JP5803333B2 - スルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
前記のスルホン酸ナトリウム基含有ポリマー微粒子を、前記の固体燃料電池における膜−電極接合体に用いる場合、できるだけプロトン伝導性が高く(スルホン酸ナトリウム基の導入量が多く)、かつカーボン担持白金触媒における白金粒子の粒子径は、通常1〜30nmであるので、当該スルホン酸ナトリウム基含有ポリマー微粒子としては、できるだけ前記白金粒子の粒子径に近い粒子径を有するものが要求される。
すなわち、スルホン酸ナトリウム基含有ポリマー粒子においては、いかにしてスチレンスルホン酸ナトリウム基の量を増加するかが重要となる。
このような逆相乳化重合法を用いた技術として、特許文献1に、(A)アクリルアミド、(B)アクリル酸、(C)(2−メタクリロイロキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド及び(D)(2−アクリロイロキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリドの共重合体からなるポリマー微粒子の油中分散エマルションを逆相乳化重合により得る技術が開示されている。
本発明は、このような状況下になされたもので、スルホン酸ナトリウム基が多量に導入された狭い粒子径分布を有するナノメートルレベルのポリマー微粒子であって、水に溶解することなく、かつプロトン伝導性に優れ、固体燃料電池における膜−電極接合体(MEA)等に好適に用いられるスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子、及びこのものを効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
ポリマー微粒子を構成する重合体を、芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物由来の繰り返し単位を含み、かつ架橋構造を有するものとしてなる、特定の性状を有するスルホン酸ナトリウム基含有ポリマー微粒子により、その目的を達成し得ること、そして、このポリマー微粒子は、逆相乳化重合法により、効率よく製造し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1]スルホン酸ナトリウム基を有する重合体からなるポリマー微粒子であって、前記重合体が、芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物由来の繰り返し単位を含むと共に、架橋構造を有し、かつ透過型電子顕微鏡で測定される前記ポリマー微粒子の平均粒子径が10〜500nmであることを特徴とするスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子、及び
[2]乳化剤を含む有機溶媒中に、芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物と水溶性架橋剤とを含む水溶液を分散し、重合開始剤の存在下に逆相乳化重合を行うことを特徴とするスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法、を提供するものである。
[SO3Na基含有ポリマー微粒子]
本発明のSO3Na基含有ポリマー微粒子は、スルホン酸ナトリウム基を有する重合体からなるポリマー微粒子であって、前記重合体が、芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物由来の繰り返し単位を含むと共に、架橋構造を有し、かつ以下に示す要件を満たすことを特徴とする。
(1)本発明のSO3Na基含有ポリマー微粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)で測定される当該ポリマー微粒子の平均粒子径が10〜500nmである。
TEMで測定される当該ポリマー微粒子の平均粒子径が10nm未満であると、球形の粒子形状を保つことが困難であり、不定形となりやすく、一方、500nmを超えると、十分なプロトン伝導性が発揮されない。以上の観点から、当該ポリマー微粒子の平均粒子径は、20〜300nmであることが好ましく、30〜150nmであることがさらに好ましい。
また、当該ポリマー微粒子の動的光散乱法で測定される粒子径は80〜500nm程度である。さらに、前記動的光散乱法で測定される粒度分布PI(poly index)は、通常0.10〜0.75の範囲にあり、単分散に近い粒子とすることができる。
この耐水性は、下記の方法で測定した水に対する膨潤度で評価することができる。すなわち、架橋剤の量が増加すると共に水に対する膨潤度が低下する。例えばスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物がスチレンスルホン酸ナトリウム(以下、「NaSS」と略記する。)である場合、BAA/NaSS質量比が1/20のとき、水に対する膨潤度は26.7%であるが、4/20のときは17.9%に低下する。
図1は、キャピラリーを用いてポリマー微粒子の膨潤度を測定する方法の説明図である。
図1に示すように、目盛りを有するキャピラリーを用いて、ポリマー試料の膨潤度を測定した。精製した粉体をキャピラリーに詰め、目盛りの値(L1)を読む。次いで、異なる極性を有する適当な量の溶媒(脱イオン水、メタノール、ブタノン、トルエン)をキャピラリーに加え、ポリマー試料を膨潤させる。24時間後、膨潤した試料の目盛り値(L2)を読取り、膨潤度(ε)を以下の式を用いて算出した。
ε(%)=[(L2−L1)/L1]×100
例えば、後述の実施例における架橋構造を有するポリマー微粒子のサンプルToS−1の各溶媒に対する膨潤度εは、水:20%、メタノール:12.5%、ブタノン:14.3%、トルエン:7.7%である。すなわち、溶媒の極性が低いほど、膨潤度εは低くなる。
なお、SO3Na基含有ポリマー微粒子のSO3Na基含有芳香族ビニル系化合物単位の含有量は、ICP発光分光分析装置[セイコーインスツルメント(株)製「VISTA−MPX ACPOES」]により、ポリマー微粒子の元素分析を行い、ポリマー微粒子中の硫黄量を測定し、この硫黄量に基づき、ポリマー微粒子中のSO3Na基含有芳香族ビニル系化合物単位の含有量を求めた値である。
[SO3Na基含有ポリマー微粒子の製造方法]
本発明のSO3Na基含有ポリマー微粒子の製造方法は、乳化剤を含む有機溶媒中に、芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物と水溶性架橋剤とを含む水溶液を分散し、重合開始剤の存在下に逆相乳化重合を行うことを特徴とする。
本発明で用いる逆相(W/O型)乳化重合法は、水溶性モノマーを用いて、ポリマー粒子を合成するのに、十分な重合速度で、分子量の大きなポリマーが得られることなどから好ましい重合方法である。
本発明における逆相(W/O型)乳化重合法は、連続相である油相中に、水相の微粒子を均質に分散させた状態で、該水相の微粒子中に含まれている、水溶性のSO3Na基含有芳香族ビニル系化合物、例えば前述したスチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)を重合させる方法である。
<有機溶媒>
当該逆相乳化重合法において、連続相の油相を形成する有機溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒や、脂環式炭化水素系溶媒が用いられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどが挙げられ、これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中ではトルエンが好ましい。また、脂環式炭化水素系溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、テトラリン、デカリンなどが挙げられ、これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中ではシクロヘキサンが好ましい。
この油相には、乳化剤である界面活性剤の他に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などの油溶性重合開始剤を用いる場合は、該油溶性重合開始剤も含有される。したがって、有機溶媒としてトルエンとシクロヘキサンを比べた場合、前記AIBNの溶解性が高いトルエンの方が有利である。
当該逆相重合法においては、前記油相に含有させる乳化剤として用いられる界面活性剤は、形成されたエマルションの安定化のために、その種類の選択は極めて重要である。
この界面活性剤としては、(a)ソルビタンモノオレエート単独、(b)ソルビタンモノオレエートとポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとの組合せ、又は(c)ソルビタンモノオレエートとポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルとの組合せ等が好適である。
界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを単独で用いた場合、油相の有機溶媒がトルエン又はシクロヘキサンのいずれであっても、エマルションは不安定で、極めて短時間(0.5時間以内)で凝集が生じる。これに対し、前記の(a)、(b)及び(c)の界面活性剤を用いた場合、油相の有機溶媒がトルエン又はシクロヘキサンのいずれであっても、エマルションは長時間(一週間以上)安定である。
この界面活性剤の含有量は、油相の有機溶媒100質量部に対して、通常6〜10質量部の範囲であり、好ましくは8質量部程度である。
なお、ソルビタンモノオレエートは「スパン80」、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートは「ツイーン80」、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルは「OP−10」として市販されている。
<SO3Na基含有芳香族ビニル系化合物>
当該逆相乳化重合において、前記の連続相である油相中に、微粒子状に分散された水相には、水溶性モノマーであるSO3Na基含有芳香族ビニル系化合物が含有される。このSO3Na基含有芳香族ビニル系化合物としては、スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)及び/又はα−メチルスチレンスルホン酸ナトリウムが好ましく、特にNaSSが好適である。
水相中におけるSO3Na基含有芳香族ビニル系化合物の濃度は、逆相乳化重合においては、重要な要件の一つであり、例えばSO3Na基含有芳香族ビニル系化合物がNaSSである場合、NaSSの濃度は5〜20質量%の範囲が好ましく、この範囲にあれば重合がスムーズに安定的に進行し、得られる重合体微粒子の平均粒子径DP TEMを約40nmとすることができる。
当該逆相乳化重合においては、水相中に、前記のSO3Na基含有芳香族ビニル系化合物と共に、水溶性架橋剤が必須成分として含有される。この水溶性架橋剤は、得られるSO3Na基含有ポリマー微粒子に架橋構造を導入し、耐水性を向上させるために用いられるもので、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(BAA)が好適である。
前記SO3Na基含有ポリマー微粒子の耐水性は、前述した本発明のポリマー微粒子の性状の説明において示したように、水に対する膨潤度εを測定することにより、評価することができる。したがって水相中の該水溶性架橋剤の濃度や、芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物に対する水溶性架橋剤の割合は、当該逆相乳化重合においては、重要な要件の一つである。
水溶性架橋剤がBAAで、前記芳香族ビニル系化合物がNaSSである場合、BAA/NaSS質量比は5/100〜20/100の範囲にあることが好ましい。また、水相中のBAA濃度は、0.3〜1.5質量%が好ましく、この範囲において、該BAAの濃度が増加すると共に、膨潤度は減少し、例えば後述の実施例において、BAA/NaSS質量比が5/20から20/100に増加すると、膨潤度は約27%から18%に減少する。
また、逆相乳化重合においては、水相/油相比(W/O比)は、重要な要件の1つであり、質量比で5/50〜20/50であることが好ましく、8/50〜16/50であることがより好ましい。W/O比がこの範囲にあれば、逆相乳化重合がスムーズに進行し、得られるポリマー微粒子のDP TEMを、約40〜50nmとすることができる。
当該逆相乳化重合においては、油相中に微粒子状に分散してなる水相中に、場合により水溶性重合開始剤を含有させることができる。
具体的には、油相の構成成分である有機溶媒として、シクロヘキサンを用いた場合、シクロヘキサンはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などの油溶性重合開始剤の良溶媒ではないので、油相にAIBNを含む逆相モノマーエマルションを形成させるのは容易ではない。したがって、この場合水溶性重合開始剤を水相に適量溶解させて、逆相乳化重合を行うことがある。
前記過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらの中では過硫酸アンモニウムが好適である。
次に、本発明で実施した逆相乳化重合方法の概要を、回分式(バッチ式)プロセス及び半連続式プロセスについて説明する。
<回分式プロセス>
油相及び水相を形成する成分全てを反応容器に投入し、通常の機械的撹拌によって均質化したのち、70℃の温度にて6時間逆相乳化重合を行う。
<半連続(セミ連続)プロセス>
まず、反応容器に油相を形成する成分全てを投入したのち、機械的撹拌下に70℃まで加熱し、この温度を維持しながら、これに水相を形成する成分を含む水溶液を、1時間以内に滴下し、さらに適当な時間逆相乳化重合を行う。
当該逆相乳化重合は、通常下記に示す手順で行うことができる。
(a)水相を形成する水溶液の調製:ビーカー中の脱イオン水を撹拌しながら、所定量のNaSS及びBAAを加えて溶解させることにより、水溶液を調製する。
(b)油相を形成する有機溶媒溶液の調製:トルエン、AIBN、所定の界面活性剤を、それぞれ所定の割合でビーカーに投入、撹拌混合することにより、有機溶媒溶液を調製する。
(c)逆相エマルションの調製:還流冷却器、機械的撹拌機及び温度計を備えた四つ口フラスコに、油相を形成する有機溶媒溶液を仕込み、撹拌下に水相を形成する水溶液を滴下して、ミルク状の逆相エマルションを調製する。
(d)逆相乳化重合:上記(3)のフラスコをウォータバスに入れ、70℃にて6時間、逆相乳化重合を行う。
逆相乳化重合で得られた生成物の重合体は、逆相乳化重合において、逆相エマルションの安定化のために用いられた多量のノニオン系界面活性剤と水を含有しており、サンプルの特性を評価するために、精製処理した固体状サンプルが要求される。
この精製処理には、ラテックスから粗製の固体生成物を得る工程と、ソックスレー抽出によって高純度のx−PNaSS(架橋ポリスチレンスルホン酸ナトリウム)を製造する工程の2つの工程がある。
粗製固体生成物を得る方法として、下記の(a)、(b)及び(c)の3種の方法を採用することができる。
(a)共沸蒸留:水とトルエンの共沸温度は85℃であるので、生成ラテックス粒子は、その中に含まれている水を、共沸蒸留によって除去することができる。共沸蒸留後、重合体ナノ粒子を含む液状物は蒸発させて、粗製固体生成物を得る。
(b)回転蒸発処理:逆相乳化重合により得られたラテックスに、減圧下での回転蒸発処理を施し、直接に蒸留を行い水と有機溶媒を除去したのち、ポリマーと界面活性剤との混合物である粘稠な残渣を、オーブンにて約80℃で一晩乾燥処理することにより、粗製固体生成物を得る。
(c)エマルション破壊:当該逆相乳化重合で得られた重合体ラテックスを穏やかに撹拌しながら、該ラテックスに、その10質量部に対して1質量部程度のメタノールを加えることにより、メタノールラテックス混合液が2層に分離される。次いでトルエンと界面活性剤が含まれている上層を分液ロトによって分離除去し、下層をオーブン中で約80℃にて一晩乾燥することにより、粗製固体生成物を得る。
前記のようにして得られた、ポリマーと界面活性剤との乾燥混合物を、メタノールによるソックスレー抽出処理を48時間程度施すことにより界面活性剤を除去し、さらに凍結乾燥によってx−PNaSSナノ粒子粉末が得られる。
なお、各例で得られたSO3Na基含有ポリマー微粒子の性状は、下記に示す方法に従って求めた。
ダイナミック光散乱(DLS)光度計[Malvern(UK)社製「Zetasizer 3000HS」]を用い、25℃における動的光散乱法による粒子径(DP DLS)及びその粒度分布(Poly Index,PI)を求めた。
透過型電子顕微鏡(TEM)((株)日立製作所製「Hitach800」)写真の画像処理により、平均粒子径(DP TEM)を求めた。
ICP発光分光分析装置[セイコーインスツルメント(株)製「VISTA−MPX ACPOES」]により、ポリマー微粒子の元素分析を行い、ポリマー微粒子中の硫黄量を測定し、この硫黄量に基づき、ポリマー微粒子中のNaSS単位の含有量を求めた。
(4)ポリマー微粒子の膨潤度
明細書本文に記載の方法に従って測定した。
トルエンスルホン酸ナトリウム(NaSS)、過硫酸アンモニウム(APS)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)は、使用前に水から再結晶して用いた。
ソルビタンモノオレエート(スパン80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ツィーン80)、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(OP−10)、トルエン、シクロヘキサン及び2,2’−メチレンビスアクリルアミド(BAA)は、分析的精製品を用い、水は脱イオン水を用いた。
表1に示す仕込みで逆相乳化共重合を行い、得られたポリマー微粒子を評価し、結果を表1、図2及び図3に示した。また、膨潤性を表2に示した。
なお、図2は、実験番号ToB−1、ToB−2およびToB−3で得られたポリマー微粒子のTEM写真であり、図中、(a)は界面活性剤としてスパン80を用いたもの、(b)は界面活性剤としてスパン80とツィーン80との混合物を用いたもの、(c)は界面活性剤としてスパン80とOP−10との混合物を用いたものである。
図3は、実験番号ToS−1、ToS−2およびToS−3で得られたポリマー微粒子のTEM写真であり、図中、(a)は界面活性剤としてスパン80を、開始剤としてAIBNを用いたもの、(b)は界面活性剤としてスパン80を、開始剤としてAPSを用いたもの、(c)は界面活性剤としてスパン80とツィーン80との混合物を用い、開始剤としてAIBNを用いたものである。
さらに、実験番号ToS−1で得られたポリマー微粒子を精製し、膨潤性を評価し、結果を表2に示した。
シクロへキサンを連続相(油相)に用い、表3に示す重合組成で逆相乳化重合を行い、バッチ法とセミ連続法により、異なるタイプの界面活性剤を用いて、PNaSSラテックスを合成した。得られたポリマー微粒子を評価し、結果を表3、図4及び図5に示した。
なお、図4は、実験番号ChB−1およびChB−2で得られたポリマー微粒子のTEM写真であり、図中、(a)は界面活性剤としてスパン80を用いたもの、(b)は界面活性剤としてスパン80とツィーン80との混合物を用いたものである。
図5は、実験番号ChS−1およびChS−2で得られたポリマー微粒子のTEM写真であり、図中、(a)は界面活性剤としてスパン80を用いたもの、(b)は界面活性剤としてスパン80とツィーン80との混合物を用いたものである。
表3、図4及び図5から、下記のことが分かる。
水相/油相(W/O)比は、逆相乳化重合において、重要な役割をもつ。重合過程に関してW/Oの影響を調べるため、水相の組成は同一のものとし、NaSSとBAAとの量を調整した水相を調製し、添加する水相の量を変化させて、逆相乳化重合を行った。得られたx−PNaSSラテックスの粒子形態とともに、粒子サイズとその分布とを調べ、結果を表4及び図6に示した。
なお、油相の組成は、
スパン80 2.7g
ツィーン80 1.3g
AIBN 0.1g
トルエン 50.0g
であり、水相の組成は、
NaSS 0.56〜1.12g、 7質量%
脱イオン水 7.4〜14.8g、 92.3質量%
BAA 0.056〜0.112g、 0.7質量%
である。
図6は、実験で得られた各ポリマー微粒子のTEM写真であり、(a)は実験番号w/o−1、(b)は実験番号w/o−2、(c)は実験番号w/o−3で、それぞれ得られたポリマー微粒子のTEM写真である。
水相中のNaSSの濃度もまた、逆相乳化重合に重要な要件の一つである。実験は、水相/油相の比およびBAA/NaSSの比を、質量比でそれぞれ16/50および1/10にし、NaSSの量(この量に応じてBAAの量を調整)を変化させることにより逆相乳化重合を行った。得られたx−PNaSSラテックスの粒子形態とともに、粒子サイズとその分布とを調べ、結果を表5及び図7に示した。なお、図7は各種ポリマー微粒子のTEM写真であり、(a)は実験番号Na−1、(b)は実験番号Na−2、(c)は実験番号Na−3、(d)は実験番号Na−4で、それぞれ得られたポリマー微粒子のTEM写真である。
架橋の程度が粒子の耐膨潤性を決定するので、本発明における逆相乳化重合物であるポリマー微粒子に架橋剤は必須のものである。架橋剤の影響を調べるために、水相/油相の比およびNaSSの濃度を、それぞれ質量比16/50および7質量%にし、架橋剤のBAAの量を変化させることにより逆相乳化重合を行った。得られたx−PNaSSのポリマー微粒子の粒子形態とともに、粒子サイズとその分布および水に対する膨潤度を調べ、結果を表6及び図8に示した。
図8は、実験で得られた各ポリマー微粒子のTEM写真であり、(a)は実験番号cl−1、(b)は実験番号cl−2、(c)は実験番号cl−3、(d)は実験番号cl−4で、それぞれ得られたポリマー微粒子のTEM写真である。
精製されたx−PNaSSポリマー微粒子の水中での膨潤度を測定したところ、表6に示すように、膨潤度は架橋剤の量が増加すると、減少した。例えば、BAA/NaSSが質量比で1/20から4/20に増加したとき、水の場合に、膨潤度は、26.7%から17.9%に減少した。実験番号cl−2で得られたポリマー微粒子と実験番号cl−4で得られたポリマー微粒子とを比べると、架橋剤の量が100%増加しているが、膨潤度は2.1%減少しているにすぎない。すなわち、BAA/NaSSが質量比で2/20のときが、架橋剤の量として適していることがわかる。
Claims (17)
- 芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物由来の繰り返し単位と、架橋構造からなる重合体からなるポリマー微粒子であって、前記重合体が、芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物とN,N’−メチレンビスアクリルアミドとの共重合により形成されてなり、かつ透過型電子顕微鏡で測定される前記ポリマー微粒子の平均粒子径が10〜500nmであることを特徴とするスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子。
- ポリマー微粒子中のスルホン酸ナトリウム基含有芳香族ビニル系化合物単位の含有量が70質量%以上である請求項1に記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子。
- 動的光散乱法により測定される粒度分布が、ポリマーインデックスPI表示で0.10〜0.75の範囲にある請求項1又は2に記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子。
- 芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物由来の繰り返し単位が、スルホン酸ナトリウム基が導入されたスチレン及び/又はα−メチルスチレン由来の単位である請求項1〜3のいずれかに記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法であって、乳化剤を含む有機溶媒中に、芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物とN,N’−メチレンビスアクリルアミドとを含む水溶液を分散し、重合開始剤の存在下に逆相乳化重合を行うことを特徴とするスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 重合開始剤が、油溶性重合開始剤であって、有機溶媒中に存在させる請求項5に記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 油溶性重合開始剤が、アゾビスイソブチロニトリルである請求項6に記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 重合開始剤が水溶性重合開始剤であって、水溶液中に存在させる請求項5に記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 水溶性重合開始剤が、過硫酸塩である請求項8に記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物が、スチレンスルホン酸ナトリウム及び/又はα−メチルスチレンスルホン酸ナトリウムである請求項5〜9のいずれかに記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 有機溶媒が、芳香族炭化水素系溶媒である請求項5〜10のいずれかに記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 芳香族炭化水素系溶媒がトルエンである請求項11に記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 乳化剤として界面活性剤を用い、該界面活性剤が、(a)ソルビタンモノオレエート、(b)ソルビタンモノオレエートとポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとの組合せ、又は(c)ソルビタンモノオレエートとポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルとの組合せである請求項5〜12のいずれかに記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 逆相乳化重合において、水相/油相質量比が、5/50〜20/50である請求項5〜13のいずれかに記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 逆相乳化重合において、水相中における芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物の濃度が、5〜20質量%である請求項5〜14のいずれかに記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 逆相乳化重合において、芳香環上にスルホン酸ナトリウム基が導入された芳香族ビニル系化合物に対する水溶性架橋剤の割合が、質量比で5/100〜20/100である請求項5〜15のいずれかに記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のスルホン酸ナトリウム基を有するポリマー微粒子からなる、固体燃料電池における膜−電極接合体材料。
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