JP3948092B2 - トーチ位置検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロボットを使用して行う作業において、トーチの対象物や治具等と干渉した際のトーチ先端の位置ずれ量を検出するトーチ位置検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ロボット手先に取り付けられた溶接トーチから突き出された溶接ワイヤ先端の位置を検出する方法としては、ワイヤタッチセンシングによる方法があった。この方法は、溶接トーチの先端から一定の長さだけ突き出された溶接ワイヤと溶接対象物の間に電圧を加えて、ワイヤ先端と溶接対象物が電気的に接触したときのワイヤ先端位置を検出するものである。このワイヤタッチセンシングを利用したトーチ先端の位置ずれ検出技術として、特開平1−257593号公報に示すような方法がある。図8は従来技術での検出動作を表す図である。
【0003】
同図において、導電性の3平板で構成される治具13はロボットの動作範囲内に配置され、ロボット手先部に取り付けられた溶接トーチ2から溶接ワイヤ7が突き出されている。上記構成において、溶接ワイヤ7と治具13の間に電圧を加え、あらかじめロボット制御装置の記憶部に記憶させた方向にロボットを動作させて溶接ワイヤ7と治具13との電気的接触位置をそれぞれ3平板に対して検出し、トーチ変形前に検出した接触位置とトーチ変形後に検出した接触位置の差分から溶接ワイヤ先端の位置ずれ量をロボット制御装置の演算部で算出して記憶部に記憶し、以降の動作において前記位置ずれ量を呼吸する方向に溶接ワイヤ先端をずらして補正動作するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来技術において高精度な位置検出を行うためには、トーチから突き出している溶接ワイヤが決められた長さであることおよび検出動作中にワイヤ長さが変化しないことが必要である。ワイヤの長さを自動的に適正長にする手段としてワイヤの自動切断機があるが、通常ワイヤの自動切断機はトーチとは分離され、ロボット動作範囲内の別の場所に設置されているので、トーチ先端を自動切断機の所定の場所へ位置決めしたのちワイヤを切断しなければならないものである。したがってトーチが大きく変形した状態では正しい位置でワイヤを切断することができないため、作業者がワイヤの長さを調整する必要があり、手作業によって精度が悪化したり調整に時間がかかるという問題があった。
【0005】
さらに、検出動作中にトーチの姿勢が変化することやワイヤタッチセンシングの際にワイヤと治具が接触するときの圧力が原因でワイヤの突き出し長さが変化するという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するものであり、溶接トーチの変形による溶接ワイヤ先端の位置ずれを補正する際に、トーチの種類に制限されることなく高い精度で溶接ワイヤ先端の位置ずれを補正することができるトーチ位置検出装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、ロボット本体と、前記ロボット本体を制御するロボット制御装置と、前記ロボット本体の動作範囲内に設置されており前記ロボット本体の手先に取り付けられたトーチが接触したことを検出して信号を送信する検出器を備え、前記検出器方向に前記ロボット本体を動作させるステップと、前記ステップの後でトーチ先端位置を中心に前記トーチを回転させるステップと、前記回転後に前記検出器方向へロボットを動作させるステップと、前記検出器が前記トーチの接触を検出した時点のロボット座標系に対するトーチ先端位置と姿勢を前記ロボット制御装置が記憶するステップを有する。
【0008】
また、ロボット本体と、前記ロボット本体を制御するロボット制御装置と、前記ロボット本体の動作範囲内でありロボットの直交座標系における2軸平面に平行に設置されており前記ロボット本体の手先に取り付けられたトーチが接触したことを検出して信号を送信する検出器を備え、前記2軸平面に対して垂直方向から前記検出器方向に前記ロボット本体を動作させるステップと、前記ステップの後でトーチ先端位置を中心に2軸平面を構成する1軸回りに90度回転させるステップと、前記回転後に検出器方向へロボットを動作させるステップと、前記検出器が前記トーチの接触を検出した時点のロボット座標系に対するトーチ先端位置と姿勢を前記ロボット制御装置が記憶するステップを有する。
【0009】
また、アーク溶接用ロボットの手先に取り付けられた溶接トーチの位置を検出する独立した2つの検出器と、前記検出器の出力を入力とした判定器を設けたものである。
【0010】
また、溶接トーチの電極を挟んで相対した位置に2つの検出器を配置したものである。
【0011】
また、検出器として、一端を固定した弾性体とこの弾性体の他端に配設したリミットスイッチを用いるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は上記手段により、溶接ワイヤではなく、トーチが2つの検出器に接触することによってその位置を検出することができるため、溶接ワイヤの突き出し長さに関係なくトーチ位置を検出することができるものである。
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を説明する。
図1〜7は本実施の形態を説明する図である。図1はロボットとトーチ位置検出装置の全体構成を表す概略図、図2は溶接トーチ側面での検出動作を表す概略図、図3は溶接チップ先端での検出動作を表す概略図、図4は溶接チップ先端での検出動作を表す詳細図である。図1に示すようにロボット本体1はロボット制御装置5で制御される。トーチ位置検出器3は、ロボット動作範囲内に設置され、トーチ位置検出器3の出力信号線は判定器4を介してロボット制御装置5に接続される。
【0014】
次に図2(a)を参照して溶接トーチ側面での位置検出動作について説明する。トーチ位置検出器3は、2つの独立した位置検出器で構成されており、この2つの独立した位置検出器は、トーチ接触部8とリミットスイッチ10、トーチ接触部9とリミットスイッチ11の組み合わせからなり、トーチ接触部8,9を支持部12で共通に支持している。トーチ接触部8は、上方から外力が加わると支持部12を支点に回転動作しリミットスイッチ10を押し下げ、リミットスイッチ10を作動させる。同様にトーチ接触部9は、上方から外力が加わると支持部12を支点に回転動作してリミットスイッチ11を押し下げ、リミットスイッチ11を作動させる。リミットスイッチ10、11は外力がなくなると内部にあるバネの反作用により外力が加わる前の位置に復帰する。トーチ接触部8,9は一定間隔で配置されており、その間隔は溶接ワイヤ7の直径より大きく溶接チップ6の直径より小さい。
【0015】
これ以降の説明は、トーチ位置検出器3をロボット座標系のXY面に並行に設置し、センシング方向をZ軸方向で行う場合の例について述べる。なお、例で述べる以外のトーチ位置検出器3の設置位置およびセンシング方向によってトーチ位置検出を行うことも可能である。
【0016】
あらかじめロボット制御装置に記憶する位置検出動作について図6を参照して説明する。
【0017】
ステップ1〜2ではトーチのZ軸に対する傾きを求めるための位置検出動作を記憶する。ステップ1では図2(b)に示すように溶接トーチ2のトーチ長さ方向がロボット座標系のX軸方向に並行になるような姿勢にし、溶接トーチの姿勢を保持したままZ軸に沿ってセンシングしたとき、溶接トーチ2がトーチ位置検出器3のトーチ接触部8および9に当たるようなセンシング動作を記憶する。ステップ2ではステップ1と同じトーチ姿勢でトーチの位置をX軸に沿って一定量Hだけ並行移動させた位置からZ軸に沿ってセンシングする動作を記憶する。
【0018】
ステップ3〜4ではトーチのY軸に対する傾きを求めるための位置検出動作を記憶する。ステップ3ではステップ1のトーチ姿勢に対してトーチ先端位置を固定したまま、トーチをX軸回りに−90度回転させた姿勢にし、Z軸に沿ってセンシングする動作を記憶する。X軸回りに−90度回転させることでZ軸方向のセンシングをY軸方向のセンシングとみなすことができる。ステップ4ではステップ3と同じトーチ姿勢でトーチの位置をX軸に沿って一定量Hだけ並行移動させた位置からZ軸に沿ってセンシングする動作を記憶する。
【0019】
ステップ5ではトーチに垂直方向の位置ずれを求めるための位置検出動作を記憶する。ステップ1と同じ姿勢で、溶接トーチの姿勢を保持したままZ軸に沿ってセンシングしたとき、溶接トーチ2がトーチ位置検出器3のトーチ接触部8および9に当たるようなセンシング動作を記憶する。
【0020】
ステップ6ではトーチに垂直でステップ5で検出する位置ずれ方向に対して直角方向の位置ずれを求めるための位置検出動作を記憶する。ステップ3と同じ姿勢で、溶接トーチの姿勢を保持したままZ軸に沿ってセンシングしたとき、溶接トーチ2がトーチ位置検出器3のトーチ接触部8および9に当たるようなセンシング動作を記憶する。
【0021】
ステップ7ではトーチに沿った方向の位置ずれを求めるための位置検出動作を記憶する。図3のように溶接トーチ2のトーチ長さ方向がトーチ位置検出器3に対して垂直になるような姿勢にする。この姿勢を保持したままZ軸に沿ってセンシングしたとき、図4(a)に示すように溶接チップ6がトーチ接触部8と9の中間に位置するようなセンシング動作を記憶する。
【0022】
図6のステップ1〜ステップ6までの検出動作を行う場合、図1の判定器4はリミットスイッチ10と11の検出信号のどちらか一方が入力されたとき、ロボット制御装置5に検出信号を送信し、ロボット制御装置5は信号が入力された時点のロボット座標系に対するトーチ先端位置と姿勢を記憶する。
【0023】
図6のステップ7の検出動作を行う場合、図1の判定器4はリミットスイッチ10と11の検出信号が両方とも入力されたとき、ロボット制御装置5に検出信号を送信し、ロボット制御装置5は信号が入力された時点のロボット座標系に対するトーチ先端位置と姿勢を記憶する。図4(b)のようにトーチ位置がトーチ接触部8,9の中間になくリミットスイッチの検出信号が一方だけしか入力されなかったときは、ロボット制御装置5にエラー信号を送信し、ロボット制御装置5はロボットを停止させる等のエラー処理を行う。
【0024】
次に溶接トーチが変形する前に図6のステップ1〜7までの位置検出動作を行い、ステップ1〜7にそれぞれ対応した検出位置P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7を記憶する。
【0025】
このP1〜P4の位置データからトーチ変形前のステップ1におけるトーチ方向の単位ベクトルiを算出する。図5に示すようにステップ1での検出動作を行うときに記憶した任意の一点のトーチ先端位置を位置T1とし、位置T1からX軸方向に沿って一定量Hだけ離れた点を通るYZ面と変形前のトーチの中心線とが交わる交点の位置をT2とすると、位置T2はT2=f(T1,ΔP12z,ΔP34z)に示すようにP1とP2のZ方向成分の差分ΔP12z、P3とP4のZ方向成分の差分ΔP34z、位置T1の関係式で表される。
【0026】
トーチの中心線は、この位置T1,位置T2を通るのでこのときのトーチ方向の単位ベクトルiは、i=f(T1,T2)のように位置T1,位置T2の関係式で表される。
【0027】
i=f(T1,T2)で求まるトーチ方向の単位ベクトルiをX軸とするツール座標系の直交3軸単位ベクトル(i,j,k)を適当に決定し、記憶する。
【0028】
次に溶接トーチが変形した後の位置検出動作とトーチ補正量の算出方法について図7を参照して説明する。
【0029】
ステップaでは、図6のステップ1〜4の位置検出動作を行い、それぞれの検出位置P1´,P2´,P3´,P4´を記憶する。
【0030】
ステップbでは、このP1´〜P4´の位置データからトーチ姿勢の補正値ΔMを算出して記憶する。ステップ1での検出動作を行うときに記憶した任意の一点のトーチ先端位置を位置T1とし、位置T1からX軸に沿って一定量Hだけ離れた点を通るYZ面と位置T1を通るトーチ変形後のトーチの中心線に並行な線とが交わる交点の位置をT2´とすると、位置T2´はT2´=f(T1,ΔP12´z,ΔP34´z)に示すようにP1´とP2´のZ方向成分の差分ΔP12´z、P3´とP4´のZ方向成分の差分ΔP34´z、位置T1の関係式で表される。
【0031】
トーチの中心線は、この位置T1,位置T2´を通る線分に並行であるのでこのときのトーチ方向の単位ベクトルi´は、i´=f(T1,T2´)のように位置T1,位置T2´の関係式で表される。
【0032】
i´=f(T1,T2´)で求まるトーチ方向の単位ベクトルi´をX軸とするツール座標系の直交3軸単位ベクトル(i´,j´,k´)を決定し、記憶する。
【0033】
トーチ変形後のツール座標系の単位ベクトル(i´,j´,k´)をトーチ変形前のツール座標系の単位ベクトル(i,j,k)に変換補正するための回転行列ΔMは、ΔM=f((i,j,k),(i´,j´,k´))に示すような関係式で表される。
【0034】
このΔMをトーチ姿勢の補正値として記憶する。
ステップcでは、ΔMを補正した状態で図6のステップ5〜6の位置検出動作を行い、それぞれの検出位置P5´,P6´を記憶する。
【0035】
ステップdでは、位置P5´のZ方向成分とあらかじめ記憶していたトーチ変形前の検出位置P5のZ方向成分との差分ΔP5を図6のステップ5でのツール座標系に対する値ΔP5tに変換して記憶する。同じく位置P6´のZ方向成分とあらかじめ記憶していたトーチ変形前の検出位置P6のZ方向成分との差分ΔP6を図6のステップ6でのツール座標系に対する値ΔP6tに変換して記憶する。
【0036】
ステップeでは、ΔM,ΔP5t+ΔP6tを補正した状態で図6のステップ7の位置検出動作を行い、検出位置P7´を記憶する。
【0037】
ステップfでは、位置P7´のZ方向成分とあらかじめ記憶していたトーチ変形前の検出位置P7のZ方向成分との差分ΔP7を図6のステップ7でのツール座標系に対する値ΔP7tに変換して記憶する。
【0038】
以上の位置検出動作により、ツール座標系に対するトーチ位置の補正量(ΔP5t+ΔP6t+ΔP7t)とトーチ姿勢の補正量ΔMが記憶される。そして、トーチ変形前に教示し記憶した動作に対して位置と姿勢を補正して動作することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば溶接用ロボットの手先に取り付けられた溶接トーチの特定位置を検出する独立した2つの位置検出器と、この検出器の出力を入力とした判定器とからなるトーチ位置検出装置を使用することにより、溶接ワイヤのタッチセンシングでトーチ位置を検出する際のワイヤ突き出し長の調整にかかる時間を削減することができ、ワイヤタッチセンシングの際にワイヤ突き出し長の変化により検出精度が悪くなる問題を解決することができる高精度のトーチ位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態におけるロボットとトーチ位置検出装置の全体構成を表す概略図
【図2】同実施の形態における溶接トーチ側面での検出動作を表す概略図
【図3】同実施の形態における溶接チップ先端での検出動作を表す概略図
【図4】同実施の形態における溶接チップ先端での検出動作を表す詳細図
【図5】同実施の形態におけるトーチの位置を説明する図
【図6】同実施の形態におけるあらかじめ記憶する位置検出動作を表すフローチャート
【図7】同実施の形態におけるトーチ変形後の位置検出動作を表すフローチャート
【図8】従来技術の検出動作を表す図
【符号の説明】
1 ロボット本体
2 溶接トーチ
3 トーチ位置検出器
4 判定器
5 ロボット制御装置
6 溶接チップ
7 溶接ワイヤ
8,9 トーチ接触部
10,11 リミットスイッチ
12 支持部
13 導電性治具
Claims (3)
- ロボット本体と、前記ロボット本体を制御するロボット制御装置と、前記ロボット本体の動作範囲内に設置されており前記ロボット本体の手先に取り付けられたトーチが接触したことを検出して信号を送信する検出器を備え、前記検出器方向に前記ロボット本体を動作させるステップと、前記ステップの後でトーチ先端位置を中心に前記トーチを回転させるステップと、前記回転後に前記検出器方向へロボットを動作させるステップと、前記検出器が前記トーチの接触を検出した時点のロボット座標系に対するトーチ先端位置と姿勢を前記ロボット制御装置が記憶するステップを有するトーチ位置検出方法。
- ロボット本体と、前記ロボット本体を制御するロボット制御装置と、前記ロボット本体の動作範囲内でありロボットの直交座標系における2軸平面に平行に設置されており前記ロボット本体の手先に取り付けられたトーチが接触したことを検出して信号を送信する検出器を備え、前記2軸平面に対して垂直方向から前記検出器方向に前記ロボット本体を動作させるステップと、前記ステップの後でトーチ先端位置を中心に2軸平面を構成する1軸回りに90度回転させるステップと、前記回転後に検出器方向へロボットを動作させるステップと、前記検出器が前記トーチの接触を検出した時点のロボット座標系に対するトーチ先端位置と姿勢を前記ロボット制御装置が記憶するステップを有するトーチ位置検出方法。
- 検出器として、一端を固定した弾性体とこの弾性体の他端に配設したリミットスイッチを用いる請求項1または2に記載のトーチ位置検出方法。
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