JP5775830B2 - アンカーボルト施工方法 - Google Patents
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Description
前記アンカーボルトを施工する方法としては、前記コンクリート構造物の表面に所定の径および深さの孔を形成し、該孔にアンカーボルトを挿入し、該アンカーボルトと前記孔の内周面との隙間に定着材等を充填して、前記アンカーボルトを固定する方法が採られている。
例えば、アンカーボルトとして、先端部が軸よりも大径であるアンカーボルトを用い、引張強度を向上させる方法が特許文献1および2に記載されている。
従って、構造物としてのせん断耐力を向上させるためには、アンカーボルトの本数を増やすことが行なわれているが、コストがかさむという問題がある。
かかる場合に、例えば、特許文献3には、前記鋼材が露出する深さまでの孔を形成し、該孔の底面に露出した前記鋼材に前記アンカーボルトの先端部を溶接することで、アンカーボルトを強固にコンクリート構造物に固着することが記載されている。
しかし、かかる方法においても、やはりアンカーボルトの引張強度を向上させることができても、せん断耐力を向上させることは困難である。
鉄骨が埋設されたコンクリート構造物の表面に開口し且つ前記鉄骨が底面に露出する円筒形状の孔を形成し、該孔にアンカーボルトを挿入し、前記底面に露出する鉄骨と前記アンカーボルトとを溶接して前記アンカーボルトを固定し、前記孔の内周面と前記アンカーボルトとの間に充填材を充填して、アンカーボルトをコンクリート構造物に施工するアンカーボルト施工方法において、
予め、前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1と、前記コンクリート構造物のコンクリートの支圧強度cσqaとを求めておき、
前記コンクリートの支圧強度cσqaと前記孔の開口面積とから求められるコンクリートの支圧強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa2が、前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1よりも、大きくなるような前記孔の開口面積を設定しておき、
前記設定された開口面積になるように前記孔を形成することを特徴としている。
すなわち、使用するアンカーボルトと、該アンカーボルトを施工するコンクリート構造物に適した孔の開口面積を調整することで、前記アンカーボルトと前記コンクリート構造物との間のせん断耐力を向上させることができ、アンカーボルトの設置本数を低減しうる。
Qa1(N)=2/3※1×sσqa×sca ・・・(1)
Qa2(N)=1/3※2×cσqa×scA ・・・(2)
※1:低減係数、長期荷重用
※2:低減係数、長期荷重用
sca:アンカーボルト断面積(mm2)
scA:孔の開口面積(mm2)
sσqa:アンカーボルトのせん断強度(N/mm2)、sσqa=0.7×sσyとする。
sσy :アンカーボルトの規格降伏点強度(N/mm2)
cσqa:コンクリートの支圧強度(N/mm2)、cσqa=0.5×(Fc×Ec)1/2とする。
Fc:コンクリートの設計基準強度(N/mm2)
Ec:コンクリートのヤング係数(N/mm2)
コンクリートの圧縮強度(Fc)とは、コンクリートの実測圧縮強度またはコンクリート構造物のコンクリート設計基準強度をいう。
コンクリートのヤング係数(Ec)とは、コンクリートの実測ヤング係数または前記コンクリートの圧縮強度(Fc)から日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」により、Ec=3.35×104×(γ/24)2×(Fc/60)1/3から算出したものをいう。(γ:コンクリートの気乾単位体積重量t/m3)
本発明では、前記アンカーボルトをコンクリート構造物に施工するに先立ち、前記式(1)、(2)から求められる前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1と前記コンクリートの支圧強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa2とが、Qa1<Qa2となるようなscA:孔の開口面積(mm2)を設定しておくことによって、前記アンカーボルトをコンクリート構造物に施工した場合のせん断耐力を向上させうるサイズ(開口面積)の孔を形成することができる。
前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1よりも大きくなるような前記孔の開口面積を設定することが好ましい。
Qa3=1.5※3×cσt×Aqc・・・(3)
※3:低減係数
cσt:コーン状破壊に対するコンクリートの引張強度(N)、cσt=0.31×Fc1/2とする。
Aqc:せん断力に対するコーン状破壊面の有効投影面積(mm2)、Aqc=0.5×π×l2+l×r
l:鉄骨までの深さ(mm)
r:孔の開口径(mm)
また、本発明でいう鉄骨までの深さとは、コンクリート構造物表面から鉄骨までの深さをいう。
すなわち、前記式(3)から求められる前記コンクリートのコーン状破壊により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa3と、前記したようなコンクリートの支圧強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa2とが、前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1よりも大きくなるような孔の開口径から求められる孔の開口面積の孔を形成することによって、前記孔の深さが所定の深さまでしか形成できない場合に、最適なせん断耐力を得ることができる孔の開口面積を設定できる。
前記コンクリート構造物に鉄骨が埋設されている場合には、孔の深さは鉄骨の深さに制限されるが、前記のような条件を満たす開口面積の孔を形成して、アンカーボルトを施工することで、コンクリート構造物とアンカーボルトとの接合部分において必要なせん断耐力を得ることができる。
本実施形態のアンカーボルト施工方法は、鉄骨が埋設されたコンクリート構造物の表面に開口し且つ前記鉄骨が底面に露出する円筒形状の孔を形成し、該孔にアンカーボルトを挿入し、前記底面に露出する鉄骨と前記アンカーボルトとを溶接して前記アンカーボルトを固定し、前記孔の内周面と前記アンカーボルトとの間に充填材を充填して、アンカーボルトをコンクリート構造物に施工するアンカーボルト施工方法において、予め、前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1と、前記コンクリート構造物のコンクリートの支圧強度cσqaとを求めておき、前記コンクリートの支圧強度cσqaと前記孔の開口面積とから求められるコンクリートの支圧強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa2が、前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1よりも、大きくなるような前記孔の開口面積を設定しておき、前記設定された開口面積になるように前記孔を形成する方法である。
かかるコンクリート構造物には、補強のため、あるいは増設のために、コンクリート構造物にアンカーボルトを介して新設部材を一体化するために、アンカーボルトを設置することが行なわれる。
かかる孔2は一般的にはドリルなどで形成する。従って、前記孔2が、開口部が円形であって、深さ方向に同断面形状である円筒形状に形成される。
前記コンクリート構造物1の内部には鉄骨5が埋設されている。
前記孔2を、コンクリートの表面から前記鉄骨5の深さまで形成し、該孔の底面に前記鉄骨を露出させる。
かかる孔2に、金属製などのアンカーボルト3を挿入し、前記アンカーボルト3の先端部3bを、前記孔の底面に露出している鉄骨5に溶接する。
また、前記溶接を行なう前に、前記孔2の底面に露出した鉄骨5表面を、ワイヤブラシなどを用いて清浄にしておき、溶接しやすくしておいてもよい。
尚、前記のようにドリルなどを用いて孔を形成する場合には、ドリルとして所定の径のものを用いることで、孔の開口径、および開口面積を調整することができる。
前記ドリルの中でも、特に、コアドリルは、騒音や粉塵が少ないため、好ましい。
また、前記コンクリートの支圧強度cσqaを求める。
そして、前記コンクリートの支圧強度cσqaと、孔の開口面積とから得られるコンクリートの支圧強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa2が、前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1より大きくなる孔の開口面積scAを求める。
Qa1(N)=2/3※1×sσqa×sca ・・・(1)
Qa2(N)=1/3※2×cσqa×scA ・・・(2)
※1:低減係数、長期荷重用
※2:低減係数、長期荷重用
sca:アンカーボルト断面積(mm2)
scA:孔の開口面積(mm2)
sσqa:アンカーボルトのせん断強度(N/mm2)、sσqa=0.7×sσyとする。
sσy :アンカーボルトの規格降伏点強度(N/mm2)
cσqa:コンクリートの支圧強度(N/mm2)、cσqa=0.5×(Fc×Ec)1/2とする。
Fc:コンクリートの設計基準強度(N/mm2)
Ec:コンクリートのヤング係数(N/mm2)
すなわちアンカーボルトの材質によって所定の降伏点強度が規定されており、例えば、アンカーボルトとしてD16 SD295Sタイプのアンカーボルトを用いた場合には、規格降伏点強度は、295N/mm2である。
また、前記アンカーボルト断面積scaは、アンカーボルトの孔に挿入される部分のうち最も細い箇所の断面積を指し、例えば、図1に示すような軸3aと、該軸3aよりも大径な先端部3bを備えたアンカーボルトの場合には、軸3aの断面積を前記アンカーボルト断面積scaとする。
コンクリートのヤング係数(Ec)とは、コンクリートの実測ヤング係数または前記コンクリートの圧縮強度(Fc)から日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」により、Ec=3.35×104×(γ/24)2×(Fc/60)1/3から算出したものをいう。(γ:コンクリートの気乾単位体積重量t/m3)
すなわち、コンクリート構造物の設計仕様から、前記コンクリートの圧縮強度(Fc)およびコンクリートのヤング係数(Ec)は導き出せる。
よって、前記コンクリートの支圧強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa2が、前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1より大きくなるような孔の開口面積を設定することができる。
すなわち、図2(a)、(b)に示すように、開口面積が大きい場合(図2(a))には、開口面積が小さい場合(図2(b))に比べて、アンカーボルトの挿入方向に直交する方向Xへのせん断耐力がかかるコンクリートの面積(図では孔の開口縁の長さd,d’として示す。)が大きくなり、せん断耐力が向上する。
また、アンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力は前記Qa1であるため、前記Qa2を大きくしても、アンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力の向上には効果がなくなる。
従って、前記孔の開口面積としては、前記Qa2>Qa1を満たす孔の開口面積の最低面積付近であることが好ましい。
すなわち、前記充填材の支圧強度が、前記コンクリート構造物のコンクリートの支圧強度よりも高く、支圧破壊しないものを使用することで、充填材の影響を考慮することなく、圧縮強度の最も弱いコンクリートの支圧強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa2と、前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1とが前記関係になるような孔の開口面積を設定することで、コンクリート構造物に設置した際のアンカーボルトとコンクリート構造物との間のせん断耐力を向上させることができる。
Qa3=1.5※3×cσt×Aqc・・・(3)
※3:低減係数
cσt:コーン状破壊に対するコンクリートの引張強度(N)、cσt=0.31×Fc1/2とする。
Aqc:せん断力に対するコーン状破壊面の有効投影面積(mm2)、Aqc=0.5×π×l2+l×r
l:鉄骨までの深さ(mm)
r:孔の開口径(mm)
すなわち、前記式(3)から求められる前記コンクリートのコーン状破壊により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa3が、前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1よりも大きくなるような孔の開口径から求められる開口面積の孔を形成することによって、前記孔の深さが所定の深さである場合に、最適なせん断耐力を得ることができる孔の開口面積を設定できる。
このように、鉄骨の深さによって孔の深さが制限される場合でも、孔の開口面積を調整することで、コンクリート構造物とアンカーボルトとの接合部分において必要なせん断耐力を得ることができる。
さらに、前記孔にアンカーボルトを挿入し、前記孔の内周面と前記アンカーボルトとの間に充填材を充填する。
前記セメント系無収縮モルタルの具体例としては、例えば、無機系注入材など、さらに具体的にはセメフォースアンカー(住友大阪セメント社製)等が挙げられる。
さらに前記アンカーボルトの好ましい形状としては、図1に示すような軸3aと、該軸3aよりも大径の先端部3bとを備えたものが好ましい。
かかる形状のアンカーボルトを、図1に示すように、前記先端部3bを前記孔2の底部側に配置することで、アンカーボルト2を施工した後において、引き抜き方向Yへの強度(引張強度)をさらに向上させることができる。
既設のコンクリート構造物が低強度である場合、例えば、圧縮強度30N/mm2以下のような低強度コンクリートの場合には、耐震性を向上させる目的等でアンカーボルトを施工する場合がある。
かかる低強度コンクリートにアンカーボルトを施工する場合でも、予め、コンクリートの設計強度と、使用するアンカーボルトに合わせた最適の孔の開口面積を設定することによって、必要以上に多くの本数のアンカーボルトを用いる必要がないため、低コストで既設のコンクリート構造物の補強を行いうる。
試験体として、普通コンクリートを用いたサイズ1800mm×900mm×200mmのコンクリート硬化体を準備した。
鉄筋としては、厚さ6mmのL型であって、幅65mmのものを準備し、前記各コンクリート硬化体の表面から80mmおよび120mmの深さに埋設した。
アンカーボルトとして、D16 SD345(JFE条鋼社製)を準備した。
前記アンカーボルトの公称断面積は1.986cm2、降伏耐力は345N/mm2である。
前記各値から、表1に記載のQa2、Qa3となるようなscA:孔の開口面積(mm2)として、開口径20mm及び52mmを設定した。
各試験体の表面に、かかる開口面積となるような孔を前記試験体に形成した。
前記孔の深さは鉄骨が露出する深さである80mmおよび120mmまで形成した。
前記孔を形成後、ワイヤブラシで清掃し、スタッド溶接機(装置名:NSW25T、日本スタッドウェルディング社製)で前記アンカーボルトを鉄骨に溶接した。
その後、充填材(無機系カートリッジ式セメント系材料、商品名:セメフォースアンカー、住友大阪セメント社製)を孔内に充填した。
前記試験体1,2を、社団法人 日本建築あと施工アンカー協会の設計・施工指針 付3あと施工アンカー現場確認試験法(案)に準拠して、せん断試験を行った。
結果(各試験体の3個の平均値)を表1に示す。
さらに、Qa2およびQa3が共にQa1より大となる試験体2乃至4については、特に良好な結果が得られた。例えば、Qa1<Qa2であって、Qa1=Qa3である試験体5と、同じ穿孔径および穿孔深さである試験体2では、せん断耐力が特に良好であった。
2:孔、
3:アンカーボルト、
4:充填材。
Claims (4)
- 鉄骨が埋設されたコンクリート構造物の表面に開口し且つ前記鉄骨が底面に露出する円筒形状の孔を形成し、該孔にアンカーボルトを挿入し、前記底面に露出する鉄骨と前記アンカーボルトとを溶接して前記アンカーボルトを固定し、前記孔の内周面と前記アンカーボルトとの間に充填材を充填して、アンカーボルトをコンクリート構造物に施工するアンカーボルト施工方法において、
予め、前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1と、前記コンクリート構造物のコンクリートの支圧強度cσqaとを求めておき、
前記コンクリートの支圧強度cσqaと前記孔の開口面積とから求められるコンクリートの支圧強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa2が、前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1よりも、大きくなるような前記孔の開口面積を設定しておき、
前記設定された開口面積になるように前記孔を形成することを特徴とするアンカーボルト施工方法。 - 前記コンクリートのコーン状破壊に対する引張強度を求め、且つ前記コンクリート表面から鉄骨までの深さを測定しておき、前記コンクリートのコーン状破壊に対する引張強度と前記鉄骨までの深さと前記孔の開口径とから求められる前記コンクリートのコーン状破壊により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa3および前記コンクリートの支圧強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa2が、
前記アンカーボルトのせん断強度により決まるアンカーボルト1本あたりの許容せん断耐力Qa1よりも大きくなるような前記孔の開口面積を設定する請求項1に記載のアンカーボルト施工方法。 - 前記充填材は、セメント系無収縮モルタルである請求項1または請求項2に記載のアンカーボルト施工方法。
- 前記アンカーボルトは、軸と、該軸よりも大径の先端部とを備え、前記先端部を前記孔の底部側に配置して前記アンカーボルトを前記孔に挿入する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアンカーボルト施工方法。
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