JP5787914B2 - 正帯電型電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents

正帯電型電子写真感光体及び画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、正帯電型電子写真感光体及びそれを用いた画像形成装置に関する。
電子写真方式の画像形成装置に備えられる電子写真感光体としては、セレン等の無機材料からなる感光層を備える無機系感光体と、主に、バインダー樹脂、電荷発生材料、電荷輸送材料等の有機材料からなる感光層を備える有機感光体とがある。そして、これらの感光体のなかでは、無機系感光体と比較して製造が容易であり、感光層の材料を幅広い材料から選択できて設計の自由度が高いことから有機系感光体が幅広く使用されている。
このような感光体には、負帯電型のものと正帯電型のものとがある。負帯電型では、正帯電型に比べて帯電時に用いるコロナ放電が不安定であること、オゾンや窒素酸化物等を発生させるために、これらが感光体表面に吸着して、物理的、化学的劣化を引き起こしやすいこと、環境を悪化すること等の問題がある。このような点から、感光体としては負帯電型感光体よりも使用条件の自由度の大きい正帯電型感光体の方が、その適用範囲が広く有利である。
このような正帯電で使用される電子写真感光体として、例えば、積層型の電子写真感光体を用いることが提案されている(特許文献1)。しかしながら、前記正帯積層型感光体は表層側に電荷発生層が設けられるため、磨耗による特性変化が大きく十分な耐久性を確保できないという問題があった。
一方、単層型の電子写真感光体は、その感光層中に電荷輸送材料として電子輸送材料と正孔輸送材料の両方を含むため、正負両極性に対し感度を有している。そのため、単層型の電子写真感光体は、現在正帯電方式の電子写真感光体として主流となっている。
特開昭64−40834号公報
一方、単層型の電子写真感光体は電荷発生材料を均一に感光層全体に分散させるため、電荷発生領域は感光層の表層及びその近傍が主であり、それ以外の領域の電荷発生材料はかえって電荷輸送の妨げとなるという問題があった。そのため、従来の単層型感光体は感度の点で十分なものとはいえなかった。
本発明は、従来の正帯電単層型電子写真感光体よりも、更に高感度化した正帯電型電子写真感光体を提供することを目的とする。また、本発明は、当該正帯電型電子写真感光体を像担持体として備える画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、電荷輸送機能を有する材料とバインダー樹脂からなる第1層と電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、及びバインダー樹脂を同一層内に含む第2層の間に特定の樹脂を含有する中間層を設けることにより、浸漬塗工が可能であり、電荷輸送速度が速く高感度であることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
本発明の第一の態様の正帯電型電子写真感光体は、導電性基体上に、(I)少なくとも正孔輸送材料とバインダー樹脂からなる電荷輸送層、(II)少なくとも電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、及びバインダー樹脂を同一層内に含む電荷発生・輸送層が、少なくともこの順で積層された正帯電型の電子写真感光体において、前記電荷輸送層と、前記電荷発生・輸送層におけるバインダー樹脂が異なるものであり、どちらか一方にポリビニルアセタール樹脂を含有することを特徴とする。
本発明の第二の態様の正帯電型電子写真感光体は、導電性基体上に、(I)少なくとも正孔輸送材料とバインダー樹脂からなる第一電荷輸送層、(II)少なくとも正孔輸送材料とバインダー樹脂からなる第二電荷輸送層、(III)少なくとも電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、及びバインダー樹脂を同一層内に含む電荷発生・輸送層が、少なくともこの順で積層された正帯電型の電子写真感光体において、前記第二電荷輸送層におけるバインダー樹脂がポリビニルアセタール樹脂を含有し、且つ、前記第一電荷輸送及び前記電荷発生・輸送層におけるバインダー樹脂がポリビニルアセタール樹脂を含有しないことを特徴とする。
本発明の第三の態様の画像形成装置は、
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電するための帯電部と、
帯電された前記像担持体の表面を露光して前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光部と、
前記静電潜像をトナー像として現像するための現像部と、
前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写部と、を備え、前記像担持体が、第一の態様又は第二の態様に係る正帯電単層型電子写真感光体である。
本発明によれば、従来の正帯電単層型電子写真感光体よりも、更に高感度化した正帯電型電子写真感光体を提供することができる。また、本発明によれば、当該正帯電型電子写真感光体を像担持体として備える画像形成装置を提供することができる。
第一及び第二の態様に係る電子写真感光体の構成を示す図である。 第二の態様に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。
以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
[第一実施態様]
本発明の第一の態様の正帯電型電子写真感光体は、導電性基体上に、(I)少なくとも正孔輸送材料とバインダー樹脂からなる電荷輸送層、(II)少なくとも電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、及びバインダー樹脂を同一層内に含む電荷発生・輸送層が、少なくともこの順で積層された正帯電型の電子写真感光体において、前記電荷輸送層と、前記電荷発生・輸送層におけるバインダー樹脂が異なるものであり、どちらか一方にポリビニルアセタール樹脂を含有することを要する。
以下、図1を用い、本発明の第一の態様の正帯電型電子写真感光体について説明する。図1(a)に示す正帯電型電子写真感光体10のように、正帯電型電子写真感光体10は導電性基体11上に塗布等の手段によって、少なくとも正孔輸送材料とバインダー樹脂からなる電荷輸送層12を形成し、次いでこの電荷輸送層12上に、少なくとも電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、及びバインダー樹脂を含む電荷発生・輸送層13を形成することにより作成できる。
また、図1(b)に示す正帯電型電子写真感光体10のように、感光層を形成する前に、導電性基体11上に、下引き層15を予め形成しておくことも好ましい。下引き層15を設けることにより、導電性基体11側の電荷の感光層への注入を防ぐとともに、感光層の導電性基体11上への結着を強固にし、導電性基体11の表面上の欠陥を被覆して平滑化することができるためである。
以下、本発明の第一の態様の正帯電型電子写真感光体に関し、導電性基体、電荷輸送層、電荷発生・輸送層及び感光層の作成方法について順に説明する。
〔導電性基体〕
導電性基体は、電子写真感光体の導電性基体として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、導電性を有する材料で少なくとも表面部が構成されるもの等が挙げられる。すなわち、具体的には、例えば、導電性を有する材料からなるものであってもよいし、プラスチック材料等の表面を、導電性を有する材料で被覆したものであってもよい。また、導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等が挙げられる。また、導電性を有する材料としては、導電性を有する材料を1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて、例えば、合金等として用いてもよい。また、導電性基体としては、上記の中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましい。そうすることによって、より好適な画像を形成することができる感光体を提供することができる。このことは、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることによると考えられる。
導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択することができ、例えば、シート状、ドラム状等の基体が好適に使用できる。また、導電性基体の厚みは上記形状に応じて適宜選択することができる。
〔電荷輸送層〕
電荷輸送層は、少なくとも正孔輸送材料(HTM)とバインダー樹脂を含有する。ここで、使用される正孔輸送材料としては、通常の電子写真感光体の感光層に含まれる正孔輸送材料として用いることができるものであれば、特に限定されない。正孔輸送材料の具体例としては、ベンジジン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等が挙げられる。これらの正孔輸送材料の中では、分子中に1又は複数のトリフェニルアミン骨格を有するトリフェニルアミン系化合物がより好ましい。これらの正孔輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
バインダー樹脂としては、電子写真感光体の感光層に含まれるバインダー樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されない。バインダー樹脂として好適に使用される樹脂の具体例としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂等の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート共重合樹脂等の光硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの樹脂の中では、加工性、機械的特性、光学的特性、耐摩耗性のバランスに優れた感光層が得られることから、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂、及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂がより好ましい。
本発明の電荷輸送層中の正孔輸送材料の各含有量は、適宜選定され特に限定されない。具体的には、例えば、正孔輸送材料の含有量は、バインダー樹脂に対して、15wt%以上150wt%以下であることが好ましく、30wt%以上100wt%以下であることがより好ましい。
電荷輸送層の厚さは1〜40μmであることが好ましい。電荷輸送層の厚さを1μm以上で塗布することで、均一な厚さの電荷輸送層を形成することができる。一方、電荷輸送層の厚さを40μm以下にすることで、機械的強度の低下を防止できる。電荷輸送層の厚さは5〜35μmであることがより好ましい。
〔電荷発生・輸送層〕
電荷発生・輸送層は、電荷輸送層上に設けられ、同一層内に少なくとも電荷発生材料(CGM)、電子輸送材料(ETM)、正孔輸送材料(HTM)及びバインダー樹脂を含む。ここで使用される電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料及びバインダー樹脂は、従来から電子写真感光体の感光層の調製に使用されているものであれば、特に限定されることなく使用することができる。
電荷発生・輸送層に使用される正孔輸送材料(HTM)及びバインダー樹脂については、上記電荷輸送層において説明したものが同様にして使用することができる。
電荷発生・輸送層に使用される電子輸送材料(ETM)の具体例としては、ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノン誘導体、アゾキノン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体等のキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等が挙げられる。電子輸送材料は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷発生材料(CGM)の具体例としては、下記式(1)で表されるX型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)、Y型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
Figure 0005787914
これらのなかでも、Y型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)や、オキソチタニルフタロシアニンであって、特に(A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有し、且つ、(B)示差捜査熱量分析において、吸着水の気化にともなうピーク以外に270〜400℃の範囲内に、1つのピークを有すもの(k−TiOPc)を感度の点で好ましい。
電荷発生材料は、所望の領域に吸収波長を有するように、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。更に、前述の各電荷発生材料のうち、特に半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンターやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、無金属フタロシアニンやオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、上記フタロシアニン系顔料の結晶形については特に限定されず、種々のものが使用される。
電荷発生・輸送層中の電荷発生材料(CGM)、電子輸送材料(ETM)、正孔輸送材料(HTM)、及びバインダー樹脂の各含有量は、適宜選定され特に限定されない。具体的には、例えば、電荷発生材料の含有量は、バインダー樹脂に対して、1wt%以上20wt%以下であることが好ましく、2wt%以上10wt%以下であることがより好ましい。電子輸送材料(ETM)の含有量は、バインダー樹脂に対して、15wt%以上120wt%以下であることが好ましく、30wt%以上100wt%以下であることがより好ましい。正孔輸送材料(HTM)の含有量は、バインダー樹脂に対して、15wt%以上120wt%以下であることが好ましく、20wt%以上90wt%以下であることがより好ましい。各材料の使用料がこの範囲内であれば、感光体を正に帯電して本発明の条件で測定した電位の絶対値差を小さくでき、転写メモリが発生しにくくなる
電荷発生・輸送層の厚さは1〜20μmであることが好ましい。電荷発生・輸送層の厚さを1μm以上で塗布することで、均一な厚さの電荷発生・輸送層を形成することができる。一方、電荷発生・輸送層の厚さを20μm以下にすることで、機械的強度の低下を防止できる。電荷発生・輸送層の厚さは3〜15μmであることがより好ましい。
(正帯電型電子写真感光体の製造方法)
本発明の正帯電型電子写真感光体の製造方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な例としては、感光層用の塗布液を感光層支持体上に塗布して感光層を形成する方法が挙げられる。
具体的には、まず、電荷輸送材料、バインダー樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた塗布液を感光層支持体上に塗布し、乾燥することによって、電荷輸送層を形成する。採用する塗布方法は、特に限定されないが、例えば、スピンコーター、アプリケーター、スプレーコーター、バーコーター、ディップコーター、ドクターブレード等を用いる方法が挙げられる。これらの塗布方法の中では、連続生産が可能で経済性に優れるため、ディップコーターを用いる浸漬法が好ましい。また、感光層支持体上に形成された塗膜の乾燥方法としては、例えば、80〜150℃で15〜120分間の条件で熱風乾燥する方法等が挙げられる。
続いて、電荷発生材料、電荷輸送材料、前記電荷輸送層に用いたものとは異なるバインダー樹脂、及び必要に応じて各種添加材料等を溶剤に溶解又は分散させた塗布液を上記電荷輸送層が設けられた支持体上に、上記と同様にして塗布乾燥し、電荷発生・輸送層を形成する。
電荷輸送層及び電荷発生・輸送層を設ける際には、各層に含まれるバインダー樹脂として異なるものを採用し、且つ、どちらか一方の塗布液にバインダー樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を含有させる必要がある。電荷輸送層及び電荷発生・輸送層に含まれるバインダー樹脂として同一の樹脂を用いる場合、塗布液を重ね塗りして電荷輸送層と電荷発生・輸送層とを積層する際に、電荷輸送層と電荷発生・輸送層とが相溶してしまい、感光体の感度に代表される諸特性に悪影響が生じる場合がある。電荷輸送層及び電荷発生・輸送層に含まれる2種のバインダー樹脂について、一方をポリビニルアセタール樹脂とし、他方をポリビニルアセタール樹脂以外の他の樹脂とすることで、塗布液を重ね塗りして積層型の感光層を形成する際のこのような不具合を避けることができる。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させてアセタール化した樹脂であり、例えば、ポリビニルホルマール樹脂とポリビニルブチラール樹脂とを挙げる事ができる。ポリビニルアセタール樹脂の分子量やアセタール化度は特に限定されないが、その粘度平均分子量が10000以上200000以下であり、アセタール化度60モル%以上80モル%未満程度のものを使用するのが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂について、併用する他のバインダー樹脂や電荷発生材料、電荷郵送材料、各種添加剤等との相溶性、有機溶剤への溶解性等を考慮して、最適な分子量及びアセタール化度を選定するのが望ましい。
感光層用の塗布液に含有される溶剤としては、感光層を構成する各成分を溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性有機溶媒が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷輸送層及び/又は電荷発生・輸送層には、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、上記した電荷発生材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、及びバインダー樹脂の他に、各種添加剤を含んでいてもよい。感光層に配合できる添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、多環芳香族化合物、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、オイル、アクセプター、ドナー、界面活性剤、及びレベリング剤等が挙げられる。
[第二実施態様]
第二の態様の正帯電型電子写真感光体は、導電性基体上に、(I)少なくとも正孔輸送材料とバインダー樹脂からなる第一電荷輸送層、(II)少なくとも正孔輸送材料とバインダー樹脂からなる第二電荷輸送層、(III)少なくとも電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、及びバインダー樹脂を同一層内に含む電荷発生・輸送層が、少なくともこの順で積層された正帯電型の電子写真感光体において、前記第二電荷輸送層におけるバインダー樹脂がポリビニルアセタール樹脂を含有し、且つ、前記第一電荷輸送及び前記電荷発生・輸送層におけるバインダー樹脂がポリビニルアセタール樹脂を含有しないことを要する。
以下、図1を用い、本発明の第二の態様の正帯電型電子写真感光体について説明する。正帯電型電子写真感光体10’は、図1(c)に示す正帯電型電子写真感光体10’のように、導電性基体11’上に塗布等の手段によって、第一電荷輸送層12’を形成し、次いでこの第一電荷輸送層12’上に第二電荷輸送層14を形成し、更にその上に、電荷発生・輸送層13’を形成することにより作成できる。ここで、第二電荷輸送層14は、第一電荷輸送層12’よりも薄くなるように形成されるのが好ましい。また、図1(d)に示す正帯電型電子写真感光体10’のように、正帯電型電子写真感光体10’は下引き層15を備えるのも好ましい。
第二の態様の正帯電型電子写真感光体が備える導電性基体及び電荷発生・輸送層の詳細は、第一の態様の正帯電型電子写真感光体が備える導電性基体及び電荷発生・輸送層と同様である。第二の態様の正帯電型電子写真感光体が備える第一電荷輸送層の詳細は、第一の態様の正帯電型電子写真感光体が備える電荷輸送層と同様である。ただし、第一電荷輸送層及び電荷発生・輸送層は、ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂として含まない。以下、第二電荷輸送層について説明する。
〔第二電荷輸送層〕
第二電荷輸送層は、少なくとも正孔輸送材料(HTM)とバインダー樹脂とを含有する。ここで、使用される正孔輸送材料としては、従来から電子写真感光体の感光層に含まれる正孔輸送材料として使用されているものであれば、特に限定されない。
バインダー樹脂としては、上記したものと同じポリビニルアセタール樹脂を含有させる必要がある。他方、第一電荷輸送層と電荷発生・輸送層とは、バインダー樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を含まない。積層型の感光層をこのような構成とすることで、第二の態様の正帯電型電子写真感光体では、感光層に含まれる各層の相溶に伴い感光体の感度に代表される諸特性が損なわれる問題を避けることができる。更にこの場合、露光量が小さいマシン(例えばLED)や、高速機においても、十分な画像濃度を得ることが可能である。
第二電荷輸送層には、その他のバインダー樹脂を含有させても構わない。そのバインダー樹脂としては、電子写真感光体の感光層に含まれるバインダー樹脂として用いることができるものであれば、第一態様で例示されたものを特に限定されず使用することができる。
本発明の第二電荷輸送層中の正孔輸送材料の各含有量は、適宜選定され特に限定されない。具体的には、例えば、正孔輸送材料の含有量は、バインダー樹脂に対して、5wt%以上150wt%以下であることが好ましく、30wt%以上100wt%以下であることがより好ましい。
第二電荷輸送層の膜厚は第一電荷輸送の膜厚よりも薄いことが好ましい。このような膜厚の第一電荷輸送層と、第二電荷輸送層とを形成することで、特に感度に優れる正帯電型電子写真感光体を得やすい。第二電荷輸送層の厚さは0.5〜5μmであることが好ましい。第二電荷輸送層の厚さを0.5μm以上で塗布することで、均一な厚さの電荷輸送層を形成することができる。一方、第二電荷輸送層の厚さを5μm以下にし、第一電荷輸送層の厚さは5〜35μmにすることにより、電荷発生・輸送層からの第二電荷輸送層への電荷注入を向上させつつ、より電荷移動の速やかで厚膜の第一電荷輸送にすることがより好ましい。
[第三実施態様]
本発明の第三の実施態様は、像担持体と、像担持体の表面を帯電するための帯電部と、帯電された像担持体の表面を露光して像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光部と、静電潜像をトナー像として現像するための現像部と、トナー像を像担持体から被転写体へ転写するための転写部と、を備え、前記像担持体が、第一又は第二の実施態様に係る正帯電型電子写真感光体である
本発明の画像形成装置としては、周知のものが特に限定されることなく採用できる。なかでも、モノクロ画像形成装置や、後述するような複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましい。より具体的には、例えば、後述するような複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が挙げられる。ここでは、タンデム方式のカラー画像形成装置について説明する。
本実施形態にかかる正帯電型電子写真感光体を備えるタンデム型のカラー画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の像担持体と、各像担持体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、各像担持体の表面にそれぞれ供給する、現像ローラーを備えた複数の現像部とを備え、各像担持体として、それぞれ第一又は第二の実施態様に係る正帯電型電子写真感光体を用いる。
図2は、本発明の実施形態にかかる正帯電型電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、画像形成装置としては、カラープリンター1を例に挙げて説明する。
このカラープリンター1は、図2に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。更に、機器本体1aの上面には、定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラー122、給紙ローラー123,124,125、及びレジストローラー126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。ピックアップローラー122は、給紙カセット121の図2に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー123,124,125は、ピックアップローラー122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラー126は、給紙ローラー123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
また、給紙部2は、機器本体1aの図2に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラー127とを更に備えている。このピックアップローラー127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラー127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラー126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピューター等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラー32とを備えている。
画像形成ユニット7は、上流側(図2では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての正帯電型電子写真感光体37(以下、感光体37)が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体37の周囲には、帯電部39、露光部38、現像部71、不図示のクリーニング部及び除電部としての除電器等が、回転方向上流側から順に各々配置されている。本発明においては、除電器による除電工程を有さないものも良好に画像を形成できるので、省スペース化を図ることが可能である。
帯電部39は、矢符方向に回転されている電子写真感光体37の周面を均一に帯電させる。帯電部39は、電子写真感光体37の周面を均一に帯電させることができれば特に制限されず、非接触方式であっても接触方式であってもよい。帯電部の具体例としては、コロナ帯電装置、帯電ローラー、帯電ブラシ等が挙げられ、帯電ローラー、帯電ブラシ等の接触方式の帯電装置がより好ましい。接触方式の帯電部39を使用することにより、帯電部39から発生するオゾンや窒素酸化物等の活性ガスの排出を抑え、活性ガスによる電子写真感光体の感光層の劣化を防止するとともに、オフィス環境等に配慮した設計をすることができる。
接触方式の帯電ローラーを備えた帯電部39は、帯電ローラーが感光体37と接触したまま、感光体37の周面(表面)を帯電させる。このような帯電ローラーとしては、例えば、感光体37と接触したまま、感光体37の回転に従属して回転するもの等が挙げられる。また、帯電ローラーとしては、例えば、少なくとも表面部が樹脂で構成されたローラー等が挙げられる。より具体的には、例えば、回転可能に軸支された芯金と、芯金上に形成された樹脂層と、芯金に電圧を印加する電圧印加部とを備えたもの等が挙げられる。このような帯電ローラーを備えた帯電部は、電圧印加部によって、芯金に電圧を印加することによって、樹脂層を介して接触する感光体37の表面を帯電させることができる。
電圧印加部により帯電ローラーに印加される電圧は直流電圧のみであることが好ましい。帯電ローラーにより電子写真感光体に印加する直流電圧は、1000〜2000Vが好ましく、1200〜1800Vがより好ましく、1400〜1600Vが特に好ましい。交流電圧や直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を帯電ローラーに印加する場合より、帯電ローラーに直流電圧のみを印加する場合のほうが、感光層の磨耗量が少なくなる傾向がある。
また、帯電ローラーの樹脂層を構成する樹脂は、感光体37の周面を良好に帯電させることができれば特に限定されない。樹脂層に用いる樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン変性樹脂等が挙げられる。また、樹脂層には、無機充填材を含有させていてもよい。
露光部38は、いわゆるレーザー走査ユニットであり、帯電部39によって均一に帯電された感光体37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピューター(PC)から入力された画像データに基づくレーザー光を照射し、感光体37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像部71は、静電潜像が形成された感光体37の周面にトナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。そして、このトナー像が中間転写ベルト31に1次転写される。クリーニング部は、中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、感光体37の周面に残留しているトナーを清掃する。クリーニング部によって清浄化処理された感光体37の周面は、新たな帯電処理のために帯電部へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各感光体37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラー33、従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36等の複数のローラーに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各感光体37と対向配置された1次転写ローラー36によって感光体37に押圧された状態で、複数のローラーによって無端回転するように構成されている。駆動ローラー33は、ステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36は、回転自在に設けられ、駆動ローラー33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラー34,35,36は、駆動ローラー33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト31を支持する。
1次転写ローラー36は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各感光体37上に形成されたトナー像は、各感光体37と1次転写ローラー36との間で、駆動ローラー33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。本発明においては、印加電流は8μA以上で使用することが可能である。
2次転写ローラー32は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラー32とバックアップローラー35との間で用紙Pに転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラー41と、この加熱ローラー41に対向配置され、周面が加熱ローラー41の周面に押圧当接される加圧ローラー42とを備えている。
そして、画像形成部3で2次転写ローラー32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラー41と加圧ローラー42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンター1では、定着部4と排紙部5との間の適所に搬送ローラー6が配設されている。
排紙部5は、カラープリンター1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
カラープリンター1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、上記のような画像形成装置では、像担持体として、本発明の実施形態にかかる正帯電型電子写真感光体が備えられているので、転写メモリーの影響のない好適な画像を形成することができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
〔感光体の作製〕
[電荷輸送層用塗布液の調整]
下表1に記載の種類及び量の正孔輸送材料(HTM)、下表1に記載の種類及び量の粘度平均分子量25000のバインダー樹脂、及びテトラヒドロフラン800質量部を、表1のとおりの配合量でボールミルに加え、10時間、混合し電荷輸送層用の塗布液CT1−1〜CT1−8及びCT2−1〜CT2−9を調製した。ここで、CT2−1〜9は、バインダー樹脂として、ポリビニルアセタール樹脂が添加された塗布液である。
Figure 0005787914
ここで、使用される各構成成分の略号は、以下の式で示される化合物を指す。
(バインダー樹脂)
表1中に示したバインダー樹脂の略号とその構造とを下に示す。本実施例では、各構造を有す単独樹脂をブレンドして使用したが、同様の効果が得られるため、各構成成分モノマーを共重合した樹脂を用いても構わない。
Figure 0005787914
R6:東洋紡(株)製 バイロンRV−200
R7:PS−680 (PSジャパン(株)社製ポリスチレン)
Figure 0005787914
R13:ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)社製 エスレックKS−1);
アセタール化度約74モル%、分子量約2.7×10
R14:ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)社製 エスレックKS−5);
アセタール化度約74モル%、分子量約13×10
R15:ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)社製 エスレックBH−3);
ブチラール化度約65モル%、分子量約11×10
R16:ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業(株)社製 エスレックBM−1);
ブチラール化度約65モル%、分子量約4.0×10
(正孔輸送材料(HTM))
Figure 0005787914
[電荷発生・輸送層用塗布液の調整]
それぞれ下表2に記載の種類及び量である電荷発生材料(CGM)、正孔輸送材料(HTM)、電子輸送材料(ETM)、及び粘度平均分子量40000のバインダー樹脂と、テトラヒドロフラン1000質量部とを、ボールミルに加え、50時間、混合、分散処理し、電荷発生・輸送層用の塗布液GT1−1〜GT1−17及びGT2−1及びGT2−6を調製した。ここで、GT2−1〜6は、バインダー樹脂として、ポリビニルアセタール樹脂が添加された塗布液である。
Figure 0005787914
ここで、電荷発生材料(CGM)及び電子輸送材料(ETM)の略号は、下記のものを示す。バインダー樹脂及び正孔輸送材料(HTM)の略号については、上記電荷輸送層用塗布液の調整と同様である。
(電荷発生材料(CGM))
CG1:(A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大のピークを有するとともに、26.2にピークを有さず、示差走査熱量分析において、(B)吸着水の気化に伴うピーク以外は270℃から400℃に1つピークを有するチタニルフタロシアニン結晶
CG2: (A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2度に最大のピークを有するとともに、26.2°にピークを有さず、(C)吸着水の気化に伴うピーク以外は50℃から400℃にピークを有さないオキソチタニルフタロシアニン結晶
CG3:(A)CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に最大のピークを有するとともに、26.2°にピークを有さず、(D)吸着水の気化に伴うピーク以外は50℃から270℃に1つピークを有するオキソチタニルフタロシアニン結晶
(電子輸送材料(ETM))
Figure 0005787914
[実施例1〜49及び比較例1〜7]
表3〜5に記載の種類の塗布液をディップコート法により塗布して、表3〜5に記載の膜厚である、第一電荷輸送層、第二電荷輸送層、及び電荷発生・輸送層のうちの1以上の層を導電性基体上に形成して、実施例1〜49及び比較例1〜7の二層型又は三層型の正帯電型電子写真感光体を得た。得られた、正帯電型電子写真感光体について、下記の方法で感度を評価した。感度の評価結果を表3〜5に示す。
[感度測定方法]
ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、表面電位を+800Vに帯電させた状態の感光体表面に、ハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルターを用いて取り出した単色(光露光波長:780nm、光強度0.15μJ/cm)を照射し、露光開始から0.1秒経過した時点での表面電位を感度として測定し、下記基準にて評価をおこなった。
250V未満:○、250V以上:×
表3に本発明の第一実施態様である二層型感光体の、表4に本発明の第二実施態様である三層型感光体の、表5に比較例として単層型感光体及びポリアセタール樹脂をバインダー樹脂として含有しない場合の二層型感光体の検討結果をそれぞれ示す。表5の比較例4〜7に示すように、感光層がポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂として含有する層を含まない場合、二層型感光体を好適に製造することはできなかった。一方、ポリビニルアセタール樹脂をいずれかの層に含有する本発明の積層型感光体の感度は、いずれも、単層型の感光体である比較例1〜3のそれに比べて高く、感光体として優れることがわかった。
Figure 0005787914
Figure 0005787914
Figure 0005787914
10 二層正帯型電感光体
10’ 三層正帯型感光体
11、11’ 導電性基体
12、12’ 電荷輸送層
13、13’ 電荷発生・輸送層
14 電荷輸送層
15 下引き層

Claims (8)

  1. 導電性基体上に、(I)少なくとも正孔輸送材料とバインダー樹脂からなる電荷輸送層、(II)少なくとも電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、及びバインダー樹脂を同一層内に含む電荷発生・輸送層が、少なくともこの順で積層された正帯電型の電子写真感光体において、前記電荷輸送層と、前記電荷発生・輸送層におけるバインダー樹脂が異なるものであり、どちらか一方にポリビニルアセタール樹脂を含有するとともに、前記電子輸送材料がET3〜ET5、ET7〜ET9から選択される少なくとも1つであることを特徴とする正帯電型電子写真感光体。
    Figure 0005787914
  2. 前記正孔輸送材料がHT1〜3及びHT5から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の正帯電型電子写真感光体。
    Figure 0005787914
  3. 前記ポリビニルアセタール樹脂以外の前記バインダー樹脂がR1〜R12から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の正帯電型電子写真感光体。
    Figure 0005787914
    R6:有機溶剤可溶性非晶質ポリエステル樹脂
    R7:ポリスチレン
    Figure 0005787914
  4. 導電性基体上に、(I)少なくとも正孔輸送材料とバインダー樹脂からなる第一電荷輸送層、(II)少なくとも正孔輸送材料とバインダー樹脂からなる第二電荷輸送層、(III)少なくとも電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、及びバインダー樹脂を同一層内に含む電荷発生輸送層が、少なくともこの順で積層された正帯電型の電子写真感光体において、前記第二電荷輸送層におけるバインダー樹脂がポリビニルアセタール樹脂を含有し、且つ、前記第一電荷輸送及び前記電荷発生・輸送層におけるバインダー樹脂がポリビニルアセタール樹脂を含有せず、前記電子輸送材料がET3〜ET5、ET7〜ET9から選択される少なくとも1つであることを特徴とする正帯電型電子写真感光体。
    Figure 0005787914
  5. 前記正孔輸送材料がHT1〜3及びHT5から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項4に記載の正帯電型電子写真感光体。
    Figure 0005787914
  6. 前記ポリビニルアセタール樹脂以外の前記バインダー樹脂がR1〜R12から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項4又は5に記載の正帯電型電子写真感光体。
    Figure 0005787914
    R6:有機溶剤可溶性非晶質ポリエステル樹脂
    R7:ポリスチレン
    Figure 0005787914
  7. 前記第一電荷輸送層の膜厚よりも前記第二電荷輸送層の膜厚が薄い、請求項4〜6のいずれか1項に記載の正帯電型電子写真感光体。
  8. 像担持体と、前記像担持体の表面を帯電するための帯電部と、帯電された前記像担持体の表面を露光して前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光部と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像部と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写部と、を備え、前記像担持体が、請求項1〜7のいずれか1項に記載の正帯電型電子写真感光体である、画像形成装置。
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