JP5802962B2 - トランスミッションケース - Google Patents

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Description

本発明は、分割した複数のケース要素を互いにフランジ結合することにより構成され、内部に組み付けられる変速機構の軸部材を回転可能に支持するトランスミッションケースの軽量化技術に関する。
従来、軽量な車両用エンジンのクランクケースカバーを提供することを目的とし、金属製軸受けホルダーと合成樹脂製カバー本体とによってクランクケースカバーを構成した車両用エンジンのクランクケースカバーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−18348号公報
しかしながら、従来の車両用エンジンのクランクケースカバーにあっては、金属製軸受けホルダーを、軸受保持部と脚部と補強部とから構成し、これらの各部を一体に形成している。そして、前記脚部の先端部を合成樹脂製カバー本体とともにクランクケース半部に固定している。
従来の複合材によるカバー構造を、例えば、車両用トランスミッションケースのサイドカバーに適用した場合、サイドカバーをフレーム化し、金属フレームの間に存在する空間を樹脂カバーにより埋めることになる。このとき、金属フレームの開口縁部に樹脂カバーの閉塞縁部を単に接合するだけでは、金属フレームと樹脂カバーの接合部から変速機作動油が外部に漏れてしまう、という問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ケース軽量化要求に応えながら、金属フレームと樹脂カバーの接合部から変速機作動油を外部に漏らすことのない機密性を担保することができるトランスミッションケースを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、分割した複数のケース要素を互いにフランジ結合することにより構成され、内部に組み付けられる変速機構の軸部材を回転可能に支持するトランスミッションケースを前提構成として備える。
このトランスミッションケースにおいて、前記分割した複数のケース要素のうち、少なくとも1つのケース要素を、金属フレームと、該金属フレームに形成された開口部を塞ぐ樹脂カバーと、による複合材構造とする。
前記金属フレームと前記樹脂カバーの接合部を、前記金属フレームの開口縁部の変速機構側に露出する接合内面に対して前記樹脂カバーの閉塞縁部の接合外面をオーバーラップさせた重合接合部とした。
そして、前記金属フレームと前記樹脂カバーの重合接合部を、前記金属フレームの接合内面が前記開口部の全周にわたって滑らかに連続し、前記樹脂カバーの接合外面が連続した前記接合内面に接合される環状構造とした。
よって、サイドカバーを、金属フレームと、金属フレームに形成された開口部を塞ぐ樹脂カバーによる複合材構造とすることで、サイドカバーを金属のみによる膜構造とする場合に比べ、軽量化が図られる。
そして、金属フレームと樹脂カバーの接合部は、金属フレームの開口縁部の変速機構側に露出する接合内面に対して樹脂カバーの閉塞縁部の接合外面をオーバーラップさせた重合接合部とされる。
すなわち、変速機構を稼働することで発生する熱によりトランスミッションケース内部の空気が膨張し、トランスミッションケース内部の圧力がトランスミッションケース外部の圧力(大気圧)より高くなる。このトランスミッションケース内外の圧力差により、重合接合部を構成する樹脂カバーの閉塞縁部の接合外面が、金属フレームの開口縁部の接合内面に張り付くように押し付けられ、金属フレームと樹脂カバーの接合部から変速機作動油を外部に漏らすことのない機密性(シール性)が担保される。
この結果、ケース軽量化要求に応えながら、金属フレームと樹脂カバーの接合部から変速機作動油を外部に漏らすことのない機密性を担保することができる。
実施例1の複合材構造によるサイドカバーを有するトランスミッションケースが適用された自動車に搭載されるベルト式無段変速機を示す全体概略図である。 実施例1の複合材構造によるサイドカバーを示す正面図である。 実施例1の複合材構造によるサイドカバーの金属フレームを示す外側からの斜視図である。 実施例1の複合材構造によるサイドカバーの金属フレームを示す内側からの斜視図である。 実施例1の複合材構造によるサイドカバーの補強リブのうち第4リブの設定範囲を示す図である。 実施例1の金属フレームに樹脂カバーを加えた複合材構造によるサイドカバーを示す図2のA−A線断面図である。 実施例1の金属フレームに樹脂カバーを接合する図6の重合接合部Dの詳細を示す拡大断面図である。 実施例1のサイドカバーにおいて必要骨格の抽出に基づき等価剛性となる軽量化形状設定手法を説明するための重量−剛性の関係を示す特性図である。 実施例1の変形例による金属フレームに樹脂カバーを接合する重合接合部D’の詳細を示す拡大断面図である。
以下、本発明のトランスミッションケースを実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
実施例1におけるトランスミッションケースの構成を、「全体構成」、「サイドカバーの詳細構成」、「金属フレームと樹脂カバーの接合構成」に分けて説明する。
[全体構成]
図1は、実施例1の複合材構造によるサイドカバーを有するトランスミッションケースが適用された自動車に搭載されるベルト式無段変速機を示す。以下、図1に基づき全体構成を説明する。
実施例1のトランスミッションケースTCは、図1に示すように、横置きエンジンENGに連結され、分割した主変速ケース1(ケース要素)とコンバータハウジング2(ケース要素)とサイドカバー3(ケース要素)を互いにフランジ結合することにより構成される。そして、内部に組み付けられるベルト式無段変速機構4(変速機構)の各軸部材を回転可能に支持する。
前記エンジンENG及びトランスミッションケースTCのサイドカバー3は、図1に示すように、車両前後方向に延びる一対のサイドメンバー7,7に対し、マウントブラケット8及び弾性部材9,9を介して弾性支持される。
前記ベルト式無段変速機構4は、プーリーに対するベルト接触径の変化により、プライマリ軸40(軸部材)のプライマリ回転数と、セカンダリ軸41(軸部材)のセカンダリ回転数と、の比であるプーリー比を無段階に変化させる無段変速機能を有する。プライマリ軸40のカバー側端部は、プライマリ軸受け42を介してサイドカバー3に回転可能に支持される。セカンダリ軸41のカバー側端部は、セカンダリ軸受け43を介してサイドカバー3に回転可能に支持される。
実施例1のトランスミッションケースTCでは、フランジ結合される主変速ケース1とコンバータハウジング2とサイドカバー3のうち、主変速ケース1とコンバータハウジング2を金属膜構造とし、サイドカバー3を複合材構造としている。
前記主変速ケース1は、例えば、アルミダイカスト(ADC12等)を材料とする金属部品により構成され、両端部に複数のボルト穴が設けられた外周フランジ11,12を有する。外周フランジ11は、コンバータハウジング2とフランジ結合し、外周フランジ12は、サイドカバー3とフランジ結合する。主変速ケース1の下部には、オイルパン10が設けられる。
前記コンバータハウジング2は、例えば、アルミダイカスト(ADC12等)を材料とする金属部品により構成され、主変速ケース1側に複数のボルト穴が設けられた外周フランジ21を有する。コンバータハウジング2の外周フランジ21は、主変速ケース1の外周フランジ11とフランジ結合する。
前記サイドカバー3は、金属材による金属フレーム5と、合成樹脂材による樹脂カバー6(ハッチング部)と、を組み合わせた複合材構造としている。金属フレーム5は、例えば、アルミダイカスト(ADC12等)を材料として構成され、樹脂カバー6は、例えば、耐熱性・耐油性を持つ高強度樹脂(GF強化PA66等)を材料として構成される。主変速ケース1側に複数のボルト穴が設けられた外周フランジ51を有する。サイドカバー3の外周フランジ51は、主変速ケース1の外周フランジ12とフランジ結合する。
[サイドカバーの詳細構成]
図2〜図6は、実施例1の複合材構造によるサイドカバー3の構成を示す。以下、図2〜図6に基づき、サイドカバー3の詳細構成を説明する。
前記サイドカバー3を構成する金属フレーム5は、図2〜図6に示すように、外周フランジ51(フランジ)と、第1ベアリング支持ボス52と、第2ベアリング支持ボス53と、第1リブ54(補強リブ)と、第2リブ55(補強リブ)と、第3リブ57(補強リブ)と、第4リブ56(補強リブ)と、を備えている。これらのフレーム構成部材に、第1リブ補間プレート58と、第2リブ補間プレート59と、が加えられる。
前記外周フランジ51は、主変速ケース1とのフランジ結合強度を確保するもので、サイドカバー3の全周にわたって連続している。車載上、外周フランジ51の上側の離間位置には、第1ベアリング支持ボス52側をサイドメンバー7に吊り下げて弾性支持する第1マウントボス54aと、第2ベアリング支持ボス53側をサイドメンバー7に吊り下げて弾性支持する第2マウントボス55aと、を有する。第1マウントボス54aと第2マウントボス55aには、図4に示すように、マウントブラケット8を固定するためのねじ穴54b,55bが設けられている。また、外周フランジ51には、全周にわたって複数のボルト穴51aが形成されている。
前記第1ベアリング支持ボス52は、ボス内面にプライマリ軸受け42の外周面が嵌合され、プライマリ軸40を回転可能に支持する環状のボスであり、第1リブ54と第3リブ57等を介して外周フランジ51と連結されている。
前記第2ベアリング支持ボス53は、ボス内面にセカンダリ軸受け43の外周面が嵌合され、セカンダリ軸41を回転可能に支持する環状のボスであり、第2リブ55等を介して外周フランジ51と連結されている。
前記第1リブ54と第3リブ57は、第1ベアリング支持ボス52への上下方向荷重入力に対する支持強度を確保するとともに図外のパーキング部品の支持強度を確保するものである。第3リブ57は、車載上、第1ベアリング支持ボス52の中心よりも上方に位置する外周フランジ51と第1ベアリング支持ボス52を繋ぐとともに、第1ベアリング支持ボス52の中心よりも下方に位置する外周フランジ51に結合している。第1リブ54は、第1マウントボス54aと第3リブ57の途中位置を繋ぐ。第1マウントボス54aは、第1リブ54の車載上、上端面としている。
前記第2リブ55は、第2ベアリング支持ボス53への上下方向荷重入力に対する支持強度を確保するもので、第2マウントボス55aと第2ベアリング支持ボス53を繋ぐとともに、第2ベアリング支持ボス53の中心よりも下方に位置する外周フランジ51に結合している。第2マウントボス55aは、第2リブ55の車載上、上端面としている。
前記第4リブ56は、第1ベアリング支持ボス52と第2ベアリング支持ボス53への横方向荷重入力に対する軸間剛性を確保するもので、互いに交差しない第3リブ57と第2リブ55を両ベアリング支持ボス52,53の設定位置で繋いでいる。
ここで、第4リブ56は、図5に示すように、第1ベアリング支持ボス52の中心点OB1と第2ベアリング支持ボス53の中心点OB2とを結ぶ中心線CLを挟んで第1ベアリング支持ボス内周と第2ベアリング支持ボス内周を結ぶ2組の接線OL,OLの範囲内に設定している。したがって、第4リブ56は、2組の接線OL,OLの範囲内という設定条件を満足すれば、第1リブ54と第2リブ55を繋いでも良いし、また、第1リブ54と第3リブ57に跨る接続部と、第2リブ55と、を繋いでも良い。
前記第1リブ補間プレート58は、第1リブ54と第2リブ55と第3リブ57の取り付け強度を高めるもので、第1リブ54と、第2リブ55と、第3リブ57と、両リブ54,55を繋ぐ上側の外周フランジ51と、両リブ55,57を繋ぐ下側の外周フランジ51と、で囲まれる領域内を、一定肉厚によるプレートにより埋めている。
前記第2リブ補間プレート59は、パーキング部品の支持強度を高めるもので、第3リブ57と、第1リブ54と、両リブ54,57を繋ぐ外周フランジ51と、で囲まれる領域内を、一定肉厚によるプレートにより埋めている。
前記樹脂カバー6としては、図2及び図6に示すように、第1カバー開口6aに設定した第1樹脂カバー61と、第2カバー開口6bに設定した第2樹脂カバー62と、を備えている。第1カバー開口6aは、図3に示すように、第3リブ57と、該第3リブ57の両端を繋ぐ外周フランジ51の円弧部で囲まれて形成される。第2カバー開口6bは、図3に示すように、第2リブ55と、該第2リブ55の両端を繋ぐ外周フランジ51の円弧部で囲まれて形成される。第1樹脂カバー61は、第3リブ57の外側領域に形成した第1カバー開口6aに、金属フレーム5に対し気密状態で設定される。第2樹脂カバー62は、第2リブ55の外側領域に形成した第2カバー開口6bに、金属フレーム5に対し気密状態で設定される。
[金属フレームと樹脂カバーの接合構成]
図7は、実施例1の金属フレームに樹脂カバーを接合する図6の重合接合部Dの詳細を示す。以下、図6及び図7に基づき、金属フレーム5と樹脂カバー6の接合構成を説明する。なお、金属フレーム5と樹脂カバー6の接合構成として、外周フランジ51(金属フレーム5の一例)と第1樹脂カバー61(樹脂カバー6の一例)を接合する重合接合部Dを代表例(図7)として説明する。
前記外周フランジ51と第1樹脂カバー61の接合部は、図7に示すように、外周フランジ51のフランジ部50(開口縁部)の変速機構側に露出する接合内面50aに対して第1樹脂カバー61の閉塞縁部60の接合外面60aをオーバーラップさせた重合接合部Dとしている。ここで、フランジ部50は、外周フランジ51の開口縁部として、外周フランジ51の開口内面から開口部である第1カバー開口6a(図3参照)に向かって突出して設けている。
前記フランジ部50の接合内面50aは、面粗度を接合内面50a以外のフレーム表面の面粗度よりも下げて設定している。具体的には、図7に示すように、接合内面50aにボールインデント状凹部50bを多数形成し、接合内面50aを凹凸粗面形状にしている。
前記金属フレーム5と樹脂カバー6を接合する重合接合部Dは、金属フレーム5の接合内面が全周にわたって滑らかに連続する環状構造としている(図6)。つまり、第1樹脂カバー61は、第1縦リブ54の外側領域に第1カバー開口6a(図3参照)を形成し、第1カバー開口6aの全周に形成された環状構造による接合内面50aを含む連続した接合内面に接合される。第2樹脂カバー62は、第1樹脂カバー61と同様に、第2縦リブ55の外側領域に第2カバー開口6b(図3参照)を形成し、第2カバー開口6bの全周に形成された環状構造による接合内面50aを含む連続した接合内面に接合される。
次に、作用を説明する。
実施例1のトランスミッションケースTCにおける作用を、「金属フレームの軽量化形状設定作用」、「軽量化と剛性の両立作用」、「金属フレームと樹脂カバーの接合作用」に分けて説明する。
[金属フレームの軽量化形状設定作用]
サイドカバーの軽量化を目指すには、剛性要求について成立する金属フレームの形状設定が必要である。以下、図8に基づき、これを反映する金属フレームの軽量化形状設定作用を説明する。
まず、無垢のアルミブロックの状態(図8の点E)から、不要な部分を削り取っていき(図8の点F)、重量の軽量化に対し剛性が現行のサイドカバーと同じ剛性(等価剛性)となった図8の点Gでの骨格形状(金属フレーム形状)を算出する。
この手法により、サイドカバーとして、現行のサイドカバーと等価剛性を持ちながら、最大の軽量化を図ることができ、このときの骨格形状(金属フレーム形状)を必要骨格として抽出する。この抽出した必要骨格を、実施例1におけるサイドカバー3の金属フレーム5の基本形状とする。
[軽量化と剛性の両立作用]
上記のように、サイドカバー3の金属フレーム5の基本形状が決まると、軽量化を確保しつつ、荷重入力に対して軸芯ずれを抑制できるだけの強度・剛性を持たせる工夫が必要である。以下、これを反映する軽量化と剛性の両立作用を説明する。
まず、サイドカバー3を、金属フレーム5と樹脂カバー6による複合材構造とすることで、サイドカバーを金属のみによる膜構造とする場合に比べ、軽量化が図られる。
すなわち、抽出した必要骨格を実施例1におけるサイドカバー3の金属フレーム5の基本形状とすると、図7に示す軽量化代を最大限としてサイドカバー3の軽量化を図ることが可能である。
したがって、発明者等が検討したところによると、抽出した必要骨格に強度・剛性を要求に合わせて肉付けしたとしても、現行のアルミ膜構造のサイドカバーに比べ、約25%程度の軽量化(Kg単位)が可能であることが判明した。
上記複合材のうち、強度や剛性を受け持つ金属フレーム5を、外周フランジ51と、第1ベアリング支持ボス52と、第2ベアリング支持ボス53と、補強リブ(第1リブ54と第2リブ55と第3リブ57と第4リブ56)と、で構成した。
例えば、サイドカバー3には、走行中にサイドメンバー7が上下動するような車両挙動等に応じて第1マウントボス54aと第2マウントボス55aからサイドカバー自重を含む上下方向荷重が入力される。また、サイドカバー3には、ベルト式無段変速機ではトルク伝達によるベルト張力、多段自動変速機ではトルク伝達によるギヤ倒れ等に応じてプライマリ軸40とセカンダリ軸41から軸間寸法を広げる、あるいは、軸間寸法を狭くする横方向荷重が入力される。このように、サイドカバー3へは外部(車体)や内部(変速機構)からの様々な荷重入力がある。
上記サイドカバー3への上下方向荷重入力に対しては、第1リブ54と第3リブ57と第2リブ55により、第1ベアリング支持ボス52と第2ベアリング支持ボス53の支持強度が確保される。すなわち、第1リブ54は、外周フランジ51に有する第1マウントボス54aを車載上の上端面とし、第1マウントボス54aと第3リブ57とを繋ぎ、第3リブ57は、第1ベアリング支持ボス52を繋ぐとともに外周フランジ51に結合していることによる。第2リブ55は、外周フランジ51に有する第2マウントボス55aを車載上の上端面とし、第2マウントボス55aと第2ベアリング支持ボス53を繋ぐとともに外周フランジ51に結合していることによる。
一方、サイドカバー3への横方向荷重入力に対しては、第4リブ56により、第1ベアリング支持ボス52と第2ベアリング支持ボス53の軸間剛性が確保される。すなわち、第4リブ56は、互いに交差しない第3リブ57と第2リブ55を、第1ベアリング支持ボス52と第2ベアリング支持ボス53の設定位置で繋いでいることによる。
したがって、上下方向荷重の入力を第1リブ54と第3リブと第2リブ55が受け、横方向荷重の入力を第4リブ56が受けることで、サイドカバー3への荷重入力に対し第1ベアリング支持ボス52と第2ベアリング支持ボス53の変形(軸間距離が変動する楕円変形等)が抑えられる。この結果、プライマリ軸40を回転可能に支持する環状の第1ベアリング支持ボス52の変形やセカンダリ軸41を回転可能に支持する環状の第2ベアリング支持ボス53の変形により、プライマリ軸40の軸芯位置とセカンダリ軸41の軸芯位置が規定位置からずれる軸芯ずれを抑制する強度が確保される。
[金属フレームと樹脂カバーの接合作用]
上記のように、金属フレーム5と樹脂カバー6による複合材構造とすることで軽量化を図ることができるものの、2部材の組み合わせ構成にすることに伴い、互いの接合部から変速機作動油を漏らさないという気密性が要求される。以下、これを反映する金属フレーム5と樹脂カバー6の接合作用を説明する。なお、金属フレーム5と樹脂カバー6の接合作用として、外周フランジ51(金属フレーム5の一例)と第1樹脂カバー61(樹脂カバー6の一例)を接合する重合接合部Dを代表例(図7)として説明する。
まず、樹脂カバー6の接合は、樹脂成形型に金属フレーム5を設定し、型空間内に溶融樹脂を射出するインサート成形により設けられるもので、金属フレーム5に対し樹脂カバー6が熱融着により接合される。あるいは、予め樹脂カバー6を成形しておき、金属フレーム5に対し接着剤による接着にて接合される。
このとき、金属フレーム5と樹脂カバー6の接合部は、金属フレーム5の開口縁部の変速機構側に露出する接合内面に対して樹脂カバー6の閉塞縁部の接合外面をオーバーラップさせた重合接合部Dとされる。外周フランジ51と第1樹脂カバー61を接合する重合接合部Dの場合、図7に示すように、外周フランジ51のフランジ部50の変速機構側に露出する接合内面50aに対して第1樹脂カバー61の閉塞縁部60の接合外面60aをオーバーラップさせて接合される。
すなわち、ベルト式無段変速機構4を稼働することで発生する熱によりトランスミッションケースTC内部の空気が膨張し、トランスミッションケースTC内部の圧力がトランスミッションケースTC外部の圧力(大気圧)より高くなる。このトランスミッションケースTCの内外圧力差により、重合接合部Dを構成する第1樹脂カバー61の閉塞縁部60の接合外面60aが、外周フランジ51のフランジ部50の接合内面50aに張り付くように押し付けられ、外周フランジ51と第1樹脂カバー61の重合接合部Dから変速機作動油を外部に漏らすことのない機密性(シール性)が担保される。
次に、効果を説明する。
実施例1のトランスミッションケースTCにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 分割した複数のケース要素(主変速ケース1、コンバータハウジング2、サイドカバー3)を互いにフランジ結合することにより構成され、内部に組み付けられる変速機構(ベルト式無段変速機構4)の軸部材を回転可能に支持するトランスミッションケースTCにおいて、
前記分割した複数のケース要素(主変速ケース1、コンバータハウジング2、サイドカバー3)のうち、少なくとも1つのケース要素を、金属フレーム5と、該金属フレーム5に形成された開口部を塞ぐ樹脂カバー6と、による複合材構造とし、
前記金属フレーム5と前記樹脂カバー6の接合部を、前記金属フレーム5の開口縁部(フランジ部50)の変速機構側に露出する接合内面50aに対して前記樹脂カバー6の閉塞縁部60の接合外面60aをオーバーラップさせた重合接合部Dとした。
このため、ケース軽量化要求に応えながら、金属フレーム5と樹脂カバー6の接合部から変速機作動油を外部に漏らすことのない機密性を担保することができる。
(2) 前記金属フレーム5の開口縁部を、前記金属フレーム5の開口内面から開口部に向かって突出して設けたフランジ部50とした。
このため、(1)の効果に加え、金属フレーム5に対し樹脂カバー6を接合するとき、金属フレーム5と樹脂カバー6に多少の位置ずれがあっても位置決めしやすく、樹脂カバー6の接合作業性を向上させることができる。
(3) 前記金属フレーム5の接合内面50aの面粗度を、前記接合内面50a以外のフレーム表面の面粗度よりも下げて設定した。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、ケース内外の圧力差により金属フレーム5の粗い接合内面50aに沿って樹脂カバー6が接触変形することで、金属フレーム5と樹脂カバー6の重合接合部Dの密着性を向上させることができる。
(4) 前記金属フレーム5の接合内面50aを、ボールインデント状凹部50bによる凹凸粗面形状にした。
このため、(3)の効果に加え、ケース内外の圧力差により変形した樹脂カバー6がボールインデント状凹部50bに噛み込むことで、金属フレーム5と樹脂カバー6の重合接合部Dの密着性を高めることができる。
(5) 前記金属フレーム5と前記樹脂カバー6の重合接合部Dを、前記金属フレーム5の接合内面が全周にわたって滑らかに連続する環状構造とした。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、金属フレーム5と樹脂カバー6の全周にわたって密着し、変速機作動油の漏れを抑える機密性を高めることができる。
(6) 前記複数のケース要素(主変速ケース1、コンバータハウジング2、サイドカバー3)のうち、主変速ケース1にフランジ結合されるサイドカバー3を、金属フレーム5と樹脂カバー6による複合材構造とし、
前記金属フレーム5は、全周にわたって連続するフランジ(外周フランジ51)と、該フランジの異なる位置を繋ぐ補強リブ(第1リブ54,第2リブ55,第3リブ57)と、を有し、
前記樹脂カバー6(第1樹脂カバー61、第2樹脂カバー62)を、前記フランジ(外周フランジ51)と前記補強リブ(第1リブ54,第2リブ55,第3リブ57)により形成されたカバー開口(第1カバー開口6a、第2カバー開口6b)の環状構造による接合内面に接合した。
このため、(1)〜(5)の効果に加え、サイドカバー3の軽量化と、サイドカバー3への要求剛性の確保と、サイドカバー3の機密性確保と、を併せて達成することができる。
以上、本発明のトランスミッションケースを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、金属フレーム5と樹脂カバー6の接合部として、図7に示すように、金属フレーム5に形成したフランジ部50の接触内面50aに、樹脂カバー6の閉塞縁部60の接合外面60aをオーバーラップさせた重合接合部Dの例を示した。しかし、金属フレーム5と樹脂カバー6の接合部としては、図9に示すように、樹脂カバー6がフランジ部50を挟み込んで覆うようにした重合接合部D’としても良い。
実施例1では、本発明の重合接合部を、トランスミッションケースTCのサイドカバー3に適用する例を示した。しかし、本発明の重合接合部は、トランスミッションケースを構成する他のケース要素(主変速ケースやコンバータハウジング)に適用する例としても良い。さらに、トランスミッションケースを構成するケース要素(主変速ケース、コンバータハウジング、サイドカバー)のうち、2つのケース要素に適用する例や全てのケース要素に適用する例としても良い。
実施例1では、トランスミッションケースTCにベルト式無段変速機構4が内蔵されるベルト式無段変速機への適用例を示した。しかし、トランスミッションケースに複数の変速段を有する自動変速機構が内蔵される自動変速機や、トランスミッションケースにトロイダル式無段変速機構が内蔵されるトロイダル式無段変速機や、トランスミッションケースに平行軸式変速機構が内蔵される手動変速機、等のように、ベルト式無段変速機以外の他の変速機への適用であっても勿論良い。
TC トランスミッションケース
1 主変速ケース(ケース要素)
2 コンバータハウジング(ケース要素)
3 サイドカバー(ケース要素)
4 ベルト式無段変速機構(変速機構)
40 プライマリ軸(軸部材)
41 セカンダリ軸(軸部材)
5 金属フレーム
51 外周フランジ(フランジ)
52 第1ベアリング支持ボス
53 第2ベアリング支持ボス
54 第1リブ(補強リブ)
55 第2リブ(補強リブ)
56 第4リブ(補強リブ)
57 第3リブ(補強リブ)
6 樹脂カバー
6a 第1カバー開口(カバー開口)
6b 第2カバー開口(カバー開口)
61 第1樹脂カバー
62 第2樹脂カバー
D 重合接合部
50 フランジ部(開口縁部)
50a 接合内面
50b ボールインデント状凹部
60 閉塞縁部
60a 接合外面

Claims (5)

  1. 分割した複数のケース要素を互いにフランジ結合することにより構成され、内部に組み付けられる変速機構の軸部材を回転可能に支持するトランスミッションケースにおいて、
    前記分割した複数のケース要素のうち、少なくとも1つのケース要素を、金属フレームと、該金属フレームに形成された開口部を塞ぐ樹脂カバーと、による複合材構造とし、
    前記金属フレームと前記樹脂カバーの接合部を、前記金属フレームの開口縁部の変速機構側に露出する接合内面に対して前記樹脂カバーの閉塞縁部の接合外面をオーバーラップさせた重合接合部とし
    前記金属フレームと前記樹脂カバーの重合接合部を、前記金属フレームの接合内面が前記開口部の全周にわたって滑らかに連続し、前記樹脂カバーの接合外面が連続した前記接合内面に接合される環状構造とした
    ことを特徴とするトランスミッションケース。
  2. 請求項1に記載されたトランスミッションケースにおいて、
    前記金属フレームの開口縁部を、前記金属フレームの開口内面から開口部に向かって突出して設けたフランジ部とした
    ことを特徴とするトランスミッションケース。
  3. 請求項1又は2に記載されたトランスミッションケースにおいて、
    前記金属フレームの接合内面の面粗度を、前記接合内面以外のフレーム表面の面粗度よりも下げて設定した
    ことを特徴とするトランスミッションケース。
  4. 請求項3に記載されたトランスミッションケースにおいて、
    前記金属フレームの接合内面を、ボールインデント状凹部による凹凸粗面形状にした
    ことを特徴とするトランスミッションケース。
  5. 請求項1から4までの何れか1項に記載されたトランスミッションケースにおいて、
    前記複数のケース要素のうち、主変速ケースにフランジ結合されるサイドカバーを、金属フレームと樹脂カバーによる複合材構造とし
    前記金属フレームは、全周にわたって連続するフランジと、該フランジの異なる位置を繋ぐ補強リブと、を有し、
    前記樹脂カバーを、前記フランジと前記補強リブにより形成されたカバー開口の環状構造による接合内面に接合した
    ことを特徴とするトランスミッションケース。
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