JP3319086B2 - スポット溶接方法およびスポット溶接装置 - Google Patents

スポット溶接方法およびスポット溶接装置

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JP3319086B2
JP3319086B2 JP26505693A JP26505693A JP3319086B2 JP 3319086 B2 JP3319086 B2 JP 3319086B2 JP 26505693 A JP26505693 A JP 26505693A JP 26505693 A JP26505693 A JP 26505693A JP 3319086 B2 JP3319086 B2 JP 3319086B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、被溶接物が位置ずれし
た状態で位置決めされた場合でも、電極チップの加圧に
よる被溶接物の変形を防止することが可能なスポット溶
接方法およびスポット溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】溶接ガンを用いた従来のスポット溶接で
は、溶接ガンに固定された下部電極チップと加圧シリン
ダ等によって昇降する上部電極チップとにより被溶接物
を加圧し、被溶接物を加圧した状態で両電極チップ間に
溶接電流を流すことにより、被溶接物同士を接合するよ
うになっている。自動スポット溶接においては、溶接ガ
ンは溶接ロボットの手首に取付けられており、溶接ガン
は溶接ロボットによって予め教示された溶接位置に逐次
位置決めされるようになっている。
【0003】図10は、溶接ガンを用いたスポット溶接
の一例を示している。図10において、1は下部電極チ
ップを示しており、2は上部電極チップを示している。
下部電極チップ1は、溶接ガン3のホルダに直接装着さ
れている。上部電極チップ2は、溶接ガン3に取付けら
れた加圧シリンダ4のホルダに装着されている。下部電
極チップ1と上部電極チップ2との間には、被溶接物5
が位置している。溶接ガン3が被溶接物5に対して所定
の位置に位置決めされた状態では、加圧シリンダの作動
によって上部電極チップ2が下降し、被溶接物5は下部
電極チップ1と上部電極チップ2とにより加圧される。
【0004】溶接ロボットによる溶接ガンを用いた従来
のスポット溶接においては、溶接ガンの加圧時にはつぎ
の問題が存在する。従来では、被溶接物の位置決めのバ
ラツキや電極チップの消耗等により、加圧位置が所定の
位置から大きく外れた場合は、被溶接物5が外力によっ
て変形してしまう。つまり、図11に示すように、被溶
接物5が所定の位置に正確に位置決めされた場合は、上
部電極チップ2が下降しても、被溶接物5は下部電極チ
ップ1によって受け止められているので被溶接物4の下
方への変形は生じないが、図12に示すように、被溶接
物5が位置ずれした状態で位置決めされている場合は、
下部電極チップ1によって被溶接物5を受け止めること
ができず、被溶接物5は上部電極チップ2の押圧によ
り、下方へ変形してしまう。
【0005】従来では、上記のように被溶接物の加圧時
の変形を防止するために、溶接ロボットの手首部と溶接
ガンとをエコライジング装置を介して連結している。エ
コライジング装置は、溶接ガンを加圧方向に変位可能に
支持するものであり、被溶接物の位置ずれを吸収するよ
うになっている。スポット溶接におけるエコライジング
装置に関する技術として、たとえば特願昭4−9491
6号が存在する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、エコラ
イジング装置を設けた場合はその分だけ溶接ガンが大型
化し、つぎの問題が生じる。 溶接ガンが大型化すると、溶接ロボットを可搬重量
の大きいタイプのものにしなければならず、溶接ロボッ
トの投資コストが高くなる。 溶接ガンが大型化すると、被溶接物との干渉が問題
となり、被溶接物の狭いスペースの部位での溶接が不可
能となり、溶接作業の適用部位が限定される。 エコライジング装置では、溶接ガンを移動させる途
中では、たとえば圧縮エアによって溶接ロボットに対す
る溶接ガンの動きをロックさせる必要があり、エア配管
が必要となる。したがって、溶接ロボットの溶接ガンま
わりの配管が複雑となり、溶接ロボットの動作時におけ
るホース類の取りまわしに苦労するという問題がある。
【0007】本発明は、エコライジング装置を用いるこ
となく被溶接物の位置ずれ等に起因する加圧時の被溶接
物の変形を防止することが可能なスポット溶接方法およ
びスポット溶接装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
の本発明に係るスポット溶接方法およびスポット溶接装
置は、つぎの通りである。 (1) 溶接ロボットの手首部に取り付けられた溶接ガ
ンを備え、該溶接ガンは、上部電極チップおよび該上部
電極チップを駆動するモータを具備する第1のアクチュ
エータと、下部電極および該下部電極チップを駆動する
モータを具備する第2のアクチュエータとを有してお
り、前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエ
ータとは各々が独立して加圧、開放動作を行うことがで
きるようにしてあり、前記第1のアクチュエータと前記
第2のアクチュエータのいずれか一方のアクチュエータ
は前記溶接ロボットの1軸として扱われており、前記第
1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータのいず
れか一方のアクチュエータの軸芯は前記溶接ロボット手
首部の回転軸芯と交わっている、スポット溶接装置を用
いて実行されるスポット溶接方法であって、被溶接物に
対して前記溶接ガンの前記上部電極チップおよび前記
部電極チップを各々独立させて移動させ、前記上部電極
チップが被溶接物と接触した際には前記第1のアクチュ
エータのモータの駆動を停止して上部電極チップの移動
を停止し、下部電極チップが被溶接物に接触した際には
前記第2のアクチュエータのモータの駆動を停止して
部電極チップの移動を停止し、両電極チップが被溶接物
に接触した後、前記第1のアクチュエータのモータと前
記第2のアクチュエータのモータの両方を駆動して両電
極チップを均等に加圧方向に移動させ被溶接物を加圧す
ることを特徴とするスポット溶接方法。 (2) 溶接ロボットに取付けられた溶接ガンの上部電
極チップと、前記上部電極チップと対向して配置される
溶接ガンの下部電極チップと、前記溶接ガンに取付けら
れ、前記上部電極チップを移動させるためのモータと
上部電極チップの位置を検出する電極位置検出器とを
有する第1のアクチュエータと、前記溶接ガンに取付け
られ、前記下部電極チップを移動させるためのモータと
前記下部電極チップの位置を検出する電極位置検出器と
を有する第2のアクチュエータと、前記第1のアクチュ
エータによって移動される前記上部電極チップが被溶接
物に接触したことを検出する第1の電極チップ接触検出
手段と、前記第2のアクチュエータによって移動される
前記下部電極チップが被溶接物に接触したことを検出す
る第2の電極チップ接触検出手段と、前記第1の電極チ
ップ接触検出手段により前記上部電極チップが被溶接物
に接触したことを検出した際には前記第1のアクチュエ
ータのモータの駆動を停止して前記上部電極チップの移
動を停止し、前記第2の電極チップ接触検出手段により
前記下部電極チップが被溶接物に接触したことを検知し
た際には前記第2のアクチュエータのモータの駆動を停
止して前記下部電極チップの移動を停止し、両電極チッ
プが被溶接物に接触した後に該両電極チップを均等に加
圧方向に移動させ被溶接物を加圧することを指令する加
圧制御手段と、を備え 前記第1のアクチュエータと前
記第2のアクチュエータとは各々が独立して加圧、開放
動作を行うことができるようにしてあり、前記第1のア
クチュエータと前記第2のアクチュエータのいずれか一
方のアクチュエータは前記溶接ロボットの1軸として扱
われており、前記第1のアクチュエータと前記第2のア
クチュエータのいずれか一方のアクチュエータの軸芯は
前記溶接ロボット手首部の回転軸芯と交わっている、こ
とを特徴とするスポット溶接装置。
【0009】
【作用】このように構成されたスポット溶接方法および
スポット溶接装置においては、つぎの作用が行われる。
このスポット溶接方法においては、溶接ガンが被溶接物
に対して所定の位置に位置決めされると、上部電極チッ
プおよび下部電極チップがそれぞれ被溶接物に対して独
立して移動を開始する。この状態で上部電極チップが被
溶接物と接触した際には上部電極チップの移動が停止さ
れ、下部電極チップが被溶接物に接触した際には下部電
極チップの移動が停止される。つぎに、両電極チップが
被溶接物に接触したことが確認された後は、両電極チッ
プが加圧方向に均等に移動し、被溶接物の加圧が行われ
る。
【0010】このように、両電極チップが被溶接物に接
触した後に、両電極チップによる加圧が開始されるの
で、被溶接物がたとえば位置ずれした状態でも、一方の
電極チップの押圧力を他方の電極チップにて受け止める
ことができ、加圧時における被溶接物の変形が防止され
る。したがって、エコライジング装置を設けることなく
加圧時の被溶接物の変形を防止することができ、エコラ
イジング装置がなくなる分だけ溶接ガンの小型、軽量化
が可能となる。
【0011】
【実施例】以下に、本発明に係るスポット溶接方法およ
びスポット溶接装置の望ましい実施例を、図面を参照し
て説明する。図1ないし図6は、本発明の第1実施例を
示しており、とくに自動車のボデーのスポット溶接に適
用した例を示している。まず、本発明のスポット溶接方
法が適用されるスポット溶接装置について説明する。
【0012】図5は、スポット溶接装置の全体構成を示
している。図5に示すように、スポット溶接装置11
は、溶接ガン21、溶接ロボット61、制御手段71等
から構成されている。溶接ガン21は、溶接ロボット6
1の手首部65に取付けられている。溶接ガン21の開
放、加圧動作および溶接ロボット61の動きは、制御手
段71によって制御される。
【0013】溶接ガン21は、図1に示すように、ベー
ス22、連結部材23、アーム24、25、上部電極チ
ップ26、下部電極チップ27、第1のアクチュエータ
30、第2のアクチュエータ40を有している。ベース
22は、溶接ロボット61の手首部65に固定されてい
る。ベース22には、第1のアクチュエータ30と第2
のアクチュエータ40が取付けられている。第1のアク
チュエータ30と第2のアクチュエータ40は、並列に
配置されている。第1のアクチュエータ30と第2のア
クチュエータ40は、連結部材23を介して連結されて
いる。
【0014】第1のアクチュエータ30は、ハウジング
31、ボールネジ32、ナット33、サーボモータ3
5、エンコーダ36を有している。ボールネジ32は、
図示しない軸受を介してハウジング31に回転可能に保
持されている。サーボモータ35は、ハウジング32に
固定されている。サーボモータ35の出力軸はボールネ
ジ32と連結されている。ボールネジ32には、ナット
33が螺合されている。ナット33は、ボールネジ32
の回転に伴ってボールネジ42の軸方向に移動するよう
になっている。
【0015】ナット33には、アーム24が連結されて
いる。アーム34の下端部には、上部電極チップ26が
装着されている。上部電極チップ26は、ボールネジ3
2を回転駆動させるサーボモータ35の回転によって昇
降するようになっている。上部電極チップ26の位置
は、サーボモータ35の後部に設けられた電極位置検出
器としてのエンコーダ36により検出可能となってい
る。本実施例では、サーボモータ35の回転量によって
間接的に上部電極チップ26の位置を検出しているが、
上部電極チップ26の昇降距離を直接検出する構成であ
ってもよい。また、サーボモータ35はリニアモータか
ら構成してもよい。
【0016】第2のアクチュエータ40の構成は、第1
のアクチュエータ30に準じるので、準じる部分に同一
の符号を付すことによりその説明を省略する。ボールネ
ジ42と螺合されるナット33には、下部がL字状のア
ーム25が連結されている。アーム25の先端部には、
下部電極チップ27が装着されている。上部電極チップ
26と下部電極チップ27は、対向して配置されてお
り、上部電極チップ26と下部電極チップ27は接触可
能となっている。第1のアクチュエータ30および上部
電極チップ26の中心は、溶接ロボット61の手首の曲
げ方向の回転中心、すなわち5軸の回転中心Xを通る直
線Y上に配置されている。これにより、被溶接物90の
加圧時における加圧反力が最小に抑えられるようになっ
ている。
【0017】上部電極チップ26および下部電極チップ
27は、キックレスケーブル58を介して溶接トランス
56に接続されている。溶接トランス56は、タイマ機
能を有するコントローラ57を介して溶接電源(図示
略)に接続されている。コントローラ57は、後述する
制御手段71と接続されている。溶接ロボット61は、
制御軸が6軸であり各制御軸毎に設けられたサーボモー
タ62によって駆動されるようになっている。溶接ロボ
ット61は、周知の技術であるので、これに関する詳細
な説明は省略する。
【0018】溶接ロボット61の動きは、制御手段71
によって制御されるようになっている。制御手段71に
は、複数の溶接位置が教示されており、溶接ロボット6
1は教示された溶接位置に溶接ガン21を位置決めする
ようになっている。制御手段71には、溶接ロボット6
1の各制御軸の位置情報が入力されており、これに基づ
いて溶接ロボット61によって移動される溶接ガン21
の位置情報が把握される。また、制御手段71には、各
電極チップ26、27の位置情報が電極位置検出器とし
ての各エンコーダ36からそれぞれ入力される。
【0019】図6は、制御手段71の概略構成を示して
いる。制御手段71は、メインCPU72、サーボCP
U73、インタフェース74、サーボアンプ75から構
成されている。メインCPU72の第1の軌道計算部7
2aは、溶接ロボット61自体の軌道計算をする機能を
有しており、第2の軌道計算部72bは、溶接ロボット
61の軌道を加味した溶接ガン21の各電極チップ2
6、27の軌道計算を行う機能を有している。また、メ
インCPU72の加圧力設定部72cは、各溶接打点毎
に設定される加圧力に対応する負荷電流を指令する機能
を有している。
【0020】サーボCPU73は、第1の軌道計算部7
2aからの計算値とフィードバックされる速度、位置の
値との差を算出し、溶接ロボット61を予め教示された
溶接位置へ所定の速度で移動する指令機能を有してい
る。図5における溶接ロボット61は、各制御軸毎にサ
ーボモータ62の速度を検出するタコジェネレータ63
と、位置検出用のセンサ64とを有している。
【0021】図6における溶接ガン21は、サーボモー
タ35による電極チップ26、27の移動速度を検出す
るタコジェネレータ37と、位置検出用のエンコーダ3
6を有している。サーボCPU73は、メインCPU7
2における加圧力設定部72cからの指令情報とフィー
ドバックされた負荷電流値との差により、加圧力に対応
した負荷電流を求める機能を有している。
【0022】インタフェース74は、サーボCPU73
からのデジタル信号をアナログ信号に変換する機能を有
している。サーボアンプ75は、溶接ロボット61の各
制御軸のサーボモータ62に流れる電流を検出し、フィ
ードバックされた電流値と指令値との差に基づいてサー
ボモータ62の負荷電流を制御するようになっている。
同様に、サーボアンプ75は、溶接ガン21の各電極チ
ップ26、27を移動させるサーボモータ35に流れる
モータ電流を検出するモータ電流検知手段として機能し
ており、フィードバックされた電流値と指令値との差に
基づいてサーボモータ35のモータ電流を制御するよう
になっている。
【0023】制御手段71のメインCPU72には、第
1の電極チップ接触検出手段76、第2の電極チップ接
触検出手段77、加圧制御手段78が形成されている。
各手段76、77、78は、メインCPU72に格納さ
れたプログラムから構成されている。第1の電極チップ
接触検出手段76には、第1のアクチュエータ30のサ
ーボモータ35の電流を検出するサーボアンプ75から
の信号が入力されている。第1の電極チップ接触検出手
段76は、第1のアクチュエータ30によって移動され
る上部電極チップ26が被溶接物90に接触したこと
を、図3に示すモータ電流の変化から検出する機能を有
している。
【0024】第2の電極チップ接触検出手段77には、
第2のアクチュエータ40のサーボモータ35の電流を
検出するサーボアンプ75からの信号が入力されてい
る。第2の電極チップ接触検出手段77は、第2のアク
チュエータ40によって移動される下部電極チップ27
が被溶接物90に接触したことを、図3に示すモータ電
流の変化から検出する機能を有している。第1の電極チ
ップ接触検出手段76および第2の電極チップ接触検出
手段77からの信号は、加圧制御手段78に入力されて
いる。
【0025】加圧制御手段78は、第1の電極チップ接
触検出手段76により上部電極チップ26が被溶接物9
0に接触したことを検出した際には、上部電極チップ2
6の移動を停止し、第2の電極チップ接触検出手段77
により下部電極チップ27が被溶接物90に接触したこ
とを検出した際には、下部電極チップ27の移動を停止
するようになっている。加圧制御手段78は、さらに両
方の電極チップ26、27が被溶接物90に接触したこ
とを確認した後は、所定の加圧力になるまで両電極チッ
プ26、27を各アクチュエータ30、40のサーボモ
ータ35によって均等に加圧方向に移動させる機能を有
している。
【0026】つぎに、第1実施例におけるスポット溶接
方法およびその作用について説明する。自動車の組立ラ
インではコンベアによって車両ボデー(被溶接物90)
が間欠的に移動され、車両ボデーの停止時にスポット溶
接作業が行なわれる。車両ボデーが所定の位置に位置決
めされると、待期状態にあった溶接ロボット61によっ
て溶接ガン21が溶接位置に向って移動される。
【0027】被溶接物90の各打点位置における加圧制
御は、図4の処理手順に基づいて行われる。図4のステ
ップ101で加圧制御が開始され、ステップ102に進
み、第1のアクチュエータ30と第2のアクチュエータ
40が同時に作動し、上部電極チップ26と下部電極チ
ップ27が加圧方向へ移動する。つぎに、ステップ10
3の処理とステップ105の処理が並行して行われる。
ステップ103においては、上部電極チップ26が被溶
接物90に接触したか否かが図2の第1の電極チップ接
触検出手段76によって判断される。
【0028】ステップ103における判断は、図3に示
すように、サーボモータ35のモータ電流が急激に上昇
するポイントの有無を検知することによって行われる。
ステップ103において、上部電極チップ26が被溶接
物90に接触していないと判断された場合は、上部電極
チップ26が被溶接物90に接触するまでこの処理が繰
返えされる。ステップ103において、上部電極チップ
26が被溶接物90に接触したと判断された場合は、加
圧制御手段78によってサーボモータ35の回転が停止
され、上部電極チップ26の加圧方向への移動が停止さ
れる。
【0029】ステップ105においては、下部電極チッ
プ27が被溶接物90に接触したか否かが図2の第2の
電極チップ接触検出手段77によって判断される。ここ
で、下部電極チップ27が被溶接物90に接触していな
いと判断された場合は、下部電極チップ27が被溶接物
90に接触するまでこの処理が繰返えされる。ステップ
105において、下部電極チップ27が被溶接物90に
接触したと判断された場合は、加圧制御手段78によっ
てサーボモータ35の回転が停止され、下部電極チップ
27の加圧方向への移動が停止される。
【0030】ステップ104およびステップ106の処
理が終了すると、ステップ107に進む。ステップ10
7では、上部電極チップ26および下部電極チップ27
の双方が被溶接物90に接触したことを確認した後、所
定の加圧力になるまで両アクチュエータ30、40のサ
ーボモータ26を回転させて両電極チップ26、27を
均等に加圧方向移動させるようになっている。被溶接物
90の接合部が所定の加圧力で加圧されると、ステップ
108に進み、加圧制御処理は完了する。その後、各電
極チップ26、27間に溶接電流が流され、被溶接物9
0のスポット溶接が行われる。
【0031】このように構成された第1実施例において
は、被溶接物90が位置ずれした状態でセットされた場
合でも、上部電極チップ26と下部電極チップ27が被
溶接物90に接触した後に、加圧制御手段78からの指
令により被溶接物90の加圧が開始されるので、一方の
電極チップの押圧力を他方の電極チップで受け止めるこ
とができ、従来のようにイコライジング装置を用いるこ
となく、加圧時における被溶接物90の変形を防止する
ことが可能となる。また、エコライジング装置がないの
で、その分だけ溶接ガン21の小型、軽量化が図れる。
したがって、溶接ロボット61の可搬重量も小さくて済
み、小型の溶接ロボットで対処することができ、溶接ロ
ボット61の投資コストの低減が図れる。さらに、溶接
ガン21の小型化により、狭いスペースでの溶接作業が
可能となり、溶接ガン21による溶接作業の適用範囲を
拡大することができる。
【0032】溶接打点位置を溶接ロボットに教示するに
は、従来では、溶接ガンの電極チップを打点位置毎に被
溶接物に近づけて行っているが、この場合、加圧方向に
おける被溶接物に対する電極チップの位置決めは作業者
の勘によって行っている。エコライジング装置を用いた
溶接ガンであっても、エコライジング装置による補正可
能な変位量は限られているので、ティーチング作業時に
おける加圧方向の電極チップの位置決めは、慎重となら
ざるを得ず、ティーチングに多くの時間がかかる。本実
施例では、加圧方向における電極チップ26、27の最
終位置決めは自動で行われるので、ティーチング作業が
ラフでよく、ティーチング作業を迅速化することが可能
となる。
【0033】また、ティーチング作業における加圧方向
の電極チップ26、27の位置出しがラフでよいため、
実際の被溶接物90を用いたティーチングでなく、コン
ピュータグラフィックス上でのティーチング(オフライ
ンティーチング)も可能となる。つまり、ティーチング
作業においては、被溶接物に平行な面の位置決め精度は
品質に大きな影響を与えないことから非常に高いものは
要求されておらず、上述した加圧方向の位置決め精度の
みが被溶接物の品質に大きな影響を与える。したがっ
て、本実施例のように加圧方向の位置決めが正確に行う
ことができれば、オフラインティーチングが可能とな
る。さらに、溶接ロボットの作業動作をロボット座標系
で教えるのではなく、対象製品(車両ボデー)の座標系
で教示するようにすれば、コンピュータグラフィクス上
でのティーチング作業をも廃止することも可能となり、
車両ボデーデータベースを利用した直接的な自動スポッ
ト溶接が実現可能となる。
【0034】第2実施例 図7および図8は、本発明の第2実施例を示している。
第2実施例が第1実施例と異なるところは、各電極チッ
プが被溶接物に接触したことを検出する手段の構成のみ
であり、その他の部分は第1実施例に準じるので、準じ
る部分に第1実施例と同一の符号を付すことにより、準
じる部分の説明を省略し、異なる部分についてのみ説明
する。
【0035】第1実施例においては、第1の電極チップ
接触検出手段76と第2の電極チップ接触検出手段77
は、サーボモータ35のモータ電流の変化に基づいて電
極チップが被溶接物に接触したか否かを判断する構成と
したが、本実施例では電極チップの位置の変化に基づい
て電極チップが被溶接物に接触したか否かを判断する構
成としている。
【0036】制御手段71のメインCPU72には、第
1の電極チップ接触検出手段79、第2の電極チップ接
触検出手段80が形成されている。各手段79、80
は、メインCPU72に格納されたプログラムから構成
されている。第1の電極チップ接触検出手段79には、
上部電極チップ26の位置を検出する電極位置検出器と
してのエンコーダ36からの位置情報が入力されてい
る。第1の電極チップ接触検出手段79は、第1のアク
チュエータ30によって移動される上部電極チップ26
が被溶接物90に接触したことを、図8に示す上部電極
チップ26の位置の変化から検出する機能を有してい
る。
【0037】第2の電極チップ接触検出手段80には、
下部電極チップ27の位置を検出する電極位置検出器と
してのエンコーダ36からの位置情報が入力されてい
る。第2の電極チップ接触検出手段80は、第2のアク
チュエータ40によって移動される下部電極チップ27
が被溶接物90に接触したことを、図8に示す下部電極
チップ27の位置の変化から検出する機能を有してい
る。本実施例では、加圧動作開始後における各電極チッ
プ26、27の位置が変化しなくなったポイントを各電
極チップ26、27が被溶接物90に接触したとみなし
ている。
【0038】第1の電極チップ接触検出手段79および
第2の電極チップ接触検出手段80からの信号は、第1
実施例と同一の加圧制御手段78に入力されている。加
圧制御手段78は、第1の電極チップ接触検出手段79
により上部電極チップ26が被溶接物90に接触したこ
とを検出した際には、上部電極チップ26の移動を停止
し、第2の電極チップ接触検出手段80により下部電極
チップ27が被溶接物90に接触したことを検出した際
には、下部電極チップ27の移動を停止するようになっ
ている。加圧制御手段78は、さらに両方の電極チップ
26、27が被溶接物90に接触したことを確認した後
は、所定の加圧力になるまで両電極チップ26、27を
各アクチュエータ30、40のサーボモータ35によっ
て加圧方向に均等に移動させる機能を有している。
【0039】このように構成された第2実施例において
は、図8に示すように、加圧動作開始後においてエンコ
ーダ36によって検出される各電極チップ26、27の
位置が変化しなくなった場合は、各電極チップ26、2
7が被溶接物90との当接によって移動することができ
なくなったと判断し、各電極チップ26、27が被溶接
物90に接触したとみなしている。したがって、第1実
施例と同様に第1の電極チップ接触検出手段79と第2
の電極チップ接触検出手段80からの情報に基づき、加
圧制御手段78によって各電極チップ26、27の加圧
方向の移動を一時的に停止させ、その後加圧制御を開始
することが可能となる。
【0040】第3実施例 図9は、本発明の第3実施例を示している。第1実施例
および第2実施例においては、上部電極チップ26を第
1のアクチュエータ30により昇降させ、下部電極チッ
プ27を第2のアクチュエータ40により昇降させてい
たが、本実施例では上部電極チップ26を昇降させる第
1のアクチュエータ30は設けられておらず、第2のア
クチュエータ40のみが設けられている。
【0041】第1のアクチュエータ30は、溶接ロボッ
61の1〜6軸により兼用されており、溶接ロボット
61の1〜6軸の動作により被溶接物90に対する上部
電極チップ26の昇降動作が行われるようになってい
る。上部電極チップ26を保持するアーム24は、溶接
ロボット61の手首部65に直接取付けられている。下
部電極チップ27の加圧動作は、第1実施例と同様に第
2のアクチュエータ40によって行われている。上部電
極チップ26および上部電極チップ27を保持するアー
ム24の中心は、溶接ロボット61の5軸の回転中心X
を通る直線Y上に配置されている。
【0042】このように構成された第3実施例において
は、被溶接物90に対して溶接ガン21が所定の位置に
位置決めされると、上部電極チップ26と下部電極チッ
プ27とが独立して移動される。ここで、下部電極チッ
プ27は第2のアクチュエータ40によって移動し、上
部電極チップ26は溶接ロボット61の1〜6軸の動作
により移動する。下部電極チップ27の移動中に、第2
のアクチュエータ40のサーボモータ35のモータ電流
が急激に変化した場合は、下部電極チップ27が被溶接
物90に接触したと判断される。また、上部電極チップ
26が被溶接物90に接触した際には、溶接ロボット
の各軸におけるサーボモータ62のモータ電流が上昇
するので、上部電極チップ26の被溶接物90への接触
も判断可能となる。
【0043】したがって、本実施例の場合も図2と同様
に、各電極チップ26、27が被溶接物90に接触した
旨の信号に基づき、加圧制御手段78を作動させること
が可能となり、各電極チップ26、27の動きを一時停
止させることができ、その後、両電極チップ26、27
によって被溶接物90を加圧することができる。本実施
例では、第1のアクチュエータ30が不要であるので、
その分、溶接ガン21をさらに小型、軽量化することが
でき、かつ溶接ガン21の簡素化が図れる。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、つぎの効果が得られ
る。 (1)被溶接物に対して溶接ガンの上部電極チップおよ
び下部電極チップを独立させて移動させ、上部電極チッ
プが被溶接物と接触した際には上部電極チップの移動を
停止し、下部電極チップが被溶接物に接触した際には下
部電極チップの移動を停止し、両電極チップが被溶接物
に接触した後、両電極チップを均等に加圧方向移動させ
被溶接物を加圧するようにしたので、エコライジング装
置を用いることなく被溶接物の位置ずれ等に起因する被
溶接物の変形を防止することが可能となり、不良製品の
発生を防止することができる。 (2)エコライジング装置が不要となるので、その分だ
け溶接ガンの小型、軽量化が図れ、溶接ロボットの可搬
重量を低下させることができる。これにより、小型の溶
接ロボットを採用することができ、溶接ロボットの投資
コストを低減することができる。また、溶接ガンが小型
化することにより、狭い場所でのスポット溶接作業が可
能となり、スポット溶接作業の適用範囲を拡大すること
ができる。 (3)各電極チップが被溶接物に接触した際に、各電極
チップの加圧方向の移動を一時停止させているので、加
圧開始前の加圧方向における各電極チップの最終位置決
めを自動化することができる。したがって、加圧方向の
ティーチング作業がラフであっても、加圧時における被
溶接物の変形を防止することができ、ティーチング作業
を迅速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係るスポット溶接方法が
適用されるスポット溶接装置の要部正面図である。
【図2】図1の装置の加圧制御ブロック図である。
【図3】図1の各アクチュエータにおけるサーボモータ
のモータ電流の変化を示す特性図である。
【図4】図1の装置における加圧制御の手順を示すフロ
ーチャートである。
【図5】図1の溶接ガンを用いたスポット溶接装置全体
の概略構成図である。
【図6】図5における制御手段の制御系統図である。
【図7】本発明の第2実施例に係るスポット溶接方法の
加圧制御ブロック図である。
【図8】図7における各電極チップの加圧動作開始後に
おける電極チップの位置の変化を示す特性図である。
【図9】本発明の第3実施例に係るスポット溶接方法が
適用されるスポット溶接装置の要部正面図である。
【図10】従来のスポット溶接作業の一例を示す部分正
面図である。
【図11】図10のスポット溶接において被溶接物が正
確に位置決めされた場合の正面図である。
【図12】図10のスポット溶接において被溶接物が位
置ずれした状態で位置決めされた場合の正面図である。
【符号の説明】
21 溶接ガン 26 上部電極チップ 27 下部電極チップ 30 第1のアクチュエータ 35 モータ(サーボモータ) 36 電極位置検出器 40 第2のアクチュエータ 76 第1の電極チップ接触検出手段(モータ電流検出
タイプ) 77 第2の電極チップ接触検出手段(モータ電流検出
タイプ) 78 加圧制御手段 79 第1の電極チップ接触検出手段(電極位置検出タ
イプ) 80 第2の電極チップ接触検出手段(電極位置検出タ
イプ) 90 被溶接物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−97375(JP,A) 特開 平6−218554(JP,A) 特開 平7−9159(JP,A) 実開 平1−128978(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 11/11 B23K 11/24

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶接ロボットの手首部に取り付けられた
    溶接ガンを備え、該溶接ガンは、上部電極チップおよび
    該上部電極チップを駆動するモータを具備する第1のア
    クチュエータと、下部電極および該下部電極チップを駆
    動するモータを具備する第2のアクチュエータとを有し
    ており、前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチ
    ュエータとは各々が独立して加圧、開放動作を行うこと
    ができるようにしてあり、前記第1のアクチュエータと
    前記第2のアクチュエータのいずれか一方のアクチュエ
    ータは前記溶接ロボットの1軸として扱われており、前
    記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータの
    いずれか一方のアクチュエータの軸芯は前記溶接ロボッ
    ト手首部の回転軸芯と交わっている、スポット溶接装置
    を用いて実行されるスポット溶接方法であって、 被溶接物に対して前記溶接ガンの前記上部電極チップお
    よび前記下部電極チップを各々独立させて移動させ、
    上部電極チップが被溶接物と接触した際には前記第1
    のアクチュエータのモータの駆動を停止して上部電極チ
    ップの移動を停止し、下部電極チップが被溶接物に接触
    した際には前記第2のアクチュエータのモータの駆動を
    停止して下部電極チップの移動を停止し、両電極チップ
    が被溶接物に接触した後、前記第1のアクチュエータの
    モータと前記第2のアクチュエータのモータの両方を駆
    動して両電極チップを均等に加圧方向に移動させ被溶接
    物を加圧することを特徴とするスポット溶接方法。
  2. 【請求項2】 溶接ロボットに取付けられた溶接ガンの
    上部電極チップと、 前記上部電極チップと対向して配置される溶接ガンの下
    部電極チップと、 前記溶接ガンに取付けられ、前記上部電極チップを移動
    させるためのモータと前記上部電極チップの位置を検出
    する電極位置検出器とを有する第1のアクチュエータ
    と、 前記溶接ガンに取付けられ、前記下部電極チップを移動
    させるためのモータと前記下部電極チップの位置を検出
    する電極位置検出器とを有する第2のアクチュエータ
    と、 前記第1のアクチュエータによって移動される前記上部
    電極チップが被溶接物に接触したことを検出する第1の
    電極チップ接触検出手段と、 前記第2のアクチュエータによって移動される前記下部
    電極チップが被溶接物に接触したことを検出する第2の
    電極チップ接触検出手段と、 前記第1の電極チップ接触検出手段により前記上部電極
    チップが被溶接物に接触したことを検出した際には前記
    第1のアクチュエータのモータの駆動を停止して前記
    部電極チップの移動を停止し、前記第2の電極チップ接
    触検出手段により前記下部電極チップが被溶接物に接触
    したことを検知した際には前記第2のアクチュエータの
    モータの駆動を停止して前記下部電極チップの移動を停
    止し、両電極チップが被溶接物に接触した後に該両電極
    チップを均等に加圧方向に移動させ被溶接物を加圧する
    ことを指令する加圧制御手段と、 を備え、前記第1のアクチュエータと前記第2のアクチュエータ
    とは各々が独立して加圧、開放動作を行うことができる
    ようにしてあり、前記第1のアクチュエータと前記第2
    のアクチュエータのいずれか一方のアクチュエータは前
    記溶接ロボットの1軸として扱われており、前記第1の
    アクチュエータと前記第2のアクチュエータのいずれか
    一方のアクチュエータの軸芯は前記溶接ロボット手首部
    の回転軸芯と交わっている、 ことを特徴とするスポット溶接装置。
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