JP5776749B2 - セメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生コンクリート工場などから発生するコンクリートスラッジを有効利用したセメント系固化材に関し、特に固化材スラリーの流動性を低下させず、また固化処理土の強度が良好なセメント系固化材に関する。
コンクリートスラッジ(以下、「スラッジ」という)は、生コンクリート工場、コンクリート製品工場などで副生する生コンクリートの洗い残渣、すなわち主としてセメントペーストおよび細骨材微粒部分からなる泥状の産業廃棄物である。これをセメント等の添加材として有効利用する場合、特に多量の水分が含まれることから、固形分の有効利用に際しては、品質の問題に加えて、輸送・運搬や処分時の法規制、経済性などの制約を解決する必要がある。特に、セメントの水和に伴う流動性の低下や強度低下の品質問題を解決しなければならない。
このような問題を解決する方法として、特許文献1には、スラッジを濾過脱水(フィルタープレス)し、加熱乾燥したのち、振動微粉砕してセメント未水和物を表面に出現させたセメント成分を含むスラッジ微粉を得る方法が開示されている。また、特許文献2には、スラッジ中のセメント水和物は吸水率が高いため、そのまま増量材として用いるとコンクリートのワーカビリチーが低下することから、スラッジの微粉部分を炭酸化する方法が開示されている。さらに、特許文献3には、スラッジの低い脱水乾燥効率と得られる粉粒体の粒度の限界を改善するために、風力粉砕する前に乾燥スラッジを予め破砕しておく方法が開示されている。
特開昭61−209059号公報 特開平5−238790号公報 特開2001−18000号公報
このような方法で得られたスラッジ乾燥粉は、コンクリートに用いられるセメントの増量材などに用いられる。しかし、たとえば、特許文献1に記載された方法により得られたスラッジを増量材として使用する場合、粘り気や材料の分離抵抗が高いものの、スラッジを砂の一部として約7〜10質量%の少量使用する場合にはコンクリートの圧縮強度を向上できる。しかし、セメントの一部として約23質量%もの比較的大量に使用する場合は圧縮強度を減少させてしまう。また、特許文献2に開示された方法により得られたスラッジを増量材として使用したコンクリートは、それを使用しないコンクリート製品と比較して遜色のない品質が得られているが、炭酸化処理は煩雑で経済的でない。また、これらのスラッジを土壌の安定化処理用のセメント系固化材に添加する場合、使用状況が異なることから、スラッジの性状によっては、それを添加した固化材スラリーの流動性の低下や固化処理土の強度低下を招く場合があり、あるいは処理工程が煩雑であり経済的でないことから、その有効利用が制限される場合がある。
本発明は、スラッジを有効利用するとともに、スラリーの流動性の低下が少なく、且つ、性状の異なる各種の土壌に対して強度低下が少ないセメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく種々検討した結果、スラッジ中のセメントを適度に水和させた後、脱水・加熱し、水和物の一部を脱水させたスラッジ乾燥粉を所定量添加したセメント系固化材が、固化材スラリーとしての適正な流動性を維持しつつ、性状の異なる各種の土壌に対し、十分な強度発現性を有することを知見した。また、そのスラッジ乾燥粉を得るための適正条件を見出した。すなわち、スラッジ中のセメントの水和の程度を、熱重量分析(TG)における400〜500℃における質量減少量と600〜800℃における質量減少量とを指標として表し、これらを制御することで、本発明の目的を達成することができることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、本発明の目的に適うスラッジの指標として、窒素気流中、昇温速度10℃/分で25℃から1000℃まで測定した熱重量分析(TG)における400〜500℃での質量減少量が0.5〜4.5%、600〜800℃での質量減少量が3.5〜8.5%であり、かつ、酸不溶残分(insol)を3〜10質量%、酸化カルシウムを45〜60質量%含み、ブレーン比表面積が5000〜10000cm/gであるセメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉である。本発明は、コンクリートスラッジを脱水し、加熱乾燥し、次いで粉砕して、コンクリートスラッジ加熱乾燥粉を得る工程を含み、窒素気流中、昇温速度10℃/分で25℃から1000℃まで測定した熱重量分析(TG)における400〜500℃での質量減少量が0.5〜4.5質量%、600〜800℃での質量減少量が3.5〜8.5質量%であり、かつ酸不溶残分(insol)を3〜10質量%、および酸化カルシウムを45〜60質量%含み、ブレーン比表面積が5000〜10000cm /gであるコンクリートスラッジ加熱乾燥粉を得る、セメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉の製造方法である。
本発明によれば、従来、その多くが廃棄処分されていたスラッジをセメント系固化材の添加材として好適に有効利用することができる。また、本発明のセメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉を用いたセメント系固化材は、各種の軟弱地盤の安定処理に好適に使用することができる。
スラッジの熱重量分析(TG)の減量曲線を示す図である。 固化材スラリーの見かけ粘度に及ぼすスラッジ加熱乾燥粉の添加量の影響を示す図である。 スラッジ加熱乾燥粉を添加した固化材による固化処理土の一軸圧縮強さに及ぼすスラッジ加熱乾燥粉の添加量の影響を示す図である。
以下に、本発明のセメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉およびその製造方法について詳細に説明する。
本発明で使用するスラッジとは、生コンクリート工場、コンクリート製品工場などで発生する汚泥状物質である。主にアジテータ車のドラム内部に付着したモルタルや残コンクリート、戻りコンクリートの洗い残渣であり、セメント水和物や未水和物を含有する。スラッジ中の固形分は、セメントおよび高炉スラグのほか、フライアッシュや石灰石粉などの混和材が50〜95質量%含有され、残部が細骨材の微粒部からなる。このうち、セメント水和物はケイ酸カルシウム水和物(C−S−H)、水酸化カルシウムおよびカルシウムアルミノサルフェート水和物などである。また、通常、スラッジ水にはコンクリート用各種化学混和剤が溶解しているが、その存在が特に限定されるものではない。
このようなスラッジを後述のように脱水し、加熱乾燥、解砕することにより、本発明のスラッジ乾燥粉が得られる。本発明のスラッジ乾燥粉中の水和状態を示す指標として、熱重量分析(TG)における400〜500℃での質量減少量が0.5〜4.5質量%、600〜800℃での質量減少量が3.5〜8.5質量%であり、好ましくは、400〜500℃での質量減少量が0.6〜4.0質量%、600〜800℃での質量減少量が4.0〜8.0質量%である。スラッジがこの範囲の質量減量値を示すとき、セメント水和が適切な状態にあること、およびその一部が脱水された化合物の含有量を示す指標となる。すなわち、熱重量分析(TG)において、400〜500℃では主にスラッジ中のセメント水和物であるCa(OH)の分解が生じる。600〜800℃では、主にCaCOの分解が生じる。400〜500℃での質量減少量が0.5質量%未満、600〜800℃での質量減少量が3.5質量%未満では、スラッジを固化材に添加した場合、固化処理土の強度発現が十分でなく、一方、400〜500℃での質量減少量が4.5質量%を超え、600〜800℃での質量減少量が8.5質量%を超えると、スラッジを添加した固化材の流動性の低下が大きくなるとともに、固化処理土の強度も低下するため好ましくない。スラッジの加熱乾燥粉の強熱減量をこの範囲に制御するためには、後述のように、スラッジの接水時間や乾燥温度を適切に制御する必要がある。
本発明のスラッジ乾燥粉中の酸不溶残分(insol)は3〜10質量%であり、好ましくは、5〜8質量%である。酸不溶残分が3質量%未満では、固化材スラリーの流動性の低下が大きく、一方、10質量%を超えると固化材の強度発現性が低下するため好ましくない。スラッジの加熱乾燥粉の酸不溶残分をこの範囲に制御するには、コンクリートに用いるセメント鉱物組成の選定や洗浄対象となるコンクリートの単位セメント量を管理することで制御することができる。
また、本発明のスラッジ加熱乾燥粉中の酸化カルシウムは45〜60質量%であり、好ましくは、48〜55質量%程度である。酸化カルシウムの含有量が45質量%未満であると、相対的にセメント成分の含有量が少なく、スラッジ加熱乾燥粉を添加した固化材の強度発現性が低下する。また、60質量%を超えると、固化材スラリーの流動性の低下が大きくなることから好ましくない。スラッジ加熱乾燥粉中の酸化カルシウムをこの範囲に制御するには、酸不溶残分と同様にして制御する。
さらに、本発明のスラッジ加熱乾燥粉のブレーン比表面積は5000〜10000cm/gであり、より好ましくは6000〜9000cm/gである。ブレーン比表面積が5000cm/g未満では、スラッジ加熱乾燥粉を添加した固化材の強度発現性が低下する。また、10000cm/gを超えると、スラッジ加熱乾燥粉を添加した固化材のスラリーの流動性の低下が大きく好ましくない。スラッジ加熱乾燥粉のブレーン比表面積をこの範囲に制御するには、セメントの接水時間のほか、スラッジの分級、加熱・乾燥時の粉砕時間などが挙げられる。
本発明のスラッジ加熱乾燥粉は、セメント系固化材に2〜10質量%、好ましくは3〜7質量%添加する。スラッジ加熱乾燥粉の添加量が2質量%未満である場合、スラッジの有効利用の観点から十分でなく、10質量%を超えて添加した場合、固化材スラリーの流動性が低下するかあるいは固化強度の低下が過大となる。
本発明のスラッジ加熱乾燥粉を2〜10質量%含む固化材スラリーは、水/固化材の質量比が0.4〜1.2、好ましくは0.5〜1.0で用いられる。0.4未満であるとスラリー施工に必要な流動性が得られず、1.2以上であると材料分離や固化処理土の強度低下が問題となる場合がある。
スラッジ加熱乾燥粉を上記の所定量添加するセメント系固化材は特に制限されないが、ポルトランドセメント80〜95質量%、残部が石膏類よりなるもの、または、ポルトランドセメント40〜60質量%、高炉スラグ20〜40質量%、残部が石膏類よりなるものが好適である。特に、高炉スラグを配合した後者の固化材は、六価クロムの溶出量を少なくすることができるのでより好ましい。ポルトランドセメントとしては、JIS R 5210−2003ポルトランドセメントに規定の各種セメントを好適に使用することができる。高炉スラグはブレーン比表面積で3000〜8000cm/g程度のものが望ましい。石膏としては、排脱二水石膏、天然石膏、ふっ酸製造時の副生の無水石膏等が好適に用いられ、その適正な粒度はブレーン比表面積で3000〜6000cm/g程度である。
本発明のスラッジ加熱乾燥粉は次のような方法で好適に製造することができる。すなわち、まず、スラッジを脱水する。脱水方法としては、公知のフィルタープレス、ドラムプレス、遠心脱水装置などを用いることができる。なかでもフィルタープレスの使用が、水分低下率の面から好ましい。
スラッジに含まれるセメント成分は含水状態において水和が継続的に進行する。この水和物は、スラッジの加熱乾燥過程で、一部が脱水する。この脱水物は、多量の水分を速やかに捕捉するとともに、それが添加されるセメント系固化材中のセメントの速やかな水和を促す可能性があり、水分の適正量を超過すると強度低下に繋がる。このため、スラッジの加熱・乾燥までの接水時間を、JIS R 5201 8.3.2(1)に示されるセメントの凝結試験における始発時間〜24時間とするのが望ましい。なお、凝結試験における始発時間とは、スラッジ中に含まれるコンクリートに使用したセメントの凝結試験における開始時間を意味し、セメントの種類、品質で異なる。
スラッジの加熱方法としては、従来から公知のロータリーキルン、熱風循環式乾燥器などを用いることができる。なかでも、ロータリーキルンの使用が処理効率の点で好ましい。乾燥したスラッジは同時に解砕して粉状化する。乾燥温度は600℃〜800℃で処理する。
以下、本発明の実施例と比較例とを対比参照しながら、本発明を具体的に説明する。
使用したスラッジ加熱乾燥粉の熱重量分析(TG)試験結果、JIS R5201−1997、JIS R5202−1999による分析値を表1に示す。図1には、熱重量分析(TG)の減量曲線を示した。ここでは、セメントの接水時間を変えて、異なる熱重量分析(TG)の減量曲線を有するスラッジ乾燥粉を調製した。熱重量分析(TG)はセイコーインスツルメンツ(株)製 TG−DTA320型を用い、窒素気流中、昇温速度10℃/分で25℃から1000℃まで測定した
これらのスラッジ加熱乾燥粉を、表3に示す添加量で固化材に添加・混合し、供試固化材を調製した。なお、固化材は、表2に示す割合で、普通ポルトランドセメント、高炉スラグおよびII型無水石膏を配合したものである。
調製した固化材を水/固化材比0.6の固化材スラリーとし、Haake社製 Rotovisco RV−1を用いてせん断速度とせん断応力との関係を測定し、せん断速度200S−1、400S−1および600S−1における見掛け粘度を測定した。その結果を表3および図2に示す。表3には、各試験結果について、スラッジ加熱乾燥粉無添加(0質量%)の見かけ粘度を100%とした場合の比率を併記した。
固化強度試験は次の方法によった。すなわち、所定割合に配合した固化材を表4に示す3種類の試料土に所定の配合で添加し、ソイルミキサーで3分間混合した。一軸圧縮試験の供試体は、セメント協会標準試験方法JCAS L−01:2006「セメント系固化材による改良体の強さ試験方法」に準じ、径5cm×長さ10cmとした。一軸圧縮試験は、JIS A 1216−1998「土の一軸圧縮試験方法」に準じた。材齢は7日および28日とした。その結果を表5、図3に示す。表5には、各試験結果について、スラッジ加熱乾燥粉無添加(0質量%)の固化処理土の強度を100%とした場合の強度比率を併記した。
スラリーの流動性試験(見掛け粘度試験)の結果より、本発明のスラッジ加熱乾燥粉を添加した固化材のスラリー(スラッジA、Cを3、5、7質量%添加)の見かけ粘度の平均値は、参考例1として示したスラッジ乾燥粉無添加の見かけ粘度比率を100%とした場合、せん断速度Gp*=400S−1で102〜114%にとどまり施工上の大きな問題は生じない(実施例1〜6)。一方、乾燥までの接水時間が32時間と長く、それによりセメントの水和が進み過ぎ熱重量分析における各温度域での質量減少が大きくなり、併せてブレーン比表面積も本発明の範囲を逸脱するスラッジDを3、5、7質量%添加した固化材スラリーの見かけ粘度比率の平均値は、約130%と高く、施工上の支障となることがわかる(比較例1〜3)。
また、固化試験結果より、本発明のスラッジ加熱乾燥粉を添加した固化材(スラッジA、Cを3、5、7質量%添加)による固化処理土の強度は、参考例1として示したスラッジ加熱乾燥粉無添加に比較して、やや増加もしくは低下するものの、強度比の平均値で95〜105%の範囲であり、実質的にスラッジ加熱乾燥粉無添加と大差ないことがわかる(実施例7〜24、参考例2〜4)。一方、上記のスラッジDを3、5、7質量%まで添加した固化材による固化処理土の強度は、平均値で参考例1の約92質量%に低下する場合があり、この場合は固化材量を増加しなければならないことかわかる(比較例4〜9、参考例2〜4)。

Claims (6)

  1. 窒素気流中、昇温速度10℃/分で25℃から1000℃まで測定した熱重量分析(TG)における400〜500℃での質量減少量が0.5〜4.5質量%、600〜800℃での質量減少量が3.5〜8.5質量%であり、かつ酸不溶残分(insol)を3〜10質量%、および酸化カルシウムを45〜60質量%含み、ブレーン比表面積が5000〜10000cm/gであるセメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉。
  2. 窒素気流中、昇温速度10℃/分で25℃から1000℃まで測定した熱重量分析(TG)における400〜500℃での質量減少量が0.6〜4.0質量%、600〜800℃での質量減少量が4.0〜8.0質量%である、請求項1記載のセメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉。
  3. 酸不溶残分(insol)が5〜8質量%である、請求項1又は2記載のセメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉。
  4. コンクリートスラッジを脱水し、加熱乾燥し、次いで粉砕してコンクリートスラッジ加熱乾燥粉を得る工程を含み、
    窒素気流中、昇温速度10℃/分で25℃から1000℃まで測定した熱重量分析(TG)における400〜500℃での質量減少量が0.5〜4.5質量%、600〜800℃での質量減少量が3.5〜8.5質量%であり、かつ酸不溶残分(insol)を3〜10質量%、および酸化カルシウムを45〜60質量%含み、ブレーン比表面積が5000〜10000cm /gであるコンクリートスラッジ加熱乾燥粉を得る、セメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉の製造方法。
  5. コンクリートスラッジを脱水後、加熱乾燥までのコンクリートスラッジに含まれるセメント成分の接水時間が、JIS R 5201 8.3.2(1)に示されるセメントの凝結試験における始発時間〜24時間である、請求項4記載のセメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉の製造方法。
  6. 加熱乾燥温度が600〜800℃である、請求項4又は5記載のセメント系固化材用コンクリートスラッジ加熱乾燥粉の製造方法。
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