この発明で対象とする車両は、エンジン(E/G)1と、トルクコンバータ2と、発進クラッチ3とを備えている。これを模式的に示せば図7のとおりであり、ここに示す例では、更に変速機(T/M))4を備え、その変速機4から終減速機5を介して左右の駆動輪6にトルクを出力するように構成されている。そのエンジン1は要は燃料を燃焼して動力を出力する内燃機関であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいはガスエンジンなどであり、最も典型的な例は吸入空気量によって出力トルクが変化するガソリンエンジンである。また、このエンジン1には、図示しないスタータモータが付設されており、燃料の供給を一旦止めて回転を停止させた後にスタータモータによってモータリングすることによりエンジン1を再始動させることができる。
トルクコンバータ2は従来知られているものと同様の構成のものであって、エンジン1によって回転させられるポンプインペラー7と、ポンプインペラー7によって生じさせられたオイルの螺旋流を受けて回転するタービン8と、これらポンプインペラー7とタービン8との間に、ワンウェイクラッチを介して所定の固定部(それぞれ図示せず)に取り付けられて配置されたステータ9とを備えている。したがって、コンバータ領域においてはトルクの増幅作用が生じるので、発進クラッチ3に対する入力トルクがトルクコンバータ2における速度比もしくはトルク比に応じて変化することになる。
発進クラッチ3は、エンジン1と変速機4との間でトルクを伝達し、またそのトルクの伝達を遮断する係合機構であって、伝達トルク容量を変化させることができるように構成され、その例は摩擦クラッチであり、油圧によって伝達トルク容量が制御される多板クラッチが一般的である。さらに、変速機4は、変速比がステップ的に変化する有段式の自動変速機、あるいは変速比が連続的に変化する無段変速機であり、前記発進クラッチ3はこの変速機4に組み込まれていてもよい。
この発明で対象とすることのできる車両は、上述したいわゆるパワートレーンを備えており、そのエンジン1を所定の実行条件の成立によって一時的に停止させ、また所定の復帰条件の成立によってエンジン1を再始動させるいわゆるストップ・アンド・スタート制御(S&S制御)を行うように構成されている。このS&S制御には、車両が停止していることによりエンジン1を停止させる停止S&S制御と、アクセルペダルを戻しかつブレーキペダルを踏み込んで停止に向けて減速している場合にエンジン1を自動停止させる減速S&S制御と、ある程度以上の車速で走行している際にアクセルペダルが戻されることによりエンジン1を自動停止させるフリーランS&S制御とがある。その実行条件と復帰条件とを説明すると、停止S&S制御は、車速が「0」でかつブレーキペダルが踏み込まれるブレーキ・オンで実行され、ブレーキペダルが戻されるブレーキ・オフで復帰し、エンジン1が始動させられる。減速S&S制御は、所定の車速以下の車速で走行している場合にアクセルペダルが戻されるアクセル・オフ、かつブレーキ・オンとなることにより実行され、ブレーキ・オフもしくはアクセルペダルが踏み込まれるアクセル・オンで復帰し、エンジン1が始動させられる。フリーランS&S制御は、所定の車速以上の車速で走行している状態でアクセル・オフで実行され、アクセル・オンで復帰し、エンジン1が始動させられる。
上述した例における発進クラッチ3の制御装置は、S&S制御でエンジン1を停止させる場合、エンジン1の停止に先立って発進クラッチ3を解放させて、エンジン1と変速機4との間、あるいはエンジン1と駆動輪6との間のトルク伝達を遮断する。また、一旦停止させたエンジン1を再始動する場合には、発進の遅れを防止もしくは抑制するために、エンジン1の始動と並行して、すなわちエンジン1の出力トルクの増大に合わせて、発進クラッチ3の伝達トルク容量を増大させる。発進クラッチ3をこのように係合させる際に実行される制御例を以下に説明する。
図2はS&S制御でエンジン1を再始動させることに伴って発進クラッチ3を係合させる制御の全体の流れを説明するためのフローチャートであり、ここに示す例では、発進クラッチ3を解放状態から完全に係合させるまでに三つのモードに分けて制御を行うように構成されており、したがって先ずはその制御モードの判定を行う。具体的に説明すると、ステップS1で発進クラッチ(以下、単にクラッチと記す場合がある。)3の制御中か否かが判断される。S&S制御で発進クラッチ3を解放させている場合、あるいはエンジン1の始動に伴って次第に係合させている場合などにおいては発進クラッチ3を制御していることになるのでステップS1で肯定的に判断され、またS&S制御が終了して発進クラッチ3が完全に係合させられている場合はクラッチ3の油圧は制御されず、またシフトポジションがパーキングやニュートラルになっている場合などでは発進クラッチ3に油圧が供給されないのでその制御は行われず、ステップS1で否定的に判断される。
ステップS1で否定的に判断された場合には特に制御を行うことなく図2のルーチンを一旦終了する。これに対してステップS1で肯定的に判断された場合には、エンジン1の再始動の判定があったか否かが判断される(ステップS2)。前述したように、S&S制御では所定の復帰条件が成立することにより、言い換えればエンジン1を停止させる条件が不成立になることにより、エンジン1を再始動させるので、ステップS2ではその再始動の判定の有無が判断される。ステップS2で肯定的に判断された場合、すなわちエンジン1を再始動する場合には、クラッチ3を係合させることになるので、クラッチ3の制御モードは定圧(もしくは低圧)待機モードに移行する(ステップS3)。この定圧待機とは、クラッチ3が油圧によって摩擦板を接触させることにより係合状態になる摩擦クラッチによって構成されている場合、解放状態では摩擦板同士の間に不可避的なクリアランスが存在する。そのクリアランスが「0」になってからクラッチ3が実質的な伝達トルク容量を持つようになる。すなわち、伝達トルク容量を制御できる状態になる。このようなクリアランスがほぼ「0」になるようにクラッチ3に油圧を供給して一定の低い油圧に維持する制御が定圧待機制御である。なお、このような定圧待機制御は、従来の有段式自動変速機で実行される制御と同様であってよい。
ついでエンジン1の完爆の判定があったか否かが判断される(ステップS4)。なお、エンジン1の再始動の判定が既に成立していてステップS2で否定的に判断された場合には、ステップS3をスキップして直ちにステップS4に進み、完爆判定の有無が判断される。ここで、完爆とは、エンジン1の各気筒での燃焼が行われてエンジン1が自立回転できる状態である。エンジン1の再始動はスタータモータによってモータリングし、かつ燃料の供給を再開して行われるが、完爆に到るまでにはエンジン1の出力軸であるクランク軸を所定角度あるいは所定回転数、回転させる必要があり、ステップS4ではそのような過渡的な状態を経て自立回転に達したか否かを判定する。具体的には、エンジン1の排気量や形式などに応じて予め定めた回転数に到ったか否かによって判定され、その回転数は一例として200rpm〜500rpm程度の回転数である。なお、エンジン1の再始動時には、ガソリンエンジンにおいては、理論空燃比より小さい空燃比のリッチ混合気が供給される。
エンジン1が完爆に到ると、エンジン回転数がアクセル開度もしくはスロットル開度に応じた回転数に向けて増大するので、それに合わせてクラッチ3を係合させ、かつその伝達トルク容量を増大させる。すなわち、係合モードに移行する(ステップS5)。この係合モードの制御については、後述する。
係合モードでは、クラッチ3の油圧が次第に高められて伝達トルク容量が増大するので、ステップS5に続けてクラッチ3の係合が完了したか否かが判断される(ステップS6)。なお、既に完爆の判定が成立してしまっている場合には上記のステップS4で否定的に判断され、その場合には、ステップS5をスキップして直ちにステップS6に進み、クラッチ3の係合の完了が判断される。ここで係合の完了とは、クラッチ3における入力側(駆動側)の部材と出力側(従動側)の部材との回転数差がなくなる状態であり、したがってステップS6の判断は、クラッチ3の入力側の回転数すなわちトルクコンバータ2におけるタービン回転数と変速機4の入力軸の回転数とを比較することにより行うことができる。
クラッチ3の係合が未だ完了していないことによりステップS6で否定的に判断された場合には、一旦、図2のルーチンを終了し、再度、ステップS1からの制御を実行する。これに対してステップS6で肯定的に判断された場合には、クラッチ3の制御モードは通常モードに移行する(ステップS7)。この通常モードとは、エンジン1の再始動が完了してエンジン1が安定的に自立回転して、エンジン1の吸入空気量あるいはスロットル開度などで表される負荷と出力トルクとが所定の関係に安定した状態での制御である。したがって、クラッチ3の伝達トルク容量もしくは油圧は、エンジン負荷と回転数とに基づいて求められるエンジン出力トルクやトルクコンバータ2での速度比(もしくはトルク比)に基づいて求められる容量もしくは油圧に制御される。
つぎに、上述した制御におけるステップS5の制御の一例について説明する。図3は、上述した制御におけるステップS5の制御例を示すフローチャートであり、クラッチ3についての係合モードでの制御内容を示している。先ず、クラッチ3の制御モードが係合モードになっているか否かが判断される(ステップS51)。これは、例えば前述した図2におけるステップS5でフラグをオンに設定し、ステップS51ではそのフラグがオンになっているか否かを判断することとすればよい。
クラッチ3の制御モードが係合モードになっていないことによりステップS51で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなく図3のルーチンを一旦終了する。これとは反対に係合モードになっていることによりステップS51で肯定的に判断された場合には、パワーオン状態か否かが判断される(ステップS52)。パワーオン状態とは、エンジン1の動力で車両が走行する状態であるから、エンジン1のトルクがトルクコンバータ2を介してクラッチ3の入力側の部材に伝達され、さらにクラッチ3の係合状態に応じたトルクがクラッチ3の出力側の部材に伝達される。したがってエンジン1が完爆に到ってその回転数が増大し、それに伴ってトルクコンバータ2におけるタービン回転数NT が増大しても、係合モードの開始初期でクラッチ3の伝達トルク容量が未だ小さい状態では、クラッチ3の出力側の部材の回転数すなわち変速機4の入力軸の回転数NINがクラッチ3の滑りによりタービン回転数NT より低回転数になっている。パワーオン状態はこのような回転数の差によって判断することができるので、ステップS52では、タービン回転数NT が変速機4の入力軸の回転数(以下、入力回転数と記すことがある。)NINに所定回転数αを加えた回転数より高回転数か否かが判断される。この所定回転数αは、要は、タービン回転数NT が入力回転数NINを超えたことを判断するためのしきい値であり、設計上決めた適宜な値であってよい。
減速S&S制御やフリーランS&S制御では、車両が走行している状態でクラッチ3が解放させられてエンジン1が停止させられるので、S&S制御からの復帰時にはタービン8が慣性力あるいはクラッチ3の引き摺りにより回転しており、その回転数NT がエンジン回転数NE より高回転数になっている。したがって係合モードの開始初期では、タービン8は駆動輪6側から入力されるトルクによって回転させられ、入力回転数NINより低回転数になっている。これはパワーオフ状態であり、したがってステップS52で否定的に判断され、その結果、クラッチ3の油圧制御としてはパワーオフ時の制御が実施される(ステップS53)。このパワーオフ時の油圧制御は、予め定めたスケジュールでクラッチ油圧を増大させる制御であり、具体的にはクラッチ油圧を一時的に増大させるいわゆるファーストフィルを実行する。これは、クラッチ3におけるクリアランスをなくすいわゆるパック詰めのための制御であり、その油圧および継続時間は予め定めておくことができる。そのファーストフィルの後、クラッチ油圧を所定の勾配もしくは変化率で増大させる。その勾配あるいは変化率は、ショックが生じないように、また滑り状態が過度にならずかつ継続しないように設計上定めることができる。
一方、エンジン1の完爆の後、その回転数の上昇に伴ってタービン回転数NT が上昇すると、エンジン1が出力するトルクによってクラッチ3や変速機4が駆動されるパワーオン状態になり、ステップS52で肯定的に判断される。この場合、ステップS54に進んでクラッチ3の油圧制御としてはパワーオン時の制御が実施される(ステップS54)。このパワーオン時の油圧制御を図4にフローチャートで示してある。
この油圧制御では、先ず、エンジン回転数NE の変化量(あるいは変化率)ΔNE と、タービン回転数NT の変化量(あるいは変化率)ΔNT とが求められる(ステップS541)。これは、それぞれの回転数NE ,NT を所定の短時間毎に繰り返し検出し、今回の検出値と前回の検出値との差を算出し、あるいはその算出値を前回の検出と今回の検出との間の経過時間で除算すればよい。各回転数NE ,NT は時々刻々変化しているのに対して回転数などの算出には時間が掛かるので、その時間の間における回転数の変化を考慮して推定回転数NE',NT'が算出される(ステップS542)。これは、
NE'=NE +K1 ×ΔNE
NT'=NT +K2 ×ΔNT
の式で算出することができる。ここで、K1 およびK2 は算出遅れ係数であって使用する演算器やプログラムなどに応じて決まり、したがって実験やシミュレーションなどによって予め求めておくことができる。
ついで、これらの値NE',NT'を使用してトルクコンバータ(T/C)2の速度比E(=NT'/NE')が求められる(ステップS543)。トルクコンバータ2の特性を表す容量係数Cやトルク比tは、速度比Eに応じた値となるから、ステップS543で算出された速度比Eを引数にしてマップから容量係数Cおよびトルク比tが求められる(ステップS544)。
さらに、今回実行するクラッチ3の係合制御が、エンジン1の再始動時の係合制御か否かが判断される(ステップS545)。すなわち、S&S制御が実行された場合、クラッチ3を解放したものの、エンジン1が停止する前に復帰条件が成立し、あるいは実行条件が成立しなくなった場合には、エンジン1を駆動したままの状態でクラッチ3の係合制御が開始されることがある。また、S&S制御によってエンジン1が停止させられ、その後に復帰条件が成立してエンジン1を再始動するとともにクラッチ3を係合制御することもある。そこで、ステップS545では、これらのいずれの場合のクラッチ3の係合制御であるかを判断することとしている。
クラッチ3の伝達トルク容量もしくは係合油圧は、クラッチ3に掛かるトルクに応じたものとすることによりショックや制御遅れなどを回避もしくは低減できるから、クラッチ3に掛かるトルクを発生しているエンジン1の出力トルクを求める必要がある。そこで、ステップS545で肯定的に判断された場合、すなわちエンジン1の再始動時の係合制御である場合には、トルクコンバータ2の特性を利用してエンジントルクTe が算出(推定)される(ステップS546)。すなわち、トルクコンバータ3の容量係数Cとエンジン回転数NE の自乗とを乗算してエンジントルクTe が算出される。
Te =C×NE 2
一方、クラッチ3の係合制御がエンジン1の再始動時の制御ではないことによりステップS545で否定的に判断された場合には、吸入空気量Klとエンジン回転数NE とを引数として、予め用意されているマップからエンジントルクTe が算出(推定)される(ステップS547)。ガソリンエンジンではこれら吸入空気量Klとエンジン回転数NE とエンジントルクTe との間には、エンジン1の排気量や形式などに応じた所定の相関関係があり、その関係を予め実験などによって求めてマップとしておくことができるので、ステップS547ではそのマップを利用してエンジントルクTe を算出もしくは推定することができる。
こうしてエンジントルクTe を算出もしくは推定した後にトルクコンバータ2におけるタービン8のトルク(タービントルク)Tt が求められる(ステップS548)。すなわち、先ず、エンジントルクTe とステップS544で求められたトルク比tとに基づいて下記の演算が行われる。
Ttb=t×Te
その演算値Ttbに一次遅れ処理などの遅れ補正を施してタービントルクTt が求められる。
ついで、クラッチ3の入力側の回転数と出力側の回転数との差が増大する吹き上がり側か否かが判断される(ステップS549)。この判定は、例えばクラッチ油圧の制御モードが係合モードになった後のタービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差分の最小値NTminと現在のタービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差分との差によって判断することができる。具体的には、現在のタービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差分と検出されたそれら回転数の差分の最小値NTminとの差が予め定めた所定値より大きい場合(((NT −NIN)−(NT −NIN)min)>所定値の場合)、吹き上がりがあるとの判定を行う。また、例えばクラッチ油圧の制御モードが係合モードになった後のタービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差分の最大値NTmaxと現在のタービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差分との差が予め定めた他の所定値より大きい場合(((NT −NIN)max−(NT −NIN))>所定値の場合)、引き下げの判定を行う。
クラッチ油圧の制御が進行していることによりタービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差分が低下傾向になっているとステップS549で否定的に判断される。その場合は、増大しつつある入力回転数NINにタービン回転数NT を一致させるためにタービン回転数NT を変化させる目標変化量ΔNTtgtが、予め用意されたマップから、スロットル開度などの駆動力要求や車速を引数として求められる(ステップS550)。この目標変化量ΔNTtgtは、クラッチ3が完全に係合してタービン回転数NT が入力回転数NINに一致するまでの過程におけるタービン回転数NT の目標値を定めたものであり、ショックや制御の遅れなどを考慮して予めマップとして定めておくことができる。そのマップは、エンジン負荷(例えばスロットル開度)と車速などとを引数としてタービン回転数NT の目標変化量ΔNTtgtを定めたマップとすることができる。なお、パワーオン時は、クラッチ3の油圧が未だ低い状態でエンジン1からトルクがクラッチ3に伝達されるので、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差分が増大傾向にあり、したがってクラッチ油圧の制御開始初期にはステップS549で肯定的に判断される。その場合は、スロットル開度や車速を引数として、予め用意したマップから目標速度比Et が求められ(ステップS551)、またその目標速度比Et と上記のステップS302で求められたエンジン回転数NE の推定値NE'とから目標タービン回転数NTtgt(=Et ×NE')が算出され(ステップS552)、さらにその目標タービン回転数NTtgtと前述したステップS542で求められたタービン回転数NT'とからタービン回転数についての目標変化量ΔNTtgt(=NTtgt−NT')が求められる(ステップS553)。
このようにしてステップS550あるいはステップS553で算出された目標変化量ΔNTtgtは慣性トルクを生じさせる要因であるから、これを利用して目標クラッチトルクTclが算出される(ステップS554)。その演算は、
Tcl=Tt −I×ΔNTtgt
の演算式によって求めることができる。なお、上式におけるIはクラッチ3よりエンジン1側の回転部材の慣性モーメントである。
こうしてクラッチ3にトルクコンバータ2側から入力されるトルクTclが求められ、その入力トルクTclに適する目標油圧Pclが演算される。先ず、クラッチ3の目標油圧ベース値Pclb が算出される(ステップS555)。クラッチ3は前述したように摩擦クラッチによって構成されているから、上記の入力トルクTclに相当する目標油圧ベース値Pclb は、クラッチ3における摩擦材の面の数Kclと、摩擦係数μと、摩擦材の有効半径Rclと、クラッチ3に備えられているリターンスプリングによる荷重(弾性力)Fspと、クラッチ3における油圧アクチュエータを構成しているピストンの受圧面積Aclとに基づいて演算することができる。その演算式は下記のとおりである。
Pclb ={(Tcl/Kcl/μ/Rcl)+Fsp}/Acl
そして、この目標油圧ベース値Pclb に基づいて目標油圧Pclが算出される(ステップS556)。このステップS556での処理は、要は、スロットル開度やクラッチ3における入力側と出力側との速度の比率(速度比)などに応じて補正する処理であり、油圧や駆動力あるいは前後加速度の変化を緩和する場合には、目標油圧ベース値Pclb に所定の補正係数βを掛けて油圧目標値Pclを求める。
Pcl=Pclb ×β
また、目標油圧Pclを油圧目標ベース値Pclb に対して幾分高くする場合には、補正係数βを加算してもよい。
Pcl=Pclb +β
なお、補正係数βは、クラッチ3の係合終期におけるショックあるいは加速度の大きな変化を抑制したり、係合の遅れが生じないように、実験やシミュレーションなどによって、スロットル開度やクラッチ3における速度比などに応じて予め定めておくことができる。より具体的には、スロットル開度やクラッチ3の速度比が大きい場合に、小さい場合に比較して目標油圧が低くなるように補正する係数である。
ここで、クラッチ3の油圧を上述したように制御して、そのクラッチ3の入力側の回転数であるタービン回転数NT と、出力側の回転数である入力軸回転数NINとが同期して係合完了の判断をするための制御例について説明する。図1は、その制御例を説明するためのフローチャートである。図1に示すフローチャートは、所定時間毎に繰り返し実行され、上記図2ないし図4に示すフローチャートと並列的に実行される。図1に示す制御例では、まず、クラッチ3の制御モードが係合モードになっているか否かが判断される(ステップS61)。これは、例えば前述した図2におけるステップS5でフラグをオンに設定し、ステップS61ではそのフラグがオンになっているか否かを判断することとすればよい。ステップS61で否定的に判断された場合は、未だエンジン1の完爆が判定されてなく、あるいはクラッチの制御中でないので、フラグがオフされて(ステップS62)、後述するステップS66に移行する。なお、図1では、パワーオフからの係合開始判定オフと示している。
一方、ステップS61で肯定的に判断された場合は、前回のルーチンにおいてクラッチが係合モードであったか否かが判断される(ステップS63)。すなわち、係合モードが継続しているか否かが判断される。ステップS63で否定的に判断された場合は、前回のルーチンにおけるフラグを維持してステップS66に移行する。それとは反対に、ステップS63で肯定的に判断された場合は、タービン回転数NT が入力軸回転数NIN未満か否かが判断される(ステップS64)。なお、ステップS64における各回転数NT NINは、上述したステップS542で算出された回転数NT'と入力軸回転数NINの検出遅れを補正したNIN' とを比較して判断してもよい。ステップS64で否定的に判断された場合も、前回のルーチンにおけるフラグを維持してステップS66に移行する。それとは反対にステップS64で肯定的に判断された場合、すなわちタービン回転数NT が入力軸回転数NIN以上のときは、フラグがオンされて(ステップS65)、ステップS66に移行する。なお、図1では、パワーオフからの係合開始判定オンと示している。
ついで、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差の絶対値が所定値α以下か否かが判断される(ステップS66)。ステップS66は、要はタービン回転数NT が入力軸回転数NINに同期したか否かを判断することができればよく、したがって、所定値αは、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとがほぼ同一と判断できる程度の回転数に予め定めた値である。具体的には、下記の演算により判断される。
|NT (i)−NIN(i)|≦α
なお、図1では、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差をNT NINと示している。また、ステップS66では、今回算出されたタービン回転数NT (i)と入力軸回転数NIN(i)との差の絶対値により判断しているが、上記ステップS64と同様に、上述したステップS542で算出された回転数NT'と入力軸回転数NINの検出遅れを補正したNIN' との差の絶対値が所定値α以下か否かを判断してもよい。
ステップS66で肯定的に判断された場合、すなわちタービン回転数NT と入力軸回転数NINとがほぼ同一である場合には、そのタービン回転数NT が入力軸回転数NINに対して相対的に減少しているか否かが判断される(ステップS67)。具体的には、前回算出あるいは検出されたタービン回転数NT (i−1)と入力軸回転数NIN(i−1)との差から、今回算出あるいは検出されたタービン回転数NT (i)と入力軸回転数NIN(i)との差を減算した値が、所定値βより大きいか否かが判断される。すなわち、ステップS67は、下記の演算により判断される。
NT NIN(i−1)−NT NIN(i)>β
なお、図1には、NT NIN(i−1)−NT NIN(i)を、NT NIND (i)と示している。
ステップS67で肯定的に判断された場合、すなわち前回算出あるいは検出されたタービン回転数NT (i−1)と入力軸回転数NIN(i−1)との差から、今回算出あるいは検出されたタービン回転数NT (i)と入力軸回転数NIN(i)との差を減算した値が、所定値βより大きく、タービン回転数NT が入力軸回転数NINに対して相対的に減少しており、またタービン回転数NT と入力軸回転数NINとがほぼ同一となる。そのため、ステップS67で肯定的に判断されると、その時点で係合が完了したと判断されて(ステップS68)、このルーチンを一旦終了する。
一方、ステップS66あるいはステップS67で否定的に判断された場合、すなわちタービン回転数NT と入力軸回転数NINとがほぼ同一でない場合、あるいは前回算出されたタービン回転数NT (i−1)と入力軸回転数NIN(i−1)との差から、今回算出あるいは検出されたタービン回転数NT (i)と入力軸回転数NIN(i)との差を減算した値が所定値β以下の場合は、パワーオフからの係合開始判定がオンになっているか否かが判断される(ステップS69)。ステップS69の判断は、上記ステップS62やステップS65あるいは前回のルーチンによって設定されたフラグに基づいて判断することができる。そして、ステップS62によりフラグがオフされているときや前回のルーチンによってフラグがオフされて、そのフラグが維持されているときには、設定されているフラグを維持したままこのルーチンを一旦終了する。
それとは反対に、ステップS69で肯定的に判断された場合、すなわちステップS65によりフラグがオンされているときや前回のルーチンによってフラグがオンされて、そのフラグが維持されているときには、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差の絶対値が所定時間継続して所定値α以下か否かが判断される(ステップS70)。すなわち、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとが所定時間連続してほぼ同一であるか否かが判断される。なお、ステップS70は、時間によって判断してもよく、カウンタなどによりタービン回転数NT と入力軸回転数NINとがほぼ一致であることを連続して検知しているか否かを判断してもよい。
ステップS70で否定的に判断された場合は、設定されているフラグを維持したままこのルーチンを一旦終了する。それとは反対にステップS70で肯定的に判断された場合は、クラッチ3の入力側の回転数と出力側の回転数とが同期していると考えられるので、クラッチ3の係合が完了したと判断されて(ステップS70)、このルーチンを一旦終了する。
ここで、図2ないし図4に示す制御例を実行した場合における各回転数やタービントルクTt あるいはクラッチ3についての目標油圧Pclなどの変化を図5に示すタイムチャートに基づいて説明する。まず、S&S制御によって停止していたエンジン1を再始動する判定が成立すると(t1 時点)、エンジン1がスタータモータによって回転させられてその回転数が増大する。また、クラッチ3についての制御モードが再始動時の定圧待機モードに設定され、したがってクラッチ3についての目標油圧Pclがいわゆるファーストフィルのために一時的に増大させられ、かつそのファーストフィルに続けて低い圧力に維持される。ここに示す例は、ある程度の車速で走行している際のS&S制御に伴うエンジン1の再始動の例であり、したがって入力回転数NINは駆動輪6側から入力されるトルクによって回転させられて所定の低回転数になっている。また、クラッチ3の引き摺りなどによってタービン回転数NTは、入力回転数NINより低い所定の回転数になっている。すなわち、パワーオフ状態になっている。
エンジン1のモータリングが継続され、その状態で燃料の供給(あるいは燃料の噴射)が開始されることにより、エンジン1で燃焼が開始され、その回転数が増大し始める。こうしてエンジン回転数NE が完爆判定のためのしきい値を超えると完爆の判定が成立する(t2 時点)。したがって、このt2時点にクラッチ3の油圧についての制御モードが係合モードに切り替えられる。
タービン8の回転数はトルクコンバータ3での滑りのために、エンジン回転数NE の増大に対して遅れて増大するので、完爆の判定のt2 時点およびその後のしばらくの間は、タービン回転数NT は入力回転数NINより低回転数になっている。したがって、このt2 時点では、前述した図3に示すステップS52で否定的な判断が成立し、パワーオフ時の制御が実行される。すなわち、先ず、ファーストフィルのために一時的に目標油圧Pclが増大させられ、その後、低い一定の圧力に維持され、さらにその低い一定圧力から次第に増大させられる。
このパワーオフ時の油圧制御を行っている状態でタービン回転数NT が次第に増大し、これに対して入力回転数NINは車速や変速機4での変速比に応じた回転数に維持されているので、完爆後の比較的短い時間でタービン回転数NT が入力回転数NINを上回るようになる。そして、その回転数差が前述した所定回転数αを超えるとパワーオンの判定が成立し(t3 時点)、前述した図4を参照して説明したパワーオン時の油圧制御が実行される。すなわち、タービントルクTt がトルクコンバータ2の容量係数Cやトルク比tなどに基づいて推定(もしくは算出)される。その演算は、上述した図4を参照して説明したとおりである。したがってタービントルクTt あるいはその推定値は、t2 時点から次第に増大する。
また、タービントルクTt あるいはその推定値が増大することに伴って、タービン回転数NT が増大し始める。その際に、タービン回転数NT が上昇傾向にあるため、図4に示すステップS549の判断が肯定的に判断され、タービン回転数の目標値NTtgtがステップS552で算出された回転数となり、その目標タービン回転数NTtgtと算出遅れを考慮したタービン回転数NT'との偏差に基づいてクラッチ3の目標油圧Pclが設定される。それに伴いクラッチ3の実油圧および伝達トルク容量が次第に増大する。
このようにして制御されるクラッチ3の油圧が増大して、そのクラッチ3の伝達トルク容量が増大するので、エンジン1に対しての負荷トルクが増大し、その結果、エンジン回転数NE が低下し始める。そのため、エンジン回転数NT に基づいて算出される目標タービン回転数NTtgtが低下し始める。その時点を図5にはt4 時点として記載してあり、目標タービン回転数NTtgtが低下することに基づいてタービン回転数NT が低下し始めるので、図4に示すステップS549における判断で否定的に判断されて、タービン回転数NT の目標変化量(もしくは変化率)ΔNTtgtが、マップから読み込まれる。そのタービン回転数NT の目標変化量(もしくは変化率)ΔNTtgtは、増大しつつある入力回転数NINにタービン回転数NT を一致させるように設定されたものである。
クラッチ3の油圧および伝達トルク容量が次第に増大させられてタービン回転数NT と入力回転数NINとの差が次第に減少し、ついにはこれらの回転数NT ,NINが一致すると、クラッチ3の係合終了の判定が成立する(t5 時点)。その場合、上記のステップS556での制御で説明したように、クラッチ3についての目標油圧Pclを補正係数βによって減少補正することにより、駆動力あるいは加速度の変化が滑らかになってショックを防止もしくは抑制することができる。そして、その後はクラッチ3の油圧についての制御モードが通常モードに切り替えられる。なお、エンジン回転数NE は、その後に、入力回転数NINとの間にトルクコンバータ2での速度比Eに応じた偏差をもった回転数になる。
つぎに、図1に示す制御例を、図5に示すタイムチャートを参照しつつ説明する。まず、完爆判定以前、すなわちt2 以前は、クラッチ係合モードが設定されていないため、図1におけるステップS61で否定的に判断され、パワーオフからの係合開始判定のフラグがオフに設定される。また、t2 以前は、クラッチ3の引きずりなどによりタービン8が低回転数で回転しているものの、入力軸回転数NINとはほぼ同一とはなっておらず、そのため、図1におけるステップS66で否定的に判断される。したがって、t2 以前においては、係合完了判定がされない。
ついで、t2 時点において係合モードが設定されて、タービン回転数NT が増大し始めて入力軸回転数NINを上回りかつほぼ同一となると、図1におけるステップS65でパワーオフからの係合開始判定のフラグがオンされるとともに、ステップS66における判断が肯定的に判断される。一方、タービン回転数NT は、相対的に増大して入力軸回転数NINに同期しているので、図1におけるステップS67で否定的に判断される。また、ステップS65でフラグがオンされているため、ステップS69では肯定的に判断されるものの、タービン回転数NT は、入力軸回転数NINに対して相対的に増大しており、その結果、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差が早期に増大して所定値α以上となる。そのため、ステップS70で否定的に判断されるため、クラッチ3の係合完了判断がされない。
そして、上述したようにタービン回転数NT が一旦上昇した後に、t4 時点で引き下げられるとともに、クラッチ3の油圧が上昇させられることにより入力軸回転数NINが上昇する。この間は、常時、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差が大きく、その結果、ステップS66およびステップS70で否定的に判断されるため、クラッチ3の係合完了が判断されることがない。
t4 時点を経過した後に、タービン回転数NT が減少するとともに、入力軸回転数NINが上昇すると、次第にそれらの回転数NT NINがほぼ同一となる。すなわち、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差の絶対値が所定値α以下となる。この場合、タービン回転数NT が入力軸回転数NINに対して相対的に減少してほぼ同一となるので、図1のステップS67で肯定的に判断される。その結果、ほぼ同一となった時点、すなわちt5 時点でクラッチ3が係合完了と判断される。なお、この場合は、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとがほぼ同一の状態が維持しているか否かは判断されず、早期に係合完了の判断がされる。
したがって、図1に示すように制御することにより、タービン回転数NT が吹き上げている過程で入力軸回転数NINと一致してもクラッチ3の係合完了の判断がされることがない。そのため、一旦タービン8を吹き上がらせてから、係合制御を実行することが可能となり、その結果、エンジン1の始動時におけるショックを抑制もしくは防止することができる。また、t5 時点、すなわちタービン回転数NT が入力軸回転数NINに対して相対的に減少して同期した時点では、特に同期している時間を判断することなく早期に係合完了の判断がなされる。そのため、係合完了判断までにおけるクラッチ3などの制御に伴う動力損失を低減することができ、ひいては燃費を向上させることができる。
なお、この発明に係る制御装置は、パワーオフ状態、すなわちタービン回転数NT が入力軸回転数NINより低回転数の状態でかつクラッチ3の係合が開始されるときに実行されるものであって、特にS&S制御におけるものに限らない。すなわち、エンジン1を駆動している状態でクラッチ3を解放して、車両が惰性走行している、いわゆるニュートラル惰行時からクラッチ3を係合するときに実行することもできる。すなわち、ニュートラル惰行時にアクセルが踏み込まれた時点で係合モードに移行したと判断して、それ以降は、図1に示す制御に基づいて係合完了の判断をすればよい。
具体的には、アクセルを急激に踏み込まれたとき、すなわち急加速の要求があるときには、一旦タービン3を吹き上げてクラッチ3を係合するため、図5に示すタイムチャートにおけるt2 以降は同様の制御が実行される。したがって、ニュートラル惰行時にアクセルが急激に踏み込まれて、クラッチ3を係合させるときは、上記図2ないし図4に示すS&S制御と同様にタービン回転数NT が一旦吹き上げられて、入力軸回転数NINと同期させられるため、タービン回転数NT が入力軸回転数NINに対して相対的に減少して同期した時点で、クラッチ3の係合完了を判断することができる。すなわち、特に同期している時間を判断することなく早期に係合完了の判断をすることができる。そのため、係合完了判断までにおけるクラッチ3などの制御に伴う動力損失を低減することができ、ひいては燃費を向上させることができる。
なお、車速を一定に保つときなど比較的緩やかにあるいは微少にアクセルが踏み込まれたときは、タービン回転数NT を吹き上がらせず、入力軸回転数NINに同期させる。その状態を図6に示している。ここで、ニュートラル惰行時にアクセルが緩やかにあるいは微少に踏み込まれたときにおける、各回転数やタービントルクTt あるいはクラッチ3の油圧の変化などについて説明する。まず、ニュートラル惰行時には、エンジン1の回転数NE がほぼ低回転数に維持されている。また、入力軸回転数NINは、車速に応じた回転数となっており、タービン回転数NT は、上述したS&S制御と同様にクラッチ3の引きずりなどにより所定の低回転数に維持されている。図6に示す例では、エンジン回転数NE よりタービン回転数NT が高回転数となり、そのタービン回転数NT より入力軸回転数NINが高回転数となっている。その状態からアクセルが比較的緩やかにあるいは微少に踏み込まれると、クラッチ3の目標油圧Pclがステップ的に一旦上昇する。すなわち、ファーストフィルのためにクラッチ3の目標油圧Pclが一時的に増大させられる。その時点(t6 時点)で係合モードに移行する。
ついで、t7 時点で、クラッチ3の油圧が上昇することにより、タービン回転数NT が上昇し始める。なお、アクセル開度が小さいためエンジン回転数NE は緩やかに上昇し、その結果、クラッチ3を係合させ始めた時点(t7 時点)からタービン回転数NT が緩やかに増大する。そのため、タービン回転数NT が入力軸回転数NINを上回ることがなく、徐々にタービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差が減少していく。そして、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとがほぼ一致して(t8 時点)、それら回転数NT NINがほぼ一致した状態が所定時間経過する(t9 時点)と、係合完了の判断がされ、クラッチ3の制御モードが通常モードに変更される。
ここで、図6に示すように制御された場合、すなわちニュートラル惰行時にアクセルが比較的緩やかにあるいは微少に踏み込まれた場合における、係合完了を判断するための制御について、上述した図1に基づいて説明する。まず、t6 時点までは、クラッチ3の制御モードが係合モードとなっていないことにより、図1におけるステップS61で否定的に判断されて、パワーオフからの係合開始判定のフラグがオフされる。そして、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとがほぼ同一となっていないため、ステップS66で否定的に判断されるとともに、ステップS69で否定的に判断される。したがって、t6 以前では、係合完了の判断がなされることがない。
また、t6 以降でかつt8 以前においては、クラッチ3の制御モードが係合モードに移行しているものの、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとの差が大きく、その結果、パワーオフからの係合開始判定のフラグがオンになっているものの、ステップS66やステップS70で否定的に判断される。したがって、t8 以前においても、係合完了の判断がなされることがない。
一方、t8 時点においてタービン回転数NT と入力軸回転数NINとがほぼ同一となるので、図1におけるステップS66で肯定的に判断され、タービン回転数NT は、入力軸回転数NINに対して相対的に増大して同期しているため、ステップS67では否定的に判断される。一方、タービン回転数NT と入力軸回転数NINとがほぼ同一の状態を所定時間維持するため、ステップS70で肯定的に判断されて、クラッチ3の係合完了を判断することができる。
したがって、図1に示すようにクラッチ3の係合完了を判断することにより、タービン回転数NT を一旦吹き上がらせてから、クラッチ3を係合する場合であっても、タービン回転数NT を吹き上がらせずにクラッチ3を係合する場合であっても、クラッチ3の係合完了を正確に判断することができる。
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであって、発進クラッチは油圧によって伝達トルク容量が変化させられるクラッチ以外に、電気的に伝達トルク容量が制御されるクラッチであってもよく、その場合、上記の油圧に替えて電流もしくは伝達トルク容量が制御の対象となる。