発明の領域
本発明は、一般に、遺伝学及び医学の領域に関する。
発明の背景
自閉症は、対人的社会的相互作用並びに言語性及び非言語性のコミュニケーションの障害、限定された常同的な関心及び活動のパターン、並びに3歳以前の発達異常の存在を特徴とする神経精神医学的な発達障害である(Bailey et al., 1996)。幼児自閉症の先駆的な記載において、Kanner(1943)は、以下の症状を含めた:言語障害、視線を合わせることの欠如、社会的相互作用の欠如、反復的行動、及び剛直な慣習の必要。彼は、大部分の症例において、子供の行動が幼児期初期から異常であることを認めた。これに基づき、彼は、先天性の、おそらくは遺伝学的な欠陥の存在を示唆した。1年後、ドイツのHans Aspergerが、類似の患者について記載し、その状態を「自閉性精神病質」と名付けた。
現在のところ、疾患の診断のための特異的な生物学的マーカーが既知でないため、自閉症は行動的基準を使用して定義されている。自閉症の臨床像は、重度にばらつきがあり、教育、能力、及び気質を含む多くの要因により修飾される。さらに、臨床像は、個体内でも発達の過程で変化する。さらに、自閉症は、注意欠陥障害、運動協調不能、並びに不安及びうつのような精神医学的症状のようなその他の障害に、高頻度に関連している。自閉症には、てんかん障害、代謝障害、及び免疫障害も包含され得るとのいくつかの証拠が存在する。臨床的な可変性の認識と一致して、現在では、全ての知能レベル及び言語能力の個体を含む、全ての重度に及ぶ自閉性障害のスペクトルが存在する、との一般的な合意が存在している。
自閉症スペクトルの一部であるが、特別な亜群と見なされているのが、アスペルガー症候群(AS)である。ASは、自閉症スペクトル障害(ASD)の特徴である社会的相互作用の障害及び限定された反復的な行動、関心、及び活動の存在下での、言語発達の臨床的に有意な遅延の欠如により、自閉性障害と区別される。
ASDは広汎性発達障害(PPD)の型である。特定不能のPPD(PPD,”not otherwise specified”)(PPD−NOS)とは、自閉症の厳密な基準を満たさないが、非定型の自閉症の徴候を示しているか、又は重要エリアのうちの2つもしくは3つにおいて診断基準をほぼ満たしていることから近似している子供を分類するために使用される。
自閉症の診断を標準化するため、診断基準は、世界保健機関(World Health Organisation)(International Classification of Diseases, 10th Revision,10th Revision(ICD-10), 1992)及び米国精神医学会(American Psychiatric Association)(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition(DSM-IV), 1994)により定義されている。自閉症診断インタビュー(Autism Diagnostic Interview)(ADI)が開発されている(Le Couteur et al., 1989; Lord et al., 1994)。ADIは、標準化され、厳格に試験され、普遍的に認められている、ASDを診断するために利用可能な唯一の診断ツールである。ADIは、自閉症の診断のための、ICD−10及びDSM−IVの基準に基づく、スコア化された半構造化(semi-structured)された親のインタビューである。それは、以下の3つの主なエリアにおける行動に焦点を当てている:対人的社会的相互作用の質;コミュニケーション及び言語;並びに限定された反復的、常同的な関心及び行動。これらの基準を使用すると、自閉症はもはや稀な障害とは見なされない。Kannerの基準に基づく10,000個体当たりの患者4〜5人という以前に報告された有病率と比較して、より高い10,000個体当たり10〜12例という率が、より最近の研究では報告されている(Gillberg and Wing, 1999)(Folstein and Rosen-Sheidley, 2001)。自閉性障害の全スペクトルの有病率の推定は、1.5〜2.5倍高い。女性と比較して4倍高い男性における発症率の報告は一致している。精神遅滞は、ASDを有する症例の25%〜40%に存在する(Baird et al. 2000; Chakrabarti and Fombonne, 2001)。脳に関わる付加的な医学的状態は、集団の約10%に見られる(Gillberg and Coleman, 2000)。
報告される自閉症例の増加の基になるメカニズムは、未知である。この差が、自閉症の有病率の増加を反映しているのか、診断基準の徐々の変化を反映しているのか、疾患発現のより大きな可変性の認識を反映しているのか、又は増加した障害の意識を反映しているのか、は高度に討論されている。さらに、見かけの増加は主として環境因子によることが広範に公知である(Nelson, 1991; Rodier and Hyman, 1998)。しかしながら、増加した有病率の大部分は、診断基準の広がりと、これらの基準のより広い適用との組み合わせにより説明され得る可能性が高いと考えられる。
疾患を寛解させるための有効な治療は存在するが、治癒は得られておらず、治療の利益は緩やかである傾向がある。様々な行動的及び発達的な戦略を利用したいくつかのプログラムについて、有望な結果が入手されている。最も有望なものとしては、応用行動分析(ABA)に基づくプログラムがある。いくつかの薬物療法は、自閉症に関連した様々な症状を改善させ、それにより、教育的及び行動的な介入から利益を得る個体の能力を増加させたようである。最も広範囲に研究されている薬剤は、ドパミン拮抗薬である。いくつかの研究は、様々な選択的セロトニン再吸収阻害剤の有用性を示唆している。
3つの双生児研究が、自閉症の遺伝率を推定するために実施されている(Folstein and Rutter, 1977; Bailey et al., 1995; Steffenburg et al., 1989)。地理的に定義された集団の中で生活していた全ての双生児が捜し出された。組み合わせられたデータにおいて、一卵性(MZ)双生児36組及び二卵性(DZ)双生児30組が研究された。0%というDZの率に対し、平均MZ一致率は70%である。MZとDZとの一致率の比及び約2%〜4%であると推測されている同胞再発危険率から、90%超という遺伝率が計算された(Jorde et al., 1991 Szatmari et al., 1998)。非自閉症血縁者の研究は、社会的消極性(social reticence)、コミュニケーションにおける困難、慣習の嗜好、及び変化に関する困難を含むASDのいくつかの特徴が、自閉症児の親において、対照の親より多く見出されることを明白に示した(Folstein and Rutter, 1977)。自閉症を有する個体の家族員においては、発語開始の遅延及び読解に関する困難も、より一般的であり、再発性うつ、不安障害、血小板セロトニン上昇、及び頭囲増加も同様であった(Folstein and Rosen-Sheidley, 2001)。
影響を受けた個体から遠縁になると、自閉症の罹患率は有意に低下し、このことは、単一遺伝子モデルが大部分の自閉症例を説明する可能性は低いことを示している(Jorde et al., 1990)。報告された分離分析は、多遺伝子性の遺伝モードと最も一致していた(Jorde et al., 1991)。最も簡素(parsimonious)な遺伝モデルは、いくつかの遺伝子が互いに相互作用して自閉症表現型を生ずるというものである(Folstein and Rosen-Sheidley, 2001)。
自己免疫が自閉症において役割を果たしている可能性を、相当の間接証拠が示している。ある研究は、対照発端者を含む家族と比較して、自閉症発端者を含む家族に、自己免疫疾患を有する家族員をより多く見出した(Comi et al., 1999)。自閉症を有する数人の子供又は彼らの母親に存在した主要組織適合性抗原(MHC)遺伝子座におけるハプロタイプが、自閉症児に自己免疫の素因を与え得ることを、少数の研究が報告した(Burger and Warren, 1998)。2つの研究において、ミエリン塩基性タンパク質、神経フィラメントタンパク質、及び血管上皮を含む、ある種の脳組織及びタンパク質に対する自己抗体が、自閉症児において、対照と比較してより多く見出された(Singh et al., 1993; Connolly et al., 1999; Weizman et al., 1982)。
大部分の自閉症例が、提唱されたオリゴジェニシティ(oligogenicity)及びエピスタシスのメカニズムと一致しているが、染色体異常及び特定の病因を有する障害と関連している少数派も見られる。Smalley(1997)は、既知の遺伝病又は染色体異例を有する5〜14%を含め、自閉症例のおよそ15〜37%が、共存する医学的状態を有していると記述した。ほぼ全てのヒト染色体に関わる染色体異例が報告されている。これらには、常染色体異数性、性染色体異例、欠失、重複、転座、環状染色体、逆位、及びマーカー染色体が含まれる(Gillberg, 1998)。最も一般的なのは、第15染色体上のプラダーウィリ/アンジェルマン症候群領域の異常である。自閉症と、メンデルの法則に従った状態又は遺伝的症候群との関連には、未治療のフェニルケトン尿症、脆弱X染色体症候群、結節性硬化症、及び神経繊維腫症が含まれていた。最近、Carneyら(2003)は、症例の80%においてMECP2(メチルCpG結合タンパク質2)遺伝子の突然変異により引き起こされるレット症候群の徴候を示していない自閉症を有する女性2人において、MECP2遺伝子の突然変異を同定した。
種々のグループが、自閉症又はより広いASDの表現型に関するゲノムスキャンを実行している。体系的であり、かつモデルフリーであるため、このアプローチは極めて有望であるようである。さらに、それは、既に成功していることが示されている。従って、比較的小さな研究群の分析によってすら、陽性の連鎖結果が入手された。より重要なこととして、いくつかの所見は既に複製されていた。最も一貫した結果は、染色体7qについて入手されたが、染色体2q及び16pにも相当のオーバーラップが存在する(Folstein and Rosen-Sheidley, 2001)。染色体領域の同定における相当の進歩が、染色体15及びXにおいてもなされている。ニューロリジンNLGN3及びNLGN4をコードする2つのX連鎖遺伝子の突然変異が、自閉症スペクトル障害を有する同胞において同定されている(Jamain et al., 2003)。ニューロリジンの突然変異が自閉性障害に関与しているという事実を、いくつかの証拠系列が支持している。第1に、報告された突然変異は、予測されたタンパク質構造の重度の改変を引き起こす。第2に、NLGN4を含むXp22.3における欠失が、数人の自閉症児において報告されている。第3に、NLGN4の突然変異が、影響を受けたある個体の母親にde novo出現した。
発明の概要
本発明は、ここで、自閉症、自閉症スペクトル障害、及び自閉症関連障害の診断、予防、及び治療のために使用され得、治療的に活性な薬物のスクリーニングのためにも使用され得る、ヒト自閉症感受性遺伝子の同定を開示する。
本発明は、特に、自閉症及び関連障害の診断、予防、及び治療のために使用され得、治療的に活性な薬物のスクリーニングのためにも使用され得る、ヒト自閉症感受性遺伝子の同定を開示する。本発明は、より具体的には、自閉症に対する感受性と関係があり、治療学介入のための新規の標的となる下垂体ホメオボックス転写因子1(PITX1)遺伝子のある種のアレルを開示する。本発明は、PITX1遺伝子及び発現産物の特定の突然変異に関し、これらの突然変異に基づく診断ツール及びキットにも関する。本発明は、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、小児崩壊性障害、精神遅滞、不安、うつ、注意欠陥多動性障害、発語遅延又は言語障害、てんかん、代謝障害、免疫障害、双極性疾患、並びに統合失調症を含むその他の精神医学的及び神経学的な疾患の素因の診断、検出、予防、及び/又は治療において使用され得る。
本発明は、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の素因もしくは防御の診断、検出、予防、及び/又は治療において使用され得、その方法は、対象からの試料において、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の存在又は素因の指標となる、PITX1の遺伝子又はポリペプチドの改変の存在を検出することを含む。該改変の存在は、自閉症からの防御の指標ともなり得る。
本発明の特定の目的は、対象からの試料において、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の存在又は素因の指標となる、PITX1遺伝子ローカスの改変の存在を検出することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の存在又は素因を検出する方法にある。自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の存在又は素因の指標となる改変は、自閉症患者への優先的な伝達を有する改変である。又は、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の存在又は素因の指標となる改変は、影響を受けていない個体と比較して、自閉症患者において、より高い頻度を有する改変である。
本発明のさらなる特定の目的は、対象からの試料において、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害からの防御の指標となるPITX1遺伝子ローカスの改変の存在を検出することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害からの防御を検出する方法にある。自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害からの防御の指標となる改変は、自閉症患者への優先的な非伝達を有する改変である。又は、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害からの防御の指標となる改変は、影響を受けていない個体と比較して、自閉症患者において、より低い頻度を有する改変である。
本発明のもう一つの特定の目的は、対象からの試料において、治療に対する特定の応答の指標となるPITX1遺伝子ローカスの改変の存在を検出することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の治療に対する対象の応答を評価する方法にある。
本発明のさらなる特定の目的は、対象からの試料において、治療による有害作用の指標となるPITX1遺伝子ローカスの改変の存在を検出することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の治療による対象における有害作用を評価する方法にある。
本発明は、対象からの試料において、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の素因の指標となるPITX1遺伝子ローカスの改変の存在を検出すること;及び自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害に対する予防的治療を投与することを含む、対象における自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害を予防する方法にも関する。
好ましい実施態様において、該改変は、自閉症に関連した1個もしくは数個のSNP又はSNPのハプロタイプである。好ましくは、該SNPは、表1a及び1bに開示されたもの、より好ましくは表3〜8に開示されたものより選択される。より好ましくは、該自閉症に関連したSNPは、SNP6及びSNP33からなる群より選択され得る。より好ましくは、該自閉症に関連したハプロタイプは、表1a及び1bに開示されたSNPより選択される数個のSNPを含む、又はからなる。好ましくは、該SNPは、表3〜8に開示されたものからなる群より選択される。好ましい実施態様において、該自閉症に関連したハプロタイプは、SNP6、SNP33、SNP25、SNP27、SNP29、SNP31、及びSNP33からなる群より選択される数個のSNPを含む、又はからなる。特定の実施態様において、該自閉症に関連したハプロタイプは、SNP1、SNP3、SNP4、SNP6、SNP7、SNP21、及びSNP22からなる群より選択される数個のSNPを含む、又はからなる。さらに好ましくは、該ハプロタイプは、表4、6、7、及び8に開示されたハプロタイプより選択される。場合により、本発明において開示されたハプロタイプは、1個又は数個の付加的なSNPを含み得る。より好ましくは、該自閉症に関連したSNPは、SNP6及びSNP33であり得る。最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル1−2−1を有する、SNP24、SNP25、及びSNP40からなる、又はを含む。もう一つの最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル1−2−1を有する、SNP23、SNP25、及びSNP33からなる、又はを含む。さらなる最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル2−1−1−1−1を有する、SNP25、SNP27、SNP29、SNP31、及びSNP33からなる、又はを含む。
好ましくは、PITX1遺伝子座の改変は、ハイブリダイゼーションアッセイ、配列決定アッセイ、微量配列決定アッセイ、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、コンフォメーションに基づくアッセイ、融解曲線分析、変性高速液体クロマトグラフィ(DHPLC)アッセイ、又はアレル特異的増幅アッセイを実施することにより検出される。
本発明の特定の面は、PITX1遺伝子を含むゲノム領域内の自閉症に関連したSNP又はハプロタイプを少なくとも1つ特異的に検出するために設計されたプライマー、プローブ、及び/もしくはオリゴヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含む物質の組成物にある。好ましくは、該SNPは、表1a及び1bに開示されたもの、より好ましくは表3〜8に開示されたものより選択される。より好ましくは、該自閉症に関連したSNPは、SNP6及びSNP33からなる群より選択され得る。より好ましくは、該自閉症に関連したハプロタイプは、表1a及び1bに開示されたSNPより選択される数個のSNPを含む、又はからなる。好ましくは、該SNPは、表3〜8に開示されたものからなる群より選択される。好ましい実施態様において、該自閉症に関連したハプロタイプは、SNP6、SNP33、SNP25、SNP27、SNP29、SNP31、及びSNP33からなる群より選択される数個のSNPを含む、又はからなる。特定の実施態様において、該自閉症に関連したハプロタイプは、SNP1、SNP3、SNP4、SNP6、SNP7、SNP21、及びSNP22からなる群より選択される数個のSNPを含む、又はからなる。さらに好ましくは、該ハプロタイプは、表4、6、7、及び8に開示されたハプロタイプより選択される。場合により、本発明において開示されたハプロタイプは、1個又は数個の付加的なSNPを含み得る。より好ましくは、該自閉症に関連したSNPは、SNP6及びSNP33であり得る。最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル1−2−1を有する、SNP24、SNP25、及びSNP40からなる、又はを含む。もう一つの最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル1−2−1を有する、SNP23、SNP25、及びSNP33からなる、又はを含む。さらなる最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル2−1−1−1−1を有する、SNP25、SNP27、SNP29、及びSNP31からなる、又はを含む。
本発明は、PITX1の発現又は活性のモジュレーションを通して、患者における自閉症及び/又は関連障害を治療する方法にもある。そのような治療は、例えば、PITX1ポリペプチド、PITX1 DNA配列(PITX1遺伝子ローカスに対するアンチセンス配列及びRNAiを含む)、抗PITX1抗体、又はPITX1の発現もしくは活性をモジュレートする薬物を使用する。
本発明は、遺伝子療法、タンパク質補充療法、又はPITX1タンパク質の模倣体(mimetics)及び/もしくは阻害剤の投与のような、症状前治療又は組み合わせ療法を含む、PITX1遺伝子の有害なアレルを保持している個体を治療する方法にも関する。
本発明のさらなる面は、自閉症又は関連障害に関連したPITX1遺伝子のアレル又はその遺伝子産物のモジュレーション、又はそれらとの結合に基づく、自閉症又は関連障害の治療のための薬物のスクリーニングにある。
本発明のさらなる面は、PITX1ポリペプチド断片に特異的な抗体及びそのような抗体の誘導体、そのような抗体を分泌するハイブリドーマ、並びにそれらの抗体を含む診断キットを含む。より好ましくは、該抗体は、PITX1の活性を修飾する改変を含むPITX1ポリペプチド又はその断片に特異的である。
本発明は、改変を含むPITX1遺伝子又はその断片にも関する。本発明は、さらに、改変を含むPITX1ポリペプチド又はその断片に関する。好ましくは、該改変は、PITX1の活性を修飾する。特定の実施態様において、該改変は、表11に開示された突然変異より選択される。
発明の詳細な記載
本発明は、ヒト自閉症感受性遺伝子としてのPITX1の同定を開示する。自閉症を有する家族114組からの様々な核酸試料を、特定のGenomeHIP過程に供した。この過程によって、自閉症対象において改変されている特定の同祖的(identical-by-descent)断片が、該集団において同定された。IBD断片のスクリーニングにより、本発明者らは、染色体5q31.1上の下垂体ホメオボックス転写因子1遺伝子(PITX1)を、自閉症及び関連表現型のための候補として同定した。この遺伝子は、実際、重要範囲内に存在し、自閉症の遺伝的制御と一致する機能的な表現型を発現する。PITX1遺伝子のSNPも、ヒト対象における自閉症と相関しているものとして同定された。PITX1遺伝子ローカスに位置するSNP6及びSNP33が、自閉症に関連していることが見出された。SNP1、SNP3、SNP4、SNP6、SNP7、SNP21、SNP22、SNP23、SNP24、SNP25、SNP27、SNP29、SNP31、SNP33、SNP36、SNP39、及びSNP40からなる群より選択される数個のSNPを含む、表4及び6〜8に開示されたハプロタイプも、自閉症に関連しているものとして同定された。
従って、本発明は、自閉症、自閉症スペクトル障害、及び自閉症関連障害の診断、予防、及び治療のため、そして治療的に活性な薬物のスクリーニングのため、PITX1遺伝子及び対応する発現産物を使用することを提唱する。
定義
自閉症及び自閉症スペクトル障害(ASD):自閉症は、典型的には、アスペルガー症候群(AS)及びその他の広汎性発達障害(PPD)を含む障害のスペクトル(ASD)の一部として特徴付けられる。自閉症とは、健康が損なわれ得る程度の、3歳未満に存在する、限定された反復的かつ常同的な行動、関心、及び活動のパターンを伴う、社会的相互作用及びコミュニケーションの障害の状態として解釈されるべきである。ASは、自閉症スペクトル障害(ASD)の特徴である社会的相互作用の障害及び限定された反復的な行動、関心、及び活動の存在下での、言語発達の臨床的に有意な遅延の欠如によって、自閉性障害と区別される。PPD−NOS(特定不能のPPD)とは、自閉症のための厳密な基準を満たさないが、非定型自閉症の徴候を示しているか、又は重要エリアのうちの2つもしくは3つにおいて診断基準をほぼ満たしていることから近似している子供を分類するために使用される。
自閉症に関連した障害、疾患、又は病理には、より具体的には、代謝障害、免疫障害、てんかん、不安、うつ、注意欠陥多動性障害、発語遅延又は言語障害、運動不協調、精神遅滞、統合失調症、及び双極性障害が含まれる。
本発明は、様々な対象、特に、成人、子供を含むヒトにおいて、そして出生前段階において使用され得る。
本発明の情況において、PITX1遺伝子ローカスとは、PITX1コーディング配列、PITX1非コーディング配列(例えば、イントロン)、転写、翻訳、及び/又は安定性を調節するPITX1制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター等)、並びにPITX1 RNA(例えば、mRNA)及びPITX1ポリペプチド(例えば、プレタンパク質及び成熟タンパク質)のような全ての対応する発現産物を含む、細胞又は生物における全てのPITX1配列又は産物を意味する。PITX1遺伝子ローカスには、PITX1遺伝子内に位置しているSNPと連鎖不平衡のSNPを含むPITX1遺伝子の周辺配列も含まれる。例えば、PITX1ローカスには、表1a及び/又は1bに開示されたSNPを含む周辺配列が含まれる。
本願において使用されるように、「PITX1遺伝子」という用語は、ヒト染色体5q31.1上の下垂体ホメオボックス転写因子1遺伝子を意味し、自閉症及び自閉症関連障害に対する感受性と関係があるそれらのアレル(例えば、生殖細胞系列突然変異)を含むそれらのバリアント、アナログ、及び断片も意味する。PITX1遺伝子は、ペアード様ホメオドメイン転写因子下垂体ホメオボックス(paired-like homeodomain transcription factor pituitary homeobox)1、PTX1、バックフットマウスホモログオブ(backfoot,mouse,homolog of)、BFT、下垂体OTX関連因子(pituitary OTX-related factor)、POTXとも呼ばれ得る。
「遺伝子」という用語は、ゲノムDNA(gDNA)、相補DNA(cDNA)、合成又は半合成のDNA、並びに任意の型の対応するRNAを含む、任意の型のコーディング核酸を含むものと解釈されるべきである。遺伝子という用語には、特に、PITX1をコードする組換え核酸、即ち、例えば、配列の組み立て、切断、ライゲーション、又は増幅により人工的に作出された天然には存在しない核酸分子が含まれる。PITX1遺伝子は典型的には二本鎖であるが、一本鎖のようなその他の型も企図され得る。PITX1遺伝子は、様々な起源から、当技術分野において既知の様々な技術により、例えば、DNAライブラリーのスクリーニング、又は様々な天然起源からの増幅により、入手され得る。組換え核酸は、化学合成、遺伝子工学、酵素技術、又はそれらの組み合わせを含む従来の技術により調製され得る。適当なPITX1遺伝子配列は、PITX1に関するユニジーン(Unigene)クラスター(Hs.84136)及びユニジーン代表配列NM_002653のような遺伝子バンク上に見出され得る。PITX1遺伝子の特定の例には、配列番号:1又は37が含まれる。
「PITX1遺伝子」という用語には、配列番号:1もしくは37又は既に同定された任意のコーディング配列の任意のバリアント、断片、又はアナログが含まれる。そのようなバリアントには、例えば、個体間の対立形質変異(例えば、多形)による天然に存在するバリアント、自閉症と関係のある突然変異型アレル、オルタナティブスプライシング型等が含まれる。バリアントという用語には、他の起源又は生物に由来するPITX1遺伝子配列も含まれる。バリアントは、好ましくは、配列番号:1又は37と実質的に相同であり、即ち、少なくとも約65%、典型的には少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約95%の配列番号:1又は37とのヌクレオチド配列同一性を示す。PITX1遺伝子のバリアント及びアナログには、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で、既に定義されたような配列(又はその相補鎖)とハイブリダイズする核酸配列も含まれる。
典型的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、30℃超、好ましくは35℃超、より好ましくは42℃を超える温度、及び/又は約500mM未満、好ましくは200mM未満の塩分が含まれる。ハイブリダイゼーション条件は、温度、塩分、及び/又はSDS、SSCのようなその他の試薬の濃度等を修飾することにより、当業者によって調整され得る。
PITX1遺伝子の断片とは、既に開示されたような配列の少なくとも約8個の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも約15個、より好ましくは少なくとも約20個のヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも30ヌクレオチドの任意の部分を意味する。断片には、8〜100ヌクレオチド、好ましくは15〜100、より好ましくは20〜100の全ての可能なヌクレオチド長が含まれる。
PITX1ポリペプチドとは、既に開示されたようなPITX1遺伝子によりコードされた任意のタンパク質又はポリペプチドを意味する。「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のストレッチを含む任意の分子をさす。この用語には、ペプチド及びタンパク質のような様々な長さの分子が含まれる。ポリペプチドは、グリコシル化及び/又はアセチル化及び/又は化学反応又はカップリング等により修飾されていてもよく、1個又は数個の非天然又は合成のアミノ酸を含有していてもよい。PITX1ポリペプチドの具体例には、配列番号:2(NP_002644)の全部又は一部が含まれる。
「治療に対する応答」という用語は、以下に限定はされないが、治療用化合物を代謝する能力、プロドラッグを活性薬物へと変換する能力、並びに個体における薬物の薬物動態(吸収、分布、排除)及び薬力学(受容体関連)を含む、治療の効力をさす。
「治療による有害作用」という用語は、薬物の主薬理作用の拡張に起因する療法の有害作用、又は特有の宿主因子との薬物の相互作用に起因する特異体質的な有害反応をさす。「治療による副作用」には、以下に制限はされないが、皮膚科学的、血液学的、又は肝臓病学的な毒性のような有害反応が含まれ、さらに、胃及び腸の潰瘍形成、血小板機能の妨害、腎損傷、全身性じん麻疹、気管支収縮、低血圧、並びにショックが含まれる。
診断
本発明は、ここで、対象におけるPITX1遺伝子ローカスのモニタリングに基づく診断法を提供する。本発明の情況において、「診断」という用語には、成人、子供、及び胎児における、初期段階、症状前段階、及び後期段階を含む様々な段階における、検出、モニタリング、投薬、比較等が含まれる。診断には、典型的には、予後、発症の素因又はリスクの評価、最も適切な治療を定義するための対象の特徴決定(薬理遺伝学)等が含まれる。
本発明は、個体が、PITX1遺伝子ローカスの突然変異又は多形に起因する、自閉症、自閉症スペクトル障害、もしくは自閉症関連障害を発症するリスクを有しているか否か、又は自閉症、自閉症スペクトル障害、もしくは自閉症関連障害に罹患しているか否かを決定するための診断法を提供する。本発明は、個体が治療剤に対して陽性に応答する可能性が高いか否か、又は個体が治療剤による有害副作用を発症するリスクを有しているか否かを決定する方法も提供する。
本発明の特定の目的は、対象からの試料において、PITX1遺伝子ローカスの改変の存在を検出することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の存在又は素因を検出する方法にある。該改変の存在は、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の存在又は素因の指標となる。場合により、該方法は、対象からの試料を準備する前工程を含む。好ましくは、該試料におけるPITX1遺伝子座の改変の存在は、試料の遺伝子型決定を通して検出される。
本発明のもう一つの特定の目的は、対象からの試料において、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害からの防御の指標となるPITX1遺伝子ローカスの改変の存在を検出することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害からの防御を検出する方法にある。
好ましい実施態様において、該改変は、自閉症に関連した1個もしくは数個のSNP又はSNPのハプロタイプである。好ましくは、該SNPは、表1a及び1bに開示されたもの、より好ましくは表3〜8に開示されたものより選択される。より好ましくは、該自閉症に関連したSNPは、SNP6及びSNP33からなる群より選択され得る。より好ましくは、該自閉症に関連したハプロタイプは、表1a及び1bに開示されたSNPより選択される数個のSNPを含む、又はからなる。好ましくは、該SNPは、表3〜8に開示されたものからなる群より選択される。好ましい実施態様において、該自閉症に関連したハプロタイプは、SNP6、SNP33、SNP25、SNP27、SNP29、SNP31、及びSNP33からなる群より選択される数個のSNPを含む、又はからなる。特定の実施態様において、該自閉症に関連したハプロタイプは、SNP1、SNP3、SNP4、SNP6、SNP7、SNP21、及びSNP22からなる群より選択される数個のSNPを含む、又はからなる。さらに好ましくは、該ハプロタイプは、表4、6、7、及び8に開示されたハプロタイプより選択される。場合により、本発明において開示されたハプロタイプは、1個又は数個の付加的なSNPを含み得る。より好ましくは、該自閉症に関連したSNPは、SNP6及びSNP33であり得る。最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル1−2−1を有する、SNP24、SNP25、及びSNP40からなる、又はを含む。もう一つの最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル1−2−1を有する、SNP23、SNP25、及びSNP33からなる、又はを含む。さらなる最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル2−1−1−1−1を有する、SNP25、SNP27、SNP29、SNP31、及びSNP33からなる、又はを含む。
本発明のもう一つの特定の目的は、(i)対象からの試料を準備すること、及び(ii)該試料において、PITX1遺伝子ローカスの改変の存在を検出することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の治療に対する対象の応答を評価する方法にある。
本発明のもう一つの特定の目的は、対象からの試料において、PITX1遺伝子ローカスの改変の存在を検出することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の治療に対する対象の応答を評価する方法にある。該改変の存在は、該治療に対する特定の応答の指標となる。好ましくは、該試料におけるPITX1遺伝子ローカスの改変の存在は、試料の遺伝子型決定を通して検出される。
本発明のさらなる特定の目的は、対象からの試料において、PITX1遺伝子ローカスの改変の存在を検出することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の治療による対象の有害作用を評価する方法にある。該改変の存在は、該治療による有害作用の指標となる。好ましくは、該試料におけるPITX1遺伝子ローカスの改変の存在は、試料の遺伝子型決定を通して検出される。
好ましい実施態様において、該改変は、自閉症に関連した1個もしくは数個のSNP又はSNPのハプロタイプである。好ましくは、該SNPは、表1a及び1bに開示されたもの、より好ましくは表3〜8に開示されたものより選択される。より好ましくは、該自閉症に関連したSNPは、SNP6及びSNP33からなる群より選択され得る。より好ましくは、該自閉症に関連したハプロタイプは、表1a及び1bに開示されたSNPより選択される数個のSNPを含む、又はからなる。好ましくは、該SNPは、表3〜8に開示されたものからなる群より選択される。好ましい実施態様において、該自閉症に関連したハプロタイプは、SNP6、SNP33、SNP25、SNP27、SNP29、SNP31、及びSNP33からなる群より選択される数個のSNPを含む、又はからなる。特定の実施態様において、該自閉症に関連したハプロタイプは、SNP1、SNP3、SNP4、SNP6、SNP7、SNP21、及びSNP22からなる群より選択される数個のSNPを含む、又はからなる。さらに好ましくは、該ハプロタイプは、表4、6、7、及び8に開示されたハプロタイプより選択される。場合により、本発明において開示されたハプロタイプは、1個又は数個の付加的なSNPを含み得る。より好ましくは、該自閉症に関連したSNPは、SNP6及びSNP33であり得る。最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル1−2−1を有する、SNP24、SNP25、及びSNP40からなる、又はを含む。もう一つの最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル1−2−1を有する、SNP23、SNP25、及びSNP33からなる、又はを含む。さらなる最も好ましい実施態様において、該ハプロタイプは、好ましくはそれぞれアレル2−1−1−1−1を有する、SNP25、SNP27、SNP29、SNP31、及びSNP33からなる、又はを含む。
さらなる実施態様において、本発明は、対象からの試料において、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の素因の指標となるPITX1遺伝子ローカスの改変の存在を検出すること;及び自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害に対する予防的治療を投与することを含む、対象における自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害を予防する方法に関する。該予防的治療は、薬物投与であり得る。該予防的治療は、行動療法であってもよい。
治療もしくは薬物に対する応答、又は治療もしくは薬物による副作用を分析し予測する診断学は、個体が、特定の治療薬により治療されるべきか否かを決定するために使用され得る。例えば、診断学が、ある個体が、特定の薬物又は行動療法による治療に対して陽性に応答する可能性を示した場合、その薬物はその個体に投与され得る。反対に、診断学が、ある個体が、特定の薬物による治療に対して陰性に応答する可能性が高いことを示した場合には、別の治療のコースが処方され得る。陰性の応答とは、有効な応答の欠如又は毒性副作用の存在のいずれかとして定義され得る。
臨床的な薬物試験は、PITX1 SNPのもう一つの適用を表わす。薬物に対する応答又は薬物による副作用の指標となる1個以上のPITX1 SNPが、上記の方法を使用して同定され得る。その後、そのような薬剤の臨床試験への可能性のある参加者が、その薬物に対して好適に応答する可能性が最も高い個体を同定し、副作用を経験する可能性が高いものを排除するため、スクリーニングされ得る。そのようにして、陽性に応答する可能性が低い個体を研究に含めた結果として測定値を低下させることなく、そして望ましくない安全性問題のリスクなしに、薬物に対して陽性に応答する個体において、薬物治療の有効性が測定され得る。
行動療法の有用性を評価する臨床試験も、PITX1 SNPの適用である。行動療法に対する応答又は行動療法による副作用の指標となる1個以上のPITX1 SNPが、上記の方法を使用して同定され得る。その後、そのような療法の臨床試験への可能性のある参加者が、その療法に対して好適に応答する可能性が最も高い個体を同定し、副作用を経験する可能性が高いものを排除するため、スクリーニングされ得る。そのようにして、陽性に応答する可能性が低い個体を研究に含めた結果として測定値を低下させることなく、そして望ましくない安全性問題のリスクなしに、療法に対して陽性に応答する個体において、行動治療の有効性が測定され得る。
改変は、PITX1のgDNA、RNA、又はポリペプチドのレベルで決定され得る。場合により、検出は、ハイブリダイゼーションアッセイ、配列決定アッセイ、微量配列決定アッセイ、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、コンフォメーションに基づくアッセイ、融解曲線分析、変性高速液体クロマトグラフィ(DHPLC)アッセイ(Jones et al, 2000)、又はアレル特異的増幅アッセイを実施することにより決定される。特定の実施態様において、検出は、PITX1遺伝子の全部もしくは一部を配列決定することにより、又はPITX1遺伝子の全部もしくは一部の選択的なハイブリダイゼーションもしくは増幅により実施される。より好ましくは、PITX1遺伝子特異的な増幅は、改変同定工程の前に実施される。
PITX1遺伝子ローカスの改変は、単独の、又は様々に組み合わせられた、ローカスのコーディング領域及び/又は非コーディング領域における任意の型の突然変異、欠失、再編成、及び/又は挿入であり得る。突然変異には、より具体的には、点突然変異が含まれる。欠失には、2残基から遺伝子又はローカス全体までのような、遺伝子ローカスのコーディング部分又は非コーディング部分の1残基、2残基、又はそれ以上の任意の領域が包含され得る。典型的な欠失は、約50連続塩基対未満のドメイン(イントロン)又は反復配列又は断片のようなより小さな領域に影響を与えるが、より大きな欠失も起こり得る。挿入には、遺伝子ローカスのコーディング部分又は非コーディング部分における1残基又は数残基の付加が包含され得る。挿入には、典型的には、遺伝子ローカスにおける1〜50塩基対の付加が含まれ得る。再編成には、配列の逆位が含まれる。PITX1遺伝子ローカスの改変は、終止コドンの作出、フレームシフト突然変異、アミノ酸置換、特定のRNAのスプライシング又はプロセシング、産物の不安定性、短縮型ポリペプチドの産生等をもたらし得る。改変は、改変された機能、安定性、ターゲティング、又は構造を有するPITX1ポリペプチドの産生をもたらし得る。改変は、タンパク質発現の低下、又は該産生の増加も引き起こし得る。
本発明に係る方法の特定の実施態様において、PITX1遺伝子ローカスの改変は、PITX1遺伝子又は対応する発現産物における点突然変異、欠失、及び挿入、より好ましくは点突然変異及び欠失より選択される。改変は、PITX1のgDNA、RNA、又はポリペプチドのレベルで決定され得る。
これに関して、本発明は、ここで、自閉症に関連しているSNP1、SNP3、SNP4、SNP6、SNP7、SNP21、及びSNP22からなる群より選択されるSNPを含むPITX1遺伝子のSNP及びある種のハプロタイプを開示する。SNPは、以下の表1aに報告される。
本発明に係る任意の方法において、PITX1遺伝子の1個又は数個のSNP、並びにPITX1遺伝子及び周辺領域のSNPを含むある種のハプロタイプ、特に、本発明において開示されたものは、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害に関連した、その他の遺伝子に位置するその他のSNP又はハプロタイプと組み合わせて使用され得る。
もう一つの別実施態様において、方法は、改変されたPITX1 RNA発現の存在を検出することを含む。改変されたRNA発現には、改変されたRNA配列の存在、又は改変されたRNAのスプライシングもしくはプロセシングの存在、改変された量のRNAの存在等が含まれる。これらは、例えば、PITX1 RNAの全部もしくは一部の配列決定、又は該RNAの全部もしくは一部の選択的ハイブリダイゼーションもしくは選択的増幅を含む、当技術分野において既知の様々な技術により検出され得る。
さらなる別実施態様において、方法は、改変されたPITX1ポリペプチド発現の存在を検出することを含む。改変されたPITX1ポリペプチド発現には、改変されたポリペプチド配列の存在、改変された量のPITX1ポリペプチドの存在、改変された組織分布の存在等が含まれる。これらは、例えば、配列決定及び/又は(抗体のような)特異的リガンドとの結合を含む、当技術分野において既知の様々な技術により検出され得る。
既に示されたように、配列決定、ハイブリダイゼーション、増幅、及び/又は(抗体のような)特異的リガンドとの結合を含む、当技術分野において既知の様々な技術が、改変されたPITX1の遺伝子又はRNAの発現又は配列を検出又は定量化するために使用され得る。その他の適当な方法には、アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)、オリゴヌクレオチドライゲーション、アレル特異的増幅、サザンブロット(DNAの場合)、ノーザンブロット(RNAの場合)、一本鎖コンフォメーション分析(SSCA)、PFGE、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、ゲル移動、クランプド(clamped)変性ゲル電気泳動、変性HLPC、融解曲線分析、ヘテロ二重鎖分析、RNase防御、化学的又は酵素的なミスマッチ切断、ELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫酵素アッセイ(IEMA)が含まれる。
これらのアプローチのうちのいくつか(例えば、SSCA及びCGGE)は、改変された配列の存在の結果としての核酸の電気泳動移動度の変化に基づく。これらの技術によると、改変された配列は、ゲル上の移動度のシフトにより可視化される。次いで、断片は、改変を確認するために配列決定され得る。
他のいくつかは、対象からの核酸と、野生型又は改変型のPITX1の遺伝子又はRNAに特異的なプローブとの間の特異的なハイブリダイゼーションに基づく。プローブは、懸濁物中にあってもよいし、又は基質上に固定化されていてもよい。プローブは、典型的には、ハイブリッドの検出を容易にするために標識される。
ノーザンブロット、ELISA、及びRIAのような、これらのアプローチのうちのいくつかは、ポリペプチドの配列又は発現レベルの評価に特に適している。これらの後者は、ポリペプチドに対して特異的なリガンド、より好ましくは特異的抗体の使用を必要とする。
特定の好ましい実施態様において、方法は、対象からの試料において、改変されたPITX1遺伝子発現プロファイルの存在を検出することを含む。既に示されたように、これは、より好ましくは、該試料中に存在する核酸の配列決定、選択的ハイブリダイゼーション、及び/又は選択的増幅により達成され得る。
配列決定
配列決定は、自動シーケンサーを使用して、当技術分野において周知の技術を使用して実施され得る。配列決定は、完全PITX1遺伝子、又はより好ましくは、その特異的なドメイン、典型的には、有害な突然変異又はその他の改変を保持していることが既知であるか又は推測されるものに対して実施され得る。
増幅
増幅は、核酸の複製を開始させるようはたらく相補的な核酸配列間の特異的なハイブリッドの形成に基づく。
増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、及び核酸配列に基づく増幅(NASBA)のような当技術分野において既知の様々な技術に従い実施され得る。これらの技術は、商業的に入手可能な試薬及びプロトコルを使用して実施され得る。好ましい技術は、アレル特異的PCR又はPCR−SSCPを使用する。増幅は、通常、反応を開始させるために、特異的な核酸プライマーの使用を必要とする。
PITX1遺伝子又はローカスから配列を増幅するのに有用な核酸プライマーは、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害を有するある種の対象において改変されている該ローカスの標的領域に隣接するPITX1遺伝子ローカスの一部と特異的にハイブリダイズすることができる。そのような標的領域の例は、表1a及び1bに提供される。
表1において同定されるようなSNPを含むPITX1標的領域を増幅するために使用され得るプライマーは、配列番号1の配列又はPITX1のゲノム配列に基づき設計され得る。特定の実施態様において、プライマーは、配列番号3〜26の配列に基づき設計され得る。
本発明のもう一つの特定の目的は、周辺領域を含むPITX1遺伝子又はローカスから配列を増幅するのに有用な核酸プライマーにある。そのようなプライマーは、好ましくは、PITX1遺伝子ローカスの核酸配列に相補的であり、特異的にハイブリダイズする。特定のプライマーは、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害を有するある種の対象において改変されている該ローカスの標的領域に隣接するPITX1遺伝子ローカスの一部と特異的にハイブリダイズすることができる。
本発明は、自閉症、閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害を有するある種の対象において改変されているPITX1コーディング配列(例えば、遺伝子又はRNA)の一部に相補的であり、特異的にハイブリダイズする核酸プライマーにも関する。この点に関して、本発明の特定のプライマーは、PITX1の遺伝子又はRNAの改変された配列に対して特異的である。そのようなプライマーを使用することにより、増幅産物の検出によって、PITX1遺伝子ローカスの改変の存在が示される。対照的に、増幅産物の欠如によって、特異的な改変が試料中に存在しないことが示される。
本発明の典型的なプライマーは、約5〜60ヌクレオチド長、より好ましくは約8〜25ヌクレオチド長の一本鎖核酸分子である。配列は、PITX1遺伝子ローカスの配列に直接由来し得る。高度の特異性を保証するため、完全な相補性が好ましい。しかしながら、ある種のミスマッチは容認され得る。
本発明は、対象における自閉症、自閉症スペクトル障害、もしくは自閉症関連障害の存在もしくは素因を検出する方法、又は自閉症、自閉症スペクトル障害、もしくは自閉症関連障害の治療に対する対象の応答を評価する方法における、上記のような核酸プライマー又は核酸プライマー対の使用にも関する。
選択的ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション検出法は、核酸配列改変を検出するようはたらく相補的な核酸配列間の特異的なハイブリッドの形成に基づく。
特定の検出技術は、野生型又は改変型のPITX1の遺伝子又はRNAに特異的な核酸プローブの使用、それに続く、ハイブリッドの存在の検出を含む。プローブは、懸濁物中にあってもよいし、又は(核酸アレイもしくはチップ技術のように)基質もしくは支持体の上に固定化されていてもよい。プローブは、典型的には、ハイブリッドの検出を容易にするために標識される。
この点に関して、本発明の特定の実施態様は、対象からの試料を、改変されたPITX1遺伝子ローカスに特異的な核酸プローブと接触させること、及びハイブリッドの形成を評価することを含む。特定の好ましい実施態様において、方法は、それぞれ野生型PITX1遺伝子ローカス及びそれらの様々な改変型に特異的なプローブのセットと、試料を同時に接触させることを含む。この実施態様においては、試料中のPITX1遺伝子ローカスの改変の様々な型の存在を直接検出することが可能である。また、様々な対象からの様々な試料が、平行して処理されてもよい。
本発明の情況において、プローブとは、PITX1の遺伝子又はRNA(の標的部分)に相補的であり、特異的なハイブリダイゼーションが可能であり、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の素因を与える、又はそれらに関連しているPITX1アレルに関連したポリヌクレオチド多形を検出するのに適しているポリヌクレオチド配列をさす。プローブは、好ましくは、PITX1の遺伝子、RNA、又はそれらの標的部分に完全に相補的である。プローブは、典型的には、8〜1000ヌクレオチド長、例えば、10〜800、より好ましくは、15〜700、典型的には20〜500の一本鎖核酸を含む。より長いプローブも使用され得ることが理解されるべきである。本発明の好ましいプローブは、改変を保持しているPITX1の遺伝子又はRNAの領域に特異的にハイブリダイズすることができる、8〜500ヌクレオチド長の一本鎖核酸分子である。
本発明の特定の実施態様は、改変型の(例えば、突然変異型の)PITX1の遺伝子又はRNAに特異的な核酸プローブ、即ち、改変型のPITX1の遺伝子又はRNAに特異的にハイブリダイズし、該改変を欠くPITX1の遺伝子又はRNAには本質的にハイブリダイズしない核酸プローブである。特異性とは、標的配列とのハイブリダイゼーションが、非特異的なハイブリダイゼーションを通して発生されたシグナルと区別され得る特異的なシグナルを発生することを示す。本発明に係るプローブを設計するためには、完全に相補的な配列が好ましい。しかしながら、特異的なシグナルが非特異的なハイブリダイゼーションと区別され得る限り、ある程度のミスマッチは容認され得ることが理解されるべきである。
そのようなプローブの特定の例は、前記表1に収載されたような点突然変異を保持しているPITX1の遺伝子又はRNAを含むゲノム領域の標的部分に相補的な核酸配列である。特に、プローブは、配列番号3〜26からなる群より選択される配列もしくはSNPを含むその断片、又はその相補配列を含み得る。
プローブの配列は、本願において提供されたようなPITX1の遺伝子及びRNAの配列に由来し得る。ヌクレオチド置換が実施され得、プローブの化学的修飾も実施され得る。そのような化学的修飾は、ハイブリッドの安定性を増加させるため(例えば、インターカレートする基)、又はプローブを標識するため、達成され得る。標識の典型的な例には、非制限的に、放射能、蛍光、発光、酵素標識等が含まれる。
本発明は、対象における自閉症、自閉症スペクトル障害、もしくは自閉症関連障害の存在もしくは素因を検出する方法、又は自閉症、自閉症スペクトル障害、もしくは自閉症関連障害の治療に対する対象の応答を評価する方法における、上記のような核酸プローブの使用にも関する。
オリゴヌクレオチドライゲーション
オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイは、標的配列において、SNP塩基特異的な3’末端を保持している2個のプライマー、及び5’が次の塩基で開始する1個の共通プライマーを含む、SNP1個当たり3個の特異的プライマーを設計することからなる方法である。2個のアレル特異的プライマーは、各アレルを決定する特有の配列のタグを保持している。プライマーが標的配列にアニールさせられ、アレル特異的な3’塩基が存在する場合には、ライゲーション反応によって、アレル特異的プライマーが共通プライマーと接合されるであろう。次いで、特有の配列のタグに相同な短い蛍光色素で標識されたプローブが、固定化された産物にハイブリダイズさせられ、対応するアレルの検出が可能となる。オリゴライゲーションキットは、商業的に入手可能である(SNPlex,Applied Biosystems,Foster City)。
特異的リガンド結合
既に示されたように、PITX1遺伝子ローカスの改変は、PITX1ポリペプチドの配列又は発現レベルの改変に関してスクリーニングすることにより検出され得る。この点に関して、本発明の特定の実施態様は、試料をPITX1ポリペプチドに特異的なリガンドと接触させること、及び複合体の形成を決定することを含む。
特異的抗体のような種々の型のリガンドが使用され得る。特定の実施態様において、試料は、PITX1ポリペプチドに特異的な抗体と接触させられ、免疫複合体の形成が決定される。ELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫酵素アッセイ(IEMA)のような、免疫複合体を検出するための様々な方法が、使用され得る。
本発明の情況において、抗体とは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を意味し、同抗原特異性を実質的に有しているそれらの断片又は誘導体も意味する。断片には、Fab、Fab’2、CDR領域等が含まれる。誘導体には、単鎖抗体、ヒト化抗体、多機能性抗体等が含まれる。
PITX1ポリペプチドに特異的な抗体とは、PITX1ポリペプチドと選択的と結合する抗体、即ち、PITX1ポリペプチド又はそのエピトープ含有断片に対して作成された抗体を意味する。他の抗原との非特異的な結合も起こり得るが、標的PITX1ポリペプチドとの結合は、より高い親和性で起こり、非特異的な結合から確実に識別され得る。
特定の実施態様において、方法は、対象からの試料を、改変型のPITX1ポリペプチドに特異的な抗体(でコーティングされた支持体)と接触させること、及び免疫複合体の存在を決定することを含む。特定の実施態様において、試料は、野生型及び様々な改変型のような種々の型のPITX1ポリペプチドに特異的な様々な抗体(でコーティングされた支持体)と、同時に、又は平行して、又は連続的に、接触させられてもよい。
本発明は、対象における自閉症、自閉症スペクトル障害、もしくは自閉症関連障害の存在もしくは素因を検出する方法、又は自閉症、自閉症スペクトル障害、もしくは自閉症関連障害の治療に対する対象の応答を評価する方法における、上記のようなリガンド、好ましくは抗体、その断片又は誘導体の使用にも関する。
本発明は、対象からの試料において、PITX1の遺伝子もしくはポリペプチド、PITX1の遺伝子もしくはポリペプチドの発現、及び/又はPITX1活性の改変の存在を検出するための生成物及び試薬を含む診断キットにも関する。本発明に係る該診断キットは、本発明において記載された、任意のプライマー、任意のプライマー対、任意の核酸プローブ、及び/又は任意のリガンド、好ましくは抗体を含む。本発明に係る該診断キットは、ハイブリダイゼーション、増幅、又は抗原−抗体免疫反応を実施するための試薬及び/又はプロトコルをさらに含み得る。
診断法は、in vitro、ex vivo、又はin vivo、好ましくは、in vitro又はex vivoで実施され得る。それらは、PITX1遺伝子ローカスの状態を評価するために対象からの試料を使用する。試料は、核酸又はポリペプチドを含有している、対象に由来する任意の生物学的試料であり得る。そのような試料の例には、液体、組織、細胞試料、器官、及び生検材料等が含まれる。最も好ましい試料は、血液、血漿、唾液、尿、精液等である。出生前診断も、例えば、胎児細胞又は胎盤細胞を試験することにより実施され得る。試料は、従来の技術に従い収集され、診断に直接使用されるか、又は保管され得る。試料は、方法を実施する前に、試験のための核酸又はポリペプチドの利用可能性を賦与するため又は改良するために処理されてもよい。処理には、例えば、溶解(例えば、機械的、物理的、化学的等)、遠心分離等が含まれる。また、核酸及び/又はポリペプチドは、従来の技術により予備精製又は濃縮され得、かつ/又は複雑度を低下されられ得る。核酸及びポリペプチドは、それらの断片を作製するため、酵素又はその他の化学的もしくは物理的な処理により処理されてもよい。特許請求の範囲に記載された方法の高い感度を考慮すると、極少量の試料が、アッセイを実施するのに十分である。
示されたように、試料は、好ましくは、改変されたPITX1遺伝子ローカスの存在を評価するために、プローブ、プライマー、又はリガンドのような試薬と接触させられる。接触は、プレート、チューブ、ウェル、ガラス等のような任意の適当な装置において実施され得る。特定の実施態様において、接触は、核酸アレイ又は特異的リガンドアレイのような試薬によりコーティングされた基質上で実施される。基質は、ガラス、プラスチック、ナイロン、紙、金属、ポリマー等を含む任意の支持体のような固体又は半固体の基質であり得る。基質は、スライド、膜、ビーズ、カラム、ゲル等のような、様々な型及びサイズのものであり得る。接触は、試薬と、試料の核酸又はポリペプチドとの間に複合体を形成させるために適当な任意の条件の下で行われ得る。
試料中の改変されたPITX1のポリペプチド、RNA、又はDNAの所見は、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の存在、素因、又は進行段階と相関し得る、対象における改変されたPITX1遺伝子ローカスの存在の指標となる。例えば、生殖細胞系列PITX1突然変異を有する個体は、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害を発症する増加したリスクを有している。対象における改変されたPITX1遺伝子ローカスの存在の決定は、より有効で、かつカスタマイズされた適切な治療的介入の設計も可能にする。また、症状前レベルにおけるこの決定は、予防計画が適用されることを可能にする。
連鎖不平衡
目的のゲノム領域、特にPITX1遺伝子ローカスにおいて、第1のSNPが同定されたならば、当業者は、この第1のSNPと連鎖不平衡の付加的なSNPを容易に同定することができる。実際、自閉症又は関連障害に関連した第1のSNPと連鎖不平衡の任意のSNPが、この形質に関連しているであろう。従って、所定のSNPと自閉症又は関連障害との間に関連が証明されたならば、この形質に関連した付加的なSNPの発見は、この特定の領域におけるSNPの密度を増加させるために大いに重要であり得る。
所定のSNPと連鎖不平衡の付加的なSNPの同定は、以下のことを含む:(a)複数の個体から第1のSNPを含むか又はその周辺のゲノム領域からの断片を増幅すること;(b)該第1のSNPを保有しているか又はその周辺のゲノム領域において第2のSNPを同定すること;(c)該第1のSNPと第2のSNPとの間で連鎖不平衡分析を実施すること;及び(d)該第1のマーカーと連鎖不平衡である該第2のSNPを選択すること。工程(b)及び(c)を含む部分的組み合わせも企図される。
SNPを同定し、連鎖不平衡分析を実行する方法は、周知の方法を使用することにより、過度の実験なしに、当業者によって実施され得る。
連鎖不平衡のこれらのSNPは、本発明に係る方法、特に、本発明に係る診断法において使用され得る。
例えば、クローン病の連鎖ローカスは、染色体5q31上の18cMに及ぶ大きな領域にマッピングされた(Rioux et al., 2000 and 2001)。領域全体にわたるマイクロサテライトマーカー及びSNPの密な地図を使用して、連鎖不平衡(LD)の強力な証拠が見出された。LDの証拠が見出されたため、著者らは、超高密度SNP地図を開発し、この地図から選択されたマーカーのより密な集団を研究した。マルチローカス分析は、TDTを使用して各々独立に関連付けられた複数のSNPにより特徴付けられた単一の共通のリスクハプロタイプを定義した。これらのSNPは、そのリスクハプロタイプに特有であり、相互にほぼ完全なLDにあるため、それらの情報内容は本質的に同一であった。これらのSNPの等価な特性のため、遺伝学的証拠単独に基づき、この領域内の原因突然変異を同定することは不可能である。
原因突然変異
自閉症又は関連障害の原因であるPITX1遺伝子の突然変異は、自閉症又は関連障害を示す患者からのPITX1遺伝子の配列と、対照個体からのPITX1遺伝子の配列とを比較することにより同定され得る。PITX1のSNPと自閉症又は関連障害との同定された関連に基づき、同定されたローカスは、突然変異に関してスキャンされ得る。好ましい実施態様において、PITX1遺伝子のエキソン及びスプライス部位、プロモーター及びその他の制御領域のような機能的領域が、突然変異に関してスキャンされる。好ましくは、自閉症又は関連障害を示す患者は、自閉症又は関連障害に関連していることが示された突然変異を保持しており、対照個体は、自閉症又は関連障害に関連した突然変異又はアレルを保持していない。自閉症又は関連障害を示す患者が、対照個体より高い頻度で、自閉症又は関連障害に関連していることが示された突然変異を保持しているという可能性もある。
そのような突然変異を検出するために使用される方法は、一般に、以下の工程を含む:自閉症又は関連障害を示す患者及び対照個体からのPITX1遺伝子のDNA試料からの、自閉症又は関連障害に関連したSNP又はSNP群を含むPITX1遺伝子の領域の増幅;増幅された領域の配列決定;自閉症又は関連障害を示す患者からのPITX1遺伝子のDNA配列と、対照個体からのPITX1遺伝子のDNA配列との比較;自閉症又は関連障害を示す患者に特異的な突然変異の決定。
従って、PITX1遺伝子の原因突然変異の同定は、周知の方法を使用することにより、過度の実験なしに、当業者によって実施され得る。例えば、以下の例において、ルーチンの方法を使用することにより、原因突然変異が同定された。
Hugotら(2001)は、以前にクローン病に対する感受性と連鎖していることが見出された第16染色体の領域においてクローン病に対する感受性を有する遺伝子バリアントを同定するためにポジショナルクローニング戦略を適用した。可能性のある感受性ローカスの位置を精密化するため、26個のマイクロサテライトマーカーを遺伝子型決定し、伝達不平衡試験を使用してクローン病との関連に関して試験した。境界線上の有意な関連が、マイクロサテライトマーカーD16S136の1つのアレルとの間に見出された。付加的な11個のSNPが周辺領域から選択され、数個のSNPが有意な関連を示した。この領域からのSNP5〜8は、NOD2/CARD15遺伝子の単一のエキソンに存在することが見出され、非同義バリアントであることが示された。このため、著者らは、50人のCD患者においてこの遺伝子の完全コーディング配列を配列決定することとした。2つの付加的な非同義突然変異(SNP12及びSNP13)が見出された。家系伝達不平衡試験(pedigree transmission disequilibrium test)を使用したところ、SNP13が最も有意に関連していた(p=6×10−6)。もう一つの独立の研究において、対照4人と比較された影響を受けた個体12人からのこの遺伝子のコーディング領域の配列決定によっても、同一のバリアントが見出された(Ogura et al., 2001)。SNP13の稀なアレルは、NOD2/CARD15タンパク質を短縮すると予測される1bp挿入に相当した。このアレルは、頻度は対照と比較して有意に低かったが、正常な健康な個体にも存在した。
同様に、Lesageら(2002)は、散発性症例166及び家族性症例287を含むCDを有する患者453人、潰瘍性大腸炎(UC)を有する患者159人、並びに健康な対照対象103人において、コーディング領域の体系的配列決定によってCARD15の突然変異分析を実施した。同定された配列変異67個のうち、9個はCDを有する患者において>5%のアレル頻度を有していた。それらのうちの6個は、多形と見なされ、3個(SNP12−R702W、SNP8−G908R、及びSNP13−1007fs)が、独立に、CDに対する感受性と関連していることが確認された。また、27個の稀な付加的な突然変異も、可能性のある疾患原因突然変異(DCM)として見なされた。3個の主なバリアント(R702W、G908R、及び1007fs)は、全CD突然変異のそれぞれ32%、18%、及び31%を表し、27個の稀な突然変異は全部でDCMの19%を表した。合わせると、突然変異の93%が、遺伝子の遠位の3分の1に位置していた。UCに関連していることが見出された突然変異はなかった。対照的に、二重突然変異を有していた17%を含め、CDを有する患者の50%が少なくとも1つのDCMを保持していた。
薬物スクリーニング
本発明は、薬物候補又はリードのスクリーニングのための新規の標的及び方法も提供する。方法は、結合アッセイ及び/又は機能アッセイを含み、in vitro、細胞系、動物等において実施され得る。
本発明の特定の目的は、in vitroで試験化合物を本発明に係るPITX1の遺伝子又はポリペプチドと接触させること、及びPITX1の遺伝子又はポリペプチドと結合する該試験化合物の能力を決定することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害に対して活性な化合物を選択する方法にある。該遺伝子又はポリペプチドとの結合は、該標的の活性をモジュレートし、従って、対象における自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害に至る経路に影響を与える化合物の能力に関する指標を提供する。好ましい実施態様において、方法は、in vitroで試験化合物を本発明に係るPITX1ポリペプチド又はその断片と接触させること、及び該PITX1ポリペプチド又はその断片と結合する該試験化合物の能力を決定することを含む。断片は、好ましくは、PITX1ポリペプチドの結合部位を含む。好ましくは、該PITX1の遺伝子もしくはポリペプチド又はそれらの断片は、改変型もしくは突然変異型のPITX1の遺伝子もしくはポリペプチド、又は改変もしくは突然変異を含むそれらの断片である。
本発明の特定の目的は、in vitroで試験化合物を本発明に係るPITX1ポリペプチド又はその結合部位含有断片と接触させること、及び該PITX1ポリペプチド又はその断片と結合する該試験化合物の能力を決定することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害に対して活性な化合物を選択する方法にある。好ましくは、該PITX1ポリペプチド又はその断片は、改変型もしくは突然変異型のPITX1ポリペプチド、又は改変もしくは突然変異を含むその断片である。
さらなる特定の実施態様において、方法は、本発明に係るPITX1ポリペプチドを発現している組換え宿主細胞を試験化合物と接触させること、及び該PITX1と結合し、PITX1ポリペプチドの活性をモジュレートする該試験化合物の能力を決定することを含む。好ましくは、該PITX1ポリペプチド又はその断片は、改変型もしくは突然変異型のPITX1ポリペプチド、又は改変もしくは突然変異を含むその断片である。
結合の決定は、試験化合物の標識、標識された参照リガンドとの競合等のような様々な技術により実施され得る。
本発明のさらなる目的は、in vitroで試験化合物を本発明に係るPITX1ポリペプチドと接触させること、及び該PITX1ポリペプチドの活性をモジュレートする該試験化合物の能力を決定することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害に対して活性な化合物を選択する方法にある。好ましくは、該PITX1ポリペプチド又はその断片は、改変型もしくは突然変異型のPITX1ポリペプチド、又は改変もしくは突然変異を含むその断片である。
本発明のさらなる目的は、in vitroで試験化合物を本発明に係るPITX1遺伝子と接触させること、及び該PITX1遺伝子の発現をモジュレートする該試験化合物の能力を決定することを含む、自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害に対して活性な化合物を選択する方法にある。好ましくは、該PITX1遺伝子又はその断片は、改変型もしくは突然変異型のPITX1遺伝子、又は改変もしくは突然変異を含むその断片である。
その他の実施態様において、本発明は、PITX1遺伝子プロモーターの調節下にあるレポーター遺伝子を含むレポーター構築物を含む組換え宿主細胞と試験化合物と接触させること、及びレポーター遺伝子の発現をモジュレートする(例えば、刺激する、又は低下させる)試験化合物を選択することを含む、活性化合物、特に、自閉症、自閉症スペクトル障害、及び自閉症関連障害に対して活性な化合物をスクリーニング、選択、又は同定する方法に関する。好ましくは、該PITX1遺伝子プロモーター又はその断片は、改変型もしくは突然変異型のPITX1遺伝子プロモーター、又は改変もしくは突然変異を含むその断片である。スクリーニングの方法の特定の実施態様において、モジュレーションは阻害である。スクリーニングの方法のもう一つの特定の実施態様において、モジュレーションは活性化である。
上記のスクリーニングアッセイは、プレート、チューブ、ディッシュ、フラスコ等のような任意の適当な装置において実施され得る。典型的には、アッセイは、マルチウェルプレートにおいて実施される。数個の試験化合物が、平行してアッセイされてもよい。さらに、試験化合物は、様々な起源、性質、及び組成のものであり得る。それは、単離された、又は他の物質と混合された、脂質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、低分子等のような任意の有機又は無機の物質であり得る。化合物は、例えば、生成物のコンビナトリアルライブラリーの全部又は一部であり得る。
医薬組成物、療法
本発明のさらなる目的は、(i)PITX1ポリペプチド又はその断片、PITX1ポリペプチドをコードする核酸又はその断片、上記のようなベクター又は組換え宿主細胞、及び(ii)医薬的に許容される担体又は媒体を含む医薬組成物である。
本発明は、機能的な(例えば、野生型の)PITX1ポリペプチド又はそれをコードする核酸を対象に投与することを含む、対象における自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害を治療又は予防する方法にも関する。
本発明のその他の実施態様は、本発明に係るPITX1の遺伝子又はタンパク質の発現又は活性をモジュレートする、好ましくは、活性化又は模倣する化合物を対象に投与することを含む、対象における自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害を治療又は予防する方法にある。該化合物は、PITX1のアゴニスト又はアンタゴニスト、PITX1のアンチセンス又はRNAi、本発明に係るPITX1ポリペプチドに特異的な抗体又はその断片もしくは誘導体であり得る。方法の特定の実施態様において、モジュレーションは阻害である。方法のもう一つの特定の実施態様において、モジュレーションは活性化である。
本発明は、一般に、対象における自閉症、自閉症スペクトル障害、又は自閉症関連障害の治療又は予防のための医薬組成物の製造における、機能的なPITX1ポリペプチド、それをコードする核酸、又は本発明に係るPITX1の遺伝子もしくはタンパク質の発現もしくは活性をモジュレートする化合物の使用にも関する。該化合物は、PITX1のアゴニスト又はアンタゴニスト、PITX1のアンチセンス又はRNAi、本発明に係るPITX1ポリペプチドに特異的な抗体又はその断片もしくは誘導体であり得る。方法の特定の実施態様において、モジュレーションは阻害である。方法のもう一つの特定の実施態様において、モジュレーションは活性化である。
本発明は、自閉症、自閉症スペクトル障害、及び自閉症関連障害と、PITX1遺伝子ローカスとの相関を証明する。従って、本発明は、治療的介入の新規の標的を提供する。対象、特に、改変されたPITX1遺伝子ローカスを保持しているものにおいて、PITX1の活性又は機能を回復させるか又はモジュレートするためには、様々なアプローチが企図され得る。そのような対象への野生型機能の供給は、病理学的な細胞又は生物における、自閉症、自閉症スペクトル障害、及び自閉症関連障害の表現型発現を抑制すると予想される。そのような機能の供給は、遺伝子療法もしくはタンパク質療法を通して、又はPITX1ポリペプチド活性をモジュレートもしくは模倣する化合物(例えば、上記のスクリーニングアッセイにおいて同定されたようなアゴニスト)を投与することによって、達成され得る。
野生型PITX1遺伝子又はその機能的な一部は、上記のようなベクターを使用して、その必要のある対象の細胞へ導入され得る。ベクターは、ウイルスベクター又はプラスミドであり得る。遺伝子は、裸のDNAとしても導入され得る。遺伝子は、レシピエント宿主細胞のゲノムへ組み込まれるか、又は染色体外に維持されるよう提供され得る。組み込みは、ランダムに起こるかもしれないし、又は相同的組換え等を通して正確に定義された部位において起こるかもしれない。特に、PITX1遺伝子の機能的なコピーは、相同的組換えを通して、改変されたバージョンに代わって細胞に挿入され得る。さらなる技術には、遺伝子銃、リポソーム媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション等が含まれる。遺伝子療法は、直接遺伝子注射により、又は機能的なPITX1ポリペプチドを発現するex vivoで調製された遺伝学的に修飾された細胞を投与することにより、達成され得る。
PITX1活性を有するその他の分子(例えば、ペプチド、薬物、PITX1アゴニスト、又は有機化合物)も、対象において機能的なPITX1活性を回復させるため、又は細胞における有害な表現型を抑制するため、使用され得る。
細胞における機能的なPITX1遺伝子機能の回復は、自閉症、自閉症スペクトル障害、もしくは自閉症関連障害の発症を予防するため、又は該疾患の進行を低下させるため、使用され得る。そのような治療は、細胞、特に、有害なアレルを保持している細胞の自閉症関連表現型を抑制し得る。
本発明のさらなる面及び利点は、例示的なものであって、本願の範囲を制限するものと見なされるべきではない以下の実験セクションにおいて開示されるであろう。
遺伝子、ベクター、組換え細胞、及びポリペプチド
本発明のさらなる面は、診断、療法、又はスクリーニングにおいて使用するための新規の生成物にある。これらの生成物には、PITX1ポリペプチド又はその断片をコードする核酸分子、それらを含むベクター、組換え宿主細胞、及び発現されたポリペプチドが含まれる。
特に、本発明は、改変型もしくは突然変異型のPITX1遺伝子、又は該改変もしくは突然変異を含むその断片に関する。本発明は、改変型もしくは突然変異型のPITX1ポリペプチド、又は該改変もしくは突然変異を含むその断片をコードする核酸分子にも関する。該改変又は突然変異は、PITX1活性を修飾する。修飾された活性は、増加していてもよいし、又は減少していてもよい。本発明は、さらに、改変型もしくは突然変異型のPITX1遺伝子、もしくは該改変もしくは突然変異を含むその断片、又は改変型もしくは突然変異型のPITX1ポリペプチド、もしくは該改変もしくは突然変異を含むその断片をコードする核酸分子を含むベクター、組換え宿主細胞、及び発現されたポリペプチドに関する。
本発明のさらなる目的は、本発明に係るPITX1ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターである。ベクターは、クローニングベクター、又はより好ましくは、発現ベクター、即ち、コンピテントな宿主細胞において該ベクターからのPITX1ポリペプチドの発現を引き起こす制御配列を含むベクターであり得る。
これらのベクターは、in vitro、ex vivo、又はin vivoでPITX1ポリペプチドを発現させるため、トランスジェニック又は「ノックアウト」の非ヒト動物を作出するため、核酸を増幅するため、アンチセンスRNAを発現させるため等に使用され得る。
本発明のベクターは、典型的には、制御配列、例えば、プロモーター、ポリA等に動作可能に結合された本発明に係るPITX1コーディング配列を含む。「動作可能に結合された」という用語は、制御配列がコーディング配列の発現(例えば、転写)を引き起こすよう、コーディング配列と制御配列とが機能的に関連付けられていることを示す。ベクターは、さらに、1個又は数個の複製開始点及び/又は選択マーカー含み得る。プロモーター領域は、コーディング配列に対して相同であってもよし、又は異種であってもよく、in vivoの使用を含む、任意の適切な宿主細胞における遍在性の発現、構成性の発現、制御された発現、及び/又は組織特異的な発現を提供し得る。プロモーターの例には、細菌プロモーター(T7、pTAC、Trpプロモーター等)、ウイルスプロモーター(LTR、TK、CMV−IE等)、哺乳動物遺伝子プロモーター(アルブミン、PGK等)等が含まれる。
ベクターは、プラスミド、ウイルス、コスミド、ファージ、BAC、YAC等であり得る。プラスミドベクターは、pBluescript、pUC、pBR等のような商業的に入手可能なベクターから調製され得る。ウイルスベクターは、当技術分野において既知の組み換えDNA技術に従い、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、AAV等から作製され得る。
この点に関して、本発明の特定の目的は、既に定義されたようなPITX1ポリペプチドをコードする組換えウイルスにある。組換えウイルスは、好ましくは、複製欠損型であり、さらに好ましくは、E1及び/又はE4を欠損しているアデノウイルス、Gag、pol、及び/又はenvを欠損しているレトロウイルス、並びにRep及び/又はCapを欠損しているAAVより選択される。そのような組換えウイルスは、パッケージング細胞をトランスフェクトすること、又はヘルパープラスミドもしくはウイルスによる一過性トランスフェクションのような、当技術分野において既知の技術により作製され得る。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例には、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞等が含まれる。そのような複製欠損型の組換えウイルスを作製するための詳細なプロトコルは、例えば、国際特許公報第95/14785号、国際特許公報第96/22378号、米国特許第5,882,877号、米国特許第6,013,516号、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号、及び国際特許公報第94/19478号に見出され得る。
本発明のさらなる目的は、組換えPITX1遺伝子又は既に定義されたようなベクターを含む組換え宿主細胞にある。適当な宿主細胞には、非制限的に、(細菌のような)原核細胞及び(酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等のような)真核細胞が含まれる。特定の例には、E.コリ(coli)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)又はサッカロミセス(Saccharomyces)の酵母、哺乳動物細胞系(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞等)が含まれ、(例えば、繊維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞等から作製された)哺乳動物細胞の初代培養物又は確立された培養物も含まれる。
本発明は、(i)in vitro又はex vivoで、コンピテントな宿主細胞へ、上記のような組換え核酸又はベクターを導入すること、(ii)in vitro又はex vivoで入手された組換え宿主細胞を培養すること、及び(iii)場合により、PITX1ポリペプチドを発現する細胞を選択することを含む、本発明に係るPITX1ポリペプチドを発現する組換え宿主細胞を作製する方法にも関する。
そのような組換え宿主細胞は、PITX1ポリペプチドの作製のために使用され得、下記のような活性分子のスクリーニングのためにも使用され得る。そのような細胞は、自閉症を研究するためのモデル系としても使用され得る。これらの細胞は、任意の適切な培養装置(プレート、フラスコ、ディッシュ、チューブ、パウチ等)において、DMEM、RPMI、HAM等のような適当な培養培地で維持され得る。
実施例
1.第5染色体感受性遺伝子を同定するためのGenomeHIPプラットフォーム
自閉症感受性遺伝子の迅速な同定を可能にするために、GenomeHIPプラットフォームを適用した。簡単に説明すると、その技術は、血縁関係のある個体のDNAから対を形成させることからなる。各DNAは、その同定を可能にする特異的な標識によりマーキングされる。次いで、2つのDNAの間でハイブリッドが形成させられる。次いで、多工程手法において2つのDNAから全ての同祖的(IBD)断片を選択する特定の過程(WO00/53802)が適用される。次いで、残存するIBDについて濃縮されたDNAが、染色体上のIBD画分の位置決めを可能にするBACクローン由来のDNAマイクロアレイに対してスコア化される。
多くの異なる家族におけるこの過程の適用は、各家族からの各対についてのIBD画分のマトリックスをもたらす。次いで、統計分析が、試験された全ての家族の間で共有されている最小IBD領域を計算する。有意な結果(p値)は、陽性領域の目的の形質(ここでは自閉症)との連鎖の証拠である。連鎖範囲は、有意なp値を示す2つの最も遠位のクローンにより画定され得る。
本研究においては、(ADI−Rにより定義されたような)厳密な自閉症に一致した米国の家族114組(114の独立した同胞対)を、GenomeHIP過程に供した。次いで、得られたIBDについて濃縮されたDNA画分を、Cy5蛍光色素により標識し、1.2メガ塩基対の平均間隔で全ヒトゲノムをカバーするBACクローン2263個からなるDNAアレイに対してハイブリダイズさせた。Cy3により標識された非選択DNAを、シグナル値を規準化し、各クローンの比率を算出するために使用した。次いで、各クローン及び対についてIBD状態を決定するため、比率結果のクラスタリングを実施した。
この手法を適用することにより、自閉症との連鎖の有意な証拠(p<6.40E−07)を示した第5染色体上の領域(塩基134 095 595〜135 593 528)において、およそ1.5メガ塩基にわたる数個のBACクローンが同定された(BACA19ZB03、BACA16ZG06、BACA4ZA08、及びBACA11ZF12)。
表2:PITX1ローカスにおける第5染色体の連鎖結果:連鎖の証拠を有する4個のBACクローンに対応する領域が示される。クローンの開始及び終止の位置は、染色体の開始に関するNCBI Build34に基づくゲノム位置に相当する(p−ter)。
2.第5染色体上の自閉症感受性遺伝子の同定
連鎖した染色体領域における上記の1.5メガ塩基のスクリーニングにより、本発明者らは、下垂体ホメオボックス転写因子1(PITX1)遺伝子を、自閉症及び関連表現型の候補として同定した。この遺伝子は、実際、既に概説されたクローンにより画定された連鎖の証拠を有する重要な範囲に存在する。
PITX1遺伝子は、ビコイド(bicoid)関連脊椎動物ホメオボックス遺伝子の拡大しつつあるファミリーであるRIEG/PITXホメオボックスファミリーのメンバーをコードする。このファミリーのメンバーは、器官、特に脳及び顔の発達、並びに左右非対称性に関与している。Lamonerieら(1996)は、下垂体におけるプロオピオメラノコルチン遺伝子(POMC)の転写を活性化する能力に基づき、(彼らによってPtx1と名付けられた)マウス転写因子遺伝子をクローニングし特徴決定した。以下の6つのホルモンが、POMC遺伝子に由来する:ACTH、リポトロピン、アルファ−MSH、ベータ−MSH、エンドルフィン、及び他のもう一つ。ACTH及びベータ−リポトロピン(ベータ−LPH)は、大きな前駆ペプチドに由来する。これらのホルモンは、各々、別個の生物学的活性を有するより小さなペプチドを含むことが既知である:アルファ−メラニン細胞刺激ホルモン(アルファ−MSH)及びコルチコトロピン様中葉ペプチド(CLIP)は、ACTHから形成され;ガンマ−LPH及びベータ−エンドルフィンは、ベータ−LPHのペプチド成分である。ベータ−MSHはガンマ−LPH内に含有されている。
PTX1、PTX2、及びPTX3の遺伝子は、ホメオドメイン因子のペアード様(paired-like)クラス内の新規の転写因子のファミリー、PTXサブファミリーを定義する。マウスにおいて、Ptx1及びPtx2の遺伝子発現は、下垂体原基のエリアに検出されており、ラトケ嚢及び成体下垂体において、発達の間中、維持されている。Pellegrini-Bouillerら(1999)は、正常ヒト下垂体及び種々の型のヒト下垂体腺腫におけるPTXl、PTX2、及びPTX3の遺伝子の発現を証明した。
Tremblayら(1998)は、大部分の下垂体ホルモンコーディング遺伝子のプロモーターが、Ptx1により活性化されることを報告し、従って、Ptx1は、下垂体特異的な転写の一般的な制御剤であるようである。さらに、Ptx1の作用は、プロモーター特異的な発現を賦与する細胞限定的な転写因子により協力される。alphaGSU遺伝子を発現するalphaT3−1細胞において実施されたアンチセンスRNA実験は、内因性のalphaGSUの発現が、Ptx1に対して高度に依存性であり、その他の多くの遺伝子は影響を受けないことを示した。発現のためPtx1に対して高度に依存性であることが見出されている他の唯一の遺伝子は、Lim3/Lhx3転写因子の遺伝子であった。従って、Ptx1は、下垂体特異的、系統特異的、かつプロモーター特異的な転写を指図するためコンビナトリアルコード(combinatorial code)で作動するようである制御剤のカスケードにおいてLim3/Lhx3の上流にある。
Shapiroら(2004)は、PITX1遺伝子発現の異なるパターン及び腹びれ解剖における機能的な違いをもたらす、トゲウオ科の魚におけるPITX1の制御領域に天然に存在するバリアントを記載した。彼らは、PITX1のようなホメオボックス遺伝子の制御領域が、多数の遠く離れた部位に、遺伝子からの数百キロ塩基も離れて見出され得ることを強調している。
Szetoら(1999)は、Pitx1欠失マウスが、後肢の形態形成及び成長に著しい異常を示すことを見出した。Pitx1にターゲティングされた突然変異に関してホモ接合性のマウスは、直ちに、又は出生直後に死亡する。少数のPitx1ヌルマウスは、E11.5の後、胚致死を示す。Pitx1ヌルマウスの後肢は、有意に短い。骨盤のサイズも、著しく低下する。甲状腺刺激ホルモンベータ、黄体形成ホルモンベータ、及び共通の糖タンパク質アルファサブユニットの発現の調査は、性腺刺激ホルモン産生細胞(gonadotropes)及び甲状腺刺激ホルモン産生細胞(thyrotropes)の数、並びに個々の細胞内の黄体形成ホルモンベータ及び甲状腺刺激ホルモンベータの転写物及びタンパク質のレベルの両方が減衰することを示唆している。興味深いことに、TSHベータ転写物のレベルは、TSHベータ遺伝子活性化のためにPit−1を必要としない吻側尖端部の甲状腺刺激ホルモン産生細胞集団において最も重度に低下する。成長ホルモン産生細胞(somatotropes)における成長ホルモン発現は不変であるようであり、中葉のメラニン細胞刺激ホルモン産生細胞(melanotropes)におけるPOMC遺伝子の数及び発現レベルは、E15.5〜P0の間、正常であるようである。下垂体前葉の副腎皮質刺激ホルモン産生細胞(corticotropes)においては、ACTH転写物の数及びペプチドレベルの両方のレベルが一貫して増加していた。
Chamberlain及びHerman(1990)は、自閉症個体の亜群が、下垂体におけるプロオピオメラノコルチン(POMC)ペプチドの対応する分泌過少、並びに視床下部におけるオピオイドペプチド及びセロトニン(5−HT)の分泌過多を含む、生化学的効果のカスケードを生じる、松果体メラトニンの分泌過多を有しているかもしれないという新規の生化学的モデルを提唱した。自閉症は、脳のPOMC及び5−HT系をモジュレートする松果体−視床下部−下垂体−副腎軸における機能障害を反映しているのかもしれない。このモデルは、脳5−HT及びオピオイドペプチドの分泌過多を自閉症に結びつけている多数の臨床調査と一致している。
Curinら(2003)は、自閉症を有する個体が、対照の年齢及び性別をマッチングさせた対象より、有意に低いコルチゾールの血清濃度(p<10(−6))及び有意に高いACTHの濃度(p=0.002)を有することを見出した。また、てんかんを有する自閉症患者におけるプロラクチン濃度は、正常対象と比較して、有意に高かった。観察されたホルモンの変化は、自閉症を有する個体における視床下部−下垂体−副腎軸の機能障害と一致している。
3 関連研究
伝達不平衡試験(TDT)を使用して、問題としている特異的な表現型(ここでは自閉症)と、遺伝学的マーカーアレル又は特異的なマーカーアレルを含有しているハプロタイプとの間の関連に関して試験するため、連鎖研究のために使用したのと同じ家族を使用した。TDTは、試験された試料における集団層化問題に対して非感受性であるため、強力な関連試験である。簡単に説明すると、ヘテロ接合性の親からの、影響を受けた子孫へのアレルの分離が、試験される。伝達されなかったアレルと比較された、影響を受けた子孫に伝達されたアレルの部分が、ランダム分布の下で予想される比率と比較される。期待値に対するアレル伝達の有意な過剰は、それぞれのアレル又はハプロタイプの、研究された自閉症表現型との関連の証拠である。
代替的な試験は、影響されていない個体の誤分類が存在する場合ですら、より強力なままである家系不平衡試験(PDT)である(Martin et al.2000)。シミュレーションは、データが、拡大された家族情報のない独立した家族からなる場合ですら、PDTの使用には利点があり得ることを示唆している。
この分析の結果は、PITX1遺伝子のある種のアレルが、自閉症と陽性に関連しており、従って、疾患に対する感受性を増加させることを示している。試験された集団において、SNP6のアレルGは、TDT(p値=0.028)及びPDT(p値=0.0044)により決定されたように、自閉症と相関している。対照的に、SNP6のアレルTは、自閉症個体へと有意に過少伝達されており、このことは、このアレルが疾患からの防御を補助することを示している。
自閉症患者へのアレルの伝達の例は、表3に与えられる。
さらに、全てのSNPの相を同定するため、SNP1、SNP3、SNP4、SNP6、SNP7、SNP21、及びSNP22に関してハプロタイプを構築した。
試験された集団におけるこの分析の結果は、全て、SNP6におけるアレルGの存在を特徴としているある種のハプロタイプが、自閉症に強く関連しており、アレルGを欠くある種のハプロタイプは自閉症患者へと優先的に非伝達されることを示した。一例は、SNP3−SNP6−SNP22についてのハプロタイプA−G−A、p=3.68×10−5である。SNP6にアレルGではなくアレルTを保持しているハプロタイプは、自閉症対象において過少提示される有意な証拠を示す。一例は、SNP3−SNP6−SNP22についてのハプロタイプA−T−A、p=0.000218である。
ある種のハプロタイプの優先的な伝達は、オッズ比の計算によっても証明された。1より大きいオッズ比は、試験された遺伝学的なアレルが、疾患に関連しており、従って、そのアレルが疾患に対する感受性を増加させることを意味する。オッズ比が1未満である場合には、陰性の関連が存在し、それは、試験された遺伝学的なアレルが、疾患からの防御を補助することを示す。例えば、SNP3−SNP6−SNP22についてのハプロタイプA−G−Gの伝達についてのオッズ比は、4.32であり、p=3.62×10−5である。
自閉症患者へのSNP6の優先的な伝達及び非伝達を有するハプロタイプの例は、表4に与えられる。
情報内容を増加させ、関連の範囲をより限定するため、PITX1遺伝子におけるSNP密度を、およそ2.5kbごとに1個のSNPにまで増加させた。数個の付加的なマーカーは、PITX1遺伝子における陽性の単一点結果を示した。最も強い関連は、偶発的に予想されるより高頻度に自閉症患者に伝達されるアレル1を有するマーカーSNP33に関して観察され、アレル2は自閉症患者に優先的に非伝達された(p=0.001674)。興味深いことに、このマーカーは、以前の分析において関連していることが既に見出されたSNP6と同一である。自閉症患者に伝達されたアレル及び非伝達されたアレルの例は、表5に示される。
上記のような連鎖分析のため使用された完全な試料セットにおいても、相を決定するためにハプロタイプを構築し、関連に関して分析した。試験された集団におけるこの分析の結果は、ある種のハプロタイプが自閉症に強く関連していることを示したが、それらは、全て、それぞれマーカーSNP25におけるアレル2、マーカーSNP27におけるアレル1、マーカーSNP29におけるアレル1、マーカーSNP31におけるアレル1、又はマーカーSNP33におけるアレル1の存在を特徴としている。最も有意な結果は、2.24×10−03のp値で、マーカーSNP24、SNP25、及びSNP40についてのハプロタイプ1−2−1で入手された。一方、それぞれ、マーカーSNP25におけるアレル1、マーカーSNP27におけるアレル2、又はマーカーSNP40におけるアレル2を特徴とするある種のハプロタイプは、自閉症患者に優先的に伝達されない。
完全なデータセットからの自閉症患者への優先的な伝達及び非伝達を有するハプロタイプの例は、表6に与えられる。
この家族セットは、米国の集団内に代表される種々の民族群からの試料を含んでいる。集団層化効果を調整するため、ハプロタイプ分析を各民族群について繰り返した。有意な関連が、数個のハプロタイプに関して、コーカサス人集団において見出された。自閉症患者により多く伝達されるハプロタイプの一例は、マーカーSNP23、SNP25、及びSNP33についてのハプロタイプ1−2−1であり(p=4.44×10−3)、マーカーSNP25、SNP29、及びSNP31についてのハプロタイプ1−2−2は自閉症患者に優先的に非伝達されった(p=0.006)。
コーカサス人データセットからの自閉症患者への優先的な伝達及び非伝達を有するハプロタイプの例は、表7に与えられる。
3人からなる家族167組の第2の独立したセット(セット2)を、上記のような連鎖の証拠を提供した家族(セット1)において観察された関連の複製に関して研究した。
この第2の家族セット(セット2)も、セット1と同様に、米国の集団内に代表される種々の民族群からの試料を含むため、可能性のある集団層化効果を調整するために各民族群について別々にハプロタイプ分析を実施した。マーカーSNP25、SNP27、SNP29、SNP31、及びSNP33についてのアレル2、1、1、1、又は1の存在を特徴とする数個のハプロタイプについて、有意な関連が、コーカサス人集団において見出された。自閉症患者により多く伝達されるハプロタイプの一例は、マーカーSNP25、SNP27、及びSNP32についてのハプロタイプ2−1−2(p=5.93×10−3)であり、マーカーSNP25、SNP26、及びSNP27についてのハプロタイプ2−2−1は、より高頻度に自閉症患者に非伝達された(p=0.04)。
家族セット2におけるコーカサス人データセットからの自閉症患者への優先的な伝達及び非伝達を有するハプロタイプの例は、表8に与えられる。
要約すると、コーカサス人におけるハプロタイプ分析は、以下の表9に示されるように、セット2における、マーカーSNP25、SNP27、SNP29、SNP31、及びSNP33についてのハプロタイプ2−1−1−1−1の陽性の複製を示した(セット1においてはp=3.2×10−3、セット2においてはp=6.85×10−3)。
4.ヌクレオチド変化の同定
血縁関係にない影響を受けた個体96人を、突然変異スクリーンに含めた。PITX1遺伝子のコーディング領域を増幅するため、プライマーを設計した。プライマーの配列は、下記表10に提供される:
得られた増幅産物を、遺伝子の中の稀なヌクレオチド変化(突然変異)及び多形(アレル頻度>1%)を同定するため、ダイターミネーター配列決定化学を使用して、一方向に直接配列決定した。
遺伝子のコーディング領域+スプライス部位近傍の隣接するイントロン領域において、全部で10個のヌクレオチド変化が検出された(位置については、表11を参照のこと)。表11に示されるように、これらのうちの2つは、それぞれのコドンにおけるアミノ酸の変化をもたらした。
非翻訳領域において、2つの欠失MUT1及びMUT9が同定された。MUT1は5’UTRに検出された。2つの点突然変異MUT2及びMUT3も、5’UTRに検出された。これらの突然変異は、PITX1 RNAの転写レベルに対して効果を及ぼし得る。MUT9は3’UTRに発見され、RNAの安定性に影響を与えるかもしれない。
タンパク質の機能に対して効果を及ぼし得る2つの非同義の突然変異MUT6及びMUT7も見出された。