JP5781762B2 - ユニバーサルiii型フィブロネクチン結合ドメインのライブラリ - Google Patents

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Description

この発明は、ユニバーサルIII型フィブロネクチン結合ドメインのライブラリに関する。
本願は、2007年8月10日出願の米国仮出願60/955,334号と、2008年6月24日出願の米国仮出願61/075,107号に基づく優先権を主張し、前記の両米国仮出願は本願に参照として組み込まれる。
スカフォールドに基づき結合するタンパク質は、特定の標的リガンドに結合する能力を有することから、抗体の代替物になりつつある。またこのようなスカフォールド結合タンパク質は、複数の置換を許容可能な安定なフレームワークコアをリガンド結合領域に有するという性質を併せ持つ。いくつかのスカフォールドフレームワークは、ベータサンドイッチコアからループが延び出す、免疫グロブリン様のタンパクドメイン構造を有する。
スカフォールドフレームワークのコアは遺伝子工学的に合成することができ、これにより様々な配列変異体のライブラリを構築することができる。配列の多様性は一般に、ループ構造部等のタンパク質の外部表面、またはリガンド結合領域として機能する他のタンパク質の外部表面に集中して表れる。
III型フィブロネクチンのドメイン(FN3)は、フィブロネクチンタンパク中のリピートドメインのひとつとして同定された。FN3ドメインは、3つの結合ループを有する7つのβストランドで構成される、モノマー性の小さな(-94アミノ酸残基)β−サンドイッチタンパク質から成る。FN3のN-末端近くの3つの結合ループは、機能的には免疫グロブリンドメインの相補性決定領域と同等である。このため、サイトカイシン、成長因子、及び受容体分子その他のタンパク質等の種々の標的物質を結合させるために、FN3ループライブラリを人工的に作ることができる。
このような合成ライブラリを作成するときの問題点のひとつは、役に立たない変異体の出現頻度が高いために、候補配列のスクリーニングの効率が悪いことである。例えば多様な変異体を作る場合、ランダム変異導入法、飽和突然変異誘発、エラープローンPCR、あるいは遺伝子シャフリング等の、インビトロ手法が用いられる。
このような手法は本質的に確率的なものであり、十分な配列の多様性を包括的に調査するためには非常に大きなライブラリを構築する必要がある。また、生じた変異体の数や、タンパク質の何処にどのようなタイプの変異体が生じたかを明らかにする手段が無い。
さらに、このようなランダムな方法においてはでたらめな置換が生じ、タンパク構造体の不安定化の原因となる。親和性最適化等の性質を改善した場合、元のタンパク質のスカフォールドフレームワークと比較すると熱安定性が低下することが知られている。
従って、システマチックな構成のフィブロネクチン結合ドメインのライブラリが求められている。バイオインフォマティクスに基づく設計によれば、候補ループを複数のFN3スカフォールドに挿入することができる。特定のループで置換することにより、スカフォールドの全体的安定性は最大になり、これと同時に非免疫原性置換は最小となる。
さらに、ライブラリのサイズを、異なるシステムにおいて全ての多様性を容易にスクリーニングできるようなサイズにすることができる。また、設計されたループの多様性の典型的なものは、予め決められた多数の標的リガンドに結合することができる。さらに、ループのシステマチックな設計は、次の段階で、回収された結合クローンの親和性成熟を可能にする。
ひとつの側面では、この発明は、選択された結合性または酵素活性を有する1以上のポリペプチドの有無のスクリーニングに有用な、III型フィブロネクチンドメインポリペプチドの自然−変異体組合せライブラリに関する。
このポリペプチドライブラリには、(a)選択された1以上の天然III型フィブロネクチンポリペプチドの野生型アミノ酸配列を有するA, AB, B, C, CD, D, E, EF, F, 及びG領域と、(b)選択された長さを有するBC, DE, 及びFGループ領域とが含まれる。
選択された長さを有する少なくとも1の選択されたループ領域が自然−変異体組合せ配列のライブラリを有し、この自然−変異体組合せ配列は、各ループ位置において保存、または選択された半保存コンセンサスアミノ酸をエンコードし、もしコンセンサスアミノ酸の発現頻度が選択された閾値頻度である50%以上と同じか低い場合には、半保存アミノ酸、及び発現率がその位置における選択された最小閾値頻度より高い可変性アミノ酸を含む他の自然変異体アミノ酸をエンコードし、またはこれらの化学的等価物をエンコードするコード配列によって発現される。
このライブラリの所与の閾値は100%であってもよい。但し、ループアミノ酸位置に優勢アミノ酸一つだけと、変異体アミノ酸一つだけが含まれ、優勢アミノ酸と変異体アミノ酸が化学的に類似のアミノ酸である場合は、所与の閾値が90%であってもよい。
この実施形態では、ライブラリには、選択されたループ位置において例えば10%の合理的な発現頻度を有する全ての自然変異体、またはこれら自然変異体の化学的等価物が含まれる。
自然−変異体組合せ配列は、複数のループとループ長の組合せであり、BCループとDEループの組合せ、BCループとFGループの組合せ、及びDEループとFGの組合せから選択され、ここでBCループはBC/11, BC/14, 及びBC/15から選択されるいずれか1であり、DEループはDE/6であり、FGループはFG/8及びFG11から選択される。
ライブラリは、BCとDE、BCとFG、及びDEとFGの各組み合わせループのいずれか2つにおいて、2つのループの組み合わせ中にアミノ酸変異体を含む自然−変異体組合せライブラリのスクリーニングにより同定される有益な突然変異体を有し、また、それぞれFG、DE、及びBCにより同定される第3のループにおいて、第3のループ及びループ長がBC/11、BC/14、及びBC/15、DE/6、またはFG/8、及びFG11により同定される自然変異体組合せ配列を有する。
ひとつの実施形態では、ライブラリには、ヒトフィブロネクチンのIII型フィブロネクチンの14番目のモジュールのA, AB, B, C, CD, D, E, EF, F, 及びG領域中の野生型アミノ酸配列が含まれる。
別の実施形態では、ライブラリには、ヒトフィブロネクチンのIII型フィブロネクチンの10番目のモジュールのA, AB, B, C, CD, D, E, EF, F,及びG領域中の野生型アミノ酸配列が含まれる。
自然−変異体組合せ配列のライブラリは、以下に示すループ及びループ長の配列を備える。(a) BCループ長が11で、SEQ ID NO. 43または49で同定されるアミノ酸配列;(b) BCループ長が14で、SEQ ID NO. 44または50で同定されるアミノ酸配列;(c) BCループ長が15で、SEQ ID NO. 45または51で同定されるアミノ酸配列;(d) DEループ長が6で、SEQ ID NO. 46または52で同定されるアミノ酸配列;(e) FGループ長が8で、最初のN-末端の6つのアミノ酸がSEQ ID NO. 47で同定されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO. 53で同定されるアミノ酸配;(f) FGループ長が11で、最初のN-末端の9つのアミノ酸がSEQ ID NO. 48で同定されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO. 54で同定されるアミノ酸配列。
ポリペプチドのライブラリは、リボソームディスプレイライブラリ、ポリソームディスプレイライブラリ、ファージディスプレイライブラリ、バクテリア発現ライブラリ、及びイーストディスプレイライブラリからなる群から選択される発現ライブラリによりエンコードされる。
これらのライブラリは、所望の結合親和性を有するポリペプチドの同定に用いることができる。すなわち、自然−変異体組合せライブラリのスクリーニングにより、所望の結合親和性を有するフィブロネクチン結合ドメインを選別することができる。
特に、自然−変異体組合せライブラリにより、FNFα. VEGF、及びHMGB1等の様々な抗原標的に対し、高い効率で高度に結合するポリペプチドが提供されることが見出された。
スクリーニングには、例えばフィブロネクチン結合ドメインを標的物質に接触させる操作が含まれ、ここでフィブロネクチン結合ドメインは、そのフィブロネクチン結合ドメインをエンコードするポリヌクレオチドに関連している。
スクリーニングにはさらに、選択されたフィブロネクチン結合ドメインをエンコードするFN3ポリヌクレオチドを同定する操作が含まれる。
また、この発明は上記のポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチドの発現ライブラリであって、1以上のフレームワーク領域と1以上のループ領域とをエンコードするポリヌクレオチドを合成して作られるポリヌクレオチドの発現ライブラリに関し、ここで、前記ポリヌクレオチドは予め決められたものである。また、前記の2つの領域をエンコードする前記ポリヌクレオチドには十分なオーバーラップ配列が含まれ、これにより前記ポリヌクレオチド配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)条件下において、完全なフィブロネクチン結合ドメインをエンコードする構造のポリヌクレオチドになることができる。
別の側面では、この発明には、選択された結合性または触媒活性を有する1以上のポリペプチドの有無のスクリーニングに有用な、III型フィブロネクチンドメインポリペプチドのウォークスルー(walk-through) 突然変異誘発ライブラリが含まれる。
このポリペプチドライブラリには、(a)選択された天然III型フィブロネクチンポリペプチドの野生型アミノ酸配列を有するA, AB, B, C, CD, D, E, EF, F, 及びG領域、及び(b)選択された長さを有するBC, DE, 及びFGループ領域が含まれる。
少なくとも1の選択された長さを有する選択されたループ領域には、保存または選択された半保存コンセンサスアミノ酸、あるいは、コンセンサスアミノ酸の出現頻度が選択された閾値頻度である少なくとも50%と同じかそれ未満のときは、単一の共通標的アミノ酸及び副生アミノ酸を各ループ位置にエンコードするコード配列のライブラリにより発現されたウォークスルー突然変異誘発配列が含まれる。
選択された閾値頻度は100%であってもよく、または50から100%であってもよい。ライブラリのループとループ長は、BC/11 , BC/14, BC/15, DE/6, FG/8,及びFG11から成る群から選択される。
形成されたライブラリは、BC/11, BC/14,BC/15,DE/6,FG/8,及びFG11から成る群から選択される各ループ及びループ長について形成されたウォークスルー突然変異誘発配列のライブラリであって、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、チロシン、ロイシン、プラリン、セリン、ヒスチジン、及びグリシンから成る群から選択される各共通標的アミノ酸に対するライブラリを備える。
ひとつの実施形態では、ライブラリには、ヒトフィブロネクチンのIII型フィブロネクチンの14番目のモジュールのA, AB, B, C, CD, D, E, EF, F, 及びG領域中の野生型アミノ酸配列が含まれる。
別の実施形態では、ライブラリには、ヒトフィブロネクチンのIII型フィブロネクチンの10番目のモジュールのA, AB, B, C, CD, D, E, EF, F,及びG領域中の野生型アミノ酸配列が含まれる。
別の側面では、この発明には、選択された結合性または酵素活性を有する1以上のポリペプチドの有無のスクリーニングに有用な、III型フィブロネクチンドメインポリペプチドのライブラリを構築する方法が含まれる。
この方法には、以下のステップが含まれる。
(i) BC, DE,及びFG アミノ酸ループ配列を、天然III型フィブロネクチンドメインポリペプチドの集合体中にアライメントさせるステップと、
(ii) アライメントさせたループ配列を、ループ長に従って分類するステップと、
(iii) ステップ(ii)から選択した任意のループ及びループ長について、位置的アミノ酸出現頻度測定を行い、各ループ位置におけるアミノ酸出現頻度を求めるステップと、
(iv) ステップ(iii)で分析した各ループ及びループ長について、それぞれの位置毎に、保存または選択された半保存コンセンサスアミノ酸、及びその他の自然−変異体アミノ酸であるかを同定するステップと、
(v) 少なくとも1の選択されたループ及びループ長について、
(1)コンセンサスアミノ酸、あるいはコンセンサスアミノ酸の出現頻度が選択された閾値頻度である少なくとも50%と同じかそれ未満のときは、単一の共通標的アミノ酸及び副生成アミノ酸を各ループ位置にエンコードするコード配列のライブラリにより発現されたウォークスルー突然変異誘発配列のライブラリ、または
(2) コンセンサスアミノ酸、あるいはコンセンサスアミノ酸の出現頻度が選択された閾値頻度である少なくとも50%と同じかそれ未満のときは、半保存アミノ酸と、発現率がその位置における選択された最小閾値頻度より高い可変性アミノ酸、またはこれらの化学的等価物を含む他の自然変異体アミノ酸を各ループ位置にエンコードするコード配列のライブラリにより発現された自然−変異体組合せ配列のライブラリを構築するステップと、
(vi) コード配列のライブラリをFN3コード配列のフレームワークに導入して、FN3発現ライブラリを構築するステップと、
(vi) 発現ライブラリのFN3ポリペプチドを発現させるステップ。
この方法は、上記のような様々なタイプのウォークスルー突然変異誘発配列のライブラリと、自然−変異体組合せ配列のライブラリの構築に用いることができる。
また、この発明はKd結合解離定数が0.1 μM以上でSEQ ID NO. 55-63から選択される配列を有するTNF-α結合タンパクと、Kd結合解離定数が0.1 μM以上でSEQ ID NO. 64-67から選択される配列を有するVEGF結合タンパクと、Kd結合解離定数が0.1 μM以上でSEQ ID NO. 67-81から選択される配列を有するHMGB1結合タンパクとに関する。
以下、この発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、コンピュータによる遺伝子データベースバイオマイニング(biomining)と、ベータ−スカフォールド及びループ構造描写を利用する、フィブロネクチン結合ドメインライブラリの構築方法を表わす模式図である。 図2Aは、2つの逆平行ベータ−シートドメインを表わす、FN3結合ドメインの模式図である。半分はベータストランド(ABE)から成り、他の半分は(CDFG) から成る。AB, BC, CD, DE, EF, 及びFGの、6つのCDR様ループを図示した。BC, DE及びFGループ(破線内)は、FN3のN-末端にあり、リガンド結合表面となるように配置されている。RGD配列は、FGループ中に位置している。 図2BはFN3結合ドメインのリボンダイアグラムであり、BC, DE及びFGループ(破線内)は、FN3のN-末端にあり、リガンド結合表面となるように配置されていることを示す。 FN3のモジュール10と、モジュール14の全体的ループとベータ−ストランドスカフォールドとの構造を重ね合わせて比較するリボンダイアグラムである。 FGループと、FN3のモジュール10, 13,及び14のF及びGベータ−ストランドの境界の構造を重ね合わせて比較する図であり、複数のループのアクセプター部位の位置が、各ループがトポロジー的に種々変化し得るにもかかわらず、FN3タンパクドメイン構造中に十分保存されていることを示す。 図4は、BC, DE及びFGループ挿入(薄い影付)されたFN3ループ及びベータ−ストランドアミノ酸の、付番方式を表わす模式図である。 図5Bは、ヒトフィブロネクチンの1〜16番目のIII型フィブロネクチンモジュールにアライメントさせたアミノ酸配列を表わし、3つのループ(BC, DE, 及びFG)の位置と、フィブロネクチン結合ドメインにおいて高度に保存される残基W22, Y/F32, V50, A57, A74, 及びI/L88とを図示している。保存アミノ酸は、FN3モジュールをアライメントさせる際の目印、及び必要に応じてギャップを導入する際の目印として用いられる。 図6は、全FN3モジュールのバイオインフォマティクス分析により得られたBCループ長の多様性を示す棒グラフである。発現されたFN3配列における主要なBCループ長のサイズは、11 , 14及び15である。 図7は、全FN3モジュールのバイオインフォマティクス分析により得られたDE ループ長の多様性を示す棒グラフである。発現されたFN3配列における単一の主要なDEループ長のサイズは、6である。 図8は、全FN3モジュールのバイオインフォマティクス分析により得られたFG ループ長の多様性を示す棒グラフである。発現されたFN3配列における主要なFGループ長のサイズは、8及び11である。 図9は、BCループ長サイズ11の典型的ループ領域の配列多様性を、アミノ酸変異性プロファイル(頻度分布)の形式で表わす図である。 図10は、BCループ長サイズ14の典型的ループ領域の配列多様性を、アミノ酸変異性プロファイル(頻度分布)の形式で表わす図である。 図11は、BCループ長サイズ15の典型的ループ領域の配列多様性を、アミノ酸変異性プロファイル(頻度分布)の形式で表わす図である。 図12は、DEループ長サイズ6の典型的ループ領域の配列多様性を、アミノ酸変異性プロファイル(頻度分布)の形式で表わす図である。 図13は、FGループ長サイズ8のFGループ領域のアミノ酸配列多様性を、アミノ酸変異性プロファイル(頻度分布)の形式で表わす図である。 図14は、FGループ長サイズ11のFGループ領域の配列多様性を、アミノ酸変異性プロファイル(頻度分布)の形式で表わす図である。 図15A〜図15Iは、選択されたアミノ酸K (15A), Q (15B), D (15C), Y (15D), L (15E), P (15F), S (15G), H (15H), 及びG (151)の各々について、BCループ長サイズ11の基本固定配列及び可変位置と、野生型を示すアミノ酸マトリックスと、WTMの標的位置と、WTMの縮重コドンから生成する可能性のある多様性を表わす図である。 図16A〜図16Iは、選択されたアミノ酸K (図16A), Q (図16B), D (図16C), Y (図16D), L (図16E), P (図16F), S (図16G), H (図16H), 及び G (図16I)の各々について、BCループ長サイズ15の基本固定配列及び可変位置と、野生型を示すアミノ酸マトリックスと、WTMの標的位置と、WTMの縮重コドンから生成する可能性のある多様性を表わす図である。 図17A〜図17Iは、選択されたアミノ酸K (図17A), Q (図17B), D (図17C), Y (図17D), L (図17E), P (図17F), S (図17G), H (図17H), 及び G (図17I)の各々について、DEループ長サイズ6の基本固定配列及び可変位置と、野生型を示すアミノ酸マトリックスと、WTMの標的位置と、WTMの縮重コドンから生成する可能性のある多様性を表わす図である。 図18A〜図18Bは、選択されたアミノ酸K (図18A), Q (図18B), D (図18C), Y (図18D), L (図18E), P (図18F), S (図18G), H (図18H), 及び G (図18I)の各々について、FGループ長サイズ11の基本固定配列及び可変位置と、野生型を示すアミノ酸マトリックスと、WTMの標的位置と、WTMの縮重コドンから生成する可能性のある多様性を表わす図である。 図19は、BCループ長サイズ15の固定及び可変位置の縮重及び混合ベースDNAオリゴヌクレオチド配列を示す。野生型を示すアミノ酸マトリックスと、WTMの標的位置と、WTMの縮重コドンから生じる可能性の有る多様性を示す図である。 図20は、シングルオーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応(SOE-PCR)により二本鎖核酸に転換可能な、非縮重オリゴヌクレオチドと縮重オリゴヌクレオチドとのオーバーラップの組合せを用いたFN3結合ドメインライブラリの構築を示す図である。全遺伝子中に、8つのオリゴヌクレオチドが必要とされる。各ループ(BC, DE, 及びFG)は、別の一連の縮重オリゴヌクレオチドによってエンコードされる。 図21は、BC, DE, 及びFG可変位置におけるWTMによるループ多様性と、複数の異なるFN3ループを組み合わせたときの全フィブロネクチン結合ドメインライブラリのサイズを示す図である。 図22は、モジュール14及びテネイシンの複数の異なるFN3結合ドメインを利用したモジュールの構築を表わす図であり、それぞれの非縮重オリゴヌクレオチド及び縮重オリゴヌクレオチドのオーバーラップの組合せを利用している。同一のBC, DE及びFGループの多様性ライブラリを、モジュール14及びテネイシンのそれぞれのループ位置に配置することができる。 図23は、ループ長11のループBCの、自然−変異体アミノ酸ライブラリの構築を表わす図である。 図24A〜図24Cは、TNFα(明色の棒)とVEGF (暗色の棒)に結合する、選択した3つのアンチ−TNFα 14FN3変異体であるA6, C10, 及びC5のELISA(図24A);アンチ−TNFα 14FN3変異体のTNFα(暗色の棒)、コントロール(明色の棒)、及びVEGF(白色の棒)に対する結合特異性(図24B);及びアンチ−TNFα 14FN3変異体の配列(図24C)を表わす図である。 図25A〜図25Cは、VEGF (明色の棒)、TNFα(暗色の棒)、コントロール(白色の棒)に対するアンチ−VEGF 14FN3変異体の結合特異性(図25A);3つのanti-VEGF 14FN3変異体の配列(図25B);及びR1 D4変異体のオクテット分析結果(図25C)を表わす図である。 図26A〜図26Cは、アンチ−HMGB1 14FN3の配列(図26A);HMGB1 (明色の棒)、TNF(暗色の棒)、及びコントロール(白色の棒)に対するアンチ−HMGB1変異体の結合特異性(図26B);及びHMGB1変異体の結合キネティクス(図26C)を表わす図である。
<I.定義>
特に断りが無い限り、以下の用語は下記に示す意味で用いられる。
「III型フィブロネクチン(FN3)ドメインポリペプチド」または「FN3ポリペプチド」とは、以下の第II章で説明するIII型フィブロネクチンドメインまたはモジュールを有するポリペプチドを意味する。例えば16の異なるFN3モジュールがヒトフィブロネクチン(FN)を構成し、15の異なるFN3モジュールがテネイシンを構成する等、1以上のモジュールがフィブロネクチン型タンパク(FN3タンパク)を構成する。
各FN3ドメインポリペプチドの呼び名は、例えばヒトフィブロネクチンの10番目と14番目のモジュール(10/FNまたは14/FN)、あるいはテネイシンの1番目のモジュール(1/テネイシン)等のように、モジュールの番号とタンパクの名称で示す。
FN3ポリペプチドの「ライブラリ」とは、指定された長さのBC, DE, 及びFGループ(下記の第II章参照)の少なくともいずれか1において、選択された配列の変異または多様性を有するFN3ポリペプチドの集合体を意味する。
また、「ライブラリ」という用語は、選択された長さを有する選択されたBC, DE, またはFGループ中のアミノ酸配列の集合体、及びループまたはポリペプチドアミノ酸ライブラリをエンコードするコード配列の集合体の意味でも用いられる。
「ユニバーサルFN3ライブラリ」とは、1以上のBC, DEまたはFG領域におけるアミノ酸の多様性が、公知のFN3配列の集合体中に存在するアミノ酸の変異体により決定されているか、または、公知のFN3配列の集合体中に存在するアミノ酸の変異体を反映しているFN3ポリペプチドライブラリを意味する。
「保存されたアミノ酸残基」または「固定されたアミノ酸」とは、指定された残基位置において、少なくとも50%以上(例えば約60%, 70%, 80%, 90%, 95%, または100%)の高い頻度で出現すると認められる1つのアミノ酸残基を意味する。
指定された1つの残基がこのような高頻度、すなわち約50%の閾値より高い頻度で出現すると認められるとき、その残基は保存されていると認められ、この発明のライブラリにおいて、少なくとも分析されたループ中のアミノ酸残基位置に関しては、「固定された」または「一定の」残基と表される。
「半保存アミノ酸残基」とは、2つまたは3つの指定された残基位置において高い頻度で出現すると認められる複数のアミノ酸残基を意味する。一連の2つまたは3つの残基、好ましくは2つの残基が約40%以上(例えば50%, 60%, 70%, 80%, 90%, 95%, またはそれ以上)の頻度で現われるとき、その複数の残基その残基は半保存であると認められ、この発明のライブラリにおいて、少なくとも分析されたループ領域中のアミノ酸残基位置に関しては、「半固定された」残基と表される。
一般に、適切な量の核酸の突然変異誘発/変異性が、半保存アミノ酸(コドン)位置に2または3残基が適切に出現するようにして導入される。すなわち、この2または3残基は、その位置に「半保存である」と言うことができる。一般に「選択された半保存アミノ酸残基」は、その位置において最も高い出現頻度を有する2以上の半保存アミノ酸残基であるが、必ずそうである必要は無い。
「可変性アミノ酸残基」とは、指定された残基位置において、低い頻度(20%未満)で出現すると認められるアミノ酸残基を意味する。同一の指定された位置に多種類のアミノ酸残基が出現する場合、その残基位置は可変性であると認められ、この発明のライブラリにおいて、少なくとも分析されたループ領域中のアミノ酸残基位置に関しては、可変性と表される。
一般に、適切な量の核酸の突然変異誘発/多様性が、可変性アミノ酸(コドン)位置に、正確な残基のスペクトルが表れるようにして導入される。所望により、アミノ酸残基位置、すなわち保存、半保存、または可変性の多様性または結果を、本願に開示するWTMや自然−変異体組合せ配列ライブラリ等の、適切な突然変異誘発方法を用いて表わし、調査し、変更することができることは言うまでもない。
可変性アミノ酸の閾値頻度の下限は、例えば5から10%またはこれより低い値である。この閾値頻度より低い場合、自然−変異体アミノ酸のその位置には、可変性アミノ酸残基は含まれない。
FN3ポリペプチドのBC, DE, またはFGループ中の「コンセンサス」アミノ酸は保存アミノ酸であるか、または選択された半保存アミノ酸の1つである。
「自然−変異体アミノ酸」には、選択された長さの選択されたループ中の指定された位置における出現頻度に従って観察される、保存、半保存、及び可変性アミノ酸が含まれる。
自然変異体アミノ酸は、化学的に等価なアミノ酸で置換されていてもよい。また、自然−変異体アミノ酸には、選択された出現頻度が例えば5〜10%より低い可変性アミノ酸残基や、別の自然−変異体アミノ酸と化学的に等価なアミノ酸残基は含まれない。
「ウォークスルー突然変異誘発配列のライブラリ」とは、コード配列によって発現された、選択されたループ長を有する選択されたFN3ループ内の配列のライブラリを意味する。
このコード配列は、各ループ位置において、保存または選択された半保存コンセンサスアミノ酸をエンコードするか、あるいはコンセンサスアミノ酸の出現頻度が選択された閾値頻度である少なくとも50%と同じかそれ未満のときは、単一の共通標的アミノ酸及び副生アミノ酸をエンコードする。
従って、各標的アミノ酸に関して、選択されたループ内のウォークスルー突然変異誘発配列のライブラリには、コンセンサスアミノ酸の出現頻度が指定された閾値頻度以下であるループ内における1から全ての位置の全組合せにおける標的アミノ酸が含まれる。
閾値頻度が100%である場合、ループ中の各位置には、ライブラリに含まれる少なくとも1の標的アミノ酸が含まれる。
また、「ウォークスルー突然変異誘発配列のライブラリ」という用語には、例えば9つの異なるアミノ酸毎のライブラリ等のように、標的アミノ酸毎のウォークスルー突然変異誘発ライブラリの混合物も含まれる。
「自然−変異体組合せ配列のライブラリ」とは、コード配列によって発現された、選択されたループ長を有する選択されたFN3ループ内のライブラリを意味する。このコード配列は、各ループ位置において保存または選択された半保存コンセンサスアミノ酸をエンコードするか、あるいはコンセンサスアミノ酸の出現頻度が選択された閾値頻度である少なくとも50%と同じかそれ未満のときは、別の自然変異体アミノ酸をエンコードする。この別のアミノ酸には、出現頻度がその位置における最小閾値頻度より高い半保存アミノ酸と可変性アミノ酸、またはこれらの化学的等価物が含まれる。
従って、選択されたループ長を有する選択されたループ内の各アミノ酸位置において、自然変異体組合せ配列のライブラリには、その位置におけるコンセンサスアミノ酸と、その位置において例えば少なくとも5〜10%の頻度のような最小の頻度を有することで特定される他のアミノ酸変異体、または化学的に等価なアミノ酸が含まれる。
さらに、自然変異体は、コドン縮重のためにそのアミノ酸のコード配列が多数の副生アミノ酸を産出するときは、置換されているか、または欠損している。
そのループ領域においてエンコードされるアミノ酸変異体の平均数は、例えばBC/11 , BC/14, BC/15等のようにループ長が10以上のループの場合一般に3〜5、例えば4である。また、置換の平均数は、DE/6, FG/8, FG/11等の短いループの場合6以上である(変異体が生じるのは6箇所だけである)。これらにより、FN3 BC, DE, またはFGループの場合、典型的ループ領域の全体的多様性が好ましくは約104〜107の範囲に保たれ、この3つのループの内の2つのループの多様性が約1012以下に保たれる。
以下に示す実施例9,10から、任意のループ位置における自然変異体は、最大3〜5の変異体に限定されることが分かる。ここで、除外された自然変異体は、そのアミノ酸についてのコドン変化が多数の副生アミノ酸を生じる原因となり、既にその変異体が配列中に化学的に等価なアミノ酸で表されているか、または配列プロファイル中におけるアミノ酸の出現頻度が、例えば10%以下のように相対的に低い変異体である。
「フレームワーク領域」とは、より分岐したループ領域の間にある、公知のフィブロネクチンベータ−ストランドスカフォールドの部分を意味する。このようなフレームワーク領域は一般にベータストランドAからGと呼ばれ、ベータストランドAからGは集合して、6つの特定のループが伸び出してリガンド接触表面を形成するスカフォールドを提供する。フィブロネクチンでは、7つのベータ−ストランドが2つのベータ−プリーツと成るように配向してベータサンドイッチ構造を形成する。
また、フレームワーク領域には、ストランドAとB、CとD、及びEとFの間のAB, CD, 及びEFループが含まれる。BC, DE,及びFG可変性配列ループもフレームワーク領域と呼ばれ、このフレームワーク領域において、このル内に所望のアミノ酸多様性を生成するために突然変異誘発が行われる
「リガンド」または「抗原」は、その基本的構成が構造的/化学的に類似する化合物を意味する。一般的リガンドは、タンパク(ポリペプチド)、ペプチド、多糖類、ポリヌクレオチド、及び小分子に分類される。リガンドは、特定の抗体によって認識されるときは「抗原」に等しい。
「ループ領域」とは、ベータ−ストランドプリーツに含まれないペプチド配列を意味する。フィブロネクチンの結合スカフォールドには6つのループ領域があり、このうち3つ(BC, DE及びFG)がスカフォールドの結合ドメインに含まれ、3つ(AB, EF1及びCD)がポリペプチドの反対側に位置することが知られている。
この発明では、配列の多様性はBC, DE及びFGループの1以上に組み込まれ、一方、AB, CD及びEFループは、FN3ポリペプチドの野生型アミノ酸配列に割り当てられて、FN3ポリペプチドの他のフレームワーク領域を構成する。
「変異性プロファイル」とは、特定のループ位置における各アミノ酸の出現頻度のカタログ化を意味する。ループ位置は、アライメントさせたフィブロネクチンのデータセットから得られる。各ループ位置において、順位付けされたアミノ酸の出現頻度をその位置の変異性プロファイルに加算し、これをアミノ酸の出現頻度の合計が予め決めておいた「高」閾値に達するまで行う。
「アミノ酸」または「アミノ酸残基」とは、公知の定義に従うアミノ酸を意味し、例えばアラニン(Ala, A);アルギニン(Arg, R);アスパラギン(Asn, N);アスパラギン酸 (Asp, D);システイン(Cys, C);グルタミン(GIn, Q);グルタミン酸(GIu, E);グリシン(GIy, G);ヒスチジン(His, H);イソロイシン(He, I);ロイシン(Leu, L);リジン(Lys, K);メチオニン(Met, M);フェニルアラニン(Phe, F);プロリン(Pro, P);セリン(Ser, S);トレオニン(Thr, T);トリプトファン(Trp, W);チロシン(Tyr, Y);バリン(VaI1 V)から成る群から選択される。しかし、所望により修飾されたアミノ酸、合成されたアミノ酸、または稀なアミノ酸を用いることもできる。
「化学的に等価なアミノ酸」とは、同様の立体構造、電荷、及び溶解性を有するアミノ酸を意味する。
一般的なアミノ酸の分類は次の通りである。(1 ) グリシン、水素側鎖を有する;(2)アラニン(Ala, A)、バリン(VaI, V)、ロイシン(Leu, L)及びイソロイシン(Iso, I)、水素または非置換の脂肪族側鎖を有する;(3)セリン(Ser, S)及びトレオニン(Thr, T)、水酸基が結合した脂肪族側鎖を有する;(4) アスパラギン酸(Asp, D)及びグルタミン酸(GIu, E)、カルボキシル基が結合した側鎖を有する;(5) アスパラギン(Asn, N)及びグルタミン(GIu, Q)、末端がアミド基の脂肪族側鎖を有する;(6)アルギニン(Arg, R)、リジン(Lys, L)及びヒスチジン(His, H)、末端が塩基性アミノ基の脂肪族側鎖を有する;(7)システイン(Cys, C)及びメチオニン(Met, M)、硫黄が結合した脂肪族側鎖を有する;(8)チロシン(Tyr, Y)及びフェニルアラニン(Phe, F)、芳香族側鎖を有する;及び(9)トリプトファン(Trp, W),プラリン(Pro, P)、及びヒスチジン(His, H)、複素環側鎖を有する。
「ポリヌクレオチド」とは、DNA分子やRNA分子、及びその類似体(例えばヌクレオチド類似体や核酸化学を用いて産出されたDNAやRNA)を意味する。
所望により、ポリヌクレオチドを例えば公知の核酸化学を用いて合成したり、ポリメラーゼ等の酵素を用いて作ったりすることができる。また、所望によりポリヌクレオチドを修飾することもできる。修飾の典型例はメチル化、ビオチン化その他の公知の修飾である。さらに、核酸分子は一本鎖でも二本鎖でもよく、所望により検出可能な部位に結合されていてもよい。本願では、ポリヌクレオチド塩基及び他の塩基は、次に示す通常の略号で表す:アデノシン(A)、グアノシン(G)、シチジン(C)、チミジン(T)、ウリジン(U)、 プリン(R=A/G)、ピリミジン(Y=C/TまたはC/U)、アミノ(M=A/C)、ケト(K=G/TまたはG/U)、ストロング(S=G/C), ウィーク(W=A/TまたはA/U), V (AまたはCまたはG、Tではない), NまたはX(任意の塩基)。
「突然変異誘発」とは、特に断りのない限り、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列を変換するための公知の技術を意味する。好ましい突然変異誘発の種類には、ウォークスルー突然変異誘発(WTM)、自然−変異体組合せ突然変異誘発、及び有益自然−変異体組合せ突然変異誘発が含まれる。しかし、これら以外に、ルック・スルー突然変異誘発(LTM)、改良ルック・スルー突然変異誘発(LTM2)、コドンバイアスを得るためにドープされた核酸を用いるWTM、多様性に富む領域内に配列の短い領域を一定または固定した状態に保つための拡張WTM、またはこれらの組合せ等の他の突然変異誘発ライブラリを用いることもできる。
「有益自然−変異体組合せライブラリ」とは、ポリペプチドのBC, DE, 及びFGの3つのループの内2つにおいて、これら2つのループ中に配列の多様性を含む自然−変異体組合せライブラリと、第3のループ中の自然−変異体組合せアミノ酸とをスクリーニングして同定される、有益な突然変異誘発をエンコードするコード配列の組合せライブラリを意味する。
<II.この発明の方法とライブラリの概観>
特定のリガンドに結合する人工的抗体スカフォールドは、抗体の合理的な代替物になりつつある。抗体は、診断方法及び治療方法の両者において有用である。しかし、あるリガンドを認識する特定の抗体を得ることは困難であった。
現状の抗体ライブラリは、特定の抗原に免疫学的に暴露した後のものに偏っている。したがって、特定の抗体を回収する前に、宿主動物を特定の抗原で免疫付与することが往々にして必要である。さらに、このような生体内から得られる抗体のライブラリには、自己抗原を認識する可能性のあるものは通常含まれていない。通常、自己活性抗体はドナーの免疫系の陰性選択により除去されるため、ヒト発現ライブラリには含まれていない。さらに、抗体の生産には特殊な細胞培養反応器と精製方法が必要とされるため、抗体の生産は難しく、また高価である。
抗体に関するこのような限界により、免疫グロブリン様折り畳み構造、または他のタンパクトポロジーに基づく代用結合タンパクの開発に拍車がかけられた。このような非−抗体スカフォールドは、そのタンパクの他の部分の複数の修飾に耐え得る、構造的に安定なフレームワークコアを有する点で共通する。
この発明により、ユニバーサルフィブロネクチン結合ドメインライブラリが提供される。このライブラリはより包括的で、リガンド結合ループが人工的多様性を有するように改変されている。人工的多様性を導入することによってライブラリのサイズを調整することが可能になり、例えば新規な治療方法を得るための高処理能力方法等を用いたスクリーニングを容易に行なうことができる。
ユニバーサルフィブロネクチンライブラリは、FACS、ファージ・パニング、あるいは選択的リガンド保持による物理的陽性クローン選択を用いてスクリーニングすることができる。このようなin vitroのスクリーニングにより、抗体ハイブリドーマライブラリを作る際の標準的で面倒な操作や、上清のスクリーニングが回避される。
さらに、ユニバーサルフィブロネクチンライブラリは、結合ループ中の構成アミノ酸がin vitroでの多様化により導入されているので、あらゆる抗原を認識できる可能性がある。これにより、ライブラリの多様性のサイズをコントロールすることができるとともに、自己抗原を認識可能にできるという、顕著な効果を生じる。
またさらに、フィブロネクチン結合ドメインライブラリ増殖させ、再スクリーニングすることにより、他の所望の標的に対するフィブロネクチン結合モジュールを更に見出すこともできる。
<IIA. フィブロネクチン(FN)について>
III型フィブロネクチン(FN3)タンパクとは、III型フィブロネクチン(FN3)構造を有する単分子性のサブユニットで構成される一群のタンパク、または、3つの結合ループを有する7つのβ−ストランドからなるモチーフで構成される一群のタンパクである。β−ストランドA, B,及びEはβ−サンドイッチの片方にあり、β−ストランドC, D, F,及びGはもう一方にあり(図2a, 2b参照)、約94アミノ酸の分子量及び約10Kdaの分子量を有する。
FN3ドメインの全体的折り畳み構造は、免疫グロブリンの折り畳み構造に密接に関連しており、BC, DE, 及びFG(図2b参照)と呼ばれるFN3のN-末端近傍の3つのループはそれぞれ、構造的に抗体の重可変(VH)ドメインの相補性決定領域であるDR1, CDR2, 及びCDR3の類似体と考えることができる。
下に示す表1に、いくつかのFN3タンパクと、種類の異なるFN3モジュール、または各タンパクに関連するドメインの数を示す。すなわち、フィブロネクチンそのものは16種の異なるモジュールもしくはドメインから成る。図5に、このモジュールもしくはドメインのアミノ酸配列をアライメントさせた形態で示す。
本願では、FN3タンパクのモジュールの指定は、例えばヒトフィブロネクチンの14番目のFN3モジュール(14/FN or 14/FN3)や、ヒトフィブロネクチンの10番目のFN3モジュール(10/FN or 10/FN3)、テネイシンの1番目のFN3モジュール(1/tenascin)等のように、モジュール番号とタンパクの名称で行う。
Figure 0005781762
フィブロネクチンは、細胞をインテグリン、コラーゲン、またはその他のプリテオグリカン物質に細胞を固定する接着分子として機能することにより、組織修復、胚形成、血液凝固等の多数の細胞プロセスに関与する。さらに、フィブロネクチンは、例えばヘパリンの細胞表面の膜結合レセプターへの結合のように、異なる成分の細胞外基質結合にも関与する。
フィブロネクチンのアミノ酸配列は、(通常)短い結合配列で隔てられた3つのタイプの内的に相同のリピートまたはモジュールを有する。12種のI型モジュール、2種のII型モジュール、及び16種のIII 型モジュールがあり、それぞれFN I, FN II及びFN IIIと呼ばれる。各FNモジュールは独立して折り畳まれ、ドメインと呼ばれるユニットを構成する。
上記のように、フィブロネクチン中のモジュールと相同なモジュールは、しばしば他のタンパクにおいても見られ、特に随所で見出されるモジュールのひとつであるFN3モチーフは、キナーゼ、フォスファターゼ、テネイシンその他の細胞外レセプターにおいて見られる。
FN3ドメインは、最初に発見された後多くの動物タンパクにおいても見出され、今日ではタンパク配列の2%を占めると考えられている。フィブロネクチンそのものの内部には、三次構造が著しく類似する、16のFN3ドメインがある。興味深いことに、FN3のコンフォメーションは高度に保存されている一方、所与のフィブロネクチン中では、同じ型のモジュールでも個別のモジュール間の類似性は低く、一般に20%未満である。これに対し、多数種の同じFN-IIIモジュールのアミノ酸配列の相同性はきわめて高く、約80%から90%である。
フィブロネクチンモジュールはそれぞれ独立してフォールディングし、従って隣り合うドメインから隔離された状態にある。フィブロネクチンモジュールの各型のいくつかの例について三次構造が明らかになっている。
周知のアミノ酸配列と三次構造との関係から予想されるように、同じ型のモジュールは同様の折り畳み構造となる。3種のモジュールは、ほとんど全て逆平行βシートとターンのみから成り、アルファへリックスはまったく無いか、ごく僅かである。F3モジュールでは、トップシートには4つの逆平行βストランドが含まれ、ボトムシートは三本鎖である。FN3の構造は、ジスルフィド結合では安定化されていない。その代わり、モジュールのコアにおける疎水性相互作用によってのみ安定化されている。
<IIB. バイオインフォマティクスを用いたフィブロネクチンスカフォールド及びループ成分の特定と選択>
この発明のユニバーサルフィブロネクチンライブラリを構築する際の第1ステップは、予め定めた基準に適合する配列の選択である。
PFAM, ProSite及び同様のデータベースにより、FN3ドメイン(図1)を含む配列の検索を行った。これらの電子データベース(図1の枠30)には、発現されたフィブロネクチンとフィブロネクチン様タンパクの配列がカタログ化されており、FN3モジュールや同等の配列を検索することができる(枠32のBLAST検索アルゴリズムを使用)。
次に、FN3モジュールを、モジュールのサブクラス、配列の類似性、または由来生物等の、予め決めた基準に従ってグループ分けする。また、FN I、FN II、アンキリン、その他のタンパク等(枠34)のスカフォールドタンパクのフレームワーク配列の選択を行なうこともできる。
次にFN3β−ストランドスカフォールドフレームワーク配列の候補を分類し、次いで介在ループ領域と構成アミノ酸を同定する(枠36)。これにより存在するループ長と、ループ長毎のアミノ酸のプロファイルを決定することができる。すなわち、これらのフレームワーク内の物理的サイズとアミノ酸多様性を決定することができる。
図1に示すように、ループを同定したら、枠38, 40, 及び42に示すように各ループ内の各配列をアライメントさせ、次に枠44に示すようにアライメントさせた配列をループ長に従って複数のグループに分ける。BC, DE, 及びFGループのループ長の分布を、それぞれ図6〜8に示す。
枠46において、この情報を用いて最も一般的ループサイズを選択する。以下説明するこの発明の一般的実施形態では、選択されるループ長はBC/11, BC/14, BC15, DE/6, FG/8, 及びFG11であり、枠48にはBC/11を示してある。
各β−ストランドについて、構造及び配列の両者の比較分析(図3,5)に基づき、フレームワーク中の好ましいループアクセプターサイトを決定することができる。例えば、図3Aにフィブロネクチン10/FN3と14/FN3の全体的ループとβ−ストランドスカフォールドとの構造を重ね合わせて比較した図を示す。また、図3BにFGループと、FN3のモジュール10, 13,及び14の境界のF及びGベータ−ストランドの構造を重ね合わせて比較する図を示す。
各ループ位置を正確に同定する際、上記のステップによって機能的リガンド結合特異性をもたらさないと思われるループ突然変異多様性を最小限にすることができる。さらに詳しくは、実施例2を参照されたい。
ループ長を選択したら、枠50に示すように、例えばヒトFN3モジュール等の一組の天然FN3モジュールについて、各ループ位置におけるアミノ酸位置出現頻度分析を行い、発生頻度を分析する。この分析には、頻度分析と既存のループ配列の対応変異性プロファイル(VP)の作成とが含まれる(実施例2と図9〜14参照)。
高頻度の位置は保存または固定されていると考えられる。やや高い頻度、または「半保存」アミノ酸、または(2または3の組合せが>40%のとき)は、その位置は「野生型」として選択される。
このような野生型アミノ酸は、例えばウォークスルー突然変異誘発 (WTM)等の突然変異誘発を用いて系統的に変異され、ユニバーサル・ループ・ライブラリが構築される(実施例3参照)。
「可変」位置とは、出現頻度が20%を超えるアミノ酸が一つも無い位置のことである。
この発明の基準に基づいたフレームワークの候補の選択は、導入すべきループサイズと、最初のアミノ酸配列の多様性の両者に影響する。
FN3データベースのループ変異性プロファイル分析により、ループアミノ酸残基位置を例えば 1)保存または「固定」されるべき位置、2)半保存されるべき位置、および/または、3)多様性の創設に適した可変位置、の3つのカテゴリーに分類することができる。
変異性プロファイル分析を行い、閾値頻度を用いることにより、ループ全体の多様性の設定に用いるために最も適した配列を特定することができる(枠52)。
保存配列、または選択された半保存配列(一般に半保存残基の内最も出現頻度の高いアミノ酸)は、ループ配列中の「野生型」または「コンセンサス」残基と考えられる。驚くべきことに、この「コンセンサス」または「頻度」を用いる手法により、高い選択圧下にある特定のアミノ酸が同定される。すなわち、これらの残基位置は一般に固定され、残余のアミノ酸位置に多様性が導入される(これらの位置に存在すべきいくつかのアミノ酸の優勢度を考慮する)。
以下に示すように、アミノ酸変異を導入する際の出現頻度閾値は、下限値が40%、好ましくは50%であり、上限値が最大100%の範囲から選択される。閾値頻度が100%のとき、WTMによるアミノ酸はループの全位置に導入される。この場合、自然−変異体アミノ酸に対する制約は、変異体の総数と、化学的等価物の入手可否だけである。
上記のループのいずれかについて多様性を設計するとき、所望により、例えばホモシステインのような、大部分のポリペプチドに用いられている20種のアミノ酸以外の修飾されたアミノ酸残基をループ中に導入することもできる。これは公知の方法によって行うことができ、一般には、修飾されたアミノ酸残基を導入したいポリヌクレオチドに停止コドンを導入することにより行われる。これにより、ポリペプチドに導入(いわゆる終止コドンアンバー、オパール、オーカーのサプレッサーtRNA)されるべき修飾アミノ酸に結合した修飾tRNAが提供される(例えばKohrer et al., Import of amber and ochre suppressors tRNAs into mammalian cells: A general approach to site-specific insertion of amino acid analogues into proteins, PNAS, 98, 14310-14315 (2001)参照)。.
説明のため、FN3モジュール遺伝子のバイオインフォマティック分析について説明したが、他のFNモジュールやその他のスカフォールドタンパクについても同様に分析できることは言うまでもない。
<IIC. コンピュータを利用したユニバーサルフィブロネクチンライブラリの構築>
この発明のユニバーサルフィブロネクチンループライブラリとその構築は、配列及び構造に関する情報を利用して、改良されたフィブロネクチン結合ドメインが増加し得るようにして行われる。
分子構造変換モデルの情報も、特定のループ領域に導入されるべきアミノ酸多様性の選択の指針として用いられる。さらに、この発明により実際に得られたフィブロネクチン結合ドメインの結果も、その後反復して作られ、スクリーニングされるフィブロネクチン結合ドメインの選択(または除外)や、例えば親和性成熟の指針となる。
好ましい実施形態では、不十分、または希望しない構造や機能であると予想されるフィブロネクチン結合ドメインの産出を除外するために、コンピュータによるモデル化が用いられる。この方法では、産出すべきフィブロネクチン結合ドメインの数を大幅に減らすことができ、その後のスクリーニング評価における信号対ノイズ比を改善することができる。
別の実施形態では、コンピュータによるモデル化は、例えば遺伝子やタンパクの配列の情報や、三次構造のデータベース、あるいはフィブロネクチン結合ドメインの試験結果等の、関連性の高い追加のモデル化情報に基づいて継続的にアップデートされ、コンピュータデータベースの予見性精度が高められる(図1参照)。
また別の実施形態では、コンピュータデータベースは、例えばフィブロネクチン結合ドメインの結合親和性/能力等の試験結果とともに提供され、評価基準に基づきフィブロネクチン結合ドメインを反応物と非反応物、例えば強く結合するフィブロネクチン結合ドメインとそうでないものとに分類する。
この方法によれば、この発明の親和性成熟は、特定の配列との機能応答性と構造に関する情報の範囲と一致し、このような情報を将来評価するフィブロネクチン結合ドメインを産出する際の指針に用いることができる。この方法は、例えばBiacoreアッセイを用いてフィブロネクチン結合ドメインの特定のリガンドに対する結合親和性のスクリーニングを行う場合に特に適している。
すなわち、ある領域内の特定の残基が所望の機能を示さないことが例えばコンピュータによるモデル化で分かっている場合には、ループ領域内の非フランキング残基の突然変異誘発を行うことが好ましい。
例えば導入された多様性等の、フィブロネクチン結合ドメインの特定の複数の領域機能性アミノ酸残基の等位構造とこれらの残基間の空間的相互関係を考慮して、モデル化する。このようなモデル化の基準には、例えばアミノ酸残基側鎖の化学構造、原子間距離、結晶学的データが含まれる。これにより、産出すべきフィブロネクチン結合ドメインの数を合理的に最小限にとどめることができる。
好ましい実施形態では、1以上の上記ステップを、コンピュータを利用して行う。好ましい実施形態では、コンピュータを利用して行うステップは、例えばNCBI, Genbank, PFAM, 及びProSiteデータベースを検索し、任意に得られた結果とPDB構造データベースとのクロスリファレンスを行い、これによりこの発明のいくつかの基準が決定され、所望のループ多様性の設計に用いることができる(図1)。
この方法は、その一部また全部を例えばコンピュータで制御された装置等により修正して実施することができる。例えば、フィブロネクチンのモジュール配列選択のデータベース検索、多様性の設計、オリゴヌクレオチドの合成、これらのPCRによるアッセンブリー、選択された標的に結合するフィブロネクチン結合ドメインの候補の選択と発現等の一部または全部を、前記の装置を組み合わせて行うことができる。さらに、この方法を実行するための指令の一部または全部を、電子機器に指令を実行させるために適した媒体に記録することができる。
以上のように、この発明の方法をソフトウエア(例えばコンピュータが読み取れる指令)とハードウエア(例えばコンピュータ、ロボット、及び半導体)を用いる手法により修正して、効率を向上させることができる。
<IID.ユニバーサルウォークスルー突然変異誘発ライブラリ>
この発明に共通する一側面では、この発明には選択された結合または酵素活性を有する1以上のポリペプチドの存在のスクリーニングに有用な、III型フィブロネクチンドメインポリペプチドのウォークスルー突然変異誘発(WTM)ライブラリが含まれる。
このライブラリのポリペプチドには、(a) 選択された天然III型フィブロネクチンポリペプチドの野生型アミノ酸配列を有するA, AB, B, C, CD, D, E, EF, F, 及びG領域、及び(b)1以上の選択された長さを有するBC, DE, 及びFG領域、が含まれる。
選択された長さの少なくとも1のループ領域には、WTM配列のライブラリが含まれる。このWTM配列のライブラリは、各ループ位置において保存または選択された半保存コンセンサスアミノ酸をエンコードし、コンセンサスアミノ酸の出現頻度が選択された閾値頻度である少なくとも50%と同じかそれ未満のときは、単一の共通標的アミノ酸と任意の副生アミノ酸(所与の位置でのコドンの縮重の結果生じるコード配列により産出されるアミノ酸)をエンコードするコード配列のライブラリでエンコードされたものである。
選択されたループ長のループ領域内にWTMライブラリを構築する際、変異性プロファイルを用いて固定位置における配列と、「可変」位置、すなわちWTM標的アミノ酸を導入可能な位置における配列とを決める。固定位置(置換は行われない)の数は、各位置におけるコンセンサスアミノ酸の選択された閾値頻度に依存する。実施例3に、FG/119つの標的アミノ酸の各々についてのWTMループ配列の設計例を示す。保存または半保存残基は、N76, G79, G/S 81及びS84に認められる(G (60%)とS (31 %)の両者の高出現頻度を反映して、2つのコンセンサスアミノ酸が位置81にある)。これらの4つの位置(及び2つの末端位置SとK)は固定されている。また、WTM標的アミノ酸を、配列中のこれら以外の位置のそれぞれに導入した。標的アミノ酸のリジン(K)について、この実施例には、Kがループ中の置換位置の1つにある場合から全ての置換位置にある場合までの、様々なWTM配列が示されている。表5に、選択されたBC/11,BC/14, BC/15, DE/6, FG/8, 及びFG11の6つのループの置換配列の例を示す。
別の実施形態では、コンセンサス配列の閾値を100%とし、全ての残基位置がWTM標的アミノ酸の導入位置として選択されるようにする。この方法は、実施例5に示す。
複数のWTMループ配列を選択した後、既存のコンセンサスアミノ酸を保つことができるだけでなく、選択された標的アミノ酸と、縮重コドンによりエンコードされる任意の副生アミノ酸とをエンコードするコドン置換を作成することにより、選択したWTM配列の全てをエンコードするオリゴヌクレオチドコード配列のライブラリを構築する。詳細は、実施例4と5に例示する2種類のWTMライブラリに示した(閾値による制限が有る場合と無い場合)。
図15A〜15Iに、選択されたアミノ酸K (15A), Q (15B), D (15C), Y (15D), L (15E), P (15F), S (15G), H (15H), 及びG (151)の各々について、BCループ長サイズ11の基本固定配列と可変位置、野生型を示すアミノ酸マトリックス、WTM標的位置、及び、WTMの縮重コドンから生成する可能性のある多様性を示す。
図16A〜16I、17A〜17I、18A〜18Iは、それぞれBCループ長15 (BC/15)、DEループ長6 (DE/6)、及びFGループ長11 (FG/11 )の場合についての、上記と同様の図である。
下記及び実施例6に示すように、WTMループのコード配列のライブラリをフレームワーク配列に付加することにより、WTMポリペプチドライブラリのコード配列のライブラリを構築する。
ひとつの好ましい実施形態では、コーディングライブラリには、前記の6つの異なるループ及びループ長の各々のコード配列と、前記の9つの選択された「代表的」WTM標的アミノ酸(下記参照)の各々のコード配列とが含まれる。
このポリペプチドのライブラリは、リボソームディスプレイライブラリ、ポリソームディスプレイライブラリ、ファージディスプレイライブラリ、細菌発現ライブラリ、またはイーストディスプレイライブラリを含む発現ライブラリフォーマットによりエンコードされる。
これらのライブラリは、所望の結合親和性を有するポリペプチドを同定する方法において用いられる。この方法では、自然−変異体組合せライブラリをスクリーニングして、所望の結合親和性を有するフィブロネクチン結合ドメインを選択する。この発明に従って構築された14/FN WTMライブラリの、選択された抗原TNFαに対し高い結合親和性を示すFN3ポリペプチドの選択における効率は、実施例8と図24A〜24Cに示されている。
<IIE. ユニバーサル自然−変異体組合せ突然変異誘発ライブラリ>
別の一般的側面では、この発明には、選択された結合活性、または酵素活性を有する1以上のポリペプチドの存在を確認するためのスクリーニングに有用なIII型フィブロネクチンドメインポリペプチドの自然−変異体組合せライブラリが含まれる。このライブラリのポリペプチドには、(a)選択された天然III型フィブロネクチンドポリペプチドの野生型アミノ酸配列を有するA, AB, B, C, CD, D, E, EF, F, 及びG領域と、(b)選択された長さを有するBC, DE, 及びFG領域とが含まれる。
少なくとも1の選択された長さの選択されたループ領域には、各ループ位置において、保存または選択された半保存コンセンサスアミノ酸をエンコードし、コンセンサスアミノ酸の出現頻度が少なくとも選択された閾値頻度である50%以下のときは、その位置における出現頻度が選択された最小閾値頻度より高い半保存アミノ酸及び可変性アミノ酸、またはその化学的等価物を含む他の自然変異体アミノ酸をエンコードするコード配列のライブラリにより発現された自然変異体組合せ配列のライブラリが含まれる。
所与のループ及びループ長について自然−変異体組合せライブラリを構築する際、変異性プロファイルを用いて、固定位置における配列と、「可変」位置、すなわちアミノ酸の変異を導入可能な位置における配列とを決める。WTMライブラリのときのように、固定位置(置換は行わない)の数は、各位置におけるコンセンサスアミノ酸の選択された閾値頻度に依存する。
例えば、選択された閾値頻度が約60%である場合は、FG/11の保存または半保存残基はN79, G79, G/S 81 及びS84(実施例3)であり、これらの位置では自然−変異置換は行わない。
逆に、閾値頻度が100%である場合は、全ての位置において変異が可能と考えられ、そのループ位置における出現頻度が100%の単一のアミノ酸は置換されないものと特定し、例えば出現頻度が90%の非常に優勢なアミノ酸を有する位置の場合には、出現頻度が低い異性体が優勢なアミノ酸に化学的に類似していないときだけ置換する。
所与のループ及びループ長のアミノ酸プロファイルと、どの位置が固定されたままで、どの位置が変異可能かに関する知見とに基づき、各可変位置におけるアミノ酸置換を選択することができる。
一般に、選択される変異(副生アミノ酸を含む)の数は、ループ中の変異可能な置換位置の数と、置換されたループ位置毎の変異体の平均数とに依存する。
望ましくは、ループの多様性が105〜107/全シーケンスの範囲となり、2つの可変シーケンスループのライブラリが約1012の範囲となるように、変異の数を選択する。
以下の実施例9に示すように、11ある位置の内の10にアミノ酸変異を有するFG/11ループは、平均約4アミノ酸変異/位置を有する一方、DE/6等の短いループは、ひとつの位置について6以上の変異を受け入れる。自然−変異体置換が単一ループのみに導入される場合、ひとつの位置についてより多くの変異を受け入れることができる。
各位置について選択された特定の自然変異体アミノ酸は、一般的には出現頻度が最も高いアミノ酸である一方、副生アミノ酸の数は限られるため、副次的に各サイトにおける化学的多様性が保たれる。従って、1のアミノ酸変異体のコドン変化によりいくつかの副生アミノ酸が産出される場合は、その変異体は除かれるか、および/または、化学的に等価なアミノ酸を探求する。同様に、1の自然変異体が他の自然変異体と化学的に等価である場合は、2つの内の1つが除かれる。
要約すれば、自然−変異体ループ配列は、副生アミノ酸とアミノ酸側鎖の冗長性を最小にしながら最も高い自然変異体の出現頻度を含むように構築され、必要であればループとループ長の全多様性が制限されるように、すなわち1以上のループに配列の変異が導入されるように構築される。
これらのルールの適用例は、図9に示すBC/11ループプロファイルを基にしたBC/11ループ(図25B)の変異置換の例に示されている。また、これらのルールの適用例は、図12に示すDEループプロファイルを基にしたDEループ(図25B)の変異置換の例に示されている。
自然−変異体ループ配列を選択したら、縮重コドンでエンコードされる変異体を含め、選択した変異アミノ酸をエンコードし、既存のコンセンサスアミノ酸を保存することができる置換コドン群を作成して、特定された全ての自然−変異体配列をエンコードするオリゴヌクレオチドコード配列のライブラリを構築する。
以下に詳しく説明し、実施例6に示すように、自然−変異体ループのコード配列のライブラリをフレームワーク配列に追加して、自然−変異体ポリペプチドライブラリのコード配列を構築する。
好ましい実施形態のひとつでは、コード配列のライブラリには一対のBC/DEループ, BC/FGループ、またはDE/FGループのコード配列が含まれ、各組合せの中の各ループは、例えばBC/11やDE/6のような選択された長さを有する。このような2つ一組のループのライブラリは、下記の実施例9と10に示されている。
このライブラリから高親和結合性(または酵素性)ポリペプチドを選択した後、始めの一対のループの自然−変異体ライブラリの一方または両方に含まれていた有益な変異体、及び別のループ、すなわち予め固定された配列ループ中の自然−変異体アミノ酸を含む、別の「有用な」ライブラリを構築することができる。
自然−変異体組み合わせライブラリは、以下に表示したループとループ長の中に、以下の配列を有する
(a) BCループ長11、及びSEQ ID NO.43または49のアミノ酸配列;(b) BCループ長14、及びSEQ ID. NO.44または50のアミノ酸配列;(c) BCループ長15、及びSEQ ID. NO.45または51のアミノ酸配列; (d) DEループ長6、及びSEQ ID. NO.46または52のアミノ酸配列;(e) FGループ長8、及び最初のN-末端の6アミノ酸がSEQ ID. NO.47のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO.53のアミノ酸配列;(f) FGループ長11、及び最初のN-末端の9アミノ酸がSEQ ID. NO.48のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO.54のアミノ酸配列。
ポリペプチドのライブラリは、リボソームディスプレイライブラリ、ポリソームディスプレイライブラリ、ファージディスプレイライブラリ、バクテリア発現ライブラリ、及びイーストディスプレイライブラリのフォーマットを有する発現ライブラリによりエンコードされる。
このライブラリは、所望の結合親和性を有するポリペプチドを特定する方法において用いられ、この方法では自然−変異体組合せライブラリをスクリーニングして、所望の結合親和性を有するフィブロネクチン結合ドメインを選別する。
この発明に従って構築した14/FN自然−変異体組合せライブラリの、2つの選択された抗原であるVEGF及びHMGB1に対し高い結合親和性を有するFN3ポリペプチドの選別における効率は、実施例9と図25A〜25C、及び実施例10と図26A〜26Cに示されている。
<IIF. ユニバーサルフィブロネクチン結合ドメインライブラリの合成>
ひとつの実施形態では、この発明のユニバーサルフィブロネクチン結合ドメインはスクリーニングに用いられ、指定されたポリペプチドの領域をエンコードし、予め決められたアミノ酸のコドンを1以上備えない個々のオリゴヌクレオチドを合成することにより作成される。
これは、オリゴヌクレオチド内の各コドン位置に、野生型ポリペプチドの合成に必要なコドン、または予め決まられたアミノ酸のコドンを導入することにより行われ、ルック・スルー突然変異誘発 (LTM)と呼ばれる(例えば米国特許公開No. 20050136428参照)。
別の実施形態では、複数のアミノ酸位置に多様性が求められる場合には、ウォークスルー突然変異誘発 (WTM)を用いる(例えば米国特許No. 6,649,340; 5,830,650;及び5,798,208; 及び米国特許公開No. 20050136428参照)。
WTMにより、最小限の数のオリゴヌクレオチドから複数の変異体を作ることができる。オリゴヌクレオチドは、例えばドーピング法を用いて、個別に、バッチごとに作り、所望により混合し、または貯蔵することができる。
ライブラリを作成するためのオリゴヌクレオチドの混合物は、公知のDNA合成法により容易に合成することができる。好ましい方法には、固相ベータ−シアノエチレンホスファーアミド(beta-cyanoethyl phosphoramidite)(例えば米国特許No. 4,725,677参照)の使用が含まれる。固有のヌクレオチドの試薬容器を有する自動DNA合成装置を適宜用いることもできる。
ポリヌクレオチドは、例えば指定された領域等のポリヌクレオチドの、より大きな遺伝子コンテクストへの導入または組込みを促進するために、制限酵素認識部位、またはプラーマーハイブリダイゼーション部位を含有するようにして合成することができる。
一般的な遺伝子操作技術を用いて、合成されたポリヌクレオチドを、より大きな遺伝子コンテクスト、例えば単一のスカフォールドドメインへ挿入することができる。例えば、ポリヌクレオチドを、制限酵素のフランキング認識部位を含有するようにして作ることができる(例えば米国特許No. 4,888,286参照)。
認識部位は、天然に存在する認識部位に相当するか、あるいはその領域をエンコードするDNAの近くの遺伝子に導入された認識部位に相当するように設計することができる。ポリヌクレオチドを二本鎖に変換した後、ポリヌクレオチドを公知の方法により遺伝子または遺伝子ベクターに結紮する。適切なベクター(例えばファージベクター、プラスミド等)により、遺伝子をセルフリー抽出液、ファージ、原核細胞、または真核細胞に導入して、フィブロネクチン結合ドメイン分子を発現させることができる。
あるいは、長さが約20〜60ヌクレオチドの、一部重なり合うポリヌクレオチドを設計することができる。この場合、内部のポリヌクレオチドを相補的な相手とアニールさせ、さらにアニール可能な一本鎖伸長部を有する二本鎖DNA分子を得る。アニールした対を混合し、伸長し、次いでSOE-PCR(例えば実施例3参照)を用いてライゲーションして完全な長さの二本鎖分子を形成する。合成遺伝子の末端の近くに、適切なベクター中へのクローン化に都合のよい制限部位を設ける。次に、完全な長さの分子を適切なベクターにライゲーションする。
一部重なり合う複数のポリヌクレオチドを遺伝子の構築に用いる場合、ポリヌクレオチドの1つに代えて一組の縮重ヌクレオチドを直接導入することもできる。適切な相補ストランドは伸長反応の間に、他のストランドの一部相補的ポリヌクレオチドから、ポリメラーゼを用いた酵素的伸長により合成される。合成段階での相補的ポリヌクレオチドの導入によりクローン化が容易になり、遺伝子の1以上のドメインまたは指定された領域が多様性を有するように、突然変異誘発または遺伝子組み換えされる。
別の方法において、フィブロネクチン結合ドメインは一本鎖プラスミド中に存在する。遺伝子を、例えばファージベクター中、またはヘルパーファージを用いた一本鎖分子の増殖が可能な線条ファージ複製起源のベクター中にクローン化する。この一本鎖テンプレートを、所望の変異を表現する一組の縮重ポリヌクレオチドにアニールし、伸長し、ライゲーションする。
これにより、適切な宿主(例えばSayers, J. R. et al., Nucleic Acids Res. 16: 791-802 (1988)参照)に導入可能な分子群に、各類似ストランドが導入される。この方法により、突然変異を誘発するために多数のドメインが選択される、多数のクローン化ステップを回避することができる。
また、遺伝子にポリヌクレオチドを導入する際に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いることができ、例えばβ−ストランドフレームワーク領域にループ多様性を導入することができる。
例えば、ポリヌクレオチドそのものを、伸長用のプライマーとして用いることができる。この方法では、指定された領域(またはそのタンパク)に対応する突然変異原生カセットをエンコードするポリヌクレオチドは、互いに少なくとも一部が相補的であり、例えばPCR増幅等のポリメラーゼ増幅によって大きな遺伝子カセット(例えばフィブロネクチン結合ドメイン)となるように伸長される。
ライブラリのサイズは、ループ長と、例えばWTMまたはLTMを用いて表現する必要がある配列の多様性とに応じて異なる。好ましくは、1015, 1014, 1013, 1012, 1011, 1010, 109, 108, 107未満のフィブロネクチン結合ドメインを有し、より好ましくは106未満のフィブロネクチン結合ドメインを有するように設計される。
以上の説明は、主として対応するポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチドを改変することにより、フィブロネクチン結合ドメインの多様性を表現することに関する。
しかし、この発明の範囲には、タンパク質化学を用いて所望のポリペプチド領域を直接合成することにより、本願のフィブロネクチン結合ドメインの多様性を表現する方法も含まれる。この方法により得られるポリペプチドは、ポリヌクレオチド中間体の使用を排除できる点を除き、この発明の特徴を備えている。
上記のライブラリは、ポリヌクレオチドの形態であるか、対応するポリペプチドの形態であるかにかかわらず、公知の方法によってマイクロチップ、好ましくはアレイ等の固形担体に固定することができる。
この発明の方法は、フィブロネクチン結合ドメイン分子の候補の親和性成熟による修飾において特に有用である。改変は、フィブロネクチン結合ドメインのループ、および/またはβ−ストランドフレームワーク(一定)領域に導入される。
ループ領域の修飾により、改善されたリガンド結合性、あるいは所望により改善された触媒特性を有するフィブロネクチン結合ドメインを作ることがでる。β−ストランドフレームワーク領域の修飾により、溶解性や安定性等の化学−物理的性質が改善される。これは、例えば商業生産、バイオアベイラビリティ、及びリガンドに対する親和性において有用である。
一般に、突然変異誘導はフィブロネクチン結合ドメインのループ領域、すなわち3つのループ領域から成り、リガンド−結合活性に関与する構造部を標的とする。
好ましい実施形態では、指定された結合分子の候補を親和性成熟することによって、その結合分子の標的リガンドに対する親和性/アビディティ(avidity)を向上させる。
<IIG. 発現及びスクリーニング系>
上記のいずれかの方法、またはその他の方法で構築されたポリヌクレオチドのライブラリを発現させ、スクリーニングすることにより、所望の構造、および/または活性を有するフィブロネクチン結合ドメインを特定することができる。
フィブロネクチン結合ドメイン分子の発現は、セルフリー抽出液(及び例えばリボソームディスプレイ)、ファージディスプレイ、原核細胞、または真核細胞(例えばイーストディスプレイ)を用いて行うことができる。
ひとつの実施形態では、ポリヌクレオチドはセルフリー抽出液中でテンプレートとして機能するよう遺伝子操作される。例えば米国特許No.5,324,637;5,492,817;5,665,563に開示されたベクターと抽出液を用いることができ、多くは市販されている。例えばProfusionTM(例えば米国特許No.6,348,315、6,261,804、6,258,558、及び6,214,553参照)等の、ポリヌクレオチド(例えば遺伝子型)をポリペプチド(例えば表現型)に繋ぐリボソームディスプレイ、その他のセル−フリー法を用いることができる。
あるいは、この発明のポリヌクレオチドは、PluckthunとSkerraら(Pluckthun, A., Skerra, A., Meth. Enzymol. 178: 476- 515 (1989年); Skerra, A. et al., Biotechnology 9: 273-278 (1991年))によって開示されたE. coli発現系により発現させることができる。M. BetterとA. HorwitzらがMeth. Enzymol. 178: 476 (1989年)に開示しているように、突然変異タンパクを、培地、またはバクテリアの細胞質において発現させて分泌させることができる。
ひとつの実施形態では、フィブロネクチン結合ドメインは、ompA, phoA またはpelBシグナル配列(Lei, S. P. et al., J. Bacteriol. 169: 4379 (1987年))等のシグナル配列をエンコードする配列の3'末端に結合している。
これらの遺伝子融合は単一ベクターから発現され、E. coliの細胞膜周辺腔中に分泌され、リフォールドされて活性な形態となるように、ジシストロン性構造(dicistronic construct)中に組み込まれる(Skerra, A. et al., Biotechnology 9: 273-278 (1991年)参照)。
別の実施形態では、例えばUS20040072740A1;US20030100023A1;及びUS20030036092A1に開示された分泌シグナルと脂質化部位を用いて、例えばE. coli等の原核生物の膜表面にフィブロネクチン結合ドメイン配列を発現させる。
また別の実施形態では、例えば米国特許No.6,423,538; 6,331,391;及び6,300,065に開示されたイーストディスプレイを用いて、イースト等の有核細胞において、ポリヌクレオチドを発現させる。この方法では、ライブラリのフィブロネクチン結合ドメイン分子は、イーストの表面に発現され、ディスプレイされたポリペプチドに融合されている。
この発明のフィブロネクチン結合ドメイン分子を発現させるために、例えば骨髄腫細胞(例えばNS/0細胞)、ハイブリドーマ細胞、あるいはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等、哺乳類細胞等の高等真核細胞を用いることができる。一般に、哺乳類細胞において発現させる場合、フィブロネクチン結合ドメイン分子を培地中に発現させるか、または哺乳類細胞の表面で発現するように設計する。フィブロネクチン結合ドメインは、各モジュール単独、または同一または異なるタイプ(10FN3-10FN3:ホモ二量体、 10FN3- 5FN3:ヘテロ二量体)のモジュールの二量体、三量体から成る多量体鎖として産出させることができる。
発現させたフィブロネクチン結合ドメイン(または直接合成されたフィブロネクチン結合ドメイン)のスクリーニングは、任意の適切な方法により行うことができる。例えば、結合能力は公知の免疫的クロマトグラフィーまたは親和性クロマトグラフィーにより評価することができる。
この発明のフィブロネクチン結合ドメインの、例えばタンパク分解機能等の触媒機能のスクリーニングは、例えば米国特許No.5,798,208に開示された標準的ヘモグロビン・プラーク・アッセイを用いて行うことができる。
候補フィブロネクチン結合ドメインの、治療上の標的への結合能力は、例えばBiacore測定装置を用いてin vitroで評価することができる。Biacore測定装置は、フィブロネクチン結合ドメインの所与の標的またはリガンドへの結合速度を測定するものである。in vitroでの評価は、多くの実験動物モデルを用いて行い、次いで、必要に応じてヒトでの試験を行う。
<IIH. FN3 WTMライブラリの触媒機能の評価とスクリーニング>
FN3 WTMライブラリを、触媒活性を有するFN3タンパクのスクリーニングに用いることもできる。
タンパク質の研究により、特定のアミノ酸がタンパクの構造と機能において重要な役割を果たしていることが明らかになっている。例えば、限られた数のアミノ酸が酵素の触媒作用に関与していると考えられている。
セリンプロテアーゼは事実上全ての生命体に存在する酵素の一種であり、セリン、ヒスチジン、及びアスパラギン酸の組合せを有することで特徴付けられる類似の触媒部位を備える。これらのアミノ酸は、恐らく他の決定基とともに、基質の遷移状態を安定化させる触媒性トライアッドを形成する。この触媒性トライアッドの機能的役割は、セリンプロテアーゼの部位特異的突然変異誘発法によるセリン、ヒスチジン、及びアスパラギン酸の個別及び複数個所の置換によって確認されている。また、触媒中でのこれらのアミノ酸残基間の相互作用の重要性はよく知られている。これらと同様の3つのアミノ酸は、リパーゼの触媒機構においても見られる。
図26は、セリン、ヒスチジン、及びアスパラギン酸を利用する活性部位の「ウォークスルー」突然変異誘発を表す模式図である。
同様に、他のタイプの多くの酵素も、その触媒部位の特異的立体構造と、触媒活性に主要な役割を果たす特定のアミノ酸が触媒部位に存在することによって特徴付けられる。詳しくは、A. Fersht, Freeman著の、Enzyme Structure and Mechanism, (1985年, New York)を参照されたい。
特定のアミノ酸が触媒作用に重要であることは明らかであるが、触媒部位等の機能性部位が形成されるためには、どの位置(または複数の位置)にアミノ酸がなければならないかを予想することは、不可能ではないものの、非常に困難である。残念ながら、タンパク中のアミノ酸側鎖の複雑な立体構造と、酵素の触媒ポケットにおける異なる側鎖間の相互作用は、このような予想を可能にするほど十分には分かっていない。選択的な部位特異的突然変異誘発と、飽和突然変異誘発は、複雑なタンパクにおける多数の可能性のある変異の観点からタンパクの構造及び機能を研究するための数少ない手段である。
上記のWTM/CBM/LTM法、または他の適切な手段で構築したタンパクのライブラリをスクリーニングして、所望の構造または活性を有する変異体を特定することができる。
野生型ポリペプチドの性質と、産出された変異体ポリペプチドの性質とを比較することにより、結合および/または触媒活性を付与するアミノ酸またはアミノ酸ドメインを特定することができる。通常、研究対象となるタンパクの領域は、タンパクの結合ドメイン等の機能性ドメインである。例えば、FN3ドメインの外部BC, DE及びFGループ結合領域等である。
スクリーニングは、任意の適切な方法で行うことができる。例えば、触媒活性を基質の転換と結合活性の適切な分析により研究し、標準的な免疫学的検定および/またはアフィニティ・クロマトグラフィによって評価することができる。
側鎖の化学的性質から、ごく限られた数の天然アミノ酸が選択的に触媒作用に関与していると考えられている。このようなアミノ酸は、Ser, Thr, Asn, GIn1 Tyr, Cys等の極性及び中性アミノ酸のグループと、Asp, GIu, Lys, Arg, 特にHis等の荷電アミノ酸のグループに属する。
典型的な極性及び中性の側鎖はCys, Ser, Thr, Asn, GIn 及びTyrのものである。GIyもこのグループにかろうじて属すると考えられる。SerとThrは水素結合の形成において重要な役割を果たす。Thrはベータカーボンにさらなる非対称性を有するため、たった1つの異性体が用いられる。GInとAsnの酸アミドも、アミド基が水素ドナーとして機能し、カルボニル基がアクセプターとして機能することにより、水素結合を形成する。
GInはAsnよりCH2基が1つ多く、極性基がよりフレキシブルなので、主鎖との相互作用が低減される。Tyrは極性が強い水酸基(フェノール性OH)を有し、高pHのとき解離する。Tyrは、荷電した側鎖のような挙動を示し、水素結合性はかなり強い。
ヒスチジン(His)は、pK値が6.0のヘテロ芳香族環を有する。生理的pH域では、ヒスチジンのイミダゾール環は、溶液から水素イオンを受け取った後、荷電または非荷電の状態となる。この2つの状態は容易に生じ得るので、Hisは触媒性化学反応に適している。ヒスチジンは、ほとんどの酵素の活性中心に存在する。
AspとGIuは、生理的pH域で負に荷電している。側鎖が短いため、Aspのカルボキシル基は、主鎖よりも剛直である。これが多くの触媒部位のカルボキシル基がGIuではなくAspのものである理由と考えられる。
荷電したアミノ酸は、一般にタンパクの表面に見られる。
従って、FN3タンパクドメインの異なる領域またはループに、同時に突然変異を生じさせることが可能である。同一または異なるアミノ酸は、各ループ領域の「ウォークスルー」と成り得る。これにより、タンパクが折り畳まれたときの酵素の触媒部位、あるいは抗原の結合部位等の、機能性部位の形成に関係する領域等の立体的配座に関係する領域におけるアミノ酸置換を評価することができる。
この方法により、改良された、または全く新規な触媒部位を創出する方法が提供される。図26に示すように、標的リガンドに結合するように遺伝子操作可能なFN3の3つのループ領域に同時に突然変異を生じさせ、あるいはBC, DE及びFGループ内に別々に突然変異を生じさせて、この結合部位の触媒活性への寄与を評価することができる。
すなわち、タンパクのリガンド結合領域への、さらなる「触媒的に重要な」アミノ酸の導入は、同一の標的リガンドに対する新規な触媒活性をもたらす。
この発明の方法を用いて関係のある領域にのみに変異を生じさせることにより、既存のタンパク質の天然「スカフォールド」に新規な構造を持たせることができる。この発明の方法は、天然由来の触媒抗体の単離と比較して、新規な触媒性結合タンパクの設計に適している。
今日では、標準的な体細胞融合技術を用いて触媒抗体を産出することができる。この方法では、所望の基質の遷移状態に結合して反応の触媒となる抗体の産出を誘発する基質の遷移状態に似た抗原を用いて、動物に免疫を与える。抗体産出細胞をその動物から採取し、不死化細胞と融合してハイブリッド細胞を作る。この細胞から所望の反応の触媒となる抗体の分泌のスクリーニングを行う。
この方法は、基質の遷移状態類似体の入手可否に依存する。ほとんどの場合、このような類似体を同定し合成することは困難なことが多いため、このプロセスには限界がある。
この発明の方法は、オキシドレダクターゼ、トランスファラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、及びリガーゼ等を含む、多くの酵素または触媒抗体の産出に用いることができる。これらの酵素の内、改良されたプロテアーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼ、ジオキシゲナーゼ、及びペルオキシダーゼの産出が特に重要である。
この発明の方法で産出可能なこれらの酵素やその他の酵素は、ヘルスケア、化粧品、食品、醸造、洗剤、環境(例えば廃水処理)、農業、革なめし、衣料品、その他の化学プロセスにおける酵素的変換の商業的応用のために重要である。これらには、診断及び治療用途、脂肪、炭水化物、タンパク質の変換、有機汚染物質の分解、及び薬品の合成等が含まれるが、これらに限定されない。例えば、線維素溶解活性を有する治療上有用なプロテアーゼ、またはウイルス外皮タンパク等の感染に必要なウイルス構造に対する活性を、遺伝子工学的に操作することができる。
このようなプロテアーゼは、有用な抗血栓剤、またはエイズ、ライノウイルス、インフルエンザ、または肝炎ウイルスに対する抗ウイルス薬として用いることができる。
芳香族環または他の二重結合の酸化に補因子を必要とする種類の酵素であるオキシゲナーゼ(例えばジオキシゲナーゼ)の場合、バイオパルピング(biopulping)プロセス、バイオマスの燃料や他の薬品への変換、汚水中の不純物の処理、石炭のバイオプロセス、及び有害な有機物質の無害化等への応用が、新規なタンパクの工業的に可能な用途である。
実施例では、特に断りの無い限り以下の材料と方法を用いた。
<供試材料及び方法>
この発明の実施するとき、時に断りの無い限り、文献に記載された公知の化学、分子生物学、DNA組み換え技術、PCR技術、免疫学(例えば、特に抗体技術)発現系(例えばセルフリー発現、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、及びProfusionTM)、及び必要な細胞培養を用いる。例えば、Sambrook, Fritsch, Maniatis, Molecular Cloning: Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989年); DNA Cloning, VoIs. 1&2, (D.N. Glover著, 1985年); Oligonucleotide Synthesis (MJ. Gait著, 1984年); PCR Handbook Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry, Beaucage著, John Wiley & Sons (1999年); Oxford Handbook of Nucleic Acid Structure, Neidle著, Oxford Univ Press (1999年); PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, lnnisら, Academic Press (1990年); PCR Essential Techniques: Essential Techniques, Burke著, John Wiley & Son Ltd (1996年); The PCR Technique: RT-PCR, Siebert著, Eaton Pub. Co. (1998年); Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら著, John Wiley & Sons (1992年); Large-Scale Mammalian Cell Culture Technology, Lubiniecki, A.著, Marcel Dekker, Pub., (1990年). Phage Display: A Laboratory Manual, C. Barbas著, CSHL Press, (2001年); Antibody Phage Display, P O'Brien著, Humana Press (2001年); Borderら, Yeast surface display for screening combinatorial polypeptide libraries, Nature Biotechnology, 15(6):553-7 (1997年); Borderら, Yeast surface display for directed evolution of protein expression, affinity, and stability, Methods Enzymol., 328:430-44 (2000年); Pluckthunらが米国特許No. 6,348,315に開示したリボソームディスプレイ、及びSzostaらが米国特許No. 6,258,558; 6,261 ,804;及び6,214,553に開示したProfusionTM、 及び米国特許20040058403A1に開示されたバクテリアペリプラズム発現を参照されたい。
フィブロネクチンとFn3配列の分類、同定、及び分析の詳細は、例えばSEQHUNT. A program to screen aligned nucleotide and amino acid sequences, Methods MoI Biol. 1995年;51 :1-15. 及び Wuらの Clustering of highly homologous sequences to reduce the size of large protein databases. Bioinformatics. 2001年3月;17(3):282-3;Sanger Institute (pfam.sanger.ac.uk)のPFAMデータベースを含むベータベース、検索及び分析用プログラム;ExPASy PROSITE database (www.expasy.ch/prosite/); SBASE web (hydra.icgeb.trieste.it/sbase/); BLAST (www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/); CD-HIT (bioinformatics.ljcrf.edu/cd-hi/); EMBOSS (www.hgmp.mrc.ac.uk/Software/EMBOSS/); PHYLIP (evolution.genetics.washington.edu/phylip.html);及びFASTA( fasta.bioch.virginia.edu)に開示されている。
簡潔にいうと、フィブロネクチン結合ドメインライブラリの発現の信頼性が証明されている微生物発現、及びディスプレイシステムを用いる。典型的には、リンカーペプチドを用いて、フィブロネクチン結合ドメインを、融合タンパクを産出する別の表面分子に結合させる。リボソーム、ファージ、E coli、及びイースト表面ディスプレイ等の様々な方法を、ライブラリの発現とディスプレイに用いることができる。遺伝子型−表現型のすべての組合せにより、新規な標的結合クローンを選択することができる。
<イースト>
フィブロネクチン結合ドメインのライブラリ(すなわちFN3)は、公知の方法により受容バクテリア/イースト宿主に形質移入される。
イーストは、各細胞の表面にディスプレイされた各FNII融合タンパクのコピーを103〜105有し、最大107のサイズのライブラリを容易に提供することができる。イースト細胞は、フローサートメトリーと、蛍光活性化細胞分類(FACS)または電磁ビーズを用いて、容易にスクリーニングし、分離することができる。
イーストの真核性分泌システム及びイーストのグリコシル化経路は、細胞表面のN及びO結合糖によるによるFN3型分子のディスプレイを可能にする。
イーストディスプレイシステムでは、a-アグルチニンイースト接着受容体を利用して、タンパクを細胞表面にディスプレイする。研究対象のタンパクであるFN3 WTM, LTM及びCBMライブラリは、Aga2タンパクとの融合パートナーとして発現される。
これらの融合タンパクは細胞から分泌され、ジスルフィド結合されて、イースト細胞壁に結合したAga1タンパクとなる(Invitrogen社のpYD1 Yeast Display製品カタログ参照)。
E. coli宿主からプラスミド精製により産出させたプラスミドpYD1を、制限酵素Bam HIとNot Iで消化させ、最終的に仔牛小腸アルカリホスファターゼで脱リン酸化する。通常の分子生物学的手法で、pYD1ベクター及び上記のSOE-PCR産出WTMライブラリ(Bam HIとNot Iで消化されている)のライゲーション、E. coli (DH5a)形質転換、及びLB-アンピシリン平板培地上での選別を行なってWTMライブラリの増幅を行った後、イースト細胞宿主中への電気穿孔を行った。
以下、標的リガンド(TNF, VEGF, VEGF-R等)FN3に対して野生型ドメインよりも高い親和性を有する、発現されたFN3変異体ライブラリの選別方法を説明する。
候補被験リガンド(TNF, VEGF, VEGF-R等)を(上記のビオチン−ストレプトアビジン結合により直接または間接的に)蛍光標識する。次に、標識された抗原に効率的に結合するクローンのライブラリを、FACSを用いて濃縮する。このイースト細胞の個体群を再度培養し、次の選別操作をよりストリンジェントな条件で行って、標的リガンドをより高い特異性と親和性で認識するクローンの小集団を分離する。
このようなライブラリは、例えばFITC標識されたanti-Myc-tag FN3結合ドメイン分子、及び迅速同定及び確認用FACS分析によって、容易にハイ−スループット形式にすることができる。さらに、発現の程度の監視、および/または結合親和性の測定に利用可能なカルボキシ末端タグが含まれている。
Aga2-FN3融合タンパクのディスプレイを確認するために、培地から採取したイースト細胞の一定分量(40 μl中に細胞8×105個)を、2300 rpmで5分間遠心分離する。上清を吸引し、細胞のペレットを200 μlの氷冷PBS/BSA 緩衝液(PBS/BSA 0.5% w/v)で洗浄する。ビオチン化TNFα(200 nM)を含む緩衝液100 μlに再度懸濁させる前に、細胞を再度ペレット化し、上清を除去する。20℃で45分間静置して、細胞をTNFaに結合させた後、PBS/BSA緩衝液で2回洗浄し、次にストレプトアビジン-FITC (2 mg/L)を添加し、氷冷しながら30分間インキュベートした。緩衝液による洗浄操作を再度行い、最終的に400 μlのPBS/BSA緩衝液中に再懸濁させた。CellQuestソフトウエアを用いるFACSscan (Becton Dickinson社)を用いて、得られた細胞を取扱説明書に従って分析した。
イーストディスプレイされたTNF-αフィブロネクチン結合ドメインライブラリの速度論的選別は、先ずビオチン化TNF-αリガンドで細胞を標識化し、次に大過剰の非ビオチン化TNF-αリガンドの存在下で経時変化を測定することにより行う。
経時変化測定が終了し、高速FACS sorterを用いてソートした後、低解離速度のクローンを、ストレプトアビジン-PE標識化により同定する。Aga2-FN3誘導後、飽和濃度(400 nM)のビオチン化TNF-α中で、25℃で3時間振り混ぜながら細胞をインキュベートした。
細胞を洗浄した後、非標識化TNF-a (1μM) を用いて、25℃で40時間コールドチェイス(cold chase)を行った。細胞をPBS/BSA緩衝液で2回洗浄し、ストレプトアビジン-PE(2 mg/ml)anti-HIS-FITC (25 nM)で氷冷しながら30分間標識化し、洗浄して再懸濁させた後、FACS ARIA sorterで分析した。
<リボソームディスプレイ>
リボソームディスプレイでは、タンパクのライブラリの構築にin vitroでの無細胞転写/翻訳結合機構を利用する。FN3遺伝子ライブラリは、タンパク合成がmRNAの末端に達したとき、リボソームでのタンパクの合成を停止させる一方、タンパクは放出させないことにより、終止コドンを備えないカッパ免疫グロブリン軽鎖遺伝子の上流に挿入される。さらに、カッパドメインのスペーサーがFN3タンパクをリボソーム複合体から物理的に離間させる役割を果たし、FN3結合ドメインがその同族リガンドを認識し易くなる。
mRNAライブラリは、S30 E. coliリボソーム抽出液(Roche社)、またはウサギ網状赤血球溶出液(Promega社)に導入される。いずれの場合にも、発生期のmRNAの5'末端がリボソームに結合し、翻訳が行われる。翻訳中、高分子複合体中{He, 2005 #58; He, 1997 #59; He, 2007 #57}において、リガンド結合タンパクはその前駆mRNAとともに非共有結合的にリボソームに付随した状態を保つ。
次いで、機能性FN3タンパクを、電磁ビーズまたはマイクロタイターのウェル表面に付着させた特異的リガンドに結合させる。濃縮プロセスでは、特異的FN3バインダーを溶出させる前に非特異的変異体を洗い流す。
5' FN3とカッパ遺伝子の3'位置の各々に対し特異性を有するプライマーを用いたRT-PCRにより、結合したmRNAを検出する(図9)。 次に、増幅された二本鎖cDNAを発現ベクター中にクローン化して、配列分析とタンパクの産出を行う。
原核生物による翻訳の反応溶液には、全容積110 ml中に0.2 Mのグルタミン酸カリウム、6.9 mMの酢酸マグネシウム、90 mg/mlのタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(Fluka)、50 mMのトリスアセテート緩衝液(pH 7.5)、0.35 mMの各アミノ酸、2 mMのATP、0.5 mMのGTP、1 mMのcAMP、30 mMのアセチルリン酸、0.5 mg/mlのE.coli tRNA、20 mg/mlのフォリ酸、1.5%のPEG 8000、40 mlのS30 E.coli抽出液、及び10 mgのmRNAを含む液を用いた。
翻訳を37℃で7分間行い、次にリボソーム複合体を、氷冷した選択バッファー[50 mMのトリスアセテート緩衝液(pH 7.5)、150 mMのNaCl、50 mMの酢酸マグネシウム、0.1%のTween 20、2.5 mg/mlのヘパリン]で5倍に希釈して安定化させた。
原核生物によるリボソームディスプレイには、FlexiTM Rabbit Reticulocyte Lysateを用いた。
System (Promega社)。原核生物による翻訳の反応溶液には、全容積100 ml中に、40 mMのKCl、100 mg/mlのタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(Fluka)、0.02 mMの各アミノ酸、66 mlのウサギ網状赤血球溶出液、及び10 mgのmRNAを含む液を用いた。
翻訳は、37℃で20分間行い、次にリボソーム複合体を氷冷したPBSで2倍に希釈して安定化させた。
<標的リガンドの親和性選択>
安定化したリボソーム複合体を、ビオチン化ハプテン[50 nM フルオレセイン-ビオチン(Sigma社)]またはアンチゲン[100 nM IL-13 (Peprotech社)をビオチン化して使用]を用いて4℃で1〜2時間インキュベートし、次にスプレプトアビジンでコートしたM280電磁ビーズ(Dynal社)で捕捉した。次に、この電磁ビーズを洗浄して、非特異的に付着したリボソーム複合体を除去した。
原核生物選択は、氷冷した選択バッファーで5回洗浄することにより行った。真核性選択は、0.1% BSAと5 mMの酢酸マグネシウムを含むPBSで3回洗浄し、次にPBSだけで1回洗浄することにより行った。
次に、真核性複合体を40mMのTris-HCl、6mMのMgCl2、10mMのNaCl、10 mMのCaCl2を含む10 UのDNAse Iを用いて37℃で25分間インキュベートし、次いで5 mMの酢酸マグネシウム、1%のTween 20を含むPBSで3回洗浄した。
<選択したリボソーム複合体からのmRNAの回収>
回収したmRNAの特異性破壊を伴わない分析は、電磁ビーズに結合したリボソーム複合体を直ちに逆転写反応させることにより行った。リボソーム複合体破壊による原核生物選択からmRNAを回収するために、選択したリボソーム複合体をEB20 [50 mM Tris acetate (pH 7.5), 150 mM NaCl, 20 mM EDTA, 10 mg/mlのサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisae) RNA]中、4℃で10分間インキュベートした。
真核性選択からのmRNAの回収における20 mMのEDTAの効果を評価するために、リボソーム複合体をPBS20 (PBS, 20 mM EDTA, 10 mg/ml サッカロミセス・セレビシエRNA)中4℃で10分間インキュベートした。mRNAを市販のキット(High Pure RNA Isolation Kit, Roche社)で精製した。
原核性サンプルについては、このキットのオプションであるDNAse I消化を行った。しかし、DNAse I消化は選択後の洗浄時に行うため、この操作は真核性サンプルの場合には不要である。
逆転写反応は、4 mlの精製RNA、または4 mlの選択し固定化したリボソーム複合体(すなわち、懸濁させたビーズ)について行った。
原核性サンプルの逆転写反応は、50 mM Tris-HCl (pH 8.3), 75 mM KCl, 3 mM MgCl2, 10 mMDTT, 1.25 プライマー, 0.5 mM PCRヌクレオチド混合物(Amersham Pharmacia社), 1 URNAsin (Promega社)及び5 U Superscript II (Invitrogen社)を用いて、50℃で30分間インキュベートすることにより行った。
真核性サンプルの逆転写反応は、50 mM Tris-HCl (pH 8.3), 50 mM KCl, 10 mM MgCl2, 0.5 mMスペルミン, 10 mM DTT, 1.25 mM RTプライマー, 0.5 mM PCRヌクレオチド混合物, 1 U RNasin 及び 5 U AMV 逆転写酵素 (Promega社)を用いて、48℃で45分間インキュベートすることにより行った。
<選択産出物のPCR>
完全長構築物の増幅を視覚化するために、エンドポイントPCRを行った。各逆転写反応のサンプル5 mlを、0.25 mM PCRヌクレオチド混合物, 0.25 mM フォワードプライマー(原核性または真核性実験のそれぞれにT7BまたはT7KOZ)及び0.25 mM RT プライマーを含む20 mM Tris-HCl (pH 8.4), 50 mM KCl, 1 mM MgCl2, 5% DMSO中の2.5 UTaqポリメラーゼ(Roche社)で増幅した。温度サイクリングは、94℃で3分間、次に、94℃で30秒間、50℃で30秒間、72℃で1.5分間のサイクルを30回繰り返し、最終ステップは72℃で30秒間行った。
PCR産品を、臭素化エチジウム染色したアガロースゲルを用いた電気泳動により視覚化した。この次に、分離したPCR産品を、溶解性タンパク産出用の細菌pBAD発現ベクターにサブクローニングすることもできる(下記参照)。
<細菌発現及び産出>
コンピテントE. coli宿主細胞を、取り扱い説明書(Invitrogen pBAD発現システム)に従って調製した。簡潔にいうと、40μlのLMG 194コンピテントセルと、0.5μlのpBAD FN3構築体(約1 μg DNA)を氷冷下で15分間インキュベートし、その後42℃で1分間のヒートショックを与えた。コンピテントセルをSOC培地において37℃で10分間回復させた後、LB-Amp平板培地に塗布し、37℃で一晩増殖させた。翌日、FN3を産出するための最適L-アラビノース誘導濃度を予め決定するために、小スケール液体培地用の単一コロニーを採取した。
室温で一晩増殖させた後、OD600=0.5n達した各クローンの複製を、L-アラビノース連続(1:10)滴定(0.2%から最終濃度0.00002%)により試験誘発(test induced)した。テスト培地(1 ml)を回収し、ペレット化した後、100μlの1X BBSバッファー(10mM, 160mM NaCl, 200mM 硼酸, pH=8.0)を添加して細胞を再懸濁させ、次に50μlのリゾチーム溶液を37℃で1時間添加した。
遠心分離後、リゾチーム消化液の細胞上清を回収し、MgSO4を最終濃度が40mMになるまで添加した。この溶液をPBSで予め平衡にしたNi-NTAカラムに通した。His-タグを結合させたFN3サンプルを、PBSバッファーで2回洗浄し、250mMのイミダゾールを添加して溶離を完了した。溶解性FN3発現の純度をSDS-PAGEで評価した。
25℃で一晩培養した100mlの大スケールE. coli細胞培地、ペレットを遠心分離で回収した。このペレットをPBSバッファー(0.1 % tween)中に再懸濁させ、細菌の細胞壁を溶解させて細胞質内容物を放出させるために、超音波処理(Virtis Ultrasonic cell Disrupter)を5回行った。この懸濁液を高速遠心分離により浄化して、次の工程のために上清を回収した。この上清をPBSで予め平衡にしたNi-NTAカラムに通した。
His-タグを結合させたFN3サンプルを、PBSバッファーで2回洗浄し、250mMのイミダゾールを添加して溶離を完了した。次に上清のpHを6MのHClで5.5に調整し、SPセファロースHP陽イオン交換カラム(Pharmacia社)に通した。FN3を塩勾配(NaCl)により溶出させ、FN3を含む分画の濃度を280 nmにおける光学密度で測定し、PAGEで検証した。複数のFN3変異体を含む分画を貯蔵し、PBSで透析した。
<OCTETキネティック分析>
FN3変異体の結合親和性(KD=kd/ka=koff/kon)を、OCTETバイオレイヤー・インフェロメトリー(biolayer inferometry)システム(ForteBio社)により測定した会合速度定数(ka=kon)、及び解離(kd=koff)速度定数から計算により求めた。
例えばTNF-α等のリガンドをOCTETストレプトアビジン・キャピラリー・センサーチップの表面に固定化し、実質的に単分子性FN3の結合反応速度を測定した。OCTETストレプトアビジンチップは、50μM TNF-aを用い、取扱説明書に従って活性化した。また、PBS/BSA溶液を遮断薬として添加した。
会合速度定数の測定には、10ug/mlの濃度のFN3変異体を用いた。解離速度は、PBSバッファー中で試薬を用いずに測定した。結合反応の速度論的パラメータは、ForteBioソフトウエアを用いて決定した。
図25に、D2E7 anti-TNF-a抗体を参照に用いた9-14 TNF FN3クローンのOCTET測定結果を示す。
次に候補となるクローンを分離し、フィブロネクチン結合ドメイン配列の情報を得るために、プラスミド調製を行った。このアプローチは、仮説に基づく必要なコドンの理にかなった置換を決定し、フィブロネクチン結合ドメインのループ中のアミノ酸の機能の最適化を可能にする。比較配列の分析と、個々のクローンの親和性/特異性プロファイルにより、どのクローンを親和性成熟させるべきかが決定される。
[実施例1]
<バイオインフォマティックスを利用したユニバーサルフィブロネクチン結合ドメインライブラリ配列の特定方法>
この実施例では、バイオインフォマティックスと、この発明の基準とを利用して、フィブロネクチン結合ドメインライブラリ配列のユニバーサルBC, DE,及びFGループ配列を特定し選択する。発現のプロセスを一般化した模式図を図1に示す。
簡潔に言うと、PFAMデータベースについて、 III型フィブロネクチンのファミリー(FN3, PFAM ID: PF00041 )に属する配列のみを含むマルチプルアライメント配列を検索した。
この検索の結果、9321のタンパク配列の最初のデータセットが得られた。しかし、追加の配列をクローン化してデータセットに組み入れることによって、この配列のデータセット中の配列の数を増やすことができる。
基本のデータセットである〜9321のFN3スーパーファミリー配列には、ヒトフィブロネクチン、テネイシン、ショウジョウバエ・セブンレス、プロテイン・チロシン・ホスファターゼ 、EPHチロシン・キナーゼ、及びサイトカイン受容体、Zタンパク質(表1参照)等の、様々な起源のFN3配列が含まれる。
FN1, FN2及び他のタンパクスカフォールド・フレームワーク・ドメインに関連する配列をこれらのデータベースから検索して、同様の方法で特定することもできる。
Figure 0005781762
出発時のFN3配列の「ベースデータセット」の中では、コンパイルされたループ配列は非常に多くの特性を有すると考えられる。これらの配列は、起源種、起源モジュール、ループ長、その他の性質において異なる。「ベースデータセット」中の配列の起源に不均質性があるため、理論立てた分析を行なう場合には、データセットの各小集団が、研究対象とする選択された性質の1以上を共有するようにして「ベースデータセット」をさらに精緻にする必要がある。
このため、最初の〜9321のベースデータセットから、冗長または重複する配列を除去することにより、5955の非冗長性のFN3配列のフィルタリングを行った。この第2のサブセットからさらに794のヒトFN3配列から成る第3のサブセット得た。
このような個別の性質を共有するサブセットの構成成分により、サブセット内での有意性のある比較と、正確なデータ分析に適した、より「標準化」されたセットが構築される。
このプロセスを繰り返すことによって、所定の関係をより高度に有する、複数の小さなサブセットを得ることができる。例えば非−ヒトモジュールが含まれるデータセットを追加することにより、配列の多様性を拡張することもできる。
次のステップでは、β-スカフォールドフレームワーク、ループ長、及びループアミノ酸の指定を行ない、次いで、これらの候補配列の出現頻度を分析する。すなわち、変異性プロファイルの決定には、データセットを構築するために、研究対象とする所定の性質の1以上を共有するアライメントされたアミノ酸配列の収集及び選択が必要である。本願出願人は、10/FN3ドメインの位置番号付けアーキテクチャーを基準点に用いて、β-ストランドとループ位置の分類システムを開発した。まず、FN3フィブロネクチン−タンパクモジュール1 , 4, 7, 8, 9, 10, 12, 13, 14, 及び15の結晶構造に基づいて、各β-ストランドを特定した。なお、各β-ストランドの2面角と水素結合パターンを補助的に評価して、各β-ストランドを特定した。次に、各β-ストランドと各ループの特定を行うために、アミノ酸配列のアライメントを行った。
例えば表3に示すように、10FN3を参照配列に用いて、以下のβ-ストランド及びループアミノ酸の位置を指定した。
Figure 0005781762
例えば、アライメント分析から、位置22(W22)にあるトリプトファンは、異なるモジュールの間で保存されていることが分かった。結晶構造の対比によればW22はBCループアクセプター部位の近くに位置しいることから、位置21をループの開始点とした。2つのFN3ドメイン(10FN3のV20)間の位置20に、バリンとイソロイシンから成り、B β-ストランドの一部と思われる良く保存されたグループがある。
W22にフランキングして、複数のBCループの手前にある複数の重なり合うループにおいて、構造上の相違があることが見出された。複数のBCループは、それらの間に見出されるC β-ストランドの良く保存されたY/F32に再度進入する。
位置21と31をBCループの外境界と指定することにより、「フィルタリング後のデータセット」をBCループサイズに応じて分け、そのアミノ酸出現頻度の構成を特定した。DE及びFGループについても同様にして配列/構造比較分析を行った。
DEループを、D β-ストランドの位置50(10FN3中のV50)にあるバリン、ロイシン、及びイソロイシンから成る保存されたグループを境界とし、E β-ストランドの位置56(10FN3中のT56)で終了すると指定した。同様にして、位置76(10FN3中のT76)及び位置86(10FN3中のK86)を、FGループのFβ-ストランド及びGβ-ストランドの接合点として選択した。
これらのアライメントされたβストランドの境界の定義により、各ループのサイズは1種類では無く、異なる長さであることが見出された。図6〜8に、BC, DE及びFGループサイズの出現頻度分布の分析結果を示す。ループサイズの分類とその説明の記載形式は、FN3ループ/長さである。例えば、BC/15は、長さが15アミノ酸のFN3 BCループを意味する。
BSループの定義において、当初はスカフォールドループの境界を11アミノ酸長に設定した。しかし、BCループの長さの範囲は9から18アミノ酸であり、アミノ酸の長さが14 (BC/14)、及び15(BC/15)のものもよく出現する(図6参照)。
異なるループ長の場合でも、ループアミノ酸のアライメントを行うことができる。例えば、BC/15中の位置25のプロリン(P25)は、BC/15構成要素の中で良く保存されていることが見出された。またP25は、BC/14とBC/11構成要素の中で一般的であることが見出された。
ループアミノ酸位置のアライメントは、これらの等価位置に最も近づくようにして行った。従って、ループBC/15において、ループに含まれる追加のアミノ酸が残基26と27の間にあるとき、この追加のアミノ酸には26a, 26b, 26c, 及び26dの位置が指定される。ループBC/14において、ループに含まれる追加のアミノ酸が残基26と27の間にあるとき、この追加のアミノ酸には26a, 26b, 及び26cの位置が指定される。
上記のように、10/FN3(ヒトフィブロネクチンの10番目のFN3モジュール)を基準にして番号の付与を行う。
[実施例2]
<フィルタリング及び遺伝子配列のクラスター分析によるバイオインフォマティクッスを利用したループ変異性プロファイルの評価>
ユニバーサルフィブロネクチン結合ドメインライブラリを、in vivoで発現されたループの変異性プロファイルを決めることにより設計した。変異性プロファイルは、アライメントされた配列のデータセットにおいて、特定の位置にあって種類が異なるアミノ酸のカタログ化、及び各アミノ酸の代表的な発生率を表す。当初の「ベースデータセット」内の上記のパラメータを用いたループ配列のサイズ関連ファミリーを特定し、分類する。これらの多数のアライメントされたループの比較分析により、潜在的にリガンド結合性付与に繋がるアミノ酸変化を導入するための、既存の多様性及び「許容」多様性に関する変異性プロファイルの情報が提供される。
同様の定義を用いて、他のスカフォールド様タンパクのループの指定、及びループを構成するアミノ酸を表すことができる。
図6から8に示す6つのループサイズについての発現頻度分布は、FN3配列にとって好ましいBC, DE及びFGループサイズの存否を調べるために作成したものである(表2参照)。
BCループの場合(図6)、15アミノ酸ループサイズが最も一般的であり、BCループ集団の30%を占める。14アミノ酸及び11アミノ酸のループサイズがこれに次いで一般的なループサイズであり、BCループ集団の18%及び16%を占める。本願の変異性プロファイル分析用のBCループサイズとして、11, 14及び15アミノ酸を選んだ。
DEループのサイズ頻度分析では、分析したFN3配列中の約45%を、6アミノ酸のループサイズが占めることが認められた(図7)。4, 5 及び7アミノ酸のDEループサイズの占める割合いずれも16%以下であった。6アミノ酸のDEループサイズが全体の55%を占めることは、FN3には6アミノ酸のDEループサイズが好ましいことを示唆している。この場合、変異性プロファイルの分析には、6アミノ酸のDEループサイズのみを選んだ。
FGループの出現頻度分析では、8及び11アミノ酸のループサイズが最も一般的な2つのループサイズであり、それぞれが分析したデータセット中の58%及び18%を占めることが認められた。このため、変異性プロファイルの分析には、8及び11アミノ酸のFGループサイズの両者を用いた。
これより前の分析では、FGループ長FG/8及びFG/11はそれぞれFG/6及びFG/9と特定された。この違いは、以下の表5に示すように、各ループ長に2つのC末端アミノ酸S, Kを付加したことによる。
いくつかの実施形態では、FG/8ループが6つのアミノ酸で特定されている場合、これらのアミノ酸はFG/8の6つのN末端アミノ酸を表している。同様に、FG/11ループが9つのアミノ酸で特定されている場合、これらのアミノ酸はFG/11の9つのN末端アミノ酸を表している。
Figure 0005781762
6つの選択したループ(表4)のそれぞれについて出現頻度分析を行って、選択した各ループ中のアミノ酸位置を決定した。EMBOSS/prophecy (bioinfo.nhri.org.tw/cgi-bin/emboss/prophecy)を用いた簡単な出現頻度分析を行い、アミノ酸位置を表わすマトリックスを得た。各位置における相対的出現頻度を得るために、得られたマトリックスの構文解析を行い、フィルタリングを行った。構文解析により、2つの閾値(上限と下限)に基づく簡単なフィルターが得られた。
構文解析により、各位置について相対的出現頻度が「下限」閾値より高く、累積出現頻度が「上限」閾値に達するまでの範囲のアミノ酸を評価した。上限閾値に達しない場合は、構文解析により、相対的出現頻度が下限閾値より低いアミノ酸を評価した。閾値の好ましい下限〜上限の組合せは5〜50であった。これは、位置の分類において良好な検出感度が得られるためである。すなわち、構文解析により、各位置において最も出現頻度のアミノ酸のみに限定されたリストが得られる。構文解析の結果を、図9〜14に出現頻度を表わす図として示す。
[実施例2A]
<閾値による固定及び非固定ループ位置の特定>
ひとつの実施形態では、保存コンセンサスアミノ酸、または選択された半保存コンセンサスアミノ酸の自然−変異体組合せライブラリを、以下のように設計した。
アミノ酸の変異性、及びアライメントされた各位置におけるアミノ酸の相対的出現頻度に関するFN3ループデータセットを上記に列挙した(図9〜14)。上記の分析により、全てのFN3モジュールループにおける位置的優先傾向(positional preference)を特定し、「変異性プロファイル」と名付けた。
例えば、BCループサイズ11(図9)の場合、全てのFN3ループ位置の約95%で位置22にトリプトファン(W)の存在が認められ、トリプトファンの選択圧が高いことを示している。トリプトファンは、予め設定した閾値レベルの40%より高い頻度で出現し、その位置において2番目に出現頻度が高いアミノ酸より2倍以上の頻度で出現することから、位置22にはトリプトファン(W22)が保存されていると考えられる(下記の実施例3参照)。
「固定」された残基は、そのループ位置に出現する他のアミノ酸に対し、優勢なアミノ酸と見なせる。「固定」された位置は、最初のライブラリ構築段階では、変異誘発による多様化の対象にはしない。
他のBCループサイズ11のループ位置では、位置25ではプロリン(P) (約>45%)が優勢であり、その位置において2番目に出現頻度が高いアミノ酸(<20%)より2倍の頻度で出現することが分かった。すなわち、P25の位置は、出現頻度が2番目に高いアミノ酸に対し優勢アミノ酸が2倍の頻度で出現することから、「固定」されていると考えられる。
これに対し、プロリンは位置24, 26及び28においても最も優位であるが、他のアミノ酸の出現頻度も十分高い(8-19%)。位置24, 26及び28は、同程度の出現頻度を有する多くのアミノ酸が存在し、優勢アミノ酸の出現頻度が他アミノ酸の2倍を超えないため、これたの位置は「可変」であると考えられる。
サイズ14のBCループ(図10)では、特定のアミノ酸の位置的優先傾向が認められた。BC/14では、位置22にWが(>95%)出現し、位置25のプロリン出現頻度は70%である。これは、W22及びP25はBC/14において非常に優勢であり、この2つの位置は「固定」されていると考えられる。
また、位置29のイソロイシンも固定されている。すなわち、BC/14では、イソロイシン(I29)の出現頻度は>52%であり、その位置において2番目によく見られ、出現頻度がそれぞれ18%及び16%であるバリン及びロイシンよりも、2倍以上の頻度で出現する
BC/15ループ(図11)については、BC/11及びBC/14と同様、W22, P25及びI29が固定された位置であることが分かった。さらに、位置26eと26fのグリシンの出現頻度が>75%であり、「固定」されていると考えられる。
先ずこれらの「固定」された位置と非固定の位置(「X」で表わす)を決めることによって、B/15の出発「固定」配列は:X21 W22 X23 X24 P25 X26 X26a D26b G26c G26d X27 X28 129 X30 X31と表わされる。
同様に、BC/4とBC/1の出発「固定」配列はそれぞれX21 W22 X23 X24 P25 X26 X26a X26b X26c X27 X28 I29 X30 X31、及びX21 W22 X23 X24 P25 X26 X26 X27 X28 I29 X30 X31と表わされる。
他のループについても、同様にして変異性プロファイル分析を行った。
要約すると、サイズ6のDEループ(図12)の場合は、単一のアミノ酸がその位置に表れるアミノ酸の35%以上を占めるようなループ位置は認められなかった。
位置52のグリシン(52G)、位置55のトレオニン(55T)、及び位置56のセリン(56S)について、優位性が僅かに認められた。しかしこの場合、「固定」アミノ酸と考えられる閾値レベルである40%を超える優勢アミノ酸は認められず、全てのループ位置が「可変」と考えられる。
ライブラリを構築する際、各ループ位置における最も一般的アミノ酸が、最初の突然変異誘発操作における出発アミノ酸となる。従って、DE/ループは全て「可変」であり、出発ループ配列はX51 X52 X53 X54 X55 X56で表わされる。
FGループサイズ8(図13)の場合、位置84におけるセリン(S)の配列中での出現頻度が75%であることから、位置84が「固定」されていた。
FGループサイズ8の他の位置は全て「可変」であり、FG/8の出発「固定」配列は、最も出現頻度の高いアミノ酸を用いて、X76 X77 X78 X79 X80 84S (FG/8の6つのN-末端アミノ酸)と表わされる。
FG/8のループ番号は80から84に跳ぶ。これは、より長いループサイズ9を、10/FN3を基準とするサイズ長の基準に用いるためである。
FG/ 11には、アスパラギン(56N)、グリシン(79G)、セリン(84S)の4つの「固定」アミノ酸と、位置84にある「半固定」のグリシン及びセリンが含まれる。3つのアミノ酸56N, 79G, 84Sと、半固定の81G/Sの配列中での出現頻度は40%を超える。
この分析の結果、FG/11の出発「固定」配列は、N76 X77 X78 79G X80 G/S81 X82 X83 S84 (FG/11のN末端の9つのアミノ酸)と表わされた。
各ループデータセットの変異性プロファイルにより、さらに多様性を導入するための所与のループ位置の所望の性質が特定される。
上記の結果は、出現頻度の閾値レベルによって、ライブラリに導入されるループアミノ酸の多様性を「微調整」可能であることを示している。これらの「固定」されたループ位置により、いくつかの天然多様性が再現されて、構造安定効果が生じ得る。
また、このように位置を「固定」することにより、出発ループ配列中の可変位置の多様性を「制限する」効果を生じる。
しかし、これとは逆に、より多様性に富み、より大きなライブラリを得ることができる場合もある。この場合、「拡張」効果は、「固定」アミノ酸を指定するために用いる出現頻度の閾値を高くすることによって得られる。この方法では、変異性プロファイルにより、相対的に少数の保存されたループ位置が捉えられ、これらが「固定」された位置に分類される。残りのループ位置が、相対的に広範で、多様化され得る「可変」アミノ酸に分類される。
[実施例2B]
<閾値を用いない、固定ループ位置及び非固定ループ位置の特定>
別の実施形態では、選択された6つのループ(表4)において変異性の閾値を用いることなく、すなわち閾値を100%として、自然−変異体組合せ多様性を設計することができる。この実施形態では、各変異ループは、変異性及び相互作用の両者に関して変異性プロファイルを再現するアミノ酸を含むように設計される。
特定のループ位置のそれぞれにおいて、その位置での相互作用及び変異性に合致し、再現することができる縮重コドンを含むようにオリゴヌクレオチド合成を最適化する。変異性プロファイルにおいて、2以上のアミノ酸が存在しうる位置を、その位置の変異性の程度にかかわらず、変異化させることができる。
BCループサイズ11(図24)とサイズ14の場合、位置22のWのみが固定されている結果、次の突然変異誘発パターンとなる:BC/11 = X21 W22 X23 X24 X25 X26 X27 X28 X29 X30 X31; BC/14 = X21 W22 X23 X24 X25 X26 X26a X26b X26c X27 X28 X29 X30 X31。
BCループサイズ15の場合、3つの固定された位置(W22, P25 and G26c)がある結果、次の突然変異誘発パターンとなる:BC/15 = X21 W22 X23 X24 P25 X26 X26a X26b G26c X26d X27 X28 X29 X30 X31。
DEループサイズ6の場合、全ての位置が可変であるため、出発配列はDE_6 = X51 X52 X53 X54 X55 X56となる。
FGループサイズ8は、出発配列FG/8 = X76 X77 X78 X79 X80 X84 S85 S86によりエンコードされる。
最後に、FGループサイズ11は、出発配列FG/11 = X76 X77 X78 G79 X80 X81 X82 X83 X84 S85 S86によりエンコードされる。
Xで表わされた位置は、関連する変異性プロファイル中のアミノ酸をエンコードするか、または化学的に等価なアミノ酸のサブセットをエンコードする。
実際には、特定の位置にある2以上のアミノ酸が、化学的に非常に類似している場合がある。このような場合、突然変異誘発の設計にこれらのアミノ酸のサブセットのみを含めて、その位置の化学的性質を保存しておくことができる。これらにより、変異体の総数を減らすとともに、オリゴヌクレオチド合成の最適化をよりフレキシブルに行うことができる。
[実施例3]
<閾値制限を用いてFN3ドメインライブラリのWTMループ多様性を設計する方法>
この実施例では、FN3結合ドメインライブラリのループ多様性を最適化する方法を説明する。
前記の候補フレームワークの選択は、導入するループサイズと最初のアミノ酸配列の選択の両者に影響する。この方法について、特にFG/11ループを例に説明する。
FN3に基づくスカフォールドのFG/11ループライブラリを設計するとき、変異性プロファイルについて以下を考慮する。
上記のように、「固定」されたアミノ酸残基は、指定されたループ位置における頻度閾値が典型的には少なくとも40%(典型的には少なくとも50%)であり、2番目に出現頻度が高いアミノ酸より出現頻度が2倍以上高いと定義される。
FN3 のFG/11変異性プロファイル(図14)から、位置79のGly (G79)は約85%で出現することが見出された。次に出現頻度が高いアミノ酸は、その出現頻度が5%未満であり、下限閾値に達していなかった。(構文解析で排除された。)
指定された残基、この場合はG79が、このような高い出現頻度を有すると認められるときは、高度に保存されており、この発明のライブラリでは「固定」されていると表現される。これは、最初のライブラリの多様化において突然変異誘発されないことを意味する。
同様に、N76, G81及びS84も「高度に保存」されており、その出現頻度はそれぞれ66%, 47%,及び61 %である。これらは、最初の多様性ライブラリにおいて「固定」される。
2つの半保存アミノ酸が指定された1のループ位置に存在する場合がある。例えば、G81とS81はそれぞれ66% と30%の頻度で出現する。すなわちこのような場合、G81とS81を保持し、他のアミノ酸を排除する強い選択圧があることから、この2つのアミノ酸は位置81に「半固定」されていると考えられる。
G81が66%でS81が30% となる比率は、添加するヌクレオチド混合物の「ドーピング」を制御することにより、一定に保つことができる(実施例5参照)。1ループ当りのWTM置換数は、オリゴヌクレオチド合成ドーピングにより容易に達成できる(例えば米国特許出願US20040033569A1参照)。
位置N76, G79, G/S81,及びS84は固定されたクローンであり、FG/11の「固定」された出発配列はN76 --77 --78 79G --80 G/S81 --82 --83 S84(下線は固定されたアミノ酸を示す)である。
全ての部位に多様性を導入しない理由は、ライブラリの最初の多様性サイズを制限して、全ての変異体の効率的発現とディスプレイを促進するためである。
最初に「固定」された位置は、その保存に対する強い選択圧の存在を示す。しかし、これらの位置は、親和性成熟の間のルック・スルー突然変異誘発(LTM)の対照となる部位である。別言すれば、最初の「固定」された位置を、その後突然変異誘発させることができる。
最初のライブラリ多様化における「固定」された位置の最終目標は2つあり:1)好ましいループ残基の大部分を導入して、機能性クローンの数を最大にすること、及び2)全ライブラリサイズを最小限にすること、である。
次に、回収したクローンのLTMマッピングにおいて、「固定」された部位が、総合的結合能力を失うことなく親和性成熟させるために変異させることが可能な「ホット」スポットであるか、または「コールド」スポットであるかを正確に評価する。
「可変」アミノ酸残基という用語は、指定された残基位置において低出現頻度(高閾値である20%よりも小さい)で生じると認められるアミノ酸残基を意味する。
例えば、図14の例のようにFG/11の変異性プロファイルを分析することにより、可変位置77, 78, 80, 82 及び83のいずれにも、40%以上の高頻度で出現する単一のアミノ酸が存在しないことが分かる。
FG/11の位置77, 78, 80, 82及び83の場合、各ループ位置には多くの種類のアミノ酸が相対的に低い頻度で出現する。
従って、位置77, 78, 80, 82及び83は、例えばWTM等の突然変異誘発によって、最初のループ配列多様性を構築するための部位である。次にアミノ酸多様性を導入するとき、FG/11配列はN76 X77 X78 79G X80 G/S81 X82 X83 S84である。ここで、Xは最初の突然変異誘発 (例えばWTM)が行われる際の可変位置を表わす。X位置は、WTMで設計されたコドン変化に応じて、出発時の「野生型」アミノ酸、WTM置換、または「副生」アミノ酸から成る。
例えば、出発配列N76 X77 X78 79G X80 G/S81 X82 X83 S84へのWTM標的アミノ酸としてリジン(K)を用いてFG/11ループ内にWTMライブラリを構築するとき、位置77, 78, 80, 82, 及び83をリジン残基で置換することができる。
FG/11 WTM(K):ライブラリの各変異体の最終的配列には、単一置換が含まれている:
Figure 0005781762
FG/11 : WTM(K): ライブラリの各変異体に配列には、さらに二置換が含まれている:
Figure 0005781762

FG/11 : WTM(K): ライブラリの各変異体に配列にはさらに、例えば次のような三置換が含まれ得る:
Figure 0005781762

FG/11 : WTM(K): ライブラリの各変異体に配列にはさらに、四置換が含まれ得る:
Figure 0005781762

最後に、FG/11 : WTM(K): ライブラリの各変異体に配列にはさらに、五置換が含まれ得る:
Figure 0005781762
WTMTM多様性では、標的とするコドン変化を行うために、上記の例の各位置における「X」は、出発「野生型」アミノ酸でなければならない。上記の変異性プロファイル分析結果から、FG/11は以下の「野生型」コンセンサス配列を有する。
Figure 0005781762

変異性プロファイル(図14)にA77, A78, P82, 及びP83残基がそれぞれの位置において最も出現頻度の高いアミノ酸であることが示されたため、これらの残基を出発「野生型」アミノ酸として選択した。
この場合、リガンドとの結合に対する、アミノ酸側鎖を導入することによるWTM (K)の効果を検討する。
WTM (K)アミノ酸は、標的の「可変」位置のみで生じ、「固定」された位置では生じないものと理解される。
産出された多様性WTMには、標的コドンの「野生型」アミノ酸の縮重に起因する「副生」アミノ酸が含まれる。例えば、位置77の「野生型」アミノ酸はアラニン(Ala)である。位置77においてリジンWTMを行って、位置77にAlaとLysの両者が存在し得るようにする場合、用いられる縮重コドンはRMGである。RMGから生じる「副生」アミノ酸はトレオニン(T)及びグルタミン酸(E)である。残余のWTMアミノ酸(G, S, H, L, P1 Y, D,及びQ)は、FN3 FG_9 ループの下記配列の可変位置Xを置換する。
Figure 0005781762

アミノ酸のWTMは、そのアミノ酸に対する「副生」アミノ酸とともに生じるものと理解される。
9つの予め選択したWTMTMアミノ酸を用いるFG/11のWTMにより、約2×9あるいは59049(WTM副生物を含む)の多様性を有するライブラリが得られる。比較例を挙げると、全20種のアミノ酸を用いてFG/11の5つの「可変」位置を飽和突然変異誘発させたときの多様性は、205または3.2×106である。
従って、FG/11の全ループ位置について飽和突然変異誘発させたときのライブラリの多様性は、209あるいは5×1011である。この多様性は、現状ではライブラリディスプレイ及びスクリーニング技術の限界に近い。
しかし、ただ1つの変異ループを含むFN3ループのライブラリにおいて、他のFN3ループ(例えばBC/11及びDE/6)が飽和突然変異誘発により多様化された場合、FN3ライブラリの最小サイズは2026、または6.7×1033.となることに注意する必要がある。一方、BC, DE及びFGループの「可変」位置を特定して構築したライブラリの最小及び最大サイズは6.7×1033である。
これらに対し、この発明ではより小さなサイズで、より代表的なライブラリを構築することができる。この発明の方法により、結合分子の第一世代を特定するために、いくつかのループを管理可能なライブラリが提供される。引き続き他のCDR位置について行われる親和性成熟突然変異誘発により、これらの特定された結合分子の最適化が行われる。
別のアプローチでは、ルック・スルー突然変異誘発 (LTM)により、副生物を回避することができる。LTMでは一般に、所望の各変更点についてオリゴヌクレオチドを合成する必要があるが、縮重コドンによる副生物が排除される。
下記の表5に、この発明のFN3結合ドメインライブラリに用いるために特定したループ配列のまとめを示す。ループの名称、サイズ及び残基位置は、前記と同様である。一文字が表示されている位置は固定された位置である。二文字の位置は半固定位置であり、2つだけの標的アミノ酸(例えばS-G)が得られるように、混合物を用いて合成を行った。二文字の位置で最初が「X」の位置は多様性WTM用の可変位置である。Xの次のアミノ酸は、変異性プロファイルにおいて最も出現頻度が高いアミノ酸であり、「野生型」(例えばX-V)と考えられるアミノ酸である。
Figure 0005781762
[実施例4]
<WTM及び拡張WTMを用いたループ多様性導入のためのオリゴヌクレオチドの設計>
BC/15の多様性(表5)を設計するために、閾値を50%として(図11)、フィルタリングしたデータセット中のBC/15ループ位置の変異性プロファイルを検討した。
変異性プロファイルにより、BC/15は下記の「野生型」出発配列を有することが示された。
Figure 0005781762
Figure 0005781762
リジン(K)を用いてWTMを行うために、出発「野生型」アミノ酸と、選択された「可変」位置にあるWTM (K)アミノ酸との両方に、選択的縮重コドンを導入する。これに関しては、図16A〜16Iにも図示した。
Figure 0005781762
BC/15のWTM (K)オリゴヌクレオチド配列を下記に示す。
Figure 0005781762
次のPCR反応で用いるオリゴヌクレオチドには、以下に示す5'及び3'の両フランキング領域が含まれる。
Figure 0005781762
下線部は、上記のように変異BCループをエンコードする。5'フランキング領域配列はB β−ストランドドメインのC-末端部をエンコードし、3''フランキング領域配列はC β−ストランドドメインのN-末端部をエンコードする。
位置21では、(arm)または(a a/g a/c): agcがS (野生型)をエンコードし、aaaがK (WTM標的)をエンコードする。
さらに、agaがRをエンコードし、aacがNをエンコードし、これらはいずれもWTM混合ベース反応の「副生物」である。
位置22では (tgg)がWをエンコードする。
位置23では (raa) または (a/g a a)がEまたはKをエンコードする。
位置24では (mma) または (a/c a/c a) が T, K , Q または Pをエンコードする。
位置25では (ccg) が Pをエンコードする。
位置26では (raa) または(a/g a a) が EまたはKをエンコードする。
位置26aでは (raw) または(a/g a a/t)が N, E, KまたはDをエンコードする。
位置26bでは, (gat)がをエンコードする。
位置26cでは, (ggc)がGをエンコードする。
位置26dでは, (ggc)がGをエンコードする。
位置27, または arm または(a a/g a/c) がR, N, K または Sをエンコードする。
位置28, または mma (a/c a/c a) が T, K, QまたはPをエンコードする。
位置29, または (att)がIをエンコードする。
位置30, または ama (a a/c a)が TまたはKをエンコードする。
位置31, または rra (a/g a/g a)がR, E, Gまたは Kをエンコードする。
WTMの「副生物」はライブラリの更なる多様性をもたらす。残りのBC_15ループコドンを同様に処理すれば、8192の変異体の組合せが可能な、制限されたWTM (K)ループライブラリを構築することができる。
残りのWTMアミノ酸であるG, S, H, L, P, Y, E, 及びQ (表5参照)にもWTMを適用した。9つのアミノ酸のWTMを完了したとき、全BC_15ループライブラリのサイズは105であった。
Figure 0005781762
<スプリット−プール合成:WTM Yオリゴヌクレオチド>
出発「野生型」アミノ酸がグルタミン酸(E)であるチロシン(Y)のWTMを行うとき、望ましくない副作用は終止コドンの導入である。チロシンはtat及びtacでエンコードされ、グルタミン酸はgaa及びgagでエンコードされ、アンバー終止コドンはtagで、オーカー終止コドンはtaaである。
このため、チロシンをグルタミン酸で置換するとき、最初の位置はチロシンではt、グルタミン酸ではgとなり、2番目の位置はa、3番目の位置はチロシンではtまたはc、グルタミン酸ではaまたはgとなる。従って、上記のようにして設計した標準的ヌクレオチド混合物は、taaまたはtagとなる。
このよな場合、コドンのプール(pool)を別々に合成し、次いで混和し、さらに次段階の合成のために分別(split)を行なう(E A Peters, P J Schatz, S S Johnson, 及びW J Dower , J Bacteriol. 1994年 7月; 176(14): 4296- 4305.)、別のオリゴヌクレオチド合成法を用いることが好ましい。
このスプリット−プール合成により、通常の単一反応オリゴヌクレオチド合成で生じるアンバー終止コドン等の望ましくない副生物を産出することなく、(Y) WTM残基を導入することが可能になる。
スプリット−プール合成では、2種のプールを用いる。最初のプールにはYをエンコードするコドンTATを用い、第2のプールにはEをエンコードするコドンGAAを用いる。このスプリット−プール法では、各反応プールはUAGまたはUAA終止コドンをエンコードしないので、アンバー終止コドンを生じない。
BC_15の場合、(Y) WTMオリゴヌクレオチド反応を位置26まで行い、その後反応液を2つの別のカラムに分けて、さらに合成を続ける。
所定のアミノ酸混合物を作るために、2つのカラムを用いた。最初に、フランキング領域と上記のBC_15ループの固定部分によって定義される、オリゴヌクレオチドの固定3'部分を合成した。上記の例の配列の位置26では、第1カラムでTATコドン(3'-5' DNA合成におけるTAT)を合成した。第2カラムでGAAコドン(3'-5' DNA合成におけるAAG)を合成した。
3つのヌクレオチドを結合させた後、2つのカラムを開き、合成担体をアセトニトリルで洗浄し、樹脂をプールした。混合した後、樹脂をカラムの1つに入れた。この時点で、次の部分の位置25と24を合成した。単一のカラムで、上記のようにCGGコドンとYMTコドンを合成した。次に、樹脂を(Y) WTMの位置23と位置26とに、上記のように再分配した。その後、合成物をプールし、引き続き51の固定及びフランキング領域の合成を行った。
同様にして、BC/14及びBC/11ループのWTMオリゴヌクレオチド設計を行った。
FN3 BC/14に関して、変異性プロファイルは以下のように表わされる。
Figure 0005781762
Figure 0005781762
FN3 BC_11に関して、変異性プロファイルは以下のように表わされる。
Figure 0005781762
Figure 0005781762
上記のBC_11ループのオリゴヌクレオチド設計により生成した副生物を、図15A〜15Iに示す。
10FN3 DE_6に関して、変異性プロファイルは以下のように表わされる。
Figure 0005781762
適切な可変位置においてウォークスルー10FN3 DE/66を行った結果を表6に示す。
上記のように、配列中のXで示す部分はウォークスルーアミノ酸を意味し、ダッシュ(-)の後のアミノ酸は出発野生型アミノ酸を意味する。
Figure 0005781762
図15Aと15Bに示すウォークスルーアミノ酸Q, K, H, G, S, L, P及びYに関し、上記のDE/6ループのオリゴヌクレオチド設計を使用したとき生成した副生物を図17Aと17Bに示す。
Figures 15a and 15b.
FN3 FG/11に関して、変異性プロファイルは以下のように表わされる。
Figure 0005781762
Figure 0005781762
上記のFG_9ループのオリゴヌクレオチド設計を使用したとき生成した副生物を図18A〜18Cに示す。
FN3 6に関して、変異性プロファイルは以下のように表わされる。
Figure 0005781762
Figure 0005781762
アンバーコドンを用いる20のアミノ酸全てと、非天然アミノ酸を、影をつけた示した適切な位置においてウォークスルーできる可能性がある。
拡張ウォークスルーとドーピングを用いて、表11によるオリゴ構築を以下のようして行った。
配列中にXで示した適切なループ位置において、(ループの)拡張ウォークスルーを行うことができる。Xはウォークスルーアミノ酸を意味し、ダッシュ(‐)の次のアミノ酸は、ベース野生型アミノ酸及びスラッシュ(/)の後に示した必要な副生物を意味する。
拡張ウォークスルーはもう一つのWTMコドン設計の例であり、副生物を予め決めておくことができる。例えば、変異性プロファイルに、GとPが特定の位置において出現頻度が高いアミノ酸であることが示されているとする。出発WTM配列中のG及びPアミノ酸の出現頻度は、これらが「固定」アミノ酸または「野生型」アミノ酸であることを示していない。しかし、拡張ウォークスルーによれば、GまたはPがWTM副生物となるようにWTM縮重コドンを偏らせることができる。
Figure 0005781762
必要な副生物を伴う拡張ウォークスルー突然変異誘発の例示として、第2のBC/14変異体を示す。表11に示すBC_14の標準WTM及び拡張WTMの設計を上の表に示す。この場合、標準WTMは、出発アミノ酸としてP及びNをそれぞれ位置26bと26cに有する。Kを標的アミノ酸に用いるWTMの場合、この2つの位置に必要な副生物はGである。
本願では、位置26bに縮重コドンv(acg)caを用いる。コドンacaはWTM Kアミノ酸をコードし、コドンccaはP、野生型アミノ酸をコードし、コドンgcaは必要な副生物であるGをコードする。すなわち、a, c, 及びgがコドンの最初の位置にあり、cが2番目で、コドンの3番目がaである。
また、縮重コドンrrmを位置26cに用いる。コドンaaaはKをコードし、aacはNをコードし、ggaはGをコードする。すなわち、aとgがコドンの最初の位置にあり、aとgが2番目で、コドンの3番目がcとaである。
これらの拡張WTM (K)の結果を以下に示す。5'及び3'フランキングコドンは標準WTM (K)オリゴヌクレオチドと同じである。縮重コドンを、WTMに野生型及び必要な副生物が導入されるように設計するために、この原理を残りのWTMアミノ酸(G, S, H, L, P, Y, D, 及びQ)にも適用する。
Figure 0005781762
Figure 0005781762
供給塩基混合物のドーピングは、予め決めたアミノ酸の比率が得られるように行うことができる。
この例では、位置26において、出発野生型アミノ酸のD(アスパラギン酸)の30%に対し、WTM K (リジン)がループに70%の割合で導入されることが好ましい。リジンの使用量は、最初のコドン位置に用いられる"a"のパーセンテージによって決められる。すなわち、70%のリジン導入率を得るために、混合物中の"a"のパーセンテージは70%で導入され、一方"g"は30%のアスパラギン酸を得るために30%で導入される。
この例では、位置26aにおいて、WTM K (リジン)がループに50%導入され、出発野生型アミノ酸のD(アスパラギン酸)が50%であることが好ましい。すなわち、50%のリジン導入率と50%のアスパラギン酸を得るために、混合物中の"a"と"g"のパーセンテージは、オリゴヌクレオチドの取り込みにおいて50%で導入されるように両者を調整する。
同様に、位置96-99において、グリシンの取り込みは、約25%程度のグリシン取り込みが得られ、副生物の取り込みが減少するように調整する。
好ましくは、BC, DE及びFGループのβ-スカフォールドFN3ドメインへの取り込みを促進するために、フランキング領域が5'及び3'オリゴヌクレオチド領域に追加される。フランキング領域は、SOE-PCRを実施できるように(図20参照)、他のβ-ストランドをエンコードするオリゴヌクレオチドとの相補的塩基対を備える。
下記のフランキングスカフォールド5'及び3'配列を、BC, DE及びFGループに用いる。
Figure 0005781762
[実施例5]
<WTMオリゴヌクレオチドの設計(閾値不使用)>
別の実施形態では、各ループの全長にわたってWTM突然変異誘発を行うことが可能であり、各ループの全ての位置が可変であると考えることができる(閾値=100%)。すなわち、このライブラリは前記の例のスーパーセットである。さらに、WTMがどのように機能するかにより、各位置において最も豊富なアミノ酸は、ループ中の全ての位置の各々で出現頻度が25%から50%になるようにエンコードされる。
従って、本願のライブラリは大きな配列スペースをカバーすることができるが、それでもデータベースに見られるアミノ酸パターンに偏っている。
ストランド−ループ境界にある位置には、特別な操作が必要である。この位置にある残基は、フレームワークの安定性に非常に重要であると考えられる。従って、関連する変異性プロファイルにおいてこのような位置が高度に保存されているときは、固定されたままにしておく(ループBC_11S中の21 , W22及びG31;ループBC_14及びBCJ 5中のS21及びW22;ループFG_8及びFG_11中のN76参照 )。
Figure 0005781762
表14に続いて、ループBC_15の設計を以下に示す。
Figure 0005781762
Lys (K)を用いてWTMを行うために、選択された「可変」位置の出発「野生型」アミノ酸とWTM (K)アミノ酸の位置に、選択的コドンを導入する。
Figure 0005781762
BC_15のWTM (K)オリゴヌクレオチド配列は以下のようになる。
Figure 0005781762
次のPCRで用いられるオリゴヌクレオチドには、下記の5'及び3'の両フランキング領域が含まれる。
Figure 0005781762
下線を付した部分は、上記の変異BCループをコードする。5'フランキング配列はB β-ストランドドメインのC-末端部をエンコードし、3'フランキング配列はCβ-ストランドドメインのN-末端部をエンコードする。
位置21では、(age)がSをエンコードする。
位置22では、(tgg)がWをエンコードする。
位置23では、(raa) または (a/g a a)がE または Kをエンコードする。
位置24では、(mma) または (a/c a/c a)がP, K , Q または Tをエンコードする。
位置25では、(mma) または (a/c a/c a)がP, K , Q または Tをエンコードする。
位置26では、(raa) または (a/g a a)がE または Kをエンコードする。
位置26aでは、(raw) または (a/g a a/t)がD, E, K または Nをエンコードする。
位置26bでは、(raw) または (a/g a a/t)がD, E, K または Nをエンコードする。
位置26cでは、(rra) または (a/g a/g a)がG, R1 E または Kをエンコードする。
位置26cでは、(rra) または (a/g a/g a)がG, R, E または Kをエンコードする。
位置27では、または arm または (a a/g a/c)がS1 N, K または Rをエンコードする。
位置28では、または mma (a/c a/c a)がP, K, Q または Tをエンコードする。
位置29では、または (awa) または (a a/t a)がI または K をエンコードする。
位置30では、または ama (a a/c a)がT または Kをエンコードする。
位置31では、または rra (a/g a/g a)がG, R, E または Kをエンコードする。
このアプローチを、残りのWTMアミノ酸のG, S, H, L1 P, Y, E, 及びQ (表5参照)についても行う。
Figure 0005781762
同様にして、BC_14ループ及びBC_11ループのWTMオリゴヌクレオチド設計を行った。
FN3 BC_14は、下記の変異性プロファイルを有する。
Figure 0005781762
Figure 0005781762

(Table 16)
FN3 BC_14は、下記の変異性プロファイルを有する。
Figure 0005781762
Figure 0005781762

(Table 17)
上記のBC_11ループのオリゴヌクレオチド設計を用いて生成させた副生物を、図15Aと15Bに示す。
DE_6の変異性プロファイルは下記の世に表わされる。
Figure 0005781762
適切な可変位置についてウォークスルーDE/6を行った結果を表6に示す。
上記のように、配列中のXはウォークスルーアミノ酸を意味し、ダッシュ(-)の次に示すアミノ酸は、出発野生型アミノ酸を意味する。
Figure 0005781762

(Table 18)
上記のDE/6ループのオリゴヌクレオチド設計を用いて生成させた副生物を、表17Aと17Bに示す。
FG/11ループの変異性プロファイルは下記のように表わされる。
Figure 0005781762
Figure 0005781762

(Table 19)
FG/9ループのオリゴヌクレオチド設計を用いて生成させた副生物を、表18A〜18Cに示す。
FG/8ループの変異性プロファイルは下記のように表わされる。
Figure 0005781762
Figure 0005781762

(Table 20)
[実施例6]
<フィブロネクチン結合ドメインライブラリを遺伝子工学により構築する方法>
この実施例では、ユニバーサルフィブロネクチン結合ドメインライブラリを、遺伝子工学技術を用いて構築する方法を説明する。WTM FN3ライブラリを構築する方法を下記の説明、及び図20に示す。
要約すると、標準的な分子生物学的手法により、フィブロネクチンモジュールをクローン化した。
ベータ‐ストランド・スカフォールド・フレームワーク、及び可変領域の多様性ループをエンコードするオリゴヌクレオチドは、図20に示すシングルオーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応(SOE-PCR)により調製した。
この分子の全長を、発現−ディスプレイベクター中へのクローン化を促進する制限酵素認識部位を有するフランキング5'プラーマー及びフランキング3'プラーマーを用いて増幅した。構築されたライブラリの全多様性は、フレームワーク配列の数と、ループ中に突然変異を誘発させるために選択した位置の数に依存し、突然変異誘発は例えばWTMにより行う。
例えば、9つのアミノ酸を用いWTMTMにより構築した FN3 BC/11 , FN3 DE/6及びFN3 FG/11ライブラリの多様性は、3.5×106(FN3 BC/11が22 × FN3 DE/6が26 × FN3 FG/9の13個のアミノ酸が28) (図21参照)である。ライブラリの多様性の上限は1010からto 1011である。これは、細菌系の形質転換効率能力の範囲内である。
フィブロネクチンモジュールライブラリ用に、β-ストランドフレームワーク(A, B, C, D, E, F, 及びストランド)を含有する5つのオリゴヌクレオチドを合成した。10FN3スカフォールドのモジュールに基づいてライブラリを構築するためのβ-ストランドオリゴヌクレオチドを下記に示す。
A'ベータ−ストランド(BamHI制限酵素認識部位を含むフランキング領域を有するAベータ−ストランドのN-末端をエンコードするセンスストランド):
Figure 0005781762
B'-ベータ−ストランド(ABループにわたるアンチセンスストランド):
Figure 0005781762
C'-ベータ−ストランド(CDループにわたるアンチセンスストランド):
Figure 0005781762
D'-ベータ−ストランド(EFループにわたるアンチセンスストランド):
Figure 0005781762
F'-ベータ−ストランド(Xhol制限酵素認識部位を含むフランキング領域を有するFベータ−ストランドのC-末端をエンコードするアンチセンスストランド):
Figure 0005781762
上記のB', C', D',及びF'オリゴヌクレオチドを図20に図示した。
さらに、それぞれHis及びMyc免疫タグを有するN-末端リンカー領域及びC-末端リンカーをコードする2つのフランキングオリゴヌクレオチドがある。さらに、30〜60種のFN3 BC/11ループ、FN3 DE/6ループ、及びFN3 FG/9ループ中の縮重オリゴヌクレオチドののサブセットを合成した(全部で90〜180種)。
これらのオリゴヌクレオチドをSOE-PCR法によって組み立てて、必要とされるFN3 BC/11, FN3 DE/6 、及びFN3 FG/9の組合せを含むライブラリを構築した。
SOE-PCR反応では、β-ストランド用のオリゴヌクレオチドと、設計された組合せであるBC, DE及びFGループのライブラリを添加した。PCR反応は、5μlの10 μMオリゴヌクレオチド混合物、0.5μlの Pfx DNA ポリメラーゼ(2.5 U/μl)、5μlの Pfxバッファー(Invitrogen社)、1μlの 10mM dNTP、1μlの 50 mM MgSO4 及び37.5μlのdH20を94℃に2分間保ち、次に94℃に30秒、50℃に30秒、68℃に1分のサイクルを24回繰り返した後、68℃で5分間インキュベートした。この反応は、programmable thermocycler (MJ Research社)を用いて行った。上記のSOE-PCR反応生成物の一部を採取し、次のPCR反応を行うために5'及び3'プラーマーのペアを添加した。
各ライブラリからランダムクローンを選び出し、配列の検証と、所望の変異多様性、予定外の位置での異性化、欠損及び挿入の有無の観点からライブラリの品質の評価を行った。この効率は、ランダム/確率的な突然変異誘発とは対照的である。ランダム/確率的な突然変異誘発では、種々の塩基が管理されずに導入されることにより、望ましくない塩基交換が大量に生じ、不適切なアミノ酸と不用意な終止コドンの使用に起因する発現性の低下、またはフィブロネクチン結合ドメインの機能の低下につながる。
各FN3モジュールは、続いて天然FN結合配列に結合するか、あるいは、合成ポリ-Gly-Serリンカー(典型的には GGGGSGGGGSGGGGS) (SEQ ID NO:201 )を用いることにより、多量体結合ドメインとなる。
[実施例7]
<ユニバーサルフィブロネクチン結合ドメインライブラリから選択した候補のハイスループット親和性成熟を行う方法>
この実施例では、CBM (combinatorial benefical mutations:有益組合せ突然変異誘発) /WTM/LTM親和性成熟を用いて、候補フィブロネクチン結合ドメインを特定し、改善する手順を説明する。
要約すると、公知の9-14 TNFαフィブロネクチン結合ドメインを試験クローンと指定し、(例えばCBMWTMLTM法で)突然変異を起こさせ、この発明の方法に従って発現させ、ディスプレイさせ、改善する。ループの多様性に関しては、LTMをループ内での小さな摂動(例えば1ループに付き1の変化)の検査に用いる。さらに改善するために、次に有益組合せ突然変異誘発(CBM)を用いて各LTMの変化をループの全体に徹底的に導入する。
テスト用リゾチームフィブロネクチン結合ドメインを、ファージディスプレイにより発現させディスプレイさせた。なお、上記のイースト/細菌ディスプレイを用いることもできる。
[実施例8]
<アンチ-TNFα結合活性WTMライブラリを構築するためのWTM 14/FN3ライブラリのスクリーニングと分析>
WTMフィブロネクチンライブラリをポリメラーゼ・サイクリング・アッセンブリ(PCA)で構築し、ファージミドベクター中にクローン化した。オリゴヌクレオチドは、逆配向性の隣接オリゴヌクレオチドと相同な塩基対を15共有する。
8つのオリゴヌクレオチドを用いて、フィブロネクチンの完全な遺伝子を組立てた。Oligo 3にはBC loopの11のアミノ酸が含まれ、Oligo 5はDEループの6つのアミノ酸をエンコードし、Oligo 7にはFGループの9つのアミノ酸が含まれる。
野生型14FN3のフレームワークを下記に示す。
Figure 0005781762
UF3L-WTM-TYR構築体には、野生型14FN3フレームワーク配列のOligo 1 , Oligo 2, Oligo 4, Oligo 6, 及びOligo 8が用いられる。Oligo 3, Oligo 5A/Oligo 5B, 及びOligo 7A/Oligo 7B下記によって置換される。
Figure 0005781762
14アミノ酸拡張BCループライブラリのUF3L-WTM-TYR-BC_ 拡張(extended)構築体には、野生型14FN3フレームワーク配列のOligo 1 , Oligo 2, Oligo 4, Oligo 6, 及びOligo 8が用いられる。Oligo 3A, Oligo 3B, Oligo 3C, Oligo 3D, Oligo 5A/Oligo 5B,及びOligo 7A/Oligo 7Bは、UF3L-WTM-TYRライブラリのものと同じである。
Figure 0005781762
PCAを用いてフィブロネクチン遺伝子を構築するために、全8種のOligoを混合して10μMとした。
50μlのAssembly PCR 1混合物には、5μlのプールしたOligo(10μM)、10μlの5X Buffer (Finnzymes社)、1μlの10 mM dNTP、Phusion Polymerase (Finnzymes社)、33.5μl diH2Oが含まれる。
PCR操作は、98℃で30秒のサイクルを1回行った後、98℃で7秒、50℃で20秒、72℃で15秒とするサイクルを30回繰り返して行う。最終サイクルは72℃に1分間の条件で行う。
100μlのRescue PCR混合物には、2.5μlのPCR 1生成物、2.5μlのOligo 1: 14FN3_FMK_1_S、2.5μlのOligo 8: 14FN3_FMK_8_A、2μlの10 mM dNTP、20μlの5X Buffer(Finnzymes社)、1μlのPhusion Polymerase (Finnzymes社)、69.5μlのdiH2Oが含まれる。
PCR操作は、98℃で30秒のサイクルを1回行った後、98℃で7秒、50℃で20秒、72℃で15秒とするサイクルを30回繰り返して行う。最終サイクルは72℃に1分間の条件で行う。
PCR単位複製配列を、Qiagen Qiaquick PCR Clean-up Kitを取扱説明書に従って用いて精製し、80μlのdiH2Oによりスピンカラムから溶出させた。PCRフラグメントを、制限酵素BamHI (NEB社)及びXhol (NEB社)を用いて37℃で消化させ、1.2%のアガロースゲル精製し、Qiagen Gel Extraction Kitを用いてDNAバンドを精製した。
ファージディスプレイライブラリに用いる骨格DNAは、pBluescriptベースのファージミドベクターである。このファージミドベクターは、以下の特徴を有する。(1) E. Coli DsbA細胞膜輸送遺伝子由来のN-シグナル配列、(2) FN3-ベーススカフォールドを挿入できる複数のクローン化部位、(3)タンパク発現をモニターするc-mycエピトープタグ、(4) タンパク精製用ヘキサヒスチジンタグ、(5)ファージ表面にFN3をディスプレイするための、M13 p3タンパクのC-末端ドメイン(aa250-406)、及び(6) FN3とM13 p3 CTDの間に挿入されたアンバー終止コドンであって、異なるE. CoIi菌株を用いることにより膜に固定されたFN3-p3融合タンパクの発現と、溶解性FN3タンパクの発現とをスイッチングが可能なアンバー終止コドン。融合タンパクの発現は、誘導可能なラック・プロモータによって制御される。
20 μgのファージミドベクターを、制限酵素BamHI (NEB社) 、Xhol (NEB社) 及びCalf Intestinal Alkaline Phosphatase (NEB社のCIP)を用いて37℃で完全に消化させた。DNA骨格を1.2%のアガロースゲルで精製し、Qiagen Gel Extraction Kitを用いてDNAバンドを精製した。ファージミドDNA骨格と遺伝子合成PCRフラグメントを用いて一晩ライゲーションさせた。ライゲーション後の生成物を、フェノール/クロロホルムで抽出し、エタノールで沈殿させて精製した後、E. Coli XL-1 Blue cells (Stratagene社)中に電気穿孔した。ライブラリの形質転換効率を連続希釈により測定した。
UF3L-WTM-TYR-BC_拡張(extended)の効果的なライブラリのサイズは、8.0e7変異体で、UF3L-WTM-TYRの場合は1.2e8変異体であった。
<ファージディスプレイ>
ファージ粒子ライブラリのストックを、サイズがこのライブラリの10倍で、当初接種材料であるTG1細胞ライブラリから出発して作った(培地= 2YT、1 % グルコース、50 μg/ml アンピシリン)。細胞がOD600= 0.5になったとき、M13K07ヘルパーファージ(Invitrogen社)のMOI=20を添加し、細胞を37℃で30分間インキュベートした。次に、細胞を37℃で30分間振蕩した。細胞を遠心分離機で沈降させ、誘導培地(2YT、50μg/mlアンピリシン、25μg/mlカナマイシン、及び0.1 mM IPTG)中に再懸濁させ、30℃で一晩振蕩した。標準的な20%PEG/2.5M NaCl沈殿法により、上清からファージを精製し、連続希釈によりTG 1細胞中に滴下した。
ファージディスプレイによる標的TNF-αに対するライブラリのパニング(panning)操作は、以下の条件で行った。
最初の3回のパニング操作は、Reacti-BindTM NeutrAvidinTM Coated High Binding Capacity (HBC社) Clear 8-ウェル Stripsと、SuperblockTM Blocking Buffer (Pierce社)により行い、4回目のパニング操作は、MaxiSorp plate (Nunc社)により行った。これにより、ニュートラアビジン結合ファージ、及びビオチン化TNFα標的タンパクのみを認識するファージが不用になる。TNF-陰性対照は、ビオチン化TNFα(R&D Systems社)を添加せずに行なった。パニングの各操作段階において、BSA、オボアルブミン、インスタントミルク等の異なる阻害剤を用いることができる。
1回目のパニング操作では、0.5% BSA阻害剤溶液(100μl)中の0.25 μgのビオチン化TNFαを、2時間プレートに接触させることによりプレートに固定させ、次にPBS-0.05% Tween-20で洗浄した。次に、PBS 中に1e1013ライブラリファージ粒子と、1μMビオチンと、0.2% BSAと、0.1 % Tween-20とを含むオーバーナイト結合バッファーを添加した。
翌日、ウェルをPBS中に0.2% BSAと0.1 % Tween- 20とを含む液で5回洗浄し、さらに PBS中に0.05% Tween-20を含む液で5回洗浄した。
ファージを100μl の100mM HClで溶出させ、1 mlの1.0 M Tris-HCl,pH 8.0で中和した。ファージをTG1細胞に滴下した。
1回目のパニング操作では、産出されたファージは1.7e7ファージ/mlで、陰性対照は2.4e6ファージ/mlであった。これは、7.1倍濃縮したことに相当する。
2回目のパニング操作では、0.5% オボアルブミン阻害剤溶液(100μl)中の0.25μgのビオチン化TNFαを、2時間プレートに接触させることによりプレートに固定させ、次にPBS- 0.05% Tween-20で洗浄した。次に、PBS 中に1e1013の1回目のファージ粒子と、1μMビオチンと、0.1 mg/mlストレプトアビジンと、0.2%オボアルブミンと、0.1 % Tween-20とを含むオーバーナイト結合バッファーを添加した。
翌日、ウェルをPBS中に0.2% オボアルブミンと0.1 % Tween- 20とを含む液で5回洗浄し、さらに PBS中に0.05% Tween-20を含む液で5回洗浄した。
ファージを100μl の100mM HClで溶出させ、1 mlの1.0 M Tris-HCl,pH 8.0で中和した。ファージをTG1細胞に滴下した。
2回目のパニング操作では、産出されたファージは3.0e6ファージ/mlで、陰性対照は1.36e 6ファージ/mlであった。これは、2.2倍濃縮したことに相当する。
3回目のパニング操作では、0.5% インスタントミルク阻害剤溶液(100μl)中の0.25μgのビオチン化TNFαを、2時間プレートに接触させることによりプレートに固定させ、次にPBS- 0.05% Tween-20で洗浄した。次に、PBS 中に1e1013の2回目のファージ粒子と、1μMビオチンと、0.1 mg/mlストレプトアビジンと、0.2%インスタントミルクと、0.1 % Tween-20とを含むオーバーナイト結合バッファーを添加した。
翌日、ウェルをPBS中に0.2% インスタントミルクと0.1 % Tween- 20とを含む液で5回洗浄し、さらに PBS中に0.05% Tween-20を含む液で5回洗浄した。
ファージを100μl の100mM HClで溶出させ、1 mlの1.0 M Tris-HCl,pH 8.0で中和した。ファージをTG1細胞に滴下した。
3回目のパニング操作では、産出されたファージは5.66e7ファージ/mlで、陰性対照は4.16e7ファージ/mlであった。これは、1.4倍濃縮したことに相当する。
4回目のパニング操作では、0.5% インスタントミルク阻害剤溶液(100μl)中の0.25μgのビオチン化TNFαを、2時間 MaxiSorpプレートに接触させることによりこのプレートに固定させ、次にPBS- 0.05% Tween-20で洗浄した。
次に、PBS 中に1e1013の3回目のファージ粒子と、0.2%インスタントミルクと、0.1 % Tween-20とを含むオーバーナイト結合バッファーを添加した。
翌日、ウェルをPBS中に0.2% インスタントミルクと0.1 % Tween- 20とを含む液で5回洗浄し、さらに PBS中に0.05% Tween-20を含む液で5回洗浄した。
ファージを100μl の100mM HClで溶出させ、1 mlの1.0 M Tris-HCl,pH 8.0で中和した。
ファージをTG1細胞に滴下した。
4回目のパニング操作では、産出されたファージは1.0e6ファージ/mlで、陰性対照は3.56e5ファージ/mlであった。これは、2.8倍濃縮したことに相当する。
<ELISAスクリーニング>
3回目及び4回目のパニング操作の後、全部で373のクローンについて、ELISAファージを用いてTNF-α結合性を評価した。
要約すると、各クローン由来のファージは、96穴のウェルブロック中の1mlの培地において、M13K07ヘルパーファージで重感染させることにより調製した。次に、ファージ含有培地の上清を、標的タンパクでコートしたマイクロタイタープレートに添加した。PBS-0.1 % Tween-20で洗浄し、結合したファージをマウスanti-M13抗体ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ複合体(GE Biosciences社)とTMB 基質(Pierce社)で検出した。陽性の変異体について、VEG-Fとニュートラアビジンのプレートのみに対する結合特異性のスクリーニングを行った。
これらの評価により、48の陽性なクローンが特定された。図24bに示すように、これらのクローンはTNF-αに結合するが、VEGFまたはブランクのウェルには結合しない。このことから、TNF-αに対する特異的結合性が示される。
これらのクローンの内の3つのクローンをスクリーニングしてさらに分析した。
これらの変異体を、溶解性タンパクとして発現させた。ファージミドクローンで非抑制TOP10 E. Coli株を形質転換することで、溶解性タンパクが産出された。タンパクの発現は、1 mM IPTGで30℃において4時間処理することにより誘導され、6X His-タグを有するタンパクをNi-NTAスピンカラム(Qiagen社)を用いて精製した。
これらの変異体の結合特異性を、ELISAによって評価した。図24aに示すように、3つの変異体は全てTNFαに結合しが、VEGFとの交差反応は生じなかった。このことから、TNF-αに対する特異的結合性が示される。このスクリーニングの結果は、14FN3スカフォールドは、特異的結合性を有するタンパクの産出に適していることを示している。
<シークエンシング>
48の陽性クローンのシークエンシングを行った後、9つのユニークな変異体が特定された。anti-TNFα変異体のシークエンシングにより、顕著な配列の収斂が示され、特にBC及びFGループにおいていくつかのクローンが同じFGループを有することが認められた。
興味深いことに、回収された変異体は全てチロシンWTMライブラリからの変異体であった。このことから、アミノ酸が14のBCループ長に対する明確な優先傾向が認められる。
さらに、全ての変異体はBC及びFGループ中にシステイン残基を有し、拡張されたBCループの位置26Cと、FGループの位置82においてシステインに対する明確な選択性が認められる。このようなシステインの存在により、これらの変異体では、BCループとFGループの間にジスルフィド結合が形成されることが示唆される。
BCループとFGループの間にジスルフィド結合が形成されることにより14FN3の構造が安定化され、また2つのループが互いに接近する。この結果、TNFαとの接触面積が大きくなるとともに、結合親和性が高くなる。
8つの高親和性バインダーの配列を図24Cに示す。また、9つの高親和性バインダーをSEQ ID NO.: 55-63と同定した。
<Fc構築体としての14FN3 TNFαバインダーのクローン化>
14FN3-Fc融合体の性質を評価するために、最良のanti-TNFα変異体であるR41 A6をFc融合タンパクとして発現させた。このFc融合タンパク用のテンプレートDNAは、MGC:39273 IMAG E: 5440834 9 (Ref ID: BC024289)クローンに由来するものであった。Ncol及びXhol制限酵素認識部位を有するR41A6遺伝子とXhol末端を有するヒトIgG1のFc領域の PCRによる増幅には、以下のオリゴヌクレオチドを用いた。
Figure 0005781762
A6増幅のPCR反応には、2μlのファージミドR41A6 mini-prep DNA (100 ng)、1μlの14FN3 Ncol For プライマー(20μM)、1μlの14FN3 FMK 8 Aプライマー(20μM)、1μlの10 mM dNTP (NEB社)、5μlの10X Standard Taq Reaction Buffer (NEB社)、1μlのTaq DNA Polymerase (NEB社)、及び39μlのdiH2Oを用いた。
Fc増幅のPCR反応には、2μlのOrigene clone BC024289.1 mini-prep DNA (100 ng)、1μlのFc Xhol For primer (20μM)、1μlのFc Xhol Revプライマー(20μM)、1μlの10 mM dNTP、5μlの10X Standard Taq Reaction Buffer (NEB社)、1μl Taq DNA Polymerase (NEB)、及び39μlのdiH2Oを用いた。
PCRは、94℃で2分間のサイクルを1回行い、次に94°Cで30秒、60℃で30秒、75℃で3分間のサイクルを25回繰り返すことにより行った。
先ず、TNF-αバインダーR41A6遺伝子をpET-20b発現ベクター(Novagen社)中にクローン化した。このベクターは、タンパクのペリプラズム標的のpelBシグナル配列と、精製用のC-末端ヘキサヒスチジンタグを有する。
制限酵素Ncol (NEB社)、Xhol (NEB社)及びCalf Intestinal Alkaline Phosphatase (NEB社のCIP)により、20μgのpET-20bベクターを37℃で完全に消化させた。1.2%アガロースゲルを用いてDNA骨格を精製し、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて DNAバンドを精製した。Qiagen Qiaquick PCR Clean-up Kit を取扱説明書に従って用いてPCR単位複製配列を精製し、80μlのdiH2Oでスピンカラムから溶出させた。
制限酵素Ncol (NEB社)及びXhol (NEB社) によりR41 A6 PCRフラグメントを37℃で消化させ、1.2%アガロースゲルを用いて精製し、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて DNAバンドを精製した。
消化させたpET-20b DNA骨格とR41A6 PCRフラグメントとを、一晩ライゲーションさせた。ライゲーションさせたDNA (1μl)をTOP10細胞(Invitrogen社)中に電気穿孔し、LB-AMPプレートを用いてクローンを選択した。制限酵素消化とシークエンシングによりmini-prep DNAをスクリーニングした後、pET-20b + TNF A6 #27クローンを回収した。
次に、Fcフラグメントを、pET- 20b + TNF A6 #27ベクター中のXhol部位にクローン化した。制限酵素Xhol (NEB社)、及びCalf Intestinal Alkaline Phosphatase (NEB社のCIP)を用いて、20 μgのpET-20b + TNF A6ベクターを37℃で完全に消化させた。1.2%アガロースゲルを用いてDNA骨格を精製し、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて DNAバンドを精製した。Qiagen Qiaquick PCR Clean-up Kitを取扱説明書に従って用いてPCR単位複製配列を精製し、80μlのdiH2Oでスピンカラムから溶出させた。
制限酵素Xhol (NEB社) によりFc PCRフラグメントを37℃で消化させ、1.2%アガロースゲルを用いて精製し、Qiagen Gel Extraction Kitを用いてDNAバンドを精製した。
消化させたpET-20b+ TNF A6 #27 (A6) DNA骨格とFc PCRフラグメントとを、一晩ライゲーションさせた。ライゲーションさせたDNA (1μl)をTOP10細胞(Invitrogen社)中に電気穿孔し、LB-AMPプレートを用いてクローンを選択した。制限酵素消化とシークエンシングによってmini-prep DNAの正しい配向方向についてスクリーニングした後、pET-20b + TNF A6 + Fc #39 (A6 + Fc)クローンを回収した。
A6及びA6 + FcクローンをBL-21(DE3)細胞 (Invitrogen社) 中に発現させ、Talon Magnetic bead (Invitrogen社)を用いて精製した。BL-21中のA6及びA6 + Fcクローンを、100μg/mlのアンピシリンを含むLB倍地中で、密度がOD600=0.6になるまで培養した。この密度において、IPTGを最終濃度が1 mMになるまで添加し、この細胞をシェーカーを用いて30℃で4時間振蕩した。細胞のペレットを-80℃で一晩、氷結状態に置いた。
解凍した細胞のペレットを、ライセスバッファー(50 mMリン酸ナトリウム、 pH 8、500 mM NaCl、40 mMイミダゾール、5% グリセロール、1X Bugbuster detergent (EMD社)、1Xプロテアーゼ阻害剤(Sigma社)、及び1μl リソナーゼ(Lysonase)(EMD社))中に再懸濁させ、40℃で20分間混合した。
溶解物を14,000rpm,4℃で20分間遠心分離し、Talon電磁ビーズと4℃で1時間混合した。磁石で電磁ビーズをペレット化し、洗浄バッファー(50 mMリン酸ナトリウム、pH 8、500 mM NaCl、40 mMイミダゾール、5%グリセロール、 及び0.01 % Tween-20)で5回洗浄した。
タンパクを350μlの溶出バッファー(50 mMリン酸ナトリウム、pH 8、500 mM NaCl、40 mMイミダゾール、5%グリセロール、 及び0.01 % Tween-20)で2回溶出させ、Zeba脱塩カラム(Pierce社)を用いて、PBSへ緩衝液交換した。CBQCA Protein Quantification Kit (Invitrogen社)を用いてタンパク濃度を定量した。
溶解性タンパクA6とA6+FcのKa,Kdis,及びKD値は、屈折表面光干渉を計測するOctet計測器(ForteBio社)を用いて測定した。標的タンパクはビオチン化TNF-α溶解タンパク(R&D Systems社)で、ストレプトアビチン・センサーチップに固定化する際の濃度は0.25μg/mlである。A6タンパクを290 nM固定化し、A6+Fcタンパクを370 nM固定化した。
Octet計測器を用い、取り扱い説明書に従ってBasic Kinetic Assay測定を行った。A6のKDは20-100 nMで、A6+FcのKDは2-25 nMである。A6+FcのKoffは、モノマー性A6タンパクと比較すると2倍に改善された。これらの結果は、14FN3バインダーにFc領域を追加することにより、結合性を改善できることを示している。
Figure 0005781762
[実施例9]
<FN3ライブラリのANTI-VEGFに対する結合性のスクリーニングと分析>
この発明の組合せライブラリの機能を評価するために、2つの自然−変異体組合せループ(BC/11とDE/6)のバインダーを設計した。このライブラリは、図25Bの紙面上方に示したBCループの自然−変異体アミノ酸、または化学的等価物が含まれるようにして構築した。
図9に示した各天然アミノ酸変異体と、BCループに導入されたアミノ酸(図25A)の比較から、各位置には出現頻度が最も高い1〜6種のアミノ酸変異体またはその化学的等価物が用いられ、用いられる変異体の数はその変異体の出現頻度分布に依存し、必要に応じて、1残基当りの変異体の数の平均値が4より大きくなるようにして副生アミノ酸の発生につながるコドン変化を最小にし、全体の多様性を約106にしていることが分かる。
同様に、DE/6ループは、図25Bの紙面上方に示したBCループの自然−変異体アミノ酸、または化学的等価物が含まれるようにして構築した。図12に示した各天然アミノ酸変異体と、DEループに導入されたアミノ酸(図25A)の比較から、最も出現頻度が高い6種のアミノ酸変異体またはその化学的等価物が各位置に用いられていることが分かる。但し、位置1では9種の変異体全てが用いられている。
各位置における変異体の数の平均値をより大きくして、より少ない数の残基位置に導入したことにより、各位置の残基数を大きくしながら、全体の多様性を約105以下に保つことができた。
ライブラリは、上記のようにしてファージミドベクター中に構築した。
このライブラリのスクリーニングを行うために、ファージを、PBS-2.5%の脱脂粉乳中、室温で1時間処理して、ストレプトアビジン−被覆電磁ビーズに予め結合させたビオチン化VEGF(121)とともに、インキュベートした。
続いて、PBS-0.1 % Tween-20で洗浄し、結合したファージを0.1N HClで溶出させ、次の選択を行うために、TG1細胞中で増殖させた。第1回の処理ではVEGFの濃度を1μMとし、1回処理を行う毎にこの濃度を5倍に希釈し、最終回の選択時のVEGF濃度が20 nMになるようにした。
相対的な濃縮率を測定するために、クロラムフェニコール耐性が賦与された比較用非ディスプレイファージミド(pBC)から産出されたファージもインキュベートした。いずれの処理回でも、ライブラリのファージは、比較用の非ディスプレイファージと比較して、2から5倍の濃縮率が認められた(Table20)。
Figure 0005781762
選択後、各クローンについて、ファージELISAを用いてVEGFに対する結合性のスクリーニングを行った。3回目及び4回目の操作からの、全部で380種のクローンをスクリーニングし、37の陽性クローンが特定された(図25a)。これらの陽性クローンについて、ファージELISAを用いてVEGF、TNFα、またはブランク・プレートに対する結合特異性を再度スクリーニングした。
これらの37種のクローンの内、35種がVEGFに特異的に結合した。これらのクローンのシークエンシングから、3種のユニークな変異体が特定された(図25b)。変異体R1 D4は35種のクローン中の29種で認められた。他の変異体は1種のみに認められた。
最も量が多いクローンであるR1 D4について、さらに分析した。
R1 D4を溶解性タンパクとして発現させ、Ni-キレートカラムを用いて精製した。Octetを用いて分析した結果、VEGF結合における解離速度は1.7×10-4であった(図25c)。これは、Koff値が1.1×10-4の anti-VEGF抗体と比肩し得る。
これらの結果は、本願の組合せライブラリの設計と14FN3スカフォールドとを組合せることにより、標的に対する親和性が非常に高いバインダーが得られることを証明している。
[実施例10]
<FN3ライブラリのANTI-HMGB1結合活性に関するスクリーニングと評価>
<14FN3組合せユニバーサルライブラリのHMGB1スクリーニング>
実施例9の14FN3自然−変異体組合せライブラリは、別の治療標的であるHMGB1にも抗する。(図26A にBC/11ループとDE/6ループの各位置における配列の変異を示す。)
HMGB1は、当初はクロマチンの安定化と転写制御において重要な遍在的DNA-結合タンパクと考えられていた。最近になって、細胞外HMGB1は、壊死細胞または活性化された免疫細胞から放出されたとき、重要な炎症促進性サイトカインとなることが示された。
14FN3-ベースのHMGB1に対する抗体摸倣体を特定するために、HMGB1バインダーに対する 14FN3の2つのループ(BC/DE) の組合せライブラリを構築した。上記のVEGFの場合と同様にして、ファージディスプレイによる選択を3回繰り返して行った。1回目の操作では、0.5μM HMGB1または0.1μM HMGB1のいずれかを用いた。操作回毎に2.5倍に希釈し、選択の最終操作回において80または16 nM HMGB1が含まれるようにした。選択の最終操作回において、ライブラリのファージは、比較用の非ディスプレイファージと比較して、900から1300倍の濃縮率が認められた(Table 11 )。
Figure 0005781762
選択後、2回目及び3回目からの全部で439種のクローンについて、ファージELISAによるHMGB1への結合性のスクリーニングを行った。このスクリーニングの結果、143の陽性クローンが得られた。これらのクローンの50種についてのシークエンシングにより、15のユニークな14FN3変異体が特定された(図26B、SEQ ID NO. 67-81で特定される配列を有する)。
最も共通性が高い変異体は50種のクローン中22種で認められ、他の4つの配列も複数回単離された。
興味深いことに、配列間に顕著な類似性が認められ、このことからある共通特性への収斂が示唆される。DEループ中の基本アミノ酸、特にKR(S/T)-Hのモチーフに、明確な選択性が認められた。BCループにも、位置24と29のバリンとイソロイシン、位置21と31のアルギニン等、いくつかの保存残基が認められた。変異体間の類似性から、これらがHMGB1の共通のエピトープを認識していることが示唆される。
これらの変異体を効率よく分析するために、溶解性タンパク産出用の小スケール発現システムを作った。
各クローンを、非抑制E. Coli菌株NEB Express Iq中に形質転換した。次に、1 mM IPTGを用い30℃、6時間培養して2 mlの培養物を得た。次に、6xHis-タグ14FN3変異体を、Talon電磁ビーズ(Invitrogen社)を用いて精製した。これにより、それぞれ5から10μgの溶解性タンパクが得られた。
変異体の相対的親和性を評価するために、Octetを用いて各タンパクの解離定数を測定した。解離定数は結合親和性において最も影響が大きい因子であり、タンパクの濃度に依存しないため、この分析により変異体を迅速にスクリーニングして、さらなる特性分析に最も適したタンパクを選択することが可能になる。
分析した複数のクローンの解離定数は1.4×10-2から1.0×10-6の範囲であり、大部分は1.5〜2.0×10-4の範囲であった。解離定数がこの範囲内にあることは、これらのバインダーはHMGB1に対し高い親和性を有することを示唆している。
6種の候補を選び出して、さらに分析した。Octetを用いて、結合定数と解離定数を測定した (図26C)。Table 22は、測定されたKd値はナノモルオーダーであることを示している。
Figure 0005781762
[実施例11]
<FN3ライブラリの触媒機能に関するスクリーニングと評価>
<プロテアーゼ活性プレート評価>
評価する活性がタンパク質の活性である場合、基質を含むニュートリエントプレートを用いて、プロテアーゼを分泌するコロニーをスクリーニングすることができる。変性ヘモグロビン等のプロテアーゼの基質を、ニュートリエントプレートに添加することができる(Schumacher, G. F. B., Schill, W. B., Anal. Biochem., 48: 9-26 (1972年); Benyon, Bond, Proteolytic Enzymes, 1989 (IRL Press, Oxford) p. 50)。
FN3変異体ライブラリは、イースト細胞表面、または細菌細胞表面 {Rutherford, 2006 #60} {Varadarajan, 2005 #61} に、融合タンパクとしてディスプレイさせることができる。
あるいは、プロテアーゼを分泌可能な細菌のコロニーをこのようなプレート上に増殖させた場合、コロニーは透明帯で囲まれ、培地中のタンパク基質が消化されたことの指標となる。
プロテアーゼは、この評価で検出されるために、いくつかの条件に適合しなければならない。第1に、プロテアーゼは培地中に分泌され、基質と相互作用を生じなければならない。第2に、プロテアーゼは基質中のいくつかのペプチド結合を切断して水溶性生成物を生じ、透明帯を生じさせなければならない。第3に、細胞は、評価の検出可能な閾値を超える十分なプロテアーゼ活性を示さなければならない。
プロテアーゼの比活性が低下するに従い、評価において検出に必要な閾値は増大する。p3ファージ融合タンパクとして産出されたプロテアーゼは、酵素機能(REF)も有する。
1以上のプロテアーゼ用の基質を用いる。例えば、ヘモグロビン(0.05-0.1%)、カゼイン(0.2%)、または粉末ミルク(3%)を、適切なニュートリエントプレートに添加することができる。接種マニホールドを用い、レプリカ平板法または他の適切な方法によって、コロニーをマスタープレートからプロテアーゼ基質を含む1以上の評価用プレートに移す。次に37℃(または適切な温度)で培養することにより、基質を消化可能なプロテアーゼのコロニーの周囲に透明帯が観察される。
プレート評価において検出可能な活性の範囲を求めるために、異なる特異性と反応機構を有する4種のプロテアーゼを試験した。これらの酵素にはエラスターゼ、スブチリシン、トリプシン、及びキモトリプシンが含まれていた。比活性度(エラスターゼ, 81 U/mg パウダー;スブチリシン, 7.8 U/mg パウダー;トリプシン, 8600 U/mg パウダー;キモトリプシン, 53 U/mg パウダー)は、製造者が測定した値である。
各酵素、エラスターゼ、スブチリシン、トリプシン、及びキモトリプシンの希釈液を調製し、各々から5μlをピペットで採取し、3つの異なる評価プレートそれぞれの各ウェルに滴下した。
50 mM Tris, pH 7.5, 10 mM CaCl2バッファー中に1% のDifco bactoを含むアガーマトリックス中に、カゼイン、粉ミルクまたはヘモグロビンのいずれかを含むプレートを調製した。
カゼインのプレート(0.2%)では、試験した最も少量の条件(タンパクが0.75 ng)でも、4種の酵素が検出可能な透明帯を生じた。
粉ミルク(3%)を含むプレートでは、エラスターゼとトリプシンはタンパクを3 ngまで低下させても検出でき、キモトリプシンは1.5 ngまで検出可能で、スブチリシンはタンパクが25 ngのときまで検出可能であった。
ヘモグロビンのプレートでは、ヘモグロビンの濃度が0.05から0.1パーセントのとき、1.5 ngのエラスターゼ、トリプシン、及びキモトリプシンが検出可能な透明帯を生じた。試験した条件下において、ヘモグロビンのプレートでは、スブチリシンはタンパクが6 ng以下のとき検出可能な透明帯を生じなかった。

Claims (11)

  1. 所定の結合性または酵素活性を有する1以上のポリペプチドの有無のスクリーニングに有用な、III型フィブロネクチンドメインポリペプチドのライブラリを構築する方法であって、
    (i) BC、DE、及びFG アミノ酸ループ配列を、天然III型フィブロネクチンドメインポリペプチドの集合体中にアライメントさせるステップと、
    (ii) アライメントさせたループ配列を、ループ長に従って分類するステップと、
    (iii) ステップ(ii)から選択した任意のループ及びループ長について、位置的アミノ酸出現頻度測定を行い、各ループ位置におけるアミノ酸出現頻度を求めるステップと、
    (iv) ステップ(iii)で分析した各ループ及びループ長について、それぞれの位置毎に、保存または選択された半保存コンセンサスアミノ酸であるかを同定するステップと、
    (v) 少なくとも1の選択されたループ及びループ長について、
    BCループ長が11で、SEQ ID NO.43または49で特定されるアミノ酸配列を有するライブラリ;
    BCループ長が14で、SEQ ID NO.44または50で特定されるアミノ酸配列を有するライブラリ;
    BCループ長が15で、SEQ ID NO.45または51で特定されるアミノ酸配列を有するライブラリ;
    DEループ長が6で、SEQ ID NO.46または52で特定されるアミノ酸配列を有するライブラリ;
    FGループ長が8で、SEQ ID NO.53で特定されるアミノ酸配列を有するか、または、最初のN−末端の6つのアミノ酸がSEQ ID NO.47で特定されるアミノ酸配列を有するライブラリ;または
    FGループ長が11で、SEQ ID NO.54で特定されるアミノ酸配列を有するか、または、最初のN−末端の9つのアミノ酸がSEQ ID NO.48で特定されるアミノ酸配列を有するライブラリを構築するステップと、
    (vi) コード配列のライブラリをFN3コード配列のフレームワークに導入して、FN3発現ライブラリを構築するステップと、
    (vi) 発現ライブラリのFN3ポリペプチドを発現させるステップとを含む方法。
  2. ループ及びループ長の選択された組合せにおける2つの選択されたループの各々の多様性が10から10の範囲にあるか、または、各位置における異なるアミノ酸の種類数の平均値が5以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ポリペプチドが、ヒトフィブロネクチンのIII型フィブロネクチンの14番目のモジュールのA,AB,B,C,CD,D,E,EF,F, 及びGベータ−ストランド領域中の野生型アミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
  4. 選択された結合性または触媒活性を有する1以上のポリペプチドの有無のスクリーニングに有用な、III型フィブロネクチンドメインポリペプチドのウォークスルー突然変異誘発ライブラリであって、III型フィブロネクチンドメインポリペプチドに、
    (a)選択された天然III型フィブロネクチンポリペプチドの野生型アミノ酸配列を有するA,AB,B,C,CD,D,E,EF,F,及びG領域、及び
    (b)選択された長さを有するBC,DE,及びFGループ領域が含まれ、
    BCループ長が11で、SEQ ID NO.43または49で特定されるアミノ酸配列;
    BCループ長が14で、SEQ ID NO.44または50で特定されるアミノ酸配列;
    BCループ長が15で、SEQ ID NO.45または51で特定されるアミノ酸配列;
    DEループ長が6で、SEQ ID NO.46または52で特定されるアミノ酸配列;
    FGループ長が8で、SEQ ID NO.53で特定されるアミノ酸配列を有するか、または、最初のN−末端の6つのアミノ酸がSEQ ID NO.47で特定されるアミノ酸配列;または
    FGループ長が11で、SEQ ID NO.54で特定されるアミノ酸配列を有するか、または、最初のN−末端の9つのアミノ酸がSEQ ID NO.48で特定されるアミノ酸配列が含まれるライブラリ。
  5. 選択された結合性または触媒活性を有する1以上のポリペプチドの有無のスクリーニングに有用な、III型フィブロネクチンドメインポリペプチドの自然−変異体組合せライブラリであって、III型フィブロネクチンドメインポリペプチドに、
    (a)選択された天然III型フィブロネクチンポリペプチドの野生型アミノ酸配列を有するA,AB,B,C,CD,D,E,EF,F,及びG領域、及び
    (b)選択された長さを有するBC,DE,及びFGループ領域が含まれ、
    BCループ長が11で、SEQ ID NO.43または49で特定されるアミノ酸配列;
    BCループ長が14で、SEQ ID NO.44または50で特定されるアミノ酸配列;
    BCループ長が15で、SEQ ID NO.45または51で特定されるアミノ酸配列;
    DEループ長が6で、SEQ ID NO.46または52で特定されるアミノ酸配列;
    FGループ長が8で、SEQ ID NO.53で特定されるアミノ酸配列を有するか、または、最初のN−末端の6つのアミノ酸がSEQ ID NO.47で特定されるアミノ酸配列;または
    FGループ長が11で、SEQ ID NO.54で特定されるアミノ酸配列を有するか、または、最初のN−末端の9つのアミノ酸がSEQ ID NO.48で特定されるアミノ酸配列が含まれるライブラリ。
  6. 2つの選択されたループの各々の多様性が10から10の範囲にある、請求項5に記載のライブラリ。
  7. 前記ポリペプチドが、ヒトフィブロネクチンのIII型フィブロネクチンの14番目のモジュールのA,AB,B,C,CD,D,E,EF,F,及びGベータ−ストランド領域中の野生型アミノ酸配列を有する、請求項5に記載のライブラリ。
  8. ポリペプチドが、リボソームディスプレイライブラリ、ポリソームディスプレイライブラリ、ファージディスプレイライブラリ、バクテリア発現ライブラリ、及びイーストディスプレイライブラリからなる群から選択される発現ライブラリによりエンコードされる、請求項5に記載のライブラリ。
  9. 請求項5に記載のポリペプチドのライブラリをエンコードするポリヌクレオチドの発現ライブラリであって、1以上のベータ−ストランドフレームワーク領域と1以上のループ領域とをエンコードするポリヌクレオチドを合成して作られ、ここで、前記ポリヌクレオチドは予め決められたものであり、また、前記の2つの領域をエンコードする前記ポリヌクレオチドには十分なオーバーラップ配列が含まれ、これにより前記ポリヌクレオチド配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)条件下において、完全なフィブロネクチン結合ドメインをエンコードする構造のポリヌクレオチドになることができる、ポリヌクレオチドの発現ライブラリ。
  10. 選択された抗原に対する所望の結合親和性を有するポリペプチドを特定する方法であって、請求項5に記載のFN3ポリペプチドの自然−変異体組合せライブラリと選択された抗原とを反応させるステップと、FN3ポリペプチドをスクリーニングして、選択された抗原に対する所望の結合親和性を有するポリペプチドを選択するステップとを備える方法。
  11. さらに、選択されたフィブロネクチン結合ドメインをエンコードするポリヌクレオチドを特定するステップを備える、請求項10に記載の方法。
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