JPWO2002058177A1 - プロトン伝導体膜及びその製造方法並びにプロトン伝導体膜を備えた燃料電池及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、プロトン伝導体膜及びその製造方法並びにプロトン伝導体膜を備えた燃料電池及びその製造方法に関する。
背景技術
近年、例えば自動車駆動用の高分子固体電解質型の燃料電池として、パーフルオロスルホン酸樹脂(Du Pont社製のNafion(R)など)のようなプロトン(水素イオン)伝導性の高分子材料を用いたものが知られている。
また、比較的新しいプロトン伝導体として、H3Mo12PO40・29H2OやSb2O5・5.4H2Oなどの多くの水和水を持つポリモリブデン酸類や酸化物も知られている。
これらの高分子材料や水和化合物は、湿潤状態に置かれると、常温付近で高いプロトン伝導性を示す。
即ち、パーフルオロスルホン酸樹脂を例にとると、そのスルホン酸基より電離したプロトンは、高分子マトリックス中に大量に取込まれている水分と結合(水素結合)してプロトン化した水、つまりオキソニウムイオン(H3O+)を生成し、このオキソニウムイオンの形態をとってプロトンが高分子マトリックス内をスムーズに移動することができるので、この種のマトリックス材料は常温下でもかなり高いプロトン伝導効果を発揮できる。
一方、最近になってこれらとは伝導機構の全く異なるプロトン伝導体も開発されている。
即ち、YbをドープしたSrCeO3などのペロプスカイト構造を有する複合金属酸化物は、水分を移動媒体としなくても、プロトン伝導性を有することが見出された。この複合金属酸化物においては、プロトンはペロプスカイト構造の骨格を形成している酸素イオン間を単独でチャンネリングして伝導されると考えられている。
この伝導性のプロトンは初めから複合金属酸化物中に存在しているわけではない。ペロプスカイト構造が周囲の雰囲気ガス中に含まれている水蒸気と接触した際、その高温の水分子が、ドープによりペロプスカイト構造中に形成されていた酸素欠陥部と反応し、この反応により初めてプロトンが発生するのだと考えられる。
上述した各種のプロトン伝導体は次のような問題点が指摘されている。
まず、パーフルオロスルホン酸樹脂などのマトリックス材料では、プロトンの伝導性を高く維持するために、使用中、継続的に充分な湿潤状態に置かれることが必要である。
したがって、燃料電池等のシステムの構成には、加湿装置や各種の付随装置が要求され、装置の規模が大型化したり、システム構築のコストアップが避けられない。
さらに、作動温度も、マトリックスに含まれる水分の凍結や沸騰を防ぐため、温度範囲が広くないという問題がある。
また、ペロプスカイト構造をもつ前記複合金属酸化物の場合、意味のあるプロトンの伝導が行われるためには、作動温度を500℃以上という高温に維持することが必要である。
このように、従来のプロトン伝導体は湿分を補給したり、水蒸気を必要とするなど雰囲気に対する依存性が高く、しかも作動温度が高過ぎるか又はその範囲が狭いという問題点があった。
発明の開示
本発明は、上述した事情を根本的に改善するために提案されたもので、その目的は、常温を含む広い温度域で用いることができ、その下限温度も特に高くはなく、しかも移動媒体であるとないとを問わず水分を必要としないという、雰囲気依存性が小さく、更に成膜性を有すると共に、強度が高く、ガス透過防止能を備えた、プロトン伝導体及びその製造方法、並びに電気化学デバイスを提供することにある。
本発明に係るプロトン伝導体は、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基を導入してなるフラーレン誘導本と、20重量%を超える含有量のポリビニルアルコールとを含有している。
このように、本発明に係るプロトン伝導体は、フラーレン誘導体と20重量%を超える含有量のポリビニルアルコールが含有されているので、乾燥状態でもプロトンが解離し易く、しかもこのプロトンは常温を含む広い温度域(少なくとも約160℃〜−40℃の範囲。使用下限温度も従来の複合金属酸化物と違って高過ぎることはない。)にわたって高伝導性を発揮することが可能であると共に、ポリビニルアルコールの含有によって成膜性が付与されているため、強度が高められ、ガス透過を防ぎ、プロトン伝導性の良好な薄膜として用いることができる。
本発明に係るプロトン伝導体の製造方法は、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基を導入してフラーレン誘導体を生成する工程と、このフラーレン誘導体と、20重量%を超える配合比のポリビニルアルコールとを混合し、この混合物を薄膜状に成膜する工程とを有する。
また、本発明に係るプロトン伝導体の製造方法は、フラーレン誘導体を生成する工程と、このフラーレン誘導体と20重量%を超える配合比のポリビニルアルコールとを混合し、この混合物を薄膜状に成膜する工程とからなるので、上述したような特異な性能を有するプロトン伝導体を薄膜の形で効率的に製造することができる。
本発明に係る電気デバイスは、第1極と、第2極と、これら両極間に挟持されたプロトン伝導体とからなり、このプロトン伝導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基を導入してなるフラーレン誘導体と、20重量%を超える含有量のポリビニルアルコールとを含有する。
本発明に係る電気化学デバイスは、第1極と第2極との間に挟持されたプロトン伝導体が、フラーレン誘導体と20重量%を超える含有量のポリビニルアルコールとを含有するので、これまでの例えば水分を移動媒体とする燃料電池と異なって、加湿装置等は不要であると共に高強度でガス不透過性の良好なプロトン伝導性薄膜を有し、システムの小型化、簡易化を実現することができる。
さらに、本発明に係るプロトン伝導体膜は、プロトン伝導体と、そのバインダーとしてポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜に、150℃乃至200℃の温度で加熱処理を施すものである。これにより、プロトン伝導体膜の耐水性が向上し、電極反応によって、水が生成されても溶出することがなく、水素ガス遮断能力に優れたプロトン伝導膜を得ることができる。
プロトン伝導体と、そのバインダーとしてポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜に、150℃乃至200℃の温度で、加熱処理を施すことによって、プロトン伝導体膜の耐水性が向上する理由は、必ずしも明らかではなく、加熱処理を施すことによって、ポリビニルアルコールに含まれている複数の水酸基同士の水素結合が強まり、ポリビニルアルコールの結晶化度が高くなるためと推測されるが、その理由はともかく、加熱処理を施すことによって、ポリビニルアルコールの水に対する溶解度が著しく低下し、ポリビニルアルコールをバインダーとして用いたプロトン伝導体膜の耐水性が大幅に向上することが認められている。
本発明によれば、プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜に加熱処理を施すことによって、ポリビニルアルコールの水に対する溶解度が著しく低下するから、電極反応によって、水が生成されても溶出することがなく、しかも、水素ガス遮断能力に優れたプロトン伝導体膜を得ることが可能になる。
本発明に係るプロトン伝導体膜の製造方法は、プロトン伝導体を、ポリビニルアルコールに混合して、成膜したプロトン伝導体膜に、150℃乃至200℃の温度で、加熱処理を施すことを特徴とするプロトン伝導体膜の製造方法によって達成される。
本発明によれば、プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜に加熱処理を施すことによって、ポリビニルアルコールの水に対する溶解度が著しく低下するから、電極反応によって、水が生成されても溶出することがなく、しかも、水素ガス遮断能力に優れたプロトン伝導体膜を製造することが可能になる。
本発明に係る燃料電池は、水素電極と、酸素電極を備え、前記水素電極と前記酸素電極との間に、プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールを含み、150℃乃至200℃の温度で、加熱処理されたプロトン伝導体膜を備える。
本発明によれば、プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜に加熱処理を施すことによって、ポリビニルアルコールの水に対する溶解度が著しく低下するから、電極反応によって、水が生成されても溶出することがなく、しかも、水素ガス遮断能力に優れたプロトン伝導体膜を備えた高出力の燃料電池を得ることが可能になる。
本発明に係る燃料電池の製造方法は、水素電極と、酸素電極との間に、プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜を挟持させて、燃料電池を製造する方法であって、前記プロトン伝導体膜を、150℃乃至200℃の温度で、加熱処理するステップを含むことにより達成される。
本発明によれば、プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜に加熱処理を施すことによって、ポリビニルアルコールの水に対する溶解度が著しく低下するから、電極反応によって、水が生成されても溶出することがなく、しかも、水素ガス遮断能力に優れたプロトン伝導体膜を備えた高出力の燃料電池を製造することが可能になる。
また、本発明に係るプロトン伝導体膜は、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層と、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層を備える。
本発明によれば、水素ガスが、酸素電極に到達することを確実に防止することができるので、水素ガスが酸素電極に達して、酸素電極における電極反応を阻害し、燃料電池の出力が低下することを効果的に防止することが可能になる。
また、本発明に係る燃料電池は、水素電極と、酸素電極を備え、さらに、水素電極と酸素電極の間に、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層と、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層とを備えたプロトン伝導体膜が設けられている。
本発明によれば、水素ガスが、酸素電極に到達することを確実に防止することができるので、水素ガスが酸素電極に達して、酸素電極における電極反応を阻害し、燃料電池の出力が低下することを効果的に防止することが可能になる。
本発明においては、プロトン伝導体としては、プロトン伝導能力を有するものであれば、任意の材料を用いることができるが、加湿の必要がないなどの観点から、フラレノールなどのフラーレン誘導体が好ましく用いられる。
本発明において、フラーレン誘導体とは、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基を導入してなるものをいう。
本明細書において、「プロトンの解離」とは、「電離によって、プロトンが離れること」を意味し、「プロトン解離性の基」とは、「プロトンが、電離によって、離脱し得る基」を意味するものである。
本発明において、プロトン解離性の基を導入するフラーレン分子は、球状炭素クラスター分子であればよく、とくに限定されるものではないが、C36、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84などから選ばれるフラーレン分子の単体又はこれらの2種以上の混合物が好ましく用いられる。
本発明において、プロトン解離性の基は、−XHによって表わすことができる。ここに、Xは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団であり、Hは水素原子である。
本発明において、プロトン解離性の基は、好ましくは、−OH又は−YOHによって表わされる。ここに、Yは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団である。
本発明において、プロトン解離性の基は、−OH、−OSO3H、−COOH、−SO3H及び−OPO(OH)2よりなる群から選ばれた基であることが好ましく、典型的なフラーレン誘導体としては、ポリ水酸化フラーレン、硫酸水素エステル化フラレノールを挙げることができる。
本発明において、フラーレン誘導体は、フラーレン分子を構成する炭素原子に、プロトン解離性の基と共に、電子吸引基、例えば、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基、フッ素、塩素などのハロゲン原子などが導入されていることが好ましい。
本発明において、フラーレン分子を構成する炭素原子に導入するプロトン解離性の基の数は、フラーレン分子を構成する炭素原子の数の範囲内で、任意に決定することができるが、5以上であることが好ましく、フラーレンのπ電子性を残し、有効な電子吸引性を出すためには、フラーレン分子を構成する炭素原子の数の1/2以下が好ましい。
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施例の説明から一層明らかにされるであろう。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施の形態に基づいて更に具体的に説明する。
本発明に係るプロトン伝導体、プロトン伝導体の製造方法及び電気化学デバイスにおいては、プロトン解離性の基の導入対象となる母体としてのフラーレン分子は、球状クラスター分子であれば特に限定しないが、通常はC36、C60(図1A参照)、C70(図1B参照)、C76、C78、C80、C82、C84などから選ばれるフラーレン分子の単体、若しくはこれらの2種以上の混合物が好ましく用いられる。
これらのフラーレン分子は、1985年に炭素のレーザアブレーションによる″クラスタービームの質量分析スペクトル中に発見された(Kroto,H.W.;Heath,J″″.R.;O’Brien,S.C.;Curl,R.F.;Smalley,R.E.Nature 1985.318,162.)。″実際にその製造方法が確立されるのは更に5年後のことで、1990年に炭素電極のアーク放電法による製造法が見出され、それ以来、フラーレンは炭素系半導体材料等として注目されてきた。
本発明者は、このフラーレン分子の誘導体につき、そのプロトン伝導性を種々検討した結果、フラーレンの構成炭素原子に水酸基を導入して得られるポリ水酸化フラーレンは、乾燥状態でも、常温域を挟む広い温度範囲、即ち、水の凝固点や、沸点を超えた温度範囲(少なくとも160℃〜−40℃)で高いプロトン伝導性を示すことを見出すことができた。そして、このプロトン伝導性は水酸基に替えて硫酸水素エステル基をフラーレンの構成炭素原子に導入したときに、より顕著になることが知見できた。
さらに詳述すると、ポリ水酸化フラーレンは、図2A及び図2Bに示す如く、フラーレンに複数の水酸基を付加した構造を持ったものの総称であり、通称「フラレノール(Fullerenol)」と呼ばれている。当然の事ながら、水酸基の数やその分子内配置などには幾つかのバリエーションも可能である。フラレノールは1992年にCh″iangらによって最初に合成例が報告された(Chiang,L.Y.;Swirczewski,J.w.;Hs″″u,C.S.;Chowdhury,S.K.;Cameron,S.;Creegan,K.J.Chem.Soc,Chem.Co″″mmun.1992,1791)。以来、一定量以上の水酸基を導入したフラレノールは、特に″水溶性である特徴が注目され、主にバイオ関連の技術分野で研究されてきた。
本出願人は、そうしたフラレノールを図3Aに概略図示するように凝集体とし、近接し合ったフラレノール分子(図3中、○はフラーレン分子を示す。)の水酸基同士に相互作用が生じるようにしたところ、この凝集体はマクロな集合体として高いプロトン伝導特性(換言すれば、フラレノール分子のフェノール性水酸基からのH+の解離性)を発揮することを初めて知見することができた。
本発明の目的は、フラレノール以外に例えば複数の−OSO3H基をもつフラーレンの凝集体をプロトン伝導体として用いることによっても達成される。OH基がOSO3H基と置き換わった図3Bに示すようなポリ水酸化フラーレン、すなわち硫酸水素エステル化フラレノールは、やはりChiangらによって19″94年に報告されている(Chiang.L.Y.;Wang,L.Y.;Swirczewski,J.W.;Soled,S.;Cameron,S.J.Org.Chem.1994,59,3960)。硫酸水素エステル化されたフラーレンには、一つの分子内にOSO3H基のみを含むものもあるし、あるいはこの基と水酸基をそれぞれ複数、もたせることも可能である。
上述したフラーレン誘導体を多数凝集させた時、それがバルクとして示すプロトン伝導性は、分子内に元々含まれる大量の水酸基やOSO3H基に由来するプロトンが移動に直接関わるため、雰囲気から水蒸気分子などを起源とする水素、プロトンを取り込む必要はなく、また、外部からの水分の補給、とりわけ外気より水分等を吸収する必要もなく、雰囲気に対する制約はない。また、これらの誘導体分子の基体となっているフラーレンはとくに求電子性の性質を持ち、このことが酸性度の高いOSO3H基のみならず、水酸基等においても水素イオンの電離の促進に大きく寄与してると考えられる。これが、本発明のプロトン伝導体が優れたプロトン伝導性を示す理由の一つである。
さらに、一つのフラーレン分子中にかなり多くの水酸基及びOSO3H基等を導入することができるため、伝導の関与するプロトンの伝導体体積あたりの数密度が非常に多くなる。これが、本発明のプロトン伝導体が実効的な伝導率を発現するもう一つの理由である。
本発明のプロトン伝導体は、その殆どが、フラーレンの炭素原子で構成されているため、重量が軽く、変質もし難しく、また汚染物質も含まれていない。また、フラーレンの製造コストも急激に低下しつつある。資源的、環境的、経済的にみてフラーレンは他のどの材料にもまして、理想に近い炭素系材料であると考えられる。
更に本出願人の研究によれば、プロトン解離性の基は、前述した水酸基やOSO3H基に限定する必要はない。
即ち、この解離性の基は式−XHで表わされ、Xは2価の結合手を有する任意の原子若しくは原子団であればよい。更には、この基は式−OH又は−YOHで表わされ、Yは2価の結合手を有する任意の原子若しくは原子団であればよい。
具体的には、前記プロトン解離性の基としては、前記−OH、−OSO3H以外に−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかが好ましい。
更に、本発明では、フラーレン分子を構成する炭素原子に、前記プロトン解離性の基とともに、電子吸引基、例えば、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素など)などが導入されていることが好ましい。図3Cに、−OHの外にZを導入したフラーレン分子を示す。このZは、具体的には、−NO2、−CN、−F、−Cl、−COOR、−CHO、−COR、−CF3、−SOCF3などである(ここでRはアルキル基を表わす)。このように電子吸引基が併存していると、その電子吸引効果のために、上記プロトン解離性の基からプロトンが解離し易くなる。
但し、本発明では、フラーレン分子に導入する前記プロトン解離性の基の数は、フラーレン分子を構成する炭素数の範囲内で任意でよいが、望ましくは5個以上とするのがよい。なお、フラーレンのπ電子性を残し、有効な電子吸引性を出すためには、上記基の数は、フラーレンを構成する炭素数の半分以下が好ましい。
本発明のプロトン伝導体に用いる前記フラーレン誘導体を合成するには、後述の実施例に明らかなように、前記フラーレン分子の粉末に対し、例えば酸処理や加水分解等の公知の処理を適宜組み合わせて施すことにより、フラーレン分子の構成炭素原子に所望のプロトン解離性の基を導入すればよい。
本発明では、こうして得られたフラーレン誘導体の粉末を所望の形状、例えばペレットに加圧成形することもできる。この場合はバインダーは不必要であるのでプロトンの伝導性を高める上でもプロトン伝導体の軽量化を達成する上でも有効である。
本発明のプロトン伝導体は、各種の電気化学デバイスに好適に使用できる。すなわち、第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたプロトン伝導体とからなる基本的構造体において、そのプロトン伝導体に本発明のプロトン伝導体を好ましく適用することができる。
更に具体的に言うと、第1極及び/又は第2極が、ガス電極である電気化学デバイスとか、第1極及び/又は第2極に活物質性電極を用いる電気化学デバイスなどに対し、本発明のプロトン伝導体を好ましく適用することが可能である。
以下、本発明のプロトン伝導体を、燃料電池に適用した例について、説明する。
その燃料電池のプロトン伝導は、図4の模式図に示すようになり、プロトン伝導部1は第1極(例えば水素極)2と第2極(例えば酸素極)3との間に挟持され、解離したプロトンは図示矢印方向に沿って第1極2側から第2極3側へと移動する。
図5は、本発明のプロトン伝導体を用いた燃料電池の一具体例を示すものである。
この燃料電池は、触媒2a及び3aをそれぞれ密着又は分散させた互に対向する、端子8及び9付きの負極(燃料極又は水素極)2及び正極(酸素極)3を有し、これらの両極間にプロトン伝導体部1が挟着されている。使用時には、負極2側では導入口12から水素が供給され、排出口13(これは設けないこともある。)から排出される。燃料(H2)14が流路15を通過する間にプロトンを発生し、このプロトンはプロトン伝導体部1で発生したプロトンとともに正極3側へ移動し、そこで導入口16から流路17に供給されて排気口18へ向かう酸素(空気)19と反応し、これにより所望の起電力が取り出される。
かかる構成の燃料電池は、プロトン伝導部1でプロトンが解離しつつ負極2側から供給されるプロトンが正極3側へ移動するので、プロトンの伝導率が高い特徴がある。従って、加湿装置等は不必要となるので、システムの簡略化、軽量化を図ることができる。
しかも、本発明のプロトン伝導体は、フラーレン誘導体単独の場合と違ってポリビニルアルコールに由来する成膜性が付与されており、既述したフラーレン誘導体の粉末を圧縮成形する場合に比べ、強度の大きい、ガス透過防止能を有する柔軟なプロトン伝導性薄膜(厚みは通常300μm以下)として用いることができる。
また、前記ポリビニルアルコール以外にも、プロトンの伝導性をできるだけ阻害(フラーレン誘導体との反応等による)せず、成膜性を有するものなら使用可能であるが、通常は電子伝導性をもたず、良好な安定性を有するものが用いることができる。その具体例を挙げると、ポリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどがある。
本発明のプロトン伝導体の薄膜を得るには、押出し成形を始め公知の成膜手段を用いればよい。
例えば、図6に示す水素−空気電池は、薄膜状のプロトン伝導体20を中にして水素極21と空気極22とが対向配置され、これらの外側を、テフロン板24aと、多数の孔25を設けたテフロン板24bとで挟み込み、全体をボルト26a,26b及びナット27a,27bにより固定したもので、各極から外部に水素極リード28a、空気極リード28bが取出されている。
また、図7に示す電気化学デバイスは、内面に負極活物質層30を設けた負極31と、外面にガス透過支持体32を設けた正極33(ガス電極)との間に、プロトン伝導体34が挟持された構造を有しており、このプロトン伝導体34に本発明のプロトン伝導体が用いられる。なお、負極活物質には、水素吸蔵合金又はフラーレンなどのカーボン材料に水素吸蔵合金を担持させたものが好ましく、ガス透過支持体32には、例えば多孔性のカーボンペーパなどが用いられ、正極33は、例えば白金をカーボン粉末に担持させた材料をペースト状に塗布、形成するのが好ましい。なお、負極31の外端と正極33の外端との隙間は、ガスケット35により塞がれている。この電気化学デバイスでは、正極33側に水分を存在させて、充電を行うことができる。
図8に示す電気化学デバイスは、内面に負極活物質層37を設けた負極38と、内面に正極活物質層39を設けた正極40との間に、薄膜状のプロトン伝導体41を挟持させた構造を有し、正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルを主成分とするものが用いられる。なお、この電気化学デバイスも負極38の外端と正極40の外端との隙間は、ガスケット42によって塞がれている。
上述したいずれの電気化学デバイスも、図5に示した電気化学デバイスと同様のメカニズムでプロトン伝導効果を発揮することができる。しかもプロトン伝導体はフラーレン誘導体を成膜性のポリビニルアルコールと併用するので、強度の向上した、さらにはガス透過性の小さな薄膜の形で使用することができ、良好なプロトン伝導性を発揮することが可能である。
本発明における実施態様では、伝導体膜が、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン(H+)解離性の基を導入してなるフラーレン誘導体と、20重量%を超える又は40重量%以下の含有量のポリビニルアルコールを含む。燃料電池出力の電圧又は電流密度依存性の観点から、PVA含有量は20%を超える値とするのが好ましく、さらに好ましくは25%である。また上限は40%が好ましく、更に好ましくは37%、更には35%である。
例えば、フラレノールに混合するバインダーの材料としてはPVA以外にも、PVA含有量が20%を超える前提条件で例えばポリフルオロエチレン等、他の高分子材料を併用することもできる。
また、本発明のプロトン伝導体膜はシート状に作製することもでき、燃料電池以外にも例えば水素の製造に適用することもできる。
さらに本発明においては、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層が、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層の少なくとも一方の面に形成されている。
本発明においては、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層が、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層の酸素電極側の面に形成されている。
本発明においては、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層が、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層の水素電極側の面に形成されている。
本発明において、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層は、0.1μm乃至10μmの厚さを有していることが好ましい。フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層の厚さが、0.1μm未満の場合には、十分な水素ガス遮断能力を得ることができず、10μmを越えると、プロトン伝導体膜全体の抵抗値が大きくなり、燃料電池の出力低下の原因となり、好ましくない。
本発明において、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層中のフラーレン誘導体とポリビニルアルコールの混合比は、フラーレン誘導体の種類によっても異なるが、フラーレン誘導体として、硫酸水素エステル化フラレノールを用いた場合には、重量比で、6:4乃至9:1に配合することが好ましい。
本発明において、プロトン伝導体と、そのバインダーとしてポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜を、150℃乃至200℃の温度で、加熱処理することが必要であり、処理温度が200℃を越えると、バインダーであるポリビニルアルコールが変質するおそれがあり、他方、処理温度が150℃未満のときは、実用的な処理時間で、ポリビニルアルコールをバインダーとして用いたプロトン伝導体膜の耐水性を向上させることができない。
本発明において、好ましくは、160℃乃至200℃の温度で、プロトン伝導体と、そのバインダーとしてポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜に、加熱処理が施される。
本発明において、プロトン伝導体と、そのバインダーとしてポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜の厚さは、プロトン伝導体の種類によっても異なるが、0.1μm乃至20μmであることが好ましい。プロトン伝導体と、そのバインダーとしてポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜の厚さが、0.1μm未満の場合には、十分な水素ガス遮断能力を得ることができず、一方、プロトン伝導体と、そのバインダーとしてポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜の厚さが、20μmを越える場合には、プロトン伝導体膜全体の抵抗値が大きくなり、燃料電池の出力低下の原因となり、好ましくない。
本発明において、プロトン伝導体として、フラーレン誘導体を用いる場合には、フラーレン誘導体の種類によっても異なるが、フラーレン誘導体と、ポリビニルアルコールを、60:40乃至95:5の重量比で、配合させて、プロトン伝導体膜を成膜することが好ましい。
本発明において、プロトン伝導体膜の形成方法は、とくに限定されるものではないが、バーコート法、スピンコート法、ドクターブレード法などの各種塗布方法、スクリーン印刷、グラビア印刷などの各種印刷方法、スプレードライ法などによって、形成することができる。
印刷方法による場合は、プロトン伝導体として、フラーレン誘導体を用いるときには、例えば、フラーレン誘導体とポリビニルアルコールの混合物を、重量比で、フラーレン誘導体とポリビニルアルコールの混合物の1乃至10倍の水に分散乃至溶解させて、印刷し、印刷後、溶剤である水を蒸発させることによって、プロトン伝導体膜を形成することができる。有機溶剤を使用する場合には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶剤及びこれらと水の混合溶媒が好ましく使用することができ、印刷後、溶剤を蒸発させることによって、プロトン伝導体膜を形成することができる。
本発明の好ましい実施態様においては、プロトン伝導体膜の両側に、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層が形成されている。
本発明の好ましい実施態様においては、プロトン伝導体膜の両側に、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層が形成され、主としてカーボンからなる水素電極及び酸素電極によって、挟持されて、燃料電池が構成される。
ポリビニルアルコールが水溶性を有しているのに対し、主としてカーボンよりなる水素電極及び酸素電極が撥水性を有しているため、バインダーとして、ポリビニルアルコールを用いたプロトン伝導体膜を、直接的に、水素電極及び酸素電極に密着させる場合には、密着性が悪く、燃料電池の出力の低下を招くおそれがあるが、本発明の好ましい実施態様によれば、プロトン伝導体膜の両側に、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層が形成されているため、水素電極及び酸素電極と、プロトン伝導体膜との密着性を大幅に改善することができ、したがって、高出力の燃料電池を得ることが可能になる。
ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層は、5μm乃至20μmの厚さを有していることが好ましい。ポリビニルアルコールを含まないフラーレン誘導体の層の厚さが、5μm未満の場合には、主としてカーボンよりなる水素電極及び酸素電極との密着性を十分に向上させることができず、一方、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層の厚さが、20μmを越えると、プロトン伝導体膜全体の抵抗値が大きくなり、燃料電池の出力低下の原因となり、好ましくない。
本発明において、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層の形成方法は、とくに限定されるものではないが、バーコート法、スピンコート法、ドクターブレード法などの各種塗布方法、スクリーン印刷、グラビア印刷などの各種印刷方法、スプレードライ法などによって、形成することができる。印刷方法による場合は、プロトン伝導体として、フラーレン誘導体を用いるときは、例えば、フラーレン誘導体を、重量比で、フラーレン誘導体の1乃至10倍のテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの有機溶媒に分散乃至溶解させて、印刷し、印刷後、溶剤を蒸発させることによって、ポリビニルアルコールを含まないフラーレン誘導体の層を形成することができる。
本発明においては、プロトン伝導体膜が、フラーレン誘導体と、ポリビニルアルコールとを含み、さらに、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層を備えている。
プロトン伝導体膜に、さらに、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層を設けると、プロトン伝導体膜の水素ガス遮断能力が著しく向上することが認められている。
本発明において、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層が設けられていればよく、その形成位置は問わない。
本発明においては、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層は、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体膜の少なくとも一方の面に形成される。この場合、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層が、プロトン伝導体膜の酸素電極側の面に形成されていても、プロトン伝導体膜の水素電極側の面に形成されていてもよい。
本発明においては、水素ガス遮断層は、0.1μm乃至10μmの厚さに形成される。フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層の厚さが、0.1μm未満の場合には、十分な水素ガス遮断能力を得ることができず、10μmを越えると、プロトン伝導体膜全体の抵抗値が大きくなり、燃料電池の出力低下の原因となり、好ましくない。
フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層中のフラーレン誘導体とポリビニルアルコールの混合比は、フラーレン誘導体の種類によっても異なるが、フラーレン誘導体として、硫酸水素エステル化フラレノールを用いた場合には、重量比で、6:4乃至9:1に配合することが好ましい。
本発明において、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層の形成方法は、とくに限定されるものではないが、バーコート法、スピンコート法、ドクターブレード法などの各種塗布方法、スクリーン印刷、グラビア印刷などの各種印刷方法、スプレードライ法などによって、形成することができる。印刷方法による場合は、例えば、フラーレン誘導体とポリビニルアルコールの混合物を、重量比で、フラーレン誘導体とポリビニルアルコールの混合物の1乃至10倍の水に分散乃至溶解させて、印刷し、印刷後、溶剤である水を蒸発させることによって、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層を形成することができる。
本発明においては、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層の表面に、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層が形成される。
本発明において、プロトン伝導体膜の加熱処理は、プロトン伝導体膜の成膜後であれば、何時、実行してもよい。
主としてカーボンからなる水素電極又は酸素電極上に、プロトン伝導体膜を形成した後に、加熱処理を施してもよいし、主としてカーボンからなる水素電極又は酸素電極上に、プロトン伝導体膜を形成し、プロトン伝導体膜の表面に、酸素電極又は水素電極を密着させた後に、加熱処理を施してもよい。
また、ポリビニルアルコールを含まないフラーレン誘導体の層を形成する場合には、主としてカーボンからなる水素電極又は酸素電極上に、ポリビニルアルコールを含まないフラーレン誘導体の層を形成し、その上に、プロトン伝導体膜を形成した後に、加熱処理を施してもよいし、主としてカーボンからなる水素電極又は酸素電極上に、ポリビニルアルコールを含まないフラーレン誘導体の層を形成し、その上に、プロトン伝導体膜を形成した後に、さらに、プロトン伝導体膜の表面に、ポリビニルアルコールを含まないフラーレン誘導体の層を形成し、ポリビニルアルコールを含まないフラーレン誘導体の層に、酸素電極又は水素電極を密着させた後に、加熱処理を施すようにしてもよい。
さらに、フラーレン誘導体の層に、ポリビニルアルコールを混合させた水素遮断層を設ける場合には、水素遮断層を形成した後に、加熱処理が施される。
また、成膜されたプロトン伝導体膜のみを、単独で、加熱処理するようにしてもよい。
プロトン伝導体膜に、加熱処理を施す方法は、とくに、限定されるものではなく、例えば、ヒーター上に、プロトン伝導体膜あるいはプロトン伝導体膜を含む積層体を載せて、加熱処理する方法、ヒーターを、直接、プロトン伝導体膜に圧着して、加熱処理するホットプレス法、恒温槽内に、プロトン伝導体膜あるいはプロトン伝導体膜を含む積層体を収容させて、加熱処理する方法、加熱した空気、窒素、アルゴンなどのガスを、プロトン伝導体膜あるいはプロトン伝導体膜を含む積層体に吹き当てて、加熱処理する方法などが利用可能である。
プロトン伝導体膜あるいはプロトン伝導体膜を含む積層体の加熱処理は、アルゴンや窒素などの不活性なガス雰囲気下で、実行してもよいし、大気中で、実行してもよい。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
<ポリ水酸化フラーレンの合成>
この合成は、文献(Chieng,L.Y.;Wang,L.Y.;Swirczewski.J.W.;Soled,S.;Cameron,S.J.Org.Chem.1994,59,3960)を参考にしておこなった。C70を約15%含むC60/C70フラーレン混合物の粉末2gを発煙硫酸30ml中に投じ、窒素雰囲気中で57℃に保ちながら3日間攪拌した。得られた反応物を、氷浴内で冷やした無水ジエチルエーテル中に少しずつ投下し、その沈殿物を遠心分離で分別し、さらにジエチルエーテルで3回、及びジエチルエーテルとアセトニトリルの2:1混合液で2回洗浄したあと、40℃にて減圧中で乾燥させた。さらに、この乾燥物を60mlのイオン交換水中に入れ、85℃で窒素によるバブリングを行いながら10時間攪拌した。反応生成物は遠心分離によって沈殿物を分離し、この沈殿物をさらに純水で数回洗浄し、遠心分離を繰り返した後に、40℃で減圧乾燥した。このようにして得られた茶色の粉末のFT−IR測定を行ったところ、上記文献に示されているC60(OH)12のIRスペクトルとほぼ一致し、この粉末が目的物質であるポリ水酸化フラーレンと確認された。
<ポリ水酸化フラーレン凝集ペレットの製造>
次に、このポリ水酸化フラーレンの粉末90mgをとり、直径15mmの円形ペレット状になるように一方方向へのプレスを行った。この時のプレス圧は約7トン/cm2であった。その結果、このポリ水酸化フラーレンの粉末は、バインダー樹脂等を一切含まないにも関わらず成形性に優れており、容易にペレット化することができた。そのペレットは厚みが約300ミクロンで、これを例1のペレットとする。
<ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステル(全エステル化)の合成1>
これも、同様に前記の文献を参考にしておこなった。ポリ水酸化フラーレンの粉末1gを60mlの発煙硫酸中に投下し、室温にて窒素雰囲気下で3日間攪拌した。得られた反応物を、氷浴内で冷やした無水ジエチルエーテル中に少しずつ投下し、その沈殿物を遠心分離で分別し、さらにジエチルエーテルで3回、及びジエチルエーテルとアセトニトリルの2:1混合液で2回洗浄した後、40?にて減圧下で乾燥させた。このようにして得られた粉末のTF−IR測定を行ったところ、前記文献中に示されている、全ての水酸基が硫酸水素エステル化されたもののIRスペクトルとほぼ一致し、この粉末が目的物質であると確認できた。
<ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステル凝集ペレットの製造1>
このポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステルの粉末70mgをとり、直径15mmの円形ペレット状になるように一方方向へのプレスを行った。この時のプレス圧は約7トン/cm2であった。その結果、この粉末はバインダー樹脂等を一切含まないにも関わらず、成形性に優れており、容易にペレット化することができた。このペレットは厚みが約300ミクロンで、これを例2のペレットとする。
<ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステル(部分エステル化)の合成2>
C70を約15%含むC60/C70フラーレン混合物の粉末2gを発煙硫酸30ml中に投じ、窒素の雰囲気中にて、57℃に保ちながら3日間攪拌した。得られた反応物を、氷浴内で冷やしたジエチルエーテル中に少しずつ投下した。但し、この場合のジエチルエーテルは脱水処理を行っていないものを用いた。得られた沈殿物を遠心分離で分別し、さらにジエチルエーテルで3回、及びジエチルエーテルとアセトニトリルの2:1混合液で2回洗浄した後、40℃にて減圧下で乾燥させた。このようにして得られた粉末のFT−IR測定を行ったところ、前記文献に示されている、部分的に水酸基とOSO3H基を含むフラーレン誘導体のIRスペクトルとほぼ一致し、この粉末が目的物質であると確認できた。
<ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステル凝集ペレットの製造2>
この、一部が硫酸水素エステル化されたポリ水酸化フラーレンの粉末80mgをとり、直径15mmの円形ペレット状になるように一方方向へのプレスを行った。この時のプレス圧は約7トン/cm2であった。その結果、この粉末はバインダー樹脂等を一切含まないにも関わらず成形性に優れており、容易にペレット化することができた。このペレットは厚みが約300ミクロンで、これを例3のペレットとする。
<フラーレン凝集ペレットの製造>
比較のため、前記各例で合成原料に用いたフラーレンの粉末90mgをとり、直径16mmの円形ペレット状になるように一方方向へのプレスを行った。この時のプレス圧は約7トン/cm2であった。その結果、この粉末はバインダー樹脂等を一切含まないにも関わらず成形性に比較的すぐれており、割合容易にペレット化することができた。このペレットは厚みが約300ミクロンで、これを比較例1のペレットとする。
<各例及び比較例で得たペレットのプロトン伝導率測定>
上述した各例1〜3及び比較例1のペレットの伝導率を測定するために、まず、ペレットと等しい直径15mmのアルミニウム板でそれぞれのペレットの両側を挟み、これに7MHzから0.01Hzまでの交流電圧(振幅0.1V)を印加し、各周波数における複素インピーダンスを測定した。測定は、乾燥雰囲気下で行った。
インピーダンス測定に関し、上記ペレットからなるプロトン伝導体のプロトン伝導部1は、電気的には、図9Aに示すような等価回路を構成しており、抵抗4と容量5の並列回路で表されるプロトン伝導部1も含めて第1極2と第2極3との間にそれぞれ容量6aと6bとを形成している。なお、容量5は、プロトンが移動するときの遅延効果(高周波のときの位相遅れ)を表し、抵抗4は、プロトンの動き易さのパラメータを表す。
ここで、測定インピーダンスZは、Z=Re(Z)+i・Im(Z)で表され、上記等価回路で示されるプロトン伝導部の周波数依存性を調べた。
なお、図9Bは、プロトン解離性のない通常のフラーレン分子を用いた場合(後述の比較例)の等価回路である。
図10に、例1及び比較例1におけるペレットについてのインピーダンス測定結果を示す。
これによれば、比較例1においては、図10中Bで示すように、複素インピーダンスの周波数特性はおおよそキャパシター単独の挙動と同様であり、フラーレン自体の凝集体については荷電粒子(電子、イオンなど)の伝導挙動は一切観測されなかった。それに比べて例1の場合は、図10中Aで示すように、高周波数部分に偏平ではあるが、非常にきれいな単一の半円状円弧を見ることができる。これは、ペレット内部においてなんらかの荷電粒子の伝導挙動が存在していることを示している。さらに、低周波数領域においては、インピーダンスの虚数部分の急激な上昇が観測される。これは、徐々に直流電圧に近づくにつれてアルミ電極との間で荷電粒子のブロッキングが生じていることを示しており、当然、アルミ電極側における荷電粒子は電子であるから、ペレット内部の荷電粒子は電子やホールではなく、それ以外の荷電粒子、すなわちイオンであることがわかる。用いたフラレノールの構成から、この荷電粒子はプロトン以外には考えられない。
高周波数側に見られる円弧のX軸切片から、この荷電粒子の伝導率を求めることができ、例1のペレットにおいては、おおよそ5×10−6S/cmと計算される。更に、実施例2及び実施例3のペレットについても同様の測定を行ったところ、例1の場合と全体の形状については同様なインピーダンスの周波数特性となった。但し、円弧部分のX切片から求められる伝導率は表1に示すようにそれぞれ異なる値となった。
このように、水酸基がOSO3H基に置き換わるとペレット中の伝導率は大きくなる傾向を示している。これは、水酸基よりもOSO3H基の方が水素の電離が起こり易いことによるものである。そして、水酸基、OSO3H基のどちらの場合も、又は双方が混在する場合においても、この種のフラーレン誘導体の凝集体は、乾燥雰囲気中において、室温でプロトン伝導が可能であることを見出すことができた。
次に、例1のペレットを用い、上記の複素インピーダンス測定を160℃から−40℃までの温度範囲で行い、その時の高周波側の円弧から求めた伝導率の温度依存性を調べた。結果をアレニウス型のプロットとして示したのが図11である。このように、160℃から−40℃において伝導率が鋭く直線的に変化していることがわかる。つまり、同図はこの温度範囲において単一のイオン伝導機構が進行可能であることを示している。すなわち、本発明のプロトン伝導体は、室温を含む広い温度範囲、特に160℃といった高温や−40℃といった低温においても伝導が可能である。
<ポリ水酸化フラーレンペレット製造A>
前述した合成法により得られたポリ水酸化フラーレンの粉末75mgをとり、これとポリビニルアルコールの粉末25mgとを混合し、ジメチルホルムアミド0.5mlを加えてよく攪拌した。この混合物を直径15mmの円形の型に流し込み、減圧下において溶媒を蒸発させた。その後、プレスを行い、直系15mmのペレットを得た。このペレットは厚みが約300ミクロンであった。これを例4のペレットとする。
<ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステル(全エステル化)の合成1A>
これも、同様に既述した文献を参考にしておこなった。ポリ水酸化フラーレンの粉末1gを60mlの発煙硫酸中に投下し、室温にて窒素雰囲気下で3日間攪拌した。得られた反応物を、氷浴内で冷やした無水ジエチルエーテル中に少しずつ投下し、その沈殿物を遠心分離で分別し、さらにジエチルエーテルで3回、及びジエチルエーテルとアセトニトリルの2:1混合液で2回洗浄した後、40℃にて減圧下で乾燥させた。このようにして得られた粉末のFT−IR測定を行ったところ、前記文献中に示されている、すべての水酸基が硫酸水素エステル化されたもののIRスペクトルとほぼ一致し、この粉末が目的物質であると確認できた。
<ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステルペレットの製造1A>
このポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステルの粉末75mgをとり、これとポリビニルアルコールの粉末25mgとを混合し、ジメチルホルムアミド0.5mlを加えてよく攪拌した。この混合物を直径15mmの円形の型に流し込み、減圧下において溶媒を蒸発させた。その後、プレスを行い、直系15mmのペレットを得た。このペレットは厚みが約300ミクロンであった。これを例5のペレットとする。
<ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステル(部分エステル化)の合成2A>
C70を約15%含むC60/C70フラーレン混合物2gを発煙硫酸30ml中に投じ、窒素の雰囲気中にて、57℃に保ちながら3日間攪拌した。得られた反応物を、氷浴内で冷やしたジエチルエーテル中に少しずつ投下した。但し、このジエチルエーテルは脱水処理を行っていないものを用いた。得られた沈殿物を遠心分離で分別し、さらにジエチルエーテルで3回、及びジエチルエーテルとアセトニトリルの2:1混合液で2回洗浄した後、40℃にて減圧下で乾燥させた。このようにして得られた粉末のFT−IR測定を行ったところ、前記文献に示されている、部分的に水酸基とOSO3H基を含むフラーレン誘導体のIRスペクトルとほぼ一致し、この粉末が目的物質であると確認できた。
<ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステルペレットの製造2A>
この、一部が硫酸水素エステル化されたポリ水酸化フラーレンの粉末75mgをとり、これとポリビニルアルコールの粉末25mgとを混合し、ジメチルホルムアミド0.5mlを加えてよく攪拌した。この混合物を直径15mmの円形の型に流し込み、減圧下において溶媒を蒸発させた。その後、プレスを行い、直径15mmのペレットを得た。このペレットは厚みが約300ミクロンであった。これを例6のペレットとする。
<フラーレンペレットの製造>
比較のため、前記各例で合成原料として用いたフラーレンの粉末75mgをとり、これとポリビニルアルコールの粉末25mgとを混合し、ジメチルホルムアミド0.5mlを加えてよく攪拌した。この混合物を直径15mmの円形の型に流し込み、減圧下において溶媒を蒸発させた。その後、プレスを行い、直径15mmのペレットを得た。このペレットは厚みが約300ミクロンであった。これを比較例2のペレットとする。
<各例及び比較例のペレット中のプロトン伝導率測定>
例4〜6、及び比較例2のペレットの伝導率を測定するために、まず、ペレットと等しい直径15mmのアルミニウム板でそれぞれのペレットの両側を挟み、これに7MHzから0.01Hzまでの交流電圧(振幅0.1V)を印加し、各周波数における複素インピーダンスを測定した。測定は、乾燥雰囲気で行った。
インピーダンス測定に関し、上記ペレットからなるプロトン伝導体のプロトン伝導部1は、電気的には、図9Aに示すような等価回路を構成しており、抵抗4で表されるプロトン伝導部1も含めて第1極2と第2極3との間に容量6を形成している。なお、容量6はプロトンが移動するときの遅延効果(高周波のときの位相遅れ)を表し、抵抗4はプロトンの動き易さのパラメータを表す。ここで、測定インピーダンスZは、Z=Re(Z)+i・Im(Z)で表され、上記等価回路で示されるプロトン伝導部の周波数依存性を調べた。なお、図9Bはプロトン解離性のない通常のフラーレン分子を用いた場合(後述の比較例)の等価回路である。
図12に、例4及び比較例2におけるペレットについてのインピーダンス測定結果を示す。
これによれば、比較例2においては、図12中Dで示すように、複素インピーダンスの周波数特性はおおよそキャパシター単独の挙動と同様であり、フラーレン自体の凝集体については荷電粒子(電子、イオンなど)の伝導挙動は一切観測されなかった。それに比べて例4の場合は、図12中Cで示すように、高周波数部分に偏平ではあるが、非常にきれいな単一の半円状円弧を見ることができる。これは、ペレット内部においてなんらかの荷電粒子の伝導挙動が存在していることを示している。さらに、低周波数領域においては、インピーダンスの虚数部分の急激な上昇が観測される。これは、徐々に直流電圧に近づくにつれてアルミ電極との間で荷電粒子のブロッキングが生じていることを示しており、当然、アルミ電極側における荷電粒子は電子であるから、ペレット内部の荷電粒子は電子やホールではなく、それ以外の荷電粒子、すなわちイオンであることがわかる。用いたフラレノールの構成から、この荷電粒子はプロトン以外には考えられない。
高周波数側に見られる円弧のX軸切片から、この荷電粒子の伝導率を求めることができ、例4のペレットにおいては、おおよそ1×10−6S/cmと計算される。更に、例5及び例6、加えて例4、例5及び例6のペレットについても同様の測定を行ったところ、例4の場合と全体の形状については同様なインピーダンスの周波数特性となった。但し、円弧部分のX切片から求められる伝導率は表2に示すようにそれぞれ異なる値となった。
本発明におけるプロトン伝導体ペレットの伝導率(25℃)
このように、水酸基がOSO3H基に置き換わるとペレット中の伝導率は大きくなる傾向を示している。これは、水酸基よりもOSO3H基の方が水素の電離が起こり易いことによるものである。そして、水酸基、OSO3H基のどちらの場合も、又は双方が混在する場合においても、この種のフラーレン誘導体の凝集体は乾燥雰囲気中において、室温でプロトン伝導が可能であることを見出すことができた。
次に、例4のペレットを用い、上記の複素インピーダンス測定を160℃から−40℃までの温度範囲で行い、その時の高周波側の円弧から求めた伝導率の温度依存性を調べた。結果をアレニウス型のプロットとして示したのが図13である。これによると、160℃から−40℃において非常に直線的に変化していることがわかる。つまり、この温度範囲において単一のイオン伝導機構が進行可能であることがわかる。つまり、この温度範囲において単一のイオン伝導機構が進行可能であることを示している。すなわち、本発明のプロトン伝導体は、室温を含む広い温度範囲、特に160℃といった高温や−40℃といった低温においても伝導が可能である。
<燃料電池の作製とその性能評価>
更に、上記した例5に用いたポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステルとバインダー(ポリビニルアルコール)との混合物によって、プロトン伝導部を形成した。この際、ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステル(以下、FLと称する。)とポリビニルアルコール(以下、PVAと称する。)との配合比:{PVA/(FL+PVA)}(単位:wt%、以下、単に%とする)を変え、それぞれに対応した図8に示した如き構造の燃料電池を作製し、負極側に水素を、正極側に酸素を供給し、定電流モードで作動させてその出力特性を測定した。
その結果、図14に示すように、プロトン伝導部のPVA含有量に応じた出力特性(但し、出力ピーク電圧=400mV)が得られた。
すなわち、PVA含有量が20%において変曲点を示し、これを境に20%以下となると出力が急激に低下し、20%を超えると、高出力が得られることが明らかである。この結果から、PVA含有量は20%を超える値とすべきである。
更に25%において変曲点が現われるので、PVA含有量の下限は25%とするのが望ましい。また、33%をピークに出力が低下し始め、37%において変曲点が現われるが、40%を超えると出力自体がかなり低下し易くなるため、PVA含有量の上限は40%とするのがよく、更に37%とするのがより望ましい。
したがって、図14からPVA含有量は20%を超える値とすべきであり、好ましくは25%であり、また上限は40%が好ましく、更に好ましくは37%、更には35%である。このようなPVA配合比が有利であることは後述する図15又は図16に示す、出力の電圧又は電流密度依存性のデータからも明らかである。
図15及び図16は、上記測定のために作製した燃料電池において、PVA含有量が最低(12.5%)、最大(50%)、ピーク値を示す33%及び変曲点を示す25%における、出力のFL及びPVAに対する依存性を示し、図2は出力と電圧の特性、図3は電圧と電流密度の特性を示すグラフである。
すなわち、図15の出力と電圧の特性においては、いずれも400mV時に出力がピークを示し、特にPVA含有量が25%及び33%の場合に、400mVを境としてこの前後の電圧時に、出力の上昇と降下の度合がシャープな対称を示すと共に、900mVまで出力の性能が維持されており、この特性は図16に示す電圧と電流密度の特性においても同様であり、本発明における、フラーレン誘導体と20wt%を超える含有量のポリビニルアルコールを含有しているプロトン伝導体を用いることによって、優れた燃料電池を実現できることが証明できる。
実施例1
硫酸水素エステル化フラレノールを、重量比で、1:2の配合比で、テトラヒドロフラン中に分散させて、分散液を調製した。
得られた分散液を、カーボン電極上に、マスクとスキージを用いて、塗布し、乾燥させて、溶剤であるテトラヒドロフランを揮発させ、カーボン電極上に、厚さ10μmの硫酸水素エステル化フラレノールの層を形成した。
次いで、硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールを、2:1の重量比で、混合させ、硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールの総重量の5倍の重量の水に分散乃至溶解させて、調製したスラリーを、マスクとスキージを用いて、硫酸水素エステル化フラレノールの層上に塗布し、水を蒸発させて、厚さ12μmの硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールを含むプロトン伝導体膜を形成した。
こうして得られたカーボン電極、硫酸水素エステル化フラレノールの層及びプロトン伝導体膜よりなる積層体に、直接、ヒーターを圧着し、加熱温度と加熱時間を変えて、プロトン伝導体膜に加熱処理を施した。
ここに、加熱温度としては、120℃、150℃、160℃、180℃及び200℃を選択した。
こうして、加熱処理を施した積層体を、それぞれ、水中に浸し、1分間にわたって、放置して、耐水性試験をおこない、プロトン伝導体膜の水中への溶出状態を、目視によって観察した。
試験結果は、図17に示されている。図17において、×印は、プロトン伝導体膜のほとんどが溶出したと認められたことを意味し、△印は、プロトン伝導体膜のほぼ半分が溶出したと認められたことを意味しており、●印は、プロトン伝導体膜の90%以上が、溶出することなく、残ったことを意味している。
図17から、200℃、180℃あるいは160℃で、プロトン伝導体膜に、加熱処理を施した場合には、10秒以下の処理時間で、プロトン伝導体膜の耐水性が大幅に向上したのに対し、150℃で、プロトン伝導体膜に、加熱処理を施した場合は、20秒以上にわたって、加熱処理を施さないと、プロトン伝導体膜の耐水性を、所望のように、向上させることができないことが判明した。
また、200℃を越える温度で、プロトン伝導体膜に、加熱処理を施した場合には、ポリビニルアルコールに変質が認められた。
したがって、図17から、150℃乃至200℃の加熱温度で、プロトン伝導体膜に、加熱処理を施すことが必要であり、160℃乃至200℃の温度で、プロトン伝導体膜に、加熱処理を施すと、好ましいことが判明した。
実施例2
硫酸水素エステル化フラレノールとポリカーボネートを、2:1の重量比で、混合させ、硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールの総重量の5倍の重量のジクロロメタンに分散乃至溶解させて、調製したスラリーを、マスクとスキージを用いて、硫酸水素エステル化フラレノールの層上に塗布し、水を蒸発させて、厚さ12μmの硫酸水素エステル化フラレノールとポリカーボネートを含むプロトン伝導体膜を形成した。
こうして形成されたプロトン伝導体膜の一方の面に、硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールを、2:1の重量比で、混合させた混合物を、硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールの総重量の5倍の重量の水に分散乃至溶解させた混合液を、グラビア印刷法によって、塗布し、乾燥して、水を蒸発させ、厚さ1μmの硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールとの混合物層を形成した。
こうして得られたプロトン伝導体膜の積層体に、直接、ヒーターを圧着し、180℃で、10秒間にわたって、加熱処理を施した。
次いで、プロトン伝導体膜の積層体に、硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールとの混合物層が形成されていない側から、0.03MPaの圧力の水素ガスを供給し、硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールとの混合物層が形成されている側の水素ガス濃度の時間的な変化を測定した。
測定結果は、図18に示されている。
比較例
実施例2と同様にして、形成されたプロトン伝導体膜の積層体一方の側から、0.03MPaの圧力の水素ガスを供給し、他方の側における水素ガス濃度の時間的な変化を測定した。
測定結果は、図18に示されている。
図18から、プロトン伝導体膜の一方の面に、硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールとの混合物層が形成されている実施例2にかかるプロトン伝導体膜は、硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールとの混合物層が形成されていない比較例にかかるプロトン伝導体膜に比して、優れた水素ガス遮断能力を有していることが判明した。
硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールとの混合物層が形成されている側から、実施例2にかかるプロトン伝導体膜に、0.03MPaの圧力の水素ガスを供給し、硫酸水素エステル化フラレノールとポリビニルアルコールとの混合物層が形成されていない側の水素ガス濃度の時間的な変化を測定したところ、有意差は認められなかった。
本発明は、以上の実施態様及び実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
産業上の利用可能性
以上に明らかなように、本発明の製造方法により作製されるプロトン伝導体は、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基が導入されたフラーレン誘導体と、20重量%を超える含有量のポリビニルアルコールを含有しているので、室温を挟む広い温度範囲で乾燥状態でも高いプロトン伝導性を発揮することができると共に、ポリビニルアルコールの含有によって成膜性が付与されているため、強度が高められ、ガス透過を防ぎ、プロトン伝導性の良好な薄膜として用いることができる。
また、このプロトン伝導体を電気化学デバイスに用いることにより、雰囲気の制約を受けないので、システムの小型化、簡易化を実現することができる。
また、本発明によれば、水素ガスの遮断能力が高く、燃料電池の出力低下を招くおそれのない燃料電池のプロトン伝導体膜及び高出力を実現可能な燃料電池を提供することが可能になる。
このプロトン伝導体を電気化学デバイスに用いることにより、雰囲気の制約を受けないので、システムの小型化、簡易化を実現することができる。
さらに、本発明によれば、電極反応によって、水が生成されても溶出することがなく、しかも、水素ガス遮断能力に優れたプロトン伝導体膜及びその製造方法ならびに電極反応によって、水が生成されても溶出することがなく、しかも、水素ガス遮断能力に優れたプロトン伝導体膜を備えた高出力の燃料電池及びその製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
図1A及び図1Bは、本発明に用いるフラーレン分子の構造図である。
図2A及び図2Bは、本発明に用いるフラーレン誘導体の一例であるポリ水酸化フラーレンの構造図である。
図3A、図3B及び図3Cは、本発明に用いる本発明に用いるフラーレン誘導体の他の例を示す模式図である。
図4は、本発明に係るプロトン伝導体の一例を示す模式図である。
図5は、本発明の一実施の形態を示す燃料電池の構成を示す図である。、
図6は、本発明の他の実施の形態を示す水素−空気電池の構成図である。
図7は、本発明の他の実施の形態を示す電気化学デバイスの概略構成図である。
図8は、本発明の更に他の実施の形態を示す電気化学デバイスの概略構成図である。
図9A及び図9Bは、本発明に係る燃料電池の等価回路を示す回路図である。
図10は、本発明に係る燃料電池に用いたペレットの複素インピーダンスの測定結果を示す図である。
図11は、本発明に係る燃料電池に用いたペレットのプロトン伝導率の温度依存性を示す図である。
図12は、本発明に係る燃料電池の他の例に用いたペレットの複素インピーダンスの測定結果を示す図である。
図13は、図12に示すペレットのプロトン伝導率の温度依存性を示す図である。
図14は、本発明に係るプロトン伝導体におけるポリビニルアルコール含有量の割合を変えたときの燃料電池の出力特性を示すグラフである。
図15は、本発明に係る燃料電池の出力のフラレノール及びポリビニルアルコールに対する依存性を示し、出力と電圧の特性を示すグラフである。
図16は、本発明に係る燃料電池の出力のフラレノール及びポリビニルアルコールに対する依存性を示し、電圧と電流密度を示すグラフである。
図17は、本発明の実施例1における耐水性試験の試験結果を示すグラフである。
図18は、本発明の実施例2及び比較例における水素ガス濃度の時間的な変化を示すグラフである。
Claims (126)
- フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン(H+)解離性の基を導入してなるフラーレン誘導体と、20重量%を超える含有量のポリビニルアルコールとを含有しているプロトン伝導体。
- 前記ポリビニルアルコールの含有量が40重量%以下である請求の範囲第1項記載のプロトン伝導体。
- 前記プロトン解離性の基が、−XH(Xは2価の結合手を有する任意の原子若しくは原子団、Hは水素原子である。)である請求の範囲第1項記載のプロトン伝導体。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH又は−YOH(Yは2価の結合手を有する任意の原子若しくは原子団である。)である請求の範囲第1項記載のプロトン伝導体。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH、−OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかより選ばれる基である請求の範囲第4項記載のプロトン伝導体。
- 前記フラーレン分子に、プロトン解離性の基と、電子吸引基とが導入されている請求の範囲第1項記載のプロトン伝導体。
- 前記電子吸引基が少なくともニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基又はハロゲン原子を含む請求の範囲第6項記載のプロトン伝導体。
- 前記フラーレン分子が、球状炭素クラスター分子がCm(mはCmが球状構造を形成しえる自然数)である請求の範囲第1項記載のプロトン伝導体。
- 厚み300μm以下の薄膜に形成されている請求の範囲第1項記載のプロトン伝導体。
- フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン(H+)解離性の基を導入してフラーレン誘導体を生成する工程と、
このフラーレン誘導体と20重量%を超える配合比のポリビニルアルコールとを混合し、この混合物を薄膜状に成膜する工程と
を有するプロトン伝導体の製造方法。 - 前記ポリビニルアルコールの配合比を40重量%以下とする請求の範囲第10項記載のプロトン伝導体の製造方法。
- 前記プロトン解離性の基を、−XH(Xは2価の結合手を有する任意の原子若しくは原子団、Hは水素原子である。)とする請求の範囲第10項記載のプロトン伝導体の製造方法。
- 前記プロトン解離性の基を、−OH又は−YOH(Yは2価の結合手を有する任意の原子若しくは原子団である。)とする請求の範囲第10項記載のプロトン伝導体の製造方法。
- 前記プロトン解離性の基を−OH、−OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかより選ばれる基とする請求の範囲第13項記載のプロトン伝導体の製造方法。
- 前記フラーレン分子に、プロトン解離性の基と、電子吸引基とを導入する、請求の範囲第10項記載のプロトン伝導体の製造方法。
- 前記電子吸引基として、少なくともニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基又はハロゲン原子を導入する請求の範囲第15項記載のプロトン伝導体の製造方法。
- 前記フラーレン分子を、球状炭素クラスター分子Cm(mはCmが球状構造を形成しえる自然数)とする請求の範囲第10項記載のプロトン伝導体の製造方法。
- 前記プロトン伝導体を厚み300μm以下の薄膜に形成する請求の範囲第10項記載のプロトン伝導体の製造方法。
- 第1極と、第2極と、これら両極間に挟持されたプロトン伝導体とからなり、
上記プロトン伝導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン(H+)解離性の基を導入してなるフラーレン誘導体と、20重量%を超える含有量のポリビニルアルコールとを含有する電気化学デバイス。 - 前記ポリビニルアルコールの含有量が40重量%以下である請求の範囲第19項記載の電気化学デバイス。
- 前記プロトン解離性の基が、−XH(Xは2価の結合手を有する任意の原子若しくは原子団、Hは水素原子である。)である請求の範囲第19項記載の電気化学デバイス。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH又は−YOH(Dは重水素、Yは2価の結合手を有する任意の原子若しくは原子団である。)である請求の範囲第19項記載の電気化学デバイス。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH、−OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかより選ばれる基である請求の範囲第22項記載の電気化学デバイス。
- 前記フラーレン分子に、プロトン解離性の基と、電子吸引基とが導入されている請求の範囲第19項記載の電気化学デバイス。
- 前記電子吸引基が少なくともニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基又はハロゲン原子を含む請求の範囲第24項記載の電気化学デバイス。
- 前記フラーレン分子が、球状炭素クラスター分子Cm(mはCmが球状構造を形成しえる自然数)である請求の範囲第19項記載の電気化学デバイス。
- 前記プロトン伝導体が厚み300μm以下の薄膜に形成されている請求の範囲第19項記載の電気化学デバイス。
- 前記デバイスは、燃料電池として構成されている請求の範囲第19項記載の電気化学デバイス。
- 前記デバイスは、水素−空気電池として構成されている請求の範囲第19項記載の電気化学デバイス。
- 前記第1極又は第2極のうち少なくとも一方がガス電極である請求の範囲第19項記載の電気化学デバイス。
- 前記第1極及び前記第2極の少なくとも一方が活物質性電極である請求の範囲第19項記載の電気化学デバイス。
- プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールを含み、150℃乃至200℃の温度で、加熱処理されたことを特徴とする燃料電池のプロトン伝導体膜。
- プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールを含み、160℃乃至200℃の温度で、加熱処理されたことを特徴とする燃科電池のプロトン伝導体膜。
- 前記プロトン伝導体膜が、0.1μm乃至20μmの厚さを有していることを特徴とする請求の範囲第32項又は第33項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- さらに、前記プロトン伝導体膜の両側に、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層が形成されたことを特徴とする請求の範囲第32項又は第33項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層が、5μm乃至20μmの厚さを有していることを特徴とする請求の範囲第35項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記プロトン伝導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基を導入してなるフラーレン誘導体によって構成されたことを特徴とする請求の範囲第32項又は第33項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- さらに、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層を備えたことを特徴とする請求の範囲第37項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記水素ガス遮断層が、前記プロトン伝導体膜の少なくとも一方の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第38項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記水素ガス遮断層が、前記プロトン伝導体膜の酸素電極側の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第39項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記水素ガス遮断層が、前記プロトン伝導体膜の水素電極側の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第39項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記水素ガス遮断層が、0.1μm乃至10μmの厚さを有していることを特徴とする請求の範囲第38項乃至第41項のいずれか1項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記プロトン解離性の基が、−XH(Xは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団であり、Hは水素原子である。)であることを特徴とする請求の範囲第37項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH又は−YOH(Yは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団である。)であることを特徴とする請求の範囲第43項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH、−OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかより選ばれる基であることを特徴とする請求の範囲第44項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- フラーレン誘導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子に、プロトン解離性の基とともに、電子吸引基が導入されてなることを特徴とする請求の範囲第37項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記電子吸引基が、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基、フッ素及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた1又は2以上の官能基又は原子を含むことを特徴とする請求の範囲第46項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記フラーレン分子が、その炭素数が、36、60、70、76、78、80、82及び84よりなる群から選ばれた球状炭素クラスター分子よりなることを特徴とする請求の範囲第37項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- プロトン伝導体をポリビニルアルコールに混合して成膜したプロトン伝導体膜に、150℃乃至200℃の温度で加熱処理を施すことを特徴とするプロトン伝導体膜の製造方法。
- プロトン伝導体をポリビニルアルコールに混合して成膜したプロトン伝導体膜に、160℃乃至200℃の温度で加熱処理を施すことを特徴とするプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記プロトン伝導体膜を、0.1μm乃至20μmの厚さに成膜することを特徴とする請求の範囲第49項又は第50項記載のプロトン伝導体膜の製造方法。
- さらに、前記プロトン伝導体膜の両側に、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層を形成することを特徴とする請求の範囲第49項又は第50項記載のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層を、5μm乃至20μmの厚さに形成することを特徴とする請求の範囲第52項記載のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記プロトン伝導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基を導入してなるフラーレン誘導体によって構成されたことを特徴とする請求の範囲第49項又は第50項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- さらに、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層を形成することを特徴とする請求の範囲第54項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記水素ガス遮断層を、前記プロトン伝導体膜の少なくとも一方の面に形成することを特徴とする請求の範囲第55項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記水素ガス遮断層を、前記プロトン伝導体膜の酸素電極側の面に形成することを特徴とする請求の範囲第56項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記水素ガス遮断層を、前記プロトン伝導体膜の水素電極側の面に形成することを特徴とする請求の範囲第56項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記水素ガス遮断層を、0.1μm乃至10μmの厚さに形成することを特徴とする請求の範囲第55項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記プロトン解離性の基が、−XH(Xは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団であり、Hは水素原子である。)であることを特徴とする請求の範囲第54項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH又は−YOH(Yは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団である。)であることを特徴とする請求の範囲第60項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH、−OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかより選ばれる基であることを特徴とする請求の範囲第61項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- フラーレン誘導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子に、プロトン解離性の基とともに、電子吸引基が導入されてなることを特徴とする請求の範囲第54項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記電子吸引基が、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基、フッ素及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた1又は2以上の官能基又は原子を含むことを特徴とする請求の範囲第63項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 前記フラーレン分子が、その炭素数が、36、60、70、76、78、80、82及び84よりなる群から選ばれた球状炭素クラスター分子よりなることを特徴とする請求の範囲第54項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜の製造方法。
- 水素電極と、酸素電極を備え、さらに、前記水素電極と前記酸素電極の間に、プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールを含み、150℃乃至200℃の温度で、加熱処理されたプロトン伝導体膜を備えたことを特徴とする燃料電池。
- 水素電極と、酸素電極を備え、さらに、前記水素電極と前記酸素電極の間に、プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールを含み、160℃乃至200℃の温度で、加熱処理されたプロトン伝導体膜を備えたことを特徴とする燃料電池。
- 前記プロトン伝導体膜が、0.1μm乃至20μmの厚さを有していることを特徴とする請求の範囲第66項又は第67項記載の燃料電池。
- さらに、前記プロトン伝導体膜の両側に、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層を備え、前記ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層が、それぞれ、前記水素電極あるいは前記酸素電極に接していることを特徴とする請求の範囲第66項又は第67項記載の燃料電池。
- 前記ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層が、5μm乃至20μmの厚さを有していることを特徴とする請求の範囲第69項記載の燃料電池。
- 前記プロトン伝導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基を導入してなるフラーレン誘導によって構成されたことを特徴とする請求の範囲第66項又は第67項記載の燃料電池。
- さらに、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層を備えたことを特徴とする請求の範囲第71項記載の燃料電池。
- 前記水素ガス遮断層が、前記プロトン伝導体膜の少なくとも一方の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第72項記載の燃料電池。
- 前記水素ガス遮断層が、前記プロトン伝導体膜の酸素電極側の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第73項記載の燃料電池。
- 前記水素ガス遮断層が、前記プロトン伝導体膜の水素電極側の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第73項記載の燃料電池。
- 前記水素ガス遮断層が、0.1μm乃至10μmの厚さを有していることを特徴とする請求の範囲第72項乃至第75項のいずれか1項記載の燃料電池。
- 前記プロトン解離性の基が、−XH(Xは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団であり、Hは水素原子である。)であることを特徴とする請求の範囲第71記載の燃料電池。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH又は−YOH(Yは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団である。)であることを特徴とする請求の範囲第77項記載の燃料電池。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH、−OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかより選ばれる基であることを特徴とする請求の範囲第78項記載の燃料電池。
- フラーレン誘導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子に、プロトン解離性の基とともに、電子吸引基が導入されてなることを特徴とする請求の範囲第71項記載の燃料電池。
- 前記電子吸引基が、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基、フッ素及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた1又は2以上の官能基又は原子を含むことを特徴とする請求の範囲第80項記載の燃料電池。
- 前記フラーレン分子が、その炭素数が、36、60、70、76、78、80、82及び84よりなる群から選ばれた球状炭素クラスター分子よりなることを特徴とする請求の範囲第71項記載の燃料電池。
- 水素電極と、酸素電極との間に、プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜を挟持させて、燃料電池を製造する方法において、前記プロトン伝導体膜を、150℃乃至200℃の温度で、加熱処理するステップを含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
- 水素電極と、酸素電極との間に、プロトン伝導体と、プロトン伝導体のバインダーとしてのポリビニルアルコールとを含むプロトン伝導体膜を挟持させて、燃料電池を製造する方法において、前記プロトン伝導体膜を、160℃乃至200℃の温度で、加熱処理するステップを含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
- 前記プロトン伝導体膜を、0.1μm乃至20μmの厚さに成膜することを特徴とする請求の範囲第83項又は第84項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記プロトン伝導体膜を、前記水素電極及び前記酸素電極の一方の上に形成し、加熱処理を施すことを特徴とする請求の範囲第83項又は第84項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記プロトン伝導体膜を、前記水素電極及び前記酸素電極の一方の上に形成するのに先立って、前記前記プロトン伝導体膜に、加熱処理を施すことを特徴とする請求の範囲第83項又は第84項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記水素電極及び前記酸素電極の一方の上に、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層を形成し、前記ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層上に、前記プロトン伝導体膜を形成した後に、加熱処理を施すことを特徴とする請求の範囲第83項又は第84項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記水素電極及び前記酸素電極の一方の上に、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層を形成した後に、前記ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層上に、前記プロトン伝導体膜を形成し、さらに、前記プロトン伝導体膜の表面に、ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層を形成し、前記プロトン伝導体膜の表面に形成された前記ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層上に、前記水素電極及び前記酸素電極の他方を密着させた後に加熱処理を施すことを特徴とする請求の範囲第83項又は第84項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコールを含まないプロトン伝導体の層を、5μm乃至20μmの厚さに形成することを特徴とする請求の範囲第88項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記プロトン伝導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基を導入してなるフラーレン誘導体によって構成されたことを特徴とする請求の範囲第83項又は第84項記載の燃料電池の製造方法。
- さらに、前記水素電極と前記酸素電極の間に、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層を形成することを特徴とする請求の範囲第91項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記水素ガス遮断層を、前記プロトン伝導体膜の少なくとも一方の面に形成することを特徴とする請求の範囲第92項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記水素ガス遮断層を、前記プロトン伝導体膜の酸素電極側の面に形成することを特徴とする請求の範囲第93項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記水素ガス遮断層を、前記プロトン伝導体膜の水素電極側の面に形成することを特徴とする請求の範囲第93項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記水素ガス遮断層を、0.1μm乃至10μmの厚さに形成することを特徴とする請求の範囲第92項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記プロトン解離性の基が、−XH(Xは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団であり、Hは水素原子である。)であることを特徴とする請求の範囲第91項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH又は−YOH(Yは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団である。)であることを特徴とする請求の範囲第97項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH、−OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかより選ばれる基であることを特徴とする請求の範囲第98項記載の燃料電池の製造方法。
- フラーレン誘導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子に、プロトン解離性の基とともに、電子吸引基が導入されてなることを特徴とする請求の範囲第91項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記電子吸引基が、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基、フッ素及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた1又は2以上の官能基又は原子を含むことを特徴とする請求の範囲第100項記載の燃料電池の製造方法。
- 前記フラーレン分子が、その炭素数が、36、60、70、76、78、80、82及び84よりなる群から選ばれた球状炭素クラスター分子よりなることを特徴とする請求の範囲第91項記載の燃料電池の製造方法。
- フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層と、
フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層と
を備えたことを特徴とする燃料電池のプロトン伝導体膜。 - 前記水素ガス遮断層が、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層の少なくとも一方の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第103項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記水素ガス遮断層が、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層の酸素電極側の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第104項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記水素ガス遮断層が、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層の水素電極側の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第104項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記水素ガス遮断層が、0.1μm乃至10μmの厚さを有していることを特徴とする請求の範囲第103項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記フラーレン誘導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基を導入してなることを特徴とする請求の範囲第103項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記プロトン解離性の基が、−XH(Xは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団であり、Hは水素原子である。)であることを特徴とする請求の範囲第108項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH又は−YOH(Yは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団である。)であることを特徴とする請求の範囲第109項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH、−OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかより選ばれる基であることを特徴とする請求の範囲第110項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- フラーレン誘導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子に、プロトン解離性の基とともに、電子吸引基が導入されてなることを特徴とする請求の範囲第103項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記電子吸引基が、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基、フッ素及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた1又は2以上の官能基又は原子を含むことを特徴とする請求の範囲第112項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 前記フラーレン分子が、その炭素数が、36、60、70、76、78、80、82及び84よりなる群から選ばれた球状炭素クラスター分子よりなることを特徴とする請求の範囲第108項乃至第113項のいずれか1項記載の燃料電池のプロトン伝導体膜。
- 水素電極と、酸素電極を備え、
さらに、前記水素電極と前記酸素電極の間に、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層と、フラーレン誘導体に、ポリビニルアルコールを混合させた水素ガス遮断層とを備えたプロトン伝導体膜が設けられたことを特徴とする燃料電池。 - 前記水素ガス遮断層が、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層の少なくとも一方の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第115項記載の燃料電池。
- 前記水素ガス遮断層が、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層の酸素電極側の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第116項記載の燃料電池。
- 前記水素ガス遮断層が、フラーレン誘導体を含むプロトン伝導体層の水素電極側の面に形成されたことを特徴とする請求の範囲第116項記載の燃料電池。
- 前記水素ガス遮断層が、0.1μm乃至10μmの厚さを有していることを特徴とする請求の範囲第115項乃至第118項のいずれか1項記載の燃料電池。
- 前記フラーレン誘導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン解離性の基を導入してなることを特徴とする請求の範囲第115項記載の燃料電池。
- 前記プロトン解離性の基が、−XH(Xは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団であり、Hは水素原子である。)であることを特徴とする請求の範囲第120項記載の燃料電池。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH又は−YOH(Yは、2価の結合手を有する任意の原子又は原子団である。)であることを特徴とする請求の範囲第121項記載の燃料電池。
- 前記プロトン解離性の基が、−OH、−OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかより選ばれる基であることを特徴とする請求の範囲第122項記載の燃料電池。
- フラーレン誘導体が、フラーレン分子を構成する炭素原子に、プロトン解離性の基とともに、電子吸引基が導入されてなることを特徴とする請求の範囲第115項記載の燃料電池。
- 前記電子吸引基が、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、ハロゲン化アルキル基、フッ素及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた1又は2以上の官能基又は原子を含むことを特徴とする請求の範囲第124項記載の燃料電池。
- 前記フラーレン分子が、その炭素数が、36、60、70、76、78、80、82及び84よりなる群から選ばれた球状炭素クラスター分子よりなることを特徴とする請求の範囲第120項乃至第125項のいずれか1項記載の燃料電池。
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