JP3916517B2 - 溶接ロボットの制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接ロボットの制御方法に関し、先の教示作業により作成されたプログラムの教示位置に新たに教示位置を追加、又は教示位置を修正するに際し、教示位置の追加・修正が容易に行え、かつ、その新たな教示位置を先の教示作業によるプログラム作成時の位置として正確に変換し求めることができるようにした、溶接ロボットの制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アーク溶接を行うティーチング・プレイバック式の溶接ロボットでは、ワークには仮組立て誤差が生じたり、またワークをポジショナに固定するときにワークの取付け誤差が生じたりすることから、教示作業(ティーチング作業)により作成されたプログラムの教示位置を、センサによるセンシングによってワーク位置を検出して得た位置ずれ補正量により補正し(修正し)、ワークの溶接線に対する溶接トーチの位置ずれを解消するようにしている。
【0003】
ところで、教示位置の追加、又は教示位置の修正が必要となった場合、先の教示作業によるプログラム作成に供したワークは通常保管されておらず、また、該ワークが未溶接のまま保管してあり、それをポジショナに取り付けたとしても、取付け誤差が生じる。このため、前記追加又は修正個所だけ直すというわけにはいかず、全プログラムを作成し直す必要があった。
【0004】
このため、教示作業により作成されたプログラムの教示位置をセンサによるセンシングによって得た位置ずれ補正量により補正し、プログラムを実行する溶接ロボットでは、次のことが要請されている。すなわち、先に教示作業により作成されているプログラムの教示位置に新たに教示位置を追加、又は前記プログラムの教示位置を修正するに際し、その際のワークが前記プログラム作成時のワークの場合に対して取付け誤差等によって位置ずれが生じている場合でも、全プログラムを作成し直すことなく、教示位置の追加又は修正を行えるようにすることが要請されている。
【0005】
そこで、従来、教示位置情報の修正又は追加作業の簡略化を目的として、産業用ロボットにおける制御方法が提案されている(特公平6−95295号公報)。この産業用ロボットにおける制御方法は、ティーチング作業により作成されたプログラムのティーチングした位置情報をセンサによるセンシングによって得た位置情報をもとに補正し、プログラムを実行する産業用ロボットにおいて、プログラムの各ステップ実行時に、少なくとも1次元にセンシングした位置情報の補正量を記憶する。しかる後、その後のステップで前記ティーチングした位置情報を修正または追加する際、その修正または追加するステップ位置でプログラムの実行を停止させ、所望点を教示することにより、該所望点の教示位置情報から前記補正量をもとに逆修正して得た位置情報を前記ティーチングした位置情報に代えて、あるいは新たに書き込むごとくしたことを特徴とする制御方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
溶接ロボットの前述したセンサによるセンシング機能は、少なくとも1次元方向のセンシングにより位置ずれ補正量を求めるものである。また、センシング機能は、複数の溶接線や、溶接線中の複数の部位に対して、個別にセンシングを行い、この結果得られた各位置ずれ補正量をメモリに格納しておいて、適宜教示位置に反映して該教示位置を補正することが可能である。例えば、2つのコーナー部を有するワークにおいて第1コーナー部と第2コーナー部との各位置ずれをセンシングし、逐次、第1コーナー部と第2コーナー部との各教示位置に位置ずれ補正量を反映することでアークを切らずに連続溶接することができる。
【0007】
ところが、前述した従来の制御方法では、センシングによる補正量を記憶しておき、先に作成されているプログラムの教示位置に例えば新たに教示位置を追加する際、溶接ロボットを停止させ、追加すべきその教示位置の現在の位置情報から前記補正量を差し引いて得た位置を新たな教示位置とするようにしたものであるから、次に説明するような問題点があった。
【0008】
図9は従来技術の問題点を説明するための図である。図9において、教示作業によるプログラム作成時の教示位置として、溶接開始位置WP1と溶接終了位置WP2とが教示されている。WP1’はセンシングによる位置ずれ補正量ΔXYZ1により溶接開始位置WP1を補正した補正溶接開始位置であり、WP2’はセンシングによる位置ずれ補正量ΔXYZ2により溶接終了位置WP2を補正した補正溶接終了位置である。この場合、溶接開始位置WP1についての位置ずれ補正量ΔXYZ1と溶接終了位置WP2についての位置ずれ補正量ΔXYZ2とは、その値が異なっている。
【0009】
前記従来の制御方法では、このように互いに異なる値の位置ずれΔXYZ1,ΔXYZ2が生じている状態の教示位置WP1,WP2間に、例えば新たに教示位置を追加する場合、補正溶接開始位置WP1’と補正溶接終了位置WP2’とを結ぶ軌跡上を移動している溶接ロボットを停止させる。そして、該移動停止位置PSより溶接ロボットを追加すべき位置Pnowへ誘導して停止させ、その位置Pnowから図9に示すように位置ずれ補正量ΔXYZ2を差し引いて得た位置Pnewが新たな教示位置としてメモリに書き込まれることになる。溶接開始位置WP1での位置ずれ補正量ΔXYZ1と溶接終了位置WP2での位置ずれ補正量ΔXYZ2とが等しい場合には、位置Pnowから補正量ΔXYZ(ΔXYZ=ΔXYZ1=ΔXYZ2)を差し引いて得た位置Pnewは、先の教示作業によるプログラム作成時の位置として正確に求められた位置となる。しかし、前記従来の制御方法では、異なる値の位置ずれΔXYZ1,ΔXYZ2が生じている状態の教示位置WP1,WP2間に、例えば新たに教示位置を追加する場合、その新たな教示位置は、先の教示作業によるプログラム作成時の位置として正確に求められたものでないという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、教示作業により作成されたプログラムの教示位置をセンサによるセンシングによって得た位置ずれ補正量に基づいて補正し、プログラムを実行する溶接ロボットにおいて、新たに教示位置を追加、又は教示位置を修正するに際し、教示位置の追加・修正が容易に行えて全プログラムの作り直しを不要とし、かつ、その新たな教示位置を先の教示作業によるプログラム作成時の位置として正確に変換し求めることができるようにした、溶接ロボットの制御方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。すなわち、請求項1の発明は、教示作業により作成されたプログラムの教示位置をセンサによるセンシングによって得た位置ずれ補正量に基づいて補正し、プログラムを実行する溶接ロボットにおいて、移動元教示位置と移動先教示位置との間にて新たに教示位置を追加、又は教示位置を修正するに際し、センシングによって前記移動元教示位置を補正した補正移動元教示位置と、センシングによって前記移動先教示位置を補正した補正移動先教示位置とを結ぶ軌跡上を移動している溶接ロボットを停止させ、次いで教示位置を追加又は修正すべき位置に前記溶接ロボット移動停止位置から溶接ロボットを誘導して停止させ、前記移動元教示位置と前記移動先教示位置とを結ぶ軌跡上へ前記溶接ロボット移動停止位置を正射影した正射影位置を演算して求め、前記誘導した溶接ロボット誘導量を前記正射影位置に加算して得た位置を、新たな教示位置として記憶することを特徴とする溶接ロボットの制御方法である。
【0012】
本発明による溶接ロボットの制御方法は、図7に示すように、溶接区間における移動元教示位置WP1と移動先教示位置WP2との間にて新たに教示位置を追加、又は教示位置を修正するに際し、前記両教示位置WP1,WP2を記憶しておき、センシングによる位置ずれ補正量ΔXYZ1に基づいて前記移動元教示位置WP1を補正した補正移動元教示位置WP1’と、センシングによる位置ずれ補正量ΔXYZ2に基づいて前記移動先教示位置WP2を補正した補正移動先教示位置WP2’とを結ぶ軌跡上を移動している溶接ロボットを停止させ、次いで教示位置を追加又は修正すべき位置に前記溶接ロボット移動停止位置PSから溶接ロボットを誘導して停止させる。そして、図8に示すように、前記移動元教示位置WP1と前記移動先教示位置WP2とを結ぶ軌跡TWL上へ前記溶接ロボット移動停止位置PSを正射影してなる正射影位置PMを演算して求め、前記誘導した溶接ロボット誘導量ΔRを前記正射影位置PMに加算して得た位置Pnewを、新たな教示位置として記憶する構成となされている。
【0013】
このように、異なる値の位置ずれΔXYZ1,ΔXYZ2が生じている状態の教示位置WP1,WP2間にて新たに教示位置を追加、又は教示位置を修正する場合でも、前記正射影位置PMに前記溶接ロボット誘導量ΔRを加算して得た位置Pnewを新たな教示位置とするようにしたので、新たな教示位置Pnewを先の教示作業によるプログラム作成時の位置として正確に変換し求めることができる。また、オペレータが追加・修正を実施する際に取り付けられたワークを見ながら必要な箇所へのみ追加・修正を行うだけですみ、教示位置の追加・修正が容易に行えて全プログラムの作成し直しが不要となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は本発明の制御方法を採用した溶接ロボット装置の全体構成を示す図である。この溶接ロボット装置は、図1に示すように、ロボット制御装置4、このロボット制御装置4からの指令に従って動作する溶接ロボット1、教示ペンダント5、操作パネル6、及び溶接電源7により構成されている。そして、溶接ロボット1、教示ペンダント5、操作パネル6、及び溶接電源7は、ロボット制御装置4に接続されている。前記溶接ロボット1の手首部には溶接ワイヤ3を支持する溶接トーチ2が取り付けられている。溶接ワイヤ3は図示しないワイヤ送給装置により溶接トーチ2に送給されるようになっている。溶接電源7は、前記ワイヤ送給装置を介して溶接ワイヤ3とワークとの間に電圧を印加してアークを発生させるようになっている。また、溶接電源7は、ワイヤタッチセンシングを行うためのセンシング用電源を内蔵している。
【0016】
前記のロボット制御装置4は、I/Oインターフェース41と、CPU42と、図示しないサーボ制御器へ指令を出力して、溶接トーチ2の先端部(溶接ワイヤ3先端)を目標位置に移動させるべく溶接ロボット1の動作制御を行うロボット動作制御部43と、ワーク位置を検出し、該ワーク位置に対応する教示時のワーク位置との位置ずれの補正を行うためのセンサ制御部44と、教示位置の追加又は修正を行う際に新たな教示位置を演算して求めるための位置データ演算部45と、メモリ46とを有している。
【0017】
前記センサ制御部44は、本実施例ではワイヤタッチセンシングによりワーク位置を検出し、その検出位置と教示時のワーク位置との差から位置ずれ補正量ΔXYZn(溶接トーチ2先端部(溶接ワイヤ3先端)の動作軌跡を修正するための直交座標系による差分)を求めるようになっている。通常、少なくとも2箇所のワーク位置の検出を行うようになっている。溶接トーチ(溶接ワイヤ)自体をセンサとするワイヤタッチセンシングは、公知技術であり、溶接トーチのチップ先端から溶接ワイヤを所定長さ突き出させ、該溶接ワイヤとワークとの間にセンシング電圧を印加し、センシング開始位置から溶接トーチをワークに向けて移動させる。そして、溶接ワイヤとワークとの接触による電圧低下に基づいて溶接ワイヤのワークへの接触を検出する動作を所定順序で行うことにより、ワーク位置を検出するようにしたものである。
【0018】
図2はワイヤタッチセンシングの説明図である。図2において、Wは教示作業に供されたワーク(水平すみ肉溶接用ワーク)、W’は新たに教示位置を追加・修正するに際に供されたワークである。P2はセンシング開始位置、P3は教示作業による教示時のワークWの位置、P3’はワイヤタッチセンシングによって検出されたワークW’の位置である。このようにして、教示時のワーク位置P3に対する位置ずれ(図2の場合はΔL)を検出するようになされている。なお、ワークのセンシングは、本実施例では溶接トーチ(溶接ワイヤ)自体をセンサとするワイヤタッチセンシングにより行うようにしているが、公知の接触式センサ、あるいは非接触式センサを用いて行うようにしてもよい。
【0019】
前記のメモリ46は、プログラム記憶部46a、位置ずれ補正量記憶部46b、及び位置データ一時記憶部46cを有している。プログラム記憶部46aには、教示作業により作成された教示プログラムや、教示位置の追加・修正の制御を行うためのプログラムなどが格納される。教示プログラムは、オペレータによる教示ペンダント5からのプログラム実行指示(前進キー操作)に従って順次読み出されて実行されるようになっており、また、追加・修正の制御を行なうためのプログラムも教示ペンダント5の操作により実行されるようになっている。位置ずれ補正量記憶部46bには、ワークの各ワイヤタッチセンシング箇所についてセンサ制御部44で求められた位置ずれ補正量ΔXYZ1〜ΔXYZnがそれぞれ格納されており、これらの位置ずれ補正量ΔXYZ1〜ΔXYZnは、教示位置の補正を行う際に順次読み出される。また、位置データ一時記憶部46cには、教示位置の追加又は修正を行う際に新たな教示位置を演算して求めるのに用いられる位置データが一時的に格納されるようになっている。
【0020】
また、前記の教示ペンダント5は、教示作業に際しロボット制御装置4に各種命令や教示位置を入力したり、プログラムに設定された命令の実行を指示(前進キーのオン/オフ)したりするために用いられる。また、教示ペンダント5は、オペレータによって溶接ロボット1を誘導して溶接トーチ2の先端部(溶接ワイヤ3先端)を所望位置に位置させるために用いられるものである。操作パネル6は、教示モードと再生モードの選択を行うためにオペレータによって操作される。
【0021】
図3は一例として水平すみ肉溶接を行う場合の教示プログラムのステップの説明図、図4は図3の教示プログラムの内容を説明するための図である。図4は水平すみ肉溶接用T継手をなすワークを上方から見て平面的に示した図である。
【0022】
図4において、P1〜P7、WP1、WP2及びP10は教示作業により作成された教示プログラムの教示位置である。各々について説明すると、P1:出発位置、P2:センシング開始位置(溶接開始位置側)、P3:教示時のワーク位置(溶接開始位置側)、P4:センシング開始位置(溶接終了位置側)、P5:教示時のワーク位置(溶接終了位置側)P6:中間退避位置、P7:中間退避位置、WP1:溶接開始位置、WP2:溶接終了位置、P10:退避位置、である。位置WP1と位置WP2とを結ぶ軌跡が溶接線である。なお、図4では、図が分かり難くなることを回避するために、位置P7、WP1、WP2及びP10については、T型のワークWを構成する上板を挟んで位置P1〜P6とは反対側に図示してあるが、実際には位置P1〜P6の側に教示されるようになっている。
【0023】
これらの教示位置が、図3に示すような手順による教示作業により教示されるようになっている。教示作業はオペレータが教示ペンダント5を操作して行われる。図3に示すように、各教示位置は移動命令により教示されるようになっている。溶接開始位置WP1と溶接終了位置WP2、また、溶接条件(電流、電圧、速度)についても教示作業により教示される。センシング命令では位置ずれ補正量記憶部46bにセンシング結果を格納するための補正量番号が入力される。No.2でのセンシング命令は、センシング開始位置P2からワークWに向かってセンシング動作(S1)をさせるために位置P2において入力される。また、No.4でのセンシング命令は、センシング開始位置P4からワークWに向かってセンシング動作(S2)をさせるために位置P4において入力される。No.7での補正量反映命令は、No.2でのセンシング命令を実行することによって得られる位置ずれ補正量ΔXYZ1を溶接開始位置WP1の補正に反映させるために位置P7において入力される。また、No.8での補正量反映命令は、No.4でのセンシング命令を実行することによって得られる位置ずれ補正量ΔXYZ2を溶接終了位置WP2の補正に反映させるために位置WP1において入力される。
【0024】
このようにしてワークWへの教示が行われる。次に、前記教示作業により作成されている教示プログラムの溶接区間における教示位置WP1,WP2間において新たに教示位置Pnewを追加する場合の制御について説明する。そして、新たな教示位置Pnewを追加する際、その際のワーク(図示せず)が前記教示プログラム作成時のワークWの場合に対して取付け誤差等によって位置ずれが生じており、しかも、互いに異なる値の位置ずれΔXYZ1,ΔXYZ2が生じている状態の教示位置WP1,WP2間に、新たに教示位置Pnewを追加する場合について、図5〜図8を参照して説明する。
【0025】
図5及び図6は本発明の制御方法による制御の手順の一例を示すフローチャート、図7及び図8は本発明の制御方法を説明するための図である。
【0026】
ここで、先に作成された教示プログラムによる動作のうち、位置ずれ補正量ΔXYZ1を得るために行うセンシング開始位置P2からのセンシング動作S1や、位置ずれ補正量ΔXYZ2を得るために行うセンシング開始位置P4からのセンシング動作S2は実行されており、溶接ロボット1は中間退避位置P7から動作させるものとする。
【0027】
教示ペンダント5の前進キーをオンすると(ステップ301でYES)、ステップ302に進み、ここで、教示プログラムに入力されている設定命令が読み出される。そして、その設定命令が移動命令であった場合(ステップ302でYES)、ステップ304に進み、移動命令の目標位置Pn、この場合は移動元教示位置としての溶接開始位置WP1を第2基準位置PB2として記憶する。また、ステップ304で溶接ロボット誘導量ΔRの値をクリアする。次いで、ステップ305において、中間退避位置P7からの移動に先立ち、先のセンシングS1によって得られた位置ずれ補正量ΔXYZ1により溶接開始位置(移動元教示位置)WP1を補正した補正移動元教示位置としての補正溶接開始位置WP1’を演算して求め、これを目標位置Pnxtとして溶接ロボット1は移動動作を開始する。この場合、溶接ロボット1は、補正溶接開始位置WP1’を目標位置Pnxtとして移動動作を開始する。
【0028】
前進キーをオンし続けると(ステップ306でNO)、ステップ309で目標位置に達したか否か、この場合、補正溶接開始位置WP1’に達したか否かが判断される。補正溶接開始位置WP1’に到達すると(ステップ309でYES)、ステップ310に進み、ここで、第1基準位置PB1へ前記第2基準位置PB2の内容を複写する(PB1←PB2)。この場合は第1基準位置PB1として溶接開始位置WP1が複写される(記憶される)ことになる。これは、第1基準位置PB1を設定するために改めて教示プログラムから教示位置WP1を取り出す処理を省略するためである。
【0029】
そして、再度、教示ペンダント5の前進キーをオンすると(ステップ301でYES)、教示プログラムに入力されている補正量反映命令が読み出され(ステップ302でNO)、ステップ303へ進む。このステップ303において、前記補正量反映命令により、位置ずれ補正量として前記ΔXYZ1に代えて先のセンシングS2によって得られたΔXYZ2に変更する。
【0030】
続いて、再度、前進キーをオンすることで(ステップ301でYES)、ステップ302に進み、ここで、教示プログラムに入力されている設定命令が読み出される。そして、その設定命令が移動命令であった場合(ステップ302でYES)、ステップ304に進む。ステップ304において、移動命令の目標位置Pn、この場合は移動先教示位置としての溶接終了位置WP2を第2基準位置PB2として記憶する。次いでステップ305において、補正溶接開始位置WP1’からの移動に先立ち、前記位置ずれ補正量ΔXYZ2により溶接終了位置(移動先教示位置)WP2を補正した補正移動先教示位置としての補正溶接終了位置WP2’を演算して求め、これを目標位置Pnxtとして溶接ロボット1は移動動作を開始する。この場合、溶接ロボット1は、補正溶接終了位置WP2’を目標位置Pnxtとして移動動作を開始する(図7参照)。
【0031】
そして、補正溶接開始位置WP1’と補正溶接終了位置WP2’とを結ぶ軌跡上を移動動作している途中で、教示位置を追加するため、前進キーをオフし(ステップ306でYES)、溶接ロボット1の移動動作を停止させる(ステップ307)。その移動停止時の現在位置を溶接ロボット移動停止位置PSとして記憶する(ステップ308)。次いで、図7に示すように、オペレータは、教示ペンダント5を操作して、前記移動停止位置PSから教示位置を追加すべき位置Pnowに溶接ロボット1を誘導して該位置Pnowに停止させる(ステップ102でYES→ステップ103→ステップ104→ステップ105)。しかる後、ステップ106において、前記誘導終了した現在位置Pnowと前記移動停止位置PSとから溶接ロボット誘導量ΔRを求める。
【0032】
次いで、教示ペンダント5による追加位置記憶の操作を行い(ステップ101でYES)、ステップ201に進む。ステップ201で、図8に示すように、移動元教示位置としての溶接開始位置WP1と移動先教示位置としての溶接終了位置WP2とを結ぶ軌跡TWL上へ前記移動停止位置PSを正射影した位置である正射影位置PMを演算して求める。しかる後、この正射影位置PMに前記溶接ロボット誘導量ΔRを加算した位置Pnewを演算して求め(ステップ202)、この位置Pnewを新たな教示位置として記憶する(ステップ203)。このようにして、新たな教示位置Pnewの追加がなされる。なお、教示位置Pnewを移動元教示位置である溶接開始位置WP1に代えて記憶することで、溶接開始位置WP1の修正を行うことができる。
【0033】
このように、互いに異なる値の位置ずれΔXYZ1,ΔXYZ2が生じている状態の教示位置WP1,WP2間において新たに教示位置を追加、又は教示位置を修正する場合でも、前記正射影位置PMに前記溶接ロボット誘導量ΔRを加算して得た位置Pnewを新たな教示位置とするようにしたので、従来方法とは違って、新たな教示位置Pnewを先の教示作業によるプログラム作成時の位置として正確に変換し求めることができる。また、オペレータが追加・修正を実施する際に取り付けられたワークを見ながら必要な箇所へのみ追加・修正を行うだけですみ、教示位置の追加・修正が容易に行えて全プログラムの作成し直しが不要となる。
【0034】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による溶接ロボットの制御方法によれば、教示作業により作成されたプログラムの教示位置をセンサによるセンシングによって得た位置ずれ補正量により補正し、プログラムを実行する溶接ロボットにおいて、新たに教示位置を追加、又は教示位置を修正するに際し、教示位置の追加・修正が容易に行えて全プログラムの作り直しを不要とするとともに、互いに異なる値の位置ずれが生じている状態の教示位置間にて新たに教示位置を追加、又は教示位置を修正する場合でも、従来方法とは違って、その新たな教示位置を先の教示作業によるプログラム作成時の位置として正確に変換し求めることができ、位置ずれのない正確なアーク溶接を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制御方法を採用した溶接ロボット装置の全体構成を示す図である。
【図2】ワイヤタッチセンシングの説明図である。
【図3】一例として水平すみ肉溶接を行う場合の教示プログラムのステップの説明図である。
【図4】図3の教示プログラムの内容を説明するための図である。
【図5】本発明の制御方法による制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の制御方法による制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の制御方法を説明するための図である。
【図8】本発明の制御方法を説明するための図である。
【図9】従来技術の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
1…溶接ロボット 2…溶接トーチ 3…溶接ワイヤ 4…ロボット制御装置41…I/Oインターフェース 42…CPU 43…ロボット動作制御部 44…センサ制御部 45…位置データ演算部 46…メモリ 46a…プログラム記憶部 46b…位置ずれ補正量記憶部 46c…位置データ一時記憶部 5…教示ペンダント 6…操作パネル 7…溶接電源
Claims (1)
- 教示作業により作成されたプログラムの教示位置をセンサによるセンシングによって得た位置ずれ補正量に基づいて補正し、プログラムを実行する溶接ロボットにおいて、
移動元教示位置と移動先教示位置との間にて新たに教示位置を追加、又は教示位置を修正するに際し、センシングによって前記移動元教示位置を補正した補正移動元教示位置と、センシングによって前記移動先教示位置を補正した補正移動先教示位置とを結ぶ軌跡上を移動している溶接ロボットを停止させ、次いで教示位置を追加又は修正すべき位置に前記溶接ロボット移動停止位置から溶接ロボットを誘導して停止させ、前記移動元教示位置と前記移動先教示位置とを結ぶ軌跡上へ前記溶接ロボット移動停止位置を正射影した正射影位置を演算して求め、前記誘導した溶接ロボット誘導量を前記正射影位置に加算して得た位置を、新たな教示位置として記憶することを特徴とする溶接ロボットの制御方法。
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