定義
本発明についての理解を容易にするために、以下の定義及び説明を提供する。
基本用語
数値及び範囲の文脈における用語「約」又は「およそ」は、当業者であれば本明細書に含まれている教示から明らかなように、所望の数又は割合の配列相同性を有すること等、本発明を意図されている通りに実施することができるような、提示されている値又は範囲を近似するか又はそれに近い数値又は範囲を指す。これは、少なくとも部分的には、培養条件の変動及び生物系の変異性による。従って、これら用語は、系統誤差から生じる誤差を超える値を包含する。これら用語は、暗示的なものを明示的にする。典型的には、「約」は、記載値の±10%を包含する。従って、用語「約」は、範囲を記述するために使用することができる。
本明細書中で本発明の概要及び説明に示されている全ての範囲は、範囲の数値の付近にある又はその間にある全ての数又は値を含む。本発明の範囲は、その範囲にある全ての整数値、小数値、及び分数値を明示的に表記及び表示する。
用語「対象体」には、ヒト及び非ヒト動物が含まれる。非ヒト動物には、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類等の脊椎動物、例えば哺乳動物及び非哺乳動物が全て含まれる。注記がある場合を除き、用語「患者」又は「対象体」は、本明細書では同義的に使用される。
用語「治療」には、組成物又は抗体を投与して、疾患の徴候、合併症、又は生化学的兆候の発症を予防又は遅延させて、徴候を緩和するか、又は疾患、症状、又は障害の更なる進行を停止又は阻害することが含まれる。従って、治療は「治癒」包含するが、それに限定されない。治療は、予防的であってもよく(疾患の発症を予防又は遅延させること、又はその臨床的又は無症状的徴候の顕在化を予防又は遅延すること)又は疾患が発症した後での徴候の治療的抑制又は軽減であってもよい。
「データベース又は読取可能媒体」は、本明細書で使用される場合、配列データを保存するためのあらゆるフォーマットを指し、従ってデータベースファイル、参照表、又はExcelスプレッドシート等のあらゆる情報の蓄積を指す。ある実施形態では、データベースは、コンピュータ読取可能メモリデバイス等の電子的形態で保存される。これには、サーバー、クライアント、ハードディスク、CD、DVD、Palm Pilot等の携帯情報端末、テープ、ジップディスク、コンピューターの内部ROM(読出し専用メモリ)、又はインターネット若しくはワールドワイドウェブ等の媒体が含まれる。コンピューターによりアクセス可能なファイルを保存するための他の媒体は、当業者であれば明らかであろう。
「in silico」は、コンピューター上で実施される操作、分析、及び設計を指すが、同様に紙の上で又は頭の中で実施することもできる。
抗体及びそれらの特性
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、抗体全体を含む。抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、親和性精製されたポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、完全ヒト抗体、マウス又はげっ歯動物抗体、キメラ抗体、ラクダ抗体、又はヒト化抗体であってもよい。抗体は、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA(ヒトサブクラスIgA1及びIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG、又はIgM等の抗体クラスのいずれに属していてもよい。天然「抗体」は、ジスルフィド結合により相互に結合された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。
用語「その機能的断片」は、本明細書で使用される場合、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、scFv、Fc部分を含む単一鎖、ナノボディ(nanobody)、及び可変フレームワーク領域以外のスキャフォールドを有する他の抗体様構造等のあらゆる抗原結合断片を含む。用語「その機能的断片」は、抗体のあらゆる機能的部分を含むが、それに限定されず、機能には、免疫原の結合又はエフェクター機能が含まれる。
本明細書で使用される場合、用語「親和性」は、抗原性部位における抗体と抗原との相互作用の強度を指す。各抗原性部位内では、抗体「アーム」の可変領域は、非共有結合力により多数の部位で抗原と相互作用し、相互作用がより多ければ、親和性はより強くなる。本明細書で使用される場合、IgG抗体等の抗体又はその機能的断片に関する「高親和性」という用語は、抗体が、10−8M以下、10−9M以下、又は10−10M、又は10−11M以下の標的抗原に対するKDを有することを指す。しかしながら「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプの場合は、異なる場合がある。例えば、IgMアイソタイプの「高親和性」結合は、抗体が、10−7M以下又は10−8M以下のKDを有することを指す。
用語「Kassoc」又は「Ka」は、本明細書で使用される場合、特定の抗体−抗原相互作用の結合速度を指し、用語「Kdis」又は「Kd」は、本明細書で使用される場合、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を指すことが意図されている。用語「KD」は、本明細書で使用される場合、解離定数を指すことが意図されており、解離定数は、Kaに対するKdの比率(つまり、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKDを決定するための方法は、表面プラズモン共鳴法の使用によるか、又はBiacore(登録商標)システム等のバイオセンサーシステムの使用による。
用語「交差阻止する」、「交差阻止された」、及び「交差阻止」は、本明細書では同義的に使用されており、抗体又は他の結合物質が、標準的競合結合アッセイにおいて、同じ標的に対する他の抗体又は結合物質の結合を妨害する能力を意味する。抗体又は他の結合物質が、同じ標的に対する別の抗体又は結合分子の結合を妨害することができる能力又は程度は、従ってそれが本発明による交差阻止と呼ぶことができるかどうかは、標準的競合結合アッセイを使用して決定することができる。1つの好適なアッセイには、表面プラズモン共鳴技術を使用して相互作用の程度を測定することができるBiacore技術の使用(例えば、BIAcore 3000型装置(Biacore社製、ウプサラ、スウェーデン)の使用による)が伴う。交差阻止を測定するための別のアッセイには、ELISAに基づく手法が使用される。
用語「エピトープ」は、抗体に対して特異的に結合することが可能なタンパク質決定因子を意味する。エピトープは、通常はアミノ酸又は糖側鎖等の分子の化学的活性表面基で構成されており、通常は特異的な3次元構造特徴並びに特異的電荷特徴を有する。立体構造性エピトープ及び非立体構造性エピトープは、前者に対する結合が、変性溶媒の存在下で失われるが、後者に対する結合は失われないという点で識別される。
用語「キメラ抗体」は、(a)定常領域又はその部分が変更されているか、置換されているか、又は交換されている抗体分子であり、その結果抗原結合部位(可変領域)は、異なるか又は変更されているクラス、エフェクター機能、及び/又は種の定常領域に結合されている。
用語「アイソタイプ」は、重鎖定常域遺伝子により提供される抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG1又はIgG4等のIgG)を指す。アイソタイプは、これらクラスのうちの1つの修飾型も含み、修飾は、Fc機能を変更して、例えばエフェクター機能又はFc受容体に対する結合を増強又は低減するようになされる。
用語「生殖系」は、親から子孫に受け継がれる、抗体又はそれらの機能的断片をコードする核酸配列を意味する。
用語「生殖系タンパク質配列」は、a)生殖系遺伝子によりコードされた抗体又はその機能的断片の可変領域のアミノ酸配列、b)生殖系遺伝子によりコードされた抗体又はその機能的断片の可変領域と同じアミノ酸配列を有する抗体又はその機能的断片の可変領域をコードする修飾アミノ酸配列によりコードされており、核酸配列が、例えばコドン最適化、所望の制限部位の付加、GC含有量の最適化、望ましくないスプライス部位の除去、又はmRNA不安定化モチーフの除去により修飾されているアミノ酸配列、又はc)生殖系遺伝子によりコードされているが、アミノ酸配列に、望ましくないシステインを除去するため又は所望の制限部位、例えばBbsIを導入するための等の点突然変異を有するか、又は合成、増幅、若しくはクローニングにおけるエラーに起因する点突然変異を有するアミノ酸配列を意味する。
用語「生殖系遺伝子配列」は、a)抗体又はその機能的断片の可変領域をコードする生殖系遺伝子の核酸配、又はb)生殖系遺伝子によりコードされた抗体又はその機能的断片の可変領域と同じアミノ酸配列を有する抗体又はその機能的断片の可変領域をコードしており、核酸配列が、例えばコドン最適化、所望の制限部位の付加、GC含有量の最適化、望ましくないスプライス部位の除去、又はmRNA不安定化モチーフの除去により修飾されている修飾核酸配列を意味する。
用語「生殖系遺伝子対(複数可)」は、抗体又はその機能的断片の可変重鎖及び可変軽鎖をコードする核酸配列及びそれらの対応する生殖系遺伝子の対を意味する。例えば、生殖系遺伝子対は、VH3−23/Vκ1−5であってもよく、VH3−23/Vκ1−5によりコードされた抗体は、生殖系遺伝子VH3−23によりコードされた可変重鎖又はその部分及び生殖系遺伝子Vκ1−5によりコードされた可変軽鎖又はその部分を含む。
用語「生殖系タンパク質対」は、可変重鎖又はその部分及び可変軽鎖又はその部分が、a)特定の生殖系遺伝子により各々コードされているか、又はb)特定の生殖系遺伝子によりコードされた抗体の可変領域と同じアミノ酸配列を有する抗体又はその機能的断片の可変領域をコードしており、核酸配列が、例えばコドン最適化、所望の制限部位の付加、GC含有量の最適化、望ましくないスプライス部位の除去、又はmRNA不安定化モチーフの除去により修飾されている修飾核酸配列により各々コードされているか、又はc)生殖系遺伝子によりコードされているが、アミノ酸配列に、望ましくないシステインを除去するため又は所望の制限部位、例えばBbsIを導入するための点突然変異を有するか、又は合成、増幅、若しくはクローニングにおけるエラーに起因する点突然変異を有するアミノ酸配列を各々含む抗体又はその機能的断片を意味する。例えば、生殖系遺伝子対は、VH3−23/Vκ1−5によりコードされた抗体又はその機能的断片であってもよく、抗体は、生殖系遺伝子VH3−23によりコードされた可変重鎖又はその部分、及び生殖系遺伝子Vκ1−5によりコードされた可変軽鎖又はその部分を含む。「生殖系タンパク質対」は、実施例5で調製された構築体を含み、それらは以下のものを含む:
a)VHの場合:リーダー配列(図3に示されているように、NheI RE部位が組み込まれている修飾phoA);生殖系FR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3(図3に示されているように、BssHII制限部位が組み込まれている);Ewert S.ら、J.Mol.Biol.(2003年)325巻、531〜553頁で使用された4D5抗体のCDR−H3(WGGDGFYAMDY);及びJH4 FR4(図3に示されているように、XhoI/SalI制限部位が組み込まれている);
b)Vkの場合:リーダー配列(ompAには、図3に示されているように、NdeI制限部位が組み込まれている);生殖系FR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3(図3に示されているように、BbsI制限部位が組み込まれている)、Ewert S.ら、J.Mol.Biol.(2003年)325巻、531〜553頁によるカッパ様CDR−L3(QQHYTTPPT);及びJk1 FR4(図3に示されているように、KpnI制限部位が組み込まれている);及び
c)Vλの場合:リーダー配列(ompAには、図3に示されているように、NdeI制限部位が組み込まれている);生殖系FR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3(図3に示されているように、BbsI制限部位が組み込まれている)、Ewert S.ら、J.Mol.Biol.(2003年)325巻、531〜553頁によるラムダ様CDR−L3(QSYDSSLSGVV);及びJl2/3 FR4(図3に示されているように、KpnI制限部位が組み込まれている)。
これら構築体の各々を、実施例6及び7に記述されているように、Fab及びIgGとして合成し、発現させ、以下の機能的特性に関して試験した:a)ファージ産生及びファージELISA後のFab型の相対的提示;b)大腸菌でFabを産生させ、大腸菌細胞を溶解し、産生されたFabをELISAで検出した後の相対的Fab発現レベル;c)大腸菌でFabを産生させ、大腸菌細胞を溶解し、高温でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出した後のFabの温度安定性;d)ウシ/マウス血清中でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出することによる、大腸菌溶解産物由来のFabのウシ/マウス血清安定性;e)哺乳動物細胞でIgG1を産生させ、細胞培養上清由来の分泌IgG1をELISAで検出した後の相対的ヒトIgG1発現レベル;及びf)ウシ/マウス血清中でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出することによるヒトIgG1のウシ血清安定性。
用語「実質的生殖系タンパク質配列」は、生殖系遺伝子によりコードされているが、アミノ酸配列に、望ましくないシステインを除去するため又は所望の制限部位、例えばBbsIを導入するため等の点突然変異、又は合成、増幅、若しくはクローニングでのエラーに起因する点突然変異を有するアミノ酸配列を意味する。
「生殖系遺伝子」は、以下の文献に開示されている抗体又はそれらの機能的断片をコードする生殖系遺伝子の核酸であり、VHについては:Tomlinsonら、(1992年)、“The Repertoire of Human Germline Vh Sequences Reveals about Fifty Groups of Vh Segments with Different Hypervariable Loop”J.Mol.Biol.227巻、776〜798頁;Matsudaら、(1998年)、“The complete nucleotide sequence of the human immunoglobulin heavy chain variable region locus”J Exp Med 188巻(11号):2151〜62頁;及びLeFranc MP(2001年)“Nomenclature of the human immunoglobulin heavy(IGH)genes.”Exp Clin Immunogenet.18巻(2号):100〜16頁;Vλについては:Kawasakiら、(1997年)“One−Megabase Sequence Analysis of the Human immunoglobulin lambda Gene Locus”Genome Research 7巻(3号):250〜61頁;Frippiatら、(1995年)“Organization of the human immunoglobulin lambda light−chain locus on chromosome 22q11.2”Hum.Mol.Genet.4巻、983〜991頁;及びLeFranc MP(2001年)“Nomenclature of the human immunoglobulin lambda(IGL)genes.Exp Clin lmmunogenet.;18巻:242〜254頁;Vκについては:Schable及びZachau(1993年)、“The variable genes of the human immunoglobulin kappa locus,”Biol.Chem Hoppe Seyler.374巻(11号):1001〜22頁;Brensing−Kuppersら(1997年)“The human immunoglobulin kappa locus on yeast artificial chromosomes(YACs)”Gene.191巻(2号):173〜81頁;Kawasakiら(2001年)“Evolutionary dynamics of the human immunoglobulin kappa locus and the germline repertoire of the Vkappa genes”Eur J Immunol 31巻(4号):1017〜28頁;及びLefranc MP(2001年)“Nomenclature of the human immunoglobulin kappa(IGK)genes”Exp Clin Immunogenet.18巻161〜174頁であり、これらは、参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる。
可変重鎖用のJH4、可変κ軽鎖用のJκ1、及び可変λ軽鎖領域用のJλ2/3の配列は、以下の文献に記述されている:Scavinerら(1999年)“Protein displays of the human immunoglobulin heavy,kappa and lambda variable and joining regions”Exp Clin Immunogenet.16巻(4号):234〜40頁;JHについては:Ravetch et al.ら(1981年)“Structure of the human immunoglobulin mu locus:characterization of embryonic and rearranged J and D genes.”Cell 27巻(3pt2):583〜91;JKについては:Hieterら(1982年)“Evolution of human immunoglobulin kappa J region genes.”J Biol Chem 257巻(3号):1516〜22頁;JLについては:Kawasakiら(1997年)“One−Megabase Sequence Analysis of the Human immunoglobulin lambda Gene Locus”Genome Research 7巻(3号):250〜61頁、これらは全て、参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる。JH4配列は、(YFDYWGQGTLVTVSS)であり、Jκ1配列は、(WTFGQGTKVEIK)であり、Jλ2/3配列は、(VVFGGGTKLTVL)である。
用語「位置依存性アミノ酸使用頻度」は、ポリペプチドの所与の位置における特定のアミノ酸配列の出現可能性を指す。本発明では、位置依存性アミノ酸使用頻度は、個々の生殖系遺伝子により分類された再編成アミノ酸配列について決定した。これにより、その天然生殖系の状況内でCDRを個々に正確に設計することが可能になる。
用語「可変ドメイン/領域(VH又はVL)」は、それぞれ軽鎖(κ及びλを含む)及び重鎖免疫グロブリン遺伝座を構成するVL(Vκ及びVλを含む)、VH、JL(Jκ及びJλを含む)、及びJH核酸のいずれかにより実質的にコードされた1つ又は複数のIgドメインを含む免疫グロブリンの領域を意味する。軽鎖又は重鎖の可変領域(VL及びVH)は、「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる3つの超可変領域が挿入されている「フレームワーク」又は「FR」領域で構成される。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、正確に画定されている(Kabat、1991年、J.Immunol.,147巻、915〜920頁;Chothia & Lesk、1987年、J.Mol.Biol.196巻:901〜917頁;Chothiaら、1989年、Nature 342巻:877〜883頁;Al−Lazikaniら、1997年、J.Mol.Biol.273巻:927〜948頁を参照)。抗体のフレームワーク領域、すなわち構成体軽鎖及び重鎖の組み合わせフレームワーク領域は、主として抗原に対する結合に関与するCDRの位置を決めてアラインさせる役目を果たす。
用語「フレームワーク領域」は、この可変ドメインの抗原結合ループのスキャフォールドの役目を果たす可変ドメインの一部として、Kabatら(1991年)により画定されるような抗体可変ドメインを意味する。フレームワーク領域の例には、可変重鎖又は可変軽鎖のいずれのFR1、FR2、FR3、及びFR4も含まれる。
用語「相補性決定領域」又は「CDR」は、Kabatら(1991年)により画定されるような抗体の抗原結合ループを意味する。抗体Fv断片の2つの可変ドメインの各々は、3つのCDRを含有する。相補性決定領域の例には、可変重鎖又は可変軽鎖のいずれのCDR1、CDR2、及びCDR3も含まれる。
「好ましいVH及びVL」クラス対とは、免疫レパートリー、例えば、ヒト免疫レパートリーにおいて、一組の閾値基準に従って好ましいVH及びVLクラス対を意味する。例えば、豊富に存在するか若しくは低免疫原性、安定性等の好ましい生物物理学的特性を有するVH−VL対、又は約2500個のヒトB細胞の試料中少なくとも0.05%の濃度で出現するVH−VL対は、容易に提示及び/又は発現される。ヒト免疫レパートリーの好ましいVH及びVLクラス対は、他のVH及びVLクラス対より好ましい特徴を有している場合がある。
用語「未感作」とは、抗原未経験であることを意味する。
用語「未感作B細胞」は、抗体又はそれらの機能的断片をコードする核酸が、体細胞超変異を起こしておらず、従ってV(D)J遺伝子セグメント再編成が発生した生殖系遺伝子の核酸を含むとみなされるB細胞を意味する。未感作であるとみなされるB細胞の集団は、未熟B細胞、新たに移動してきたB細胞、及び成熟未感作B細胞である。
用語「未感作ヒト免疫レパートリー」は、ヒトの免疫系に由来する抗原未経験B細胞から単離され、抗体又はそれらの機能的断片をコードする核酸が、体細胞超変異を起こしておらず、従ってV(D)J遺伝子セグメント再編成が発生した生殖系遺伝子の核酸を含むとみなされる核酸のレパートリーを意味する。レパートリーは、個体のレパートリーであってもよく又は集団のレパートリーであってもよい。本発明は、十分なB細胞が得られるならば、一人の個体から免疫レパートリーを決定することが可能である。好ましくは、免疫レパートリーは、試料の偏りを回避するために複数の個体から取得される。
用語「ヒト免疫レパートリー」は、ヒト免疫系に由来するB細胞から単離された核酸のレパートリーを意味する。レパートリーは、個体のレパートリーであってもよく、又は集団のレパートリーであってもよく、未感作B細胞に由来してもよく、及び/又は抗原経験済B細胞に由来してもよい。本発明は、十分なB細胞が得られるならば、一人の個体から免疫レパートリーを決定することが可能である。好ましくは、免疫レパートリーは、試料の偏りを回避するために複数の個体から取得される。
「抗原」及び「免疫原」は抗体と特異的に結合するあらゆる分子であると定義される。
用語「免疫原に特異的」は、抗体と対応する分子との特異的結合を意味する。
「CDR多様化」又は「多様化されたCDR」とは、本明細書で使用される場合、任意の好適な方法によるCDRを有するアミノ酸配列の修飾である。CDRは、一般的に免疫原結合領域であることが知られており、従ってコレクションが、CDR内に大きな多様性を示すメンバーを含むことにより、コレクションが、任意の免疫原に対する特異性及び最適な特性を有する抗体又はそれらの断片を含むことになる可能性が大きくなる。多様性は、1つ又は複数のCDRのアミノ酸組成を変化させることにより得られる。これは、本明細書に記載の方法を含む、当業者に公知である任意の方法により達成することができる。
「抗体又はそれらの断片をコードする合成核酸のコレクション」は、抗体又はその断片をコードする核酸が全て合成であることを意味するが、そのような合成核酸と作用可能に連結させることができるベクター等の他の核酸を指すものではない。
分子生物学の状況で使用される用語
用語「合成」又は「合成された」は、核酸配列が、ポリヌクレオチドを含む物理的DNAに合成される遺伝子合成を意味する。標準的DNA合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドが生成され、その後重複するオリゴヌクレオチドがPCR様構築を使用してライゲーションされる単一ヌクレオチド合成を含む。Sloning社(プッフハイム、ドイツ)、Geneart社(レーゲンスブルク、ドイツ)、DNA2.0社(メンローパーク、カリフォルニア州、米国)、及びGenscript社(ピスカタウエイ、ニュージャージー州、米国)等の会社は、遺伝子合成技術を提供している。例えば、Sloning社は、1組の既製二本鎖三連ヌクレオチド(double stranded triplet nucleotide)を使用し、それらをアニーリングし、その後ライゲーションする。
用語「合成」は、合成により製作されるか又は合成される分子を記述する。
用語「コレクション」又は「ライブラリー」は、少なくとも2つのメンバーがあることを意味する。用語「メンバー」は、これらに限定されないが、抗体又はそれらの断片をコードする核酸、又は抗体若しくはそれらの断片自体を含む。
用語「宿主」は、ヒト、マウス、又はげっ歯動物、マウス、ラット、リス、シマリス、ホリネズミ、ヤマアラシ、ビーバー、ハムスター、アレチネズミ、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、又はウマ等の哺乳動物を含む任意の宿主を指す。
用語「核酸」は、本明細書では、用語「ポリヌクレオチド」と同義的に使用され、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、及びそれらの一本鎖又は二本鎖形態のいずれのポリマーも指す。この用語は、合成、天然、及び非天然であり、基準核酸と同様の結合特性を有する、既知のヌクレオチド類似体又は修飾骨格残基又は連結を含有する核酸を包含する。そのような類似体の例には、限定ではないが、ホスホロチオアート、ホスホロアミダート、メチルホスホナート、キラルメチルホスホナート、2−O−メチルリボヌクレオチド、及びペプチド−核酸(PNA)が含まれる。
別様の指定がない限り、特定の核酸配列は、明示的に示されている配列だけでなく、その保守的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)及び相補的配列も暗示的に包含する。具体的には、下記に詳述されているように、縮重コードン置換は、1つ又は複数の選択された(又は全ての)コドンの3番目の位置が、混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基と置換されている配列を生成することにより達成することができる(Batzerら、Nucleic Acid Res.19巻:5081頁、1991年;Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260巻:2605〜2608巻、1985年;及びRossoliniら、Mol.Cell.Probes 8巻:91〜98頁、1994年)。
用語「作用可能に連結された」は、2つ以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA)セグメント間の機能的関係性を指す。典型的には、この用語は、転写される配列に対する転写調節配列の機能的関係性を指す。例えば、プロモーター又はエンハンサー配列は、それが適切な宿主細胞又は他の発現系においてコード配列の転写を刺激又は調節する場合、コード配列に作用可能に連結されている。一般的に、転写される配列に作用可能に連結されているプロモーター転写調節配列は、転写される配列と物理的に連続しており、つまりそれらはシス作用性である。しかしながら、エンハンサー等の幾つかの転写調節配列は、それらがその転写を増強するコード配列に物理的に連続しているか又は接近して配置されている必要はない。
本明細書で使用される場合、用語「最適化されたコドン」又は「コドン最適化」は、ヌクレオチド配列を変更して、産生細胞又は生物中で優先されるコドンを使用してアミノ酸配列をコードすることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、最初のヌクレオチド配列により元々コードされていたアミノ酸配列を保持するように操作されている。加えて、ヌクレオチド配列は、阻害モチーフ、スプライス部位、mRNA不安定化モチーフ、及び望ましくない制限部位を完全に又は可能な限り回避するように設計されてもよい。ヌクレオチド配列は、GC含有量、所望の制限部位、及び他のパラメーターについて最適化することもできる。配列は、細菌又は真核細胞を含む様々な宿主で発現させるために最適化することができる。最適化されたヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列も、最適化されているという。
用語「アミノ酸」は、天然及び合成アミノ酸、並びに天然アミノ酸と類似した様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸は、遺伝コードによりコードされたアミノ酸であり、並びに後に修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、及びO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を有する化合物、つまり水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合されているアルファ炭素、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なるが、天然アミノ酸と類似した様式で機能する構造を有する化学化合物を指す。
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書では同義的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、並びに天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーに適用される。別様の指定がない限り、特定のポリペプチド配列は、保守的に修飾されたその変異体も暗示的に包含する。
用語「保守的に修飾された変異体」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保守的に修飾された変異体は、本質的に同一の配列に対して、同一の又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードするか、又は核酸がアミノ酸配列をコードしない核酸を指す。遺伝子コードに縮重性があるため、多数の機能的に同一な核酸が、任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、及びGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。従って、あるコドンによりアラニンが指定されている全ての位置で、コードされているポリペプチドを変更せずに、そのコドンを既述の対応コドンのうちのいずれかに変更することができる。そのような核酸変異は「サイレント変異」であり、これは保守的に修飾された変異の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書のあらゆる核酸配列は、核酸のありとあらゆるサイレント変異も表している。当業者であれば、核酸中の各コドン(通常はメチオニン用の唯一のコドンであるAUG、及び通常はトリプトファン用の唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一な分子を産出することができることを認識するだろう。このように、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、各々の記述されている配列に暗示されている。
ポリペプチド配列の場合、「保守的に修飾された変異体」は、あるアミノ酸が、化学的に類似したアミノ酸に置換されることがもたらされる、ポリペプチド配列への個々の置換、欠失、又は付加が含まれる。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野で周知である。そのような保守的に修飾された変異体には、本発明の多形性変異体、異種間相同体、及び対立遺伝子が追加され、それらは除外されない。以下の8つの群は、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton、Proteins(1984年)を参照)。幾つかの実施形態では、用語「保守的な配列修飾」は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に著しく影響を与えないか又は変更しないアミノ酸修飾を指すために使用される。
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の状況における用語「同一の」又はパーセント「同一性」は、同じである2つ以上の配列又は部分配列を指す。以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、又は手作業によるアラインメント及び目視検査により測定して、比較窓又は指定領域にわたって対応が最大になるように比較又はアラインした際に、2つの配列が、指定されたパーセントの同一アミノ酸又はヌクレオチドを有する場合(つまり、指定領域にわたる、又は指定されていない場合は配列全体にわたる60%同一性、随意に65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%同一性)、2つの配列は「実質的に同一」である。随意に、同一性は、長さが少なくとも約50個のヌクレオチド(又は10個のアミノ酸)である領域にわたって、又はより好ましくは長さが100〜500個の若しくは1000個以上のヌクレオチド(又は20、50、又は200個以上アミノ酸)である領域にわたって存在する。配列比較の場合、典型的には、1つの配列が基準配列としての役割を果たし、それが試験配列と比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び基準配列をコンピューターに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。初期設定のプログラムパラメータを使用してもよく、又は代替的パラメーターを指定してもよい。その後、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を算出する。
「比較窓」は、本明細書で使用される場合、20〜600、通常は約50〜約200、より通常は約100〜約150からなる群から選択される連続位置の数のうちの任意の1つのセグメントの参照を含み、そこで2つの配列を最適にアラインした後、配列を同数の連続位置の基準配列と比較することができる。比較するための配列アラインメント法は、当技術分野で周知である。比較するための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith及びWaterman(1970年)Adv.Appl.Math.2巻:482c頁の局部相同性アルゴリズム(local homology algorithm)により、Needleman及びWunsch、J.Mol.Biol.48巻:443頁、1970年の相同性アラインメントアルゴリズム(homology alignment algorithm)により、Pearson及びLipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85巻:2444頁、1988年の類似性探索法(search for similarity method)により、これらアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、遺伝学コンピューターグループ、575サイエンスドライブ、マディソン、ウィスコンシン州のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)のコンピューター実装により、又は手作業でのアラインメント及び目視検査(例えば、Brentら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc.(2003年)を参照)により、実施することができる。
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの2つの例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、それらは、それぞれAltschulら、Nucl.Acids Res.25巻:3389〜3402頁、1977年;及びAltschulら、J.Mol.Biol.215巻:403〜410頁、1990年に記述されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターから公的に入手可能である。このアルゴリズムには、クエリー配列内の長さWの短いワードを特定することにより、データベース配列内の同じ長さのワードとアラインした際にある正の値の閾値スコアTと一致するか又は満たすかのいずれかである高スコアの配列対(HSP)を最初に特定することが伴う。Tは、隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と呼ばれる(Altschulら、上記)。これら初期近接ワードヒット(initial neighborhood word hit)は、それらを含有するより長いHSPを見出すための探索を開始するための種としての役目を果たす。ワードヒットは、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列、パラメーターM(1対の一致残基のリワードスコア;常に>0)及びN(不一致残基のペナルティスコア;常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列の場合、スコア化マトリックスを使用して、累積スコアを計算する。各方向へのワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアが、その最大獲得値からX量だけ減少する時;累積スコアが、1つ又は複数の負のスコアを示す残基アラインメントのために0以下になる時、又は一方の配列の端部に到達する時に停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、及びXは、配列の感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)では、初期設定として、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、及び両鎖の比較が使用される。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムでは、初期設定として、ワード長3、及び期待値(E)10、BLOSUM62スコア化マトリックス(Henikoff及びHenikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89巻:10915頁、1989年を参照)、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、及び両鎖の比較が使用される。
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計的分析も実施する(例えば、Karlin及びAltschul、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90巻:5873〜5787頁、1993年を参照)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸を基準核酸と比較した際の最小合計確率が、約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、及び最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は、基準配列と類似しているとみなされる。
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、PAM120荷重残基表、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers及びW.Miller(Comput.Appl.Biosci.,4巻:11〜17頁、1988年)のアルゴリズムを使用して決定することもできる。加えて、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Blossom62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれか、及び16、14、12、10、8、6、又は4のギャップ荷重、及び1、2、3、4、5、又は6の長さ荷重を用いて、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)に組み込まれているNeedleman及びWunsch(J.Mol.Biol.48巻:444〜453頁、1970年)アルゴリズムを使用して決定することができる。
上記の配列同一性のパーセント以外に、2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの別の指標は、下述のように、第1の核酸によりコードされたポリペプチドが、第2の核酸によりコードされたポリペプチドに対する抗体と免疫学的に交差反応性であることである。従って、例えば2つのペプチドの違いが保存的置換のみである場合、ポリペプチドは、一般的に第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、下述のように、2つの分子又はそれらの相補体が、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズするということである。2つの核酸配列が実質的に同一であることの更に別の指標は、同じプライマーを使用して配列を増幅することができるということである。
用語「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入された細胞を指す。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことが意図されていると理解されるべきである。突然変異又は環境影響のいずれかのため、ある修飾が後続の世代に生じる場合があるため、そのような子孫は、実際は親細胞と同一でない場合があるが、本明細書で使用される場合は、用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。典型的な宿主細胞は、原核生物(大腸菌を含むが、それに限定されない細菌等)、又は真核生物(酵母、及び哺乳動物細胞等を含む)である。
用語「ベクター」は、それが連結されている別のポリヌクレオチドを輸送することが可能なポリヌクレオチド分子を指すことが意図されている。好ましいベクターは、それらが連結されている核酸を自律複製及び/又は発現することが可能なベクターである。それらが作用可能に連結されている核酸の発現を指図することが可能なベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。1つのタイプのベクターは、「プラスミド」であり、これは環状二本鎖DNAループを指し、それには追加的なDNAセグメントがライゲーションされている場合がある。別のタイプのベクターは、ウイルスベクターであり、そこには追加的なDNAセグメントが、ウイルスゲノムにライゲーションされている場合がある。あるベクターは、それらが導入されている宿主細胞中で自律複製が可能である(例えば、細菌性複製開始点を有する細菌ベクター及びエピゾーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピゾーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それにより宿主ゲノムと共に複製される。更に、あるベクターは、それらが作用可能に連結されている遺伝子の発現を指図することが可能である。そのようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般的に、組換DNA技術で有用な発現ベクターは、プラスミドの形態をしていることが多い。本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に用いられている形態であるため、同義的に使用される場合がある。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター等の(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)、発現ベクターのそのような他の形態を含むことが意図されている。
ベクターは、典型的には原核生物レプリコンを含んでおり、原核生物レプリコンは、それにより形質転換された大腸菌等の細菌宿主細胞中で、VH及び/又はVLをコードする相同体の発現(転写及び翻訳)を指図することが可能な原核生物プロモーターを含んでいてもよい。プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合及び転写の生起を可能にするDNA配列により形成された発現制御エレメントである。細菌宿主と適合するプロモーター配列は、典型的には、DNAセグメントを挿入するための便利な制限部位を含有するプラスミドベクターに提供されている。そのようなベクタープラスミドの例には、pUC8、pUC9、pBR322、及びpBR329、pPL、及びpKK223が含まれ、それらは商業的に入手可能である。
「ディスプレイベクター」は、それにより形質転換された細菌宿主細胞等の宿主細胞において、染色体以外の組換えDNA分子の複製及び維持を指図する能力を有するDNA配列を含む。そのようなDNA配列は、当技術分野で周知である。ディスプレイベクターは、例えば、fd、M13、又はfl繊維状バクテリオファージの種類に由来するファージベクター又はファージミドベクターである。そのようなベクターは、繊維状バクテリオファージの表面に、例えば結合タンパク質又はその断片を含むタンパク質の提示を促進することが可能である。ファージ、リボソーム、DNA、細菌細胞、又は真核細胞、例えば酵母又は哺乳動物細胞上での提示に好適なベクターも、当技術分野で公知であり、例えばウイルスベクター又はキメラタンパク質をコードするベクターも公知である。
「固有」の制限部位とは、所与の核酸分子に1つだけ存在するか又は1回だけ出現する制限部位である。
コレクション並びにそれを産生及び使用する方法
本開示は、任意の標的に対する治療用抗体の特定に使用することができる抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを可能にし、それら抗体は、臨床的に開発可能であり、患者に安全及び有効である。背景として、本発明者らは、ヒト免疫レパートリーに豊富に存在する可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対が、より効率的な臨床開発に結び付き、その結果生じた抗体の患者における安全性及び効能を増加させることになる好ましい生物物理学的特性を有する可能性が高いと仮定した。各B細胞は、1つの抗体をコードし、各抗体は、可変重鎖及び可変軽鎖を含む。抗体の可変重鎖及び可変軽鎖の各々は、生殖系遺伝子配列とアラインして抗体の由来を決定することができ、つまり、生殖系遺伝子から可変重鎖及び可変軽鎖が形成される。従って、各抗体について、可変重鎖及び可変軽鎖は生殖系対で構成され、例えばVH3−23はVK1−5と対になるということができる。そのような好ましい生物物理学的特性には、以下のものが含まれていてもよい:a)Fab型での相対的提示率が高いこと、b)相対的Fab発現レベルが高いこと、c)Fabが温度安定性であること、d)Fabがウシ/マウス血清安定性であること、e)相対的ヒトIgG1発現レベルが高いこと、及びf)ヒトIgG1がウシ血清安定性であること。
生殖系遺伝子対は、好ましい生物物理学的特性を有する可能性が高いという仮説を証明するための最初のステップは、ヒト免疫レパートリーで発現される可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対を特定することだった。幾つかの態様では、本発明は、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを産生する方法であって、ヒト免疫レパートリーに存在する可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対を含むデータを取得するステップを含む方法を含む。幾つかの実施形態では、データは、可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対を提供する公的に入手可能な文献から取得される。一般的に、関連する公的に入手可能な文献では、以下の方法に従った:B細胞をヒト供与体から単離し、B細胞を選別してそれらの発生又は分化の段階を決定し、各B細胞由来の抗体をコードするDNAを表すcDNAを生成及び増幅し、cDNAを配列決定し、可変重鎖及び可変軽鎖をコードするcDNAを、既知の生殖系遺伝子配列とアラインし、各B細胞に由来する生殖系遺伝子対を決定した。幾つかの実施形態では、データは、ヒトB細胞のサンプリング及び単離から取得され、それは文献で使用された方法に類似した方法を含んでいた。これらの態様では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを産生する方法は、ヒト免疫レパートリーに存在する可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対を含むデータを取得するステップを含み、取得ステップは、aa)試料からヒトB細胞を単離するステップ、ab)B細胞由来のcDNAを生成するステップ、ac)B細胞由来のcDNAをPCR増幅するステップ、ad)PCR産物を配列決定するステップ、及びae)PCR産物の生殖系遺伝子を特定するステップを更に含む。両組のデータは、ヒト免疫レパートリーに存在する可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対を提供した。
次のステップとして、生データを統合し、分析し、ヒト免疫レパートリーに存在する可変重鎖及び可変軽鎖生殖系対を、発現レベルの点で順位付けした。これらの態様では、本発明は、抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを産生する方法であって、ヒト免疫のレパートリーで顕著に発現される可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対を特定することを含む方法を含む。
ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対
このデータから、ある特定の可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対が、ヒト免疫レパートリーで他よりも高頻度で存在したことは明らかだった。これら顕著な対は、より優れた生物物理学的特性を有すると予想されるため、本発明の態様は、ヒト免疫レパートリーで顕著な生殖系遺伝子対に由来する合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、ヒト免疫レパートリーで顕著な生殖系遺伝子対に由来する。他の態様では、本発明は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の実質的生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の実質的生殖系タンパク質配列を含む。他の態様では、本発明は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの態様では、本発明は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記フレームワーク領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系遺伝子は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される。
幾つかの実施形態では、本発明は、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列から本質的になる。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対から本質的になり、幾つかの実施形態では、1つ又は複数のCDRは、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列から本質的になる。幾つかの実施形態では、本発明は、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列からなる。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対によりコードされる生殖系タンパク質対からなり、幾つかの実施形態では、1つ又は複数のCDRは、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列から本質的になる。幾つかの実施形態では、コレクションの抗体又はそれらの機能的断片の大多数又は実質的に全ては、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列を含む。
幾つかの実施形態では、ヒト免疫レパートリーで豊富に又は顕著に発現される生殖系遺伝子対は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.05%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.09%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.14%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.19%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.23%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.28%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.33%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.37%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.42%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.47%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.51%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.56%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.61%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.66%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.70%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.84%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.89%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.94%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.03%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.12%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.17%、又はヒト免疫レパートリー中少なくとも1.26%の濃度で発現される。
本発明の追加的な態様は、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片の特定に有用なコレクションの能力である。ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される少なくとも2つの可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対を有するコレクションを生成することにより、コレクション内、特にコレクションの抗体の相補性決定領域内に、立体構造又は基準構造中のCDRの長さ及び多様性の点で、多様性が提供されるだろうと考えられた。これは、本発明のコレクションが、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片の特定に有用になることを可能にする。従って、本発明の幾つかの態様は、ヒト免疫レパートリーの顕著に発現される生殖系タンパク質対から選択される少なくとも2個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも3個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも4個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも5個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも6個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも7個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも8個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも9個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも10個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも11個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも12個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも13個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも14個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも15個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも16個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも17個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも18個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも19個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも20個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも21個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも22個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも23個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも24個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも25個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも26個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも27個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも28個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質、少なくとも29個の異なる生殖系タンパク質対配列、少なくとも30個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも31個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも32個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも33個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも34個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも35個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも36個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも37個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも38個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも39個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも40個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも41個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも42個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも43個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも44個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質、少なくとも45個の異なる生殖系タンパク質対配列、少なくとも46個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも47個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも48個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも49個の異なる生殖系タンパク質対、又は少なくとも50個の異なる生殖系タンパク質対を含む抗体又はそれらの機能的断片を含むコレクションを含む。
幾つかの実施形態では、コレクションは、表18に示されている生殖系遺伝子対から選択される1つ又は複数の生殖系タンパク質対を含む可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む。
幾つかの実施形態では、本発明は、生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列を含むFR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3を含む可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインを含む単離された抗体又はその機能的断片を含み、生殖系遺伝子対は、表18の生殖系遺伝子対から選択される。
未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対
ある特定の可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対は、抗原経験済B細胞と比べて、未感作B細胞(抗原未経験)において差別的に発現される可能性があることも企図され、従ってデータを、サンプリングしたB細胞の発生又は分化に基づいて分析した。未感作B細胞で差別的に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質対を含むコレクションは、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片の選択に有利である場合がある。従って、本発明の態様は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対に由来する合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対に由来する。他の態様では、本発明は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の実質的生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の実質的生殖系タンパク質配列を含む。他の態様では、本発明は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの態様では、本発明は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記フレームワーク領域は、生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質配列は、可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対を含み、前記生殖系タンパク質対は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対によりコードされる。
幾つかの実施形態では、本発明は、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列から本質的になる。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対によりコードされる生殖系タンパク質対から本質的になる。幾つかの実施形態では、本発明は、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列からなる。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対によりコードされる生殖系タンパク質対からなる。幾つかの実施形態では、コレクションの抗体又はそれらの機能的断片の大多数又は実質的に全ては、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列を含む。
幾つかの実施形態では、未感作ヒト免疫レパートリーで豊富に又は顕著に発現される生殖系遺伝子対は、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.07%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.15%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.22%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.30%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.37%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.45%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.52%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.59%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.67%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.74%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.82%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.89%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.97%、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.19%、又は未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.56%の濃度で発現される。
本発明の追加的な態様は、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片の特定に有用なコレクションの能力である。未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子対によりコードされる少なくとも2つの可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対を有するコレクションを生成することにより、コレクション内、特にコレクションの抗体の相補性決定領域内に、立体構造又は基準構造中のCDRの長さ及び多様性の点で、多様性が提供されるだろうと考えられた。これは、本発明のコレクションが、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片の特定に有用になることを可能にする。従って、本発明の幾つかの態様は、少なくとも2個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも3個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも4個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも5個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも6個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも7個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも8個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも9個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも10個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも11個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも12個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも13個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも14個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも15個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも16個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも17個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも18個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも19個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも20個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも21個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも22個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも23個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも24個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも25個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも26個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも27個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも28個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質、少なくとも29個の異なる生殖系タンパク質対配列、少なくとも30個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも31個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも32個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも33個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも34個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも35個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも36個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも37個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも38個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも39個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも40個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも41個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも42個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも43個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも44個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質、少なくとも45個の異なる生殖系タンパク質対配列、少なくとも46個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも47個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも48個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも49個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも49個の異なる生殖系タンパク質対、又は少なくとも50個の異なる生殖系タンパク質対を含む抗体又はそれらの機能的断片を含むコレクションを含む。
幾つかの実施形態では、コレクションは、表19の生殖系遺伝子対から選択される1つ又は複数の生殖系タンパク質対を含む可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む。
幾つかの実施形態では、本発明は、生殖系遺伝子対を含む生殖系タンパク質配列を含むFR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3を含む可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインを含む単離された抗体又はその機能的断片を含み、生殖系遺伝子対は、表19の生殖系遺伝子対から選択される。
ヒト免疫のレパートリーで顕著に発現される可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系遺伝子
次のステップとして、統合データ及び追加的データを分析して、ヒト免疫レパートリーにおける可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系遺伝子の発現を決定した。従って、本発明の追加的な態様は、抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを産生する方法であって、ヒト免疫のレパートリーで顕著に発現される可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系遺伝子を特定するステップを含む方法を含む。これを行う1つの方法は、可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系遺伝子を、それらの発現レベルに基づいて順位付けすることである。
ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子によりコードされる可変重鎖又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列を含む抗体は、開発、並びに患者での安全性及び効能を増強する好ましい生物物理学的特性を有する可能性が高い。従って、本発明の態様は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される可変重鎖又は可変軽鎖生殖系遺伝子に由来する合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される可変重鎖又は可変軽鎖生殖系遺伝子に由来する。他の態様では、本発明は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される可変重鎖又は可変軽鎖生殖系遺伝子の実質的生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される可変重鎖又は可変軽鎖生殖系遺伝子の実質生殖系タンパク質配列を含む。他の態様では、本発明は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される可変重鎖又は可変軽鎖生殖系遺伝子の生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される可変重鎖又は可変軽鎖生殖系遺伝子の生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの態様では、本発明は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記フレームワーク領域は、生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質配列は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される可変重鎖又は可変軽鎖生殖系遺伝子によりコードされる。
幾つかの実施形態では、本発明は、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される可変重鎖又は可変軽鎖生殖系遺伝子の生殖系タンパク質配列から本質的になる。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子によりコードされる可変重鎖又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列から本質的になる。幾つかの実施形態では、本発明は、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される可変重鎖又は可変軽鎖生殖系遺伝子の生殖系タンパク質配列からなる。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子によりコードされる可変重鎖又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列からなる。幾つかの実施形態では、コレクションの抗体又はそれらの機能的断片の大多数又は実質的に全ては、未感作ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される生殖系遺伝子によりコードされる生殖系タンパク質配列を含む。
幾つかの実施形態では、ヒト免疫レパートリーで豊富に又は顕著に発現される可変重鎖生殖系遺伝子は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.1%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.2%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.3%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.4%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.5%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.6%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.0%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.6%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも2.1%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも2.2%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも2.6%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも2.7%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも3.0%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも3.2%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも3.3%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも4.0%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも4.1%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも4.5%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも4.6%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも5.3%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも5.8%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも6.8%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも7.6%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも8.0%、又はヒト免疫レパートリー中少なくとも10.6%の濃度で発現される。
幾つかの実施形態では、ヒト免疫レパートリーで豊富に又は顕著に発現される可変κ軽鎖生殖系遺伝子は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.1%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.2%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.3%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.4%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.5%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.7%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.0%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.1%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.3%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.9%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも2.2%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも2.4%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも2.6%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも4.6%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも6.0%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも7.6%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも8.5%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも11.1%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも11.2%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも14.2%、又はヒト免疫レパートリー中少なくとも16.2%の濃度で発現される。
幾つかの実施形態では、ヒト免疫レパートリーで豊富に又は顕著に発現される可変λ軽鎖生殖系遺伝子は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.1%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.3%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.5%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.6%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.0%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.2%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.5%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも1.7%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも4.5%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも5.1%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも5.3%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも6.5%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも8.1%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも10.0%、ヒト免疫レパートリー中少なくとも11.3%、又はヒト免疫レパートリー中少なくとも18.1%の濃度で発現される。
本発明の追加的な態様は、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片の特定に有用なコレクションの能力である。ヒト免疫レパートリーで顕著に発現される可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系遺伝子の1つ又は複数を有するコレクションを生成することにより、コレクション内で、特にCDRの長さ及び立体構造又は基準構造において多様性が生成されることになり、従ってコレクションを、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片の特定に有用にすることができる。本発明の実施形態は、少なくとも2個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも3個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも4個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも5個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも6個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも7個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも8個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも9個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも10個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも11個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも12個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも13個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも14個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも15個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも16個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも17個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも18個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも19個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも20個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも21個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも22個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも23個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも24個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも25個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも26個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも27個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも28個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質、少なくとも29個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも30個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも31個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも32個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも33個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも34個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも35個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも36個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも37個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも38個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも39個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも40個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも41個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも42個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも43個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも44個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質、少なくとも45個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも46個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも47個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも48個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも49個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの機能的断片を含むコレクションを含む。
本発明の実施形態は、少なくとも2個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも3個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも4個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも5個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも6個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも7個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも8個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも9個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも10個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも11個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも12個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも13個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも14個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも15個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも16個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも17個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも18個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも19個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも20個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも21個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも22個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも23個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも24個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも25個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも26個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも27個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも28個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質、少なくとも29個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも30個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも31個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも32個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも33個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも34個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも35個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの機能的断片を含むコレクションを含む。
本発明の実施形態は、少なくとも2個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも3個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも4個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも5個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも6個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも7個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも8個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも9個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも10個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも11個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも12個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも13個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも14個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも15個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも16個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも17個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも18個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも19個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも20個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも21個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも22個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも23個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも24個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも25個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも26個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも27個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも28個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質、少なくとも29個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも30個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも31個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも32個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも33個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの機能的断片を含むコレクションを含む。
幾つかの実施形態では、コレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片を含み、前記フレームワーク領域は、以下のものからなる群から選択される1つ又は複数の可変重鎖生殖系タンパク質配列を含む:IGHV3−23、IGHV3−30、IGHV4−39、IGHV4−34、IGHV4−59、IGHV1−69、IGHV5−51、IGHV3−7、IGHV1−18、IGHV3−48、IGHV3−15、IGHV3−21、IGHV1−2、IGHV3−33、IGHV4−31、IGHV3−53、IGHV3−11、IGHV3−9、IGHV4−4、IGHV1−46、IGHV3−74、IGHV1−24、IGHV4−61、IGHV1−8、IGHV1−3、IGHV3−49、IGHV3−43、IGHV4−28、IGHV3−64、及びIGHV7−81。
幾つかの実施形態では、コレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片を含み、前記フレームワーク領域は、以下のものからなる群から選択される1つ又は複数の可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列を含む:IGKV3−20、IGKV1−39/1D−39、IGKV1−5、IGKV3−15、IGKV4−1、IGKV3−11、IGKV2−28/2D−28、IGKV1−33/1D−33、IGKV2−30、IGKV1−9、IGKV1−17、IGKV1−27、IGKV1−8、IGKV1−16、IGKV1−6、IGKV1−12、IGKV2D−29、IGKV1−13、IGKV1D−8、及びIGKV2−24。
幾つかの実施形態では、コレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片を含み、前記フレームワーク領域は、以下のものからなる群から選択される1つ又は複数の可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列を含む:IGLV2−14、IGLV1−40、IGLV1−44、IGLV1−51、IGLV2−23、IGLV3−21、IGLV1−47、IGLV3−1、IGLV2−11、IGLV2−8、IGLV6−57、IGLV3−25、IGLV7−46、IGLV1−36、IGLV7−43、IGLV9−49、IGLV4−69、IGLV2−18、IGLV3−10、及びIGLV3−27。
幾つかの実施形態では、本発明は、以下のものからなる群から選択される生殖系タンパク質配列を含むFR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3を含む単離された抗体又はその機能的断片を含む:IGHV3−23、IGHV3−30、IGHV4−39、IGHV4−34、IGHV4−59、IGHV1−69、IGHV5−51、IGHV3−7、IGHV1−18、IGHV3−48、IGHV3−15、IGHV3−21、IGHV1−2、IGHV3−33、IGHV4−31、IGHV3−53、IGHV3−11、IGHV3−9、IGHV4−4、IGHV1−46、IGHV3−74、IGHV1−24、IGHV4−61、IGHV1−8、IGHV1−3、IGHV3−49、IGHV3−43、IGHV4−28、IGHV3−64、IGHV7−81、IGKV3−20、IGKV1−39/1D−39、IGKV1−5、IGKV3−15、IGKV4−1、IGKV3−11、IGKV2−28/2D−28、IGKV1−33/1D−33、IGKV2−30、IGKV1−9、IGKV1−17、IGKV1−27、IGKV1−8、IGKV1−16、IGKV1−6、IGKV1−12、IGKV2D−29、IGKV1−13、IGKV1D−8、IGKV2−24、IGLV2−14、IGLV1−40、IGLV1−44、IGLV1−51、IGLV2−23、IGLV3−21、IGLV1−47、IGLV3−1、IGLV2−11、IGLV2−8、IGLV6−57、IGLV3−25、IGLV7−46、IGLV1−36、IGLV7−43、IGLV9−49、IGLV4−69、IGLV2−18、IGLV3−10、及びIGLV3−27。
好ましい生物物理学的特性を有する可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系遺伝子
次のステップとして、顕著な可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列を評価して、開発に関連するそれらの生物物理学的特性を決定した。可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列を、以下の特性についてin silicoで評価した:CDRの長さ;等電点(pI)、好ましい等電点は、標準的なpH5.5〜pH7製剤緩衝液中での安定性を提供するはずであるため、7.5以上である;相補性決定領域における翻訳後修飾(PTM)(具体的には、N−結合グリコシル化部位(NxS又はNxT)又はAsp切断(多くの場合、DPでの)、Asp異性化(DD、DG)、脱アミド化(NS、NG)等の化学的修飾、これらはin vivo(血清中)で又は製剤緩衝液中での保管時に生じる場合があり、抗体結合の喪失に結び付く場合がある);CDRにおけるメチオニンの存在(溶媒との接触時に酸化される場合がある);未対形成システインの存在(任意の他の未対形成システインとジスルフィド結合を形成することになり、従ってタンパク質の架橋及び/又は発現レベルの低下に結び付く);生殖系からの逸脱;潜在的なT細胞エピトープの存在;及び理論上の凝集傾向。
幾つかの実施形態では、本発明は、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを産生する方法であって、a)以下の特性:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、及びvi)等電点が少なくとも7.5であることを含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列を特定するステップと、b)a)で特定された可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系遺伝子配列を含む抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを生成するステップとを含む方法を含む。
本発明の態様は、以下の特性:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点は少なくとも7.5であることの1つ又は複数を含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列に由来する合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、そのような特性を有する可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列に由来する。
本発明の態様は、以下の特性:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であることの1つ又は複数を含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列の実質的生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、そのような特性を有する可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列に由来する実質的生殖系タンパク質配列を含む。
本発明の態様は、以下の特性:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であることの1つ又は複数を含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列の生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、そのような特性を有する可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質の生殖系タンパク質配列を含む。
本発明の態様は、未対形成システインを含まない可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含む。
本発明の態様は、相補性決定領域に4つ以下の翻訳後修飾を含むか、相補性決定領域に3つ以下の翻訳後修飾を含むか、相補性決定領域に2つ以下の翻訳後修飾を含むか、相補性決定領域に1つ以下の翻訳後修飾を含むか、又は相補性決定領域に翻訳後修飾を含まない可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含む。
本発明の態様は、少なくとも7.5の、少なくとも8.0の、少なくとも8.5の、少なくとも9の、又は少なくとも9.5の等電点を含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列に由来する合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含む。
本発明の態様は、可変重鎖及び/又は可変軽鎖フレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記フレームワーク領域は、以下の特性の1つ又は複数を含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列を含む:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、以下の特性の少なくとも2つを含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列を含む:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、以下の特性の少なくとも4つを含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列を含む:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、以下の特性の少なくとも4つを含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列を含む:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、以下の特性の少なくとも5つを含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列を含む:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、以下の特性を含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列を含む:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、及びvi)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、前記フレームワーク領域は、以下の特性の1つ又は複数を含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列から本質的になる:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片は、以下の特性の1つ又は複数を含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列から本質的になる:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、前記フレームワーク領域は、以下の特性の1つ又は複数を含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列からなる:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片は、以下の特性の1つ又は複数を含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列からなる:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態では、コレクションの合成抗体又はそれらの機能的断片の大多数又は実質的に全ては、以下の特性の1つ又は複数を含む可変重鎖及び/又は可変軽鎖生殖系タンパク質配列を含む:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記フレームワーク領域は、生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質配列は、以下の特性を含む:i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、及びv)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態は、可変重鎖及び可変軽鎖のフレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記フレームワーク領域は、生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質配列は、以下の特性を含む:i)未対形成システインが1つ以下であること。
幾つかの実施形態は、可変重鎖及び可変軽鎖のフレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記フレームワーク領域は、生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質配列は、以下の特性を含む:i)未対形成システインが1つ以下であること、ii)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること。
幾つかの実施形態は、可変重鎖及び可変軽鎖のフレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記フレームワーク領域は、生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質配列は、以下の特性を含む:i)未対形成システインが1つ以下であること、ii)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、及びiii)等電点が少なくとも7.5であること。
幾つかの実施形態は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記フレームワーク領域は、生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質配列は、以下の特性を含む:i)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、ii)未対形成システインが1つ以下であること、iii)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、及びiv)等電点が少なくとも7.5であること。
本発明の追加的な態様は、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片の特定に有用なコレクションの能力である。1つ又は複数の可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列を有するコレクションを生成することにより、コレクション内で、特にCDRの長さ及び立体構造又は基準構造において多様性が生成されることになり、従ってコレクションを、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片の特定に有用にすることができる。
本発明の実施形態は、以下の特性、i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であることを含む少なくとも2つの異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも3個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも4個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも5個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも6個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも7個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも8個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも9個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも10個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも11個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも12個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも13個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも14個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも15個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも16個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも17個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも18個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも19個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列、又は少なくとも20の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの機能的断片を含むコレクションを含む。
本発明の実施形態は、以下の特性、i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であることを含む少なくとも2個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも3個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも4個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも5個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも6個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも7個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも8個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも9個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも10個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも11個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも12個の異なる可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの機能的断片を含むコレクションを含む。
本発明の実施形態は、以下の特性、i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、iii)未対形成システインが1つ以下であること、iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、v)凝集傾向が中程度又は低いこと、又はvi)等電点が少なくとも7.5であることを含む少なくとも2個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも3個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも4個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも5個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも6個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも7個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列、少なくとも8個の異なる可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの機能的断片を含むコレクションを含む。
幾つかの実施形態では、コレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片を含み、前記フレームワーク領域は、以下のものからなる群から選択される1つ又は複数の可変重鎖生殖系タンパク質配列を含む:IGHV1−2、IGHV1−18、IGHV1−69、IGHV1−46、IGHV3−7、IGHV3−11、IGHV3−15、IGHV3−21、IGHV3−23、IGHV3−30、IGHV3−33、IGHV3−48、IGHV3−53、IGHV3−73、IGH3−74、IGHV4−4、IGHV4−31、IGHV4−39、IGHV5−51、及びIGHV6−1。
幾つかの実施形態では、コレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片を含み、前記フレームワーク領域は、以下のものからなる群から選択される1つ又は複数の可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列を含む:IGKV1−5、IGKV1−6、IGKV1−9、IGKV1−12、IGKV1−16、IGKV1−17、IGKV1−27、IGKV1−39、IGKV2−30、IGKV3−11、IGKV3−15、及びIGKV3−20。
幾つかの実施形態では、コレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片を含み、前記フレームワーク領域は、以下のものからなる群から選択される1つ又は複数の可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列を含む:IGLV1−40、IGLV1−47、IGLV1−51、IGLV2−11、IGLV2−23、IGLV2−14、IGLV3−1、及びIGLV3−21。
幾つかの実施形態では、本発明は、以下のものからなる群から選択される生殖系タンパク質配列を含むFR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3を含む単離された抗体又はその機能的断片を含む:IGHV1−2、IGHV1−18、IGHV1−69、IGHV1−46、IGHV3−7、IGHV3−11、IGHV3−15、IGHV3−21、IGHV3−23、IGHV3−30、IGHV3−33、IGHV3−48、IGHV3−53、IGHV3−73、IGH3−74、IGHV4−4、IGHV4−31、IGHV4−39、IGHV5−51、IGHV6−1、IGKV1−5、IGKV1−6、IGKV1−9、IGKV1−12、IGKV1−16、IGKV1−17、IGKV1−27、IGKV1−39、IGKV2−30、IGKV3−11、IGKV3−15、IGKV3−20、IGLV1−40、IGLV1−47、IGLV1−51、IGLV2−11、IGLV2−23、IGLV2−14、IGLV3−1、及びIGLV3−21。
好ましい生物物理学的特性を有する生殖系遺伝子対
ヒト免疫レパートリーには約2500対が存在するため、次のステップとして、どの生殖系タンパク質対を試験すべきかを決定しなければならなかった。1つに方法は、ヒト免疫レパートリーで最も顕著に生じる可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対を試験することであろう。例えば、表18を参照されたい。例えば、試験用に上位400対を選択してもよく、又はある閾値濃度を超えて発現された可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対を選択してもよい。従って、本発明の態様は、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを産生する方法であって、産生ステップが、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.05%の濃度で発現される可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対を特定するステップと、特定された生殖系タンパク質対を含む抗体又はそれらの機能的断片を生成するステップと、前記生殖系タンパク質対の以下の特性を評価するステップとを更に含む方法を含む:i)Fab型の相対的提示率、ii)Fab型の発現レベル;iii)Fab型の熱安定性が60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベル、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
この手法では、多数の可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対配列の合成及び試験が必要とされることになり、従って、そのような手法は、あまり効率的ではないだろう。
代替的な手法として、本発明者らは、ヒト免疫レパートリーから顕著に発現される対の大多数を代表するか、正確に再現するか、又は包含する可変重鎖及び可変軽鎖生殖系対のサブセットを選択した。この手法は、少数の可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系遺伝子が、ヒト免疫レパートリーにおいて優勢であるという観察に、部分的に基づいていた。この現象は、Wildtらの895〜896頁に記述されている。Wildtらは、高頻度に発現される重鎖及び軽鎖遺伝子セグメントが対を形成することが多いということも述べており、サンプリングされた対形成体の半分は、わずか5つの生殖系対に対応するに過ぎないことも観察された。従って、少数の顕著に発現される重鎖及び軽鎖生殖系遺伝子(未対形成)を組み合わせて、ヒト免疫レパートリーを代表する一群の対を生成することができる。
従って、本発明の態様は、ヒト免疫レパートリー又は未感作ヒト免疫レパートリーの顕著に発現される可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対の大多数を代表するか、正確に再現するか、又は包含する生殖系タンパク質対を含む抗体又はそれらの断片のコレクションを含む。下述されているように、本発明者らの手法は、好ましい生物物理学的特性に関して可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対を最初に試験し、その後これら好ましい生物物理学的特性の1つ又は複数を含む生殖系タンパク質対が含まれるようにコレクションを設計するため、十分に開発可能な抗体又はそれらの断片を含むコレクションに結び付く。
本発明の態様は、抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを産生する方法であって、以下の特性の1つ又は複数を含む可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対を特定するステップを含む方法を含む:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab pMx11_FHVH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して、少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの態様では、本発明は、抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを産生する方法であって、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを生成することを含み、前記1つ又は複数のフレームワーク領域が、生殖系タンパク質配列対の生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質対が、1つ又は複数の以下の特性を含む方法を含む:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。幾つかの実施形態では、FR1、FR2、及びFR3領域は、生殖系タンパク質配列を含む。
幾つかの実施形態では、FR1、FR2、及びFR3領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質配列を含む1つ又は複数の相補性決定領域を含む。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む1つ又は複数の相補性決定領域を含む。幾つかの実施形態では、CDR1及びCDR2領域は、生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、CDR1及びCDR2領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、FR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3領域は、生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、FR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、FR4領域は、JH4重鎖領域を含む。幾つかの実施形態では、FR4領域は、Jκ1軽鎖領域を含む。幾つかの実施形態では、FR4領域は、Jλ2/3軽鎖領域を含む。
他の実施形態では、本発明は、抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを産生する方法であって、コレクションを生成することを含み、生成が、抗体又はそれらの機能的断片をコードする核酸を合成するステップと、核酸をベクターにクローニングするステップと、抗体又はそれらの機能的断片を発現させるステップとを更に含む方法を含む。
可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対の顕著に発現される又は代表的な群が合成及び試験されれば、好ましい生物物理学的特性を含む生殖系タンパク質対を含むようにコレクションを設計することができる。
本発明の態様は、以下の特性:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であることのうちの1つ又は複数を含む生殖系タンパク質対に由来する合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、そのような特性を有する生殖系タンパク質対に由来する。
本発明の態様は、以下の特性:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であることのうちの1つ又は複数を含む生殖系タンパク質対の実質的生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、そのような特性を有する生殖系タンパク質対の実質的生殖系タンパク質配列を含む。
本発明の態様は、以下の特性:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であることのうちの1つ又は複数を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片のフレームワーク領域及び/又は相補性決定領域の1つ又は複数は、そのような特性を有する生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。
幾つかの態様では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、フレームワーク領域は、以下の特性の1つ又は複数を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含むフレームワーク領域は、FR1、FR2、及びFR3領域を含む。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質配列を含む1つ又は複数の相補性決定領域を含む。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む1つ又は複数の相補性決定領域を含む。幾つかの実施形態では、CDR1及びCDR2領域は、生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、CDR1及びCDR2領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、FR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3領域は、生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、FR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、FR4領域は、JH4重鎖領域を含む。幾つかの実施形態では、FR4領域は、Jκ1軽鎖領域を含む。幾つかの実施形態では、FR4領域は、Jλ2/3軽鎖領域を含む。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、フレームワーク領域は、以下の特性の少なくとも2つを含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、フレームワーク領域は、以下の特性の少なくとも3つを含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、フレームワーク領域は、以下の特性の少なくとも4つを含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、フレームワーク領域は、以下の特性の少なくとも5つを含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、フレームワーク領域は、以下の特性を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、フレームワーク領域は、以下の特性の1つ又は複数を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列から本質的になる:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、以下の特性の1つ又は複数を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列から本質的になる:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、フレームワーク領域は、以下の特性の1つ又は複数を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列からなる:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、以下の特性の1つ又は複数を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列からなる:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、コレクションの抗体又はそれらの機能的断片の大多数又は実質的に全ては、以下の特性の1つ又は複数を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの態様では、コレクションの抗体又はそれらの機能的断片は、以下の特性の1つ又は複数を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、以下の特性を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列から本質的になる:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、以下の特性を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列からなる:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、前記可変重鎖フレームワーク領域及び可変軽鎖フレームワーク領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質対は、以下の特性を含む:i)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、及びii)IgG型の血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、前記可変重鎖フレームワーク領域及び可変軽鎖フレームワーク領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質対は、以下の特性を含む:i)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、ii)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、及びiii)IgG型の血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、前記可変重鎖フレームワーク領域及び可変軽鎖フレームワーク領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質対は、以下の特性を含む:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iii)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、及びiv)IgG型の血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、前記可変重鎖フレームワーク領域及び可変軽鎖フレームワーク領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質対は、以下の特性を含む:i)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、ii)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、iii)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、iv)IgG型の発現レベルが、MOR003080と比較して少なくとも0.4であること、及びv)IgG型の血清安定性が37℃にて14日間であること。
他の実施形態では、本発明のコレクションは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記可変重鎖フレームワーク領域及び可変軽鎖フレームワーク領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質対は、以下の特性を含む:i)Fab型の熱安定性が、60℃以上にて少なくとも45分間であること、ii)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、iii)IgG型の発現レベルが、MOR003080と比較して少なくとも0.4であること、及びiv)IgG型の血清安定性が37℃にて14日間であること。
他の実施形態では、本発明のコレクション及び/又はそのようなコレクションを産生する方法は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片を含み、前記フレームワーク領域は、対照と比較して少なくとも0.1の、対照と比較して少なくとも0.2の、対照と比較して少なくとも0.3の、対照と比較して少なくとも0.4の、対照と比較して少なくとも0.5の、対照と比較して少なくとも0.6の、対照と比較して少なくとも0.7の、対照と比較して少なくとも0.8の、対照と比較して少なくとも0.9の、対照と比較して少なくとも1.0の、対照と比較して少なくとも1.1の、対照と比較して少なくとも1.2の、対照と比較して少なくとも1.3の、対照と比較して少なくとも1.4の、対照と比較して少なくとも1.5の、対照と比較して少なくとも1.6の、対照と比較して少なくとも1.7の、対照と比較して少なくとも1.8の、対照と比較して少なくとも1.9の、対照と比較して少なくとも2.0の、対照と比較して少なくとも2.1の、対照と比較して少なくとも2.2の、対照と比較して少なくとも2.3の、対照と比較して少なくとも2.4の、対照と比較して少なくとも2.5の、対照と比較して少なくとも2.6の、対照と比較して少なくとも2.7の、対照と比較して少なくとも2.8の、対照と比較して少なくとも2.9の、対照と比較して少なくとも3.0の、対照と比較して少なくとも3.2の、対照と比較して少なくとも3.3の、対照と比較して少なくとも3.4の、対照と比較して少なくとも3.5の、対照と比較して少なくとも3.6の、対照と比較して少なくとも3.7の、対照と比較して少なくとも3.8の、対照と比較して少なくとも4.1の、対照と比較して少なくとも4.3の、対照と比較して少なくとも4.4の、対照と比較して少なくとも4.5の、対照と比較して少なくとも4.6の、対照と比較して少なくとも4.7の、対照と比較して少なくとも5.0の、対照と比較して少なくとも5.1の、対照と比較して少なくとも5.2の、対照と比較して少なくとも5.4の、対照と比較して少なくとも5.5の、対照と比較して少なくとも5.7の、対照と比較して少なくとも5.9の、対照と比較して少なくとも6.0の、対照と比較して少なくとも6.1の、対照と比較して少なくとも6.3の、対照と比較して少なくとも6.4の、対照と比較して少なくとも6.7の、対照と比較して少なくとも6.9の、対照と比較して少なくとも7.0の、対照と比較して少なくとも7.1の、対照と比較して少なくとも7.2の、対照と比較して少なくとも7.3の、対照と比較して少なくとも7.4の、対照と比較して少なくとも8.1の、対照と比較して少なくとも8.2の、対照と比較して少なくとも8.3の、対照と比較して少なくとも8.4の、対照と比較して少なくとも8.5の、対照と比較して少なくとも8.6の、対照と比較して少なくとも8.7の、対照と比較して少なくとも8.8の、対照と比較して少なくとも8.9の、対照と比較して少なくとも9.1の、対照と比較して少なくとも9.2の、対照と比較して少なくとも9.3の、対照と比較して少なくとも9.4の、対照と比較して少なくとも9.5の、対照と比較して少なくとも9.7の、対照と比較して少なくとも9.8の、対照と比較して少なくとも10.0の、対照と比較して少なくとも10.2の、対照と比較して少なくとも10.3の、対照と比較して少なくとも10.5の、対照と比較して少なくとも10.6の、対照と比較して少なくとも10.7の、対照と比較して少なくとも10.8の、対照と比較して少なくとも11.0の、対照と比較して少なくとも11.2の、対照と比較して少なくとも11.3の、対照と比較して少なくとも11.5の、対照と比較して少なくとも11.7の、対照と比較して少なくとも11.8の、対照と比較して少なくとも12.1の、対照と比較して少なくとも12.3の、対照と比較して少なくとも12.4の、対照と比較して少なくとも12.9の、対照と比較して少なくとも13.0の、対照と比較して少なくとも13.6の、対照と比較して少なくとも14.4の、対照と比較して少なくとも14.5の、対照と比較して少なくとも16.1の、対照と比較して少なくとも16.6の、対照と比較して少なくとも16.7の、対照と比較して少なくとも17.1の、対照と比較して少なくとも19.4の、対照と比較して少なくとも27.3の、又は対照と比較して少なくとも29.0のFab型の相対的提示率を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。
幾つかの実施形態では、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、前記可変重鎖フレームワーク領域及び可変軽鎖フレームワーク領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質対は、サンプリングしたFabの上位10%以内の値、サンプリングしたFabの上位15%以内の値、サンプリングしたFabの上位20%以内の値、サンプリングしたFabの上位25%以内の値、サンプリングしたFabの上位30%以内の値、サンプリングしたFabの上位35%以内の値、サンプリングしたFabの上位40%以内の値、サンプリングしたFabの上位45%以内の値、サンプリングしたFabの上位50%以内の値、サンプリングしたFabの上位55%以内の値、サンプリングしたFabの上位60%以内の値、サンプリングしたFabの上位65%以内の値、サンプリングしたFabの上位70%以内の値、サンプリングしたFabの上位75%以内の値、サンプリングしたFabの上位80%以内の値、サンプリングしたFabの上位85%以内の値、又はサンプリングしたFabの上位90%以内の値を含むFab型の相対的提示率を含む。
他の実施形態では、本発明のコレクション及び/又はそのようなコレクションを産生する方法は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片を含み、前記フレームワーク領域は、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.1の、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.2の、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.3の、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4の、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.5の、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.6の、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.7の、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.8の、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.9の、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも1.0の、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも1.1の、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも1.2の、又はFab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも1.3の、Fab型の相対的発現レベルを含む。
他の実施形態では、本発明のコレクション及び/又はそのようなコレクションを産生する方法は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片を含み、前記フレームワーク領域は、70℃以上にて少なくとも45分間のFab型の熱安定性、又は80℃以上にて少なくとも45分間のFab型の熱安定性を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。
他の実施形態では、本発明のコレクション及び/又はそのようなコレクションを産生する方法は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片を含み、前記フレームワーク領域は、MOR03080と比較して少なくとも0.1の、MOR03080と比較して少なくとも0.2の、MOR03080と比較して少なくとも0.3の、MOR03080と比較して少なくとも0.4の、MOR03080と比較して少なくとも0.5の、MOR03080と比較して少なくとも0.6の、MOR03080と比較して少なくとも0.7の、MOR03080と比較して少なくとも0.8の、MOR03080と比較して少なくとも0.9の、MOR03080と比較して少なくとも1.0の、MOR03080と比較して少なくとも1.1の、MOR03080と比較して少なくとも1.2の、MOR03080と比較して少なくとも1.3の、MOR03080と比較して少なくとも1.4の、MOR03080と比較して少なくとも1.5の、MOR03080と比較して少なくとも1.6の、MOR03080と比較して少なくとも1.7の、MOR03080と比較して少なくとも1.8の、MOR03080と比較して少なくとも1.9のIgG型の相対的発現レベルを含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。
ある態様では、本発明は、生殖系タンパク質配列、実質的生殖系配列、又は生殖系タンパク質配列に由来する配列を含む1つ又は複数の相補性決定領域を含む抗体又はそれらの機能的断片のコレクション、及び該コレクションを産生又は使用する方法を含む。ある実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質配列を含むCDR1及びCDR2を含む。ある実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含むCDR1及びCDR2を含む。
幾つかの態様では、1つ又は複数のフレームワーク領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの態様でのように、FR4は、JH4、Jκ1、及びJλ2/3からなる群から選択される。図45A〜47Bで示されているように、生殖系タンパク質配列は、FR1〜FR3のみを含む。従って、ある態様では、前記可変重鎖フレームワーク領域及び可変軽鎖フレームワーク領域が、生殖系タンパク質配列を含む場合、FR1、FR2、及び/又はFR3は、生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの態様では、1つ又は複数のフレームワーク領域は、生殖系タンパク質配列を含み、1つ又は複数の相補性決定領域の多様化を可能にする。幾つかの実施形態では、本発明は、多様化されたHCDR3領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクション、及び前記コレクションを産生及び製作する方法を含む。幾つかの実施形態では、本発明は、多様化されたLCDR3領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクション、及び前記コレクションを産生及び使用する方法を含む。
本発明の追加的な態様は、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片の特定に有用なコレクションの能力である。上記の機能的特性を含む少なくとも2つの可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対を有するコレクションを生成することにより、コレクション内、特にコレクションの抗体の相補性決定領域内に、立体構造又は基準構造中のCDRの長さ及び多様性の点で多様性が提供されるだろうと考えられた。これは、本発明のコレクションが、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片の特定に有用になることを可能にする。
本発明の幾つかの態様は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片を含むコレクションを含み、前記フレームワーク領域が、以下の特性:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が60℃にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であることを含む生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列を含み、前記コレクションが、少なくとも2個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも3個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも4個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも5個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも6個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも7個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも8個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも9個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも10個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも11個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも12個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも13個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも14個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも15個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも16個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも17個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも18個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも19個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも20個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも21個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも22個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも23個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも24個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも25個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも26個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも27個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも28個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質、少なくとも29個の異なる生殖系タンパク質対配列、少なくとも30個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも31個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも32個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも33個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも34個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも35個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも36個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも37個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも38個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも39個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも40個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも41個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも42個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも43個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも44個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質、少なくとも45個の異なる生殖系タンパク質配列対、少なくとも46個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも47個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも48個の異なる生殖系タンパク質対、少なくとも49個の異なる生殖系タンパク質対、又は少なくとも50個の異なる生殖系タンパク質対を含む抗体又はそれらの機能的断片を含むコレクションを含む。
生殖系遺伝子配列を含む抗体又はそれらの機能的断片
加えて、生殖系タンパク質配列を使用することにより、患者に投与した際に抗体の免疫原性リスクが低下されるはずであることが考えられた。従って、本発明の態様は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含み、前記フレームワーク領域が生殖系タンパク質配列を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクション、及び前記コレクションを産生及び使用する方法を含む。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片の可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、実質的生殖系配列を含む。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片の可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、生殖系配列に由来する。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質配列、実質的生殖系配列を含むか、又は生殖系タンパク質配列に由来するFR1、FR2、FR3、及びFR4領域を含む。ある実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含むFR1、FR2、及びFR3を含む。幾つかの実施形態では、使用されるFR4領域は、可変重鎖についてはJH4、可変κ軽鎖についてはJκ1、及び可変λ軽鎖についてはJλ2/3である。
また、生殖系タンパク質配列を使用することにより、患者に投与した際に抗体の免疫原性リスクが低下されるはずであるため、本発明のある態様は、生殖系タンパク質配列、実質的生殖系配列を含むか、又は生殖系タンパク質配列に由来する1つ又は複数の相補性決定領域を含む抗体又はそれらの機能的断片のコレクション、及び該コレクションを産生又は使用する方法を含む。ある実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質配列を含むCDR1及びCDR2を含む。ある実施形態では、抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含むCDR1及びCDR2を含む。
幾つかの態様では、1つ又は複数のフレームワーク領域は、生殖系タンパク質配列を含み、1つ又は複数の相補性決定領域の多様化を可能にする。幾つかの実施形態では、本発明は、多様化されたHCDR3領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクション、及び前記コレクションを産生及び製作する方法を含む。幾つかの実施形態では、本発明は、多様化されたLCDR3領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクション、及び前記コレクションを産生及び使用する方法を含む。CDRは、Knappikら、2000年、国際公開第97/08320号、国際公開第2008053275号、国際公開第2009036379号、国際公開第2007056441号、国際公開第2009114815号に記述されているものを含む、当技術分野で周知の方法により設計することができ、これら文献は全て、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
加えて、免疫原性のリスクが低い抗体又はそれらの機能的断片を含むコレクションを生成するために、ある態様では、本発明のコレクション及びそれを産生及び使用する方法は、ヒト配列を含む抗体又はそれらの機能的断片を含む。
幾つかの態様では、本発明のコレクションは、少なくとも1×104個、少なくとも1×105個、少なくとも1×106個、少なくとも1×107個、少なくとも1×108個、少なくとも1×109個、少なくとも1×1010個、又は少なくとも1×1011個の、抗体若しくはそれらの機能的断片をコードする核酸配列、又は抗体もしくはそれらの機能的断片を含む。
幾つかの態様では、コレクションの抗体又はそれらの機能的断片は、合成である。
幾つかの態様では、コレクションは、抗体又はそれらの機能的断片をコードする核酸を含む。
本発明の追加的実施形態
幾つかの態様では、本発明は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記可変重鎖フレームワーク領域及び可変軽鎖フレームワーク領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、
前記生殖系タンパク質対は、以下の特性:
i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、
ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、
iii)Fab型の熱安定性が60℃にて少なくとも45分間であること、
iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、
v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及び
vi)IgG型の血清安定性が37℃にて14日間であることを含み、
前記抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、少なくとも2個の異なる生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、前記生殖系タンパク質対は、生殖系遺伝子対によりコードされている。
幾つかの実施形態では、本発明は、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、以下の特性を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列から本質的になる:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、
ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、
iii)Fab型の熱安定性が60℃以上にて少なくとも45分間であること、
iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、
v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、本発明は、合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、前記可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、以下の特性を含む生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列からなる:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、
ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、
iii)Fab型の熱安定性が60℃以上にて少なくとも45分間であること、
iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、
v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及び
vi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であること。
幾つかの実施形態では、前記生殖系遺伝子対は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.05%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記生殖系遺伝子対は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.23%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記生殖系遺伝子対は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.51%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記生殖系遺伝子対は、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.07%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記生殖系遺伝子対は、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.52%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記生殖系遺伝子対は、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.88%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、ヒト配列を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、少なくとも17個の異なる生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。
幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質配列を含む1つ又は複数の相補性決定領域を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質配列を含むFR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3領域を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、JH4、Jκ1、及びJλ2/3からなる群から選択されるFR4領域を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、多様化されたHCDR3領域を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、多様化されたLCDR3領域を含む。
幾つかの実施形態では、コレクションは、1×104個の抗体又はそれらの機能的断片を含む。幾つかの実施形態では、前記生殖系タンパク質対は、サンプリングしたFabの上位60%以内の値を含むFab型の相対的提示率を含む。幾つかの実施形態では、前記生殖系タンパク質対は、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して、少なくとも0.6のFab型の発現レベルを含む。幾つかの実施形態では、前記生殖系タンパク質対は、70℃以上にて少なくとも45分間のFab型の熱安定性を含む。幾つかの実施形態では、前記生殖系タンパク質対は、MOR03080と比較して、少なくとも0.6のIgG型の発現レベルを含む。
幾つかの実施形態では、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、以下のものからなる群から選択される生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む:IGHV3−23/IGKV1−5、IGHV3−23/IGKV3−20、IGHV4−39/IGKV3−15、IGHV3−23/IGKV3−15、IGHV4−39/IGKV1−39/1D−39、IGHV1−18/IGKV3−20、IGHV3−30/IGKV3−20、IGHV4−39/IGKV1−5、IGHV1−69/IGKV1−39/1D−39、IGHV5−51/IGLV1−40、IGHV4−39/IGKV3−20、IGHV3−23/IGLV2−14、IGHV4−39/IGLV3−21、IGHV3−23/IGKV1−39/1D−39、IGHV3−30/IGKV1−39/1D−39、IGHV1−69/IGKV3−20、IGHV3−48/IGKV3−20、IGHV1−2/IGKV3−20、IGHV3−30/IGKV4−1、IGHV5−51/IGLV2−14、IGHV5−51/IGKV3−20、IGHV3−7/IGKV1−39/1D−39、IGHV3−7/IGKV1−5、IGHV3−15/IGKV3−20、IGHV4−39/IGLV2−14、IGHV3−23/IGKV3−11、IGHV3−30/IGKV1−5、IGHV3−30/IGKV3−15、IGHV3−21/IGKV1−5、IGHV3−21/IGKV3−15、IGHV3−30/IGLV1−51、IGHV3−21/IGLV1−51、及びIGHV1−69/IGKV3−11。
幾つかの実施形態では、前記抗体の前記機能的断片は、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、及びscFvからなる群から選択される。
幾つかの態様では、本発明は、開示された抗体のコレクションをコードする核酸のコレクションを含む。幾つかの態様では、本発明は、開示された抗体のコレクションをコードする核酸を含むベクターを含む。幾つかの態様では、本発明は、開示された抗体のコレクションをコードする核酸を含む組換え宿主細胞を含む。幾つかの実施形態では、組換え宿主細胞は、原核生物又は真核生物である。幾つかの実施形態では、組換え宿主細胞は、大腸菌又は哺乳動物である。
幾つかの態様では、本発明は、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを含み、
前記フレームワーク領域は、生殖系タンパク質配列を含み、
前記生殖系タンパク質配列は、以下の特性:
i)相補性決定領域における翻訳後修飾が4つ以下であること、
ii)相補性決定領域におけるメチオニンが2つ以下であること、
iii)未対形成システインが1つ以下であること、
iv)潜在的なT細胞エピトープが1つ以下であること、
v)凝集傾向が中程度又は低いこと、及び
vi)等電点が少なくとも7.5であることを含み、
前記抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、少なくとも2個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列を含み、
前記生殖系タンパク質配列は、生殖系遺伝子配列によりコードされている。
幾つかの実施形態では、前記可変重鎖又は可変軽鎖生殖系遺伝子配列は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.5%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、少なくとも5個の異なる可変重鎖生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、ヒト配列を含む。幾つかの実施形態では、前記可変重鎖又は可変軽鎖生殖系遺伝子配列は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも5.0%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質配列を含む1つ又は複数の相補性決定領域を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質配列を含むFR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、JH4、Jκ1、及びJλ2/3からなる群から選択されるFR4領域を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、多様化されたHCDR3領域を更に含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、多様化されたLCDR3領域を更に含む。幾つかの実施形態では、コレクションは、1×104個の抗体又はそれらの機能的断片を含む。
幾つかの実施形態では、前記可変重鎖生殖系タンパク質配列は、以下のものからなる群から選択される:IGHV3−23、IGHV3−30、IGHV4−39、IGHV4−34、IGHV4−59、IGHV1−69、IGHV5−51、IGHV3−7、IGHV1−18、IGHV3−48、IGHV3−15、IGHV3−21、IGHV1−2、IGHV3−33、IGHV4−31、IGHV3−53、IGHV3−11、IGHV3−9、IGHV4−4、IGHV1−46、IGHV3−74、IGHV1−24、IGHV4−61、IGHV1−8、IGHV1−3、IGHV3−49、IGHV3−43、IGHV4−28、IGHV3−64、及びIGHV7−81。
幾つかの実施形態では、前記可変κ軽鎖生殖系タンパク質配列は、以下のものからなる群から選択される:IGKV3−20、IGKV1−39/1D−39、IGKV1−5、IGKV3−15、IGKV4−1、IGKV3−11、IGKV2−28/2D−28、IGKV1−33/1D−33、IGKV2−30、IGKV1−9、IGKV1−17、IGKV1−27、IGKV1−8、IGKV1−16、IGKV1−6、IGKV1−12、IGKV2D−29、IGKV1−13、IGKV1D−8、及びIGKV2−24。
幾つかの実施形態では、前記可変λ軽鎖生殖系タンパク質配列は、以下のものからなる群から選択される:IGLV2−14、IGLV1−40、IGLV1−44、IGLV1−51、IGLV2−23、IGLV3−21、IGLV1−47、IGLV3−1、IGLV2−11、IGLV2−8、IGLV6−57、IGLV3−25、IGLV7−46、IGLV1−36、IGLV7−43、IGLV9−49、IGLV4−69、IGLV2−18、IGLV3−10、及びIGLV3−27。
幾つかの態様では、本発明は、開示された合成抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを産生する方法を含む。幾つかの実施形態では、産生ステップは、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを生成することを更に含み、
前記可変重鎖フレームワーク領域及び可変軽鎖フレームワーク領域は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、
前記生殖系タンパク質対は、以下の特性:
i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、
ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、
iii)Fab型の熱安定性が60℃にて少なくとも45分間であること、
iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、
v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及び
vi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であることを含み、
前記抗体又はそれらの機能的断片のコレクションは、少なくとも2個の異なる生殖系タンパク質対を含む。
幾つかの実施形態では、産生ステップは、
a)ヒト免疫レパートリーに存在する可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対を含むデータを取得するステップと、
b)以下の特性:
i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、
ii)Fab型の発現レベルが、Fab pMx11_FH VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、
iii)Fab型の熱安定性が60℃にて少なくとも45分間であること、
iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、
v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及び
vi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であることを含む可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対を特定するステップと、
c)ステップb)で特定された生殖系タンパク質対の可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを生成するステップとを更に含む。
幾つかの実施形態では、ステップb)は、
ba)ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.05%の濃度で存在する可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対を特定するステップと、
bb)ステップba)で特定された生殖系タンパク質対を含む抗体又はそれらの機能的断片を生成するステップと、
bc)前記生殖系タンパク質対の以下の特性:
i)Fab型の相対的提示率、
ii)Fab型の発現レベル、
iii)60℃以上でのFab型の熱安定性、
iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、
v)IgG型の発現レベル、及び
vi)IgG型のウシ血清安定性が37℃にて14日間であることを評価するステップとを更に含む。
幾つかの実施形態では、ステップa)は、以下のステップ:
aa)試料からヒトB細胞を単離するステップ、
ab)B細胞由来のcDNAを生成するステップ、
ac)B細胞由来のcDNAをPCR増幅するステップ、
ad)PCR産物を配列決定するステップ、
ae)各PCR産物の生殖系遺伝子を特定するステップを更に含む。
幾つかの実施形態では、コレクションを生成するステップは、以下のステップ:
ca)抗体又はそれらの機能的断片をコードする核酸を合成するステップ、
cb)核酸をベクターにクローニングするステップ、
cc)抗体又はそれらの機能的断片を発現させるステップを更に含む。
幾つかの実施形態では、前記生殖系遺伝子対は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.05%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記生殖系遺伝子対は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.23%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では前記生殖系遺伝子対は、ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.51%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記生殖系遺伝子対は、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.07%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記生殖系遺伝子対は、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.52%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記生殖系遺伝子対は、未感作ヒト免疫レパートリー中少なくとも0.88%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、ヒト配列を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、少なくとも17個の異なる生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質配列を含む1つ又は複数の相補性決定領域を含む。
幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、生殖系タンパク質配列を含むFR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、JH4、Jκ1、及びJλ2/3からなる群から選択されるFR4領域を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、多様化されたHCDR3領域を含む。幾つかの実施形態では、前記抗体又はそれらの機能的断片は、多様化されたLCDR3領域を含む。幾つかの実施形態では、コレクションは、1×104個の抗体又はそれらの機能的断片を含む。
幾つかの実施形態では、前記生殖系タンパク質対は、サンプリングされたFabの上位60%以内の値を含むFab型の相対的提示率を含む。幾つかの実施形態では、前記生殖系タンパク質対は、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して、少なくとも0.6のFab型の発現レベルを含む。幾つかの実施形態では、前記生殖系タンパク質対は、70℃以上にて少なくとも45分間のFab型の熱安定性を含む。幾つかの実施形態では、前記生殖系タンパク質対は、MOR03080と比較して、少なくとも0.6のIgG型の発現レベルを含む。
幾つかの実施形態では、可変重鎖及び可変軽鎖フレームワーク領域は、以下のものからなる群から選択される生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含む:IGHV3−23/IGKV1−5、IGHV3−23/IGKV3−20、IGHV4−39/IGKV3−15、IGHV3−23/IGKV3−15、IGHV4−59/IGKV1−39/1D−39、IGHV4−39/IGKV1−39/1D−39、IGHV4−59/IGKV3−20、IGHV1−18/IGKV3−20、IGHV3−30/IGKV3−20、IGHV4−39/IGKV1−5、IGHV1−69/IGKV1−39/1D−39、IGHV5−51/IGLV1−40、IGHV3−23/IGKV4−1、IGHV4−39/IGKV3−20、IGHV3−23/IGLV2−14、IGHV4−39/IGLV3−21、IGHV3−23/IGKV1−39/1D−39、IGHV3−30/IGKV1−39/1D−39、IGHV3−30/IGKV3−11、IGHV1−69/IGKV3−20、IGHV3−48/IGKV3−20、IGHV1−2/IGKV3−20、IGHV3−30/IGKV4−1、IGHV5−51/IGLV2−14、IGHV4−59/IGKV4−1、IGHV5−51/IGKV3−20、IGHV3−7/IGKV1−39/1D−39、IGHV3−7/IGKV1−5、IGHV3−15/IGKV3−20、IGHV4−39/IGLV2−14、IGHV4−39/IGLV2−8、IGHV3−23/IGKV3−11、IGHV3−30/IGKV1−5、IGHV3−30/IGKV3−15、IGHV3−21/IGKV1−5、IGHV3−21/IGKV3−15、IGHV3−30/IGLV1−51、IGHV3−21/IGLV1−51、IGHV3−53/IGLV1−44、IGHV4−59/IGKV3−15、IGHV5−51/IGKV4−1、IGHV1−69/IGKV4−1、及びIGHV1−69/IGKV3−11。
幾つかの態様では、前記抗体の前記機能的断片は、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、及びscFvからなる群から選択される。
幾つかの態様では、本発明は、C末端制限部位を含むシグナル配列又はリーダー配列をコードする単離された核酸を含む。幾つかの実施形態では、制限部位はNheIである。幾つかの実施形態では、シグナル配列又はリーダー配列は、phoA又はヒト重鎖リーダー配列を含む。幾つかの実施形態では、制限部位はNdeIである。幾つかの実施形態では、シグナル配列は、ompA又はヒトカッパリーダー配列を含む。
幾つかの態様では、本発明は、C末端制限部位を含むシグナル配列又はリーダー配列をコードする核酸を含むベクターを含む。幾つかの態様では、本発明は、ベクターを含む宿主細胞を含む。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、原核生物又は真核生物である。幾つかの実施形態では、宿主細胞は大腸菌である。幾つかの実施形態では、宿主細胞は哺乳動物である。
幾つかの態様では、本発明は、生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含むFR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3を含む単離された抗体又はその機能的断片を含み、前記生殖系タンパク質対は、以下のものからなる群から選択される:IGHV3−23/IGKV1−5、IGHV3−23/IGKV3−20、IGHV4−39/IGKV3−15、IGHV3−23/IGKV3−15、IGHV4−39/IGKV1−39/1D−39、IGHV1−18/IGKV3−20、IGHV3−30/IGKV3−20、IGHV4−39/IGKV1−5、IGHV1−69/IGKV1−39/1D−39、IGHV5−51/IGLV1−40、IGHV4−39/IGKV3−20、IGHV3−23/IGLV2−14、IGHV4−39/IGLV3−21、IGHV3−23/IGKV1−39/1D−39、IGHV3−30/IGKV1−39/1D−39、IGHV1−69/IGKV3−20、IGHV3−48/IGKV3−20、IGHV1−2/IGKV3−20、IGHV3−30/IGKV4−1、IGHV5−51/IGLV2−14、IGHV5−51/IGKV3−20、IGHV3−7/IGKV1−39/1D−39、IGHV3−7/IGKV1−5、IGHV3−15/IGKV3−20、IGHV4−39/IGLV2−14、IGHV3−23/IGKV3−11、IGHV3−30/IGKV1−5、IGHV3−30/IGKV3−15、IGHV3−21/IGKV1−5、IGHV3−21/IGKV3−15、IGHV3−30/IGLV1−51、IGHV3−21/IGLV1−51、及びIGHV1−69/I。
1つの態様では、本開示は、生殖系配列を含む可変重鎖及び軽鎖フレームワーク領域、特にFR1を含む抗体のコレクションを記述する。生殖系フレームワーク領域を有することにより、患者に投与した際に、抗体の免疫原性リスクが低下されるはずであることが期待される。しかしながら、免疫原に対して抗体をスクリーニングすることができるように、ディスプレイベクター及び/又は発現ベクターへの、抗体のコレクションをコードする核酸の標準的クローニングを可能にするためには、制限部位を使用しなければならない。過去において、クローニング用に使用された制限部位は、フレームワーク領域内に配置されていたことが多く、従って核酸配列が修飾され生殖系と異なることになった。本開示の抗体の各々の少なくともフレームワーク1(FR1)領域が、生殖系配列を維持することを保証するために、FR1内には、いかなる非天然制限部位も存在するべきではない。従って、本開示の態様は、原核生物シグナル配列及びヒトリーダー配列のC末端内、特にC末端3残基内に制限部位を組み込むことである。加えて、制限部位を含むシグナル配列及びリーダー配列は、機能性であり、原核生物及び哺乳動物の両発現系において、抗体又はそれらの断片の良好な提示及び発現レベルを可能にしなければならない。
幾つかの態様では、本発明は、C末端制限部位を含むシグナル配列又はリーダー配列をコードする単離された核酸を含む。幾つかの実施形態では、制限部位は、NheI又はNdeIである。幾つかの実施形態では、シグナル配列又はリーダー配列は、phoA又はヒト重鎖リーダー配列を含む。幾つかの実施形態では、シグナル配列又はリーダー配列は、ompA又はヒトカッパリーダー配列を含む。幾つかの態様では、本発明は、C末端制限部位を含むシグナル配列又はリーダー配列をコードする単離された核酸を含むベクターを含む。幾つかの態様では、本発明は、C末端制限部位を含むシグナル配列又はリーダー配列をコードする単離された核酸を含む宿主細胞、又はC末端制限部位を含むシグナル配列又はリーダー配列をコードする単離された核酸を含むベクターを含む宿主細胞を含む。幾つかの実施形態では、従って、宿主細胞は、原核生物、例えば大腸菌、又は真核生物、例えば哺乳動物である。
本開示は、未感作ヒト免疫レパートリーに最も多く出現するVH及びVLクラス対が、より高い安定性及びより低い免疫原性等の好ましい特徴を有している可能性が高いという概念を初めて開示するものである。本開示は、初めてこの概念をコレクション設計に取り入れ、全遺伝子合成を使用して、そのようなコレクションを生成する。本開示は、未感作及び抗原経験済ヒト免疫のレパートリー中のVH及びVLクラス対を特定し、最も多く出現するVH及びVLクラス対を決定し、その後それらVH及びVLクラス対を含むコレクションを生成する方法を可能にする。より具体的には、本開示のコレクションは、高度に多様化されたCDRを有する最も多く出現する及び/又は好ましいVH及びVLクラス対形成体を含む。この戦略は、安定しており、免疫原性が低く、特定の抗原に対する親和性が高い、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの断片を、コレクションが含む確率を増加させる。その結果として、治療目的又は診断目的に使用することができる、任意の免疫原に対する高度に効果的な抗体又はそれらの断片をコレクションが含む確率が、劇的に増加される。
従って、ヒト宿主由来の未感作B細胞から得られる抗体又はそれらの断片をコードする核酸配列(又はその選択された部分)を配列決定することができる。これら配列データから、免疫レパートリーで代表的な生殖系ファミリーVH/VL鎖クラス対形成体を特定することができる。出現率及び/又は好ましい生物物理学的特性等の、ある基準に基づいて、重鎖及び軽鎖クラス対を、コレクションに組み込むために選択する。その後、遺伝子合成によりコレクションを合成することができる。幾つかの実施形態では、合成コレクションは、実質的生殖系VH及びVLフレームワーク領域を含み、複数のCDRが多様化されているか、又はVH及び/若しくはVLの1つのCDRのみが多様化されている。
本開示は、ヒト宿主の未感作B細胞から得られるDNA配列を「鋳型」として使用して、最も多く出現するVH及びVL対を特定する方法を可能にする。VH及びVLクラス対形成体の相対的存在量が解明されれば、最も多く出現する及び/又は好ましいVH及びVLクラス対形成体を含む抗体又はそれらの断片の高度に多様なコレクションを生成することができる。当業者であれば、この情報を使用して、最も多く出現する及び/又は好ましいVH及びVLクラス対の組み合わせに起因する重要な有益性を犠牲にすることなく、高度な多様性を生成することができる。本開示の以前には、最も多く出現する及び/又は好ましいVH及びVLクラス対形成体を解明した者も、又はその知見をライブラリー生成技術に応用することを試みた者もいない。従って、この手法は、未感作ヒト免疫系を代表する抗体又はそれらの断片をコードする核酸の包括的なコレクションを提供する。
本明細書で開示されたコレクション設計及び提示方法を使用して、幾つかの実施形態が少なくとも1×1010個のメンバーのコレクションを含むような、大きな多様性コレクションを生成することができる。
幾つかの態様では、本開示は、開示されている核酸のコレクションを含むベクター及び宿主細胞を可能にする。
幾つかの態様では、本開示は、そのようなコレクションを産生する方法を可能にする。
幾つかの実施形態では、ヒト免疫レパートリーを代表する未感作DNA配列は、別々のステップで取得され、データベースに格納され、従ってコレクション設計は、in silicoで容易に改変、最適化、及びカスタマイズすることができ、合成ライブラリーにおいて典型的に実現することができるレベルのカスタマイズが可能になる。
幾つかの態様では、本開示は、開示されているコレクションを使用して抗体又はそれらの断片を特定する方法を可能にする。
幾つかの態様では、本発明は、免疫レパートリーに豊富に存在する及び/又は好ましいVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子によりコードされた生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの断片をコードするコレクション又はライブラリーに関する。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの断片をコードする核酸は、生殖系であるか、実質的に生殖系であるか、又はそれらのコドン最適化変異体である。そのようなコレクション又はライブラリーは、ファージで高度に提示されること、大腸菌においてFab型で高度に発現されること、哺乳動物細胞においてIgG型で高度に発現されること、熱安定性が高いこと、血清安定性であること、凝集傾向が低いこと(つまり、溶解性が高いこと)、及び免疫原性のリスクが低いことを含む、有利な生物物理学的特性を有するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子を含むことができる。幾つかの実施形態では、コレクション又はライブラリーは、未感作ヒト免疫レパートリーに存在するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子を含むことができる。関連実施形態には、そのようなコレクションを製作及び使用する方法が含まれる。
幾つかの態様では、本発明は、免疫レパートリーに豊富に存在する及び/又は好ましいVH/VLクラス対と共に、免疫レパートリーに豊富に存在する及び/又は好ましいVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子によりコードされた生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの断片をコードするコレクション又はライブラリーに関する。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの断片をコードする核酸は、生殖系であるか、実質的に生殖系であるか、又はそれらのコドン最適化変異体である。そのようなコレクション又はライブラリーは、ファージで高度に提示されること、大腸菌においてFab型で高度に発現されること、哺乳動物細胞においてIgG型で高度に発現されること、熱安定性が高いこと、血清安定性であること、凝集傾向が低いこと(つまり、溶解性が高いこと)、及び免疫原性のリスクが低いことを含む、有利な生物物理学的特性を有するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子、及び/又はVH/VLクラス対によりコードされる生殖系タンパク質配列を含むことができる。幾つかの実施形態では、コレクション又はライブラリーは、未感作ヒト免疫レパートリーに存在するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子、及び/又はVH/VLクラス対によりコードされた生殖系タンパク質配列を含むことができる。関連実施形態には、そのようなコレクションを製作及び使用する方法が含まれる。
従って、本発明は、免疫レパートリーを実質的に代表する抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを含み、各抗体又はその断片は、VH/VLクラス対を含み、免疫レパートリーを実質的に代表するとは、コレクションに存在する各VH/VLクラス対が、免疫レパートリー中のVH/VLクラス対の少なくとも0.05%、少なくとも1%、又は少なくとも2%の濃度で存在するVH/VLクラス対であるということである。免疫レパートリーは、個体の免疫レパートリーであってもよく又は集団の免疫レパートリーであってもよく、未感作であってもよい。そのような免疫レパートリーは、例えば、個体に由来する少なくとも1×105個のB細胞中のVH/VLクラス対の、個体の集団に由来する少なくとも1×105個のB細胞中のVH/VLクラス対の、又は少なくとも1×105個の抗体に存在するVH/VLクラス対の免疫レパートリーとして決定されてもよい。免疫レパートリーは、未感作B細胞の、又は抗原未経験B細胞の免疫レパートリーであってもよい。個体又は集団は、ヒトであってもよい。免疫レパートリーは、公的に入手可能なデータベース及び/又は文献を分析することにより決定してもよい。
幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの断片をコードする核酸は、全遺伝子合成により生成される等の合成である。関連実施形態では、核酸は、生殖系配列、実質的生殖系配列、又は生殖系配列若しくは実質的生殖系配列のコドン最適化変異体である。幾つかの実施形態では、CDRの少なくとも1つは、高度に多様化されている。
幾つかの実施形態では、本開示のコレクションは、抗体又はそれらの断片を含み、VH及びVLの両方のFR1、FR2、及びFR3は、好ましい特徴を有するVH及びVLクラス対の生殖系タンパク質配列を含む。もっとも好ましくは、本開示のコレクションは、抗体又はそれらの断片を含み、VH及びVLの両方のFR1、FR2、及びFR3は、好ましい特徴を有するVH及びVLクラス対の生殖系タンパク質配列を含み、VH及びVLの両方のCDR3は、高度に多様化されている。
関連実施形態では、抗体又はそれらの断片をコードする前記核酸のコレクションは、ベクターにクローニングされる。好適なベクターは当技術分野で公知であり、ファージディスプレイベクター等のディスプレイベクター、プラスミドベクター、ファージミドベクター、細菌発現ベクター又は哺乳動物発現ベクターを含む発現ベクターが含まれる。更なる関連実施形態では、コレクション、又はベクターにクローニングされたコレクションは、宿主細胞に形質転換される。従って、本発明は、宿主細胞のコレクションを含む。好適な宿主細胞には、原核生物宿主細胞(大腸菌等)及び真核生物宿主細胞(哺乳動物宿主細胞等)が含まれる。
別の実施形態では、本発明は、約1345個の未感作ヒトB細胞に由来するVH/VLクラス対、又は読取可能な媒体にある公的に入手可能な配列に由来するVH/VLクラス対を含むデータベースである。そのようなデータベースは、本発明のコレクション及びライブラリーの設計及び構築に有用である。
本発明は、免疫レパートリーを実質的に代表する抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを産生する方法も含む。免疫レパートリーは、一人又は複数のヒトの未感作B細胞の免疫レパートリーであってもよく、又は一人若しくは複数のヒトの抗原経験済B細胞の免疫レパートリーであってもよい。そのような方法は、以下のステップを含んでいてもよい:(a)免疫レパートリーのVH/VLクラス対の少なくとも0.05%、少なくとも1%、又は少なくとも2%の濃度で存在するVH/VLクラス対を特定するステップ、(b)免疫レパートリーのVH/VLクラス対の少なくとも0.05%、少なくとも1%、又は少なくとも2%の濃度で存在するVH/VLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成するステップ。
特定ステップは、様々な方法で実施することができる。例えば、VH/VLクラス対の特定は、未感作B細胞を1つ又は複数のヒト宿主から単離すること、及びVH/VLクラス対をコードするDNA、mRNA、又はcDNAを単離及び配列決定することにより、又は各VH及びVLに対して特異的な1つ又は複数の核酸プローブで探索することにより、各B細胞のVH/VLクラス対を決定すること、及びその後VH/VLクラス対を分析することを含んでいてもよい。代替的又は補完的な実施形態では、VH/VLクラス対は、抗体配列のデータベース等の既存のデータベースから決定してもよい。代替的又は補完的な実施形態では、VH/VLクラス対は、文献から特定してもよい。従って、1つの実施形態では、本発明は、抗体核酸配列(既存でも又は新規生成でもよい)を取得すること、配列アラインメントによりVH/VLクラス対を決定すること、及びそのような配列を照合して免疫レパートリーに存在するVH/VLクラス対を特定することを含む。
幾つかの実施形態では、本方法は、大多数のメンバーが、抗体又はそれらの断片の産生及び発現(ファージで、又は細胞から等)を促進する好ましい生物物理学的特性を有するコレクションを生成し、可溶性で熱安定性の抗体を産生するために使用される。より詳しくは、そのような特性には、以下のものが含まれる:(i)ファージで効率的に提示されること、(ii)哺乳動物細胞で効率的に提示されること、(iii)大腸菌においてFab型で良好に発現されること、(iv)哺乳動物細胞においてIgG型で良好に発現されること、(v)熱安定性、(vi)溶解度、及び(vii)低免疫原性。これら特性の幾つか又は全てを有するVH/VLクラス対を決定することにより、その後、そのような特性を有するそれら核酸のみを合成すること等により、大多数のメンバーがそのような生物物理学的特性を有するコレクションを構築することができる。従って、本発明は、そのようなコレクション、及びそのようなコレクションを製作する方法を含む。
幾つかの実施形態では、合成された核酸は、生殖系であるか、実質的生殖系であるか、又はそれらのコドン最適化変異体である。変異は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)に導入することができる。あらゆるCDR、特にCDR3が適切である。好ましくは、CDRに付加された配列変異は、インフレームの配列に限定され、システイン及び終止コドンを含んでおらず、従ってライブラリーの全メンバーが正確に発現されることが保証される。
核酸が合成されれば、それらをベクター(ディスプレイベクター、ファージディスプレイベクター;ファージミドベクター;又は哺乳動物発現ベクター等)にクローニングすることができ、宿主細胞に形質転換することができる。好適な宿主細胞には、原核生物宿主細胞(例えば大腸菌)及び真核生物宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)が含まれる。
更なる実施形態では、本発明は、免疫原に特異的な抗体を特定する方法を提供する。そのような方法は1つの実施形態では、免疫レパートリーのVH/VLクラス対の少なくとも0.05%、少なくとも1%、又は少なくとも2%の濃度で存在するVH/VLクラス対を特定すること;免疫レパートリーのVH/VLクラス対の少なくとも0.05%、少なくとも1%、又は少なくとも2%の濃度で存在するVH/VLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成すること;コレクションに由来する抗体又はその断片を提示又は発現させること;特定の免疫原に対してコレクションをスクリーニングすること;及び前記免疫原に特異的な少なくとも1つの抗体又はその断片を選択することを含む。本発明の方法及びコレクションは、好ましい生物物理学的特性に関して構築することができるため、本発明は、そのような好ましい特性を有する抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを製作し、特定の免疫原に対してスクリーニングして、そのような免疫原に結合する抗体を特定することにより、疾患又は状態を治療するための抗体又はその抗体断片を特定するのに特に有用である。
幾つかの態様では、本発明は、VH/VL対を含む抗体又はそれらの断片のコレクション又はライブラリーに関する。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの断片のコレクション又はライブラリーは、免疫レパートリーに豊富に存在するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子によりコードされた生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、本発明は、ある好ましい生物物理学的特徴を有するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子によりコードされた生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの断片のコレクション又はライブラリーに関する。幾つかの実施形態では、VH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子は、免疫レパートリーにおいて天然で生じ、レパートリーにより豊富に存在するか又はより多く出現するものである。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの断片のコレクション又はライブラリーは、VH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子によりコードされた生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの断片のコレクション又はライブラリーは、生殖系の、実質的に生殖系の、又はコドン最適化されたVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子に由来するフレームワーク領域及び/又はCDR領域を含む。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの断片のコレクション又はライブラリーは、合成であり全遺伝子合成により構築されたVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子によりコードされた生殖系タンパク質配列を含む。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの断片のコレクション又はライブラリーは、合成であり全遺伝子合成により構築されたVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子の部分を含む。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの断片のコレクション又はライブラリーは、特に治療の状況において、抗体のスクリーンニング及び更なる開発を支援する好ましい生物物理学的特性を有するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子によりコードされた生殖系タンパク質配列を含む。好ましい生物物理学的特性には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:(i)それらは、ファージにおいてFab型で良好に提示されること、(ii)それらは、哺乳動物細胞においてIgG型で良好に提示されること、(iii)それらは、例えば大腸菌ではFab型で、及び哺乳動物細胞ではIgG型で大量に発現されること、(iv)熱力学的に安定していること、(v)高い血清安定性を有すること、(vi)低い凝集傾向(つまり、高い溶解度)を有すること、及び(vii)低リスクの免疫原性を有すること。
他の態様では、本開示のコレクションは、好ましいVH及びVLクラス対の生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの断片を含む。本開示のコレクションは、好ましくは、抗体又はそれらの断片を含み、1つ又は複数のフレームワーク領域は、好ましい特徴を有するVH及びVLクラス対によりコードされた生殖系タンパク質配列を含み、特にVH及びVLの両方のFR1、FR2、及びFR3は、好ましい特徴を有するVH及びVLクラス対の生殖系タンパク質配列を含む。CDRは、高度に多様化されていてもよい。好ましくは、VH及びVLの両方のCDR3は、高度に多様化されている。幾つかの実施形態では、VH及び/又はVLのCDR1及びCDR2は、配列が生殖系又は実質的に生殖系である。
コレクションに存在する大多数の抗体又はそれらの断片は、上記の好ましい特徴を有するVH及びVL対の生殖系配列を含むため、この戦略は、本開示のコレクションが、治療使用用に開発することのできる任意の免疫原に対する抗体又はそれらの断片を含む可能性を増加させる。選択された抗体は、低免疫原性及び特定の抗原に対する高親和性も有するだろう。結果は、開示されたコレクションから選択される抗体又はそれらの断片が、任意の免疫原に対して高度に効果的であり、治療又は診断目的のために開発することができる確率が劇的に増加するということである。
そのようなコレクションは、従来技術の問題の多くを克服する。例えば、B細胞に由来する同種ライブラリーでは、ライブラリーに存在するVH及びVLクラス対形成体は、試料に存在するクラス対形成体に依存する。十分に大きなB細胞試料が採取されれば、およそ50個のVH及び50個のVLクラス対形成の各々の組み合わせ(約2500通り)が存在するであろう。非常に多くのVH及びVLクラス対の存在は、背景ノイズに類比することができる。最も多く出現するVH及びVLクラス対のみを含む大きな多様性のあるライブラリーを生成することが望ましい場合があるが、同種ライブラリーの手法では、それは可能ではない。
加えて、幾つかの実施形態では、コレクションが基づくDNA配列は、抗原未経験である未感作B細胞の試料から取得され、従って、発現されるメンバーは、特定の免疫原に偏っておらず、コレクションを使用して、任意の免疫原に対してスクリーニングを行うことができる。
従って、ヒト宿主由来の未感作(抗原未経験)B細胞から得られる抗体又はそれらの断片をコードする核酸配列(又はその選択された部分)を配列決定することができる。これら配列データから、免疫レパートリーで主に代表される生殖系ファミリーVH/VL鎖クラス対形成体を特定することができる。出現率等の、ある基準に基づいて、重鎖及び軽鎖クラス対が、コレクションに組み込むために選択される。その後、コレクションは、遺伝子合成により合成することができる。幾つかの実施形態では、合成コレクションは、実質的生殖系VH及びVLフレームワーク領域を含み、CDRは多様化されている。
例えば、ヒト宿主に由来するか又は「テンプレート」として公的に入手可能なデータベース又は文献に由来する未感作(抗原未経験)B細胞から得られたDNA配列を使用して、本開示は、最も多く出現するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子及び/又はクラス対を特定する方法を可能にする。VH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子及び/又はクラス対の相対的存在量が解明されれば、VH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子及び/又はクラス対によりコードされた生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの断片を、以下の好ましい特徴に関して試験することができる:(i)それらは、ファージにおいてFab型で良好に提示されること、(ii)それらは、Fab型及びIgG型で大量に及び可溶性形態で発現されること、及び(iii)それらは、熱力学的に安定していること。最も多く出現するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子及び/又はクラス対によりコードされた生殖系タンパク質配列を試験することにより、好ましい特徴を有するものを特定することができる。当業者であれば、この情報を使用して、最も多く出現するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子及び/又はクラス対の組み合わせに起因する重要な有益性を犠牲にすることなく、高度な多様性を生成することができる。
本明細書で開示されたコレクション設計及び提示方法を使用して、幾つかの実施形態が少なくとも1×1010個のメンバーのコレクション含むような、大きな多様性コレクションを生成することができる。
本開示は、一般的に、最も好ましい特徴を有するVH及びVLクラス対を含む合成抗体コレクションに関する。幾つかの実施形態では、コレクションは、クラス対により代表されるVH及びVLファミリーによりコードされた生殖系タンパク質配列を含む。
本開示は、一般的に、好ましい特徴を有する1つ又は複数のVH及びVLクラス対を含む合成抗体コレクションに関する。幾つかの態様では、コレクションは、クラス対により代表されるVH及びVLファミリーによりコードされた生殖系タンパク質配列を含む。
幾つかの態様では、本開示は、免疫レパートリーに最も多く出現するVH及びVL生殖系遺伝子を特定し、最も多く出現するVH及びVL生殖系遺伝子の配列を有する抗体を試験して、好ましい特徴を有するVH及びVL生殖系遺伝子を特定し、その後好ましい特徴を有するVH及びVLクラスを含むコレクションを生成する方法を可能にする。本開示は、未感作であってもよいヒト免疫レパートリーのVH及びVLクラス対を特定し、最も多く出現するVH及びVLクラス対を決定し、VH及びVLクラス対を試験して好ましい特徴を有するVH及びVLクラス対を特定し、その後好ましいVH及びVLクラス対、並びに/又は好ましいVH及びVL生殖系遺伝子に由来する抗体を含むコレクションを生成する方法を可能にする。VH及びVL、並びに/又はVH及びVLクラス対が特定されれば、それらのそれぞれの生殖系配列が特定され、その結果、生殖系配列をコレクション設計に組み込むことができる。
幾つかの態様では、本開示は、開示された核酸のコレクションを含むベクター及び宿主細胞を可能にする。
幾つかの態様では、本開示は、そのようなコレクションを産生する方法を可能にする。
幾つかの実施形態では、ヒト免疫レパートリーを代表するDNA配列は、別々のステップで取得され、データベースに格納され、従ってコレクション設計は、in silicoで容易に改変、最適化、及びカスタマイズすることができ、合成ライブラリーにおいて典型的に実現することができるレベルのカスタマイズが可能になる。
幾つかの態様では、本開示は、開示されたコレクションを使用して抗体又はそれらの断片を特定する方法を可能にする。
方法、核酸、タンパク質、ベクター、宿主細胞
1つの態様では、本開示は、全遺伝子合成により産生された核酸のコレクションを可能にする。遺伝子合成技術は、近年かなり進歩しており、核酸の非常に大きなコレクションを生成することができる。以下の会社がそのような合成サービスを提供している:Entelechon社(レーゲンスブルク、ドイツ)、Geneart社(レーゲンスブルク、ドイツ)、及びSloning Biotechnology社(プッフハイム、ドイツ)。遺伝子合成会社がコレクションを生成するために、コレクションの各メンバーの配列を提供してもよい。
幾つかの実施形態では、本開示は、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも0.05%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする合成核酸のコレクションを可能にする。他の実施形態では、本開示のコレクションは、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも1%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む。他の実施形態では、本開示のコレクションは、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも1.5%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む。他の実施形態では、本開示のコレクションは、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも2%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む。他の実施形態では、本開示のコレクションは、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも3%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む。他の実施形態では、本開示のコレクションは、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも4%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む。他の実施形態では、本開示のコレクションは、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも5%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む。
幾つかの実施形態では、本開示は、VH及びVLクラス対が、ヒト宿主から単離されたB細胞から特定されるコレクションを可能にする。幾つかの実施形態では、B細胞は未感作である。幾つかの実施形態では、核酸のコレクションは、生殖系VH及びVLフレームワーク領域を含む抗体又はそれらの断片をコードする。好ましい実施形態では、核酸のコレクションは、多様化されたCDRを有する生殖系VH及びVLフレームワーク領域を含むように合成される。生殖系フレームワーク領域を含む抗体又はそれらの断片は、免疫原ではない可能性が高いため、生殖系フレームワーク領域が望ましい。
本明細書で開示されたコレクション設計及び提示方法を使用して、幾つかの実施形態が少なくとも1×104個の核酸配列のコレクションを含み、幾つかの実施形態が少なくとも1×105、106、107、108、109、1010、1011、又は1012個の核酸配列のコレクションを含むような、大きな多様性コレクションを生成することができる。そのような多様性は、多様化されたCDRを有する、多く出現するVH及びVLクラス対を含むメンバーを含むコレクションを合成することにより生成される。
本開示のコレクションは、免疫レパートリーを実質的に代表する配列データから設計される。幾つかの実施形態では、配列データは、公的に入手可能な免疫グロブリン配列表を探索することにより取得される。例えば、Ig−Blastを使用してNCBIを探索してもよく、又は公的に入手可能な文献を探索してもよい。2005年の時点で、データベースは、FASTA形式で少なくとも25,000個の再編成ヒト抗体配列を含有していた。22,500個のエントリーのうち、13,235個はVH配列であり、1,506個はVκであり、2,259個はVλであった。これら配列から、VH、Vκ、及びVλを、それらのそれぞれの生殖系ファミリー及び/又は遺伝子に分類することができる。Ig−Blastの幾つかは完全な抗体配列を含んでいるため、各VH及びVLドメインクラス対形成体の正確な生殖系ファミリー及び/又は遺伝子を、データベース配列から決定することができる。この手法を使用する場合、各VH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子の出現率、並びに/又は各VH及びVLドメインクラス対の生殖系ファミリー及び/又は遺伝子は、当業者により容易に決定することができる。どのVH及びVL、並びに/又はVH及びVLクラス対をライブラリーに組み込むかの選択は、多くの方法で達成することができる。幾つかの実施形態では、出現率が最も高いVH及びVLが、コレクション又はライブラリーに組み込むために選択される。幾つかの実施形態では、好ましい生物物理学的特性を有するVH及びVLが、コレクション又はライブラリーに組み込むために選択される。幾つかの実施形態では、最も高い出現率を有するVH及びVLクラス対が、コレクション又はライブラリーに組み込むために選択される。幾つかの実施形態では、好ましい生物物理学的特性を有するVH及びVLクラス対が、コレクション又はライブラリーに組み込むために選択される。幾つかの実施形態では、最も高い出現率及び/又は好ましい生物物理学的特性を有するVH及びVL、並びに/又は最も高い出現率を有するVH及びVLクラス対、並びに/又は好ましい生物物理学的特性を有するVH及びVLクラス対の両方が、コレクション又はライブラリーに組み込むために選択される。
この手法の欠点の1つは、公的に入手可能なデータベースが、特定の免疫原に対して生成された抗体の配列で占められていることが多く、従って配列に偏りがあるということである。加えて、ほとんどのデータベースでは、重鎖及び軽鎖の配列は結合されておらず、従ってVH及びVLクラス対形成体を特定することができない。
幾つかの実施形態では、核酸配列は、1つ又は複数の宿主からB細胞を回収し、B細胞からDNAを単離し、好ましくはDNAを配列決定することにより取得される。好ましくは、B細胞は未感作である。B細胞の試料は、1つ又は複数のヒト供与体から回収される。以下は、B細胞を単離するために使用することができる技術である。休止Bリンパ球(B細胞)を、抗CD43及び抗Mac−1/CD11bモノクローナル抗体を用いた他の細胞タイプに対するネガティブ選択を使用することにより、例えば磁気マイクロビーズによって脾臓から単離する。この戦略は、脾細胞の混合集団から非B細胞を枯渇させるものであり、ほとんどの成熟白血球は、休止脾臓B細胞を除いて、CD43を発現するという事実に依存する(実際、CD43の発現は、顆粒球、単球、マクロファージ、血小板、ナチュラルキラー(NK)細胞、胸腺細胞、及び末梢CD8+、及びほとんどのCD4+T細胞に加えて、未熟B細胞、形質細胞、及び幾つかの成熟細胞で実証されている)。骨髄性細胞の除去を向上させるために、抗Mac−1/CD11bマイクロビーズが、ネガティブ選択に加えられる。B細胞単離は、AutoMACS自動磁気ビーズ細胞選別器(Miltenyi Biotec社製)を使用することにより自動化することができる。B220+細胞の蛍光分析により評価されるように、そのような単離は、>95%純粋な、脾臓1つ当たりおよそ4×10e7個のB細胞を日常的にもたらす。Miltenyi S、Muller W、Weichel W、及びRadbruch A.(1990年)Cytometry 11巻(2号)、231〜238頁も参照されたい。
回収されたB細胞の数は、免疫レパートリーを実質的に代表する。幾つかの実施形態では、少なくとも1×104個のB細胞が宿主から単離され、より好ましくは少なくとも105個のB細胞、より好ましくは少なくとも106個のB細胞、最も好ましくは107個のB細胞が宿主から単離される。
各B細胞に由来する抗体及びそれらの断片をコードするDNAが単離及び増幅され、例えば、重鎖及び軽鎖は、PCR反応により連結される。好ましくは、DNAは配列決定される。配列決定されたDNAは、B細胞mRNAから生成されたcDNAであってもよい。B細胞等の真核細胞からのmRNA抽出は、周知の技術的手順である。多数のプロトコールが存在し、市販のキットが入手可能である。PolyATtract(登録商標)mRNA単離システム(Promega社製、マディソン、ウィスコンシン州、米国)又は種々のRNeasy及びOligotex DirectmRNAキット(両方ともQiagen社製、ヒルデン、ドイツから)等である。これら技術の多くは、真核生物mRNAのpolyA末端を、例えば、オリゴ(dT)セルロース等のオリゴ(dT)マトリックスに対する親和性精製のために利用する。
cDNAは、特異的プライマーを使用して逆転写し、その後従来のPCRを行うことにより、単離mRNAから選択的に増幅することができる。特異的プライマーは、可変重鎖及び軽鎖ドメイン核酸を増幅するために使用される。Cancer Surv.1997年;30巻:21〜44頁、J Clin.Pathol.1994年;47巻:493〜6頁、J.Clin.Pathol.1990年;43巻:888〜90頁、又はMol.Pathol.2002年4月;55巻(2号):98〜101頁を参照されたい。
可変ドメイン重鎖及び軽鎖クラス対形成体を特定することができるように、1つのB細胞に由来する可変及び軽鎖ドメインを両方ともコードするDNAが共に維持される。個々のB細胞に由来する可変ドメイン対形成体をコードする核酸を単離するための技術は、当技術分野で周知である。例えば、以下を参照されたい:国際公開第01/92291号;国際公開第92/15678号;国際公開第93/03151号,国際公開第2005/042774号;Mullinax RLら、1992年 Biotechniques 12巻:6号 864〜868頁;Chapal,N.ら、1997年 Biotechniques 23巻、518〜524頁;Embleton MJら、1992年 Nucleic Acids Res.20巻:15号、3831〜3837頁;Coronella,J.A.ら、2000年 Nucleic Acids Res.28巻:20号、E85頁;Thirion Sら、1996年 European Journal of Cancer Prevention 5巻:6号 507〜511頁;及びWang,Xら、2000年 J.Immunol.Methods 20巻、217〜225頁。
これら技術は、単独で又は他の方法と組み合わせて使用することができる。例えば、大きな試料の可変重鎖及び軽鎖ドメイン配列を、それらのそれぞれのB細胞から共に特定することが成功しない場合、正確な可変重鎖及び可変軽鎖ドメインクラス対を特定するために、以下の方法を実施することができる。各個々のB細胞の単一細胞PCRが実施される。
好ましくは、B細胞の各々に由来するDNAは、配列決定される。全ゲノムを配列決定することができる会社は、Helicos BioSciences Corporation社(ケンブリッジ、マサチューセッツ州、米国)等、種々存在する。Helicosは、自社のTrue Single Molecule Sequencing(商標)技術を用いて、DNA又はRNAの単一の分子を高速及び効率的に直接配列解析することができる。同様の配列解析試行を実施することができる他の会社には、Illumina社(サンディエゴ、カリフォルニア州、米国;Solexaシステム)及びRoche社(バーゼル、スイス;454システム)が含まれる。配列決定の前に、クローニングステップは必要ではない。
別の態様では、本開示は、免疫レパートリーに存在する重鎖及び軽鎖可変ドメイン対の生殖系ファミリーを特定する方法を可能にする。抗体又はそれらの断片は全て、当業者に公知の方法を使用して、それらの生殖系ファミリーにまでさかのぼることができる。抗体又はその断片をコードする核酸の配列を分析することにより、VH及びVLの両方の生殖系ファミリーを、当業者に公知の方法により決定することができる。例えば、Wildtら、(1999年)では、3人の患者からB細胞がサンプリングされ、365個のVH及びVLクラス対形成体が特定された。各B細胞に由来するRNAが、cDNA合成のために使用され、VH及びVL領域をコードするcDNAが、PCR増幅され、配列決定された。Wildtの図1に示されているように、ある種のVH及びVLクラスが、他よりも高頻度で対になっており、例えば、VH3−8とVκ3−1、Vκ3−19、Vκ4−1、Vλ2−3、又はVλ1−2との対、及びVH3−9とVκ3−1、Vκ3−3、又はVλ1−5との対である。
別の態様では、本開示は、コレクションを合成する前に、多様化された相補性決定領域を設計する方法を可能にする。CDRは、Knappikら、2000年;国際公開第97/08320号に開示されているものを含む、当技術分野で周知の方法により設計することができる。
別の態様では、本開示は、抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションに含まれていることが望ましい可変ドメインクラス対形成体を選択する方法を可能にする。幾つかの実施形態では、本開示方法により特定されたVH及びVLドメインクラス対を全て含む核酸のコレクションが合成される。
加えて、VH及びVLクラス対の出現率を、種々の統計的検定により決定することができる。その最も容易な形態では、個々のVH及びVLクラス対は単に数えられる。より精巧な統計的検定では、種々の他のパラメーターを考慮に入れることができる。非限定的な例として、以下の統計的検定及び文献は、そのような又は類似の分析で行われてきた多くの手法の例として指針となり得る:ベイズ収縮評価(例えば、Biometrics 59巻(2003年):476〜486頁を参照)、DADA(cDNA含有量のデジタル分析(Digital Analysis of cDNA Abundance)、例えば、BMC Genomics 2002年3巻:7頁を参照)、線形モデリング(Pacific Symposium on Biocomputing、1999年 4巻:41〜52頁)、及び種々のクラスタリング法(BMC Bioinformatics 2006年、7巻:397頁、Fourth IEEE International Conference on Data Mining (ICDM’04)、403〜406頁)。
他の態様では、本開示は、抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを含むベクターのコレクションを可能にする。幾つかの実施形態では、ベクターには、発現ベクター、ディスプレイベクター、ファージディスプレイベクター、又はファージミドベクターが含まれる。
真核生物発現ベクターは、当技術分野で周知であり、商業的に入手可能でもある。典型的には、所望のDNAを挿入するための便利な制限部位を含有するそのようなベクターが提供される。そのようなベクターの例には、pSVL及びpKSV−10、pBPV−1/PML2d、及びpTDT1(ATCC、受入番号31255)が含まれる。
他の態様では、本開示は、開示されたベクターのコレクションで形質転換された宿主細胞のコレクションを可能にする。宿主細胞は、原核生物又は真核生物のいずれであってもよい。細菌細胞は、好ましい原核生物宿主細胞であり、典型的には、例えばBethesda Research Laboratories,Inc.社、ベテスダ、メリーランド州から入手可能な大腸菌菌株DH5等の大腸菌の菌株である。好ましい真核生物宿主細胞には、酵母、並びにマウス及びげっ歯動物を含む哺乳動物細胞、好ましくは、マウス、ラット、サル、又はヒト細胞系に由来する細胞等の脊椎動物細胞が含まれる。
宿主細胞へのベクターの導入は、リン酸カルシウム沈殿法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポソーム融合法、RBCゴースト融合法、プロトプラスト融合法、及びウイルス感染法等を含む、当業者に公知の多数の形質転換法又は形質移入法により達成することができる。モノクローナル全長抗体、Fab断片、Fv断片、及びscFv断片の産生は、周知である。
組換えDNA分子を用いた適切な細胞宿主の形質転換は、典型的には、使用されるベクターのタイプに応じた方法により達成される。原核生物宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohenら、Proceedings National Academy of Science, USA、69巻、2110頁(1972年);及びManiatisら、Molecular Cloning,a Laboratory Manual,Cold spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1982年)を参照されたい。rDNAを含有するレトロウイルスベクターを用いた脊椎動物細胞の形質転換に関しては、例えば、Sorgeら、Mol.Cell.Biol.、4巻:1730〜1737頁(1984年);Grahamら、Virol.、52巻:456頁(1973年);及びWiglerら、Proceedings National Academy of Sciences,USA、76巻、1373〜1376頁(1979年)を参照されたい。
別の態様では、本開示は、少なくとも1×105個の未感作ヒトB細胞の試料に存在する核酸を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸を例示する配列データを含み、前記配列データが読取可能な媒体にあるキット又はデータベースを可能にする。
別の態様では、本開示は、抗体又はそれらの断片をコードする合成核酸のコレクションを産生する方法であって、少なくとも約2500個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも0.05%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成することを含む方法を可能にする。幾つかの実施形態では、本開示は、免疫レパートリーを実質的に代表する抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを産生する方法であって、(a)免疫レパートリー中のVH/VLクラス対の少なくとも0.05%、少なくとも1%、又は少なくとも2%の濃度で存在するVH/VLクラス対を特定すること;(b)免疫レパートリー中のVH/VLクラス対の少なくとも0.05%、少なくとも1%、又は少なくとも2%の濃度で存在するVH/VLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成することを含む方法を可能にする。幾つかの実施形態では、VH/VLクラス対の特定は、(i)1つ又は複数のヒト宿主からB細胞を単離すること;(ii)(A)VH/VLクラス対をコードするDNA、mRNA、又はcDNAを単離及び配列決定すること、又は(B)各VH及びVLに特異的な1つ又は複数の核酸プローブを用いて探索することから選択されるプロセスにより各B細胞のVH/VLクラス対を決定すること;及び(iii)VH/VLクラス対を分析することを含む。幾つかの実施形態では、VH/VLクラス対の特定は、(i)抗体核酸配列を得ること、(ii)VH/VLクラス対を配列アラインメントにより決定すること、(iii)少なくとも100個の抗体に由来するそのような配列を照合して、免疫レパートリーに存在するVH/VLクラス対を特定することを含む。幾つかの実施形態では、本方法は、(i)ファージで効率的に提示されること、(ii)哺乳動物細胞で効率的に提示されること、(iii)大腸菌においてFab型で良好に発現されること、(iv)哺乳動物細胞においてIgG型で良好に発現されること、(v)熱安定性、(vi)溶解度、及び(vii)低免疫原性からなる群から選択される少なくとも1つの生物物理学的特性を示すVH/VLクラス対を選択すること、及び少なくとも1つの生物物理学的特性を示す抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成することを含む。幾つかの実施形態では、抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションは、生殖系であるか、実質的に生殖系であるか、又は生殖系核酸のコドン最適化変異体である。幾つかの実施形態では、VH/VLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成中に、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)に、配列変異が導入される。幾つかの実施形態では、配列変異は、終止コドンを含まない配列に限定される。幾つかの実施形態では、本方法は、核酸のコレクションをベクターにクローニングすることを更に含む。幾つかの実施形態では、ベクターは、(i)ディスプレイベクター、(ii)ファージディスプレイベクター、(iii)ファージミドベクター、及び(iv)哺乳動物発現ベクターからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、本方法は、宿主細胞への形質転換を更に含む。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、(i)原核生物宿主細胞、(ii)真核生物宿主細胞、(iii)大腸菌宿主細胞、及び(iv)哺乳動物宿主細胞からなる群から選択される。
幾つかの実施形態は、前記核酸をベクターのコレクションに挿入すること、及び宿主細胞に形質転換/形質移入すること、及び抗体又はそれらの断片を提示させることを更に含む。幾つかの実施形態では、ベクターは、発現ベクター、ファージミドベクター等のディスプレイベクターである。幾つかの実施形態は、前記ベクターを好適な宿主細胞に形質移入することを更に含む。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、大腸菌等の原核生物であるか、又は哺乳動物等の真核生物である。
別の態様では、本開示は、免疫原に特異的な抗体又はその抗体断片を特定する方法であって、少なくとも約2500個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも0.05%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成するステップ;及び前記免疫原に特異的な1つ又は複数の抗体又はそれらの断片を選択するステップを含む方法を可能にする。幾つかの実施形態は、ある免疫原に特異的な抗体又はその抗体断片を特定する方法であって、(a)免疫レパートリー中のVH/VLクラス対の少なくとも0.05%、少なくとも1%、又は少なくとも2%の濃度で存在するVH/VLクラス対を特定ステップ、(b)免疫レパートリー中のVH/VLクラス対の少なくとも0.05%、少なくとも1%、又は少なくとも2%の濃度で存在するVH/VLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成するステップ、(c)コレクションに由来する抗体又はその断片を提示又は発現させるステップ、(d)特定の免疫原に対してコレクションをスクリーニングするステップ、及び(e)前記免疫原に特異的な少なくとも1つの抗体又はそれらの断片を選択するステップを含む方法を含む。幾つかの実施形態は、疾患又は状態を治療するための抗体又は抗体断片を特定する方法であって、(a)免疫レパートリー中のVH/VLクラス対の少なくとも0.05%、少なくとも1%、又は少なくとも2%の濃度で存在するVH/VLクラス対を特定するステップ、(b)(i)ファージで効率的に提示されること、(ii)哺乳動物細胞で効率的に提示されること、(iii)大腸菌においてFab型で良好に発現されること、(iv)哺乳動物細胞においてIgG型で良好に発現されること、(v)熱安定性、(vi)溶解度、及び(vii)低免疫原性からなる群から選択される少なくとも1つの生物物理学的特性を示すVH/VLクラス対を特定するステップ、(c)免疫レパートリー中のVH/VLクラス対の少なくとも0.05%、少なくとも1%、又は少なくとも2%の濃度で存在するVH/VLクラス対を含み、(i)〜(vii)のうちの少なくとも1つの生物物理学的特性を示す抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成するステップ、(d)コレクションに由来する抗体又はその断片を提示又は発現させるステップ、(e)疾患又は状態に関連する特定の免疫原に対してコレクションをスクリーニングするステップ、及び(f)前記免疫原に特異的な少なくとも1つの抗体又はそれらの断片を選択するステップを含む方法を含む。
幾つかの実施形態では、B細胞は、ヒト宿主から単離される。幾つかの実施形態では、B細胞は未感作である。幾つかの実施形態では、少なくとも1×約2500個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対は、1つ又は複数のヒト宿主から未感作B細胞を回収すること、及び回収したB細胞からDNAを単離すること、及び単離されたDNAを分析することを含む方法により特定される。幾つかの実施形態では、DNAを分析するステップは、DNAを配列決定することを含む。幾つかの実施形態では、DNAを分析するステップは、各VH及びVLクラス対が試料に存在する頻度を特定することを更に含む。
幾つかの実施形態は、前記核酸をベクターのコレクションに挿入すること、及び宿主細胞に形質転換/形質移入すること、及び抗体又はそれらの断片を提示させることを更に含む。
別の態様では、本開示は、ある免疫原に特異的な抗体又はその抗体断片を特定する方法であって、少なくとも約2500個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも0.05%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成するステップ;及び前記免疫原に特異的な1つ又は複数の抗体又はそれらの断片を選択するステップを含む方法を可能にする。
幾つかの実施形態では、B細胞は、ヒト宿主から単離される。幾つかの実施形態では、B細胞は未感作である。幾つかの実施形態では、少なくとも約2500個のB細胞の試料にあるVH及びVLクラス対は、1つ又は複数のヒト宿主からB細胞を回収すること、回収したB細胞からDNAを単離すること、及び単離されたDNAを分析することを含む方法により特定される。幾つかの実施形態では、DNAを分析するステップは、DNAを配列決定することを含む。幾つかの実施形態では、DNAを分析するステップは、各VH及びVLクラス対が試料に存在する頻度を特定することを更に含む。
幾つかの実施形態では、コレクションは、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、細菌ディスプレイ、又は真核生物ディスプレイを使用して、試験/スクリーニングの前に提示される。幾つかの実施形態では、コレクションは、原核細胞又は真核細胞で提示される。幾つかの実施形態では、コレクションは、Fab型又はIgG型又は当業者に公知の他の型で提示される。
スクリーニングは、結合をスクリーニングするためのファージディスプレイ法、選択的感染性ファージ法、ポリソーム技術、及び酵素活性又はタンパク質安定性のためのアッセイ系等の、当技術分野で周知の方法のうちの1つを使用することにより実施することができる。多数のそのような方法が当業者に公知であり、例示的な文献として、以下のものが提供される:Valle RPら、Curr.Opin.Drug Discov.Devel.2003年3月;6巻(2号):197〜203頁;Ackermann BL Expert Rev.Proteomics.2007年4月;4巻(2号):175〜86頁;及びAnderson KS J Proteome Res.2005年、7月〜8月;4巻(4号):1123〜33頁。
1つの実施形態では、スクリーニングアッセイは、抗体によるリガンドの結合が、検出可能なシグナルを直接的又は間接的のいずれかで生成するように実施される。そのようなシグナルには、例えば、複合体の産生、触媒反応生成物の形成、及びエネルギーの放出又は取り込み等が含まれる。対象組換えDNAを用いた形質転換にかけられた集団に由来する細胞は、例えば、クローニングして、単クローンコロニーを形成させることができる。それらコロニーに由来する細胞を回収及び溶解し、それらのDNA含量を、例えばSouthern,J.Mol.Biol.、98巻:503頁(1975年)又はBerentら、Biotech.3巻:208頁(1985年)に記述されているような当技術分野で公知の方法を使用して、組換えDNAの存在について調査することができる。
生物物理学的特性
本発明は、VH/VLクラス対が望ましい生物物理学的特性を有するコレクション、及びそのようなコレクションを製作する方法も含む。好ましい及び望ましい生物物理学的特性には、より高い安定性、より高い発現レベル、及び低い凝集傾向が含まれる。
好適な生物物理学的特性は、様々な段階でのコレクションの使用を容易にする。例えば、コレクションのスクリーニングは、抗体又はそれらの断片が可溶性であり、凝集せず、ファージ等のスクリーニングバックグラウンドで良好に発現される場合、容易である。動物試験及び治療使用等の抗体のその後の開発は、抗体溶解度、熱安定性、高レベルの発現(特に哺乳動物細胞でIgGとして)、及び低免疫原性等の特性により容易となる。
抗体又はそれらの断片の全て又は少なくとも大多数が、そのような好ましい生物物理学的特性を有することを保証するために、VH/VLクラス対を前もってスクリーニングして、どのクラス対がどの特性を示すかを特定することができる。その後、ライブラリーは、そのような好ましい生物物理学的特性を有するそれら抗体のみをコードする核酸を合成することにより構築される。
無論、全てのVH/VLクラス対が、全ての生物物理学的特性を同じ程度に示すとは限らず、当業者であれば、どのVH/VLクラス対を合成すべきかを決定する前に、どの特性がより関連するか及び/又は各特性のバランスを決定することになるだろう。
従って、ある態様では、本発明は、ファージの表面又は他のディスプレイ技術等で効率的に提示されるVH/VL組み合わせが選択された合成抗体ライブラリーを提供する。好ましくは全て、本質的に全て、又は実質的に全てのVH/VL組み合わせが、効率的に提示される。提示の効率性は、本発明に記述されているようなサンドイッチファージELISAにより測定することができる。
他の態様では、本発明は、大腸菌においてFab型で良好に発現されるVH−VL組み合わせが選択された合成抗体ライブラリーを提供する。好ましくは全て、本質的に全て、又は実質的に全てのVH/VL組み合わせは、大腸菌においてFab型で良好に発現される。大腸菌でのFab型の発現は定量化することができ、好ましくは、細菌培養中2mg/L超、5mg/L超、10mg/L超、又は15mg/L超である。ある態様では、全てのVH−VLが、2mg/L超で発現され、本質的に全てのVH−VL組み合わせが、5mg/L超のレベルで発現され、ほとんどのVH−VL組み合わせが、細菌培養中10mg/L超のレベルで発現され、及び/又は少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、又は少なくとも5つのVH−VL組み合わせが、細菌培養中15mg/L超のレベルで発現される。
ある態様では、本発明は、哺乳動物系においてIgG型で良好に発現されるVH−VL組み合わせが選択された合成抗体ライブラリーを提供する。現在上市されている抗体に基づく治療用生物製剤の大多数は、以下の様々な理由でIgG型である:(i)ヒト体内におけるIgG分子の半減期が、新生児受容体(FcRn)とIgGとの相互作用のため非常に長い(約3週間);(ii)IgG分子は、高度に可溶性であり、熱力学的に安定しており、血液中でのプロテアーゼに比較的抵抗性である;及び(iii)IgGは、腫瘍細胞の除去に必要なADCC(抗体依存性細胞性細胞毒性)及び/又はCDC(補体依存性細胞傷害)活性を有する。特定のVL/VH組み合わせがFab型で発現されることは、同じVL/VH組み合わせがIgG型で発現されることと必ずしも相関せず、従ってIgG型のVL/VH組み合わせの発現及び溶解度も、重要な独立因子である。
哺乳動物系には、例えば、哺乳動物浮遊培養、哺乳動物接着細胞培養、HKB11細胞、PERC.6細胞、又はCHO細胞が含まれていてもよい。好ましくは全て、本質的に全て、又は実質的に全てのVH/VL組み合わせが、哺乳動物系においてIgG型で良好に発現される。ある態様では、本発明は、全てのVH−VL組み合わせが、哺乳動物系において10mg/L超のレベルでIgG型で発現される合成ヒト抗体ライブラリー、本質的に全てのVH−VL組み合わせが、哺乳動物系において15mg/L超のレベルでIgG型で発現される合成ヒト抗体ライブラリー、ほとんどのVH−VL組み合わせが、哺乳動物系において20mg/L超のレベルでIgG型で発現される合成ヒト抗体ライブラリー、及び/又は少なくとも3つの、少なくとも4つの、又は少なくとも5つのVH−VL組み合わせが、哺乳動物系において25mg/L超のレベルでIgG型で発現される合成ヒト抗体ライブラリーを提供する。
ある態様では、本発明は、熱安定性のVH/VL組み合わせが選択された合成抗体ライブラリーを提供する。好ましくは全て、本質的に全て、又は実質的に全ての組み合わせが、熱安定性であり、Tmは、少なくとも68、70、72、74、又は76℃である。熱安定性は、本明細書に記述されているように測定することができる。ある態様では、本発明は、本質的に全てのVH−VL組み合わせが、68℃を超えるTmを有する合成ヒト抗体ライブラリー、本質的に全てのVH−VL組み合わせが、70℃を超える又は72℃を超えるTmを有する合成ヒト抗体ライブラリー、ほとんどのVH−VL組み合わせが、74℃を超えるTmを有する合成ヒト抗体ライブラリー、及び/又は多くのVH−VL組み合わせが、76℃を超えるTmを有する合成ヒト抗体ライブラリーを提供する。ある態様では、少なくとも3つの、少なくとも4つの、又は少なくとも5つのVH−VL組み合わせが、70℃を超えるTmを有する。
ある態様では、本発明は、熱安定性である、つまり凝集傾向のないVH−VL組み合わせが選択された合成抗体ライブラリーを提供する。溶解度は、例えば、細菌性宿主で試験されたFab型又は真核生物宿主で試験されたIgG1の好ましい折り畳み及び発現特徴により、又は分析用サイズ排除クロマトグラフィにより決定されるような精製後の凝集により決定することができる。
低免疫原性は、当技術分野で公知の方法により推定又は直接試験してもよいが、所与のVH/VLクラス対がレパートリーで最も豊富であるという事実及び使用されたタンパク質配列が実質的生殖系タンパク質配列であるという事実により推論することもできる。
本明細書に記述されているように、抗体配列データは、B細胞から、例えば未感作B細胞から、公的に入手可能なデータベース及び/又は文献から取得することができる。抗体配列の各々は、最も近い生殖系ファミリー及び/又は遺伝子とアラインすることができる。このデータから、豊富に存在するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子及び/又はVH/VLクラス対を決定することができる。
、豊富に存在するVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子及び/又はVH/VLクラス対が決定されれば、どのVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子及び/又はVH/VLクラス対を、好ましい生物物理学的特性に関して試験するかを選択することができる。1つの手法は、VH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子を存在量により順位付けし、その後、最も豊富な、例えば上位20位の最も豊富なVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子であるVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子を試験することであろう。加えて、上位20位の最も豊富なVH及びVL生殖系ファミリー及び/又は遺伝子を組み合わせることにより、例えばVH及びVLの400通りの組み合わせがもたらされ、好ましい生物物理学的特性に関してそれらを試験することができる。加えて又は補完的に、最も豊富なVH/VLクラス対を、好ましい生物物理学的特性について試験することができる。
好ましい生物物理学的特性には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:(i)それらは、ファージにおいてFab型で良好に提示されること、(ii)それらは、哺乳動物細胞においてIgG型で良好に提示されること、(iii)それらは、例えば大腸菌ではFab型で、及び例えば哺乳動物細胞ではIgG型で大量に発現されること、(iv)熱力学的に安定していること、(v)高い血清安定性を有すること、(vi)低い凝集傾向(つまり、高い溶解度)を有すること、及び(vii)低リスクの免疫原性を有すること。
幾つかの態様では、本発明は、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも0.5%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする合成核酸のコレクションを含む。幾つかの実施形態では、VH及びVLクラス対は、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも1%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、VH及びVLクラス対は、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも2%の濃度で存在する。幾つかの実施形態では、B細胞は、ヒト宿主から単離される。幾つかの実施形態では、B細胞は未感作である。幾つかの態様では、コレクションは、生殖系VH及びVLフレームワーク領域を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸を含む。幾つかの実施形態では、コレクションは、少なくとも1×104個の核酸配列、少なくとも1×106個の核酸配列、少なくとも1×108個の核酸配列、少なくとも1×1010個の核酸配列、又は少なくとも1×1011個の核酸配列を含む。
幾つかの態様では、本発明は、少なくとも1×105個の未感作ヒトB細胞の試料に存在する核酸を含む、抗体又はそれらの断片をコードする核酸を例示する配列データを含み、前記配列データが読取可能な媒体にあるキットを含む。幾つかの態様では、本発明は、抗体又はそれらの機能的断片をコードする核酸のコレクションを含む。幾つかの実施形態では、ベクターは、ファージディスプレイベクターである。幾つかの実施形態では、ベクターは、ファージミドベクターである。幾つかの態様では、本発明は、抗体又はそれらの機能的断片をコードする核酸のコレクションを含むコレクションベクターで形質転換された宿主細胞を含む。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、原核生物である。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、大腸菌である。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、真核生物である。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物である。
幾つかの態様では、本発明は、抗体又はそれらの断片をコードする合成核酸のコレクションを産生する方法であって、少なくとも約1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも0.5%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成することを含む方法を含む。幾つかの実施形態では、B細胞は、ヒト宿主から単離される。幾つかの実施形態では、B細胞は未感作である。幾つかの実施形態では、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対は、以下のステップを含む方法により特定される:
aa)1つ又は複数のヒト宿主から未感作B細胞を回収するステップ、
ab)ステップaa)で回収されたB細胞からDNAを単離するステップ、及び
ac)ステップab)で単離されたDNAを分析するステップ。
幾つかの実施形態では、DNAを分析するステップは、DNAを配列決定することを含む。幾つかの実施形態では、DNAを分析するステップは、各VH及びVLクラス対が試料に存在する頻度を特定することを更に含む。幾つかの実施形態では、本方法は、核酸をベクターのコレクションに挿入することを更に含む。幾つかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。幾つかの実施形態では、ベクターは、ディスプレイベクターである。幾つかの実施形態では、ディスプレイベクターは、ファージミドベクターである。幾つかの実施形態では、本方法は、前記ベクターを好適な宿主細胞に形質移入することを更に含む。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、原核生物である。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、大腸菌である。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、真核生物である。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物である。
幾つかの態様では、本発明は、ある免疫原に特異的な抗体又はその抗体断片を特定する方法であって、a)少なくとも約1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対の少なくとも0.5%の濃度で存在するVH及びVLクラス対を含む抗体又はそれらの断片をコードする核酸のコレクションを合成するステップ、b)特定の免疫原に対してコレクションをスクリーニングするステップ、及びc)前記免疫原には特異的な1つ又は複数の抗体又はそれらの断片を選択するステップを含む方法を含む。幾つかの実施形態では、B細胞は、ヒト宿主から単離される。幾つかの実施形態では、B細胞は未感作である。幾つかの実施形態では、少なくとも1×105個のB細胞の試料に存在するVH及びVLクラス対は、以下のステップを含む方法により特定される:
aa)1つ又は複数のヒト宿主から未感作B細胞を回収するステップ、
ab)ステップaa)で回収されたB細胞からDNAを単離するステップ、及び
ac)ステップab)で単離されたDNAを分析するステップ。
幾つかの実施形態では、DNAを分析するステップは、DNAを配列決定することを含む。幾つかの実施形態では、DNAを分析するステップは、各VH及びVLクラス対が試料に存在する頻度を特定することを更に含む。幾つかの実施形態では、コレクションを合成するステップは前記核酸をベクターのコレクションに挿入することを更に含む。幾つかの実施形態では、本方法は、前記ベクターを好適な宿主細胞に形質移入することを更に含む。幾つかの実施形態では、本方法は、前記コレクションを提示させることを更に含む。
実施例
実施例1:原核生物シグナル配列及びヒトリーダー配列のC末端における、完全生殖系FR1領域を提供する制限部位の生成
1つの態様では、本開示は、生殖系配列を含むフレームワーク領域、特にFR1を含む抗体のコレクションを記述する。生殖系配列を有することにより、ヒトに投与した際に、抗体の免疫原性リスクが低下されるはずであることが期待される。しかしながら、免疫原に対して抗体をスクリーニングすることができるように、ディスプレイベクター及び/又は発現ベクターへの、抗体のコレクションをコードする核酸の標準的クローニングを可能にするためには、制限部位を使用しなければならない。過去において、クローニングに使用された制限部位は、フレームワーク領域内に配置されていることが多く、従って核酸配列及び/又はアミノ酸配列が修飾され生殖系と異なることになった。本開示の抗体の各々の少なくともフレームワーク1(FR1)領域が、生殖系タンパク質配列を維持することを保証するために、FR1内には、いかなる非天然制限部位も存在するべきではない。従って、本開示の態様は、原核生物シグナル配列及びヒトリーダー配列のC末端内、特にC末端3残基内に、同一の又は少なくとも同様の制限部位を組み込むことである。加えて、同一の又は同様の制限部位を含むシグナル配列及びリーダー配列は、機能性であり、原核生物及び哺乳動物の両発現系において、抗体又はそれらの断片の良好な提示及び発現レベルを可能にしなければならない。
実施例1.1:大腸菌シグナル配列のC末端に豊富なアミノ酸残基の分析
以下では、シグナル配列、大腸菌ompA及びphoAの両方のC末端に組み込まれる制限部位の選択、及びその結果生じたシグナル配列の機能性の評価が記述されている。
第1のステップとして、シグナル配列(−3〜−1)のC末端の3個のアミノ酸の共通アミノ酸残基を分析し、表1に示されているようなコンセンサス配列を生成した。Chouら、Prediction of protein signal sequences,Protein Pept.Sci.3巻(6号):615〜22頁(2002年12月)を参照されたい。
−3位には、主にA、S、V、及びTアミノ酸が観察された。−2位には、主にL、A、S、及びQアミノ酸が観察された。−1位には、主にA、G、及びSアミノ酸が観察された。
実施例1.2:重鎖大腸菌シグナル配列(phoA)用の制限部位の選択
表1に示されているコンセンサス配列を、既知の制限部位と比較した後で、以下の3つの制限部位:AflII、NheI、及びAvrIIを、phoA C末端に組み込んで後に発現レベルを研究するために選択した。野生型ヌクレオチド配列を修飾ヌクレオチド配列に変更することにより、アミノ酸配列が何に変化するかにも留意することが重要である。選択された制限部位の核酸配列及び対応するアミノ酸配列は、表2に示されている。
対照として、野生型phoAシグナル配列を、発現レベルについて研究した。3個のC末端配列を含む野生型phoAシグナル配列の核酸及びアミノ酸配列は、表3に示されている。
発現レベルを評価するために、表2に示されている制限部位をphoAシグナル配列に組み込み、それにより野生型アミノ酸配列も修飾した。その結果生じたシグナル配列を使用して、a)VH3−23又はb)VH1−69生殖系タンパク質配列のいずれかを含むFab断片を発現させた。これら生殖系遺伝子は、安定しており良好に発現されることが知られているため、選択された。VH3−23及びVH1−69生殖系遺伝子配列の両方に、4D5抗体のCDR−H3(WGGDGFYAMDY)を組み込み、JH4生殖系遺伝子配列をFR4に使用した。4D5抗体は、(PDBエントリー 1FVC;Carter,P.、Presta,L.、Gorman,C.M.、Ridgway,J.B.、Henner,D.、Wong,W.L.ら、(1992年);Humanization Biophysical Properties of Human Antibody Domains 551 of an anti−p185HER2 antibody for human cancer therapy.Proc.Natl Acad.Sci.USA、89巻、4285〜4289頁)に開示されている。a)表2のC末端制限部位及びアミノ酸配列を含むphoAシグナル配列、b)上述のようにCDR−H3及びJH4が組み込まれたVH3−23及びVH1−69のVH配列、及びc)MOR03207に由来する安定的で良好に発現する軽鎖を含む、pMORPHX11(図50に表示)に基づくプラスミドを生成した。遺伝子は全て、Geneart社(レーゲンスブルク、ドイツ)で生成された。
発現及び周辺質輸送は、周辺質抽出後に抗Fd ELISAを実施することにより点検した。BBS緩衝液を使用した周辺質抽出後の抗Fd発現ELISAの結果は、図1に示されている。VH3−23群に示されているように、C末端制限部位、AflII(VLS)、NheI(VLA)、及びAvrII(VLG)を含むシグナル配列は、野生型(TKA)の範囲の発現レベルを維持し、NheI(VLA)は、野生型(TKA)より良好に機能した。
加えて、大腸菌でのFab発現を、振とうフラスコで一晩培養した後で実施し、Fab産生を、アフィニティークロマトグラフィー及び緩衝液交換によりFabを精製した後で決定した。結果は、表4に示されている。
表示されている通り、野生型(TKA)と比較して、C末端制限部位AflII(VLS)、NheI(VLA)、及びAvrII(VLG)を含むシグナル配列は、同じ様な量のFabを発現する。
上記のデータに基づいて、NheI(VLA)制限部位を、重鎖シグナル配列(phoA)に組み込むために選択した。修飾NheI(VLA)phoAシグナル配列の核酸及びアミノ酸配列は、表5に示されている。
実施例1.3:カッパ及びラムダ軽鎖大腸菌シグナル配列(ompA)用の制限部位の選択:
実施例1.2に記述した方法に類似した方法を使用して、カッパ及びラムダの両方の軽鎖シグナル配列(ompA)のC末端に組み込むための制限部位を選択した。
表1に示されているコンセンサス配列を既知の制限部位と比較した後で、ompA C末端に組み込み、それによりアミノ酸配列も修飾し、後に発現レベルを研究するために、以下の3つの制限部位:NdeI(AYG)、NdeI(AYA)、及びBsiWI(TYA)を選択した。選択された制限部位の配列は、表6に示されている。
対照として、野生型ompAシグナル配列を、発現レベルについて研究した。3個のC末端配列を含む野生型ompAシグナル配列の核酸及びアミノ酸配列は、表7に示されている。
発現レベルを評価するために、表6に示されている制限部位をompAシグナル配列に組み込んだ。その結果生じた修飾シグナル配列を使用して、a)カッパ1 O12(IGKV1−39)、b)カッパ3 L6(IGKV3−11)、又はc)ラムダ1 V1−13(IGLV1−40)生殖系遺伝子配列を含むFab断片を発現させた。これら生殖系遺伝子は、安定しており良好に発現されることが知られているため、選択された。a)カッパ1 O12(IGKV1−39)及びb)カッパ3 L6(IGKV3−11)には、CDR−L3領域:QQHYTTPPT(カッパ用)を組み込み、c)ラムダ1 V1−13(IGLV1−40)には、CDR−L3領域:QSYDSSLSGVV(ラムダ用)を組み込み、a)〜c)では、Jk1生殖系遺伝子配列をFR4としてカッパ軽鎖に使用し、Jl2/3生殖系遺伝子配列を、FR4としてラムダ軽鎖に使用した。a)表6のC末端制限部位を含むompAシグナル配列、b)上述のようにCDR−L3及びFR4が組み込まれたカッパ1 O12(IGKV1−39)、b)カッパ3 L6(IGKV3−11)、又はc)ラムダ1 V1−13(IGLV1−40)のVL生殖系配列、及びc)実施例1.2に記述されている重鎖としてIGHVH3−23 TKA構築体を含むpMORPHX11(図50に表示)プラスミドを生成した。遺伝子は全て、Geneart社(レーゲンスブルク、ドイツ)で生成された。
発現及び周辺質輸送は、大腸菌で一晩Fabを産生させ、周辺質抽出し、周辺質抽出後に抗Fd ELISAを実施することにより点検した。BBS緩衝液を使用した周辺質抽出後の抗Fd発現ELISAの結果は、図2に示されている。表示されているように、NdeI(AYA)を含むシグナル配列は、野生型(AQA)と同等な又はより良好な発現を示す。
加えて、大腸菌でのFab発現は、振とうフラスコで一晩培養した後で実施し、Fab産生は、アフィニティークロマトグラフィー及び緩衝液交換によりFabを精製した後で決定した。結果は、表8に示されている。
上記のデータに基づいて、NdeI(AYA)制限部位を、カッパ及びラムダシグナル配列(ompA)に組み込むために選択した。修飾NdeI(AYA)ompAシグナル配列の核酸及びアミノ酸配列は、表9に示されている。
実施例1.4:ファージディスプレイでのシグナル配列によるFab断片の提示効率の評価
実施例1.2及び1.3に記述されているように、Fabシグナル配列及びIgGリーダー配列のC末端に組み込むために、以下の制限部位を選択した:
重鎖可変領域(phoA及び重鎖リーダー):NheI(VLA)
軽鎖可変領域(κ及びλ)(ompA及びカッパリーダー):NdeI(AYA)
図3は、選択された制限部位及び対応するアミノ酸配列を示す。
これら修飾シグナル配列が、Fab断片の効率的な輸送及び産生を媒介することを示すために、VH、VL、及びpIII(ファージディスプレイに使用されるファージ外殻タンパク質pIII)をコードするトリシストロンディスプレイベクターに、選択されたシグナル配列が組み込まれたベクター構築体を生成した。これは、選択されたシグナル配列を含むそのようなベクターが、有用なファージディスプレイ率を提供することができたことを確認するために行った。VH3−23若しくはVH1−69生殖系遺伝子のVH、又はVL1−40、VK3−11、若しくはVK1−39生殖系遺伝子のVL、並びに選択された重鎖(phoA)制限部位:NheI(VLA)及び対照としての野生型phoA(TKA)、又は選択された軽鎖(ompA)制限部位:NdeI(AYA)及び対照としての野生型ompA(AQA)を含むpJPd1(図48に表示)トリシストロンベクター構築体を生成した。加えて、同じものを含むpMORPH30(図51に表示)トリシストロンベクター構築体を、対照として生成した。相対的提示率は、表10に示されている。
表示されている通り、選択されたシグナル配列が組み込まれたpJPd1ベクターは、pMORPH30ベクターと同等な相対的提示率をもたらし、ハイパーファージをヘルパーファージとしてファージ産生に使用した場合、pMORPH30ベクターより優れた相対的提示率が検出された。従って、修飾シグナル配列を含むpJPd1ベクターは、標的抗原に対する抗体又はそれらの機能的断片のファージディスプレイ選択用に良好に機能するはずである。
実施例1.2〜1.4には、本開示の抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを生成、発現、及び提示させるために必要なツールが記述されており、同様に、生殖系タンパク質配列を有するFR1領域を可能にする制限部位を含むシグナル配列及びリーダー配列が記述されており、抗体又はそれらの機能的断片の本開示コレクションを、任意の免疫原に対する抗体を特定するためのファージディスプレイ選択系又は哺乳動物発現系に組み込むのに有用なベクター骨格が記述されている。更に、シグナル配列は、Fabファージディスプレイ及び発現プラスミド並びに対応するIgG発現プラスミドの両方との完全な適合性を可能にする制限部位を保持する。
実施例1.5:選択されたC末端制限部位を含むIgG発現用ヒト重鎖及びカッパリーダー配列の試験
大腸菌で発現されるFabから哺乳動物で発現されるIgG型への容易な切替えを可能にするために、ompA(NdeI(AYA))及びphoA(NheI(VLA))シグナル配列のC末端と同じ制限部位を含有し、それにより3個のC末端アミノ酸配列の幾つかも修飾されるように、IgG軽鎖(ヒトカッパリーダー)及びIgG重鎖(ヒト重鎖リーダー)のヒトリーダー配列を生成した。
大腸菌に基づくFab発現プラスミドから哺乳動物IgG発現ベクターへのVHの移行は、(a)phoAシグナル配列のC末端に、並びに(b)ヒト重鎖リーダーのC末端の対応する位置に配置されている既述のNheI制限部位を使用して実施することができる。これを提供するために、phoAシグナル配列の最後の3個のアミノ酸を修飾し(TKAからVLAに)、野生型アミノ酸配列(−3〜−1)をVLSから、phoAに適合するVLAに変更することにより、ヒト重鎖リーダーのC末端を改造した。
大腸菌に基づくFab発現プラスミドから哺乳動物IgG発現ベクターへのVLの移行は、(a)ompAシグナル配列のC末端に、並びに(b)ヒトカッパリーダーのC末端の対応する位置に配置されている既述のNdeI制限部位を使用して実施することができる。これを提供するために、ompAシグナル配列の最後の3個のアミノ酸を修飾し(AQAからAYAに)、野生型アミノ酸配列(−3〜−1)をAYGから、ompAに適合するAYAに変更することにより、ヒトカッパリーダーのC末端を改造した。野生型配列及び修飾ヒト重鎖リーダー配列及びヒトカッパリーダー配列は、表11に示されている。
これら修飾シグナル/リーダー配列が、ヒトIgG1タンパク質の効率的な輸送及び産生を媒介することを示すために、修飾ヒト重鎖リーダー及び修飾ヒトカッパリーダーを両方とも、全長ヒトIgG1の哺乳動物発現用のpJP_Igプラスミド(図52〜54に表示)にクローニングし、野生型リーダー配列を置換した。修飾リーダー配列、表12に示されている可変領域遺伝子、及びカッパ又はラムダのいずれかの軽鎖及び重鎖の定常領域を含有するその結果生じた発現ベクターをHKB11細胞に形質移入し、プロテインAクロマトグラフィーを使用することにより、形質移入した数日後に細胞培養上清からヒトIgG1を精製した。IgG1含有量は、精製及び緩衝液交換後に決定した。発現収量は表12に示されている。
試験した構築体は全て大量のヒトIgG1を発現し、修飾リーダー配列が発現レベルを維持することを示す。選択された修飾リーダー配列は、(a)使用されたベクター系により、高収量のIgGタンパク質をもたらし、(b)原核生物系と哺乳動物系との間で抗体の構成、ベクター、及び発現系を切替えるための完全な適合性を提供し、(c)シグナル/リーダー配列に配置されており、それによりFR1の完全な生殖系配列が維持される。
実施例2:ヒトレパートリーにおいて最も豊富なVH/VL対の特定
本開示の態様は、ヒト免疫レパートリーに最も豊富に存在する生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの機能的断片のコレクション又はライブラリーであり、各抗体又はその機能的断片は、それぞれの生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、コレクションに組み込むために選択された生殖系タンパク質対は、コレクションから選択された抗体又はそれらの機能的断片の各々が臨床的に開発可能であり、商業的に成功をおさめることになる可能性を増加させる生物物理学的特性を含む。そのようなコレクションを生成するためには、多くの基準を評価しなければならなかった。
一般的に、以下のステップを実施した:ヒト免疫レパートリーに由来する主な生殖系遺伝子対を特定し;ヒト免疫レパートリーに由来する主な生殖系遺伝子対のcDNAを合成し、種々のベクターバックグラウンドにクローニングし、抗体又はそれらの機能的断片を産生し;主な生殖系遺伝子対の生殖系タンパク質配列を含む抗体又はそれらの機能的断片を機能的に試験して、それらの生物物理学的特性を決定し;及びそれぞれの生殖系タンパク質対を含む抗体又はそれらの機能的断片の生物物理学的特性を比較し;その後生殖系タンパク質対のサブセットを、コレクションに組み込むために選択した。幾つかの実施形態では、選択された生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列は、スキャフォールドとしての役割を果たす。それら実施形態では、スキャフォールドは、選択された生殖系タンパク質対の生殖系タンパク質配列を含み、VH及びVLは両方とも、少なくともFR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3にそれぞれの対の生殖系タンパク質配列を含む。特定の実施形態では、CDR3は、多様化されていてもよい。特定の実施形態では、FR4は固定されており、例えばVHにはJH4配列を使用することができ、カッパVLにはJk1配列を使用することができ、ラムダVLにはJl2/3を使用することができる。
実施例2.1:VH/VL対生殖系遺伝子使用頻度の決定
ヒト免疫レパートリーに由来する主なVH/VL生殖系遺伝子対を特定するために、公的に入手可能なデータを分析し、ヒトB細胞をサンプリングした。第1のステップとして、公的に入手可能なデータを調査して、B細胞から単離されたVH/VL生殖系遺伝子対を記述している文献を特定した。言及したように、多くの公的に入手可能なデータベースが抗体配列を提供しているが、多くは、可変ドメイン、VH又はVLのいずれかの配列のみを提供しており、VH/VL生殖系遺伝子対の関連性を提供するものはほとんどない。以下の文献を特定し、詳細に分析した:Wardemann H.ら(2003年)Science 301巻、1374〜1377頁、及びそれを裏付けるあらゆる表;Yurasov S.ら(2005年)J.Exp.Med.201巻、703〜712頁、及びそれを裏付けるあらゆる表;Tsuiji M.ら(2006年)J.Exp.Med.203巻、393〜401頁、及びそれを裏付けるあらゆる表;Yurasov S.ら(2006年)J.Exp.Med.203巻、2255〜2262頁、及びそれを裏付けるあらゆる表;Tiller T.ら(2007年)Immunity 26巻、205〜213頁、及びそれを裏付けるあらゆる表;及びMietzner B.ら(2008年)PNAS 105巻、9727〜9732頁、及びそれを裏付けるあらゆる表。
図4〜9は、Tsuiji M.ら(2006年)で単離されたB細胞のVH/VL対を示す。
図10〜12は、Tiller M.ら(2007年)で単離されたB細胞のVH/VL対を示す。
図13〜17は、Mietzner B.ら(2008年)で単離されたB細胞のVH/VL対を示す。
図18〜20は、Wardemann H.ら(2003年)で単離されたB細胞のVH/VL対を示す。
図21〜23は、Yurasov S.ら(2005年)で単離されたB細胞のVH/VL対を示す。
図24〜26は、Yurasov S.ら(2006年)で単離されたB細胞のVH/VL対を示す。
追加的なVH/VL対データを、下述のようにヒトB細胞の試料から特定した。
実施例2.2:ヒト試料に由来するVH/VL対生殖系遺伝子使用頻度の決定
追加的なVH/VL生殖系遺伝子対使用頻度データを取得するために、PBMCをヒト宿主から単離した。PBMCを選別し、PCRを使用してB細胞のcDNAを増幅し、B細胞に由来するDNAを配列決定し、その後、配列をIgBLAST(NCBI)で探索して、各B細胞に由来するVH/VL生殖系遺伝子対を特定した。
実施例2.2(a):ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の単離及び選別
静脈血からヒトPBMCを、及び骨髄から単核細胞を単離及び選別する一般的方法は、Tillerら、JIM 2008年に記述されている。PBMCを、以下のように単離した。40mlの静脈血をヒト供与体から(Pandemrix(商標)ワクチン接種(H1N1ワクチン、GlaxoSmithKline社製)の7日後)、4xLiヘパリン血液採取チューブ(Sarstedt社製)に採取した(各10ml)。各モノベット(monovette)の内容物を、単一の50mlファルコン(合計40ml)中で一緒にし、その後100μlのRosetteSep(StemCell technologies社製)(2.5μl/ml)を添加し、ローターで十分に混合し(5rpm)、室温で30分間インキュベートした。血液/RosettaSepの混合物を、等容積の1×PBS(Invitrogen社製)で希釈した。15mlのFicollPaque(GE Healthcare社製)を、新しい50ml円錐底チューブに添加し、合計で20mlの希釈血液を、FicollPaqueの上に層を形成するように加えた(4本のチューブ:各々15mlのFicollPaque+20mlの血液)。チューブを、室温、400gで(シグマ社製実験室用遠心機で1400rpm)30分間遠心機で遠心し、ブレーキをかけなかった。遠心分離後、濃縮されたPBMCは、血漿とFicollPaqueとの界面でバンドを形成した。PBMCを、ピペットを用いて各チューブから取り除き、新しい50mlチューブに移し換えた。PBMCを、FACS緩衝液(PBS、3%FCS)で40mlに希釈することにより洗浄し、40℃、1250rpmで10分間遠心機で遠心した。PBMCを、トリパンブルー(10μl試料+90μlトリパンブルー(PBSで1:10に希釈))を用いて計数した。
約5mlの氷冷FACS緩衝液に再懸濁することにより、PBMCを染色した。等量の細胞を染色用に調製した。蛍光体を試験用に調製した。等量を1250rpm、4℃で遠心し、上清を廃棄した。染色用の抗体を、表13に記述されているスキームに従って細胞ペレットに添加した。
その後、血球計算器の閉塞を回避するために、細胞をFACSチューブ(Eppendorf社製)上で細胞ストレーナーに通した。細胞を氷上に置き、暗所で維持した。
細胞を、目的の表現型の細胞表面マーカーにより単一選別した。例えば、抗体分泌細胞は、CD19+CD20lowCD27hiCD38hiであり、成熟未感作B細胞は、CD19+CD27negCD10negIgM+である。細胞表面マーカーの存在は、マウス抗ヒト抗体(AbD:CD19、CD27、CD38、CD−20、及びCD10)(Becton Dickinson社製:IgM)を使用して特定した。細胞は、前方散乱対側方散乱(二重識別を用いた生細胞ゲート)で、4μlの0.5×PBS、10mMのDTT、8UのRNAsin(Promega社製)を含有する単一細胞96穴PCRプレート(Eppendorf社製)へと選別した。
PCRプレートは、表14に示されているように調製した。
選別した後、各プレートを、マイクロシールホイル(BioRad社製)で直ちに密閉し、ドライアイス上に置いた。細胞選別が完了した後、プレートは全て−80℃で冷凍した。
実施例2.2(b):ヒトB細胞DNAのPCR増幅
PBMCを、実施例2.2(a)に記述されているように単離及び選別した。その後、単一選別された成熟未感作(mn)B細胞及び抗体分泌細胞(asc)のIg遺伝子転写物を、VH/VL生殖系遺伝子対形成体を決定するためにPCR増幅した。B細胞のcDNAをPCR増幅する一般的方法、及びそれに有用なプライマーは、Tillerら、J Immunol Methods、2008年に記述されている。
全体的なPCR戦略は、図27に示されている。使用した特異的プライマーは、表15に示されている。
単一選別された成熟未感作(mn)B細胞及び抗体分泌細胞(asc)のcDNAを、以下のように合成した。最初に、RHP混合物、RT混合物、及びRT混合物を氷上で調製した。RHP混合物を、以下のもので調製した:115μlの無作為六量体プライマー(Roche社製)(300ng/μl)、115μlのNP−40(Sigma社製)(10%)、35μlのRNAsin、及び542μlの水。RT混合物を、以下のもので調製した:660μlの5xRT緩衝液、110μlのdNTP(Invitrogen社製)(各25mM)、450μlの水、220μlの0.1M DTT、44μlのRNAsin(Promega社製)、55μlのSuperscript III(逆転写酵素)(Invitrogen社製)。
次に、プレートをドライアイス上に置き、3.5μlのRHP混合物を添加した。プレートをホイルで覆い、68℃の水浴で1分間インキュベートした。その後プレートを、普通の氷上に置いた。その後、7μlのRT混合物を添加し、ウエルをアルミニウムホイルで塞いだ。RT増幅プログラムを、以下の温度及び以下の継続時間で実行した:42℃で5分間、25℃で10分間、50℃で60分間、94℃で5分間、及び40℃を維持。cDNAは−20℃で保管した。
ネステッドPCRを、以下のように実施した。ヒトIgH、Igk、及びIgL V遺伝子転写物を、独立してPCR増幅した。3.5μlのcDNAをテンプレートとして使用した。PCR反応は全て、1ウエル当たり40μlの全容積の96穴プレートで実施した。各プレートについて、以下のものを用いて3本の反応チューブを各々準備した:1154μlの水、150μlの10×緩衝液、16μlのdNTP、5μlの5’プライマー混合物、5μlの3’プライマー、及び7μlのHotStar Taq(Qiagen社製)。遺伝子特異的プライマー又はプライマー混合物によるネステッドPCR反応は全て、3.5μlの未精製第1PCR産物を用いて実施した。PCRの各ラウンドは、表16に示されているように実施した。
次に、3μl等量の第2のPCRを、1xTBE緩衝液中に臭化エチジウムを含有する2%アガロースゲルで、同量のローディング緩衝液を用いて45分間150Vで泳動した。DNAバンドを、紫外線下で視覚化した。予測されたPCR産物サイズは、Igγの場合およそ450bp、Igκの場合510bp、及びIgλの場合405bpだった。
4μlのVH、VK、及びVL PCR産物(一致する対応VH又はVL産物を有する)を、96穴プレート中で16μlのddH
2Oと混合し、プレート配列決定のために、Eurofins MWG Operon社、エーバースベルク、ドイツに提出した。配列決定用プライマーは、10pmol/μl(原液は、50pmol/μl、1:5希釈)で提供され、表17に示されている。
配列決定の結果を、IgBLAST(NCBI)で探索して、図28A〜C(28〜36)に示されているVH、VK、及びVL生殖系遺伝子を特定した。
実施例2.3 ヒト免疫レパートリーで特定されたVH/VL生殖系遺伝子対
実施例2.1に記述され、図4〜26に示されているような、公的に入手可能な文献から特定されたVH/VL生殖系遺伝子対データを、実施例2.2に記述され、図28〜36に示されているような、ヒト試料から特定されたデータと統合した。
統合データを分析し、表18に順位表として、つまりヒト免疫レパートリーで特定されたVH/VL生殖系遺伝子対の濃度(%)の順位表として示されている。
実施例2.4 「未感作」ヒト免疫レパートリーにおけるVH/VL生殖系遺伝子対使用頻度
加えて、実施例2.1に記述され、図4〜26に示されているような、公的に入手可能な文献から特定されたVH/VL生殖系遺伝子対データ、及び実施例2.2に記述され、図28〜36に示されているような、ヒト試料から特定されたVH/VL生殖系遺伝子対データを含む統合データを、未感作ヒトレパートリーにおける生殖系遺伝子使用頻度を特定するために分析した。未感作で抗原未経験のB細胞集団と抗原経験済B細胞集団を区別することが重要である。未感作で抗原未経験のB細胞には、これらに限定されないが、未熟B細胞、新しく移動してきたB細胞、及び成熟未感作B細胞が含まれ、抗体配列は依然として生殖系である。抗原経験済B細胞には、これらに限定されないが、IgG抗体分泌細胞、並びにIgM及びIgG記憶B細胞が含まれ、大多数の抗体は、体細胞超変異を含む。
様々な生殖系遺伝子対が、未感作で抗原未経験のB細胞の2つのB細胞集団間で、及び抗原経験済B細胞集団と比較して、過剰出現すると考えられている。本開示の態様は、任意の免疫原に対する抗体又はそれらの機能的断片を特定するために使用することができる抗体又はそれらの機能的断片のコレクションを生成することであり、従って、未感作で抗原未経験の免疫レパートリーで主に発現されたVH/VL生殖系タンパク質対を含むコレクションを産生することが好ましい場合がある。
未感作で抗原未経験の免疫レパートリーで主に発現されたVH/VL生殖系遺伝子対を特定するために、実施例2.1に記述され、図4〜26に示されているような、公的に使用可能な文献からの統合データ、及び実施例2.2に記述され、図28〜36に示されているような、ヒト試料から特定されたVH/VL生殖系遺伝子対データを分析して、未熟B細胞、新しく移動してきたB細胞、及び成熟未感作B細胞の抗原未経験B細胞集団を、抗原経験済B細胞集団から分離した。未感作ヒト免疫レパートリーを代表するVH/VL生殖系遺伝子対の順位は、表19に示されている。
実施例3:VH及びVL生殖系遺伝子使用頻度の決定
実施例2.3〜4の表18〜19を調査することにより、少数のVH、Vκ、及びVλ生殖系遺伝子が、生殖系遺伝子の全数と比較して、ヒト免疫レパートリー及び未感作ヒト免疫レパートリーにおいて優勢であることが示される。Wildtらの895〜896頁にも、この現象が記述されている。Wildtらは、高頻度で発現される重鎖及び軽鎖遺伝子セグメントが対を形成することが多いということも述べており、サンプリングされた対形成体の半分は、わずか5つのVH/VL生殖系遺伝子対に対応するに過ぎないことも観察された。
加えて、統合データを評価して、ヒト免疫レパートリーで独立して高度に発現されるVH、Vκ、及びVλ生殖系遺伝子を特定した。従って、実施例2.1に記述され、図4〜26に示されているような、公的に入手可能な文献から特定されたVH/VL生殖系遺伝子対;実施例2.2に記述され、図28〜36に示されているような、ヒト試料から特定されたVH/VL生殖系遺伝子対;及び追加的な参考文献を含み、未対形成VH及び/又はVL生殖系遺伝子発現が含まれているデータ(Brezinschek H.P.ら、(1997年)J.Clin.Invest.99巻、2488頁、Demaison C.ら、(1995年)lmmunogenetics 42巻、342頁、及びFoster SJ.ら、(1997年)J.Clin.Invest.99巻、1614頁を参照。これらの文献は両方とも参照によりそれらの全体が組み込まれる)を、どのVH、Vκ、及びVλ生殖系遺伝子がヒト免疫レパートリーの中で最も高度に発現されるかを決定するために、統合して順位付けした。表20は、VH、Vλ、及びVκ生殖系遺伝子の出現率の順位を示す。
未結合VH、Vλ、及びVκ生殖系遺伝子出現率を示す表20、並びにヒト免疫レパートリー及び未感作ヒト免疫レパートリー内の結合VH/VL対生殖系遺伝子出現率を示す表18〜19を比較すると、結合又は対形成とは無関係に評価した場合に高度に代表的なVH、Vλ、及びVκ生殖系遺伝子の多くは、VH/VL対形成体で評価した場合でも高度に代表的だったことは明らかだった。
この観察は、ヒト免疫レパートリーのVH/VL生殖系遺伝子対を示す図39〜40、及び未感作ヒト免疫レパートリーのVH/VL生殖系遺伝子対を示す図41〜42に示されているプロットにより確認される。これらの図は、統合データから特定された各VH/VL生殖系遺伝子対の、マトリックスでプロットされた実際の数を示し、Y軸はVH生殖系遺伝子の順位を含み、X軸はVL生殖系遺伝子の順位を含む。
実施例4:それらの生物物理学的特性を更に評価するためのVH/VL生殖系遺伝子対形成体の選択
次のステップとして、ヒト免疫レパートリーには約2500対が存在し、本発明者らの目的は、生殖系タンパク質対のうちのどれが、選択及び開発を支援することになる好ましい生物物理学的特性を含みているかを特定することであったため、どの生殖系タンパク質対を試験すべきかを決定しなければならなかった。1つの方法は、ヒト免疫レパートリーで最も顕著に生じる可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対を試験することであろう。例えば表18を参照されたい。例えば、試験用に上位400対を選択してもよく、又はある閾値濃度を超えて発現された可変重鎖及び可変軽鎖生殖系遺伝子対を選択してもよい。この手法では、多数の可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質対配列の合成及び試験が必要とされることになり、従って、そのような手法は、あまり効率的ではない場合がある。
代替的な手法として、本発明者らは、ヒト免疫レパートリーから顕著に発現された対の大多数を代表するか、正確に再現するか、又は包含する可変重鎖及び可変軽鎖生殖系対のサブセットを選択した。この手法は、少数の可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系遺伝子が、ヒト免疫レパートリーにおいて優勢であるという上記の観察に、部分的に基づいていた。従って、少数の顕著に発現された重鎖及び軽鎖生殖系遺伝子(未対形成)を組み合わせて、ヒト免疫レパートリーを代表する一群の対を生成することができる。
この手法は、以下のように行われた。実施例3では、可変重鎖、可変κ軽鎖、及び可変λ軽鎖生殖系遺伝子発現を決定した。次のステップとして、顕著なVH、Vλ、及びVκ生殖系遺伝子のin silico分析を実施し、少なくとも以下の要因を評価した:CDRの長さ、等電点(pI)(好ましい等電点は、標準的なpH5.5〜pH7製剤緩衝液中での安定性を提供するはずであるため、7.5以上である)、翻訳後修飾(PTM)(具体的には、N−結合グリコシル化部位(NxS又はNxT)又はAsp切断(多くの場合、DPでの)、Asp異性化(DD、DG)、脱アミド化(NS、NG)等の化学的修飾(これらはin vivo(血清中)で又は製剤緩衝液中での保管時に生じる場合があり、抗体結合の喪失に結び付く場合がある)、CDRにおけるメチオニンの存在(溶媒との接触時に酸化される場合がある)、未対形成システインの存在(任意の他の未対形成システインとジスルフィド結合を形成することになり、従ってタンパク質の架橋及び/又は発現レベルの低下に結び付く)、生殖系からの逸脱、潜在的なT細胞エピトープの存在、及び理論上の凝集傾向。in silico分析からの選択されたデータは、図37〜38に示されている。
最も顕著なVH、Vλ、及びVκ生殖系遺伝子のin silico分析に基づいて、これらのサブセットを、合成、組み合わせ、及びその後の機能性試験のために選択し、このサブセットは図37〜38に示されている。表示されている通り、最も顕著なVH、Vλ、及びVκ生殖系遺伝子の全てが、更なる試験のために選択されるとは限らなかった。表20に示されているように、最も顕著なVH生殖系遺伝子のうち、IGHV4−34、IGHV4−59、及びIGHV3−9は選択しなかった。その代りに、図37〜38及び表21に示されているように、IGHV3−74、IGHV3−73、及びIGHV6−1を選択した。合計で、20個のVH生殖系遺伝子を選択した。表20に示されているように、最も顕著なVκ生殖系遺伝子のうち、IGKV4−1、IGKV2−28/2D−28、IGKV1−33/1D−33、及びIGKV1−8は選択しなかった。合計で、12個のVκ生殖系遺伝子を選択した。表20に示されているように、最も顕著なVH生殖系遺伝子のうち、IGLV1−44は選択しなかった。合計で、8個のVλ生殖系遺伝子を選択した。
表21もまた、ヒト免疫レパートリーに由来するVH、Vκ、及びVλ生殖系遺伝子使用頻度の順位を示し、更なる機能性試験のために選択された生殖系遺伝子は太字及び下線で示されている。
実施例4.1:ヒト免疫レパートリーで最も顕著なVH/VLの代表をもたらす豊富なVH、Vκ、及びVλ生殖系遺伝子の組換え
上記で考察されているように、並びに表21及び図39〜40、41〜42に示されているように、組み合わせた場合に、ヒト免疫レパートリー及び未感作ヒト免疫レパートリーに由来する顕著に発現されたVH/VL生殖系遺伝子対の大多数を正確に再現又は包含するように、20個のVH、12個のVκ、及び8個のVλを選択した。
次のステップとして、VH、Vκ、及びVλ生殖系遺伝子から選択された20個のVH、12個のVκ、及び8個のVλを合成し、組み合わせて、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現されたVH/VL生殖系遺伝子対の大多数を正確に再現又は包含する400個のVH/VL生殖系遺伝子対を生成した。その後、400個のVH/VL生殖系遺伝子対を、それらの生物物理学的特性について試験した。
表22は、400個のVH/VL生殖系遺伝子対を生成するために組み合わせた、選択されたVH、Vκ、及びVλ生殖系遺伝子を示す。
機能性試験のために生成された400個のVH/VL生殖系遺伝子対が、実際に、ヒト免疫レパートリーで顕著に発現されたVH/VL生殖系遺伝子対の大多数を正確に再現又は包含することを示すために、表18を、表23として下記にもう一度示し、表23では、試験した400個のVH/VL対は、太字及び下線で示されている。
実施例4.2
実施例2.4で考察されているように、未感作で抗原未経験のB細胞集団と抗原経験済B細胞集団を区別することが重要であると考えられた。従って、未感作ヒト免疫レパートリーで特定されたVH/VL生殖系遺伝子対の順位を示す表19を、表24として下記にもう一度示し、表24では、更なる機能性試験のために合成及び組み合わされた400個のVH/VL生殖系遺伝子対は、太字及び下線で示されている。
実施例5:機能分析のための生殖系遺伝子の産生
次のステップとして、表25に示されているような、組み合わせ及びその後の試験のために選択されたVH、Vλ、及びVκ生殖系遺伝子を、大腸菌発現についてのコドン最適化(哺乳動物発現には中立的)及び合成のために、Geneart社(レーゲンスブルク、ドイツ)に送付した。
VH、Vλ、及びVκ生殖系遺伝子の各々の生殖系遺伝子配列は、図45〜47に示されている。各生殖系遺伝子配列を、以下のものを含むように合成した:
a)VHの場合:リーダー配列(図3に示されているようなNheI制限部位が組み込まれた修飾phoAシグナル配列);生殖系FR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3(図3に示されているようなBssHII制限部位が組み込まれている);Ewert S.ら、J.Mol.Biol.(2003年)325巻、531〜553頁で使用されているような4D5抗体のCDR−H3(WGGDGFYAMDY);及びJH4 FR4(図3に示されているようなXhoI/SalI制限部位が組み込まれている);
b)Vκの場合:リーダー配列(図3に示されているようなNdeI制限部位が組み込まれた修飾ompAシグナル配列);生殖系FR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3(図3に示されているようなBbsI制限部位が組み込まれている);Ewert S.ら、J.Mol.Biol.(2003年)325巻、531〜553頁によるカッパ様CDR−L3(QQHYTTPPT);及びJk1 FR4(図3に示されているようなKpnI制限部位が組み込まれている);
c)Vλの場合:リーダー配列(図3に示されているようなNdeI制限部位が組み込まれた修飾ompAシグナル配列);生殖系FR1、CDR1、FR2、CDR2、及びFR3(図3に示されているようなBbsI制限部位が組み込まれている);Ewert S.ら、J.Mol.Biol.(2003年)325巻、531〜553頁によるラムダ様CDR−L3(QSYDSSLSGVV);及びJl2/3 FR4(図3に示されているようなKpnI制限部位が組み込まれている)。
実施例6:ヒト免疫レパートリーを代表するVH/VL生殖系遺伝子対の機能性試験
その後400個のVH/VL生殖系遺伝子対を、以下の機能的特性に関して試験した:a)ファージ産生及びファージELISA後のFab型の相対的提示;b)大腸菌でFabを産生させ、大腸菌細胞を溶解し、産生されたFabをELISAで検出した後の相対的Fab発現レベル;c)大腸菌でFabを産生させ、大腸菌細胞を溶解し、高温でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出した後のFabの温度安定性;d)ウシ/マウス血清中でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出することによる、大腸菌溶解産物由来のFabのウシ/マウス血清安定性;e)哺乳動物細胞でIgG1を産生させ、細胞培養上清由来の分泌IgG1をELISAで検出した後の相対的ヒトIgG1発現レベル;及びf)ウシ/マウス血清中でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出することによるヒトIgG1のウシ血清安定性。
実施例6.1:機能的特徴付けのためのファージで提示されたFab貯留の産生
表25に示されているような、実施例5で合成された抗体又は抗体断片を、機能性試験のためにトリシストロンFabディスプレイベクターpJPd1(図48)にクローニングした。400通りの組み合わせをもたらし、表18及び図39〜40に示されているような、ヒト免疫レパートリーに由来する最も顕著なVH/VL生殖系遺伝子対の圧倒的大多数を代表するマスター遺伝子の各々の組み合わせ、8個のVλ及び12個のVκと組み合された20個のVHを含有していたFab貯留を生成した。
上記の遺伝子対を含むファージを、96穴プレートを使用して小規模で産生させた。ウエルの各々に2xYT/CAM/TET/Gluc培地を充填することによりマスタープレートを生成し、400通りのVH/VL組み合わせに由来するクローンを播種し、pMORPH30_Vk3−11_AQA/VH3−23_TKA又はpMORPH30_Vk3−11_AYA/VH3−23_VLA(pMORPH30は図51に示されている)を対照として使用した。プレートを37℃で振とうしながら一晩インキュベートした。マスタープレートを、15%グリセロールの終濃度で保管し、−80℃で冷凍した。
2xYT/CAM/TET/Glucを培地として使用し、上述のマスタープレートに由来するクローンを播種して、ファージ産生のための追加的な96穴プレートを生成した。OD600nmが約0.5に到達するまで、プレートを、37℃で約2〜4時間400rpmで振とうしながらインキュベートした。
プレートを、1ウエル当たり5μlのヘルパーファージに感染させた(ハイパーファージ;PROGEN社製;1×1012pfu/ml)。プレートを、37℃で振とうさせずに45分間インキュベートし、その後400rpmで振とうさせながら60分間インキュベートした。細菌を、40℃で5分間2200gで遠心沈降させた。
ヘルパーファージを含有する上清を廃棄し、感染大腸菌ペレットを、無グルコースの2xYT/Cam/TET/Kan/IPTGで再懸濁した。再懸濁したペレットを、2xYT/Cm/TET/Kan/IPTGが予め満たされていた新しい96深穴プレートに移した。プレートを、22℃で振とうしながら一晩インキュベートした。大腸菌細胞及び残屑を遠心沈降して廃棄することにより、ファージを含有する上清を回収した。
実施例6.2:ELISAを使用したFabファージ提示順位の評価
実施例6.1に記述されているように調製したファージ上清を、ファージELISAでFabファージ提示を順位付けするために使用した。 Fab断片の提示を、2つの異なる捕捉抗体を使用したファージELISAで評価した:
(1)抗M13抗体(Amersham社製 #27−9420−01)を、主要外殻タンパク質g8pによるファージ粒子の捕捉に使用した;従ってファージ力価を決定することができる。
(2)提示されたFabに結合する抗Fd抗体(Binding Site社製 #PC075)を使用した;従ってマスター遺伝子を含むファージを提示するFabのみが捕捉される。
抗M13抗体の場合は、7.5μg/ml濃度の100μl抗体溶液を、及び抗Fd抗体の場合は、1.0μg/ml濃度の100μl抗体溶液を別々のウエルに分注し、積層ホイルでプレートを密閉し、4℃で一晩インキュベートすることにより、それぞれの捕捉抗体を黒色96穴ウェルMaxisorp(商標)プレートに固定化した。翌日に、プレートをTBSTで2回洗浄し、各ウエルを、300μlのCTBSTで1時間室温にてブロッキングした。
ファージ上清及び参照試料の両方を、以下のように検出のために移し換えた。ブロッキングしたELISAプレートを、TBSTで2回洗浄した。CTBSTで適切に希釈された100μlのファージ上清を、希釈プレートからコーティングされたELISAプレートに移し換え、室温で1〜2時間インキュベートし、TBSTで5回洗浄した。CTBSTで1:5000に希釈された100μl/ウエルの抗M13ペルオキシダーゼ結合体(Amersham社製)を添加し、室温で1〜2時間インキュベートした。Quanta Blu(Pierce社製)作業用溶液を、1部(例えば、0.5ml)のペルオキシド溶液と9部(例えば、4.5ml)の基質溶液と混合することにより調製し、それを少なくとも30分間室温に平衡化させた。ELISAプレートをTBSTで5回洗浄し、100μl/ウエルのQuantaBlu作業用溶液を添加した。約2分間のインキュベーション時間後に、及びその後は5分間隔で、蛍光(励起:320nm、発光:430nm)を測定した。
ELISAデータの評価は以下のように実施した:HuCAL GOLD基準ファージ調製物(VH3カッパ+ラムダ)を使用することにより検量線を作成し、ファージ上清及び対照の力価を計算した。各試料について、抗Fdに対する力価を、抗M13(抗pVIII)に対する力価で除算し、その結果生じた比率が、相対的提示率である。
Fabの相対的提示率は、公的に入手可能ではない内部標準物(HuCAL GOLDファージ調製物VH3カッパ+ラムダ)を使用して計算されたため、相対的提示率は、順位として評価した。相対的提示値を順位付けすることにより、当業者であれば、任意の対照を使用して上記の方法を再現することができる。例えば、各生殖系タンパク質対は、対照に対する量を示す。従って、本発明者らの対照と比較して最も高い相対的提示率を有する生殖系タンパク質対も、具体的な相対的提示率は異なる可能性が高いだろうという事実にもかかわらず、任意の対照と比較して最も高い相対的提示率を示すだろう。従って、図55に示されており、表32にも示されている相対的提示データを使用して値の順位表を作成し、その順位表では、データを最高値から最低値に順位付けした。この順位表は、表26に示されている。この表から、サンプリングしたFabの上位10%、20%、30%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、及び90%以内の相対的提示率を含む生殖系タンパク質対を特定することができる。
具体的には、試験した400対から、196対の相対的提示値を得た。表26を参照されたい。従って、当業者であれば、どの生殖系タンパク質対が、サンプリングしたFabの上位10%、20%、30%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、又は90%以内にあるかを正確に決定することができる。例えば、上位75%には、表26の1〜147番に順位付けられた生殖系タンパク質対が含まれている。
図55は、400個のVH/VL生殖系遺伝子対のほとんどの相対的提示率を示す。
実施例6.3:大腸菌溶解産物中のFab発現レベルを決定するための、400個のVH/VL組み合わせのスクリーニングELISA
マスタープレート(MP)は、Fab発現ベクターpJPx1(図49に表示)にあるVH/VL組み合わせの貯留により形質転換されたクローンを選択し、ウエル毎に2YT/Cam/1%Gluc培地に入れることにより播種した。プレートを、37℃で振とうしながら一晩インキュベートした。発現プレート(EP)は、MPからの2.5μlの培養物をウエル毎に2YT/Cam/0.1%グルコースに入れて播種した。対照(表27を参照)は、グリセロール原液から播種した。これらプレートを、37℃で6時間インキュベートし、振とうし、その後Fab発現を、IPTGを添加することにより誘導し、振とうしながら一晩22℃でインキュベートした。大腸菌細胞溶解産物を、ホウ酸/EDTA/リゾチーム緩衝液をEPに添加することにより産生し(22℃で1時間のインキュベーション、振とう)、その後細菌溶解産物を12.5%のMPBSTでブロッキングし、少なくとも30分間室温で振とうした。発現プレートからの大腸菌溶解産物を、0.5%のMPBSで適切に希釈し、次のアッセイで使用した。
表27は、使用した未標識コーティング抗体及びAP標識検出抗体を示す。
スクリーニングELISAは、以下のステップを含んでいた:MaxiSorpプレートの384個のウエルを、PBSで希釈された抗ヒトIgG Fd特異的抗体でコーティングするステップ、及び4℃で一晩インキュベートするステップ。翌日、プレートをPBSTで2回洗浄し、各ウエルに(PBS中5%の粉乳)を添加し、振とうしながら室温で1〜2時間インキュベートすることによりブロッキングした。その後プレートをPBSTで再び洗浄し、0.5%のMPBSで希釈されたブロッキング済の大腸菌溶解産物を添加し、振とうしながら室温で1時間インキュベートした。対照#3及び#5も添加した。その後プレートをPBSTで洗浄し、AP標識検出抗体を、0.5%のMPBSで希釈した。希釈した検出抗体を添加し、その後ゆっくりと振とうさせながら室温で1時間インキュベートした。シグナルは、以下のようにして特定した:ウエルをTBSTで洗浄し、20μlのAttoPhos(ddH2Oで1:5に希釈)を添加し、Tecan社製(infiniTe F200型)プログラムPrimeScreenを使用して、5分及び7〜8分の時点で測定した。
相対的Fab発現レベルは、基準Fab pMx11_FH VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAのELISAシグナルにより、それぞれのVH/VL対のELISAシグナルを除算することにより計算する。これにより、同様に高いELISAシグナルは、相対的Fab発現レベルが1という結果となる。基準Fabは、以下を含むpMORPHX11プラスミド(図50に表示)で発現される:a)C末端NheI制限部位を含む修飾phoA重鎖シグナル配列;b)C末端NdeI制限部位を含む修飾ompA軽鎖シグナル配列;c)図45Aに示されているようなVH1−69*01生殖系遺伝子の可変重鎖生殖系タンパク質配列;d)図47Aに示されているようなIGLV1−40生殖系遺伝子の可変軽鎖生殖系タンパク質配列;e)hu4D5−8抗体のCDR−H3(WGGDGFYAMDY)及び重鎖FR4のJH4生殖系タンパク質配列が組み込まれていること;f)CDR−L3領域(QSYDSSLSGVV)及び軽鎖FR4のJl2/3生殖系タンパク質配列が組み込まれていること。hu4D5−8は、Carter P.ら、(1992年)”Humanization of an anti−p185Her2 antibody for human cancer therapy”Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89巻、4285〜4289頁)に記述されている。遺伝子は全て、Geneart社(レーゲンスブルク、ドイツ)で生成された。
結果は、表56に示されている。
実施例6.4:BEL溶解産物中のFabの温度安定性を決定するための、400個のVH/VL組み合わせのスクリーニングELISA
発現プレートを、実施例6.3のように生成した。発現プレートからの希釈大腸菌溶解産物を、様々な温度で45分間インキュベートし、次のアッセイで使用した。
表29は、使用した未標識コーティング抗体及びAP標識検出抗体を示す。
スクリーニングELISAは、以下のステップを含んでいた:MaxiSorpプレートの384個のウェルを、PBSで希釈されたコーティング抗体(上記の表を参照)でコーティングした。プレートを、4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをPBSTで洗浄し、各ウエルに5%MPBSを添加し、振とうしながら室温で1〜2時間インキュベートすることによりブロッキングした。その後、発現プレートからの希釈大腸菌溶解産物を、4つの96穴PCRプレートに分注し(各々約40μl)、各温度で45分間、PCRサイクラーで様々な温度(4℃(氷上)、60℃、70℃、80℃、その後氷上)にかけた。ブロッキングされた384穴プレートをPBSTで洗浄し、その後事前インキュベートされたFab溶解産物をプレートに添加した。その後プレートを、室温で振とうしながら1時間インキュベートした。プレートをPBSTで洗浄し、AP標識検出抗体を、0.5%のMPBSで希釈した。20μl/ウエルの希釈検出抗体を添加し、ゆっくりと振とうさせながら室温で1時間インキュベートした。シグナルは、以下のように特定した:ウエルをTBSTで洗浄し、全てのウエルにAttoPhos(ddH2Oで1:5に希釈)を添加した。シグナルは、様々な時点で(5分〜10分)、Tecan社製(infiniTe F200型)プログラムPimeScreenを使用して測定した。
結果は、表57に示されている。
実施例6.5:大腸菌溶解産物中のFabの血清安定性を決定するための、400個のVH/VL組み合わせのスクリーニングELISA
発現プレートを、実施例6.3のように生成した。Fab含有大腸菌溶解産物を、以下のステップを使用してウシ及びマウス血清で希釈及びインキュベートした:発現プレートからの大腸菌溶解産物を50%血清(全容積は100μl)で希釈し、1:1000のCamを添加して細菌増殖を防止し、溶解産物を、2つの96穴プレートに分割し、プレートを両方とも冷凍した。第1のプレートを解凍し、12〜13日間37℃でインキュベートした。第2のプレートは、ELISAを実施するまで−80℃で保管した(37℃でのインキュベーション0日)。
表30は、使用した未標識コーティング抗体及びAP標識検出抗体を示す。
11又は12日目に、MaxiSorpプレートの384個のウエルを、PBS希釈された20μlのコーティング抗体でコーティングした。プレートを、4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをPBSTで洗浄し、各ウエルに5%MPBSを添加し、振とうしながら室温で1〜2時間インキュベートすることによりブロッキングした。その後、ブロッキングされた384穴ウエルプレートを、PBSTで洗浄した。−80℃及び37℃試料からの血清中大腸菌溶解を、コーティングされたELISAプレートに移し、振とうさせながら室温で1時間インキュベートした。プレートをPBSTで洗浄し、AP標識検出抗体を、0.5%のMPBSで希釈した。AP標識検出抗体を添加し、その後プレートを、振とうさせながら室温で1時間インキュベートした。シグナルは、以下のように特定した:ウエルをTBSTで洗浄し、全てのウエルにAttoPhos(ddH2Oで1:5に希釈)を添加した。シグナルは、様々な時点で(5分〜10分)、Tecan社製(infiniTe F200型)プログラムPrimeScreenを使用して測定した。
ウシ血清安定性試験の結果は、図58に示されている。
マウス血清安定性試験の結果は、図59に示されている。
実施例7:生物物理学的特性を評価するためのIgGの産生
400個のVH/VL生殖系遺伝子対を産生する場合、20個の可変領域重鎖遺伝子を、図52に示されているヒトIgG1発現ベクターpJP_hIgG1にサブクローニングした。同時に、12個の可変領域カッパ遺伝子を、図53に示されている哺乳動物カッパ軽鎖発現ベクターpJP_hIgkappaにサブクローニングし、8個の可変領域ラムダ遺伝子を、図54に示されている哺乳動物ラムダ軽鎖発現ベクターpJP_hIglambdaにサブクローニングした。
各々重鎖及び軽鎖発現プラスミドを同時形質移入することにより、400個のVH/VL対全てを、単に40個の発現構築体をクローニングすることにより別々に産生させることができる。従って、20個の重鎖構築体全てを、軽鎖発現構築体の各々を用いてHEK.EBNA細胞に同時形質移入した。ヒトIgG1を、形質移入の数日後に細胞培養上清から回収又は検出した。
実施例7.1:IgG発現順位
ライブラリーに含めるべきVH/VL対形成体の選択基準の1つは、400個の異なるVH/VL対形成体のIgG型での発現レベルである。ヒトIgG1型の各VH/VL対形成体の発現レベルを、サンドイッチELISAにより評価した。従って、ヒトIgG1型の400個のVH/VL組み合わせ全てを、HEK.EBNA細胞に形質移入し、小規模で発現させた。細胞培養上清を数日後に回収し、IgGレベルを評価した。
以下の手順を実施した。384穴MaxiSorp(商標)プレートを、PBS中2.5μg/mlのFcγ−pan R10Z8E9マウス抗ヒトIgGでコーティングした。プレートを、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBSTで洗浄した。プレートを、PBST中5%のBSA又は1×Chemiblockerでブロッキングし、振とうさせながら室温で1時間インキュベートし、再びPBSTで洗浄した。IgG発現上清を、2.5%BSA−PBSTで希釈し、希釈試料を、ブロッキング及び洗浄されたELISAプレートに添加した。以下の対照を使用した:何も入っていない上清、並びに低発現抗体、中程度発現抗体、及び高発現抗体を有する上清。プレートを、室温で振とうしながら2時間インキュベートした。その後プレートをTBSTで洗浄した。1%BSA−TBSTで適切に希釈されたFcγ−pan R10Z8E9マウス抗ヒトIgGビオチン結合体を添加した。プレートを、室温で1時間インキュベートした。プレートをTBSTで洗浄した。0.5%BSA−TBSTで1:2000に希釈されたストレプトアビジン−APを添加し、プレートを、振とうさせながら室温で1時間インキュベートした。プレートをTBSTで洗浄した。使用前にTBSTで直接的に希釈されたAttoPhos(商標)蛍光基質(製造業者の説明書に従って調製した)を添加した。5及び10分後に、Tecan社製マイクロプレートリーダで蛍光を測定した。
相対的IgG1発現レベルを、基準IgG1 MOR03080(表31に表示)のELISAシグナルにより、それぞれのVH/VL対のELISAシグナルを除算することにより計算した。これにより、同様に高いELISAシグナルは、相対的IgG発現レベルが1となる結果となる。
結果は、図60に示されている。
実施例7.2:IgG1血清安定性順位
ライブラリーに含めるべき可変重鎖及び可変軽鎖対形成体の選択基準の1つは、400個の異なる可変重鎖及び可変軽鎖対形成体のIgG型の血清安定性である。各IgG抗体上清の血清安定性は、50%マウス血清中で14日間インキュベーションし、その後マウス抗ヒトIgG(CH2)クローンR10Z8E9を用いたサンドイッチELISAにより評価した。従って、ヒトIgG1型の400個のVH/VL組み合わせ全てを、HEK.EBNA細胞に形質移入し、小規模で発現させた。細胞培養上清を数日後に回収し、上清中のIgGを血清安定性に関して試験した。
以下の手順を実施した。384穴MaxiSorp(商標)プレートを、PBS中2.5μg/mlのFcγ−pan R10Z8E9マウス抗ヒトIgGでコーティングした。プレートを、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBSTで洗浄し、その後5%BSA−PBST又は1×Chemiblockerを用いて室温で振とうさせながら1時間ブロッキングした。プレートをPBSTで洗浄した。IgG1含有細胞培養上清を、a)2.5%BSA−PBST及びb)50%マウス血清で希釈し、37℃で少なくとも14日間インキュベートし、これら試料を、ブロッキング及び洗浄されたELISAプレートに添加した。以下の対照を使用した:何も入っていない上清、並びに低発現抗体、中程度発現抗体、及び高発現抗体を有する上清。プレートを、室温で振とうしながら2時間インキュベートした。プレートをTBSTで洗浄した。1%BSA−TBSTで0.8μg/mlに希釈されたFcγ−pan R10Z8E9マウス抗ヒトIgGビオチン結合体を添加した。プレートを、室温で振とうしながら1時間インキュベートした。プレートをTBSTで洗浄した。0.5%BSA−TBSTで1:2000に希釈されたストレプトアビジン−APを添加した。プレートを、室温で振とうしながら1時間インキュベートした。プレートをTBSTで洗浄した。使用前にTBSTで直接的に1:5に希釈されたAttoPhos(商標)蛍光基質(製造業者の説明書に従って調製した)を添加した。5及び10分後に、Tecan社製マイクロプレートリーダで蛍光を測定した。
結果は、図61に示されている。
実施例8:コレクション組み込むための、好ましい生物物理学的特性を有するVH/VL対の選択
400個のVH/VL生殖系遺伝子対を、以下の特性:a)ファージ産生及びファージELISA後のFab型の相対的提示;b)大腸菌でFabを産生させ、大腸菌細胞を溶解し、産生されたFabをELISAで検出した後の相対的Fab発現レベル;c)大腸菌でFabを産生させ、大腸菌細胞を溶解し、高温でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出した後のFabの温度安定性;d)ウシ/マウス血清中でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出することによる、大腸菌溶解産物由来のFabのウシ/マウス血清安定性;e)哺乳動物細胞でIgG1を産生させ、細胞培養上清由来の分泌IgG1をELISAで検出した後の相対的ヒトIgG1発現レベル;及びf)ウシ/マウス血清中でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出することによるヒトIgG1のウシ血清安定性に関して試験したら、次のステップは、どのVH/VL生殖系遺伝子対をコレクションに組み込むべきかを選択することだった。
VH/VL生殖系タンパク質対に関する機能性試験の結果は、表32に示されている。
前述の例に記述されているように、優勢なVH及びVL生殖系遺伝子、及び優勢なVH/VL生殖系遺伝子対を、ヒト免疫レパートリー及び未感作ヒト免疫レパートリーから特定し、その後好ましい生物物理学的特性を有する可変重鎖及び可変軽鎖生殖系タンパク質配列選択するために、優勢なVH及びVL生殖系タンパク質配列をin silicoで分析した。表21及び図37〜38に一般的に示されているように、上位20個のVH、上位8個のVλ、及び上位12個のVκを、合成、組み合わせ、及びその後の機能分析のために選択した。生殖系遺伝子配列を合成し、その後、可変領域の各々が、in silicoで特定されたように好ましい生物物理学的特性を有する、免疫レパートリーに見出される豊富な生殖系遺伝子対を代表する400個の生殖系タンパク質対を生成するために組み合わせた。400個のVH/VL生殖系遺伝子対を、以下の機能的特性に関して試験した:a)ファージ産生及びファージELISA後のFab型の相対的提示;b)大腸菌でFabを産生させ、大腸菌細胞を溶解し、産生されたFabをELISAで検出した後の相対的Fab発現レベル;c)大腸菌でFabを産生させ、大腸菌細胞を溶解し、高温でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出した後のFabの温度安定性;d)ウシ/マウス血清中でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出することによる、大腸菌溶解産物由来のFabのウシ/マウス血清安定性;e)哺乳動物細胞でIgG1を産生させ、細胞培養上清由来の分泌IgG1をELISAで検出した後の相対的ヒトIgG1発現レベル;及びf)ウシ/マウス血清中でインキュベーションした後で非変性FabをELISAで検出することによるヒトIgG1のウシ血清安定性。
表32に提供されたデータを使用して、当業者であれば、好ましい生物物理学的特性を有する生殖系タンパク質対を容易に特定することができる。
一般的に、各機能的特性における閾値を有する生殖系タンパク質対を、コレクションに組み込むために選択した。例えば、幾つかの実施形態では、以下の特性の全てを含む生殖系タンパク質対を、コレクションに組み込むために選択した:i)Fab型の相対的提示率が、サンプリングしたFabの上位75%以内の値を含むこと、ii)Fab型の発現レベルが、Fab VH1−69 VLA_Vl1−40 AYAと比較して少なくとも0.4であること、iii)Fab型の熱安定性が60℃以上にて少なくとも45分間であること、iv)Fab型のウシ又はマウス血清安定性が37℃にて10日間を超えること、v)IgG型の発現レベルが、MOR03080と比較して少なくとも0.4であること、及びvi)IgG型の血清安定性が37℃にて14日間であること。表32では、これら機能的特性を全て含む生殖系タンパク質対は、太字及び下線で示されている。
しかしながら、上述されているように、機能的特性の1つ又は複数を有する生殖系タンパク質対を、コレクションに組み込むために選択してもよい。本明細書では、試験した400個の生殖系タンパク質対の総合順位表を作成し、その結果、試験した機能的特性の各々に重みを加えて、各生殖系タンパク質対を他に対して順位付けすることができた。これは、本発明者らが、列挙された機能的特性の1つ若しくは複数又は全てを有する1つ又は複数の生殖系タンパク質対を選択することを可能にした。幾つかの実施形態では、コレクションは、上記の特徴を有する生殖系タンパク質対の全てを含む。幾つかの実施形態では、コレクションは、試験した400対の中で最も高い総合スコアを有する生殖系タンパク質対を含む。幾つかの実施形態では、試験した400対の上位10%、上位20%、又は上位30%以内の総合スコアを有する生殖系タンパク質対を、コレクションに組み込むために選択した。
記述、特定の例、及びデータは、例示的な実施形態を示しているが、説明のために提供されているものであり、本発明を限定することは意図されていないことが理解されるべきである。本発明内の種々の変更及び改変は、当業者であれば、本明細書に含まれている考察、開示、及びデータから明白になるだろう。従って、それらは本発明の一部であるとみなされる。