JP5805457B2 - 溶接ロボット制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、溶接ロボット制御装置に関するものである。
従来、アーク溶接ロボットでは、溶接前の教示時に溶接ロボットに取り付けられたセンサでワークの位置を検出して演算し、その演算結果に基づいて、教示時の溶接教示点を補正することが行われている。前記センサとしては、例えばワイヤタッチセンサが溶接用途では使用されている。
この溶接教示点の補正方式には、絶対位置方式と相対位置方式がある。絶対位置方式では、例えばワイヤタッチセンサで、溶接線上の溶接開始点と、溶接終了点をそれぞれ狙い位置として検出して演算し、その狙い位置をロボット制御装置が記憶して、溶接実行時にその狙い位置の位置情報を直接利用して溶接を行うものである。
一方、相対位置方式では、センサで検出・演算した溶接の狙い位置と、予め教示した狙い位置との差を「ずれ量」としてロボット制御装置が記憶し、その情報でティーチング位置を補正(平行移動)して溶接を行う。
具体的に、相対位置方式を図9〜図12を参照して説明する。
図9に示すように、教示時に、マスターワークWの溶接線Y上において、ワイヤタッチセンサ200が検出・演算する位置P101,P102、及び溶接開始点P103、終了点P104を教示しておく。前記教示された点は教示点という。
次に、実際の溶接対象のワークW1に対して、溶接ロボットを自動運転でサーチ動作を行わせ、図10に示すようにワイヤタッチセンサ200が検出・算出した位置P101’と先のP101の差であるずれ量L1、及びワイヤタッチセンサ200が検出・算出した位置P102’と位置P102の差であるずれ量L2を求めて、そのずれ量L1,L2をロボット制御装置が記憶する。
次に、図11に示すように実際の溶接対象のワークW1に対して、溶接ロボットを自動運転で溶接動作を行う場合、教示された溶接開始点P103をずれ量L1で補正して溶接開始点P103’に補正するとともに、溶接終了点P104をずれ量L2で溶接終了点P104’に補正する。
相対位置方式は、ずれ量を加工できるので、様々な実ワークへの対応能力が高く、きめ細かな狙い位置の調整が可能である。又、相対位置方式は、検出位置と溶接位置を別個にして考えられるので、直接センシングできない点も補正可能である。例えば、図11では、センシングできないワークW1の端部からの溶接が可能である。さらに、記憶したデータの使い回しができるため、タクトタイムの無駄が少ない利点がある。
例えば、図11に示すように、ワークW1が教示時のマスターワークWに対して平行にしかずれない場合は、位置P102の教示及び位置P102’の検出は不要で、ずれ量L1で溶接終了点P104を溶接終了点P104’に補正すればよい。
又、相対位置方式でのT字ワークの両面溶接を行う場合の利点を説明する。図12は、T字ワークを平面視したものであり、点線はマスターワークWを示し、実線は溶接を行うワークW1を示している。又、図12において、Y10及びY11は、マスターワークWの表側と裏側の溶接線を示し、Y12及びY13はワークW1の表側及び裏側の溶接線をそれぞれ示している。又、マスターワークWの表側の溶接線Y10の溶接開始点、及び溶接終了点をP110,P111とし、裏側の溶接線Y11の溶接開始点、及び溶接終了点をP112,P113とする。
そして、この場合、マスターワークWの裏側の溶接線Y11の溶接開始点P112,溶接終了点P113については、立上がり壁の厚みtを既知であるとし、溶接線Y10,Y11を平行とし、かつ、裏側の溶接開始点P112と溶接終了点P113の位置は、溶接開始点P110と溶接終了点P111に対して前記厚みt分、平行移動した位置とする。
一方、ワークW1の表側の溶接線Y12の溶接開始点、及び溶接終了点をP110’,P111’とし、並びに裏側の溶接線Y13の溶接開始点、及び溶接終了点をP112’,P113’とする。
この場合、図12に示すように、ワークW1がマスターワークWとずれていた場合、表側の溶接線Y10での溶接開始点のずれ量と、溶接終了点のずれ量を上記した図10、及び図11で説明したことと同様の方法で検出・演算を行うことにより、ワークW1の表側の溶接線での溶接開始点P110’及び溶接終了点P111’に補正できる。合わせて、裏側の溶接線Y13の溶接開始点P112’、及び溶接終了点P113’についても、厚みtと前記ずれ量に基づいて補正できる。
ワークW1では、表側の溶接線Y12の溶接開始点P110’及び溶接終了点P111’だけをセンシングすることで裏側の溶接線Y13の溶接開始点P112’及び溶接終了点P113’はセンシング動作なしで位置補正が行える。
ところで、上記は、ワイヤタッチセンサの相対位置方式について説明したが、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3のように溶接トーチに取り付けたレーザセンサを使用する方法も一般的に知られている。
レーザセンサを用いた場合、ワイヤタッチセンサより教示ステップを少なくすることができる。例えば、図10で示した隅肉継ぎ手のワークW1における位置P101を検出動作する場合、ワイヤタッチセンサでは10ステップ(センシング点が4点、アプローチおよび退避点6点)必要となるが、図13に示すように、レーザセンサLSではアプローチ1点とセンシング命令の計2ステップですむ利点がある。なお、図13中、FOVはレーザセンサLSの視野範囲を示している。
さらに、レーザセンサでは、検出精度が高い上に、タッチセンサを適用不可能なワークの検出も可能となる。
また、図14に示すようにレーザセンサLSによるワークの位置検知はセンサ座標系基準、例えばカメラ座標系基準で行われ、検出基準点は、カメラ座標系で格納されている。図14では、左重ね継ぎ手を視野範囲FOVのレーザセンサLSで検出する様子を図示している。ワイヤタッチセンサではセンシング時、溶接時ともワイヤ先端が制御点であるのに対し、レーザセンサでは、センシング時の制御点はセンサの視野範囲のある一点となり、溶接時の制御点とは異なる。したがって、溶接ワイヤ先端(溶接時の制御点)と、レーザセンサのセンシング制御点との取り付け関係を求める手段として、ソフトウェアにより取り付け関係を変換(行列)で求める方法で行われることが多い。ここで、溶接ワイヤ先端とレーザセンサのセンシング制御点の取り付け位置関係を求める操作をセンサキャリブレーションと呼び、この際に求められる変換行列をセンサ座標系−トーチ座標系の変換行列と呼ぶ。
特許第3317101号公報 特開平7−104831号公報 特許第3608673号公報
上記のように相対位置方式では、検出基準点をカメラ座標値(センサ座標値ともいう)で格納し、センシング時には、センシングして得られた検出座標値と格納されている検出基準点の座標値の差分を求め、カメラ座標系−トーチ座標系の変換行列によりロボット座標系基準のずれ量を求める。
前述のようにレーザセンサでは、検出座標値はカメラ座標系で求められる。作業プログラムに反映するには、検出点をロボット座標に変換する。このとき、レーザセンサをぶつけるなどの理由で着脱し、溶接トーチに対するレーザセンサの取り付けが変わってしまった場合、レーザセンサとトーチとの取り付け位置関係がずれてしまうために、検出基準点と溶接点との位置関係もずれてしまう。
ここでマスターワークを元の位置に設置できれば、センシング命令の検出基準点を更新するだけでよい。しかし、マスターワークがなかったり、その設置位置を復元できない場合には、検出基準点の更新に加え、溶接点の修正を一点一点行う必要がある。
又、ワーク数が多かったり、溶接箇所が多かったり、大型ワークが対象であったりすると、教示修正にかかる時間は膨大になる。このように、従来の相対位置方式では、既教示点の扱いについて課題がある。
本発明の目的は、レーザセンサを用いて相対位置方式により教示点の位置補正を行う場合において、レーザセンサの着脱等により溶接トーチとの取付位置関係が狂ったとしても、教示修正にかかる時間を大きく削減することができる溶接ロボット制御装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、溶接トーチに設けられたセンサにより検出された開先上の検出基準点がロボット座標系で記憶された作業プログラムを格納する第1格納手段と、前記センサの前記溶接トーチに対する取付位置変更前の現センサ−トーチ変換行列を格納する第2格納手段と、前記センサの前記溶接トーチに対する取付位置変更後の新センサ−トーチ変換行列を求めるためにセンサキャリブレーションが行われた際、その新センサ−トーチ変換行列を格納する第3格納手段と、前記現センサ−トーチ変換行列と前記新センサ−トーチ変換行列に基づいて差分変換行列を算出する算出手段と、前記作業プログラムに含まれる前記検出基準点を前記差分変換行列に基づいて更新する更新手段を備えることを特徴とする溶接ロボット制御装置を要旨としている。
請求項2の発明は、請求項1において、前記作業プログラムは、前記検出基準点毎に目印データが記述されており、前記更新手段は、前記目印データを探索して前記検出基準点を更新することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2において、前記目印データは、センシング命令であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項2または請求項3において、更新対象の作業プログラムを選択する選択手段を備え、前記更新手段は、前記選択手段により選択された作業プログラムに含まれる前記検出基準点を前記差分変換行列に基づいて更新することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記センサは、レーザセンサであることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、センサの着脱等によってセンサと溶接トーチの取付位置関係が変わったとしても、教示修正にかかる時間を大きく削減することができる。
請求項2の発明によれば、更新手段が、作業プログラムに記述されている目印データを探索して検出基準点を更新するようにしたことによって、更新処理を効率的に行うことができる。
請求項3の発明によれば、更新手段が、作業プログラムに記述されているセンシング命令を探索して検出基準点を更新するようにしたことによって、更新処理を効率的に行うことができる。
請求項4の発明によれば、選択された作業プログラムに対してのみ、検出基準点を更新するようにしたことによって更新処理を効率的に行うことができる。
請求項5の発明によれば、センサを特にレーザセンサで構成したときに、請求項1乃至請求項4の効果を容易に実現できる。
(a)は一実施形態の溶接ロボット制御システムのブロック図、(b)は同じくティーチペンダントTPの概略図。 (a)はツール座標系の説明図、(b)はレーザセンサLSの取付状態を示すレーザセンサLSの斜視図。 ロボット制御装置RCのブロック図。 ツール座標系、センサ座標系、ロボット座標系との関係の説明図。 センシング教示の説明図。 溶接教示の説明図。 相対位置方式の作業プログラムの説明図。 CPUが実行する検出基準点の更新フローチャート。 相対位置方式の説明図。 相対位置方式の説明図。 相対位置方式の説明図。 T字ワークの両面溶接する場合の平面図。 ワークとレーザセンサLSとの相対位置関係を示す説明図。 ワークとレーザセンサLSとの相対位置関係を示す説明図。
以下、本発明の溶接ロボット制御装置の一実施形態を図1〜図8を参照して説明する。なお、以下では、説明の便宜上、アーク溶接ロボットを単に溶接ロボットという。
溶接ロボット制御システム10は、溶接作業を行うマニピュレータM1と、マニピュレータM1を制御するロボット制御装置RCと、ワークW1の位置を検出する位置センサとしてのレーザセンサLSとを備える。
又、ロボット制御装置RCには、可搬式操作部としてのティーチペンダントTPが接続されている。図1(a)に示すようにティーチペンダントTPにはテンキーや各種のキーからなるキーボード41及び液晶表示装置等からなるディスプレイ42が設けられている。ティーチペンダントTPは選択手段に相当する。前記キーボード41により各種の教示データがロボット制御装置RCに入力される。
マニピュレータM1は、フロア等に固定されるベース部材12と、複数の軸を介して連結された複数のアーム13とを備える。本実施形態ではマニピュレータM1は、図示はしないが、J1軸からJ6軸を有する6軸ロボットである。最も先端側に位置するアーム13の先端部には、図4に示すようにロボット出力フランジ40が設けられている。ロボット出力フランジ40には、支持アーム50を介して溶接トーチ14が設けられる。溶接トーチ14は、溶加材としてのワイヤ15を内装し、図示しない送給装置によって送り出されたワイヤ15の先端とワークW1との間にアークを発生させ、その熱でワイヤ15を溶着させることによりワークW1に対してアーク溶接を施す。アーム13間には複数のモータ(図示しない)が配設されており、モータの駆動によって溶接トーチ14を前後左右に自在に移動できるように構成されている。なお、前後とは、溶接トーチ14が開先に沿って進行する方向を前とし、その180度反対方向を後ろとする。又、左右とは進行する方向を人が向いたときを基準として、左右という。
ロボット制御装置RCは、図3に示すようにコンピュータからなる。すなわち、ロボット制御装置RCはCPU(中央処理装置)20、マニピュレータM1を制御するための各種プログラムや、各種の開先形状に応じて用意された複数の形状解析プログラムを記憶する書換可能なEEPROM21、作業メモリとなるRAM22、各種データを記憶する書換可能な不揮発性メモリからなる記憶部23を備える。
CPU20は、更新手段、及び算出手段に相当する。記憶部23は、第1格納手段、第2格納手段、第3格納手段に相当する。
記憶部23は、第1記憶領域23a、第2記憶領域23b、第3記憶領域23c、第4記憶領域23d、第5記憶領域23e等の記憶領域を有する。
第1記憶領域23aはレーザセンサLSにて視野範囲FOV(図4参照)を測定して得られた距離情報(測距データ)を記憶するための領域である。第2記憶領域23bには、教示時にティーチペンダントTPのキーボード41にて入力された狙い角、前進後退角、教示点の位置等の教示データをファイル化して記憶する。第3記憶領域23cは、ステップ毎に、教示命令が記述された作業プログラムを記憶する領域である。作業プログラムについては後述する。
第4記憶領域23dは、センサキャリブレーションが行われた際のそのセンサキャリブレーションが行われる以前の現センサ−トーチ変換行列1Tを記憶するためのものである。なお、最初のセンサキャリブレーションが行われた際には、その時得られた変換行列は、第4記憶領域23dと後述する第5記憶領域23eにそれぞれ格納される。2回目以後のセンサキャリブレーションが行われたときは、第4記憶領域23dは第5記憶領域23eの内容に書き換えられる。第5記憶領域23eは、前記センサキャリブレーションが2回目以後に行われた際に取得された新センサ−トーチ変換行列2Tが更新して記憶される。
ロボット制御装置RCは、前記モータを駆動制御することにより、予め設定された教示データの主軌道に沿って溶接トーチ14を動作させる。この溶接トーチ14の位置姿勢は、前記モータに設けられているエンコーダ及び各アーム13のリンクパラメータに基づいてCPU20により算出可能である。
又、ロボット制御装置RCは、溶接電流及び溶接電圧といった溶接条件を溶接電源WPSに対して出力し、溶接電源WPSからパワーケーブルPKを通じて供給される電力によって溶接作業を行わせる。
レーザセンサLSは、レーザの発光及び受光によりワークW1までの距離を測定する走査型のレーザ変位センサであり、図2(b)に示すように溶接トーチ14に対しブラケット70を介して着脱自在に搭載される。レーザセンサLSは、レーザをワークW1に向けて発光する発光部と、ワークW1で反射したレーザを受光する受光部等(ともに図示しない)を備える。前記発光部で発光されたレーザは、ワークW1で反射され、受光部で受光される。受光部は、例えばCCDラインセンサ(ラインレーザセンサ)により構成されており、視野範囲FOVにおけるレーザセンサLSからワークW1までの距離を測定するようにされている。
又、ロボット制御装置RCは、レーザセンサLSを制御し、レーザセンサLSとワークW1間の距離(距離情報)を前記形状解析プログラムに従って形状解析することにより開先位置を検出する。
レーザセンサLSは、レーザ照射方向が、ツール座標系のいずれかの軸と平行となるようにセンサヘッドLSaが取り付けられている。図2(a)にはツールである溶接トーチ14が示されている。ここでツール座標系は図2(a)のように、溶接トーチ14の軸心にZ軸を一致させたものとして表わされる。そして、本実施形態では、図2(b)に示すように溶接トーチ14に対して、レーザセンサLSのセンサヘッドLSaはレーザ照射方向がおおよそZ−方向となるように、かつ、溶接トーチ14の溶接進行方向がツール座標系のおおよそX軸になるように設定され、レーザセンサLSが前記X軸におおよそ平行になるように取り付けされる。レーザセンサLS(すなわち、図2(b)に示すセンサヘッドLSa)は、溶接トーチ14の先端から溶接進行方向側に所定距離離間した位置にレーザ照射するようにされている。レーザセンサLSは必ずしもX軸+方向に取り付ける必要はない。いずれの取り付け方向であっても、溶接トーチ14に対するレーザセンサLSの取り付け関係は、前記記憶領域23dに新センサ−トーチ変換行列1Tとして格納される。
又、ロボット制御装置RCには、溶接作業が行われる前に、溶接が行われる際のマニピュレータM1の動作及び溶接条件等を示す教示データがティーチペンダントTPを介して入力されるとともに、作業プログラムが作成されて記憶部23の第3記憶領域23cに記憶される。なお、以下では、特に断らない限り、「教示する」とはティーチペンダントTPを使用して入力することをいう。
(作業プログラムについて)
まず、前記第3記憶領域23cに記憶されている相対位置方式の作業プログラムの例を、図7に示す作業プログラムを参照して説明する。
なお、以下の説明では、「溶接トーチを位置させる。」或いは「ロボットを位置させる。」は、溶接トーチ14の先端から突出するワイヤ15の先端、又は溶接トーチ14先端に対して着脱自在に取り付けられた図示しない教示治具の先端を、それぞれの教示点(原位置、センシング点、溶接開始点、溶接終了点)に位置させることを意味するものとする。なお、説明の便宜上、マスターワークW、及び実際の溶接を行う対象のワークW1として、一対の鉄板がL字状に配置された隅肉継手の場合を説明するが、継手の種類は限定されるものではない。
教示モードでは、作業者は、マスターワークWを使用して、ティーチペンダントTPを操作し、マニピュレータM1を駆動制御することにより、図5、図6に示すように溶接トーチ14を原位置G、マスターワークWの開先を検出するセンシング点SN1、SN2、溶接開始点R2、溶接終了点R1、及び前記原位置Gの順にそれぞれの位置を教示点として教示するとともに、各教示点において、必要な命令或いは教示データを入力する。なお、各教示点での教示した教示データについては後述する。
センシング点SN1は、マスターワークWの開先における溶接終了点R1を検出するための溶接トーチ14の位置であり、この位置に溶接トーチ14を位置させた際、作業者は、位置決め命令(又は直線補間命令)及び「センシング命令&ポーズ演算命令」をティーチペンダントTPのキーボード41を操作して入力する。センシング点SN2はマスターワークWの開先における溶接開始点R2を検出するための溶接トーチ14の位置であり、この位置に溶接トーチ14を位置させた際、作業者は、位置決め命令(又は直線補間命令)及び「センシング命令&ポーズ演算命令」をティーチペンダントTPのキーボード41を操作して入力する。
なお、作業者は、ティーチペンダントTPを操作することにより、センシング点SN1,SN2では、レーザセンサLSの視野範囲FOV内にセンシングを所望する点があるようにロボットを位置させるようにしてラフに教示すればよい。一方、溶接終了点R1、及び溶接開始点R2に対しては、所望の狙い位置を正確に狙うように溶接トーチを位置させる。
次に、前述のようにして教示モードで作成された作業プログラムを使用して、ワークW1に溶接する場合について説明する。
図7に示すステップ1では、CPU20は「位置決め命令」により原位置Gに溶接トーチ14を位置決め動作させる(図5参照)。なお、図5,図6は、マスターワークをWで示しているが、説明の便宜上、実際に溶接が行われるワークの意味に使用する場合は、符号をW1として使用している。
ステップ2ではCPU20は、「位置決め命令(又は直線補間命令)」により、溶接トーチ14を図5に示すセンシング点SN1に位置させるとともに、教示モードで教示された姿勢にさせる。なお、センシング点SN1は、溶接終了側のセンシング点である。
ステップ3においては、センシング点SN1で、「センシング命令」が教示されている。この「センシング命令」により、レーザセンサLSは、ワークW1の開先上の後述する溶接終了点R1の検出基準点Q1を検出する。すなわち、CPU20は、前記形状解析プログラムに従って視野範囲FOVの範囲で検出した測距データを形状解析することにより開先位置を検出し、検出した開先位置を検出基準点Q1とする。
詳細に説明すると、CPU20は、センシング点SN1を、図4に示すように、ロボット座標系とツール座標系間の変換行列を使用して、ロボット座標系に変換した後に、レーザセンサLSが出力した検出点座標分をシフトした点を、検出基準点Q1とする。この場合、レーザセンサLSが出力した検出点座標分をシフトした点は、溶接トーチ14とレーザセンサLS間の記憶領域23dに格納されている現センサ−トーチ変換行列1Tが乗算されて使用される。この結果、検出基準点Q1は、ロボット座標系の座標値で表される。
なお、説明の便宜上、ここで纏めて説明するが、後述する検出基準点Qn1、検出基準点Qn2(ともに図示しない)も同様に、記憶領域23dに格納されている現センサ−トーチ変換行列1Tが乗算された値としている。
なお、教示モードでマスターワークWを使用して、溶接終了側のセンシング点SN1で取得した検出基準点をQn1とすると、検出基準点Qn1は、検出基準点Q1と同様にロボット座標系の座標値とされるとともに、デフォルト値として記憶部23の第2記憶領域23bの所定領域にステップ2の「センシング命令」と関連付けられて格納されている。
ここで、ツール座標系は、溶接トーチ14の軸心にZ軸を合わせた座標系であり、ロボット座標系は、ベース部材12の任意の点を原点とした座標系である。また、センサ座標系は、センサの任意の部位を原点とした座標系である。
CPU20は、マスターワークWで得られた検出基準点Qn1とワークW1で得られた検出基準点Q1との各座標値のずれ量L3を演算するとともにそのずれ量L3をずれ補正ファイルNo.2に保管して、記憶部23の第2記憶領域23bに保存する。
ステップ4では、CPU20は、「位置決め命令(又は直線補間命令)」により、溶接トーチ14を図5に示すセンシング点SN2に位置させるとともに、教示モードで教示された姿勢にさせる。なお、センシング点SN2は、溶接開始側のセンシング点である。
ステップ5においては、センシング点SN2で、「センシング命令」が教示されている。
この「センシング命令」により、レーザセンサLSは、ワークW1の開先上の後述する溶接開始点R2の検出基準点Q2を検出する。すなわち、ロボット制御装置RCのCPU20は、前記形状解析プログラムに従って視野範囲FOVの範囲で検出した測距データを形状解析することにより開先位置を検出し、検出した開先位置を検出基準点Q2とする。
詳細に説明すると、CPU20は、センシング点SN2を、ロボット座標系とツール座標系間の変換行列を使用して、ロボット座標系に変換した後に、レーザセンサLSが出力した検出点座標分をシフトした点を、検出基準点Q2とする。この場合、レーザセンサLSが出力した検出点座標分をシフトした点は、溶接トーチ14とレーザセンサLS間の記憶領域23dに格納されている現センサ−トーチ変換行列1Tが乗算されて使用される。この結果、検出基準点Q2は、ロボット座標系の座標値で表される。
なお、教示モードにおいて、マスターワークWを使用して、溶接開始側のセンシング点SN2で取得した検出基準点をQn2とすると、検出基準点Qn2は、検出基準点Q2と同様にロボット座標系の座標値とされてデフォルト値として、記憶部23の第2記憶領域23bの所定領域に、ステップ4の「センシング命令」と関連付けられて格納されている。
CPU20は、マスターワークWで得られた検出基準点Qn2とワークW1で得られた検出基準点Q2とのずれ量L4を演算し、そのずれ量L4をずれ補正ファイルNo.1に記述し、ずれ補正ファイルNo.1を記憶部23の第2記憶領域23bに保存する。
ステップ6では、アプローチ点P6に移動する「位置決め命令」により、CPU20は、溶接トーチ14をアプローチ点P6に位置決めする。
ステップ7では、「シフト開始命令」により、CPU20は、第3記憶領域23cに格納した補正ファイルNo.1を読み出し、ずれ補正ファイルNo.1に記述されたずれ量L3分だけ、溶接トーチ14をシフトさせる。
ステップ8では、「直線補間命令」により、第2記憶領域23bに格納した教示データである移動速度で、教示された溶接開始点R2に位置させるべく直線補間する。なお、この教示された溶接開始点R2は、実際には前記ずれ量L4分だけ変更(シフト)したものである。このとき、CPU20は、記憶部23の第2記憶領域23bに格納した教示データである狙い角、前進後退角を第2記憶領域23bから読み出して、溶接トーチ14がこの姿勢となるように、かつ溶接開始点R2に位置させるようにマニピュレータM1を移動制御する。
ステップ9では、CPU20は、「溶接開始命令」により第2記憶領域23bから教示データである溶接電流及び溶接電圧、溶接速度等の溶接条件を読込み、これらの溶接条件を溶接電源WPS及び図示しない図示しないワイヤ送給装置に対して出力する。
溶接電源WPSは前記溶接電流、及び溶接電圧となるように電源制御するとともに図示しないワイヤ送給装置が、前記送り速度でワイヤ15を溶接トーチ14に送るように制御する。
ステップ10では、CPU20は、「シフト量変更命令」により、シフト量を変更するために後述する直線補間でのシフト量を算出する。すなわち、このシフト量の変更は、ずれ量L4、及びずれ量L3に基づいて溶接開始点R2から進行する場合のシフト量を徐々に変更するためである。すなわち、CPU20は、前記ずれ量L3とずれ量L4の差分を後述するステップ11での直線補間の補間周期で等分した量で加算または減算するようにして、シフトをリニアに変化させるためのものである。
ステップ11の「直線補間命令」により、CPU20は、前記シフトがリニアに変化するように溶接終了点R1に直線補間して、教示データである溶接速度でマニピュレータM1を駆動制御して溶接トーチ14を移動させる。
このとき、CPU20は、ステップ5で、第2記憶領域23bに格納したマニピュレータM1の各軸角度の姿勢で、溶接トーチ14は溶接終了点R1まで位置させるようにマニピュレータM1を移動制御する。
ステップ12では、CPU20は、「溶接終了命令」により教示データである溶接電流及び溶接電圧などの溶接条件を読込み、これらの溶接条件を溶接電源WPS及び図示しないワイヤ送給装置に対して出力する。溶接電源WPSは前記溶接電流、及び溶接電圧となるように電源制御するとともに図示しないワイヤ送給装置によるワイヤ15の送給を停止する。
ステップ13では、CPU20は、「シフト命令終了」により、前述したシフトを停止する。
ステップ14では、「直線補間命令」により、CPU20は退避点P14に直線補間して、教示データである動作速度でマニピュレータM1を駆動制御して溶接トーチ14を移動させる。
ステップ15では、CPU20は「位置決め命令」により、原位置GにマニピュレータM1を駆動制御して溶接トーチ14を移動させる。
(作用)
上記のように構成された溶接ロボット制御システム10の作用を説明する。
溶接トーチ14に対するレーザセンサLSの取り付けが変わってしまった場合、例えば、レーザセンサLSを溶接トーチ14に対して取付位置を変更した場合には、作業者は、ティーチペンダントTPを操作して、検出基準点修正モードを選択する。検出基準点修正モードでは、作業者は、キーボード41の入力によりディスプレイ42上に、ロボット制御装置RCの記憶部23に格納している作業プログラムを表示させる。そして、作業者は、ティーチペンダントTPのキーボード41の選択入力により、検出基準点を更新したい作業プログラムを予め選択した後、図8に示すように検出基準点修正プログラムを実行する。
S10では、CPU20は、レーザセンサLSと溶接トーチ14間の公知のセンサキャリブレーションを行い、新センサ−トーチ変換行列2Tを得て、第5記憶領域23eに格納する。S20では、CPU20は、センサキャリブレーションが行われる前に第5記憶領域23eに格納されていた内容(現センサ−トーチ変換行列1T)は、第4記憶領域23dに格納する。
S30では、CPU20は、下記式で差分変換行列の演算を行う。
=(1T−12T
図4において、取付直し前のセンサ座標系は(X,Y,Z)で示し、取付直し後のセンサ座標系は(XCN,YCN,ZCN)で示している。この両センサ座標系と、変換行列1T2T、差分変換行列は図の通りである。
S40では、CPU20は、予め選択しておいた作業プログラムに対して、「センシング命令」が記述されているステップ、及びその「センシング命令」に関連付けられた検出基準点を探索する。前記例で挙げた作業プログラムでは、前記探索によりステップ3,ステップ5の「センシング命令」に関連付けられた検出基準点Qn1,Qn2(ともに図示しない)が見つけ出される。
S50では、CPU20は、見つけ出した検出基準点(前記例では、検出基準点Qn1,Qn2)に対してそれぞれ差分変換行列を乗算して、検出基準点を更新する。すなわち、第2記憶領域23bには、「センシング命令」に関連付けられた検出基準点が更新されて格納される。この結果、作業プログラムは、マスターワークWで得られた検出基準点が更新されたものとなる。
本実施形態の溶接位置検出方法、及び溶接位置検出装置によれば、下記の特徴がある。
(1)本実施形態のロボット制御装置RCは、溶接トーチ14に設けられたレーザセンサLSが検出した開先上の検出基準点Qn1,Qn2(ともに図示しない)が、ロボット座標系で記述された作業プログラムを格納する記憶部23(第1格納手段)を備える。記憶部23は、第2格納手段として、レーザセンサLSの溶接トーチ14に対する取付位置変更前の現センサ−トーチ変換行列1Tを格納する。また、記憶部23は、第3格納手段として、レーザセンサLSの溶接トーチ14に対する取付位置変更後の新センサ−トーチ変換行列2Tを求めるセンサキャリブレーションが行われた際、その新センサ−トーチ変換行列2Tを格納する。さらに、ロボット制御装置RCは、現センサ−トーチ変換行列1Tと新センサ−トーチ変換行列2Tに基づいて差分変換行列を算出するCPU20(算出手段)を備える。また、CPU20は、更新手段として、作業プログラムに含まれる検出基準点Qn1,Qn2を差分変換行列に基づいて更新する。
この結果、本実施形態によれば、センサの検出基準点に対する相対的なずれ量を溶接教示点に反映するシステムにおいて、センシング命令を含む作業プログラムを新規教示する際に溶接位置を正確に教示していれば、センサヘッドの着脱による教示修正にかかる時間を大きく削減することができる。
(2) 本実施形態のロボット制御装置RCは、作業プログラムは、マスターワークWを使用することにより得られた検出基準点Qn1,Qn2毎に目印データとしての「センシング命令」が記述されており、CPU20は、「センシング命令」を探索して検出基準点Qn1,Qn2を更新する。
この結果、本実施形態では、CPU20は、作業プログラムに記述されているセンシング命令を探索して検出基準点を更新するため、更新処理を効率的に行うことができる。
(3) 本実施形態のロボット制御装置RCは、更新対象の作業プログラムを選択するティーチペンダントTP(選択手段)を備え、CPU20(更新手段)は、ティーチペンダントTPにより選択された作業プログラムに含まれる検出基準点Qn1,Qn2を差分変換行列に基づいて更新する。
この結果、本実施形態によれば、選択された作業プログラムにのみ、CPU20は、検出基準点を更新するため、更新処理を効率的に行うことができる。
(4) 本実施形態のロボット制御装置RCは、センサとしてレーザセンサLSを使用する。このため、上記(1)から(3)の効果を、レーザセンサLSを備えた溶接ロボットにおいて、容易に実現できる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように構成してもよい。
・ 前記実施形態では、目印データとして「センシング命令」を探索することにより、「センシング命令」に関連づけされた検出基準点を更新するようにしたが、目印データはセンシング命令に限定するものではない。作業プログラムのセンシング命令が記述されたステップにおいて、前記検出基準点を探索するために、「センシング命令」以外の目印データを記述し、この目印データを探索して、前記検出基準点を更新するようにしてもよい。
・ 前記実施形態では、検出基準点を更新する作業プログラムを選択するようにしたが、この代わりに、記憶部23に格納されている全作業プログラムを一括して検出基準点を探索して更新するようにしてもよい。
・ 前記実施形態のレーザセンサLSは、ラインレーザセンサを使用したが、レーザをミラーに当てて走査するスキャニング型のレーザ変位センサ、或いは、スポットレーザセンサに代えてもよい。
・ 前記実施形態のレーザセンサLSの代わりに、従来技術で説明したタッチセンサに変更してもよい。
・ 前記実施形態では、マニピュレータM1は、6軸ロボットとしたが、7軸ロボットのように多軸ロボットで構成するようにしてもよい。
・ 前記実施形態では、ロボット座標系をベース部材12の任意の部位を原点とする座標系としたが、ロボット座標系は、例えば、ロボット座標系として、図4に示すように、マニピュレータM1の先端のロボット出力フランジ40のJ6軸上に原点を有するメカニカルインターフェイス座標系としてもよい。
この場合、ステップ3において、CPU20は、センシング点SN1を、図4に示すように、ロボット座標系(メカニカルインターフェイス座標系)とツール座標系間の変換行列J6を使用して、ロボット座標系に変換した後に、レーザセンサLSが出力した検出点座標分をシフトした点を、検出基準点Q1とするものとする。
このように、ロボット座標系は、マニピュレータM1側に設ける座標系であればよい。
14…溶接トーチ、
20…CPU(算出手段、更新手段)、
23…記憶部(第1格納手段、第2格納手段、第3格納手段)、
M1…マニピュレータ、TP…ティーチペンダント(選択手段)、
RC…ロボット制御装置。

Claims (5)

  1. 溶接トーチに設けられたセンサにより検出された開先上の検出基準点がロボット座標系で記憶された作業プログラムを格納する第1格納手段と、
    前記センサの前記溶接トーチに対する取付位置変更前の現センサ−トーチ変換行列を格納する第2格納手段と、
    前記センサの前記溶接トーチに対する取付位置変更後の新センサ−トーチ変換行列を求めるセンサキャリブレーションが行われた際、その新センサ−トーチ変換行列を格納する第3格納手段と、
    前記現センサ−トーチ変換行列と前記新センサ−トーチ変換行列に基づいて差分変換行列を算出する算出手段と、
    前記作業プログラムに含まれる前記検出基準点を前記差分変換行列に基づいて更新する更新手段を備えることを特徴とする溶接ロボット制御装置。
  2. 前記作業プログラムは、前記検出基準点毎に目印データが記述されており、
    前記更新手段は、前記目印データを探索して前記検出基準点を更新することを特徴とする請求項1に記載の溶接ロボット制御装置。
  3. 前記目印データは、センシング命令であることを特徴とする請求項2に記載の溶接ロボット制御装置。
  4. 更新対象の作業プログラムを選択する選択手段を備え、
    前記更新手段は、前記選択手段により選択された作業プログラムに含まれる前記検出基準点を前記差分変換行列に基づいて更新することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溶接ロボット制御装置。
  5. 前記センサは、レーザセンサであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の溶接ロボット制御装置。
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