本発明の第1の実施形態に係る消色装置を、図1〜6を用いて説明する。図1は、消色装置13を備えた画像形成装置1の内部構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、画像形成装置1は、筐体2と、筐体2内に収容される画像形成部6と、筐体2内に収容される給紙カセット14と、筐体2内に収容される消色装置13と、制御装置50と、を備えている。
画像形成部6は、転写ベルト3と、駆動ローラ4と、従動ローラ5と、現像器7と、感光体ドラム8と、現像ローラ9と、一次転写ローラ8aと、二次転写ローラ11と、を備えている。
転写ベルト3は、筐体2内の中央において、水平方向に延在する無端状のベルトである。転写ベルト3は、駆動ローラ4と従動ローラ5に掛け渡されている。転写ベルト3は、例えば、張設機構などによって、張設されている。転写ベルト3は、駆動ローラ4により駆動されて、図の矢印で示す反時計回り方向x1に循環移動する。
現像器7は、転写ベルト3に対して上方に配置されており、内部に消色性トナーを収容している。消色性トナーは、後述される消色光源24から発光される光によって、消色する性質を有している。
画像形成装置1は、消色性トナーの画像を消色したのち、その画像を消色した紙面に、消色性トナーによる新たな画像を印刷する。このため、画像形成装置1は、同一の紙に対して処理を施すことによって、当該紙を何回でも使用できる状態に戻すことができる。なお、ここで言う、使用できる状態とは、消色性トナーによって印刷された画像などが不可視となる状態であって、例えばいわゆる白紙となる状態である。
感光体ドラム8は、転写ベルト3に接するように設けられている。感光体ドラム8には、その周面を取り巻くように近接して、クリーナと、初期化帯電器と、光書込ヘッドとが配置されている。
現像ローラ9は、クリーナと、初期化帯電器と、光書込ヘッドに続いて配設されており、現像器7の下部開口部に保持されている。現像ローラ9は、現像器7に収容されている消色性トナーの薄層を表面に担持し、光書込ヘッドによって感光体ドラム8の周面上に形成されている静電潜像に消色性トナーの画像を現像する。
感光体ドラム8の下部には、転写ベルト3を介して一次転写ローラ8aが圧接するように配置されている。感光体ドラム8と一次転写ローラ8aとによって、一次転写部が形成されている。一次転写ローラ8aには、バイアス電源からバイアス電圧が供給される。
一次転写ローラ8aは、バイアス電源から供給されるバイアス電圧を転写ベルト3に印加して、感光体ドラム8の周面上に現像されている消色性トナーの画像を転写ベルト3に転写する。
従動ローラ5は、図中、転写ベルト3の右端部が掛け渡されている。従動ローラ5には、転写ベルト3を介して二次転写ローラ11が圧接している。従動ローラ5と二次転写ローラ11とによって、二次転写部が形成されている。二次転写ローラ11には、バイアス電源からバイアス電圧が供給される。
二次転写ローラ11は、バイアス電源から供給されるバイアス電圧を転写ベルト3に印加し、転写ベルト3に一次転写されている消色性トナーの画像を、図の下方から上方に二次転写経路10を通って搬送されてくる紙等の被印刷媒体12に転写する。
消色装置13は、転写ベルト3の下方に設けられている。消色装置13については、後で具体的に説明する。
消色装置13の下方には、給紙カセット14が設けられている。給紙カセット14には、消色性トナーが消色される前の被印刷媒体12が、複数枚収容されている。給紙カセット14には、給紙口14aが設けられている。給紙口14aは、図中、左上端部に設けられている。給紙口14aには、給紙ローラ15が配置されている。給紙ローラ15は、給紙カセット14から被印刷媒体12を一枚ごと取り出して給紙搬送経路16に送出する。
給紙カセット14の給紙口14aの近傍には、画像読取装置17が配置されている。画像読取装置17は、被印刷媒体12に印刷されている画像が消色性トナーによる画像であるか否かを判別する。画像が消色性トナー像である場合は、消色装置13は、被印刷媒体12の画像を消色し、画像が消色性トナー像でない場合は、消色装置13は、被印刷媒体12に対して処理を施さずに排出する。
被印刷媒体12は、給紙搬送経路16の先端にある給送ローラ対18により消色給送経路19を経由して消色装置13に給送される。消色装置13は、ハウジング13aと、紙搬入ローラ対25と、紙搬出ローラ対26と、消色搬送経路21と、ヒータ23と、消色光源24と、温度センサ41と、レール30と、図5に示す電動モータ31と、被印刷媒体後端検知センサ54と、被印刷媒体先端検知センサ54と、を備えている。
ハウジング13aは、紙搬入ローラ対25と、紙搬出ローラ対26と、消色搬送経路21と、ヒータ23と、消色光源24と、を収容している。ハウジング13aは、搬入口13bと、搬出口13cと、を有している。消色処理が施される前の被印刷媒体12は、搬入口13bを通してハウジング13a内に搬入される。消色処理が施された被印刷媒体12は、搬出口13cを通して、ハウジング13a外に搬出される。
紙搬入ローラ対25と消色搬送経路21とは、被印刷媒体12を、搬入口13bから搬出口13cまで導く。紙搬入ローラ対25は、搬入口13bの近傍に設けられている。紙搬出ローラ対26は、搬出口13cの近傍に設けられている。消色搬送経路21は、紙搬入ローラ対25と紙搬出ローラ対26との間に設けられている。消色搬送経路21は、直線状に延びている。
図2は、消色搬送経路21を示す斜視図である。なお、図2では、紙搬入ローラ対25と、紙搬出ローラ対26とは、省略されている。図2に示すように、消色搬送経路21は、両側端搬送装置37を備えている。両側端搬送装置37は、被印刷媒体12の搬送方向の両側に1つずつ配置されている。各両側端搬送装置37の構造は、同じである。
両側端搬送装置37は、上下二段に配置されて被印刷媒体12の搬送方向に延びる無端状ベルト36と、各無端状ベルト36内に収容される駆動ローラ33と従動ローラ34と押さえローラ35とを備えている。無端状ベルト36は、駆動ローラ33と従動ローラ34とに掛け渡されている。押さえローラ35は、無端状ベルト36の中央に配置されており、無端状ベルト36の中央部を押さえている。
両側端搬送装置37は、被印刷媒体12の両側端部を挟持して、被印刷媒体12を図2の矢印で示す搬送方向x2に搬送する。これにより、被印刷媒体12の両端部が熱により丸まること、及び、被印刷媒体12の先端部が下方に垂れ下がって消色搬送経路21から外れることを防止することができる。
図3は、消色搬送経路21の平面図である。図3に示すように、消色搬送経路21の近傍には、ヒータ接触防止装置40が設けられている。ヒータ接触防止装置40は、消色搬送経路21によって搬送される被印刷媒体12が、後述されるヒータ23に接触することを防止する機能を有する。
ヒータ接触防止装置40は、第1のワイヤ保持部39aと、第2のワイヤ保持部39bと、第1のヒータ接触防止ワイヤ38aと、第2のヒータ接触防止ワイヤ38bと、を備えている。
第1のワイヤ保持部39aは、消色搬送経路21の上方において被印刷媒体搬出ローラ対26の近傍に1つずつ設けられている。第1のワイヤ保持部39aは、被印刷媒体12に接触しておらず、それゆえ、被印刷媒体12の搬送を阻害するものではない。第1のワイヤ保持部39aは、被印刷媒体搬出ローラ対26に沿って延びており、一方の両側端搬送装置37の近傍から、他方の両側端搬送装置37の近傍まで延びている。
第2のワイヤ保持部39bは、消色搬送経路21の下方において被印刷媒体搬入ローラ対25の近傍に1つずつ設けられている。第2のワイヤ保持部39bは、被印刷媒体12に接触しておらず、それゆえ、被印刷媒体12の搬送を阻害するものではない。第2のワイヤ保持部39bは、被印刷媒体搬入ローラ対25に沿って延びており、一方の両側端搬送装置37の近傍から、他方の両側端搬送装置37の近傍まで延びている。なお、第2のワイヤ保持部39bは、第1のワイヤ保持部39aに対して上下方向に並んでおり、それゆえ、図示されていない。
第1のヒータ接触防止ワイヤ38aは、一端が一方の第1のワイヤ保持部39aに固定され、他端が他方の第1のワイヤ保持部39aに固定されている。第1のヒータ接触防止ワイヤ38aは、一例として、6本設けられている。各第1のヒータ接触防止ワイヤ38aは、被印刷媒体12の搬送方向x2に対して斜めとなる姿勢で、等間隔離間して並んでいる。
第2のヒータ接触防止ワイヤ38bは、一端が一方の第2のワイヤ保持部39bに固定され、他端が他方の第2のワイヤ保持部39bに固定されている。第2のヒータ接触防止ワイヤ38bは、一例として、6本設けられている。各第2のヒータ接触防止ワイヤ38bは、搬送方向x2に対して斜めとなる姿勢で、等間隔離間して並んでいる。なお、第2のヒータ接触防止ワイヤ38bは、被印刷媒体12に対して下方に位置しているため、図中、点線で示されている。
第1,2のヒータ接触防止ワイヤ38a,38bは、被印刷媒体12が、後述されるヒータ23の底面に接触するのを防止するとともに、被印刷媒体12の丸まりを上下から押さえることによって、被印刷媒体12が両側端搬送装置37から脱落するのを防止している。なお、被印刷媒体12が上述のように丸まっていない状態では、第1,2のヒータ接触防止ワイヤ38a,38bは、被印刷媒体12に接触せず、被印刷媒体12の搬送を阻害しない。
第1,2のヒータ接触防止ワイヤ38a,38bは、被印刷媒体12の搬送方向x2に対して斜めに張設されている。さらに、隣り合うワイヤ同士、広い間隔離間して配置されているので、後述されるヒータ23からの消色用輻射加熱と、後述される消色光源24からの消色用の照射光を遮ることはない。
図1に示すように、ヒータ23は、被印刷媒体搬入ローラ対25の近傍において、消色搬送経路21を挟んで両側に1つずつ配置されている。図4は、消色搬送経路21においてヒータ23の近傍を示す概略図である。図4に示すように、被印刷媒体12が一方のヒータ23と他方のヒータ23との間を搬送される状態を示している。図4では、被印刷媒体12を示すために、消色搬送経路21は、省略されている。各ヒータ23は、熱輻射面23aを有している。熱輻射面23aは、消色搬送経路21側に面している。また、各ヒータ23において熱輻射面23a以外は、断熱反射材などで覆われている。各ヒータ23の熱輻射面23aから輻射された熱は、移動している被印刷媒体12に輻射される。
図1に示すように、消色光源24は、ハウジング13a内において、ヒータ23に対して、搬送方向x2に進んだ位置に配置されている。消色光源24は、一対用いられており、一方の消色光源24は、消色搬送経路21に対して上方に位置し、他方の消色光源24は、被印刷媒体12に対して下方の位置している。
図5は、消色搬送経路21において、消色光源24の近傍を示す概略図である。なお、図5では、被印刷媒体12を示すために、消色搬送経路21は、省略されている。図5に示すように、消色光源24は、ヒータ23の近傍に配置されており、ヒータ23によって昇温された被印刷媒体12に消色光Lを照射する。
ここで、消色性トナーと、消色光とについて説明する。消色性トナーは、近赤外線吸収色素と消色剤とを樹脂に混練して形成されている。消色性トナーによって形成された画像は、常温では、近赤外線を照射されても消色反応が生じない。消色性トナーが溶融する状態で近赤外線が照射されると、消色反応が生じる。言い換えると、消色性トナーによって画像が形成された被印刷媒体12の温度が、消色性トナーが溶融する温度まで昇温された状態で近赤外線が照射されると、消色反応が生じる。本実施形態では、被印刷媒体12が120℃〜150℃の範囲にあるときに近赤外線が照射されると、消色反応が生じる。
消色光源24は、ハロゲンランプであり、近赤外線を照射する。本実施形態では、消色の一例として、近赤外線が用いられる。
各消色光源24は、レール30に移動可能に支持されている。レール30は、消色搬送経路21を挟んで上下の両側に1つずつ設けられている。レール30は、被印刷媒体12の搬送方向x2に平行に延びており、それゆえ、消色光源24の、搬送方向x2に平行な移動をガイドする。
消色光源24は、レール30に対して消色光源24を移動可能とする駆動部を介して、レール30に支持されている。本実施形態では、駆動部は、一例として、電動モータ31が用いられる。なお、図中、電動モータ31は、点線で示されている。電動モータ31は、後述される制御装置50によって、制御される。なお、図5中には、レール30によって移動した状態の消色光源24が、2点鎖線で示されている。
図1に示すように、温度センサ41は、ハウジング13aの外側に配置されている。温度センサ41は、消色装置13によって処理が施される前の被印刷媒体12の温度を検出する。このため、温度センサ41は、本実施形態では、一例として、給紙カセット14の近傍に配置されている。上述のように、被印刷媒体12が給紙搬送経路16と消色給送経路19とを通ってハウジング13aの搬入口13bに至る間において、被印刷媒体12の昇温の原因となるものは、筐体2内の温度である。このため、給紙カセット14の近傍の温度は、被印刷媒体12の温度と同じになる、または、略同じになるので、温度センサ41が検出した温度は、被印刷媒体12の温度と同じ、または、略同じになる。
被印刷媒体先端検知センサ55は、搬入口13bの近傍に設けられており、被印刷媒体12の先端を検知する。なお、被印刷媒体12の先端とは、搬送方向x2に沿う先端である。このため、被印刷媒体先端検知センサ55が被印刷媒体12の先端を検知したことは、被印刷媒体12が搬入口13bを通してハウジング13a内への搬入が開始されたことを示す。
被印刷媒体後端検知センサ54は、搬出口13cの近傍に設けられており、被印刷媒体12の後端を検知する。なお、被印刷媒体12の後端とは、搬送方向x2に沿う後端である。このため、被印刷媒体後端検知センサ54が被印刷媒体12の後端を検知したことは、被印刷媒体12が搬出口13cを通してハウジング13a内から搬出されたことを示す。
制御装置50は、画像形成装置1の全体を制御する。このため、本実施形態では、制御装置50は、消色装置13を制御する制御装置としても機能するため、消色装置13の構成の1つでもある。ここで、制御装置50の、被印刷媒体12を消色するために必要な各装置の制御について説明する。
制御装置50は、給紙ローラ15と、給送ローラ対18と、消色装置13とを制御する。画像読取装置17の検出結果と、温度センサ41の検出結果と、被印刷媒体先端検知センサ55の検知結果と、被印刷媒体後端検知センサ54の検知結果とは、制御装置50に送られる。
制御装置50は、温度センサ41の検出結果に基づいて、ハウジング13a内での被印刷媒体12の温度を推測する。被印刷媒体12のハウジング13a内での温度は、ハウジング13a内の温度と、ヒータ23から照射される輻射熱と、消色光源24から照射される近赤外線によって、決定される。
温度センサ41の検出結果が所定温度以上である場合、所定温度未満の場合に対して、照射部の照射量が減少するように制御する。照射量は、輝度(カンデラcd/m2)×時間である。照射量を減少させる方法としては、消色光源の移動、レンズやミラーの回動だけでなく、消色光源の照射を間引いたり、点滅させる方法、輝度を下げる方法等がある。更に、照射を途中で停止して照射時間を短くすることも考えられる。
制御装置50は、具体的には、以下の式(1)に基づいて、被印刷媒体12の温度を算出する。
Tp(t1,t2,v2)=α×Qh(t2)+β×Qa(t1)+T0+Γ(v2)・・・(式1)
Tpは、被印刷媒体12の温度であり、時間t1と、時間t2と、移動速度v2の関数である。t1,t2,v2は、変数である。
時間t1は、ヒータ23が始動してから経過した時間を示す。制御装置50は、例えばタイマなどの時間計測部によって、ヒータ23が始動してからの時間を計測している。本実施形態では、ヒータ23は、画像形成装置1が始動されると同時に始動される。つまり、時間t1は、画像形成装置1が始動してからの時間となる。
t2は、温度を算出する対象となる被印刷媒体12がハウジング13a内に搬入された時点からの時間を示す。つまり、被印刷媒体先端検知センサ55が被印刷媒体12を検知してからの時間である。なお、t2の時間の計測部は、これらに限定されない。例えば、他の方法によって時間t2が求められてもよい。
Qh(t2)は、ヒータ23から被印刷媒体12に対して輻射される熱量を示す。ヒータ23から被印刷媒体12に対して輻射される熱量は、被印刷媒体12がハウジング13a内に搬入されてからの時間t2の関数である。αは、ヒータ23から被印刷媒体12に輻射される熱量を被印刷媒体12の温度の変化に変換する変換係数である。変換係数αは、実験などによって、求めることができる。このため、ヒータ23から被印刷媒体12に輻射される熱量に起因する被印刷媒体12の温度変化は、α×Qh(t2)で表される。
Qa(t1)は、ハウジング13a内の空気の熱量を示す。ハウジング13a内の温度は、ヒータ23から輻射される輻射熱によって昇温する。このため、ハウジング13a内の空気の熱量は、ヒータ23が始動されてからの時間、言い換えると、画像形成装置1が始動されてからの時間t1の関数となる。βは、ハウジング13a内の空気の熱量に起因する被印刷媒体12の温度の変化量に変換する変換係数である。変換係数βは、実験などによって求めることができる。このため、ハウジング13a内の空気の熱量に起因する被印刷媒体12の温度変化は、β×Qa(t1)で表される。
Toは、ハウジング13a内に搬入される前の被印刷媒体12の温度である。Toは、温度センサ41によって検出された温度である。
Γは、消色光源24から照射される近赤外線に起因して上昇する温度である。Γは、近赤外線が照射される時間に比例して大きくなる。ここで、消色光源24が被印刷媒体12に当たる時間について、具体的に説明する。
消色光源24が発光する近赤外線は、被印刷媒体12上に絞られた状態で照射される。被印刷媒体12において、上述のように絞られた近赤外線が当たる位置を照射位置P1とする。近赤外線は、被印刷媒体12が消色搬送経路21を搬送されているときに被印刷媒体12に照射される。
被印刷媒体12に近赤外線が照射される時間は、近赤外線の照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度によって変化する。ここで、消色搬送経路21上での被印刷媒体12の搬送速度をv1とする。上述のように、消色光源24は、レール30に沿って、移動可能である。レール30は、消色搬送経路21と平行であるので、消色光源24の移動方向は、被印刷媒体12の移動方向に平行である。消色光源24の移動速度をv2とする。被印刷媒体12の消色搬送経路21上での搬送方向を正とすると、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度は、(v1−v2)となる。なお、消色光源24が移動しない場合は、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度は、v1となる。
被印刷媒体12に対する近赤外線の照射時間は、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度が上昇するほど、短くなる。このため、近赤外線に起因する被印刷媒体12の温度の変化は、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度によって変化する。なお、本実施形態では、被印刷媒体12の送り速度は、一定であり、変化しない。つまり、v1は一定値である。このため、本実施形態では、消色光源24に起因する被印刷媒体12の温度変化Γは、消色光源24の移動速度v2によって、変化する。つまり、Γは、移動速度v2の関数となる。
また、Γは、近赤外線が照射されているときに上昇する温度であるので、被印刷媒体12がハウジング13a内に搬入されてから近赤外線が照射されるまでの間は加算されず、赤外線が照射されてから、経過時間に応じて加算されるものである。
消色光源24の移動速度v2は、被印刷媒体12の温度Tp(t1,t2)が、被印刷媒体12が温度によって変質し始める変質開始温度Ts未満となるように、設定される。つまり、Tp(t1,t2,v2)={α×Qh(t2)+β×Qa(t1)+To+Γ(v2)}<Tsとなるように、消色光源24の移動速度v2が設定される。
上述のように、Γは、消色光源24の移動速度の関数となる。ここで、消色光源24の移動速度v2について、具体的に説明する。なお、消色光源24は、被印刷媒体12がヒータ23で加熱されている際に、被印刷媒体12に近赤外線を照射する。消色光源24の照射タイミングと、移動のタイミングとは、給紙カセット14からヒータ23までの距離と、被印刷媒体12の搬送速度とによって、予め求めることができる。
制御装置50は、被印刷媒体12に近赤外線が照射される直前の温度Tdに応じて、消色光源24の移動速度v2を決定する。つまり、Td+Γ(v2)<Tsとなる。消色搬送経路21上において被印刷媒体12に近赤外線が照射される位置は、予め決まっている。このため、この予め決定されている位置に被印刷媒体12が差し掛かる時間も予め求められるので、被印刷媒体12の近赤外線が照射される直前の温度Tdを求めることができる。
本実施形態では、消色光源24の移動速度v2は、一例として、3種類用いられる。移動速度v2のそれぞれを、第1の移動速度v21、第2の移動速度v22、第3の移動速度v23とする。それぞれの大きさの相対関係は、v21>v22>v23である。移動の方向は、被印刷媒体12の搬送方向x2に対して逆方向である。
本実施形態では、消色性トナーによって形成された画像を消色するために必要な温度は、一例として、120〜150℃である。ヒータ23は、被印刷媒体12が120℃〜150℃まで昇温するために熱を輻射するよう動作する。つまり、被印刷媒体12に近赤外線が照射される直前の温度は、120〜150℃の範囲内にある。そして、本実施形態では、被印刷媒体12が変質を開始する変質開始温度Tsは、200℃である。
消色光源24の移動速度は、被印刷媒体12の温度Tdによって、一例として、以下のように設定されている。被印刷媒体12の温度Tdが、120〜130℃であると、第3の移動速度v23が選択される。被印刷媒体12の温度Tdが、131〜140℃であると、第2の移動速度v22が選択される。被印刷媒体12の温度Tdが、141〜150℃であると、第1の移動速度v21が選択される。被印刷媒体12の温度Tdが120℃未満である場合は、消色光源24は、移動せず、停止している。
次に、画像形成装置1の動作を説明する。制御装置50は、印刷要求があると、給紙ローラ15と給送ローラ対18とを駆動して、給紙カセット14内に収容される被印刷媒体12を給紙搬送経路16に送る。このとき、画像読取装置17は、被印刷媒体12に印刷されている画像が消色性トナーによる画像であるか否かを判別するとともに、この判別結果を制御装置50に送信する。
給送ローラ対18まで搬送された被印刷媒体12は、給送ローラ対18によって、消色給送経路19に搬送される。消色給送経路19に搬送された被印刷媒体12は、搬入口13bを通って消色装置13のハウジング13a内に搬入される。上述のように、画像形成装置1が始動されると、同時に、ヒータ23が始動する。このことによって、ハウジング13a内は、昇温されている。また、制御装置50は、画像形成装置1が始動されてからの時間t1を計測し、記憶している。
被印刷媒体12が搬入口13bから被印刷媒体12が搬入されると、被印刷媒体先端検知センサ55が被印刷媒体12を検出する。検出結果は、制御装置50に送信される。制御装置50は、被印刷媒体先端検知センサ55が被印刷媒体12を検出すると、上述の画像読取装置17の検出結果に基づいて、被印刷媒体12に対して消色装置13において消色処理を施すか否かを判断する。
つまり、制御装置50は、被印刷媒体12の画像が消色性トナーによって形成されている場合、消色装置13を制御して、被印刷媒体12に形成される画像を消色する。また、被印刷媒体12に形成される画像が、消色性トナーで形成されるものではない場合、または、被印刷媒体12に画像が形成されていない場合は、制御装置50は、被印刷媒体12に対して消色処理を施さない。
制御装置50は、被印刷媒体12の画像が消色性トナーで形成されている場合は、被印刷媒体12がハウジング13a内に搬入されると、時間t2の計測を開始する。制御装置50は、時間t2に基づいて、近赤外線が照射される直前の被印刷媒体12の温度Td(t1,t2)を算出する。
また、制御装置50は、消色光源24を制御して近赤外線を発光させるとともに、温度Td(t1,t2)に基づいて消色光源24の移動速度を、第1〜3の移動速度v21〜v23のうちから選択する。消色光源24の搬送速度を選択すると、選択した移動速度で消色光源24を移動するべく、電動モータ24aを駆動する。消色光源24は、初期位置P2から終点位置P3まで移動する。消色光源24が初期位置P2から終点位置P3まで移動するときに、近赤外線が被印刷媒体12に照射される。
被印刷媒体12は、近赤外線が照射されることによって、昇温する。しかしながら、近赤外線に起因する被印刷媒体12の温度上昇は、近赤外線の照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度によって決定されるとともに、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度は、被印刷媒体12が変質する変質開始温度に到達しないように設定されている。
このため、被印刷媒体12は、近赤外線が照射されることによって画像が消色されるが、温度は変質を開始する変質開始温度未満を保つ。画像が消色された被印刷媒体12は、紙搬出ローラ対26によって搬送されて、搬出口13cから外部に出る。
ここで、被印刷媒体12の温度に変化について、一例を説明する。図6は、時間t1が異なる第1〜3の状態における被印刷媒体12のハウジング13a内の温度を示すグラフである。横軸は、各状態でのハウジング13a内に搬入されてからの時間t2を示している。横軸は、図中矢印に沿って進むにつれて、時間が経過したことを示す。縦軸は、被印刷媒体12の温度を示している。
第3の状態は、時間t1=t11のときに搬入口13bに到達した被印刷媒体12のハウジング13a内での温度変化を示し、図中線aで示される。第2の状態は、時間t1=t12のときに搬入口13bに到達した被印刷媒体12のハウジング13a内での温度変化を示し、図中線bで示される。第1の状態は、時間t1=t13のときに搬入口13bに到達した被印刷媒体12のハウジング1a内での温度変化を示し、図中線cで示される。t11<t12<t13である。
第3の状態では、ハウジング13a内の熱量が比較的少ない。このため、被印刷媒体12のハウジング13a内での温度上昇は、他の2つの状態に比べて小さい。時間t2がt21になると、ヒータ23から輻射された熱が被印刷媒体12に到達し始める。このことによって、被印刷媒体12の温度が上昇し始める。
そして、時間t2=t22になると、被印刷媒体12は、近赤外線が照射される位置まで搬送される。この位置に紙が搬送されると、消色光源24は、被印刷媒体12に対して近赤外線を照射すべき、移動を開始する。
つまり、時間t22のときの被印刷媒体12の温度が、上述の温度Tdとなる。第3の状態では、Tdは、125℃である。制御装置50は、被印刷媒体12の温度Td(t1,t2)が125℃であるので、消色光源24の移動速度として、第3の移動速度v23を選択する。被印刷媒体12の温度は、近赤外線が照射されることによって、130℃まで上昇する。
第2の状態では、ハウジング13a内の熱量は、第3の状態に比べて多くなる。このため、第2の状態では、温度Td(t1,t2)は、第3の状態の比べて大きくなり、138℃となる。このため、制御装置50は、消色光源24の移動速度として、第2の移動速度v22を選択する。被印刷媒体12の温度は、近赤外線が照射されることによって上昇するが、第3の状態に比べて近赤外線が照射される時間が短くなるので、近赤外線に起因する温度上昇の程度は、第3の状態に比べて小さくなる。第2の状態では、被印刷媒体12は、近赤外線に起因して140℃まで上昇する。
第1の状態では、ハウジング13a内の熱量は、第2の状態に比べて多くなる。このため、第1の状態では、温度Td(t1,t2)は、第2の状態に比べて大きくなり、145℃となる。このため、制御装置50は、少々消色光源24の移動速度として、第1の移動速度v21を選択する。第1の移動速度v21が選択されることによって、近赤外線の被印刷媒体12に対する照射時間がより一層短くなるので、近赤外線に起因する温度上昇は、小さくなる。この結果、第1の状態では、被印刷媒体12の温度は、近赤外線の照射の前後において、略変化しない。
被印刷媒体12の温度は、近赤外線が照射されたときに最大となり、ハウジング13a内の温度よりも高くなる。このため、近赤外線の照射が終了すると、被印刷媒体12の温度は、線a,b,cに示すように、低下する。
なお、本実施形態では、被印刷媒体12の温度Tdが120℃未満である場合は、移動しない消色光源24から照射される近赤外線に起因して温度が上昇しても、変質温度200以上となることがない。このため、近赤外線が照射される直前の温度であるTdが120℃未満である場合は、消色光源24は、移動しない。
近赤外線が照射された後では、搬出口13cに至るまで、被印刷媒体12が変質する温度まで昇温されることがない。つまり、被印刷媒体12は、ハウジング13a内で変質することがない。被印刷媒体後端検知センサ54が被印刷媒体12の後端を検知すると、制御装置50は、被印刷媒体12がハウジング13aから搬出されたと判断する。
制御装置50は、被印刷媒体12がハウジング13aから搬出されると、画像形成部6の、現像器7と感光体ドラム8と現像ローラ9と駆動ローラ4となどを制御して印刷する画像を転写ベルト3に一次転写するとともに、二次転写ローラ11を駆動して被印刷媒体12を二次転写経路10内に搬送して被印刷媒体12に画像を二次転写する。
画像が転写された被印刷媒体12は、定着搬送経路27内に搬送される。制御装置50は、定着ローラ29を回動して、被印刷媒体12に形成された画像を被印刷媒体12に定着する。画像が定着された被印刷媒体12は、排出される。
このように構成される画像形成装置1では、消色光源24を移動して近赤外線の照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度を調整することによって、消色光源24として近赤外線を照射するハロゲンランプを用いることに起因する被印刷媒体12の温度上昇を調整することができる。このことにより、被印刷媒体12が変質開始温度以上になることを抑制することができるので、被印刷媒体12が変質することを抑制することができる。
また、消色光源24を、被印刷媒体12の搬送方向x2に対して逆方向に搬送することによって、消色光源24の移動距離を最短距離にできるので、レール30が長くなることを抑制できる。つまり、消色光源24を移動するための部をコンパクトにすることができる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る消色装置を、図7を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、消色光の照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度を調整する相対速度調整部が第1の実施形態と異なる。
本実施形態では、消色光源24は移動しない。このため、本実施形態では、消色装置13は、レール30と電動モータ31とを備えていない。図7は、本実施形態の消色光源24の近傍を示す概略図である。図7に示すように、消色光源24が発光した消色光を被印刷媒体12に照射するための光学系の一例として、レンズ60と、レンズ60を回動する回動機構の一例である電動モータ61とを備えている。電動モータ61は、図中点線で示されている。
制御装置50は、電動モータ61の動作を制御して、レンズ60の位置を初期位置P2から終点位置P3まで回動する。図中回動軸をPで示す。レンズ60が回転軸P回りに初期位置P2から終点位置P3まで回動することによって、消色光源24が発光した消色光の照射位置P1を、被印刷媒体12の搬送方向x2に対して逆方向に移動する。
制御装置50は、電動モータ61の回転速度を制御することによって照射位置P1の移動速度を、第1の実施形態と同様に、第1〜3の移動速度v21〜v23の範囲で調整する。なお、本実施形態において上述以外の構造は、第1の実施形態と同じである。
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、消色光源24を移動するのではなく、消色光源24が発光した消色光を被印刷媒体12に照射する光学系を移動する。このため、移動する対象物が、消色光源24に対して比較的小さく、かつ、移動しやすいものになるので、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度を調整する構造を、比較的簡素にすることができる。
次に、本発明の第3の実施形態に係る消色装置を、図8を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、消色光の照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度の調整部が第1の実施形態と異なる。
本実施形態では、消色光源24は移動しない。このため、本実施形態では、消色装置13は、レール30と電動モータ31とを備えていない。図8は、本実施形態の消色光源24の近傍を示す概略図である。図8に示すように、本実施形態では、消色装置13は、消色光源24が発光した消色光を被印刷媒体12に照射するための光学系の一例として、ミラー70と、ミラー70を回動する回動機構の一例である電動モータ71とを備えている。
制御装置50は、電動モータ71の動作を制御して、ミラー70の位置を初期位置P2から終点位置P3まで回動する。図中回動軸をPで示す。ミラー70を回転軸P回りに初期位置P2から終点位置P3に向って回動することによって、消色光源24が発光した消色光の照射位置P1を、被印刷媒体12の搬送方向x2に対して逆方向に移動する。
制御装置50は、電動モータ71の回転速度を制御することによって照射位置P1の移動速度を、第1〜3の移動速度v21〜v23の範囲で調整し、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度を調整する。なお、本実施形態において上述以外の構造は、第1の実施形態と同じである。
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、消色光源24を移動するのではなく、消色光源24が発光した消色光を被印刷媒体12に照射する光学系を移動する。このため、移動する対象物が消色光源24に対して比較的小さく、かつ、移動しやすいものになるので、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度を調整する構造を、比較的簡素にすることができる。
次に、本発明の第4の実施形態に係る消色装置を、図9を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度を調整するために、消色光源24を移動するのではなく、消色搬送経路21における被印刷媒体12の搬送速度を調整する。
本実施形態では、消色装置13は、レール30と、電動モータ14bとを備えていない。さらに、消色搬送経路21における搬送速度が調整可能である。この構成に変更に伴い、制御装置50の動作が第1の実施形態に対して異なる。制御装置50は、被印刷媒体12の温度Tdに応じて消色搬送経路21での被印刷媒体12搬送速度v1を調整し、近赤外線の照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度を調整する。
本実施形態では、消色光源24が移動せず、被印刷媒体12の搬送速度v1が変わるので、近赤外線の起因する温度上昇のΓは、v1の関数となる。さらに、搬送速度v1が変わることによって、ヒータ23から輻射される熱量が変化するので、ヒータ23に起因する温度上昇は、α×Qh(t2,v1)となり、時間t2と速度v1の関数となる。
このため、本実施形態では、ハウジング13a内での被印刷媒体12の温度は、時間t1,t2と、速度v1の関数となり、Pt(t1,t2,v1)={α×Qh(t2,v1)+β×Qa(t1)+To+Γ(t1)}となる。
ここで、被印刷媒体12の搬送速度v1について、具体的に説明する。制御装置50は、被印刷媒体12に近赤外線が照射される直前の温度Tdに応じて、消色搬送経路21による被印刷媒体12の搬送速度v1を決定する。本実施形態では、被印刷媒体12の搬送速度v1は、一例として、4種類用いられる。搬送速度v1のそれぞれを、第1の搬送速度v11、第2の搬送速度v12、第3の搬送速度v13、第4の搬送速度v14とする。それぞれの大きさの相対関係は、v11>v12>v13>v14である。第1〜4の搬送速度v11〜v14によって進む被印刷媒体12の搬送方向は、いずれも、x2である。
第4の搬送速度v14は、初期速度であり、被印刷媒体12に近赤外線が照射される位置までは、被印刷媒体12は、第4の搬送速度v14で搬送される。第4の搬送速度v4は、第1の実施形態で用いられた被印刷媒体12の搬送速度v1と同じである。
第1〜3の搬送速度v11〜v13は、被印刷媒体12において近赤外線が照射される直前の温度Tdによって、一例として、以下のように設定されている。被印刷媒体12の温度Tdが、121〜130℃であると、第3の搬送速度v13が選択される。被印刷媒体12の温度Tdが、131〜140℃であると、第2の搬送速度v12が選択される。被印刷媒体12の温度Tdが、141〜150℃であると、第1の搬送速度v11が選択される。被印刷媒体12の温度Tdが120℃未満である場合は、搬送速度v1は、第4の搬送速度v4が維持される。
被印刷媒体12の温度に変化について、一例を説明する。図9は、時間t1が異なる第1〜3の状態における被印刷媒体12のハウジング13a内の温度を示すグラフである。横軸は、各状態での時間t2、つまり、ハウジング13a内に搬入されてからの時間を示している。横軸は、図中矢印に沿って進むにつれて、時間が経過したことを示す。縦軸は、被印刷媒体12の温度を示している。
第3の状態は、時間t1=t14のときに搬入口13bに到達した被印刷媒体12のハウジング13a内での温度変化を示し、図中線dで示される。第2の状態は、時間t1=t15のときに搬入口13bに到達した被印刷媒体12のハウジング13a内での温度変化を示し、図中線eで示される。第1の状態は、時間t1=t16のときに搬入口13bに到達した被印刷媒体12のハウジング13a内での温度変化を示し、図中線fで示される。t14<t15<t16である。
第3の状態では、ハウジング13a内の熱量が比較的少ない。このため、被印刷媒体12のハウジング13a内での温度上昇は、他の2つの状態に比べて小さい。時間t2がt21になると、ヒータ23から輻射された熱が被印刷媒体12に到達し始める。このことによって、被印刷媒体12の温度が上昇し始める。
そして、時間t2=t22になると、被印刷媒体12は、近赤外線が照射される位置まで搬送される。この位置までは、被印刷媒体12は、第4の搬送速度v14で搬送される。
つまり、時間t22のときの被印刷媒体12の温度が、上述の温度Tdとなる。第3の状態では、Tdは、125℃である。制御装置50は、被印刷媒体12の温度Td(t1,t2)が125℃であるので、搬送速度v1として、第3の搬送速度v13を選択する。被印刷媒体12の温度は、近赤外線が照射されることによって、130℃まで上昇する。
第2の状態では、ハウジング13a内の熱量は、第3の状態に比べて多くなる。このため、第2の状態では、温度Td(t1,t2)は、第3の状態の比べて大きくなり、138℃となる。このため、制御装置50は、搬送速度として、第2の搬送速度v12を選択する。被印刷媒体12の温度は、近赤外線が照射されることによって上昇するが、第3の状態に比べて近赤外線が照射される時間が短くなるので、近赤外線に起因する温度上昇の程度は、第3の状態に比べて小さくなる。第2の状態では、被印刷媒体12は、近赤外線に起因して140℃まで上昇する。
第1の状態では、ハウジング13a内の熱量は、第2の状態に比べて多くなる。このため、第1の状態では、温度Td(t1,t2)は、第2の状態に比べて大きくなり、145℃となる。このため、制御装置50は、少々消色光源24の移動速度として、第1の移動速度v21を選択する。第1の移動速度v21が選択されることによって、近赤外線の被印刷媒体12に対する照射時間がより一層短くなるので、近赤外線に起因する温度上昇は、小さくなる。この結果、第1の状態では、被印刷媒体12の温度は、近赤外線の照射の前後において、略変化しない。
被印刷媒体12の温度は、近赤外線が照射されたときに最大となり、ハウジング13a内の温度よりも高くなる。このため、近赤外線の照射が終了すると、被印刷媒体12の温度は、線d,e,fに示すように、低下する。
なお、本実施形態では、被印刷媒体12の温度Tdが120℃未満である場合は、移動しない消色光源24から照射される近赤外線に起因して温度が上昇しても、変質温度200以上となることがない。このため、近赤外線が照射される直前の温度であるTdが120℃未満である場合は、搬送速度v1は、第4の搬送速度v14が維持される。
このことによって、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度を、第1の実施形態と同様にすることができるので、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、消色光源24を移動することがないので、消色装置13の構造を簡素にすることができる。
なお、第1、2,3の実施形態においても、本実施形態と同様に、被印刷媒体12の搬送速度を調整してもよい。つまり、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度を調整するために、被印刷媒体12の搬送速度v1を調整するとともに、照射位置P1を移動してもよい。この場合、第1の実施形態と同様に、消色光源24を移動してもよい。または、第2,3の実施形態と同様に、光学系を移動してもよい。
このように、被印刷媒体12の搬送速度と照射位置P1とを両方調整することによって、相対速度の調整幅を大きくすることができる。
なお、第1〜4の実施形態では、照射位置P1に対する被印刷媒体12の相対速度は、被印刷媒体12の温度が120℃以上になると、調整される。120℃は、本発明で言う所定温度の一例である。
被印刷媒体12は、本発明で言う、被消色物の一例である。消色搬送経路21は、本発明で言う搬送部の一例である。消色光源24は、本発明で言う消色光源の一例であるとともに、第1の実施形態では、本発明で言う照射部の一例である。レール30と電動モータ31とは、本発明で言う相対速度調整部の一例を構成するとともに、本発明で言う光源移動部の一例を構成している。
温度センサ41と制御装置50とは、本発明でいう温度検出部の一例を構成している。他の手段としては、ハウジング13a内に温度センサを設けてハウジング13a内の温度を検出し、この検出結果に基づいて被印刷媒体12の温度を推測してもよい。
制御装置50は、本発明で言う制御部の一例である。レンズ60は、本発明で言う光学系の一例である。電動モータ61は、本発明で言う回動部の一例である。また、第2の実施形態では、レンズ60と電動モータ61と消色光源24とは、本発明で言う照射部の一例を構成する。また、レンズ60と電動モータ61とは、本発明で言う、相対速度調整部の一例を構成している。
第3の実施形態では、ミラー70は、本発明で言う光学系の一例である。また、電動モータは、本発明で言う回動部の一例である。また、消色光源24とミラー70と電動モータ71とは、本発明で言う照射部の一例を構成している。また、ミラー70と電動モータ71とは、本発明で言う相対速度調整部の一例を構成している。
本発明について、第1〜4の実施形態を例にして説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とのその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
被印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記被印刷媒体を加熱するヒータと、
前記ヒータによって加熱された前記被印刷媒体に前記消色光を照射する照射部と、
前記被印刷媒体の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部の検出結果が所定温度以上である場合、所定温度未満の場合に対して、前記照射部の照射量が減少するように制御する制御部と
を具備することを特徴とする消色装置。
[付記2]
前記制御部は、前記消色光の照射位置に対する前記被印刷媒体の相対速度を上昇するように制御し、
前記消色光の照射位置に対する前記被印刷媒体の相対速度を調整する相対速度調整部を具備する
ことを特徴とする付記1に記載の消色装置。
[付記3]
前記照射部は、前記消色光を発光する消色光源を具備し、
前記相対速度調整部は、前記消色光源を移動する消色光源移動部であって、前記消色光源を移動することによって、前記消色光の照射位置に対する前記被印刷媒体の相対速度を調整する
ことを特徴とする付記2に記載の消色装置。
[付記4]
前記消色光源移動部は、前記消色光源を、前記被印刷媒体の搬送方向に平行な方向に移動する
ことを特徴とする付記3に記載の消色装置。
[付記5]
前記照射部は、前記消色光を発光する消色光源と、前記消色光源から照射された消色光を前記被印刷媒体側に導く光学系とを具備し、
前記相対速度調整部は、前記光学系であって、前記消色光源から照射された消色光を調整することによって前記消色光の照射位置に対する前記被印刷媒体の相対速度を調整する
ことを特徴とする付記2に記載の消色装置。
[付記6]
前記光学系は、レンズと、前記レンズを回動する回動部とを具備し、前記回動部が前記レンズを回動することによって、前記消色光の照射位置に対する前記被印刷媒体の相対速度を調整する
ことを特徴とする付記5に記載の消色装置。
[付記7]
前記光学系は、ミラーと、前記ミラーを回動する回動部とを具備し、前記回動部が前記ミラーを回動することによって、前記消色光の照射位置に対する前記被印刷媒体の相対速度を調整する
ことを特徴とする付記5に記載の消色装置。
[付記8]
前記相対速度調整部は、前記搬送部であって、前記被印刷媒体の搬送速度を調整することによって、前記消色光の照射位置に対する前記被印刷媒体の相対速度を調整する
ことを特徴とする付記2に記載の消色装置。
[付記9]
消色光によって消色可能な消色部を有する被印刷媒体を搬送し、
前記被印刷媒体を加熱し、
前記ヒータによって加熱された前記被印刷媒体に前記消色光を照射し、
前記被印刷媒体の温度を検出し、
前記温度検出部の検出結果が所定温度以上である場合、所定温度未満の場合に対して、前記照射部の照射量が減少するように制御する
ことを特徴とする消色方法。
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。