMへの変換を触媒する主要なメチオニンN−アシルトランスフェラーゼ活性(MNAT)が大腸菌において遺伝子yncAによりコードされていることを確認した。
本明細書で、遺伝子yncAの発現の減衰、従ってNAMの生産の低減を示す改変微生物を開示する。
本発明者らは、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)アミノ酸アシラーゼまたはブタ腎臓アミノ酸アシラーゼなどの、NAMをメチオニンに変換する脱アシル化酵素の過剰発現はNAM量の低減をもたらすことを示した。好適には、該脱アシル化酵素は周辺質または細胞外間隙に輸送される。
別の態様では、NAMの生産および/または蓄積の低減が得られるように培養条件を適合させた。
NAMの蓄積を低減するこれら3つの手段を、NAMの蓄積を低減するために、個々にまたは組み合わせて適用した。
グルコースをモデル基質として用い、組換え型大腸菌をモデル生物として用いるが、本発明はこれらの特徴に限定されない。
よって、本発明の目的は、NAMの蓄積を低減するために、主要なMNAT(メチオニンN−アシル−トランスフェラーゼ)をコードする遺伝子の発現が減衰された、好適には、対応する遺伝子が欠失された、および/または同種または異種NAM脱アシル化酵素が過剰発現された微生物を提供することである。
NAMの生産および/または蓄積が低減されたこの微生物は、炭素源に対するメチオニン生産収率の改善を示す。
発明の具体的説明
本発明は、発酵プロセスにおいてメチオニン、その誘導体または前駆体を生産するための方法であって、下記の工程:
炭素源、硫黄源および窒素源を含んでなる適切な培養培地中で改変微生物を培養する工程;および
該培養培地からメチオニンおよび/またはその誘導体を回収する工程
を含んでなり、
非改変微生物または方法と比較して、該微生物または方法が副産物N−アシルメチオニンの蓄積を低減するように改変されている方法に関する。
本発明の特定の態様において、その蓄積が低減されるN−アシルメチオニンが、下記の群:N−アセチル−メチオニン、N−プロピオニル−メチオニン、N−ブチリル−メチオニン、およびそれらの組合せの中から選択される。
副産物N−アシルメチオニンの蓄積は下記の改変:
微生物における少なくとも1つのメチオニンN−アシルトランスフェラーゼ(すなわち、トランスアシラーゼ)の発現の減衰、および/または
微生物における少なくとも1つのメチオニン特異的アミノアシラーゼの発現(または発現の増強);および/または
pH、酸素供給、温度、および/または培養培地へのNAMアシラーゼの添加、およびそれらの組合せなどの培養条件の変更
の少なくとも1つによって得ることができる。
本発明によれば、「培養」、「発酵」または「発酵プロセス」とは、単純炭素源を含有する適切な増殖培地での細菌の増殖を表すために互換的に用いられる。
「適切な培養培地」とは、微生物の培養および増殖に適切な培地である。このような培地は、培養する微生物に応じて、微生物発酵の分野で周知である。
「培養培地からメチオニンおよび/またはその誘導体を回収する」とは、メチオニン、およびおそらくはSAMおよびNAMおよび有用であり得る他の全ての誘導体を回収する行為を表す。
「微生物」とは、細菌、酵母または真菌を表す。好適には、微生物は腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、バチルス科(Bacillaceae)、ストレプトミセス科(Streptomycetaceae)およびコリネバクテリウム科(Corynebacteriaceae)の中から選択される。より好適には、微生物は、エシェリキア属(Escherichia)、クレブシェラ属(Klebsiella)、パンテア属(Pantoea)、サルモネラ菌属(Salmonella)またはコリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種である。いっそうより好適には、微生物は、大腸菌(Escherichia coli)またはコリネバクテリウム・グルタミクム種のいずれかである。
「改変微生物」とは、発酵液におけるNAMの蓄積を低減する目的で遺伝的に改変された微生物を表す。当業者ならば、どのようにして特定の遺伝子の発現を調整すればよいかが分かる。通常の改変としては、遺伝子の欠失、遺伝子置換、プロモーターの改変および異種遺伝子の発現のためのベクターの導入を含む、遺伝エレメントで微生物を形質転換することを含む。
本発明者らは、NAMがメチオニンのアシル化により形成されることを示し、主要なNAM生成酵素として遺伝子yncAを同定した。大腸菌遺伝子bl448としても知られるyncAは特許出願WO2001070776に述べられている。それは多剤耐性に関与するレギュレーターMarにより誘導される遺伝子群の一部である。
デアセチラーゼとも呼ばれるアミノ酸アシラーゼ酵素(EC3.5.1.14)は、アシルアミノ酸の加水分解切断を触媒して遊離アミノ酸とアシル残部に相当する炭酸を生成する。より具体的には、N−アシルメチオニンアシラーゼはNAMのメチオニンおよび対応するカルボン酸への反応を触媒する。
「N−アシルメチオニン」とは、N−ホルミル−メチオニン、N−アセチル−メチオニン、N−プロピオニル−メチオニン、N−ブチリルメチオニンおよび一般にはヒドロキシル官能基を欠いた任意のカルボン酸に由来する官能基を含んでなる任意のメチオニン誘導体を表す。
N−アセチル−メチオニンの蓄積を測定するためには、発酵液において屈折率測定HPLCを用い、N−アセチル−メチオニン(Sigma、Ref01310)を標品として、N−アセチル−メチオニンの量を測定する。N−プロピオニル−メチオニンは、発酵液において、N−アセチル−メチオニンを標品として、GC−MSにより測定する。
NAMの蓄積は、非改変生物を用いたプロセスまたは非改変プロセスにおいて蓄積された量の少なくとも20%、好適には50%、より好適には80%およびいっそうより好適には95%低減されるべきである。
本発明による「炭素源」とは、微生物の正常な増殖を支持するために当業者が使用可能ないずれの炭素源も表し、ヘキソース(グルコース、ガラクトースまたはラクトースなど)、五炭糖、単糖類、二糖類(スクロース、セロビオースまたはマルトースなど)、オリゴ糖、糖蜜、デンプンまたはその誘導体、ヘミセルロース、グリセロールおよびそれらの組合せであり得る。特に好ましい炭素源はグルコースである。別の好ましい炭素源はスクロースである。
本発明の特定の実施態様では、炭素源は再生可能な供給原料に由来する。再生可能な供給原料は、短い遅滞内で、目的産物へのその変換を可能とするのに十分な量で再生することができる、ある特定の工業プロセスに必要な原料として定義される。
窒素源とは、アンモニウム塩またはアンモニアガスのいずれかに相当する。窒素源はアンモニウムまたはアンモニアの形態で供給される。
L−メチオニン、その前駆体またはそれに由来する化合物の発酵生産に用いられる硫黄源は下記:硫酸塩、チオ硫酸塩、硫化水素、ジチオン酸塩、亜ジチオン酸塩、亜硫酸塩、メチルメルカプタン、二硫化ジメチルまたはそれらの組合せのいずれであってもよい。
本発明の好ましい実施態様では、硫黄源は硫酸塩および/またはチオ硫酸塩である。
発酵は一般に、使用する微生物に適合した、少なくとも1つの単純炭素源、および必要であれば代謝産物の生産のための補助基質を含有する適切な培養培地を用いるファーメンターで行う。
当業者ならば、本発明による微生物の培養条件を定義することができる。特に、細菌を20℃〜55℃の間、好適には25℃〜40℃の間、より具体的には、C.グルタミクムでは約30℃、大腸菌では約37℃の温度で発酵させる。
大腸菌の既知の培養培地の例として、培養培地は、M9培地(Anderson, 1946, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 32:120-128)、M63培地(Miller, 1992; A Short Course in Bacterial Genetics: A Laboratory Manual and Handbook for Escherichia coli and Related Bacteria, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)またはSchaefer et al. (1999, Anal. Biochem. 270: 88-96)によって定義されているような培地と同じまたは類似の組成のものであり得る。
C.グルタミクムの既知の培養培地の例として、培養培地は、BMCG培地(Liebl et al., 1989, Appl. Microbiol. Biotechnol. 32: 205-210)またはRiedel et al. (2001, J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 3: 573-583)によって記載されているものなどの培地と同じまたは類似の組成のものであり得る。
本発明の特定の実施態様では、N−アシル−メチオニンの生産は、少なくとも1つのメチオニントランスアシラーゼを減衰することにより低減される。メチオニントランスアシラーゼはメチオニンN−アシルトランスフェラーゼ(MNAT)とも呼ばれる。argAが推定されるメチオニントランスアセチラーゼ活性を有する酵素をコードする。本発明者らはargA欠失を有する大腸菌株からMNAT活性を精製し、その精製タンパク質の配列決定を行い、精製タンパク質YncAがMNAT活性を有することを示した(特許出願PCT/EP2008/060999)。遺伝子yncAの発現を減衰させると、残留していた多量のMNAT活性が消失し、NAM生産、特に化合物N−アセチル−メチオニンおよびN−プロピオニル−メチオニンの劇的な現象が起こる。本発明の好ましい実施態様では、YncAは大腸菌ゲノムから完全に欠失される。
減衰された際にNAM生産の低減が得られる、活性のより低い他のN−アシルトランスフェラーゼが同定されており、これらの酵素は下記遺伝子:yjdJ、yfaP、yedL、yjhQによりコードされている。記載されているメチオニンN−アシルトランスフェラーゼはいずれも、個々に減衰されてもよいし、あるいは他と組み合わせて減衰されてもよい。
本発明による「遺伝子を減衰する」または「遺伝子の発現の減衰」とは、遺伝子の発現の部分的または完全な抑制(この場合、減衰されると言われる)を表す。この発現の抑制は遺伝子発現の阻害、遺伝子発現に必要なプロモーター領域への挿入、またはそのプロモーター領域の全部もしくは一部の欠失、遺伝子のコード領域における欠失もしくは挿入、または野生型プロモーターの、より弱い天然もしくは合成プロモーターとの交換のいずれかであり得る。好適には、遺伝子の減衰は本質的にその遺伝子の完全な欠失であり、これは本発明による株の同定、単離および精製を助ける選択マーカー遺伝子により置換することができる。遺伝子は好適には相同組換えの技術によって不活性化される(Datsenko, K.A. & Wanner, B.L. (2000) "One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products". Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 6640-6645)。
本発明の別の特定の実施態様では、N−アシル−メチオニンの蓄積は、
・コウジカビN−アシルアミノ酸アシラーゼ
・ブタN−アシルアミノ酸アシラーゼ
・N−アセチルメチオニンにも作用するアセチルオルニチンデアセチラーゼをコードする大腸菌argE
などの天然または異種メチオニン特異的アミノアシラーゼ酵素を微生物に発現させることにより低減させることができる。
メチオニン特異的アミノアシラーゼ発現の増強は、酢酸、プロピオン酸(priopionate)または酪酸などの対応するカルボン酸1分子の同時生産を伴うNAMからメチオニンへの変換率を上昇させる。遺伝子acs、pta−ackA、またはグリオキシル酸シャントをコードする遺伝子を過剰発現することにより酢酸消費を有利にすることも本発明の一部である。
本願明細書において「増強される」または「過剰発現される」とは、例えば、より強いプロモーターを使用するか、または活性が増強された対立遺伝子を使用し、また、おそらくはこれらの手段を組み合わせて、遺伝子のコピー数を増やすことにより、対応するDNAによってコードされる酵素活性の細胞内活性を増大させることを表す。
「増大された発現」、「増強された発現」または「過剰発現」は本明細書において互換的に用いられ、同様の意味を有する。
遺伝子の発現を増大させるためには、その遺伝子は染色体内にコードされていても、あるいは染色体外にコードされていてもよい。染色体内では、当業者に公知の組換え法により導入可能な1コピーまたは数コピーがゲノムに存在し得る。染色体外では、遺伝子は、それらの複製起点が、よって細胞内でのそれらのコピー数が異なる、様々なタイプのプラスミドにより担持されてもよい。それらは1〜5コピー、約20または最大500コピーとして存在してもよく、これらは複製が厳密な低コピー数のプラスミド(pSC101、RK2)、低コピー数のプラスミド(pACYC、pRSF1010)または高コピー数のプラスミド(pSK bluescriptII)に相当する。
本発明の好ましい実施態様では、この遺伝子は誘導可能な、様々な強度のプロモーターを用いて発現させることができる。これらのプロモーターは同種であっても異種であってもよい。当業者ならば、どのプロモーターが最も便宜か分かり、例えば、プロモーターPtrc、Ptac、PlacまたはλプロモーターcIが広く用いられる。
酵素の発現は対応するメッセンジャーRNA(Carrier and Keasling (1998) Biotechnol. Prog. 15, 58-64)またはタンパク質(例えば、GSTタグ、Amersham Biosciences)を安定化または脱安定化するエレメントにより増進または低減することができる。
本発明はまた、本発明に従って増強される遺伝子の1つまたはいくつかの対立遺伝子を含む微生物に関する。
微生物を形質転換するための総ての技術、および本発明のタンパク質の生産を増大させるために用いられる調節エレメントは当技術分野で周知であり、引用することにより本明細書の一部とされるWO2008/052973、WO2008/052595、WO2008/040387、WO2007/144346、WO2007/141316、WO2007/077041、WO2007/017710、WO2006/082254、WO2006/082252、WO2005/111202、WO2005/073364、WO2005/047498、WO2004/076659など、種々の微生物における生合成経路の改変に関する出願者所有の特許出願を含む文献で入手可能である。
N−アシル−メチオニンアシラーゼ酵素は細胞内間隙で発現され、細胞内間隙に留まるか、または周辺質へ輸送されるか、または細胞外間隙へ輸送され得る。当業者ならば、タンパク質を周辺質へ向かわせる手段を特定することができる。また、輸送は、ファージディスプレー、または2パートナー経路もしくは自動輸送などのタンパク質輸送系により、N−アセチル−メチオニンアシラーゼをOmpFのようなタンパク質と融合させることに基づくものでもよい。本発明の好ましい実施態様では、NAMアシラーゼ酵素は、NAMとメチオニン間の無用な環化を避けるために周辺質または細胞外コンパートメントへ輸送される。
本発明の別の実施態様では、本発明者らは、NAMの生産を低減するために発酵プロセスのパラメーター、すなわち、培養条件を適合させた。これは発酵液pHの変更、酸素供給または基質供給パラメーターの改変により達成される。もう1つの選択肢としては、培養培地にNAM特異的アシラーゼを添加することである。
一つの実施態様では、発酵パラメーターの変更には、リン酸塩、カリウム、マグネシウムなどの無機基質に対して微生物を飢餓状態にすることは含まない。
NAMの蓄積を調整するこれら3つの手段は単独で用いることもできるし、あるいは1または2つの他の手段と組み合わせて用いることもできる。
よって、MNAT活性の減衰は、下記遺伝子:yncAおよび/またはargAおよび/またはyjdJ、yfaP、yedL、yjhQ(これらの遺伝子はメチオニン−N−アシルトランスフェラーゼを伴う酵素をコードする)の発現を減衰させることにより得られる。この減衰は、コウジカビN−アミノ酸アシラーゼ、ブタN−アミノ酸アシラーゼまたはargE遺伝子によりコードされるアセチルオルニチンデアセチラーゼなどのN−アシル−メチオニンデアシラーゼ酵素の発現の増強と組み合わせてもよい。
同様に、上記のように、少なくとも1つのMNAT酵素の減衰は、pH、酸素供給、温度などのプロセスパラメーターの適合および/またはNAMアシラーゼの発酵液への添加と組み合わせて、NAMの蓄積の低減を伴わせることができる。
同様に、NAMアシラーゼ酵素の発現をプロセスの適合と組み合わせてもよい。両手段の詳細は上記されている。
最後に、MNAT活性の減衰、NAMアシラーゼ酵素発現の増強およびプロセス条件の適合の3つの手段を総て組み合わせてもよい。
本発明の記載において、遺伝子およびタンパク質は大腸菌における対応する遺伝子の名称を用いて識別される。しかしながら、特に断りのない限り、これらの名称の使用は本発明に従うより一般的な意味を有し、他の生物、より詳しくは微生物における対応する遺伝子およびタンパク質の総てを包含する。
PFAM(protein families database of alignments and hidden Markov models;http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/)は、タンパク質配列アラインメントを多数集めたものである。各PFAMにより、多重アラインメントを視覚化し、タンパク質ドメインを調べ、生物間の分布を評価し、他のデータベースへのアクセスを確保し、既知のタンパク質構造を視覚化することができる。
主要な系統発生系を示す完全に配列決定されたゲノムからのタンパク質配列を比較することにより、COG(clusters of orthologous groups of proteins;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/COG/)が得られる。各COGは、少なくとも3つの系から定義されるので、前に保存されたドメインを同定することができる。
相同配列およびそれらの相同性%を同定する手段は当業者によく知られており、特にBLASTプログラムが挙げられ、このプログラムは、ウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/から、このウェブサイトに示されているデフォルトパラメーターとともに利用することができる。次いで、例えばプログラムCLUSTALW(http://www.ebi.ac.uk/clustalw/)またはMULTALIN(http://bioinfo. genotoul.fr/multalin/multalin.html)を、これらのウェブサイトに示されているデフォルトパラメーターとともに用いて、得られた配列を活用する(例えば、整列させる)ことができる。
当業者ならば、GenBankで得られる既知の遺伝子に関する参照を用いて、他の生物、細菌株、酵母、真菌、哺乳類、植物などにおける同等の遺伝子を決定することができる。この常法は、有利には、他の微生物由来の遺伝子との配列アラインメントを行い、縮重プローブを設計して、他の生物における対応する遺伝子をクローニングすることにより決定することができるコンセンサス配列を使用して行われる。これらの分子生物学の常法は当業者によく知られており、例えば、Sambrook et al. (1989 Molecular Cloning: a Laboratory Manual. 第2版 Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, New York)に記載されている。
本発明はまた、上記のようなものなどの微生物に関する。N−アシルメチオニンの蓄積および/または生産が低減された微生物は特に高収量でメチオニンを生産するために有用である。好適には、本発明による微生物は、本発明によるプロセスで用いられる前にすでにメチオニンの高生産株である。
メチオニンの効率的な生産には、メチオニン特異的経路といくつかの前駆体供給経路の至適化が必要である。メチオニン生産株は特許出願WO2005/111202、WO2007/077041およびPCT/EP2007/060433に記載されており、引用することにより本明細書の一部とされる。
その阻害剤SAMとメチオニンに対するフィードバック感受性が低減されたホモセリンスクシニルトランスフェラーゼ対立遺伝子を過剰発現するメチオニン生産株が特許出願WO2005/111202に記載されている。この出願にはまた、特許出願JP2000/157267に示唆されたようにメチオニンレギュロンのダウンレギュレーションを担うメチオニンレプレッサーMetJ(GenBank 1790373)の欠失を有するこれらの対立遺伝子の組合せも記載されている。さらに、アスパルトキナーゼ/ホモセリンデヒドロゲナーゼの過剰発現を伴う2つの改変の組合せが特許出願WO2005/111202に記載されている。
遺伝子cysE、metHおよびmetFの過剰発現はWO2007/077041に示唆されている。
メチオニンの生産は、好適には、または排他的にHSを用いる、従って、引用することにより本明細書の一部とされる特許出願WO2004/076659に記載されているようなO−スクシニル−ホモセリンからホモシステインを生産する改変型metB対立遺伝子を使用することによってさらに増大させることができる。
メチオニン生産のさらなる増大は、特許出願PCT/EP2007/060433に記載されているような遺伝子pykA、pykFおよび/またはpurUを欠失させることにより得ることができる。この出願はまた、オペロンcysPUWAM、cysJIHおよびgcvTHPと遺伝子serA、serB、serC、lpdおよびglyAが過剰発現されるメチオニン生産株も記載している。
大腸菌では、メチオニンの生産を増大させるために他の酵素の活性を増強することもできる(後に受託番号および対応するポリペプチドの機能が記載されている)。
硫黄同化に関与する遺伝子の発現を増強させることができる。
遺伝子 受託番号 機能
cysK 1788754 システインシンターゼ
CysZ g1788753 cysKの上流のORF
CysZ g1789108 ATPスルフリラーゼ
cysD g1789109 硫酸塩アデニリルトランスフェラーゼ
cysC g1789107 アデニリル硫酸キナーゼ
cysZ 1788753 硫酸輸送
sbp 1790351 周辺質硫酸結合タンパク質
補充反応は以下を発現させることにより増進させることができる。
ppc 1790393 ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ
pps 1787994 ホスホエノールピルビン酸シンターゼ
酢酸消費反応は以下を過剰発現させることにより増進させることができる。
acs 1790505 アセチル−CoAシンセターゼ
さらに、メチオニンを分解する経路(以下のリストを参照)またはメチオニン生産経路から外れる経路の遺伝子の発現を減衰させることもでき、あるいはこれらの遺伝子を欠失させることもできる。
本明細書において減衰とは、その発現の低減、その酵素の安定性の低減、その分解の増加および/または当業者に公知の他の解決策などの手段による酵素の細胞内活性の低減を表す。
遺伝子 Genbank登録番号 活性
ackA 1788633 酢酸キナーゼ
pta 1788635 ホスホトランスアセチラーゼ
aceE 1786304 ピルビン酸デヒドロゲナーゼE1
aceF 1786305 ピルビン酸デヒドロゲナーゼE2
lpd 1786307 ピルビン酸デヒドロゲナーゼE3
sucC 1786948 スクシニル−CoAシンセターゼ、βサブユニット
sucD 1786949 スクシニル−CoAシンセターゼ、αサブユニット
pck 1789807 ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ
poxB 1787096 ピルビン酸オキシダーゼ
ilvB 1790104 アセトヒドロキシ酸シンターゼI、大サブユニット
ilvN 1790103 アセトヒドロキシ酸シンターゼI、小サブユニット
ilvG 1790202 アセトヒドロキシ酸シンターゼII、大サブユニット
1790203
ilvM 1790204 アセトヒドロキシ酸シンターゼII、小サブユニット
ilvI 1786265 アセトヒドロキシ酸シンターゼIII、大サブユニット
ilvH 1786266 アセトヒドロキシ酸シンターゼIII、小サブユニット
aroF 1788953 DAHPシンセターゼ
aroG 1786969 DAHPシンセターゼ
aroH 1787996 DAHPシンセターゼ
thrB 1786184 ホモセリンキナーゼ
thrC 1786185 トレオニンシンターゼ
sdaA 1788116 セリンデアミナーゼ
sdaB 1789161 セリンデアミナーゼ

speD g1786311 S−アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ
speC g1789337 オルニチンデカルボキシラーゼ
astA g1788043 アルギニンスクシニルトランスフェラーゼ
dapA g1788823 ジヒドロジピコリン酸シンターゼ
本発明はまた、上記のメチオニン生産株の発酵、メチオニン、その前駆体または誘導体の濃度、および発酵液の所望の産物の単離を含んでなる、L−メチオニン、その前駆体または化合物それに由来する化合物の生産方法に関する。
当業者ならば、本発明による微生物の培養条件を定義することができる。特に、細菌を20℃〜55℃の間、好適には25℃〜40℃の間、より具体的には、C.グルタミクムでは約30℃、大腸菌では約37℃の温度で発酵させる。
発酵は一般に、使用する微生物に適合した、少なくとも1つの単純炭素源、および必要であれば代謝産物の生産に必要とされる補助基質を含有する既知の定義された組成の無機培養培地を用いるファーメンターで行う。
特に、大腸菌の無機培養培地は、M9培地(Anderson, 1946, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 32:120-128)、M63培地(Miller, 1992; A Short Course in Bacterial Genetics: A Laboratory Manual and Handbook for Escherichia coli and Related Bacteria, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)またはSchaefer et al. (1999, Anal. Biochem. 270: 88-96)によって定義されたものなどの培地と同じまたは類似の組成のものであり得る。
同様に、C.グルタミクムの無機培養培地は、BMCG培地(Liebl et al., 1989, Appl. Microbiol. Biotechnol. 32: 205-210)またはRiedel et al. (2001, J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 3: 573-583)によって記載されているものなどの培地と同じまたは類似の組成のものであり得る。この培地は突然変異により導入された栄養要求性を補うように添加を行うことができる。
発酵後、L−メチオニン、その前駆体またはそれに由来する化合物を回収し、必要であれば精製する。培養培地におけるメチオニンなどの生産された化合物の回収および精製のための方法は当業者によく知られている。
場合により、発酵産物の精製の際には、0〜100%、好適には少なくとも90%、より好適には95%、いっそうより好適には少なくとも99%のバイオマスが除去され得る。
本発明の好ましい実施態様では、メチオニンの生産方法は、任意に最終産物の一部または全量(0〜100%)に留まっている発酵液および/またはバイオマスの目的アミノ酸/成分を単離する工程を含んでなる。
NAMの量を低減する手段は、リン酸塩および/またはカリウムに対する制限または飢餓と組み合わせてもよい。当業者ならば、選択された生物の成長に必要なリン酸塩またはカリウムの量を決定することができる。
「生物が無機基質の制限を受ける」とは、その微生物の増殖が、なお弱い増殖を許容しつつ、供給された無機化学物質の量により支配される条件を定義する。これらの基質の例は、リン酸塩、カリウム、マグネシウムまたはこれらの組合せである。
ある無機基質に対して微生物を飢餓状態にするとは、その無機基質が存在しないために微生物の増殖が完全に停止する条件を定義する。これらの基質の例は、リン酸塩、カリウム、マグネシウムまたはこれらの組合せである。
本発明はまた、NAMの蓄積が低減された、すなわち、非改変微生物と比較してNAMの蓄積量が少ない、メチオニンの発酵生産に関して至適化された、従前に記載されているものなどの微生物、および上記の遺伝子改変を含んでなる微生物に関する。
実施例1
MG1655 metA 11 ΔmetJ Ptrc−mefH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH ΔpykA ΔpykF Ptrc09−gcvTHP ΔpurU ΔyncA::Km(pME101−thrA 1−cysΕ−PgapA−metA 11)(pCC1BAC−serB−serA−serC)株の構築物
メチオニン生産株において推定アシルトランスフェラーゼyncA遺伝子を欠失させるために、本発明者らは、慶応ミュータントコレクション(Baba et al., 2006)の大腸菌(Escherichia coli)BW25113 ΔyncA::Km株を用いた。このΔyncA::Km欠失をP1ファージ形質導入(下記参照)によりBW25113ΔyncA::Km株からMG1655 metA11 ΔmetJ Ptrc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH Ptrc09−gcvTHP ΔpykA ΔpykF ΔpurU株(PCT/EP2007/060433に記載)へ導入した。カナマイシン耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、下記に定義されるオリゴヌクレオチドYncAFおよびYncAR(ウェブサイトhttp://ecogene.org/に参照配列)を用いたPCR分析により確認した。保有株をMG1655 met A11 ΔmetJ Ptrc−metH Ptrc36−ARNmst17−meF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH Ptrc09−gcvTHP ΔpykA ΔpykF ΔpurU ΔyncA::Kmと呼称した。
YncAF:GTTTGCCGATTTGCCCCACCG(yncA領域1517564〜1517544と相同)(配列番号01)
YncAR:CGCCCATCACGGTCGCAAGC(yncA領域1515827〜1515846と相同)(配列番号02)
次に、プラスミドpME101−thrA1−cysE−PgapA−metA11およびpCC1BAC−serB−serA−serCをMG1655 metA11 ΔmetJ Ptrc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH Ptrc09−gcvTHP ΔpykA ΔpykF ΔpurU ΔyncA::Km株に導入し、MG1655 metA11 ΔmetJ Ptrc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH Ptrc09−gcvTHP ΔpykA ΔpykF ΔpurU ΔyncAy::Km(pME101−thrA1−cysE−PgapA−metA11)(pCC1BAC−serB−serA−serC)を得た。
ファージ溶解液P1の調製:
・カナマイシン(50μg/mL)、グルコース(0.2%)およびCaCl(5mM)を添加した10mL LBにBW25113 ΔyncA::Km株の一晩培養物100μLを植菌し、振盪しながら37℃で30分間インキュベーションする。
・BW25113 ΔyncA::Km株で調製した100μLのファージ溶解液を加える(約1.10ファージ/mL)。
・総ての細胞が溶解するまで37℃で3時間振盪する。
・200μLのクロロホルムを加え、ボルテックスにかける。
・4500gで遠心分離を行い、細胞残渣を除去する。
・上清を無菌試験管に移し、200μLのクロロホルムを加える。
・溶解液を4℃で保存する。
形質導入:
・LB培地中、MG1655 metA11 ΔmetJ Ptrc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH Ptrc09−gcvTHP ΔpykA ΔpykF ΔpurU株の一晩培養物5mLを1500gで10分間遠心分離する。
・細胞ペレットを2.5mLの10mM MgSO、5mM CaClに懸濁させる。
・対照試験管:100μLの細胞
100μL BW25113 ΔyncA::Km株のファージP1
・供試試験管:100μLの細胞+100μL BW25113 ΔyncA::Km株のファージP1
・振盪せずに30℃で30分間インキュベートする。
・各試験管に100μlの1Mクエン酸ナトリウムを加え、ボルテックスにかける。
・1mlのLBを加える。
・振盪しながら37℃で1時間インキュベートする。
・試験管を7000rpmで3分間遠心分離した後、カナマイシン(50μg/mL)を添加したLBペトリ皿に拡げる。
・37℃で一晩インキュベートする。
株の確認
カナマイシン耐性形質転換体を選択し、ΔyncA::Km改変の存在を、上記で定義されたオリゴヌクレオチドYncAFおよびYncARを用いたPCR分析により確認した。
MG1655 metA 11 ΔmetJ Ptrc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH ΔpykA ΔpykF Ptrc09−gcvTHP ΔpurU ΔyncA::Km ΔargA::Cm株の構築
アミノ酸アセチルトランスフェラーゼargA遺伝子を不活性化するために、Datsenko & Wanner (2000)が記載している相同組換え戦略を用いた。この戦略によれば、関連する遺伝子の大部分を欠失させるとともに、クロラムフェニコール耐性カセットを挿入することができる。この目的で、2つのオリゴヌクレオチドDargAFおよびDargARを用いた(ウェブサイトhttp ://ecogene.org/に参照配列)。
DargAF(配列番号03)
・argA領域2947264〜2947344に相同な領域(小文字)
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(大文字)(Datsenko, KA. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)を有する
gtggtaaaggaacgtaaaaccgagttggtcgagggattccgccattcggttccctatatcaatacccaccggggaaaaacgTGTAGGCTGGAGCTGCTTCG
DargAR(配列番号04)
・argA領域2948592〜2948511と相同な領域(小文字)
・クロラムフェニコール耐性カセットの増幅のための領域(大文字)(Datsenko, KA. & Wanner, B.L., 2000, PNAS, 97: 6640-6645に参照配列)を有する
ccctaaatccgccatcaacactttggatttacgctggtagttgtacaactgctttttgctctcgggcagtaaatcaatatccCATATGAATATCCTCCTTAG
オリゴヌクレオチドDargAFおよびDargARを用いて、プラスミドpKD3由来のクロラムフェニコール耐性カセットを増幅した。得られたPCR産物をエレクトロポレーションにより、MG1655 metA11 ΔmetJ Ptrc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH Ptrc09−gcvTHP ΔpykA ΔpykF ΔpurU ΔyncA::Km(pKD46)株に導入した(ここで、発現されるRedレコンビナーゼ酵素により相同組換えが可能である)。クロラムフェニコール耐性形質転換体を選択し、耐性カセットの挿入を、以下に定義されるオリゴヌクレオチドArgAFおよびArgARを用いたPCR分析により確認した(ウェブサイトhttp://ecogene .org/に参照配列)。保有株をMG1655 metA11 ΔmetJ Ptrc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH Ptrc09−gcvTHP ΔpykA ΔpykF ΔpurU ΔyncA::Km ΔargA::Cmと呼称した。
ArgAF:cagctgacgatttgattcc(argA領域2946859〜2946877と相同)(配列番号05)
ArgAR:gggttgtttaatggcgatatcgg(argA領域2949010〜2948988と相同)(配列番号06)
MG1655 metA 11 ΔmetJ Ptrc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH ΔpykA ΔpykF Ptrc09−gcvTHP ΔpurU ΔyncA ΔargA株の構築
クロラムフェニコールおよびカナマイシン耐性カセットを除去するために、クロラムフェニコールおよびカナマイシン耐性カセットのFRT部位に作用するレコンビナーゼFLPを有するpCP20プラスミドを、エレクトロポレーションにより、組換え株MG1655 met A11 ΔmetJ Ptvc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH Ptrc09−gcvTHP ΔpykA ΔpykF ΔpurU ΔyncA::Km ΔargA::Cmに導入する。42℃で一連の培養を行った後、クロラムフェニコールおよびカナマイシン耐性カセットの消失を、上記のオリゴヌクレオチドYncAF/YncARおよびArgAF/ArgARを用いたPCR分析により確認する。保有株をMG1655 metA11 ΔmetJ Ptvc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH ΔpykA ΔpykF Ptrc09−gcvTHP ΔpurU ΔyncA ΔargAと呼称した。
MG1655 metA 11 ΔmetJ Ptrc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH ΔpykA ΔpykF Ptrc09−gcvTHP ΔpurU ΔyncA ΔargA(pME101−thrA 1−cysE−PgapA−metA 11)(pCC1BAC−serB−serA−serC)株の構築
プラスミドpME101−thrA1−cysE−PgapA−metA11およびpCC1BAC−serB−serA−serCを、MG1655 metA11 Δmet Ptrc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH Ptrc09−gcvTHP ΔpykA ΔpykF ΔpurU ΔyncA ΔargA株に導入し、MG1655 met A11 ΔmetJ Ptvc−metH Ptrc36−ARNmst17−metF PtrcF−cysPUWAM PtrcF−cysJIH Ptrc09−gcvTHP ΔpykA ΔpykF ΔpurU ΔyncA ΔargA(pME101−thrA1−cysE−PgapA−metA11)(pCC1BAC−serB−serA−serC)を得る。
アミノ酸アシラーゼ活性を発現する合成遺伝子の構築
NAMをメチオニンに変換するために、メチオニン生産微生物においてNAMアシラーゼ(アミノ酸アシラーゼ)を発現させた。
この目的で、ブタおよびコウジカビアシルアミノ酸アシラーゼ遺伝子の合成遺伝子がCodon Devices社(www.eodondevices.com/)により作製された。これらの遺伝子のコドン利用とGC含量を供給者のマトリックスに従って大腸菌に適合させた。至適化されたコドン利用を有する総ての配列を以下に示す。これらの合成遺伝子の発現を、オペレーター配列により制御されるPtrcプロモーターにより駆動された。転写ターミネーターをこれらの遺伝子の下流に付加した。これらの構築物をpUC19ベクターにクローニングし、配列決定により確認した後、それらをメチオニン生産株に形質転換した。
コウジカビアシルアミノアシラーゼ
プロモーターおよびオペレーター配列
Gagctgttgacaattaatcatccggctcgtataatgtgtggaattgtgagcggataacaatttcatgacacaggaaacagacc(配列番号07)
コウジカビアシルアミノアシラーゼ配列(XP_001827519.1)(配列番号8)
Mttstwsllsslmqtqstseheqelahflddhltnlgytverlpiaegstrenvyaylgtqrktrvcltshldtvppyiplriegstiygrgacddkgpmaaqicaleelraegavkegdvgllfwgeekggpgmiaanhqdlsfegvifgeptegklwghkghlvfeligegkachsgypqhgvnanfalietlsdfvqtefpsssllgpstfnvgkieggvsynivpetskalcavrvatdmagikkivsdtvarhsnvrlefkfeypetlldhdvegsfnvrsccymnrsilvahgdneqieidelmegvraykkltmhalnsar
(配列番号9)
atgaccacgtcgactgtcgtttctctgctgagttcactgatgcagacacaatccacctcggaacacgagcaggaactggcgcactttctggatgaccatctgacaaacctgggatatactgtcgagcgtctgccgattgcagaagggtccactcgcgagaacgtctacgcatatctggggacccaacgtaaaacgcgtgtatgtctgacctctcacctggatactgttccgccgtacatcccgctgcgtattgagggcagtacaatctatggtcgcggggcttgtgacgataagggcccgatggctgcacagatctgcgctctggaagagctgcgtgctgaaggtgcggtcaaagaaggcgacgtaggtctgctgttcgtcgttggggaggaaaaaggcggtccgggcatgatcgcagcgaaccaccaggatctgtcttttgaaggggttatttttggggaaccgacggaaggcaagctggtagtaggtcacaaagggcacctggtttttgagctgatcggtgagggaaaggcttgtcactccggctacccgcaacacggtgtgaacgcgaatttcgccctgattgagacactgtcggattttgtccagacggagtttcctagctctagtctgctggggccgtcaacatttaacgttggcaagatcgaaggtggcgtatcctataatattgtgccggaaacgtcgaaagccctgtgtgcagtgcgcgttgcgacggacatggccggtatcaaaaagattgtgagcgataccgtagcacgtcactctaacgtccgcctggagttcaagtttgaatatccagagacactgctggaccatgatgttgaagggagttttaatgtgcgttcctgctgttatatgaaccgctccatcctggttgcccacggagacaatgagcaaattgaaatcgatgaactgatggagggagtacgcgcctataaaaagctgacaatgcacgccctgaactcagcccgctaa
転写ターミネーター配列:(ref: Harrington K.J., Laughlin R.B. and Liang S. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Apr 24;98(9):5019-24.)
Tcacactggctcaccttcgggtgggcctttctgc(配列番号10)
ブタアシルアミノアシラーゼ
プロモーターおよびオペレーター配列
Gagctgttgacaattaatcatccggctcgtataatgtgtggaattgtgagcggataacaatttcatgacacaggaaacagaac(配列番号11)
ブタアシルアミノアシラーゼ配列(NP_999061.1)(配列番号12)
Maskgregehpsvtlfrqylrirtvqpepdygaavafleerarqlglgcqkvewpghwtvltwpgtnptlssillnshtdwpvfkehwshdpfeg&dadgyiygrgaqdmkcvsiqyleavrrlkveghhfprtihmtfvpdeevgghqgmelfvkrpefqalragfaldeglasptdaftvfyserspwwlrvtstgkpghgsrf[iota]edtaaeklhkvinsilafrekekqrlqsnqlkpgavtsvnltmleggvaynwpatmsacfdfrvapdvdlkafeeqlqswcqaagegvtfefvqkwmetqvtstddsdpwwaafsgvflcdmklaleleicpastdaryiraagvpalgfspmnhtpvllhdhderlheavflrgvdiytqllsalasvpalpses
(配列番号13)
atggcgagcaaaggccgtgaaggtgagcatccgtctgtgaccctgtttcgccagtatctgcgtattcgcacggttcagcctgaaccggattacggagcagctgtggctttcctggaggaacgcgctcgtcagctgggtctgggttgccaaaaggtagaagttgtcccagggcacgtcgtaactgtactgacttggcctggaacgaatccgaccctgagttcaatcctgctgaactcccatacagatgtagtgccagtgttcaaggaacattggagtcacgaccctttcgaagggtttaaagatgccgatggctatatttacggtcgtggggcacaggacatgaagtgtgtatccattcaatatctggaagctgttcgccgtctgaaagttgaagggcaccactttccacgcactattcacatgactttcgtgcctgacgaggaagtcgggggtcaccaaggtatggaactgttcgtaaaacgccctgagtttcaggcactgcgtgcgggttttgctctggacgagggtctggcgagcccgacagacgcgtttaccgtgttttacagtgaacgttcgccttggtggctgcgcgttacttccacaggtaagccggggcacggctcgcgtttcatcgaggatacagccgctgaaaagctgcacaaagttattaatagcatcctggcctttcgcgagaaggaaaagcaacgtctgcagagcaaccagctgaaaccgggtgcggtcactagcgtgaatctgactatgctggaggggggtgtcgcctataacgttgtgccggcaactatgagcgcatgcttcgactttcgcgtagctccggatgttgacctgaaagccttcgaagaacaactgcagagctggtgtcaagcagcgggagaaggtgtaacctttgagttcgtccagaaatggatggaaacacaggttacctcgactgatgatagcgatccttggtgggcagccttttctggtgtgttcaaagatatgaagctggcgctggaactggaaatctgcccagcgagtacagacgctcgttacatccgcgccgcaggcgtaccagccctgggtttttcaccgatgaatcacacgccggtcctgctgcatgatcacgatgagcgcctgcatgaggcagttttcctgcgcggcgtcgacatttatacccaactgctgagtgcactggcttctgttcctgcgctgcca tcggaatca
転写ターミネーター配列:(ref: Harrington K.J., Laughlin R.B. and Liang S. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Apr 24;98(9):5019-24.)
Tcacactggctcaccttcgggtgggcctttctgc(配列番号10)
実施例2
発酵条件下でのメチオニン生産
実質的な量の目的代謝産物を生産した株を、リン酸飢餓を伴う流加戦略を用い、2.5L発酵槽(Pierre Guerin)での生産条件下で試験した。
細胞濃度30g/Lで増殖を停止させるため、無機培地B1bにリン酸塩を28.7mMまで加えた。流加培地F1はリン酸塩不含とした。要するに、2.5g/Lのグルコースを含む10mLのLB培地で8時間増殖させた培養物を用いて、最少培地B1a中24時間前培養物に植菌した。これらの培養物を、37℃、ロータリーシェーカー(200RPM)にて、50mLの最少培地(B1a)の入った500mLのバッフル付きフラスコ内で増殖させた。
Figure 0005805533
Figure 0005805533
次に、2.5Lの発酵槽(Pierre Guerin)に600mLの最少培地(B1b)を充填し、25〜45mLの範囲の前培養容量でバイオマス濃度が0.1g/Lとなるように植菌した。
培養温度を37℃で一定に維持し、pHは、NHOH溶液(NHOHは10%で10時間、培養終了まで24%)の自動添加により実施値(6.8)に維持した。バッチ段階での最初の攪拌速度は200rpmに設定し、流加段階で最大1200rpmに引き上げた。バッチ段階での最初の通気速度は40NL/hに設定し、流加段階の初めに100NL/hに引き上げた。溶存酸素濃度は攪拌を高めることで20〜40%飽和の間の値、好適には30%飽和に維持した。
細胞塊が5g/L付近の濃度に達した際に、流加を初期流速5mL/hで開始した。供給溶液は流速を増しながら(21時間後には21mL/hに達した)S字状に注入した。厳密な供給条件は式:
Figure 0005805533
[式中、Q(t)はバッチ容量600mLに対する供給流速(mL/h)であり、p1=1.15、p2=18.32、p3=0.270、p4=5である]
により計算した。
流加21時間後、細胞濃度は30g/Lに達し、リン酸塩は培地から枯渇し、細胞はリン酸塩飢餓状態に入った。この時点で、供給溶液の注入を4時間、37mL/hの一定値まで高めた。その後、一定流速を10mL/hに引き下げ、この流速値を流加の終了時まで維持した(50時間)。
Figure 0005805533
メチオニン/グルコース収量(Y met )の測定
細胞外のメチオニン濃度はOPA/FMOC誘導体化後にHPLCにより定量した。N−アセチル−メチオニン濃度および残留グルコース濃度は、屈折率測定検出とともにHPLCを用いて分析した。N−プロピオニル−メチオニン濃度はシリル化後にGC−MSにより測定し、N−アセチル−メチオニン当量として表した。
発酵槽容量は、初期容量にpHを調節するため、また、培養物に供給するために加えた溶液の量を加え、サンプリングに用いた容量と蒸発による損失を差し引くことによって算出した。
流加容量は供給原料を秤量することにより絶えず追跡した。次に、注入されたグルコースの量を注入重量と溶液密度とBrix([グルコース])の方法によって制御されたグルコース濃度に基づいて計算した。メチオニン収量は次のように表した。
Figure 0005805533
メチオニンおよびメチオニンはそれぞれ初期および時間(t)でのメチオニン濃度であり、VおよびVは初期およびt時点の容量である。
N−アセチル−メチオニンは次のように計算した。
Figure 0005805533
N−アセチル−メチオニンは、t時点での濃度(mmol/L)である。
N−プロピオニル−メチオニンは次のように計算した。
Figure 0005805533
N−プロピオニル−メチオニンは、t時点での濃度(mmol/L)である。
Met+N−アセチル−メチオニン+N−プロピオニル−メチオニン(YMet+NAM)は次のように計算した。
Figure 0005805533
メチオニンはメチオニン濃度(g/L)であり、N−アセチル−メチオニンおよびN−プロピオニル−メチオニンはt時点でのそれぞれの濃度(mmol/L)である。
消費グルコースは次のように計算した。
Figure 0005805533
注入グルコース=流加容量 [グルコース]
消費グルコース=[グルコース] +注入グルコース−[グルコース]残留*
[グルコース]、[グルコース]、[グルコース]残留はそれぞれ初期、流加および残留グルコース濃度である。
実施例3
発酵培地へのアミノ酸アシラーゼ添加による培養条件の適合
N−アセチル−メチオニンをメチオニンおよび酢酸塩に変換するために、160UのN−アミノ酸アシラーゼ(ブタ腎臓、Sigma)を、株1の発酵後(上記のように実施)の200μlの発酵液に加えた。反応混合物を37℃で2時間インキュベートした。次に、メチオニン濃度およびN−アセチル−メチオニン濃度を上記のように測定した。この酵素処理により、75〜95%のN−アセチル−メチオニンがメチオニンに変換した。
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Claims (14)

  1. 発酵プロセスにおいてメチオニンまたはその前駆体を生産するための方法であって、下記の工程:
    炭素源、硫黄源および窒素源を含んでなる適切な培養培地中で、メチオニン生産細菌から選択された遺伝子改変微生物であって、少なくとも1つのメチオニントランスアシラーゼ酵素の発現の減衰を含む遺伝子改変微生物を培養する工程;および
    該培養培地からメチオニンおよび/またはその誘導体を回収する工程
    を含んでなり、
    N−アシルメチオニンの蓄積が、メチオニン生産細菌から選択された非改変微生物を培養する工程を含んでなる方法と比較して低減される、方法。
  2. 蓄積が低減されるN−アシルメチオニンが下記の群:N−アセチル−メチオニン、N−プロピオニル−メチオニン、N−ブチリル−メチオニンおよびそれらの組合せの中から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 発現が減衰されるメチオニントランスアシラーゼ酵素が、yncA、argA、yjdJ、yfaP、yedL、yjhQおよびそれらの組合せの中から選択される遺伝子によりコードされる、請求項1に記載の方法。
  4. 発現が減衰されるメチオニントランスアシラーゼ酵素が遺伝子yncAによりコードされる、請求項3に記載の方法。
  5. N−アシル−メチオニンの生産が、培地にN−アシルアミノ酸アシラーゼを添加することにより、さらに低減される、請求項1に記載の方法。
  6. N−アシル−メチオニンの生産が、メチオニントランスアシラーゼ酵素をコードする下記遺伝子:yncA、argA、yjdJ、yfaP、yedL、yjhQの少なくとも1つの発現を減衰すること、および培地にN−アシルアミノ酸アシラーゼを添加することにより低減される、請求項1に記載の方法。
  7. 培養培地中の硫黄源が、硫酸塩、チオ硫酸塩、硫化水素、ジチオン酸塩、亜ジチオン酸塩、亜硫酸塩、メチルメルカプタン、二硫化ジメチルまたはこれらの種々の供給源の組合せである、請求項1に記載の方法。
  8. 培養培地中の硫黄源が、硫酸塩もしくはチオ硫酸塩または両者の混合物である、請求項1に記載の方法。
  9. 炭素源が再生可能な供給原料に由来する、請求項1に記載の方法。
  10. 炭素源がグルコースまたはスクロースである、請求項1に記載の方法。
  11. 窒素源がアンモニウムまたはアンモニアの形態で供給される、請求項1に記載の方法。
  12. 任意に最終産物の一部または全量(0〜100%)に留まっている発酵液および/またはバイオマスの目的アミノ酸/成分を単離する工程を含んでなる、請求項1に記載の方法。
  13. 微生物が、リン酸塩および/またはカリウムに対して制限されているか、または飢餓状態である、請求項1に記載の方法。
  14. メチオニン生産細菌から選択された遺伝子改変微生物であって、
    少なくとも1つのメチオニントランスアシラーゼ酵素の発現の減衰と、メチオニンレプレッサーmetJ遺伝子の欠失と、cysE遺伝子およびmetH遺伝子の過剰発現とを含む、遺伝子改変微生物。
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