JP4843910B2 - 高分子電解質材、ならびにそれを用いた高分子電解質膜、膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池 - Google Patents
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Description
「ポリマー」(Polymer), 1987, vol. 28, 1009. 「ジャーナル オブ メンブレン サイエンス」 (Journal of Membrane Science), 83 (1993) 211-220.
本発明は、上記課題を解決するため次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の高分子電解質材は、少なくともイオン性基を有する炭化水素系ポリマーとビニル重合系ポリマーからなる高分子電解質材であって、該高分子電解質材の含水状態のヘーズが30%以下であり、該高分子電解質材の50℃のN−メチルピロリドンに5時間浸漬後の重量減が30重量%以下であり、前記ビニル重合系ポリマーが架橋ポリマーであり、かつメチレンビス(メタ)アクリルアミドおよび下記一般式(F)で示されるフルオレン系ジ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種のポリマーであることを特徴とするものである。また、本発明の高分子電解質膜、膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池は、かかる高分子電解質材を用いて構成されていることを特徴とするものである。
本発明は、前記課題、つまり高プロトン伝導度と低燃料クロスオーバーを両立し、耐溶剤性に優れる上に、高分子電解質型燃料電池としたときに高出力、高エネルギー密度を達成することができる高分子電解質材について、鋭意検討し、イオン性基を有する炭化水素系ポリマーとビニル重合系ポリマーとを少なくとも含んで構成されてなる高分子電解質材において、該高分子電解質材が、含水状態で透明に近く、かつ温溶媒中で不溶性を示すものである場合、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
本発明の高分子電解質材は、少なくともイオン性基を有する炭化水素系ポリマーとビニル重合系ポリマーからなり、その高分子電解質材の含水状態におけるヘーズが30%以下であり、該高分子電解質材の50℃のN−メチルピロリドンに5時間浸漬後の重量減が30重量%以下であり、前記ビニル重合系ポリマーが架橋ポリマーであり、かつメチレンビス(メタ)アクリルアミドおよび下記一般式(F)で示されるフルオレン系ジ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種のポリマーであることを特徴とするものである。
これらイオン性基を有するパーフルオロ系ポリマーは、ポリマー中の疎水性部分と親水性部分が明確な相構造を形成するために、含水状態ではポリマー中にクラスターと呼ばれる水のチャンネルが形成される。この水チャンネル中はメタノールなどの燃料の移動が容易であり、燃料クロスオーバー低減が望めない。
かかる本発明の高分子電解質材は、製造コストおよび燃料クロスオーバー抑制効果の点から、耐溶剤性に優れる、すわわち50℃のN−メチルピロリドンに5時間浸漬後の重量減が30重量%以下であることが必要である。さらに好ましくは、重量減が20重量%以下である。重量減が30%を越える場合は、燃料クロスオーバー抑制効果が不十分であったり、高分子電解質膜に直接、触媒ペーストを塗工して膜電極複合体を作製することが困難となり、製造コストが増大するだけでなく、触媒層との界面抵抗が大きくなり、十分な発電特性が得られない場合がある。
(E−1)ビニル重合系モノマーから得られる高分子
例えばアクリル酸、メタアクリル酸、ビニル安息香酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメタクリレートホスフェートなどに代表されるイオン性基を有するビニル重合系モノマーから得られる高分子が挙げられる。このようなイオン性基を有するビニル重合系モノマーとイオン性基を持たないモノマーを共重合させた高分子も好適である。
(E−2)アニオン性基を有し主鎖に芳香環を有するポリマー
主鎖に芳香環を有するポリマー(以下、芳香族炭化水素系ポリマーと記載する場合がある)であって、イオン性基を有するものである。
で示される繰返し単位を有する芳香族炭化水素系ポリマー、および下記一般式(P3)
で示される繰返し単位を有するポリイミドから選ばれることが好ましい。
本発明でいうビニル重合系ポリマーとは、ビニル重合系モノマーから得られるポリマーのことを意味する。かかるビニル重合系ポリマーは、耐溶剤性の点から架橋ポリマーであるのが必要である。
次に、本発明に使用されるビニル重合系ポリマーについて具体的に説明する。本発明に使用されるビニル重合系ポリマーは、使用されるイオン性基を有する炭化水素系ポリマーと実質的に均一に混和し、得られる高分子電解質材のヘーズが30%以下であることが必要である。プロトン伝導性を大きく損なうことなく、燃料クロスオーバー抑制効果があり、機械強度および耐溶剤性に優れたポリマーをより好ましく用いることができる。
かかるビニル重合系ポリマーを得るために使用するビニル重合系モノマーの具体的な例としては、原料コストおよび工業的入手の容易さから、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−メチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系化合物、が挙げられる。ビニル重合系ポリマーは、イオン性基を有する炭化水素系ポリマーとの相溶性の点から、(メタ)アクリル酸エステル系化合物および(メタ)アクリルアミド系化合物から得られる(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー、(メタ)アクリルアミド系ポリマーであることが必要である。
ビニル重合系モノマーはイオン性基を有する炭化水素系ポリマーとの相溶性の点から、(メタ)アクリル酸エステル系化合物および(メタ)アクリルアミド系化合物であることが必要である。相溶性および燃料クロスオーバー抑制効果の点から、さらにメチレンビス(メタ)アクリルアミドおよび下記一般式(F)で示されるフルオレン系ジ(メタ)アクリレートであることが必要である。
ビニル重合系モノマーから得られるポリマーを製造する場合には、モノマー組成物には、重合をしやすくするためにパーオキサイド系やアゾ系に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤が添加されるのが一般的である。
該ビニル重合系ポリマーは、燃料クロスオーバーを抑制することに有効である必要があることから、40℃の10Mメタノール水溶液に対して不溶であることが好ましい。該ビニル重合系ポリマーは架橋ポリマーであることが必要である。不溶であるとは、高分子電解質膜を40℃の10Mメタノール水溶液に8時間浸漬した後、濾紙で濾過し、濾液から検出されるビニル重合系ポリマーの量が、高分子電解質膜全体に含まれるビニル重合系ポリマーの量の5重量%以下であることを意味する。なお、ここでは燃料としてメタノール水溶液を想定したが、メタノール水溶液に対する挙動は他の燃料に対しても共通しており、一般性を有する。
検体となる膜状の試料を25℃の純水に24時間浸漬し、40℃で24時間真空乾燥した後、元素分析により測定した。炭素、水素、窒素の分析は全自動元素分析装置varioEL、硫黄の分析はフラスコ燃焼法・酢酸バリウム滴定で実施した。ポリマーの組成比から単位グラムあたりのスルホン酸基密度(mmol/g)を算出した。
膜状の試料を25℃の30重量%メタノール水溶液に24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度を測定した。
膜状の試料を30重量%メタノール水溶液に24時間浸漬した後、20℃において30重量%メタノール水溶液を用いて測定した。
試料としては、含水状態、すなわち25℃で、1000倍重量の純水中に24時間浸漬した高分子電解質膜を使用し、表面の水滴を拭き取った後、全自動直読ヘーズコンピューター(スガ試験機(株)社製:HGM−2DP)を使用し、曇価(Hz%)を測定した。
検体となる高分子電解質材(約0.1g)を純水で十分に洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して重量を測定した。。高分子電解質材を1000倍重量のN−メチルピロリドンに浸漬し、密閉容器中、撹拌しながら50℃、5時間加熱した。次に、アドバンテック社製濾紙(No.2)を用いて濾過を行った。濾過時に1000倍重量の同一溶剤で濾紙と残渣を洗浄し、十分に溶出物を溶剤中に溶出させた。残渣を40℃で24時間真空乾燥して重量を測定することにより、重量減を算出した。
ポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC−8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒)にて、流量0.2mL/minで測定し、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。
下記式(G1)で表されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの合成
下記式(G2)で表されるポリマーの合成
炭酸カリウム6.9g、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール14.1g、および4,4'−ジフルオロベンゾフェノン4.4g、および上記合成例1で得たジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン8.4gを用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、190℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行い、上記式(G2)で示されるポリマーを得た。得られたポリマーのプロトン置換後のスルホン酸基密度は1.7mmol/g、重量平均分子量は22万であった。
N−メチルピロリドン(NMP)に溶解させた合成例2で得た前記式(G2)のポリマーを溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液10gと、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(東京化成試薬)1g、AIBN1mgを混合し、1時間室温で攪拌した。混合溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて30分予備乾燥後、窒素下200℃で10分間熱処理し、高分子電解質膜を得た。1N塩酸に24時間浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄した。
N,N’−メチレンビスアクリルアミド(東京化成試薬)1gを下記式(G3)で示されるフルオレン系ビスアクリレート(大阪ガスケミカル社製)1gに変えた以外は実施例1に記載の方法で膜の作製を行った。
市販のナフィオン(R)117膜(デュポン社製)を用い、イオン伝導度、MCOおよびヘーズ、N−メチルピロリドンに対する重量減を評価した。ナフィオン117膜は100℃の5%過酸化水素水中にて30分、続いて100℃の5%希硫酸中にて30分浸漬した後、100℃の脱イオン水でよく洗浄した。評価結果は表1にまとめた。
スルホン化PPO(S−PPO)の合成はPPOとして三菱ガス化学社製YPX−100Lを用い、J. Appl. Polym. Sci., 29, 4017 (1984).記載の方法で、スルホン化PPO/PVDFのブレンド高分子電解質材を作製した。
合成例2で得たポリマー(Na型)をN−メチルピロリドンを溶媒とする25重量%溶液とし、当該溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4時間乾燥して溶媒を除去した。さらに、窒素ガス雰囲気下、200〜325℃まで1時間かけて昇温し、325℃で10分間加熱する条件で熱処理した後、放冷した。1N塩酸に1日間以上浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純水に1日間以上浸漬して充分洗浄した。得られた膜は膜厚70μmであり、淡黄色透明の柔軟な膜であった。
実施例3および比較例4
実施例1の高分子電解質膜を用いて、次の方法により高分子電解質型燃料電池を作製し評価した。また、比較例1の市販のナフィオン117膜も同様に高分子電解質型燃料電池を作製し評価した。
Claims (13)
- 該高分子電解質材が、イオン性基を有する炭化水素系ポリマーとビニル重合系ポリマーの合計量に対し、該ビニル重合系ポリマーを20〜80重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質材。
- 前記イオン性基を有する炭化水素系ポリマーが、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基から選ばれる少なくとも1種のイオン性基を有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子電解質材。
- 前記イオン性基を有する炭化水素系ポリマーが、少なくともスルホン酸基を有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子電解質材。
- 請求項4において、該イオン性基を有する炭化水素系ポリマーのスルホン酸基密度が0.5〜3.0mmol/gであることを特徴とする高分子電解質材。
- 前記イオン性基を有する炭化水素系ポリマーが非架橋ポリマーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高分子電解質材。
- 前記イオン性基を有する炭化水素系ポリマーが、スルホニル基、オキシ基、チオ基、カルボニル基、ホスフィンオキシド基、ホスホン酸エステル基、エステル基、アミド基、イミド基およびホスファゼン基から選ばれる少なくとも1種の基を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高分子電解質材。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質材を用いて構成されていることを特徴とする高分子電解質膜。
- 少なくともイオン性基を有する炭化水素系ポリマーと、ビニル重合系モノマーからなる混合物の塗液を、流延後、該ビニル重合系モノマーを重合せしめる工程を経ることにより、請求項9に記載の高分子電解質膜を製造することを特徴とする高分子電解質膜の製造法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質材あるいは請求項9または10に記載の高分子電解質膜を用いて構成されていることを特徴とする膜電極複合体。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質材あるいは請求項9または10に記載の高分子電解質膜を用いて構成されていることを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
- 該高分子電解質型燃料電池が、炭素数1〜6の有機化合物、およびこれらと水の混合物から選ばれた少なくとも1種を燃料とする直接型燃料電池であることを特徴とする請求項12に記載の高分子電解質型燃料電池。
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