JP2008524999A - 精神障害を治療するための組成物及び方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は概して、統合失調症及び双極性障害などの精神障害を検出又は治療するための方法及び組成物に関する。本発明はより詳細には、統合失調症、双極性障害及び関連障害の診断、予防及び治療、並びに前記障害を治療するための治療上活性がある薬剤のスクリーニングに使用することができる、ヒト遺伝子の同定を開示する。本発明はさらに、統合失調症又は双極性障害と関係があるKCNQ3遺伝子の特異的な多型又は対立遺伝子、並びにこれらのマーカーに基づく診断ツール及びキットを開示する。統合失調症、双極性障害及び関連障害の素因の診断、検出、予防及び/又は治療において、本発明を使用することができる。
Description
本発明は概して、統合失調症及び双極性障害などの精神障害を検出又は治療するための、方法及び組成物に関する。本発明はより詳細には、統合失調症、双極性障害及び関連障害の診断、予防及び治療、並びに治療上活性がある薬剤のスクリーニングに使用することができる標的としての、ヒト遺伝子KCNQ3の同定を開示する。本発明はさらに、統合失調症及び双極性障害と関係があるKCNQ3遺伝子の特異的な多型又は対立遺伝子、並びにこれらのマーカーに基づく診断ツール及びキットを開示する。統合失調症、双極性障害及び関連障害の存在、危険又は素因の診断又は検出、並びに予防及び/又は治療において、本発明を使用することができる。
世界には統合失調症を有する推定4千5百万人の人が存在し、その中の3千3百万人を超える人は発展途上国に存在する。先進国では統合失調症は、成人人口の約1%でその人生のいずれかの地点において発生する。統合失調症を有する一の祖父母が存在する場合、この病気になる危険は約3%に増大し、一方の親が統合失調症を有する場合は約10%に増大する。両親が統合失調症を有する場合、この危険は約40%に上昇する。大部分の統合失調症患者は決して働くことができない。統合失調症患者の標準化死亡率(SMR)は、一般群より2〜4倍高いと推定され、統合失調症患者の寿命は一般群より全体的に20%短い。統合失調症患者における最も一般的な死因は自殺であり(患者の10%)、これは一般群より20倍高い危険を表す。心臓疾患並びに呼吸系及び消化系疾患による死も、統合失調症患者において増大している。
統合失調症は、「陽性」及び/又は「陰性」症状を伴う一群の精神病を含む。陽性症状は幻覚、妄想及び思考障害からなり、陰性症状には感情の平坦化、意欲欠如及び運動活動の低下がある。抗精神治療が最も一般的であり、統合失調症に有用な治療である。一般に統合失調症に処方される、4つの主なクラスの抗精神薬が存在する。クロルプロマジン(ソラジン)によって例示される第一の神経弛緩薬は、陽性(精神病)症状を低下させその再発を防止することによって、統合失調症患者の治療を根本から変えた。クロルプロマジンを与えた患者は精神病院を去り、地域社会のプログラム又はその故郷で生活することができている。しかしながら、これらの薬は理想とほど遠い。約20%〜30%の患者はこれらの薬に全く反応せず、他の患者は結局再発する。これらの薬は神経弛緩薬と名付けられた。なぜならそれらは、腕及び脚の硬直及び震え、筋痙攣、異常な身体の動き、並びに静座不能(不安定なペース及び落ち着きのなさ)を含めた重大な神経副作用を生み出すからである。これらの副作用は非常に厄介なので、多くの患者はこれらの薬を摂取するのを単に拒絶する。さらに、神経弛緩薬は統合失調症のいわゆる陰性症状を改善せず、副作用はこれらの症状をさらに悪化させる可能性がある。したがって、神経弛緩薬の明らかな有益な影響にもかかわらず、充分な短期の応答性を有する何人かの患者でさえ、全体機能が最終的に低下すると思われる。
標準的な神経弛緩薬のよく知られている欠陥が新たな治療の探究を刺激し、非定型神経弛緩薬と呼ばれる新たなクラスの薬剤をもたらしている。第一の非定型神経弛緩薬であるクロザピンは、標準的な神経弛緩薬に反応しない約3分の1の患者に有効である。クロザピンは陰性症状及び陽性症状を低下させるようであり、或いは標準的な神経弛緩薬より少なくとも陰性症状を悪化させる。さらに、クロザピンは全体機能に対する有益な影響を有し、統合失調症患者の自殺の機会を減らすことができる。クロザピンは標準的な神経弛緩薬の厄介な神経症状を引き起こさず、或いは過剰なそれは女性の月経異常及び不妊症、男性のインポテンス又は胸部増大を引き起こす可能性があるホルモンプロラクチンの血中レベルを上昇させる。標準的な神経弛緩薬に耐えることができない多くの患者は、クロザピンを摂取することが可能となっている。しかしながら、クロザピンには重大な制約がある。当初クロザピンは市場から撤去された。なぜならそれは、おそらく致死的な白血球の生成不能を引き起こす顆粒球減少症を引き起こす可能性があるからである。顆粒球減少症は依然として、注意深い観察及び定期的な血液試験を必要とする脅威である。クロザピンは発作及び他の有害な副作用(例えば嗜眠状態、低い血圧、流唾、おねしょ、及び体重増加)を引き起こす可能性もある。したがって、他の薬剤に反応しない患者のみが通常クロザピンを摂取する。
クロザピンの効能を有しその欠点を含まない第3のクラスの抗精神薬を、研究者は開発した。これらの薬剤の1つはリスペリドン(リスペルダル)である。初期の試験は、リスペリドンは陽性症状に関して標準的な神経弛緩薬と同程度に有効であり、陰性症状に関して多少有効である可能性があることを示唆する。リスペリドンはクロザピンより神経副作用を生み出すが、標準的な神経弛緩薬より少ない。しかしながら、リスペリドンはプロラクチンのレベルを上昇させる。現在リスペリドンは広範囲の精神病患者に処方されており、多くの臨床医はクロザピンの前に、標準的な薬剤に反応しない患者にリスペリドンを使用するようである。なぜなら臨床医はリスペリドンをより安全であるとみなしているからである。他の新たな薬剤は、陽性症状に関して標準的な神経弛緩薬と少なくとも同程度に有効であり、陰性症状に関してさらに有効であるオランザピン(ジプレキサ)である。オランザピンは通常の臨床用量において少ない神経副作用を有し、オランザピンがプロラクチンのレベルを有意に上昇させることはない。オランザピンが顆粒球減少症を含めた大部分のクロザピンの大部分の厄介な副作用を生み出すことはないが、オランザピンを摂取する何人かの患者は鎮静状態又は幻惑状態になり、ドライマウスが進行し、或いは体重が増大する可能性がある。稀な場合、肝機能試験の結果が一時的に異常になる。
幾つかの生化学的異常が、統合失調症患者において同定されてきている。結果として、幾つかの神経伝達物質に基づく仮説が近年進展してきており、最も一般的な仮説は「ドーパミン仮説」となっており、その1つの変形は、D2受容体のレベルで中脳辺縁系ドーパミン経路の過剰活性が存在することを述べている。しかしながら研究者は、ドーパミン作用系のさまざまな受容体と統合失調症の間の関係を見つけることが一貫してできていない。
双極性障害は人口の約1.3%で発生する比較的一般的な障害であり、重度でおそらく有害な影響を伴う精神臨床状態で見られる気分障害の、約半分を占めることが報告されてきている。双極性障害は障害の型に応じて性別によって変わることが分かっている。例えば双極性障害Iは男性と女性で等しく見られ、一方で双極性障害IIは女性においてより一般的であると報告されている。双極性障害の発症年齢は典型的には10代であり、診断は典型的には患者の20代前半で行われる。一般に神経障害又は他の医学的状態の結果として、双極性障害は年配者でも発生する。患者の社会進出に対する重大な影響以外に、双極性障害患者の自殺実施率は約15%であると報告されている。
双極性障害は興奮期及びしばしば鬱によって特徴付けられ、躁病又は軽躁病と呼ばれる興奮期、及び鬱期は交互に現れるか或いはさまざまな混合期で起こる可能性があり、さまざまな期間で異なる程度の重傷を引き起こす可能性がある。双極性障害は異なる形で存在し、異なる症状を示す可能性があるので、双極性障害の分類は広範囲の研究の主題となっており、その結果、双極性障害の亜型が定義され、以前に異なる傷害に罹患していたと考えられる患者を含む全体概念が拡大している。双極性障害は一般に精神病と幾つかの臨床徴候、症状、治療及び神経生物学的特徴を共有することが多く、したがって正確な診断を行う課題を精神科医につきつけている。さらに、双極性障害、並びにさまざまな気分障害及び精神障害の過程は大幅に異なる可能性があるので、可能な限り初期に病気を特徴付けて、長期間病気に対処するための手段を与えることが重要である。
この疾患に付随する躁病は行動を阻害し、精神病を引き起こし、入院につながることが多い。この疾患は、関係する直接的及び間接的コストの点で患者の家族及び親戚に重度の苦しみを、時には世代を超えてこの疾患と関係がある社会的不名誉を与える。このような不名誉は、隔離及び無視につながることが多い。さらに、発症が早いほど、教育及び社会進出の阻害の影響は重大である。
双極性障害のDSM−IV分類は、躁病又は軽躁病の程度及び期間に基づいて4つの型の障害、並びに医学的状態、又はその治療、又は物質乱用によって典型的には明らかである2つの型の障害を区別する。躁病は高揚した、誇大妄想的又は過敏症の気分、並びに散漫性、衝動的挙動、高い活動性、誇大妄想性、上機嫌、競争思考、及び緊張したスピーチによって認識される。個々の躁病の程度及び期間、DSM−IVによって特徴付けられる4つの型の双極性障害には以下のものがある:
−双極性障害I、少なくとも1週間躁病を示す患者を含む;
−双極性障害II、以前に躁病を示しておらず重い鬱病の発現に以前苦しんでいた、躁病より穏やかな興奮症状によって特徴付けられる軽躁病を少なくとも4日間示す患者を含む;
−他に指定がない(NOS)双極性障害、双極性障害IIの特徴を他に示すが4日間の興奮期には適合しない、或いは重い鬱病の発現がない軽躁病を示す患者を含む;及び
−循環気質、軽躁病又は重い鬱病の基準には見合わないが無症状期間が2ヶ月を超えることなく2年超の間示される多数の躁病及び鬱症状が現れる患者を含む。
−双極性障害I、少なくとも1週間躁病を示す患者を含む;
−双極性障害II、以前に躁病を示しておらず重い鬱病の発現に以前苦しんでいた、躁病より穏やかな興奮症状によって特徴付けられる軽躁病を少なくとも4日間示す患者を含む;
−他に指定がない(NOS)双極性障害、双極性障害IIの特徴を他に示すが4日間の興奮期には適合しない、或いは重い鬱病の発現がない軽躁病を示す患者を含む;及び
−循環気質、軽躁病又は重い鬱病の基準には見合わないが無症状期間が2ヶ月を超えることなく2年超の間示される多数の躁病及び鬱症状が現れる患者を含む。
DSM−VIにおいて分類される残りの2つの型の双極性障害は、さまざまな医学的障害及びその治療によって明らかであるか或いは引き起こされる障害、並びに物質乱用に関与又は関連する障害である。双極性障害を引き起こす可能性がある医学的障害には典型的には内分泌障害及び脳血管損傷があり、双極性障害を引き起こす医学的治療は、糖質コルチコイド及び刺激物質の乱用を含むことが知られている。物質の使用又は乱用と関係がある障害は、「躁病又は混合型の特徴を有する物質誘導型気分障害」と呼ばれる。
双子及び養子の研究からの証拠、及び世界的な発生率の変化のなさは、双極性障害が主として遺伝的疾患であるが、環境的な危険因子も必要、充分、又は相互作用的な原因としてあるレベルで関与していることを示す。家系における双極性障害及び統合失調症の集合は、この2つの異なる障害はある程度共通した遺伝的感受性を共有することを示唆する。双極性障害の幾つかの関連研究が報告されてきており、幾つかの感受性領域が同定されてきている。双極性障害と関係がある領域には1q31−q32、4p16、7q31、12q23−q24、13q32、18p11.2、21q22及び22q11−q13がある(Detera−Wadleigh et al.、1999)。4p16、12q24、18p11、21q21及び22q11のような、これらの領域の幾つかは、別々の研究者によって繰り返し意味付けられている。さらに、例えば13q32及び18p11.2などの、双極性障害と関係がある幾つかの領域も統合失調症のゲノムスキャンにおいて意味付けられており、この2つの異なる障害はある程度共通した遺伝的感受性を共有することが確認される。しかしながら、双極性障害の根底にある遺伝子は依然として同定されていない。
上記に論じたように、統合失調症の治療のために使用する分子には副作用があり、この疾患の症状に対してのみ作用し、双極性障害の根底にある遺伝子は依然として同定されていない。したがって、このような障害の原因機構と関係がある標的を特異的に対象とする、付随する副作用がない新しい分子に関する強い必要性が存在する。したがって、このような疾患と関係があるタンパク質を同定する必要があり、それによって薬剤の新たなスクリーニングを可能にする新しい標的がもたらされ、その結果、この重大な精神障害及び関連障害の治療において有効な新しい薬剤が得られる。
さらに、診断ツールに関する必要性も存在する。疾患の過程の初期に長期間、統合失調症を未治療状態で放置することは、結果に悪影響を与える可能性があるというさらなる証拠が存在する。しかしながら、薬剤の使用は患者が疾患の初期症状を経験するのを遅らせることが多い。患者は自身が病気であることを理解していない可能性があり、或いは患者は助けを求めることを恐れる可能性があり、家族のメンバーはこの問題が単に消失することを時折望み、治療を探すように患者を説得することができず、考えられる副作用のために診断が確かではないとき、臨床医は抗精神薬を処方するのを躊躇する可能性がある。実際、疾患の最初の発現時には、統合失調症を例えば薬剤関連障害及びストレス関連障害と区別するのは困難である可能性がある。したがって、統合失調症、双極性障害及び関連障害に対する感受性を検出するための新しい方法に関する必要性が存在する。
本発明はここで、統合失調症、双極性障害(BP)及び関連障害を診断及び治療するため、並びに治療上活性がある薬剤をスクリーニングするための新規の手法を開示する。本発明はより詳細には、KCNQ3遺伝子の改変は統合失調症、双極性障害及び他の精神障害の進行と関係があることを実証する。KCNQ3、及び特にKCNQ3の改変形は前記疾患及び関連病状において治療介入の新規の標的となる。
したがって本発明の第一の態様は、候補薬剤調節物質、特に統合失調症、双極性障害及び関連障害に対して活性がある候補薬剤のスクリーニングの標的としての、KCNQ3遺伝子又はポリペプチドの使用に在る。
本発明の他の態様は、対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害の存在又は素因を評価する方法であって、対象由来のサンプル中のKCNQ3遺伝子又はポリペプチドの(in vitro又はex vivoでの)改変(例えば、感受性突然変異体又は対立遺伝子)の存在を判定することを含み、そのような改変の存在が前記対象中の統合失調症、双極性障害又は関連障害の存在又は素因を示す方法に在る。
本発明の他の態様は、対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療又は予防するための医薬品を調製するためのKCNQ3遺伝子又はポリペプチドの調節物質の使用、並びに対応する治療法に関する。
本発明はより詳細には、KCNQ3遺伝子又はポリペプチドの発現又は活性を調節することによって、対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療する方法を含む。このような治療は、例えばKCNQ3ポリペプチド、KCNQ3のDNA配列(アンチセンス配列、RNAiを含む)、KCNQ3ポリペプチドに対する抗体、KCNQ3のリガンド、又はKCNQ3の発現又は活性を調節する薬剤を使用する。本発明は特に、KCNQ3遺伝子の疾患関連対立遺伝子を有する個体を治療する方法に関する。
本発明の他の態様は、統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療するための化合物をスクリーニングする方法であって、KCNQ3遺伝子又はポリペプチド、又はその断片、特に統合失調症、双極性障害又は関連障害と関係がある前記遺伝子又はポリペプチドの対立遺伝子、又はその断片と化合物を結合させることを含む方法に在る。
本発明の他の態様は、統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療するための化合物をスクリーニングする方法であって、KCNQ3遺伝子又はポリペプチド、又はその断片、特に統合失調症、双極性障害又は関連障害と関係がある前記遺伝子又はポリペプチドの対立遺伝子、又はその断片の活性の調節を試験することを含む方法に在る。
本発明はさらに、患者のKCNQ3遺伝子座における統合失調症、双極性障害又は関連障害と関係がある改変のスクリーニングに関する。このようなスクリーニングは統合失調症、双極性障害及び関連障害の存在、危険若しくは素因を診断する、且つ/又はこのような障害の治療の有効性を評価するのに有用である。
本発明の他の態様は、選択的ハイブリダイゼーション又は増幅によってKCNQ3遺伝子又はRNA中の感受性マーカーの特異的検出を可能にする、核酸プローブ及びプライマーを含む。本発明はさらに、前述の検出、スクリーニング又は治療法を実施するのに適した、特定の核酸、ベクター及び組換え細胞、並びにキット又は固相結合核酸若しくはタンパク質、例えばDNA若しくはタンパク質アレイ又はチップを含む。特に本発明は、統合失調症、双極性障害及び関連障害と関係があるKCNQ3核酸及びポリペプチド中のマーカーも開示する。統合失調症と関係があるKCNQ3遺伝子中のマーカーの例には表2aに列挙したM2、M3、M6、M9、M12、M16及びM24マーカー、又はこれらの組合せがある。双極性障害と関係があるKCNQ3遺伝子中のマーカーの一例には、表2に列挙したM13マーカーがある。
統合失調症、双極性障害及び関連障害の素因の診断、検出、予防及び/又は治療において、本発明を使用することができる。
本発明は、幾つかのランダムなマーカーを使用して異なる統合失調症群に実施された関連試験に由来する。実験の項に示すこれらの試験の結果は、KCNQ3遺伝子は統合失調症及び双極性障害と強く関係があること、及び前記遺伝子又はRNAに局在する確認済みの(二対立遺伝子)マーカーは、前記病状及び関連障害と関係があることを示す。
したがって本発明は、統合失調症、双極性障害及び関連障害の治療において有用な化合物を同定するための新規の手段及び方法を提供する。本発明はさらに、対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害を検出、診断及びモニタリングするため、及び統合失調症患者の遺伝子型を決定するための新規の手法を提供する。
定義
用語「統合失調症」は、DSM−IV分類(「精神障害の診断及び統計マニュアル(Diagnosis and Statistical Manual of Mental Disorders)」、第4版、American Psychiatric Association、ワシントンD.C.、1994)中の統合失調症として特徴付けられる状態を指す。
用語「統合失調症」は、DSM−IV分類(「精神障害の診断及び統計マニュアル(Diagnosis and Statistical Manual of Mental Disorders)」、第4版、American Psychiatric Association、ワシントンD.C.、1994)中の統合失調症として特徴付けられる状態を指す。
統合失調症関連障害には精神病性障害、例えば分裂情動性障害、分裂病様障害、軽い精神病性障害、妄想障害及び共通型精神病性障害など、並びに気分障害(例えば双極性障害)及び鬱病などの他の精神障害がある。
用語「精神障害」は、より一般的に、DSM−IV分類(「精神障害の診断及び統計マニュアル(Diagnosis and Statistical Manual of Mental Disorders)」、第4版、American Psychiatric Association、ワシントンD.C.、1994)において気分障害、精神病性障害、不安障害、小児期障害、摂食障害、人格障害、適応障害、自閉症、譫妄、認知症、多発梗塞性認知症及びトゥーレット障害として特徴付けられる疾患を指す。本明細書で使用する用語「双極性障害」は、DSM−IV中の双極性障害として特徴付けられる状態をより詳細には指す。双極性障害は、DSM−IV中に記載された双極性障害I及び双極性障害IIであってよい。この用語は、循環気質障害をさらに含む。循環気質障害は、鬱病症状と軽躁病症状の交互の反復を指す。当業者は病心理的状態の他の命名、薬量学、及び分類系が存在すること、及びこれらの系は医科学的進歩と共に発展することを理解していると思われる。
本出願中で使用する用語「KCNQ3」は、カリウムチャネルファミリーのメンバーを指す。KCNQ3遺伝子又はポリペプチドの核酸及びアミノ酸配列は文献中で入手可能であり、例えば以下の受託番号で発見することができる:
−cDNA及びタンパク質配列:NM_004519(それぞれ配列番号1及び2);
−部分的なcDNA配列:AF033347。
−cDNA及びタンパク質配列:NM_004519(それぞれ配列番号1及び2);
−部分的なcDNA配列:AF033347。
KCNQ3のゲノム配列は350kbまで広がる。KCNQ3遺伝子の15個のエクソンの配列が、以下の受託番号で発見される:
−エクソン1:AF071478;
−エクソン2:AF071479;
−エクソン3:AF071480;
−エクソン4:AF071481;
−エクソン5及びエクソン6:AF071482;
−エクソン7:AF071483;
−エクソン8:AF071484;
−エクソン9:AF071485;
−エクソン10:AF071486;
−エクソン11:AF071487;
−エクソン12:AF071488;
−エクソン13:AF071489;
−エクソン14:AF071490;及び
−エクソン15:AF071491。
−エクソン1:AF071478;
−エクソン2:AF071479;
−エクソン3:AF071480;
−エクソン4:AF071481;
−エクソン5及びエクソン6:AF071482;
−エクソン7:AF071483;
−エクソン8:AF071484;
−エクソン9:AF071485;
−エクソン10:AF071486;
−エクソン11:AF071487;
−エクソン12:AF071488;
−エクソン13:AF071489;
−エクソン14:AF071490;及び
−エクソン15:AF071491。
KCNQ3遺伝子は、ニューロンM型K+チャネルのサブユニットをコードしている。1980年代にDavid BrownとPaul Adamsは、活動電位発生時の電位範囲内でのその独特な活動のために興奮性を制御する際に主要な役割を果たす、M電流と呼ばれるニューロン中の低い閾値の、非活動的な、電位依存性のK+電流の存在を記載した(Brown et al.、1980)。興奮性刺激がスパイク閾値までニューロンを脱分極させるとM電流はゆっくりと活動状態になり、膜を静止電位まで再分極させ、発射を抑制する。このようにしてM電流は、持続的な脱分極刺激に応答する反復性のスパイク発射を制限し、したがってM電流は「スパイク頻度適合」の重要な機構である。その名称が由来するムスカリン様受容体に作用するアセチルコリンを含めた、Gタンパク質結合受容体に作用する神経伝達物質によってM電流は抑制される。M電流の抑制は膜の脱分極及びニューロン進入耐性の増大をもたらし、細胞が活動電位を発生する可能性が増大する。アセチルコリンのシナプス利用性を増大させる、中枢で作用するムスカリン様コリン作動性アゴニスト及びコリンエステラーゼ阻害剤は、M電流の抑制によって少なくとも部分的に引き起こされる作用の強力な痙攣誘引剤である。
Jentsch(2000)はKCNQ受容体の生理及び役割を論じ、てんかんにおけるKCNQ受容体の関与を示唆する。Cooper et al(2003)は、てんかん及びアルツハイマーなどの幾つかの病状におけるMチャネルの関与を論じた。しかしながらこの参照文献は、神経保護におけるKCNQチャネルの役割を明らかにするためには、更なる試験が必要とされることを認めている。Schwake et al(2000)は、M型K+チャネルの表面発現及びてんかんにおけるその関与に関する。しかしながら従来技術は、KCNQ3受容体は統合失調症又は双極性障害と関係がある可能性があるという如何なる徴候も与えていない。本発明は初めて、KCNQ3受容体は統合失調症及び双極性障害と関係があり、これらの障害に罹患した患者中でこの遺伝子が変化していることを示す。
用語「遺伝子」は、ゲノムDNA(gDNA)、相補的DNA(cDNA)、合成又は半合成DNA、任意の形の対応するRNAなど、並びに非コード配列、例えばイントロン、5’又は3’非翻訳配列又は制御配列(例えばプロモーター又はエンハンサー)などを含めた任意の型のコード核酸領域を含むと解釈されたい。用語遺伝子は特に、組換え核酸、即ち例えば配列の構築、切断、連結又は増幅によって人工的に作製された任意の非天然核酸分子を含む。遺伝子は典型的には二本鎖であるが、一本鎖などの他の形を企図することもできる。DNAライブラリーのスクリーニング又はさまざまな天然源からの増幅などによって、当技術分野で知られているさまざまな技法に従い、さまざまな供給源から遺伝子を得ることができる。化学合成、遺伝的工学処理、酵素技法、又はこれらの組合せを含めた従来の技法によって、組換え核酸を調製することができる。
遺伝子の断片は、前記遺伝子の少なくとも約8個の連続したヌクレオチド、好ましくは少なくとも約15個、より好ましくは少なくとも約25個のヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも35、50、75、100、150、200又は300個のヌクレオチドの配列の任意の部分を示す。断片は8〜500ヌクレオチド、好ましくは15〜300ヌクレオチド、より好ましくは25〜200ヌクレオチドの全ての考えられるヌクレオチド長をより詳細には含む。
KCNQ3ポリペプチドは、それぞれ前に開示したKCNQ3遺伝子によってコードされる任意のタンパク質又はポリペプチドを示す。この点において用語「ポリペプチド」は、本発明の文脈内で、ポリマーの長さとは無関係にアミノ酸のポリマーを示す、したがってペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質はポリペプチドの定義内に含まれる。特にKCNQ3ポリペプチドは、少なくとも8、15、20、50、100、250、500又は750アミノ酸長のKCNQ3の特異的断片であるポリペプチドも示す。この用語はさらに、ポリペプチドの翻訳後又は発現後修飾を特定又は排除するわけではなく、例えばグリコシル基、アセチル基、リン酸基、脂質基などの共有結合を含むポリペプチドは、用語ポリペプチドによって明らかに含まれる。(例えば非天然アミノ酸、無関係な生物系中の天然のみに存在するアミノ酸、哺乳動物由来の修飾アミノ酸などを含めた)1つ又は複数のアミノ酸の類似体を含むポリペプチド、置換結合、並びに当技術分野で知られている他の修飾を有する天然及び非天然のポリペプチドも定義内に含まれる。
融合タンパク質はKCNQ3ポリペプチドに対する抗体を作製する、且つさまざまなアッセイ系において使用するのに有用である。例えば融合タンパク質を使用して、KCNQ3ポリペプチドの一部分と相互作用するタンパク質を同定することができる。タンパク質親和性クロマトグラフィー又はタンパク質間相互作用のライブラリー系アッセイ、例えば、酵母菌ツーハイブリッド又はファージディスプレイ系などを、この目的のために使用することができる。このような方法は当技術分野でよく知られており、薬剤スクリーニング法として使用することもできる。
KCNQ3ポリペプチド融合タンパク質は、ペプチド結合によって1つに融合した2つのポリペプチドセグメントを含む。第一のポリペプチドセグメントは、配列番号2の少なくとも25、50、75、100、150、200、300、400、500、600、700、750、800又は872個の連続したアミノ酸を含む。第二のポリペプチドセグメントは、完全長タンパク質又はタンパク質断片であってよい。融合タンパク質構築体中に一般的に使用されるタンパク質には、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)を含めた自己蛍光タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)がある。さらに、ヒスチジン(His)タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV−Gタグ、及びチオレドキシン(Trx)タグを含めたエピトープタグが、融合タンパク質構築体中で使用される。他の融合構築体は、マルトース結合タンパク質(MBP)、S−タグ、LexA DNA結合ドメイン(DBD)融合体、GAL4 DNA結合ドメイン融合体、及び単純疱疹ウイルス(HSV)BP16タンパク質融合体を含むことができる。融合タンパク質を工学処理して、KCNQ3ポリペプチドを異種部分から切断及び精製することができるように、KCNQ3ポリペプチドコード配列と異種タンパク質配列の間に位置する切断部位を含ませることもできる。
当技術分野で知られているように、融合タンパク質は化学的に合成することができる。2つのポリペプチドセグメントを共有結合させることによって、或いは分子生物学の分野における標準的手順によって、融合タンパク質を生成することが好ましい。当技術分野で知られているように、組換えDNA法を使用して、例えば正しいリーディングフレームのKCNQ3のコード配列を第二のポリペプチドセグメントをコードするヌクレオチドと共に含むDNA構築体を作製し、宿主細胞中でDNA構築体を発現させることによって、融合タンパク質を調製することができる。
本明細書で使用する用語「治療」又は「治療する」は、症状を改善、緩和すること、一時的又は永続的に症状の原因を排除すること、或いは指定の障害又は状態の症状の出現を予防するか遅延させることを意味する。本明細書で使用する用語「治療」は、用語「障害の予防」も含み、これは例えば医学的に有意な程度で障害の発症を遅延させることによって表される。障害の治療は、例えば障害に関する症状の低下、又は障害の症状の再発の改善によって表される。
本明細書で使用する用語「調節された」又は「調節」、或いは「制御された」又は「制御」は、上方制御[即ち、活性化又は刺激(例えば、アゴナイズ又は増強することによって)]と下方制御[即ち、阻害又は抑制(例えば、アンタゴナイズ、低下又は阻害することによって)]の両方を指す。
用語「含む」、「からなる」、又は「から本質的になる」は異なる意味を有する。しかしながら、それぞれの用語を本明細書において互いに置換して、本発明の範囲を変えることができる。
本明細書で同義的に使用される用語「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は、一本鎖又は二本鎖の形の2個以上のヌクレオチドのRNA、DNA、又はRNA/DNAハイブリッド配列を含む。化合物を記載するための形容詞としての、本明細書で使用する用語「ヌクレオチド」は、任意の長さの一本鎖又は二本鎖の形のRNA、DNA、又はRNA/DNAハイブリッド配列を含む。用語「ヌクレオチド」はさらに、個々のヌクレオチド又はさまざまなヌクレオチドを指すための名詞として本明細書において使用し、プリン又はピリミジン、リボース又はデオキシリボース糖部分を含む化合物、又は大きな核酸化合物中の個々の単位、及びオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド内のヌクレオチドの場合はリン酸基、又はホスホジエステル結合を意味する。しかしながら用語「ヌクレオチド」をさらに本明細書で使用して、少なくとも1つの修飾(a)他の結合基、(b)プリンの類似形、(c)ピリミジンの類似形、又は(d)例えば類似の結合基、プリン、ピリミジン、及び糖の類似の糖類を含む「修飾ヌクレオチド」を含める。例えばその開示が参照として本明細書に組み込まれる、PCT公開No.WO95/04064を参照のこと。しかしながら、本発明のポリヌクレオチドは好ましくは50%を超える従来型デオキシリボースヌクレオチド、及び最も好ましくは90%を超える従来型デオキシリボースヌクレオチドからなる。本発明のポリヌクレオチド配列は、合成、組換え、ex vivo生成、又はこれらの組合せを含めた任意の知られている方法によって、並びに当技術分野で知られている任意の精製法を利用することによって調製することができる。
用語「単離」は、その本来の環境(例えば、物質が天然に存在する場合は天然環境)から物質を除去することを必要とする。例えば、生きている動物中に存在する天然のポリヌクレオチド又はポリペプチドは単離されていないが、自然系中に共存する物質の一部分又は全体から分離した、同じポリヌクレオチド又はDNA又はポリペプチドは単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部分であってよく、且つ/或いは、このようなポリヌクレオチド又はポリペプチドは組成物の一部分であってよく、さらにそのベクターに単離されているか、或いは組成物はその天然環境の一部分ではない。
用語「プライマー」は、標的ヌクレオチド配列と相補的であり標的ヌクレオチド配列とハイブリダイズさせるために使用する、特異的なオリゴヌクレオチド配列を示す。DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ又は逆転写酵素のいずれかによって触媒されるヌクレオチド重合の開始地点としてプライマーは働く。本発明の典型的なプライマーは、約6〜50ヌクレオチド長、より好ましくは約8〜約40ヌクレオチド長、典型的には約16〜25ヌクレオチド長の一本鎖核酸分子である。Tmは典型的には約60℃以上である。プライマーの配列は、標的遺伝子の配列に直接由来するものであってよい。高い特異性を保証するために、プライマー配列と標的遺伝子の間の完全な相補性が好ましい。しかしながら、ある程度のミスマッチは許容することができる。
用語「プローブ」は、サンプル中に存在する特異的なポリヌクレオチド配列を同定するために使用することができる、明確な核酸セグメント(又はヌクレオチド類似体セグメント、例えば本明細書で定義するポリヌクレオチド)を示し、前記核酸セグメントは、同定すべき特異的なポリヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を含む。本発明のプローブは典型的には、10〜1000ヌクレオチド長、例えば10〜750、より好ましくは15〜600、典型的には20〜400ヌクレオチド長の一本鎖核酸を含む。プローブの配列は、KCNQ3遺伝子の配列に由来するものであってよい。例えばハイブリッドの安定性を増大させるため、或いはプローブを標識するために、プローブはヌクレオチド置換及び/又は化学修飾を含むことができる。標識の典型例には、非制限的に放射活性、蛍光、発光標識などがある。
用語「相補的」又は「その相補体」を本明細書で使用して、相補領域の全体中で他の特異的なポリヌクレオチドとワトソン&クリック塩基対を形成することができる、ポリヌクレオチドの配列を指す。この用語は、2つのポリヌクレオチドが実際に結合するであろう如何なる特定の組の条件にも基づかず、ポリヌクレオチドの配列のみに基づいてポリヌクレオチド対に適用される。
本明細書中で使用する用語「非ヒト動物」は、任意の非ヒト脊椎動物、鳥類及びより通常は哺乳動物、好ましくは霊長類、家畜動物、例えばブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、及びウマ、ウサギ又はげっ歯類、より好ましくはラット又はマウスを指す。本明細書中で使用する用語「動物」は、任意の脊椎動物、好ましくは哺乳動物を指すために使用する。用語「非ヒト」が先行しない限り、用語「動物」と「哺乳動物」の両方はヒト対象を明らかに含む。
用語「形質」及び「表現型」を本明細書で同義的に使用して、例えば疾患の症状、疾患に対する感受性などの、任意の臨床上区別可能、検出可能、或いは他の場合測定可能な生物の性質を指す。典型的には用語「形質」又は「表現型」を本明細書で使用して、双極性障害の症状、又は双極性障害に対する感受性を指し、或いは双極性障害に作用する物質に対する個体の応答性を指し、或いは双極性障害の症状、又は双極性障害に作用する物質の副作用に対する感受性を指す。
本明細書中で使用する用語「対立遺伝子」は、他の形とそのヌクレオチド配列が異なる、二対立遺伝子又は多対立遺伝子マーカーの変形の1つを指す。典型的には、最初に同定した対立遺伝子を原型対立遺伝子として表し、一方で他の対立遺伝子は他の対立遺伝子として表す。二倍体生物は、対立遺伝子形に関して同質又は異質であってよい。
本明細書中で使用する用語「多型」は、異なるゲノム又は個体間或いはその中の2個以上の他のゲノム配列又は対立遺伝子の出現を指す。「多型」は、特定のゲノム配列の2個以上の変異体を群中に見ることができる状態を指す。「多型部位」は、変化が起こる遺伝子座である。多型は1つ又は複数のヌクレオチドの置換、欠失又は挿入を含む可能性がある。単一ヌクレオチド多型は、1つの塩基対の変化である。典型的には単一ヌクレオチド多型は、多型部位における他のヌクレオチドによる1つのヌクレオチドの置換である。「単一ヌクレオチド多型」(SNP)は、1つの塩基対が異なる配列多型を指す。
検出及び診断
本発明は、ヒト対象の統合失調症及び関連障害を検出又は診断するための、新規の手段及び方法を提供する。本発明の方法は、初期、前症状段階、及び後期段階、成人、小児及び生前段階を含めた前記病状のさまざまな進行段階で実施することができる。さらに、本発明は予後を判定し、病状の進行の素因又は危険を評価し、疾患の状態を特徴付け、或いは患者に最も適した治療養生法を定義するのに適している。
本発明は、ヒト対象の統合失調症及び関連障害を検出又は診断するための、新規の手段及び方法を提供する。本発明の方法は、初期、前症状段階、及び後期段階、成人、小児及び生前段階を含めた前記病状のさまざまな進行段階で実施することができる。さらに、本発明は予後を判定し、病状の進行の素因又は危険を評価し、疾患の状態を特徴付け、或いは患者に最も適した治療養生法を定義するのに適している。
本発明の特定の目的は、対象の統合失調症又は関連障害の存在又は素因を検出する方法であって、対象由来のサンプル中のKCNQ3遺伝子又はポリペプチドの改変の存在を検出することを含み、そのような改変の存在が前記対象中の統合失調症又は関連障害の存在又は素因を示す方法に在る。
本発明の他の目的は、対象の双極性障害の存在又は素因を検出する方法であって、対象由来のサンプル中のKCNQ3遺伝子又はポリペプチドの改変の存在を検出することを含み、そのような改変の存在が前記対象中の双極性障害の存在又は素因を示す方法に在る。
本発明の他の目的は、統合失調症、双極性障害又は関連障害の治療に対する対象の応答性を評価する方法であって、対象由来のサンプル中のKCNQ3遺伝子又はポリペプチドの改変の存在を検出することを含み、そのような改変の存在が応答性対象を示す方法に関する。
以下でさらに詳細に論じるように、KCNQ3遺伝子又はポリペプチドの改変は前記遺伝子又はポリペプチド中の任意の感受性マーカー、即ち統合失調症、双極性障害又は関連障害と関係がある任意のヌクレオチド又はアミノ酸改変であってよい。
KCNQ3遺伝子の改変は、遺伝子のコード及び/又は非コード領域における、個別の又はさまざまな組合せの任意の形の突然変異、欠失、再編成、及び/又は挿入であってよい。突然変異は、より詳細には点突然変異を含む。欠失は、遺伝子のコード又は非コード部分中の任意の領域の2個以上の残基を含む可能性がある。典型的な欠失は、約50連続塩基対未満のドメイン(イントロン)又は反復配列又は断片などの小さな領域に影響を与えるが、大きな欠失が起こる可能性もある。挿入は、遺伝子のコード又は非コード部分中の1個又は数個の残基の付加を含む可能性がある。挿入は典型的には、遺伝子中に1〜50塩基対の付加を含むことができる。再編成は、例えば配列反転を含む。KCNQ3遺伝子の改変はポリヌクレオチド配列の異常な修飾、ゲノムDNAのメチル化パターン、遺伝子の対立遺伝子の消失又は遺伝子の対立遺伝子の獲得などであってもよい。改変はサイレントであってよく(即ち、タンパク質のアミノ酸配列の修飾を生み出さない)、或いは例えばアミノ酸置換、フレームシフト突然変異、停止コドン、RNAスプライシング、例えば非野生型スプライシング型のメッセンジャーRNA転写産物の存在、或いはRNA又はタンパク質の不安定性又は非野生型レベルのKCNQ3ポリヌクレオチドをもたらす可能性がある。さらにこの改変は、改変された機能又は安定性を有するポリヌクレオチドの生成をもたらす可能性があり、タンパク質発現レベルの低下又は増大を引き起こす可能性がある。
本発明の特定の改変は、KCNQ3遺伝子配列のイントロン1又は9、或いは前記遺伝子の5’又は3’領域中に局在する。典型的な改変は1ヌクレオチドの置換である。特定の実施形態では、マーカーは二対立遺伝子マーカーである。
この点において、本発明はここで、統合失調症及び/又は双極性障害と関係がある、KCNQ3遺伝子中の数個のマーカー又は突然変異を開示する。これらの突然変異は表2中に報告する。
統合失調症の好ましい(二対立遺伝子)マーカーは、したがって表2aに列挙した二対立遺伝子マーカーM2、M3、M6、M9、M12、M16及びM24マーカー、又はこれらの組合せから選択される。より詳細には本発明は、表2aに列挙したM2、M3、M6、M9、M12、M16及びM24から選択されるマーカーを検出することであって、統合失調症関連対立遺伝子の存在が統合失調症又は関連障害の存在、危険又は素因を示すことを含む。
本発明の好ましい目的は、対象の統合失調症又は関連障害の存在又は素因を検出する方法であって、対象由来のサンプル中のマーカーM2、M3、M6、M9、M12、M16及びM24の1つ又は複数の表2aに記載の関連対立遺伝子の存在又は不在を検出することを含み、関連対立遺伝子の存在が前記対象中の統合失調症又は関連障害の存在又は素因を示す方法である。
本発明の他の好ましい目的は、対象の双極性障害又は関連障害の存在又は素因を検出する方法であって、対象由来のサンプル中のマーカーM13の表2bに記載の関連対立遺伝子の存在又は不在を検出することを含み、関連対立遺伝子の存在が前記対象中の統合失調症又は関連障害の存在又は素因を示す方法である。
KCNQ3と統合失調症、双極性障害及び関連障害の間の関係が本発明者によって確定されたからには、例えば実施例中に開示する方法の後に、他の感受性マーカーを前記遺伝子又はポリペプチド内で同定することができることは理解されるはずである。
本発明の好ましい実施形態は、対象のKCNQ3遺伝子又はRNA配列中の表2に開示したマーカーの存在の検出、より詳細には表2a又は2bに開示した少なくとも1つのマーカー、又はこれらの任意の組合せの検出を含む。
KCNQ3遺伝子の改変の存在は、シークエンシング、ピロシークエンシング、選択的ハイブリダイゼーション、選択的増幅及び/又は、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS)(Gut et al.、2004)を含む質量分析法を含めた、当業者に本質的に知られている任意の技法によって検出することができる(Kwok et al.、2003によって総説された)。特定の実施形態では、以下の表2c及び7中に開示するように、1個又は数個の特異的プライマーを使用する選択的な核酸増幅によって改変を検出する。他の特定の実施形態では、1個又は数個の特異的プローブを使用する選択的ハイブリダイゼーションによって改変を検出する。
他の技法には、ゲル電気泳動系遺伝子型決定法、例えば制限断片長多型分析と結び付けたPCR、マルチプレックスPCR、オリゴヌクレオチド結合アッセイ、及びミニシークエンシングなど;蛍光色素系遺伝子型決定技術、例えばオリゴヌクレオチド結合アッセイ、ピロシークエンシング、蛍光検出による1塩基伸長、TaqManなどの均質溶液ハイブリダイゼーション、及び分子ビーコン方式遺伝子型決定など;ローリングサークル増幅及びインベーダーアッセイ、並びにDNAチップ系マイクロアレイ及び質量分析遺伝子型決定技術(Shi et al.、2001)がある。
さらに、サブトラクティブハイブリダイゼーション、定量PCR、TaqMan、ディファレンシャルディスプレイ逆転写PCR、cDNAの連続的、部分的シークエンシング(発現配列タグ(EST)のシークエンシング及び遺伝子発現の連続的分析(SAGE))、グリッド(マクロ−及びマイクロアレイ及びDNAチップ)上に固定した標識cDNAと特異的プローブの並行ハイブリダイゼーションなどの当技術分野で知られている方法によって、改変型遺伝子のRNA発現を定量化することができる。個々の方法には対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)、対立遺伝子特異的増幅、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、サザン及びノーザンブロット、及び固定変性ゲル電気泳動がある。
タンパク質発現分析法は当技術分野で知られており、2次元ゲル電気泳動、質量分析法及び抗体マイクロアレイを含む(Freeman et al.、;Zhu et al.、2003)。
当技術分野でよく知られている技法を使用して、自動シークエンサーを使用して、シークエンシングを実施することができる。完全な遺伝子、或いはより好ましくはその特定のドメイン、典型的には有害突然変異又は他の改変を担うことが知られているか或いはその疑いがあるドメインに関して、シークエンシングを実施することができる。
当技術分野で知られているさまざまな技法に従い、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)及び鎖置換型増幅(SDA)などによって増幅を実施することができる。これらの技法は市販の試薬及びプロトコルを使用して実施することができる。好ましい技法は対立遺伝子特異的PCRである。
KCNQ3遺伝子から配列を増幅させるのに有用な核酸プライマーは、改変体に隣接するか或いはそれと重複するKCNQ3遺伝子の一部分、感受性マーカーなどと特異的にハイブリダイズすることができる。前記改変体が、プライマーがハイブリダイズするKCNQ3遺伝子の配列内に含まれるとき、プライマー配列は改変体と重複する。好ましくは前記改変体の300bp以内の距離、さらにより好ましくは前記改変体から250、200、150、100、50、40、30又は20bp以内の距離に位置するKCNQ3遺伝子の一部分とプライマーがハイブリダイズするとき、プライマー配列は改変体に隣接する。プライマーは、5、4、3、2、1bpの距離或いは前記改変体のすぐ隣であるKCNQ3遺伝子の一部分とハイブリダイズすることが好ましい。
最も好ましいプライマーは、表2、より好ましくは表2a又は2b中に記載したように、改変体に隣接するか或いは重複するKCNQ3遺伝子の一部分と特異的にハイブリダイズすることができる。このようなプライマー配列の例は、以下の表2c中(配列番号7〜30)及び表7(配列番号31〜82)中に開示する。このようなプライマーは、本発明の特定の目的となる。
本発明はさらに、対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害の存在又は素因を検出する方法中、或いは統合失調症、双極性障害又は関連障害の治療に対する対象の応答性を評価する方法中の、前に記載した核酸プライマー又は核酸プライマーの対の使用に関する。
本発明の他の実施形態によれば、方法はKCNQ3又は改変型KCNQ3遺伝子又はRNAに特異的な核酸プローブの使用、次にハイブリッドの存在の検出を含む。プローブは懸濁液中で使用することができ、或いは支持層又は支持体に固定することができる。プローブは典型的には標識して、ハイブリッドの検出を容易にする。
この点において、本発明の具体的な目的は、表2、より好ましくは表2a又は2b中に記載した改変を有するKCNQ3遺伝子又はRNAの領域と相補的であるか或いはそれに特異的である核酸プローブである。本発明のプローブは、改変型KCNQ3遺伝子と非改変型KCNQ3遺伝子又はRNA配列を区別することができる、即ち本発明のプローブは、前に記載した特定の改変を有する前記KCNQ3遺伝子又はRNAと特異的にハイブリダイズし、且つ同じハイブリダイゼーション条件下或いは前記改変がないKCNQ3遺伝子又はRNAと同じ安定性で、本質的にハイブリダイズしないことがより好ましい。
本発明はさらに、対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害の存在又は素因を検出する方法中、或いは統合失調症、双極性障害又は関連障害の治療に対する対象の応答性を評価する方法中の、前に記載した核酸プローブの使用に関する。
検出法はin vitro、ex vivo又はin vivoで実施することができ、in vitro又はex vivoで実施することが好ましい。典型的には検出法は、対象由来のサンプル、核酸又はポリペプチドを含む任意の生物サンプルなどに実施する。このようなサンプルの例には流体、組織、細胞サンプル、臓器、バイオプシーなどがある。最も好ましいサンプルは血液、血漿、唾液、尿、精液などである。サンプルは従来の技法に従い収集し、診断用に直接使用し、或いは保存することができる。特に、非侵襲的方法によって、組織収集場などからサンプルを得ることができる。方法を実施する前にサンプルを処理して、試験用に核酸又はポリペプチドの利用性を得るか或いは改善することができる。処理には例えば溶解(例えば機械的、物理的、化学的など)、遠心分離などがある。さらに、核酸及び/又はポリペプチドは従来の技法によって事前に精製又は増大することができ、且つ/或いは複雑性を低下させることができる。核酸及びポリペプチドを酵素又は他の化学的又は物理的処理で処理して、その断片を生成することもできる。特許請求する方法の高い感度を考慮すると、非常に少量のサンプルがアッセイを実施するのに充分である。
上記で開示したように、サンプルは典型的にはプローブ又はプライマーと接触させる。このような接触は任意の適切なデバイス、例えばプレート、チューブ、ウエル、グラスなどで実施することができる。核酸アレイなど、前記特異的試薬でコーティングされた支持層上で接触を実施することができる。支持層はガラス、プラスチック、ナイロン、紙、金属、ポリマーなどを含む任意の支持体などの、固体又は半固体支持層であってよい。支持層は例えばスライド、膜、ビーズ、カラム、ゲルなどの、さまざまな形及び大きさのものであってよい。試薬とサンプルの核酸の間で複合体を形成するのに適した任意の条件下で、接触を実施することができる。
サンプル中の改変型KCNQ3遺伝子又はRNA又はポリペプチドの発見は、対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害の存在、素因又は進行段階の指標である。典型的には、前に開示したマーカーの1つのみ、或いはその幾つかを組合せて評価する。
薬剤のスクリーニング
前に示したように本発明は、薬剤候補又はリード化合物をスクリーニングするための新規な標的及び方法も提供する。これらのスクリーニング法は結合アッセイ及び/又は機能アッセイを含み、in vitro、細胞系又は動物において実施することができる。
前に示したように本発明は、薬剤候補又はリード化合物をスクリーニングするための新規な標的及び方法も提供する。これらのスクリーニング法は結合アッセイ及び/又は機能アッセイを含み、in vitro、細胞系又は動物において実施することができる。
カリウムチャネルは、生きている細胞中で機能的に試験することができる。KCNQ3を含むカリウムチャネルを機能的に発現することが必要とされる、本発明のKCNQ3ポリペプチド及び他のポリペプチドは、適切なレポーター細胞中において内部で発現されるか、或いは組換えによって導入される。チャネルの活性は、透過イオンの濃度変化によって、膜内外電位勾配の変化によって、或いはポリペプチドの活性によって誘導又は調節される細胞応答(例えば、レポーター遺伝子の発現又は神経伝達物質の分泌)を測定することによって調べることができる。
カリウムチャネルの電流は膜電位(Vm)25の変化をもたらし、これは電位差測定用蛍光プローブを使用することによって直接調べることができる。これらの帯電指標(例えば、アニオン性オキソノール色素DiBAC4(3))は、カリウムチャネルが存在する膜中の電圧の変化に応答して細胞外区画と細胞内区画の間に再分布する。平衡分布はネルンストの式によって支配される。したがって膜電位の変化は、付随する細胞の蛍光性の変化をもたらす。ここでもVmの変化は、標的カリウムチャネルの活性によって直接、或いは同じ細胞中で同時に発現されるチャネルによるシグナルの増幅及び/又は延長によって引き起こされる可能性がある。
カリウムチャネルタンパク質の活性を測定するための他の手法は、イオン電流の電気生理的測定を含む。特定のカリウムチャネルタンパク質を内部で発現する細胞を使用して、さまざまな試験化合物又はカリウムチャネルタンパク質様ポリペプチドの、カリウムチャネルタンパク質の活性に起因する内部のイオン電流に対する影響を試験することができる。
或いは、特定のカリウムチャネルタンパク質を発現しない細胞を、後でその活性を電気生理的又は他の手段によって試験することができる、特定のカリウムチャネルタンパク質を発現させるための宿主として使用することができる。カリウムチャネルタンパク質の異種発現用の宿主細胞として好ましい細胞は、例えばCOS細胞、マウスL細胞、CHO細胞(例えばDG44細胞)、ヒト胎児腎臓細胞(例えばHEK293細胞)、アフリカミドリザル細胞などの哺乳動物細胞;アフリカツメガエル卵母細胞などの両生類細胞;或いはS.cerevisiae又はP.pastorisなどの酵母菌の細胞であることが好ましい。例えば、米国特許第5,876,958号を参照のこと。
細胞膜中の電流を測定するための電気生理的手順はよく知られている。好ましい方法は、全細胞群固定技法中と同様の電位固定法の使用である。非カルシウム電流を確立された方法によって排除して、カリウムチャネルタンパク質を流れるイオン電流を絶縁することができる。異種発現されるカリウムチャネルタンパク質の場合、内部のカリウムチャネルタンパク質から生じるイオン電流は、知られている薬理学的又は電気生理学的技法によって抑制することができる。例えば、25米国特許第5,876,958号を参照のこと。
評価することができるカリウムチャネルタンパク質の他の活性は、試験化合物又はカリウムチャネルタンパク質様ポリペプチドを含めたさまざまなリガンドと結合するそれらの能力である。カリウムチャネルポリペプチド又はその断片と結合する試験化合物の能力は、カリウムチャネルタンパク質に対して知られている親和性を有する1つ又は複数の濃度の化合物の存在下及び不在下で結合能力及び/又は親和性を測定する、任意の適切な競合結合分析によって測定することができる(例えば、スキャッチャードプロット)。(内部又は異種のいずれかで)カリウムチャネルタンパク質を発現する完全細胞、このような細胞から調製した膜、又は精製したカリウムチャネルポリペプチドを使用して、結合アッセイを実施することができる。ヒトのカリウムチャネルポリペプチドの活性を増大又は低下させる能力に関して、試験化合物を試験することができる。
この点において、本発明の特定の目的は、統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療又は予防するための候補薬剤のスクリーニングの標的物質としてのKCNQ3ポリペプチドの使用に在る。
本発明の他の目的は、生物学的活性がある化合物を選択する方法に在り、前記方法は、候補化合物とKCNQ3遺伝子又はポリペプチドとを接触させること、及び前記遺伝子又はポリペプチドと結合する化合物を選択することを含む。
「生物学的活性がある」化合物は、対象中で生物学的活性、好ましくは治療活性を有する任意の化合物、より好ましくは神経活性化合物、及びさらに好ましくは統合失調症又は双極性障害又は関連障害を治療するために、或いは統合失調症又は双極性障害又は関連障害を治療するための薬剤を開発するためのリード化合物として使用することができる化合物を示す。「生物学的活性がある」化合物は、KCNQ3又はKCNQ3を含むカリウムチャネルの活性を調節する化合物であることが好ましい。チャネルの活性を調節は、前に記載したように評価することができる。
本発明のさらに他の目的は、生物学的活性がある化合物を選択する方法に在り、前記方法は、候補化合物と、KCNQ3ポリペプチドを候補化合物と共に発現する組換え宿主細胞とを接触させること、及び前記細胞の表面において前記KCNQ3ポリペプチドと結合し、且つ/或いは前記KCNQ3ポリペプチドの活性を調節する化合物を選択することを含む。
前述の方法は、固定試薬を含めたさまざまなデバイス及び条件を使用してin vitroで実施することができ、動物モデルなどの統合失調症、双極性障害又は関連障害のモデルにおいて選択した化合物の活性をアッセイする他のステップをさらに含むことができる。
KCNQ3ポリペプチドと結合する且つ/或いはKCNQ3ポリペプチドの活性を調節し、統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療又は予防するための候補薬剤である化合物を同定するための方法は、当技術分野で知られている(Cooper EC et al.、2003)。このような方法は、KCNQ3ポリペプチド又はKCNQ3ポリペプチドを含むカリウムチャネルの、アンタゴニストなどの阻害剤、又はアゴニストなどの活性化物質を同定する方法を含む。
特定のスクリーニング法は、KCNQ3ポリペプチドのC末端細胞内ドメイン、特にKCNQ3ポリペプチドの推定構築ドメイン(「Aドメイン」など)を含む領域と(in vitroで)結合する候補化合物の能力を決定することを含む。
他の特定のスクリーニング法は、KCNQ3ポリペプチド配列の第五と第六の膜貫通ドメインの間に位置する領域又はモチーフ、及びより詳細にはKCNQ3ポリペプチドの孔形成Pループと(in vitroで)結合する候補化合物の能力を決定することを含む。
他の特定のスクリーニング法は、KCNQ3ポリペプチドのN末端細胞内ドメインと(in vitroで)結合する候補化合物の能力を決定することを含む。
他の特定のスクリーニング法は、細胞の表面で発現されるカリウムチャネルと結合する候補化合物の能力を決定することを含み、前記カリウムチャネルは少なくとも1個のKCNQ3ポリペプチドを含む。カリウムチャネルは4個までのサブユニットを含むことができる。特定の実施形態では、カリウムチャネルは4個までのKCNQ3ポリペプチドを含むホモ複合体である。他の実施形態では、カリウムチャネルは少なくとも1個のKCNQ3ポリペプチド、及び好ましくはKCNQ2ポリペプチド又はKCNQ5ポリペプチドから選択される少なくとも1個の異なるサブユニットを含むヘテロ複合体である。
標的遺伝子又はポリペプチドとの結合は、前記標的の活性を調節する、したがって対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害につながる経路に影響を与える化合物の能力に関する指標を与える。さまざまな技法、例えば候補化合物を標識すること、標識した参照リガンドとの競合などによって、結合の測定を実施することができる。in vitro結合アッセイ用に、ポリペプチドは懸濁液中でほぼ純粋な形で使用することができ、支持体に固定することができ、膜(完全細胞、膜調製物、リポソームなど)内で発現させることができる。
活性の調節には、非制限的にKCNQ3受容体の表面発現の刺激、前記受容体のマルチマー化(例えば、他のサブユニットとのマルチマー複合体の形成)の調節、カリウムの濃度又は流れの調節などがある。アッセイ中で使用する細胞は、任意の組換え細胞(即ち、KCNQ3ポリペプチドをコードする組換え核酸を含む任意の細胞)、又は内因性KCNQ3ポリペプチドを発現する任意の細胞であってよい。このような細胞の例には、非制限的に、原核細胞(細菌など)、及び真核細胞(例えば酵母菌細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)がある。具体例には大腸菌(E.coli)、ピチアパストリス(Pichia pastoris)、ハンゼヌラポリモルファ(Hansenula polymorpha)、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)又はサッカロミセス酵母菌(Saccharomyces yeasts)、哺乳動物細胞系(例えばVero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞、HEK細胞など)、並びに(例えば線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞などから生成した)初代又は樹立哺乳動物細胞培養物、又はアフリカツメガエル卵母細胞がある。
特定の実施形態では、選択する化合物はKCNQ3のアゴニスト、即ちKCNQ3と結合することができ且つ/或いはその内因性リガンドの活性を模倣することができる化合物、任意のチャネル開口薬などである。
他の特定の実施形態では、選択する化合物はKCNQ3のアンタゴニスト、即ちKCNQ3と結合することができ且つ/或いはその内因性リガンドの活性を阻害又は遮断することができる化合物、任意のチャネル阻害剤又はチャネル遮断剤などである。
特定の実施形態では、本発明のスクリーニングアッセイは、単独或いは他のイソ型と組合せて、改変型KCNQ3遺伝子又はポリペプチド、特に表2に列挙した突然変異、より好ましくは表2a又は2bに列挙した突然変異を有するKCNQ3遺伝子又はポリペプチドを使用する。
本発明の他の目的は、生物学的活性がある化合物を選択する方法に在り、前記方法は本発明によるKCNQ3ポリペプチドと試験化合物をin vitroで接触させること、及び前記KCNQ3ポリペプチドの活性を調節する前記試験化合物の能力を測定することを含む。
本発明の他の目的は、生物学的活性がある化合物を選択する方法に在り、前記方法は本発明によるKCNQ3遺伝子と試験化合物をin vitroで接触させること、及び前記KCNQ3遺伝子の発現を調節する前記試験化合物の能力を測定することを含む。
他の実施形態では本発明は、活性化合物、特に統合失調症、双極性障害又は関連障害に対して活性がある化合物をスクリーニング、選択又は同定する方法に関するものであり、この方法はKCNQ3遺伝子プロモーターの制御下でレポーター遺伝子を含むレポーター構築体を含む組換え宿主細胞と試験化合物を接触させること、及びレポーター遺伝子の発現を調節する(例えば、刺激する或いは低下させる)試験化合物を選択することを含む。
他の実施形態では本発明は、KCNQ3ポリペプチド又はその断片の使用に関するものであり、断片は統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療するためのKCNQ3ポリペプチドのアンタゴニスト又は阻害剤を単離又は作製するためのKCNQ3遺伝子特異的断片であることが好ましく、前記アンタゴニスト又は阻害剤は、
1.a)キメラ抗体、
b)ヒト化抗体又は
c)完全ヒト抗体を含む特異的抗体又はその断片、並びに
2.二重特異性抗体又は多重特異性抗体、
3.単鎖抗体(例えばscFv)又は
4.単鎖ドメイン抗体、又は
5.前記抗体由来のペプチド又は非ペプチド模倣体、又は
6.a)アンチカリン又は
b)フィブロネクチン系結合分子(例えば、トリネクチン又はアドネクチン)などの抗体模倣体からなる群から選択される。
1.a)キメラ抗体、
b)ヒト化抗体又は
c)完全ヒト抗体を含む特異的抗体又はその断片、並びに
2.二重特異性抗体又は多重特異性抗体、
3.単鎖抗体(例えばscFv)又は
4.単鎖ドメイン抗体、又は
5.前記抗体由来のペプチド又は非ペプチド模倣体、又は
6.a)アンチカリン又は
b)フィブロネクチン系結合分子(例えば、トリネクチン又はアドネクチン)などの抗体模倣体からなる群から選択される。
抗体由来のペプチド又は非ペプチド模倣体の作製は当技術分野で知られている(Saragovi et al.、1991及びSaragovi et al.、1992)。
アンチカリンも当技術分野で知られている(Vogt et al.、2004)。フィブロネクチン系結合分子は、US6818418及びWO2004029224中に記載されている。
前述のスクリーニングアッセイは、例えばプレート、チューブ、皿、フラスコなどの任意の適切なデバイスで実施することができる。典型的にはアッセイは、マルチウエルプレートで実施する。幾つかの試験化合物は並行してアッセイすることができる。
さらに試験化合物は、さまざまな起源、性質及び組成、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体などの抗体或いは抗体断片を含む任意の小分子、核酸、脂質、ペプチド、ポリペプチド、抗体由来のペプチド又は非ペプチド模倣体、並びに二重特異性抗体又は多重特異性抗体、単鎖抗体(例えばscFv)、又は単鎖ドメイン抗体、或いはアンチカリン又はフィブロネクチン系結合分子(例えば、トリネクチン又はアドネクチン)などの抗体模倣体など、個別の形又は混合物又は組合せであってよい。
医薬組成物及び療法
本発明はここで、KCNQ3遺伝子又はポリペプチドの活性又は発現を調節することによって、統合失調症、双極性障害及び関連障害を治療するための新規の手法を開示する。実際、本発明は初めて、KCNQ3受容体は統合失調症及び双極性障害と関係があること、及びこれらの障害に罹患している患者中ではこの遺伝子が改変されていることを示す。
本発明はここで、KCNQ3遺伝子又はポリペプチドの活性又は発現を調節することによって、統合失調症、双極性障害及び関連障害を治療するための新規の手法を開示する。実際、本発明は初めて、KCNQ3受容体は統合失調症及び双極性障害と関係があること、及びこれらの障害に罹患している患者中ではこの遺伝子が改変されていることを示す。
この点において、本発明の特定の目的は対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療又は予防するための医薬組成物を製造するための、機能性KCNQ3ポリペプチド、又はそれをコードする核酸の使用に在る。用語「機能性」KCNQ3ポリペプチドは、ポリペプチドが機能性K+チャネルを形成することができることを示す。
本発明の他の目的は、対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療又は予防するための医薬組成物を製造するための、KCNQ3の調節物質の使用に在る。
第一の実施形態では、調節物質はKCNQ3ポリペプチドの活性化物質又はアゴニストである。KCNQ3のアゴニストは、双極性障害、及び特に双極性障害の躁病期を治療するのに非常に適している。双極性障害及び特に躁病発症は、過活動、多幸症及び流動思考によって特徴付けられ、Mチャネルのアゴニストは、この疾患のこの期を治療するために使用することができる。
KCNQ3の活性化物質又はアゴニストには、非制限的に、活性化(例えば開口)を引き起こすか或いはKCNQ3ポリペプチドを含むカリウムチャネルの活性を模倣した任意の化合物又は分子又は状態、及び機能性KCNQ3ポリペプチドの表面発現を引き起こすか或いは刺激する任意の化合物又は分子又は状態がある。このような化合物の例には、例えば野生型KCNQ3ポリペプチド又はコード核酸、KCNQ3遺伝子プロモーターの活性化物質、及びKCNQ3ポリペプチドを含むカリウムチャネルを活性化させる任意の薬剤がある。このような薬剤の具体例には例えばレチガビン(Dailey et al.、1995及びWickenden et al.、2000)及びBMS−204352(Gribkoff et al.、2001)がある。
特定の実施形態ではアゴニストは、KCNQ3と選択的に結合し開口させるか或いはKCNQ3の開口を増大させる、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体又は抗体断片、これらに由来するペプチド又は非ペプチド模倣体、及び二重特異性抗体又は多重特異性抗体、単鎖抗体(例えばscFv)又は単鎖ドメイン抗体、又はアンチカリン又はフィブロネクチン系結合分子(例えば、トリネクチン又はアドネクチン)などの抗体模倣体などの、天然KCNQ3チャネル開口薬、又は抗体である。
他の実施形態では、調節物質はKCNQ3ポリペプチドの阻害剤又はアンタゴニストである。KCNQ3のアンタゴニストは、統合失調症及び双極性障害の鬱期を治療するのに非常に適している。KCNQ3の阻害剤又はアンタゴニストは脱分極誘導型の伝達物質放出を増大させ、動物モデルにおいて学習性を向上させる。
KCNQ3の阻害剤又はアンタゴニストには、非制限的に、KCNQ3ポリペプチドを含むカリウムチャネルの活性の阻害(例えば遮断)を引き起こす任意の化合物又は分子又は状態、及び機能性KCNQ3ポリペプチドの表面発現を阻害する(例えば、低下させる)或いは妨げる任意の化合物又は分子又は状態がある。このような化合物の例には、例えば阻害性核酸(例えば、アンチセンス核酸、リボザイム、siRNAなど)、KCNQ3遺伝子プロモーターの阻害剤、及びKCNQ3ポリペプチドを含むカリウムチャネルを遮断する任意の薬剤がある。このような薬剤の具体例には、例えばリノピルジン(Lamas et al.、1997)及び10,10−ビス(4−ピリジニルメチル)−9(10H)−アントラセノン(XE991)(Zaczek et al.1998)がある。
特定の実施形態ではアンタゴニストは、KCNQ3と選択的に結合しチャネルの開口又は機能を妨げる、低下させる或いは遮断する、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体又は抗体断片、これらに由来するペプチド又は非ペプチド模倣体、及び二重特異性抗体又は多重特異性抗体、単鎖抗体(例えばscFv)又は単鎖ドメイン抗体、又はアンチカリン又はフィブロネクチン系結合分子(例えば、トリネクチン又はアドネクチン)などの抗体模倣体などの抗体である。
本発明の他の目的は、KCNQ3ポリペプチドをコードする核酸又はそれをコードするベクター、及び薬剤として許容可能な担体又は賦形剤を含む医薬組成物に在る。
前述の使用又は組成物は、KCNQ3遺伝子又はポリペプチドの改変を示す対象、特に前の表2、より詳細には表2a又は6中に記載したマーカーを示す対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療又は予防するのに非常に適している。
本発明はさらに、前の表2中に開示したマーカーを含むKCNQ3核酸、又は改変を含む核酸断片を含む任意のベクターに関する。ベクターは任意のプラスミド、ファージ、ウイルス、エピソーム、人工染色体などであってよい。特定の実施形態では、ベクターは組換えウイルスである。ウイルスベクターは、当技術分野で知られている組換えDNA技法に従い、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、AAVなどを非制限的に含めた異なる型のウイルスから生成することができる。組換えウイルスは典型的には複製欠損型であり、E1−及び/又はE4−欠損型アデノウイルス、Gag−、po−及び/又はenv欠損型レトロウイルス及びRep−及び/又はCap−欠損型AAVから選択されることがさらにより好ましい。このような組換えウイルスは、当技術分野で知られている技法によって、例えばパッケージ細胞のトランスフェクト、又はヘルパープラスミド又はウイルスを用いた一過性のトランスフェクトなどによって生成することができる。ウイルスパッケージ細胞の典型例には、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などがある。このような複製欠損型組換えウイルスを生成するための詳細なプロトコルは、例えばWO95/14785、WO96/22378、米国特許第5,882,877号、米国特許第6,013,516号、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号及びWO94/19478中で見ることができる。
本発明の他の態様は、前に定義したベクター又は核酸を含む組換え宿主細胞である。組換え細胞は、前に論じた任意の原核細胞又は真核細胞であってよい。組換え細胞は、その表面で組換えKCNQ3ポリペプチドを発現することが好ましい。
本発明はさらに、対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療又は予防する方法であって、前に定義したKCNQ3遺伝子又はポリペプチドの発現又は活性を調節する化合物を、前記対象に投与することを含む方法に関する。
本発明の好ましい実施形態は、双極性障害、特に双極性障害の躁病期又は関連障害を治療するための医薬品の調製における、KCNQ3又はKCNQ3を含むカリウムチャネルの活性化物質又はアゴニストの使用である。
本発明の特に好ましい実施形態は、双極性障害、特に双極性障害の躁病期又は関連障害を治療するための医薬品の調製における、KCNQ3又はKCNQ3を含むカリウムチャネルの活性化物質又はアゴニストの使用であって、活性化物質又はアゴニストがキメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体又は抗体断片、これらに由来するペプチド又は非ペプチド模倣体、及び二重特異性抗体又は多重特異性抗体、単鎖抗体(例えばscFv)又は単鎖ドメイン抗体、又はアンチカリン又はフィブロネクチン系結合分子(例えば、トリネクチン又はアドネクチン)などの抗体模倣体などの抗体である使用である。
本発明の他の好ましい実施形態は、統合失調症、双極性障害、特に双極性障害の鬱期又は関連障害を治療するための医薬品の調製における、KCNQ3又はKCNQ3を含むカリウムチャネルの阻害剤又はアンタゴニストの使用である。
本発明の他の好ましい実施形態は、統合失調症、双極性障害、特に双極性障害の鬱期又は関連障害を治療するための医薬品の調製における、KCNQ3又はKCNQ3を含むカリウムチャネルの阻害剤又はアンタゴニストの使用であって、前記阻害剤又はアンタゴニストがリノピルジン又は10,10−ビス(4−ピリジニルメチル)−9(10H)−アントラセノン(XE991)である使用である。
本発明の特に好ましい実施形態は、統合失調症、双極性障害、特に双極性障害の鬱期又は関連障害を治療するための医薬品の調製における、KCNQ3又はKCNQ3を含むカリウムチャネルの阻害剤又はアンタゴニストの使用であって、阻害剤又はアンタゴニストがキメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体又は抗体断片、これらに由来するペプチド又は非ペプチド模倣体、及び二重特異性抗体又は多重特異性抗体、単鎖抗体(例えばscFv)又は単鎖ドメイン抗体、又はアンチカリン又はフィブロネクチン系結合分子(例えば、トリネクチン又はアドネクチン)などの抗体模倣体などの抗体である使用である。
本発明の他の好ましい実施形態は、統合失調症、双極性障害、特に双極性障害の鬱期又は関連障害を治療するための医薬品の調製における、KCNQ3ポリペプチドの発現を阻害又は下方制御する化合物の使用である。
本発明の他の特に好ましい実施形態は、統合失調症、双極性障害、特に双極性障害の鬱期又は関連障害を治療するための医薬品の調製における、KCNQ3ポリペプチドの発現を阻害又は下方制御する化合物の使用であって、化合物がアンチセンス核酸、リボザイム又は小さな干渉RNA(siRNA)などの阻害核酸である使用である。ヒトの障害、及び特にCNS障害を治療するためのアンチセンス核酸、リボザイム又はsiRNAを利用してタンパク質の発現に干渉するための技法は、当技術分野で知られている(Wood et al.、2003及びJaeger et al.、2004)。
本発明の特定の実施形態は、対象の統合失調症を治療又は予防する方法であって、(i)対象由来のサンプル中で、前に定義したKCNQ3遺伝子又はポリペプチドの改変の存在を検出すること、及び(ii)KCNQ3のアゴニストを前記対象に投与することを含む方法に在る。前記改変は、表2中に開示したSNPからなる群から選択されることが好ましい。
本発明の特定の実施形態は、対象の双極性障害の躁病期を治療又は予防する方法であって、(i)対象由来のサンプル中で、前に定義したKCNQ3遺伝子又はポリペプチドの改変の存在を検出すること、及び(ii)KCNQ3のアンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法に在る。前記改変は、表2中に開示したSNPからなる群から選択されることが好ましい。
本発明の特定の実施形態は、対象の双極性障害の鬱期を治療又は予防する方法であって、(i)対象由来のサンプル中で、前に定義したKCNQ3遺伝子又はポリペプチドの改変の存在を検出すること、及び(ii)KCNQ3のアゴニストを前記対象に投与することを含む方法に在る。前記改変は、表2中に開示したSNPからなる群から選択されることが好ましい。
本発明の他の態様及び利点を以下の実験の項中に開示し、これらは本出願の範囲を制限するものとしてではなく、例示的なものとしてみなすべきである。
1−候補遺伝子の分析に使用した統合失調症患者の集合の記載
関連性試験を4つの異なる群に実施した。サンプルの1つの集合はモスクワ、ロシア由来であった(「Rogaev」集合)。他の集合は英国由来であり、ロンドン大学(「UCL」集合)によって、ロンドン精神医学会(「IOP」集合)によって、及びBurnley病院(「Burnley」集合)によって与えられた。
関連性試験を4つの異なる群に実施した。サンプルの1つの集合はモスクワ、ロシア由来であった(「Rogaev」集合)。他の集合は英国由来であり、ロンドン大学(「UCL」集合)によって、ロンドン精神医学会(「IOP」集合)によって、及びBurnley病院(「Burnley」集合)によって与えられた。
全ての集合は、統合失調症に冒されている個体(患者又は「症例」)或いは冒されていない個体(「対照」)を含む。
各集合に関して見出した全てのFst値は、これらのサンプルは遺伝的に均質であり、したがってそれらを関連性分析において使用することができることを示す。
2−統合失調症とKCNQ3遺伝子の間の関連性試験
a−症例と対照の遺伝子型の決定
関連性試験を実施するための一般戦略は、前に記載した各群中の全個体由来のDNAサンプルを個別にスキャンして、二対立遺伝子マーカーの対立遺伝子の頻度を確定することであった。
a−症例と対照の遺伝子型の決定
関連性試験を実施するための一般戦略は、前に記載した各群中の全個体由来のDNAサンプルを個別にスキャンして、二対立遺伝子マーカーの対立遺伝子の頻度を確定することであった。
スキャン手順は、同種正常、異種突然変異及び同種突然変異サンプルの区別を可能にする対立遺伝子特異的プライマー伸長反応に基づく。この反応を使用して、欠失、挿入及び置換を含めた遺伝的変化を特徴付けることができる。
簡単に言うと、多型部位を含む当該の領域を、2つのPCRプライマー(プライマーPU及びRP)を使用してPCRによって増幅させる。アルカリホスファターゼ(SAP)による処理を施して、取り込まれなかったdNTPを除去する。オリゴMISプライマーは多型部位の近くにアニーリングし、多型性に応じて伸長する。異なる伸長産物とOLIGO MISプライマーは、質量スペクトルにおいて明らかに区別することができる。
典型的には、マイクロシークエンシング(MIS)反応中に、対立遺伝子及びアッセイの設計に応じて、プライマーは特定ヌクレオチド数伸長する。反応混合物中には、全4個のヌクレオチドA、T、C、及びGがdNTP又はddNTPのいずれかとして存在する(正常のSNPアッセイに関しては、通常は3個のヌクレオチドがddNTPとして、1個がdNTPとして存在する)。ddNTPの取り込みによって、MISプライマーの伸長が終了する。ddNTPとdNTPの両方を同じ割合で取り込ませるDNAポリメラーゼを使用して、MIS反応は分析する配列に応じて異なる質量の対立遺伝子特異的伸長産物を生成する。質量分析法の前に、MIS反応の生成物をSpectroCLEAN溶液及びSpectroCLEANプレート(SEQUENOM)を用いて脱塩し、SEQUENOMからSpectroCHIPマイクロアレイに移す。SpectroCHIPを次いでSpectroREADER(SEQUENOM)質量分析器によって分析する。
各群(症例と対照)中のそれぞれの二対立遺伝子マーカーの頻度を、各個体由来のDNAサンプルで実施したゲノムPCRによって得た増幅断片において、マイクロシークエンシング反応によって測定した。
4.)洗浄−脱塩
質量分析法の前に、MIS反応の生成物をSpectroCLEAN溶液及びSpectroCLEANプレート(SEQUENOM)を用いて脱塩し、SEQUENOMからSpectroCHIPマイクロアレイに移す。
質量分析法の前に、MIS反応の生成物をSpectroCLEAN溶液及びSpectroCLEANプレート(SEQUENOM)を用いて脱塩し、SEQUENOMからSpectroCHIPマイクロアレイに移す。
SpectroCHIPを次いでSpectroREADER(SEQUENOM)質量分析器によって分析する。
b−SNP頻度の分析
●方法
マーカーは個別に分析した。ピアルソンのχ2検定(2×2)を使用して、症例と対照の間の対立遺伝子の頻度を比較した。3×2χ2検定を使用して、症例と対照の間の遺伝子型頻度の全体的な差異に関してデータを分析した。条件がピアルソンのχ2検定に関するものでなかったとき、正確なフィッシャー検定を実施した。
●方法
マーカーは個別に分析した。ピアルソンのχ2検定(2×2)を使用して、症例と対照の間の対立遺伝子の頻度を比較した。3×2χ2検定を使用して、症例と対照の間の遺伝子型頻度の全体的な差異に関してデータを分析した。条件がピアルソンのχ2検定に関するものでなかったとき、正確なフィッシャー検定を実施した。
次いで我々は、症例と対照の間の対立遺伝子の頻度の差異を計算した:所与のSNPに関する対立遺伝子の頻度の差異が大きくなるほど、そのSNPを含むゲノム領域と障害の間の関係が確実になる。
「選択した」対立遺伝子は、対照と比較して症例において頻度が増大している対立遺伝子である。
ハーディ−ワインベルクの平衡統計値を症例と対照のデータに関して別々に計算し、観察した遺伝子型頻度と予想した遺伝子型頻度をピアルソンのχ2検定を使用して比較した。症例群におけるハーディ−ワインベルクの平衡(HWE)からの逸脱は、統合失調症に関する危険の増大の原因である可能性がある突然変異が起こったことを示すことができる。
●結果
表3中のp値は、二対立遺伝子マーカーと統合失調症の間の関係の確率を示す。5e−02より下のp値は、二対立遺伝子マーカーと統合失調症の間の有意な関係を示唆する[有意なp値のみ示す]。
表3:KCNQ3遺伝子内に位置するSNPに関する有意なp値及び関連データ
表3中のp値は、二対立遺伝子マーカーと統合失調症の間の関係の確率を示す。5e−02より下のp値は、二対立遺伝子マーカーと統合失調症の間の有意な関係を示唆する[有意なp値のみ示す]。
表3:KCNQ3遺伝子内に位置するSNPに関する有意なp値及び関連データ
対立遺伝子のオッズ比(OR)を推定することによって、所与の対立遺伝子を有さないときと比較したそれ(=選択した[又は「危険」]対立遺伝子)を有するときの、この疾患を有する確率を我々は評価する。
1より大きいORは、他の対立遺伝子を有するときより「危険」対立遺伝子[或いは遺伝子型又はハプロタイプ]を有するとき、統合失調症を有する確率がより高いことを示す。
遺伝子型のORによって、関連二対立遺伝子マーカーの「危険な」遺伝子型を同定することができる。遺伝子型のオッズ比を計算した。表4は有意な結果を示す。
表4:KCNQ3上に位置するSNPに関する遺伝子型のOR
表4:KCNQ3上に位置するSNPに関する遺伝子型のOR
KCNQ3遺伝子に局在する7個の異なるSNP(M2、M3、M6、M9、M12、M16及びM24)は、統合失調症と関係があり、これは4個の異なる群中に渡っていた。3個のSNPはUCLにおける統合失調症の高い危険性と関係があり、他のSNPはいずれもこの遺伝子内、他のサンプル中に局在する。この結果は、実際この遺伝子は、異なる群中で統合失調症の危険因子となる可能性があることを示唆する。
要約すると、1つの二対立遺伝子マーカーの頻度分析の関連結果は、KCNQ3遺伝子が統合失調症と関係があることを示す。
3−候補遺伝子の分析に使用した統合失調症患者の集合の記載
関連性試験を2つの異なる群に実施した。サンプルの1つの集合はアルゼンチン由来であった(「Labimo」集合)。他の集合は英国由来であり、ロンドン大学によって与えられた(「UCLbip」集合)。
関連性試験を2つの異なる群に実施した。サンプルの1つの集合はアルゼンチン由来であった(「Labimo」集合)。他の集合は英国由来であり、ロンドン大学によって与えられた(「UCLbip」集合)。
全ての集合は、双極性障害に冒されている個体(患者又は「症例」)或いは冒されていない個体(「対照」)を含む。
それぞれの集合に関して発見したFst値は、これらのサンプルは遺伝的に均質であり、したがって関連性分析においてそれらを使用することができることを示す。
4−双極性障害とKCNQ3遺伝子の間の関連性試験
a−症例と対照の遺伝子型の決定
統合失調症における関連性試験に使用したのと同じ二対立遺伝子マーカーを、2つの双極性障害患者の集合において遺伝子型決定した(表2参照)。
a−症例と対照の遺伝子型の決定
統合失調症における関連性試験に使用したのと同じ二対立遺伝子マーカーを、2つの双極性障害患者の集合において遺伝子型決定した(表2参照)。
Claims (19)
- 対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害の存在又は素因を検出する方法であって、対象由来のサンプル中のKCNQ3遺伝子又はポリペプチドの感受性の改変の存在を検出することを含み、そのような改変の存在が前記対象中の統合失調症又は関連障害の存在又は素因を示す方法。
- 統合失調症、双極性障害又は関連障害の治療に対する対象の応答性を評価する方法であって、対象由来のサンプル中のKCNQ3遺伝子又はポリペプチドの感受性の改変の存在を検出することを含み、そのような改変の存在が応答性対象を示す方法。
- 前記感受性の改変が一塩基変異である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記感受性の改変がKCNQ3遺伝子の5’領域、3’領域又はイントロン1内に局在する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
- 感受性マーカーが表2aに列挙したM2、M3、M6、M9、M12、M16及びM24マーカー、又はこれらの組合せから選択される、請求項3に記載の方法。
- 感受性マーカーが表2bに列挙したM13である、請求項3に記載の方法。
- KCNQ3遺伝子の改変の存在をシークエンシング、選択的ハイブリダイゼーション及び/又は選択的増幅によって検出する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
- 配列番号5〜28から選択される1個又は数個のプライマーを使用する選択的増幅を含む、請求項7に記載の方法。
- 対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療又は予防するための医薬組成物を製造するための、機能性KCNQ3ポリペプチド又はそれをコードする核酸の使用。
- 対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療又は予防するための医薬組成物を製造するための、KCNQ3の調節物質の使用。
- 調節物質がKCNQ3のアンタゴニストである、統合失調症又は双極性障害の鬱期を治療又は予防するための請求項10に記載の使用。
- 調節物質がKCNQ3のアゴニストである、双極性障害の躁病期を治療又は予防するための請求項10に記載の使用。
- アゴニストがKCNQ3チャネル開口薬である、請求項12に記載の使用。
- KCNQ3遺伝子又はポリペプチドの感受性の改変を有する対象の統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療又は予防するための医薬組成物を製造するための、請求項9から13までのいずれか一項に記載の使用。
- 前記感受性の改変が表2に列挙したM2、M3、M6、M9、M12、M13、M16及びM24マーカー、又はこれらの組合せから選択される、請求項14に記載の使用。
- 統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療又は予防するための、候補薬剤をスクリーニングするための標的としてのKCNQ3ポリペプチドの使用。
- 統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療するための生物学的活性がある化合物を選択する方法であって、候補化合物とKCNQ3遺伝子又はポリペプチドとを接触させること、及び前記遺伝子又はポリペプチドと結合する化合物を選択することを含む方法。
- 統合失調症、双極性障害又は関連障害を治療するための生物学的活性がある化合物を選択する方法であって、候補化合物と、KCNQ3ポリペプチドを候補化合物と共に発現する組換え宿主細胞とを接触させること、及び前記細胞の表面で前記KCNQ3ポリペプチドと結合する並びに/或いは前記KCNQ3ポリペプチドの活性を調節する化合物を選択することを含む方法。
- 統合失調症又は関連障害のモデルにおいて選択した化合物の活性をアッセイするステップをさらに含む、請求項17又は18に記載の方法。
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