JP4799123B2 - 芳香族炭化水素系樹脂を含有する高分子電解質組成物 - Google Patents

芳香族炭化水素系樹脂を含有する高分子電解質組成物 Download PDF

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Description

本発明は、高分子電解質組成物及びそれからなる固体高分子型燃料電池用のプロトン交換膜に関するものである。
燃料電池は、電池内で、水素、メタノール等を電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを、直接、電気エネルギーに変換して取り出すものであり、クリーンな電気エネルギー供給源として注目されている。特に、固体高分子形燃料電池は、他と比較して低温で作動することから、自動車代替動力源、家庭用コジェネレーションシステム、携帯用発電機等として期待されている。
このような固体高分子形燃料電池は、電極触媒層とガス拡散層とが積層されたガス拡散電極がプロトン交換膜の両面に接合された膜電極接合体を少なくとも備えている。ここでいうプロトン交換膜は、高分子鎖中にスルホン酸基、カルボン酸基等の強酸性基を有し、プロトンを選択的に透過する性質を有する材料である。このようなプロトン交換膜としては、化学的安定性の高いナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表されるパーフルオロ系プロトン交換膜が好適に用いられる。
燃料電池の運転時においては、アノード側のガス拡散電極に燃料(例えば、水素)、カソード側のガス拡散電極に酸化剤(例えば、酸素や空気)をそれぞれ供給し、両電極間を外部回路で接続することにより作動する。具体的には、水素を燃料とした場合、アノード触媒上で水素が酸化されてプロトンが生じ、このプロトンがアノード触媒層内のプロトン伝導性ポリマーを通った後、プロトン交換膜内を移動し、カソード触媒層内のプロトン伝導性ポリマーを通ってカソード触媒上に達する。一方、水素の酸化によりプロトンと同時に生じた電子は、外部回路を通ってカソード側ガス拡散電極に到達し、カソード触媒上にて上記プロトンと酸化剤中の酸素と反応して水が生成され、このとき電気エネルギーを取り出すことができる。
この際、プロトン交換膜は、ガスバリアとしての役割も果たす必要があり、プロトン交換膜のガス透過率が高いと、アノード側水素のカソード側へのリークおよびカソード側酸素のアノード側へのリーク、すなわち、クロスリークが発生して、いわゆるケミカルショートの状態となって良好な電圧を取り出せなくなる。
このような固体高分子型燃料電池は、高出力特性を得るために80℃近辺で運転するのが通常である。しかしながら、自動車用途として用いる場合には、夏場の自動車走行を想定して、高温低加湿条件下(運転温度100℃付近で、50℃加湿(湿度12RH%に相当))でも燃料電池を運転できることが望まれている。ところが、従来のパーフルオロ系プロトン交換膜を用いて高温低加湿条件下で燃料電池を長時間運転すると、プロトン交換膜にピンホールが生じ、クロスリークが発生するという問題があり、十分な耐久性が得られていない。
パーフルオロ系プロトン交換膜の耐久性を向上させる方法として、フィブリル状のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いた補強(特許文献1,2)、延伸処理したPTFE多孔膜を用いた補強(特許文献3)、無機粒子を添加した補強(特許文献4,5,6)、芳香族環含有樹脂からなる多孔質体を用いた補強(特許文献7、8)による検討が開示されている。しかしながら、これらの方法では、上記問題を解決するに充分な耐久性を得ることは達成されていない。
特開昭53−149881号公報 特公昭63−61337号公報 特開平8−162132号公報 特開平6−111827号公報 特開平9−219206号公報 米国特許第5523181号明細書 特開2001−514431号公報 特開2003−297393号公報
本発明の目的は、高温低加湿条件下(例えば、運転温度100℃で、50℃加湿(湿度12RH%に相当))でも高耐久性を有する高分子電解質組成物およびこの高分子電解質組成物からなるプロトン交換膜を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、
イオン交換基を有する高分子化合物(A)と、ポリフェニレンスルフィド樹脂(B)と、ポリスルホン樹脂(C)と、エポキシ基含有化合物(D)とからなる高分子電解質組成物が高い酸化安定性を示し、さらにその高分子電解質組成物からなるプロトン交換膜が高温低加湿下でも非常に良好な高耐久性を有し、かつ力学物性も向上することを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]イオン交換基を有する高分子化合物(A)と、ポリフェニレンスルフィド樹脂(B)と、ポリスルホン樹脂(C)と、エポキシ基含有化合物(D)からなる高分子電解質組成物。
[2]エポキシ基含有化合物(D)がエポキシ基を有する不飽和モノマーの単独重合体または共重合体(E)である[1]に記載の高分子電解組成物。
[3]エポキシ基含有化合物(D)がエポキシ樹脂(F)である[1]に記載の高分子電解組成物。
[4][3]に記載の高分子電解質組成物であって、該高分子電解質組成物中のポリスルホン樹脂(C)とエポキシ樹脂(F)が反応してなるエポキシ変性ポリスルホン(G)を少なくとも含有している高分子電解質組成物。
[5]イオン交換基を有する高分子化合物(A)が、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物である[1]に記載の高分子電解質組成物。
[6]イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物が、下記一般式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする[5]に記載の高分子電解質組成物。
-[CF2CX1X2]a-[CF2-CF(-O-(CF2-CF(CF2X3))b-Oc-(CFR1)d-(CFR2)e-(CF2)f-X4)]g- (1)(式中、X,XおよびXはそれぞれ独立にハロゲン元素または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1、bは0以上8以下の整数、cは、0または1であり、d、eおよびfはそれぞれ独立に0以上6以下の整数(ただし、d+e+fは0に等しくない)、RおよびRはそれぞれ独立にハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、Xは、COOZ、SOZ、PO、POHZ(Zは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アミン類(NH、NHR、NH、NHR、NR(Rはアルキル基、又はアレーン基))
[7]前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の高分子電解質組成物からなるプロトン交換膜。
[8]前記[7]に記載のプロトン交換膜を有する膜電極接合体。
[9]前記[8]に記載の膜電極接合体を有する固体高分子型燃料電池。
本発明の高分子電解質組成物からなるプロトン交換膜は、運転温度100℃で、50℃加湿(湿度12RH%に相当)において、燃料電池運転を長期間行ってもクロスリークが発生せず、優れた耐久性を示すことから、高温低加湿条件下(例えば、運転温度100℃で、50℃加湿(湿度12RH%に相当))でも高耐久性を有するプロトン交換膜を得ることが可能となった。
本発明により得られるプロトン交換膜は、ダイレクトメタノール型燃料電池を含めた各種燃料電池、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサー、ガスセンサー等に用いることも可能である。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられるイオン交換基を有する高分子化合物(A)としては、特に限定はしないが、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物や、分子内に芳香環を有する炭化水素系高分子化合物にイオン交換基を導入したものなどが好ましい。分子内に芳香環を有する炭化水素系高分子化合物としては、具体的には、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサジノン、ポリキシリレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセン、ポリシアノゲン、ポリナフチリジン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、芳香族ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネートなどが挙げられるが、耐熱性や耐酸化性、耐加水分解性の観点からポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサジノン、ポリキシリレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセン、ポリシアノゲン、ポリナフチリジン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミドが好ましい。これらに導入するイオン交換基は、好ましくはスルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、カルボン酸基、リン酸基などが挙げられ、特にスルホン酸基が好ましい。
本発明に用いられるイオン交換基を有する高分子化合物(A)としては、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物が特に好適である。
イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物としては、パーフルオロカーボンのスルホン酸ポリマーをはじめカルボン酸ポリマー、スルホンイミドポリマー、スルホンアミドポリマー、リン酸ポリマー、もしくはこれらのアミン塩、金属塩等が好適に用いられ、具体例として一般式(1)で表される重合体が挙げられる。
-[CF2CX1X2]a-[CF2-CF(-O-(CF2-CF(CF2X3))b-Oc-(CFR1)d-(CFR2)e-(CF2)f-X4)]g- (1)
(式中、X,XおよびXはそれぞれ独立にハロゲン元素または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1、bは0以上8以下の整数、cは、0または1であり、d、eおよびfはそれぞれ独立に0以上6以下の整数(ただし、d+e+fは0に等しくない)、RおよびRはそれぞれ独立にハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、Xは、COOZ、SOZ、PO、POHZ(Zは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アミン類(NH、NHR、NH、NHR、NR(Rはアルキル基、又はアレーン基))
中でも、一般式(2)或いは(3)で表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーもしくはその金属塩が特に好ましい。
-[CF2CF2]a-[CF2-CF(-O-CF2-CF(CF3))b-O-(CF2)c-SO3X]]d- (2)
(式中、0≦a<1、0≦d<1、a+d=1、bは1以上8以下の整数、cは0以上10以下の整数、Xは水素原子またはアルカリ金属原子)
-[CF2CF2]e-[CF2-CF(-O-(CF2)f-SO3Y)]g- (3)
(式中、0≦e<1、0≦g<1、e+g=1、fは0以上10以下の整数、Yは水素原子またはアルカリ金属原子)
本発明のイオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物は、例えば、一般式(4)に示される前駆体ポリマーを重合した後、アルカリ加水分解、酸処理等を行って製造することができる。
-[CF2CX1X2]a-[CF2-CF(-O-(CF2-CF(CF2X3))b-Oc-(CFR1)d-(CFR2)e-(CF2)f-X5)]g- (4)
(式中、X、XおよびXは、それぞれ独立に、ハロゲン元素または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1、bは、0以上8以下の整数、cは、0または1、d、eおよびfは、それぞれ独立に、0以上6以下の整数(但し、d+e+fは、0に等しくない)、RおよびRは、それぞれ独立に、ハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基、Xは、COOR,CORまたはSO(Rは、炭素数1〜3の炭化水素系アルキル基、Rは、ハロゲン元素))
本発明に用いることが可能な前駆体ポリマーは、フッ化オレフィン化合物とフッ化ビニル化合物とを共重合させることにより製造される。
具体的なフッ化オレフィン化合物としては、CF=CF,CF=CFCl,CF=CCl等が挙げられる。
又、具体的なフッ化ビニル化合物としては、
CF=CFO(CF−SOF,CF=CFOCFCF(CF)O(CF−SOF,CF=CF(CF−SOF,CF=CF(OCFCF(CF))−(CFz−1−SOF,CF=CFO(CF−COR,CF2=CFOCFCF(CF)O(CF−COR,CF=CF(CF−COR,CF=CF(OCFCF(CF))−(CF−COR(Zは1〜8の整数、Rは炭素数1〜3の炭化水素系アルキル基を表す)等が挙げられる。
前駆体ポリマーの重合方法としては、フッ化ビニル化合物をフロン等の溶媒に溶解した後、フッ化オレフィン化合物のガスと反応させ重合する溶液重合法、フロン等の溶媒を使用せずに重合する塊状重合法、フッ化ビニル化合物を界面活性剤とともに水中に仕込んで乳化させた後、フッ化オレフィン化合物のガスと反応させ重合する乳化重合法等の一般的な重合方法が挙げられる。
尚、本発明では、フッ化ビニル化合物、フッ化オレフィン化合物に加え、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等のパーフルオロオレフィン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等の第3成分を含む共重合体であってもよい。
本発明に用いることが可能な前駆体ポリマーの、JIS K−7210に基づいた270℃、荷重21.2N、オリフィス内径2.09mmで測定されるメルトインデックスMI(g/10分)は、0.001以上1000以下が好ましく、より好ましくは0.01以上100以下、最も好ましくは0.1以上10以下である。
本発明に用いることが可能な前駆体ポリマーは、次に、塩基性反応液体に浸漬させてアルカリ加水分解処理を行う。反応液体は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液が好ましい。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の含有率は、10重量%以上30重量%以下であることが好ましい。上記反応液体は、ジメチルスルホキシド、メタノール等の膨潤性有機化合物を含有するのが好ましい。膨潤性有機化合物の含有率としては、1重量%以上30重量%以下であることが好ましい。
前駆体ポリマーをアルカリ加水分解処理した後、さらに必要に応じて塩酸等で酸処理を行うことにより、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物が製造される。
次に、本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂(B)(以下PPSと略記することもある)は、所謂ポリフェニレンスルフィド樹脂であれば特に限定されないが、好ましくはパラフェニレンスルフィド骨格が70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上からなるポリフェニレンスルフィド樹脂である。
PPSの製造方法は、特に限定するものではなく、通常、ハロゲン置換芳香族化合物、例えばp−ジクロルベンゼンを硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中でp−ジクロルベンゼンを硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウムと水酸化ナトリウムの存在下で重合させる方法、または極性溶媒中でp−ジクロルベンゼンを硫化水素と水酸化ナトリウムあるいはナトリウムアミノアルカノエートの存在下で重合させる方法、p−クロルチオフェノールの自己縮合等が挙げられる。これらの中でもN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応させる方法が好ましい。具体的には、米国特許第2513188号明細書、特公昭44−27671号公報、特公昭45−3368号公報、特公昭52−12240号公報、特開昭61−225217号公報、米国特許第3274165号明細書、英国特許第1160660号明細書、特公昭46−27255号公報、ベルギー特許第29437号明細書、特開平5−222196号公報等に記載された方法やこれら特許等に例示された先行技術の方法で得ることが出来る。
本発明に用いられるポリフェニレンスルフィド樹脂(B)は、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が0.001重量%以上0.9重量%以下であり、かつ−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子である)が10μmol/g以上10,000μmol/g以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂が好ましい。
塩化メチレンによるオリゴマー抽出量に関しては、0.001重量%以上0.8重量%以下がさらに好ましく、0.001重量%以上0.7重量%以下が特に好ましい。塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が上記範囲にあるということは、PPS中におけるオリゴマー(約10〜30量体)の量が少ないことを意味する。上記オリゴマー抽出量が上記範囲を超えると製膜時にブリードアウトが発生しやすくなるので好ましくない。
ここで、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量の測定は以下の方法により行うことができる。すなわち、PPS粉末5gを塩化メチレン80mlに加え、4時間ソクスレー抽出を実施した後、室温まで冷却し、抽出後の塩化メチレン溶液を秤量瓶に移す。更に、上記の抽出に使用した容器を塩化メチレン合計60mlを用いて、3回に分けて洗浄し、該洗浄液を上記秤量瓶中に回収する。次に、約80℃に加熱して、該秤量瓶中の塩化メチレンを蒸発させて除去し、残渣を秤量し、この残渣量よりPPS中に存在するオリゴマー量の割合を求めることができる。
また、−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子である)の含有量に関しては、15μmol/g以上10,000μmol/g以下がさらに好ましく、20μmol/g以上10,000μmol/g以下が特に好ましい。−SX基濃度が上記範囲にあるということは、ポリフェニレンスルフィド樹脂の反応活性点が多いことを意味する。−SX基濃度が上記範囲を満たすポリフェニレンスルフィド樹脂(B)を用いることで、本発明の高分子電解質組成物においてイオン交換基を有する高分子化合物(A)とポリフェニレンスルフィド樹脂との混和性が向上し、イオン交換基を有する高分子化合物(A)中へのポリフェニレンスルフィド樹脂(B)の分散性が向上すると考えられる。
ここで、−SX基の定量は以下の方法により行うことができる。すなわち、PPS粉末を予め120℃で4時間乾燥した後、この乾燥PPS粉末20gをN−メチル−2−ピロリドン150gに加えて粉末凝集塊がなくなるように室温で30分間激しく撹拌混合しスラリー状態にする。得られたスラリーを濾過した後、毎回約80℃の温水1リットルを用いて7回洗浄を繰り返す。得た濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化した後、1Nの塩酸を加えて該スラリーのPHを4.5に調整する。次に、25℃で30分間撹拌して、濾過した後、約80℃の温水1リットルを用いて6回洗浄を繰り返す。得られた濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化し、次いで、1Nの水酸化ナトリウムにより滴定し、消費した水酸化ナトリウム量よりPPS中に存在する−SX基の量を求める。
なお、塩化メチレンによるオリゴマー抽出量が0.001重量%以上0.9重量%以下であり、かつ−SX基が10μmol/g以上10,000μmol/g以下であるPPSの具体的な製造方法としては、特開平8−253587号公報の実施例1および2に記載された製造方法(段落番号0041〜0044)や特開平11−106656号公報の合成例1および2に記載された製造方法(段落番号0046〜0048)等が挙げられる。
さらに、本発明で用いるPPSは320℃における溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/D(L:オリフィス長、D:オリフィス内径)=10/1で6分間保持した値)は、好ましくは1〜10,000ポイズであることが好ましく、100〜10,000ポイズであることがさらに好ましい。
また、本発明では、ポリフェニレンスルフィド樹脂(B)として、ポリフェニレンスルフィド樹脂に酸性官能基や反応性官能基を導入したものも好適に用いることが出来る。このような官能基を導入することで、本発明の高分子電解質組成物においてイオン交換基を有する高分子化合物(A)とポリフェニレンスルフィド樹脂(B)との混和性が向上し、イオン交換基を有する高分子化合物(A)中へのポリフェニレンスルフィド樹脂(B)の分散性が向上すると考えられる。また、特に酸性官能基を導入した場合、本発明の高分子電解質組成物からなるプロトン交換膜において、プロトン伝導度に関与する官能基が増加することを意味し、高いプロトン伝導度が発現できるので好ましい。導入する酸性官能基としては、例えば、スルホン酸基、リン酸基、スルホンイミド基、カルボン酸基、マレイン酸基,無水マレイン酸基,フマル酸基,イタコン酸基,アクリル酸基およびメタクリル酸基が好ましく、強酸性基であるスルホン酸基、リン酸基がさらに好ましく、スルホン酸基が最も好ましい。導入する反応性官能基としてはエポキシ基、オキサゾニル基、アミノ基、イソシアネート基およびカルボジイミド基などが好ましく、エポキシ基が特に好ましい。さらに、上記各種官能基を2種以上導入してもよい。
酸性官能基や反応性官能基の導入方法は特に限定されず、一般的な方法を用いて実施される。例えばスルホン酸基の導入については、無水硫酸、発煙硫酸などのスルホン化剤を用いて公知の条件で実施することが出来る。例えば、K.Hu, T.Xu, W.Yang, Y.Fu, Journal of Applied Polymer Science, Vol.91,や、 E.Montoneri, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.27, 3043−3051(1989)に記載の条件で実施できる。
また、導入した酸性官能基を金属塩またはアミン塩に置換したものも好適に用いられる。金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が好ましい。
本発明で用いられるポリスルホン樹脂(C)は、所謂ポリスルホン樹脂であれば特に限定されないが、下記一般式(5)であらわされる構造が好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上からなるポリスルホン樹脂である。
Figure 0004799123
本発明で用いられるポリスルホン樹脂(C)は、その製造方法については特に限定されず、例えば、ビスフェノールAのナトリウム塩と4,4‘−ジクロロジフェニルスルフォンとを反応させることにより容易に製造できる。
また、本発明では、ポリスルホン樹脂(C)として、ポリスルホン樹脂に酸性官能基や反応性官能基を導入したものも好適に用いることが出来る。このような官能基を導入することで、本発明の高分子電解質組成物においてイオン交換基を有する高分子化合物(A)とポリスルホン樹脂(C)との混和性が向上し、イオン交換基を有する高分子化合物(A)中へのポリスルホン樹脂(C)の分散性が向上すると考えられる。
また、特に酸性官能基を導入した場合、本発明の高分子電解質組成物からなるプロトン交換膜において、プロトン伝導度に関与する官能基が増加することを意味し、高いプロトン伝導度が発現できるので好ましい。導入する酸性官能基としては、例えば、スルホン酸基、リン酸基、スルホンイミド基、カルボン酸基、マレイン酸基,無水マレイン酸基,フマル酸基,イタコン酸基,アクリル酸基およびメタクリル酸基が好ましく、強酸性基であるスルホン酸基、リン酸基がさらに好ましく、スルホン酸基が最も好ましい。導入する反応性官能基としてはエポキシ基、オキサゾニル基、アミノ基、イソシアネート基およびカルボジイミド基などが好ましく、エポキシ基が特に好ましい。さらに、上記各種官能基を2種以上導入してもよい。
酸性官能基や反応性官能基の導入方法は特に限定されず、一般的な方法を用いて導入できる。例えばスルホン酸基の導入については、無水硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸などのスルホン化剤を用いて公知の条件で実施することができる。
本発明で用いられるエポキシ基含有化合物(D)は、エポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基を含有する低分子化合物、エポキシ基を有する不飽和モノマーの単独重合体または共重合体(E)、およびエポキシ樹脂(F)などが挙げられる。高分子化合物の方が高温での取り扱いが容易なことから、エポキシ基を有する不飽和モノマーの単独重合体または共重合体(E)およびエポキシ樹脂(F)が好ましい。
上記のエポキシ基を含有する低分子化合物としては、200℃で固体か液体であるものが好ましく、具体的には、1,2−エポキシ−3−フェノキシプロパン、N−(2,3−エポキシプロピル)フタルイミド、3,4−エポキシテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキサイド、グリシジル4−ノニルフェニルエーテル、グリシジルトシレート、グリシジルトリチルエーテルなどが挙げられる。
本発明で用いられるエポキシ基を有する不飽和モノマーの単独重合体または共重合体(E)を構成するエポキシ基を有する不飽和モノマーとしては、エポキシ基を有する不飽和モノマーであれば別に制限されず、例えば、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルグリシジルエーテル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、グリシジルイタコネート等が挙げられる。これらの中でもグリシジルメタアクリレートが好ましい。
エポキシ基を有する不飽和モノマーの共重合体の場合、上記エポキシ基を有する不飽和モノマーと共重合する他の不飽和モノマーとしては、スチレン等のビニル芳香族化合物、アクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。これら共重合可能な不飽和モノマーを共重合して得られる共重合体の例として、例えば、スチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン-グリシジルメタクリレート-メチルメタクリレート共重合体、スチレン-グリシジルメタクリレート-アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。
本発明で用いられるエポキシ樹脂(F)は、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒンダトイン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらから選ばれる1種または2種以上を混合して用いることもできる。その中でもクレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が特に好ましい。
本発明では、ポリスルホン樹脂(C)とエポキシ樹脂(F)をあらかじめ混合、反応させて添加することができる。即ち、ポリスルホン樹脂(C)として、ポリフェニレンエーテル樹脂とエポキシ樹脂とが反応して得られたエポキシ変性ポリスルホン樹脂(G)を用いることができる。勿論、(A)成分および(B)成分と共にポリスルホン樹脂(C)とエポキシ樹脂(F)を混合して本発明の組成物とした後に、後述するような条件下でポリスルホン樹脂(C)とエポキシ樹脂(F)とを反応させてもよい。
ポリスルホン樹脂(C)としてエポキシ変性ポリスルホン樹脂(G)を用いることにより、得られた高分子電解質組成物の分散性が向上し、その結果、高分子電解質組成物およびこの組成物からなるプロトン交換膜の耐久性はさらに向上する。
エポキシ変性ポリスルホン樹脂(G)の製造方法は、反応温度が100〜250℃であることが好ましい。より好ましくは120〜195℃、さらに好ましくは140〜190℃の範囲である。また反応時間は3時間未満が好ましく、より好ましくは2時間以内、特に好ましくは40分以内である。
エポキシ変性ポリスルホン樹脂(G)の製造に用いる反応器は、ポリスルホン樹脂とエポキシ樹脂を均一に混合、攪拌または混練できるものが好ましく、粘度が高い場合は二軸押出機、ニーダー等の混練機を用いることができる。その製造方法は連続反応プロセス、バッチ反応プロセス、セミバッチ反応プロセスのいずれのプロセス形態を用いることができる。
エポキシ変性ポリスルホン樹脂(G)の製造方法では、反応速度の向上や副反応抑制、反応組成物の構造制御の観点から、反応系に塩基性化合物を添加することができる。塩基性化合物の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、トリエチルアミンやトリブチルアミン等の3級アミン、イミダゾール、ナトリウムフェノキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でもナトリウムメチラート、トリエチルアミン、トリブチルアミン、水酸化ナトリウム等が好ましい。上記塩基性化合物の他にも4級アンモニウム塩も触媒として用いることができる。
本発明の高分子電解質組成物は、上述した、イオン交換基を有する高分子化合物(A)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(B)、ポリスルホン樹脂(C)およびエポキシ基含有化合物(D)からなる組成物である。このような本発明の高分子電解質組成物およびこの組成物からなるプロトン交換膜は、イオン交換基を有する高分子化合物(A)単独の場合と比べても、ポリフェニレンスルフィド樹脂(B)、ポリスルホン樹脂(C)、およびエポキシ基含有化合物(D)をそれぞれ単独にイオン交換基を有する高分子化合物(A)に含有させた場合に比べても、その耐久性が著しく向上する。さらに驚くべきことに、本発明の高分子電解質組成物は、イオン交換基を有する高分子化合物(A)に本発明で用いた樹脂を含めた多くの樹脂を本発明以外の様々な組み合わせで含有させた場合と比べても、その耐久性が著しく向上する。
次に、イオン交換基を有する高分子化合物(A)とポリフェニレンスルフィド樹脂(B)とポリスルホン樹脂(C)とエポキシ基含有化合物(D)の組成比について説明する。
本発明の高分子電解質組成物は、上記した、ポリフェニレンスルフィド樹脂(B)とポリスルホン樹脂(C)との重量比がB/C=1/99〜99/1であることが好ましい。さらに好ましくは、B/C=20/80〜95/5、最も好ましくはB/C=30/70〜90/10の重量比である。
また、ポリフェニレンスルフィド樹脂(B)、ポリスルホン樹脂(C)とイオン交換基を有する高分子化合物(A)との重量比((B+C)/A)は99/1〜0.01/99.99であることが好ましい。プロトン導電性と耐久性のバランスから、(B+C)/Aは90/10〜0.05/99.95がより好ましく、70/30〜0.1/99.9がさらに好ましく、50/50〜1/99が特に好ましく、30/70〜5/95が最も好ましい。
また、エポキシ基含有化合物(D)の含有量は、ポリフェニレンスルフィド樹脂(B)とポリスルホン樹脂(C)の合計重量に対して、D/(B+C)=1/100〜200/100が好ましく、D/(B+C)=2/100〜100/100がさらに好ましく、D/(B+C)=3/100〜50/100が特に好ましい。
なお、本発明では(A)〜(G)の各成分は、いずれも2種類以上の化合物で構成されていてもよい。例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂(B)として、ポリフェニレンスルフィドとスルホン化したポリフェニレンスルフィドの混合物を用いる例などが挙げられる。また、ポリスルホン樹脂(C)として、ポリスルホンとスルホン化したポリスルホンとの混合物を用いる例などが挙げられる。
本発明の高分子電解質組成物については、必要に応じて酸化防止剤や老化防止剤、重金属不活性化剤、難燃剤等の各種添加剤を添加することができる。本発明の高分子電解質組成物と添加剤との重量比(電解質組成物/添加剤)は80/20〜99.999/0.001であることが好ましく、より好ましくは90/10〜99.99/0.01、さらに好ましくは95/5〜99.9/0.1である。
次に、本発明の高分子電解質組成物の作製方法について説明する。前述の成分(A)〜(G)の中から選ばれた成分を混合して本発明の高分子電解質組成物を得るわけであるが、その方法は特に限定されず、一般的な高分子組成物の混合方法が好適に適用できる。
例えば、イオン交換基を有する高分子化合物(A)またはその前駆体ポリマーと、(B)〜(G)成分から選ばれた成分を熱溶融して、混練押出機、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等で混練する方法が挙げられる。また、あらかじめ(B)〜(G)成分から選ばれた成分を熱溶融して、混練押出機、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等で混練して混合物を得てから、この混合物とイオン交換基を有する高分子化合物(A)またはその前駆体ポリマーとを同様に混練して最終的な高分子電解質組成物を得ることも出来る。混練の組み合わせや順番は任意に行なうことが出来る。なお、イオン交換基を有する高分子化合物(A)の代わりにその前駆体ポリマーを用いた場合は、混練後にアルカリ加水分解処理および酸処理を行ってイオン交換基を有する形態に変換することで本発明の高分子電解質組成物を得ることができる。
この時の混練の方法は、ブラベンダー、ニーダー、バンバリーミキサーおよび押出機などの従来公知の技術によって達成される。特に押出機を用いると、得られた高分子電解質組成物において、イオン交換基を有する高分子化合物(A)中に他の成分を微分散させることが容易にできるので好ましい。
本発明で用いられる高分子電解質組成物を工業的に容易に得る方法として最も好ましい実施態様としては、上記した各成分を溶融混練するための押出機が、ニーディングブロックをスクリューの任意の位置に組み込むことが可能な二軸以上の多軸押出機であり、用いるスクリューの全ニーディングブロック部分を実質的に(L/D)≧1.5、さらに好ましくは(L/D)≧5(ここで、Lはニーディングブロックの合計長さ、Dはニーディングブロックの最大外径を表す)に組み込み、かつ、(π・D・N/h)≧50〔ここで、π=3.14、D=メタリングゾーンに相当するスクリュー外径、N=スクリュー回転数(回転/秒)、h=メタリングゾーンの溝深さ〕を満たす態様である。これらの押出機は、原料の流れ方向に対し上流側に第一原料供給口、これより下流に第二原料供給口を有し、必要に応じて、第二原料供給口より下流にさらに1つ以上の原料供給口を設けてもよく、さらに必要に応じて、これら原料供給口の間に真空ベント口を設けてもよい。
また、イオン交換基を有する高分子化合物(A)またはその前駆体ポリマーの溶液と、(B)〜(G)成分の各溶液を混合して溶液を作成した後に、溶媒を除去する方法も挙げられる。この場合も、イオン交換基を有する高分子化合物(A)の溶液の代わりにその前駆体ポリマーの溶液を用いた場合は、溶媒を除去した後、アルカリ加水分解処理および酸処理を行ってイオン交換基を有する形態に変換することで本発明の高分子電解質組成物を得ることが出来る。
上記のような方法で本発明の高分子電解質組成物を得ることが出来るが、本発明ではイオン交換基を有する高分子化合物(A)中に、他の成分が微分散している構造を少なくとも有することにより、高寿命化等の本発明の効果が増幅される。つまり、イオン交換基を有する高分子化合物(A)中に、他の成分からなる粒子が円換算平均粒子径で0.0001μm以上1μm以下、好ましくは0.0001μm以上0.8μm以下、さらに好ましくは0.0001μm以上0.5μm以下、特に好ましくは0.0001μm以上0.3μm以下で分散している構造を有することが好適である。組成物の全ての領域で上記範囲を満たすことは必ずしも必要ではなく、組成物全領域の50〜100%が上記範囲を満たしていればよい。
また、(A)成分が他の成分からなる分散粒子の内部に入り込んでいる構造を有してもかまわない。ただし、このときも分散粒子の粒子径は、高寿命化の観点から、円換算平均粒子径で好ましくは0.0001μm以上1μm以下、より好ましくは0.0001μm以上0.8μm以下、さらに好ましくは0.0001μm以上0.5μm以下、特に好ましくは0.0001μm以上0.3μm以下である。
そして、後述するプロトン交換膜中でも上記のような微分散構造を少なくとも有することが好適である。
このような微分散構造は、材料の組成、加工時の各種条件等によりコントロールすることができる。より具体的には、材料の組成では各成分の組み合わせと量比、相溶化剤の使用、溶媒使用時には溶媒の種類等が挙げられる。また、加工時の各種条件としては温度条件、攪拌・混練条件が挙げられ、特に押出加工時にはスクリューデザイン、スクリュー回転数の影響が大きい。
なお、本発明における円換算平均粒子径は以下のように定義する。本発明の高分子電解質組成物またはプロトン交換膜から薄切片を作製し、常法により四酸化ルテニウム等の染色剤で染色し、透過型電子顕微鏡で観察し、染色されている相の平均粒子径をとり、この値をもって粒子径とする。このときの平均粒子径は、薄切片の任意の20×20μmの視野を直接、あるいはネガより写真に焼き付けた後、画像解析装置に読み込み、これから計算される各粒子の円換算径(面積を同じくする円の直径)の数平均値とする。ただし、写真から画像解析装置に入力する際に染色境界が不明瞭な場合には写真のトレースを行い、この図を用いて画像解析装置に入力を行う。
次に、本発明の高分子電解質組成物からなるプロトン交換膜の作製方法について説明する。本発明の高分子電解質組成物は、製膜してプロトン交換膜として用いることが出来る。製膜手段は特に限定されず、一般的な高分子組成物の製膜方法が好適に適用できる。例えば、カレンダー成形、プレス成形、Tダイ成形およびインフレーション成形などの公知の製膜方法が挙げられる。これらの中でも、Tダイ成形およびインフレーション成形は本発明の高分子電解質組成物からプロトン交換膜を工業的に容易に得る方法として好ましい。特にインフレーション成形は、異方性の小さい膜を得るという観点からも好ましい。
また、本発明の高分子電解質組成物の前駆体、例えばイオン交換基を有する高分子化合物(A)の前駆体ポリマーと(B)〜(G)成分から選ばれた成分とからなる高分子組成物を、前述の製膜方法を用いて製膜した後に、適当な後処理、例えばアルカリ加水分解処理や酸処理を行ってイオン交換基を有する形態に変換することで、本発明の高分子電解質組成物からなるプロトン交換膜を得ることも出来る。
また、(A)〜(G)成分の各溶液を混合して溶液を作成し、その溶液をキャストした後、溶媒を除去することによってもプロトン交換膜を得ることができる。キャスト方法としては、シャーレに流し込み製造する方法をはじめ、グラビアロールコータ−、ナチュラルロールコータ、リバースロールコータ、ナイフコータ−およびディップコータ−等の公知の塗工方法を用いることができる。キャスト法に用いる基材は、一般的なポリマーフィルム、金属箔、アルミナ、ケイ素等の基板、特開平8−162132号公報に記載のPTFE膜を延伸処理した多孔質膜、および特開昭53−149881号公報ならびに特公昭63−61337号公報に示されるフィブリル化繊維等を用いることができる。溶媒の除去の方法として、室温〜200℃での熱処理および減圧処理等の方法を用いることができる。また熱処理をする場合、段階的に昇温させ溶媒を除去することも可能である。
また、例えばイオン交換基を有する高分子化合物(A)の溶液の代わりにその前駆体ポリマーの溶液を用いて、(B)〜(G)成分の各溶液を混合して溶液を作成し、その溶液をキャストした後、溶媒を除去してから、適当な後処理、例えばアルカリ加水分解処理や酸処理を行ってイオン交換基を有する形態に変換することで、本発明の高分子電解質組成物からなるプロトン交換膜を得ることも出来る。
本発明のプロトン交換膜の製造において、上記記載の製法と併せて、横1軸延伸、同時2軸延伸または逐次2軸延伸を実施することによって延伸配向を付与することができる。このような延伸処理により、本発明のプロトン交換膜の力学物性を向上させることができるので好ましい。この延伸処理は、プロトン交換膜の状態で実施することができるし、あるいはプロトン交換基をナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩などの金属塩やアンモニウム塩等に置換した状態でも実施することができる。また、イオン交換基を有する高分子化合物(A)の前駆体ポリマーと(B)〜(G)成分から選ばれた成分とからなる高分子組成物を製膜した場合は、製膜直後の状態でも実施することができるし、当該膜を適当な後処理、例えばアルカリ加水分解処理や酸処理を行ってイオン交換基を有する形態に変換してから実施することもできる。
上記の延伸処理は、横(TD)方向に1.1〜6.0倍、縦(MD)方向に1.0〜6.0倍で実施することが好ましく、より好ましくは横方向に1.1〜3.0倍、縦方向に1.0〜3.0倍、さらに好ましくは横方向に1.1〜2.0倍、縦方向に1.0〜2.0倍である。面積延伸倍率としては1.1〜36倍が好ましい。
本発明のプロトン交換膜は、組成比が異なる少なくとも2種類以上のプロトン交換膜を積層した構造にすることができる。本発明の高分子電解質組成物からなるプロトン交換膜では、イオン交換基を有する高分子化合物(A)以外の樹脂の含有率が高いほど力学強度および乾湿寸法変化に優れ、イオン交換基を有する高分子化合物(A)含有率が高いほどプロトン伝導度などの電気特性が優れる。この特性を利用して、組成比が異なる2種類以上のプロトン交換膜を設計し、それらを組み合わせて積層することで、力学強度、乾湿寸法変化および電気特性の全てに優れたプロトン交換膜を単層膜の場合よりも容易に実現することができる。
積層させる層数に制限はないが、層数が多くなると製造コストも増大するので2〜10層程度が好ましい。さらに好ましくは2〜7層であり、3〜5層が特に好ましい。各層の、イオン交換基を有する高分子化合物(A)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(B)、ポリスルホン樹脂(C)およびエポキシ基含有化合物(D)の組成比は前述の範囲内で任意に変化させることができる。また各層の厚さも特性を考慮して任意に変化させることができる。
例えば3層以上の多層構造のケースにおいて、内部層のイオン交換基を有する高分子化合物(A)の含有率を少なくともいずれか一方の表面層のそれよりも少なくして、内部層で乾湿寸法変化を抑えた場合、内部層の厚さは、全体厚みの5〜90%比が好ましく、さらに好ましくは7〜80%比、特に好ましくは10〜50%比である。また、表面層のイオン交換基を有する高分子化合物(A)の含有率を内部層のそれよりも少なくして、表面層で乾湿寸法変化を抑えた場合、表面層の総厚さは、全体厚みの5〜50%比が好ましく、さらに好ましくは7〜45%比、特に好ましくは10〜40%比である。
本発明のプロトン交換膜の製造において、上記記載の製法と併せて、無機材ないし有機材または有機無機ハイブリッド材からなる補強材料を添加することによる補強や、架橋による補強等を施すこともできる。補強材料は短繊維物質でもよいし、粒子状物質でもよいし、薄片状物質でもよい。また、多孔膜、メッシュおよび不織布などの連続した支持体でもよい。本発明のプロトン交換膜に補強材料の添加による補強を実施することで、力学強度および乾湿寸法変化を容易に向上させることができる。特に短繊維物質または上述の連続した支持体を補強材料に用いると補強効果が高い。
補強材料は、溶融混練時に同時に添加、混合してもよいし、製膜後の膜と積層してもよい。
補強材料として用いる無機材は補強効果のあるものであれば特に限定されず、例えばガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、タルク、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ藻土、ケイ砂、鉄フェライト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、およびカーボンナノホーン等が挙げられる。補強材として用いる有機材もまた補強効果のあるものであれば特に限定されず、例えばポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリチオエーテルスルホン、ポリチオエーテルエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサジノン、ポリキシリレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセン、ポリシアノゲン、ポリナフチリジン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリエステル、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、セルロース、ポリケトン、ポリアセタール、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどが挙げられる。有機無機ハイブリッド材もまた補強材として用いることができ、例えば、POSS(Polyhedral Oligomeric Silsesquioxanes)やシリコーンゴム等のシルセスキオキサン構造やシロキサン構造を有した有機ケイ素高分子化合物などが挙げられる。
また、本発明の高分子電解質組成物については、空気中あるいは酸素雰囲気下にて例えば160℃以上で加熱処理することによって力学物性を向上させることもできる。
本発明により製造されるプロトン交換膜の当量重量EW(プロトン交換基1当量あたりのプロトン交換膜の乾燥重量グラム数)には、250以上2000以下が好ましく、より好ましくは400以上1500以下、最も好ましくは500以上1200以下である。より低いEW、つまりプロトン交換容量の大きいプロトン伝導性ポリマーを用いることにより、高温低加湿条件下においても優れたプロトン伝導性を示し、燃料電池に用いた場合、運転時に高い出力を得ることができる。
本発明により製造されるプロトン交換膜の厚みは、1μm以上500μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上100μm以下、最も好ましくは5μm以上50μm以下である。
本発明により製造されるプロトン交換膜の乾湿寸法変化は、好ましくは0%以上100%以下、より好ましくは0%以上50%以下、最も好ましくは0%以上10%以下である。ここでいう乾湿寸法変化とは、25℃20RH%で1時間放置した時の寸法に対する80℃水中で1時間放置した時の寸法の変化の割合のことをいう。寸法とは、プロトン交換膜の縦方向または横方向の長さのことであり、共に上記範囲を満たすことが好ましい。
本発明のプロトン交換膜を用いて以下の如く燃料電池を組み立て、耐久性の評価を行なった。
(膜電極接合体)
本発明により得られるプロトン交換膜を固体高分子型燃料電池に用いる場合、アノードとカソード2種類の電極触媒層が接合した膜電極接合体(以下「MEA」と略称する)として使用される。電極触媒層のさらに外側に一対のガス拡散層を対向するように接合したものもMEAと呼ぶ。
電極触媒層は、触媒金属の微粒子とこれを担持した導電剤とから構成され、必要に応じて撥水剤が含まれる。電極に使用される触媒としては、水素の酸化反応および酸素による還元反応を促進する金属であれば良く、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、これらの合金等が挙げられ、その中では、主として白金が好ましく用いられる。
MEAの製造方法としては、例えば、次のような方法が行われる。まず、イオン交換樹脂をアルコールと水の混合溶液に溶解したものに、電極物質となる白金担持カーボンを分散させてペースト状にする。これをPTFEシートに一定量塗布して乾燥させる。次に、PTFEシートの塗布面を向かい合わせにして、その間に本発明のプロトン交換膜を挟み込み、100℃〜200℃で熱プレスにより転写接合してMEAを得ることができる。
(燃料電池)
上記で得られたMEA、場合によってはMEAを介して一対のガス拡散電極が対向した構造のものは、さらにバイポーラプレート、バッキングプレート等の一般的な固体高分子型燃料電池に用いる構成成分と組み合わせて固体高分子型燃料電池を構成する。
バイポーラプレートは、その表面に燃料や酸化剤等のガスを流すための溝を形成させたグラファイトまたは樹脂との複合材料、金属製のプレート等のことであり、電子を外部負荷回路へ伝達する他に、燃料や酸化剤を電極触媒近傍に供給する流路としての機能を持っている。こうしたバイポーラプレートの間にMEAを挿入して複数積み重ねることにより、燃料電池が製造される。
以上、本発明の燃料電池製造用の溶液から得られたプロトン交換膜の耐久性の評価方法について説明した。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
尚、本発明に用いられる評価法および測定法は以下のとおりである。
(プロトン伝導度測定)
膜サンプルを湿潤状態にて切り出し、厚みTを測定する。これを、幅1cm、長さ5cmの膜長さ方向の伝導度を測定する2端子式の伝導度測定セルに装着する。このセルを80℃のイオン交換水中に入れ、交流インピーダンス法により、周波数10kHzにおける実数成分の抵抗値Rを測定し、以下の式からプロトン伝導度σを導出する。
σ=L/(R×T×W)
σ:プロトン伝導度(S/cm)
T:厚み(cm)
R:抵抗値(Ω)
L(=5):膜長(cm)
W(=1):膜幅(cm)
(燃料電池評価)
(1)燃料電池の製造
まず、台紙上に塗布したガス拡散電極2枚の間にプロトン交換膜を挟み込み、180℃、圧力10MPaでホットプレスすることにより、プロトン交換膜にガス拡散電極を転写接合させてMEAを製造する。
ガス拡散電極としては、田中貴金属工業(株)製白金担持触媒TEC10E40E(商品名、白金担持率40重量%)に、パーフルオロスルホン酸ポリマー溶液SS−700x/05(商品名、旭化成(株)製、EW:720、溶媒組成(重量比):エタノール/水=50/50)を12重量%に濃縮した溶液とエタノールを添加し、混合、攪拌してインク状にしたものをPTFEシート上に塗布した後、大気雰囲気中、150℃で乾燥・固定化したものを使用する。このガス拡散電極の白金担持量は0.4 mg/cm、ポリマー担持量は0.5mg/cmである。
このMEAの両側に撥水処理したカーボンペーパーまたはカーボンクロスを配置し、評価セルに組み込んで評価装置にセットする。燃料として水素ガス、酸化剤として空気ガスを用い、セル温度100℃、0.1MPaにて単セル特性試験を行う。ガス加湿には水バブリング方式を用い、水素ガス、空気ガスともに50℃で加湿してセルへ供給する。
(2)フッ素溶出速度の測定
単セル特性試験中のアノード排ガスおよびカソード排ガスと共に排出される排水を、それぞれ所定時間捕捉回収した後、秤量する。メディトリアル(株)製ベンチトップ型pHイオンメーター920Aplus(商品名)に同フッ素複合電極9609BNionplus(商品名)を取り付け、アノード排水中およびカソード排水中のフッ素イオン濃度を測定し、以下の式からフッ素溶出速度Gを導出する。
G=(Wa×Fa+Wc×Fc)/(T×A)
G:フッ素溶出速度(μg/Hr/cm
Wa:捕捉回収したアノード排水の重量(g)
Fa:アノード排水中のフッ素イオン濃度(ppm)
Wc:捕捉回収したカソード排水の重量(g)
Fc:カソード排水中のフッ素イオン濃度(ppm)
T:排水を捕捉回収した時間(Hr)
A:MEAの電極面積(cm
(3)クロスリーク量の測定
単セル特性試験中のカソード排ガスの一部を、ジーエルサイエンス製マイクロガスクロマトグラフMicro GC CP−4900(商品名)に導入し、カソード排ガス中の水素ガス濃度を測定し、以下の式から水素ガス透過率を導出する。
L=(X×V×T)×(5−U/100)/(3×A×P)×10−8
L:水素ガス透過率(ml×cm/cm/sec/Pa)
X:カソード排ガス中の水素ガス濃度(ppm)
V:カソードガス流量(ml/min)
T:プロトン交換膜の膜厚(cm)
U:カソードガス利用率(%)
A:プロトン交換膜の水素透過面積(cm
P:カソード−アノード間の水素分圧差(Pa)
短セル特性試験中の水素ガス透過率が1.1×10−11 (ml×cm/cm/sec/Pa)以上になった時点をセル寿命とし、そこで試験を終了した。
(4)引っ張り弾性率の測定
プロトン交換膜を幅5mm、長さ40〜50mmに切り出したものをサンプルとする。これを80℃水中に30分以上浸漬させてから、80℃恒温水槽付引っ張り試験機(島津製作所:AGS−1kNG(商品名))にサンプルをチャック間20mmとなるように素早くセットする。サンプルを恒温水槽に浸漬してから3分後に引っ張り速度10%/秒で引っ張り試験を行い、5%伸び時点での引っ張り強度から引っ張り弾性率(N/cm)を求める。
[実施例1]
テトラフルオロエチレンとCF=CFO(CF−SOFとから得られた前駆体ポリマー(MI:3.0、アルカリ加水分解・酸処理後のEw:730)90重量部と、ポリフェニレンスルフィド(溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重196N/cm、L/D(L:オリフィス長、D:オリフィス内径)=10/1で6分間保持した後測定した値。)が50Pa・s、塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%、−SX基量が25μmol/g)7重量部と、ポリスルホン(シグマアルドリッチジャパン(株)製、数平均分子量26,000)3重量部と、エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂N−660(商品名))1重量部とを、温度280〜310℃、スクリュー回転数200rpmに設定した二軸押出機(ZSK−40(商品名);WERNER&PFLEIDERER社製、ドイツ国)を用い、押出機の第一原料供給口より供給して溶融混練した後、Tダイ押出機を用いて溶融押出して50μm厚のフィルムに成形した。このフィルムを、水酸化カリウム(15重量%)とジメチルスルホキシド(30重量%)を溶解した水溶液中に、60℃で4時間接触させて、アルカリ加水分解処理を行った。その後、60℃水中に4時間浸漬した。次に60℃の2N塩酸水溶液に3時間浸漬した後、イオン交換水で水洗、乾燥してプロトン交換膜(Ew:795)を得た。
このプロトン交換膜のプロトン伝導度は0.24(S/cm)と高く、燃料電池評価を行ったところ、開始時から200時間までの排水中のフッ素溶出速度の平均値は0.013(μg/Hr/cm)と非常に低い値を示した。セル寿命は1000時間を越え、非常に優れた耐久性を示すことが判明した。
しかも、このプロトン交換膜の引っ張り弾性率は、テトラフルオロエチレンとCF=CFO(CF−SOFとから得られた前駆体ポリマーを単独で用いた比較例1のプロトン交換膜の1.4倍以上、この膜の成分からエポキシ樹脂を除いた組成である比較例2のプロトン交換膜の1.6倍以上強く、耐久性だけでなく、膜強度も向上していることが判明した。
[実施例2]
実施例1の組成比を、テトラフルオロエチレンとCF=CFO(CF−SOFとから得られた前駆体ポリマー80重量部と、ポリフェニレンスルフィド15重量部と、ポリスルホン5重量部と、エポキシ樹脂5重量部とに変更した。
このプロトン交換膜のプロトン伝導度は0.21(S/cm)と高く、燃料電池評価を行ったところ、開始時から200時間までの排水中のフッ素溶出速度の平均値は0.016(μg/Hr/cm)と非常に低い値を示した。セル寿命は1000時間を越え、非常に優れた耐久性を示すことが判明した。
しかも、このプロトン交換膜の引っ張り弾性率は、テトラフルオロエチレンとCF=CFO(CF−SOFとから得られた前駆体ポリマーを単独で用いた比較例1のプロトン交換膜の1.3倍以上、この膜の成分からエポキシ樹脂を除いた組成である比較例3のプロトン交換膜の約1.7倍強く、耐久性だけでなく、膜強度も向上していることが判明した。
[比較例1]
テトラフルオロエチレンとCF=CFO(CF−SOFとから得られた前駆体ポリマー(MI:3.0、アルカリ加水分解・酸処理後のEw:730)を単独で用いた以外は実施例1と同様にして、プロトン交換膜(EW:730, MI:3.0)を得た。
このプロトン交換膜のプロトン伝導度は0.23(S/cm)と高かった。このプロトン交換膜の燃料電池評価を行ったところ、開始時からセル寿命までの排水中のフッ素溶出速度の平均値が0.506(μg/Hr/cm)と非常に高く、しかもセル寿命は200時間未満で、十分な耐久性が得られなかった。
[比較例2]
実施例1の組成比を、テトラフルオロエチレンとCF=CFO(CF−SOFとから得られた前駆体ポリマー90重量部と、ポリフェニレンスルフィド7重量部と、ポリスルホン3重量部と、エポキシ樹脂0重量部とに変更した。
このプロトン交換膜のプロトン伝導度は0.23(S/cm)と高く、燃料電池評価を行ったところ、開始時から200時間までの排水中のフッ素溶出速度の平均値は0.018(μg/Hr/cm)と非常に低い値を示した。セル寿命は1000時間を越え、非常に優れた耐久性を示すことが判明した。
しかし、このプロトン交換膜の引っ張り弾性率は、テトラフルオロエチレンとCF=CFO(CF−SOFとから得られた前駆体ポリマーを単独で用いた比較例1のプロトン交換膜の0.8倍程度で、耐久性は向上しているが、膜強度は低下していることが判明した。
[比較例3]
実施例2の組成比を、テトラフルオロエチレンとCF=CFO(CF−SOFとから得られた前駆体ポリマー80重量部と、ポリフェニレンスルフィド15重量部と、ポリスルホン5重量部と、エポキシ樹脂0重量部とに変更した。
このプロトン交換膜のプロトン伝導度は0.21(S/cm)と高く、燃料電池評価を行ったところ、開始時から200時間までの排水中のフッ素溶出速度の平均値は0.021(μg/Hr/cm)と非常に低い値を示した。セル寿命は1000時間を越え、非常に優れた耐久性を示すことが判明した。
しかし、このプロトン交換膜の引っ張り弾性率は、テトラフルオロエチレンとCF=CFO(CF−SOFとから得られた前駆体ポリマーを単独で用いた比較例1のプロトン交換膜の0.8倍程度で、耐久性は向上しているが、膜強度は低下していることが判明した。
Figure 0004799123
本発明の高分子電解質組成物から得られるプロトン交換膜は、高温下でも高耐久性を有するプロトン交換膜であり、イオン交換膜および燃料電池の分野で好適に用いられる。本発明により得られるプロトン交換膜は、ダイレクトメタノール型燃料電池を含めた各種燃料電池、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサー、ガスセンサー等に用いることが可能である。

Claims (7)

  1. イオン交換基を有する高分子化合物(A)と、ポリフェニレンスルフィド樹脂(B)と、ポリスルホン樹脂(C)と、エポキシ基含有化合物(D)とからなる高分子電解質組成物であって、上記エポキシ基含有化合物(D)がエポキシ基を有する不飽和モノマーの単独重合体若しくは共重合体(E)又はエポキシ樹脂(F)である高分子電解質組成物
  2. エポキシ基含有化合物(D)がエポキシ樹脂(F)であるときに、高分子電解質組成物中のポリスルホン樹脂(C)とエポキシ樹脂(F)が反応してなるエポキシ変性ポリスルホン(G)を少なくとも含有している請求項1に記載の高分子電解質組成物。
  3. イオン交換基を有する高分子化合物(A)が、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物である請求項1又は2に記載の高分子電解質組成物。
  4. イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物が、下記一般式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする請求項に記載の高分子電解質組成物。
    -[CF2CX1X2]a-[CF2-CF(-O-(CF2-CF(CF2X3))b-Oc-(CFR1)d-(CFR2)e-(CF2)f-X4)]g- (1)
    (式中、X,XおよびXはそれぞれ独立にハロゲン元素または炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1、bは0以上8以下の整数、cは、0または1であり、d、eおよびfはそれぞれ独立に0以上6以下の整数(ただし、d+e+fは0に等しくない)、RおよびRはそれぞれ独立にハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基であり、Xは、COOZ、SOZ、PO、POHZ(Zは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アミン類(NH、NHR、NH、NHR、NR(Rはアルキル基、又はアレーン基))
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の高分子電解質組成物からなるプロトン交換膜。
  6. 請求項に記載のプロトン交換膜を有する膜電極接合体。
  7. 請求項に記載の膜電極接合体を有する固体高分子型燃料電池。
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