JP2006219580A - イオン性基を有するポリマー、高分子電解質材料、高分子電解質部品、膜電極複合体、および高分子電解質型燃料電池 - Google Patents

イオン性基を有するポリマー、高分子電解質材料、高分子電解質部品、膜電極複合体、および高分子電解質型燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】プロトン伝導性、燃料遮断性、燃料による膨潤への耐性、および製膜溶媒への溶解性のいずれにも優れたイオン性基を有するポリマーならびに高分子電解質材料を提供する。
【解決手段】下記(A1)、(A2)および(A3)から選ばれた少なくとも2つのビスフェノールから得られる構造を有し、スルホン酸基、スルホンイミド基等のイオン性基を有するポリマー。
(A1)フルオレン構造の結合基を有するビスフェノール
(A2)ジフェニルメタン構造の結合基を有するビスフェノール
(A3)フェノールフタレイン構造の結合基を有するビスフェノール
【選択図】 なし

Description

本発明は、プロトン伝導性、燃料遮断性、燃料による膨潤への耐性、および製膜溶媒への溶解性のいずれにも優れたイオン性基を有するポリマーならびに高分子電解質材料、さらにはそれらからなる高分子電解質部品、膜電極複合体、および高分子電解質型燃料電池に関するものである。
イオン性基を有するポリマーは、例えば、医療材料用途、ろ過用途、濃縮用途、イオン交換樹脂用途、各種構造材用途、コーティング材用途、電気化学用途などに使用されている。
電気化学用途としては、イオン性基を有するポリマーは、高分子電解質材料、高分子電解質部品または膜電極複合体としてキャパシター、燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置およびクロロアルカリ電解装置等に使用されている。
これらの中で燃料電池は、排出物が少なく、かつエネルギー効率が高く、環境への負担の低い発電装置である。このため、近年の地球環境保護への高まりの中で注目される技術である。燃料電池は、比較的小規模の分散型発電施設や、自動車、船舶などの移動体の発電装置として、将来的にも期待されている発電装置である。また、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、あるいは二次電池とのハイブリッド化により、携帯電話やパソコンなどの小型移動機器への搭載も期待されている。
高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell。以下、PEFCとも記載する。)においては、水素ガスを燃料とする従来型のものに加えて、メタノールなどの燃料を水素ガスに改質することなく直接供給する直接型燃料電池も注目されている。直接型燃料電池は、従来のPEFCに比べて出力が低いものの、燃料が液体で改質器を用いないために、エネルギー密度が高くなり、一充填あたりの発電時間が長時間になるという利点がある。
直接型燃料電池用の高分子電解質材料においては、水素ガスを燃料とする従来のPEFC用の高分子電解質材料に要求される性能に加えて、燃料の透過抑制も要求される。特に高分子電解質材料を用いた高分子電解質膜中の燃料透過は、燃料クロスオーバー、ケミカルショートとも呼ばれ、電池出力およびエネルギー容量が低下するという問題を引き起こす。
また、直接型燃料電池においては、水素ガスを燃料とする従来のPEFCとは異なる性能が要求される。すなわち、直接型燃料電池においては、アノード電極ではメタノール水溶液などの燃料がアノード電極の触媒層で反応してプロトン、電子、二酸化炭素を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは高分子電解質に伝導し、二酸化炭素は電極基材を通過して系外へ放出される。このため、従来のPEFCのアノード電極の要求特性に加えて、メタノール水溶液などの燃料透過性や二酸化炭素の排出性も要求される。さらに、直接型燃料電池のカソード電極では、従来のPEFCと同様な反応に加えて、電解質膜を透過したメタノールなどの燃料と酸素あるいは空気などの酸化ガスがカソード電極の触媒層で、二酸化炭素と水を生成する反応も起こる。このため、従来のPEFCよりも生成水が多くなるため、さらに効率よく水を排出することが必要となる。
従来、高分子電解質膜として“ナフィオン”(デュポン社製、商品名)に代表されるパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマー膜が使用されてきた。しかし、これらのパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマー膜は直接型燃料電池においてはメタノールなどの燃料透過量が大きく、電池出力やエネルギー容量が十分でないという問題があった。またパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーは、フッ素を使用するという点から価格も非常に高いものである。
そこで、非フッ素系のプロトン伝導体の高分子電解質が市場から望まれて、非フッ素系ポリマーをベースとした高分子電解質膜についても既にいくつかの取り組みがなされている。
また、例えばフルオレン構造やテトラフェニルメタン構造を含むスルホン化されたポリエーテル系共重合体からなる高分子電解質材料が、プロトン伝導性と燃料クロスオーバーのバランスに優れることが特許文献1に示されている。
さらに特許文献2にはフルオレン構造やテトラフェニルメタン構造ならびにパーフルオロフェニレン構造を含むスルホン化されたポリエーテル系共重合体からなる高分子電解質材料が示され、特許文献3にはフルオレン構造やテトラフェニルメタン構造ならびにシアノフェニレン構造を含むスルホン化されたポリエーテル系共重合体からなる高分子電解質材料が示されている。
これら従来の技術においては、得られる高分子電解質材料のプロトン伝導性、燃料遮断性、燃料による膨潤への耐性、および製膜溶媒への溶解性のいずれか1つ以上が不十分であるために、高分子電解質部品として高い性能を発揮することができなかったり、高温、高濃度の液体燃料で膨潤あるいは溶解して性能が低下したり、製膜溶媒に難溶で均一な製膜ができなかったりという問題があった。
国際公開WO2004/079844号パンフレット 特開2003-147076号公報 特開2004-244437号公報
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、プロトン伝導性、燃料遮断性、燃料による膨潤への耐性、および製膜溶媒への溶解性のいずれにも優れたイオン性基を有するポリマーならびに高分子電解質材料を提供し、さらにはそれらからなる高分子電解質部品、膜電極複合体、によって高効率の高分子電解質型燃料電池を提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、「下記式(A1)、(A2)および(A3)から選ばれた少なくとも2つの基を含有することを特徴とするイオン性基を有するポリマー。
Figure 2006219580
[式(A1)〜(A3)中、Qは直接結合、メチレン基、カルボニル基、OおよびSから選ばれた置換基を表す。QはH、アルキル基およびアリール基から選ばれた置換基を表す。Qはカルボニル基およびスルホニル基から選ばれた置換基を表す。QはO、SおよびN−Rから選ばれた置換基を表す。RはH、アルキル基およびアリール基から選ばれた置換基を表す。式(A1)〜(A3)で表される基は任意に置換されていてもよい。]」であり、ならびにその好ましい態様である。さらには該イオン性基を有するポリマーからなる高分子電解質材料、高分子電解質部品、膜電極複合体ならびに高分子電解質型燃料電池である。
本発明によれば、プロトン伝導性、燃料遮断性、燃料による膨潤への耐性、および製膜溶媒への溶解性のいずれにも優れたイオン性基を有するポリマーならびに高分子電解質材料が提供され、さらにはそれらからなる高分子電解質部品、膜電極複合体、によって高効率の高分子電解質型燃料電池が提供される。
本発明のイオン性基を有するポリマーは、下記式(A1)、(A2)および(A3)から選ばれた少なくとも2つの基を含有することを特徴とする。
Figure 2006219580
[式(A1)〜(A3)中、Qは直接結合、メチレン基、カルボニル基、OおよびSから選ばれた置換基を表す。QはH、アルキル基およびアリール基から選ばれた置換基を表す。Qはカルボニル基およびスルホニル基から選ばれた置換基を表す。QはO、SおよびN−Rから選ばれた置換基を表す。RはH、アルキル基およびアリール基から選ばれた置換基を表す。式(A1)〜(A3)で表される基は任意に置換されていてもよい。]
本発明のイオン性基を有するポリマーは、式(A1)の基を含有し、さらに式(A2)および式(A3)から選ばれた少なくとも1つの基を含有することが、燃料遮断性、燃料による膨潤への耐性、および製膜溶媒への溶解性のいずれにも優れた特性を得るという観点で、より好ましい。さらに好ましくは式(A1)の基と式(A2)の基を両方を含有することである。
式(A1)において、Qは直接結合、メチレン基、カルボニル基、OおよびSから選ばれた置換基を表すが、最も好ましくは直接結合である。
式(A2)において、QはH、アルキル基およびアリール基から選ばれた置換基を表すが、好ましくはH、メチル基、フェニル基であり、最も好ましくはフェニル基である。
式(A3)において、Qはカルボニル基およびスルホニル基から選ばれた置換基を表すが、好ましくはカルボニル基である。QはO、SおよびN−Rから選ばれた置換基を表すが、好ましくはOおよびN−Rであり、最も好ましくはOである。RはH、アルキル基およびアリール基から選ばれた置換基を表すが、好ましくはHまたは炭素数1〜3のアルキル基である。
式(A1)〜(A3)で表される基は任意に置換されていてもよい。その場合の好ましい置換基は炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、ハロゲン基およびイオン性基であり、任意の種類の置換基により任意の数、置換されてよい。
本発明のイオン性基を有するポリマーは、下記式(P1)〜(P3)から選ばれた少なくとも2つの繰り返し単位を含む骨格であることが好ましい。かかる骨格は耐加水分解性に優れ、各種機械特性に優れた強靱なポリマーが得られるからである。
Figure 2006219580
[式(P1)〜(P3)中、−O−Z11−O−、−O−Z12−O−および−O−Z13−O−で表される基は、それぞれ前記式(A1)、(A2)および(A3)である。Zは電子吸引性基を有する芳香環を含む2価の基を表す。Zは任意に置換されていてもよい。
11、Z12およびZ13はそれぞれ下記式(Z1−A1)、(Z1−A2)および(Z1−A3)で表される基である。
Figure 2006219580
[式(Z1−A1)〜(Z1−A3)中、Q11は直接結合、メチレン基、カルボニル基、OおよびSから選ばれた置換基を表す。Q12はH、アルキル基およびアリール基から選ばれた置換基を表す。Q13はカルボニル基およびスルホニル基から選ばれた置換基を表す。Q14はO、SおよびN−R11から選ばれた置換基を表す。R11はH、アルキル基およびアリール基から選ばれた置換基を表す。]
式(Z1−A1)で表される基の中で、特に好ましいものは下記式(Z1−A1−1)および(Z1−A1−2)で表される基であり、最も好ましいものは式(Z1−A1−1)で表される基である。
Figure 2006219580
式(Z1−A2)で表される基の中で、特に好ましいものは下記式(Z1−A2−1)〜(Z1−A2−3)で表される基であり、最も好ましいものは式(Z1−A2−1)で表される基である。
Figure 2006219580
式(Z1−A3)で表される基の中で、特に好ましいものは下記式(Z1−A3−1)〜(Z1−A3−4)で表される基であり、最も好ましいものは式(Z1−A3−1)で表される基である。
Figure 2006219580
式(P1)中、Zは電子吸引性基を有する芳香環を含む2価の基を表す。
ここで電子吸引性基として好ましいものは、カルボニル基、スルホニル基、ホスフィンオキシド基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボン酸基およびホスホン酸基である。
の好ましい具体例は下記式(B1)および下記式(C1)〜(C4)で表される基である。
Figure 2006219580
[式(B1)中、Qはカルボニル基、スルホニル基および下記式(Q5−1)から選ばれた置換基を表す。
Figure 2006219580
はアルキル基またはアリール基を表す。式(B1)で表される基は任意に置換されていてもよい。]
Figure 2006219580
[式(C1)〜(C4)中、a〜dはそれぞれ1〜4の整数を表す。式(C1)〜(C4)で表される基は任意に置換されていてもよい。]
式(B1)で表される基の中で、特に好ましいものは下記式(B1−1)〜(B1−4)で表される基であり、最も好ましいものは式(B1−1)で表される基である。
Figure 2006219580
さらに式(B1)で表される基がイオン性基を有する場合は、プロトン伝導性、燃料遮断性、燃料による膨潤への耐性、および製膜溶媒への溶解性のバランスにおいて最も好ましい特性が得られる。中でもイオン性基はスルホン酸基であることが好ましい。その場合の式(B1)で表される基の例は、下記式(B1−1s)、(B1−2s)および(B1−3s)で表される基である。
Figure 2006219580
[式中、XはHまたは任意のカチオンを表す。]
式(C1)、(C2)、(C3)および(C4)で表される基の中で、燃料による膨潤への耐性、および製膜溶媒への溶解性のバランスに優れる点で特に好ましいものはそれぞれ下記式(C1−1)、(C2−1)、(C3−1)および(C4−1)で表される基である。
Figure 2006219580
式(P1)〜(P3)におけるZ11、Z12、Z13およびZは任意に置換されていてもよいが、その場合の好ましい置換基は炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、ハロゲン基およびイオン性基である。
式(P1)〜(P3)で表される繰り返し単位を含む骨格のポリマーは、例えば下記の方法で得ることができる。すなわち、HO−Z−OH〔ZはZ11、Z12またはZ13を表す。〕で表される芳香族ヒドロキシ化合物類および/またはその塩と、Y−Z−Y〔YはFまたはClを表す。〕で表される芳香族ハライド類を、高温下で縮合重合する方法である。縮合重合においては必要に応じて炭酸カリウムなどの脱酸剤を用いることができる。また、通常はジフェニルスルホン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノンなどの非プロトン性溶媒を用いることができる。縮合反応に際して水が発生する場合にはトルエンなどの共沸溶媒を加え、共沸により水を除去することも好ましく行われる。反応温度は100〜300℃程度であり、反応時間は1〜72時間程度である。
本発明のイオン性基を有するポリマーは、さらに下記式(P4)の繰り返し単位を含むことも好ましい。
Figure 2006219580
[式(P4)中、Z14は芳香環を含む2価の基である。Zは電子吸引性基を有する芳香環を含む2価の基を表す。Z14およびZは任意に置換されていてもよい。]
式(P4)の繰り返し単位を含むことにより、溶解性や機械物性をより良好にすることができる。Z14で表される基として好ましいのは下記式(Z1−1)〜(Z1−12)で表される基である。
Figure 2006219580
本発明のイオン性基を有するポリマーのイオン性基は、負電荷を有する原子団が好ましく、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基( −SO(OH) )、硫酸基( −OSO(OH) )、スルホンイミド基( −SONHSOR(Rは有機基を表す。) )、ホスホン酸基( −PO(OH) )、リン酸基( −OPO(OH) )、カルボン酸基( −CO(OH) )、およびこれらの塩等を好ましく採用することができる。これらのイオン性基は前記ポリマー中に2種類以上含ませることができ、2種以上組み合わせることにより好ましくなる場合がある。組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点からスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基がより好ましく、耐加水分解性の点からスルホン酸基が最も好ましい。
本発明のイオン性基を有するポリマーの製造において、イオン性基を導入する方法は、イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法と、高分子反応でイオン性基を導入する方法が挙げられる。
イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法としては、繰り返し単位中にイオン性基を有したモノマーを用いれば良く、必要により適当な保護基を導入して重合後脱保護基を行えばよい。かかる方法は例えばJournal of Membrane Science,197(2002) 231-242 に記載がある。この方法はポリマーのイオン交換容量の制御が容易であり、工業的にも適用が容易であり、非常に好ましい。
次に、高分子反応でイオン性基を導入する方法について例を挙げて説明すると、芳香族系高分子へのホスホン酸基の導入は、例えばPolymer Preprints, Japan , 51, 750 (2002) 等に記載の方法によって可能である。芳香族系高分子へのリン酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族系高分子のリン酸エステル化によって可能である。芳香族系高分子へのカルボン酸基の導入は、例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基を有する芳香族系高分子を酸化することによって可能である。芳香族系高分子への硫酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族系高分子の硫酸エステル化によって可能である。芳香族系高分子をスルホン化する方法、すなわちスルホン酸基を導入する方法としては、たとえば特開平2−16126号公報あるいは特開平2−208322号公報等に記載の方法が公知である。具体的には、例えば、芳香族系高分子をクロロホルム等の溶媒中でクロロスルホン酸のようなスルホン化剤と反応させたり、濃硫酸や発煙硫酸中で反応することによりスルホン化することができる。スルホン化剤には芳香族系高分子をスルホン化するものであれば特に制限はなく、上記以外にも三酸化硫黄等を使用することができる。この方法により芳香族系高分子をスルホン化する場合には、スルホン化の度合いはスルホン化剤の使用量、反応温度および反応時間により、容易に制御できる。芳香族系高分子へのスルホンイミド基の導入は、例えばスルホン酸基とスルホンアミド基を反応させる方法によって可能である。
本発明のイオン性基を有するポリマーのイオン性基の含有量はイオン交換容量で示すことができる。本発明のイオン性基を有するポリマーにおけるイオン交換容量は、プロトン伝導性および燃料による膨潤への耐性の点から0.01〜3.5meq/gであることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜2.5meq/gである。イオン交換容量が、0.01meq/gより低いと、伝導度が低いため出力性能が低下することがあり、3.0meq/gより高いと高分子電解質膜として使用する際に、十分な燃料による膨潤への耐性および含水時の機械的強度が得られないことがあるのでそれぞれ好ましくない。
ここで、イオン交換容量とは乾燥したイオン性基を有するポリマーの単位グラム当たりに導入されたスルホン酸基のモル量である。本発明においてはイオン交換容量は滴定により特定する。
イオン性基がスルホン酸基の場合の滴定の手順は下記のとおりである。測定は3回以上行ってその平均をとるものとする。なおスルホン酸基以外のイオン性基についてもそれぞれ公知の滴定方法が適用できる。
(1) 試料をミルにより粉砕し、粒径を揃えるため、目50メッシュの網ふるいにかけ、ふるいを通過したものを測定試料とする。
(2) サンプル管(蓋付き)を精密天秤で秤量する。
(3) 前記(1)の試料 約0.1gをサンプル管に入れ、40℃で16時間、真空乾燥する。
(4) 試料入りのサンプル管を秤量し、試料の乾燥重量を求める。
(5) 塩化ナトリウムを30重量%メタノール水溶液に溶かし、飽和食塩溶液を調製する。
(6) 試料に前記(5)の飽和食塩溶液を25mL加え、24時間撹拌してイオン交換する。
(7) 生じた塩酸を0.02mol/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液(0.1体積%)を2滴加え、薄い赤紫色になった点を終点とする。
(8) イオン交換容量は下記の式により求める。
イオン交換容量(meq/g)=
〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/ml)×滴下量(ml)〕/試料の乾燥重量(g)
本発明のイオン性基を有するポリマーには本発明の目的を阻害しない範囲において、他の成分、例えば導電性若しくはイオン伝導性を有さない不活性なポリマーや有機あるいは無機の化合物、が含有されていても構わない。
本発明のイオン性基を有するポリマーは、高分子電解質材料または高分子電解質部品として電気化学用途に使用することが好ましい。高分子電解質部品としては高分子電解質膜および電極触媒層を挙げることができる。
本発明の高分子電解質材料を高分子電解質膜とする場合の製法を述べる。高分子電解質材料を膜へ転化する方法としては、高分子電解質材料を溶液、懸濁液あるいは乳濁液とし、該液を所望の膜厚となるようにコーティングしてから加熱により溶媒を除去することによって製膜する方法、すなわち溶媒キャスト法が挙げられる。
該液の固形分濃度は、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10重量%前後である。
コーティング法としては、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、カーテンコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷などの手法が適用できる。
製膜に用いる溶媒としては、高分子電解質材料を溶解し、その後に除去し得るものであればよく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水およびこれらの混合物が好適に用いられるが、非プロトン性極性溶媒が最も溶解性が高く好ましい。
次いで、得られた高分子電解質膜はイオン性基の少なくとも一部を金属塩の状態にしてから熱処理することが好ましい。金属塩の金属はスルホン酸と塩を形成しうるものであればよいが、価格および環境負荷の点からはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Wなどが好ましく、これらの中でもLi、Na、K、Ca、Sr、Baがより好ましく、Li、Na、Kがさらに好ましい。この熱処理の温度は好ましくは150〜550℃、さらに好ましくは160〜400℃、特に好ましくは180〜350℃である。熱処理時間は、好ましくは10秒〜12時間、さらに好ましくは30秒〜6時間、特に好ましくは1時間前後である。熱処理温度が低すぎると、燃料透過性の抑制効果が不足する。一方、高すぎると膜材料の劣化を生じやすくなる。熱処理時間が10秒未満であると燃料透過性の抑制効果が不足する。一方、12時間を超えると膜材料の劣化を生じやすくなる。熱処理により得られた高分子電解質膜は必要に応じて酸性水溶液に浸漬することによりプロトン置換することができる。この方法で成形することによって本発明の高分子電解質膜はプロトン伝導度と燃料遮断性をより良好なバランスで両立することが可能となる。
本発明の高分子電解質膜は、さらに必要に応じて放射線照射などの手段によって高分子構造を架橋せしめることもできる。かかる高分子電解質膜を架橋せしめることにより、燃料クロスオーバーおよび燃料に対する膨潤をさらに抑制する効果が期待でき、機械的強度が向上し、より好ましくなる場合がある。かかる放射線照射の種類としては例えば、電子線照射やγ線照射を挙げることができる。
本発明の高分子電解質膜の膜厚としては、好ましくは1〜2000μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の強度を得るには1μmより厚い方がより好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには2000μmより薄い方が好ましい。かかる膜厚のさらに好ましい範囲は3〜500μm、特に好ましい範囲は5〜250μmである。かかる膜厚は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができる。
また、本発明の高分子電解質材料には、通常の高分子化合物に使用される可塑剤、安定剤あるいは離型剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内で添加することができる。
また、本発明の高分子電解質材料には、前述の諸特性に悪影響をおよぼさない範囲内で機械的強度、熱安定性、加工性などの向上を目的に、各種ポリマー、エラストマー、フィラー、微粒子、各種添加剤などを含有させてもよい。
本発明の高分子電解質膜は、その20℃の条件下、30重量%メタノール水溶液に対する単位面積当たりのメタノール透過量が40μmol・min−1・cm−2以下であることが好ましい。該高分子電解質膜を用いた燃料電池において、燃料濃度が高い領域において高出力および高エネルギー容量が得られるという観点から、高い燃料濃度を保持すべく、燃料透過量が小さいことが望まれるからである。メタノール透過量は、25℃の純水に高分子電解質膜を24時間浸漬した後で測定する。
かかる観点からは、0μmol・min−1・cm−2が最も好ましいが、プロトン伝導性を確保する観点からは0.01μmol・min−1・cm−2以上が好ましい。
なおかつ、本発明の高分子電解質膜は、単位面積当たりのプロトン伝導度が1S・cm−2以上であることが好ましく、2S・cm−2以上がより好ましい。プロトン伝導度は、25℃の純水に高分子電解質膜を24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く行う定電位交流インピーダンス法により測定することができる。
単位面積当たりのプロトン伝導度を1S・cm−2以上とすることにより、燃料電池用高分子電解質膜として使用する際に、十分なプロトン伝導性、すなわち十分な電池出力を得ることができる。プロトン伝導度は高い方が好ましいが、高プロトン伝導度の膜はメタノール水などの燃料により溶解や崩壊しやすくなり、また燃料透過量も大きくなる傾向があるので、現実的な上限は50S・cm−2である。
本発明の高分子電解質膜は、上記したような低メタノール透過量と高プロトン伝導度を同時に達成することが、高出力と高エネルギー容量を両立させる上から好ましい。
イオン性基を有するポリマーにおいて、プロトン伝導性を高めるためにイオン性基の含有量を増加すると、該ポリマーがアルコール水溶液などの燃料に対して、膨潤が大きくなったり溶解してしまったりする。一方、燃料に対する膨潤の小さいポリマーは、一般に溶媒に難溶性であり、製膜性に劣る傾向がある。
これに対し、本発明のイオン性基を有するポリマーは、溶剤に可溶で成形性に優れ、プロトン伝導性が高く、かつ、燃料による膨潤への耐性に優れる。これは本発明のイオン性基を有するポリマーの特異な分子構造に起因するものと考えられる。
本発明の膜電極複合体(MEA)は、本発明の高分子電解質材料を用いて構成されるものである。かかる膜電極複合体は、本発明の高分子電解質材料を用いて構成される高分子電解質部品からなる。かかる高分子電解質部品としては、高分子電解質膜および/または電極触媒層が挙げられる。
該電極触媒層は、電極反応を促進する電極触媒、電子伝導体、イオン伝導体などを含む層である。かかる電極触媒層に含まれる電極触媒としては例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金などの貴金属触媒が好ましく用いられる。これらの内の1種類を単独で用いてもよいし、合金、混合物など、2種類以上を併用してもよい。
かかる電極触媒層に含まれる電子伝導体(導電材)としては、電子伝導性や化学的な安定性の点から炭素材料、無機導電材料が好ましく用いられる。なかでも、非晶質、結晶質の炭素材料が挙げられる。例えば、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが電子伝導性と比表面積の大きさから好ましく用いられる。ファーネスブラックとしては、キャボット社製“バルカンXC−72”(R)、“バルカンP”(R)、“ブラックパールズ880”(R)、“ブラックパールズ1100”(R)、“ブラックパールズ1300”(R)、“ブラックパールズ2000”(R)、“リーガル400”(R)、ケッチェンブラック・インターナショナル社製“ケッチェンブラック”(R)EC、EC600JD、三菱化学社製#3150、#3250などが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製“デンカブラック”(R)などが挙げられる。
またカーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素なども使用することができる。これらの炭素材料の形態としては、不定形粒子状のほか繊維状、鱗片状、チューブ状、円錐状、メガホン状のものも用いることができる。また、これら炭素材料を後処理加工したものを用いてもよい。
また、かかる電子伝導体は、触媒粒子と均一に分散していることが電極性能の点で好ましい。このため、触媒粒子と電子伝導体は予め塗液として、よく分散させておくことが好ましい。
さらに、かかる電極触媒層として、触媒と電子伝導体とが一体化した触媒担持カーボン等を用いることも好ましい実施態様である。この触媒担持カーボンを用いることにより、触媒の利用効率が向上し、電池性能の向上および低コスト化に寄与できる。ここで、電極触媒層に触媒担持カーボンを用いた場合においても、電子伝導性をさらに高めるために導電剤を添加することも可能である。このような導電剤としては、上述のカーボンブラックが好ましく用いられる。
かかる電極触媒層に用いられるイオン伝導性を有する物質(イオン伝導体)としては、一般的に、種々の有機、無機材料が公知であるが、燃料電池に用いる場合には、イオン伝導性を向上するスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などのイオン性基を有するポリマー(イオン伝導性ポリマー)が好ましく用いられる。なかでも、イオン性基の安定性の観点から、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるイオン伝導性を有するポリマー、あるいは本発明のイオン性基を有するポリマーが好ましく用いられる。パーフルオロ系イオン伝導性ポリマーとしては、例えばデュポン社製の“ナフィオン”(R)、旭化成社製の“Aciplex”(R)、旭硝子社製“フレミオン”(R)などが好ましく用いられる。これらのイオン伝導性ポリマーは、溶液または分散液の状態で電極触媒層中に設ける。この際に、ポリマを溶解あるいは分散化する溶媒は特に限定されるものではないが、イオン伝導性ポリマーの溶解性の点から極性溶媒が好ましい。
前記、触媒と電子伝導体類は通常粉体であるので、イオン伝導体はこれらを固める役割を担うことが通常である。イオン伝導体は、電極触媒層を作製する際に電極触媒粒子と電子伝導体とを主たる構成物質とする塗液に予め添加し、均一に分散した状態で塗布することが電極性能の点から好ましいものであるが、電極触媒層を塗布した後にイオン伝導体を塗布してもよい。ここで、電極触媒層にイオン伝導体を塗布する方法としては、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、カーテンコート、フローコートなどが挙げられ、特に限定されるものではない。電極触媒層に含まれるイオン伝導体の量としては、要求される電極特性や用いられるイオン伝導体の伝導度などに応じて適宜決められるべきものであり、特に限定されるものではないが、重量比で1〜80%の範囲が好ましく、5〜50%の範囲がさらに好ましい。イオン伝導体は、少な過ぎる場合はイオン伝導度が低く、多過ぎる場合はガス透過性を阻害する点で、いずれも電極性能を低下させることがある。
かかる電極触媒層には、上記の触媒、電子伝導体、イオン伝導体の他に種々の物質を含んでいてもよい。特に、該電極触媒層中に含まれる物質の結着性を高めるために、上述のイオン伝導性ポリマー以外のポリマーを含んでもよい。このようなポリマーとしては例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)などのフッ素原子を含むポリマー、これらの共重合体、これらのポリマーを構成するモノマー単位とエチレンやスチレンなどの他のモノマーとの共重合体、あるいは、ブレンドポリマーなどを用いることができる。これらポリマーの電極触媒層中の含有量としては、重量比で5〜40%の範囲が好ましい。ポリマー含有量が多すぎる場合、電子およびイオン抵抗が増大し電極性能が低下する傾向がある。
また、該電極触媒層は、燃料が液体や気体の場合には、その液体や気体が透過しやすい構造を有していることが好ましく、電極反応に伴う副生成物質の排出も促す構造が好ましい。
膜電極複合体(MEA)には電極基材を使用することができる。電極基材としては、電気抵抗が低く、集電あるいは給電を行えるものを用いることができる。また、前記電極触媒層を集電体兼用で使用する場合は、特に電極基材を用いなくてもよい。電極基材の構成材としては、たとえば、炭素質、導電性無機物質が挙げられ、例えば、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが例示される。これらの、形態は特に限定されず、たとえば繊維状あるいは粒子状で用いられるが、燃料透過性の点から炭素繊維などの繊維状導電性物質(導電性繊維)が好ましい。導電性繊維を用いた電極基材としては、織布あるいは不織布いずれの構造も使用可能である。たとえば、東レ(株)製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E-TEK社製カーボンクロスなどが用いられる。織布としては、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織など、特に限定されること無く用いられる。また、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法によるものなど特に限定されること無く用いられる。また編物であってもよい。これらの布帛において、特に炭素繊維を用いた場合、耐炎化紡績糸を用いた平織物を炭化あるいは黒鉛化した織布、耐炎化糸をニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などによる不織布加工した後に炭化あるいは黒鉛化した不織布、耐炎化糸あるいは炭化糸あるいは黒鉛化糸を用いた抄紙法によるマット不織布などが好ましく用いられる。特に、薄く強度のある布帛が得られる点から不織布を用いるのが好ましい。
電極基材に炭素繊維からなる導電性繊維を用いた場合、炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などがあげられる。
また電極基材には、水の滞留によるガス拡散・透過性の低下を防ぐための撥水処理や、水の排出路を形成するための部分的撥水、親水処理や、抵抗を下げるための炭素粉末の添加等を行うこともできる。
本発明の高分子電解質型燃料電池においては、電極基材と電極触媒層の間に、少なくとも無機導電性物質と疎水性ポリマを含む導電性中間層を設けることが好ましい。特に、電極基材が空隙率の大きい炭素繊維織物や不織布である場合、導電性中間層を設けることで、電極触媒層が電極基材にしみ込むことによる性能低下を抑えることができる。
高分子電解質膜および、電極触媒層あるいは電極触媒層と電極基材を用いて膜電極複合体(MEA)を作製する方法は特に限定されるものではない。公知の方法(例えば、「電気化学」1985, 53, 269.記載の化学メッキ法、「ジェイ エレクトロケミカル ソサイアティ」(J. Electrochem. Soc.): Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209. 記載のガス拡散電極の熱プレス接合法など)を適用することが可能である。熱プレスにより一体化することは好ましい方法であるが、その温度や圧力は、高分子電解質膜の厚さ、水分率、電極触媒層や電極基材により適宜選択すればよい。また、高分子電解質膜が含水した状態でプレスしてもよいし、イオン伝導性を有するポリマーで接着してもよい。
本発明の高分子電解質型燃料電池の燃料としては、水素およびメタン、エタン、プロパン、ブタン、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ギ酸、酢酸、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ハイドロキノン、シクロヘキサン、アスコルビン酸などの有機化合物が挙げられる。液体燃料を直接供給する直接型燃料電池の燃料としては、特に発電効率や電池全体のシステム簡素化の観点から、上記の中でも炭素数1〜6の有機化合物およびこれらと水との混合物等が好ましく、1種または2種以上の混合物でもよい。発電効率の点でとりわけ好ましいのはメタノールまたはメタノール水溶液である。
かかる膜電極複合体に供給される燃料中の炭素数1〜6のアルキル基またはアルキレン基を有する有機化合物の含有量は20〜70重量%が好ましい。かかる含有量が、20重量%未満では、実用的な高いエネルギー容量を得ることができにくく、70重量%を超えると、発電効率と出力のバランスが崩れやすく、高発電効率と高出力を同時に満足する実用的なものを得ることができにくい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
[測定方法]
実施例で採用する測定方法を以下に説明する。
(1)重量平均分子量
ポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC−8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒にて、流量0.2mL/minで測定し、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。
(2)膜厚
接触式膜厚計にて測定した。
(3)プロトン伝導度
高分子電解質膜の試料を25℃において30%メタノール水溶液(重量比で試料量の1000倍以上)に撹拌しながら12時間浸漬し、その後20℃において純水(重量比で試料量の1000倍以上)に撹拌しながら24時間以上浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度を測定した。
測定装置としては、Solartron製電気化学測定システム(Solartron 1287Electrochemical Interface およびSolartron 1255B Frequency ResponseAnalyzer)を使用した。サンプルは、φ2mmおよびφ10mmの2枚の円形電極(ステンレス製)間に加重1kgをかけて挟持した。有効電極面積は0.0314cm2である。サンプルと電極の界面には、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)の15%水溶液を塗布した。25℃において、交流振幅50mVの定電位インピーダンス測定を行い、膜厚方向のプロトン伝導度を求めた。またその値は、単位面積当たりのもので表した。
(4)メタノール透過量(MCO)
高分子電解質膜の試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、20℃において測定した。
H型セル間に試料を挟み、一方のセルには純水(60mL)を入れ、他方のセルには30重量%メタノール水溶液(60mL)を入れた。セルの容量は各80mLであった。また、セル間の開口部面積は1.77cmであった。20℃において両方のセルを撹拌した。1時間、2時間および3時間経過時点で純水中に溶出したメタノール量を島津製作所製ガスクロマトグラフィ(GC−2010)で測定し定量した。グラフの傾きから単位時間あたりのメタノール透過量を求めた。
(5)膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池の評価
膜電極複合体(MEA)をエレクトロケム社製セルにセットし、アノード側に30%メタノール水溶液、カソード側に空気を流してMEA評価を行った。評価はMEAに定電流を流し、その時の電圧を測定した。電流を順次増加させ電圧が10mV以下になるまで測定を行った。各測定点での電流と電圧の積が出力となるが、その最大値(MEAの単位面積あたり)を出力(mW/cm)とした。
エネルギー容量は、出力、MEAでのMCOを基に下記数式(数1)にて計算した。
該MEAでのMCOは、カソードからの排出ガスを捕集管でサンプリングした。これを全有機炭素計TOC-VCSH(島津製作所製測定器)、あるいはMeOH透過量測定装置Micro GC CP-4900(ジ−エルサイエンス製ガスクロマトグラフ)を用い評価した。MCOは、サンプリングガス中のMeOHと二酸化炭素の合計を測定して算出した。
Figure 2006219580
エネルギー容量:Wh
出力:最大出力密度(mW/cm
容積:燃料の容積(本実施例では10mLとして計算した。)
濃度:燃料のメタノール濃度(%)
MCO:MEAでのMCO(μmol・min−1・cm−2
電流密度:最大出力密度が得られるときの電流密度(mA/cm
合成例1
Figure 2006219580
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1gを発煙硫酸(50%SO3)150mL中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、上記式(m1)で示される化合物を得た。
比較例1
市販の“ナフィオン”117膜(デュポン社製(商品名))を用い、プロトン伝導度およびメタノール透過量を評価した。ナフィオン117膜は、100℃の5%過酸化水素水中にて30分、続いて100℃の5%希硫酸中にて30分浸漬した後、100℃の脱イオン水でよく洗浄した。メタノール透過量は5.9μmol・min−1・cm−2、プロトン伝導度は5.7S・cm−2であった。
実施例1
炭酸カリウム6.9g、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン7.0g、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン7.0g、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン5.2g、および合成例1で得た式(m1)の化合物6.8gを用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、190℃で重合を行った。この間、適宜トルエンを加えて共沸法により重合系から水を除去した。多量の水で再沈することで精製を行い、イオン性基を有するポリマーを得た。このポリマーは前記式(A1)と(A2)の両方の基を有するものである。得られたポリマーの重量平均分子量は24万であった。
得られたポリマーを、N−メチル−2−ピロリドン溶液とし、当該溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4時間乾燥して溶媒を除去した。さらに、窒素ガス雰囲気下、200〜300℃まで1時間かけて昇温し、300℃で10分間加熱する条件で熱処理した後、放冷した。1N塩酸に3日間以上浸漬してプロトン置換した後に、大過剰量の純水に3日間以上浸漬して充分洗浄した。高分子電解質膜を得た。
得られた高分子電解質膜を評価した。プロトン伝導性およびMCOを評価した。プロトン伝導性はS・cm−2で表される数値を、MCOはμmol・min−1・cm−2で表される数値を求めて、それぞれを比較例1の値との比(Nafion比)で表した。さらにプロトン伝導性とMCOのバランスを評価する値としてMCOをプロトン伝導性で除した値、すなわち「MCO/プロトン伝導性」を求めた。この値が小さいほどプロトン伝導性とMCOのバランスに優れる。結果を表1に示した。
Figure 2006219580
また、該高分子電解質膜を60℃、60%メタノール水溶液に60℃、10時間浸漬し、目視で膨潤状態を評価した。結果を表1に示した。
比較例2
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン14.0gを用い、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンを用いないこと以外は実施例1と同様にして、イオン性基を有するポリマーを得た。このポリマーは前記式(A1)の基のみを有するものである。得られたポリマーの重量平均分子量は25万であった。
得られたポリマーを実施例1と同様に製膜し、高分子電解質膜を得た。
得られた高分子電解質膜を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示した。実施例1よりもプロトン伝導性とMCOのバランスに劣っていた。
比較例3
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを用いず、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン14.0gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、イオン性基を有するポリマーを得た。このポリマーは前記式(A2)の基のみを有するものである。得られたポリマーの重量平均分子量は22万であった。
得られたポリマーを実施例1と同様に製膜し、高分子電解質膜を得た。
得られた高分子電解質膜を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示した。実施例1よりも燃料による膨潤への耐性に劣っていた。
実施例2
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの代りに9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−フェニルフェニル)フルオレン10.1gを用い、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンの代りにフェノールフタレイン6.4gを用い、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの代りに2,6−ジクロロベンゾニトリル4.1gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、イオン性基を有するポリマーを得た。前記式(A1)と(A3)の両方の基を有するものである。得られたポリマーの重量平均分子量は20万であった。
得られたポリマーを実施例1と同様に製膜し、高分子電解質膜を得た。
得られた高分子電解質膜を実施例1と同様に評価した。結果を表1に示した。
実施例3
(1)膜電極複合体(MEA)の作製
炭素繊維クロス基材に20%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)懸濁液を用いて撥水処理を施し、焼成して電極基材を2枚作製した。
1枚の電極基材上に、Pt−Ru担持カーボンと実施例1で得た高分子電解質材料のN−メチル−2−ピロリドン溶液とからなるアノード電極触媒塗液を塗工し、乾燥して、アノード電極を作製した。
また、もう1枚の電極基材上に、Pt担持カーボンと“ナフィオン”溶液とからなるカソード電極触媒塗液を塗工し、乾燥して、カソード電極を作製した。
実施例1で得られた高分子電解質膜を、アノード電極とカソード電極とで夾持し、加熱プレスすることでMEAを作製した。
(2)高分子電解質型燃料電池の作製
前記(1)で得られたMEAをエレクトロケム社製セルに挟みアノード側に30重量%メタノール水溶液、カソード側に空気を流して高分子電解質型燃料電池とした。
本実施例の高分子電解質膜を使用した高分子電解質型燃料電池は、20℃において出力は23mW/cmを示した。またエネルギー容量は2.5Whであった。
実施例4
膜電極複合体と高分子電解質型燃料電池の作製は、アノード電極触媒塗液の調製において、実施例1で得た高分子電解質材料のN−メチル−2−ピロリドン溶液の代りに“ナフィオン”溶液を用いる他は実施例3と同様にして行った。出力は22mW/cm、エネルギー容量は2.4Whであった。
比較例4
“ナフィオン”117膜を用い、膜電極複合体と高分子電解質型燃料電池の作製は実施例4と同様にして行った。出力は8mW/cmを示し低い値であった。エネルギー容量も0.6Whであり低い値であった。
本発明の高分子電解質材料あるいは高分子電解質部品は、種々の用途に適用可能である。例えば、体外循環カラム、人工皮膚などの医療用途、ろ過用用途、イオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途に適用可能である。また例えば、電気化学用途としては、燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置およびクロロアルカリ電解装置等が挙げられ、中でも燃料電池がとりわけ好ましく、例えば、メタノールなどを燃料とする直接型燃料電池に用いられる。
本発明の高分子電解質型燃料電池の用途としては、移動体の電力供給源が好ましいものである。特に、携帯電話、パソコン、PDA(Portable DigitalAssistance)、無線ID読取機(RFIDリーダー)、ビデオカメラ(カムコーダー)、デジタルカメラなどの携帯機器小売業、飲食店、運送業、輸送業等で利用される各種業務用ハンディーターミナル、電動シェーバー、掃除機等の家電、電動工具、乗用車、バスおよびトラックなどの自動車、二輪車、電動アシスト付自転車、電動カート、電動車椅子や船舶および鉄道などの移動体の電力供給源として好ましく用いられる。

Claims (12)

  1. 下記式(A1)、(A2)および(A3)から選ばれた少なくとも2つの基を含有することを特徴とするイオン性基を有するポリマー。
    Figure 2006219580
    [式(A1)〜(A3)中、Qは直接結合、メチレン基、カルボニル基、OおよびSから選ばれた置換基を表す。QはH、アルキル基およびアリール基から選ばれた置換基を表す。Qはカルボニル基およびスルホニル基から選ばれた置換基を表す。QはO、SおよびN−Rから選ばれた置換基を表す。RはH、アルキル基およびアリール基から選ばれた置換基を表す。式(A1)〜(A3)で表される基は任意に置換されていてもよい。]
  2. 前記式(A1)においてQが直接結合であり、前記式(A2)においてQがフェニル基であり、前記式(A3)においてQがカルボニル基であり、QがOおよびN−Rから選ばれた置換基であることを特徴とする請求項1に記載のイオン性基を有するポリマー。
  3. 下記式(P1)〜(P3)から選ばれた少なくとも2つの繰り返し単位を含む骨格を有することを特徴とする請求項1または2に記載のイオン性基を有するポリマー。
    Figure 2006219580
    [式(P1)〜(P3)中、−O−Z11−O−、−O−Z12−O−および−O−Z13−O−で表される基は、それぞれ前記式(A1)、(A2)および(A3)で表される基である。Zは電子吸引性基を有する芳香環を含む2価の基を表す。Zは任意に置換されていてもよい。]
  4. 前記Zが下記式(B1)で表される基であることを特徴とする請求項3に記載のイオン性基を有するポリマー。
    Figure 2006219580
    [式(B1)中、Qはカルボニル基、スルホニル基および下記式(Q5−1)から選ばれた電子吸引性基を表す。
    Figure 2006219580
    はアルキル基またはアリール基を表す。式(B1)で表される基は任意に置換されていてもよい。]
  5. 前記Zが下記式(C1)〜(C4)から選ばれた少なくとも1つの基であることを特徴とする請求項3に記載のイオン性基を有するポリマー。
    Figure 2006219580
    [式(C1)〜(C4)中、a〜dはそれぞれ1〜4の整数を表す。式(C1)〜(C4)で表される基は任意に置換されていてもよい。]
  6. イオン性基がスルホン酸基またはスルホンイミド基であることを特徴とする、請求項1〜5いずれかに記載のイオン性基を有するポリマー。
  7. イオン性基がスルホン酸基であることを特徴とする、請求項6に記載のイオン性基を有するポリマー。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のイオン性基を有するポリマーからなる高分子電解質材料。
  9. 請求項8に記載の高分子電解質材料を用いて構成されていることを特徴とする高分子電解質部品。
  10. 請求項9に記載の高分子電解質部品を用いて構成されていることを特徴とする膜電極複合体。
  11. 請求項10に記載の膜電極複合体を用いて構成されていることを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
  12. 該高分子電解質型燃料電池が、炭素数1〜6の有機化合物およびこれと水との混合物から選ばれた少なくとも1種を燃料に用いる直接型燃料電池である請求項11に記載の高分子電解質型燃料電池。
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