JP2009007759A - コンクリート製耐震壁床式構造 - Google Patents

コンクリート製耐震壁床式構造 Download PDF

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Abstract

【課題】現場打ちの壁床式コンクリート構造において付着滑りを防止するために壁及び床の交差部分付近に拘束筋を挿入したものを提案する。
【解決手段】複数のコンクリート製の壁版及び床版が互いに交差し、この交差部を介して壁版及び床版内に通し配筋を配したコンクリート製耐震床壁式構造物において、交差部12を含めて壁版4及び床版6をほぼ均一なコンクリート強度で形成し、この床版6の通し配筋10と同方向に延びる曲げ補強筋18を少なくとも交差部12に挿入するとともに、この曲げ補強筋18を床版のうち交差部12と隣接する部分14へ延長することで、これら交差部12及び隣接部14を、その曲げ変形と通し配筋の付着破壊による滑りとに抵抗する補強領域16として剛体化し、補強領域16に連なる床版部分を塑性領域22とし、かつ補強領域に接する塑性領域の端部23に塑性ヒンジ形成箇所を再配置している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、コンクリート製耐震壁床式構造に関する。なお、本明細書において、「壁床式構造」とは、梁や柱を用いずに平面的な構造体(壁版及び床板)で躯体にかかる力を支える構造をいうものとする。
柱を無くして躯体を壁と床と梁とで構成した構造物は従来公知であるが、室内に梁が突き出て空間的に邪魔となることから、更に梁を省略して壁と床とで構成した構造物が提案されている(特許文献1)。
この種の構造物において、壁と床とが交差する箇所の強度を向上させるために、本出願人は、縦断面方向から見て、壁・床の交差部を含む断面十字形であって、壁・床の接合線に沿って延びた部材(壁床接合部)を、高強度のコンクリート部材として予め製造することを提案している(特許文献2)。このコンクリート部材は図16に示すように通し配筋を予め挿通した形状で構成される。
特開平11−081450号 特開2005−220517
特許文献1の構造は、躯体内の空間を広くとることができる反面、柱や梁を用いないため、壁版や床版の強度設計には十分留意する必要がある。この点に関して特許文献2は、床壁式構造の強度を高めるために床と壁との交差部付近に高強度のコンクリートを用いる手法を提案している。しかしこの手法では、現場打ちでは躯体の各部に強度の異なるコンクリートを使い分けるのが難しいため、交差部付近の高強度コンクリート部分を予めコンクリート部材として工場打ちすることになる。これでは工場から現場までのコンクリート部材の運送料がかさみ、コストを重視されるマンションなどの建設には不利である。
更に近年の研究では、壁床式の構造では床版(及び壁版)を挿通した鉄筋の付着破壊による滑りが問題となっている。付着破壊による滑りというのは、付着面が固着した状態と滑りの状態とを細かく繰り返しながら割裂する現象であり、これがコンクリートと鉄筋(通し配筋)との間で起こると鉄筋の拘束力が低下し、耐震性能が劣化する。こうした滑りを防止するためには通し配筋の長手方向のところどころに横拘束筋を多く挿入して補強する必要がある。
例えば特許文献2のコンクリート部材においても通し配筋と同じ方向に補強筋が挿入されているが、この場合には次のような問題点があった。即ち、コンクリート部材の各端部を現場打ちの床版(又は壁版)コンクリートに接合することになるが、そうするとコンクリート部材と隣接する床版(又は壁版)コンクリート部分が地震力によって塑性変形を生じ易い領域となる。そうするとこの塑性領域を避けてコンクリート部材の通し配筋を、床版のコンクリート配筋と継ぎ合わせる必要があるため、コンクリート部材からの通し配筋の突出長さを大とする必要がある。それゆえに通し配筋を含むコンクリート部材はいよいよ嵩張るものとなり、運搬が困難となる。
そこで本発明は、現場打ちの壁床式コンクリート構造において付着破壊による滑りを防止するために壁及び床の交差部分付近に拘束筋を挿入したものを提案することを目的とする。
第1の手段は、耐震壁床式構造であり、
複数のコンクリート製の壁版及び床版が互いに交差し、この交差部を介して壁版及び床版内に通し配筋を配したコンクリート製耐震床壁式構造物において、
交差部12を含めて壁版4及び床版6をほぼ均一なコンクリート強度で形成し、
この床版6の通し配筋10と同方向に延びる曲げ補強筋18を少なくとも交差部12に挿入するとともに、
この曲げ補強筋18を床版のうち交差部12と隣接する部分14へ延長することで、
これら交差部12及び隣接部14を、その曲げ変形と通し配筋の付着破壊による滑りとに抵抗する補強領域16として剛体化し、
補強領域16に連なる床版部分を塑性領域22とし、
かつ補強領域に接する塑性領域の端部23に塑性ヒンジh形成箇所を再配置している。
本手段の主題は、コンクリート強度が均一のコンクリート躯体(好ましくは現場打ちのコンクリート躯体)の一部に柱・梁・ハンチなどの肉厚部分を形成したり、高強度のコンクリートを使ったりしなくても地震力に対抗できるようにすることである。この目的を達成のために、本手段では、均一な強度で連続する壁版及び床版の構造体において塑性ヒンジの位置を交差部よりも床スパンの中央側へ再配置することとしている。具体的には、交差部と交差部に隣接する床版部分とに、通し配筋に沿って曲げ補強筋を挿入して補強し、この補強領域に接する塑性領域の端部に塑性ヒンジ形成箇所を配置している。尚、本明細書で「再配置」とは、曲げ補強筋を交差部から隣接部へ延長することで、塑性ヒンジの位置を移動することをいう。
本明細書では「剛体化」とは、補強領域を曲げ補強筋で拘束して周囲に比べて塑性変形(及び弾性変形)を生じ難くするという程度の意味である。
「補強領域」は、曲げ補強筋により強化された領域であり、こうした補強領域を通し配筋の複数個所に設置することで、配筋とコンクリートとのズレを防止している。特に本発明では、壁版との交差部を含む補強領域に曲げ補強筋を入れたので、この領域では壁の荷重で通し配筋の外周面が周囲のコンクリートとが圧接され、この圧接状態で水平方向のズレを曲げ補強筋で抑止するので、コンクリートへの通し配筋の付着力が向上する。この点について発明の実施形態の欄で詳説する。補強領域は、交差部と隣接部とで形成される。
「交差部」は、相互に交差する壁版と床版とが重なる部分であり、壁版及び床版の連結箇所であるとともに、通し配筋を周囲のコンクリートが最も強く締め付ける場所でもある。ここで「交差」とは2本の線状のものが少なくとも1点で交わることをいい、十字形に交わるものはもちろん、T字形やL字形に交わるものを含むものとする。
「隣接部」は、交差部から突出しており、床塑性ヒンジの発生箇所を交差部から床版又は壁版のスパンの中間部側へ遠ざけるための領域である。この隣接部の突出長が短すぎると通し配筋の滑りを十分に防止できず、また長すぎると交差部付近に曲げ補強筋を挿入した意味がなくなる。
「塑性領域」は、一定以上の地震の際に塑性変形して震動のエネルギーを吸収する領域である。従来公知の如くコンクリート構造は小さな揺れでは弾性変形するに過ぎないが、一定以上の大きさの揺れに対しては塑性変形して、エネルギー吸収特性を示し、構造物の揺れを減衰させる作用を有する。その際の床平均剪断力と層間変移角との関係をグラフに示すと図10のようになるが、図示の紡錘形のループの面積が大きいほどエネルギーの吸収性能が高い。地震の規模が大きい場合、塑性領域が補強領域と連続する端部では、その全面に亘って塑性変形を生じ、塑性ヒンジとして作用する。本発明において重要なことの一つは、この塑性ヒンジを壁版との交差部から床の中央側へ移動したことであり、これにより縦横の通し配筋が錯綜する交差部内での付着破壊による滑りを確実に阻止するようにしている。
「塑性ヒンジ」とは、連続した鉄筋コンクリート部材において正負交番の繰返し変形を受けた場合に塑性変形性能を発揮する部位をいい、一般的には連続面及び不連続面のいずれにも生じうる。もっとも特許文献2のように高強度のコンクリート部材を普通のコンクリートに接続したときには、その接続面近傍の普通コンクリートの部分に塑性ヒンジができるのが通常である。本手段ではコンクリート強度と厚さとが同じ構造体(特に継ぎ目なく連続したコンクリート構造)において必要箇所に曲げ補強筋を入れることで塑性ヒンジの形成箇所の位置を制御する技術である。
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記壁版4の通し配筋10と同方向に延びる曲げ補強筋18を少なくとも交差部12に挿入するとともに、
この曲げ補強筋18を壁版のうち交差部12と隣接する部分14へ延長することで、
これら交差部12及び隣接部14を、その曲げ変形と通し配筋の付着破壊による滑りとに抵抗する補強領域16として剛体化し、
補強領域16に連なる壁版部分を塑性領域22とし、
かつ補強領域に接する塑性領域の端部23に塑性ヒンジh形成箇所を再配置している。
本手段では、第1の手段で床版に適用した構造を、壁版にも適用するように形成するものである。
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ
上記塑性領域の端面24を補強領域16に継ぎ目なく連続させるとともに、現場打ちにより形成している。
工場打ちの壁床式構造において滑り防止用の曲げ補強筋を採用したから、交差部付近の高強度コンクリート部材を運搬する必要がなく、継ぎ目がない場所に塑性ヒンジを形成するようにしたから、不連続面に塑性ヒンジを形成する場合と比べてより大きな塑性変形に耐えることができる。
第4の手段は、第1の手段から第3の手段のいずれかを有し、かつ
上述の補強領域16内での曲げ補強筋18の鉄筋量を、通し配筋の鉄筋量及び強度に応じて、地震により生ずる通し配筋の降伏時の軸力によって通し配筋の付着破壊による滑りを生じない鉄筋量としている。
即ち、通し配筋の鉄筋量及び強度が大きくなると、その鉄筋の表面に作用する力の総量も大きくなるから、その力を通し配筋に代わって曲げ補強筋が負担するためには曲げ補強筋の長さを大きくする必要がある。もっとも曲げ補強筋の長さには限りがあるので、複数の曲げ補強筋を補強領域に挿入し、その長さの総和が必要長さになればよい。またこれら各鉄筋に作用する力は、考えうる範囲で最大の力、即ち鉄筋の降伏時の力とすればよい。
第5の手段は、第1の手段を有し、
床版6及び壁版4のうちの一方内部での曲げ補強筋18の長さを、他方の版厚の2倍から3倍の範囲としている。
曲げ補強筋の長さは、本来は前述の通り通し鉄筋の鉄筋量などから設計するが、通常の建物(10階建て程度、或いは免震ならば15階建て程度)であれば2〜4倍程度あればよい。
第6の手段は、第1の手段から第5の手段の何れかを有し、かつ
曲げ補強筋18の両端に、その鉄筋中間部に比べて定着力の大きな形を有する定着部20を設けている。
本手段では、曲げ補強筋の両端部に定着部を設けることで塑性ヒンジの位置を明瞭にすることを提案している。即ち補強領域の両端での曲げ補強筋の拘束力を高めることで、そうした拘束力のない塑性領域は変形し易く、他方、補強領域は変形しにくくしたものである。これにより補強領域内での通し配筋の付着破壊による滑りを防止できる。「定着部」とは、定着力が大きい、碇(アンカー)としての機能を有する部分であり、その機能を果たせばどのような形状でもよい。例えば一本の曲げ補強筋の両端部を、図6の如くフック状の屈曲部としたり、表面にリブなどを周設した拡径部としてもよく(図示せず)、更に図7の如く曲げ補強筋をループ状としてそのコーナー部分を定着部としてもよい。
第7の手段は、第1の手段から第6の手段の何れかを有し、かつ
交差部12での通し配筋10の付着力と隣接部14での通し配筋10の付着力との合計が、補強領域16内における通し配筋10の必要付着力を上回るように壁体及び床版からなる躯体全体のコンクリート強度を設計している。
本手段では、躯体全体のコンクリート強度を設計するときに、交差部での通し配筋の付着力の他に、隣接部での通し配筋の付着力を考慮することを提案している。即ち、交差部での通し配筋の付着力をTc,隣接部での通し配筋の付着力をTn、通し配筋の必要付着力をTaとすると、次式のようになる。この式の具体的内容については後述するが、コンクリートの圧縮強度をσとすると、Tc∝{1+(σ/σ))×σ 2/3であり、また、Tn∝√(σ)である。他方、通し配筋のJIS規格降伏強度に比例する定数であり、これより数式1を満足するようにσを決定することができる。
[数式1]Tc+Tn≧Ta
なお、躯体のコンクリート強度の上限値は適切な変形性能が得られるように設定すればよい。コンクリート強度が高すぎると付着性能が良くなり過ぎて、エネルギー吸収性能が高くなるが、変形性能が小さくなるデメリットがある。例えば終局限界層間変位角が1.5〜4%となるように設計すればよい。
第1の手段に係る発明によれば次の効果を奏する。
○コンクリート強度が均一の壁床式構造において曲げ補強筋18を挿入したから、その補強筋の挿入場所に応じて塑性ヒンジの形成箇所を自由に設定できる。
○壁の荷重がかかる交差部及び隣接部内に曲げ補強筋18を挿入したから、配筋の拘束力と荷重とが相俟ってコンクリートへの通し配筋の付着力を高めることができる。
第2の手段に係る発明によれば、壁版4と床版6とをそれぞれ曲げ補強筋18で補強したから、耐震性が更に高まる。
第3の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○現場打ちした壁床式コンクリート構造において交差部及び隣接部に曲げ補強筋を挿入したから、交差部及び隣接部を別体のプレキャスト部材として形成する場合に比べて低コストで形成できる。
○塑性領域22を補強領域16に継ぎ目なく接続したから、不連続面に塑性ヒンジを形成させる場合と比べて地震エネルギーを有効に吸収することができるとともに、塑性ヒンジの位置を自由に設定できる。
第4の手段に係る発明によれば、曲げ補強筋18の長さを地震により生ずる通し配筋の降伏時の軸力によって付着破壊による滑りを生じない長さとしたから、配筋が降伏しない範囲において付着破壊による滑りを完全に防止することができる。
第5の手段に係る発明によれば、床版6及び壁版4のうち一方部材内の曲げ補強筋18の長さを、一方又は他方の部材の厚さの2倍以上としたから、経験的に付着破壊による滑りを十分に防止することができる。
第6の手段に係る発明によれば、曲げ補強筋18の両端に、その鉄筋中間部に比べて定着力の大きな形を有する定着部20を設けたから、塑性領域22の端部の始まり位置が明確になり、設計上有利である。
第7の手段によれば、交差部12での通し配筋10の付着力と隣接部14での通し配筋10の付着力との合計が、補強領域16内における通し配筋10の必要付着力を上回るように壁体及び床版からなる躯体全体のコンクリート強度を設計したから、付着破壊による滑りを防止して地震などのエネルギーを十分に吸収することができる。
図1から図8は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート製耐震壁床式構造2を示している。
この壁床式構造2は、図1に示すようにコンクリート製の壁版4と床版6と天井スラブ8とで現場打ちにより一体的に打設されている。なお、本明細書において、壁版及び床版というときには、建物の躯体を形成する平板状の構造材を指すものとする。壁板及び床板と言ってもよいが、内装材としての床板などと区別するためにこのように称する。
まず本発明の構成のうち従来公知の事項を簡単に説明する。図示の構造物は、多層ボックスカルバート状に形成されており、集合住宅やマンションとして用いることができる。壁版4、床版6、及び天井スラブ8は、それぞれ鉄筋コンクリート板であり、床版及び天井スラブには上下一対の通し配筋10を、また壁版には左右一対の通し配筋10を通している。これら壁版4、床版6、及び天井スラブ8は相互に交差している。外壁と床スラブとの交差箇所、及び天井スラブと内壁との交差箇所ではT字形(又は横倒しのT字形)に、それ以外の箇所では十字形に交差している。この交差部12では上記縦の通し配筋10と横の通し配筋10とが交錯している。
本発明においては、この交差部12から交差部と連続する隣接部14に亘って、曲げ補強筋18が挿入され、この曲げ補強筋の拘束力により上記交差部12と隣接部14とを、補強領域16としている。
この補強領域16は、側方(図面では前方)から見て十字形又はT字形であって、壁と床との稜線に沿って奥行き方向に延びる部分であり、縦方向及び横方向の曲げ補強筋の拘束力で剛体化している。剛体化と言っても、外部からの引っ張り力や曲げ応力に対抗して、コンクリートと通し配筋との間の滑りを防止できればよい。もっとも曲げ補強筋や通し配筋にプレストレスをかけることも可能である。曲げ補強筋による補強領域16を、壁版4の前後方向、及び床版6の左右水平方向に間欠的に形成することで、少ない鉄筋量で効果的に通し配筋の付着すべりを防止できる。また、曲げ補強筋を交差部付近に挿入したのは次の理由による。仮に交差部間の床版のスパンの中間部に曲げ補強筋を挿入したとすれば、その中間部の重量が過剰になって好ましくない。これに対して交差部及び隣接部に曲げ補強筋を入れたときには、その重量が壁にかかるので建物に無用の変形が生じないばかりか、その荷重が下の層の交差部に伝わり、この交差部内で床版の通し配筋とコンクリートとが密着するので、付着力が向上する。
上記交差部12は、躯体のうち床版及び壁版が共有する部分である。補強領域16の中でも鉄筋の密度が最も高く、通し配筋10の滑りを防止する上で最も重要な働きをする。
上記隣接部14は、交差部に隣接しており、かつ曲げ補強筋の垂直又は水平部分と定着しているコンクリート部分である。図2及び図3に示すように、壁版及び床版が十字状に交差している箇所では、交差部から左右方向及び上下方向へ突出する4つの隣接部があり、また、図4及び図5のように壁版及び床版がT字状に交差する箇所では、3つの隣接部がある。一般的には床版の隣接部の突出長(横巾)Lは、おおよそ壁版の厚さと同じ程度、また壁版の隣接部の突出長(縦巾)Lは、おおよそ床版の厚さと同じ程度とすることが望ましい。図面では、床版及び壁版を同じ厚さに描いているが、例えば建物の下層階などのように壁版厚を床版厚より大きくすべき場合には、それぞれに隣接部の長さを設定する。更に具体的には曲げ補強筋の長さに関連して説明する。もっとも隣接部14の長さを標準的な長さよりも大きく設定することもできる。
上記曲げ補強筋18は、補強領域16内に縦横に配置されている。床版内では、図2に示す如く上下の通し配筋10にそれぞれ沿う上端筋及び下端筋として各通し配筋と平行に配置する。全ての曲げ補強筋は同じ長さで、左右の隣接部の各外端の間に伸びている。壁版内でも、図3に示すように対応した構造とする。曲げ補強筋18は、両端部に一対の定着部20を有し、両定着部が補強領域の端部に配置されることで、補強領域内のコンクリートをしっかりと拘束する。図示例の定着部はフック状であるが、その形状は適宜変更することができる。曲げ補強筋の長さは交差部と隣接部との長さの総和である。曲げ補強筋の長さ及び本数は、通し配筋の筋量及び強度に応じて、地震により生ずる通し配筋の降伏時の軸力によって通し配筋の付着破壊による滑りを生じないように設計する。
補強領域16の隣の床版部分及び壁版部分は、補強領域に比べて変形し易い部分で、本明細書ではこれを塑性領域22と呼んでいる。塑性領域は補強領域と同じ強度のコンクリートで形成されている。塑性領域22の端面24は補強領域16と継目なく連続しており、一定以上のゆれが加わったときには塑性領域の端部23に塑性ヒンジhが生ずる。
上記構成によれば、地震が起きたときに交差部12及び隣接部14は曲げ補強筋18で拘束されているため、その範囲では変形を生じず、その外側の塑性領域22で塑性変形が起こる。このとき、塑性ヒンジhが形成される場所は塑性領域22の端部23であり、交差部から離れるので、コンクリートに対する曲げ補強筋の付着破壊による滑りが防止される。
次に本発明の構造物の設計の手順について説明する。本発明では、交差部12内及び隣接部14内内における付着力が、通し配筋の必要付着力を上回るように設計する。具体的には次の数式2のように設計する。この数式2は数式1(Tc+Tn≧Ta)の具体例である。以下の説明では床版の通し配筋の付着力について説明する。
[数式2]π×d×τ×D+π×d×τ×2(r×r×D)≧(π/4)×d ×κ×σ(1+γ)
この数式2の左辺第1項(Tc=π×d×τ×D)は、交差部中の通し配筋部分の付着力を表す。dは通し配筋の径であり、τは交差部内の付着強度、Dは壁版の厚さである。この項の意味は、[交差部中の通し配筋部分の付着力]=[配筋部分の表面積]×[付着強度]ということであり、従来公知の事項である。そして交差部内の付着強度は、数式3で定める。Cは交差部の付着強度を定める定数で、好適な数値は1.0もしくは1.25である。σは壁の圧縮軸応力度(N/mm)である。
[数式3]τ=C×0.7{1+(σ/σ))×σ 2/3 (N/mm
数式3の左辺第2項(Tn=π×d×τ×2(r×r×D))は、隣接部中の通し配筋部分の付着力を表す。τは隣接部内の付着強度である。rは壁厚に対する隣接部の突出長の比であり、更にrは隣接部の突出長のうち付着応力を有効に担う部分の長さ(有効付着長)である。保有耐力時の層間変形角Rが2%以下の場合は、r=1.0としてよい。そして隣接部中の付着強度は数式4で定める。Cは隣接部の付着強度を定める定数で好適な数値は1.2である。
[数式4]Tc=C×(0.4b+0.5)√(σ) (N/mm
またbは、b=[b/(Nb×d)−1]で与えられる定数である。bは任意の検討巾であり、Nbはbにおける通し配筋の本数である。
数式3の左辺は、通し配筋の必要付着力である。同式中κは上限強度算定用の強度を定めるための係数、σは通し配筋のJIS規格降伏強度、γは複筋比である。
[実施例1]
次に上記の計算方法に従ってさまざまな強度の試験体について引っ張り鉄筋比とコンクリート強度との関係を試験した。ここでr=0.5,=1.0とする。通し配筋の鉄筋をD19,D22、D25とする(なお、DNとは、鉄筋の径がNmmという意味である)。鉄筋降伏強度をσ=345N/mmとし、κ=1.25とする。これら条件のもとで数式2を満足しない引っ張り鉄筋比ptとコンクリート強度の組み合わせをプロットすると図9となる。同図の点線は全てのデータを直線回帰したものである。これからpに応じて最小限のコンクリート強度を求めることができる。なお、梁の長さがb、成(上下幅)がD、有効成(梁の上端面から下端筋までの距離をいう)がd、長さb内の上端筋及び下端筋の各本数をN本、各鉄筋の断面積を(π×d )/4とすると、pt={(π×d )/4}×N/(b×d)となる。これを用いて図9が導かれる。
[実施例2]
コンクリート強度と通し配筋の量とをパラメータとした表1の各試験体について耐震性能を調べるための実験を行った。
Figure 2009007759
図10は、中程度のコンクリート強度(σ=29.7)を有する試験体No10のデータを示している。これは変形と荷重とがちょうどよくバランスしている例である。即ち、層間変位角は7%以上と耐震性能上十分な変形性能を示している。またエネルギーの吸収特性に関しても一般的なラーメン架構での梁部材と同等以上のエネルギー吸収性能を有している。なお、エネルギー吸収性能の良否の判断は等価粘性減衰係数heqによって行った。図14は、図10から得られたheqに対して一般的な架構梁部材の等価粘性減衰定数推定値(同図破線)を比較した結果である。同図によれば等価粘性減衰定数の実験値は推定値を上回っており、良好なエネルギー吸収特性を示していると判断できる。
次いで図11は、やや小さなコンクリート強度(σ=27.4)を有する試験体No3のデータを示している。層間変位角は7%程度あるが、図10に比べて荷重−変形関係を表す紡錘形の面積が小さく、エネルギー吸収性能が低い。図15は、試験体No10の図14に対応する図であるが、エネルギー吸収性能の実測値は推定値を下回っている。
図12は、大きなコンクリート強度(σ=48.5)を有する試験体No8のデータを示している。荷重−変形関係は十分に膨らんだ紡錘形状でエネルギー吸収特性に富むことが見てとれるが、変形性能に乏しく層間変位角で3%程度を超えた時点で破壊が生じている。
図15は、上記の考察をまとめた結果として、通し配筋の鉄筋比pとコンクリート圧縮強度の組み合わせをプロットしたものである。エネルギー吸収性能及び変形性能ともに良好な範囲Sをハッチングで示している。これに対してSは付着破壊による滑りが生じてエネルギー吸収性能に劣る範囲であり、Sはエネルギー吸収性能が大きすぎて変形性能に劣る範囲である。
本発明の実施形態に係る壁床式構造物を前壁を切り欠いて示す斜視図である。 図1の構造物の要部を示す拡大断面図である。 図1の構造物の要部を示す拡大断面図である。 図1の構造物の他の要部を示す拡大断面図である。 図1の構造物のさらに他の要部を示す拡大断面図である。 図1の構造物に使用される曲げ補強筋の一例を示す図である。 図1の構造物に使用される曲げ補強筋の他の例を示す図である。 図1の要部の作用説明図である。 図1の構造物の試験体の荷重−変形実験の結果を示すグラフである。 図1の構造物の荷重−変形試験を条件を変えて行った結果の1である。 図1の構造物の荷重−変形試験を条件を変えて行った結果の2である。 図1の構造物の荷重−変形試験を条件を変えて行った結果の3である。 図10の結果を分析したグラフである。 図11の結果を分析したグラフである。 図10〜図12の試験の結果をまとめたグラフである。 従来技術の床及び壁の交差部に相当するコンクリート部材の端面図である。
符号の説明
2…壁床式構造 4…壁版 6…床版 8…天井スラブ 10…通し配筋
12…交差部 14…隣接部 16…補強領域 18…曲げ補強筋
20…定着部 22…塑性領域 23…端部 24…端面 h…塑性ヒンジ

Claims (7)

  1. 複数のコンクリート製の壁版及び床版が互いに交差し、この交差部を介して壁版及び床版内に通し配筋を配したコンクリート製耐震床壁式構造物において、
    交差部12を含めて壁版4及び床版6をほぼ均一なコンクリート強度で形成し、
    この床版6の通し配筋10と同方向に延びる曲げ補強筋18を少なくとも交差部12に挿入するとともに、
    この曲げ補強筋18を床版のうち交差部12と隣接する部分14へ延長することで、
    これら交差部12及び隣接部14を、その曲げ変形と通し配筋の付着破壊による滑りとに抵抗する補強領域16として剛体化し、
    補強領域16に連なる床版部分を塑性領域22とし、
    かつ補強領域に接する塑性領域の端部23に塑性ヒンジh形成箇所を再配置したことを特徴とする、コンクリート製耐震壁床式構造。
  2. 上記壁版4の通し配筋10と同方向に延びる曲げ補強筋18を少なくとも交差部12に挿入するとともに、
    この曲げ補強筋18を壁版のうち交差部12と隣接する部分14へ延長することで、
    これら交差部12及び隣接部14を、その曲げ変形と通し配筋の付着破壊による滑りとに抵抗する補強領域16として剛体化し、
    補強領域16に連なる壁版部分を塑性領域22とし、
    かつ補強領域に接する塑性領域の端部23に塑性ヒンジh形成箇所を再配置したことを特徴とする、請求項1記載のコンクリート製耐震壁床式構造。
  3. 上記塑性領域の端面24を補強領域16に継ぎ目なく連続させるとともに、現場打ちにより形成したことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のコンクリート製耐震壁床式構造。
  4. 上述の補強領域16内での曲げ補強筋18の鉄筋量を、通し配筋の鉄筋量及び強度に応じて、地震により生ずる通し配筋の降伏時の軸力によって通し配筋の付着破壊による滑りを生じない鉄筋量としたことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンクリート製耐震壁床式構造。
  5. 床版6及び壁版4のうちの一方内部での曲げ補強筋18の長さを、一方又は他方の版厚の2倍から3倍の範囲としたことを特徴とする、請求項1記載のコンクリート製耐震壁床式構造。
  6. 曲げ補強筋18の両端に、その鉄筋中間部に比べて定着力の大きな形を有する定着部20を設けたことを特徴とする、請求項1から請求項5の何れかに記載のコンクリート製耐震壁床式構造。
  7. 交差部12での通し配筋10の付着力と隣接部14での通し配筋10の付着力との合計が、補強領域16内における通し配筋10の必要付着力を上回るように壁体及び床版からなる躯体全体のコンクリート強度を設計したことを特徴とする、請求項1から請求項6の何れかに記載のコンクリート製耐震壁床式構造。
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