本発明の苗移植機について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
以下に、本発明にかかる実施の形態1における苗移植機について説明する。
図1(a)は、本実施の形態1の苗移植機の左側面構成図である。図2は、本実施の形態1の苗移植機の平面構成図である。図1(a)及び図2に示すように、本実施の形態1の苗移植機では、走行車体5の後側にリフトリンク6を介して、植え付け装置7が装着されている。走行車体5は、ステアリングポスト8上に配置されている操舵部材34によって操向する前輪10と、運転席11の後側に配置されている後輪12を有している。運転席11の下側には、エンジン13が搭載されており、フロア14の下側の油圧式無段変速装置15や、ミッションケース16内の伝動機構などを介して伝動駆動して走行する。操舵部材34の下方のステアリングポスト8には、植え付けタイミングを調整する調節部350が設けられている。
また、図1(b)は、調節部350の正面図である。図1(b)に示すように、調節部350には、植え付けタイミング調節ダイヤル351、352が設けられている。この植え付けタイミング調節ダイヤル351は、左旋回時の植え付けタイミングを調整するためのものであり、植え付けタイミング調節ダイヤル352は右旋回時の植え付けタイミングを調整するためのものである。植え付けタイミング調節ダイヤル351、352を時計回りに動かすと、旋回後の植え付けタイミングが早くなり、反時計回りに動かすと、旋回後の植え付けタイミングが遅くなるように調整することが出来る。
上記リフトリンク6は、メインフレーム115の後端に立設した背面視門形状のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、リフトシリンダ17の伸縮によって昇降可能に構成され、この後端に、フロート18、苗植フレーム19、苗載置台20、及び苗植え付け爪21等を有している植え付け装置7が装着されている。各フロート18の前側には、代掻ロータ22が設けられており、後輪12の後輪軸23を軸受けする左右後輪ギヤケース24から代掻軸25等を介して、連動駆動する。
また、走行車体5の後部上には、圃場に供給する肥料を貯留する施肥装置26が設けられており、該施肥装置26から排出される肥料は施肥肥料ホース27によって案内される。そして、この肥料は各フロート18の均平部に設けられている作溝器部28へ流下され、苗植え付け爪21による苗植え付け土壌部の近傍に施肥される。
ステアリングポスト8の右側面側には、バックミラー163及び補助苗枠29が設けられている。また、走行車体5の前端部には、アーム軸50を介してフロントアーム30が設けられており、フロア14の横側には、ステップ55が設けられている。
植え付け装置7の左側と右側に、線引きマーカ1が設けられている。この線引きマーカ1は、植え付け装置7の下部とマーカアーム31によって連結されており、植え付け装置7の下部側を中心に上下回動可能に構成されている。すなわち、マーカアーム31が上方に回動すると、線引きマーカ1は、苗載置台20の上部の側方に位置し、マーカアーム31が下方に回動すると、線引きマーカ1は植え付け装置7の左側と右側の土壌面に接するように位置することになる。この苗載置台20の上部の側方に位置が、本発明の待機位置の一例に対応し、土壌面に接している位置が、本発明の使用位置の一例に対応する。
次に、植え付け装置7について説明する。
本実施の形態1の植え付け装置7は、4条の植え付け用であり、苗を載置する苗載置台20を備えている。この苗載置台20は、左側面側から順に、各条に対応した4つの載置台部171a、171b、171c、171dを有している。そして、各載置台部171a、171b、171c、171dには、苗を下方に移動させる苗送り装置172が2つずつ設けられており、各苗送り装置172は、苗送りベルト173を有している。
そして、左側面側の2条分の苗送り装置172に共通の苗送りモータ180aと、右側面側の2条分の苗送り装置172に共通の苗送りモータ180bが設けられている。苗載置台171の下端には、前板174が配置されており、苗が落下することを防いでいる。この前板174には、各条に合わせて切り欠きが形成されており、この切り欠き部分によって苗取り出し口175が構成される。この苗取り出し口175から、その後側に設けられている植え付け部177によって苗が取り出される。
該植え付け部177は、条毎に設けられており、計4つ配置されている。植え付け部177は、苗を取り出して植え付ける2つの苗植え付け爪21と、2つの苗植え付け爪21が取り付けられている回転プレート176とを有している。尚、苗植え付け爪21近傍の構成については、図23、24で後述する。
4つの植え付け部177a、177b、177c、177dのうち左側面側の2つの植え付け部177a、177bの回転プレート176は、共通の駆動伝達機構によって回転し、右側面側の2つの植え付け部177c、177dの回転プレート176は、共通の駆動伝達機構によって回転するように構成されている。詳しく説明すると、苗植フレーム19の左側面側の後端部19aに、駆動軸178が設けられており、この駆動軸178の両端に、回転プレート176が取り付けられている。
また、苗植フレーム19の右側面側の後端部19bに駆動軸178が設けられており、この駆動軸178の両端に回転プレート176が取り付けられている。駆動軸178の回転により、それぞれの条について2つの苗植え付け爪21が、図1の一点鎖線Sで示す軌跡を描いて交互に載置台部171a、171b、171c、171dから苗を取り出す。この左側面側の駆動軸178と右側面側の駆動軸178への駆動を入切するための畦クラッチがそれぞれ設けられており、この畦クラッチを入切するための畦クラッチレバー181a、181bが設けられている。
例えば、右側面側に配置されている畦クラッチレバー181aを切ることにより、右側面側の駆動軸178への伝動が切られ、右側面側の2条の植え付けが停止することになる。一方、畦クラッチレバー181bを切ることにより、左側面側の駆動軸178への伝動が切られ、左側面側の2条の植え付けが停止することになる。
また、図1に示すように、運転者が操舵部材34を左または右に操舵するのを検出するために、操舵部材シャフト35の途中には、回転式ポテンショメータ等の操舵方向検知部319が設けられており、その回転の方向や角度や操作速度を検出し制御部330(後述する図13参照)に伝える。
次に、図3は、本実施の形態の苗移植機の前方部の拡大側面図であり、図5は同苗移植機の拡大正面図である。また、図4はピットマンアームの平面構成図である。
操舵部材34の操舵を受けて前輪10、10を回動させるT字型のピットマンアーム60が走行車体5の前方底側に設けられている。すなわち、操舵部材34の回転に応じて、操舵部材シャフト35が回動し、ピニオン機構を介して、あるいはパワステ機構を介して、T字型のピットマンアーム60が回動する。60bはその回動軸である。
このピットマンアーム60のT字型の2つの先端部60a、60aには、2本のタイロッドが回動可能に取り付けられ、それぞれのタイロッドは左右の前輪ファイナルケース113、113に取り付けられているナックルアームに連結されている(図示省略)。
これによって、操舵部材34を操舵することによって、右及び左の前輪10を左右に走行操作できるようになっている。
他方、このピットマンアーム60は上述したように左右線対称のT字型をしており、左右両先端部60a、60aの中間位置に、すなわち、左右線対称の中心線上に、円柱状ピン61が立設している。その円柱状ピン61の上端には前方方向に向かって水平にロッド62が回動自在に取り付けられている。さらに、このロッド62の先端62aには、その側面に連結ピン63が固定され、さらに、その連結ピン63の端部には、アーム64(64a、64b、64c)が取り付けられている。このアーム64(64a、64b、64c)は、上方に向かう部分64aと、水平に横に伸びる部分64bと、さらにそこから上方に伸びる部分64cとで構成されている。このように、ロッド62はピットマンアーム60の中心線上に位置しているので、右旋回でも左旋回でも同量の引っ張り力が出るという効果を奏する。
このアーム64の前側には、走行車体5のフロントフレーム70が配置されており、またそのアーム64の後側には、走行車体5のミッションケース16が配置されている。従って、アーム64は、フロントフレーム70と、ミッションケース16との間に設置されていることになる。そのため、作業中に藁屑などの夾雑物がこれらアーム64に絡むことを防止出来、アーム64が夾雑物により機能しなくなる、あるいは勝手に動いてしまうといった不都合が防止できる。また、絡みついた夾雑物を取り除く必要が無くなり、メンテナンス性が向上する。
さらに、アーム64の上方部分64cの上端64c1には、ケーブル71が回動自在に取り付けられている。
なお、図3、図5において、72は上述したケーブル71と連結したケーブル端部である。また、このケーブル端部72は旋回切替操舵具73に回動可能に連結されている。また、74は切替カムであり、75はその切替カム74の位置決め溝であり、76はバックリフトアームであり、77は位置決めローラであり、78は切替カム74を前方(図面上右方向)へ付勢するスプリングであり、99は旋回の際に切替カム74を駆動させるモータである。
次に、それらの部品の詳細を説明する。
図6は本実施の形態の苗移植機の切替カム付近を示す側面構成図、図7は同切替カム付近を示す正面構成図、図8は同切替カム付近を示す斜視構成図である。なお、図8は部材の配置関係を理解しやすくするために描かれた図であって、寸法、配置、形状など誇張して描いた模式図である。
植え付け装置7の昇降を設定するための植え付け昇降レバー33の下端33aは、ブラケット81を介して、軸80に回動可能に取り付けられているとともに、このブラケット81には切替カム74の上端が固定されている。従って、植え付け昇降レバー33を移動させることによって、切替カム74を回動出来るようになっている。また、切替カム74は上述したように前方方向に常時スプリング78によって付勢されている(図8上、矢印A方向)。
この切替カム74は中央に横長形状の窓75が穿設されている。この窓75の上側端縁には4個の溝751が並んで形成されている。この窓75には、水平方向に配置された位置決めローラ77の先端が挿入されている。
この位置決めローラ77は常時上方方向にスプリングで付勢されており、4個の溝751のいずれかに半分程度嵌められるが、後述するような色々な力によってスプリングに対抗して下方方向へ移動しうるようになっている。この位置決めローラ77は水平方向に配置されているが、切替カム74の内側(図8上では切替カム74の向こう側)の部分には先ず、バックリフトアーム76が固定されている。さらに、その内側にはバックリフト入り切りレバー82が回動可能に取り付けられている。
さらに、切替カム74とバックリフトアーム76との間の隙間には、旋回切替操作具73が配置されている。そして、この旋回切替操作具73と、前記バックリフトアーム76は各後端部がそれぞれ共通の支持軸79に回動自在に連結されている。ここで同一の支持軸79で旋回切替操舵具73とバックリフトアーム76が回動支持されているので、構造が簡単になるという効果がある。
この旋回切替操舵具73の前端には、ピン721を介して、上述したとおり、ケーブル71と連結したケーブル端部72が回動可能に連結されている。従って、ピットマンアーム60の動きによって旋回切替操舵具73が移動するようになっている。さらに、この旋回切替操舵具73の中央位置には孔732が開けられ、その孔にロックピン731が通常嵌め込まれている。このロックピン731はバックリフトアーム76に固定されている。従って、通常は、旋回切替操舵具73の移動に従って、バックリフトアーム76も移動するようになっている。
そして、そのバックリフトアーム76は位置決めローラ77に固定されているので、バックリフトアーム76の移動に従って、位置決めローラ77も上下に移動することになっている。もちろん、この旋回切替操舵具73は手動によって左右方向(紙面に対して垂直方向)に移動出来、任意にロックピン731から外すことが出来るようになっている。
この位置決めローラ77が下方へ移動すると、溝751から外れるので、切替カム74は矢印A方向に回動するようになっている。
他方、バックリフト入り切りレバー82には、逆L字状の切り欠き孔84が穿設されている。すなわち、縦長部分と横長部分とでこの切り欠き孔84は構成されている。その切り欠き孔84には水平方向に配置されたバー83の先端が挿入されている。このバー83は、変速レバー36が後進に設定されたとき、ワイヤー、ロッドなどを介して下方向に移動するようになっている。
すなわち、変速レバー36が後進に設定されると、その変速レバー36の移動に応じて、ロッド及びケーブルを通じて、バー83が下降する機構になっている。
従って、このバー83がL字型切り欠き孔84の横長部分に位置している場合は、バー83が下方向に移動することによって、バックリフト入り切りレバー82は押されて下方向に移動する。上述したように、このバックリフト入り切りレバー82は位置決めローラ77に連結されているので、位置決めローラ77は下方に移動することになる。これに対して、このバー83がL字型切り欠き孔84の縦長部分に位置している場合は、バー83が下方向に移動しても、縦長部分を移動するに止まるので、バックリフト入り切りレバー82を押し下げる力は働かず、位置決めローラ77も下方へ移動することにならない。
さらに、バックリフト入り切りレバー82は位置決めローラ77に対して回動可能に連結されているので、作業者が手で回動して適宜位置決め(前方へ引き出すか、後方へ押し込むか)することによって、上述した、後進の際、バックリフト入り切りレバー82を、そして、位置決めローラ77を自動的に下方へ押し下げるモードと、押し下げないモードを任意に選択できるようになっている。なお、このバックリフト入り切りレバー82より、上述した旋回切替操作具73の方が前方へ突出しているので、旋回切替操作具73の方が扱い易くなっている。その結果、バックリフト入り切りレバー82の入り切り頻度の方が旋回切替操作具73の切替頻度より、通常少ないので、作業者にとって都合がよい。
次に、図9は植え付け昇降レバー33と切替カム74との関係を示す側面図であり、図10は切替カム74の側面図である。以下に、図9と図10を用いて、植え付け昇降レバー33と切替カム74との関連を説明する。
植え付け昇降レバー33はその位置によって、手前から、「上昇」、「停止」、「下降」、「植え付け」の各モードを切替設定出来るようになっている。他方、切替カム74の第1〜第4溝751a、751b、751c、751dは、それぞれ「上昇」、「停止」、「下降」、「植え付け」に対応している。すなわち、「上昇」の位置に植え付け昇降レバー33を例えば手で設定すると、切替カム74は前方へ移動し、位置決めローラ77は相対的に後退して第1溝751aに収まる。また、「停止」の位置に植え付け昇降レバー33を設定すると、切替カム74は少し後に移動し、位置決めローラ77は第2溝751bに収まる。また、「下降」の位置に植え付け昇降レバー33を例えば手で設定すると(図9の状態)、切替カム74はさらに少し後に移動し、位置決めローラ77は第3溝751cに収まる。また、「植え付け」の位置に植え付け昇降レバー33を例えば手で設定すると、切替カム74はさらに少し後に移動し、位置決めローラ77は第4溝751dに収まる(図10の状態)。
このようにして、植え付け昇降レバー33を操作することによって、切替カム74を4種類の位置に移動させることが出来る。
この切替カム74の移動は、ワイヤーやロッド、アームなどを介して、植え付け装置7のリフトシリンダ17への油路を切り換える切替バルブ461に連動している。その結果、その連動によって、切替カム74の移動によって、植え付け装置7の昇降、停止、下降、植え付けがそれぞれ制御されるようになっている。
次に、図6に示すように、走行車体5の、切替カム74の後方の付近には、本発明の駆動アクチュエータの一例としてのモータ99などが配設されている。このモータ99は、走行車体5が圃場の端に達して旋回走行に移り、その旋回に伴って後輪が回転する際、その後輪が所定数回転した時点で、植え付け装置7を自動的に下降させるとともに、線引きマーカ1を自動的に下降させるための手段である。
すなわち、後述する図13に示すように、モータ99は制御部330からの指示に基づき、支持軸101を時計方向又は反時計方向に回動させる手段である。この支持軸101にはモータアーム103が固定されている。従って、モータアーム103も時計回り又は反時計回り方向に回動する。このモータアーム103の先端にはピン102が立設している。
他方、切替カム74の後方より位置にはピン105が立設している。このピン105には回動可能に、植え付けアーム100が連結されている。さらに、この植え付けアーム100にはその長手方向に長孔104が開設されている。この長孔104に、上述したモータアーム103のピン102が回動可能且つ摺動可能に嵌め合わされている。
詳しくは後述するが、モータアーム103の先端には、左側面側の線引きマーカ1のロックを解除し、線引きマーカ1を下方に回動させるための左側面側ロック解除ワイヤー320Lが連結されている。この左側面側ロック解除ワイヤー320Lは、モータアーム103の下側に設けられたワイヤー支持具321内を通されており、ワイヤー支持具321はフレームに固定されている。
また、モータアーム103の先端には、右側面側の線引きマーカ1のロックを解除し、線引きマーカ1を下方に回動させるための右側面側ロック解除ワイヤー320Rが連結されている。この右側面側ロック解除ワイヤー320Rは、モータアーム103の上側に設けられたワイヤー支持具321内を通されており、ワイヤー支持具321はフレームに固定されている。尚、詳しくは後述するが、図9に示す構成では、右側面側ロック解除ワイヤー320Rが引っ張られている状態が示されている。
さらに、切替カム74の後方下端には、切替カム74の位置を検出するために、三角形のプレート90が固定されている。このプレート90の頂点付近にはピン91が固定されている。他方、走行車体5の、上述したモータ99などの下方には、ポテンショメータ93が設けられている。このポテンショメータ93は、その軸に固定された、長孔94が開設されたメータアーム92を有している。このメータアーム92の回動角度が検出されるようになっている。そして、長孔94に上述したプレート90のピン91が回動可能且つ摺動可能に嵌め合わされている。
従って、切替カム74の位置に応じてプレート90とピン91が移動し、その結果、メータアーム92も対応して回動する。これによってポテンショメータ93が、切替カム74の位置を精密に検出することが出来るようになっている。なお、切替カム74の移動に応じて移動するピン91の可動範囲よりも長く、長孔94が開設されていることによって、誤検知を防止できる。
図11は、本実施の形態の苗移植機の側面図である。上述したように、ミッションケース16の背面部にメインフレーム115の前端部が固着されており、他方、そのメインフレーム115の後端左右中央部に水平に設けた後輪上下動支点軸181を支点にして左右後輪ギヤケース24、24がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース24,24から外向きに突出する後輪軸23に後輪12、12が取り付けられている。18aは後輪伝動軸である。
ここに、後輪上下動支点軸181に隣接して後輪12の回転数を検出する、本発明の走行回転検知部の一例に対応する回転センサ182が設けられている。このような構造によって、後輪が回動しても検出された回転数は安定する。
次に、本実施の形態の線引きマーカ1を上下回動させる構成について説明する。
図12(a)は、本実施の形態の苗移植機の植え付け装置7の右側面側の平面構成図である。尚、図12(a)では、マーカ回動支持プレート311近傍は、分かりやすくするために背面から視た状態として示している。
図12(a)では、線引きマーカ1が上方に回動された状態が示されている。尚、図12(a)では、苗載置台171は省略されている。図12(a)に示すように、線引きマーカ1と植え付け装置7の下部とを接続するマーカアーム31は、植え付け装置7の下部フレーム700から上方に伸び、外側に折れ曲がったL字形状に形成されている。マーカアーム31の植え付け装置7側の端には、マーカ回動支持プレート311が設けられており、植え付け装置7の下部フレーム700に回動軸312で回動可能に軸支されている。図12(b)は、マーカ回動支持プレート311周辺の側面構成図である。
マーカ回動支持プレート311の回動軸312の上側の内側部分311cには、上昇ワイヤー313の連結部314が設けられている。そして、マーカ回動支持プレート311の図中下側の端部分311aは内側に向かってバネ部材322によって付勢されている(矢印B参照)ため、マーカ回動支持プレート311は、回動軸312を中心にして時計回り(図12中)に付勢されていることになる。具体的には、マーカ回動支持プレート311を押圧する押圧部材315と、マーカ回動支持プレート311よりも内側のフレーム部分316にバネ部材322の両端が固定されて、回動軸312に対してマーカアーム31と反対側の端部分311aが矢印B方向に回動することになる。また、端部分311aの内側には、凹部311bが形成されている。
一方、下部フレーム700の回動軸312よりも内側には、回動プレート317が設けられており、回動プレート317は、下部フレーム700に対して回動軸317aを中心にして回動する。この回動プレート317の回動軸317aよりも上側には、ロックピン318が形成されており、図12(a)では、上記凹部311bに上側から嵌っている。そして、回動プレート317には、回動軸317aよりも上側の部分にロック解除ワイヤー320が連結している。すなわち、バネ部材322の付勢力によるマーカ回動支持プレート311の回動が、ロックピン318によって止められている。尚、上昇ワイヤー313及びロック解除ワイヤー320は、植え付け装置7の上下方向に配置されているフレーム部333に固定されているワイヤー支持部331、332を通して配置されている。尚、図12に示すロック解除ワイヤー320は、右側面側のロック解除ワイヤー320Rであり、他方の端は、図9において説明したようにモータアーム103に連結されている。
このような構成において、ロック解除ワイヤー320を引っ張ると、回動プレート317が回動軸317aを中心にして回動し、ロックピン318が凹部311bから外れる。ロックピン318が外れると、バネ部材322の付勢力によってマーカ回動支持プレート311が回動軸312を中心にして時計回りに回動し、マーカアーム31も回動するため、線引きマーカ1も下方に回動することになる(矢印X参照)。このように移動機構32は、マーカアーム31、マーカ回動支持プレート311、回動軸312、上昇ワイヤー313、連結軸314、押圧部材315、フレーム部分316、回動プレート317、ロックピン318、ロック解除ワイヤー320、バネ部材322等で構成される。
尚、上記説明では、右側面側の線引きマーカ1を回動させる機構について説明したが、左側面側も同様に構成されている。又、本発明の移動機構及び右側面側移動機構の一例は、本実施の形態のマーカアーム31、マーカ回動支持プレート311、回動軸312、上昇ワイヤー313、連結部材314、押圧部材315、フレーム部分316、回動プレート317、ロックピン318、ロック解除ワイヤー320、及びバネ部材322、等に対応する。又、左側面側移動機構も同様に構成されている。
図13は、本実施の形態の苗移植機の制御に関する構成図である。図13に示すように、本実施の形態では、制御部330は、ポテンショメータ93、回転センサ182、及び操舵方向検知部319からの信号を受けてモータ99を動作させる。
次に、本実施の形態にかかる苗移植機の動作について説明する。
A:植え付け作業
作業者は、変速レバー36を前進に入れて(図示せず)圃場を走行させつつ、植え付け装置7を下降させた状態で苗を圃場に植え付けていく。この作業状態では、植え付け昇降レバー33は、「植え付け」の位置に設定されており、切替カム74は、位置決めローラ77が溝751dに入った状態の位置になっている。また、次に植え付け作業を行う側の線引きマーカ1が下方に回動した状態となっている。
B:旋回開始
そして、圃場の端に到達し、作業者がブレーキを踏むと、植え付け昇降レバー33が「下降」位置又は「停止」位置へと自動で移動又は手動で移動される。
その後、操舵部材34を回動させると、その回動に伴って、操舵部材シャフト35が回動し、ピニオン機構を介して、T字型のピットマンアーム60が、回動軸60bを中心に回動する。
そのピットマンアーム60の回動によって、そのピットマンアーム60のT字型の2つの先端部60a、60aが回動する。その結果、その先端部60a、60aに回動可能に取り付けられている2本のタイロッドが移動し、それぞれのタイロッドが取り付けられている、左右の前輪ファイナルケース113,113のナックルアームが回動する。
このように、操舵部材34を操舵することによって、右及び左の前輪10を回動させ、走行車体5の旋回を開始する。
このとき、ピットマンアーム60の回動に伴って、円柱状ピン61に回動可能に取り付けられている、水平方向のロッド62も回動し移動する(図4参照)。その結果、ロッド62の先端62aが移動するので、その側面に固定された連結ピン63も、さらに、その連結ピン63の端部に取り付けられたアーム64(64a、64b、64c)も引っ張られる方向に移動する(図4〜図6参照)。
このアーム64(64a、64b、64c)が移動すると、アーム64の上方部分64cの上端64c1に連結されているケーブル71が引っ張られる。
その結果、ケーブル71のケーブル端部72(図6参照)が下方に引っ張られ、そのケーブル端部72が連結されている旋回切替操舵具73が下方に移動する。
ここで、旋回切替操舵具73が自動切り替えモードに選択されていたとする。すなわち、旋回切替操舵具73の孔732に、バックリフトアーム76に固定されたロックピン731が嵌め込まれているとする(作業者が手動で、この旋回切替操舵具73を左右に動かし、孔732にロックピン731を入れたり、外したりする)。
そのような場合、旋回切替操舵具73が下方に移動すると、ロックピン731を介して、バックリフトアーム76も下方に移動する。バックリフトアーム76が下方に移動すると、バックリフトアーム76に固定されている位置決めローラ77も下方に移動する。その結果、位置決めローラ77が、それまで嵌め込まれていた切替カム74の溝751cから外れる。
他方、切替カム74はスプリング78(図3参照)によって、常時前方(矢印A方向)へ付勢されているので、位置決めローラ77が切替カム溝751cから外れると、自由に移動出来るようになって、切替カム74は一気に軸80を中心に反時計方向に回動する。その結果、植え付け昇降レバー33は「上昇」位置まで移動する(図9参照)。
その結果、切替カム74の回動に伴い、ワイヤーやロッド、アームなどを介して、植え付け装置7のリフトシリンダ17への油路を切り換える切替バルブ461が「上昇」側へ切り換わり、植え付け装置7が上方へ移動する。このとき、植え付け装置7の上方への移動に連動して、上昇ワイヤー313が引っ張られ、左右の線引きマーカ1が上方に回動する。尚、左右の線引きマーカ1のうち少なくとも下方に回動し、使用状態である側の上昇ワイヤー313のみが引っ張られればよい。
このようにして、作業者が圃場の端で操舵部材34を切ると、自動的に植え付け装置7が上昇する。これによって、作業者が一々植え付け昇降レバー33を操作しなくてもよくなる。
なお、作業者が旋回切替操舵具73を手動で左右に動かし、孔732からロックピン731を外していた場合は、操舵部材34を切っても、旋回切替操舵具73、バックリフトアーム76、位置決めローラ77は下方に移動することはなく、当然に切替カム74が「上昇」位置に移動することも無い。
このように、本実施の形態の旋回切替操舵具73は、操舵部材34と植え付け装置7の上昇との自動的連動を任意に選択出来るようになっている。
又、旋回時に、操舵方向検知部319によって検出された旋回方向が、制御部330に送信される。
C:旋回しながら下降開始
次に、さらに走行車体5を旋回させていった場合、植え付け装置7を自動的に下降させる。
旋回時には、内側の後輪12は、クラッチが切られ、外側の後輪12の駆動に伴って、地面につられて回転するが、この内側の後輪12の回転数が回転センサ182によって検出される。その検出された回転数信号が入力された制御部330は、予め設定されている回転数に達すると、モータ99に駆動信号を出力する。このとき、操舵方向検知部319から検出した操舵方向についての信号に基づいて、制御部330は、回転方向を決定してモータ99に駆動信号を出力する。
モータ99は、その駆動信号を受けて、図14〜図16に示すように、切替カム74を移動させる。すなわち、旋回中は、植え付け装置7は上昇位置に存在しているので、植え付け昇降レバー33は「上昇」位置にあり、また、位置決めローラ77は切替カム溝751aに入った状態となっている。図14(a)は、本実施の形態の苗移植機の前部分の右側面側を模式的に示した図である。図14(b)は、モータアーム103近傍を示す側面構成図である。尚、図14(a)では、分かりやすくするために、ロック解除ワイヤー320R、320L、ワイヤー支持具321は図示していない。以下の図15(a)、図17、図18(a)においても同様である。
図14(a)、(b)に示すように、位置決めローラ77は切替カム溝751aに入った状態であり、モータアーム103と植え付けアーム100が略一直線上に配置されており、モータアーム103に立設しているピン102が、植え付けアーム100に開設されている長孔104の縁に当接している。そして、モータアーム103の先端の上側に連結されているロック解除ワイヤー320Rと、下側に連結されているロック解除ワイヤー320Lは双方とも引かれていない状態となっている。
C1:右旋回の場合
作業者が旋回を行った場合、操舵方向検知部319によって右旋回か左旋回のどちらを行ったかが検知される。この旋回の際、回転センサ182によって、後輪の回転数が検出され、回転数が所定の値に達すると、旋回が終了したことが制御部330によって判断される。
すると、モータ99は、制御部330からの信号に従った方向に所定量、支持軸101を回転する。ここで、旋回方向を右方向とすると、モータ99は、図中反時計回り(矢印E方向)に回転する。図15(a)は、図14(a)の状態から支持軸101が反時計回りに回動した状態を示す図である。図15(b)は、図15(a)のモータアーム103周辺を示す図である。このように、支持軸101を反時計間回りに回転させることによって、モータアーム103も反時計回りに回転し、左側面側のロック解除ワイヤー320Lが引っ張られ、左側面側のロックピン318が凹部311bから外れる(図12参照)。すると、バネ部材322の付勢力により、マーカ回動支持プレート311が時計回りに回動するため、線引きマーカ1が下方に回動することになる。このように、畦Wに向かって右旋回した苗移植機の左側面側の線引きマーカ1が下方に回動した状態の平面模式図が、図16に示されている。
また、モータアーム103を反時計回りに回動した結果、モータアーム103に立設しているピン102が、切替カム74に連結されている植え付けアーム100を後方(図15(b)矢印F参照)引っ張るので、切替カム74は時計回り方向に回動する。尚、位置決めローラ77はバネによって上方へ付勢されているが、このモータ99による回動力によって、切替カム74が強制的に回動して位置決めローラ77は切替カム溝を順次乗り越えていく。それに伴い、図15(a)のように、「下降」位置まで切替カム74と植え付け昇降レバー33が回動する。
モータ99はさらに、支持軸101を回動させるので、最終的には図17の「植え付け」状態となり、下降した植え付け装置7に設けられた苗植え付け爪21が回転し始め、苗の植え付けが始まる。このとき、「植え付け」位置であることをポテンショメータ93によって検出されると、制御部330は、モータ99の駆動を停止する。
C2:左旋回の場合
一方、操舵方向検知部319によって左旋回であることが検知された場合について説明する。回転センサ182によって、後輪の回転数が検出され、回転数が所定の値に達すると、旋回が終了したことが制御部330によって判断される。
すると、モータ99が、制御部330から信号に従って、図中時計回り(矢印G参照)に回転する。図18(a)は、図14(a)の状態から支持軸101が時計回りに回動した状態を示す図である。図18(b)は、図18(a)のモータアーム103周辺を示す図である。このように、支持軸101を時計間回りに回転させることによって、モータアーム103も時計回りに回転し、右側面側のロック解除ワイヤー320Rが引っ張られ、右側面側のロックピン318が凹部311bから外れる。すると、バネ部材322の付勢力により、マーカ回動支持プレート311が時計回りに回動するため、線引きマーカ1が下方に回動することになる。このように、右側面側の線引きマーカ1が下方に回動した状態が、図19に示されている。
また、モータアーム103が時計回りに回動した結果、モータアーム103に立設しているピン102が、切替カム74に連結されている植え付けアーム100を後方(図15(b)矢印H参照)引っ張るので、切替カム74は時計回り方向に回動する。そして、「下降」位置まで切替カム74と植え付け昇降レバー33が回動する。モータ99はさらに、支持軸101を回動させるので、最終的には図17の「植え付け」状態となり、植え付け装置7に設けられた苗植え付け爪21が回転し始め、苗の植え付けが始まる。
以上のように、本実施の形態では、操舵部材34を操作すると旋回開始時に植え付け装置7を自動的に上昇させることができるので、旋回前の余分な操作が必要なく、作業能率や操縦性を向上させることが出来る。
また、旋回終了時に植え付け装置を自動的に作動させることが出来るので、旋回前や旋回中に作業者が余分な操作を行う必要がなくなり、作業能率及び操縦性が向上する。
線引きマーカの作用状態への切替に植え付け装置の下降及び植え付け装置の作動を自動化する駆動アクチュエータを用いたことにより、別途ラインマーカを操作する部材が不要となるため、構成が簡略化されるとともに、コストダウンを図ることが可能となる。
操作部材の操作方向を基準として駆動アクチュエータの作動方向を決めることにより、植え付け作業中に次ぎの植え付け作業位置に直進の目印を引く線引きマーカ1が圃場に接地する作業状態とすると供に、苗を植えた側の線引きマーカ1を植え付け装置7側に移動させて非作業状態とすることが出来るので、旋回時に線引きマーカ1の操作が不要となり、作業能率が操作性が向上する。
また、苗を植えた側に誤って線引きマーカ1を接地させることを防止することが出来るので、苗が潰されることが無く、潰された苗を植え直す作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
また、以上のように、このモータ99は動作する際、切替カム74を引っ張る方向に力を発揮するので、モータ99に掛かる負荷は小さくて済むというメリットがある。モータは通常押す方向に力を出す場合の方が高価なモータを使う必要があるので、本実施の形態のモータとしては安価なものを用いることが出来る。
また、このようなモータ99の駆動において、切替カム74の位置を正確に測りながら制御するため、次に示すようにして、正確に切替カム74の位置を検出し制御を行っている。すなわち、ポテンショメータ93がその軸に固定されたメータアーム92の位置を測定する。このメータアーム92の回動位置は、切替カム74に固定されたプレート90の位置、つまり、プレート90の頂点に固定されたピン91の位置に対応しているので、結果的に切替カム74の位置を検出することが出来る。
制御部330は、これらのポテンショメータ93からの信号も利用して、モータ99をより正確に駆動制御する。
尚、本実施の形態1では、左旋回時の植え付けタイミング調節ダイヤル351と、右旋回時の植え付けタイミング調節ダイヤル352の2つの調整ダイヤルを備えているが、これは以下の点で効果を発揮する。
旋回後の植え付けタイミングは内側後輪が旋回時に地面につられて回る回転数を測定して、制御部によって制御しているが、機械の後輪クラッチアッセイの左右の抵抗の違いにより、植え付け始めの位置が左右の旋回時にずれる場合があった。また、従来はタイミング調整ダイヤルが一つしかなかったため、左右どちらかを合わすと反対側が常にくるってしまっていたが、本実施の形態のように左旋回時、右旋回時の植え付け調整ダイヤルを設けることにより、植え始めのタイミングを左旋回時、及び右旋回時で合わせることが出来る。
続いて、本発明にかかる実施の形態1の畦クラッチの制御について、主に図20〜図22(a)〜(e)を用いて説明する。
図20は、畦クラッチの制御構成を示す図である。図20に示すように、本実施の形態1の苗移植機の制御構成には、畦クラッチレバー181a、181bに連結して、左側面側の2条の植え付け部177a、177bへの駆動の伝達を入切する部分条クラッチ190aと、右側面側の2条の植え付け部177c、177dへの駆動の伝達を入切する部分条クラッチ190bが設けられている。この部分条クラッチ190a、190bのクラッチのそれぞれの入切状態の検知を行う伝動検知スイッチ191a、191bが設けられており、伝動検知スイッチ191a、191bの信号を受けて、苗送りモータ180a、180bを駆動させ、苗送り装置172を駆動させる苗送り制御部192が設けられている。
図21に示す圃場に対して、本実施の形態1の苗移植機が植え付け作業を行う場合について説明する。
畦Waに対して斜めに進み、右へ曲がり畦Wbと平行に進む場合、畦Waの近傍まで来ると、圃場の端が斜めになっているため、畦クラッチレバー181bを操作することによって、部分条クラッチ190aが切り状態となり、左側面側の2条の植え付け部177a、177b植え付けが停止される。この部分条クラッチ190aが切り状態となったことは、伝動検知スイッチ191aによって苗送り制御部192へと伝達される。一方、右側面側の2条の植え付け部177c、177dの植え付けは続行される。図22(a)は、左側面側の2条の植え付け部177a、177b植え付けが停止した状態の苗載置台171を示す平面構成図である。図22(e)は、苗植え付け爪21によって苗を取りだしている状態を示す側面構成図である。
続いて、右側面側の2条の植え付け部177c、177dによる植え付けも停止される。ここで、左側面側の2条の苗は、右側面側の2条の苗よりも残っていることになる。図22(b)は、左側面側の2条の苗が右側面側の2条の苗よりも残っている状態の苗載置台171を示す平面構成図である。載置台部171a、171bの前板174に当接している苗の量(図中M1参照)は、載置台部171c、171dの前板174に当接している苗の量(図中M2参照)よりも多くなっている。
続いて、右へ曲がり、畦Wbに沿って4条の植え付けが再開される。
このとき、畦クラッチレバー181a、181bを双方とも入りにして、4条で植え付けが開始され、苗載置台20は、右側面側へ移動していく。そして、苗載置台20が最も右端に達すると、載置台部171c、171dの前板174に当接している苗がなくなるため、下方への苗送りが行われるが、図22(c)に示すように、載置台部171c、171dの前板174に当接している苗が無くなった時、載置台部171a、171bの前板174に当接している苗は残っていることになる(図中M3、M4参照)。
ここで、苗載置台171の苗送りを行う際に、苗送り制御部192は、部分条クラッチ190aの切り状態が検知された載置台部171a、171bの苗送りモータ180aを、載置台部171c、171dの苗送りモータ180bよりも多く駆動させる。尚、苗送り制御部192は、図13に示した制御部330と同じCPUで処理してもよいが、別々に処理が行われても良い。
このように制御する理由を、以下に説明する。
従来では、苗載置台20が左右端部に移動した際、カムローラで苗送りベルト173を作動させているが、この方式では苗の移動量が少ないため、図22(b)の状態から苗送りをすると、載置台部171a、171bでは苗が残っているため、十分に苗を下方に送ることが出来ず、図23に示すように空間Tが生じる場合がある。このように空間Tが生じた状態で、田植えを行うと、欠株が生じることになる。欠株が発生すると、その分明確に収穫量が落ちることになり、これを防止するためには、作業者が苗を該当個所に植えねばならず、作業効率の低下や、作業量の労力の増大といった問題を招くこととなり望ましくない。
この欠株を予防するために、上記のように苗送りモータ180a、180bを備え、載置台部171a、171bの苗送りモータ180aを、載置台部171c、171dの苗送りモータ180bよりも多く駆動させることにより、図22(d)に示すように、苗が確実に下方に移動するため、欠株の発生を防止することが出来る。
尚、載置台部171a、171bの苗が残っている部分の苗密度は上昇することになり、植え付けられる苗の量も多くなるが、一部の苗取り量が多くなっても圃場全体の苗の収穫量に差はほとんど生じない。
次に、苗植え付け爪21について説明する。
図24は、苗植え付け爪21近傍の斜視構成図である。図24に示すように、苗Nは、苗植え付け爪21によって苗載置台171から取り出された後、苗植え付け爪21に沿うように形成されたフォーク部400によって押し出されて、植え付けされる。このフォーク部400は、苗植え付け爪21に挟まれた苗Nを押し出すために、苗植え付け爪21に沿って形成された押出部401と、押出部401の途中から平面視ハの字形状に形成されたプレート402とを有している。このプレート402は、押出部401と溶接されていても良いし、樹脂で形成され押出部401に対して取り外し可能に構成されていても良い。
本実施の形態の苗植え付け爪21は、このように平面視ハの字形状のプレート402を有することにより、図25に示すように、苗を植えるとき、苗Nに土がかかる方向に土を押すことなる。そのため、苗に土がかかることになり、苗がその場に留まることになる。従って、土質が悪い(ぬかるみ易い、硬すぎる)場合でも、苗をより確実に植え付けることが可能となる。
次に、駆動系について説明する。
図26は、駆動系の構成図である。図26において、530は株間切替ギアを示し、531は、疎植偏心ギアを示し、532は株間副変速を示し、533はミッション合わせ面を示し、534は安全クラッチを示し、535は植え付け駆動を示し、536は位置マークを示し、537は走行駆動を示し、538は標準駆動を示し、539は疎植駆動を示している。
従来は、ミッション合わせ面側に疎植用偏心ギアを配置しているため、ミッション組み付け時の振動により偏心ギアのバックラッシから組立位相がずれギア破損の原因となっていた。対して、本実施の形態では、ミッション合わせ面533側に標準ギアを設け、組み付け時のギアがずれても位置が無いことからミッション破損を防止する。株間切替ギア530側に疎植偏心ギア531を設け、ギアの噛み合わせがずれない構成である。
(実施の形態2)
次に、本発明にかかる実施の形態2における苗移植機について説明する。本実施の形態2の苗移植機は、実施の形態1と基本的な構成は同じであるが、実施の形態1と旋回時の制御が異なっている。そのため、本相違点を中心に説明する。
図27は、本実施の形態2の苗移植機の制御系の構成の説明図である。図27に示すように、本実施の形態2の苗移植機には、左右の操舵方向を検知する操舵方向検知部319と、旋回時に左右の後輪のそれぞれの回転数を検知する回転センサ182と、植え付け昇降レバー33の位置を検出するポテンショメータ93と、右旋回時の左右の後輪の回転数の差と、左旋回時の左右の後輪の回転数の差を比較する比較部341と、比較部341からの出力に基づいて、モータ99の出力を制御する制御部342が設けられている。
次に、本実施の形態2の苗移植機の制御について説明する。
植え付け作業を行い、圃場の端に到達し、旋回が行われる。このとき、操舵方向検知部319によって左旋回か右旋回かが判断される。そして、その旋回時(例えば左旋回とする)における左側の後輪12と右側の後輪12の回転数が、回転センサ182によって検知される。尚、旋回時であるか否かの判断は、ポテンショメータ93によって検出される。そして、比較部341によって、左旋回時の左右の後輪12の回転数の差が検出され、記憶される。
次に、植え付け作業を行い、先程と反対側の圃場の端に到達すると、右旋回が行われる。そして、比較部341によって右旋回時の左右の後輪12の回転数の差が検出される。更に、上記記憶されていた左旋回時の左右の後輪12の回転数の差と、右旋回時の左右の後輪12の回転数の差が、比較部341において比較される。
比較した結果、左旋回時の左右の後輪12の回転数の差と、右旋回時の左右の後輪12の回転数の差に、差が存在する場合、制御部342は、次回以降の左旋回又は右旋回を行う際の上記モータ99の駆動タイミングを変更する。具体的には、左旋回、右旋回のうち左右の後輪12の回転数の差が大きい方が正しいと判断し、回転数の差が小さい方の旋回については、旋回後のモータ99の駆動タイミングを早めることによって植え付けタイミングを遅くする。
尚、通常の旋回の場合は、旋回内側の後輪12のサイドクラッチが切れる構造であるため、駆動回転する旋回外側と、地面との接触抵抗で遊転する旋回内側の回転数の差は大きくなる。そのため、左右の後輪12の回転数の差が大きい方の旋回が正しいと判断される。
一方、左右の後輪12の回転数差が小さくなるのは、旋回内側の後輪12が半クラッチ、あるいは一時的にクラッチを繋いだ状態で回転しているため、回転数が増えるためである。すなわち、旋回時に何らかの事情で大回りしている、或いは旋回内側の後輪12を駆動回転させないと旋回走行ができない状況であるため、旋回後に次の植え付け位置に機体を合わせる操作が必要となる。このため、旋回後の植え付け開始タイミングを遅らす必要がある。
このように、モータ99の駆動タイミングを変更することにより、左右の旋回時の植え付けタイミングを自動に同調することが出来る。
尚、本実施の形態2のような左右の旋回時の自動同調は、図1(b)で示した植え付けタイミング調節ダイヤル351、352が中央に調整されている場合に行われればよい。植え付けタイミング調節ダイヤル351、352の少なくとも一方のダイヤルが中央以外に調整されている場合には、自動同調を行わず、植え付けタイミング調節ダイヤル351、352に合わせて、植え付けタイミングを実行するようにすればよい。
又、本実施の形態1、2の植え付けタイミング調節ダイヤル351、352に代えて、図28に示す調整部355のように、左旋回時と右旋回時で共通に、植え付けタイミングを調整する植え付けタイミング調節ダイヤル353と、左旋回時及び右旋回時における植え付け始め位置のバランスを調整する左右バランス調節ダイヤル354を備えてもよい。
植え付けタイミング調整ダイヤル353を回転させることにより、左旋回及び右旋回時に共通に旋回後の植え付けタイミングを早く又は遅くすることが出来、左右バランス調整ダイヤル353を左旋回側に回すことにより、左旋回時の植え付けタイミングを早くでき、右旋回側に回すことにより、右旋回時の植え付けタイミングを早くすることが出来る。
このように、従来の植え付けタイミングを調整する植え付けタイミング調節ダイヤル353に、サブダイヤルとして、第4の本発明の調整ダイヤルの一例に対応する左右バランス調節ダイヤル354設けることにより、左旋回時及び右旋回時における植え付け始めの実際のタイミングを合わせることが出来る。
上記のタイミング調節ダイヤル353、及び左右バランス調節ダイヤル354を用いることにより、畦際での苗の植え付け条数を多くする作業条件では「遅」側に設定しておくと、圃場端から植え付け開始位置までの距離が長くなるので、畦際に十分な植え付けスペースを確保することができ、畦際での苗植え付け作業の能率が向上する。
また、畦際をあまり残さない、或いは畦際は作業者が手作業で苗を植える作業条件では「速」側に設定しておくと、圃場端から植え付け開始位置までの距離が短くなるので、旋回終了と同時に植え付けを開始することができ、条件に合った植え付けが可能となる。
尚、上記実施の形態1の苗移植機について、運転席11の上側を覆うようにサンバイザーが設けられていても良い。図29は、サンバイザーを設けた構成の苗移植機の左側面構成図である。図30は、同苗移植機の正面構成図である。図31は、同苗移植機の背面構成図である。
図29〜図31に示すように、運転席11の上側を覆うように、サンバイザー500が設けられている。サンバイザー500は、前側の支柱501と、後側の支柱502によって支持されている。前側の支柱501は、フロア14に固定されている下支持部501aと、下支持部501aの上端に設けられている支持プレート501bと、支持プレート501bにその上側から差し込まれて固定されている上支持部501cとを備えている。この上支持部501cを回動中心として予備苗枠503が設けられている。又、サンバイザー500の上側は後方に向かって下方に傾斜しており、上方にたまった雨水は、後端の左右の角に流れ込むように形成されている。この角部分には、中空の後側の支柱502が設けられており、支柱502の下端は開放されている。そして、支柱502の途中には、苗載置台171に載置されている苗に水を掛けるためのコック504及びシャワーノズル505が設けられている。
サンバイザー500上に貯まった雨水は、後方の左右端へと流れ、支柱502内へ流れ込む。そして、コック504を開放することによってシャワーノズル505から雨水が放出される。また、支柱502の下端からも雨水が流れる(図31矢印P参照)。
以上のように構成することによって、雨水の重みによってサンバイザーが壊れることを防止することが出来る。
また、図31に示すように、支柱502から雨水が落下するため、機体に直接雨水がかからず、機体の駆動部に対して直接雨水がかかることを裂けることが可能となる。
また、予備苗枠503を図28の矢印Qのように、内側に移動させることが出来るため、納屋等に収納する際等にじゃまにならない。
尚、シャワーノズル505に限らず、蛇口であってもよい。
また、本実施の形態1の補助苗枠29が以下のような構成であってもよい。
図32は、本実施の形態1の変形例の苗移植機の左側面構成図であり、図33は、本実施の形態1の変形例の苗移植機の平面構成図である。尚、図32、33では、植え付け装置7等は省略されている。図32及び図33に示す苗移植機の補助苗枠510は、右側面側に設けられており、フロア14に固定されている支柱520、521によって支持されている。
そして、補助苗枠510は、上段枠511と下段枠512とを有しており、下段枠512が支柱520、521に支持されている。上段枠511が、下段枠512に、その車体側に設けられている連結部材513、514によって回動可能に連結されており、上段枠511は、下段枠512よりも前側に回動可能に構成されている。この上段枠511には、その車体側であって、前端から後端まで把手515が設けられている。このように把手515を設けることにより、より前方に引き出しやすくなる。また、畦側よりもスムーズに苗体の出し入れが可能となる。尚、図33では、前方に引き出す前の上段枠511は、二点鎖線で示され、見やすくするために把手515は省略されている。
又、本実施の形態の構成に限らず、図34に示すように、上段枠511の右側にも、その前端から後端まで把手516が設けられていても良い。図34は、本実施の形態の変形例の苗移植機の平面構成図である。このように、上段枠511の左右両方に把手515、516を設けることによって、把手部分をつかみやすく、上段枠511を出し入れしやすい。
また、図34の矢印Rに示すように、補助苗枠510が回動可能に構成されていてもよい。このように回動可能に構成し、把手515、516を設けることにより、畦側の正面及び側方よりもスムーズに苗枠の出し入れが可能となる。尚、図34では、前方に引き出す前の上段枠511は、二点鎖線で示され、見やすくするために把手515は省略されている。
又、図32〜図34のように把手515を設ける代わりに、図35及び図36に示すように、上段枠511の側壁511aに、把手の代わりとなる孔部517が形成されていても良い。図35は、本実施の形態の変形例の苗移植機の右側面構成図であり、図36は、本実施の形態の変形例の苗移植機の平面構成図である。このように孔部517を設けることにより、より前方に引き出しやすくなる。