JP4572512B2 - 高分子電解質ならびにそれを用いた高分子電解質膜、膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子電解質ならびにそれを用いた高分子電解質膜、膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、排出物が少なく、かつ高エネルギー効率で環境への負担の低い発電装置である。このため、近年の地球環境保護への高まりの中で再び脚光を浴びている。従来の大規模発電施設に比べ、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として、将来的にも期待されている発電装置である。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。
【0003】
高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell)においては、水素ガスを燃料とする従来の高分子電解質型燃料電池(以下、PEFCと記載する場合がある)に加えて、メタノールなどの燃料を直接供給する直接型燃料電池も注目されている。直接型燃料電池は、従来のPEFCに比べて出力が低いものの、燃料が液体で改質器を用いないために、エネルギー密度が高くなり、一充填あたりの携帯機器の使用時間が長時間になるという利点がある。
【0004】
高分子電解質型燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソード間のプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(MEA)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。ここで、電極は、ガス拡散の促進と集(給)電を行う電極基材(ガス拡散電極あるいは集電体とも云う)と、実際に電気化学的反応場となる電極触媒層とから構成されている。たとえばPEFCのアノード電極では、水素ガスなどの燃料がアノード電極の触媒層で反応してプロトンと電子を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは高分子電解質へと伝導する。このため、アノード電極には、ガスの拡散性、電子伝導性、プロトン伝導性が良好なことが要求される。一方、カソード電極では、酸素や空気などの酸化ガスがカソード電極の触媒層で、高分子電解質から伝導してきたプロトンと、電極基材から伝導してきた電子とが反応して水を生成する。このため、カソード電極においては、ガス拡散性、電子伝導性、プロトン伝導性とともに、生成した水を効率よく排出することも必要となる。
【0005】
また、PEFCの中でも、メタノールなどを燃料とする直接型燃料電池においては、水素ガスを燃料とする従来のPEFCとは異なる性能が要求される。すなわち、直接型燃料電池においては、アノード電極ではメタノール水溶液などの燃料がアノード電極の触媒層で反応してプロトン、電子、二酸化炭素を生じ、電子は電極基材に伝導、プロトンは高分子電解質に伝導、二酸化炭素は電極基材を通過して系外へ放出される。このため、従来のPEFCのアノード電極の要求特性に加えて、メタノール水溶液などの燃料透過性や二酸化炭素の排出性も要求される。さらに、直接型燃料電池のカソード電極では、従来のPEFCと同様な反応に加えて、電解質膜を透過したメタノールなどの燃料と酸素あるいは空気などの酸化ガスがカソード電極の触媒層で、二酸化炭素と水を生成する反応も起こる。このため、従来のPEFCよりも生成水が多くなるため、さらに効率よく水を排出することが必要となる。
【0006】
従来、高分子電解質としてナフィオン(デュポン社製、商品名)に代表されるパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーが使用されてきた。しかし、これらのパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーは直接型燃料電池においてはメタノールなどの燃料透過が大きく、電池出力やエネルギー効率が十分でないという問題があった。またパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーは、フッ素を使用するという点から価格も非常に高いものであった。
【0007】
従来のパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーとは異なる非パーフルオロ系プロトン伝導性ポリマー、例えば非フッ素系の芳香族系高分子にアニオン性基を導入した高分子電解質も種々提案されている(特許文献1,2、非特許文献1)。しかしこれらの高分子電解質は、高伝導度を得るためにアニオン性基の導入量を多くすると内部に水を取り込み易く、高分子電解質中に大きな水のクラスターが出来てしまい、本明細書中で定義する低融点水の含有率が多く、そのために本明細書中で定義する不凍水量率が少なく、メタノールなどの燃料クロスオーバーが大きいという欠点があった。これは低融点水中をメタノールなどの燃料が透過しやすいためと推測される。
【0008】
また、プロトン伝導性ポリマーと他の高分子との複合も提案されている。例えば、スルホン化ポリフェニレンオキシドとポリビニリデンフルオライドからなる複合膜(特許文献3)が知られている。またスルホン化ポリスチレンとポリビニリデンフルオライドからなる複合膜(特許文献4)も知られている。しかし、これらの文献に記載の高分子電解質膜は、イオン伝導性ポリマーとポリビニリデンフルオライドとのブレンド膜であって相溶性が悪く、μmオーダーの大きな相分離構造を取りやすく、相間に低融点水やバルク水(本明細書中で定義)が存在し、そのために電解質中の不凍水量率も少なく、高伝導度と燃料クロスオーバー抑制を両立させることは難しかった。また、プロトン伝導性ポリマーおよび窒素原子含有基を有するシロキサンと金属酸化物との共重合体からなる複合体(特許文献5)が知られている。また、ナフィオンとシロキサンとの複合体(非特許文献2,3)などからなる膜も知られているが、これら文献に記載の膜は、パーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーであるナフィオンを用いていることから、他の高分子と複合しても高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーの両立は困難であった。
【0009】
【特許文献1】
米国特許出願公開第2002/91225号明細書
【0010】
【特許文献2】
米国特許第5403675号明細書
【0011】
【非特許文献1】
J. Membrane Sci., Vol.197, 231-242(2002)
【0012】
【特許文献3】
米国特許第6103414号明細書
【0013】
【特許文献4】
特表2001−504636号公報
【0014】
【特許文献4】
特開2002−110200号公報
【0015】
【非特許文献2】
Polymers, Vol.43, 2311-2320 (2002)
【0016】
【非特許文献3】
J. Mater. Chem., Vol.12, 834-837 (2002)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明の課題とするところは、高伝導性を有しながら燃料クロスオーバーの低い高分子固体電解質を提供し、さらには、それを用いた高分子電解質膜、膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
係る課題を解決するために、本発明は次の本旨とする。すなわち、
「プロトン伝導性ポリマー(A)と、(A)とは異なる高分子(B)が光学顕微鏡観察において均一に混じり合っているか、または光学顕微鏡観察において100μm以上のサイズの相分離構造を取らずに混じり合ってなる高分子電解質であって、前記プロトン伝導性ポリマー(A)が非架橋高分子、かつ非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーであり、前記高分子(B)が溶剤に対して不溶な架橋高分子であり、前記プロトン伝導性ポリマー(A)と前記高分子(B)の組成比率が0.05以上20以下であり、前記高分子電解質中の数式(S1)で表される不凍水量率が40重量%以上、100重量%以下であり、溶出重量が初期重量の95%未満であることを特徴とする高分子電解質。
(不凍水量率)=(不凍水量)/(低融点水量+不凍水量)×100(%) ……(S1)」であり、また、その種々の派生あるいは改良された態様である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の高分子電解質は、プロトン伝導性ポリマー(A)と、(A)とは異なる高分子(B)が光学顕微鏡観察において均一に混じり合っているか、または光学顕微鏡観察において100μm以上のサイズの相分離構造を取らずに混じり合ってなる高分子電解質であって、前記プロトン伝導性ポリマー(A)が非架橋高分子、かつ非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーであり、前記高分子(B)が溶剤に対して不溶な架橋高分子であり、前記プロトン伝導性ポリマー(A)と前記高分子(B)の組成比率が0.05以上20以下であり、前記高分子電解質中の数式(S1)で表される不凍水量率が40重量%以上100重量%以下であり、0.1gの高分子電解質を純水で洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して重量を測定し、その高分子電解質を100倍重量の溶剤として、トルエン、ヘキサン、N−メチルピロリドン、メタノールおよび水の5種類それぞれに浸漬し、密閉容器中、撹拌しながら70℃、40時間加熱し、アドバンテック社製濾紙(No.2)を用いて濾過を行い、濾過時に100倍重量の同一溶剤で濾紙と残渣を洗浄し、十分に溶出物を溶剤中に溶出させ、濾液を乾固させて求めた溶出重量が初期重量の95%未満であることを特徴とする。
(不凍水量率)=(不凍水量)/(低融点水量+不凍水量)×100(%) ……(S1)
ここで、不凍水量と低融点水量は、以下の方法で求められるものである。
高分子電解質を20℃の水に12時間浸漬した後、水中から取り出し、過剰な表面付着水をできるだけ素早くガーゼで拭き取って除去してから、あらかじめ重量(Gp)を測定してあるアルミナコートされたアルミニウム製密閉型試料容器に入れてクリンプした後、できるだけ素早く試料と密閉型試料容器の合計重量(Gw)を測定し、室温から−30℃まで10℃/分の速度で冷却した後、0.3℃/分で5℃まで昇温する測定温度プログラムで直ちにDSC測定を実施し、この昇温過程のDSC曲線から下記の数式(n1)を使ってバルク水量Wfを、数式(n2)を使って低融点水量Wfcを求め、全水分率から差し引くことで、数式(n3)を使って不凍水量Wnfを求める。
【数4】
【数5】
【数6】
ここで、Wf、Wfc、WnfおよびWtは乾燥試料の単位重量あたりの水分重量であり、mは乾燥試料重量、dq/dtはDSCの熱流束シグナル、ΔH0はT0での融解エンタルピー、T0はバルク水の融点である。なお、DSC測定後に密閉型試料容器に小さな穴を開け、真空乾燥機にて110℃で24時間真空乾燥した後、できるだけ素早く試料と密閉型試料容器の合計重量(Gd)を測定した。乾燥試料重量(m)は m=Gd−Gp とした。全水分率(Wt)は Wt=(Gw−Gd)/m とした。
本発明者らは、プロトン伝導性ポリマー(A)と、(A)とは異なる高分子(B)が光学顕微鏡観察において均一に混じり合っているか、または光学顕微鏡観察において100μm以上のサイズの相分離構造を取らずに混じり合ってなり、前記プロトン伝導性ポリマー(A)が非架橋高分子、かつ非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーであり、前記高分子(B)が溶剤に対して不溶な架橋高分子であり、前記プロトン伝導性ポリマー(A)と前記高分子(B)の組成比率が0.05以上20以下であり、溶出重量が初期重量の95%未満である高分子電解質が、高伝導度と燃料クロスオーバー抑制の両立に有効であること、および前記高分子電解質の性能が高分子電解質中に含まれる水分の存在状態、およびその量によって左右されることを見出し、本発明に到達した。
【0020】
本明細書中では高分子電解質中の水分を、0℃以上で融点が観測されるバルク水、0℃以下、−30℃以上で融点が観測される低融点水および−30℃以上では融点が観測されない不凍水に分類する。本発明者らは鋭意検討の結果、不凍水の割合が高分子電解質の性能に大きく影響することを見出した。
【0021】
本発明の高分子電解質は、数式(S1)で表される不凍水量率が40重量%以上100重量%以下であることが必要であり、50重量%以上99.9重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上、99.9重量%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
(不凍水量率)=(不凍水量)/(低融点水量+不凍水量)×100 (%)……(S1)
なお、不凍水量および低融点水量は後述する方法によって測定した値とする。
【0023】
メタノールなどの燃料は主として低融点水中を透過し、その割合が大きいと燃料クロスオーバーが大きくなると考えられる。一方、不凍水はイオン性基および極性基の近傍にあると推測され、この不凍水中はメタノールなどの燃料は容易には透過しないものと推測される。このような不凍水の含有割合が大きな高分子電解質を実現することによって、高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーを両立でき、高分子電解質型燃料電池においては高出力と高エネルギー容量を達成することが可能になる。
【0024】
不凍水量率が40重量%未満であれば、プロトン伝導性もしくは燃料クロスオーバー抑制効果が不十分となり好ましくない。不凍水量率はできる限り100重量%に近い方が好ましいが、低融点水が全く含まれない場合、伝導度の低下が懸念されるので上限としては99.9%程度が好ましい。
【0025】
さらに、数式(S2)で表される高分子電解質中の不凍水量の高分子電解質の乾燥重量に対する割合(不凍水含有率)は、20%以上、200%以下であることが好ましい。
【0026】
(不凍水含有率)=(高分子電解質中の不凍水量)/(高分子電解質の乾燥重量)×100(%) ……(S2)
なお、高分子電解質中の不凍水量および高分子電解質の乾燥重量は後述する方法によって測定した値とする。
【0027】
不凍含有率が20%未満では、プロトン伝導度が不十分となり、200%を越えると燃料クロスオーバーの抑制効果が低下する傾向にある。不凍含有率は25%以上150%以下がより好ましく、30%以上100%以下がさらに好ましい。
【0028】
数式(S1)で示される不凍水量率および数式(S2)で示される不凍水含有率は、示差走査熱量分析(DSC)法により求めるものとする。すなわち、高分子電解質を20℃の水に12時間浸漬した後、水中から取り出し、過剰な表面付着水をできるだけ素早くガーゼで拭き取って除去してから、あらかじめ重量(Gp)を測定してあるアルミナコートされたアルミニウム製密閉型試料容器に入れてクリンプした後、できるだけ素早く試料と密閉型試料容器の合計重量(Gw)を測定し、直ちにDSC測定を実施する。測定温度プログラムは、室温から−30℃まで10℃/分の速度で冷却した後、0.3℃/分で5℃まで昇温し、この昇温過程のDSC曲線から下記の数式(n1)を使ってバルク水量Wfを、数式(n2)を使って低融点水量Wfcを求め、全水分率から差し引くことで、不凍水量Wnfを求めることができる〔数式(n3)〕。
【0029】
【数1】
【0030】
【数2】
【0031】
【数3】
【0032】
ここで、Wf、Wfc、WnfおよびWtは乾燥試料の単位重量あたりの水分重量であり、mは乾燥試料重量、dq/dtはDSCの熱流束シグナル、ΔH0はT0での融解エンタルピー、T0はバルク水の融点である。なお、DSC測定後に密閉型試料容器に小さな穴を開け、真空乾燥機にて110℃で24時間真空乾燥した後、できるだけ素早く試料と密閉型試料容器の合計重量(Gd)を測定した。乾燥試料重量(m)は m=Gd-Gp とする。全水分率(Wt)は Wt=(Gw-Gd)/m とする。
【0033】
DSC測定の機器および条件は下記のようにする。
【0034】
DSC装置:TA Instruments社製"DSC Q100"
データ処理装置:東レリサーチセンター製"TRC-THADAP-DSC"
測定温度範囲:−50℃〜5℃
走査速度:0.3℃/分
試料量:約5mg
試料パン:アルミニウム製密閉型試料容器
温度・熱量校正:水の融点(0.0℃、融解熱量79.7cal/g)
なお、本測定法は株式会社東レリサーチセンターによって開発されたものであり、株式会社東レリサーチセンターによる測定値が最も信頼性が高い。他の機関による測定値は信頼性が本発明の実施に適切な値が得られない場合があるので、株式会社東レリサーチセンターによる測定値に基づいて本発明を実施するべきである。
【0035】
従来、プロトン伝導性ポリマーを高分子電解質として用いた場合、高プロトン伝導性を得るためにアニオン性基の量を増加すると、高分子電解質の含水率が増加し、高分子電解質中に低融点水およびバルク水が多くなるため、燃料クロスオーバーが大きくなり、高いプロトン伝導度と燃料クロスオーバーを抑制することの両立ができなかった。これに対して本発明の高分子電解質は、プロトン伝導性ポリマー(A)と、(A)とは異なる高分子(B)が混じり合ってなる高分子電解質であり、高分子(B)がプロトン伝導性ポリマー(A)の分子鎖を拘束することによって低融点水およびバルク水の量を抑制して不凍水の割合を増加させ、高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーを両立することができると考えられる。
【0036】
次に、プロトン伝導性ポリマー(A)について説明する。
プロトン伝導性ポリマー(A)は非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーである。
【0037】
パーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーとは、プロトン伝導性ポリマーであって該ポリマー中のアルキル基および/またはアルキレン基の水素の大部分または全部がフッ素原子に置換されたものを意味する。本明細書においてはポリマー中のアルキル基および/またはアルキレン基の水素の85%以上がフッ素原子で置換されたプロトン伝導性ポリマーをパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーと定義する。パーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーの代表例としては、ナフィオン(デュポン社製)、フレミオン(旭硝子社製)およびアシプレックス(旭化成社製)などの市販品を挙げることができる。これらのパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーの構造は式(1)で表すことができる。
【0038】
【化2】
【0039】
[式(1)中、n1、n2はそれぞれ独立に自然数を表す。k1およびk2はそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。]
パーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーは、ポリマー中の疎水性部分と親水性部分が明確な相分離構造を形成するために、含水状態ではポリマー中にクラスターと呼ばれる水のチャンネルが形成される。この水チャンネルは主として低融点水から形成されると考えられ、この中はメタノールなどの燃料の移動が容易であり、燃料クロスオーバー抑制のためには必ずしも好適ではない。したがって本発明においては非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーを用いることが必要である。非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーを用いることにより、高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーを両立がより容易となる。ここで、非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーとは、パーフルオロ系プロトン伝導性ポリマー以外のプロトン伝導性ポリマーのことを指す。
【0040】
非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーについてさらに説明する。
【0041】
非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーは複数種類を同時に使用してもかまわない。
【0042】
非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーは、アニオン性基を有するポリマーが好ましい。アニオン性基とは、水分の存在下で解離してアニオンとプロトン(塩である場合はカチオン)を生成可能な置換基である。このようなアニオン性基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。ここで、スルホン酸基は式(f1)で表される基、スルホンイミド基は式(f2)で表される基[式中Rは任意の原子団を表す。]、硫酸基は式(f3)で表される基、ホスホン酸基は式(f4)で表される基、リン酸基は式(f5)または(f6)で表される基、カルボン酸基は式(f7)で表される基を意味する。また、これらの塩である場合もアニオン性基に該当する。
【0043】
【化3】
【0044】
これらのアニオン性基の中でも、高プロトン伝導度の点からスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基から選ばれた少なくとも1種を有することがより好ましく、耐加水分解性の点からスルホン酸基またはスルホンイミド基を有することが最も好ましい。これらのアニオン性基は前記非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマー中に2種類以上含むことができる。
【0045】
このようなアニオン性基を有する好ましい非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーを以下に例を挙げて具体的に説明する(E−1およびE−2)。
【0046】
(E−1)ビニル重合系モノマーから得られる高分子、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメタクリレートホスフェートなどに代表されるアニオン性基を有するビニル重合系モノマーから得られる高分子が挙げられる。このようなアニオン性基を有するビニル重合系モノマーとアニオン性基を持たないモノマーを共重合させた高分子も好適である。アニオン性基を持たないモノマーとしてはビニル重合性官能基を有する化合物であれば特に限定なく用いることができる。好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸(2−エチル)ヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系化合物、スチレン、α−メチルスチレン、アミノスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−メチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系化合物、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミドなどのマレイミド系化合物等が挙げられる。
【0047】
また、アニオン性基を持たないビニル重合系モノマーから得られる高分子にアニオン性基を導入した高分子も好適である。アニオン性基を導入する方法については公知の方法を適用できるが、例を挙げると、ホスホン酸基の導入は、例えば Polymer Preprints, Japan, 51, 750 (2002) 等に記載の方法によって可能である。リン酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する高分子のリン酸エステル化によって可能である。カルボン酸基の導入は、例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基を有する高分子を酸化することによって可能である。硫酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する高分子の硫酸エステル化によって可能である。スルホン酸基を導入する方法としては、例えば特開平2−16126号公報あるいは特開平2−208322号公報等に記載の方法が公知である。具体的には、例えば、高分子をクロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒中でクロロスルホン酸のようなスルホン化剤と反応させたり、濃硫酸や発煙硫酸中で反応することによりスルホン化することができる。スルホン化剤には高分子をスルホン化するものであれば特に制限はなく、上記以外にも三酸化硫黄等を使用することができる。また例えばエポキシ基を有する高分子の場合には J. Electrochem. Soc., Vol.143, No.9, 2795-2799(1996) に記載の方法によってスルホン化することができる。これらの方法により高分子をスルホン化する場合には、スルホン化の度合いはスルホン化剤の使用量、反応温度および反応時間により、容易に制御できる。芳香族系高分子へのスルホンイミド基の導入は、例えばスルホン酸基とスルホンアミド基を反応させる方法によって可能である。
【0049】
ビニル重合系モノマーから得られる高分子を製造する場合には、モノマー組成物には、重合をしやすくするためにパーオキサイド系やアゾ系に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を添加するのが一般的である。
【0050】
熱重合を行う場合は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有するものを選択して使用する。一般的には10時間半減期温度が40〜100℃の過酸化物系開始剤が好適であり、かかる開始剤を用いることで更にひび割れのない高分子電解質を製造することができる。
【0051】
光重合開始剤としてはベンゾフェノンのようなカルボニル化合物とアミンを併用した系や、メルカプタン化合物、ジスルフィド化合物などを挙げることができる。
【0052】
これらの重合開始剤は単独または混合して用いられ、およそ1重量%くらいまでの量で使用される。
【0053】
重合方法、成形方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、板間重合法、およびコーティング等の方法で薄膜状にしたモノマー組成物を不活性ガスまたは減圧雰囲気下で重合する方法などである。
【0054】
一例として板間重合法について、次に説明する。モノマー組成物を2枚の板状モールドの空隙に充填する。そして光重合あるいは熱重合を行って膜状に賦型する。板状モールドは、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等で製作されているが、光重合の場合は光学的に透明な素材が用いられ、通常は樹脂またはガラスが使用される。必要に応じて膜に一定の厚みを与えかつ充填したモノマー組成物の液モレを防止する目的を有するガスケットを併用してもよい。空隙にモノマー組成物を充填した板状モールドは、続いて紫外線のような活性光線を照射されるか、オーブンや液槽に入れて加熱されて重合される。光重合の後に加熱重合したり、逆に加熱重合後に光重合する両者を併用する方法もありうる。光重合の場合は、例えば水銀ランプや捕虫灯を光源とする紫外線を多く含む光を短時間(通常は1時間以下)照射するのが一般的である。熱重合を行う場合には、室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めて行く条件が、均一性、品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
【0055】
(E−2)アニオン性基を有し主鎖に芳香環を有する高分子
主鎖に芳香環を有する高分子(以下芳香族系高分子と記載する場合がある)であってアニオン性基を有するものである。
【0056】
主鎖構造は、芳香環を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばエンジニアリングプラスチックとして使用されるような十分な機械強度を有する物が好ましい。例えば米国特許第5,403,675号明細書、特開2001−192531号公報および特開2002−293889号公報などに記載のあるポリフェニレン系高分子は好適な例である。
【0057】
さらには、少なくとも主鎖にアニオン性基とは異なる1種類以上の極性基を有する高分子が好ましい。この理由は、主鎖近傍への水の配位を促し不凍水量を増やすことによって、高プロトン伝導性を与え、燃料クロスオーバーを低減できるためであると推定される。
【0058】
極性基とは、特に限定されるものではないが、水が配位できる官能基が好ましい。この様な極性基としては式(g1)で表されるスルホニル基、式(g2)で表されるオキシ基、式(g3)で表されるチオ基、式(g4)で表されるカルボニル基、式(g5)で表されるホスフィンオキシド基(式中、R1は1価の有機基を表す。)、式(g6)で表されるホスホン酸エステル基(式中、R2は1価の有機基を表す。)、式(g7)で表されるエステル基、式(g8)で表されるアミド基(式中、R3は1価の有機基を表す。)、式(g9)で表されるイミド基および式(g10)で表されるホスファゼン基(式中、R4およびR5は1価の有機基を表す。)などが好適である。
【0059】
【化4】
【0060】
そのような極性基を有する高分子の中でも、下式(P1)
【0061】
【化5】
【0062】
(ここで、Z1、Z2は芳香環を含む有機基を表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。Y1は電子吸引性基を表す。Y2はOまたはSを表す。aおよびbはそれぞれ独立に0〜2の整数を表し、ただしaとbは同時に0ではない。)
で示される繰返し単位を有する芳香族系高分子、および下式(P2)
【0063】
【化6】
【0064】
(ここで、Z3、Z4は芳香環を含む有機基を表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。)
で示される繰返し単位を有するポリイミドから選ばれることが好ましい。
【0065】
Z3として好ましい有機基は式(Z3−1)〜式(Z3−4)で示される有機基であり、耐加水分解性の点で最も好ましいのは式(Z3−1)で示される有機基である。これらの芳香核上の水素はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、シアノ基、エステル基など1価の官能基で置換されていてもよい。
【0066】
【化7】
【0067】
Z4として好ましい有機基は式(Z4−1)〜式(Z4−10)で示される有機基である。これらの芳香核上の水素はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、シアノ基、エステル基など1価の官能基で置換されていてもよい。
【0068】
【化8】
【0069】
高分子電解質としては耐加水分解性に優れている点で式(P1)で示される繰返し単位を有する芳香族系高分子がより好ましい。式(P1)で示される繰返し単位を有する芳香族系高分子の中でも、式(P1−1)〜式(P1−9)で示される繰返し単位を有する芳香族系高分子は特に好ましい。プロトン伝導度の高さ、製造の容易さの点では式(P1−6)〜式(P1−9)で示される繰返し単位を有する芳香族系高分子が最も好ましい。
【0070】
【化9】
【0071】
ここで、Z1として好ましい有機基は、フェニレン基およびナフチレン基である。これらは置換されていてもよい。
【0072】
また、Z2として好ましい有機基はフェニレン基、ナフチレン基ならびに式(Z2−1)〜式(Z2−14)で示される有機基である。これらは置換されていてもよい。これらの中でも式(Z2−7)〜式(Z2−14)で示される有機基は、燃料透過抑制効果に優れるために特に好ましく、本発明の高分子電解質はZ2として式(Z2−7)〜式(Z2−14)で示される有機基のうち少なくとも1種類を含有することが好ましい。式(Z2−7)〜式(Z2−14)で示される有機基の中でも最も好ましいのは式(Z2−8)で示される有機基である。
【0073】
【化10】
【0074】
式(P1−4)および式(P1−9)におけるR1で示される有機基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、ビニル基、アリル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、フェニルフェニル基などである。工業的な入手の容易さの点ではR1として最も好ましいのはフェニル基である。
【0075】
これら芳香族系高分子に対してアニオン性基を導入する方法は、アニオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法と、高分子反応でアニオン性基を導入する方法などが挙げられる。
【0076】
アニオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法としては、繰り返し単位中にアニオン性基を有したモノマーを用いれば良く、必要により適当な保護基を導入して重合後脱保護基を行えばよい。かかる方法は例えば Journal of Membrane Science, 197(2002) 231-242 に記載がある。
【0077】
高分子反応でアニオン性基を導入する方法について例を挙げて説明すると、芳香族系高分子へのホスホン酸基の導入は、例えば、Polymer Preprints, Japan, 51, 750 (2002) 等に記載の方法によって可能である。芳香族系高分子へのリン酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族系高分子のリン酸エステル化によって可能である。芳香族系高分子へのカルボン酸基の導入は、例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基を有する芳香族系高分子を酸化することによって可能である。芳香族系高分子への硫酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族系高分子の硫酸エステル化によって可能である。芳香族系高分子をスルホン化する方法、すなわちスルホン酸基を導入する方法としては、たとえば特開平2−16126号公報あるいは特開平2−208322号公報等に記載の方法が知られている。具体的には、例えば、芳香族系高分子をクロロホルム等の溶媒中でクロロスルホン酸のようなスルホン化剤と反応させたり、濃硫酸や発煙硫酸中で反応することによりスルホン化することができる。スルホン化剤には芳香族系高分子をスルホン化するものであれば特に制限はなく、上記以外にも三酸化硫黄等を使用することができる。この方法により芳香族系高分子をスルホン化する場合には、スルホン化の度合いはスルホン化剤の使用量、反応温度および反応時間により、容易に制御できる。芳香族系高分子へのスルホンイミド基の導入は、例えばスルホン酸基とスルホンアミド基を反応させる方法によって可能である。
【0079】
本発明の高分子電解質は、プロトン伝導性ポリマー(A)と、(A)とは異なる高分子(B)が混じり合ってなる高分子電解質である。本発明において、プロトン伝導性ポリマー(A)と、(A)とは異なる高分子(B)が混じり合ってなるというのは、(A)と(B)が均一に混じり合っているか、または(A)と(B)が100μm以上のサイズの相分離構造を取らずに混じり合っている状態である。(A)と(B)が均一に混じり合っているか、または100μm以上のサイズの相分離構造を取らずに混じり合っていることの確認は高分子電解質の光学顕微鏡観察によって可能である。光学顕微鏡により高分子電解質を観察し、相分離が確認できない場合、および相分離のドメインサイズが無作為の100個中90個以上が100μm未満の場合は、(A)と(B)が混じり合っていると判断する。光学顕微鏡観察において、相分離状態を確認しやすくするために高分子電解質を適宜染色することができる。
【0080】
(A)と(B)が混じり合っている場合は、(B)との相互作用によって(A)の分子鎖の運動が制限された状態すなわち(A)の分子鎖が拘束された状態になると考えられる。
【0081】
本発明の高分子電解質において、前記プロトン伝導性ポリマー(A)と前記高分子(B)とは、均一に混じり合っていることが燃料クロスオーバー抑制のために好ましい。(A)と(B)が均一に混じり合っている状態とは(A)と(B)が1μm以上のサイズの相分離構造を取らずに混じり合っている状態である。(A)と(B)が均一に混じり合っていることの確認は高分子電解質の電子顕微鏡観察によって可能である。電子顕微鏡により高分子電解質の断面を観察し、相分離が確認できない場合、および相分離のドメインサイズが無作為の100個中90個以上が1μm未満の場合は、(A)と(B)が均一に混じり合っていると判断する。電子顕微鏡観察において、相分離状態を確認しやすくするために高分子電解質を適宜染色することができる。相分離のドメインが確認できるのに、均一に混じり合っていると判断することから、以下、「実質的に」という修飾を加える場合があるが、同じ意味である。
【0082】
(A)と(B)が実質的に均一に混じり合った状態では互いの高分子鎖どうしが十分にからみ合っている状態と考えられ、互いの動きを拘束し燃料透過を妨げるものと考えられる。
【0083】
(A)と(B)が実質的に均一に混じり合った状態を作るための方法としては(A)、(B)のうち少なくともいずれか一方を前駆体(モノマーまたはオリゴマー)の状態にて混ぜ合わせ、その後重合を行って高分子電解質を作製する方法が好ましい。
【0084】
次に前記「(A)とは異なる高分子(B)」について説明を加える。該高分子(B)は、燃料透過を抑制することに有効であることから、40℃の10Mメタノール水溶液に対して不溶であることが好ましい。不溶であるとは、高分子電解質膜を40℃の10Mメタノール水溶液に8時間浸漬した後、濾紙で濾過し、濾液から検出される高分子(B)の量が、高分子電解質膜全体に含まれる高分子(B)の量の5重量%以下であることを意味する。なお、ここでは燃料としてメタノール水溶液を想定したが、メタノール水溶液に対する挙動は他の燃料に対しても共通しており、一般性を有する。
【0085】
高分子(B)として好適なものの例としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ビニル重合系高分子、メラミン系高分子、フェノール樹脂系高分子、オルガノポリシロキサン、チタニア、ジルコニア、アルミナなどの無機系架橋高分子などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また複数種類の高分子(B)を併用してもかまわない。
【0086】
また、高分子(B)としては架橋高分子を用いることが必要である。この場合、プロトン伝導性ポリマーの分子鎖との絡み合いを大きくすることができ、大きな分子鎖拘束効果を発揮し、特に高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーの両立に有利である。
【0087】
本発明において架橋とは、化学的な架橋であっても物理的な架橋であってもよい。本発明において架橋とは、溶剤に対して不溶な状態またはその状態にすることを意味する。本発明において、架橋高分子とは溶剤に対して不溶な高分子を意味する。
【0088】
また本発明の高分子電解質が架橋高分子を含むかどうかの判定は次のように行う。検体となる高分子電解質(約0.1g)を純水で洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して重量を測定する。高分子電解質を100倍重量の溶剤に浸漬し、密閉容器中、撹拌しながら70℃、40時間加熱する。アドバンテック社製濾紙(No.2)を用いて濾過を行う。濾過時に100倍重量の同一溶剤で濾紙と残渣を洗浄し、十分に溶出物を溶剤中に溶出させる。濾液を乾固させ、溶出分の重量を求める。溶出重量が初期重量の95%未満の場合は、その溶剤に対して不溶な成分を含むと判定する。この試験をトルエン、ヘキサン、N−メチルピロリドン、メタノールおよび水の5種類の溶剤について行い、全ての溶剤で不溶な成分を含むと判定された場合に、その高分子電解質は架橋高分子を含むと判定される。
【0089】
前記の高分子(B)に用いるポリイミドは3官能以上のアミンまたは6官能以上のカルボン酸を原料とすることで架橋高分子とすることができる。
【0090】
前記の高分子(B)に用いるポリアミドは3官能以上のアミンまたは3官能以上のカルボン酸を原料とすることで架橋高分子とすることができる。
【0091】
前記の高分子(B)に用いるポリウレタンは3官能以上のイソシアネートまたは3官能以上のポリオールを原料とすることで架橋高分子とすることができる。
【0092】
前記の高分子(B)に用いるポリウレアは3官能以上のイソシアネートまたは3官能以上のアミンを原料とすることで架橋高分子とすることができる。
【0093】
前記の高分子(B)に用いるビニル重合系高分子としては、好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系化合物、スチレン、α−メチルスチレン、アミノスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−メチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系化合物、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミドなどのマレイミド系化合物等の(共)重合体が挙げられる。これらのビニル重合系高分子はビニル重合系モノマーの中で重合性官能基を複数有するものを架橋剤として共重合することによって架橋させることができる。ビニル重合系モノマーの中でビニル重合性官能基を複数有するものを一部例示すれば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系化合物、ジビルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニルなどのスチレン系化合物、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系化合物、フェニレンビスマレイミド、p,p’−オキシビス(フェニル−N−マレイミド)などのマレイミド系化合物等である。
【0094】
前記の高分子(B)に用いるエポキシ系高分子の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらは、1種または2種以上を併用することも可能である。
【0095】
前記高分子(B)に用いる無機系架橋高分子の1つであるオルガノポリシロキサンはシラン化合物の縮合によって得ることができる。かかるシラン化合物として好適なものは下記一般式(d1)で示される化合物および下記一般式(d2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0096】
【化11】
【0097】
[式(d1)および(d2)中、J1〜J6はそれぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリーロキシ基、置換されていてもよいアシロキシ基およびハロゲン基から選ばれた置換基を表し、なおかつJ1〜J6のうち少なくとも1つは、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリーロキシ基、置換されていてもよいアシロキシ基およびハロゲン基から選ばれた置換基を表す。Qは2価の有機基を表す。]
式中J1〜J6はそれぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリーロキシ基、置換されていてもよいアシロキシ基およびハロゲン基から選ばれた置換基を表し、なおかつJ1〜J6のうち少なくとも1つは、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリーロキシ基、置換されていてもよいアシロキシ基およびハロゲン基から選ばれた置換基を表す。その具体例としてはメチル基、エチル基、ビニル基、イソプロピル基、t−ブチル基などのアルキル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基などのハロゲン化アルキル基、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基などのエポキシ基含有アルキル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−アクリロキシプロピル基などの(メタ)アクリル基含有アクリル基、その他としてメルカプト基、シアノ基、アミノ基などの各種置換基を有するアルキル基、フェニル基、ナフチル基、スチリル基などの置換されていてもよいアリール基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基などの置換されていてもよいアルコキシ基、アセトキシ基などの置換されていてもよいアシロキシ基、フェノキシ基などの置換されていてもよいアリーロキシ基、クロロ基、ブロモ基などのハロゲン基、などが挙げられる。
【0098】
J1〜J6はそれぞれ独立であって、互いに同種であっても異種であってもよい。
【0099】
Qは2価の有機基を表す。Qには酸素原子、窒素原子などの炭素、水素以外の異原子が含まれていても何ら問題はない。さらには、有機基としては鎖状であっても良く、また酸素原子などがエポキシ環などとして存在していても何ら問題はないばかりか、硬化時に官能基として寄与する点からは好ましいものである。
【0100】
その具体例としては、エテンジイル基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基 、ノナンジイル基、デカンジイル基、ウンデカンジイル基、ドデカンジイル基、オクタジエンジイル基および下記式(gr1)〜(gr9)で表される基
【0101】
【化12】
【0102】
などが挙げられる。
【0103】
一般式(d1)および(d2)で表される化合物の具体的な代表例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン、トリアシルオキシシラン、またはトリフェノキシシラン類またはその加水分解物およびジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、などのジアルコキシシラン、ジフェノキシシランまたはジアシルオキシシラン類またはその加水分解物、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,4−ビス(トリクロロシリル)ブタン、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリクロロシリル)オクタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エチレン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ブタン、1,6−ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,1−ビス(トリクロロシリルメチル)エチレン、ビス(トリメトキシシリル)−1,7−オクタジエン、ビス(トリエトキシシリル)−1,7−オクタジエン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]尿素、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N'−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N'−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンなどである。
【0104】
該オルガノポリシロキサンは、プロトン伝導性の向上、プロトン伝導性ポリマーとの相溶性の点からアニオン性基を有することもできる。アニオン性基としてはスルホン酸基、カルボン酸基およびホスホン酸基が好ましい。これらのアニオン性基は2種類以上を同時に使用することも好ましく、この場合は単独で用いた時に比べて耐久性向上などの効果が得られる場合がある。この様なアニオン性基を有するオルガノポリシロキサンを使用するとプロトン伝導性を損なうことなく、架橋密度を高め、燃料クロスオーバーのみを低下させることも可能であるため好ましく用いられる。
【0105】
アニオン性基を有するオルガノポリシロキサンは、アニオン性基または保護されたアニオン性基を有するシラン化合物から得ることできる。アニオン性基または保護されたアニオン性基を有するシラン化合物として好適なものとしては例えば、下記式(c1)〜(c9)で表される化合物が挙げられる。
【0106】
【化13】
【0107】
[G1〜G6はそれぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアシロキシ基およびハロゲン基から選ばれた置換基を表し、なおかつG1〜G6のうち少なくとも1つは、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアシロキシ基およびハロゲン基から選ばれた置換基を表し、E1、E2はそれぞれ独立にヒドロキシ基、置換されていてもよいシロキシ基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基およびハロゲン基から選ばれた置換基を表す。]
これらのアニオン性基を有するシラン化合物の中で、入手の容易さおよびプロトン伝導度の高さの点では式(c4)で表される化合物が特に好ましい。またメタノールなどの燃料クロスオーバー低減効果の大きさの点では式(c1)の化合物が特に好ましい。
【0108】
これらのアニオン性基を有するシラン化合物は、単独で使用してもよいが、アニオン性基を持たないシラン化合物と併用してもよい。
【0109】
これらシラン化合物の硬化温度を下げ、硬化をさらに進行させるためには加水分解を行うことが好ましい。加水分解は純水または塩酸、酢酸あるいは硝酸などの酸性水溶液を配合し撹拌することによって行うことができる。また、純水あるいは酸性水溶液の配合量を調節することによって加水分解の度合いをコントロールすることができる。加水分解に際しては、シラン化合物中の加水分解性基のモル数と等モル以上、3倍モル以下の純水または酸性水溶液を配合することが硬化が早くなるので好ましい。加水分解を行うとアルコールなどが生成するので無溶媒で加水分解を行うこともできるが、均一な加水分解のためにはシラン化合物と溶媒を混合した後に加水分解を行うことが望ましい。また目的に応じて加水分解後のアルコールなどを加熱および/または減圧下で適当量除去しつつ加水分解を行うことも可能であるし、適当な溶媒を加えつつ行うことも可能である。加水分解に併用しうる溶媒としてはアルコール、エステル、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素あるいはトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどの溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、必要に応じて2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。
また目的に応じて加水分解反応を促進し、さらに予備縮合などの反応を進めるために室温以上に加熱することも可能であるし、予備縮合を抑えるために加水分解温度を室温以下に下げて行うことも可能である。
【0110】
また、他の高分子(B)に用い得る無機系架橋高分子としてはチタニア、ジルコニア、アルミナなどが挙げられ、それぞれは対応する金属アルコキシドの縮合によって得ることができる。
【0111】
本発明の高分子電解質において、前記プロトン伝導性ポリマー(A)と前記高分子(B)の組成比率は、重量比で0.05以上、20以下が必要である。この比率が0.05未満の場合は十分なプロトン伝導度が得られない傾向があり好ましくない。また20を超えると十分な燃料クロスオーバー低減効果が得られない傾向があり好ましくない。
【0112】
次に本発明の高分子電解質を用いて高分子電解質膜を作製する方法を例を挙げて説明する。もちろん本発明は係る説明により限定されるものではない。
【0113】
本発明の高分子電解質膜を得るには、溶液状態より製膜する方法、溶融状態より製膜する方法、等が挙げられる。製膜には高分子電解質膜の原料、すなわち前記プロトン伝導性ポリマー(A)および前記高分子(B)のうちの少なくとも1つまたはその前駆体(モノマー、オリゴマーなど)を溶液状態または溶融状態として用いる。(B)が架橋高分子からなる場合は、前駆体を用いて製膜し、製膜後架橋高分子に転化させることが好ましい。
【0114】
溶液状態より製膜する方法では、たとえば、該溶液を平板またはフィルム上に適当なコーティング法で塗布し、溶媒を除去することにより製膜する方法が例示できる。コーティング法としてはスプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、カーテンコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷などの手法が適用できるがこれらに限定されるものではない。製膜に用いる溶媒は、原料を溶解し、その後に加熱や減圧によって除去し得るものであるならば特に制限はなく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはメタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール系溶媒が好適に用いられる。膜厚は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚みにより制御できる。
【0115】
溶融状態より製膜する場合は、溶融プレス法あるいは溶融押し出し法等が使用可能である。また原料として前駆体を用いる場合には、室温で溶融している場合があるので、その場合は平板またはフィルム上へのコーティングなどして製膜することも可能となる。
【0116】
前駆体を製膜した場合には、熱、光、エネルギー線などを加えることにより反応を完結させ、前駆体を高分子へと転化させる。
【0117】
膜厚は、通常3〜2000μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の強度を得るには3μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには2000μmより薄い方が好ましい。膜厚のより好ましい範囲は5μm〜1000μmである。
【0118】
次に、前記プロトン伝導性ポリマー(A)と前記高分子(B)を混合して本発明の高分子電解質膜を得る方法の例を説明する。本発明の高分子電解質を触媒層に適用する場合も同様の手法が適用できる。これらは例示であって他の適当な方法を採用して製膜することも可能である。
【0119】
第1の方法は、溶液状態または溶融状態のプロトン伝導性ポリマー(A)またはその前駆体と、溶液状態または溶融状態の高分子(B)またはその前駆体とを混合してから製膜する方法である。
【0120】
第2の方法は、プロトン伝導性ポリマー(A)または高分子(B)からなる膜に、溶液状態または溶融状態の他方の高分子またはその前駆体を接触、含浸させて製膜する方法である。
【0121】
また、本発明の高分子電解質を製造する際に、通常の高分子化合物に使用される可塑剤、安定剤あるいは離型剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内であれば使用することができる。
【0122】
本発明の高分子電解質中のアニオン性基密度は、プロトン伝導性および耐アルコール水溶液性の点から0.1〜5.0mmol/gであることが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜3.5mmol/gである。アニオン性基密度が0.1mmol/gより低いと、プロトン伝導度が低下する傾向があり、またアニオン性基密度が5.0mmol/gより高いと高分子電解質型燃料電池に使用する際に、十分な燃料クロスオーバーの抑制および機械的強度が得られないことがある。
【0123】
ここで、アニオン性基密度とは、高分子電解質単位グラム当たりに導入されたアニオン性基のモル量である。アニオン性基密度は、核磁気共鳴スペクトル法、元素分析あるいは中和滴定等により求めることが可能である。試料の純度によらずアニオン性基密度が求まることから、核磁気共鳴スペクトル法が好ましい方法であるが、スペクトルが複雑でアニオン性基密度の算出が困難な場合には測定の容易さから元素分析が好ましい。また、元素分析法でもアニオン性基密度の算出が困難な場合には中和滴定法が好ましい。
【0124】
本発明の高分子電解質が有する室温下でのプロトン伝導度は高分子電解質型燃料電池用として使用する際に十分なレベルであれば特に制限はないが、25℃において10mS/cm以上であることがより好ましく、さらに好ましくは30mS/cm以上、最も好ましくは60mS/cm以上である。10mS/cm未満であると、高分子電解質型燃料電池として、十分な発電性能が得られないことがある。
【0125】
本発明の高分子電解質は、それから得られる高分子電解質型燃料電池において燃料のメタノール水溶液の濃度が高い領域において高出力および高エネルギー容量が得られるという観点から、20℃において1Mメタノール水溶液を用いて測定した場合の燃料クロスオーバーが、120nmol/cm・分以下であることが好ましい。より好ましくは100nmol/cm・分以下、さらに好ましくは80nmol/cm・分以下である。また燃料クロスオーバーの下限値としては、0nmol/cm・分が最も好ましいが、極端に低い燃料クロスオーバーはしばしばプロトン伝導度を損なうので、現実的な下限としては1nmol/cm・分である。
【0126】
本発明では高分子電解質を膜状の多孔基材に充填することも可能であり、この様にして得られた高分子電解質膜は膨潤による変形が抑制され好ましい。
【0127】
多孔基材の形状は特に限定されるものではなく、複数個の孔を有するものが例として挙げられるが、厚み方向に複数個の独立した貫通孔や三次元網目構造を有する多孔基材が好ましい。複数個の独立した貫通孔を作成する方法の例としては、フォトリソグラフィー法、化学エッチング方、ニードルパンチ法、ウォータージェット法、レーザー法、中性子線法などを挙げることができる。
【0128】
三次元網目構造とは、多孔基材を構成するポリマーが立体的に繋がった連続孔を有している状態をいう。
【0129】
多孔基材が三次元網目構造を有している場合、その孔径が0.05〜5μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜1μmの範囲である。孔径は、走査型電子顕微鏡(SEM)などで、表面を撮影した写真から、20個以上好ましくは100個以上の孔の平均から求めることができ、通常は100個で測定する。たとえば、湿式凝固法によって製造された三次元網目の多孔基材は、孔径の分布が広いので、できるだけ多く、たとえば100〜500個の孔径の平均をとることが好ましい。
【0130】
三次元網目構造の空隙率は、10〜95%の範囲であることが好ましい。より好ましくは50〜90%の範囲である。ここで、空隙率とは、多孔基材全体積からポリマーの占める体積を減じたものを、多孔基材全体積で除した百分率(%)である。
【0131】
上記の三次元網目構造を有する多孔基材の製造方法としては、湿式凝固法が好ましく用いられる。多孔基材を高分子電解質膜に用いる場合においては、図1のように、中央が多孔部であり周辺を緻密な高分子フィルムとする形状が好ましい実施態様となる。このような形状とするには、たとえば以下の方法が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0132】
第一の方法としては、予め周辺部のみの緻密フィルムを作製し、その後に中央の多孔部を作製する方法が挙げられる。緻密なフィルムは、例えば基板上にポリマー溶液を塗工、通常に乾燥して作製される。多孔とする中央部を後から切り取っても良いし、塗工時にマスキングを行うことで中央を未塗工とすることも可能である。その後、中央のみにポリマー溶液を塗工した後、多孔化する。
【0133】
第二の方法としては、全体を多孔化したフィルムを作製し、周辺部の孔を閉塞するものである。孔の閉塞には、加熱プレスで潰す方法、あるいは孔に非プロトン伝導性ポリマーを充填する方法などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
本発明に用いられる多孔基材に用いられるポリマーとしては特に限定されないが、好ましくは、ポリイミド(PI)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリフェニレンスルフィドスルフォン(PPSS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリアミドなど、あるいはこれらの共重合体、他のモノマとの共重合体(ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体等)、さらには、ブレンドなども用いることができる。これらのポリマーは、耐酸化性、強度、湿式凝固の容易性などから好ましいものである。
【0135】
多孔基材に上記高分子電解質を充填する方法は特に限定されるものではない。
たとえば、高分子電解質を溶液として、多孔基材への塗工あるいは浸漬することにより空隙内への充填が可能となる。空隙内への充填を容易にするために超音波を使用したり、減圧にするのも好ましく、これらを塗工あるいは浸漬時に併用するとさらに充填効率が向上し好ましい。また、高分子電解質の前駆体であるモノマを空隙内に充填した後に空隙内で重合する、あるいはモノマを気化してプラズマ重合を行う、などの方法を行っても良い。
【0136】
本発明において高分子電解質型燃料電池の形態、高分子電解質型燃料電池の作製方法は特に限定されるものではない。以下にside−by−side構造の高分子電解質型燃料電池作製方法を例に詳述する。ここで、side−by−side構造とは、単一の高分子電解質膜面の平面方向に、一組みの対向する電極からなるセルを2個以上配置する構造を指す。この構造によると、2個以上配置された隣り合ったセルのアノードとカソードを高分子電解質膜を貫通する電子伝導体で接続することによりセルが直列に接続されるため、side−by−side構造の高分子電解質膜断面はプロトン伝導部と電子伝導部が交互に存在する構造となる。
【0137】
Side−by−side構造の一例を図2および図3に示す。図2は、side−by−side構造を持つ本発明の高分子電解質膜の斜視模式図であり、図3は、その製造プロセスの一部を示す断面模式図である。なお図2、図3においては、2個のセルを横に配置した例示をしたが、同様なside−by−side構造で、3個以上の複数個を平面方向に配置することも可能である。以下の説明は2個のセルの場合である。図2においてプロトン伝導部は多孔部1に図示しない高分子電解質が充填され、電子伝導部は膜導電部4に電子伝導体が充填されている。プロトン伝導部の多孔部1と電子伝導部の膜導電部4以外の部分はプロトンや電子が伝導しない非多孔部2であり、緻密な高分子フィルムとなっている。図2に示す多孔基材を図3に例示する方法で高分子電解質膜とする。図3では、予め膜貫通電子伝導部に電子伝導体を充填した後に、プロトン伝導部に高分子電解質を充填しているが、この順序は逆でも構わない。また、高分子電解質を充填してプロトン伝導部を作製し、次に電極を設け、最後に電子伝導部を作製しても構わない。
【0138】
前述のside−by−side構造の電子伝導部は、高分子電解質膜を貫通した構造である。ここで電子伝導部として高分子電解質膜を貫通した部分を膜導電部という。この膜導電部は、高分子電解質を充填するための多孔部とは異なる機能である。その膜導電部の、大きさ、形状などは特に限定されるものではない。膜導電部が大きいほどセルとセルの電気抵抗が低下し直列での電圧向上が期待できる。ただし、膜導電部が大きいほど、アノード側の水素あるいはメタノールなどの燃料がカソード側にリークする可能性、あるいはカソード側の空気がアノード側にリークする可能性が高まり、性能低下を引き起こすことがある。このため、電子伝導部に用いられる電子伝導体の電気抵抗と耐リーク性とを考慮して、膜導電部の大きさや形状を決めることが好ましい。なお、電子伝導部は高分子電解質膜を貫通せず、外部を通しても良い。
【0139】
前記膜導電部4の電子伝導体としては特に限定されるものではないが、導電ペーストが好ましく用いられる。導電ペーストとしては、カーボン、銀、ニッケル、銅、白金、パラジウムなどの導電剤がポリマーに分散されいるものなどを好ましく用いることができ、電子抵抗の低下と耐リーク性の向上が両立できる。特に直接型燃料電池においては、メタノールなどの液体燃料のリークを防ぐことが重要であり、シリコーン樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂などにカーボンや銀を分散した汎用導電ペーストのほか、カーボンブラック、銀、白金などをPVDFやポリイミドに分散した導電ペーストも好ましく用いられる。電子伝導部5は、セルの電極基材あるいは電極触媒層と電気的に接続されるが、この接触抵抗低下のためにも導電ペーストが好ましく使用される。
【0140】
また、電子伝導部5として、ニッケル、ステンレススチール、アルミニウム、銅などの金属箔や金属線を用いても良い。また、これらの金属箔や金属線と導電ペーストを組み合わせることも可能である。
【0141】
本発明の高分子電解質は、高分子電解質膜として電極基材と電極触媒層とから構成される電極7と組み合わせて、あるいは電極触媒層中のプロトン伝導体として用いて、膜電極複合体(MEA)として高分子電解質型燃料電池に用いられる。
【0142】
本発明の高分子電解質型燃料電池における電極7における電極触媒層は、特に限定されることなく公知のものを利用することが可能である。電極触媒層とは、電極反応に必要な触媒や電極活物質(酸化あるいは還元する物質を言う)を含み、さらに電極反応を促進する電子伝導やプロトン伝導に寄与する物質を含む層を言う。また電極活物質が液体や気体の場合には、その液体や気体が透過しやすい構造を有していることが必要であり、電極反応に伴う生成物質の排出も促す構造が必要である。
【0143】
本発明の高分子電解質型燃料電池において、電極活物質としては、好ましくは水素、メタノールなどの燃料あるいは酸素等が挙げられ、触媒は白金などの貴金属粒子が好適な例として挙げられる。また、電極触媒層の導電性を改善する材料を含むことが好ましく、形態は特に限定されるものではないが、例えば、導電性粒子を有することが好ましい。導電性粒子としてはカーボンブラック等が挙げられ、特に触媒を担持したカーボンブラックとして白金担持カーボンなどが好ましく用いられる。電極触媒層は、触媒、電子伝導体(たとえばカーボンブラック)、プロトン伝導体(たとえばプロトン伝導性ポリマー)が互いに接触して、電極活物質と反応生成物が効率よく出入りする構造が求められる。また、プロトン伝導性を改善したり、材料の結着性を向上させたり、或いは撥水性を高めたりするのに、高分子化合物が有効である。したがって、電極触媒層に、少なくとも触媒粒子と導電性粒子と高分子化合物を含むことが好ましい。
【0144】
本発明の高分子電解質型燃料電池には、電極触媒層に含まれる触媒としては公知の触媒を用いることができ、特に限定されるものではないが、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、金などの貴金属触媒が好ましく用いられる。また、これらの貴金属触媒の合金、混合物など、2種以上の元素が含まれていても構わない。
【0145】
電極触媒層に含まれる電子伝導体(導電材)としては、特に限定されるものではないが、電子伝導性と耐触性の点から無機導電性物質が好ましく用いられる。なかでも、カーボンブラック、黒鉛質や炭素質の炭素材、あるいは金属や半金属が挙げられる。ここで、炭素材としては、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが、電子伝導性と比表面積の大きさから好ましく用いられる。ファーネスブラックとしては、キャボット社製バルカンXC−72、バルカンP、ブラックパールズ880、ブラックパールズ1100、ブラックパールズ1300、ブラックパールズ2000、リーガル400、ケッチェンブラック・インターナショナル社製ケッチェンブラックEC、三菱化学社製#3150、#3250などが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製デンカブラックなどが挙げられる。またカーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素なども使用することができる。これらの炭素材の形態としては特に限定されず、粒子状のほか繊維状のものも用いることができる。また、これら炭素材を後処理加工した炭素材も用いることが可能である。このような炭素材の中でも、特に、キャボット社製のバルカンXC−72が電子伝導性の点から好ましく用いられる。
【0146】
これら電子伝導体の添加量としては、要求される電極特性や用いられる物質の比表面積や電子抵抗などに応じて適宜決められるべきものであるが、電極触媒層中の重量比率として1〜80%の範囲が好ましく、20〜60%の範囲がさらに好ましい。電子伝導体は、少ない場合は電子抵抗が高くなり、多い場合はガス透過性を阻害したり触媒利用率が低下するなど、いずれも電極性能を低下させる。
【0147】
電子伝導体は、触媒粒子と均一に分散していることが電極性能の点で好ましいものである。このため、触媒粒子と電子伝導体は予め塗液として良く分散しておくことが好ましい。
【0148】
電極触媒層として、触媒と電子伝導体とが一体化した触媒担持カーボンを用いることも好ましい実施態様である。この触媒担持カーボンを用いることにより、触媒の利用効率が向上し、低コスト化に寄与できる。ここで、電極触媒層に触媒担持カーボンを用いた場合においても、さらに導電剤を添加することも可能である。このような導電剤としては、上述のカーボンブラックが好ましく用いられる。
【0149】
電極触媒層に用いられるプロトン伝導体としては、公知のものを用いることが可能である。プロトン伝導体としては、一般的に、種々の有機、無機材料が公知であるが、高分子電解質型燃料電池に用いる場合には、プロトン伝導性を向上するスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などのアニオン性基を有するポリマーが好ましく用いられる。なかでも、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるアニオン性基を有するポリマーが好ましく用いられる。たとえば、デュポン社製のナフィオン、旭化成社製のアシプレックス、旭硝子社製フレミオンなどが好ましく用いられる。また本発明の高分子電解質も好適に使用できる。これらのプロトン伝導体は、溶液または分散液の状態で電極触媒層中に設ける。この際に、ポリマーを溶解あるいは分散化する溶媒は特に限定されるものではないが、プロトン伝導体の溶解性の点から極性溶媒が好ましい。
【0150】
プロトン伝導体は、電極触媒層を作製する際に電極触媒粒子と電子伝導体とを主たる構成物質とする塗液に予め添加し、均一に分散した状態で塗布することが電極性能の点から好ましいものであるが、電極触媒層を塗布した後にプロトン伝導体を塗布してもかまわない。ここで、電極触媒層にプロトン伝導体を塗布する方法としては、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、カーテンコート、フローコートなどが挙げられ、特に限定されるものではない。
【0151】
電極触媒層に含まれるプロトン伝導体の量としては、要求される電極特性や用いられるプロトン伝導体の伝導度などに応じて適宜決められるべきものであり、特に限定されるものではないが、重量比で1〜80%の範囲が好ましく、5〜50%の範囲がさらに好ましい。プロトン伝導体は、少な過ぎる場合はプロトン伝導度が低く、多過ぎる場合はガス透過性を阻害する点で、いずれも電極性能を低下させることがある。
【0152】
電極触媒層には、上記の触媒、電子伝導体、プロトン伝導体の他に、種々の物質を含んでいてもかまわない。特に電極触媒層中に含まれる物質の結着性を高めるために、上述のプロトン伝導体以外のポリマーを含むことが好ましい。このようなポリマーとしては、フッ素原子を含むポリマーが挙げられ、特に限定されるものではないが、たとえば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)など、あるいはこれらの共重合体、これらのポリマーを構成するモノマ単位とエチレンやスチレンなどの他のモノマとの共重合体、さらには、ブレンドなども用いることができる。これらポリマーの電極触媒層中の含有量としては、重量比で5〜40%の範囲が好ましい。ポリマー含有量が多すぎる場合、電子およびイオン抵抗が増大し電極性能が低下する傾向がある。
【0153】
電極触媒層は、触媒−ポリマー複合体が三次元網目構造を有することも好ましい実施態様である。触媒−ポリマー複合体は、触媒粒子を含んだポリマー複合体であって、この複合体が三次元網目構造となっている場合である。つまり、触媒−ポリマー複合体が立体的に繋がった連続孔を有している状態である。
【0154】
電極触媒層が三次元網目構造を有している場合、その孔径が0.05〜5μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜1μmの範囲である。孔径は、走査型電子顕微鏡(SEM)などで、表面を撮影した写真から、20個以上好ましくは100個以上の平均から求めることができ、通常は100個で測定する。湿式凝固法によって製造された多孔質構造の電極触媒層は、孔径の分布が広いのでできるだけ多く、好ましくは100〜500個の孔径の平均をとることが好ましい。
【0155】
電極触媒層の三次元網目構造の空隙率は、10〜95%の範囲であることが好ましい。より好ましくは50〜90%の範囲である。ここで、空隙率とは、電極触媒層全体積から触媒−ポリマー複合体の占める体積を減じたものを、電極触媒層全体積で除した百分率(%)である。
【0156】
三次元網目構造を有する電極触媒層の作製には、通常、触媒層を電極基材、イオン交換膜、それ以外の基材に塗布した後に湿式凝固を行う。電極触媒層を単独で空隙率を求めることが困難な場合には、電極基材、イオン交換膜、それ以外の基材の空隙率を予め求めておき、これら基材と電極触媒層とを含む空隙率を求めた後に、電極触媒層単独での空隙率を求めることも可能である。
【0157】
三次元網目構造を有する電極触媒層は、空隙率が大きくガス拡散性や生成水の排出が良好であり、かつ電子伝導性やプロトン伝導性も良好である。従来の多孔化では、触媒粒子径や添加ポリマーの粒子径を増大させたり、造孔剤を用いて空隙を形成するなどが行われているが、このような多孔化方式では触媒担持カーボン間やプロトン伝導体間の接触抵抗が電極触媒層に比べて大きくなってしまう。それに対して、湿式凝固法による三次元網目構造では、触媒担持カーボンを含んだポリマー複合体が三次元網目状になっているので、このポリマー複合体を電子やプロトンが伝導しやすく、さらに微多孔質構造のためガス拡散性や生成水の排出も良好な構造となっており、好ましいものである。
【0158】
電極触媒層が三次元網目構造を有している場合においても、触媒や電子伝導体、プロトン伝導体に用いられる物質は、従来と同様の物質を用いることが可能である。
【0159】
触媒−ポリマー複合体の主たる成分は触媒担持カーボンとポリマーであり、それらの比率は必要とされる電極特性に応じて適宜決められるべきもので特に限定されるものではないが、触媒担持カーボン/ポリマーの重量比率で5/95〜95/5が好ましく用いられる。特に高分子電解質型燃料電池用電極触媒層として用いる場合には、触媒担持カーボン/ポリマー重量比率で40/60〜85/15が好ましいものである。
【0160】
触媒−ポリマー複合体には、種々の添加物を加えることもできる。たとえば、電子伝導性向上のための炭素などの導電剤や、結着性向上のためのポリマー、三次元網目構造の孔径を制御する添加物などがあるが、特に限定されることなく用いることができる。これら添加物の添加量としては、触媒−ポリマー複合体に対する重量比率として0.1〜50%の範囲が好ましく、1〜20%の範囲がさらに好ましい。
【0161】
三次元網目構造を有する触媒−ポリマー複合体の製造方法としては、湿式凝固法によるものが好ましい。ここでは、触媒−ポリマー溶液組成物を塗布した後に、この塗布層をポリマーに対する凝固溶媒と接触させて、触媒−ポリマー溶液組成物の凝固析出と溶媒抽出とを同時に行なうことができる。この触媒−ポリマー溶液組成物は、ポリマー溶液中に触媒担持カーボンが均一に分散したものである。触媒担持カーボンとポリマーは前述のものが好ましく用いられる。ポリマーを溶かす溶媒については、用いられるポリマーに応じて適宜決められるべきもので、特に限定されるものではない。ポリマー溶液は触媒担持カーボンを良く分散していることが重要である。分散状態が悪い場合には、湿式凝固の際に、触媒担持カーボンとポリマーとが複合体を形成することができず好ましくない。
【0162】
触媒−ポリマー溶液組成物の塗布方法については、触媒−ポリマー溶液組成物の粘度や固形分などに応じた塗布方法が選択され、特に限定されるものではないが、ナイフコーター、バーコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどの一般的な塗布方法が用いられる。
【0163】
また、ポリマーを湿式凝固させる凝固溶媒についても特に限定されるものではないが、用いられるポリマーを凝固析出しやすく、かつポリマー溶液の溶媒と相溶性のある溶媒が好ましい。基材と凝固溶媒との接触方法についても、特に限定されるものではないが、凝固溶媒に基材ごと浸漬する、塗布層のみを凝固溶媒の液面に接触させる、凝固溶媒を塗布層にシャワリングあるいはスプレーする、などの方法を用いることができる。
【0164】
この触媒−ポリマー溶液組成物が塗布される基材については、電極基材、あるいは高分子電解質の何れにおいても、塗布した後に湿式凝固を行うことが可能である。また、電極基材や高分子電解質以外の基材(たとえば転写基材)に塗布し、その後に湿式凝固を行い、三次元網目構造を作製した後に、この電極触媒層を電極基材や高分子電解質に転写あるいは挟持させても良い。この場合の転写基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のシート、あるいは表面をフッ素やシリコーン系の離型剤処理したガラス板や金属板なども用いられる。
【0165】
本発明の高分子電解質型燃料電池においては、電極基材は特に限定されることなく公知のものを用いることが可能である。また、省スペース化のために電極基材が用いられない場合もある。
【0166】
本発明に用いられる電極基材としては、電気抵抗が低く、集(給)電を行えるものであればとくに限定されることなく用いることが可能である。電極基材の構成材としては、たとえば、導電性無機物質を主とするものが挙げられ、この導電性無機物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが例示される。
【0167】
電極基材の導電性無機物質の形態は特に限定されず、たとえば繊維状あるいは粒子状で用いられるが、ガス透過性の点から繊維状導電性無機物質(無機導電性繊維)、特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた電極基材としては、織布あるいは不織布いずれの構造も使用可能である。たとえば、東レ(株)製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E−TEK社製カーボンクロスなどが用いられる。織布としては、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織など、特に限定されること無く用いられる。また、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法によるものなど特に限定されること無く用いられる。また編物であっても構わない。これらの布帛において、特に炭素繊維を用いた場合、耐炎化紡績糸を用いた平織物を炭化あるいは黒鉛化した織布、耐炎化糸をニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などによる不織布加工した後に炭化あるいは黒鉛化した不織布、耐炎化糸あるいは炭化糸あるいは黒鉛化糸を用いた抄紙法によるマット不織布などが好ましく用いられる。特に、薄く強度のある布帛が得られる点から不織布を用いるのが好ましい。
【0168】
電極基材に炭素繊維からなる無機導電性繊維を用いた場合、炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などが例示される。なかでも、PAN系炭素繊維が好ましい。一般的に、PAN系炭素繊維はピッチ系炭素繊維にくらべて圧縮強さ、引張破断伸度が大きく、折れにくいからである。折れにくい炭素繊維を得るためには、炭素繊維の炭化温度は2,500℃以下が好ましく、2,000℃以下がより好ましい。
【0169】
本発明の高分子電解質型燃料電池に用いられる電極基材に、水の滞留によるガス拡散・透過性の低下を防ぐために行う撥水処理、水の排出路を形成するための部分的撥水、親水処理や、抵抗を下げるために行われる炭素粉末の添加等を行うことも好ましい実施態様である。
【0170】
本発明の高分子電解質型燃料電池がside−by−side構造を有している場合、水素やメタノール水溶液などの燃料や空気の流入、水や二酸化炭素などの生成物の排出を促進するために、拡散層を設けることも好ましい実施態様である。このような拡散層は、前述の電極基材もその役割を持つが、非導電性布帛を拡散層として用いることがさらに好ましい。ここで、非導電性布帛の構成材としては、たとえば、非導電性繊維であれば特に限定されること無く用いられる。
【0171】
拡散層の非導電性布帛を構成する非導電性繊維としては、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、塩素化ポリエチレン、耐炎化ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが使用可能である。これらの非導電性繊維の中でも、PTFE、FEP、PFA、ETFE、PVDF、PVF、CTFEなどのフッ素原子含有ポリマーからなる繊維が、電極反応時の耐食性などの点から好ましいものである。
【0172】
拡散層の非導電性布帛としては、織布あるいは不織布いずれの構造も使用可能である。織布としては、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織など、特に限定されること無く用いられる。また、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法など、特に限定されること無く用いられる。また編物であっても構わない。これらの布帛において、特に平織物、ニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などによる不織布、抄紙法によるマット不織布などが好ましく用いられる。特に多孔質で薄く強度のある布帛が得られる点から不織布が好ましく用いられる。
【0173】
拡散層の非導電性布帛は、水の滞留によるガス拡散・透過性の低下を防ぐための撥水処理、水の排出路を形成するための部分的撥水あるいは親水処理等を行うことも好ましい実施態様である。さらには、熱処理、延伸、プレスなどの後処理を行うことも好ましい実施態様である。これらの後処理により、薄膜化、空隙率増加、強度増加などの効果が期待できる。
【0174】
本発明の高分子電解質型燃料電池においては、電極基材と電極触媒層の間に、少なくとも無機導電性物質と疎水性ポリマーを含む導電性中間層を設けることが好ましい。特に、電極基材が空隙率の大きい炭素繊維織物や不織布である場合、導電性中間層を設けることで、電極触媒層が電極基材にしみ込むことによる性能低下を抑えることができる。
【0175】
本発明の高分子電解質を、たとえば膜電極複合体(MEA)に用いる場合、高分子電解質膜に後加工した後にMEAとすることが好ましい。例えば、メタノールなどの燃料透過をさらに低減するために、金属薄膜を高分子電解質に被覆することも好ましい態様である。このような金属薄膜の例としては、パラジウム、白金、銀などが挙げられる。
【0176】
本発明の高分子電解質膜において、電極触媒層あるいは電極触媒層と電極基材を用いて膜電極複合体(MEA)とする際の作製方法は特に限定されるものではない。ホットプレスにより一体化することが好ましいが、その温度や圧力は、高分子電解質膜の厚さ、空隙率、電極触媒層や電極基材により適宜選択すればよい。通常、温度は40℃〜180℃、圧力は10kgf/cm2〜80kgf/cm2が好ましい。
【0177】
本発明の高分子電解質は、種々の電気化学装置に適用可能である。例えば、燃料電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等が挙げられるが、中でも燃料電池がもっとも好ましい。さらに燃料電池のなかでも高分子電解質型燃料電池に好適であり、これには水素を燃料とするものとメタノールなどを燃料とするものがあり、メタノールなどを燃料とする直接型燃料電池に特に好ましく用いられる。
【0178】
さらに、本発明の高分子電解質型燃料電池の用途としては、移動体の電力供給源が好ましいものである。特に、携帯電話、パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯機器、掃除機等の家電、乗用車、バス、トラックなどの自動車や船舶、鉄道などの移動体の電力供給源として好ましく用いられる。
【0179】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0180】
<測定方法、試験方法>
M1.高分子電解質の不凍水量率および不凍水含有率
数式(S1)で示される不凍水量率および数式(S2)で示される不凍水含有率は、示差走査熱量計(DSC)法により求めた。高分子電解質を20℃の水に12時間浸漬した後、水中から取り出し、過剰な表面付着水をできるだけ素早くガーゼで拭き取って除去してから、あらかじめ重量(Gp)を測定してあるアルミナコートされたアルミニウム製密閉型試料容器に入れてクリンプした後、できるだけ素早く試料と密閉型試料容器の合計重量(Gw)を測定し、直ちにDSC測定を実施した。測定温度プログラムは、室温から−30℃まで10℃/分の速度で冷却した後、0.3℃/分で5℃まで昇温し、この昇温過程のDSC曲線から下記の数式(n1)を使ってバルク水量Wfを、数式(n2)を使って低融点水量Wfcを求め、全水分率から差し引くことで、不凍水量Wnfを求めた〔数式(n3)〕。
【0181】
【数4】
【0182】
【数5】
【0183】
【数6】
【0184】
ここで、Wf、Wfc、WnfおよびWtは乾燥試料の単位重量あたりの水分重量であり、mは乾燥試料重量、dq/dtはDSCの熱流束シグナル、ΔH0はT0での融解エンタルピー、T0はバルク水の融点である。なお、DSC測定後に密閉型試料容器に小さな穴を開け、真空乾燥機にて110℃で24時間真空乾燥した後、できるだけ素早く試料と密閉型試料容器の合計重量(Gd)を測定した。乾燥試料重量(m)は m=Gd-Gp とした。全水分率(Wt)は Wt=(Gw-Gd)/m とした。
【0185】
DSC測定の機器および条件は下記のようにした。
【0186】
DSC装置:TA Instruments社製"DSC Q100"
データ処理装置:東レリサーチセンター製"TRC-THADAP-DSC"
測定温度範囲:−50℃〜5℃
走査速度:0.3℃/分
試料量:約5mg
試料パン:アルミニウム製密閉型試料容器
温度・熱量校正:水の融点(0.0℃および融解熱量79.7cal/g)
なお、本測定は株式会社東レリサーチセンターで実施した。
【0187】
M2.顕微鏡観察
光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡を用いて高分子電解質を観察し、相分離状態を確認した。光学顕微鏡により高分子電解質を観察し、相分離が確認できない場合、および相分離のドメインサイズが無作為の100個中90個以上が100μm未満の場合は、(A)と(B)が混じり合っていると判断される。また、電子顕微鏡により高分子電解質の断面を観察し、相分離が確認できない場合、および相分離のドメインサイズが無作為の100個中90個以上が1μm未満の場合は、(A)と(B)が実質的に均一に混じり合っていると判断される。
【0188】
M3.高分子電解質が架橋高分子を含むかどうかの判定
高分子電解質が架橋高分子を含むかどうかの判定は次のように行った。検体となる高分子電解質(約0.1g)を純水で洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して重量を測定した。高分子電解質を100倍重量の溶剤に浸漬し、密閉容器中、撹拌しながら70℃、40時間加熱した。アドバンテック社製濾紙(No.2)を用いて濾過を行った。濾過時に100倍重量の同一溶剤で濾紙と残渣を洗浄し、十分に溶出物を溶剤中に溶出させた。濾液を乾固させ、溶出分の重量を求めた。溶出重量が初期重量の95%未満の場合は、その溶剤に対して実質的に不溶な成分を含むと判定した。この試験をトルエン、ヘキサン、N−メチルピロリドン、メタノールおよび水の5種類の溶剤について行い、全ての溶剤で実質的に不溶な成分を含むと判定された場合に、その高分子電解質は架橋高分子を含むと判定した。
【0189】
実施例1
(1)高分子電解質膜の作製
スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン(スルホン酸基密度:2mmol/g)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、濃度が20%の黄色透明溶液(M-A1)を得た。東レダウコーニングシリコーン社製テトラブトキシチタン5gに0.01N塩酸水溶液を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物(M-B1)を得た。(M-A1)を10g採取し、(M-B1)を0.5g添加した。この液を開孔率10%、孔径12μmのフォトリソグラフィーにより作製した独立した貫通孔を有するポリイミド基材に含浸し、100℃で30分間加熱し高分子電解質膜を作製した。膜厚は15μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。またM3の試験での不溶物(架橋高分子)は実質的にプロトン伝導性を有していなかった。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は42%、数式(S2)の不凍水含有率は43%であった。
【0190】
(2)高分子電解質膜の性能
高分子電解質膜のメタノール透過量、プロトン伝導度を評価した。膜をエレクトロケム社製セルにセットし、片面に1mol/lメタノール水溶液を0.2ml/minで供給し、もう片面に空気を50ml/minで供給した。メタノール透過量は排気された空気中のメタノール濃度を測定し求めた。膜のプロトン伝導度は膜面に電流および電圧端子を接触させ抵抗を測定し求めた。
【0191】
(3)電極の作製
炭素繊維クロス基材に20%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)懸濁液を用いて撥水処理を行ったのち、PTFEを20%含むカーボンブラック分散液を塗工、焼成して電極基材を作製した。この電極基材上に、Pt−Ru担持カーボンとナフィオン溶液からなるアノード電極触媒塗液を塗工、乾燥してアノード電極を、また、Pt担持カーボンとナフィオン溶液からなるカソード電極触媒塗液を塗工、乾燥してカソード電極を作製した。
【0192】
(4)膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池の作製並びに評価
前記工程(2)の高分子電解質膜を、前記工程(3)で作製したアノード電極とカソード電極で夾持し加熱プレスすることで膜電極複合体(MEA)を作製した。このMEAをエレクトロケム社製セルに挟みアノード側に30%メタノール水溶液、カソード側に空気を流してMEA評価を行った。評価はMEAに定電流を流し、その時の電圧を測定した。電流を順次増加させ電圧が10mV以下になるまで測定を行った。各測定点での電流と電圧の積が出力となるが、実施例1の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117膜を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.4倍、エネルギー容量(Wh)で1.9倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0193】
比較実施例1
ナフィオン117膜(デュポン社製)を用い、実施例1(4)に記載の方法でMEAを作製した。実施例1(4)と同様にして評価を行った。
【0194】
比較実施例2
実施例1においてテトラブトキシチタンの加水分解物を添加しない以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜およびMEAを作製し、評価した。本比較実施例2のMEAはナフィオン117膜を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で0.4倍、エネルギー容量(Wh)で0.7倍の値しか示さなかった。この高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいなかった。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は22%、数式(S2)の不凍水含有率は51%であった。
【0195】
比較実施例3
実施例1においてスルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンの20%DMF溶液の代わりに20%ナフィオン溶液を使用する以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜およびMEAを作製し、評価した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。またM3の試験での不溶物(架橋高分子)は実質的にプロトン伝導性を有していなかった。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は38%、数式(S2)の不凍水含有率は15%であった。本比較実施例3のMEAはナフィオン117膜を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.1倍、エネルギー容量(Wh)で1.1倍の値しか示さなかった。
【0196】
実施例2
実施例1においてスルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンの20%DMF溶液の代わりにリン酸基含有ポリイミド(リン酸基密度:2mmol/g)の20%DMF溶液を使用し、テトラブトキシチタンの代わりにテトラメトキシシランを使用する以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜およびMEAを作製し、評価した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。またM3の試験での不溶物(架橋高分子)は実質的にプロトン伝導性を有していなかった。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は60%、数式(S2)の不凍水含有率は49%であった。
【0197】
実施例3
実施例1においてスルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンの20%DMF溶液の代わりにスルホン化ポリジフェノキシフォスファゼン(スルホン酸基密度:1.5mmol/g)の20%DMF溶液を使用し、ポリイミド基材を使用しない以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜およびMEAを作製し、評価した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。またM3の試験での不溶物(架橋高分子)は実質的にプロトン伝導性を有していなかった。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は49%、数式(S2)の不凍水含有率は48%であった。本実施例3のMEAはナフィオン117膜を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.5倍、エネルギー容量(Wh)で1.9倍の値を示した。
【0198】
実施例4
実施例1においてスルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンの20%DMF溶液の代わりにホスホン酸基含有ポリフェニレンスルフィド(スルホン酸基密度:1mmol/g)の20%DMF溶液を使用し、ポリイミド基材の代わりに3次元網目構造を有するポリビニリデンフルオライドの多孔基材を使用する以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜およびMEAを作製し、評価した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。またM3の試験での不溶物(架橋高分子)は実質的にプロトン伝導性を有していなかった。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は41%、数式(S2)の不凍水含有率は55%であった。
【0199】
実施例5
実施例1においてスルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンの20%DMF溶液の代わりにカルボン酸基含有ポリフェニレンスルフィド(カルボン酸基密度:1mmol/g)の20%DMF溶液を使用し、テトラブトキシチタンの代わりにテトライソプロピルビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メタンビスホスホネートを使用する以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜およびMEAを作製し、評価した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は40%、数式(S2)の不凍水含有率は23%であった。
【0200】
実施例6
実施例5においてスルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンの20%DMF溶液の代わりにカルボン酸基含有ポリフェニルプロピルアミド(カルボン酸基密度:1mmol/g)の20%DMF溶液を使用する以外は実施例5と同様にして高分子電解質膜およびMEAを作製し、評価した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は42%、数式(S2)の不凍水含有率は43%であった。
【0201】
実施例7
実施例1においてテトラブトキシチタンの代わりにジビニルベンゼン2gとアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.02gを添加する以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜およびMEAを作製し、評価した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡で観察した結果、混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。またM3の試験での不溶物(架橋高分子)は実質的にプロトン伝導性を有していなかった。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は43%、数式(S2)の不凍水含有率は38%であった。本実施例7のMEAはナフィオン117膜を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.4倍、エネルギー容量(Wh)で1.7倍の値を示した。
【0202】
実施例8
実施例1においてスルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンの代わりにスルホン化ポリスルホン(スルホン酸基密度:2mmol/g)を使用する以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜およびMEAを作製し、評価した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。またM3の試験での不溶物(架橋高分子)は実質的にプロトン伝導性を有していなかった。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は45%、数式(S2)の不凍水含有率は40%であった。本実施例8のMEAはナフィオン117膜を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.4倍、エネルギー容量(Wh)で1.7倍の値を示した。
【0203】
実施例9
実施例1においてスルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン溶液10gの代わりにスルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン溶液5gとスルホン化ポリスルホン(スルホン酸基密度:2mmol/g)溶液5gを使用する以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜およびMEAを作製し、評価した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡で観察した結果、混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。またM3の試験での不溶物(架橋高分子)は実質的にプロトン伝導性を有していなかった。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は41%、数式(S2)の不凍水含有率は37%であった。本実施例9のMEAはナフィオン117膜を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.8倍、エネルギー容量(Wh)で1.9倍の値を示した。
【0204】
実施例10
実施例1においてテトラブトキシチタンの代わりにフェノキシトリメトキシシランとジフェノキシジメトキシシランを1:1混合したものを使用する以外は実施例1と同様にして高分子電解質膜およびMEAを作製し、評価した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。またM3の試験での不溶物(架橋高分子)は実質的にプロトン伝導性を有していなかった。また前記M1の方法によると、数式(S1)の不凍水量率は42%、数式(S2)の不凍水含有率は44%であった。本実施例10のMEAはナフィオン117膜を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.6倍、エネルギー容量(Wh)で1.8倍の値を示した。
【0205】
実施例11
(1)スルホン化ポリフェニレンオキシドの合成
室温、窒素雰囲気下で三菱エンジニアリングプラスチック社製ポリフェニレンオキシド(YPX−100L)(100g)をクロロホルム(1000g)に溶解させた後、撹拌しながらクロロスルホン酸(34mL)をゆっくり滴下した。滴下終了後室温で30分間撹拌を続けた。析出したポリマーを濾別後、ミルで粉砕し、水で十分に洗浄後、真空乾燥し、目的のスルホン化ポリフェニレンオキシドを得た。(スルホン酸基密度:3.0mmol/g)
(2)高分子電解質膜の作製
前記(1)で得たスルホン化ポリフェニレンオキシドをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し20重量%溶液(M-A2)を得た。油化シェルエポキシ社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂“エピコート827”(0.5g)および(M-A2)(10g)を混合してよく撹拌した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は80μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(3)高分子電解質膜のプロトン伝導度測定法
北斗電工製電気化学測定システムHAG5010(HZ−3000 50V 10A Power Unit, HZ−3000 Automatic Polarization System)およびエヌエフ回路設計ブロック製周波数特性分析器(Frequency Response Analyzer)5010を使用し、2端子法で定電位インピーダンス測定を行い、ナイキスト図からプロトン伝導度を求めた。交流振幅は500mVとした。サンプルは幅10mm程度、長さ10〜30mm程度の膜を用いた。サンプルは測定直前まで水中に浸漬したものを用いた。電極として直径100μmの白金線(2本)を使用した。電極はサンプル膜の表側と裏側に、互いに平行にかつサンプル膜の長手方向に対して直交するように配置した。
【0206】
同様にしてナフィオン117膜(デュポン社製)のプロトン伝導度も測定した。
(4)高分子電解質膜の燃料クロスオーバー測定法
図4のようなセル間にサンプル膜を挟み、一方のセルには純水を入れ、他方のセルには1Mメタノール水溶液を入れた。20℃において両方のセルを撹拌した。1時間,2時間および3時間経過時点で純水中に溶出したメタノール量を島津製作所製ガスクロマトグラフィ(GC−2010)で測定し定量した。グラフの傾きから単位時間、単位面積あたりの燃料クロスオーバーを求めた。
【0207】
同様にしてナフィオン117膜(デュポン社製)の単位時間、単位面積あたりの燃料クロスオーバーも測定した。
(5)不凍水量率および不凍水含有率
前記M1の方法にしたがって求めた。
(6)高分子電解質膜の性能
前記(2)で得た高分子電解質膜はプロトン伝導度は0.085S/cmであり、“ナフィオン”膜のプロトン伝導度(0.085S/cm)と同等であった。
【0208】
また燃料クロスオーバーは84nmol/cm・分であり、ナフィオン117膜の0.70倍であり、燃料クロスオーバーの抑制が観測された。
【0209】
不凍水量率は61%、不凍水含有率は52%であった。なお、ナフィオン117の不凍量率は49%、不凍水含有率は18%であった。
(7)膜電極複合体の作製、評価
前記(2)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0210】
前記(2)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.0倍、エネルギー容量(Wh)で1.3倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0211】
実施例12
(1)高分子電解質膜の作製
“エピコート827”のかわりに油化シェルエポキシ社製トリフェノールエタン型エポキシ樹脂“エピコート1032H60”を用いた他は実施例11(2)と同様にして高分子電解質膜を作製した。膜厚は75μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(2)高分子電解質膜の性能
プロトン伝導度、燃料クロスオーバー、不凍水量率および不凍水含有率は実施例11(3)〜(5)の方法で測定した。前記(1)で得た高分子電解質膜のプロトン伝導度は0.070S/cmであり、ナフィオン117膜のプロトン伝導度(0.085S/cm)とほぼ同等であった。
【0212】
また燃料クロスオーバーは60nmol/cm・分であり、ナフィオン117膜の0.50倍であり、燃料クロスオーバーの抑制が観測された。
【0213】
不凍水量率は63%、不凍水含有率は48%であった。
(3)膜電極複合体の作製、評価
前記(1)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0214】
前記(1)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.1倍、エネルギー容量(Wh)で1.4倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0215】
実施例13
(1)スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの合成
ビクトレックス社製ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(3.0g)を濃硫酸(150ml)中に溶解させ、撹拌しながら室温で4日間反応を行った。得られた混合物を多量のエーテル中に投入し、白色沈殿を濾別し、洗浄した後、乾燥してスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを得た。
(2)高分子電解質膜の作製
スルホン化ポリフェニレンオキシドのかわりに前記(1)で得たスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを用いた他は実施例11(2)と同様にして高分子電解質膜を作製した。膜厚は75μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(3)高分子電解質膜の性能
プロトン伝導度、燃料クロスオーバー、不凍水量率および不凍水含有率は実施例11(3)〜(5)の方法で測定した。前記(1)で得た高分子電解質膜のプロトン伝導度は0.080S/cmであり、ナフィオン117膜のプロトン伝導度(0.085S/cm)とほぼ同等であった。
【0216】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.65倍(78nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーの抑制が観測された。
【0217】
不凍水量率は41%、不凍水含有率は45%であった。
(4)膜電極複合体の作製、評価
前記(2)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0218】
前記(2)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.1倍、エネルギー容量(Wh)で1.4倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0219】
実施例14
(1)高分子電解質膜の作製
“エピコート827”のかわりに大阪ガス社製ビスフェノキシエタノールフルオレン型エポキシ樹脂“BPEFG”を用いた他は実施例11(2)と同様にして高分子電解質膜を作製した。膜厚は75μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(2)高分子電解質膜の性能
プロトン伝導度、燃料クロスオーバー、不凍水量率および不凍水含有率は実施例11(3)〜(5)の方法で測定した。前記(1)で得た高分子電解質膜のプロトン伝導度は0.075S/cmであり、ナフィオン117膜のプロトン伝導度(0.085S/cm)とほぼ同等であった。
【0220】
また燃料クロスオーバーはナフィオン膜の0.65倍(78nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーの抑制が観測された。
【0221】
不凍水量率は58%、不凍水含有率は49%であった。
(3)膜電極複合体の作製、評価
前記(1)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0222】
前記(1)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.2倍、エネルギー容量(Wh)で1.4倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0223】
実施例15
(1)高分子電解質膜の作製
“エピコート827”のかわりに、1,6−ヘキサンジイソシアネート(0.15g)、ポリプロピレングリコール(分子量1000)(0.30g)およびグリセリン(0.05g)からなる混合物を用いた他は実施例11(2)と同様にして高分子電解質膜を作製した。膜厚は80μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(2)高分子電解質膜の性能
プロトン伝導度、燃料クロスオーバー、不凍水量率および不凍水含有率は実施例11(3)〜(5)の方法で測定した。前記(1)で得た高分子電解質膜のプロトン伝導度は0.075S/cmであり、ナフィオン117膜のプロトン伝導度(0.085S/cm)とほぼ同等であった。
【0224】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.60倍(72nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーの抑制が観測された。
【0225】
不凍水量率は55%、不凍水含有率は40%であった。
(3)膜電極複合体の作製、評価
前記(1)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0226】
前記(1)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.2倍、エネルギー容量(Wh)で1.5倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0227】
実施例16
(1)プロトン伝導性ポリマーの作製
【0228】
【化14】
【0229】
炭酸カリウム35g、ヒドロキノン11g、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール35g、および4,4'−ジフルオロベンゾフェノン44gを用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、160℃で重合を行った。水で抽出後、多量のメタノールで再沈することで精製を行い、上記式(T1)で示されるポリマーを定量的に得た。
【0230】
室温、窒素雰囲気下で前記ポリマー10gをクロロホルムに溶解させた後、激しく撹拌しながらクロロスルホン酸14mLをゆっくり滴下し、5分間反応させた。白色沈殿を濾別、粉砕し、水で十分洗浄した後、乾燥し、目的のプロトン伝導性ポリマーを得た。得られたプロトン伝導性ポリマーのスルホン酸基密度は、元素分析より2.6mmol/gであった。
(2)高分子電解質膜の作製
前記(1)で得られたプロトン伝導性ポリマーを、N,N−ジメチルアセトアミド20重量%溶液とした。この溶液(10g)および油化シェルエポキシ社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂“エピコート827”(0.5g)を混合してよく撹拌した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は240μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(3)高分子電解質膜の性能
実施例11(3)〜(5)の方法で測定を行った。前記(1)で得た高分子電解質膜のプロトン伝導度は0.090S/cmであり、ナフィオン117膜のプロトン伝導度(0.085S/cm)とほぼ同等であった。
【0231】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.22倍(26nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーの抑制が大きかった。
【0232】
不凍水量率は86%、不凍水含有率は50%であり、不凍水の割合が極めて大きかった。
(4)膜電極複合体の作製、評価
前記(2)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0233】
前記(2)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.9倍、エネルギー容量(Wh)で2.9倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0234】
実施例17
(1)チタンアルコキシドの加水分解
東レダウコーニングシリコーン社製テトラブトキシチタン5gに0.01N塩酸水溶液を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
(2)高分子電解質の作製
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(アルドリッチ社)20%水溶液10gに、(1)で作製した加水分解物を0.5g添加した。この溶液をガラス板上にキャストし100℃で30分間加熱し、高分子電解質膜を得た。該高分子電解質膜を1M塩酸でイオン交換した後、純水で十分に洗浄した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(3)高分子電解質の性能
実施例11(3)〜(5)の方法で測定を行った。前記(1)で得た高分子電解質膜のプロトン伝導度は0.13S/cmであった。
【0235】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.80倍(96nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0236】
不凍水量率は68%、不凍水含有率は58%であった。
(4)膜電極複合体の作製、評価
前記(2)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0237】
前記(2)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.2倍、エネルギー容量(Wh)で1.2倍の値を示し、優れた特性を有していた。
【0238】
実施例18
(1)高分子電解質の作製、膜性能の評価
テトラブトキシチタンの代わりにテトラメトキシシランを用いる他は実施例17と同様にして高分子電解質膜を作製した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は0.13S/cmであった。
【0239】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.76倍(91nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0240】
不凍水量率は59%、不凍水含有率は54%であった。
【0241】
実施例19
(1)高分子電解質の作製、膜性能の評価
テトラブトキシチタンの代わりにフェニルトリメトキシシランとジフェニルトリメトキシシランの1:1(重量比)混合溶液を用いる他は実施例17と同様にして高分子電解質を作製した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は0.13S/cmであった。
【0242】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.75倍(90nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0243】
不凍水量率は66%、不凍水含有率は55%であった。
【0244】
実施例20
(1)高分子電解質の作製、膜性能の評価
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液の代わりに20%スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルフォン溶液を使用し、開孔率10%、孔径12μmのフォトリソにより作製したポリイミド基材に高分子電解質を充填する以外は実施例17と同様にして高分子電解質膜を作製した。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
【0245】
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は0.080S/cmであった。
【0246】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.62倍(74nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0247】
実施例21
(1)高分子電解質の作製、膜性能の評価
テトラブトキシチタンの代わりにテトラメトキシジルコニウムを使用する以外は実施例17と同様にして高分子電解質を得た。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
【0248】
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は0.115S/cmであった。
【0249】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.92倍(110nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0250】
不凍水量率は52%、不凍水含有率は43%であった。
【0251】
実施例22
(1)高分子電解質の作製、膜性能の評価
フェニルトリメトキシシランの代わりにトリエトキシリンを使用し、開孔率10%、表面孔径1μm、3次元網目構造を有するPVDF多孔基材に高分子電解質を充填する以外は実施例20と同様にして高分子電解質を得た。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
【0252】
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は0.095S/cmであった。
【0253】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.83倍(100nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0254】
不凍水量率は68%、不凍水含有率は58%であった。
【0255】
実施例23
(1)高分子電解質の作製、膜性能の評価
テトラブトキシチタンの代わりにテトライソプロピルビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メタンビスホスホネートを用いる他は実施例17と同様にして高分子電解質を得た。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
【0256】
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は0.12S/cmであった。
【0257】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.7倍(84nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0258】
不凍水量率は43%、不凍水含有率は43%であった。
【0259】
実施例24
(1)高分子電解質の作製、膜性能の評価
テトライソプロピルビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メタンビスホスホネートの加水分解物の添加量を3gにする以外は実施例23と同様にして高分子電解質を得た。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
【0260】
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は0.10S/cmであった。
【0261】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.6倍(72nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0262】
不凍水量率は41%、不凍水含有率は45%であった。
【0263】
実施例25
(1)スルホン化ポリフェニレンオキシドの合成
実施例11(1)と同様に合成した。
【0264】
該スルホン化ポリフェニレンオキシドをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、20重量%溶液とした。
(2)4−ペンテン酸トリメチルシリルの合成
還流冷却管、撹拌装置および窒素ガス導入管を備えた200mL三ツ口フラスコに、4−ペンテン酸(東京化成工業、48.48g)を入れた。フラスコを氷浴に浸け窒素ガスを導入し撹拌しながらヘキサメチルジシラザン(39.08g、0.242mol)を滴下した。白色結晶が析出し全体がシャーベット状になった。撹拌し、窒素ガスを導入してアンモニアガスを追い出しながら、100℃で約6時間反応させた。反応液中の結晶は溶解し無色透明溶液となった。減圧蒸留によって精製を行い4−ペンテン酸トリメチルシリル(70.9g)を無色透明液体として得た。(ガスクロ純度96.8%)
(3)5−トリメトキシシリルペンタン酸トリメチルシリルの合成
滴下ロートおよび撹拌翼を備えた300mL三ツ口フラスコにトリメトキシシラン(東京化成工業、35.50g)を入れた。さらに塩化白金酸六水和物(和光純薬工業、7.3mg)を2−プロパノール(0.2mL)に溶かした溶液を加えた。滴下ロートに4−ペンテン酸トリメチルシリル(50.06g)を入れ、室温で撹拌しながら滴下した。途中で発熱が見られたので三ツ口フラスコを氷浴に漬けて冷却した。再度フラスコを室温にもどした後一晩放置した。減圧蒸留により精製し5−トリメトキシシリルペンタン酸トリメチルシリル(32.2g)を無色透明液体として得た。(ガスクロ純度96.8%)
(4)シラン化合物の加水分解
(4a) Gelest社製1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(1.35g)に0℃で1M塩酸(0.68g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
【0265】
(4b) 前記(3)で得た5−トリメトキシシリルペンタン酸トリメチルシリル(1.0g)に0℃で1M塩酸(0.37g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
(5)高分子電解質膜の作製
前記(4a)および(4b)の加水分解物および前記(1)のスルホン化ポリフェニレンオキシドDMAc溶液(19.5g)を混合した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は180μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(6)高分子電解質膜の性能評価
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は80mS/cmであった。
【0266】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.65倍(78nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0267】
不凍水量率は68%、不凍水含有率は56%であった。
(7)膜電極複合体の作製、評価
前記(5)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0268】
前記(5)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.1倍、エネルギー容量(Wh)で1.8倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0269】
実施例26
(1)3−ブテン酸トリメチルシリルの合成
還流冷却管、撹拌装置および窒素ガス導入管を備えた200mL三ツ口フラスコに、3−ブテン酸(アルドリッチ、50.0g)を入れた。フラスコを氷浴に浸け窒素ガスを導入し撹拌しながらヘキサメチルジシラザン(46.9g)を滴下した。白色結晶が析出し全体がシャーベット状になった。撹拌し、窒素ガスを導入してアンモニアガスを追い出しながら、100℃で約5時間反応させた。反応液中の結晶はほとんど溶解し、やや褐色の透明溶液となった。減圧蒸留によって精製を行った。蒸留物に若干の白色結晶の混入が見られたので、加圧濾過(PTFEフィルター、孔径0.1μm)によってこれを除いた。3−ブテン酸トリメチルシリル(67.8g)を無色透明液体として得た。(ガスクロ純度95.1%)
(2)4−トリメトキシシリルブタン酸トリメチルシリルの合成
滴下ロートおよび撹拌翼を備えた300mL三ツ口フラスコに3−ブテン酸トリメチルシリル(50.0g)を入れた。さらに塩化白金酸六水和物(和光純薬工業、17mg)を2−プロパノール(0.4mL)に溶かした溶液を加えた。滴下ロートにトリメトキシシラン(38.8g)を入れた。三ツ口フラスコを氷浴に漬けて冷却し撹拌しながら約20分間かけて滴下を行った。その後室温で一晩放置した。減圧蒸留により精製し4−トリメトキシシリルブタン酸トリメチルシリル(47.3g)を無色透明液体として得た。(ガスクロ純度87.1%)
(3)シラン化合物の加水分解
(3a) Gelest社製1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(1.35g)に0℃で1M塩酸(0.68g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
【0270】
(3b) 前記(2)で得た5−トリメトキシシリルブタン酸トリメチルシリル(1.0g)に0℃で1M塩酸(0.40g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
(4)高分子電解質膜の作製
前記(3a)および(3b)の加水分解物および実施例12(1)のスルホン化ポリフェニレンオキシドDMAc溶液(19.5g)を混合した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は180μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(5)高分子電解質膜の性能評価
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は79mS/cmでありナフィオン117と同程度であった。
【0271】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.71倍(85nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0272】
不凍水量率は47%、不凍水含有率は50%であった。
(6)膜電極複合体の作製、評価
前記(4)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0273】
前記(4)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.1倍、エネルギー容量(Wh)で1.9倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0274】
実施例27
(1)シラン化合物の加水分解
(1a) Gelest社製1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(1.35g)に0℃で1M塩酸(0.68g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
【0275】
(1b) 式(K1)で表される化合物(アヅマックス社製、1.0g)に0℃で1M塩酸(0.40g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
【0276】
【化15】
【0277】
(2)高分子電解質膜の作製
前記(1a)および(1b)の加水分解物および実施例12(1)のスルホン化ポリフェニレンオキシドDMAc溶液(19.5g)を混合した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は185μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(3)高分子電解質膜の性能評価
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は76mS/cmであった。
【0278】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.65倍(78nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0279】
不凍水量率は53%、不凍水含有率は52%であった。
(4)膜電極複合体の作製、評価
前記(2)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0280】
前記(2)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.1倍、エネルギー容量(Wh)で1.8倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0281】
実施例28
(1)シラン化合物の加水分解
(1a) Gelest社製1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(1.35g)に0℃で1M塩酸(0.68g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
【0282】
(1b) 式(K2)で表される化合物(Gelest社製、0.74g)およびDMAc(0.74g)からなる溶液に0℃で1M塩酸(0.24g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、加水分解物を得た。
【0283】
【化16】
【0284】
(2)高分子電解質膜の作製
前記(1a)および(1b)の加水分解物および実施例12(1)のスルホン化ポリフェニレンオキシドDMAc溶液(19.5g)を混合した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は195μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(3)高分子電解質膜の性能評価
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は87mS/cmであった。
【0285】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.80倍(96nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0286】
不凍水量率は54%、不凍水含有率は54%であった。
(4)膜電極複合体の作製、評価
前記(2)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0287】
前記(2)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.1倍、エネルギー容量(Wh)で1.4倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0288】
実施例29
(1)スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの合成
ビクトレックス社製ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(3.0g)を濃硫酸(150ml)中に溶解させ、撹拌しながら室温で4日間反応を行った。得られた混合物を多量のエーテル中に投入し、白色沈殿を濾別し、洗浄した後、乾燥してスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを得た。該スルホン化ポリエーテルエーテルケトンをDMAcに溶解し、20重量%溶液とした。
(2)シラン化合物の加水分解
(2a) Gelest社製1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(1.35g)に0℃で1M塩酸(0.68g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
【0289】
(2b) 式(K3)で表される化合物(Gelest社製、0.80g)およびDMAc(0.80g)からなる溶液に0℃で1M塩酸(0.24g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、加水分解物を得た。
【0290】
【化17】
【0291】
(3)高分子電解質膜の作製
前記(2a)および(2b)の加水分解物および前記(1)のスルホン化ポリエーテルエーテルケトンDMAc溶液(19.5g)を混合した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は204μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(4)高分子電解質膜の性能評価
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は77mS/cmでありナフィオン117と同程度であった。
【0292】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.81倍(97nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0293】
不凍水量率は48%、不凍水含有率は51%であった。
(5)膜電極複合体の作製、評価
前記(3)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0294】
前記(3)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.1倍、エネルギー容量(Wh)で1.3倍の値を示し、優れた特性を有していた。
【0295】
実施例30
(1)シラン化合物の加水分解
(1a) Gelest社製1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(1.35g)に0℃で1M塩酸(0.68g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
【0296】
(1b) Electrochimica Acta, Vol.45, 1377-1383(2000) に記載の方法で合成した3−トリエトキシシリルプロパンスルホニルクロリド(0.97g)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(0.97g)からなる溶液に0℃で1M塩酸(0.32g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、加水分解物を得た。
(2)高分子電解質膜の作製
前記(1a)および(1b)の加水分解物および実施例12(1)のスルホン化ポリフェニレンオキシドDMAc溶液(19.5g)を混合した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は195μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(3)高分子電解質膜の性能評価
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は88mS/cmでありナフィオン117と同程度であった。
【0297】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.85倍(102nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0298】
不凍水量率は44%、不凍水含有率は56%であった。
(4)膜電極複合体の作製、評価
前記(2)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0299】
前記(2)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.1倍、エネルギー容量(Wh)で1.2倍の値を示し、優れた特性を有していた。
【0300】
実施例31
(1)シラン化合物の加水分解
(1a) Gelest社製ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)尿素(2.47g)に0℃で1M塩酸(0.37g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、加水分解物を得た。
【0301】
(1b) 式(K2)で表される化合物(Gelest社製、0.74g)およびDMAc(0.74g)からなる溶液に0℃で1M塩酸(0.24g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、加水分解物を得た。
【0302】
【化18】
【0303】
(2)高分子電解質膜の作製
前記(1a)および(1b)の加水分解物および実施例12(1)のスルホン化ポリフェニレンオキシドDMAc溶液(19.5g)を混合した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は195μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(3)高分子電解質膜の性能評価
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は82mS/cmでありナフィオン117と同程度であった。
【0304】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.75倍(90nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0305】
不凍水量率は63%、不凍水含有率は58%であった。
(4)膜電極複合体の作製、評価
前記(2)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0306】
前記(2)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.1倍、エネルギー容量(Wh)で1.6倍の値を示し、優れた特性を有していた。
【0307】
実施例32
(1)スルホン化ポリエーテルエーテルスルホンの合成
ポリエーテルエーテルスルホン(3.0g)を濃硫酸(150ml)中に溶解させ、撹拌しながら室温で4日間反応を行った。得られた混合物を多量のエーテル中に投入し、白色沈殿を濾別し、洗浄した後、乾燥してスルホン化ポリエーテルエーテルスルホンを得た。該スルホン化ポリエーテルエーテルスルホンをDMAcに溶解し、20重量%溶液とした。
(2)シラン化合物の加水分解
(2a) Gelest社製1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(1.35g)に0℃で1M塩酸(0.68g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
【0308】
(2b) 式(K3)で表される化合物(Gelest社製、0.80g)およびDMAc(0.80g)からなる溶液に0℃で1M塩酸(0.24g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、加水分解物を得た。
【0309】
【化19】
【0310】
(3)高分子電解質膜の作製
前記(2a)および(2b)の加水分解物および前記(1)のスルホン化ポリエーテルエーテルスルホンDMAc溶液(19.5g)を混合した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は196μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(4)高分子電解質膜の性能評価
この膜の性能を実施例17(3)と同様に評価したところ、プロトン伝導度は74mS/cmでありナフィオン117と同程度であった。
【0311】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.79倍(95nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーが抑制されていた。
【0312】
不凍水量率は55%、不凍水含有率は50%であった。
(5)膜電極複合体の作製、評価
前記(3)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0313】
前記(3)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.1倍、エネルギー容量(Wh)で1.5倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0314】
実施例33
(1)シラン化合物の加水分解
(1a) Gelest社製1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(1.35g)に0℃で1M塩酸(0.68g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
【0315】
(1b) テトライソプロピルビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メタンビスホスホネート(1.0g)に0℃で1M塩酸(1.0g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、加水分解物を得た。
(2)高分子電解質膜の作製
前記(1a)および(1b)の加水分解物および実施例16(1)で得られたプロトン伝導性ポリマーのN,N−ジメチルアセトアミド20重量%溶液(19.5g)を混合した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は220μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(3)高分子電解質膜の性能
実施例11(3)〜(5)の方法で測定を行った。前記(1)で得た高分子電解質膜のプロトン伝導度は0.090S/cmであり、ナフィオン117膜のプロトン伝導度(0.085S/cm)とほぼ同等であった。
【0316】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.21倍(25nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーの抑制が大きかった。
【0317】
不凍水量率は82%、不凍水含有率は49%であり、不凍水の割合が極めて大きかった。
(4)膜電極複合体の作製、評価
前記(2)の高分子電解質膜を用いて、実施例1(4)の方法により膜電極複合体(MEA)および燃料電池を作製し評価した。
【0318】
前記(2)の高分子電解質膜を使用したMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で2.1倍、エネルギー容量(Wh)で3.0倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0319】
実施例34
(1)高分子電解質溶液の作製
実施例16(1)で得られたプロトン伝導性ポリマーを、N,N−ジメチルアセトアミド20重量%溶液とした。この溶液(10g)および油化シェルエポキシ社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂“エピコート827”(0.5g)を混合してよく撹拌した。
(2)電極の作製
炭素繊維クロス基材に20%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)懸濁液を用いて撥水処理を行ったのち、PTFEを20%含むカーボンブラック分散液を塗工、焼成して電極基材を作製した。この電極基材上に、Pt−Ru担持カーボンと前記(1)の溶液からなるアノード電極触媒塗液を塗工、乾燥してアノード電極を、また、Pt担持カーボンと前記(1)の溶液からなるカソード電極触媒塗液を塗工、乾燥してカソード電極を作製した。
(3)膜電極複合体の作製
実施例16(2)で得られた高分子電解質膜を、前記(2)で作製したアノード電極とカソード電極で夾持し加熱プレスすることで膜電極複合体(MEA)を作製した。
(4)膜電極複合体の評価
前記(3)のMEAを用いて燃料電池を作製し評価した。
【0320】
前記(3)のMEAの方がナフィオン117を使用したMEA(比較実施例1)より出力(mW/cm2)で1.8倍、エネルギー容量(Wh)で2.7倍の値を示し優れた特性を有していた。
【0321】
比較実施例4
(1)高分子電解質膜の作成
特表2001−504636号公報の実施例1の方法に従ってジビニルベンゼン架橋スルホン化ポリスチレンとポリビニリデンフルオライドの複合膜を作製した。
【0322】
この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡で観察した結果、混じり合っていなかった。
(2)高分子電解質膜の性能
実施例11(3)〜(5)の方法で測定を行った。前記(1)で得た高分子電解質膜のプロトン伝導度は0.090S/cmであり、ナフィオン117膜のプロトン伝導度(0.085S/cm)と同程度であった。
【0323】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の1.82倍(218nmol/cm・分)であり燃料クロスオーバーが大きかった。
【0324】
不凍水量率は28%、不凍水含有率は58%であった。
【0325】
比較実施例5
(1)高分子電解質膜の作成
米国特許第6,103,414号明細書の実施例1の方法に従ってスルホン化ポリフェニレンオキシドとポリビニリデンフルオライドの複合膜を作製した。
【0326】
この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡で観察した結果、混じり合っていなかった。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいなかった。
(2)高分子電解質膜の性能
実施例11(3)〜(5)の方法で測定を行った。前記(1)で得た高分子電解質膜のプロトン伝導度は0.10S/cmであり、ナフィオン117膜のプロトン伝導度(0.085S/cm)以上であった。
【0327】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の1.71倍(205nmol/cm・分)であり燃料クロスオーバーが大きかった。
【0328】
不凍水量率は36%、不凍水含有率は54%であった。
【0329】
実施例35
(1)プロトン伝導性ポリマーの作製
【0330】
【化20】
【0331】
炭酸カリウム35g、4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール34g、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスクレゾール38g、および4,4'−ジフルオロベンゾフェノン44gを用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、160℃で重合を行った。水で抽出後、多量のメタノールで再沈することで精製を行い、上記式(T2)で示されるポリマーを定量的に得た。
【0332】
室温、窒素雰囲気下で前記ポリマー10gをクロロホルムに溶解させた後、激しく撹拌しながらクロロスルホン酸14mLをゆっくり滴下し、5分間反応させた。白色沈殿を濾別、粉砕し、水で十分洗浄した後、乾燥し、目的のプロトン伝導性ポリマーを得た。得られたプロトン伝導性ポリマーのスルホン酸基密度は、元素分析より2.3mmol/gであった。
(2)高分子電解質膜の作製
前記(1)で得られたプロトン伝導性ポリマーを、N,N−ジメチルアセトアミド20重量%溶液とした。この溶液(10g)および大阪ガスケミカル社製フルオレン型エポキシ樹脂“BPEF−G”(0.5g)を混合してよく撹拌した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は240μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(3)高分子電解質膜の性能
実施例11(3)〜(5)の方法で測定を行った。前記(1)で得た高分子電解質膜のプロトン伝導度は0.085S/cmであり、ナフィオン117膜のプロトン伝導度(0.085S/cm)と同等であった。
【0333】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.21倍(25nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーの抑制が大きかった。
【0334】
不凍水量率は88%、不凍水含有率は52%であり、不凍水の割合が極めて大きかった。
【0335】
実施例36
(1)シラン化合物の加水分解
Gelest社製1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(1.35g)に0℃で1M塩酸(0.68g)を添加し、室温にて30分間攪拌し、無色透明の加水分解物を得た。
(2)高分子電解質膜の作製
実施例35(1)で得られたプロトン伝導性ポリマーを、N,N−ジメチルアセトアミド20重量%溶液とした。この溶液(10g)および前記(1)の加水分解物(1g)を混合した。この液をガラス板上にキャストし、100℃、3時間加熱して高分子電解質膜を作製した。膜厚は240μmであった。この高分子電解質は前記M2の方法により、光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した結果、実質的に均一に混じり合っていた。またこの高分子電解質は前記M3の方法で判定した結果、架橋高分子を含んでいた。
(3)高分子電解質膜の性能
実施例11(3)〜(5)の方法で測定を行った。前記(1)で得た高分子電解質膜のプロトン伝導度は0.083S/cmであり、ナフィオン117膜のプロトン伝導度(0.085S/cm)とほぼ同等であった。
【0336】
また燃料クロスオーバーはナフィオン117膜の0.32倍(38nmol/cm・分)であり、燃料クロスオーバーの抑制が大きかった。
【0337】
不凍水量率は81%、不凍水含有率は47%であり、不凍水の割合が極めて大きかった。
【0338】
【発明の効果】
本発明によって、高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーを両立した高分子電解質が提供することが可能となる。また本発明の高分子電解質からなる高分子電解質膜、膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池は、高分子電解質型燃料電池として高出力、高エネルギー密度を達成することが可能で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の高分子電解質の斜視模式図である。
【図2】本発明のside−by−side構造の高分子電解質の斜視模式図である。
【図3】本発明の高分子電解質を用いたside−by−side構造燃料電池の製造プロセスの一部を示す断面模式図である。
【図4】高分子電解質膜の燃料クロスオーバー測定のためのセルの概略断面図である。
【符号の説明】
1:多孔部
2:非多孔部
4:膜導電部
5:膜貫通電子伝導部
6:プロトン伝導部
7:電極
8:サンプル(高分子電解質膜)
9:シリコーンゴム製パッキング
10:攪拌子
11:純水
12:メタノール水溶液
Claims (13)
- プロトン伝導性ポリマー(A)と、(A)とは異なる高分子(B)が光学顕微鏡観察において均一に混じり合っているか、または光学顕微鏡観察において100μm以上のサイズの相分離構造を取らずに混じり合ってなる高分子電解質であって、前記プロトン伝導性ポリマー(A)が非架橋高分子、かつ非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーであり、前記高分子(B)が溶剤に対して不溶な架橋高分子であり、前記プロトン伝導性ポリマー(A)と前記高分子(B)の組成比率が0.05以上20以下であり、前記高分子電解質中の数式(S1)で表される不凍水量率が40重量%以上100重量%以下であり、0.1gの高分子電解質を純水で洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して重量を測定し、その高分子電解質を100倍重量の溶剤として、トルエン、ヘキサン、N−メチルピロリドン、メタノールおよび水の5種類それぞれに浸漬し、密閉容器中、撹拌しながら70℃、40時間加熱し、アドバンテック社製濾紙(No.2)を用いて濾過を行い、濾過時に100倍重量の同一溶剤で濾紙と残渣を洗浄し、十分に溶出物を溶剤中に溶出させ、濾液を乾固させて求めた溶出重量が初期重量の95%未満であることを特徴とする高分子電解質。
(不凍水量率)=(不凍水量)/(低融点水量+不凍水量)×100(%) ……(S1)
ここで、不凍水量と低融点水量は、以下の方法で求められるものである。
高分子電解質を20℃の水に12時間浸漬した後、水中から取り出し、過剰な表面付着水をできるだけ素早くガーゼで拭き取って除去してから、あらかじめ重量(Gp)を測定してあるアルミナコートされたアルミニウム製密閉型試料容器に入れてクリンプした後、できるだけ素早く試料と密閉型試料容器の合計重量(Gw)を測定し、室温から−30℃まで10℃/分の速度で冷却した後、0.3℃/分で5℃まで昇温する測定温度プログラムで直ちにDSC測定を実施し、この昇温過程のDSC曲線から下記の数式(n1)を使ってバルク水量Wfを、数式(n2)を使って低融点水量Wfcを求め、全水分率から差し引くことで、数式(n3)を使って不凍水量Wnfを求める。
- 数式(S2)で表される高分子電解質中の不凍水重量の、真空乾燥機にて110℃で24時間真空乾燥した高分子電解質の乾燥重量に対する割合が20%以上200%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質。
(不凍水含有率)=(高分子電解質中の不凍水量)/(高分子電解質の乾燥重量)×100(%) ……(S2) - 前記非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーが、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基およびカルボン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の高分子電解質。
- 前記非パーフルオロ系のプロトン伝導性ポリマーが、主鎖に極性基を有するプロトン伝導性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質。
- 前記プロトン伝導性ポリマーにおいて、極性基がスルホニル基、オキシ基、チオ基、カルボニル基、ホスフィンオキシド基、ホスホン酸エステル基、エステル基、アミド基、イミド基およびホスファゼン基から選ばれる少なくとも1種類以上からなることを特徴とする請求項4に記載の高分子電解質。
- 前記プロトン伝導性ポリマー(A)が、架橋高分子(B)と電子顕微鏡観察において均一に混じり合っていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質。
- 前記架橋高分子(B)が、ラジカル重合性高分子、エポキシ系高分子、メラミン系高分子、フェノール樹脂系高分子、ウレタン系高分子、ウレア系高分子、および無機系架橋高分子から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質。
- 前記架橋高分子(B)が、無機系架橋高分子であり、かつ該無機系架橋高分子がアニオン性基を有することを特徴とする請求項7に記載の高分子電解質。
- 前記無機系架橋高分子が有するアニオン性基がスルホン酸基、スルホンイミド基、ホスホン酸基、リン酸基およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の高分子電解質。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の高分子電解質からなる高分子電解質膜。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の高分子電解質あるいは請求項10に記載の高分子電解質膜を含むことを特徴とする膜電極複合体。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の高分子電解質あるいは請求項10に記載の高分子電解質膜あるいは請求項11に記載の膜電極複合体を含むことを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
- 炭素数1〜3のアルコール、ジメチルエーテルおよびこれらと水の混合物から選ばれた少なくとも1種を燃料とする直接型燃料電池であることを特徴とする請求項12記載の高分子電解質型燃料電池。
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