3.発明の概要
本発明は、ヒト化FcγRIIB抗体、すなわち、FcγRIIA(特にヒトFcγRIIA、さらに特定すると天然のヒトFcγRIIA)と結合するよりも高い親和性でFcγRIIB(特にヒトFcγRIIB、さらに特定すると天然のヒトFcγRIIB)と特異的に結合する単離された抗体またはそのフラグメントを提供する。本明細書中で用いる「天然のFcγRIIBまたはFcγRIIA」とは、細胞において内因的に発現されて該細胞の細胞表面に存在するか、または哺乳動物細胞内で組換えにより発現されて該細胞の表面に存在するFcγRIIBまたはFcγRIIAを意味し、細菌細胞内で発現されるFcγRIIBまたはFcγRIIAでもなく、単離された変性FcγRIIBまたはFcγRIIAでもない。本発明は、FcγRIIA(特にヒトFcγRIIA、さらに特定すると天然ヒトFcγRIIA)と結合するよりも高い親和性でFcγRIIB(特にヒトFcγRIIB、さらに特定すると天然ヒトFcγRIIB)と結合する抗体から誘導されるヒト化抗体およびその抗原結合フラグメントを包含する。最も好ましい実施形態において、本発明はヒト化2B6または3H7抗体またはそのフラグメント、好ましくはその抗原結合フラグメントに関する。別の好ましい実施形態では、本発明はヒト化1D5、2E1、2H9、2D11、または1F2抗体およびそのフラグメント、好ましくはその抗原結合フラグメントに関する。
好ましくは、本発明のヒト化抗体は天然ヒトFcγRIIBの細胞外ドメインと結合する。本発明のヒト化抗FcγRIIB抗体は、CDR1 (配列番号1もしくは配列番号29)および/またはCDR2 (配列番号2もしくは配列番号30)および/またはCDR3 (配列番号3もしくは配列番号31)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/またはCDRI (配列番号8もしくは配列番号38)および/またはCDR2 (配列番号9、配列番号10、配列番号11、もしくは配列番号39)および/またはCDR3 (配列番号12もしくは配列番号40)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。
さらに他の好ましい実施形態では、本発明のヒト化抗体は、配列番号18、配列番号20、配列番号22、もしくは配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、および/または配列番号24もしくは配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/またはそのアミノ酸配列変異体を含んでなる。
特に、本発明は天然ヒトFcγRIIBの細胞外ドメインと免疫特異的に結合するヒト化抗体を提供し、前記抗体は以下のCDRを含むか、あるいはまた、以下のCDRからなる:VH CDR1およびVL CDR1; VH CDR1およびVL CDR2; VH CDR1およびVL CDR3; VH CDR2およびVL CDR1; VH CDR2およびVL CDR2; VH CDR2およびVL CDR3; VH CDR3およびVH CDR1; VH CDR3およびVL CDR2; VH CDR3およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR2およびVL CDR1; VH CDR1、VH CDR2およびVL CDR2; VH CDR1、VH CDR2およびVL CDR3; VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR1; VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR2; VH CDR2、VH CDR2およびVL CDR3; VH CDR1、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR1、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR1; VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR2; VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR1、VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR1、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR2、VH CDR3、VL CDR2およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR2、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3; VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3; または本明細書に開示したVH CDRとVL CDRの任意の組合せ。
1つの具体的な実施形態において、本発明は、VH領域がヒト生殖系VHセグメントVH1-18およびJH6由来のFRセグメントと、2B6 VHのCDR領域とからなり、配列番号24のアミノ酸配列を有する、ヒト化2B6抗体を提供する。別の具体的な実施形態において、ヒト化2B6抗体はさらに、ヒト生殖系VLセグメントVK-A26およびJK4のFRセグメントと、2B6 VLのCDR領域とからなり、配列番号18、配列番号20または配列番号22のアミノ酸配列を有するVL領域を含んでなる。
1つの具体的な実施形態において、本発明は、VH領域がヒト生殖系VHセグメント由来のFRセグメントと、3H7 VHのCDR領域とからなり、配列番号37のアミノ酸配列を有する、ヒト化3H7抗体を提供する。別の具体的な実施形態において、ヒト化3H7抗体はさらに、ヒト生殖系VLセグメントのFRセグメントと、3H7 VLのCDR領域とからなり、配列番号46のアミノ酸配列を有するVL領域を含んでなる。
本発明は、FcγRIIBに特異的なヒト化抗体分子であって、ヒト抗体(レシピエント抗体)の重鎖および/または軽鎖可変領域の1以上のCDRの1以上の領域が、FcγRIIAよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合するドナーモノクローナル抗体の1以上のCDRの類似部分により置換されている、上記ヒト化抗体分子を提供する。前記モノクローナル抗体は、例えば、FcγRIIBと結合するクローン2B6および3H7(それぞれATCC受託番号PTA-4591およびPTA-4592を有する)により産生されるモノクローナル抗体、またはクローン1D5、2E1、2H9、2D11、および1F2(それぞれATCC受託番号PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有する)により産生されるモノクローナル抗体である。最も好ましい実施形態では、ヒト化抗体はドナーマウス抗体と同じエピトープに特異的に結合することができる。当業者であれば、本発明は一般に抗体のCDRグラフト化を包含することが理解されよう。かくして、ドナー抗体とアクセプター抗体は同種の動物に由来するもので、同一の抗体クラスまたはサブクラスのものでもよい。しかし、より一般的には、ドナー抗体とアクセプター抗体は異なる動物種に由来するものである。典型的には、ドナー抗体がげっ歯類MAbのような非ヒト抗体であり、アクセプター抗体がヒト抗体である。
いくつかの実施形態においては、ドナー抗体由来の少なくとも1つのCDRがヒト抗体にグラフトされる。他の実施形態では、重鎖および/または軽鎖可変領域のそれぞれの少なくとも2つ(好ましくは3つ全て)のCDRがヒト抗体にグラフトされる。CDRはKabatのCDR、構造ループCDR、またはこれらの組合せを含みうる。いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つのCDRグラフト化重鎖および少なくとも1つのCDRグラフト化軽鎖を含むヒト化FcγRIIB抗体を包含する。
好ましい実施形態において、ヒト化FcγRIIB特異的抗体のCDR領域はFcγRIIBに対するマウス抗体に由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗体は、ドナーモノクローナル抗体の結合特異性を保持するのに必要な、アクセプター抗体(すなわちヒト)の重鎖および/または軽鎖可変ドメインフレームワーク領域の改変(アミノ酸の欠失、挿入および修飾を含むが、これらに限らない)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗体のフレームワーク領域は、必ずしも、天然のヒト抗体可変領域のフレームワーク領域の正確なアミノ酸配列からなる必要はなく、さまざまな改変を含みうる。かかる改変としては、限定するものではないが、ヒト化抗体の性状を変える(例えば、マウスFcγRIIB特異的抗体と同じ標的に対して特異的なヒト化抗体領域の結合特性を改善する)アミノ酸の欠失、挿入および修飾が挙げられる。最も好ましい実施形態では、非ヒトフレームワーク残基の大量導入を避けかつヒトにおけるヒト化抗体の免疫原性を最小限に止めるため、フレームワーク領域に対して最小数の改変を行う。いくつかの実施形態では、フレームワーク残基はヒト生殖系VHセグメントVH1-18およびJH6および/またはヒト生殖系VLセグメントVK-A26およびJK4に由来する。本発明の最も好ましい実施形態では、フレームワーク領域に対して改変を一切行わない。本発明のドナーモノクローナル抗体は、好ましくは、FcγRIIBと結合するクローン2B6および3H7(それぞれATCC受託番号PTA-4591およびPTA-4592を有する)により産生されるモノクローナル抗体、またはクローン1D5、2E1、2H9、2D11、および1F2(それぞれATCC受託番号PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有する)により産生されるモノクローナル抗体である。
本発明のヒト化抗体には、FcγRIIBに特異的な、全長の重鎖と軽鎖を有する完全な抗体分子またはそのフラグメント、例えばFabもしくは(Fab')2フラグメント、重鎖と軽鎖の二量体またはその最小フラグメント、例えばFv、SCA(一本鎖抗体)などが含まれる。
本発明は、本発明の抗体またはそのフラグメントを製造するための方法、特にFcγRIIB特異的抗体がFcγRIIAに対してよりもFcγRIIBに対して増大した特異性を有するような、ヒト化抗FcγRIIB特異的抗体を製造するための方法を包含する。本発明は、ポリペプチドの製造に有用な当技術分野で公知のいかなる方法も包含し、例えばin vitro合成、組換えDNA製造などが含まれる。好ましくは、ヒト化抗体は組換えDNA技術により製造される。本発明のヒト化FcγRIIB特異的抗体は組換え免疫グロブリン発現技術を用いて製造することができる。本発明の組換えヒト化抗体を製造するための代表的な方法は以下のステップを含みうる:a) 抗体重鎖をコードするオペロンを含む発現ベクターを通常の分子生物学的手法により構築し、それによりヒト化抗体重鎖の発現用ベクターを作製するステップ、ただし、上記抗体重鎖において、ドナー抗体の結合特異性を保持するのに必要なCDRと可変領域フレームワークの最小部分は、マウスFcγRIIB特異的モノクローナル抗体のような非ヒト免疫グロブリンに由来し、例えばFcγRIIBと結合するクローン2B6および3H7(それぞれATCC受託番号PTA-4591およびPTA-4592を有する)により産生されるモノクローナル抗体、またはクローン1D5、2E1、2H9、2D11、および1F2(それぞれATCC受託番号PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有する)により産生されるモノクローナル抗体に由来するものであり、該抗体の残りの部分はヒト免疫グロブリンに由来するものであること;b) 抗体軽鎖をコードするオペロンを含む発現ベクターを通常の分子生物学的手法により構築し、それによりヒト化抗体軽鎖の発現用ベクターを作製するステップ、ただし、上記抗体軽鎖において、ドナー抗体の結合特異性を保持するのに必要なCDRと可変領域フレームワークの最小部分は、マウスFcγRIIBモノクローナル抗体のような非ヒト免疫グロブリンに由来し、例えばFcγRIIBと結合するクローン2B6および3H7(それぞれATCC受託番号PTA-4591およびPTA-4592を有する)により産生されるモノクローナル抗体、またはクローン1D5、2E1、2H9、2D11、および1F2(それぞれATCC受託番号PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有する)により産生されるモノクローナル抗体に由来するものであり、該抗体の残りの部分はヒト免疫グロブリンに由来するものであること;c) これらの発現ベクターを通常の分子生物学的手法により宿主細胞に導入して、ヒト化抗FcγRIIB抗体を発現させるためのトランスフェクト宿主細胞を作製するステップ;およびd) 該トランスフェクト細胞を通常の細胞培養法により培養してヒト化抗FcγRIIB抗体を産生させるステップ。宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクター、すなわち重鎖由来ポリペプチドをコードするオペロンを含む第1のベクターと軽鎖由来ポリペプチドをコードするオペロンを含む第2のベクター、を用いて同時にトランスフェクトすることができる。これら2つのベクターは異なる選択マーカーを含んでいてもよいが、重鎖と軽鎖のコード配列を除いて、同一であることが好ましい。この方法は重鎖および軽鎖ポリペプチドの同等な発現をもたらす。これとは別に、重鎖と軽鎖の両方のポリペプチドをコードする単一のベクターを使用することもできる。重鎖および軽鎖のコード配列はcDNA、ゲノムDNA、またはその両方でありうる。本発明の組換え抗体を発現させるために用いる宿主細胞は、大腸菌のような細菌細胞または、好ましくは、真核細胞である。チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞やHEK-293のような哺乳動物細胞を用いることが好ましい。発現ベクターの選択は宿主細胞の選択如何であり、選択した宿主細胞内で所望の発現および調節特性を有するように選択される。本発明のベクターの構築方法、本発明の宿主細胞を作製するための細胞のトランスフェクション方法、本発明の抗体を産生させるための細胞の培養方法はすべて通常の分子生物学的手法である。同様に、本発明の組換え抗体が産生されたら、該抗体はクロスフロー濾過、硫酸アンモニウム沈降、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動といった当技術分野の標準的方法により精製することができる。
いくつかの実施形態においては、モノクローナル抗体を作製するための細胞融合法、例えば米国特許第5,916,771号(参照することによりその全体を本明細書に組み入れる)に記載される融合法を本発明の方法で使用することができる。簡単に述べると、この方法によれば、目的の重鎖(またはそのフラグメント)をコードするDNAが第1の哺乳動物宿主細胞に導入され、目的の軽鎖(またはそのフラグメント)をコードするDNAが第2の哺乳動物宿主細胞に導入される。その後、第1のトランスフェクト宿主細胞と第2のトランスフェクト宿主細胞を細胞融合により合体させて第3の細胞を形成させる。第1および第2の細胞の融合に先だって、形質転換細胞を特に望まれる特性(例えば高レベルの発現)について選択してもよい。融合後、得られるハイブリッド細胞は目的の重鎖をコードするDNAと目的の軽鎖をコードするDNAを含有し、これらを発現して、結果的に多量体抗体の産生をもたらす。
本発明は、本発明のヒト化抗体を、他の抗体またはそのフラグメント(例えば、ヒトもしくはヒト化モノクローナル抗体)と共にあるいはそれに結合させて、使用することを包含する。これらの他の抗体は、疾患(本発明の抗体は該疾患に対するものである)に特徴的な他のマーカー(エピトープ)と反応性であってもよいし、例えばヒト免疫系の分子もしくは細胞を罹患した細胞のところに動員するように選択された、異なる特異性を有していてもよい。本発明の抗体(またはその一部)は、別々に投与される組成物として、または通常の化学薬品によりもしくは分子生物学的手法により連結された2つの薬剤を含む単一の組成物として、そのような抗体(またはその一部)と一緒に投与することができる。さらに、本発明の抗体の診断上および治療上の価値は、ヒト化抗体を、検出可能なシグナルを(in vitroまたはin vivoで)発生する標識で、あるいは治療特性を有する標識で標識することにより高めることができる。いくつかの標識、例えば放射性ヌクレオチドは検出可能なシグナルを生じ、しかも治療特性を備えている。放射性核種標識の例としては、125I、131I、14Cが挙げられる。その他の検出可能な標識の例は次のものである:蛍光顕微鏡用のフルオレセイン、フィコビリプロテインまたはテトラエチルローダミンのような蛍光発色団;蛍光、吸光度、可視色または凝集による検出が可能な蛍光産物または着色産物を生成するか、あるいは電子顕微鏡による検証が可能な高電子密度産物を生成する酵素;直接もしくは間接電子顕微鏡視覚化が可能なフェリチン、ペルオキシダーゼまたは金ビーズのような高電子密度分子。治療特性を有する標識には、メトトレキセートのような癌治療用の薬物が含まれる。
本発明の方法はまた、本発明のヒト化抗体をコードするポリヌクレオチドも包含する。一実施形態においては、本発明は、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合する抗体またはそのフラグメントの重鎖もしくは軽鎖をコードする単離された核酸を提供する。本発明はまた、前記核酸を含んでなるベクターにも関する。本発明はさらに、重鎖をコードする第1の核酸分子および軽鎖をコードする第2の核酸分子を含んでなるベクターを提供し、上記重鎖および軽鎖は、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合する抗体またはそのフラグメントに由来するものである。ある特定の実施形態においては、前記ベクターは発現ベクターである。本発明はさらに、本発明の抗体をコードするベクターまたはポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を提供する。好ましくは、本発明は、寄託されたそれぞれATCC受託番号PTA-4591およびPTA-4592、またはそれぞれATCC受託番号PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有するハイブリドーマクローンにより産生される抗体の重鎖および軽鎖、またはそれらの部分(例えば、CDR、可変ドメインなど)およびそのヒト化型をコードするポリヌクレオチドを包含する。
本発明は、生物学的サンプル中のFcγRIIBの存在を特異的に(すなわちFcγRIIAでなくFcγRIIBを)検出するための本発明のヒト化抗体の使用を包含する。
活性化性および抑制性Fc受容体、例えばFcγRIIAおよびFcγRIIBは、バランスのとれたこれらの受容体の機能と適正な細胞免疫応答のために極めて重要である。本発明はFc受容体シグナル伝達経路におけるこのようなバランスと調節制御の失調に関連する疾患を治療するための本発明のヒト化抗体の使用を包含する。従って、本発明のヒト化FcγRIIB抗体は免疫応答を調節する上での用途、例えば自己免疫疾患もしくは炎症性疾患、またはアレルギー反応に関係する免疫応答を抑制する上での用途を有する。本発明のヒト化FcγRIIB抗体はまた、ある種のエフェクター機能を改変して、例えば治療用抗体依存性細胞傷害を高めるために使用することもできる。
本発明のヒト化抗体は、例えば、一実施形態では、単剤療法として癌を予防または治療するために有用である。一実施形態では、本発明のヒト化抗体はB細胞悪性腫瘍、特に非ホジキンリンパ腫または慢性リンパ性白血病の予防または治療に有用である。特定の実施形態では、被験者の癌が1以上の標準的または実験的療法、特にリツキサン(Rituxan)による治療に不応性である。本発明の方法は、B細胞疾患、例えばB細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の領域を伴う濾胞性リンパ腫、小細胞型リンパ性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、およびびまん性小切れ込み細胞型リンパ腫の治療、管理、予防、または改善に使用することができる。
別の実施形態においては、本発明は、治療薬または薬物にコンジュゲートされたFcγRIIB特異的抗体の使用を提供する。抗FcγRIIB抗体またはその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされ得る治療薬の例としては、限定するものではないが、サイトカイン、毒素、放射性元素、および代謝拮抗物質が挙げられる。
一実施形態において、本発明は、B細胞悪性腫瘍の標準的または実験的治療レジメン(例えば、化学療法、放射免疫療法、または放射線療法)と組み合わせたヒト化FcγRIIB特異的抗体の使用を提供する。そのような併用療法は標準的または実験的治療の有効性を高めることができる。B細胞悪性腫瘍の予防、治療、管理、または改善のためにFcγRIIB特異的抗体またはその抗原結合フラグメントと併用するのに特に有用な治療薬の例は、限定するものではないが、リツキサン、インターフェロンα、および抗癌剤である。FcγRIIB特異的抗体またはその抗原結合フラグメントと併用するのに特に有用な化学療法剤は、限定するものではないが、アルキル化剤、代謝拮抗物質、天然産物、およびホルモンである。本発明の併用療法は、治療効果または予防効果を達成するためにB細胞悪性腫瘍の被験者に投与される抗FcγRIIB抗体またはその抗原結合フラグメントの投与量を少なくし、かつ/またはその投与回数を減らすことが可能である。
別の実施形態では、ヒト化FcγRIIB抗体またはその抗原結合フラグメントの使用により、B細胞悪性腫瘍と診断された被験者の生存を長引かせることができる。
好ましい実施形態では、本発明のヒト化抗体を黒色腫の治療および/または予防に用いる。他の実施形態では、ヒト化抗体は癌を予防または治療するために、特に細胞傷害活性を示す癌抗原特異的治療用抗体の細胞傷害活性を強化して腫瘍細胞の死滅を高めかつ/または抗体依存性細胞傷害細胞性(「ADCC」)活性、補体依存性細胞傷害(「CDC」)活性、もしくは治療用抗体の食作用を増強する上で有用である。
本発明は、癌抗原により特徴付けられる癌を有する患者の癌を治療する方法を提供し、この方法は、該患者に、治療上有効な量の、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合する第1のヒト化抗体またはそのフラグメント、および前記癌抗原と特異的に結合しかつ細胞傷害性である第2の抗体を投与することを含んでなる。本発明はまた、癌抗原により特徴付けられる癌を有する患者の癌を治療する方法を提供し、この方法は、該患者に、治療上有効な量の、FcγRIIA(好ましくは、天然ヒトFcγRIIA)と結合するよりも高い親和性でFcγRIIB(特に天然ヒトFcγRIIB)と特異的に結合するヒト化抗体またはそのフラグメント(ただし、該抗体の定常ドメインは、単量体であるとき、1以上のFc活性化受容体、例えばFcγRIIIAに対して増加した親和性をさらに有する)、および前記癌抗原と特異的に結合しかつ細胞傷害性である抗体を投与することを含んでなる。ある特定の実施形態においては、前記Fc活性化受容体はFcγRIIIAである。
いくつかの実施形態において、本発明は、増大した親和性でFcRnと結合し、結果的に増加した抗体半減期をもたらす変異型Fc領域を含む抗体を包含する。半減期は、例えば、15日より長く、好ましくは20日、25日、30日、35日、40日、45日、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、または5ヶ月より長くなる。特定の作用機序によって拘束されるものではないが、新生児Fc受容体(FcRn)はIgG抗体の血清半減期を調節するうえで重要な役割を果たしている。マウスでは、IgG抗体のFcRnに対するpH依存性結合親和性とその血清半減期の間に相関関係が確立されている。本発明の抗体またはそのフラグメントの哺乳動物(好ましくはヒト)における半減期が増加すると、該抗体または抗体フラグメントの血清抗体価が哺乳動物において高まり、それにより、該抗体または抗体フラグメントの投与回数を減らし、かつ/または投与される該抗体または抗体フラグメントの濃度を低下させることができる。例えば、in vivo半減期の増大した抗体またはそのフラグメントは、FcドメインとFcRn受容体との相互作用に関与すると同定されたアミノ酸残基を改変(例えば、置換、欠失、または付加)することによって作製することができる。例えば、本発明は、FcRnに対する親和性を高める少なくとも1つ以上の改変を有する変異型Fc領域を含む抗体を包含し、例えば、前記改変は1以上のアミノ酸残基251-256、285-290、308-314、385-389、および428-436の改変、または250位と428位の改変でありうる。例えば、Hintonら, 2004, J Biol. Chem. 279(8): 6213-6;PCT国際公開WO 97/34631; およびWO 02/060919を参照されたい(これら全てを参照することにより本明細書に組み入れる)。
他の実施形態においては、本発明は、細胞傷害性抗体により治療される被験者において抗体依存性細胞傷害効果を増強する方法を提供し、この方法は、該被験者に、本発明のヒト化抗体またはそのフラグメントを、細胞傷害性抗体の細胞傷害効果を高めるのに十分な量で投与することを含んでなる。さらに他の実施形態においては、本発明は、細胞傷害性抗体により治療される被験者において抗体依存性細胞傷害効果を高める方法を提供し、この方法は、該患者に、本発明のヒト化抗体またはそのフラグメント(単量体であるとき、抑制性Fc受容体に対して増大した親和性をさらに有する)を、細胞傷害性抗体の細胞傷害効果を高めるのに十分な量で投与することを含んでなる。さらに他の実施形態においては、本発明は1以上の追加の癌治療法の実施をさらに含む方法を提供する。
本発明は、本発明のヒト化抗体をいずれかの治療用抗体と組み合わせて使用することを包含し、該治療用抗体は、細胞死滅を介してその治療効果を媒介することにより該抗体のその治療活性を増強するものである。ある特定の実施形態では、本発明のヒト化抗体は、抗体介在性エフェクター機能を高めることにより抗体の治療活性を増強する。本発明の他の実施形態では、本発明のヒト化抗体は、標的腫瘍細胞の食作用およびオプソニン作用を増大することにより細胞傷害性抗体の治療活性を増強する。本発明のさらに他の実施形態では、本発明のヒト化抗体は、標的腫瘍細胞の破壊における抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を増大することにより抗体の治療活性を増強する。ある特定の実施形態では、本発明の抗体をFc融合タンパク質と併用することでADCCを増大させる。
特定の作用機序によって拘束されるものではないが、本発明のヒト化抗体と治療用抗体の併用は、一部には、抑制性FcγRIIB受容体を発現するマクロファージを排除するFcγRIIB特異的ヒト化抗体の細胞傷害能力のために、増大した治療効果を発揮する。したがって、治療用抗体の1回投与につきより高い濃度で活性化性FcγR受容体を発現する細胞が残存することになる。
いくつかの実施形態においては、本発明は、本発明のヒト化抗体を治療用抗体と組み合わせて使用することを包含し、該治療用抗体は、細胞死滅を介してその治療効果を媒介することなく該抗体のその治療活性を増強するものである。特定の実施形態では、本発明はアゴニスト活性を有するアポトーシス誘導性治療用抗体(例えば、抗Fas抗体)と本発明のヒト化抗体との併用を包含する。アポトーシス誘導性治療用抗体は、アポトーシス経路をモジュレートすることについて当技術分野で知られたいずれかのデス受容体(death receptor)、例えばTNFR受容体ファミリーメンバーまたはTRAILファミリーメンバーに特異的でありうる。
本発明は、マクロファージが媒介する腫瘍細胞の進行および転移をブロックするための本発明のヒト化抗体の使用を包含する。本発明のヒト化抗体は、マクロファージ浸潤が起こる固形腫瘍の治療に特に有用である。本発明のアンタゴニスト性ヒト化抗体は、腫瘍部位に局在化するマクロファージの集団を低減または排除することにより、腫瘍細胞転移を制御(例えば低減または排除)するのに特に有用である。本発明はさらに、マクロファージ以外のFcγRIIBを発現する免疫エフェクター細胞(例えば樹状細胞)を効果的に枯渇させるかまたは排除するヒト化抗体を包含する。本発明の抗体を用いた免疫エフェクター細胞の効果的枯渇または排除は、エフェクター細胞集団の50%、60%、70%、80%、好ましくは90%、そして最も好ましくは99%低減である。
いくつかの実施形態においては、本発明は、本発明のヒト化抗体を治療用抗体と併用することを包含し、該治療用抗体は、腫瘍細胞そのものには発現されないで、むしろ周囲の反応性の、腫瘍を支持する非悪性細胞(腫瘍間質を含む)上に発現される腫瘍抗原と免疫特異的に結合するものである。好ましい実施形態では、本発明のヒト化抗体は、繊維芽細胞上の腫瘍抗原(例えば、繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP))と免疫特異的に結合する抗体と併用される。
本発明は、患者の自己免疫疾患を治療する方法を提供し、この方法は、治療が必要な患者に、治療上有効な量の1種以上の本発明のヒト化抗体を投与することを含んでなる。本発明はまた、患者の自己免疫疾患を治療する方法であって、さらに上記患者に治療上有効な量の1種以上の抗炎症薬および/または1種以上の免疫調節薬を投与することを含む上記方法も提供する。
本発明はまた、患者の炎症性疾患を治療する方法を提供し、この方法は、治療が必要な患者に、治療上有効な量の1種以上の本発明のヒト化抗体を投与することを含んでなる。本発明はまた、患者の炎症性疾患を治療する方法であって、さらに上記患者に治療上有効な量の1種以上の抗炎症薬および/または1種以上の免疫調節薬を投与することを含む上記方法も提供する。
本発明は、被験者のワクチン組成物に対する免疫応答を増大する方法を提供し、この方法は、該被験者に、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合するヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント、およびワクチン組成物を投与することを含んでなり、その際、該抗体またはそのフラグメントは、被験者の上記ワクチン組成物に対する免疫応答を増大させるのに有効な量で投与される。本発明のヒト化抗体を用いて、ワクチン組成物の抗原に対する体液性および/または細胞性応答を高めることができる。本発明の抗体は当技術分野で公知のいずれのワクチンと併用してもよい。本発明は、特定の障害を予防または治療するための本発明のヒト化抗体の使用を包含し、その際、1以上の特定の抗原に対する増大した免疫応答が疾患または障害を治療または予防するのに有効である。
本発明はまた、感染性病原体に対する免疫療法を高める方法であって、本発明のヒト化抗体を、すでに病原体(例えばHIV、HCVまたはHSV)に感染している患者に投与して、感染した細胞のオプソニン作用および食作用を増大させる上記方法を提供する。さらに他の実施形態では、本発明は本発明のヒト化抗体を用いて敗血症または敗血症性ショックを治療する方法を包含する。敗血症におけるFcγRIIBの役割は、Clatworthyら, 2004, J Exp Med 199:717-723に記載されている。
本発明は、アポトーシス介在シグナル伝達が損なわれている疾患(例えば、癌、自己免疫疾患)を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、本発明はFas介在アポトーシスに欠陥がある疾患を治療する方法を含み、この方法は、本発明のヒト化抗体を抗Fas抗体と組み合わせて投与することを含んでなる。
本発明はさらに、患者のIgE依存性アレルギー疾患を治療または予防する方法を提供し、この方法は、必要な患者に、治療上有効な量の本発明のヒト化アゴニスト性抗体を投与することを含んでなる。本発明はまた、患者のIgE依存性アレルギー疾患を治療または予防する方法であって、該患者に、本発明のヒト化抗体を、IgE依存性アレルギー疾患の治療または予防に用いる他の治療用抗体またはワクチン組成物と共に投与することを含む上記方法を提供する。
他の実施形態においては、本発明は、被験者の自己免疫疾患を診断する方法であって、(i)被験者からの生物学的サンプルを、有効量の本発明のヒト化抗体と接触させるステップ;および(ii)該ヒト化抗体またはそのフラグメントの結合を検出するステップを含んでなり、ここで、上記の検出可能マーカーがバックグラウンドまたは標準レベルを超えて検出されれぱ、上記被験者が自己免疫疾患を有することを示す、上記方法を提供する。
本発明はさらに、(i) 治療上有効な量の、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合するヒト化抗体またはそのフラグメント、および(ii) 製薬上許容される担体、を含む医薬組成物を提供する。本発明はさらに、(i) 治療上有効な量の、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合するヒト化抗体またはそのフラグメント、(ii) 癌抗原と特異的に結合する細胞傷害性抗体、および(iii) 製薬上許容される担体、を含む医薬組成物を提供する。
本発明のある特定の実施形態においては、本発明の方法により使用される医薬組成物が提供され、前記医薬組成物は、B細胞悪性腫瘍またはその1以上の症状を予防、治療、管理、または改善するのに有効な量のヒト化FcγRIIB抗体またはその抗原結合フラグメント、および製薬上許容される担体を含有する。本発明はまた、本発明の方法により使用される医薬組成物であって、ヒト化FcγRIIB抗体またはその抗原結合フラグメント、FcγRIIBアンタゴニスト以外の予防薬または治療薬、および製薬上許容される担体を含有する上記医薬組成物を提供する。
3.1 定義
本明細書に使用される用語「FcγRIIBと特異的に結合する」および類似の用語は、FcγRIIBまたはそのフラグメントと特異的に結合しかつ他のFc受容体(特にFcγRIIA)と特異的に結合しない抗体またはそのフラグメント(または他のいずれかのFcγRIIB結合分子)を意味する。さらに、当業者であれば、FcγRIIBと特異的に結合する抗体はその可変ドメインを介して結合することを理解するであろう。FcγRIIBと特異的に結合する抗体がその可変ドメインを介して結合する場合、それは凝集していない(すなわち単量体である)ことを当業者は理解するであろう。FcγRIIBと特異的に結合する抗体は、例えばイムノアッセイ、BIAcore、または当技術分野で公知の他のアッセイにより測定して、他のペプチドまたはポリペプチドとより低い親和性で結合してもよい。好ましくは、FcγRIIBまたはその断片と特異的に結合する抗体またはフラグメントは他の抗原と交差反応しない。FcγRIIBと特異的に結合する抗体またはフラグメントは、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、または当技術分野で公知の他のアッセイにより同定することができる。抗体またはそのフラグメントが、実験技法、例えばウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて測定して、いずれの交差反応性抗原と結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと結合する場合に、それはFcγRIIBと特異的に結合するといえる。抗体特異性に関する考察は、例えば、Paul編, 1989, 「基礎免疫学、第2版(Fundamental Immunology Second Edition)」, Raven Press, New York p.332-336を参照されたい。
本明細書に使用される用語「天然FcγRIIB」は、細胞の表面上に内因的に発現されかつ該表面に存在するFcγRIIBを意味する。いくつかの実施形態においては、「天然FcγRIIB」は哺乳動物細胞において組換えにより発現されたタンパク質を包含する。好ましくは、天然FcγRIIBは細菌細胞すなわち大腸菌において発現されたものではない。最も好ましくは、天然FcγRIIBは変性されておらず、生物学的に活性なコンフォメーションである。
本明細書に使用される用語「天然FcγRIIA」は、細胞の表面上に内因的に発現されかつ該表面に存在するFcγRIIAを意味する。いくつかの実施形態においては、「天然FcγRIIA」は哺乳動物細胞において組換えにより発現されたタンパク質を包含する。好ましくは、天然FcγRIIAは細菌細胞すなわち大腸菌において発現されたものではない。最も好ましくは、天然FcγRIIAは変性されておらず、生物学的に活性なコンフォメーションである。
本明細書に使用される用語「抗体」は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、ラクダ化抗体(camelized antibody)、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、細胞内発現抗体(intrabody)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体および抗-抗Id抗体を含む)、ならびに上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントを意味する。特に、抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性フラグメント、すなわち抗原結合部位を含有する分子を含む。免疫グロブリン分子はいずれのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IGA1およびIgA2)またはサブクラスであってもよい。
本明細書に使用される用語「B細胞悪性腫瘍」はB細胞リンパ増殖性疾患を意味する。B細胞悪性腫瘍はB細胞起源の腫瘍を含む。B細胞悪性腫瘍には、限定するものではないが、リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ芽球白血病、多発性骨髄腫、ホジキンおよび非ホジキン病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の領域をもつ濾胞性リンパ腫、小リンパ球リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性小切れ込み細胞型リンパ腫が含まれる。
FcγRIIBとの関連で本明細書に使用される用語「誘導体」は、アミノ酸残基の置換、欠失または付加(すなわち突然変異)の導入により改変されている、FcγRIIBポリペプチドと免疫特異的に結合する抗体、またはFcγRIIBポリペプチドと免疫特異的に結合する抗体フラグメントをさす。いくつかの実施形態では、抗体誘導体またはそのフラグメントは1以上のCDR中にアミノ酸残基の置換、欠失または付加を含む。抗体誘導体は、非誘導体抗体と比較して、実質的に同じ結合、より強い結合、または弱い結合を有してもよい。特定の実施形態では、CDRの1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加(すなわち突然変異)されている。FcγRIIBとの関連で本明細書に使用される用語「誘導体」はまた、改変されている(例えば、FcγRIIBポリペプチドへの任意のタイプの分子の共有結合により改変されている)、FcγRIIBポリペプチドと免疫特異的に結合する抗体、またはFcvRIIBポリペプチドと免疫特異的に結合する抗体フラグメントも意味する。例えば、限定するものではないが、抗体または抗体フラグメントは、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質との連結などにより改変することができる。誘導体抗体または抗体フラグメントは、当業者に公知の技法を用いる化学的改変によって改変することができ、それらの技法には、限定するものではないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などが含まれる。さらに、抗体の誘導体または抗体フラグメントは1個以上の非古典的アミノ酸を含有してもよい。一実施形態において、抗体誘導体は親抗体と同様のまたは同一の機能を有する。他の実施形態においては、抗体の誘導体または抗体フラグメントは、未改変の抗体と比較して、改変された活性を有する。例えば、誘導体抗体またはそのフラグメントは、そのエピトープとより強固に結合することができるか、またはタンパク分解に対してより抵抗性である。
本明細書に使用される用語「障害」および「疾患」は互換的に使用され、被験者の状態を意味する。特に、用語「自己免疫疾患」は「自己免疫障害」と互換的に使用され、被験者自身の細胞、組織および/または器官に対する被験者の免疫反応によって引き起こされる細胞、組織および/または器官の損傷により特徴付けられる被験者の状態を意味する。用語「炎症性疾患」は用語「炎症性障害」と互換的に使用され、炎症、好ましくは慢性炎症により特徴付けられる被験者の状態を意味する。自己免疫障害は炎症を伴っても伴わなくてもよい。さらに、炎症は自己免疫障害により生じても生じなくてもよい。従って、いくつかの障害は自己免疫障害と炎症性障害の両方により特徴付けることができる。
本明細書に使用される用語「癌」は、細胞の異常な無制御増殖から生じる新生物または腫瘍を意味する。本明細書において、癌は明確に白血病およびリンパ腫を含む。用語「癌」は、遠隔部位に転移する能力を有して、非癌細胞とは異なる表現型形質(例えば、軟寒天のような三次元基体でのコロニーの形成、あるいは三次元基底膜における管状ネットワークもしくは網状マトリックスまたは細胞外マトリックス調製物の形成)を示す細胞に関係した疾患を意味する。非癌細胞は軟寒天においてコロニーを形成したり、三次元基底膜において明確な球状構造物または細胞外マトリックス調製物を形成したりしない。癌細胞は、その発生中に様々な機構を介してではあるが、特徴あるセットの機能的能力を獲得する。かかる能力として、アポトーシスの回避、増殖シグナルの自給自足、抗増殖シグナルに対する非感受性、組織浸潤/転移、無限の増殖能力、および持続的血管新生が挙げられる。用語「癌細胞」の意味は前悪性および悪性の癌細胞を包含する。いくつかの実施形態においては、癌は、局在したままの良性腫瘍を意味する。他の実施形態においては、癌は、近隣の身体構造に侵入して破壊しかつ遠隔部位に拡大する悪性腫瘍を意味する。さらに他の実施形態においては、癌は特定の癌抗原と関連している。
本明細書に使用される用語「免疫調節剤」は、宿主の免疫系をモジュレートする薬剤を意味する。ある特定の実施形態においては、免疫調節剤は免疫抑制剤である。ある特定の他の実施形態においては、免疫調節剤は免疫賦活剤である。免疫調節剤には、限定するものではないが、小分子、ペプチド、ポリペプチド、融合タンパク質、抗体、無機分子、模倣剤(mimetic agent)、および有機分子が含まれる。
本明細書に使用される用語「エピトープ」は、抗体が特異的に結合する抗原分子上の領域をさす。
本明細書に使用される用語「断片」または「フラグメント」は、他のポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも5個連続したアミノ酸残基、少なくとも10個連続したアミノ酸残基、少なくとも15個連続したアミノ酸残基、少なくとも20個連続したアミノ酸残基、少なくとも25個連続したアミノ酸残基、少なくとも40個連続したアミノ酸残基、少なくとも50個連続したアミノ酸残基、少なくとも60個連続したアミノ酸残基、少なくとも70個連続したアミノ酸残基、少なくとも80個連続したアミノ酸残基、少なくとも90個連続したアミノ酸残基、少なくとも100個連続したアミノ酸残基、少なくとも125個連続したアミノ酸残基、少なくとも150個連続したアミノ酸残基、少なくとも175個連続したアミノ酸残基、少なくとも200個連続したアミノ酸残基、または少なくとも250個連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドを意味する。特定の実施形態において、ポリペプチドの断片またはフラグメントは、そのポリペプチドの少なくとも1つの機能を保持する。好ましくは、抗体フラグメントはエピトープ結合フラグメントである。
本明細書に使用される用語「ヒト化抗体」は、ヒトフレームワーク領域および非ヒト(通常はマウスまたはラット)免疫グロブリン由来の1以上のCDRを含んでなる免疫グロブリンを意味する。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。定常領域は存在する必要はないが、もし存在するのであれば、ヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち、少なくとも約85〜90%、好ましくは約95%以上同一でなければならない。従って、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、恐らくはCDRを除いて、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。「ヒト化抗体」はヒト化軽鎖およびヒト化重鎖免疫グロブリンを含んでなる抗体である。例えば、ヒト化抗体は典型的なキメラ抗体を包含しないであろう。その理由は、例えば、キメラ抗体の全可変領域が非ヒトであることによる。ドナー抗体は「ヒト化」のプロセスによって「ヒト化」されたと言われる。なぜなら、得られるヒト化抗体が、CDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合すると予想されるからである。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基がマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)由来の(所望の特異性、親和性、および能力を有する)超可変領域残基により置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基により置換される。さらに、ヒト化抗体はレシピエント抗体またはドナー抗体中に見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は抗体性能をさらに改善するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むものであり、ここで、超可変領域の全てまたは実質的に全ては非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応し、そしてFRの全てまたは実質的に全てはヒト免疫グロブリン配列のFRである。場合によっては、ヒト化抗体は、アミノ酸残基の置換、欠失または付加(すなわち、突然変異)の導入により改変されている、免疫グロブリン(典型的には、FcγRIIBポリペプチドと免疫特異的に結合するヒト免疫グロブリン)の定常領域(Fc)の少なくとも一部分も含む。いくつかの実施形態においては、ヒト化抗体は誘導体である。かかるヒト化抗体は1以上の非ヒトCDR中にアミノ酸残基の置換、欠失または付加を含む。ヒト化抗体誘導体は、非誘導体ヒト化抗体と比較したとき、実質的に同じ結合、より強い結合、またはより弱い結合を有しうる。特定の実施形態では、CDRの1、2、3、4、もしくは5個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されている(すなわち突然変異している)。抗体をヒト化することのさらなる詳細については、欧州特許EP 239,400、EP 592,106、およびEP 519,596;国際公開WO 91/09967およびWO 93/17105;米国特許5,225,539、5,530,101、5,565,332、5,585,089、5,766,886、および6,407,213;ならびにPadlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498;Studnickaら, 1994, Protein Engineering 7(6):805-814;Roguskaら, 1994, Proc Natl Acad Sci USA 91:969-973;Tanら, 2002, J. Immunol. 169:1119-25;Caldasら, 2000, Protein Eng. 13:353-60;Moreaら, 2000, Methods 20:267-79;Bacaら, 1997, J. Biol. Chem. 272:10678-84;Roguskaら, 1996, Protein Eng. 9:895-904;Coutoら, 1995, Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s-5977s;Coutoら, 1995, Cancer Res. 55:1717-22;Sandhu, 1994, Gene 150:409-10;Pedersenら, 1994, J. MoI. Biol. 235:959-73;Jonesら, 1986, Nature 321:522-525;Reichmannら, 1988, Nature 332:323-329;およびPresta, 1992, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596を参照されたい。
本明細書に使用される用語「超可変領域」は、抗原結合に関わる抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基24-34(Ll)、50-56(L2)および89-97(L3)ならびに重鎖可変ドメインの31-35(Hl)、50-65(H2)および95-102(H3);Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))および/または「超可変ループ」由来のアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基26-32(Ll)、50-52(L2)および91-96(L3)ならびに重鎖可変ドメインの26-32(Hl)、53-55(H2)および96-101(H3);ChothiaおよびLesk, 1987, J. MoI. Biol. 196:901-917)を含む。Eph099B-208.261およびEph099B-233.152のCDR残基は表1に掲げられている。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書に規定した超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
本明細書に使用される用語「一本鎖Fv」または「scFv」は、1本のポリペプチド鎖中に存在する、抗体のVHおよびVLドメインを含んでなる抗体フラグメントを意味する。一般的に、FvポリペプチドはさらにVHおよびVLドメイン間にポリペプチドリンカーを有し、上記リンカーはscFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする。scFvの総括については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, RosenburgおよびMoore編. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。特定の実施形態において、scFvには二重特異性scFvおよびヒト化scFvが含まれる。
本明細書に使用される用語「核酸」および「ヌクレオチド配列」は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、DNAおよびRNA分子の組合せ、またはハイブリッドDNA/RNA分子、およびDNAまたはRNA分子の類似体を含む。このような類似体は、例えば、限定するものではないが、イノシンまたはトリチル化塩基を含むヌクレオチド類似体を用いて、作製することができる。このような類似体はまた、DNAまたはRNA分子に有益な属性(例えば、ヌクレアーゼ耐性または細胞膜通過能力の増加)を与える改変骨格を有するDNAまたはRNA分子を含んでもよい。核酸またはヌクレオチド配列は一本鎖、二本鎖であってもよいし、一本鎖と二本鎖の両部分を含有してもよく、そして三本鎖部分を含有してもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
本明細書に使用される「被験者」および「患者」は互換的に使用される。本明細書に使用される被験者は、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)および霊長類(例えば、サルおよびヒト)などの哺乳動物であり、そして最も好ましくはヒトである。
本明細書に使用される用語「治療」は、Fc受容体シグナル伝達経路における調節の低下に関係する疾患もしくは障害の症状を根絶、低減もしくは改善すること、または他の療法(例えば、治療用抗体、ワクチン療法もしくは予防)の治療効力を高めることを意味する。いくつかの実施形態においては、治療は1種以上の治療薬の投与に起因する原発性、局限性、または転移性癌の根絶、除去、改善、または制御を意味する。ある特定の実施形態においては、かかる用語は癌を患う被験者に1種以上の治療薬を投与することにより得られる癌の広がりの最小化もしくは遅延を意味する。他の実施形態においては、かかる用語は疾患の原因となる細胞の排除を意味する。
本明細書に使用される用語「副作用」は、予防薬または治療薬の望ましくない有害作用を包含する。有害作用は常に望ましくないが、望ましくない作用が必ずしも不利ではない。予防薬または治療薬からの有害作用は有害または不快または危険でありうる。化学療法からの副作用としては、限定するものではないが、胃腸毒性、例えば、早期および後期形成性下痢および膨満、吐き気、嘔吐、摂食障害、白血球減少症、貧血、好中球減少、無力症、腹部けいれん、熱、尖痛、体重減少、脱水、脱毛症、呼吸困難、不眠症、めまい、粘膜炎、口内乾燥、および腎不全、ならびに便秘、神経および筋肉効果、腎および膀胱に対する一過性もしくは持続性障害、インフルエンザ様症状、体液うっ滞、および一過性もしくは持続性不妊症が挙げられる。放射線療法からの副作用としては、疲労、口渇、および食欲不振が挙げられる。生物学的療法/免疫療法による副作用としては、限定するものではないが、投与部位における発疹または腫脹、インフルエンザ様症状、例えば熱、悪寒および疲労、消化管の問題およびアレルギー反応が挙げられる。ホルモン療法の副作用としては、限定するものではないが、吐き気、不妊症の問題、うつ病、食欲不振、眼の問題、頭痛、および体重変動が挙げられる。患者が一般的に経験するさらなる望ましくない作用は数多くあり、当技術分野で公知である、例えば、本明細書に参照によりその全てが組み入れられるthe Physicians' Desk Reference(第56版、2002)を参照されたい。
本明細書に使用される「治療上有効な量」は、FcγRIIBに関連する疾患または障害およびFc受容体シグナル伝達経路の調節の低下に関係する疾患を治療または管理するために、または他の療法(例えば、治療用抗体、ワクチン療法または予防法など)の治療効力を高めるために十分な治療薬の量を意味する。治療上有効な量は、疾患の発症を遅延または最小限にする、例えば癌の拡大を遅延または最小限にするために十分な治療薬の量を意味してもよい。治療上有効な量は、疾患の治療または管理において治療上の利益を与える治療薬の量を意味してもよい。さらに、本発明の治療薬の治療上有効な量は、疾患の治療または管理において治療上の利益を与える、例えば疾患を治療または管理するのに十分な治療用抗体の治療効力を高めるために十分な、治療薬単独の量、または他の治療薬と組み合わせたときの量を意味する。本発明のFcγRIIB抗体の量との関連で用いる場合、この用語は、全体的な治療を改善し、望まない作用を軽減するかまたは回避し、または他の治療薬の治療効力または他の治療薬との相乗作用を高める量を包含しうる。
本明細書に使用される用語「予防薬」は、疾患の予防に、または疾患の再発または拡大の予防に使用される薬物を意味する。予防上有効な量は、過剰増殖性疾患(特に癌)の再発もしくは拡大、または過剰増殖性疾患の素因がある(例えば、遺伝的に癌の素因があるまたは先に発癌物質に曝された)患者におけるその発生、を予防するのに十分な、予防薬の量を意味しうる。予防上有効な量はまた、疾患の予防において予防上の利益を与える予防薬の量を意味してもよい。さらに、本発明の予防薬に関する予防上有効な量は、疾患の予防において予防上の利益を与える予防薬単独の、または他の薬物と組み合わせたときの量を意味する。本発明のFcγRIIB抗体の量との関連で用いる場合、この用語は、全体的な予防を改善する量、または他の予防薬(例えば、治療用抗体)の予防効力もしくは他の予防薬との相乗効果を高める量も包含しうる。ある特定の実施形態においては、用語「予防薬」はアゴニスト性FcγRIIB特異的抗体を意味する。他の実施形態においては、用語「予防薬」はアンタゴニスト性FcγRIIB特異的抗体を意味する。ある特定の他の実施形態においては、用語「予防薬」は癌化学療法剤、放射線療法、ホルモン療法、生物学的療法(例えば、免疫療法)、および/または本発明のFcγRIIB抗体を意味する。他の実施形態においては、2種以上の予防薬を組み合わせて投与することができる。
本明細書に使用される用語「管理」は、疾患の治癒をもたらさない予防薬または治療薬の投与から被験者が獲得する有益な効果を意味する。ある特定の実施形態においては、疾患の進行または悪化を防止するように疾患を「管理」するために、被験者に1種以上の予防薬または治療薬を投与する。
本明細書に使用される用語「予防」は、予防薬または治療薬の投与から得られる、被験者における疾患の1以上の症状の発生および/または再発または発症の予防を意味する。
本明細書に使用される用語「組み合わせて」は、2種以上の予防薬および/または治療薬の使用を意味する。用語「組み合わせて」の使用は、予防薬および/または治療薬を、疾患(例えば過増殖性細胞疾患、とりわけ癌)を患う被験者に投与する順序を制限しない。第1の予防または治療薬は、第2の予防または治療薬を投与する前(例えば1分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、または12週前)に、投与すると同時に、または投与した後(例えば1分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、または12週後)に、疾患に罹患した、罹患している、もしくは罹患しやすい被験者に投与することができる。予防薬または治療薬は、本発明の薬剤が他の薬剤と一緒に作用して、それらの薬剤を別のやり方で投与したときより向上した利益が得られるような順序でかつ時間間隔内で、被験者に投与する。どのような追加の予防薬または治療薬も、追加の他の予防薬または治療薬と共に任意の順序で投与しうる。
4.図面の説明
図1AおよびB: A. アミノ酸アライメント。マウス2B6 VH、ヒト化2B6 VH1-18、およびヒトJH6のアミノ酸配列のアライメントを図1Aに示す。B. アミノ酸アライメント。この図面は、マウス2B6VL、ヒト2B6VL-1、ヒト2B6VL-2; ヒト2B6VL-3、およびヒトJK4のアミノ酸配列のアライメントを示す。
図2: hu2B6HC/ch2B6LC mAbおよびch2B6 mAbとFcγRIIBとの結合。二量体可溶性FcγRIIB-Fcとの結合はELISAにより測定した。hu2B6HC/ch2B6LCモノクローナル抗体はch2B6モノクローナル抗体に類似した親和性でこの受容体と結合した。
図3: hu2B6LC/ch2B6HC mAb、ch2B6LC/hu2B6HC mAb、およびch2B6 mAbとFcγRIIBとの結合。二量体可溶性FcγRIIB-Fcとの結合はELISAにより測定した。hu2B6HC/ch2B6LC mAbおよびch2B6HC/hu2B6LC mAbはch2B6 mAbに類似した親和性でこの受容体と結合した。
図4: hu2B6変異体とFcγRIIBとの結合。Hu2B6N50Y、Hu2B6N50Y,V51A、Ch2B6、およびHu2B6と二量体可溶性FcγRIIB-Fcとの結合はELISAにより測定した。全てのmAbが同様の親和性でこの受容体に結合した。
図5: hu2B6変異体とFcγRIIAとの結合。Hu2B6N50Y、Hu2B6N50Y,V51A、Ch2B6、およびHu2B6と二量体可溶性FcγRIIA-Fcとの結合はELISAにより測定した。ヒト化2B6 mAbはCD32Bと選択的に結合する。黒塗りの全てのデータ点は互いの上に重なっており、黒塗りの四角として示されている。
5.好ましい実施形態の説明
5.1 FcγRIIB特異的抗体
本発明は、FcγRIIA、好ましくはヒトFcγRIIA、さらに好ましくは天然ヒトFcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIB、好ましくはヒトFcγRIIB、さらに好ましくは天然ヒトFcγRIIBと特異的に結合するヒト化抗体(好ましくはヒト化モノクローナル抗体)またはそのフラグメントを包含する。好ましくは、本発明のヒト化抗体は、天然ヒトFcγRIIBの細胞外ドメインと結合する。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体またはそのフラグメントは、FcγRIIAと結合するより2倍、4倍、6倍、10倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、104倍、105倍、106倍、107倍、または108倍高い親和性でFcγRIIBと結合する。ある特定の実施形態では、本発明のヒト化抗体は、ATCC受託番号PTA-4591およびPTA-4592を有するそれぞれクローン2B6または3H7により産生されるマウスモノクローナル抗体から誘導される。別の実施形態では、本発明のヒト化抗体は、ATCC受託番号PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960およびPTA-5959を有するそれぞれクローン1D5、2El、2H9、2D11および1F2により産生されるマウスモノクローナル抗体から誘導される。抗体2B6および3H7を産生するハイブリドーマは、American Type Culture Collection(10801 University Blvd., Manassas, VA. 20110-2209)に2002年8月13日、ブダペスト条約(特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約)に基づいて寄託され、それぞれ受託番号PTA-4591(2B6を産生するハイブリドーマ)およびPTA-4592(3H7を産生するハイブリドーマ)を指定された(これらは本明細書に参照により組み入れられる)。1D5、2El、2H9、2D11および1F2を産生するハイブリドーマは、American Type Culture Collection(10801 University Blvd., Manassas, VA. 20110-2209)に2004年5月7日、ブダペスト条約(特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約)に基づいて寄託され、それぞれ受託番号PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960およびPTA-5959を指定された(これらは本明細書に参照により組み入れられる)。
本発明のさらに別の実施形態において、本発明は、当技術分野で公知でありまた本明細書に記載される標準的な方法を用いて、FcγRIIBともっぱら結合しかつFcγRIIAに対する親和性を持ち合わせない、ヒト化FcγRIIB抗体を包含する。
特定の実施形態において、本発明は、2B6または3H7のCDRを含むヒト化抗体を包含する。特に、重鎖可変ドメインが配列番号24のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変ドメインが配列番号18、配列番号20、または配列番号22のアミノ酸配列を有する抗体を包含する。特定の実施形態では、本発明は、重鎖可変ドメインが配列番号37のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変ドメインが配列番号46のアミノ酸配列を有するヒト化抗体を包含する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明のヒト化抗体はさらにFc活性化受容体、例えばFcγRIIIA、FcγRIIIBなどと結合しない。一実施形態では、本発明に従うヒト化FcγRIIB特異的抗体は、Pulfordら, 1986 (Immunology, 57: 71-76)に開示されるKB61と使用するモノクローナル抗体、またはWeinrichら, 1996, (Hybridoma, 15(2):109-6)に開示されるMAbII8D2と称するモノクローナル抗体に由来するものではない。特定の実施形態においては、本発明のFcγRIIB特異的抗体は、モノクローナル抗体KB61またはII8D2と同じエピトープには結合せず、かつ/またはモノクローナル抗体KB61またはII8D2と結合について競合しない。好ましくは、本発明のヒト化FcγRIIB特異的抗体は、FcγRIIb2アイソフォームの位置135-141に対応するアミノ酸配列SDPNFSIと結合しない。
本発明のヒト化抗体の定常ドメインは、その抗体の意図した機能に関して、特に必要とされるエフェクター機能に関して選択することができる。いくつかの実施形態では、本発明のヒト化抗体の定常ドメインはヒトIgA、IgE、IgGまたはIgMドメインである。特定の実施形態では、ヒトIgG定常ドメイン、とりわけIgG1およびIgG3アイソタイプの定常ドメインが使用され、特に本発明のヒト化抗体を治療に使用することを意図しており、抗体のエフェクター機能を必要としているときにはそうである。別の実施形態では、IgG2およびIgG4が使用されるが、それは、本発明のヒト化抗体が治療を目的としているが、抗体のエフェクター機能を必要としない場合である。他の実施形態では、本発明は、Fc領域に1以上のアミノ酸改変を含むヒト化抗体を包含し、かかる改変は、Stavenhagenらによる米国特許出願公開第2005/0037000号および同第2005/0064514号;米国仮出願第60/439,498号、第60/456,041号および第60/514,549号(それぞれ2003年1月9日、2003年3月19日、2003年10月23日に出願);ならびに、米国特許第5,624,821号および第5,648,260号、欧州特許第EP 0 307 434号に開示されており、前記特許文献の全てを参照することによりその全体を本明細書に組み入れるものとする。
好ましくは、本発明のヒト化抗体は天然のヒトFcγRIIBの細胞外ドメインと結合する。本発明のヒト化抗FcγRIIB抗体は、CDR1 (配列番号1もしくは配列番号29)および/またはCDR2 (配列番号2もしくは配列番号30)および/またはCDR3 (配列番号3もしくは配列番号31)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/またはCDR1 (配列番号8もしくは配列番号38)および/またはCDR2 (配列番号9、配列番号10、配列番号11、もしくは配列番号39)および/またはCDR3 (配列番号12もしくは配列番号40)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。
1つの具体的な実施形態においては、本発明は、VH領域がヒト生殖系VHセグメントVH1-18(Matsudaら, 1998, J. Exp. Med. 188: 2151062)およびJH6(Ravetchら, 1981, Cell 27(3 Pt. 2): 583-91)由来のFRセグメントと、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のアミノ酸配列を有する2B6 VHの1以上のCDR領域とからなる、ヒト化2B6抗体を提供する。一実施形態では、2B6 VHは配列番号24のアミノ酸配列を有する。別の具体的な実施形態では、ヒト化2B6抗体はさらに、ヒト生殖系VLセグメントVK-A26(Lautner-Rieskeら, 1992, Eur. J. Immunol. 22: 1023-1029)およびJK4(Hieterら, 1982, J. Biol. Chem. 257: 1516-22)のFRセグメントと、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12のアミノ酸配列を有する2B6 VLの1以上のCDR領域とからなるVL領域を含んでなる。一実施形態では、2B6 VLは配列番号18、配列番号20または配列番号22のアミノ酸配列を有する。
別の具体的な実施形態において、本発明は、VH領域がヒト生殖系VHセグメント由来のFRセグメントと、3H7 VHのCDR領域とからなり、配列番号37のアミノ酸配列を有する、ヒト化3H7抗体を提供する。別の具体的な実施形態において、ヒト化3H7抗体はさらに、ヒト生殖系VLセグメントのFRセグメントと、3H7 VLのCDR領域とからなり、配列番号46のアミノ酸配列を有するVL領域を含んでなる。
特に、本発明は、天然のヒトFcγRIIBの細胞外ドメインと免疫特異的に結合するヒト化抗体を提供し、前記抗体は以下のCDRを含むか、あるいはまた、以下のCDRからなる:VH CDR1およびVL CDR1; VH CDR1およびVL CDR2; VH CDR1およびVL CDR3; VH CDR2およびVL CDR1; VH CDR2およびVL CDR2; VH CDR2およびVL CDR3; VH CDR3およびVH CDR1; VH CDR3およびVL CDR2; VH CDR3およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR2およびVL CDR1; VH CDR1、VH CDR2およびVL CDR2; VH CDR1、VH CDR2およびVL CDR3; VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR1; VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR2; VH CDR2、VH CDR2およびVL CDR3; VH CDR1、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR1、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR1; VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR2; VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR1、VH CDR2、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR1、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR2、VH CDR3、VL CDR2およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR2; VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR2、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3; VH CDR1、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3; VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3; または本明細書に開示したVH CDRとVL CDRの任意の組合せ。
本発明は、FcγRIIBに特異的なヒト化抗体分子であって、ヒト抗体(レシピエント抗体)の重鎖および/または軽鎖可変領域の1以上のCDRの1以上の領域が、FcγRIIAよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合するドナーモノクローナル抗体の1以上のCDRの類似部分により置換されている、上記ヒト化抗体分子を提供する。前記モノクローナル抗体は、例えば、クローン2B6もしくは3H7(それぞれATCC受託番号PTA-4591およびPTA-4592を有する)により産生されるモノクローナル抗体、またはクローン1D5、2E1、2H9、2D11、もしくは1F2(それぞれATCC受託番号PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有する)により産生されるモノクローナル抗体である。他の実施形態では、本発明のヒト化抗体は2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11、または1F2と同じエピトープに結合する。最も好ましい実施形態では、ヒト化抗体はドナーマウス抗体と同じエピトープに特異的に結合する。当業者であれば、本発明は一般に抗体のCDRグラフト化を包含することが理解されよう。かくして、ドナー抗体とアクセプター抗体は同種の動物に由来するもので、同一の抗体クラスまたはサブクラスのものでもよい。しかし、より一般的には、ドナー抗体とアクセプター抗体は異なる動物種に由来するものである。典型的には、ドナー抗体がげっ歯類MAbのような非ヒト抗体であり、アクセプター抗体がヒト抗体である。
いくつかの実施形態においては、ドナー抗体由来の少なくとも1つのCDRがヒト抗体にグラフトされる。他の実施形態では、重鎖および/または軽鎖可変領域のそれぞれの少なくとも2つ(好ましくは3つ全て)のCDRがヒト抗体にグラフトされる。CDRはKabatのCDR、構造ループCDR、またはこれらの組合せを含みうる。いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つのCDRグラフト化重鎖および少なくとも1つのCDRグラフト化軽鎖を含むヒト化FcγRIIB抗体を包含する。
好ましい実施形態において、ヒト化FcγRIIB特異的抗体のCDR領域はFcγRIIBに特異的なマウス抗体に由来する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗体は、ドナーモノクローナル抗体の結合特異性を保持するのに必要な、アクセプター抗体(すなわちヒト)の重鎖および/または軽鎖可変ドメインフレームワーク領域の改変(アミノ酸の欠失、挿入および修飾を含むが、これらに限らない)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヒト化抗体のフレームワーク領域は、必ずしも、天然のヒト抗体可変領域のフレームワーク領域の正確なアミノ酸配列からなる必要はなく、さまざまな改変を含みうる。かかる改変としては、限定するものではないが、ヒト化抗体の性状を変える(例えば、マウスFcγRIIB特異的抗体と同じ標的に対して特異的なヒト化抗体領域の結合特性を改善する)アミノ酸の欠失、挿入および修飾が挙げられる。最も好ましい実施形態では、非ヒトフレームワーク残基の大量導入を避けかつヒトにおけるヒト化抗体の免疫原性を最小限に止めるため、フレームワーク領域に対して最小数の改変を行う。本発明のドナーモノクローナル抗体は、好ましくは、FcγRIIBと結合するクローン2B6および3H7(それぞれATCC受託番号PTA-4591およびPTA-4592を有する)により産生されるモノクローナル抗体、またはクローン1D5、2E1、2H9、2D11、および1F2(それぞれATCC受託番号PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有する)により産生されるモノクローナル抗体である。
特定の実施形態において、本発明は、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合するCDRグラフト化抗体を包含し、前記CDRグラフト化抗体は、レシピエント抗体のフレームワーク残基と、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合するドナーモノクローナル抗体(例えば、クローン2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11、または1F2から産生されるモノクローナル抗体)からの残基と、を含む重鎖可変領域ドメインを含んでなる。別の特定の実施形態では、本発明は、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合するCDRグラフト化抗体であって、レシピエント抗体のフレームワーク残基と、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合するドナーモノクローナル抗体(例えば、クローン2B6、3H7、1D5、2E1、2H9、2D11、または1F2から産生されるモノクローナル抗体)からの残基と、を含む軽鎖可変領域ドメインを含んでなる、上記CDRグラフト化抗体を包含する。
本発明のヒト化FcγRIIB特異的抗体は、CDR領域の全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のものに相当し、かつフレームワーク領域の全部または実質的に全部がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つの(一般的には2つの)可変ドメインの実質的に全部を含むことができる。好ましくは、本発明のヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含む。本発明のヒト化抗体の定常ドメインは、意図した抗体の機能、特に必要とされるエフェクター機能に関して選択することができる。いくつかの実施形態では、本発明のヒト化抗体の定常ドメインはヒトIgA、IgE、IgGまたはIgMドメインである。特定の実施形態では、ヒトIgG定常ドメイン、とりわけIgG1およびIgG3アイソタイプの定常ドメインが使用され、特に本発明のヒト化抗体を治療に使用することを意図しており、抗体のエフェクター機能を必要としているときにはそうである。別の実施形態では、IgG2およびIgG4アイソタイプが使用されるが、それは、本発明のヒト化抗体が治療を目的としているが、抗体のエフェクター機能を必要としない場合である。本発明は、抗体のエフェクター機能を変える1以上のアミノ酸改変を含むFc定常ドメインを包含し、かかる改変は、米国特許出願公開第2005/0037000号および同第2005/0064514号;米国仮出願第60/439,498号、第60/456,041号および第60/514,549号(それぞれ2003年1月9日、2003年3月19日、2003年10月23日に出願)に開示されており、前記特許文献の全てを参照することによりその全体を本明細書に組み入れるものとする。
いくつかの実施形態では、本発明のヒト化抗体は軽鎖だけでなく重鎖の少なくとも可変ドメインを含む。他の実施形態では、本発明のヒト化抗体は重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、およびCH4領域の1以上をさらに含んでいてもよい。ヒト化抗体は免疫グロブリンのいずれかのクラス(IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む)およびいずれかのアイソタイプ(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む)から選択することができる。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体が細胞傷害活性を示すことが望まれる場合には、定常ドメインは補体結合定常ドメインであり、クラスはIgG1である。他の実施形態では、そのような細胞傷害活性を望まない場合、定常ドメインはIgG2クラスのものでありうる。本発明のヒト化抗体は1より多いクラスまたはアイソタイプからの配列を含むことができ、所望のエフェクター機能を最適化するための特定の定常ドメインの選択は当業者の技量の範囲内である。
ヒト化抗体のフレームワークおよびCDR領域は親配列と正確に一致させる必要はなく、例えば、ドナーCDRまたはコンセンサスフレームワークを少なくとも1個の残基の置換、挿入または欠失により突然変異させて、その部位のCDRまたはフレームワーク残基がコンセンサスまたはドナー抗体と一致しないようにしてもよい。しかし、そのような突然変異は広範囲でないことが好ましい。通常は、ヒト化抗体残基の少なくとも75%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%以上を親フレームワーク領域(FR)およびCDR配列の残基と一致させる。ヒト化抗体は当技術分野で公知の様々な技法を用いて作製することができ、かかる技法としては、限定するものではないが、CDRグラフト化 (欧州特許EP 239,400; 国際公開WO 91/09967; および米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号および同第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)または露出表面残基のヒト化(resurfacing)(欧州特許EP 592,106およびEP 519,596;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28 (4/5):489-498;Studnickaら, 1994, Protein Engineering 7 (6):805-814;およびRoguskaら, 1994, Proc Natl Acad Sci USA 91:969-973)、チェーンシャフリング(米国特許第5,565,332号)、および以下の刊行物に開示された技法を含む:例えば、米国特許第6,407,213号、第5,766,886号、第5,585,089号、国際公開WO 9317105、Tanら, 2002, J. Immunol. 169:1119-25、Caldasら, 2000, Protein Eng. 13:353-60、Moreaら, 2000, Methods 20:267-79、Bacaら, 1997, J. Biol. Chem. 272:10678-84、Roguskaら, 1996, Protein Eng. 9:895-904、Coutoら, 1995, Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s-5977s、Coutoら, 1995, Cancer Res. 55:1717-22、Sandhu, 1994, Gene 150:409-10、Pedersenら, 1994, J. Mol. Biol. 235:959-73、Jonesら, 1986, Nature 321:522-525、Riechmannら, 1988, Nature 332:323、ならびにPresta, 1992, Curr. OP. Struct. Biol. 2:593-596。しばしば、フレームワーク領域中のフレームワーク残基をCDRドナー抗体からの対応する残基で置換して、抗原結合を改変(好ましくは改善)しうる。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法により同定され、例えばCDRおよびフレームワーク残基の相互作用をモデル化して抗原結合にとって重要なフレームワーク残基を確認し、そして配列比較を行って特定位置の普通でないフレームワーク残基を同定する(例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号;米国公開第2004/0049014号および第2003/0229208号;米国特許第6,350,861号;第6,180,370号;第5,693,762号;第5,693,761号;第5,585,089号および第5,530,101号;ならびにRiechmannら, 1988, Nature 332:323を参照のこと;これらは参照することにより本明細書にその全てを組み入れるものとする)。
特定の実施形態においては、本発明のヒト化抗体またはそのフラグメントはFcγRIIBの少なくとも1つの活性にアゴニスト作用を示す。本発明の一実施形態においては、上記活性はB細胞受容体介在シグナル伝達の抑制である。他の実施形態においては、本発明のアゴニスト性ヒト化抗体は、B細胞の活性化、B細胞増殖、抗体産生、B細胞の細胞内カルシウム流入、細胞周期進行、またはFcγRIIBシグナル伝達経路中の1以上の下流シグナル伝達分子の活性を抑制する。さらに他の実施形態においては、本発明のアゴニスト性ヒト化抗体は、FcγRIIBのリン酸化またはSHIP動員を増大する。本発明のさらなる実施形態では、アゴニスト性ヒト化抗体はB細胞受容体介在シグナル伝達経路におけるMAPキナーゼ活性またはAkt動員を抑制する。他の実施形態では、本発明のアゴニスト性ヒト化抗体は、FcεRIシグナル伝達のFcγRIIB介在抑制にアゴニスト作用を示す。特定の実施形態においては、上記ヒト化抗体はFcεRIが誘導する肥満細胞活性化、カルシウム動員、脱顆粒、サイトカイン産生、またはセロトニン放出を抑制する。他の実施形態においては、本発明のアゴニスト性ヒト化抗体は、FcγRIIBのリン酸化を刺激し、SHIPの動員を刺激し、SHIPのリン酸化およびShcとのその会合を刺激し、またはMAPキナーゼファミリーメンバー(例えば、Erk1、Erk2、JNK、p38など)の活性化を抑制する。さらに他の実施形態においては、本発明のアゴニスト性ヒト化抗体はp62dokのチロシンリン酸化ならびにSHIPおよびrasGAPとのその会合を増大する。他の実施形態においては、本発明のアゴニスト性ヒト化抗体は単球またはマクロファージのFcγR介在食作用を抑制する。
別の実施形態においては、本発明のヒト化抗体またはそのフラグメントは、FcγRIIBの少なくとも1つの活性にアンタゴニスト作用を示す。一実施形態においては、上記活性はB細胞受容体介在シグナル伝達の活性化である。特定の実施形態においては、本発明のアンタゴニスト性ヒト化抗体は、B細胞活性、B細胞増殖、抗体産生、細胞内カルシウム流入、またはFcγRIIBシグナル伝達経路における1以上の下流シグナル伝達分子の活性を増大する。さらに他の特定の実施形態においては、本発明のアンタゴニスト性ヒト化抗体はFcγRIIBのリン酸化またはSHIP動員を減少させる。本発明のさらなる実施形態においては、アンタゴニスト性ヒト化抗体はB細胞受容体介在シグナル伝達経路におけるMAPキナーゼ活性またはAkt動員を増大する。他の実施形態においては、本発明のアンタゴニスト性ヒト化抗体はFcεRIシグナル伝達のFcγRIIB介在抑制にアンタゴニスト作用を示す。特定の実施形態においては、本発明のアンタゴニスト性ヒト化抗体はFcεRIが誘導する肥満細胞活性化、カルシウム動員、脱顆粒、サイトカイン産生、またはセロトニン放出を増大する。他の実施形態においては、本発明のアンタゴニスト性ヒト化抗体はFcγRIIBのリン酸化を抑制し、SHIP動員を抑制し、SHIPリン酸化およびShcとのその会合を抑制し、MAPキナーゼファミリーメンバー(例えば、Erk1、Erk2、JNK、p38など)の活性化を増大する。さらに他の実施形態においては、本発明のアンタゴニスト性ヒト化抗体はp62dokのチロシンリン酸化ならびにSHIPおよびrasGAPとのその会合を抑制する。他の実施形態においては、本発明のアンタゴニスト性ヒト化抗体は単球またはマクロファージのFcγR介在食作用を増大する。他の実施形態においては、本発明のアンタゴニスト性ヒト化抗体は脾臓マクロファージによるオプソニン化粒子のクリアランス、食作用を防止する。
本発明の抗体には、限定するものではないが、モノクローナル抗体、合成抗体、組換えで作られた抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ラクダ化抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、細胞内発現抗体、および上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれる。特に、本発明の方法に使用される抗体には、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、免疫グロブリン分子がFcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子が含まれる。抗体類似体にはまた、FcγRIIB特異的T細胞受容体、例えばキメラT細胞受容体(例えば、米国特許出願公開第2004/0043401号を参照)、一本鎖抗体に連結された一本鎖T細胞受容体(例えば、米国特許第6,534,633号を参照)、およびタンパク質スカフォールド(例えば、米国特許第6,818,418号を参照)が含まれる。ある特定の実施形態においては、本発明の抗体類似体はモノクローナル抗体でない。
本発明の方法に使用されるヒト化抗体は、鳥類および哺乳類(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリ)を含むいずれの動物起源に由来するものであってもよい。好ましくは、抗体はヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である。本明細書で使用する「ヒト」抗体には、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体が含まれ、そしてヒト免疫グロブリンライブラリーもしくは合成ヒト免疫グロブリンコード配列のライブラリーから、またはヒト遺伝子から抗体を発現するマウスから単離された抗体が含まれる。
本発明の方法に使用されるヒト化抗体は単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはさらに多重特異性でありうる。多重特異性抗体は、FcγRIIBの様々なエピトープと免疫特異的に結合してもよいし、またはFcγRIIBのエピトープならびに異種エピトープ(例えば異種ポリペプチドもしくは固相支持材料)の両方と免疫特異的に結合してもよい。例えば、国際公開WO 93/17715、WO 92/08802、WO 91/00360、およびWO 92/05793;Tutt,ら、1991, J. Immunol. 147:60-69;米国特許第4,474,893号、第4,714,681,号、第4,925,6480号、第5,573,920号、および第5,601,819号;およびKostelnyら、1992, J. Immunol. 148:1547-1553;Todorovskaら、2001, Journal of Immunological Methods、248:47-66を参照されたい。特定の実施形態においては、本発明のヒト化抗体は多重特異性であって、かかる抗体はFcγRIIBに対する特異性、および癌抗原に対するまたは、例えば特定の疾患もしくは障害を治療もしくは予防する上で死滅されるように設計された、細胞(例えば、T細胞もしくはB細胞などの免疫細胞)に特異的な他のいずれかの細胞表面マーカーに対する特異性、あるいは他のFc受容体(例えば、FcγRIIIA、FcγRIIIBなど)に対する特異性を備える。
特定の実施形態においては、本発明の方法に使用される抗体は、ATCC受託番号PTA-4591、PTA-4592、PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960およびPTA-5959を有するそれぞれクローン2B6、3H7、1D5、2El、2H9、2D11もしくは1F2により産生される抗体または該抗体の抗原結合フラグメント(例えば、1以上の相補性決定領域(CDR)、例えば重鎖CDR3を含み、好ましくは6つ全てのCDRを含む)である。別の実施形態では、本発明の方法で用いる抗体は、ATCC受託番号PTA-4591、PTA-4592、PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960およびPTA-5959を有するそれぞれクローン2B6、3H7、1D5、2El、2H9、2D11もしくは1F2により産生されるマウスモノクローナル抗体と同じエピトープに結合し、かつ/または、ELISAアッセイもしくは他の適当な競合イムノアッセイにより測定して、ATCC受託番号PTA-4591、PTA-4592、PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960およびPTA-5959を有するそれぞれクローン2B6、3H7、1D5、2El、2H9、2D11もしくは1F2により産生されるマウスモノクローナル抗体と競合し、そしてまた、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと結合する。
本発明の方法に使用されるヒト化抗体には、改変された、すなわち任意のタイプの分子と抗体との共有結合により改変された、誘導体が含まれる。例えば、限定するものではないが、抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質との結合などにより改変されている抗体が含まれる。多数の化学的修飾のいずれかを公知技法により実施することができ、それらの技法には、限定するものではないが、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などが含まれる。さらに、誘導体は1以上の非古典的アミノ酸を含有することができる。
ヒトにおけるヒト化抗体のin vivo用途およびin vitro検出アッセイを含むいくつかの用途では、ヒト、キメラまたはヒト化抗体を使用することが好ましい。完全なヒト抗体がヒト被験者の治療処置には特に所望される。ヒト抗体は当技術分野で知られる様々な方法により作ることができ、それには、ヒト免疫グロブリン配列から誘導された抗体ライブラリーを用いる上記のファージディスプレイ法が含まれる。また米国特許第4,444,887号および第4,716,111号;および国際公開WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、およびWO 91/10741も参照されたい;これらはそれぞれ本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
ヒト抗体はまた、機能的内因性免疫グロブリンを発現できないがヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて生産することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体を無作為にまたは相同組換えによりマウス胚性幹細胞中に導入することができる。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域を、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子に加えて、マウス胚性幹細胞中に導入することができる。マウス重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同的組換えによりヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することにより、別々にまたは同時に非機能性にすることができる。特にJH領域のホモ接合性欠失は内因性抗体の産生を阻止する。改変された胚性幹細胞を増殖させ、胚盤胞中にマイクロインジェクションしてキメラマウスを作出する。次いでキメラマウスを繁殖させて、ヒト抗体を発現するホモ接合性子孫を作る。通常の手法によりトランスジェニックマウスを選択した抗原(例えば本発明のポリペプチドの全部または一部)により免疫感作する。抗原に対するモノクローナル抗体は免疫化トランスジェニックマウスから通常のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリントランスジーンはB細胞分化中に再配列し、次いでクラススイッチングおよび体細胞突然変異を受ける。従って、このような技術を用いると、治療上有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を生産することが可能である。このヒト抗体を生産する技法の概要については、LonbergおよびHuszar(1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93、これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生産する技法ならびにこのような抗体を生産させるプロトコルの詳細な考察については、例えば、国際公開WO 98/24893、WO 96/34096、およびWO 96/33735;および米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、および第5,939,598号を参照されたい。これらの特許は参照により本明細書にその全文が組み入れられる。さらに、Abgenix社(Freemont、CA)やMedarex社(Princeton、NJ)などの会社は、上述した技法と同様の技法を用いて、選択した抗原に対するヒト抗体の供給を請け負うことができる。
キメラ抗体は、その抗体の様々な部分が異なる免疫グロブリン分子から誘導された分子であり、例えば、非ヒト抗体由来の可変領域およびヒト免疫グロブリンの定常領域を有する抗体である。キメラ抗体を作製する方法は当技術分野で公知である。例えば、Morrison, 1985, Science 229:1202;Oiら, 1986, BioTechniques 4:214;Gilliesら, 1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;および米国特許第6,311,415号、第5,807,715号、第4,816,567号、および第4,816,397号を参照のこと(これらは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。非ヒト種からの1以上のCDRおよびヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を含むキメラ抗体は、当技術分野で公知の様々な技術を用いて作製でき、それらの技術には、例えばCDR-グラフト化(EP 239,400;国際公開WO 91/09967;および米国特許第5,225,539号、第5,530,101号および第5,585,089号)、ベニアリング(veneering)または露出表面残基のヒト化(resurfacing)(EP 592,106;EP519,596;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498;Studnickaら, 1994, Protein Engineering 7:805;およびRoguskaら, 1994, PNAS 91:969)、およびチェーンシャフリング(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号)が含まれる。上記の参考文献は、本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
さらに、本発明の抗体は、当業者に周知の技術を利用して抗イディオタイプ抗体を作製するために利用することができる(例えば、Greenspan & Bona, 1989, FASEB J. 7: 437-444;およびNissinoff, 1991, J. Immunol. 147:2429-2438を参照)。本発明は、本発明の抗体またはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの使用を採用する方法を提供する。
本発明は、ラクダ化単一ドメイン抗体を含めて、単一ドメイン抗体を包含する(例えば、Muyldermansら, 2001, Trends Biochem. Sci. 26:230;Nuttallら, 2000, Cur. Pharm. Biotech. 1:253;ReichmannおよびMuyldermans, 1999, J. Immunol. Meth. 231:25;国際公開第WO 94/04678号および第WO 94/25591号;米国特許第6,005,079号を参照、これらは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。一実施形態においては、本発明は単一ドメイン抗体を形成するような改変を伴う2つのVHドメインを含む単一ドメイン抗体を提供する。
本発明の方法はまた、半減期(例えば、血清半減期)が哺乳動物(好ましくはヒト)において15日より長い、好ましくは20日より長い、25日より長い、30日より長い、35日より長い、40日より長い、45日より長い、2ヶ月より長い、3ヶ月より長い、4ヶ月より長い、または5ヶ月より長いヒト化抗体またはそのフラグメントの使用も包含する。哺乳動物(好ましくはヒト)における本発明の抗体またはそのフラグメントのより長い半減期は、哺乳動物における上記抗体または抗体フラグメントのより高い血清抗体価をもたらし、従って、上記抗体または抗体フラグメントの投与回数を減らし、かつ/または投与すべき上記抗体または抗体フラグメントの濃度を低下させる。in vivo半減期の増加した抗体またはそのフラグメントは、当業者に公知の技術により作製することができる。例えば、in vivo半減期の増加した抗体またはそのフラグメントは、FcドメインとFcRn受容体の間の相互作用に関わることが同定されているアミノ酸残基を改変する(例えば、置換、欠失または付加する)ことにより作製することができる。本発明のヒト化抗体は、Wardら(米国特許第6,277,375 B1号を参照)に記載された生物学的半減期を増加する方法により操作しうる。例えば、本発明のヒト化抗体は、in vivoまたは血清半減期が増加するように、Fc-ヒンジドメインにおいて操作することができる。
in vivo半減期の増加した抗体またはそのフラグメントは、抗体または抗体フラグメントに、高分子量ポリエチレングリコール(PEG)のようなポリマー分子を結合させることにより作製することができる。PEGは上記抗体または抗体フラグメントに、多機能性リンカーを用いてまたは用いないで、PEGと上記抗体または抗体フラグメントのN-またはC-末端との部位特異的コンジュゲーションにより、またはリシン残基上のε-アミノ基を介して、結合させることができる。生物学的活性の最小限の低下をもたらす直鎖または分枝鎖ポリマー誘導体化が使用されるだろう。コンジュゲーションの程度をSDS-PAGEおよび質量分析により厳重にモニターして、PEG分子と抗体の適正なコンジュゲーションを確実にする。未反応PEGは抗体-PEGコンジュゲートから、例えばサイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーにより、分離することができる。
本発明のヒト化抗体はまた、実質的に免疫原性応答を伴うことなく哺乳動物循環系中に注入できる組成物を得るために、Davisら(米国特許第4,179,337号を参照)に記載される方法およびカップリング剤により改変することができる。
本発明はまた、フレームワークまたはCDR領域に突然変異(例えば、1以上のアミノ酸置換)をもつ本発明の抗体のいずれかのアミノ酸配列を含む抗体または抗体フラグメントの使用も包含する。好ましくは、これらのヒト化抗体の突然変異は、それらが免疫特異的に結合するCD32Bに対する抗体の結合力および/または親和性を維持するかまたは増大させる。当業者に公知の標準技法(例えば、イムノアッセイ)を用いて、特定の抗原に対する抗体の親和性をアッセイすることができる。
本発明は、本発明のヒト化抗体のフレームワーク残基の改変を包含する。フレームワーク領域中のフレームワーク残基をCDRドナー抗体からの対応する残基で置換することにより、抗原結合性を改変する(好ましくは改善する)ことができる。これらのフレームワーク置換は当技術分野で周知の方法により確認され、例えば、抗原結合にとって重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRとフレームワーク残基との相互作用のモデリング、ならびに特定位置の特異なフレームワーク残基を同定するための配列比較により確認される。(例えば、米国特許第5,585,089号;およびRiechmannら, 1988, Nature 332:323を参照のこと、これらの文献は本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。
本発明は、1以上のFcγRに対する抗体の結合親和性を改変する、好ましくはFc領域の、改変を含んでなるヒト化抗体を包含する。1以上のFcγRに対する結合が改変された抗体に改変する方法は、当技術分野で公知であり、例えばPCT公開WO 04/029207、WO 04/029092、WO 04/028564、WO 99/58572、WO 99/51642、WO 98/23289、WO 89/07142、WO 88/07089、ならびに米国特許第5,843,597号および第5,642,821号を参照されたい;これらは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。本発明は、参照によりその全てが本明細書に組み入れられる米国特許出願第60/439,498号および同第60/456,041号(それぞれ2003年1月9日および2003年3月19日出願)に記載された突然変異のいずれかを包含する。いくつかの実施形態においては、本発明は、活性化FcγR(例えばFcγRIIIA)に対して改変された親和性を有する抗体を包含する。好ましくは、かかる改変はまた、改変されたFc介在エフェクター機能を有する。Fc介在エフェクター機能に影響を与える改変は当技術分野で公知である(本明細書に参照によりその全てが組み入れられる米国特許第6,194,551号を参照のこと)。本発明の方法に従って改変され得るアミノ酸としては、限定するものではないが、プロリン329、プロリン331、およびリシン322が挙げられる。プロリン329、プロリン331およびリシン322はアラニンと置換することが好ましいが、いずれか他のアミノ酸による置換も考えられる。国際公開WO 00/42072および米国特許第6,194,551号を参照されたい;これらは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
ある特定の実施形態においては、Fc領域の改変はFc領域に1以上の突然変異を含む。Fc領域の1以上の突然変異は、抗体介在性エフェクター機能の改変、他のFc受容体(例えば、Fc活性化受容体)との結合の改変、ADCC活性の改変、またはC1q結合活性の改変、または補体依存性細胞傷害活性の改変、食作用活性の改変、またはそれらのいずれかの組合せを伴う抗体をもたらす。
本発明はまた、オリゴ糖含量が改変されている抗体を提供する。本明細書に使用されるオリゴ糖は、2以上の単糖類を含有する糖鎖を意味し、本明細書においてこれらの2つの用語は互換的に使用することができる。本発明の糖鎖部分は、当技術分野で一般的に使用される命名法で記載される。糖鎖化学の総説については、例えば、Hubbardら, 1981 Ann. Rev. Biochem., 50:555-583を参照されたい;これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。この命名法では、例えば、Manはマンノースを表し;GlcNacは2-N-アセチルグルコサミンを表し;Galはガラクトースを表し;Fucはフコースを表し、そしてGlcはグルコースを表す。シアル酸は短縮記号により記載され、NeuNAcは5-N-アセチルノイラミン酸、そしてNeuNGcは5-グリコールノイラミン酸を表す。
一般的に、抗体は糖鎖成分を重鎖定常領域の保存された位置に含有し、ヒトIgGの最大30%はグリコシル化Fab領域を有する。IgGはCH2ドメインに存在するAsn297に単一のN結合バイアンテナ型糖鎖(biantennary carbohydrate)構造を有する(Jefferisら, 1998, Immunol. Rev. 163:59-76;Wrightら, 1997, Trends Biotech 15:26-32)。ヒトIgGは典型的には次の構造の糖鎖を有する:GlcNAc(フコース)-GlcNAc-Man-(ManGlcNAc)2。しかし、IgG間で糖鎖含量の変動が起こり、これが機能の変化をもたらす。例えば、Jassalら, 2001 Bichem. Biophys. Res. Commun. 288:243-9;Groeninkら, 1996 J. Immunol. 26:1404-7;Boydら, 1995 Mol. Immunol. 32:1311-8;Kumpelら, 1994, Human Antibody Hybridomas, 5: 143-51を参照されたい。本発明は、Asn297に結合した糖鎖成分に変化のあるヒト化抗体を包含する。一実施形態においては、その糖鎖成分はガラクトースおよび/またはガラクトース-シアル酸を一方または両方の末端GlcNAcおよび/または第3のGlcNacアーム(GlcNacを二分する)に有する。
いくつかの実施形態においては、本発明のヒト化抗体は1以上の選択された糖基、例えば1以上のシアル酸残基、1以上のガラクトース残基、1以上のフコース残基を実質的に含まない。1以上の選択された糖基を実質的に含まない抗体は、当業者に公知の通常の方法を用いて作製することができ、例えば、所定の糖基を抗体の糖鎖成分に付加する能力を欠く宿主細胞中で本発明の抗体を組換えにより産生させ、それにより組成物中の抗体の約90〜100%が糖鎖成分に結合された所定の糖基を欠くようにする。かかる抗体を調製するための代替方法は、例えば、1以上の所定の糖基の付加を防止するかまたは低下させる条件のもとで細胞を培養するか、または1以上の所定の糖基を翻訳後除去することを含む。
特定の実施形態においては、本発明は、組成物中の抗体の約80〜100%がその糖鎖成分上にフコースを欠いている、実質的に均一な抗体調製物を製造する方法を包含する。該抗体は、例えば、(a)フコース代謝に欠陥があり、発現されたタンパク質をフコシル化する能力の低下した、遺伝子操作宿主細胞を使用し;(b)フコシル化を防止または低減する条件のもとで該細胞を培養し;(c)例えばフコシダーゼ酵素を用いて、フコースを翻訳後除去する;または(d)フコシル化されていない産物を選択するように抗体を精製する、ことにより製造することができる。最も好ましくは、所望の抗体をコードする核酸を、そこに発現された抗体をフコシル化する能力の低下した宿主細胞において発現させる。好ましい宿主細胞は、Lec13 CHO細胞(レクチン耐性CHO突然変異細胞株;米国特許出願第2003/0115614号;PCT公開WO 00/61739; 欧州特許出願EP 1 229 125; Ribka & Stanley, 1986, Somatic Cell & Molec. Gen. 12(1):51-62;Ripkaら, 1986 Arch. Biochem. Biophys. 249(2):533-45)、CHO-K1細胞、DUX-B11細胞、CHO-DP12細胞、またはCHO-DG44細胞であり、これらは抗体を実質的にフコシル化しないように改変されている。かくして、細胞は、酵素が細胞中で低減した活性および/または低下した発現レベルを有するように、フコシルトランスフェラーゼ酵素の、またはフコースをN結合オリゴ糖へ付加するのに関わる他の酵素もしくは基質の、改変された発現および/または活性を示しうる。フコース含量の変化した抗体を製造する方法については、例えば、WO 03/035835およびShieldsら, 2002, J. Biol. Chem. 277 (30):26733-40を参照のこと;両方とも本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
いくつかの実施形態においては、改変された糖鎖修飾は、1以上の次のことをモジュレートする:抗体の可溶化、抗体の細胞下輸送および分泌の促進、抗体アセンブリーの促進、コンフォメーションの完全性、および抗体介在性エフェクター機能。特定の実施形態においては、改変された糖鎖修飾は、糖鎖修飾を欠く抗体と比較して、抗体介在性エフェクター機能を高める。抗体介在性エフェクター機能の変化をもたらす糖鎖修飾は当技術分野で周知である(例えば、Shields R. L.ら, 2001, J. Biol. CHEM. 277(30):26733-40;Davies J.ら, 2001, Biotechnology & Bioengineering, 74(4):288-294を参照)。他の特定の実施形態においては、改変された糖鎖修飾は本発明の抗体とFcγRIIB受容体との結合を増大する。本発明の方法による糖鎖修飾の改変には、例えば、抗体の糖鎖含量の増加または抗体の糖鎖含量の減少が含まれる。糖鎖含量を改変する方法は当業者に公知であり、例えば、Wallickら, 1988, Journal of Exp. Med. 168(3):1099-1109;Taoら, 1989 Journal of Immunology, 143(8):2595-2601;Routledgeら, 1995 Transplantation, 60(8):847-53 ;Elliottら 2003; Nature Biotechnology, 21:414-21;Shieldsら 2002 Journal of Biological Chemistry, 277(30):26733-40を参照のこと;これらは全て本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
いくつかの実施形態においては、本発明は、1以上のグリコシル化部位を含む抗体を包含し、1以上の糖鎖成分は抗体と共有結合している。他の実施形態においては、本発明は1以上のグリコシル化部位および1以上の修飾をFc領域に含むヒト化抗体を包含し、かかる抗体は先に開示され、また当業者に公知である。好ましい実施形態では、Fc領域の1以上の修飾は、野生型Fc領域を含む抗体と比較して、活性化性FcγR(例えば、FcγRIIIA)に対する抗体の親和性を高める。Fc領域に1以上のグリコシル化部位および/または1以上の修飾をもつ本発明のヒト化抗体は増大した抗体介在性エフェクター機能、例えば増大したADCC活性を有する。いくつかの実施形態では、本発明はさらに、抗体の糖鎖成分と直接的にまたは間接的に相互作用することがわかっているアミノ酸の1以上の修飾を含むヒト化抗体を包含し、それらのアミノ酸は、限定するものではないが、位置241、243、244、245、245、249、256、258、260、262、264、265、296、299、および301のアミノ酸を含む。抗体の糖鎖成分と直接的にまたは間接的に相互作用するアミノ酸は当技術分野で公知であり、例えば、Jefferisら, 1995 Immunology Letters, 44:111-7を参照されたい;これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
本発明は、1以上のグリコシル化部位を抗体の1以上の部位に導入することにより、好ましくは抗体の機能性(例えば、FcγRIIBとの結合活性)を変化させることなく、改変されている抗体を包含する。グリコシル化部位を本発明の抗体の可変領域および/または定常領域に導入することができる。本明細書に使用される「グリコシル化部位」には、オリゴ糖(すなわち、互いに連結された2以上の単糖を含有する糖鎖)が特異的に共有結合する、抗体中のいずれか特定のアミノ酸配列が含まれる。オリゴ糖側鎖は典型的には抗体主鎖とNまたはO結合のいずれかにより連結される。N結合グリコシル化はオリゴ糖成分がアスパラギン残基の側鎖と結合していることを意味する。O結合グリコシル化はオリゴ糖成分がヒドロキシアミノ酸、例えばセリン、トレオニンと結合していることを意味する。本発明の抗体は、N結合およびO結合グリコシル化部位を含めて、1以上のグリコシル化部位を含みうる。当技術分野で公知のN結合またはO結合グリコシル化のためのいずれのグリコシル化部位も本発明に従って利用できる。本発明の方法に従って有用なN結合グリコシル化部位の例は、アミノ酸配列:Asn-X-Thr/Ser(ここで、Xは任意のアミノ酸であり、Thr/Serはトレオニンまたはセリンを示す)である。このような部位は、本発明が関わる技術分野で周知の方法を用いて、本発明の抗体に導入することができる。例えば、"In Vitro Mutagenesis" Recombinant DNA: A Short Course, J. D. Watsonら, W.H. Freeman and Company, New York, 1983, chapter 8, pp.106-116を参照されたい;これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。本発明の抗体にグリコシル化部位を導入するための代表的な方法は、所望のAsn-X-Thr/Ser配列が得られるように抗体のアミノ酸配列を改変するか、または突然変異させることを含む。
いくつかの特定の実施形態において、本発明は、CDR2領域のNグリコシル化共通部位Asn50-Val-Serが改変されて50位のグリコシル化が排除されている改変型のヒト化FcγRIIB抗体を包含する。特定の作用機序によって拘束されるものではないが、グリコシル化部位の除去は抗体産生の起こりうる変動ならびに医薬用途において予想される免疫原性を制限しうる。特定の実施形態では、本発明は50位のアミノ酸が改変されている(例えば欠失または置換されている)ヒト化FcγRIIB抗体を包含する。別の特定の実施形態では、本発明はさらに、51位のアミノ酸の改変(例えば欠失または置換)を包含する。ある特定の実施形態において、本発明は、50位のアミノ酸がチロシンで置換されているヒト化FcγRIIB抗体を包含する。別のさらに特定した実施形態では、本発明は、50位のアミノ酸がチロシンで置換され、かつ51位のアミノ酸がアラニンで置換されているヒト化FcγRIIB抗体を包含する。
いくつかの実施形態においては、本発明はグリコシル化部位を加えるかまたは欠失することにより本発明の抗体の糖鎖含量を改変する方法を包含する。抗体の糖鎖含量を改変する方法は当技術分野で周知であり、例えば、米国特許第6,218,149号;欧州特許EP 0 359 096 B1;米国特許出願公開US 2002/0028486;WO 03/035835;米国公開US 2003/0115614;米国特許第6,218,149号;米国特許第6,472,511号を参照されたい;これらは全て本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。他の実施形態においては、本発明は、抗体の1以上の内在性糖鎖成分を欠失させることにより本発明の抗体の糖鎖含量を改変する方法を包含する。
本発明はさらに、本明細書に開示したまたは当技術分野で公知の方法を用いて抗体の糖鎖含量を改変することを含む、本発明の抗体のエフェクター機能を改変する方法を包含する。
当業者に公知の標準技法を用いて抗体またはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列に突然変異を導入することができ、上記技術としては、例えばアミノ酸置換をもたらす位置指定突然変異誘発およびPCRを介する突然変異誘発が挙げられる。好ましくは、その誘導体は、もとの抗体またはそのフラグメントに対して、15個未満のアミノ酸置換、10個未満のアミノ酸置換、5個未満のアミノ酸置換、4個未満のアミノ酸置換、3個未満のアミノ酸置換、2個未満のアミノ酸置換を含む。好ましい実施形態においては、該誘導体は1個以上の推定上の非必須アミノ酸残基においてなされた保存的アミノ酸置換を有する。
本発明はまた、ATCC受託番号PTA-4591、PTA-4592、PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960およびPTA-5959を有するそれぞれクローン2B6、3H7、1D5、2El、2H9、2D11もしくは1F2により産生されるマウスモノクローナル抗体の可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列に対して少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列を含むヒト化抗体またはそのフラグメントを包含する。本発明はさらに、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合する抗体またはそのフラグメントであって、ATCC受託番号PTA-4591、PTA-4592、PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有するそれぞれクローン2B6、3H7、1D5、2El、2H9、2D11、または1F2により産生されるマウスモノクローナル抗体の1以上のCDRのアミノ酸配列に対して少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である1以上のCDRのアミノ酸配列を含む上記抗体または抗体フラグメントを包含する。2つのアミノ酸配列の同一性%の決定は、BLASTタンパク質検索を含む当業者に公知のいずれかの方法により決定することができる。
本発明はまた、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合するヒト化抗体または抗体フラグメントの使用を包含し、ここで上記抗体または抗体フラグメントは、ATCC受託番号PTA-4591、PTA-4592、PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有するそれぞれクローン2B6、3H7、1D5、2El、2H9、2D11、または1F2により産生されるマウスモノクローナル抗体のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされる。好ましい実施形態においては、本発明は、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合する抗体または抗体フラグメントであって、ATCC受託番号PTA-4591、PTA-4592、PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有するそれぞれクローン2B6、3H7、1D5、2El、2H9、2D11、または1F2により産生されるマウスモノクローナル抗体の可変軽鎖および/または可変重鎖のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされる可変軽鎖および/または可変重鎖を含んでなる、上記抗体または抗体フラグメントを提供する。他の好ましい実施形態においては、本発明は、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合する抗体または抗体フラグメントであって、ATCC受託番号PTA-4591、PTA-4592、PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有するそれぞれクローン2B6、3H7、1D5、2El、2H9、2D11、または1F2により産生されるマウスモノクローナル抗体の1以上のCDRのヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされる1以上のCDRを含む、上記抗体またはそのフラグメントを提供する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、限定するものではないが、フィルターに結合したDNAとの6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中での約45℃におけるハイブリダイゼーション、続いて0.2xSSC/0.1%SDS中での約50〜65℃における1回以上の洗浄が含まれ、高ストリンジェントな条件としては、例えばフィルターに結合したDNAとの6xSSC中での約45℃におけるハイブリダイゼーション、続いて0.1xSSC/0.2%SDS中での約60℃における1回以上の洗浄が含まれ、他のストリンジェントな条件は当業者に公知である(例えば、本明細書に参照により組み入れられるAusubel, F.M.ら編 1989 Current Protocols in Molecular Biology, vol.1, Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley and Sons, Inc., NY、6.3.1-6.3.6および2.10.3頁を参照)。
5.1.1 抗体コンジュゲート
本発明は、融合タンパク質を作製するために、異種ポリペプチド(すなわち、無関係なポリペプチドまたはその部分、好ましくは少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも100アミノ酸のポリペプチド)と組換えにより融合されたまたは化学的にコンジュゲートされた(共有結合および非共有結合によるコンジュゲーションを含む)抗体を包含する。融合は必ずしも直接的である必要はなく、リンカー配列を介して起こってもよい。ヒト化抗体を特定の細胞表面受容体に特異的な抗体と融合またはコンジュゲートさせることにより、該抗体を、in vitroまたはin vivoで、例えば異種ポリペプチドを特定の細胞型にターゲティングするために用いることができる。異種ポリペプチドと融合されたまたはコンジュゲートされた抗体はまた、当技術分野で公知の方法を用いて、in vitroイムノアッセイおよび精製法に使用することができる。例えば、PCT公開WO 93/2 1232;EP 439,095;Naramuraら, Immunol. Lett., 39:91-99, 1994;米国特許第5,474,981号;Gilliesら, PNAS, 89:1428-1432, 1992;およびFellら, J. Immunol., 146:2446-2452, 1991を参照されたい;これらは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
さらに抗体を治療薬または所与の生物学的応答を改変する薬物成分とコンジュゲートさせることができる。治療薬または薬物成分は古典的な化学療法剤に限定されると考えるべきではない。例えば、薬物成分は所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドでありうる。このようなタンパク質としては、限定するものではないが、毒素、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素(すなわち、PE-40)、またはジフテリア毒素、リシン、ゲロニン(gelonin)、およびヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスタンパク質、腫瘍壊死因子などのタンパク質、α-インターフェロン(IFN-α)、β-インターフェロン(IFN-β)を含むがこれらに限らないインターフェロン、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、アポトーシス剤(例えば、TNF-α、TNF-β、PCT公開WO 97/33899に開示されたAIM I)、AIM II(PCT公開WO 97/34911を参照)、Fasリガンド(Takahashiら, J. Immunol., 6:1567-1574, 1994)、およびVEGI(PCT公開WO 99/23105)、血栓薬または抗血管新生薬(例えば、アンジオスタチンまたはエンドスタチン)、または生物学的応答改変剤、例えばリンホカイン(例えば、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF))、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、または増殖因子(例えば、成長ホルモン(GH);プロテアーゼ、またはリボヌクレアーゼが挙げられる。
ヒト化抗体をペプチドなどのマーカー配列と融合させて精製を容易にすることができる。好ましい実施形態においては、マーカーアミノ酸配列はヘキサ-ヒスチジンペプチドであって、例えば、ほかにもあるが、pQEベクター(QIAGEN, Inc., 9259 Eton Avenue, Chatsworth, CA, 91311)として提供されるタグであり、これらの多くは市販されている。Gentzら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:821-824, 1989に記載の通り、例えば、ヘキサ-ヒスチジンは融合タンパク質の好都合な精製をもたらす。精製に有用な他のペプチドタグとしては、限定するものではないが、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質から誘導されるエピトープに対応するヘマグルチニン「HA」タグ(Wilsonら, Cell, 37: 767 1984)および「flag」タグ(Knappikら, 1994, Biotechniques, 17(4):754-761)が挙げられる。
本発明はさらに、抗体フラグメントと融合されたまたはコンジュゲートされた異種ポリペプチドを含有する組成物の使用を含む。例えば、異種ポリペプチドをFabフラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、F(ab)2フラグメント、またはそれらの部分と融合またはコンジュゲートさせることができる。ポリペプチドを抗体部分と融合またはコンジュゲートさせる方法は当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,336,603号、第5,622,929号、第5,359,046号、第5,349,053号、第5,447,851号、および第5,112,946号;EP 307,434;EP 367,166;国際公開WO 96/04388およびWO 91/06570;Ashkenaziら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535-10539;Zhengら, 1995, J. Immunol. 154:5590-5600;およびVilら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:11337-11341(上記参考文献は参照によりその全てが組み入れられる)を参照されたい。
さらなる融合タンパク質は、遺伝子-シャフリング、モチーフ-シャフリング、エキソン-シャフリング、および/またはコドン-シャフリング(まとめて「DNAシャフリング」と呼ぶ)の技術により作製することができる。DNAシャフリングを用いて本発明の抗体またはそのフラグメントの活性を改変することができる(例えば、さらに高い親和性およびさらに低い解離速度をもつ抗体またはそのフラグメント)。一般的には、米国特許第5,605,793号;第5,811,238号;第5,830,721号;第5,834,252号;および第5,837,458号、ならびにPattenら, 1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33;Harayama, 1998, Trends Biotechnol. 16:76;Hansson,ら, 1999, J. Mol. Biol. 287:265;ならびにLorenzoおよびBlasco, 1998, BioTechniques 24:308を参照されたい(これらの特許および開示は本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。抗体またはそのフラグメント、またはコードされた抗体またはそのフラグメントは、組換えに先立って、エラープローンPCRによるランダム突然変異誘発、ランダムヌクレオチド挿入または他の方法に供することにより、改変することができる。抗体または抗体フラグメントをコードするポリヌクレオチドの1以上の部分(該部分はFcγRIIBと特異的に結合する)を、1以上の異種分子の1以上の成分、モチーフ、セクション、パーツ、ドメイン、フラグメントなどと組み換えることもできる。
本発明はまた、診断薬もしくは治療薬または血清半減期の増加が所望されるいずれか他の分子とコンジュゲートされたヒト化抗体を包含する。ヒト化抗体を診断に用いて、例えば、臨床試験法の一部として疾患、障害または感染の発生または進行をモニターすることにより、例えば所与の治療レジメンの効力を確認することができる。抗体を検出可能な物質とカップリングさせることにより、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、ポジトロン放出金属、および非放射性常磁性金属が挙げられる。検出可能な物質を、直接的に抗体とまたは間接的に中間体(例えば、当技術分野で公知のリンカー)を介して、当技術分野で公知の技術によりカップリングまたはコンジュゲートさせることができる。例えば、本発明に従って診断薬として使用するために抗体とコンジュゲートさせることができる金属イオンについては、米国特許第4,741,900号を参照のこと。かかる診断および検出は、抗体を様々な酵素を含む検出可能な物質とカップリングすることにより実施することができ、それらの酵素としては、限定するものではないが、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼ;補欠分子団複合体、例えば、限定するものではないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチン;蛍光物質、例えば、限定するものではないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリン;発光物質、例えば、限定するものではないが、ルミノール;生物発光物質、例えば、限定するものではないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリン;放射性物質、例えば、限定するものではないが、ビスマス(213Bi)、炭素(14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、ホルミウム(166Ho)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、ランタン(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、プラセオジウム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルテニウム(97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ストロンチウム(85Sr)、イオウ(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Tl)、スズ(113Sn、117Sn)、トリチウム(3H)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb)、イットリウム(90Y)、亜鉛(65Zn);様々なポジトロン放出断層撮影に用いるポジトロン放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。
抗体は、治療成分、例えば細胞毒(例えば、細胞増殖抑制薬または殺細胞薬)、治療薬または放射性元素(例えば、α線-エミッタ、γ線-エミッタなど)とコンジュゲートさせることができる。細胞毒または細胞傷害薬は細胞に有害な薬剤である。例としては、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体または同族体が挙げられる。治療薬としては、限定するものではないが、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロランブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(旧名称ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧名称アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、および抗有糸分裂薬(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。
さらに、ヒト化抗体は、治療成分、例えば放射性物質または大環状キレート剤(放射性金属イオン(上記放射性物質の例を参照)のコンジュゲーションに有用)とコンジュゲートさせることができる。ある特定の実施形態においては、大環状キレート剤は、抗体とリンカー分子を介して結合することができる1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N',N",N"-テトラ酢酸(DOTA)である。このようなリンカー分子は当技術分野では公知であり、Denardoら, 1998, Clin Cancer Res. 4:2483-90;Petersonら, 1999, Bioconjug. Chem. 10:553;およびZimmermanら, 1999, Nucl. Med. Biol. 26: 943-50に記載されていて、それぞれ、参照によりその全てが組み入れられる。
このような治療成分を抗体とコンジュゲートさせる技術は周知であり、例えば、Amonら「癌治療法における薬物の免疫ターゲティング用モノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら(編), 1985, pp.243-56, Alan R. Liss, Inc.;Hellstromら「薬物送達用の抗体(Antibody For Drug Delivery)」, Controlled Drug Delivery (第2版), Robinsonら (編), 1987, pp.623-53, Marcel Dekker, Inc.);Thorpe 「癌治療における細胞傷害薬の抗体担体:総説(Antibody Careeres Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review)」, Monoclonal Angibodies '84 : Biological And Clinical Applications, Pincheraら(編), 1985, pp.475-506);「癌治療における放射性標識抗体の治療用途の分析、結果、ならびに将来予測(Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy)」, Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwinら(編), 1985, pp.303-16, Academic Press;および Thorpeら, Immunol. Rev., 62:119-58, 1982を参照されたい。
抗体またはそのフラグメントは、治療成分をコンジュゲートさせてまたはコンジュゲートさせずに、単独でまたは細胞毒性因子および/またはサイトカインと組み合わせて、治療薬として投与することができる。
あるいはまた、抗体を第2の抗体とコンジュゲートさせて、Segalが米国特許第4,676,980号に記載した抗体へテロコンジュゲートを作製することができる;この特許は本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
抗体はまた固相支持体に結合させることもでき、これはイムノアッセイまたは標的抗原の精製に特に有用である。このような固相支持体としては、限定するものではないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンが挙げられる。
5.2 FcγRIIBヒト化抗体の作製
本発明は、CDRクラフト化重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列を含有するクローニングおよび発現ベクター、該ヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞、ならびに該形質転換宿主細胞における該ヌクレオチド配列を含むCDRクラフト化鎖および抗体分子の産生方法を包含する。特定の実施形態においては、本発明は配列番号17、19、21、23、36または45のヌクレオチド配列のいずれかを含んでなる。
本発明は、FcγRIIAよりも高い親和性でFcγRIIBと結合する抗体をコードするドナーアミノ酸配列、例えば、2002年8月14日出願の米国仮出願第60/403,366号および米国特許出願公開第2004/0185045号(両方ともその全体を参照により本明細書に組み入れる)に開示されるものを包含する。特定の実施形態においては、ドナーアミノ酸配列は、ATCC受託番号PTA-4591、PTA-4592、PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有するそれぞれクローン2B6、3H7、1D5、2El、2H9、2D11、または1F2により産生されるモノクローナル抗体、あるいは2002年8月14日出願の米国仮出願第60/403,366号および米国特許出願公開第2004/0185045号(両方ともその全体を参照により本明細書に組み入れる)に開示されるような本発明の免疫感作法により産生される他のモノクローナル抗体をコードする。本発明はまた、ATCC受託番号PTA-4591、PTA-4592、PTA-5958、PTA-5961、PTA-5962、PTA-5960、およびPTA-5959を有するそれぞれクローン2B6、3H7、1D5、2El、2H9、2D11、または1F2により産生されるモノクローナル抗体、あるいは2002年8月14日出願の米国仮出願第60/403,366号および米国特許出願公開第2004/0185045号に開示されるような本発明の免疫感作法により産生される他のモノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドと様々なストリンジェンシー(例えば、高度のストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、もしくは低度のストリンジェンシー)の条件下でハイブリダイズする、ドナーアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを包含する。ハイブリダイゼーションは各種のストリンジェンシー条件下で行うことができる。例えば、限定するものではないが、低度のストリンジェンシー条件を用いる手順は次の通りである(ShiloおよびWeinberg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78, 6789-6792も参照のこと)。DNAを含有するフィルターを、6時間40℃で、35%ホルムアミド、5X SSC、50mM Tris-HCl(pH7.5)、5mM EDTA、0.1% PVP、0.1% Ficoll、1% BSA、および500μg/ml変性サケ精子DNAを含有する溶液中で前処理する。ハイブリダイゼーションは同じ溶液中で行うが、次のように変更する:0.02% PVP、0.02% Ficoll、0.2% BSA、100μg/mlサケ精子DNA、10%(wt/vol)硫酸デキストラン、および5〜20 X 106cpm 32P-標識プローブの使用。フィルターをハイブリダイゼーション混合物中で18〜20時間40℃にてインキュベートし、次いで1.5時間55℃にて2X SSC、25mM Tris-HCl(pH 7.4)、5mM EDTA、および0.1%SDSを含有する溶液中で洗浄する。洗浄液を新鮮な溶液と取り替え、さらに1.5時間60℃にてインキュベートする。フィルターをブロットして乾燥し、オートラジオグラフィーのために露光する。必要であれば、フィルターを65〜68℃で3回目の洗浄をして、フィルムに再露光する。使用しうる低度のストリンジェンシーの他の条件は当技術分野で周知である(例えば、交差種ハイブリダイゼーションに使用されるもの)。例示であって限定するものでないが、高度のストリンジェンシー条件を用いる手順は次の通りである。DNAを含有するフィルターのプレハイブリダイゼーションを8時間から一夜、65℃で、6X SSC、50mM Tris-HCL(pH7.5)、1mM EDTA、0.02% PVP、0.02% Ficoll、0.02% BSA、および500μg/ml変性サケ精子DNAから成るバッファー中で実施する。フィルターを48時間、65℃で、100μg/ml変性サケ精子DNAおよび5〜20 X 106cpmの32P標識プローブを含有するプレハイブリダイゼーション混合物中でハイブリダイズさせる。フィルターの洗浄を37℃で1時間、2X SSC、0.01% PVP、0.01% Ficoll、および0.01% BSAを含有する溶液中で実施する。次いで、50℃で45分間、0.1X SSC中で洗浄した後、オートラジオグラフィーにかける。使用しうる高度のストリンジェンシーの他の条件は当技術分野で周知である。このようなストリンジェンシーの適当な条件の選択は当技術分野で周知である(例えば、Sambrookら, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkを参照;またAusubelら編, Current Protocols in Molecular Biology series of laboratory technique manuals, (著作権)1987-1997, Current Protocols, (著作権)1994-1997 John Wiley and Sons, Inc.も参照;特に、Dyson, 1991, 「核酸の固定とハイブリダイゼーション分析(Immobilization of nucleic acids and hybridization analysis)」 Essential Molecular Biology : A Practical Approach, Vol. 2, T. A. Brown編, pp.111-156, IRL Press at Oxford University Press, Oxford, UKを参照)。ポリヌクレオチドは当技術分野で公知のいずれかの方法により得ることができるし、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は当技術分野で公知のいずれかの方法により決定することができる。
アクセプターアミノ酸配列をコードするDNA配列は当業者に公知の方法で得ることができる。例えば、好ましいヒトアクセプターフレームワーク配列をコードするDNA配列には、限定するものではないが、ヒト生殖系VHセグメントのVH1-8およびJH6と、ヒト生殖系VLセグメントのVK-A26およびJK4が含まれる。
特定の実施形態においては、1以上のCDRを、ルーチンの組換えDNA技術を用いてフレームワーク領域内に挿入する。フレームワーク領域は天然のまたは共通のフレームワーク領域であってよく、そして好ましくはヒトフレームワーク領域である(ヒトフレームワーク領域のリストについては、例えば、Chothiaら, 1998, J. Mol. Biol. 278:457-479を参照)。好ましくは、フレームワーク領域とCDRの組み合わせにより作製されるポリヌクレオチドは、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、先に述べたように、1以上のアミノ酸置換がフレームワーク領域内になされ、そして好ましくは、そのアミノ酸置換が本発明の抗体のFcγRIIBとの結合を改善する。
他の実施形態においては、当技術分野で利用しうるヒトライブラリーまたはいずれか他のライブラリーを当技術分野で公知の標準技術によりスクリーニングして、本発明の抗体をコードする核酸をクローニングすることができる。
本発明のヒト化抗体は、ポリペプチド製造に有用な当技術分野で公知の方法、例えばin vitro合成、組換えDNA生産などにより製造することができる。好ましくは、ヒト化抗体は組換えDNA技術により製造される。本発明のヒト化FcγRIIB特異的抗体は、組換え免疫グロブリン発現技術を用いて製造しうる。ヒト化抗体を含めて、免疫グロブリン分子の組換え生産は、米国特許第4,816,397号 (Bossら)、米国特許第6,331,415号および同第4,816,567号 (両方とも Cabillyら)、英国特許第GB 2,188,638号 (Winterら)、ならびに英国特許第GB 2,209,757号に記載されている; これら全てを参照により本明細書に組み入れるものとする。ヒト化免疫グロブリンを含む免疫グロブリンの組換え発現技術は、Goeddelら, Gene Expression Technology Methods in Enzymology Vol. 185 Academic Press (1991)、およびBorreback, Antibody Engineering, W.H. Freeman (1992)にも見出すことができる。組換え抗体の作製、設計および発現に関するさらなる情報は、Mayforth, Designing Antibodies, Academic Press, San Diego (1993)に載っている。
本発明の組換えヒト化抗体の代表的な製造方法は次のステップを含みうる:a)抗体重鎖(ここで、ドナー抗体の結合特異性を保持するために必要とされるCDRと可変領域フレームワークの最小部分はマウスFcγRIIBモノクローナル抗体のような非ヒト免疫グロブリンに由来し、抗体の残りの部分はヒト免疫グロブリンに由来する)をコードするオペロンを含む発現ベクターを慣用の分子生物学的手法により構築して、ヒト化抗体重鎖発現用のベクターを作製するステップ;b)抗体軽鎖(ここで、ドナー抗体の結合特異性を保持するために必要とされるCDRと可変領域フレームワークの最小部分はマウスFcγRIIBモノクローナル抗体のような非ヒト免疫グロブリンに由来し、抗体の残りの部分はヒト免疫グロブリンに由来する)をコードするオペロンを含む発現ベクターを慣用の分子生物学的手法により構築して、ヒト化抗体軽鎖発現用のベクターを作製するステップ;c)これらの発現ベクターを慣用の分子生物学的手法により宿主細胞に導入して、ヒト化抗FcγRIIB抗体を発現させるためのトランスフェクト宿主細胞を作製するステップ;およびd)ヒト化抗FcγRIIB抗体を産生するように該トランスフェクト細胞を慣用の細胞培養法で培養するステップ。宿主細胞は2つの本発明の発現ベクター(第1のベクターは重鎖由来のポリペプチドをコードするオペロンを含有し、第2のベクターは軽鎖由来のポリペプチドをコードするオペロンを含有する)を用いて同時にトランスフェクトすることができる。2つのベクターは異なる選択マーカーを含んでいてもよいが、重鎖および軽鎖のコード配列を除いて、同一とすることが好ましい。この手法は重鎖および軽鎖ポリペプチドの同等な発現をもたらす。これとは別に、重鎖および軽鎖の両ポリペプチドをコードする単一のベクターを使用してもよい。重鎖および軽鎖のコード配列はcDNAもしくはゲノムDNAまたはその両方でありうる。本発明の組換え抗体を発現させるために利用する宿主細胞は、細菌細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)、または好ましくは、真核生物細胞とすることができる。好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣細胞またはHEK-293細胞のような哺乳動物細胞を用いる。発現ベクターの選択は宿主細胞の選択に左右され、所定の宿主細胞内で所望の発現・調節特性を示すように選択される。使用できる他の細胞株としては、CHO-K1、NSO、およびPER.C6 (Crucell, Leiden, Netherlands)が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態においては、ヒト化FcγRIIB 2B6抗体の製造方法は次のステップを含んでなる:2B6のハイブリドーマ細胞由来のRNAをcDNAに変換し、VHおよびVLセグメントを、例えばRLM-RACEキット(Ambion, Inc.)を使って、PCR増幅する。VHに対する遺伝子特異的プライマーを使用する。VHのこのようなプライマーの例として次のものがある:SJ15R、配列番号47 (5' GGT CAC TGT CAC TGG CTC AGG G 3') およびSJ16R、配列番号48 (5' AGG CGG ATC CAG GGG CCA GTG GAT AGA C 3')。VLのこのようなプライマーの例として次のものがある:SJ17R、配列番号49 (5' GCA CAC GAC TGA GGC ACC TCC AGA TG 3') およびSJ18R、配列番号50 (5' CGG CGG ATC CGA TGG ATA CAG TTG GTG CAG CAT C 3')。RACE産物は、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen, Inc.)を用いてプラスミド、例えばpCR2.1-TOPOに挿入する。次に、得られたプラスミドをDNA配列解析にかけて2B6のVHおよびVL配列を決定する。こうして得られた配列を翻訳して、推定上のアミノ酸配列をそれぞれについて決定する。これらの配列から、Kabatにより定義されるとおりにフレームワーク領域(FR)と相補性決定領域(CDR)を同定する。次に、マウスVHをヒトCγ定常領域およびIgリーダー配列に接合させ、哺乳動物発現用のpCI-neoに挿入する。マウスVLをヒトCκセグメントおよびIgリーダー配列に接合させ、これも哺乳動物発現用のpCI-neoにクローニングする。ヒト化2B6 VHはヒト生殖系VHセグメントVH1-18およびJH6由来のFRセグメントと、2B6 VHのCDR領域からなる。ヒト化2B6 VLはヒト生殖系VLセグメントVK-A26およびJK4由来のFRセグメントと、2B6 VLのCDR領域からなる。組み合わせてPCR増幅したオリゴヌクレオチドからヒト化VHおよびVLセグメントを組み立てる。その後、得られたフラグメントを、発現ベクターpCI-neoにクローニングしたリーダー配列および適切な定常領域とPCRで合体させる。得られたプラスミドのDNA配列を配列解析により確認する。この手順の後、予想されたヒト化2B6 VL配列を有する軽鎖セグメントを同定する。代表的なプラスミドであるpMGx608(ヒト化2B6重鎖を含む)およびpMGx611(CDR2中にN50→YおよびV51→Aを有するヒト化2B6軽鎖を含む)は、それぞれATCC受託番号PTA-5963およびPTA-5964を有し、ブダペスト条約に基づいてAmerican Type Culture Collection(10801 University Blvd., Manassas, VA. 20110-2209)に2004年5月7日に寄託されており、これらは本明細書に参照により組み入れられる。
本発明のベクターの構築法、本発明の宿主細胞を作製するための細胞のトランスフェクション法、本発明の抗体を産生させるための細胞の培養法はすべて、従来の分子生物学的方法である。同様に、ひとたび産生されたら、当技術分野の標準的手法を用いて本発明の組換えヒト化抗体を精製することができ、かかる標準的手法としては、クロスフロー濾過、硫酸アンモニウム沈降、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などが挙げられる。
本発明のヒト化FcγRIIB特異的抗体は、ヒトまたはヒト化モノクローナル抗体のような他の抗体(もしくはその一部)とともに、またはそれに結合させて使用することができる。これら他の抗体は、疾患(本発明の抗体は該疾患に対して誘導される)に特徴的な他のマーカー(エピトープ)と反応性であってもよいし、また、例えば罹患した細胞にヒト免疫系の分子もしくは細胞を動員するように選ばれた、異なる特異性を有していてもよい。本発明の抗体(またはその一部)はそのような抗体(またはその一部)と共に、別個に投与される組成物として、または従来の化学的もしくは分子生物学的方法により連結された2つの該物質を含む単一の組成物として、投与される。さらに、本発明の抗体の診断上および治療上の価値は、ヒト化抗体を、検出可能なシグナルを(in vitroまたはin vivoで)生じる標識により標識するか、あるいは治療特性を有する標識で標識することにより、増強することができる。いくつかの標識(例えば、放射性ヌクレオチド)は検出可能なシグナルをもたらすとともに、治療特性も有する。放射性核種の例としては、限定するものではないが、125I、131I、および14Cが挙げられる。その他の検出可能な標識の例には次のものが含まれる:蛍光発色団、例えば蛍光顕微鏡検査用のフルオレセイン、蛍光タンパク質(phycobiliprotein)、もしくはテトラエチルローダミン;蛍光、吸収、可視色、もしくは凝集(電子顕微鏡検査により検証される高電子密度産物をもたらす)による検出のための蛍光産物または着色産物を生成する酵素;あるいは、直接または間接的電子顕微鏡可視化のためのフェリチン、ペルオキシダーゼもしくは金ビーズのような高電子密度分子。治療特性を有する標識には、メトトレキセートのような癌治療用の薬物が含まれる。
本発明は、マウスモノクローナル抗体のCDR領域をヒトアクセプターフレームワークにスプライシングしてFcγRIIBに特異的な組換えヒト化抗体を作り出すことができるという知見に基づいて、FcγRIIBに特異的な多数のヒト化抗体を提供する。好適なヒト化FcγRIIB特異的抗体は、FcγRIIBに対する結合を増大させる更なる変化をフレームワーク領域(または他の領域)に含有する。本発明の特に好ましい実施形態は、FcγRIIBに対して優れた結合特性を有する、例示されたヒト化抗体分子である。
本発明は、本発明のCDRグラフト化抗体をコードするDNA配列を調製するための標準的な組換えDNA法を包含する。DNA配列は完全に合成してもよいし、オリゴヌクレオチド合成技術を部分的に使用して合成してもよい。オリゴヌクレオチド指定合成法は当技術分野で周知である。本発明はさらに当技術分野で公知であるような部位特異的突然変異誘発を包含する。
CDRグラフト化重鎖および軽鎖をコードするDNA配列を発現させるために、適当な宿主細胞/ベクター系はどれも使用することができる。細菌(例えば大腸菌)や他の微生物系は、特にFabおよび(Fab')2フラグメント、とりわけFVフラグメントおよび一本鎖抗体フラグメント(例えば、一本鎖FV)のような抗体フラグメントの発現に利用される。真核生物系、例えば哺乳動物宿主細胞発現系は、完全な抗体分子を含めて、より大きなCDRグラフト化抗体産物の製造に使用される。適当な哺乳動物宿主細胞としては、CHO細胞およびミエローマまたはハイブリドーマ細胞株が挙げられる。使用できるその他の細胞株には、限定するものではないが、CHO-K1、NSO、およびPER.C6 (Crucell, Leiden, Netherlands)が含まれる。
本発明のドナーマウス抗体は当技術分野で公知のどのような方法を用いて作製してもよく、こうした方法には2002年8月14日出願の米国仮出願第60/403,366号および米国特許出願公開第2004/0185045号に開示されるものが含まれる(両文献とも参照により本明細書にその全体を組み入れる)。
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは公知の技法により作製することができる。例えば、FabおよびF(ab')2フラグメントは、免疫グロブリン分子のタンパク分解切断により、パパイン(Fabフラグメントをもたらす)またはペプシン(F(ab')2フラグメントをもたらす)などの酵素を用いて得ることができる。F(ab')2フラグメントは完全な軽鎖、ならびに重鎖の可変領域、CH1領域および少なくとも一部のヒンジ領域を含有する。
例えば、抗体は当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ法を用いて作製することができる。ファージディスプレイ法では、機能性抗体ドメインが、それをコードするポリヌクレオチド配列を担うファージ粒子の表面にディスプレイされる。特定の実施形態においては、このようなファージを利用して、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現された抗原結合ドメイン(例えばFabおよびFvまたはジスルフィド結合安定化Fv)をディスプレイさせることができる。目的の抗原と結合する抗原結合ドメインを発現するファージを、標識した抗原または固相表面もしくはビーズに結合または捕捉された抗原を用いて、選択したり同定したりすることができる。この方法に使用されるファージは典型的にはfdおよびM13を含む糸状ファージである。抗原結合ドメインは、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに遺伝子組換えにより融合されたタンパク質として発現される。本発明の免疫グロブリンまたはそのフラグメントを作るために利用しうるファージディスプレイ法の例としては、Brinkmanら, J. Immunol. Methods, 182:41-50, 1995;Amesら, J. Immunol. Methods, 184:177-186, 1995;Kettleboroughら, Eur. J. Immunol., 24:952-958, 1994;Persicら, Gene, 187:9-18, 1997;Burtonら, Advances in Immunology, 57:191-280, 1994 ;PCT出願PCT/GB 91/01134 ;PCT公開WO 90/02809;WO 91/10737;WO 92/01047;WO 92/18619;WO 93/11236;WO 95/15982;WO 95/20401;および米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号および第5,969,108号に記載された方法が挙げられ;これらはそれぞれ本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。
上記の参考文献に記載されるように、ファージ選択の後、ファージからの抗体コード領域を単離し、これを用いて全抗体(ヒト抗体を含む)またはいずれか他の所望のフラグメントを作製し、そして所望の宿主(例えば、以下に詳述する哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含む)に発現させることができる。例えば、Fab、Fab'およびF(ab')2フラグメントを組換えにより作製する技術も、当技術分野で公知の方法、例えば、PCT公開WO 92/22324;Mullinaxら, BioTechniques, 12 (6):864-869, 1992;およびSawaiら, AJRI, 34:26-34, 1995;およびBetterら, Science, 240:1041-1043, 1988(これらはそれぞれ参照によりその全てが組み入れられる)に開示される方法を用いて利用することもできる。一本鎖Fvおよび抗体を作製するために利用しうる技術の例は、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号;Hustonら, Methods in Enzymology, 203:46-88, 1991;Shuら, Proc Natl Acade Sci USA, 90:7995-7999, 1993;およびSkerraら, Science, 240:1038-1040, 1988に記載の技術を含む。
ファージディスプレイ技法を用いてFcγRIIBに対する本発明の抗体の親和性を高めることができる。この技法は、本発明のコンビナトリアル法に利用しうる高親和性抗体を得るのに有用でありうる。親和性成熟(affinity maturation)と呼ばれるこの技法は、もとの抗体または親抗体と比較したとき、より高い親和性で抗原と結合する抗体を同定するために、突然変異誘発またはCDRウォーキングと再選択(FcγRIIBまたはその抗原性フラグメントを用いる)を利用する(例えば、Glaserら, 1992, J. Immunology 149:3903を参照)。単一ヌクレオチドよりむしろ全コドンを突然変異誘発すると、アミノ酸変異の半ランダム化レパートリーが得られる。変異体クローン(それぞれは単一CDR中の単一アミノ酸変化により異なっている)のプールから成るライブラリーが構築され、該ライブラリーは各CDR残基のそれぞれ可能なアミノ酸置換を提示する変異体を含有する。抗原に対する結合親和性が増加した突然変異体は、固定化した突然変異体を標識抗原と接触させることにより、スクリーニングすることができる。当技術分野で公知のスクリーニング方法を用いて、抗原に対する結合力が増加した変異型抗体を同定することができる(例えば、ELISA)(Wuら, 1998, Proc Natl. Acad Sci. USA 95:6037;Yeltonら, 1995, J. Immunology 155:1994を参照)。軽鎖をランダム化するCDRウォーキングも可能である(Schierら, 1996, J. Mol. Bio. 263:551を参照)。
5.2.1 生物学的性状のスクリーニング
本発明のヒト化抗体は、該抗体とFcγRIIBとの相互作用を特徴づける(定量化することを含む)ための当技術分野で公知の免疫学的または生化学的方法を用いて、FcγRIIBとの特異的結合について特徴づけることができる。本発明のヒト化抗体とFcγRIIBとの特異的結合は、例えば、限定するものではないが、ELISAアッセイ、表面プラズモン共鳴アッセイ、免疫沈降アッセイ、アフィニティークロマトグラフィー、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、および平衡透析を含む免疫学的または生化学的方法を用いて測定することができる。本発明の抗体の免疫特異的結合および交差反応性を分析するために利用しうるイムノアッセイとしては、限定するものではないが、そのいくつかを挙げれば、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの技法を用いる競合および非競合アッセイ系が挙げられる。かかるアッセイは慣例的であり、当技術分野では周知である(例えば、Ausubelら編, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照;これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。
本発明のヒト化抗体はin vitro ELISAアッセイを用いてFcγRIIBとの結合について特徴づけることができる。本発明の方法に用いる代表的なELISAアッセイは次のステップを含む:2.5ng/ウェルの可溶性FcγRIIb-Fc融合タンパク質(本明細書に参照によりその全てが組み入れられる、米国仮出願第60/439,709号および米国出願第10/756,153号に開示される方法に従って作製される)をマウス抗FcγRIIb抗体3H7により96ウェルMaxisorpプレート上に室温で1時間かけて捕捉する。ch2B6またはhu2B6Hc/Ch2B6Lcのコンディションド培地の一連の2倍希釈液(25ng/ウェルから開始する)を各ウェルに添加する。このプレートを室温で1時間インキュベートしてから、HRPコンジュゲートF(ab')2ヤギ抗ヒトIgG F(ab)'2特異的第2抗体により結合を検出する。第2抗体と約45分間インキュベートした後、このプレートをTMB基質により発色させる。5分のインキュベーション後、1% H2S04により反応を停止させる。OD 450nmをSOFTmaxプログラムで読み取る。ステップとステップの間に、プレートをPBS/0.1% Tween 20で3回洗浄する。プレートをPBS/0.1% Tween 20中の0.5% BSAにより室温で30分間ブロックしてから、可溶性FcγRIIb-Fcを添加する。
本発明のヒト化抗体は、FcγRIIBを発現する細胞(例えば、Daudi細胞およびRajii細胞)との結合について蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いて、当業者に公知の技法のいずれかを用いて、特徴づけることができる。フローソーターは多数の個々の細胞を迅速に検査することができる(例えば、1時間あたり1000〜10000万個の細胞)(Shapiroら, Practical Flow Cytometry, 1995)。生物学的細胞を選別して検査するためのフローサイトメーターは当技術分野で周知である。公知のフローサイトメーターが例えば米国特許第4,347,935号; 同第5,464,581号; 同第5,483,469号; 同第5,602,039号; 同第5,643,796号; および同第6,211,477号に記載されている; これらの全内容を参照により本明細書に組み入れる。その他の公知のフローサイトメーターは、Becton Dickinson and Company製のFACS VantageTMシステム、およびUnion Biometrica製のCOPASTMシステムである。本発明のヒト化抗体を特徴づけるための代表的なFACS分析は次のステップを含む:約106個のFcγRIIB発現細胞(例えばDaudi細胞およびRajii細胞)をPBSのようなバッファーで少なくとも1回洗浄する。一次抗体(例えば、Ch2B6、Hu2B6Hc/ch2B6Lc、ヒトIgG1)を例えばPBS/1% BSA中0.5、0.1、0.02μg/mLに希釈し、100μlの希釈抗体を細胞に移す。4℃で30分インキュベートした後、細胞を1mLのPBS/1% BSAで1回洗浄する。ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的抗体のPEコンジュゲートF(ab')2フラグメント (Jackson ImmunoReseach, Inc.)を1:1000希釈率で二次抗体として使用する。4℃で30分インキュベートした後、細胞を1mLのPBS/1% BSAで1回洗浄する。その後細胞を500μlのPBS/1% BSA中に再懸濁させてFACS分析に供する。本発明の方法に利用しうる他の細胞株としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:CD32BでトランスフェクトされたCHO-K1 (ハムスター細胞株) 細胞; CD32AでトランスフェクトされたCHO-K1 (ハムスター細胞株) 細胞; CD32Bでトランスフェクトされた293H (ヒト上皮細胞株) 細胞; CD32Aでトランスフェクトされた293H (ヒト上皮細胞株) 細胞; Raji (ヒトバーキットリンパ腫細胞株) 細胞; Daudi (ヒトバーキットリンパ腫細胞株) 細胞 [RajiおよびDaudi B細胞株は内在性CD32Bのみを発現する]; 内在性CD32Aのみを発現するTHP-1 (ヒト単球性細胞株) 細胞; 内在性CD32AおよびCD32Bを発現するU937 (ヒト単球性細胞株) 細胞; K526; HL60。
本発明の抗体をエピトープマッピングによりさらに特徴付けて、FcγRIIAと比較してFcγRIIBに対して最大の特異性を有する抗体を選択することができる。抗体のエピトープマッピング法は当技術分野で周知であり、本発明の方法の範囲に包含される。ある特定の実施形態においては、FcγRIIB、またはFcγRIIBの1以上の領域を含む融合タンパク質を、本発明の抗体のエピトープをマッピングする際に用いることができる。特定の実施形態においては、融合タンパク質は、ヒトIgG2のFc部分に融合されたFcγRIIBの領域のアミノ酸配列を含有する。それぞれの融合タンパク質は、以下の表2に示すように、該受容体のある特定領域と、同族受容体(例えばFcγRIIA)からの対応領域とのアミノ酸置換および/または取替えをさらに含んでいてもよい。pMGX125およびpMGX132はFcγRIIB受容体のIgG結合部位を含有し、前者はFcγRIIBのC末端を有し、後者はFcγRIIAのC末端を有するので、C末端結合を区別するために用いることができる。その他は、IgG結合部位のFcγRIIA置換およびFcγIIAもしくはFcγIIBのいずれかのN末端を有する。これらの分子は、抗体が結合する受容体分子の部分を決定するのに役立ちうる。
表2.モノクローナル抗FcγRIIB抗体のエピトープを研究するために利用することができる融合タンパク質のリスト。残基172-180はFcγRIIAおよびBのIgG結合部位に属する。FcγRIIA配列由来の特定のアミノ酸は太字で示す。
本発明のヒト化抗体はまた、該抗体とFcγRIIBとの相互作用の反応速度論的パラメーターを特徴づけるための当技術分野で公知の表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくアッセイを用いて検定することもできる。市販されているSPR測定装置、例えば、限定するものではないが、Biacore AB(Uppsala、Sweden)から入手しうるBIAcore装置;Affinity Sensors(Franklin、MA.)から入手しうるIAsys装置;Windsor Scientific Limited(Berks、UK)から入手しうるIBISシステム;Nippon Laser and Electronics Lab(北海道、日本)から入手しうるSPR-CELLIAシステム;およびTexas Instruments(Dallas、TX)から入手しうるSPR Detector Spreetaを本発明に使用することができる。SPRに基づく技法の概要については、Mulletら, 2000, Methods 22: 77-91;Dongら, 2002, Review in MoI. Biotech., 82: 303-23;Fivashら, 1998, Current Opinion in Biotechnology 9: 97-101;Richら, 2000, Current Opinion in Biotechnology 11: 54-61を参照されたい;これらは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる。さらに米国特許第6,373,577号;第6,289,286号;第5,322,798号;第5,341,215号;第6,268,125号に記載されたタンパク質-タンパク質相互作用を測定するためのSPR測定装置およびSPRに基づく方法のいずれも本発明の方法に使用することができ、これらの全ては本明細書に参照により組み入れられる。
簡単に説明すると、SPRに基づくアッセイは、結合対の一方のメンバーを表面上に固定化し、溶解状態の結合対の他方のメンバーとのその相互作用をリアルタイムでモニタリングすることを含む。SPRは、複合体形成または解離時に生じる表面近くの溶媒の屈折率の変化を測定することに基づく。固定化の起こる表面がセンサーチップであり、SPR技法の心臓部となる。センサーチップは金の薄層をコーティングしたガラス表面から成り、分子と表面との結合を最適化するように設計された特殊な表面域の基礎を形成する。様々なセンサーチップがとりわけ上記各社から市販されていて、それらは全て本発明の方法に使用することができる。センサーチップの例としては、BIAcore AB, Inc.から入手しうるセンサーチップ、例えば、Sensor Chip CM5、SA、NTA、およびHPAが挙げられる。本発明の分子は、当技術分野で公知のいずれの固定化方法および化学を用いてセンサーチップの表面上に固定化してもよく、それらとしては、限定するものではないが、アミン基を介する直接共有結合、スルフヒドリル基を介する直接共有結合、アビジンをコーティングした表面とのビオチン結合、糖基とのアルデヒドカップリング、およびヒスチジンタグを介するNTAチップとの結合が挙げられる。
本発明は、本発明の抗体の機能(特に、FcγRIIBシグナル伝達をモジュレートする活性)を同定するためのある特定の特性決定アッセイを用いて、本発明の方法により得られたヒト化抗体を特徴づけることを包含する。例えば、本発明の特性決定アッセイは、FcγRIIBのITIMモチーフ中のチロシン残基のリン酸化を測定するか、またはB細胞受容体により生じるカルシウム動員の抑制を測定する。本発明の特性決定アッセイは細胞に基づくアッセイでも、無細胞アッセイでもよい。
当技術分野では、肥満細胞でのFcγRIIBと高親和性IgE受容体FcεRIとの共凝集が、抗原により誘導される脱顆粒、カルシウム動員、およびサイトカイン産生の抑制をもたらすことは十分に確立されている(Metcalfe D.D.ら 1997, Physiol. Rev. 77:1033;Long E.O. 1999 Annu Rev. Immunol 17:875)。このシグナル伝達経路の分子的詳細は最近解明された(Ott V.L., 2002, J Immunol. 162(9):4430-9)。ひとたびFcεRIと共凝集すると、FcγRIIBはそのITIMモチーフ中のチロシン上で速やかにリン酸化され、次いでSrc Homology-2含有イノシトール-5-ホスファターゼ(SHIP)、SH2ドメイン含有イノシトールポリリン酸5-ホスファターゼを動員し、これが順にリン酸化されてShcおよびp62dokと会合する(p62dokは、アダプター分子のファミリーのプロトタイプであって、シグナル伝達ドメイン、例えばアミノ末端プレクストリン相同性ドメイン(PHドメイン)、PTBドメイン、およびPXXPモチーフと多数のリン酸化部位を含有するカルボキシ末端領域を含む)(Carpinoら, 1997, Cell, 88:197;Yamanshiら, 1997, Cell, 88:205)。
本発明は、1以上のIgE介在性応答をモジュレートする際の本発明の抗FcγRIIBヒト化抗体を特徴づけることを包含する。好ましくは、IgEに対する高親和性受容体とFcγRIIBに対する低親和性受容体とを同時発現する細胞株を、IgE介在性応答をモジュレートする際の本発明の抗FcγRIIB抗体を特徴づけるのに使用しうる。特定の実施形態においては、ラット好塩基球性白血病細胞株(RBL-2H3;Barsumian E.L.ら 1981 Eur. J. Immunol. 11:317、これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)由来の細胞を全長ヒトFcγRIIBでトランスフェクトして、本発明の方法に使用する。RBL-2H3は十分に特徴づけられたラット細胞株で、IgE介在性細胞活性化の後のシグナル伝達機構を研究するために広く使われている。FcγRIIBは、RBL-2H3細胞内で発現されてFcεRIと共凝集すると、FcεRIにより誘導されるカルシウム動員、脱顆粒、およびサイトカイン産生を抑制する(Malbecら, 1998, J. Immunol. 160:1647;Daeronら, 1995 J. Clin. Invest. 95:577;Ottら, 2002 J. of Immunol. 168:4430-4439)。
いくつかの実施形態においては、本発明は、本発明の抗FcγRIIBヒト化抗体を、FcεRIにより誘導される肥満細胞活性化の抑制について特徴づけることを包含する。例えば、FcγRIIBによりトランスフェクトされているラット好塩基球性白血病細胞株(RBL-H23; Barsumian E.L.ら 1981 Eur. J. Immunol. 11:317)由来の細胞をIgEで感作し、ウサギ抗マウスIgGのF(ab')2フラグメントにより刺激してFcεRIを単独で凝集させるか、または全ウサギ抗IgGにより刺激してFcγRIIBとFcεRIを共凝集させる。この系において、下流シグナル伝達分子の間接的モジュレーションを、感作および刺激した細胞に本発明の抗体を添加することによりアッセイすることができる。例えば、FcγRIIBのチロシンリン酸化とSHIPの動員およびリン酸化、MAPキナーゼファミリーメンバー(ERKL、Erk2、JNK、またはp38を含む)の活性化;ならびにP62dokのチロシンリン酸化とSHIPおよびRasGAPとのその会合をアッセイすることができる。
本発明の抗体によるFcεRI誘導肥満細胞活性化の抑制を測定するための代表的なアッセイは次のステップを含んでなる:RBL-H23細胞をヒトFcγRIIBでトランスフェクトするステップ;RBL-H23細胞をIgEにより感作するステップ;RBL-H23細胞をウサギ抗マウスIgGのF(ab')2で刺激する(対照として、FcεRIを単独で凝集させてFcεRI介在シグナル伝達を誘発するため)か、またはRBL-H23細胞を全ウサギ抗マウスIgGで刺激する(FcγRIIBとFcεRIを共凝集させて、FcεRI介在シグナル伝達の抑制をもたらすため)ステップ。全ウサギ抗マウスIgG抗体で刺激された細胞は、本発明の抗体とともにさらにプレインキュベートしてもよい。本発明の抗体とプレインキュベートされた細胞および本発明の抗体とプレインキュベートされていない細胞のFcεRI依存性活性を測定し、これらの細胞におけるFcεRI依存性活性のレベルを比較すると、本発明の抗体によるFcεRI依存性活性のモジュレーションが示される。
以上記載した代表的アッセイを利用して、例えば、FcγRIIB受容体とのリガンド(IgG)結合をブロックする抗体、およびFcγRIIBとFcεRIの共凝集を防止することによりFcεRIシグナル伝達のFcγRIIB介在抑制にアンタゴニスト作用を示す抗体を同定することができる。このアッセイは同様に、FcγRIIBとFcεRIの共凝集を高める抗体、およびFcγRIIBとFcεRIの共凝集を促進することによりFcεRIシグナル伝達のFcγRIIB介在抑制にアゴニスト作用を示す抗体を同定する。
好ましい実施形態においては、FcεRI依存性活性は、少なくとも1以上の次の活性である:下流シグナル伝達分子のモジュレーション(例えば、FcγRIIBのリン酸化状態のモジュレーション、SHIP動員のモジュレーション、MAPキナーゼ活性のモジュレーション、SHIPのリン酸化状態のモジュレーション、SHIPとShc会合のモジュレーション、p62dokのリン酸化状態のモジュレーション、p62dokとSHIP会合のモジュレーション、p62dokとRasGAP会合のモジュレーション、カルシウム動員のモジュレーション、脱顆粒のモジュレーション、およびサイトカイン産生のモジュレーション。さらに他の好ましい実施形態においては、FcεRI依存性活性はセロトニン放出および/または細胞外Ca++流入および/またはIgE依存性肥満細胞活性化である。当業者には公知であるように、FcγRIIBとFcεRIの共凝集はFcγRIIBチロシンリン酸化を刺激し、SHIP動員を刺激し、SHIPチロシンリン酸化およびShcとの会合を刺激し、そしてMAPキナーゼファミリーメンバー(Erk1、Erk2、JNK、p38を含むがこれらに限らない)の活性化を抑制する。また、当業者には公知であるように、FcγRIIBとFcεRIの共凝集はp62dokのチロシンリン酸化の増加、ならびにSHIPおよびRasGAPとのその会合を刺激する。
いくつかの実施形態においては、本発明の抗FcγRIIBヒト化抗体は、好ましくは細胞に基づくアッセイで、肥満細胞または好塩基球の脱顆粒をモニタリングおよび/または測定することにより、IgE介在性応答をモジュレートするその能力について特徴づけられる。好ましくは、このようなアッセイに用いる肥満細胞または好塩基球は、当業者に公知の標準的な組換え法でヒトFcγRIIBを含有するように作製しておく。特定の実施形態においては、本発明の抗FcγRIIB抗体はIgE介在性応答をモジュレートするその能力について、細胞に基づくβ-ヘキソサミニダーゼ(顆粒に含まれる酵素)放出アッセイで特徴づけられる。肥満細胞と好塩基球からのβ-ヘキソサミニダーゼ放出は急性のアレルギーおよび炎症症状における一次事象である(Aketaniら, 2001 Immunol. Lett. 75:185-9;Aketaniら, 2000 Anal. Chem. 72:2653-8)。セロトニンおよびヒスタミンを含む他の炎症性メディエーターの放出をアッセイして、本発明の方法に従ってIgE介在性応答を測定することもできる。特定の作用機構に拘束されるものではないが、肥満細胞および好塩基球からの顆粒(β-ヘキソサミニダーゼを含有する顆粒など)の放出は、細胞内カルシウム濃度に依存するプロセスであり、FcεRIと多価抗原との架橋により開始される。
IgE介在性応答を媒介する際の本発明の抗FcγRIIBヒト化抗体を特徴づけるための代表的なアッセイは、β-ヘキソサミニダーゼ放出アッセイであって、次のステップを含む:RBL-H23細胞をヒトFcγRIIBによりトランスフェクトするステップ;マウスIgE単独によりまたはマウスIgEと本発明の抗FcγRIIB抗体により該細胞を感作するステップ;該細胞を様々な濃度のヤギ抗マウスF(ab)2(好ましくは0.03μg/mL〜30μg/mLの範囲)により約1時間刺激するステップ;上清を回収するステップ;細胞を溶解するステップ;上清中に放出されたβ-ヘキソサミニダーゼ活性を比色アッセイにより、例えばp-ニトロフェニルN-アセチル-β-D-グルコサミニドを用いて、測定するステップ。放出されたβ-ヘキソサミニダーゼ活性は全活性に対する放出活性の%として表される。放出されたβ-ヘキソサミニダーゼ活性を測定し、抗原のみ;IgEのみ;IgEと本発明の抗FcγRIIB抗体;で処置した細胞において比較する。特定の作用機構により拘束されるものではないが、細胞をマウスIgEのみで感作してポリクローナルヤギ抗マウスIgGのF(ab)2フラグメントによりチャレンジすると、ポリクローナル抗体がFcεRIと結合したマウスIgEの軽鎖を認識するので、FcεRIの凝集と架橋が起こり、これが順に肥満細胞の活性化および脱顆粒をもたらす。他方、細胞をマウスIgEと本発明の抗FcγRIIB抗体で感作してポリクローナルヤギ抗マウスIgGのF(ab)2フラグメントによりチャレンジすると、FcεRIとFcγRIIBの架橋が起こり、FcεRI誘導脱顆粒の抑制をもたらす。いずれの場合にも、ヤギ抗マウスF(ab)2は用量依存的なβ-ヘキソサミニダーゼ放出を誘導する。いくつかの実施形態においては、FcγRIIB受容体と結合しかつFcεRIと架橋した抗FcγRIIB抗体は抑制経路の活性化に影響を与えず、すなわち、抗FcγRIIB抗体の存在下では脱顆粒のレベルに変化がない。他の実施形態では、抗FcγRIIB抗体は、抗FcγRIIB抗体が結合したとき、抑制受容体FcγRIIBのより強い活性化を媒介し、FcεRIとの効果的架橋およびホモ凝集FcγRIIBの抑制経路の活性化を可能にする。
本発明はまた、本発明の抗FcγRIIBヒト化抗体がIgE介在性細胞応答に及ぼす効果を、当業者に公知の方法を用いたカルシウム動員アッセイを使用して、特徴づけることを包含する。代表的なカルシウム動員アッセイは、次のステップを含む:好塩基球または肥満細胞をIgEにより感作するステップ;細胞をカルシウム指示薬(例えばFura 2)とともにインキュベートするステップ;上記のように細胞を刺激するステップ;細胞内カルシウム濃度を例えばフローサイトメトリーによりモニタリングおよび/または定量化するステップ。本発明は、細胞内カルシウム濃度を当業者に公知の方法によりモニタリングおよび/または定量化することを包含する(例えば、Immunology Letters, 2001, 75:185-9;British J. of Pharm, 2002, 136:837-45;J. of Immunology, 168:4430-9およびJ. of Cell Biol., 153(2):339-49を参照されたい;これらは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。
好ましい実施形態においては、本発明の抗FcγRIIBヒト化抗体はIgE介在性細胞活性化を抑制する。他の実施形態においては、本発明の抗FcγRIIB抗体は、FcγRIIBにより調節される抑制経路をブロックするか、またはFcγRIIB上のリガンド結合部位をブロックし、したがって免疫応答を高める。
いくつかの実施形態において、ヒト肥満細胞が、当技術分野で公知の標準方法(例えばFACS染色)を用いて測定したとき、低い内在性FcγRIIB発現を示す場合は、本発明の抗FcγRIIB抗体により媒介される抑制経路の活性化の差をモニタリングおよび/または検出することは困難であるかもしれない。従って、本発明は、サイトカインおよび特定の増殖条件を用いてFcγRIIB発現をアップレギュレートしうる代替方法を包含する。FcγRIIBはヒト単球細胞株、例えばTHP1およびU937(Tridandapaniら, 2002, J. Biol. Chem., 277(7):5082-5089)ならびに一次ヒト単球(Pricopら, 2001, J. of Immunol., 166:531-537)においてIL4により高度にアップレギュレートされることが記載されている。U937細胞のジブチリル環状AMPによる分化(differentiation)はFcγRIIの発現を増加させると記載されている(Cameronら, 2002 Immunology Letters 83,171-179)。従って、本発明の方法に利用するヒト肥満細胞における内在性FcγRIIBの発現は、検出の感度を上げるために、サイトカイン(例えば、IL-4、IL-13)を用いてアップレギュレートすることができる。
本発明はまた、本発明のヒト化抗FcγRIIB抗体を、B細胞受容体(BCR)介在性シグナル伝達の抑制について特徴づけすることを包含する。BCR介在性シグナル伝達は、B細胞の活性化および増殖、抗体産生などの少なくとも1以上の下流の生物学的応答を含みうる。FcγRIIBとBCRの共凝集は、細胞周期進行および細胞生存の抑制を招く。さらに、FcγRIIBとBCRの共凝集はBCR介在性シグナル伝達の抑制をもたらす。
具体的には、BCR介在性シグナル伝達は、次の少なくとも1以上を含む:下流シグナル伝達分子のモジュレーション、例えば、FcγRIIBのリン酸化状態、SHIP動員、Btkおよび/またはPLCγの局在化、MAPキナーゼ活性、Akt(抗アポトーシスシグナル)の動員、カルシウム動員、細胞周期進行、および細胞増殖。
BCRシグナル伝達のFcγRIIB介在性抑制の多数のエフェクター機能はSHIPにより媒介されるが、最近、SHIP欠損マウス由来のリポ多糖(LPS)活性化B細胞は、カルシウム動員、Ins(1,4,5)P3産生、およびErkとAktのリン酸化の、顕著なFcγRIIB介在性抑制を示すことが実証されている(Brauweiler A.ら, 2001, Journal of Immunology, 167(1):204-211)。従って、ex vivoでSHIP欠損マウス由来のB細胞を用いて、本発明の抗体を特徴づけることができる。本発明の抗体によるBCRシグナル伝達のFcγRIIB介在性抑制を確認するための代表的なアッセイは、次のステップを含む:SHIP欠損マウスから脾B細胞を単離するステップ;上記細胞をリポ多糖により活性化するステップ;および上記細胞をF(ab')2抗IgMにより刺激してBCRを凝集させるか、または抗IgMにより刺激してBCRをFcγRIIBと共凝集させるステップ。インタクトの抗IgMにより刺激してBCRをFcγRIIBと共凝集させた細胞を、本発明の抗体とともにさらにプレインキュベートすることができる。細胞のFcγRIIB依存性活性を当技術分野で公知の標準技術により測定することができる。本発明の抗体とともにプレインキュベートしておいた細胞のFcγRIIB依存性活性のレベルを、プレインキュベートしていない細胞のそれと比較すると、本発明の抗体によるFcγRIIB依存性活性のモジュレーションが示される。
FcγRIIB依存性活性の測定は、例えば、フローサイトメトリーによる細胞内カルシウム動員の測定、Aktおよび/またはErkのリン酸化の測定、BCRを介するPI(3,4,5)P3の蓄積の測定、またはB細胞のFcγRIIB介在性増殖の測定を含みうる。
これらのアッセイを用いて、例えば、FcγRIIB受容体に対するリガンド(IgG)結合部位をブロックすることにより、BCRシグナル伝達のFcγRIIB介在性抑制をモジュレートする抗体、およびFcγRIIBとBCRの共凝集を防止することにより、BCRシグナル伝達のFcγRIIB介在性抑制にアンタゴニスト作用を示す抗体を同定することができる。また、これらのアッセイを用いて、FcγRIIBとBCRの共凝集を高める抗体、およびBCRシグナル伝達のFcγRIIB介在性抑制にアゴニスト作用を示す抗体も同定することもできる。
本発明は、ヒト単球/マクロファージにおけるFcγRII介在性シグナル伝達について、本発明のヒト化抗FcγRIIB抗体を特徴づけることに関する。FcγRIIBと、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を担う受容体との共凝集は、SHIPをそのエフェクターとして用いてFcγR介在食作用をダウンレギュレートするように作用する(Tridandapaniら 2002, J. Biol. Chem. 277(7):5082-9)。FcγRIIAとFcγRIIBとの共凝集は、FcγRIIBのITIMモチーフ上のチロシン残基の速やかなリン酸化をもたらし、SHIPのリン酸化、SHIPとShcとの会合、および120および60〜65kDaの分子量を有するタンパク質のリン酸化の増強を招く。さらに、FcγRIIAとFcγRIIBとの共凝集は、細胞制御に関与しかつアポトーシスを抑制するように働くセリン-トレオニンキナーゼであるAktのリン酸化のダウンレギュレーションをもたらす。
本発明はさらに、本発明のヒト化抗FcγRIIB抗体を、ヒト単球/マクロファージにおけるFcγR介在性食作用の抑制について特徴づけることを包含する。例えば、ヒト単球細胞株THP-1由来の細胞を、FcγRIIAに対するマウスモノクローナル抗体IV.3のFabフラグメント(Medarex, Inc.)およびヤギ抗マウス抗体で刺激する(FcγRIIAを単独で凝集させるため)か、または全IV.3マウスモノクローナル抗体およびヤギ抗マウス抗体で刺激する(FcγRIIAとFcγRIIBを共凝集させるため)。この系では、刺激した細胞に本発明の抗体を加えて、下流シグナル伝達分子のモジュレーション、例えば、FcγRIIBのチロシンリン酸化、SHIPのリン酸化、SHIPとShcとの会合、Aktのリン酸化、および120および60〜65kDaの分子量を有するタンパク質のリン酸化をアッセイすることができる。さらに、単球細胞株のFcγRIIB依存性食作用効率を本発明の抗体の存在下および不在下で直接測定することができる。
本発明の抗体によるヒト単球/マクロファージにおけるFcγR介在性食作用の抑制を確認するための他の代表的アッセイは、次のステップを含む:THP-1細胞を、IV.3マウス抗FcγRIIA抗体のFabおよびヤギ抗マウス抗体を用いて刺激する(FcγRIIAを単独で凝集させ、かつFcγRIIA介在性シグナル伝達を誘発させるため)か、またはマウス抗FcγRII抗体およびヤギ抗マウス抗体を用いて刺激する(FcγRIIAとFcγRIIBを共凝集させ、かつFcγRIIA介在性シグナル伝達を抑制するため)ステップ。マウス抗FcγRII抗体およびヤギ抗マウス抗体により刺激された細胞を、本発明の抗体とさらにプレインキュベートしてもよい。本発明の抗体とプレインキュベートされている刺激された細胞と、本発明の抗体とプレインキュベートされていない細胞のFcγRIIA依存性活性を測定し、これらの細胞におけるFcγRIIA依存性活性のレベルを比較すると、本発明の抗体によるFcγRIIA依存性活性のモジュレーションが示される。
上記の代表的アッセイを利用して、例えば、FcγRIIB受容体のリガンド結合をブロックし、かつFcγRIIBとFcγRIIAの共凝集を防止することによりFcγRIIAシグナル伝達のFcγRIIB介在性抑制にアンタゴニスト作用を示す抗体を同定することができる。このアッセイは同様に、FcγRIIBとFcγRIIAの共凝集を高め、かつFcγRIIAシグナル伝達のFcγRIIB介在性抑制にアゴニスト作用を示す抗体を同定する。
本発明の他の実施形態においては、本発明は、以前に記載された方法(Tridandapaniら, 2000, J. Biol. CHEM. 275: 20480-7)を用いて、THP-1細胞がフルオレセイン化IgG-オプソニン化ヒツジ赤血球(SRBC)を貪食する能力を測定することにより、本発明のヒト化抗体の機能を特徴づけることに関する。例えば、食作用を測定するための代表的アッセイは次のステップを含む:THP-1細胞を本発明の抗体またはFcγRIIと結合しない対照抗体で処理するステップ;上記細胞の活性レベルを比較するステップ;ここで細胞の活性の差(例えば、ロゼット形成活性(IgGコーティングSRBCと結合するTHP-1細胞の数)、接着活性(THP-1細胞と結合したSRBCの総数)、および食作用速度)が本発明の抗体によるFcγRIIA依存性活性のモジュレーションを示すこととなる。このアッセイを用いて、例えば、FcγRIIB受容体のリガンド結合をブロックし、かつ食作用のFcγRIIB介在性抑制にアンタゴニスト作用を示す抗体を同定することができる。このアッセイはまた、FcγRIIAシグナル伝達のFcγRIIB介在性抑制を高める抗体も同定することができる。
好ましい実施形態においては、本発明のヒト化抗体はヒト単球/マクロファージにおけるFcγRIIB依存性活性を、少なくとも1以上の次の方法でモジュレートする:下流シグナル伝達分子のモジュレーション(例えば、FcγRIIBのリン酸化状態のモジュレーション、SHIPリン酸化のモジュレーション、SHIPおよびShc会合のモジュレーション、Aktのリン酸化のモジュレーション、およそ120および60〜65kDaの他のタンパク質のリン酸化のモジュレーション)および食作用のモジュレーション。
本発明は、治療用抗体のエフェクター細胞機能に及ぼす抗体の効果(例えば、治療用抗体の腫瘍特異的ADCC活性を高める能力)を同定するための当業者に公知のアッセイを用いて、本発明のヒト化抗体を特徴づけることを包含する。本発明の方法に従って使用しうる治療用抗体としては、限定するものではないが、抗腫瘍抗体、抗ウイルス抗体、抗微生物抗体(例えば、細菌および単細胞寄生生物)が挙げられ、その例は本明細書(第5.3.6節)に開示される。特に、本発明は、本発明の抗体を、治療用抗体(例えば、腫瘍特異的モノクローナル抗体)のFcγR介在性エフェクター細胞機能に対する効果について特徴づけることを包含する。本発明に従ってアッセイすることができるエフェクター細胞機能の例としては、限定するものではないが、抗体依存性細胞性細胞傷害、食作用、オプソニン化、オプソニン食作用、C1q結合、および補体依存性細胞性細胞傷害が挙げられる。エフェクター細胞機能活性を測定するための、当業者に公知のどのような細胞に基づくアッセイまたは無細胞アッセイを用いてもよい(エフェクター細胞アッセイについては、Perussiaら, 2000, Methods Mol. Biol. 121:179-92;Baggioliniら, 1998 Experientia, 44(10):841-8;Lehmannら, 2000 J. Immunol. Methods, 243(1-2):229-42;Brown EJ. 1994, Methods Cell Biol., 45:147-64;Munnら, 1990 J. Exp. Med., 172:231-237、Abdul-Majidら, 2002 Scand. J. Immunol. 55:70-81;Dingら, 1998, Immunity 8:403-411を参照のこと、これらはそれぞれ本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。
本発明の抗体は、エフェクター細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞)における治療用抗体のFcγR介在性ADCC活性に対するその効果について、当業者に公知の標準方法のいずれかを用いてアッセイすることができる(例えば、Perussiaら, 2000, Methods Mol. Biol. 121:179-92を参照)。本明細書に使用される用語「抗体依存性細胞性細胞傷害」および「ADCC」は、当技術分野で慣例的な通常の意味を持ち、FcγRを発現する非特異的な細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞などの単球細胞およびマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、次いで標的細胞の溶解を引き起こすin vitro細胞介在性反応を意味する。原則として、活性化FcγRをもつエフェクター細胞はどれもADCCを媒介するためのトリガーとなりうる。ADCCを媒介するための一次細胞はFcγRIIIだけを発現するNK細胞であるが、単球は、その活性化、局在化、または分化の状態に応じて、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現することができる。造血細胞上のFcγR発現の概説については、例えば、Ravetchら, 1991, Annu. Rev. Immunol., 9: 457-92を参照のこと、これは参照により本明細書にその全てが組み入れられる。
エフェクター細胞は1以上のFcγRを発現してエフェクター機能を果たす白血球である。好ましくは、該細胞は少なくともFcγRIIIを発現してADCCエフェクター機能を果たすものである。本発明の方法に使用しうるエフェクター細胞は、限定するものではないが、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球および好中球を含み、PBMCおよびNK細胞が好ましい。エフェクター細胞はその天然の供給源、例えば本明細書に記載の血液またはPBMCから単離することができる。好ましくは、本発明のADCCアッセイに使用されるエフェクター細胞は末梢血単核球(PBMC)であり、これは、好ましくは正常なヒト血液から当業者に公知の標準方法を用いて、例えばFicoll-Paque密度勾配遠心分離法を用いて精製される。例えば、PBMCは、全血液をFicoll-Hypaque上に重層し、細胞を500gで室温にて30分間遠心することにより単離することができる。白血球層をエフェクター細胞として採取する。本発明のADCCアッセイに使用される他のエフェクター細胞は、限定するものではないが、単球由来のマクロファージ(MDM)を含む。本発明の方法でエフェクター細胞として使用されるMDMは、好ましくは、凍結ストックとして入手するか、または新鮮なものを利用する(例えば、Advanced Biotechnologies(MD)から)。最も好ましい実施形態においては、洗ってきれいにした(elutriated)ヒト単球を本発明のエフェクター細胞として使用する。洗ってきれいにしたヒト単球は活性化受容体FcγRIIIAおよびFcγRIIAならびに抑制受容体FcγRIIBを発現する。ヒト単球は市販されていて、凍結ストックとして入手し、10%ヒトAB血清を含有する基本培地中でまたはサイトカインを含むヒト血清を含有する基本培地中で解凍してもよい。これらの細胞におけるFcγRの発現レベルは、例えばFACS分析を用いて、直接測定することができる。あるいはまた、該細胞を培養してマクロファージに成熟させることもできる。FcγRIIBの発現レベルはマクロファージで増加しうる。FcγRの発現レベルを測定するのに使用しうる抗体は、限定するものではないが、抗ヒトFcγRIIA抗体、例えばIV.3-FITC;抗FcγRI抗体、例えば32.2 FITC;および抗FcγRIIIA抗体、例えば3G8-PEを含む。
本発明のADCCアッセイで使用される標的細胞は、限定するものではないが、乳癌細胞株、例えばATCC受託番号HTB-30をもつSK-BR-3(例えば、Trempら, 1976, Cancer Res. 33-41を参照);Bリンパ球;バーキットリンパ腫から誘導された細胞、例えばATCC受託番号CCL-86をもつRaji細胞(例えば、Epsteinら, 1965, J. Natl. Cancer Inst. 34:231-240を参照)、ATCC受託番号CCL-213をもつDaudi細胞(例えば、Kleinら, 1968, Cancer Res. 28: 1300-10を参照);卵巣癌細胞株、例えばATCC受託番号HTB-161をもつOVCAR-3(例えば、Hamilton, Youngら、1983を参照)、SK-OV-3、PA-1、CAOV3、OV-90、およびIGROV-1(NCIレポジトリーから入手可能;Benardら, 1985, Cancer Research, 45:4970-9;これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)が挙げられる。標的細胞はアッセイされる抗体の抗原結合部位により認識されねばならない。本発明の方法に使用する標的細胞は、癌抗原の低度、中度、または高度の発現レベルを有してもよい。癌抗原の発現レベルは、当業者に公知の慣用方法、例えばFACS分析を用いて測定することができる。例えば、本発明は、卵巣癌細胞、例えばIGROV-1(Her2/neuが様々なレベルで発現される)またはOV-CAR-3(ATCC受託番号HTB-161;SK-BR-3乳癌細胞株より低いHer2/neu発現により特徴付けられる)の使用を包含する。本発明の方法に標的細胞として使用しうる他の卵巣癌細胞株としては、OVCAR-8(Hamiltonら, 1983, Cancer Res. 43:5379-89、これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる);SK-OV-3(ATCC受託番号HTB-77);Caov-3(ATCC受託番号HTB-75);PA-1(ATCC受託番号CRL-1572);OV-90(ATCC受託番号CRL-11732);およびOVCAR-4が挙げられる。本発明の方法に使用することができる他の乳癌細胞株としては、BT-549(ATCC受託番号HTB-122)、MCF7(ATCC受託番号HTB-22)、およびHs578T(ATCC受託番号HTB-126)が挙げられ、これらは全てNCIレポジトリーおよびATCCから入手することができ、本明細書に参照により組み入れられる。本発明の方法に使用することができる他の細胞株としては、限定するものではないが、CCRF-CEM(白血病);HL-60(TB、白血病);MOLT-4(白血病);RPMI-8226(白血病);SR(白血病);A549(非小細胞肺);EKVX(非小細胞肺);HOP-62(非小細胞肺);HOP-92(非小細胞肺);NC1-H226(非小細胞肺);NC1-H23(非小細胞肺);NC1-H322M(非小細胞肺);NC1-H460(非小細胞肺);NC1-H522(非小細胞肺);COLO 205(大腸);HCC-2998(大腸);HCT-116(大腸);HCT-15(大腸);HT29(大腸);KM12(大腸);SW-620(大腸);SF-268(CNS);SF-295(CNS);SF-539(CNS);SNB-19(CNS);SNB-75(CNS);U251(CNS);LOX IMVl(黒色腫);MALME-3M(黒色腫);M14(黒色腫);SK-MEL-2(黒色腫);SK-MEL-28(黒色腫);SK-MEL-5(黒色腫);UACC-257(黒色腫);UACC-62(黒色腫);IGR-OVl(卵巣);OVCAR-3、4、5、8(卵巣);SK-OV-3(卵巣);786-0(腎);A498(腎);ACHN(腎);CAKl-1(腎);SN12C(腎);TK-1O(腎);UO-31(腎);PC-3C(前立腺);DU-145(前立腺);NCl/ADR-RES(乳房);MDA-MB-231/ATCC(乳房);MDA-MB-435(乳房);DMS 114(小細胞肺);およびSHP-77(小細胞肺)が挙げられ、これらは全てNCIから入手することができ、本明細書に参照により組み入れられる。
治療用抗体のADCC活性に及ぼす本発明の抗体の効果を測定するための代表的アッセイは、51Cr放出アッセイに基づくものであり、次のステップを含む:標的細胞を[51Cr]Na2CrO4(この細胞膜透過性分子は標識付けに常用されているが、それは、該分子が細胞質タンパク質と結合して、細胞から遅い速度で自然放出されるが、標的細胞の溶解後には大量に放出されるからである)で標識するステップ;好ましくは、標的細胞が1以上の腫瘍抗原を発現して、標的細胞の細胞表面上に発現された腫瘍抗原と免疫特異的に結合する1以上の抗体により標的細胞をオプソニン化するステップ;本発明の抗体、例えば2B6、3H7の存在下または不在下で、マイクロタイタープレートにおいて、オプソニン化された放射性標識標的細胞をエフェクター細胞と、標的細胞対エフェクター細胞の好適な比で組み合わせるステップ;細胞の混合物を好ましくは16〜18時間、好ましくは37℃でインキュベートするステップ;上清を回収するステップ;および上清サンプル中の放射活性を分析するステップ。その後、本発明の抗体の存在下または不在下での治療用抗体の細胞傷害性を、例えば、次式により決定する:比溶解%=(実験的溶解−抗体非依存性溶解/最大溶解−抗体非依存性溶解)×100%。標的:エフェクター細胞比または抗体濃度を変えることによってグラフを作成することができる。
さらに他の実施形態においては、本発明の抗体は、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)について、以前に記載された方法(例えば、Dingら, Immunity, 1998, 8:403-11を参照;これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)に従い特徴づけられる。
いくつかの実施形態においては、本発明はin vitroアッセイおよび/または動物モデルにおいて治療用抗体のADCC活性を高める際の本発明の抗体の機能を特徴づけることを包含する。
特定の実施形態においては、本発明は卵巣癌モデルおよび/または乳癌モデルを用いて腫瘍特異的ADCCを高める上での本発明のヒト化抗体の機能を測定することを包含する。
好ましくは、本発明のADCCアッセイは、少なくとも1つの癌抗原の発現により特徴づけられる(癌抗原の発現レベルは使用する癌細胞株間で様々である)、2以上の癌細胞株を用いて実施される。特定の作用機構に拘束されるものではないが、癌抗原の発現レベルが様々である2以上の細胞株においてADCCアッセイを実施すると、本発明の抗体の腫瘍クリアランスの厳格性の判定が可能になる。一実施形態においては、本発明のADCCアッセイは、癌抗原の発現レベルが異なっている癌細胞株を用いて行われる。
代表的アッセイにおいては、OVCAR3卵巣癌細胞株は腫瘍抗原Her2/neuおよびTAG-72を発現する腫瘍標的として役立ち;活性化FcγRIIIAおよびFcγRIIAと抑制FcγRIIBを発現するヒト単球はエフェクターとして使用することができ;そして腫瘍特異的マウス抗体ch4D5およびchCC49は腫瘍特異的抗体として使用することができる。OVCAR-3細胞はATCC(受託番号HTB-161)から入手することができる。好ましくは、OVCAR-3細胞は0.01mg/mlウシインスリンを補充した培地中で増殖させる。5x106個の生存OVCAR-3細胞を、年齢と体重を一致させたヌード胸腺欠損マウスにMatrigel(Becton Dickinson)とともに皮下(s.c)注射する。腫瘍の推定重量は式:長さ×(幅)2/2により計算することができ、好ましくは3グラムを超えない。足場依存性腫瘍を6〜8週後に単離し、腫瘍1g当たり1μgのコラゲナーゼ(Sigma)と5mg/mL RNaseを加えることにより細胞を解離させ、細胞ストレーナーおよびナイロンメッシュを通過させて細胞を単離する。次いで細胞を凍結して、異種移植モデルを確立するための皮下注射に備えて長期保存する。
CC49と4D5抗体を分泌するハイブリドーマは、ATCC受託番号HB-9459およびCRL-3D463から入手可能であり、重鎖および軽鎖ヌクレオチド配列は公知である(Murrayら, 1994 Cancer 73 (35): 1057-66;Yamamotoら, 1986 Nature, 319:230-4;両方とも本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。好ましくは、4D5およびCC49抗体を当業者に公知の標準方法を用いてキメラ化し、ヒトFc配列(例えば、IgG1のヒト定常領域)をマウス抗体の可変領域にグラフトしてエフェクター機能を与えるようにする。キメラ4D5およびCC49抗体はそれらの可変領域を介して標的細胞株と結合し、また、それらのFc領域を介してヒトエフェクター細胞上に発現されるFcγRと結合する。CC49はTAG-72(多くの腺癌細胞および卵巣癌上に高度に発現される高分子量ムチン)に対するものである(Lottichら, 1985 Breast Cancer Res. Treat. 6(l):49-56;Mansiら, 1989 Int. J. Rad. Appl. Instrum B. 16(2):127-35;Colcherら, 1991 Int. J. Rad. Appl. Instrum B. 18:395- 41;これらは全て本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。4D5はヒト上皮増殖因子受容体2に対するものである(Carterら, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-9)。その後本発明の抗体を利用して、抑制FcγRIIBをブロックすることにより腫瘍特異的抗体のADCC活性の向上を調べることができる。特定の作用機構に捉われるものではないが、少なくとも1つの活性化FcγR、例えばFcγRIIAを発現するエフェクター細胞が活性化されると、抑制受容体(FcγRIIB)の発現が高まり、これは、FcγRIIAのADCC活性を抑制するので、腫瘍のクリアランスを制限する。しかし、本発明の抗体はブロッキング抗体(すなわち、抑制シグナルが活性化されるのを防止する抗体)として作用し、従って活性化シグナル、例えばADCC活性がより長期間にわたり持続して、強力な腫瘍クリアランスをもたらす。
好ましくは、ADCC活性の向上に使用する本発明のヒト化抗体は、そのFcγRとの結合が減少する(最も好ましくは消失する)ように、少なくとも1つのアミノ酸改変を含むべく改変されている。いくつかの実施形態においては、本発明の抗体は、定常ドメインと活性化FcγR(例えば、FcγRIIIA、FcγRIIA)との結合を、本発明の野生型抗体と比較して低減させる一方で、最大限のFcγRIIBブロッキング活性を保持する、少なくとも1つのアミノ酸改変を含むように改変されている。本発明の抗体は当業者に公知のまたは本明細書に記載のいずれの方法によっても改変することができる。エフェクター機能を破壊することがわかっているいずれかのアミノ酸改変を、米国特許出願第60/439,498号(2003年1月9日出願);および第60/456,041号(2003年3月19日出願)(共に本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)などに開示された、本発明の方法に従って使用することができる。いくつかの実施形態においては、本発明の抗体を、265位が改変されるように、例えば265位がアラニンで置換されるように、改変する。好ましい実施形態においては、本発明の抗体のマウス定常領域を、265位のアミノ酸のアラニンによる置換を含む対応するヒト定常領域と交換して、エフェクター機能を消失させる一方、FcγRIIBブロッキング活性を維持する。IgG1重鎖の265位の単一アミノ酸変化は、ELISAアッセイに基づいて、FcγRとの結合を顕著に低減させ、腫瘍塊の縮小をもたらしたことが示されている(Jefferisら、1995, Immunol Lett 44:111-117;これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。他の実施形態においては、本発明の抗体を、297位を改変する、例えば297位をグルタミンで置換するように改変して、N結合グリコシル化部位を排除する(例えば、Jefferiesら, 1995, Immunol, lett 44: 111-7;Lundら, 1996, J. Immunol., 157:4963-69;Wrightら, 1994, J. Exp. Med. 180:1087-96;Whiteら, 1997, J. Immunol. 158:426-35を参照;これらは全て本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。この部位における改変はFcγRとの全ての相互作用を排除すると報じられている。好ましい実施形態においては、本発明の抗体のマウス定常領域を、265および/または297位のアミノ酸の置換を含む対応するヒト定常領域と交換して、エフェクター機能を排除する一方で、FcγRIIBブロッキング活性を維持するようにする。
本発明の抗体の存在下または不在下で腫瘍特異的抗体のADCC活性を測定するための代表的アッセイは、非放射性ユウロピウムに基づく蛍光アッセイ(BATDA、Perkin Elmer)であり、次のステップを含む:標的細胞を蛍光増強エステルのアセトキシルメチルエステル(該エステルの加水分解により細胞膜との親水性リガンド(TDA)を形成する)で標識するステップ(この複合体は細胞を離れられず、エフェクターによる細胞の溶解時にだけ放出される);標識した標的を、抗腫瘍抗体と本発明の抗体の存在下でエフェクター細胞に加えるステップ;標的とエフェクター細胞の混合物を6〜16時間、好ましくは37℃にてインキュベートするステップ。ADCC活性の程度は、放出されてユウロピウム(DELFIA試薬;PerkinElmer)と相互作用するリガンドの量を測定することによってアッセイすることができる。リガンドとユウロピウムは、非常に安定な高度に蛍光性のキレート(EuTDA)を生成し、測定された蛍光は溶解された細胞の数に正比例する。比溶解%は、次式により求めることができる:(実験的溶解−抗体非依存性溶解/最大限の溶解−抗体非依存性溶解)×100%。
いくつかの実施形態において、蛍光に基づくADCCアッセイの感度が治療用抗体のADCC活性を検出するには低すぎる場合、本発明は、放射性に基づくADCCアッセイ、例えば51Cr放出アッセイを包含する。放射性に基づくアッセイを、蛍光に基づくADCCアッセイの代わりに、またはそれと組み合わせて実施しうる。
本発明の抗体を特徴づけるための51Cr放出アッセイの代表例は、次のステップを含む:OVCAR-3細胞などの1〜2x106個の標的細胞を51Crで標識するステップ;標的細胞を、抗体4D5とCC49を用いて本発明の抗体の存在下および不在下でオプソニン化し、そして5 x 103個の細胞を96ウェルプレートに加えるステップ(好ましくは、4D5とCC49は1〜15μg/mLの濃度とする);オプソニン化した標的細胞を単球由来のマクロファージ(MDM)(エフェクター細胞)に加えるステップ(好ましくは、10:1〜100:1の比);細胞の混合物を16〜18時間37℃にてインキュベートするステップ;上清を回収するステップ;および上清の放射活性を分析するステップ。次いで、本発明の抗体の存在下および不在下での4D5とCC49の細胞傷害性を、例えば次式を用いて求める:比溶解%=(実験的溶解−抗体非依存性溶解/(最大溶解−抗体非依存性溶解)×100%。
いくつかの実施形態においては、本発明のFcγRIIBヒト化抗体のin vivo活性を異種移植ヒト腫瘍モデルで確認する。腫瘍は前記の癌細胞株のいずれかを用いて確立することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍を2つの癌細胞株(癌抗原の低発現を特徴とする第1の癌細胞株と、同じ癌抗原の高発現を特徴とする第2の癌細胞株)を用いて確立する。その後、腫瘍のクリアランスは、当業者に公知の方法を用いて、第1および第2の癌細胞株上の癌抗原と免疫特異的に結合する抗腫瘍抗体と、ヒト単球およびMDMをエフェクター細胞として養子移入された適当なマウスモデル、例えばBalb/cヌードマウスモデル(例えば、Jackson Laboratories, Taconic)を利用して、判定することができる。次いで前記の抗体のいずれかをこの動物モデルで試験して、腫瘍クリアランスにおける本発明の抗FcγRIIB抗体の役割を評価することができる。本発明に使用することができるマウスとしては、例えばFcγRIII-/-(FcγRIIIAがノックアウトされる);Fcγ-/-ヌードマウス(FcγRIおよびFcγRIIIAがノックアウトされる);またはヒトFcγRIIBノックインマウスまたはトランスジェニックノックインマウス(マウス染色体1のfcgr2およびfcgr3遺伝子座が不活性化され、該マウスがヒトFcγRIIA、ヒトFcγRIIA、ヒトFcγRIIB、ヒトFcγRIIC、ヒトFcγRIIIA、およびヒトFcγRIIIBを発現する)が挙げられる。
本発明の抗体のin vivo活性を試験するための代表的方法は、次のステップを含む:癌抗原の発現を特徴とする癌細胞株を用いて異種移植マウスモデルを確立するステップ;および、腫瘍クリアランスを媒介する上での、癌細胞株に発現された癌抗原に特異的な抗体に対する本発明の抗体の効果を判定するステップ。好ましくは、そのin vivo活性は2つの癌細胞株(第1の癌細胞株は第1の癌抗原が低レベルで発現されることを特徴とし、第2の癌細胞株は同じ癌抗原が第1の癌細胞株と比較して高いレベルで発現されることを特徴とする)を用いて並行して試験する。従って、これらの実験は腫瘍クリアランスにおける本発明の抗体の役割の評価の厳格性を高めるだろう。例えば、腫瘍をIGROV-1細胞株により確立し、そしてHer2/neu特異的抗体の腫瘍クリアランスにおける本発明の抗FcγRIIB抗体の効果を評価する。異種移植腫瘍モデルを確立するためには、5x106個の生存細胞、例えばIGROV-1、SKBR3を、例えばマウス(例えば、8匹の年齢と体重を一致させた雌性ヌード胸腺欠損マウス)に、例えばMatrigel(Becton Dickinson)を用いて、例えば皮下に、注射する。腫瘍の推定重量は式:長さ×(幅)2/2により計算することができ、好ましくは3グラムを超えない。IGROV-1細胞の皮下注射は急速増殖する腫瘍を生じさせ、一方腹腔内経路は腹膜癌腫症を誘発し、マウスは2ヶ月で死亡する(Benardら, 1985, Cancer Res. 45: 4970-9)。IGROV-1細胞は5週以内に腫瘍を形成するので、腫瘍細胞注射後の1日目に、エフェクターとしての単球を、Her2/neuに特異的な治療用抗体(例えばCh4D5)および本発明の抗体(例えば前記のキメラ2B6または3H7)とともに、腹腔内に同時注射する。好ましくは、抗体はマウス体重(mbw)1g当たりそれぞれ4μgを注射する。最初の注射に続いて、抗体の注射を毎週、4〜6週間にわたって2μg/wkにて行う。ヒトエフェクター細胞を2週に1回補充する。マウスの1グループには治療用抗体を投与せず、抗腫瘍抗体および抗FcγRIIB抗体に対するアイソタイプ対照抗体としてN297A突然変異を含むキメラ4D5およびヒトIgG1を注射する。マウスを4グループに分けて、週3回モニ
ターする。
以下の表3は、本発明による腫瘍クリアランス研究の代表的な設定条件である。表3に示すように、6グループ(各グループ8匹のマウス)が腫瘍クリアランスにおける本発明の抗体の役割を試験するのに必要であり、その際、1つの標的とエフェクター細胞の組合せが使用され、また、2つの異なる抗体濃度の組合せが使用される。グループAでは腫瘍細胞だけを注射し;グループBでは腫瘍細胞と単球を注射し;グループCでは腫瘍細胞、単球、抗腫瘍抗体(ch4D5)を注射し;グループDでは腫瘍細胞、単球、抗腫瘍抗体、および抗FcγRII抗体を注射し;グループEでは腫瘍細胞、単球および抗FcγRIIB抗体を注射し;グループFでは腫瘍細胞、単球、Ch4D5(N297Q)、およびヒトIgG1を注射する。当業者は、様々な抗体濃度の様々な抗体組合せを、記載した腫瘍モデルで試験できることを理解するであろう。好ましくは、乳癌細胞株(例えばSKBR3)を用いる研究を上記の実験と並行して実施する。
異種移植腫瘍モデルの終点は、腫瘍のサイズ、マウスの体重、生存期間および癌の組織化学的および組織病理学的試験に基づいて、当業者に公知の方法を用いて決定される。表3のマウスのグループをそれぞれ評価する。好ましくはマウスを週3回モニターする。腫瘍増殖の判定基準は、腹部膨張、腹腔の明白な塊の存在とする。好ましくは、接種後の日数に対する腫瘍重量の概算値を計算する。グループDのマウスの上記判定基準の、他のグループとの比較は、腫瘍クリアランスの向上における本発明の抗体の役割を規定するであろう。好ましくは、抗体で処置した動物は、対照グループの後さらに2ヶ月間観察下に置かれる。
代わりの実施形態においては、エフェクター細胞を養子移入するのではなく、マウスエフェクター細胞上にヒトFcγRIIBを発現するヒトFcγRIIB「ノックイン」マウスを、本発明の抗体のin vivo活性を確立するために用いることができる。ヒトFcγRIIBを発現する創始者マウスは、マウスFcγRIIB遺伝子座へのヒトFcγRIIBの「ノックイン」により作製することができる。次いで創始者をヌードバックグラウンドと戻し交配すると、ヒトFcγRIIB受容体を発現するだろう。得られるマウスエフェクター細胞は内在性の活性化FcγRIAおよびFcγRIIIAならびに抑制ヒトFcγRIIB受容体を発現する。
本発明のヒト化抗体のin vivo活性はさらに、ヒト一次腫瘍由来の細胞(例えば、ヒト一次卵巣および乳癌由来の細胞)を有する異種移植マウスモデルで試験することができる。癌患者からの腹水および胸膜浸出液サンプルをHer2/neuの発現について当業者に公知の方法を用いて試験する。卵巣癌患者からのサンプルは、腹水を6370gで20分間4℃にて遠心沈降させ、赤血球を溶解し、細胞をPBSで洗浄することにより処理する。腫瘍細胞においてHer2/neuの発現が確認されたら、異種移植腫瘍モデルを確立するための皮下接種用に2つのサンプル、中度および高度の発現細胞、を選択する。次いで単離した腫瘍細胞をマウス中に腹腔内注射して細胞を増殖させる。10匹ほどのマウスに腹腔内注射し、それぞれのマウス腹水をさらに2匹のマウスに継代して、合計20匹のマウスから腹水を取得し、それを用いると80匹のマウスのグループに注射することができる。胸膜浸出液サンプルも腹水と同様の方法を用いて処理することができる。胸膜浸出液サンプルからのHer2/neu+腫瘍細胞をマウスの右上および左上の乳房パッドに注射する。
いくつかの実施形態において、腹水または胸膜浸出液サンプル中の新生物細胞の割合が他の細胞サブセットと比較して低い場合は、新生物細胞をin vitroで増やすことができる。他の実施形態においては、腫瘍細胞を、CC49抗体(抗TAG-72)でコーティングした磁性ビーズを用いて、以前に記載された通りに精製することができる(例えば、Barkerら, 2001, Gynecol. Oncol. 82:57,63を参照、これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。簡単に説明すると、CC49抗体でコーティングした磁性ビーズを用いて卵巣腫瘍細胞を分離し、37℃にて一夜インキュベーションして細胞をビーズから分離する。いくつかの実施形態においては、腫瘍細胞がTAG-72抗原を欠くのであれば、抗体カクテル、例えばStem Cell Technologies, Inc.(カナダ)から提供される抗体カクテルを用いるネガティブ枯渇(negative depletion)を利用して腫瘍細胞を富化してもよい。
他の実施形態においては、Her2/neuのほかに、他の腫瘍マーカーを用いて、腹水および胸膜浸出液サンプルから得られる腫瘍細胞を非腫瘍細胞から分離することができる。胸膜浸出液または乳房組織の場合には、最近、CD44(接着分子)、B38.1(乳癌/卵巣癌特異的マーカー)、CD24(接着分子)をマーカーとして利用しうることが報じられた(例えば、Al Hajjら, 2003, Proc. Natl. ACAD. Sci. USA 100:3983, 8を参照のこと;これは本明細書に参照によりその全てが組み入れられる)。腫瘍細胞が精製されたら、これを増やすためにマウスに皮下注射することができる。
好ましくは、患者の腹水および胸膜浸出液に対して免疫組織化学および組織化学的手法を実施して、新形成の構造的特徴を分析する。このような方法は当業者に公知であって、本発明に包含される。モニターしうるマーカーは、例えばサイトケラチン(炎症性および間葉細胞から卵巣新生物および中皮細胞を同定するため);カルレチニン(Her2neu陽性新生物細胞から中皮細胞を分離するため);およびCD45(サンプル中の細胞集団の残りから炎症性細胞を分離するため)を含む。続いてのさらなるマーカーは、CD3(T細胞)、CD20(B細胞)、CD56(NK細胞)、およびCD14(単球)を含む。当業者は、上記の免疫組織化学および組織化学的手法が、本発明の方法に用いるいずれの腫瘍細胞にも同様に応用しうることを理解するであろう。腫瘍細胞の皮下接種後に、マウスの臨床的および解剖学的変化を追跡する。必要により、マウスを剖検して、全腫瘍負荷を特定の器官局在化と関係づけてもよい。
特定の実施形態においては、腫瘍はIGROV-I、OVCAR-8、SK-B、およびOVCAR-3細胞などの癌細胞株ならびにヒト卵巣癌腹水および乳癌患者からの胸膜滲出液を用いて確立される。腹水は試験しようとする抗体に対する腫瘍標的とエフェクターの両方を含有することが好ましい。ヒト単球をエフクターとして移入してもよい。
5.3 予防および治療方法
本発明は、抗体に基づく療法であって、1以上の本発明のヒト化抗体を動物、好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒトに投与することを含み、FcγRIIBの異常なレベルまたは活性に関連する疾患、障害、または感染症、および/またはFcγRIIB活性に関連する免疫機能を改変するかもしくは第2の治療用抗体の細胞傷害活性を増大させるかもしくはワクチン組成物の効力を増大させることにより治療可能な疾患、障害、または感染症、に関連する症状を予防、治療、または改善するための上記療法を包含する。いくつかの実施形態においては、1以上の本発明の抗体の投与による治療は、1以上の治療、例えば、限定するものではないが、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、および/または生物学的療法/免疫療法と組み合わせて行われる。
FcγRIIB(CD32B)は以下の組織型で発現されることが見出されている:脂肪細胞、B細胞、骨、脳、軟骨、結腸、内分泌、眼、胎児、消化管、尿生殖器、生殖細胞、頭頸部、腎、肺、リンパ節、リンパ細網、乳腺、筋肉、神経、卵巣、膵臓、ランゲルハンス島、脳下垂体、胎盤、網膜、皮膚、軟部組織、滑膜、および子宮(米国立癌研究所のCancer Genome Anatomy Projectから入手したデータ)。従って、本発明のヒト化抗体はこれらの組織のいずれかにおけるFcγRIIBの活性にアゴニスト作用またはアンタゴニスト作用を及ぼすために用いることができる。例えば、FcγRIIBは胎盤で発現されるので、胎児へのIgGの輸送およびまた免疫複合体の一掃にある役割を果たしうる(Lydenら, 2001, J. Immunol. 166:3882-3889)。本発明のある特定の実施形態においては、ヒト化FcγRIIB抗体を流産促進薬として用いることができる。
本発明の予防用および治療用化合物には、限定するものではないが、タンパク質性分子、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質(翻訳後修飾されたタンパク質を含む、抗体など;小分子(1000ダルトン未満)、無機もしくは有機化合物;核酸分子、例えば二本鎖もしくは一本鎖DNA、二本鎖もしくは一本鎖RNA、ならびに三重らせん核酸分子が含まれる。予防用および治療用化合物は、公知のいずれかの生物(動物、植物、細菌、真菌、寄生生物、もしくはウイルスを含むがこれらに限らない)、または合成分子のライブラリーに由来するものでありうる。
ヒト化抗体は当技術分野で公知のまたは本明細書に記載の薬学的に許容される組成物として提供することができる。以下で詳しく説明するように、本発明のヒト化抗体は癌(特に、癌ワクチンの受動免疫療法もしくは有効性を高めるため)、自己免疫疾患、炎症性疾患、またはアレルギー(例えば、アレルギー治療用のワクチンの有効性を高めるため)を治療する方法において用いることができる。
疾患、障害、もしくは感染症の予防薬および/または治療薬として機能する本発明のヒト化抗体を、疾患、障害、もしくは感染症に関連する1以上の症状を治療、予防または改善するために、動物、好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒトに投与することができる。本発明の抗体を、FcγRIIBの異常レベルまたは活性に関連するか、かつ/またはFcγRIIB活性に関連する免疫機能を改変することにより治療可能な疾患、障害、もしくは感染症を治療、予防または管理するのに有用な1以上の他の予防薬および/または治療薬と組み合わせて投与することができる。ある特定の実施形態においては、本発明の1以上の抗体を哺乳動物、好ましくはヒトに、癌治療に有用な他の1以上の治療薬とともに同時に投与する。用語「同時に」は、予防薬または治療薬を正確に同じ時点に投与することに限定されるのでなく、むしろ本発明の抗体と他の薬剤を被験者に連続的かつ本発明の抗体が他の薬物と一緒に作用しうるような時間間隔内に投与して、それらがそのように投与されなかった場合よりも増加した利益を与えることを意味する。例えば、それぞれの予防薬または治療薬を同じ時点で投与するかまたは異なる時点でいずれかの順序で続けて投与してもよい;しかし、もし同じ時点で投与しない場合、それらは十分近い時点で投与して所望の治療効果または予防効果をもたらすようにするべきである。それぞれの治療薬を別々に、いずれの適当な剤形で、そしていずれの好適な経路により投与してもよい。
様々な実施形態においては、予防薬または治療薬を1時間未満だけ離して、約1時間離して、約1時間〜約2時間離して、約2時間〜約3時間離して、約3時間〜約4時間離して、約4時間〜約5時間離して、約5時間〜約6時間離して、約6時間〜約7時間離して、約7時間〜約8時間離して、約8時間〜約9時間離して、約9時間〜約10時間離して、約10時間〜約11時間離して、約11時間〜約12時間離して、24時間以下離してまたは48時間以下離して投与する。好ましい実施形態においては、2以上の成分を同じ患者通院の際に投与する。
本明細書中で提供される投与量と投与頻度は、治療上有効かつ予防上有効という用語によって包含される。投与量と投与頻度はさらに、典型的には、それぞれの患者に特有の要因によって、投与される特定の治療薬または予防薬、癌の重症度およびタイプ、投与経路、ならびに患者の年齢、体重、応答、および過去の病歴に応じて変化しうる。当業者はこのような要因を考慮することにより、そして例えば文献に報告されかつPhysician's Desk Reference(第56版、2002)に推奨される投与量に従って、好適な治療計画を選択することができる。
本発明のヒト化抗体はまた、FcγRIIBを増大させ(例えば、該抗体と相互作用するエフェクター細胞の数または活性を増大させるように作用し)、かつ免疫応答を増大させる、他のモノクローナルもしくはキメラ抗体、Fc融合タンパク質と組み合わせて、またはリンホカイン、サイトカインもしくは造血性増殖因子(例えば、IL-2、IL-3、IL-4、IL-7、IL-10およびTGF-βなど)と併用して、有利に用いることができる。ある特定の実施形態においては、サイトカインを抗FcγRIIB抗体とコンジュゲートする。
本発明のヒト化抗体はまた、例えば、以下の第5.4.6節および第5.4.5節に詳しく記載するように、疾患、障害、もしくは感染症を治療するために用いる1以上の薬物、例えば抗癌剤、抗炎症薬または抗ウイルス薬と一緒に有利に用いることができる。
5.3.1 癌
本発明のヒト化抗体は単独で、または当技術分野で公知の他の治療用抗体と一緒に用いて原発性腫瘍の増殖または癌性細胞の転移を防止、抑制もしくは低減することができる。一実施形態においては、本発明のヒト化抗体を癌免疫療法に用いる抗体と一緒に用いることができる。本発明は、このような免疫療法の効力を、治療用抗体のエフェクター機能(例えば、ADCC、CDC、食作用、オプソニン作用など)の効力を増大させることにより、強化するための、本発明のヒト化抗体と他の治療用抗体との併用を包含する。特定の作用機構により束縛されることを意図しないが、本発明の抗体は、好ましくは単球およびマクロファージ上の、FcγRIIBをブロックして、例えば、FcγRの活性化を介する腫瘍のクリアランスを強化することにより、治療上の利益である腫瘍特異的抗体の臨床上の効力を増大させる。
従って、本発明は、癌抗原と特異的に結合しかつ細胞傷害性である他の抗体と組み合わせて投与するときに、ある癌抗原により特徴づけられる癌を予防または治療する方法を提供する。本発明のヒト化抗体は、特に細胞傷害活性をもつ癌抗原特異的治療用抗体の細胞傷害活性を強化して本発明の抗体による腫瘍細胞死滅を強化する上で、および/または例えば治療用抗体のADCC活性またはCDC活性を増大する上で、癌の予防または治療に有用である。本発明のある特定の実施形態においては、本発明のヒト化抗体をFc融合タンパク質とともに投与する。特定の実施形態においては、本発明のヒト化抗体は、単独でまたは細胞傷害性治療用抗体と組み合わせて投与すると、原発性腫瘍の増殖または癌細胞の転移を、本発明の上記抗体の不在のもとでの原発性腫瘍の増殖または転移と比較して、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも25%、少なくとも20%、または少なくとも10%だけ抑制または低減する。好ましい実施形態においては、細胞傷害性治療用抗体と組み合わせた本発明のヒト化抗体は、原発性腫瘍の増殖または癌の転移を、上記抗体の不在のもとでのその増殖または転移と比較して、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも25%、少なくとも20%、または少なくとも10%だけ抑制または低減する。
正常状態から悪性状態への移行は、遺伝的およびエピジェネティックな変化を含む多段階プロセスである。実際、この進行を容易にする多数の変化が細胞調節回路に起こって、それにより腫瘍細胞は、通常、組織ホメオスタシスを調節する終末分化と静止状態との連帯を免れうるようになる。ある特定の遺伝子は癌細胞の浸潤および転移可能性と関係付けられ、そのような遺伝子とは例えばCSF-1(コロニー刺激因子1またはマクロファージコロニー刺激因子)である。特定の作用機構に束縛されることを意図しないが、CSF-1は腫瘍部位にマクロファージを動員して腫瘍の進行を促進することにより、腫瘍進行および転移を媒介しうる。マクロファージは、恐らく血管新生因子(例えばチミジンホスホリラーゼ、血管内皮由来増殖因子など)の分泌、増殖因子(例えば腫瘍細胞上で傍分泌因子として作用しうる上皮増殖因子など)の分泌により、腫瘍の進行および転移を媒介し、従って、血管中への腫瘍細胞遊走および浸潤を促進する上で栄養的役割を有すると考えられる(例えば、Linら, 2001, J. Exp. Med. 193(6):727-739;Linら, 2002, Journal of Mammary Gland Biology and Neoplasam 7(2):147-162;Schollら, 1993, Molecular Carcinogenesis, 7:207-11;Clynesら, 2000, Nature Medicine, 6(4):443-446;Fidlerら, 1985, Cancer Research, 45:4714-26を参照)。
本発明は、本発明のヒト化抗体を用いてマクロファージ介在性腫瘍細胞進行および転移をブロックすることを包含する。本発明の抗体は、マクロファージ浸潤が起こる固形腫瘍を治療する上で特に有用である。本発明のアンタゴニスト性抗体は、腫瘍部位に局在化するマクロファージの集団を低減または排除することにより、腫瘍細胞転移を制御、例えば低減または排除するのに特に有用である。いくつかの実施形態においては、本発明のヒト化抗体は単独で腫瘍細胞転移を制御するために使用される。特定の作用機構に束縛されることを意図しないが、単独で投与すると、本発明のアンタゴニスト性抗体は、マクロファージ上の抑制性FcγRIIBと結合し、そして効果的にマクロファージの集団を縮小し、従って腫瘍細胞進行を制限する。FcγRIIBは活性化された単球およびマクロファージ(腫瘍浸潤性マクロファージを含む)上に優先的に発現されるので、本発明のアンタゴニスト性抗体は腫瘍部位に局在するマクロファージを低減するか、または好ましくは排除する。いくつかの実施形態においては、本発明のヒト化抗体は、限定するものではないが、乳癌、子宮癌および卵巣癌を含む、CSF-1の過剰発現により特徴づけられる癌の治療に使用される。
本発明はさらに、FcγRIIBを発現するマクロファージ以外の免疫細胞、例えば樹状細胞およびB細胞を効果的に枯渇または排除するヒト化抗体を包含する。本発明の抗体を用いる免疫細胞の効果的な枯渇または排除は、免疫細胞の集団の50%、60%、70%、80%、好ましくは90%、そして最も好ましくは99%までの低減でありうる。従って、本発明のヒト化抗体は、単独で、または第2の抗体(例えば、抗腫瘍抗体、抗ウイルス抗体、および抗微生物抗体などの治療用抗体)と組み合わせて治療効力を増大させる。いくつかの実施形態においては、治療用抗体は癌細胞または炎症性細胞に対して特異性を有する。他の実施形態においては、第2抗体は正常細胞と結合する。特定の作用機構に束縛されることを意図しないが、FcγRIIBを発現する免疫細胞を除去するために本発明の抗体を単独で使用する場合、細胞集団が再分散され、残存する細胞が効率的に活性化Fc受容体を有することになり、したがってFcγRIIBによる抑制が軽減される。第2抗体(例えば治療用抗体)と共に用いる場合は、第2抗体の効力が該抗体のFc介在性エフェクター機能を増大させることにより高められる。
本発明の方法および組成物により治療または予防することができる癌および関係する障害としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:白血病(例えば、限定するものではないが、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病(例えば骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病性白血病(erytroleukemia leukemias)および脊髄異形成症候群)、慢性白血病(例えば、限定するものではないが、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病、毛様細胞性白血病));真性赤血球増加症(polycythemia vera);リンパ腫(例えば、限定するものではないが、ホジキン病、非ホジキン病);多発性骨髄腫(例えば、限定するものではないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、単発性形質細胞腫および髄外形質細胞腫);ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症;良性モノクローナル免疫グロブリン血症;重鎖病;骨および結合組織肉腫(例えば、限定するものではないが、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫瘍、骨の線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟組織肉腫、血管肉腫(hemangiosarcoma)、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫);脳腫瘍(例えば、限定するものではないが、神経膠腫、星細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣細胞腫、乏突起膠腫、非神経膠腫、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体腫、松果体芽細胞腫、原発性脳リンパ腫);乳癌(例えば、限定するものではないが、腺癌、小葉(小細胞)癌、腺管内癌、髄様乳癌、粘液性乳癌、管状腺乳癌、乳頭状乳癌、パジェット病、および炎症性乳癌);副腎癌(例えば、限定するものではないが、褐色細胞腫および副腎皮質性癌);甲状腺癌(例えば、限定するものではないが、乳頭性または濾胞性甲状腺癌、髄様甲状腺癌および未分化甲状腺癌);膵臓癌(例えば、限定するものではないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、およびカルチノイドまたは島細胞腫瘍);下垂体癌(例えば、限定するものではないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、および尿崩症);眼癌(例えば、限定するものではないが、眼黒色腫(例えば虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫、および毛様体黒色腫、および網膜芽細胞腫));膣癌(例えば、限定するものではないが、扁平上皮細胞癌、腺癌、および黒色腫);外陰部癌(例えば、限定するものではないが、扁平上皮細胞癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、およびパジェット病);子宮頸癌(例えば、限定するものではないが、扁平上皮細胞癌、および腺癌);子宮癌(例えば、限定するものではないが、子宮内膜癌および子宮肉腫);卵巣癌(例えば、限定するものではないが、卵巣上皮癌、境界型腫瘍、生殖細胞腫瘍、および間質腫瘍);食道癌(例えば、限定するものではないが、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘液性類表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、いぼ状癌、および燕麦細胞(小細胞)癌);胃癌(例えば、限定するものではないが、腺癌、肉芽腫性(ポリープ状)、潰瘍性、表在拡大型、散在拡大型、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫);結腸癌;直腸癌;肝臓癌(例えば、限定するものではないが、肝細胞性癌および肝芽腫、胆嚢癌(例えば、限定するものではないが、腺癌));胆管癌(例えば、限定するものではないが、乳頭状癌、結節型および散在型);肺癌(例えば、限定するものではないが、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌および小細胞肺癌);精巣癌(例えば、限定するものではないが、胚細胞腫瘍、精上皮腫、未分化、古典的(典型的)、精母細胞、非精上皮腫、胚性癌、テラトーマ癌、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍));前立腺癌(例えば、限定するものではないが、腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫);陰茎癌;口腔癌(例えば、限定するものではないが、扁平上皮細胞癌);基底癌;唾液腺癌(例えば、限定するものではないが、腺癌、粘膜表皮性癌、および腺様嚢胞癌);咽頭癌(例えば、限定するものではないが、扁平上皮細胞癌、およびいぼ状);皮膚癌(例えば、限定するものではないが、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌および黒色腫(表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、黒子悪性黒色腫、末端部黒子黒色腫));腎臓癌(例えば、限定するものではないが、腎細胞癌、腺癌、副腎腫、線維肉腫、移行細胞癌(腎盂および/または子宮));ウィルムス腫瘍;膀胱癌(例えば、限定するものではないが、移行細胞癌、扁平上皮細胞癌、腺癌、癌肉腫)。さらに、癌としては、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管内皮肉腫、中皮腫、骨膜腫、血管芽細胞腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原生癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌および乳頭腺癌が挙げられる(このような障害の総説としては、Fishmanら, 1985, Medicine, 第2版, J.B. Lippincott Co., Philadelphia、およびMurphyら, 1997, Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, Penguin Books U.S.A., Inc., United States of Americaを参照)。
従って、本発明の方法と組成物はまた、様々な癌もしくは他の異常増殖性疾患の治療または予防に有用であり、それらの疾患としては(限定するものではないが)、以下が挙げられる:癌(例えば、膀胱、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺および皮膚の癌;例えば扁平上皮細胞癌);リンパ系統の造血性腫瘍(例えば、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫);骨髄球性系統の造血性腫瘍(例えば、急性および慢性骨髄性白血病および前骨髄球性白血病);間葉起源の腫瘍(例えば、線維肉腫および横紋筋肉腫);他の腫瘍(例えば、黒色腫、精上皮腫、奇形癌、神経芽細胞腫および神経膠腫);中枢および末梢神経性系の腫瘍(例えば、星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、および神経鞘腫);間葉起源の腫瘍(例えば、線維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫);および他の腫瘍(例えば、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞性癌および奇形癌)。アポトーシスにおける異常により生じる癌を本発明の方法と組成物により治療することも意図される。このような癌としては、限定するものではないが、濾胞性リンパ腫、p53突然変異をもつ癌、ホルモン依存性の乳房、前立腺および卵巣腫瘍、ならびに前癌病変、例えば家族性腺腫様ポリープ症、および骨髄形成異常症候群が挙げられる。特定の実施形態においては、卵巣、膀胱、乳房、結腸、肺、皮膚、膵臓、もしくは子宮における悪性腫瘍または異常増殖性変化(例えば、化生および異形成症)、または過剰増殖性障害を本発明の方法と組成物により治療または予防する。他の特定の実施形態においては、肉腫、黒色腫、もしくは白血病を本発明の方法と組成物により治療または予防する。
癌抗原と関係する癌は、癌抗原と結合しかつ細胞傷害性である抗体と組み合わせて、本発明の抗体の投与により治療または予防することができる。ある特定の実施形態においては、本発明の抗体は、特定の癌抗原に対する抗体の、抗体依存性細胞傷害性効果を増大させる。例えば、限定するものではないが、以下の癌抗原と関係する癌は、本発明の方法および組成物により治療または予防することができる:KS 1/4汎癌抗原(PerezおよびWalker, 1990, J. Immunol. 142:32-37;Bumal, 1988, Hybridoma 7(4):407-415)、卵巣癌抗原(CA125)(Yuら, 1991, Cancer Res. 51(2):48-475)、前立腺酸性ホスファターゼ(Tailorら, 1990, Nucl. Acids Res. 18(1): 4928)、前立腺特異的抗原(HenttuおよびVihko, 1989, Biochem. Biophys. Res. Comm. 10(2):903-910;Israeliら, 1993, Cancer Res. 53:227-230)、黒色腫関連抗原p97(Estinら, 1989, J. Natl. Cancer Instit. 81(6):445-44)、黒色腫抗原gp75(Vijayasardahlら, 1990, J. Exp. Med. 171(4):1375-1380)、高分子量黒色腫抗原(HMW-MAA)(Nataliら, 1987, Cancer 59:55-3;Mittelmanら, 1990, J. Clin. Invest. 86:2136-2144))、前立腺特異的膜抗原、癌胎児性抗原(CEA)(Foonら, 1994, Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 13:294)、多形性上皮ムチン抗原、ヒト乳脂肪小球抗原、結腸直腸腫瘍関連抗原、例えば:CEA、TAG-72(Yokataら, 1992, Cancer Res. 52: 3402-3408)、CO17-1A(Ragnhammarら, 1993, Int. J. Cancer 53:751-758);GICA 19-9(Herlynら, 1982, J Clin. Immunol. 2: 135)、CTA-1およびLEA、バーキットリンパ腫抗原38.13、CD19(Ghetieら, 1994, Blood 83: 1329-1336)、ヒトB-リンパ腫抗原-CD20(Reffら, 1994, Blood 83:435-445)、CD33(Sgourosら, 1993, J. Nucl. Med. 34:422-430)、黒色腫特異的抗原(例えばガングリオシドGD2(Salehら, 1993, J. Immunol., 151,3390-3398)、ガングリオシドGD3(Shitaraら, 1993, Cancer Immunol. Immunother. 36:373-380)、ガングリオシドGM2(Livingstonら, 1994, J. Clin. Oncol. 12: 1036-1044)、ガングリオシドGM3(Hoonら, 1993, Cancer Res. 53: 5244- 5250))、細胞表面抗原の腫瘍特異的移植型(TSTA)(例えばウイルスにより誘導された腫瘍抗原、例えばT-抗原DNA腫瘍ウイルスおよびRNA腫瘍ウイルスのエンベロープ抗原)、腫瘍胎児性抗原-α-フェトプロテイン(例えば結腸、膀胱腫瘍胎児性抗原のCEA(Hellstromら, 1985, Cancer. Res. 45:2210-2188))、分化抗原(例えばヒト肺癌抗原L6、L20(Hellstromら, 1986, Cancer Res. 46:3917-3923))、線維肉腫の抗原、ヒト白血病T細胞抗原-Gp37(Bhattacharya-Chatterjeeら、1988、J. of Immun. 141:1398-1403)、ネオ糖タンパク質、スフィンゴ脂質、乳癌抗原(例えばEGFR(上皮増殖因子受容体))、HER2抗原(p185HER2)、多形性上皮ムチン(PEM)(Hilkensら, 1992, Trends in Bio. Chem. Sci. 17:359)、悪性ヒトリンパ球抗原-APO-1(Bernhardら, 1989, Science 245:301-304)、分化抗原(Feizi, 1985, Nature 314:53-57)(例えば、胎性赤血球および一次内胚葉に見出されるI抗原、胃腺癌に見出されるI(Ma)、乳上皮に見出されるM18およびM39、骨髄性細胞に見出されるSSEA-1、結腸直腸癌に見出されるVEP8、VEP9、Myl、VIM-D5、およびD156-22、TRA-1-85(血液型H)、結腸腺癌に見出されるC14、肺腺癌に見出されるF3、胃癌に見出されるAH6、Yハプテン、胚性癌細胞に見出されるLey、TL5(血液型A)、A431細胞に見出されるEGF受容体、膵臓癌に見出されるE1シリーズ(血液型B)、胚性癌細胞に見出されるFC10.2、胃腺癌、腺癌に見出されるCO-514(血液型Lea)、腺癌に見出されるNS-10、結腸腺癌に見出されるCO-43(血液型Leb)、G49、EGF受容体、(血液型群ALeb/Ley)、結腸癌に見出される19.9、胃癌ムチン、骨髄細胞に見出されるT5A7、黒色腫に見出されるR24、胚性癌細胞に見出される4.2、GD3、D1.1、OFA-1、GM2、OFA-2、GD2、M1:22:25:8、ならびに4〜8細胞胚に見出されるSSEA-3、SSEA-4。他の実施形態においては、抗原は皮膚T細胞リンパ腫からのT細胞受容体由来ペプチドである(Edelson, 1998, The Cancer Journal 4:62を参照)。
本発明のヒト化抗体を当技術分野で公知のいずれかの治療用癌抗体と併用して治療効力を増大させることができる。例えば、本発明のヒト化抗体を、癌治療での治療上の効用が示されている表4の抗体のいずれかとともに用いることができる。本発明のヒト化抗体は、上記治療用癌抗体の少なくとも1つの抗体介在性エフェクター機能を増大させることにより治療用癌抗体の治療効力を増大させる。ある特定の実施形態においては、ヒト化抗体は、上記治療用癌抗体の補体依存性カスケードを増強することによりその治療効力を増大させる。本発明の他の実施形態においては、本発明のヒト化抗体は、標的化した腫瘍細胞の食作用とオプソニン作用を増強することによりその治療効力を増大させる。本発明の他の実施形態においては、本発明のヒト化抗体は、標的化した腫瘍細胞の破壊における抗体依存性細胞介在性細胞傷害(「ADCC」)を増強することによりその治療効力を増大させる。
本発明のヒト化抗体は、生得および獲得免疫応答のアクチベーターとして開発されたか(Coley Pharmaceuticals)または現在開発中であるシトシン-グアニンジヌクレオチド(「CpG」)系製品と併用することもできる。例えば、本発明は、癌を治療および/または予防するための本発明の方法と組成物における、CpG 7909、CpG 8916、CpG 8954(Coley Pharmaceuticals)の使用を包含する(Warrenら, 2002, Semin Oncol., 29 (1 Suppl 2):93-7;Warrenら, 2000, Clin Lymphoma, 1(1):57-61も参照、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
本発明のヒト化抗体は、細胞死滅を介してその治療効果を仲介しない治療用抗体と併用して、該抗体の治療活性を強化することができる。特定の実施形態においては、本発明はアゴニスト活性を有する治療的アポトーシス誘導抗体(例えば抗Fas抗体)と組み合わせた本発明の抗体の使用を包含する。抗Fas抗体は当技術分野で公知であり、例えば、Jo2(Ogasawaraら, 1993, Nature 364:806)およびHFE7(Ichikawaら, 2000, Int. Immunol. 12:555)を含む。特定の作用機構に束縛されることを意図しないが、FcγRIIBは、抗Fas介在性アポトーシスを促進することが示唆されており、例えば、Xuら, 2003, Jounal of Immunology, 171: 562-568を参照されたい。実際、FcγRIIBの細胞外ドメインはFas受容体に対する架橋剤として役立ち、機能性複合体を形成させてFas依存性アポトーシスを促進することができる。いくつかの実施形態においては、本発明の抗体は抗Fas抗体とFcγRIIBの相互作用をブロックし、Fas介在性アポトーシス活性の低減をもたらす。Fas介在性アポトーシス活性の低下をもたらす本発明の抗体は、望ましくない副作用(例えば肝毒性)を有する抗Fas抗体と組み合わせると特に有用である。他の実施形態においては、本発明の抗体は抗Fas抗体とFcγRIIBの相互作用を増大させ、Fas介在性アポトーシス活性の増大をもたらす。アゴニスト活性を有する治療的アポトーシス誘導抗体と本発明の抗体との組合せは、増大した治療効力を有する。
本発明の方法で用いる治療的アポトーシス誘導抗体は、アポトーシス経路をモジュレートすることが当技術分野で公知のいずれかのデス受容体(例えば、TNFR受容体ファミリー)に特異的であってもよい。
本発明は、アポトーシス介在シグナル伝達が損なわれている疾患(例えば、癌、自己免疫疾患)を治療する方法を提供する。特定の実施形態においては、本発明は不十分なFas介在アポトーシスを伴う疾患を治療する方法を包含し、該方法は本発明の抗体を抗Fas抗体と組み合わせて投与することを含む。
いくつかの実施形態においては、本発明のアゴニスト性抗体は、黒色腫細胞の腫瘍をはじめとする非造血性由来の腫瘍を治療するのに特に有用である。特定の作用機構に束縛されるものではないが、本発明のアゴニスト性抗体の効力は、部分的には、黒色腫細胞の腫瘍をはじめとする非造血性由来の腫瘍がFcγRIIBを発現することによる、FcγRIIB抑制経路の活性化に起因する。最近の実験は、実際、黒色腫細胞におけるFcγRIIBの発現は、抗腫瘍抗体との直接的な相互作用により(例えば、抗腫瘍抗体のFc領域と結合することにより)細胞質内に依存する方法で腫瘍増殖をモジュレートすることを示している(Cassardら, 2002, Journal of Clinical Investigation, 110(10):1549-1557)。
いくつかの実施形態においては、本発明は、腫瘍細胞それ自体に発現されないでむしろ腫瘍間質を含む周囲の反応性かつ腫瘍支持性非悪性細胞に発現される腫瘍抗原と免疫特異的に結合する治療用抗体と、本発明の抗体との併用を包含する。腫瘍間質は、新血管を形成する内皮細胞および腫瘍脈管構造を取り囲む間質繊維芽細胞を含む。特定の実施形態においては、本発明の抗体を、内皮細胞上の腫瘍抗原と免疫特異的に結合する抗体と併用する。好ましい実施形態においては、本発明の抗体を、繊維芽細胞上の腫瘍抗原、例えば繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)と免疫特異的に結合する抗体と併用する。FAPは、限定するものではないが、肺癌、乳癌、および結腸直腸癌をはじめとする多くの固形腫瘍の間質繊維芽細胞に強く発現される95KDaのホモダイマーII型糖タンパク質である(例えば、Scanlanら, 1994, Proc. Natl. Acad. USA, 91:5657-61;Parkら, 1999, J. Biol. Chem., 274:36505-12;Rettigら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3110-3114;Garin-Cheseaら, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:7235-7239を参照)。FAPと免疫特異的に結合する抗体は当技術分野で公知であって本発明の範囲に包含され、例えば、Wuestら, 2001, Journal of Biotechnology, 159-168;Mersmannら, 2001, Int. J. Cancer, 92:240-248;米国特許第6,455,677号を参照されたい(これらの全ては参照によりその全文が本明細書に組み入れられる)。
最近、IgEは腫瘍増殖のメディエーターであることが示唆されていて、実際、IgEを標的化した即時型過敏性およびアレルギー炎症応答は抗腫瘍応答に関わる可能性がある天然の機構であることが提案されている(総説として、例えば、Millsら, 1992, Am. Journal of Epidemiol. 122:66-74;Erikssonら, 1995, Allergy 50:718-722を参照)。実際、最近の研究は、IgEを腫瘍細胞に与えると腫瘍増殖が低減され、いくつかの事例では腫瘍拒絶が起こることを示している。その研究によれば、IgEを与えた腫瘍細胞は治療ポテンシャルを持つだけでなく、生得免疫エフェクター機構およびT細胞依存性適応性免疫応答の活性化をはじめとする長期の抗腫瘍免疫をもたらす(Realiら, 2001, Cancer Res. 61:5516-22を参照;これは参照によりその全文が本明細書に組み入れられる)。本発明のアンタゴニスト性抗体は、IgEを介した癌治療の効力を増強するために、IgEの投与と組み合わせて、癌を治療および/または予防するために使用することができる。特定の作用機構に束縛されものでないが、本発明の抗体は腫瘍のIgE治療の治療効力を、抑制経路をブロックすることにより増強する。本発明のアンタゴニスト性抗体は、(i)腫瘍増殖の遅延を増大させること;(ii)腫瘍進行の速度の低下を増大させること;(iii)腫瘍拒絶を増大させること;または(iv)IgE単独による癌の治療と比較して保護免疫を増大させることにより、IgEを介した癌治療の治療効力を増強することができる。
癌治療薬ならびにそれらの投与量、投与経路および推奨される用法は当技術分野で公知であって文献に記載されている。例えば、Physician's Desk Reference(第56版、2002)を参照されたい(これは参照により本明細書に組み入れられる)。
5.3.2 B細胞性悪性腫瘍
本発明のアゴニスト性抗体は、B細胞性悪性腫瘍、特に非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ性白血病を治療または予防するのに有用である。他のB細胞性悪性腫瘍には小リンパ球リンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性小型切れ込み細胞リンパ腫、ほとんどの濾胞性リンパ腫およびいくつかのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が含まれる。FcγRIIBは、悪性リンパ腫、特にB細胞非ホジキンリンパ腫での染色体転座による脱調節の標的である(Callanan M.B.ら, 2000 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97(1):309-314を参照)。従って、本発明の抗体は、いずれかのB細胞系統の慢性リンパ性白血病を治療または予防するのに有用である。B細胞系統の慢性リンパ性白血病については、Freedmanが総説している(Freedman, 1990, Hematol. Oncol. Clin. North Am. 4:405による総説を参照)。いずれの作用機構にも束縛されることを意図しないが、本発明のアゴニスト性抗体は、B細胞増殖および/もしくは活性化を抑制してB細胞性悪性腫瘍を抑制または予防する。本発明はまた、B細胞性悪性腫瘍を予防および/または治療するための当技術分野で公知の他の療法(例えば、化学療法および放射線療法)と本発明のアゴニスト性抗体との併用も包含する。本発明はまた、B細胞性悪性腫瘍を予防および/または治療するための当技術分野で公知の他の抗体と本発明のアゴニスト性抗体との併用も包含する。例えば、本発明のアゴニスト性抗体は、Goldenbergら(米国特許第6,306,393号)により開示されている抗C22抗体もしくは抗CD19抗体;抗CD20抗体、抗CD33抗体、または抗CD52抗体と併用することができる。
本発明の抗体はまた、例えば、限定するものではないが、Oncoscint(標的:CEA)、Verluma(標的:GP40)、Prostascint(標的:PSMA)、CEA-SCAN(標的:CEA)、リツキシン(Rituxin)(標的:CD20)、ハーセプチン(Herceptin)(標的:HER-2)、キャンパス(Campath)(標的:CD52)、Mylotarge(標的:CD33)、LymphoCide(CD22)(標的:CD22)、Lymphocide Y-90(標的:CD22)およびゼバリン(Zevalin)(標的:CD20)と併用することができる。
5.3.3 自己免疫疾患および炎症性疾患
本発明のアゴニスト性抗体を用いて自己免疫疾患もしくは炎症性疾患を治療または予防することができる。本発明は、被験者における自己免疫性もしくは炎症性障害に関連する1以上の症状を予防、治療、または管理する方法を提供し、該方法は上記被験者に治療上有効な量の本発明の抗体またはそのフラグメントを投与することを含む。本発明はまた、被験者における炎症性障害に関連する1以上の症状を予防、治療、または管理する方法であって、上記被験者に治療上有効な量の1以上の抗炎症剤を投与することをさらに含む方法も提供する。本発明はまた、自己免疫疾患に関連する1以上の症状を予防、治療、または管理する方法であって、上記被験者に治療上有効な量の1以上の免疫調節剤を投与することをさらに含む方法も提供する。第5.4.5節は、抗炎症剤および免疫調節剤の非限定的な例を提供する。
本発明のヒト化抗体はまた、自己免疫疾患もしくは炎症性疾患を治療および/または予防するための当技術分野で公知のいずれかの抗体と併用することもできる。炎症性障害を治療もしくは予防するために使用される抗体またはFc融合タンパク質の非限定的な例を表4Aに示し、そして自己免疫障害を治療もしくは予防するために使用される抗体またはFc融合タンパク質の非限定的な例を表4Bに示す。本発明のヒト化抗体は、例えば、表5Aおよび表5Bに示す治療用抗体またはFc融合タンパク質の治療効力を増大させることができる。例えば、限定するものではないが、本発明の抗体は表5Aもしくは表5Bの抗体またはFc融合タンパク質のいずれかにより処置される被験者の免疫応答を増大させることができる。
本発明のヒト化抗体はまた、例えば、限定するものではないが、オルトクローン(Orthoclone)OKT3、レオプロ(ReoPro)、ゼナパックス(Zenapax)、シムレクト(Simulec)、リツキシマブ(Rituximab)、シナジス(Synagis)およびレミケード(Remixade)と併用することもできる。
本発明のヒト化抗体を、生得および獲得免疫応答のアクチベーターとして開発されたか(Coley Pharmaceuticals)または現在開発中であるシトシン-グアニンジヌクレオチド(「CpG」)に基づく製品と併用することもできる。例えば、本発明は、自己免疫性もしくは炎症性障害を治療および/または予防するための本発明の方法と組成物における、CpG 7909、CpG 8916、CpG 8954(Coley Pharmaceuticals)の使用を包含する(Weeratnaら, 2001, FEMS Immunol Med Microbiol., 32(1):65-71、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
本発明の抗体を投与することにより治療できる自己免疫障害の例としては、限定するものではないが、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫卵巣炎および睾丸炎、自己免疫血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアック・スプルー皮膚炎(celiac sprue-dermatitis)、慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素病、クローン病、円板状狼蒼、本態性混合クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーヴズ病、ギヤン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、若年性関節炎、扁平苔癬、エリテマトーデス、メニエール病、混合結合組織病、多発性硬化症、I型または免疫介在性糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、慢性関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎(例えば疱疹状皮膚炎脈管炎)、白斑、およびヴェーゲナー肉芽腫症が挙げられる。炎症性障害の例としては、限定するものではないが、喘息、脳炎、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー障害、敗血症ショック、肺線維症、未分別脊椎関節症、未分別関節症、関節炎、炎症性骨溶解、および慢性ウイルス感染または慢性細菌感染から生じる慢性炎症が挙げられる。本明細書の第3.1節に記載の通り、いくつかの自己免疫障害は炎症性症状と関連している。こうして、自己免疫障害と考えられる障害と炎症性障害と考えられる障害の間には重複がある。従って、いくつかの自己免疫障害は炎症性障害としても特徴づけられる。本発明の方法によって予防、治療または管理することができる炎症性障害の例としては、限定するものではないが、喘息、脳炎、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー障害、敗血症ショック、肺線維症、未分別脊椎関節症、未分別関節症、関節炎、炎症性骨溶解、および慢性ウイルス感染または慢性細菌感染から生じる慢性炎症が挙げられる。
本発明のある特定の実施形態においては、本発明のヒト化抗体を用いて一方の性でより一般的に見られる自己免疫疾患を治療することができる。例えば、女性でのグレーヴズ病の優勢はFcγRIIBの発現に関連している(Estienneら, 2002, FASEB J. 16:1087-1092を参照)。従って、本発明のヒト化抗体を用いてグレーヴズ病を治療、予防、改善、または管理することができる。
また、本発明のヒト化抗体を用いて炎症性障害を患う動物、特に哺乳動物が経験する炎症を軽減することもできる。特定の実施形態においては、抗体は動物の炎症を、上記抗体を投与されてない動物の炎症と比較して、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも25%、少なくとも20%,または少なくとも10%軽減することができる。他の実施形態においては、抗体の組合せは動物の炎症を、上記抗体を投与されてない動物の炎症と比較して、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも45%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも25%、少なくとも20%,または少なくとも10%軽減することができる。
本発明のヒト化抗体はまた、移植の拒絶反応を予防するためにも使用することができる。
5.3.4 アレルギー
本発明は、被験者におけるIgE依存性および/またはFcγRI介在性アレルギー障害を治療もしくは予防する方法であって、それを必要とする被験者に治療上有効な量の本発明のアゴニスト性抗体またはそのフラグメントを投与することを含む上記方法を提供する。特定の作用機構に束縛されることを意図しないが、本発明の抗体は、急性および遅発性アレルギー応答に寄与するFcεRI誘導性肥満細胞活性化を抑制するのに有用である(Metcalfe D.ら 1997, Physiol. Rev. 77:1033)。好ましくは、本発明のアゴニスト性抗体は、当技術分野で使用されているIgE依存性アレルギー障害を治療もしくは予防する通常の方法と比較して、増大された治療効力および/または低下した副作用を有する。IgE依存性アレルギー障害を治療および/または予防する通常の方法としては、限定するものではないが、抗炎症剤(例えば、経口および吸入による喘息用の副腎皮質ステロイド)、抗ヒスタミン薬(例えば、アレルギー性鼻炎およびアトピー性皮膚炎用)、システイニルロイコトリエン(例えば、喘息治療用);抗IgE抗体;および特定の免疫療法または脱感作が挙げられる。
IgE依存性アレルギー応答の例としては、限定するものではないが、喘息、アレルギー性鼻炎、胃腸アレルギー、好酸球増加症、結膜炎、アトピー性皮膚炎、じんま疹、アナフィラキシー、または糸球体腎炎が挙げられる。
本発明は、FcεRIおよびヒトFcγRIIBと複合体を形成する(すなわちFcεRIおよびヒトFcγRIIBと特異的に結合する)ように遺伝子操作された分子、例えば免疫グロブリンを包含する。好ましくは、このような分子は、IgEおよびFcεRIが介在する障害に治療効力を有する。特定の作用機構に束縛されることを意図しないが、これらの遺伝子操作した分子の治療効力は、部分的には、肥満細胞および好塩基球の機能を抑制するその能力に起因する。
特定の実施形態においては、FcεRIおよびヒトFcγRIIBと特異的に結合する分子は、FcεRIに対する結合部位およびFcγRIIBに対する結合部位を含むキメラ融合タンパク質である。このような分子は、当業者に公知の標準的な組換えDNA法に従って遺伝子操作で作製することができる。好ましい特定の実施形態においては、本発明の方法に用いるキメラ融合タンパク質は、huFcεを抗FcγRIIBモノクローナル抗体のF(ab')一本鎖のC末端領域と連結するためのブリッジとして使われる領域に融合された、本発明の抗FcγRIIBモノクローナル抗体のF(ab')一本鎖を含む。本発明の方法に用いるキメラ融合タンパク質の一例は以下を含む:VL/CH(FcγRIIB)-ヒンジ-VH/CH(FcγRIIB)-リンカー-CHε2-CHε3-CHε4。キメラ分子用のリンカーは長さが5、10、好ましくは15アミノ酸であってよい。リンカーの長さを変えて該分子とFcγRIIBおよびFcεRIとの結合を最適化してもよい。特定の実施形態においては、リンカーは15アミノ酸リンカーであり、配列:(Gly4Ser)3から成る。特定の作用機構に束縛されることを意図しないが、フレキシブルなペプチドリンカーは鎖対合を容易にしかつ起こりうる再フォールディングを最小化し、そしてこのリンカーはまた、キメラ分子が2つの受容体、すなわち細胞上のFcγRIIBおよびFcεRIに到達してそれらを架橋することを可能にするであろう。好ましくは、キメラ分子を、適合しうるプロモーター(例えばサイトメガロウイルスプロモーター)とともに哺乳動物発現ベクター(例えばpCI-neo)中にクローニングする。本発明の方法に従って調製される融合タンパク質は、FcεRI(CHε2CHε3)に対する結合部位およびFcγRIIB(VL/CL、-ヒンジ-VH/CH)に対する結合部位を含有する。本発明の方法に従って調製される融合タンパク質をコードする核酸を、好ましくは、293細胞にトランスフェクトして、分泌されるタンパク質を当技術分野で公知の通常の方法を用いて精製する。
キメラ分子とヒトFcεRIおよびFcγRIIBの両方との結合は、FcγRとの結合を測定するための当業者に公知の通常の方法を用いて評価することができる。好ましくは、本発明のキメラ分子は、例えば抗原により誘導される脱顆粒および細胞活性化の抑制を阻害することにより、IgE依存性障害を治療する上での治療効力を有する。IgE誘導されるFcεRI介在性肥満細胞脱顆粒をブロックする上での本発明のキメラ分子の効力は、ヒトに用いる前に、ヒトFcεRαおよびヒトFcγRIIBを発現するように遺伝子操作されているトランスジェニックマウスにおいて確認してもよい。
本発明は、IgE依存性および/もしくはFcεRI介在性アレルギー障害を治療および/または予防するための二重特異性抗体の使用を提供する。二重特異性抗体(BsAb)は、通常、別の抗原上の2つの異なるエピトープと結合する。BsAbには臨床応用の可能性があり、ウイルス、ウイルス感染細胞および細菌病原体を標的化するため、ならびに血栓崩壊薬を血栓に送達するために使用されている(Cao Y., 1998 Bioconj. Chem 9:635-644;Koelemijら, 1999, J. Immunother., 22,514-524;Segalら, Curr. Opin. Immunol., 11,558-562)。BsIgGおよび他の関係する二重特異性分子を作製する技術は利用可能である(例えば、Carterら, 2001 J. of Immunol. Methods, 248,7-15;Segalら, 2001, J. of Immunol. Methods, 248,7-15を参照、これらは参照によりその全文が本明細書に組み入れられる)。本発明は、抗FcγRIIB抗体の1つのF(ab')および入手可能なモノクローナル抗huIgE抗体の1つのF(ab')を含有する二重特異性抗体を提供し、同じ細胞の表面上の2つの受容体、FcγRIIBおよびFcεRIを凝集させる。当技術分野で公知のおよび本明細書に開示したいずれの手法を用いても本発明の方法に使用する二重特異性抗体を作製することができる。特定の実施形態においては、BsAbを、先に記載のように、抗FcγRIIB抗体と抗huIgE抗体のF(ab')フラグメント同士を化学的に架橋することにより作製することができ、例えば、Glennieら, 1995, Tumor Immunobiology, Oxford University press, Oxford, p.225を参照されたい(これは参照によりその全文が本明細書に組み入れられる)。F(ab')フラグメントを、ペプシンによる限定されたタンパク質分解により作製し、メルカプトエタノールアミンにより還元して遊離のヒンジ領域スルフヒドリル(SH)基をもつFab'フラグメントを得ることができる。Fab'(SH)フラグメント上のSH基を過剰のO-フェニレンジマレイミド(O-PDM)を用いてアルキル化して遊離マレイミド基(mal)を得てもよい。2つの調製物Fab'(mal)およびFab'(SH)を適当な比、好ましくは1:1で組み合わせてヘテロダイマー構築物を作製する。BsAbをサイズ排除クロマトグラフィーにより精製し、当業者に公知の技術を用いてHPLCにより特徴づけることができる。
特に、本発明は、FcγRIIAと結合するよりも大きい親和性でFcγRIIBと結合する第1の重鎖-軽鎖対、およびIgE受容体と結合する第2の重鎖-軽鎖を含む二重特異性抗体を包含し、ただし上記第1の重鎖-軽鎖対が最初にFcγRIIBと結合する。本発明の二重特異性抗体は、FcγRIIBとの結合が確実にIgE受容体との結合に先行するように、当技術分野で公知の標準的な技術を用いて遺伝子操作で作製することができる。当業者であれば、二重特異性抗体を、例えば、IgE受容体と結合する親和性よりも高い親和性で上記二重特異性抗体がFcγRIIBと結合するように遺伝子操作することを理解するであろう。さらに、二重特異性抗体を、当技術分野で公知の技術により遺伝子操作して、抗体のヒンジサイズの長さを、例えばリンカーを付加することにより増大させて、同じ細胞上のIgE受容体およびFcγRIIB受容体との結合にフレキシビリティーをもつ二重特異性抗体を得ることができる。
本発明のヒト化抗体はまた、IgE依存性アレルギー障害を治療もしくは予防するための当技術分野で公知の他の治療用抗体または薬物と組み合わせて用いることもできる。例えば、本発明の抗体を次のいずれかと組み合わせて用いることができる:アゼラスチン、アステリン(Astelin)、ジプロピオン酸ベクロメタゾン吸入薬、バンセリル(Vanceril)、ジプロピオン酸ベクロメタゾン鼻吸入薬/スプレー薬、バンセナーゼ(Vancenase)、ベコナーゼ・ブデソニド鼻吸入薬/スプレー薬、リノコート・セチリジン、ジルテック・クロルフェニラミン、シュードエフェドリン、デコナミン(Deconamine)、スダフェド(Sudafed)、クロモリン、ネイサルクロム(Nasalcrom)、インタル(Intal)、オプチクロム(Opticrom)、デスロラタジン、クラリネックス、フェキソフェナジンおよびシュードエフェドリン、アレグラD、フェキソフェナジン、アレグラ・フルニソリド鼻スプレー、ネイサリド(Nasalide)・プロピオン酸フルチカゾン鼻吸入薬/スプレー薬、フロナーゼ(Flonase)・プロピオン酸フルチカゾン経口吸入薬、フロベント、ヒドロキシジン、ビスタリル(Vistaril)、アタラックスロラタジン、シュードエフェドリン、クラリチンD、ロラタジン、クラリチン、プレドニゾロン(prednisolone)、プレドニゾロン(Prednisolone)、ペジアプレド(Pediapred)経口液、メドロール・プレドニゾン、デルタゾン、プレドサロメテロール液(Liquid Predsalmeterol)、セレベント・トリアムシノロンアセトニド吸入薬、アズマコート・トリアムシノロンアセトニド(Azmacort triamcinolone acetonide)鼻吸入薬/スプレー薬、ナサコート(Nasacort)、またはナサコートAQ(NasacortAQ)。本発明の抗体を、生得および獲得免疫応答のアクチベーターとして開発されているか(Coley Pharmaceuticals)または現在開発中であるシトシン-グアニンジヌクレオチド(「CpG」)系製品と併用することができる。例えば、本発明は、IgE依存性アレルギー障害を治療および/または予防するための本発明の方法と組成物におけるCpG 7909、CpG 89
16、CpG 8954(Coley Pharmaceuticals)の使用を包含する(Weeratnaら, 2001, FEMS Immunol Med Microbiol., 32(1):65-71も参照、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
本発明は、アレルギー障害を治療するための当技術分野で公知のいずれかの治療用抗体、例えば、XolairTM(オマリズマブ;Genentech);rhuMAB-E25(BioWorld Today, Nov. 10, 1998, p.1;Genentech);CGP-51901(ヒト化抗IgE抗体)などとの組み合わせた本発明のヒト化抗体の使用を包含する。
さらに、本発明は、当技術分野で公知のアレルギー障害を治療するための他の組成物と組み合わせた本発明のヒト化抗体の使用を包含する。特に、Carsonら(米国特許第6,426,336号;米国特許出願US 2002/0035109 Al;米国特許出願US 2002/0010343)により開示されている方法および化合物は、参照によりその全文が本明細書に組み入れられる。
5.3.5 免疫調節剤と抗炎症剤
本発明は自己免疫疾患および炎症性疾患を治療する方法であって、本発明の抗体と他の治療薬とを併用した投与を含む方法を提供する。免疫調節剤の例は、限定するものではないが、メトトレキセート、ENBREL、REMICADETM、レフルノミド、シクロホスファミド、シクロスポリンA、およびマクロライド系抗生物質(例えば、FK506(タクロリムス))、メチルプレドニゾロン(MP)、副腎皮質ステロイド、ステロイド、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン(sirolimus)、ミゾリビン、デオキシスパーガリン(deooxyspergualin)、ブレキナール(brequinar)、マロノニトリロアミンド(malononitriloaminde)(例えば、leflunamide)、T細胞受容体モジュレーター、およびサイトカイン受容体モジュレーターが挙げられる。
抗炎症剤は、炎症性および自己免疫疾患の治療において成功をおさめており、現在、このような疾患のための一般的かつ標準の治療薬となっている。当業者に周知のいずれの抗炎症剤を本発明の方法に使用してもよい。抗炎症剤の非限定的な例としては、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、ステロイド系抗炎症剤、β作動薬、抗コリン作動薬、およびメチルキサンチンが挙げられる。NSAIDの例としては、限定するものではないが、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ(CELEBREXTM)、ジクロフェナク(VOLTARENTM)、エトドラク(LODINETM)、フェノプロフェン(NALFONTM)、インドメタシン(INDOCINTM)、ケトララク(ketoralac)(TORADOLTM)、オキサプロジン(DAYPROTM)、ナブメントン(nabumentone)(RELAFENTM)、スリンダク(CLINORILTM)、トルメンチン(tolmentin)(TOLECTINTM)、ロフェコキシブ(VIOXXTM)、ナプロキセン(ALEVETM、NAPROSYNTM)、ケトプロフェン(ACTRONTM)およびナブメトン(RELAFENTM)が挙げられる。このようなNSAIDはシクロオキシゲナーゼ酵素(例えば、COX-1および/またはCOX-2)を阻害することにより機能する。ステロイド系抗炎症剤の例としては、限定するものではないが、グルココルチコイド、デキサメタゾン(DECADRONTM)、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン(DELTASONETM)、プレドニゾロン、トリアムシノロン、アズルフィジン(azulfidine)、およびエイコサノイド、例えばプロスタグランジン、トロンボキサン、およびロイコトリエンが挙げられる。
5.3.6 抗癌剤および治療用抗体
特定の実施形態においては、本発明の方法は、1以上の血管新生阻害剤の投与を包含し、血管新生阻害剤とは、例えば、限定するものではないが、以下のものである:アンギオスタチン(プラスミノーゲンフラグメント);抗血管原性抗トロンビンIII;アンギオザイム(Angiozyme);ABT-627;Bay12-9566;ベネフィン;ベバシズマブ;BMS-275291;軟骨由来阻害剤(CDI);CAI;CD59補体フラグメント;CEP-7055;Col3;コンブレタスタチンA-4;エンドスタチン(コラーゲンXVIIIフラグメント);EGFrブロッカー/インヒビター(イレッサ(登録商標)、タルセバ(登録商標)、エルビタックス(登録商標)、およびABX-EGF);フィブロネクチンフラグメント;Gro-β;ハロフジノン;ヘパリナーゼ;ヘパリン六糖フラグメント;HMV833;ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG);IM-862;インターフェロンα/β/γ;インターフェロン誘導性タンパク質(IP-10);インターロイキン-12;クリングル5(プラスミノーゲンフラグメント);マリマスタット;メタロプロテイナーゼ阻害剤(TIMP);2-メトキシエストラジオール;MMI270(CGS 27023A);MoAb IMC-1C11;ネオバスタット;NM-3;パンゼム;PI-88;胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤;プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤;血小板因子-4(PF4);プリノマスタット(Prinomastat);プロラクチン16KDフラグメント;プロリフェリン(Proliferin)関連タンパク質(PRP);PTK787/ZK222594;レチノイド;ソリマスタット(Solimastat);スクアラミン;SS3304;SU5416;SU6668;SU11248;テトラヒドロコルチゾール-S;テトラチオモリブデネート;サリドマイド;トロンボスポジン1(TSP-1);TNP-470;形質転換増殖因子β(TGF-b);バスキュロスタチン(Vasculostatin);バソスタチン(Vasostatin)(カルレティキュリンフラグメント);ZD6126;ZD6474;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI);およびビスホスホネート。
本発明の抗体と組み合わせて本発明の様々な実施形態(本発明の医薬組成物および投与剤形およびキットを含む)において使用することができる抗癌剤としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:アシビシン(acivicin);アクラルビシン(aclarubicin);アコダゾール塩酸塩(acodazole hydrochloride);アクロニン(acronine);アドゼレシン(adozelesin);アルデスロイキン(aldesleukin);アルトレタミン(altretamine);アンボマイシン(ambomycin);アメタントロン酢酸塩(ametantrone acetate);アミノグルテチミド(aminoglutethimide);アムサクリン(amsacrine);アナストロゾール(anastrozole);アントラマイシン(anthramycin);アスパラギナーゼ(asparaginase);アスペルリン(asperlin);アザシチジン(azacitidine);アゼテパ(azetepa);アゾトマイシン(azotomycin);バチマスタット(batimastat);ベンゾデパ(benzodepa);ビカルタミド(bicalutamide);ビスアントレン塩酸塩(bisantrene hydrochloride);ビスナフィドジメシラート(bisnafide dimesylate);ビゼレシン(bizelesin);ブレオマイシン硫酸塩(bleomycin sulfate);ブレキナールナトリウム(brequinar sodium);ブロピリミン(bropirimine);ブスルファン(busulfan);カクチノマイシン(cactinomycin);カルステロン(calusterone);カラセミド(caracemide);カルベチマー(carbetimer);カルボプラチン(carboplatin);カルムスチン(carmustine);カルビシン塩酸塩(carubicin hydrochloride);カルゼルシン(carzelesin);セデフィンゴール(cedefingol);クロラムブシル(chlorambucil);シロレマイシン(cirolemycin);シスプラチン(cisplatin);クラドリビン(cladribine);クリスナトールメシラート(crisnatol mesylate);シクロホスファミド(cyclophosphamide);シタラビン(cytarabine );デカルバジン(dacarbazine);ダクチノマイシン(dactinomycin);ダウノルビシン塩酸塩(daunorubicin hydrochloride);デシタビン(decitabine);デキソルマプラチン(dexormaplatin);デザグアニン(dezaguanine);デザグアニンメシラート(dezaguanine mesylate);ジアジコン(diaziquone);ドセタキセル(docetaxel);ドキソルビシン(doxorubicin);ドキソルビシン塩酸塩(doxorubicin hydrochloride);ドロロキシフェン(droloxifene);ドロロキシフェンクエン酸塩(droloxifene citrate);ドロモスタノロンプロピオン酸塩(dromostanolone propionate);デュアゾマイシン(duazomycin);エダトレキセート(edatrexate);エフロルニチン塩酸塩(eflornithine hydrochloride);エルサミトルシン(elsamitrucin);エンロプラチン(enloplatin);エンプロメート(enpromate);エピプロピジン(epipropidine);エピルビシン塩酸塩(epirubicin hydrochloride);エルブロゾール(erbulozole);エソルビシン塩酸塩(esorubicin hydrochloride);エストラムスチン(estramustine);エストラムスチンリン酸ナトリウム(estramustine phosphate sodium);エタニダゾール(etanidazole);エトポシド(etoposide);エトポシドリン酸塩(etoposide phosphate);エトプリン(etoprine);ファドロゾール塩酸塩(fadrozole hydrochloride);ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド(fenretinide);フロキシウリジン(floxuridine);フルダラビンリン酸塩(fludarabine phosphate);フルオロウラシル(fluorouracil);フルロシタビン(flurocitabine);フォスキドン(fosquidone);フォストリエシンナトリウム(fostriecin sodium);ゲムシタビン(gemcitabine);ゲムシタビン塩酸塩(gemcitabine hydrochloride);ヒドロキシ尿素(hydroxyurea);イダルビシン塩酸塩(idarubicin hydrochloride);イフォスファミド(ifosfamide);イルモフォシン(ilmofosine);インターロイキンII(組換えインターロイキンII、またはrIL2を含む)、インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-1a;インターフェロンγ-1b;イプロプラチン(iproplatin);イリノテカン塩酸塩(irinotecan hydrochloride);ランレオチド酢酸塩(lanreotide acetate);レトロゾール(letrozole);ロイプロリド酢酸塩(leuprolide acetate);リアロゾール塩酸塩(liarozole hydrochloride);ロメトレキソールナトリウム(lometrexol sodium);ロムスチン(lomustine);ロソキサントロン塩酸塩(losoxantrone hydrochloride);マソプロコール(masoprocol);メイタンシン(maytansine);メクロレタミン塩酸塩(mechlorethamine hydrochloride);メゲストロール酢酸塩(megestrol acetate);メレンゲストロール酢酸塩(melengestrol acetate);メルファラン(melphalan);メノガリル(menogaril);メルカプトプリン(mercaptopurine);メトトレキセート(methotrexate);メトトレキセートナトリウム(methotrexate sodium);メトプリン(metoprine);メツレデパ(meturedepa);ミチンドミド(mitindomide);ミトカルシン(mitocarcin);ミトクロミン(mitocromin);ミトギリン(mitogillin);ミトマルシン(mitomalcin);ミトマイシン(mitomycin);ミトスパー(mitosper);ミトタン(mitotane);ミトキサントロン塩酸塩(mitoxantrone hydrochloride);ミコフェノール酸(mycophenolic acid);ノコダゾール(nocodazole);ノガラマイシン(nogalamycin);オルマプラチン(ormaplatin);オキシスラン(oxisuran);パクリタキセル(paclitaxel);ペガスパルガーゼ(pegaspargase);ペリオマイシン(peliomycin);ペンタムスチン(pentamustine);ペプロマイシン硫酸塩(peplomycin sulfate);ペルホスアミド(perfosfamide);ピポブロマン(pipobroman);ピポスルファン(piposulfan);ピロキサントロン塩酸塩(piroxantrone hydrochloride);プリカマイシン(plicamycin);プロメスタン(plomestane);ポルフィマーナトリウム(porfimer sodium);ポルフィロマイシン(porfiromycin);プレドニムスチン(prednimustine);プロカルバジン塩酸塩(procarbazine hydrochloride);ピューロマイシン(puromycin);ピューロマイシン塩酸塩(puromycin hydrochloride);ピラゾフリン(pyrazofurin);リボプリン(riboprine);ログレチミド(rogletimide);サフィンゴル(safingol);サフィンゴル塩酸塩(safingol hydrochloride);セムスチン(semustine);シムタラゼン(simtrazene);スパルフォセートナトリウム(sparfosate sodium);スパルソマイシン(sparsomycin);スピロゲルマニウム塩酸塩(spirogermanium hydrochloride);スピロムスチン(spiromustine);スピロプラチン(spiroplatin);ストレプトニグリン(streptonigrin);ストレプトゾシン(streptozocin);スルフェヌル(sulofenur);タリソマイシン(talisomycin);テコガランナトリウム(tecogalan sodium);テガフール(tegafur);テロキサントロン塩酸塩(teloxantrone hydrochloride);テモポルフィン(temoporfin);テニポシド(teniposide);テロキシロン(teroxirone);テストラクトン(testolactone);チアミプリン(thiamiprine);チオグアニン(thioguanine);チオテパ(thiotepa);チアゾフリン(tiazofurin);チラパザミン(tirapazamine);トレミフェンクエン酸塩(toremifene citrate);トレストロン酢酸塩(trestolone acetate);トリシリビンリン酸塩(triciribine phosphate);トリメトレキセート(trimetrexate);トリメトレキセートグルクロン酸塩(trimetrexate glucuronate);トリプトレリン(triptorelin);ツブロゾール塩酸塩(tubulozole hydrochloride);ウラシルムスタード(uracil mustard);ウレデパ(uredepa);バプレオチド(vapreotide);ベルテポルフィン(verteporfin);ビンブラスチン硫酸塩(vinblastine sulfate);ビンクラスチン硫酸塩(vincristine sulfate);ビンデシン(vindesine);ビンデシン硫酸塩(vindesine sulfate);ビネピジン硫酸塩(vinepidine sulfate);ビングリシネート硫酸塩(vinglycinate sulfate);ビンロイロシン硫酸塩(vinleurosine sulfate);ビノレルビン酒石酸塩(vinorelbine tartrate);ビンロシジン硫酸塩(vinrosidine sulfate);ビンゾリジン硫酸塩(vinzolidine sulfate);ボロゾール(vorozole);ゼニプラチン(zeniplatin);ジノスタチン(zinostatin);ゾルビシン塩酸塩(zorubicin hydrochloride)。他の抗癌剤としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン(abiraterone);アクラルビシン(aclarubicin);アシルフルベン(acylfulvene);アデシペノール(adecypenol);アドゼレシン(adozelesin);アルデスロイキン(aldesleukin);全てのTKアンタゴニスト;アルトレタミン(altretamine);アンバムスチン(ambamustine);アミドックス(amidox);アミフォスチン(amifostine);アミノレブリン酸(aminolevulinic acid);アンルビシン(amrubicin);アンサクリン(amsacrine);アナグレリド(anagrelide);アナストロゾール(anastrozole);アンドログラホリド(andrographolide);血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス(antarelix);抗背方化形態発生タンパク質-1(anti-dorsalizing morphogenetic protein-1);抗アンドロゲン薬、前立腺癌薬;抗エストロゲン薬;抗ネオプラストン薬(antineoplaston);アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシン酸塩(aphidicolin glycinate);アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシスレギュレーター;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン(asulacrine);アタメスタン(atamestane);アトリムスチン(atrimustine);アキシナスタチン1(axinastatin 1);アキシナスタチン2(axinastatin 2);アキシナスタチン3(axinastatin 3);アザセトロン(azasetron);アザトキシン(azatoxin);アザチロシン(azatyrosine);バッカチン(baccatin)III誘導体;バラノール(balanol);バチマスタット(batimastat);BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン(benzochlorins);ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine);βラクタム誘導体;βアレチン(β-alethine);βクラマイシンB(betaclamycin B);ベツリン酸;bFGF阻害薬;ビカルタミド(bicalutamide);ビスアントレン(bisantrene);ビスアジリジニルスペルミン(bisaziridinylspermine);ビスナフィド(bisnafide);ビストラテンA(bistratene A);ビゼレシン(bizelesin);ブレフラート(breflate);ブロピリミン(bropirimine);ブドチタン(budotitane);ブチオニンスルホキシミン(buthionine sulfoximine);カルシポトリオール(calcipotriol);カルホスチンC(calphostin C);カンプトテシン誘導体;カナリポックス(canarypox)IL-2;カペシタビン(capecitabine);カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン(carzelesin);カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン(castanospermine);セクロピンB(cecropin B);セトロレリックス(cetrorelix);chlorlns;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト(cicaprost);cis-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシン(collismycin)A;コリスマイシン(collismycin)B;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン(crambescidin)816;クリスナトール(crisnatol);クリプトフィシン(cryptophycin)8;クリプトフィシンA誘導体;キュラシンA;シクロペンタントラキノン(cyclopentanthraquinone);シクロプラタム(cycloplatam);シペマイシン(cypemycin);シタラビンオクホスファート(cytarabine ocfosfate);細胞溶解性因子;サイトスタチン(cytostatin);ダクリキシマ
ブ(dacliximab);デシタビン(decitabine);デヒドロジデムニン(dehydrodidemnin)B;デスロレリン(deslorelin);デキサメタゾン(dexamethasone);デキシホスファミド(dexifosfamide);デキスラゾキサン(dexrazoxane);デキスベラパミル(dexverapamil);ジアジコン(diaziquone);ジデムニン(didemnin)B;ジドックス(didox);ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール、9-;ジオキサマイシン(dioxamycin);ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン(dolasetron);ドキシフルリジン(doxifluridine);ドロロキシフェン(droloxifene);ドロナビノール(dronabinol);デュオカルマイシン(duocarmycin)SA;エブセレン(ebselen);エコムスチン(ecomustine);エデルホシン(edelfosine);エドレコロマブ(edrecolomab);エフロルニチン(eflornithine);エレメン(elemene);エミテフル(emitefur);エピルビシン(epirubicin);エプリステリド(epristeride);エストラムスチン(estramustine)類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール(etanidazole);エトポシド(etoposide)リン酸塩;エキセメスタン(exemestane);ファドロゾール(fadrozole);ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド(fenretinide);フィルグラスチム(filgrastim);フィナステリド(finasteride);フラボピリドール(flavopiridol);フレゼラスチン(flezelastine);フルアステロン(fluasterone);フルダラビン(fludarabine);フルオロダウノルニシン塩酸塩(fluorodaunorunicin hydrochloride);ホルフェニメキス(forfenimex);ホルメスタン(formestane);ホストリエシン(fostriecin);ホテムスチン(fotemustine);ガドリニウムテキサヒドリン(gadolinium texaphyrin);硝酸ガリウム(gallium nitrate);ガロシタビン(galocitabine);ガニレリックス(ganirelix);ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン(gemcitabine);グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム(hepsulfam);ヘルグリン(heregulin);ヘキサメチレンビスアセタミド;ヒペリシン(hypericin);イバンドロン酸(ibandronic acid);イダルビシン(idarubicin);イドキシフェン(idoxifene);イドラマントン(idramantone);イルモフェシン(ilmofosine);イロマスタット(ilomastat);イミダゾアクリドン(imidazoacridones);イミキモド(imiquimod);免疫刺激性ペプチド;インスリン様増殖因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン(iobenguane);ヨードドキソルビシン(iododoxorubicin);イポメアノール(ipomeanol)、4-;イロプラクト(iroplact);イルソグラジン(irsogladine);イソベンガゾール(isobengazole);イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B;イタセトロン(itasetron);ジャスプラキノリド(jasplakinolide);カハラリド(kahalalide)F;ラメラリン-N-トリアセタート(lamellarin-N triacetate);ランレオチド(lanreotide);レイナマイシン(leinamycin);レノグラスチム(lenograstim);レンチナン硫酸塩(lentinan sulfate);レプトールスタチン(leptolstatin);レトロゾール(letrozole);白血病抑制因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン(leuprorelin);レバミソール(levamisole);リアロゾール(liarozole);直鎖ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リッソクリナミド(lissoclinamide)7;ロバプラチン(lobaplatin);ロンブリシン(lombricine);ロメトレキソール(lometrexol);ロニダミン(lonidamine);ロソキサントロン(losoxantrone);ロバスタチン(lovastatin);ロキソリビン(loxoribine);ルルトテカン(lurtotecan);ルテチウムテキサフィリン(lutetium texaphyrin);リソフィリン(lysofylline);溶解性ペプチド;マイタンシン(maitansine);マンノスタチン(mannostatin)A;マリマスタット(marimastat);マソプロコル(masoprocol);マスピン(maspin);マトリリシン(matrilysin)阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル(menogaril);メルバロン(merbarone);メテレリン(meterelin);メチオニナーゼ(methioninase);メトクロプラミド(metoclopramide);MIF阻害剤;ミフェプリストン(mifepristone);ミルテホシン(miltefosine );ミリモスチム(mirimostim);ミスマッチ2本鎖RNA;ミトグアゾン(mitoguazone);ミトラクトール(mitolactol);マイトマイシン(mitomycin)類似体;ミトナフィド(mitonafide);ミトトキシン繊維芽細胞増殖因子-サポリン(mitotoxin fibroblast growth factor-saporin);ミトキサントロン(mitoxantrone);モファロテン(mofarotene);モルグラモスチム(molgramostim);モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリル脂質A+マイコバクテリウム細胞壁 sk;モピダモル(mopidamol);多剤耐性遺伝子阻害剤;多発性腫瘍サプレッサー1に基づく療法;マスタード抗癌剤;マイカペルオキシド(mycaperoxide)B;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン(myriaporone);N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン(nafarelin);ナグレスチプ(nagrestip);ナロキソン+ペンタゾシン(naloxone+pentazocine);ナパビン(napavin);ナフテルピン(naphterpin);ナルトグラスチム(nartograstim);ネダプラチン(nedaplatin);ネモルビシン(nemorubicin);ネリドロン酸(neridronic acid);中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド(nilutamide);ニサマイシン(nisamycin);一酸化窒素モジュレーター;窒素酸化物抗酸化薬;ニトルリン(nitrullyn);O-6-ベンジルグアニン(O-6-benzylguanine);オクトレオチド(octreotide);オキセノン(okicenone);オリゴヌクレオチド;オナプリストン(onapristone);オンダンセトロン(ondansetron);オンダンセトロン(ondansetron);オラシン(oracin);経口サイトカインインデューサー;オルマプラチン(ormaplatin);オサテロン(osaterone);オキサリプラチン(oxaliplatin);オキサウノマイシン(oxaunomycin);パクリタキセル(paclitaxel);パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン(palauamine);パルミトイルリゾキシン(palmitoylrhizoxin);パミドロン酸(pamidronic acid);パナキシトリオール(panaxytriol);パノミフェン(panomifene);パラバクチン(parabactin);パゼリプチン(pazelliptine);ペガスパルガーゼ(pegaspargase);ペルデシン(peldesine);ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン(pentostatin);ペントロゾール(pentrozole);ペルフルブロン(perflubron);ペルホスファミド(perfosfamide);ペリリルアルコール;フェナジノマイシン(phenazinomycin);フェニルアセテート;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニル(picibanil);ピロカルピン塩酸塩(pilocarpine hydrochloride);ピラルビシン(pirarubicin);ピリトレキシム(piritrexim);プラセチン(placetin)A;プラセチン(placetin)B;プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン複合体;ポルフィマーナトリウム(porfimer sodium);ポルフィロマイシン(porfiromycin);プレドニゾン(prednisone);プロピルビスアクリドン(propyl bis-acridone);プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAに基づく免疫調節剤;タンパク質キナーゼC阻害剤;タンパク質キナーゼC阻害剤(微細藻類の);タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン(purpurin);ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン複合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド(raltitrexed);ラモセトロン(ramosetron);rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤(ras farnesyl protein transferase inhibitors);ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レテルリプチン(retelliptine demethylated);レニウムRe186エチドロン酸塩(rhenium Re 186 etidronate);リゾキシン(rhizoxin);リボザイム;RIIレチンアミド(RII retinamide);ログレチミド(rogletimide);ロヒツキン(rohitukine);ロムルチド(romurtide);ロキニメキス(roquinimex);ルビギノンB1(rubiginone B1);ルボキシル(ruboxyl);サフィンゴル(safingol);セントピン(saintopin);SarCNU;サルコフィトール(sarcophytol)A;サルグラモスチム(sargramostim);Sdi 1模倣物;セムスチン(semustine);老化誘導阻害剤(senescence derived inhibitor)1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレーター;一本鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン(sizofiran);ソブゾキサン(sobuzoxane);ナトリウムボロカプテート(sodium borocaptate);フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール(solverol);ソマトメジン(somatomedin)結合タンパク質;ソネルミン(sonermin);スパルフォシン酸(sparfosic acid);スピカマイシン(spicamycin)D;スピロムスチン(spiromustine);スプレノペンチン(splenopentin);スポンジスタチン(spongistatin)1;スクアラミン(squalamine);幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド(stipiamide);ストロメライシン阻害剤;スルフィノシン(sulfinosine);超活性血管作用性腸ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ(suradista);スラミン(suramin);スワインソニン(swainsonine);合成グリコサミノグリカン;タリムスチン(tallimustine);タモキシフェンメチオジト(tamoxifen methiodide);タウロムスチン(tauromustine);タザロテン(tazarotene);テコガランナトリウム;テガフール(tegafur);テルラピリリウム(tellurapyrylium);テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン(temoporfin);テモゾロミド(temozolomide);テニポシド(teniposide);テトラクロロデカオキシド(tetrachlorodecaoxide);テトラゾミン(tetrazomine);サリブラチン(thaliblastine);チオコラリン(thiocoraline);トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣物;チマルファシン(thymalfasin);サイモポエチン受容体アゴニスト;サイモトリナン(thymotrinan);甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone);スズエチルエチオプルプリン(tin ethyl etiopurpurin);チラパザミン(tirapazamine);二塩化チタノセン;トプセンチン(topsentin);トレミフェン(toremifene);全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン(tretinoin);トリアセチルウルジン;トリシリビン(triciribine);トリメトレキセート(trimetrexate);トリプトレリン(triptorelin);トロピセトロン(tropisetron);ツロステライド(turosteride);チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン(tyrphostins);UBC 阻害剤;ウベニメックス(ubenimex);泌尿生殖器洞由来増殖阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド(vapreotide);バリオリン(variolin)B;ベクター系、赤血球遺伝子治療;ベラレゾル(velaresol);ベラミン(veramine);ベルジン(verdins);ベルテポルフィン(verteporfin);ビノレルビン(vinorelbine);ビンキサルチン(vinxaltine);ビタキシン(vitaxin);ボロゾール(vorozole);ザノテロン(zanoterone);ゼニプラチン(zeniplatin);ジラスコルブ(zilascorb);およびジノスタチンスチマラマー(zinostatin stimalamer)。好ましいさらなる抗癌剤は5-フルオロウラシルおよびロイコボリンである。
本発明の方法に使用することができる治療用抗体の例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:AVASTIN(ベバシズマブ)(Genentech, South San Francisco, CA)(原発性のまたは未治療の結腸直腸の転移性癌の患者のための治療としてのヒト化抗VEGFモノクローナル抗体静脈内5-フルオロウラシルに基づく化学療法である);HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)(Genentech, South San Francisco, CA)(転移性乳癌の患者を治療するためのヒト化抗HER2モノクローナル抗体である);レオプロ(登録商標)(アブシキシマブ)(Centocor)(血栓形成の予防用の抗糖タンパク質IIb/IIIa受容体(血小板上)である);ZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)(Roche Pharmaceuticals、Switzerland)(急性腎異種移植片拒絶の予防用の免疫抑制性ヒト化抗CD25モノクローナル抗体である);PANOREXTM(エドレコロマブ)(マウス抗17-IA細胞表面抗原IgG2a抗体である)(Glaxo Wellcome/Centocor);BEC2(マウス抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体である)(ImClone System);Erbitux(登録商標)(セツキシマブ)(キメラ抗EGFR IgG抗体である)(ImClone System);VITAXINTM(ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体である)(Applied Molecular Evolution/MedImmune);Campath 1H/LDP-03(ヒト化抗CD52 IgG1抗体である)(Leukosite);Smart M195(ヒト化抗CD33 IgG抗体である)(Protein Design Lab/Kanebo);RITUXANTM(リツキシマブ)(キメラ抗CD20 IgG1抗体である)(IDEC Pharm/Genetech、Roche/Zettyaku);LYMPHOCIDETM(エプラツズマブ)(ヒト化抗CD22 IgG抗体である)(Immunomedics);ICM3(ヒト化抗ICAM3抗体である)(ICOS Pharm);IDEC-114(霊長類化抗CD80抗体である)(IDEC Pharm/Mitsubishi);ZEVALINTM(放射標識したマウス抗CD20抗体である)(IDEC/Schering AG);IDEC-131(ヒト化抗CD40L抗体である)(IDEC/Eisai);IDEC-151(霊長類化抗CD4抗体である)(IDEC);IDEC-152(霊長類化抗CD23抗体である)(IDEC/Seikagaku);SMART抗CD3(ヒト化抗CD3 IgGである)(Protein Design Lab);5G1.1(ヒト化抗補体因子5(C5)抗体である)(Alexion Pharm);Humira(登録商標)(ヒト抗TNF-α抗体である)(Abbott Laboratories);CDP870(ヒト化抗TNF-αFabフラグメントである)(Celltech);IDEC-151(霊長類化抗CD4 IgG1抗体である)(IDEC Pharm/SmithKline Beecham);MDX-CD4(ヒト抗CD4 IgG抗体である)(Medarex/Eisai/Genmab);CDP571(ヒト化抗TNF-αIgG4抗体である)(Celltech);LDP-02(ヒト化抗α4β7抗体である)(LeukoSite/Genentech);オルソクローンOKT4A(ヒト化抗CD4 IgG抗体である)(Ortho Biotech);ANTOVATM(ヒト化抗CD40L IgG抗体である)(Biogen);ANTEGRENTM(ヒト化抗VLA-4 IgG抗体である)(Elan);およびCAT-152(ヒト抗TGF-β2抗体である)(Cambridge Ab Tech)。
本発明の抗体と併用することができる治療用抗体の他の例を表5に掲げる。
5.3.7 ワクチン療法および予防法
本発明は、被験者でのワクチン組成物に対する免疫応答を増大させる方法を提供し、該方法は、上記被験者に、FcγRIIAと結合するよりも高い親和性でFcγRIIBと特異的に結合する本発明のヒト化抗体またはそのフラグメントおよびワクチン組成物を投与することを含み、上記抗体またはそのフラグメントが上記ワクチン組成物に対する免疫応答を増大させることを特徴とする。ある特定の実施形態においては、上記抗体またはそのフラグメントは、ワクチンが標的としている抗原の抗原提示および/または抗原プロセシングを増大させることにより上記ワクチン組成物に対する免疫応答を増大させる。当技術分野で公知のいずれのワクチン組成物も、本発明の抗体またはそのフラグメントと組み合わせて有用である。
特定の作用機構により拘束されるものではないが、本発明の抗体は特定の集団および/またはタイプの樹状細胞上に発現されるFcγRIIBの活性化をブロックし、それゆえ能動的ワクチン接種の間そのような樹状細胞の活性を高めると考えられる。この高められた樹状細胞活性が予防上または治療上のワクチン接種に対して増大したまたはより良好な応答をもたらしうる。
一実施形態においては、本発明は、本発明のヒト化抗体と、当技術分野で公知のいずれかの癌ワクチン、例えば、CanvaxinTM(Cancer Vax, Corporation、黒色腫および結腸癌);Oncophage(HSPPC-96;Antigenics;転移性黒色腫);HER-2/neu癌ワクチンなどとの併用も包含する。本発明の方法および組成物で使用される癌ワクチンは、例えば、抗原特異的ワクチン、抗イディオタイプワクチン、樹状細胞ワクチン、またはDNAワクチンとすることができる。他の実施形態では、本発明は、本発明の抗体とEGFRviii、CD44スプライス変異体、およびPSMAに対するワクチンとの併用を包含する。本発明は、本発明の抗体と、Segalら(米国特許第6,403,080号、これは参照により本明細書にその全文が組み入れられる)が記載した細胞に基づくワクチンとの併用を包含する。本発明の抗体と一緒に用いる細胞に基づくワクチンは自己または同種異系であってもよい。簡単に説明すると、Segalらが記載した癌に基づくワクチンはGenitrix, LLCのOpsonokine(TM)製品に基づく。OpsonokineTMは遺伝子操作により作製したサイトカインであり、腫瘍細胞と混合すると自動的に細胞の表面に付着する。「飾られた」(decorated)細胞をワクチンとして投与すると、細胞上のサイトカインはレシピエント体内の重要な抗原提示細胞を活性化する一方、その抗原提示細胞が腫瘍細胞を取り込むことを可能にする。次いで抗原提示細胞は「キラー」T細胞に身体全体にわたる同様の腫瘍細胞を見つけて破壊するように指令することができる。このようにして、OpsonokineTM製品は腫瘍細胞を強力な抗腫瘍免疫療法薬に変換する。
一実施形態において本発明は、本発明のヒト化抗体と、当技術分野で公知のいずれかのアレルギーワクチンとの併用も包含する。本発明のヒト化抗体は、例えば、Linhartら(2000, FASEB Journal, 16 (10): 1301-3、これは参照により組み入れられる)により記載されている、花粉アレルギーに対するワクチン接種に利用される大オオアワガエリ(major timothy)花粉アレルゲンをコードする組換えハイブリッド分子と併用することができる。さらに本発明のヒト化抗体は、Hornerら(2002, Allergy, 57 Suppl, 72:24-9、これは参照により組み入れられる)により記載されている、DNAに基づくワクチン接種と併用することができる。本発明の抗体は、Choiら(2002, Ann. Allergy Asthma Immunology, 88 (6):584-91)およびBarlanら(2002, Journal Asthma, 39 (3):239-46)(両方とも、参照により本明細書にその全文が組み入れられる)により記載されている、カルメット・ゲラン杆菌(「BCG」)ワクチン接種と組み合わせて、IgE分泌をダウンレギュレートするために使用することができる。本発明のヒト化抗体は食物アレルギーを治療する上で有用である。特に本発明のヒト化抗体は、ワクチンまたは当技術分野で公知の他の免疫療法(Hourihaneら, 2002, Curr. Opin. Allergy Clin. Immunol. 2 (3):227-31を参照)と組み合わせて、ピーナッツアレルギーを治療するために使用することができる。
本発明の方法および組成物は、抗原に対する免疫が望まれているワクチンと併用することができる。このような抗原は当技術分野で公知のいずれの抗原であってもよい。本発明のヒト化抗体は、例えば感染病原体、罹患したかまたは異常な細胞(例えば、限定するものではないが、細菌(例えば、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、好気性細菌、スピロヘータ、ミコバクテリア属、リケッチア属、クラミジア属など)、寄生虫、真菌(例えば、カンジダアルビカンス、アスペルギルス属など)、ウイルス(例えば、DNAウイルス、RNAウイルスなど)、または腫瘍)に対する免疫応答を増大させるために使用してもよい。ウイルス感染は、限定するものではないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV);A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、または他の肝炎ウイルス;サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス-1(-2、-3、-4、-5、-6)、ヒトパピローマウイルスウイルス;呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)、エプスタイン・バーウイルス、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)、インフルエンザウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)またはいずれか他のウイルス感染を含む。
本発明は、本発明のヒト化抗体、抗原およびサイトカインの組み合わせを含む方法およびワクチン組成物を包含する。好ましくは、該サイトカインはIL-4、IL-10、またはTGF-βである。
本発明は、ワクチン組成物の抗原に対する体液性および/または細胞性応答を増大させるための本発明のヒト化抗体の使用を包含する。本発明はさらに、特定の抗原または抗原群に対する免疫応答の増大が疾患もしくは障害を治療または予防するために有効である場合、その特定の障害を予防または治療するための本発明のヒト化抗体の使用も包含する。このような疾患および障害は、限定するものではないが、ウイルス感染、例えばHIV、CMV、肝炎、ヘルペスウイルス、麻疹など、細菌感染、真菌および寄生虫感染、癌、ならびに特定の抗原に対する免疫応答を増大させることにより治療または予防に影響されやすい他の疾患または障害を含む。
5.4 組成物および投与方法
本発明は、本発明のヒト化抗体を含んでなる方法および医薬組成物を提供する。本発明はまた、疾患、障害もしくは感染症に関連する1以上の症状を治療、予防、および改善する方法であって、被験者に有効な量の本発明の融合タンパク質もしくはコンジュゲート分子、または本発明の融合タンパク質もしくはコンジュゲート分子を含む医薬組成物を投与することによる方法も提供する。好ましい態様においては、抗体または融合タンパク質もしくはコンジュゲート分子は、実質的に精製されている(すなわち、実質的にその効果を限定するかまたは望ましくない副作用を生じる物質を含まない)。特定の実施形態においては、被験者は動物、好ましくは哺乳動物、例えば非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)および霊長類(例えば、サル、例えばカニクイザルおよびヒト)である。好ましい実施形態においては、被験者はヒトである。
様々な送達系が公知であり、本発明のヒト化抗体を含む組成物を投与するために利用することができ、例えばリポソーム、微粒子、マイクロカプセル中への封入、抗体もしくは融合タンパク質を発現することができる組換え細胞、受容体を介するエンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築などがある。
いくつかの実施形態においては、本発明のヒト化抗体の標的化した送達のために本発明の抗体をリポソームに入れて製剤化する。リポソームは、同心円状に配置された、水相を封入するリン脂質二重層から構成される小胞である。リポソームは典型的には様々なタイプの脂質、リン脂質、および/または界面活性剤を含む。リポソームの成分は生物膜の脂質配置と同様に二重層の形状で配置される。リポソームは、部分的に、その生体適合性、低免疫原性、および低毒性の故に、特に好ましい送達媒体である。リポソームの調製方法は当技術分野で公知であり、本発明の範囲に含まれる。例えば、Epsteinら, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688;Hwangら, 1980 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030-4;米国特許第4,485,045号および第4,544,545号を参照;これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる。
本発明はまた、長い血清半減期、すなわち長い循環時間をもつリポソームを調製する方法、例えば米国特許第5,013,556号に開示された方法も包含する。本発明の方法に使用される好ましいリポソームは循環から速やかに取り除かれない、すなわち、単核の貪食細胞系(MPS)に取り込まれることはない。本発明は、当業者に公知の方法を用いて調製される立体的に安定化されたリポソームを包含する。特定の作用機構に束縛されることを意図しないが、立体的に安定化されたリポソームはかさ高で非常にフレキシブルな親水性部分を有する脂質成分を含有し、これがリポソームと血清タンパク質との望ましくない反応を低減させ、血清成分によるオプソニン化を低減させ、そしてMPSによる認識を低減させる。立体的に安定化したリポソームは、好ましくはポリエチレングリコールを用いて調製される。リポソームおよび立体的に安定化したリポソームの調製については、例えば、Bendasら, 2001 BioDrugs, 15(4):215-224;Allenら, 1987 FEBS Lett. 223:42-6;Klibanovら, 1990 FEBS Lett., 268:235-7;Blumら, 1990, Biochim. Biophys. Acta., 1029:91-7;Torchilinら, 1996, J. Liposome Res. 6:99-116;Litzingerら, 1994, Biochim. Biophys. Acta, 1190:99-107;Maruyamaら, 1991, Chem. Pharm. Bull., 39:1620-2; Klibanovら, 1991, Biochim Biophys Acta, 1062; 142-8; Allenら, 1994, Adv. Drug Deliv. Rev, 13:285-309を参照;これらはすべて参照により本明細書にその全文が組み入れられる。本発明はまた、特定の器官を標的化する(例えば、米国特許第4,544,545号を参照)、または特定の細胞を標的化する(例えば、米国特許出願公開第2005/0074403号を参照)ように工夫されたリポソームも包含する。本発明の組成物および方法に使用するための特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法により作製することができる。リポソームを、所定の孔サイズのフィルターを通して押出し、所望の直径を有するリポソームを得る。いくつかの実施形態においては、本発明の抗体のフラグメント、例えばF(ab')、をリポソームと、以前に記載された方法を用いてコンジュゲートさせてもよい(例えば、Martinら, 1982, J. Biol. Chem. 257:286-288を参照、これは参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。
本発明のヒト化抗体はまた、免疫リポソームとして製剤化することができる。免疫リポソームは、本発明の抗体もしくはそのフラグメントが共有結合または非共有結合によりリポソーム表面と結合していることを特徴とするリポソーム組成物を意味する。抗体をリポソーム表面に結合させる化学反応は当技術分野で公知であり、本発明の範囲に包含され、例えば、米国特許第6,787,153号;Allenら, 1995, Stealth Liposomes, Boca Rotan: CRC Press, 233-44;Hansenら, 1995, Biochim. Biophys. Acta, 1239:133-44を参照されたい;これらは参照により本明細書にその全文が組み入れられる。最も好ましい実施形態においては、本発明の方法と組成物に使用する免疫リポソームをさらに立体的に安定化させる。好ましくは、本発明のヒト化抗体を共有結合または非共有結合により、リポソームの脂質二重層に安定に定着させた疎水性アンカーと結合させる。疎水性アンカーの例としては、限定するものではないが、リン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)が挙げられる。抗体と疎水性アンカーの間の共有結合を達成するために、当技術分野で公知の生化学手法のいずれを用いてもよく、例えば、J. Thomas August(編), 1997, Gene Therapy : Advances in Pharmacology, Volume 40, Academic Press, San Diego, CA., p.399-435を参照されたい(これは参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。例えば、抗体分子の官能基を、リポソームと結合している疎水性アンカー上の活性基と反応させてもよく、例えば、抗体上のリシン側鎖のアミノ基を、水溶性カルボジイミドで活性化した、リポソームと結合しているN-グルタリルホスファチジルエタノールアミンとカップリングさせることができ;または還元した抗体のチオール基を、ピリジルチオプロピオニル-ホスファチジルエタノールアミンなどのチオール反応性アンカーを経由してリポソームとカップリングさせることができる。例えば、Dietrichら, 1996, Biochemistry, 35:1100-1105;Loughreyら, 1987, Biochim. Biophys. Acta, 901:157-160;Martinら, 1982, J. Biol. Chem. 257:286-288;Martinら, 1981, Biochemistry, 20:4429-38を参照されたい(これらはすべて参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。特定の作用機構に束縛されることを意図しないが、本発明の抗体を含む免疫リポソーム製剤は、抗体を標的細胞(すなわち、抗体が結合するFcγRIIB受容体を含む細胞)の細胞質へ送達するので、特に治療薬として有効である。免疫リポソームは、好ましくは、血液中、特に標的細胞中で長い半減期を有し、標的細胞の細胞質内部にインターナライズすることができ、それにより治療薬の損失またはリソソーム内経路による分解を避ける。
本発明は、本発明のヒト化抗体またはそのフラグメントを含む免疫リポソームを包含する。いくつかの実施形態においては、免疫リポソームはさらに1以上の本明細書に開示したさらなる治療薬を含む。
本発明の免疫リポソーム組成物は、1以上の小胞形成性脂質、本発明の抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体、および場合によっては親水性ポリマーを含む。小胞形成性脂質は、好ましくは、2つの炭化水素鎖、例えばアシル鎖と、極性ヘッド基を有する脂質である。小胞形成性脂質の例としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリンなどのリン脂質、および糖脂質、例えば、セレブロシド、ガングリオシドが挙げられる。本発明の製剤に有用なさらなる脂質は当業者に公知であり、本発明の範囲に包含される。いくつかの実施形態においては、免疫リポソーム組成物はさらに、リポソームの血清半減期を増大させる親水性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコールおよびガングリオシドGM1を含む。親水性ポリマーをリポソームにコンジュゲートさせる方法は当技術分野で周知であり、本発明の範囲に包含される。免疫リポソームおよびそれらを調製する方法の総説としては、例えば、米国特許出願公開第2003/0044407号;PCT国際公開第WO 97/38731号、Vingerhoeadsら, 1994, Immunomethods, 4:259-72;Maruyama, 2000, Biol. Pharm. Bull. 23(7):791-799;Abraら, 2002, Journal of Liposome Research, 12(1&2):1-3;Park, 2002, Bioscience Reports, 22(2):267-281;Bendasら, 2001 BioDrugs, 14 (4):215-224;J. Thomas August, 編, 1997, Gene Therapy: Advances in Pharmacology, Volume 40, Academic Press, San Diego, CA., p.399-435を参照されたい(これらは全て参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。
本発明のヒト化抗体を投与する方法としては、限定するものではないが、非経口投与(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内および皮下)、硬膜外、および粘膜(例えば、鼻腔内および口腔経路)が挙げられる。特定の実施形態においては、本発明の抗体を筋肉内、静脈内、または皮下に投与する。組成物をいずれかの都合のよい経路により、例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管粘膜など)を介する吸収により投与してもよく、かつ他の生物学的活性薬と一緒に投与してもよい。投与は全身に対してでもまたは局所に対してであってもよい。さらに、例えば、吸入器または噴霧器、およびエーロゾル化剤を用いる製剤の使用により肺投与を利用することもできる。例えば、米国特許第6,019,968号;同第5,985,320号;同第5,985,309号;同第5,934,272号;同第5,874,064号;同第5,855,913号;同第5,290,540号;および同第4,880,078号;ならびにPCT公開WO 92/19244;同WO 97/32572;同WO 97/44013;同WO 98/31346;および同WO 99/66903を参照されたい(これらはそれぞれ参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。
本発明はまた、本発明のヒト化抗体を、密閉容器、例えば、アンプルまたは小袋(サシェ)中にパッケージし、抗体の量を表示して提供する。一実施形態においては、本発明の抗体を、乾燥した無菌凍結乾燥粉末または無水濃縮物として密閉容器に入れて供給し、そして例えば水または生理食塩水を用いて被験者に投与するために適当な濃度に再調製してもよい。好ましくは、本発明の抗体を、乾燥した無菌凍結乾燥粉末として密閉容器に入れて少なくとも5mg、さらに好ましくは少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、または少なくとも75mgの単位用量にて供給する。凍結乾燥した本発明の抗体はそのもとの容器中で2〜8℃の間で貯蔵するべきであり、かつ抗体は、再調製後12時間以内、好ましくは6時間以内、5時間以内、3時間以内、または1時間以内に投与するべきである。別の実施形態においては、本発明の抗体を、液体剤形で、密閉容器に入れて、抗体、融合タンパク質、またはコンジュゲート分子の量および濃度を表示して供給する。好ましくは、抗体の液体剤形を密閉容器に入れて、少なくとも1mg/ml、さらに好ましくは少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/kg、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも150mg/ml、少なくとも200mg/mlの抗体を供給する。
障害に関連するの1以上の症状の治療、予防または改善のために有効であると考えられる本発明の組成物の量は、標準的な臨床技術により決定することができる。製剤で用いるべき正確な用量はまた、投与経路、および病状の重篤度にも依存するであろうし、また医師の判断およびそれぞれの患者の環境によって決定するべきである。有効な用量をin vitroまたは動物モデル試験系から誘導した用量-応答曲線から推定することもできる。
本発明に包含される抗体について患者に投与される投与量は、典型的には、0.0001mg/kg〜100mg/kg患者体重である。好ましくは、患者に投与される投与量は、0.0001mg/kg〜20mg/kg、0.0001mg/kg〜10mg/kg、0.0001mg/kg〜5mg/kg、0.0001〜2mg/kg、0.0001〜1mg/kg、0.0001mg/kg〜0.75mg/kg、0.0001mg/kg〜0.5mg/kg、0.0001mg/kg〜0.25mg/kg、0.0001〜0.15mg/kg、0.0001〜0.10mg/kg、0.001〜0.5mg/kg、0.01〜0.25mg/kgまたは0.01〜0.10mg/kg患者体重である。一般的に、外来性ポリペプチドに対する免疫応答のために、ヒト抗体はヒト体内において他の生物種由来の抗体より長い半減期を有する。従って、ヒト抗体は投与量の低減および投与頻度の低減がしばしば可能である。さらに、例えば、脂質化などの修飾により抗体の取込みおよび組織侵入を増大させることにより、本発明の抗体またはそのフラグメントの投与量と頻度を低減させることができる。
一実施形態においては、患者に投与される本発明の抗体の投与量は単剤療法として用いるとき、0.01mg〜1000mg/日である。他の実施形態においては、本発明の抗体を他の治療用組成物と一緒に用い、患者に投与されるその投与量を上記抗体を単剤療法として用いるときより低くする。
特定の実施形態においては、本発明の医薬組成物を治療の必要な領域に局所投与することが所望される場合がある;これは、例えば、限定するものではないが、局所注入により、注射により、またはシラスティック(sialastic)メンブランなどのメンブランまたは繊維をはじめとする多孔質、非孔質、またはゼラチン状材料からなるインプラントを用いて達成することができる。好ましくは、本発明の抗体を投与するときには、抗体または融合タンパク質を吸着しない材料を使うように注意しなければならない。
他の実施形態においては、組成物を小胞、特にリポソームに入れて送達することができる(Langer, Science 249:1527-1533 (1990);Treatら, in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-BeresteinおよびFidler (編), Liss, New York, pp.353-365 (1989);Lopez-Berestein, 同文献, pp.3 17-327 を参照;一般的には同文献を参照)。
さらに他の実施形態においては、組成物を制御放出または持続放出系で送達することができる。当業者に公知のいずれかの技術を利用して、本発明の1以上の抗体を含む持続放出製剤を製造することができる。例えば、米国特許第4,526,938号;PCT公開WO 91/05548;PCT公開WO 96/20698;Ningら, 1996,「持続放出ゲルを用いるヒト結腸癌異種移植片の腫瘍内放射線免疫療法(Intratumoral Radioimmunotheraphy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained-Release Gel)」 Radiotherapy & Oncology 39:179-189, Songら, 1995,「長循環エマルジョンの抗体介在性肺ターゲティング(Antibody Mediated Lung Targeting of Long-Circulating Emulsions)」 PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397;Cleekら, 1997,「心血管応用のためのbFGF抗体に対する生分解性ポリマー担体(Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application)」 Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854;およびLamら, 1997,「局所送達のための、組換えヒト化モノクローナル抗体のマイクロカプセル化(Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery)」 Proc. Int'l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760を参照されたい(これらはそれぞれ参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。一実施形態においては、ポンプを制御放出系に用いる(Langer, 前掲;Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:20;Buchwaldら, 1980, Surgery 88:507;およびSaudekら, 1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照)。他の実施形態においては、ポリマー材料を用いて抗体の制御放出を達成することができる(例えば「制御放出の医療応用(Medical Applications of Controlled Release)」, LangerおよびWise (編), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974);「制御放出薬生体利用能、医薬品設計と性能(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)」, Smolen およびBall (編), Wiley, New York (1984);RangerおよびPeppas, 1983, J., Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照;またLevyら, 1985, Science 228:190;Duringら, 1989, Ann. Neurol. 25:351;Howardら, 1989, J. Neurosurg. 7 1:105も参照;米国特許第5,679,377号;同第5,916,597号;同第5,912,015号;同第5,989,463号;同第5,128,326号;PCT公開WO 99/15154;およびPCT公開WO 99/20253を参照)。持続放出製剤に使用されるポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステルが挙げられる。さらに他の実施形態においては、制御放出系を治療標的(例えば、肺)の近位に配置して、その結果、全身用量の一部分しか必要としないようにすることができる(例えば、Goodson,「制御放出の医療応用(Medical Applications of Controlled Release)」, 前掲, vol. 2, pp.115-138 (1984)を参照)。他の実施形態においては、制御放出インプラントとして有用なポリマー組成物を、Dunnら(米国特許第5,945,155号を参照)に従い使用する。この特定の方法は、ポリマー系からの生物活性材料のin situ制御放出の治療的効果に基づく。移植は一般的に、治療処置を必要とする患者体内のいずれの場所に行ってもよい。他の実施形態においては、非ポリマー持続送達系を使用し、この場合、被験者体内の非ポリマー性インプラントを薬物送達系として利用する。体内に移植すると、インプラントの有機溶媒は組成物から周囲組織液中に散逸、分散または浸出して非ポリマー材料が徐々に凝集または沈降し、固体のミクロ多孔質マトリックスを形成する(米国特許第5,888,533号を参照)。
制御放出系は、Langer(1990, Science 249:1527-1533)による総説に考察されている。当業者に公知のいずれの技術を用いて本発明の1以上の治療薬を含む持続放出製剤を作ってもよい。例えば、米国特許第4,526,938号;国際公開WO 91/05548および同WO 96/20698;Ningら, 1996, Radiotherapy & Oncology 39:179-189;Songら, 1995, PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397;Cleekら, 1997, Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854;およびLamら, 1997, Proc. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:759-760を参照されたい(これらはそれぞれ参照により本明細書にその全文が組み入れられる)。
特定の実施形態においては、本発明の組成物が抗体をコードする核酸である場合、核酸をin vivo投与してそのコードされた抗体の発現を促進することができ、その投与はそれを適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、細胞内に取込まれるように投与することにより、例えば、レトロウイルスベクターの使用により(米国特許第4,980,286号を参照)、または直接インジェクションにより、または微粒子ボンバードメントにより(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクション剤を用いてコーティングして、または核に侵入することが知られるホメオボックス様ペプチドと連結して投与すること(例えば、Joliotら, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868を参照)などによる。あるいは、核酸を細胞内に導入して相同的組換えにより発現のために宿主細胞DNAに組み込んでもよい。
抗体について、被験者に投与される治療上または予防上有効な投与量は、典型的には、0.1mg/kg〜200mg/kg被験者体重である。好ましくは、被験者に投与される投与量は、0.1mg/kg〜20mg/kg被験者体重、そしてさらに好ましくは1mg/kg〜10mg/kg被験者体重である。本発明の抗体の投与量と頻度はまた、例えば脂質化などの修飾による抗体または融合タンパク質の取込みおよび組織侵入(例えば、肺中への)の増大によって低減することもできる。
本発明の抗体の治療上または予防上有効な量を用いる被験者の治療は、単一治療または、好ましくは、一連の治療を含むことができる。好ましい例においては、被験者を約0.1〜30mg/kg体重の本発明の抗体を用いて、毎週1回、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、さらに好ましくは約3〜7週間、そしてなおさらに好ましくは約4、5、または6週間の範囲で治療を行う。他の実施形態においては、本発明の医薬組成物を1日1回、1日2回、または1日3回投与する。他の実施形態においては、医薬組成物を週1回、週2回、2週に1回、月1回、6週に1回、2月に1回、年2回または年1回投与する。治療に使用する抗体の有効な投与量は、特定の治療のコースにわたって増加または減少させてよいことも理解されるであろう。
5.4.1 医薬組成物
本発明の組成物は、医薬組成物の製造に有用であるバルク薬組成物(例えば、不純なまたは非殺菌の組成物)および単位剤形の調製に利用することができる医薬組成物(すなわち、被験者または患者に投与するのに好適である組成物)を含む。そのような組成物は、本明細書に開示した予防薬および/もしくは治療薬またはこれらの薬剤と製薬上許容される担体の組合せの、予防上または治療上有効な量を含む。好ましくは、本発明の組成物は本発明のヒト化抗体および製薬上許容される担体の予防上または治療上有効な量を含む。
ある特定の実施形態において医薬組成物は、FcγRIIAが結合する親和性よりも高い親和性でFcγRIIBと結合する治療上有効な量のヒト化抗体またはそのフラグメント、特異的に癌抗原と結合する細胞傷害性抗体、および製薬上許容される担体を含む。他の実施形態においては、上記医薬組成物はさらに1以上の抗癌剤を含む。
特定の実施形態においては、用語「製薬上許容される」は連邦または州政府の規制当局により認可されたかまたは米国薬局方もしくは他の一般的に認められた動物そして特にヒトにおける使用に対する薬局方に掲げられたことを意味する。用語「担体」は、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全および不完全))、賦形剤、または治療薬を投与するのに用いるビヒクルを意味する。このような製薬担体は、水および油などの無菌液体であってもよく、石油、動物、植物または合成起源、例えばピーナッツオイル、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの無菌液体が含まれる。医薬組成物を静脈内投与するときは、水が好ましい担体である。生理食塩水およびブドウ糖およびグリセロール水溶液もまた、特に注射溶液のための液体担体として利用することができる。好適な製薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。所望であれば、組成物はまた、小量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有してもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸薬、カプセル剤、粉末剤、持続放出製剤などの剤形とすることができる。
一般的に、本発明の組成物の成分は、別々にまたは一緒に混合して単位剤形で、例えば、乾燥した凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、密閉容器、例えばアンプルまたは小袋(サシェ)に入れ、活性薬の量を表示して供給される。組成物を注入により投与する場合、無菌医薬グレードの水または生理食塩水の入った注入ボトルを用いて調剤してもよい。組成物を注射により投与する場合、無菌の注射用水または生理食塩水のアンプルを提供して、その成分が投与前に混合されるようにすることができる。
本発明の組成物を、中性または塩形態として製剤化してもよい。製薬上許容される塩としては、限定するものではないが、アニオン、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるアニオンにより形成された塩、およびカチオン、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されたカチオンにより形成された塩が挙げられる。
本発明はまた、B細胞性悪性腫瘍もしくはその1以上の症状の予防、治療、管理、または改善に使用するための、FcγRIIBアンタゴニストを含んでなる医薬組成物およびキットも提供する。特に、本発明は、ヒト化FcγRIIB抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含んでなる医薬組成物およびキットを提供する。
5.4.2 遺伝子治療
特定の実施形態においては、抗体または融合タンパク質をコードする配列を含む核酸を投与して、遺伝子治療によって疾患、障害、もしくは感染症に関連する1以上の症状を治療、予防、または改善する。遺伝子治療とは、発現されるかまたは発現されうる核酸の被験者への投与により実施する療法を意味する。本発明のこの実施形態においては、核酸は、それがコードする、治療または予防効果を仲介する抗体または融合タンパク質をもたらす。
当技術分野で利用しうるいずれの遺伝子治療法も本発明に従って使用することができる。この方法の例を以下に記載する。
遺伝子治療法の一般的総説としては、Goldspielら, 1993, Clinical Pharmacy 12:488-505;WuおよびWu, 1991, Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev, 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596;Mulligan, Science 260:926-932 (1993);Morgan and Anderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217;May, 1993, TIBTECH 11 (5) :155-215;およびScholl, 2003, J. Biomed Biotechnol 2003:35-47を参照されたい。組換えDNA技術の技術分野で公知の利用可能な方法は、Ausubelら (編), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993);およびKriegler, Gene Transfer and Expression. A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990)に記載されている。
好ましい態様においては、本発明の組成物は抗体をコードする核酸を含み、上記核酸は好適な宿主中において抗体を発現する発現ベクターの一部分である。特に、このような核酸は、抗体コード領域と機能しうる形で連結されたプロモーター、好ましくは異種プロモーターを有し、上記プロモーターは、誘導的、構成的、かつ場合によっては、組織特異的である。他の特定の実施形態においては、次のような核酸分子が使用され、該核酸分子では、抗体のコード配列およびいずれか他の所望の配列がゲノム内の所望の部位における相同組換えを促進する領域につなげられ、その結果、抗体をコードする核酸の染色体内発現が得られる(KollerおよびSmithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935;ならびにZijlstraら, 1989, Nature 342:435-438)。
他の好ましい態様においては、本発明の組成物は融合タンパク質をコードする核酸を含み、上記核酸は好適な宿主において融合タンパク質を発現する発現ベクターの一部分である。特に、このような核酸は、融合タンパク質のコード領域と機能しうる形で連結されたプロモーター、好ましくは異種プロモーターを有し、上記プロモーターは、誘導的、構成的、かつ場合によっては、組織特異的である。他の特定の実施形態においては、融合タンパク質のコード配列およびいずれか他の所望の配列がゲノム内の所望の部位における相同組換えを促進する領域につなげられ、その結果、融合タンパク質をコードする核酸の染色体内発現が得られるような、核酸分子が使用される。
核酸の被験者体内への送達は、直接的(この場合には被験者を核酸または核酸担持ベクターに直接さらす)または間接的(この場合には細胞を最初に核酸でin vitro形質転換し、次いで被験者に移植する)のいずれであってもよい。これらの2つの手法は、それぞれ、in vivoまたはex vivo遺伝子治療として知られる。
特定の実施形態においては、核酸配列が直接in vivo投与され、そこで発現してコードされた産物をもたらす。これは、当技術分野で公知の多数の方法のいずれかにより実施することができる;例えば、それを適当な核酸発現ベクターの一部分として構築し、そして細胞内に取り込まれるように投与する、例えば、欠陥もしくは弱毒化レトロウイルスまたは他のウイルスベクターを使った感染により(米国特許第4,980,286号を参照)、または裸のDNAの直接インジェクションにより、または微粒子ボンバードメント(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)により、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクション剤を用いてコーティングし、リポソーム、ミクロ粒子、もしくはマイクロカプセル内に封入する、または核に侵入することが知られるペプチドと連結してそれを投与することにより、受容体を介するエンドサイトーシスを受けるリガンドと連結して投与する(これにより受容体を特異的に発現する細胞型を標的化する)(例えば、Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照)などによる。他の実施形態においては、核酸-リガンド複合体(このリガンドはエンドソームを破壊する融合性ウイルスペプチドを含む)を形成させて、核酸にリソソーム分解を回避させることができる。さらに他の実施形態においては、特異的受容体を標的化することにより、in vivoで核酸を細胞特異的取込みおよび発現に向かわせることができる(例えば、PCT公開WO 92/06180;WO 92/22635;W092/20316;W093/14188;WO 93/20221を参照)。あるいは、核酸を細胞内に導入し、そして発現のために宿主細胞DNA内に相同組換えによって組込ませることができる(Koller and Smithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935;およびZijlstraら, 1989, Nature 342:435-438)。
特定の実施形態においては、抗体または融合タンパク質をコードする核酸配列を含有するウイルスベクターを用いる。例えばレトロウイルスベクターを利用することができる(Millerら, 1993, Meth. Enzymol. 217:581-599を参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正しいパッケージングおよび宿主細胞DNA中への組込みのために必要な成分を含有する。遺伝子治療に利用する抗体または融合タンパク質をコードする核酸配列を1以上のベクター中にクローニングして、ヌクレオチド配列の被験者中への送達を容易にする。レトロウイルスベクターについてのさらなる詳細は、Boesenら(1994, Biotherapy 6:291-302)に見出すことができ、これは、化学療法にさらに耐性のある幹細胞を作る目的でmdr 1遺伝子を造血幹細胞へ送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載する。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を説明する他の参考文献には:Clowesら, 1994, J. Clin. Invest. 93:644-651;Kleinら, 1994, Blood 83:1467-1473;SalmonsおよびGunzberg, 1993, Human Gene Therapy 4:129-141;ならびにGrossmanおよびWilson, 1993, Curr. Opin. in Genetics and Devel. 3:110-114がある。
アデノウイルスは、遺伝子治療に利用しうる他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、遺伝子を呼吸器上皮に送達する媒体として特に魅力がある。アデノウイルスは天然に呼吸器上皮に感染して軽度の疾患を引き起す。アデノウイルスに基づく送達系の他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスは非分裂細胞に感染することができるので有利である。KozarskyおよびWilson(Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503, 1993)はアデノウイルスに基づく遺伝子治療の総説を発表している。Boutら(Human Gene Therapy, 5:3-10,1994)は、遺伝子をアカゲザルの呼吸器上皮へ導入するためのアデノウイルスベクターの利用を実証した。遺伝子治療におけるアデノウイルスの利用の他の例は、Rosenfeldら, 1991, Science 252:431-434;Rosenfeldら, 1992, Cell 68 :143-155;Mastrangeliら, 1993, J. Clin. Invest. 91:225-234;PCT公開W0 94/12649;ならびにWangら, 1995, Gene Therapy 2:775-783に見出すことができる。好ましい実施形態においては、アデノウイルスベクターを利用する。
アデノ随伴ウイルス(AAV)も遺伝子治療における利用が報じられている(例えば、Walshら, 1993, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204:289-300および米国特許第5,436,146号を参照)。
遺伝子治療に対する他のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムを介するトランスフェクション、またはウイルス感染などの方法により、遺伝子を組織培養物中の細胞に導入することを含む。通常、導入の方法は、選択可能なマーカーの細胞への導入を含む。次いで細胞を選択に付して、取り出されかつ導入した遺伝子を発現する細胞を単離する。次いでこれらの細胞を被験者に送達する。
この実施形態においては、核酸を細胞中に導入した後に、得られた組換え細胞をin vivo投与する。このような導入は、当技術分野で公知のいずれかの方法により行うことができ、そのような方法としては、例えば、限定するものではないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含有するウイルスもしくはバクテリオファージベクターを用いる感染、細胞融合、染色体介在遺伝子導入(chromosome-mediated gene transfer)、マイクロセル介在遺伝子導入(microcell mediated gene transfer)、スフェロプラスト融合などが挙げられる。外来遺伝子を細胞中に導入するための多数の技術は当技術分野で公知であり(例えば、LoefflerおよびBehr, 1993, Meth. Enzymol. 217:599-618;Cohenら, 1993, Meth. Enzymol. 217:618-644;およびClin. Pharma. Ther. 29:69-92,1985を参照)、レシピエント細胞の必要な発達および生理学的機能が破壊されないことを条件として本発明に従って利用することができる。その技術は核酸の細胞への安定な導入を提供して、核酸が細胞により発現され、そして好ましくはその細胞子孫に遺伝してかつ発現されるものでなければならない。
得られる組換え細胞は、当技術分野で公知の様々な方法により被験者に送達することができる。組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞または前駆細胞)は、好ましくは、静脈内に投与される。細胞の使用予想量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者が決定しうる。
遺伝子治療の目的で核酸を導入する相手の細胞は、いずれの所望の、利用しうる細胞型を包含してもよく、限定するものではないが、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、繊維芽細胞、筋細胞、肝細胞;血液細胞、例えばTリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球;様々な幹細胞または前駆細胞、特に造血幹細胞または前駆細胞、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝などから得られるものを含む。
好ましい実施形態においては、遺伝子治療に使用される細胞は被験者にとって自己のものである。
組換え細胞を遺伝子治療に使用する一実施形態においては、抗体または融合タンパク質をコードする核酸配列を細胞中に導入して、それらがその細胞またはその子孫により発現されるようにし、次いでその組換え細胞をin vivoで投与して治療効果を得る。特定の実施形態においては、幹細胞または前駆細胞を用いる。単離してin vivoで維持することができるいずれの幹細胞および/または前駆細胞も潜在的に、本発明のこの実施形態に従って利用することができる(例えば、PCT公開WO 94/08598;StempleおよびAnderson, 1992, Cell 7 1:973-985;Rheinwald, 1980, Meth. Cell Bio. 21A :229;ならびにPittelkowおよびScott, 1986, Mayo Clinic Proc. 61:771を参照)。
特定の実施形態においては、遺伝子治療の目的で導入される核酸は、コード領域と機能しうる形で連結された誘導性プロモーターを含み、それにより適当な転写誘導物質の存在または不在を制御することにより核酸の発現を制御することができる。
5.4.3 キット
本発明は、本発明のヒト化抗体を充填した1以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。さらに、疾患の治療に有用な1以上の他の予防薬または治療薬を、医薬パックまたはキット中に加えてもよい。本発明はまた、本発明の医薬組成物の1以上の成分を充填した1以上の容器を含む医薬パックまたはキットも提供する。場合によってはこのような容器に、医薬または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府当局が指示した形式であって、ヒト投与用の製造、使用または販売についての行政当局による認可を表示する注意書きを添付してもよい。
本発明は、上記の方法で使用することができるキットを提供する。一実施形態においては、キットは1以上の本発明のヒト化抗体を含む。他の実施形態においては、キットはさらに、癌の治療用に有用な1以上の他の予防薬または治療薬を、1以上の容器中に含む。他の実施形態においては、キットはさらに、癌に関連する1以上の癌抗原と結合する1以上の細胞傷害性抗体を含む。ある特定の実施形態においては、他の予防薬または治療薬は化学療法剤である。他の実施形態においては、予防薬もしくは治療薬は生物学的療法剤またはホルモン療法剤である。
5.5 治療上の有用性の特徴づけおよび検証
本発明の医薬組成物または予防薬もしくは治療薬の複数の態様は、好ましくは、in vitro、例えば細胞培養系で試験し、次いでin vivo、例えば動物モデル生物で、例えばげっ歯類動物モデル系で所望の治療活性について試験した後に、ヒトに使用する。例えば、特定の医薬組成物の投与が適応するかどうかを確認するために用いることができるアッセイには、細胞培養アッセイが含まれ、このアッセイでは、患者組織サンプルを培養し、医薬組成物に曝すかまたはそれ以外の様式で接触させ、そして組織サンプルに対するこのような組成物の効果(例えば、軟寒天中での増殖および/もしくはコロニー形成あるいは3次元基底膜もしくは細胞外マトリックス調製物中の管状ネットワーク形成の抑制または減少)を観察する。組織サンプルは患者から生検により得ることができる。この試験により、治療上最も有効な予防用または治療用分子をそれぞれの個々の患者に対して特定することができる。あるいは、患者からの細胞を培養する代わりに、治療薬および方法を、腫瘍細胞または悪性細胞株の細胞を用いてスクリーニングすることができる。様々な特定の実施形態においては、in vitroアッセイを、自己免疫疾患または炎症性疾患に関わる細胞型(例えば、T細胞)の代表的細胞を用いて実施し、本発明の医薬組成物がこのような細胞型に対して所望の効果を有するかを確認することができる。当技術分野で標準的な多数のアッセイを用いて、このような生存および/または増殖を評価することができる;例えば、細胞増殖は、3H-チミジン取込みを測定することにより、直接細胞計数により、プロトオンコジーン(例えば、fos、myc)もしくは細胞周期マーカーなどの公知の遺伝子の転写活性の変化を検出することにより評価することができる;細胞生存率はトリパンブルー染色により評価することができ、分化は形態の変化、軟寒天中での増殖および/またはコロニー形成または3次元基底膜または細胞外マトリックス調製物中の管状ネットワーク形成の減少などに基づいて視覚的に評価することができる。さらなるアッセイとしては、当技術分野で公知のものおよび実施例に記載したラフト結合、CDC、ADCCおよびアポトーシスアッセイが挙げられる。
予防薬および/または治療薬の組合せは、ヒトで使用する前に、適当な動物モデル系で試験することができる。このような動物モデル系としては、限定するものではないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ウサギなどが挙げられる。当技術分野で周知のいずれの動物系を使用してもよい。本発明の特定の実施形態においては、予防薬および/または治療薬の組合せをマウスモデル系で試験する。このようなモデル系は広く使用されていて、当業者に周知である。予防薬および/または治療薬は、反復して投与することができる。予防薬および/または治療薬を投与する時間的計画、およびこのような薬剤を別々にまたは混合物として投与するかどうかなどの手法についてのいくつかの態様は、様々でありうる。
本発明の方法に使用する好ましい動物モデルは、例えば、マウスエフェクター細胞上にFcγRを発現するトランスジェニックマウス、例えば、米国特許第5,877,396号(これは参照により本明細書にその全文が組み入れられる)に記載されたいずれかのマウスモデルである。本発明の方法に使用するトランスジェニックマウスとしては、限定するものではないが、ヒトFcγRIIIAを有するマウス、ヒトFcγRIIAを有するマウス、ヒトFcγRIIBとヒトFcγRIIIAを有するマウス、ヒトFcγRIIBとヒトFcγRIIAを有するマウスが挙げられる。
本発明の予防薬および/または治療薬の動物モデルでの試験が終わると、それらを臨床試験で検査してそれらの効力を立証することができる。臨床試験は、当業者に公知の通常の方法論に従って成立させることができるのであって、本発明の組成物の最適の投与量と投与経路だけでなく毒性プロファイルも常套的な実験を利用して立証することができる。
本発明の併用療法の抗炎症活性は、当技術分野で公知のものおよびCrofford L.J.およびWilder R.L.(「動物の関節炎と自己免疫(Arthritis and Autoimmunity in Animals)」、Arthritis and Allied Conditions: A Textbook of Rheumatology, McCartyら(編), 第30章 Lee and Febiger, 1993)に記載の炎症性関節炎の様々な実験動物モデルを利用して測定することができる。炎症性関節炎および自己免疫リウマチ疾患の実験的かつ自発性動物モデルもまた、本発明の併用療法の抗炎症活性を評価するために利用することができる。以下に例としていくつかのアッセイを挙げるが、これらに限定されるものではない。
当技術分野で公知かつ広く利用される関節炎または炎症性疾患用の主な動物モデルとしては、アジュバント誘導関節炎ラットモデル、コラーゲン誘導関節炎ラットおよびマウスモデル、ならびに抗原誘導関節炎ラット、ウサギおよびハムスターモデルが挙げられ、これらは全て、Crofford L.J.およびWilder R.L.(「動物の関節炎と自己免疫(Arthritis and Autoimmunity in Animals)」、Arthritis and Allied Conditions: A Textbook of Rheumatology, McCartyら(編), 第30章 Lee and Febiger, 1993、これは参照により本明細書にその全文が組み入れられる)に記載されている。
本発明の併用療法の抗炎症活性は、カラゲナン誘導関節炎ラットモデルを用いて評価することができる。カラゲナンが誘導する関節炎は、ウサギ、イヌおよびブタにおける慢性関節炎または炎症の研究にも利用されている。定量的な組織形態計測的評価を用いて治療効力を決定する。このようなカラゲナン誘導関節炎モデルを利用する方法は、Hansra P.ら,「ラットにおけるカラゲナン誘導関節炎(Carrageenan-induced Arthritis in the Rat)」, Inflammation, 24(2):141-155, (2000)に記載されている。また、ザイモサンが誘導する炎症動物モデルも通常利用されかつ当技術分野で公知である。
本発明の併用療法の抗炎症活性はまた、カラゲナン誘導性のラット足浮腫(paw edema)の抑制を、Winter C.A.ら,「抗炎症薬アッセイとしての、カラゲナンが誘導するラット後足浮腫(Carrageenan-Induced Edema in Hind Paw of the Rat as an Assay for Anti-inflammatory Drugs)」Proc. Soc. Exp. Biol Med. 111, 544-547, (1962)に記載される方法の変法を用いて測定することにより評価することもできる。このアッセイはほとんどのNSAIDの抗炎症活性に対する一次in vivoスクリーニングとして使われていて、ヒト効力を予測すると考えられている。試験予防薬または治療薬の抗炎症活性は、ビヒクルを投与した対照グループと比較した試験グループの後足重量増加の抑制%として表現される。
さらに、炎症性腸疾患の動物モデルを用いて、本発明の併用療法の効力を評価することもできる(Kimら, 1992, Scand. J. Gastroentrol. 27:529-537;Strober, 1985, Dig. Dis. Sci. 30(12 Suppl):3S-10S)。潰瘍性大腸炎およびクローン病は動物に誘導することができるヒト炎症性腸疾患である。硫酸化多糖体(限定するものではないが、アミロペクチン、カラゲナン、アミロペクチン硫酸およびデキストラン硫酸を含む)または化学刺激剤(限定するものではないが、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)および酢酸を含む)を動物に経口投与して炎症性腸疾患を誘導することができる。
喘息についての動物モデルを利用して、本発明の併用療法の効力を評価することもできる。このようなモデルの一例は、マウス養子移入モデルであり、このモデルでは、TH1またはTH2レシピエントマウスのエーロアレルゲン吸入誘発により、気道へのTHエフェクター細胞の遊走が起こり、激しい好中球(TH1)および好酸球(TH2)肺粘膜炎症性応答を起こす(Cohnら, 1997, J. Exp. Med. 186:1737-1747)。
自己免疫疾患用の動物モデルを利用して、本発明の併用療法の効力を評価することもできる。自己免疫疾患、例えばI型糖尿病、甲状腺自己免疫、全身性エリテマトーデス、および糸球体腎炎に対する動物モデルが開発されている(Flandersら, 1999, Autoimmunity 29:235-246;Kroghら, 1999, Biochimie 81:511-515;Foster, 1999, Semin. Nephrol. 19:12-24)。
さらに、当業者に公知のいずれかのアッセイを利用して、本明細書に開示した自己免疫および/もしくは炎症性疾患に対する併用療法の予防上および/または治療上の有用性を評価してもよい。
本発明の予防および/または治療プロトコルの毒性および効力は、細胞培養または実験動物における、例えば、LD50(集団の50%に対する致死用量)およびED50(集団の50%における治療上有効な用量)を確認するための標準的な製薬上の手順により確認することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表現される。大きな治療指数を示す予防薬および/または治療薬が好ましい。毒性副作用を表す予防薬および/または治療薬を使用することはできるが、このような薬物を罹患組織の部位に到達させる送達系を設計して非感染細胞への起こりうる損傷を最小限にし、それにより、副作用を軽減するように注意しなければならない。
細胞培養アッセイおよび動物実験から得たデータを、ヒトに使用する予防薬および/または治療薬の投与量の範囲を処方するのに利用することができる。このような薬物の投与量は、好ましくは、ED50を含みかつ毒性がほとんどないか無毒の循環濃度の範囲内にある。投与量は、利用する投与剤形および投与経路に応じてこの範囲で変えることができる。本発明の方法に使用するいずれの薬物に対しても、治療上有効な用量は最初に細胞培養アッセイから推定する。細胞培養で決定したIC50(すなわち、症状の最大半量抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、用量を動物モデルで処方してもよい。このような情報を利用して、ヒトにおいて有用な投与量をさらに正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
本発明に従って使用される療法の抗癌活性はまた、癌研究用の様々な実験動物モデル、例えばSCIDマウスモデルまたはヒト異種移植片を有するトランスジェニックマウスもしくはヌードマウス、動物モデル、例えばハムスター、ウサギなどを用いることにより決定することもでき、これらは当技術分野で公知でありかつRelevance of Tumor Models for Anticancer Drug Development(1999, FiebigおよびBurger編); Contributions to Oncology(1999, Karger);The Nude Mouse in Oncology Research(1991, Boven and Winograd編);およびAnticancer Drug Development Guide(1997 Teicher編)(これらは参照により本明細書にその全文が組み入れられる)に記載されている。
本発明のプロトコルと組成物は、ヒトで使用する前に、好ましくは、in vitroで、次いでin vivoで、所望の治療活性または予防活性について試験する。治療薬と方法は、腫瘍細胞または悪性細胞株の細胞を用いてスクリーニングすることができる。当技術分野で標準的な多くのアッセイを利用してこのような生存および/または増殖を評価することができる;例えば、細胞増殖は3H-チミジン取込みを測定することにより、直接細胞計数により、プロトオンコジーン(例えば、fos、myc)または細胞周期マーカーなどの公知の遺伝子の転写活性の変化を検出することにより評価することができる;細胞生存率はトリパンブルー染色により評価することができ、分化は形態の変化、軟寒天中での増殖および/もしくはコロニー形成または3次元基底膜または細胞外マトリックス調製物中の管状ネットワーク形成の減少などに基づいて視覚的に評価することができる。
治療に用いる化合物は、限定するものではないが、ヒトで試験する前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、ハムスターなどを含む好適な動物モデル系で、例えば、上記の動物モデルで試験することができる。次いで、化合物を適当な臨床試験に使用することができる。
さらに、当技術分野で公知のいずれかのアッセイを用いて、本明細書に開示した併用療法の予防上および/または治療上の有用性を、癌、炎症性疾患、もしくは自己免疫疾患の治療または予防について評価することができる。
5.6 診断方法
標識した本発明の抗体を診断目的に用いて、疾患、障害もしくは感染症を検出、診断、またはモニターすることができる。本発明は、疾患、障害もしくは感染症、特に自己免疫疾患を検出または診断する方法を提供し、この方法は、(a)被験者の細胞または組織サンプル中のFcγRIIBの発現を、FcγRIIBと免疫特異的に結合する1以上の抗体を用いてアッセイするステップ;および(b)抗原のレベルを対照レベル(例えば正常組織サンプル中のレベル)と比較するステップを含み、ここで抗原の対照レベルと比較したときの抗原のアッセイレベルの増加は疾患、障害または感染症を示すものである。
本発明の抗体を使用し、生物学的サンプル中のFcγRIIBレベルを本明細書に記載したかまたは当業者に公知の古典的免疫組織学的方法を用いて評価することができる(例えば、Jalkanenら, 1985, J. Cell. Biol. 101:976-985;Jalkanenら, 1987, J. Cell. Biol. 105:3087-3096を参照)。タンパク質遺伝子発現を検出するために有用な、他の抗体に基づく方法は、イムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)を含む。好適な抗体アッセイ標識は当技術分野で公知であり、酵素標識、例えばアルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ;放射性同位体、例えばヨウ素(125I, 131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(121In)、およびテクネチウム(99mTc);発光標識、例えばルミノール;および蛍光標識、例えばフルオレセインおよびローダミンが挙げられる。
本発明の一態様は、ヒトにおける疾患、障害、または感染症の検出および診断である。一実施形態においては、診断は、a)被験者にFcγRIIBと免疫特異的に結合する標識抗体の有効量を投与する(例えば、非経口、皮下、または腹腔内に)ステップ;b)投与後の一定時間の間、標識抗体が、FcγRIIBの発現される被験者体内の部位に優先的に濃縮される(そして未結合の標識分子がバックグラウンドレベルまで消失される)のを待つステップ;c)バックグラウンドレベルを測定するステップ;およびd)被験者中の標識抗体を検出して、バックグラウンドレベルを超える標識抗体の検出が、被験者が疾患、障害または感染症を有することを示すようにするステップを含む。この実施形態に従うと、抗体は、当業者に公知のイメージングシステムを用いて検出可能なイメージング成分により標識される。バックグラウンドレベルは、検出された標識分子の量を、特定の系に対してあらかじめ決定された標準値と比較することを含む、様々な方法により決定することができる。
被験者のサイズと使用するイメージングシステムが、診断イメージを生成するために必要なイメージング成分の量を決定するであろうことは当技術分野で理解されるであろう。ヒト被験者において、放射性同位体成分の場合、注射される放射能の量は通常約5〜20ミリキュリーの99mTcとなろう。標識抗体を次いで特定のタンパク質を含有する細胞の位置に選択的に蓄積させる。in vivo腫瘍イメージングは、S.W. Burchielら,「放射標識した抗体とそのフラグメントの免疫薬物動態学(Immunopharmacokinetics of Radiolabeled Antibodies and Their Fragments)」第13章、Tumor Imaging :The Radiochemical Detection of Cancer, S.W. BurchielおよびB.A. Rhodes編, Masson Publishing Inc. (1982) に記載されている。
使用する標識のタイプおよび投与様式を含む複数の変数に依存して、標識した分子が被験者体内の部位に選択的に濃縮されるため、および未結合標識分子がバックグラウンドレベルまで除去されるための投与後の時間間隔は、6〜48時間または6〜24時間または6〜12時間である。他の実施形態においては、投与後の間隔は5〜20日または5〜10日である。
一実施形態においては、疾患、障害または感染症のモニタリングは、例えば最初の診断後1ヶ月、最初の診断後6ヶ月、最初の診断後1年などで疾患、障害または感染症の診断方法を繰り返すことによって実施する。
被験者中の標識分子の存在は、in vivo走査のための当技術分野で公知の方法を用いて検出することができる。これらの方法は、使用する標識のタイプに依存する。当業者は特定の標識を検出するための適当な方法を確定することができよう。本発明の診断に利用しうる方法と装置としては、限定するものではないが、コンピューター断層撮影(CT)、陽電子放出断層撮影(PET)などの全身走査、磁気共鳴イメージング(MRI)、およびソノグラフィーが挙げられる。
特定の実施形態においては、分子を放射性同位体により標識し、患者において放射線応答外科機器(Thurstonら、米国特許第5,441,050号)を用いて検出する。他の実施形態においては、分子を蛍光化合物により標識し、患者において蛍光応答走査機器を用いて検出する。他の実施形態においては、分子を陽電子放出性金属により標識し、患者において陽電子放出断層撮影を用いて検出する。さらに他の実施形態においては、分子を常磁性標識により標識し、患者において磁気共鳴イメージング(MRI)を用いて検出する。